説明

プレート型改質器

【目的】 触媒の上部に隙間ができにくく、触媒の上部及び側部の隙間をガスが素通りせず、触媒を過剰に使用することなく性能を保持できるプレート型改質器を提供する。
【構成】 改質室Reと燃焼室Coとを仕切る仕切り板22の内面に一端が固着され、ガスの流れに直交する方向に幅全体にわたって延び、かつ他端が各触媒内まで上下方向に交互に延びた複数の上下突起板34と、改質室と燃焼室の側壁に一端が固着され、他端が各触媒内まで幅方向内方に延びた複数の側部突起板35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は改質器に係わり、更に詳しくは、溶融炭酸塩型燃料電池におけるプレート型改質器に関する。
【0002】
【従来の技術】溶融炭酸塩型燃料電池は、高効率、かつ環境への影響が少ないなど、従来の発電装置にはない特徴を有しており、水力・火力・原子力に続く発電システムとして注目を集め、現在世界各国で鋭意研究開発が行われている。特に天然ガスを燃料とする溶融炭酸塩型燃料電池を用いた発電設備では、図3に示すように天然ガス等の燃料ガス1を水素を含むアノードガス2に改質する改質器10と、アノードガス2と酸素を含むカソードガス3とから発電する燃料電池12とを一般的に備えており、改質器10で作られたアノードガス2は燃料電池12に供給され、燃料電池内でその大部分(例えば80%)を消費した後、アノード排ガス4として改質器10の燃焼室Coに供給される。燃料ガス1は燃料予熱器11により予熱されて改質器の改質室Reに入る。改質器ではアノード排ガス中の可燃成分(水素、一酸化炭素、メタン等)を燃焼室で燃焼し、高温の燃焼ガスにより改質室Reを加熱し内部を流れる燃料ガスを改質する。改質室を出た燃焼排ガス5は、排ガス循環ライン13の空気予熱器14で熱回収され、凝縮器15と気水分離器16で水分を除去され、タービン圧縮機(動力回収装置17)で加圧された空気6が混入し、この混合ガスが空気予熱器14で加熱されてカソードガス3に合流する。これにより、電池のアノード側で発生した二酸化炭素が、燃焼排ガス5を介して燃料電池用のカソードガス3に入り、燃料電池のカソード反応に必要な二酸化炭素をカソード側Cに供給する。カソードガス3は燃料電池内でその一部が反応してカソード排ガス7となり、その一部はカソード入口側に再循環され、一部は改質器10の燃焼室Coに供給されてアノード排ガス4を燃焼させ、残りは動力回収装置17に供給されて圧力回収され、系外に排出される。なお、8は燃料電池の格納容器に供給されるパージガスである。
【0003】上述した燃料電池発電装置における改質器10には、改質室Reと燃焼室Coが平板状のプレート型改質器が提案され用いられている。このプレート型改質器は、図4に例示するように、改質室Reと燃焼室Coをそれぞれ平板状に構成して交互に積層したものであり、この燃焼室Coには、粒子状の燃焼触媒18が平板状に充填され、外部マニホールド19から供給されるアノード排ガス4とカソード排ガス7とが、図に破線で示すように流れ、燃焼触媒18の作用により反応(燃焼)して発熱し、燃焼排ガス5が反対側の外部マニホールド19から排出される。一方、改質室Reには、粒子状の改質触媒20が同様に平板状に充填され、外部マニホールド21から供給される燃料ガス1が、図に実線で示すように流れ、改質触媒20の作用により燃料ガス1を改質し、改質ガス(アノードガス2)が、反対側の外部マニホールド21から排出されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したプレート型改質器では、充填した触媒の上部や側部に空間ができやすく、この空間を反応すべきガスが素通りして性能が低下する問題点があった。すなわち、■従来のプレート型改質器では、仕切り板22の間に穴の開いた支持部材23が挟持されており、この支持部材により仕切り板22の間隔を保持している。しかし、支持部材23の剛性が高く、上下方向に弾性がほとんどないため、昇温時の熱膨張係数の違いにより、仕切り板22と触媒18、19の上部との間に隙間ができ、この部分をガスがショートパスして十分な改質率及び燃焼効率が得られない問題点があった。また、■触媒を改質室Re及び燃焼室Coに隙間なく充填するのが一般に困難であり、例えば運搬中の振動等により触媒が一方に片寄って上部や側部に隙間が出来やすく、これにより、改質率が低下してしてプラント効率を悪化させたり、燃焼効率が低下して未燃分が通過しプラントの安全性を悪化させたりする問題点があった。更に、■これらの問題点をできるだけ回避するために、触媒を可能な限り密に隙間なく充填すると、触媒のコストがかさみ、改質器全体が高価になりすぎる問題点があった。
