説明

プレート式熱交換器用の伝熱プレート及びプレート式熱交換器

【課題】組み立てや分解を行うときのハンドリング性を向上させることのできるプレート式熱交換器用の伝熱プレートを提供することを課題とする。
【解決手段】プレス成形によって略長方形状の金属プレートの両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成されるとともに前記凹条及び凸条を含む領域に流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が形成され、該ガスケット装着溝が金属プレートの長手方向と直交する幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有するプレート式熱交換器用の伝熱プレートにおいて、幅方向内側で各ストレート部に沿った所定範囲にある凹条及び凸条は、幅方向内側にある前記所定範囲の境界を基準とする幅方向内側の対称位置にある凹条及び凸条に対して逆向きに傾斜していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換媒体と被熱交換媒体とを熱交換させるプレート式熱交換器用の伝熱プレート及びプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱交換媒体と被熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器として、複数枚の伝熱プレートが積層され、隣り合う伝熱プレート間にガスケットを介装されることで、各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成されたガスケットタイプのプレート式熱交換器が提供されている。
【0003】
前記伝熱プレートは、略長方形状の金属プレートをプレス成形したもので、金属プレートの両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成されるとともに、前記凹条及び凸条を含む領域に熱交換媒体又は被熱交換媒体を流通させる流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が形成されている。また、該伝熱プレートは、長手方向の一端側及び他端側に流路形成用の開口が二つずつ形成されている。
【0004】
前記ガスケット装着溝は、前記金属プレートの長手方向と直交する方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有しており、金属プレートの面上で長手方向の一端側及び他端側の開口を一つずつ含む所定領域を包囲するように形成されている。これにより、前記伝熱プレートは、一対のストレート部間が長手方向の延びる伝熱部(熱交換を行うための領域)になるように構成されている。
【0005】
そして、この種のプレート式熱交換器は、積層された複数枚の伝熱プレートを締付手段で積層方向に締め付けることで、ガスケット装着溝に装着されて伝熱プレート間にあるガスケットが両側の伝熱プレートに密接するとともに隣り合う伝熱プレートの凸条同士が交差衝合し、前記第一流路及び前記第二流路がそれぞれ液密な状態で形成されるようになっている。また、該プレート式熱交換器は、各伝熱プレートの一端側及び他端側の開口が積層方向に連なって第一流路に熱交換媒体を流出入させる一対の流路が第二流路に対して遮断された状態で形成されるとともに、第二流路に被熱交換媒体を流出入させる一対の流路が第一流路に対して遮断された状態で形成されるようになっている。
【0006】
そして、この種のプレート式熱交換器は、伝熱プレートに対する締め付けを解除することで、伝熱プレート及びガスケットを分解することができ、ガスケットの交換や伝熱プレートの伝熱部(第一流路及び第二流路を画定する領域)の清掃等を行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−127599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成のプレート式熱交換器は、比較的大型であり、組み立てや分解をする場合に、作業者は、重量物である伝熱プレートをバランスよく確実に持てる姿勢、すなわち、長手方向を上下方向にした姿勢で長手方向の中間部に位置する幅方向の両端部を持って作業を行うが、伝熱プレートが重量物である上に該伝熱プレートの上下方向の長さが長いことから、作業者が伝熱プレートを持ったときに把持位置を支点にして伝熱プレートが湾曲してしまい、組み立て時や分解時のハンドリング性が悪いといった問題がある。
【0009】
特に、伝熱性能を高めるべく伝熱プレートが薄板で構成されると、剛性が低くなるため、作業者が伝熱プレートを持ったときの湾曲が顕著になり、非常に扱い難いといった問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、組み立てや分解を行うときのハンドリング性を向上させることのできるプレート式熱交換器用の伝熱プレート、及びプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプレート式熱交換器用の伝熱プレートは、プレス成形によって略長方形状の金属プレートの両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成されるとともに前記凹条及び凸条を含む領域に流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が形成され、該ガスケット装着溝が金属プレートの長手方向と直交する幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有するプレート式熱交換器用の伝熱プレートにおいて、幅方向内側で各ストレート部に沿った所定範囲にある凹条及び凸条は、幅方向内側にある前記所定範囲の境界を基準とする幅方向内側の対称位置にある凹条及び凸条に対して逆向きに傾斜していることを特徴とする。
