説明

プレート式反応器、それを用いる反応生成物の製造方法、及び触媒の充填方法

【課題】プレート式反応器における充填による触媒の損壊を抑制する技術を提供する。
【解決手段】プレート式反応器において対向する伝熱プレート1間の隙間が、伝熱プレート1間の間隔P、伝熱プレート1を構成する伝熱管5−1〜5−3の特定の管径H、及び前記隙間に充填される触媒の最短粒径Dで表される特定の関係を満たすプレート式反応器を構成し、又はこのような関係を満たす最短粒径を有する触媒を既存のプレート式反応器における伝熱プレート1間の隙間に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填される粒子状の触媒の割れや粉化が抑制されるプレート式反応器、このようなプレート式反応器を用いる気相接触反応の反応生成物の製造方法、及びプレート式反応器において、粒子状の触媒の充填時における割れや粉化が抑制される触媒の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状の触媒の存在下においてガス状の原料物質から気相接触反応によって反応生成物を得るための反応器としては、多管式反応器やプレート式反応器が知られている。このうち、プレート式反応器としては、例えば、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような気相接触反応用の反応器では、一般に、触媒は、反応器の構造に応じて、反応管又は伝熱プレート間の隙間に落下させることによって充填される。触媒の充填では、触媒の割れや粉化等の損壊が生じることがあり、このような触媒の充填時における損壊は、反応生成物の生産性の低下をもたらすことが知られている。このような触媒の充填時における損壊を防止するための技術としては、例えば、特定の落下強度や粉化度を有する触媒を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0004】
プレート式反応器は、伝熱プレートが複数の伝熱管の周縁における連結によって形成され、さらに触媒が充填される、対向する伝熱プレート間の隙間は、多管式反応器における反応管に比べてはるかに複雑な形状を有している。このため、プレート式反応器における触媒の充填では、触媒は伝熱プレートに繰り返し衝突しながら充填される。したがって、触媒は、多管式反応器への充填に比べてプレート式反応器へ充填する場合に、より磨耗し、またより粉化しやすい。
【0005】
プレート反応器は、一般に伝熱プレート間の隙間が狭く、またその形状が複雑であることから、多管式反応器の反応管に比べて内部の清掃が極めて難しく、伝熱プレートの表面に触媒交換時に付着した触媒粉の除去が困難である。そのため、触媒の充填時或いは触媒の抜き出し時における触媒の粉化が少ないことが特に望まれている。
【0006】
また、充填時における触媒の粉化は、前記隙間をより密に塞ぎ、プレート式反応器内の圧力の上昇や反応生成物の収率の低下等の問題を生じることがある。
【特許文献1】特開2004−202430号公報
【特許文献2】特開2005−211796号公報
【特許文献3】特開2004−243213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プレート式反応器における充填による触媒の損壊を抑制する技術を提供する。また本発明は、充填による触媒の損壊が抑制されたプレート式反応器を用いる気相接触反応による反応生成物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討を行い、伝熱プレート間の間隔を広げることで、充填時における触媒の粉化が減少することを見出した。しかし、伝熱プレート間の間隔を広げすぎると充填時における触媒の割れや欠けが増大した。そこで鋭意検討した結果、伝熱プレートの間隔を適度に決めることで、充填時における触媒の粉化と割れを同時に抑制することが可能となり本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器において、前記隙間に充填される触媒の最短粒径をD(mm)、対向する前記伝熱プレートの軸間の距離をP(mm)、対向する一方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh1(mm)、対向する他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh2(mm)とし、前記隙間の鉛直方向における長さを前記隙間の全長としたときに、前記隙間の全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たし、かつ、前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さず、かつ、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないプレート式反応器を提供する。
6D>P−(h1+h2)>D (1)
6D≦P−(h1+h2) (2)
P−(h1+h2)≦D (3)
【0010】
また本発明は、前記隙間が前記式(1)を満たす部分を全長の50%以上有する前記プレート式反応器を提供する。
【0011】
また本発明は、前記触媒の落下割れ率が10%以下である前記プレート式反応器を提供する。
【0012】
また本発明は、前記触媒の粉化率が10%以下である前記プレート式反応器を提供する。
【0013】
また本発明は、原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、前記プレート式反応器に、前述した本発明のプレート式反応器を用いる生成物の製造方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリ
ル酸の一方又は両方を製造する前記の製造方法を提供する。
【0015】
また本発明は、プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒を充填する方法であって、前記プレート式反応器には、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器を用い、前記触媒には、前記触媒の最短粒径をD(mm)、対向する前記伝熱プレートの軸間の距離をP(mm)、対向する一方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh1(mm)、対向する他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh2(mm)とし、前記隙間の鉛直方向における長さを前記隙間の全長としたときに、前記隙間の全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たし、かつ、前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さず、かつ、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないDを有する触媒を用いる、触媒の充填方法を提供する。
6D>P−(h1+h2)>D (1)
6D≦P−(h1+h2) (2)
P−(h1+h2)≦D (3)
【0016】
また本発明は、前記触媒には、落下割れ率が10%以下である触媒を用いる前記の触媒の充填方法を提供する。
【0017】