【0005】本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、触媒の上部に隙間ができにくいプレート型改質器を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、触媒の上部及び側部の隙間をガスが素通りしにくいプレート型改質器を提供することにある。更に、本発明の第3の目的は、触媒を過剰に使用することなく性能を保持できるプレート型改質器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、複数の改質室と燃焼室とがそれぞれ平板状に構成されかつ交互に積層され、燃焼室に燃焼触媒が充填され、改質室に改質触媒が充填されたプレート型改質器において、改質室と燃焼室とを仕切る仕切り板の間に穴の開いた支持部材が挟持され、該支持部材は、上下方向に弾性を有する断面形状がコの字状の穴開き部材であり、かつ、前記支持部材の下端は下方の仕切り板に接合され上端は上方の仕切り板に付勢され摺動可能に密着している、ことを特徴とするプレート型改質器が提供される。
【0007】また、改質室と燃焼室とを仕切る仕切り板の内面に一端が固着され、ガスの流れに直交する方向に幅全体にわたって延び、かつ他端が各触媒内まで上下方向に交互に延びた複数の上下突起板と、改質室と燃焼室の側壁に一端が固着され、他端が各触媒内まで幅方向内方に延びた複数の側部突起板と、を備えることを特徴とするプレート型改質器が提供される。
【0008】また、燃焼室及び改質室には、反応に必要な量の燃焼触媒及び改質触媒が、それぞれガスの流れに直交する方向に、複数の列で充填され、かつ燃焼触媒及び改質触媒とほぼ同寸法のアルミナボールが、前記触媒の列の間及び改質室及び燃焼室の隙間に充填される、ことを特徴とするプレート型改質器が提供される。
【0009】
【作用】上記、本発明の構成によれば、改質室と燃焼室とを仕切る仕切り板の間に上下方向に弾性を有する断面形状がコの字状の穴開き支持部材が挟持され、この支持部材の下端が下方の仕切り板に接合され上端が上方の仕切り板に付勢されて摺動可能に密着しているので、昇温時の熱膨張係数の違いにより、仕切り板と触媒の上部との間に隙間ができるような場合でも、コの字状の支持部材が弾性により上下方向の伸び、追従して変形するので、触媒の上部に隙間ができず、ガスのショートパスを防止することができる。
【0010】また、触媒内まで上下方向に交互に延びた複数の上下突起板と、触媒内まで幅方向内方に延びた側部突起板とを備えるので、例えば運搬中の振動等により触媒が一方に片寄り、上部及び側部に隙間ができても、上下突起板及び側部突起板により、この隙間をガスが素通りするのを阻止することができ、これにより、改質率の低下及び燃焼効率の低下を防止することができる。
【0011】また、燃焼室及び改質室には、反応に必要な量の燃焼触媒及び改質触媒だけが、複数の列で充填されており、アルミナボールがその隙間に充填されるので、高価な触媒を過剰に使用することなく性能を保持することができる。
【0012】
【実施例】以下に本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付して使用する。図1は、本発明によるプレート型改質器の側面断面図であり、(A)は第1実施例、(B)は第2実施例、(C)は第3実施例を示している。また、図2は、図1の平面断面図であり、(B)は図1(B)の平面図、(C)は図1(C)の平面図を示している。図1及び図2に示すプレート型改質器は、複数の改質室Reと燃焼室Coとがそれぞれ平板状に構成されかつ交互に積層され、燃焼室Coに燃焼触媒18が充填され、改質室Reに改質触媒20が充填されている。かかる構成は、図4に示した従来のプレート型改質器と同様である。
【0013】図1(A)において、改質室Reと燃焼室Coとを仕切る仕切り板22の間に穴の開いた支持部材32が挟持されている。この支持部材32は、上下方向に弾性を有する断面形状がコの字状の穴開き部材である。また支持部材32の下端は下方の仕切り板22に接合されており、かつその上端は上方の仕切り板22に付勢され、摺動可能に密着している。
【0014】かかる構成により、昇温時の熱膨張係数の違いにより、仕切り板と触媒の上部との間に隙間ができるような場合でも、コの字状の支持部材が弾性により上下方向の伸び、追従して変形するので、触媒の上部に隙間ができず、ガスのショートパスを防止することができる。