【0012】
上記構成のプレート式熱交換器用の伝熱プレートによれば、作業者が把持することになる幅方向の両端部の長手方向の剛性が高くなり、作業者が長手方向と直交する両端部を把持したときの撓みが抑制される。より具体的には、ガスケット装着溝の一部であるストレート部は、金属プレートの幅方向の両端縁近傍に配置されるため、幅方向内側で各ストレート部に沿った所定範囲は作業者の把持位置を含むことになる。そして、所定範囲内の凹条及び凸条が前記所定範囲の境界を基準とする幅方向内側の対称位置にある凹条及び凸条に対して逆向きに傾斜することで、当該所定範囲内の凹条及び凸条は、所定範囲外にある凹条及び凸条に対して交差する方向に延びるため、所定範囲外にある凹条及び凸条の形成される領域の曲げ作用に対して対抗することになる。従って、幅方向の両側にあるストレート部近傍において長手方向の曲げ剛性が高くなるため、作業者が幅方向の両端部を把持したときの長手方向の湾曲が抑制される。
【0013】
本発明の一態様として、前記所定範囲の凹条及び凸条は、前記幅方向に延びる仮想線に対して45°又は略45°で傾斜していることが好ましい。このようにすれば、伝熱プレート(金属プレート)の所定範囲における長手方向及び幅方向の断面係数が等しく又は略等しくなり、当該所定範囲の剛性が高くなる。また、プレート式熱交換器は、複数枚の伝熱プレートを積層して流路を形成するに当り、隣り合う伝熱プレートの凸条同士を交差衝合させるようにするため、上述の如く、上記構成の伝熱プレートを積層したときに所定範囲内の凸条同士が直交して衝合(接触)する。これにより、ガスケット装着溝に隣接する前記所定領域内で長手方向及び幅方向における凸条同士の接触点の間隔が狭くなる結果、ガスケット近傍の剛性が高まり、ガスケットが伝熱プレートに確実に挟まれた状態(高いシール性能を発揮した状態)になる。
【0014】
本発明の他態様として、前記所定範囲の境界は、ストレート部の中心線から幅方向に前記金属プレートの幅方向の全寸法の5%乃至10%の距離をおいた位置に設定されていることが好ましい。このようにすれば、長手方向の曲げ剛性を高める領域を最小限に抑えて熱交換媒体又は被熱交換媒体を流通させる領域を確保することができる。
【0015】
本発明の別の他態様として、前記所定範囲の境界上に、長手方向に延びる補強溝が長手方向に断続的に形成されていることが好ましい。このようにすれば、補強溝を画定する一対の壁部が長手方向に形成されるため、長手方向の曲げ剛性をさらに高めることができ、作業者が幅方向の両端部を把持したときの湾曲をより確実に抑制することができる。また、補強溝であれば熱交換媒体又は被熱交換媒体の流れを阻害することもない。
【0016】
本発明のプレート式熱交換器は、長方形状に形成されて長手方向の一端側及び他端側に流路形成用開口が少なくとも二つ形成されるとともに両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成され、且つ前記凹条及び凸条を含む領域に流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が長手方向と直交する方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有して形成された複数の伝熱プレートが積層され、隣り合う伝熱プレートがガスケット装着溝に配置されたガスケットを挟み込むことで、隣り合う伝熱プレートの凸条同士が交差衝合した状態で、各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器において、前記伝熱プレートが上記何れかのプレート式熱交換器用の伝熱プレートで構成されていることを特徴とする。
【0017】
上記構成のプレート式熱交換器によれば、上記何れかのプレート式熱交換器用の伝熱プレートが採用されるため、上述の作用及び効果を奏することができ、組み立てや分解がし易くなる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のプレート式熱交換器用の伝熱プレートによれば、組み立てや分解を行うときのハンドリング性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0019】
また、本発明のプレート式熱交換器によれば、上記構成のプレート式熱交換器用の伝熱プレートが採用されるため、組み立てや分解を行うときのハンドリング性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るプレート式熱交換器の締付手段及びレールを省略した概略分解斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの要部拡大図を含む平面図を示す。
【図4】同実施形態に係るプレート式熱交換器における熱交換媒体及び被熱交換媒体の流動を説明するための説明図であって、(a)は、第一流路における熱交換媒体の流れを示し、(b)は、第二流路における被熱交換媒体の流れを示す。