また本発明は、前記触媒には、粉化率が10%以下である触媒を用いる前記の触媒の充填方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、隣り合う2枚の伝熱プレートに挟まれた空間に、伝熱プレートの上方から粒状の触媒を充填する場合であっても、触媒の粉化、割れ、欠け等の損壊を抑制して触媒を充填することができ、このような損壊による反応生成物の製造における生産性の低下を防止することができる。
【0019】
また本発明では、前記隙間が前記式(1)を満たす部分を全長の50%以上有することが、充填時における触媒の損壊を抑制する観点からより一層効果的である。
【0020】
また本発明では、前記触媒の落下割れ率が10%以下であることが、充填時における触媒の割れを抑制する観点からより一層効果的である。
【0021】
また本発明では、前記触媒の粉化率が10%以下であることが、充填時における触媒の粉化を抑制する観点からより一層効果的である。
【0022】
また本発明では、アクロレイン及びアクリル酸の一方又は両方、メタクロレイン及びメタクリル酸の一方又は両方、マレイン酸、フタル酸、スチレン、酸化エチレン、又はブタジエンの生成に適用することが、充填時における触媒の損壊に起因する所期の反応条件に対する反応条件の変動を抑制する観点からより効果的であり、不飽和炭化水素及びそれに対応する不飽和アルデヒドの一方又は両方から前記不飽和アルデヒド及びそれに対応する不飽和カルボン酸の一方又は両方を生成する気相接触酸化反応に適用することがより一層効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のプレート式反応器は、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に
並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有する。特に本発明は、プレート式反応器が除熱能力に優れており、原料を高線速で供給するような反応に好適であることから、反応原料が液である場合に比べて除熱のしにくいガスである場合に好適に用いることができる。伝熱プレートの枚数は、反応に用いられる触媒量によって決めることができ、反応生成物の工業的な製造の観点から、10〜300枚であることが好ましい。
【0024】
前記反応容器には、ガス状の原料(原料ガス)が供給され、生成ガスが排出され、かつ複数の伝熱プレートが並んで収容される容器を用いることができる。プレート式反応器は一般に加圧条件下の雰囲気での反応に用いられることから、前記反応容器は常圧から3MPa(メガパスカル)、好ましくは常圧から1,000kPa(キロパスカル)、より好ましくは常圧から300kPaの内圧に耐えられる耐圧性の容器であることが好ましい。このような反応容器としては、例えば円筒又は円筒の一部を組み合わせてなるシェル、複数の伝熱プレートが収容されるように板部材によって内部が区切られたシェル、及び、複数の伝熱プレートが収容されるように平面の内面を構成する部材によって囲まれてなる筐体状の内部を有する容器等が挙げられる。
【0025】
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含む。このように伝熱プレートは、並列する複数の伝熱管を含む板状体である。伝熱プレートにおいて、伝熱管は直接連結されていてもよいし、プレートやヒンジ等の適当な部材を介して間接的に連結されていてもよい。伝熱プレートは、伝熱管の断面形状を二分割した形状が直接又は間接的に連結してなる形状に、プレス成形やロール成形によって二枚の鋼板を成形し、それぞれの鋼板を接合することによって形成されることが、高い精度で安価に伝熱プレートを得る観点から好ましい。また伝熱プレートは、単一の種類の伝熱管のみを含んでいてもよいし、断面形状が異なる複数種の伝熱管を含んでいてもよい。
【0026】
前記伝熱プレートは、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられる。前記伝熱プレートにおいて、前記伝熱管の軸(伝熱管の長さ方向の軸)と鉛直方向とが形成する角度は、伝熱プレート間の隙間における反応状態を揃える観点から、120〜60°であることが好ましく、100〜80°であることがより好ましく、90°であることがさらに好ましい。例えば原料がガスである場合では、伝熱プレート間の隙間を流れるガスと伝熱管との間の熱伝達は、伝熱管による伝熱プレートの表面の凹凸がガスの流れの乱れの原因となり促進する。前記角度は、熱伝達の観点から90°付近であることが最も好ましい。しかし、流れるガスの圧力損失は、前記角度が90°のときに最も大きくなる。ガスの圧力損失を低く抑えたいときには、前記角度を90°以外の角度とすることが好ましい。この場合、隣り合った伝熱プレートで角度を反転させることが、ガスの流れや充填時の触媒を均等化する観点から好ましい。
【0027】
前記反応容器に設けられたときの伝熱プレートの鉛直方向における長さは、本発明の効果が得られる範囲であればよく、例えば0.5〜10mであることが好ましく、0.5〜5mであることがより好ましく、0.5〜3mであることがさらに好ましい。通常入手できる薄板鋼板のサイズから、1.5m以上の時は2枚のプレートを接合するか、組み合わせて用いることもできる。
【0028】
前記伝熱プレートの幅(すなわち伝熱管の長さ)は、気相接触反応における反応条件に基づいて決めることができる。例えば伝熱プレートの幅は、伝熱管を流れる熱媒による反応温度の制御の観点から、0.5〜20mであることが好ましく、3〜15mであることがより好ましく、6〜10mであることがさらに好ましい。
【0029】
伝熱プレートは、伝熱性を有する材料で形成される。このような材料としては、例えばステンレス及びカーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリン
グプラスチック及び銅が挙げられる。好ましくはステンレスが用いられる。ステンレスでは、304、304L、316、及び316Lが好ましい。
【0030】
伝熱プレートを構成する薄板の板厚は、2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0031】
前記伝熱管は、熱媒が流通することができ、伝熱性を有する管である。伝熱管の断面形状は特に限定されないが、伝熱管の断面形状としては、例えば、円形、楕円形やラグビーボール型等の略円形、円弧を対称に接続してなる葉形、及び矩形等の多角形が挙げられる。伝熱管の断面形状における周縁とは、円形における周縁を意味し、伝熱管の断面形状における端縁とは、略円形における長軸端の縁や、多角形における一角の縁を意味する。
【0032】
伝熱管の管径は、伝熱管と触媒との接触性の観点から決めることができる。例えば、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な粒径を考慮すると、水平方向における伝熱管の直径(波高H)は5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。鉛直方向における伝熱管の直径(波の周期L)は10〜100mmであることが好ましく、20〜50mmであることがより好ましい。
【0033】
なお、水平方向における伝熱管の半径は、伝熱管の軸に対する垂直断面において、伝熱プレートの軸から、伝熱管の表面のうちの最も伝熱プレートの軸から離れた表面までの水平方向の距離である。また、鉛直方向における伝熱管の半径は、伝熱管の軸に対する垂直断面において、鉛直方向における伝熱管の表面間の最長距離の半値である。