【0015】図1(B)及び図2(B)において、本発明によるプレート型改質器は、複数の上下突起板34(図1(B)参照)と複数の側部突起板35(図2(B)参照)を備えている。上下突起板34は、改質室Reと燃焼室Coとを仕切る仕切り板22の内面に一端が固着され、ガスの流れに直交する方向に幅全体にわたって延び、かつ他端が各触媒内まで上下方向に交互に延びている。また、側部突起板35は、改質室と燃焼室の側壁に一端が固着され、他端が各触媒内まで幅方向内方に延びている。
【0016】かかる構成により、例えば運搬中の振動等により触媒が一方に片寄り、上部及び側部に隙間ができても、上下突起板及び側部突起板により、この隙間をガスが素通りするのを阻止することができ、これにより、改質率の低下及び燃焼効率の低下を防止することができる。
【0017】図1(C)及び図2(C)において、本発明によるプレート型改質器の燃焼室Co及び改質室Reには、反応に必要な量の燃焼触媒18及び改質触媒20が、それぞれガスの流れに直交する方向に、複数の列で充填されている。また、燃焼触媒18及び改質触媒20とほぼ同寸法のアルミナボール36が、触媒18、20の列の間及び改質室Re及び燃焼室Coの隙間に充填されている。
【0018】かかる構成により、複数の列の触媒層18、20を多段に作用させることができ、高価な触媒を過剰に使用することなく性能を保持することができる。
【0019】
【発明の効果】上述したように、本発明のプレート型改質器は、触媒の上部に隙間ができにくく、触媒の上部及び側部の隙間をガスが素通りしにくく、触媒を過剰に使用することなく性能を保持できる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプレート型改質器の側面断面図である。
【図2】図1のプレート型改質器の平面断面図である。
【図3】溶融炭酸塩型燃料電池を用いた発電設備の全体構成図である。
【図4】従来のプレート型改質器の模式的平面断面図と側面断面図である。
【符号の説明】
1 燃料ガス
2 アノードガス
3 カソードガス
4 アノード排ガス
5 燃焼排ガス
6 空気
7 カソード排ガス
8 パージガス
10 改質器
11 燃料予熱器
12 燃料電池
13 排ガス循環ライン
14 空気予熱器
15 凝縮器
16 気水分離器
17 動力回収装置
18 燃焼触媒
19 外部マニホールド
20 改質触媒
21 外部マニホールド
22 仕切り板
32 支持部材
34 上下突起板
35 側部突起板
36 アルミナボール
Re 改質室
Co 燃焼室
A アノード側
C カソード側

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の改質室と燃焼室とがそれぞれ平板状に構成されかつ交互に積層され、燃焼室に燃焼触媒が充填され、改質室に改質触媒が充填されたプレート型改質器において、改質室と燃焼室とを仕切る仕切り板の間に穴の開いた支持部材が挟持され、該支持部材は、上下方向に弾性を有する断面形状がコの字状の穴開き部材であり、かつ、前記支持部材の下端は下方の仕切り板に接合され上端は上方の仕切り板に付勢され摺動可能に密着している、ことを特徴とするプレート型改質器。
【請求項2】 複数の改質室と燃焼室とがそれぞれ平板状に構成されかつ交互に積層され、燃焼室に燃焼触媒が充填され、改質室に改質触媒が充填されたプレート型改質器において、改質室と燃焼室とを仕切る仕切り板の内面に一端が固着され、ガスの流れに直交する方向に幅全体にわたって延び、かつ他端が各触媒内まで上下方向に交互に延びた複数の上下突起板と、改質室と燃焼室の側壁に一端が固着され、他端が各触媒内まで幅方向内方に延びた複数の側部突起板と、を備えることを特徴とするプレート型改質器。
【請求項3】 複数の改質室と燃焼室とがそれぞれ平板状に構成されかつ交互に積層され、燃焼室に燃焼触媒が充填され、改質室に改質触媒が充填されたプレート型改質器において、燃焼室及び改質室には、反応に必要な量の燃焼触媒及び改質触媒が、それぞれガスの流れに直交する方向に、複数の列で充填され、かつ燃焼触媒及び改質触媒とほぼ同寸法のアルミナボールが、前記触媒の列の間及び改質室及び燃焼室の隙間に充填される、ことを特徴とするプレート型改質器。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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