【図5】本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの要部拡大図を含む平面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの要部拡大図を含む平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器、及び該プレート式熱交換器用の伝熱プレートについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0022】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、図1に示す如く、それぞれ独立した複数枚の伝熱プレート10…が積層されている。そして、該プレート式熱交換器1は、図2に示す如く、各伝熱プレート10を境にして熱交換媒体Aを流通させる第一流路R1と被熱交換媒体Bを流通させる第二流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10に形成された二つの第一開口100a,100bが連なって熱交換媒体Aを第一流路R1に対して流出入させる熱交換媒体流入路R3及び熱交換媒体流出路R4が形成されるとともに、各伝熱プレート10に形成された二つの第二開口101a,101bが連なって被熱交換媒体Bを第二流路R2に対して流出入させる被熱交換媒体流入路R5及び被熱交換媒体流出路R6が形成されている。
【0023】
より具体的に説明すると、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、複数枚の伝熱プレート10…と、各伝熱プレート10間に介装されるガスケット11,12,13,14と、複数枚の伝熱プレート10…を挟み込む一対のフレームプレート15,16と、複数枚の伝熱プレート10…を締め付けるための締付手段17(図1参照)とを備えている。
【0024】
各伝熱プレート10…は、図3に示す如く、略長方形状の金属プレートをプレス成形したもので、、金属プレートの両面に複数の凹条110…,112…及び凸条111…,113…が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線SLに対して傾斜するように形成されるとともに前記凹条110…,112…及び凸条111…,113…を含む領域に流路R1,R2(図1参照)を形成すべくガスケット11,12(図1参照)が配置される環状のガスケット装着溝102,103が形成され、該ガスケット装着溝102,103は、金属プレートの長手方向と直交する幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部102a,103aを有している。なお、本明細書に添付した各図において、凸条111…,113…を波線で表現し、凹条110…,112…を波線間の領域で表現している。
【0025】
より具体的に説明すると、各伝熱プレート10…は、それぞれ長方形状に形成され、四隅に開口100a,100b,101a,101bが形成されている。すなわち、各伝熱プレート10…は、幅方向の一端側に二つの第一開口100a,100bが長手方向に間隔をあけて設けられるとともに、幅方向の他端側に二つの第二開口101a,101bが長手方向に間隔をあけて設けられている。本実施形態において、第一開口100a,100b及び第二開口101a,101bは、何れも円形に形成されている。
【0026】
そして、本実施形態に伝熱プレート10は、前記ガスケット装着溝102,103として、二つの第二開口101a,101bを躱す一方で二つの第一開口100a,100bを取り囲んだ環状の第一ガスケット装着溝102と、二つの第一開口100a,100bを躱す一方で二つの第二開口101a,101bを取り囲んだ環状の第二ガスケット装着溝103とが形成されている。また、本実施形態に伝熱プレート10は、各第一開口100a,100bを独立して包囲する円環状の第三ガスケット装着溝104と、各第二開口101a,101bを独立して包囲する円環状の第四ガスケット装着溝105とが形成されている。
【0027】
前記第一ガスケット装着溝102は、伝熱プレート(金属プレート)10…の両面に設けられており、裏表で重なり合うように配置されている。すなわち、伝熱プレート(金属プレート)10…の両面に形成された第一ガスケット装着溝102は、一方の面側の凸条111…,113…の頂点と他方の面側の凸条111…,113…の頂点との中間位置に共通の底部を有している。
【0028】
前記第一ガスケット装着溝102は、上述の如く、伝熱プレート10…の幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部102a,102aを有している。すなわち、第一ガスケット装着溝102は、伝熱プレート10…の幅方向の両端縁近傍に長手方向に直線状に延びるストレート部102a,102aを一部に備えている。
【0029】
また、前記第二ガスケット装着溝103は、伝熱プレート(金属プレート)10…の両面に設けられており、裏表で重なり合うように配置されている。すなわち、伝熱プレート(金属プレート)10…の両面に形成された第二ガスケット装着溝103は、一方の面側の凸条111…,113…の頂点と他方の面側の凸条111…,113…の頂点との中間位置に共通の底部を有している。