【0034】
本発明では、前記隙間に充填される触媒の最短粒径をD(mm)、対向する前記伝熱プレートの軸間の距離をP(mm)、対向する一方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh1(mm)、対向する他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh2(mm)とする。
【0035】
触媒の最短粒径Dは、触媒の粒子形状における最も短い部分を示す粒径である。例えば、触媒の粒子形状が外径5mm、内径2mm、高さ4mmのリング形状である場合は、Dは高さの4mmである。また例えば触媒の粒子形状が外径4mm、内径2mm、高さ5mmのリング形状である場合は、Dは外径の4mmである。また例えば、触媒の粒子形状が直径5mmの球状である場合は、Dは直径の5mmである。また例えば、触媒の粒子形状が直径5mm、高さ4mmの円柱形状(ペレット形状)である場合は、Dは高さの4mmである。
【0036】
前記触媒の形状としては、例えば円柱状、リング状、球状、円盤状、星型が挙げられる。触媒の最大粒径は、1〜20mmであることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましく、4〜8mmであることがさらに好ましい。
【0037】
対向する前記伝熱プレートの軸間の距離P(mm)は、充填される触媒の大きさに基づいて決めることができ、例えば、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な大きさを考慮すると、10〜50mmであることが好ましく、20〜35mmであることがより好ましい。ここで、伝熱プレートの軸とは、伝熱プレートにおいて全ての伝熱管が一鉛直線上で連結している場合はこの鉛直線を言い、全ての伝熱管の連結部が一鉛直線上にない場合は、それらの水平方向における中点を通る鉛直線を言う。
【0038】
対向する一方及び他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径h1、h2(mm)は、Pと同様に、充填される触媒の大きさに基づいて決めることができ、例えば、気相接触反応に用いられる粒子状の触媒の一般的な大きさを考慮すると、2.5〜2
5mmであることが好ましく、5〜15mmであることがより好ましい。h1とh2は同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
伝熱プレートにおける伝熱管の波の最も凸になっている部分同士が水平方向で向かい合っている場合はh1とh2は一意に定義できるが、伝熱管の波の最も凸になっている部分が鉛直方向(ガスの流れ方向)に互い違いに向かい合っている場合には、h1を有する一方の伝熱プレートにおける伝熱管に対して、伝熱プレートの軸方向においてこの伝熱管を挟む他方の伝熱プレートにおける2つの伝熱管の水平方向における半径のうちの大きい方をh2とする。
【0040】
このような伝熱プレートを用いたプレート式反応器としては、例えば、円弧、楕円弧、矩形又は多角形の一部に賦形された波板の2枚を対面させ、当該両波板の凸面部を互いに接合して複数の熱媒体流路を形成した伝熱プレートを、複数配列してなりかつ隣り合った伝熱プレートの波板凸面部と波板凹面部とが対面して所定間隔の触媒層を形成した反応器が好適に例示できる。
【0041】
触媒充填時に触媒の割れや粉化が多く発生すると、1)反応器の差圧が高くなり、反応の収率が落ちる、2)反応器にガスを供給するための圧縮機の必要動力が高まることにより多量のエネルギーを使用する必要が生じる、3)割れた触媒により触媒層内で閉塞が起こり、ガスの流れが均一にならないことにより異常反応が起こる、4)長期間運転した場合、割れた触媒がさらに粉化して、反応器の差圧が徐々に上昇して、反応を停止せざるを得なくなる、5)割れた触媒が後流に流れて行き、後ろのプロセスで閉塞を起こしたりするため、触媒の割れ及び粉化はできる限り少なくする必要がある。本発明者らの経験によれば、触媒充填時の割れ触媒率(実際に充填したときの触媒の割れ率)は5%以下、好ましくは3%以下に抑えると上記のような問題が発生しにくく、触媒充填時の粉化触媒率(実際に充填したときの粉化率)は5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下とすると上記のような問題が起こりにくい。
【0042】
ここで、実際に触媒を反応器に充填し、その触媒を金属等の硬いものにあたらないよう、袋等の柔軟な容器で受け止めて抜き出し、その抜き出した触媒を目開きa[mm]がD>a>3D/4である篩に掛けて割れた触媒を分離し、さらに目開きaの篩で通り抜けた触媒を目開きb[mm]がD/2>bである篩に掛けて粉化した触媒を分離したときに、目開きbの篩上に残ったものの重量割合を割れ触媒率、目開きbの篩から落ちたものの重量割合を粉化触媒率という。
【0043】
本発明では、前記隙間の鉛直方向における長さを前記隙間の全長としたときに、前記隙間の全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たす。前記隙間の全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たすことは、触媒の充填時における割れや粉化等の損壊を効果的に抑制することができる。これは、触媒の充填時に前記隙間を落下する触媒が、落下時に、適度に伝熱プレートの表面に接触し、触媒の割れや粉化が抑制される適切な速度で落下するためと考えられる。
6D>P−(h1+h2)>D (1)
【0044】
前記隙間の全長の5%以上の部分において、P−(h1+h2)がD以下である場合では、伝熱プレート間に投入された触媒が落下中にせり合って伝熱プレート間にブリッジと呼ばれる架橋を生じ、触媒の充填が非常に難しくなり、充填に支障をきたすことがある。また、前記隙間の全長の30%以上の部分において、P−(h1+h2)が6D以上である場合では、落下の衝撃により割れる触媒が多くなることがある。これは、触媒の充填時において、触媒が伝熱プレートの表面に十分に接触せずに落下する距離が長くなるためと考えられる。P−(h1+h2)は、前記隙間の全長の30%以上の部分において、充填
時における触媒の粉化と割れを抑制する観点から、4Dより小さく1.2Dより大きいことが好ましい。
【0045】
前記隙間は、全体で、前記式(1)を満たす部分を全長の50%以上有することが、充填時における触媒の粉化と割れを抑制する観点からより好ましい。また、前記式(1)を満たす部分は、前記隙間の上端から全長の30%以上の部分であることが、充填時における触媒の割れを抑制する観点から好ましく、上端から全長の50%以上であることがさらに好ましい。これは、前記隙間の上端側で前記式(1)を満たした場合、前記隙間の上端側で適度に触媒が減速して下方に落ちるためと考えられる。
【0046】
さらに本発明では、前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さない。前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さないことは、触媒の充填時において、触媒が前記隙間を落下したときの衝撃で割れることを効果的に抑制することができる。
6D≦P−(h1+h2) (2)
【0047】
また本発明では、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さない。前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないことによって、伝熱プレート間に投入された触媒が落下中にせり合って伝熱プレート間にブリッジが生じることを防止することができる。
P−(h1+h2)≧D (3)
【0048】
前記隙間において、P−(h1+h2)が6D以上である場合では、落下の衝撃による触媒の割れをさらに増大させることがある。これは、触媒の充填時において、触媒が伝熱プレートの表面にさらに接触しにくくなり、前記隙間における触媒の落下速度がより大きくなるためと考えられる。
【0049】
本発明のプレート式反応器は、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していてもよい。このような他の構成要素としては、例えば、伝熱管に熱媒を供給するための熱媒供給装置、前記隙間を鉛直方向に仕切って複数の区画を形成する仕切り、及び、通気性を有し、前記区画の端部を着脱自在に塞ぐ通気栓が挙げられる。
【0050】
前記熱媒供給装置は、前記反応容器に収容された伝熱プレートの伝熱管に、所望の温度の熱媒を供給するための装置である。熱媒供給装置は、気相接触反応を精密に制御する観点から好ましい。このような熱媒供給装置としては、例えば伝熱管とその外部との間で熱媒を循環させる循環流路と、この循環流路中の熱媒の温度を調整する温度調整装置とを有する装置が挙げられる。温度調整装置としては、例えば、熱交換器、及び前記循環流路中の熱媒に異なる温度の熱媒を混合するための熱媒混合装置が挙げられる。
【0051】
前記仕切りは、伝熱プレート間の隙間に鉛直方向に沿って設けられ、仕切りによって形成される区画からの触媒の漏れを防止するための部材である。仕切りは、区画毎に触媒を均一に充填することによって前記隙間に触媒を均一かつ容易に充填する観点から好ましい。仕切りは、触媒が区画に充填されたときに形状が保たれる程度の剛性をさらに有すると、伝熱プレート間の距離を保つスペーサとして用いることができる。前記仕切りとしては、例えば、ステンレス、カーボンスチール、ハステロイ、チタン、アルミニウム、エンジニアリングプラスチック及び銅製の板、角棒、丸棒、網;グラスウール;及びセラミック板;が挙げられる。
【0052】
この仕切りの設置間隔は5cm〜2mであることが好ましく、10cm〜1mであることがより好ましく、20cm〜50cmであることが、特に好ましい。また、伝熱プレー
トと仕切り間の区画の容積は、隙間への充填物の充填を区画単位で行い、充填物の正確かつ容易な充填を行う観点から、1〜100Lが好ましく、1.5〜30Lであることがより好ましく、2〜15Lであることが特に好ましい。
【0053】
前記通気栓は、前記区画の鉛直方向における端部を前記区画毎に自在に開閉するための部材である。通気栓は、区画毎に触媒を容易に抜き出す観点から好ましい。前記通気栓としては、例えば、前記区画の端部を覆う通気板と、この通気板に設けられ、伝熱プレート又は仕切りに着脱自在に係止し、前記区画の上方又は下方からこの係止を解除することができる係止部材とを有する部材が挙げられる。
【0054】
本発明のプレート式反応器では、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成される。
【0055】
前記触媒には、多管式反応器又はプレート式反応器において気相接触反応に用いることができる粒子状の触媒を用いることができる。触媒は、気相接触反応の種類に基づいて決めることができ、触媒には、金属酸化物の粉末を所定の形状に固めた成形品やその焼成品が挙げられる。例えば、気相接触反応がプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン(アクロレイン又はメタクロレイン)及び(メタ)アクリル酸(アクリル酸又はメタクリル酸)の一方又は両方を生成する反応である場合では、特開2003−252807号公報や特許文献2及び3に記載されているような、Mo−V−Te系複合酸化物触媒、Mo−V−Sb系複合酸化物触媒、Mo−Bi系複合酸化物触媒、及びMo−V系複合酸化物触媒が前記触媒として挙げられる。
【0056】
前記触媒には、例えば球状、円柱状、ラシヒリング状の触媒を用いることができる。また前記触媒には、例えば長径及び短径(D)がそれぞれ1〜20mmである触媒を用いることができる。
【0057】
前記触媒は、落下割れ率が10%以下であることが、充填時における触媒の割れを抑制する観点から好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。前記落下割れ率は、JISZ8841−93に準拠して求めることができる。より具体的には、前記落下割れ率は、特許文献2にも記載されているように、垂直に立てた内径25mm、長さ5mのステンレス鋼製のパイプの上部から触媒50gを落下させ、厚さ2mmのステンレス製の板で受け止めた後、目開きa[mm]がD>a>3D/4である篩で割れた触媒を篩い分けし、篩上に残った触媒の重量を測定し、下記の式から求めることができる。
落下割れ率(%)=(落下させた触媒重量−篩上に残った触媒重量)/落下させた触媒重量×100
【0058】
また前記触媒は、粉化率が10%以下であることが、充填時における触媒の粉化を抑制する観点から好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。前記粉化率も、JISZ8841−93に準拠して求めることができる。より具体的には、前記落下割れ率は、特許文献3にも記載されているように、底面の直径200mm、高さが150mmの円筒であり、内周面に高さ方向全体にわたる、突出高さ10mm、厚さ6mmの羽を1枚有する円筒状のステンレス製密閉容器に触媒を100g入れ、このステンレス製容器を、その中心軸を水平にし、この軸を中心として60rpmで5分間回転させ、ステンレス製密閉容器内の触媒を取り出し、目開きb[mm]がD/2>bの篩にかけ、篩上に残った触媒の重量(g)を測定し、下記式から求めることができる。
粉化率(%)=(初めに容器内に入れた触媒重量(g)−篩上に残った触媒重量(g))/初めに容器内に入れた触媒重量(g)×100
【0059】
本発明のプレート式反応器は、粒子状の触媒を含む充填層を通過する流動性を有する原料を前記触媒の存在下で反応させる接触反応に用いることができる。原料としては、例えば液体や気体が挙げられる。本発明のプレート式反応器は、粒子状の触媒の存在下における気相接触反応に、より好適に用いることができる。このように、本発明は、粒子状の触媒の存在下であって、伝熱管を流れる熱媒によって制御することができる、発熱を伴う気相接触反応又は吸熱を伴う気相接触反応によって生成物を生成する方法に適用することができる。このような気相接触反応は、使用する触媒や原料、及び反応条件に係る公知の技術に基づいて行うことができる。
【0060】
前記発熱を伴う気相接触反応としては、例えば、不飽和炭化水素及びそれに対応する不飽和アルデヒドの一方又は両方から前記不飽和アルデヒド及びそれに対応する不飽和カルボン酸の一方又は両方を生成する気相接触酸化反応が挙げられ、さら具体的には、例えば、プロピレン又はイソブチレンからアクロレイン及びアクリル酸又はメタクロレイン及びメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応、及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸を生成する気相接触酸化反応が挙げられる。