【0030】
また、第二ガスケット装着溝103は、伝熱プレート10…の幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部103a、103aを有している。すなわち、第二ガスケット装着溝103は、伝熱プレート10…の幅方向の両端縁近傍に長手方向に直線状に延びるストレート部103a,103aを一部に備えている。
【0031】
そして、第三ガスケット装着溝104は、伝熱プレート10の面上で第一開口100a,100bと同心の円環状に形成され、第四ガスケット装着溝105は、伝熱プレート10の面上で第二開口101a,101bと同心の円環状に形成されている。該第三ガスケット装着溝104及び第四ガスケット装着溝105は、何れも伝熱プレート(金属プレート)10…の両面に設けられており、第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103と同様に、裏表で共通した底部を有している。
【0032】
そして、本実施形態に係る伝熱プレート10は、第一ガスケット装着溝102と第二ガスケット装着溝103とが一部を重ならせて配置されている。すなわち、第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103は、互いのストレート部102a,102a,103a,103aを一致させるようにして形成されている。
【0033】
また、第一ガスケット装着溝102は、第三ガスケット装着溝104と部分的に重なって形成され、第二ガスケット装着溝103は、第四ガスケット装着溝105と部分的に重なって形成されている。
【0034】
そして、本実施形態に係る伝熱プレート10は、少なくとも第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103に包囲された領域内に複数の凹条110…,112…及び凸条111…,113…が形成されている。
【0035】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る伝熱プレート10は、幅方向内側で各ストレート部102a,102a,103a,103aに沿った所定範囲(以下、伝熱補強領域という)RAを除く領域(以下、主伝熱領域という)CAが長手方向に延びる中心線CLを境にして幅方向で二つの領域に区画されている。そして、主伝熱領域CAにおける幅方向の一方の領域CA1に形成される凹条(以下、伝熱用凹条という)110…及び凸条(以下、伝熱用凸条という)111…は、長手方向に延びる中心線CLから当該一方の領域CA1と隣接する伝熱補強領域RAとの境界DL1にまで延び、長手方向に延びる中心線CL側から境界DL1に向かうにつれて長手方向の何れか一端側に先下りに傾斜するように形成されている。これに対し、主伝熱領域CAにおける幅方向の他方の領域CA2に形成される伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…は、長手方向に延びる中心線CLから当該他方の領域CA2と隣接する伝熱補強領域RAとの境界DL2にまで延び、長手方向に延びる中心線CL側から境界DL2に向かうにつれて長手方向の何れか一端側に先下りに傾斜するように形成されている。
【0036】
そして、一方の領域CA1内の伝熱用凹条110…と他方の領域CA2内の伝熱用凹条110…とが中心線CL上で接続されるとともに、一方の領域CA1内の伝熱用凸条111…と他方の領域CA2内の伝熱用凸条111…とが中心線CL上で接続されている。すなわち、主伝熱領域CA内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…のそれぞれは、長手方向に延びる中心線CL上で屈曲した状態で長手方向に並び、ヘリングボーン状になっている。本実施形態において、主伝熱領域CA内の伝熱用凸条111…同士の間隔(伝熱用凹条110…同士の間隔)P1は、何れの箇所においても同一に設定されている。
【0037】
これにより、主伝熱領域CA(CA1,CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…は、幅方向に延びる仮想線SLに対して所定角度θ1で傾斜した状態になっている。なお、主伝熱領域CA(CA1,CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の前記仮想線SLに対する傾斜角度θ1は、流通の対象となる熱交換媒体及び被熱交換媒体の熱交換特性等に応じて適宜決められる。なお、本実施形態に係る伝熱プレート10は、金属プレートをプレス成形したものであるため、一方の面の伝熱用凸条111…は他方の面の伝熱用凹条110…を構成し、一方の面の伝熱用凹条110…は他方の面の伝熱用凸条111…を構成している。従って、伝熱プレートは、両面において伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…が略同形態で配置されている。また、伝熱補強領域RA内の後述する補強伝熱用凹条112…及び後述する補強伝熱用凸条113…も同様である。
【0038】
そして、各伝熱補強領域RA内の凹条(以下、補強伝熱用凹条という)112…及び凸条(以下、補強伝熱用凸条という)113…は、幅方向内側にある当該伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2を基準とする幅方向内側の対称位置(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して逆向きに傾斜している。