【0061】
発熱を伴う気相接触反応としては、としては、例えば:エチレンと酸素から酸化エチレンを生成する反応;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種と酸素から、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方を生成する反応;炭素数4以上の脂肪族炭化水素と酸素からマレイン酸を生成する反応;o−キシレンと酸素からフタル酸を生成する反応;オレフィンの水素化によりパラフィンを生成する反応;カルボニル化合物の水素化によりアルコールを生成する反応;及び、ブテンの酸化脱水素によってブタジエンの生成する反応;が挙げられる。また吸熱を伴う気相接触反応としては、例えば、エチルベンゼンの脱水素によりスチレンを生成する反応、が挙げられる。さらに液相接触反応としては、例えばクメンハイドロパーオキサイドの酸分解によりアセトンとフェノールを生成する反応が挙げられる。本発明における接触反応では、前述した以外の原料をさらに用いてもよい。
【0062】
本発明のプレート式反応器は、気相接触酸化反応によるアクリル酸又はメタクリル酸((メタ)アクリル酸)の製造に特に好適に用いることができる。すなわち、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン(アクロレイン又はメタクロレイン)及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造する方法において、本発明のプレート式反応器を好適に用いることができる。
【0063】
本発明において、熱媒の温度は、反応条件に基づいて、例えば前記の(メタ)アクリル酸の製造では、200〜600℃の範囲から決めることができる。
【0064】
プレート式反応器は、一般に、所期の生産性を達成し得る予め設定された反応条件に応じて製作される。しかしながら、所期の反応条件以外の反応条件で使用する場合では、プレート式反応器の構成に応じて、充填される触媒の粒径等の、所望の反応条件を達成するための諸条件が調整される。
【0065】
本発明における触媒の充填方法は、プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒を充填する方法であって、前記プレート式反応器には、ガス状の原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝
熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器を用い、前記触媒には、前記隙間の全長の30%以上の部分が前記式(1)を満たし、かつ、前記隙間が前記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さず、かつ、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないDを有する前記触媒を用いる。
【0066】
本発明では、充填時における触媒の割れや粉化等の損壊を抑制する観点から、触媒は、50〜5,000mL/分の速度で前記隙間に充填されることが好ましく、100〜3,000mL/分の速度で前記隙間に充填されることがより好ましい。
【0067】
本発明におけるプレート式反応器は、例えば図1に示す構造を有する。すなわち前記プレート式反応器は、対向して並ぶ伝熱プレート1を有する。伝熱プレート1は、伝熱プレート1の軸が鉛直方向に沿うように配置され、一方の伝熱プレート1の表面における凸縁が、他方の伝熱プレート1の表面における凹縁に対向するように配置されている。伝熱プレート1間の隙間には、触媒が充填されることによって触媒層2が形成される。触媒層2には、上方から下方に向けて原料ガスが供給される。よって、対向する伝熱プレート1間の隙間の上端がガス入り口3であり、前記隙間の下端がガス出口4である。
【0068】
伝熱プレート1は、複数の伝熱管がその断面形状の周縁で連結する形状に形成されている。前記伝熱管には、水平方向の半径が異なる三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。伝熱プレート1の軸方向において、前記半径が最も大きな伝熱管5−1は伝熱プレート1の上部に配置され、前記半径が二番目に大きな伝熱管5−2は伝熱プレート1の中部に配置され、前記半径が最も小さな伝熱管5−3は伝熱プレート1の下部に配置されている。
【0069】
そして、触媒層2には、伝熱管5−1で挟まれ、幅が最も狭く、供給された原料ガスが最初に到達する第一反応帯域と、伝熱管5−2で挟まれ、幅が二番目に狭く、第一反応帯域を通ったガスが到達する第二反応帯域と、伝熱管5−3で挟まれ、幅が最も広く、第二反応帯域を通ったガスが到達する第三反応帯域とが形成される。
【0070】
図1において、対向する伝熱プレート1はそれぞれ同じ構造である。したがって、図1に示す構造を有するプレート式反応器では、伝熱管の水平方向における直径をHとすると、本発明におけるP−(h1+h2)は、図2に示すように、P−Hとなる。
【0071】
触媒層2を形成する触媒には、例えば、外径5mm、内径2mm、高さ4mmのリング形状の触媒が用いられる。この場合、本発明における触媒の最短粒径Dは高さの4mmである。例えば、前記隙間における第一及び第二反応帯域の長さがそれぞれ30%であり、前記隙間における第三反応帯域の長さが40%であるとすると、少なくとも前記第一反応帯域において、P−Hは4mmより大きく24mmより小さく、かつ第三反応帯域において、P−Hは24mmを超えない。前記第一、第二、第三反応帯域においてP−Hは4mmより大きく24mmより小さいと、触媒の充填による損壊をより一層抑制することができる。
【0072】
また例えば、前記隙間における第一及び第二反応帯域の長さがそれぞれ40%であり、前記隙間における第三反応帯域の長さが20%であるとすると、少なくとも第一反応帯域においてP−Hは4mmより大きく24mmより小さければ、第三反応帯域において、P−Hは24mmを超えていてもよい。
【0073】
さらに例えば、前記隙間における第一及び第二反応帯域の長さがそれぞれ30%であり、前記隙間における第三反応帯域の長さが40%であり、かつP−Hが第一反応帯域で6
mm、第二反応帯域で10mm、第三反応帯域で16mmとすると、触媒には、2.7mmよりも大きく6mmより小さい最短粒径Dを有する触媒を用いることができる。
【0074】
本発明におけるプレート式反応器は、前述した構造を有する以外は、通常のプレート式反応器を同様に構成される。このようなプレート式反応器としては、例えば図3〜5に示すように、矩形のケーシング6と、伝熱管5を有し、ケーシング6内に対向して並んで設けられる複数の伝熱プレート1と、伝熱管5に熱媒を供給するための熱媒供給装置と、隣り合う伝熱プレート1間の隙間をケーシング6内の通気方向に沿って、触媒が充填され保持される複数の区画に仕切る複数の仕切り7と、通気性を有し各区画の下端部を塞ぐ複数の通気栓8と、伝熱プレート1の上部に設けられる穴あき板9とを有するプレート式反応器が挙げられる。
【0075】
ケーシング6は、断面形状が矩形の通気路を形成しており、前記反応容器に相当する。ケーシング6は、ケーシング6の上端及び下端に、対向する一対の通気口10、10’を有しており、通気口10を含むケーシング端部11と、通気口10’を含むケーシング端部11’と、伝熱プレート1が収容されるケーシング本体とから構成されている。ケーシング端部11、11’は、ケーシング本体に対して着脱自在にそれぞれ接続されている。
【0076】
伝熱プレート1は前述した伝熱プレートである。伝熱管5も前述した伝熱管であり、二つの円弧が対称に両端で接続してなる葉形の断面形状と伝熱性を有する管である。伝熱管5には、前述したように、三種の伝熱管5−1〜5−3が用いられている。
【0077】
前記熱媒供給装置は、ケーシング6の対向する一対の壁に設けられている。この壁には各伝熱管5に熱媒を供給するための供給口が形成されている。熱媒供給装置は、例えば図3に示すように、一対のジャケット12と、一方のジャケット12の内外で熱媒を循環させる循環流路13と、循環流路13に設けられるポンプ14と、循環流路13中の熱媒の温度を調整するための熱交換器15と、ジャケット4中の熱媒にさらに熱媒を混合するための熱媒混合装置とから構成される。ジャケット12は、例えば反応容器全体において、熱媒が伝熱管5を介してジャケット12間を蛇行するように、所定の高さにおいて複数に区切られている。
【0078】
前記熱媒混合装置は、例えば図6に示すように、ジャケット12内外を連通するノズル16と、ジャケット12内部においてノズル16に連結し、ジャケット12内の熱媒の流れ方向に対して直交する方向に延出する分配管17とを有する。分配管17は、先端が塞がれており、分配管の長手方向の全体にわたって複数の孔が設けられている管である。
【0079】
仕切り7は、図7に示すように、伝熱プレート1の表面の凹凸に密着する側縁を有する形状のステンレス製の板であり、下端部に横長の矩形の窓18を有している。仕切り7は、対向する伝熱プレート1間の隙間に鉛直方向に沿って設けられている。仕切り7は、所定の容積の区画を前記隙間に形成するように等間隔で設けられている。
【0080】
通気栓8は、図8に示すように、各区画の断面形状の同じ矩形の通気板19と、通気板19の短辺から下方に垂設される第一のスカート部20と、通気板19の長辺から下方に垂設される第二のスカート部21とを有している。第一のスカート部20には、矩形の係止窓22と、その隣に併設される係止爪23とが形成されている。
【0081】
通気板19は例えば2mmの円形の孔が開口率30%で形成された板である。係止窓22は、係止爪23を収容する幅と高さを有する大きさで形成されている。また係止爪23は、第一のスカート部20の下端縁からの平行な二本の切り込みを外側に凸に折り曲げて形成されている。対向する一対の第一のスカート部20において、一方の係止窓22と他
方の係止爪23とが対向し、一方の係止爪23と他方の係止窓22とが対向している。仕切り7の窓18は、係止窓22と係止爪23とが同時に含まれる幅及び高さを有する大きさで形成されている。
【0082】
通気栓8は、各区画の下端から通気板19を上に各区画に挿入されている。通気栓8の挿入時において、係止爪23は、外側への付勢に抗して仕切り7に押さえられるが、窓18に到達したときに、図9に示すように、仕切り7の押さえつけから開放されて窓18に向けて進出し、窓18に係止する。
【0083】
穴あき板9は、例えば、充填される触媒の最長径に対して0.3〜0.8倍の径を有する孔が20〜40%の開口率で設けられている板である。穴あき板9は、最も外側に配置される伝熱プレート1とケーシング6の壁との間の隙間への通気を防止するために、図3に示すように、最も外側に配置されている伝熱プレート1の端縁からケーシング6の壁までの隙間を塞ぐように形成されている。
【0084】
このプレート式反応器において、伝熱プレート1間の隙間への触媒の充填は、伝熱プレート1の上方から各区画へ、区画の容積に応じた量の触媒を充填することによって行われる。各区画の容積は前記隙間に比べて十分に小さいので、容易に触媒を均等に充填することができ、その結果、全隙間に触媒が容易かつ均等に充填される。さらに、伝熱プレート1間の隙間が触媒の最短粒径に対して前述した特定の関係を満足することから、充填時における割れや粉化等の触媒の損傷が効果的に抑制される。
【0085】
触媒は、通気栓8を前記隙間から外すことによって区画毎に抜き出すことができる。通気栓8は、隣りの区画の下端から係止爪23を押して、係止爪23の窓18への係止を解除することによって外される。このように、触媒の充填は区画毎に容易にやり直すことができ、触媒を均等かつ容易に充填する観点からより一層効果的である。
【0086】
触媒が充填されたプレート式反応器では、例えば前記隙間に上方から下方へ原料ガスが供給され、伝熱管5に熱媒が供給されることによって、反応生成物が製造される。例えば、において、プロピレン、空気、及び水蒸気からなる原料ガスを通気口10から供給し、300〜350℃の熱媒を熱媒供給装置から伝熱管5へ、例えば下から上に向けて供給することによって、アクロレイン及びアクリル酸が生成し、生成したアクロレイン及びアクリル酸は通気口10’から排出される。反応時におけるプレート式反応器の内圧は例えば150〜200kPa(キロパスカル)である。酸化に伴う発熱は伝熱管5内を流れる熱媒に吸収される。
【0087】
熱媒の温度は、伝熱管5に熱媒が順次通ることによって、また熱交換器15によって、さらに前記熱媒混合装置からジャケット12内の熱媒に所定の温度の熱媒を混合することによって調節される。例えば、反応原料が炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種である場合は、伝熱管に供給される熱媒の温度は250〜450℃であることが好ましく、300〜420℃であることがより好ましい。前記反応原料がプロピレンである場合は、伝熱管に供給される熱媒の温度は250〜400℃であることが好ましく、320〜400℃であることがより好ましい。前記反応原料が、炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる反応原料の少なくとも1種である場合は、伝熱管に供給される熱媒の温度は200〜350℃であることが好ましく、250〜330℃であることがより好ましい。前記反応原料がアクロレインである場合は、伝熱管に供給される熱媒の温度は200〜350℃であることが好ましく、250〜320℃であることがより好ましい。
【0088】
なお、断熱形状の大きさの異なる複数の伝熱管を用いて、伝熱プレート間の隙間におけ
る触媒層に、触媒層の厚さの異なる複数の反応帯域を設ける場合は、これらの反応帯域のそれぞれには、前記の範囲内で異なる温度の熱媒が伝熱管に供給される。
【0089】
前記プレート式反応器では、充填時における触媒の割れや粉化が抑制されることから、ガスの供給によるプレート式反応器の内圧の上昇等の、触媒層2における触媒の損壊に起因する、設計時の反応条件に対する実際の反応条件の隔たりを生じさせる現象が抑制され、例えば原料にプロパン又はプロピレンを用いた気相接触酸化反応に前記プレート式反応器を用いた場合では、アクロレイン及びアクリル酸の製造を所期の高い効率で行うことができる。
【実施例】
【0090】
[プレート式反応器の製作]