【0039】
すなわち、主伝熱領域CAの一方の領域CA1と隣接する伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、前記一方の領域CA1内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の延びる方向に対して交差方向に延び、主伝熱領域CAの他方の領域CA2と隣接する伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、前記他方の領域CA2内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の延びる方向に対して交差方向に延びるように形成されている。
【0040】
各伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が隣り合う領域(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1に対応して決定される。
【0041】
具体的には、各伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、隣り合う領域(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1が45°よりも小さい場合、前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が45°以上に設定され、隣り合う領域(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1が45°よりも大きい場合、前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が45°以下に設定される。
【0042】
また、各伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、隣り合う領域(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1が45°である場合、前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が45°に設定される。
【0043】
すなわち、各伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、前記幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2を上記条件に設定することが好ましいが、仮想線SLに対して45°で傾斜している状態で、長手方向と幅方向の断面係数が等しくなるため、強度的に安定した状態になる。
【0044】
なお、図3に示す伝熱プレート10は、主伝熱領域CA(一方の領域CA1及び他方の領域CA2)の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…は、幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1が30°又は略30°に設定され、各伝熱補強領域RAの補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…が仮想線SLに対して45°又は略45°に設定されている。
【0045】
本実施形態に係る伝熱プレート10は、隣り合う補強伝熱用凸条113…の間隔(補強伝熱用凹条112…の間隔)P2が一定になっている。また、本実施形態に係る伝熱プレート10は、隣り合う補強伝熱用凸条113…の間隔(補強伝熱用凹条112…の間隔)P2と主伝熱領域CA(CA1,CA2)の伝熱用凸条111…間の間隔(伝熱用凹条110…件の間隔)P1とが同一になっている。そのため、伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)及び補強伝熱用凸条113…(伝熱用凹条110…)は、前記境界DL1,DL2上で長手方向に位置ずれして配置されている。すなわち、本実施形態において、補強伝熱用凸条113…と伝熱用凸条111…とは前記仮想線SLに対する角度θ1,θ2が異なった状態で間隔P1,P2が同一に設定されているため、伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)及び補強伝熱用凸条113…(伝熱用凹条110…)は一部を除き前記境界DL1,DL2上で長手方向に位置ずれしている。なお、この位置ずれは全ての伝熱用凸条111…及び伝熱用凹条110と補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…との間に起こるものではなく、伝熱用凸条111…及び伝熱用凹条110に対して補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…が接続された状態になる部分もある。
【0046】
そして、主伝熱領域CAと伝熱補強領域RA(所定範囲)との境界DL1,DL2は、作業者がプレート式熱交換器1を組み立てたり分解したりするときに、伝熱プレート10の幅方向の両端部を把持する領域が伝熱補強領域RA(所定範囲)内に含まれるように設定される。