プレート式反応器には図1に示す構造を有する反応器を用いた。伝熱プレートについては、伝熱プレートが配置されたときに原料ガスの流れる方向に沿って、上流側から第一、第二、及び第三反応帯域を形成する三種の波形を有するように厚さ1mmのステンレスプレートを成形し、得られた波型形状のステンレスプレートを2枚接合して、反応温度調節用の熱媒体流路となる伝熱管が複数連なってなる伝熱プレートを形成した。伝熱プレートにおける波形の周期(L)、波高(H)及び波数を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に示した伝熱プレートの一対を、図1及び2に示すように、一方の伝熱プレートの凸縁と他方の伝熱プレートの凹縁とが対向するように所定の間隔で配置し、その間隔(図2に示すP)が異なる3種類の反応器A〜Cを製作した。反応器Aでは伝熱プレートの軸間の距離(P)を26mmに設定し、反応器Bでは伝熱プレートの軸間の距離(P)を23mmに設定し、反応器Cでは伝熱プレートの軸間の距離(P)を35mmに設定した。伝熱プレートの幅(伝熱管の長さ)は、反応器A〜Cのいずれも114mmであった。また、h1=h2=H/2であった。
【0093】
[触媒の調製]
プロピレンを分子状酸素により接触気相酸化し、アクロレイン及びアクリル酸に転換するのに用いられる触媒として、Mo12Bi5Co3Ni2Fe0.4Na0.40.20.08Si24xの組成の金属酸化物粉末を調製した。ここでOxのxは各金属酸化物の酸化状態により決まる数である。得られた粉末を成形して外径5mm、内径2mm、高さ4mmのリング形状の成形品を得た(このとき最短粒径D=4mmである。)得られた成形品を空気存在下で510℃、4時間焼成を行い、複合酸化物触媒Aを得た。また、前記粉末を成形して外径4mm、高さ3mmの円柱状の成形品を形成し、得られた成形品を同様に焼成して触媒Bを得た(このとき最短粒径D=3mmである。)得られた触媒A及びBの落下割れ率と粉化率とを以下に示す方法によって求めた。
【0094】
<触媒の落下割れ率の測定>
垂直に立てた内径25mm、長さ5mのステンレス鋼製のパイプの上部から触媒50gを落下させ、厚さ2mmのステンレス製の板で受け止めた後、触媒Aは目開き3.35mmの篩で割れた触媒を篩い分けし、触媒Bは目開き2.36mmの篩上に残った触媒の重量を測定した。落下割れ率は次の式によって求めた。
落下割れ率(%)=(落下させた触媒重量−篩上に残った触媒重量)/落下させた触媒重量×100
【0095】
<触媒の粉化率の測定>
底面の直径200mm、高さが150mmの円筒であり、内周面に高さ方向全体にわたる、突出高さ10mm、厚さ6mmの羽を1枚有する円筒状のステンレス製密閉容器に触媒を100g入れ、このステンレス製容器を、その中心軸を水平にし、この軸を中心として60rpmで5分間回転させた。その後ステンレス製密閉容器内の触媒を取り出し、目開き1mmの篩にかけたときの、篩上に残った触媒の重量(g)を測定した。そして、初めにステンレス製密閉容器に入れた触媒の重量(g)と、目開き1mm、の篩上に残った触媒の重量(g)とに基づいて、下記式から粉化率(%)を算出した。
粉化率(%)=(初めに容器内に入れた触媒重量(g)−篩上に残った触媒重量(g))/初めに容器内に入れた触媒重量(g)×100
【0096】
触媒Aの落下割れ率は7.8%であり、粉化率は6.9%であった。また、触媒Bの落下割れ率は8.2%であり、粉化率は7.3%であった。
【0097】
[実施例1]
3Lの触媒Aを反応器Aにおける伝熱プレート間の隙間に毎分250mLの速度で充填して触媒層を形成した。触媒層には、波形形状の仕様によって、原料ガスの流れ方向の上流から、P−(h1+h2)(=P−H)の値が異なる三つの反応帯域、すなわち第一反応帯域(S1)、第二反応帯域(S2)及び反応帯域(S3)が形成された。この時、S1、S2、S3(併せて全長の100%)は 式(1)を満たし、式(2)及び(3)を満たす部分はなかった。
【0098】
充填した触媒Aを反応器Aの下部から抜き出して、抜き出した触媒を目開き3.35mmの篩に掛けて割れた触媒を分離し、さらに目開き3.35mmの篩で通り抜けた触媒を目開き1mmの篩に掛けて粉化した触媒を分離した。割れ触媒率及び粉化触媒率を次の式によって求めた。割れ触媒率は2.6%、粉化触媒率0.7%であった。
割れ触媒率(%)=1mmの篩上の触媒重量/充填した触媒の重量×100
粉化触媒率(%)=1mmの篩下の触媒重量/充填した触媒の重量×100
【0099】
[比較例1]
2.7Lの触媒Aを反応器Bにおける伝熱プレート間の隙間に毎分250mLの速度で充填して触媒層を形成した。この時、すぐにブリッジングが起こり触媒の充填がうまくできなかった。この時、S1(全長の約35%)は 式(3)を満たし、S2、S3(併せて全長の約65%)は式(1)を満たし、式(2)に該当する部分はなかった。
【0100】
このように伝熱プレートの間隔が狭いと、充填がうまくできないことがわかった。
【0101】
[比較例2]
4Lの触媒Aを反応器Cにおける伝熱プレート間の隙間に毎分250mLの速度で充填して触媒層を形成した。この時、S1、S2(全長の約60%)は 式(1)を満たし、残りの、全長の約40%であるS3は式(2)を満たしており、式(3)を満たす部分はなかった。充填した触媒を反応器Cの下部から抜き出して、実施例1と同様に篩に掛けて割れ触媒率と粉化触媒率を求めた。割れ触媒率は5.4%で、粉化触媒率は0.9%であ
った。
【0102】
このように伝熱プレートの間隔が広いと、触媒はプレートの波に当たりにくいため、触媒は粉化しにくいものの、長距離を落下するため触媒が割れやすくなることがわかった。
【0103】
[実施例2]
3Lの触媒Bを反応器Aにおける伝熱プレート間の隙間に毎分250mLの速度で充填して触媒層を形成した。この時、S1、S2、S3(全長の100%)は 式(1)を満たし、式(2)は該当せず、(3)を満たす部分はなかった。充填した触媒を反応器Aの下部から抜き出して、抜き出した触媒を目開き2.36mmの篩に掛けて割れた触媒を分離し、さらに目開き2.36mmの篩で通り抜けた触媒を目開き1mmの篩に掛けて粉化した触媒を分離した。割れ触媒率及び粉化触媒率を次の式によって求めた。割れ触媒率は2.2%で、粉化触媒率は0.9%であった。
割れ触媒率(%)=1mmの篩上の触媒重量/充填した触媒の重量×100
粉化触媒率(%)=1mmの篩下の触媒重量/充填した触媒の重量×100
【0104】
[比較例3]
4Lの触媒Bを反応器Cにおける伝熱プレート間の隙間に毎分250mLで充填して触媒層を形成した。この時、S1(全長の約35%)は 式(1)を満たし、全長の約65%であるS2、S3は式(2)を満たし、式(3)を満たす部分はなかった。充填した触媒を反応器Cの下部から抜き出して、実施例2と同様に篩に掛けて割れ触媒率と粉化触媒率を求めた。割れ触媒率は5.2%で、粉化触媒率は1.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
気相接触反応において、充填時における触媒の損壊は、設計時の反応条件に対する誤差をもたらす要因の一つである。本発明は、プレート式反応器において、充填時の触媒の損壊を抑制することができることから、設計時の反応条件に対する誤差をより一層抑制することができ、従来のプレート式反応器を用いる場合に比べて、反応生成物の製造における反応の効率の改善が期待される。さらに、プレート式反応器において充填時の触媒の粉化を抑制することができることから、粉化した触媒による伝熱プレート間の隙間の汚染も抑制され、また伝熱プレート間の隙間の清掃の手間が削減される。このため、プレート式反応器の保守作業の作業性の向上も期待され、その結果、このような作業を含む中、長期的な期間における反応生成物の生産性の向上も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明のプレート式反応器の一例の要部を概略的に示す図である。
【図2】図1のプレート式反応器における伝熱プレートの間隔及び伝熱管の管径を説明する図である。
【図3】本発明のプレート式反応器の一実施の形態における構成を概略的に示す図である。
【図4】図3のプレート式反応器をA−A’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図5】図3のプレート式反応器をB−B’線に沿って切断したときの断面を示す図である。
【図6】図3のプレート式反応器における熱媒混合装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】図3のプレート式反応器における仕切り7を示す図である。
【図8】図3のプレート式反応器における通気栓8の斜視図である。
【図9】仕切り7への通気栓8の係止状態を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
1 伝熱プレート
2 触媒層
3 ガス入り口
4 ガス出口
5、5−1、5−2、5−3 伝熱管
6 ケーシング
7 仕切り
8 通気栓
9 穴あき板
10、10’ 通気口
11、11’ ケーシング端部
12 ジャケット
13 循環流路
14 ポンプ
15 熱交換器
16 ノズル
17 分配管
18 窓
19 通気板
20 第一のスカート部
21 第二のスカート部
22 係止窓
23 係止爪
P 一対の伝熱プレートの軸間の間隔
L 波の周期
H 水平方向における伝熱管の直径(波高)
h1、h2 伝熱管の水平方向における半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、
前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、
隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器において、
前記隙間に充填される触媒の最短粒径をD(mm)、対向する前記伝熱プレートの軸間の距離をP(mm)、対向する一方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh1(mm)、対向する他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh2(mm)とし、前記隙間の鉛直方向における長さを前記隙間の全長としたときに、
前記隙間の全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たし、かつ、前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さず、かつ、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないことを特徴とするプレート式反応器。
6D>P−(h1+h2)>D (1)
6D≦P−(h1+h2) (2)
P−(h1+h2)≦D (3)
【請求項2】
前記隙間は、前記式(1)を満たす部分を全長の50%以上有することを特徴とする請求項1に記載のプレート式反応器。
【請求項3】
前記触媒の落下割れ率が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレート式反応器。
【請求項4】
前記触媒の粉化率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレート式反応器。
【請求項5】
原料を反応させるための反応容器に並んで設けられる複数の伝熱プレートを有し、前記伝熱プレートが断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含むプレート式反応器を用いて、原料から接触反応によって反応生成物を製造する方法であって、隣り合う伝熱プレート間の隙間に触媒を落下させることによって形成される触媒層に前記原料を通す工程と、前記伝熱管に所望の温度の熱媒を供給する工程とを含み、
前記原料が、エチレン;炭素数3及び4の炭化水素、並びにターシャリーブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種;炭素数4以上の脂肪族炭化水素;o−キシレン;オレフィン;カルボニル化合物;クメンハイドロパーオキサイド;ブテン;又はエチルベンゼン;であり、
得られる前記反応生成物が、酸化エチレン;炭素数3及び4の不飽和脂肪族アルデヒド及び炭素数3及び4の不飽和脂肪酸の少なくとも一方;マレイン酸;フタル酸;パラフィン;アルコール;アセトン及びフェノール;ブタジエン;又はスチレン;である方法において、
前記プレート式反応器に、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレート式反応器を用いることを特徴とする生成物の製造方法。
【請求項6】
前記原料がプロピレン又はイソブチレンであり、分子状酸素含有ガスを用いてプロピレン又はイソブチレンを酸化し、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸の一方又は両方を製造することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
プレート式反応器における伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒を充填する方法であっ
て、
前記プレート式反応器には、原料を反応させるための反応容器と、前記反応容器内に並んで設けられる複数の伝熱プレートとを有し、前記伝熱プレートは、断面形状の周縁又は端縁で鉛直方向に連結している複数の伝熱管を含み、前記伝熱管が鉛直方向に連結するように前記反応容器に設けられ、隣り合う伝熱プレート間の隙間に粒子状の触媒が落下、充填されることによって前記隙間に触媒層が形成されるプレート式反応器を用い、
前記触媒には、前記触媒の最短粒径をD(mm)、対向する前記伝熱プレートの軸間の距離をP(mm)、対向する一方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh1(mm)、対向する他方の伝熱プレートにおける伝熱管の水平方向における半径をh2(mm)とし、前記隙間の鉛直方向における長さを前記隙間の全長としたときに、
前記隙間の上端から全長の30%以上の部分が下記式(1)を満たし、かつ、前記隙間が下記式(2)を満たす部分を全長の30%以上有さず、かつ、前記隙間が下記式(3)を満たす部分を全長の5%以上有さないDを有する触媒を用いることを特徴とする、触媒の充填方法。
6D>P−(h1+h2)>D (1)
6D≦P−(h1+h2) (2)
P−(h1+h2)≦D (3)
【請求項8】
前記触媒には、落下割れ率が10%以下である触媒を用いることを特徴とする請求項7に記載の触媒の充填方法。
【請求項9】
前記触媒には、粉化率が10%以下である触媒を用いることを特徴とする請求項7又は8に記載の触媒の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−155188(P2010−155188A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334069(P2008−334069)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】