【0047】
具体的には、主伝熱領域CAとの各伝熱補強領域RA(所定範囲)の境界DL1,DL2は、ガスケット装着溝102,103のストレート部102a,103aの中心線CL1から幅方向に伝熱プレート(プレス成形後の金属プレート)10の幅方向の全寸法Xの5%乃至10%の距離X1をおいた位置に設定されている。
【0048】
すなわち、幅方向の両側にある伝熱補強領域RA,RAの幅方向の合計寸法が、伝熱プレート(プレス成形後の金属プレート)10の幅方向の全寸法Xの5%乃至10%の二倍の長さからガスケット装着溝102,103の一本分の幅寸法(ガスケットの幅寸法)を引いた値になるように設定される。
【0049】
ここで具体的な数値を挙げて説明すると、一般的に一人の作業者が設置や取り外しを行うことのできる伝熱プレート10…のサイズは、長手方向の寸法Yが2000mm〜5000mmで幅方向の全寸法Xが700mm〜1600mmであるため、主伝熱領域CAと各伝熱補強領域RA(所定範囲)との境界DL1,DL2は、ガスケット装着溝102,103のストレート部102a,103aの中心線CL1から35mm〜160mm(好ましくは、幅方向の全寸法Xの5%である35mm〜80mm)の位置に設定される。そして、この種の伝熱プレート10は、流路の幅(熱交換する領域)を広くするために、ガスケット装着溝102,103(ストレート部102a,103a)が伝熱プレート10の幅方向の端縁の近くに配置され、ガスケット装着溝102,103(ストレート部102a,103a)の中心線CL1から伝熱プレート10の幅方向の端縁までの距離が約20mm〜約30mmに設定されることから、上述のように伝熱補強領域RAの幅方向の寸法を設定することで、当該伝熱補強領域RA内に把持位置が含まれることになる。
【0050】
図2に戻り、前記ガスケット11,12,13,14は、伝熱プレート10の面交差方向から見たガスケット装着溝102,103,104,105の形態に対応して形成されている。より具体的に説明すると、本実施形態において、前記ガスケット11,12,13,14,16として、第一ガスケット装着溝102の形態に対応して無端環状に形成された第一ガスケット11と、第二ガスケット装着溝103の形態に対応して無端環状に形成された第二ガスケット12と、第三ガスケット装着溝104の形態に対応して無端円環状に形成された第三ガスケット13と、第四ガスケット装着溝105の形態に対応して無端円環状に形成された第四ガスケット14とを備えている。
【0051】
そして、本実施形態において、第一ガスケット11に対して第四ガスケット14が連結されるとともに、第二ガスケット12に対して第三ガスケット13が連結されている。これにより、伝熱プレート10の何れか一方の面側にある第一ガスケット装着溝102に第一ガスケット11を装着したときに、同一面側にある第四ガスケット装着溝105に第四ガスケット14を一緒に装着でき、伝熱プレート10の何れか他方の面側にある第二ガスケット装着溝103に第二ガスケット12を装着したときに、同一面側にある第三ガスケット装着溝104に第三ガスケット13を一緒に装着できるようになっている。
【0052】
なお、便宜上、第四ガスケット14の連結された第一ガスケット11と第三ガスケット13の連結された第二ガスケット12とを別個に説明したが、本実施形態においては、何れも形態及びサイズが共通しているため、第四ガスケット14の連結された第一ガスケット11と第三ガスケット13の連結された第二ガスケット12とは共通した部材である。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第四ガスケット14の連結された第一ガスケット11を上下が逆になるように180°回転させる(表裏をそのままにして180°回転させる)ことで第三ガスケット13の連結された第二ガスケット12として使用される。
【0053】
そして、上記構成の伝熱プレート10は、プレート式熱交換器1として組み付けられる(積層される)に当り、一つおきに上下反転させる(幅方向に延びる中心線(図示しない)を基準に180°回転させる)ことで、隣り合う伝熱プレート10,10の伝熱用凸条111…同士が交差衝合するとともに補強伝熱用凸部113…同士が交差衝合するようになっている。
【0054】
そして、本実施形態に係る伝熱プレート10は、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…が幅方向に延びる仮想線SLに対して45°の角度で傾斜しているため、上述の如く、伝熱プレート10,10を積層したときに、長手方向及び幅方向における補強伝熱用凸条113…同士の接触点の間隔が狭くなるようになっている。これにより、積層時におけるガスケット装着溝102,103(第一ガスケット装着溝102,第二ガスケット装着溝103)のストレート部102,103a近傍の強度が高まる結果、ガスケット11,12(第一ガスケット11,第二ガスケット12)と伝熱プレート10とが確実に圧接してシール性が担保できるようになっている。
【0055】
図1及び図2に戻り、前記一対のフレームプレート15,16は、厚手の金属プレートで構成されている。そして、各フレームプレート15,16は、長方形状に形成されており、各伝熱プレート10の平面サイズよりも大きなサイズに設定されている。そして、一対のフレームプレート15,16のうち、一方のフレームプレート15は、伝熱プレート10の第一開口100a,100b(熱交換媒体流入路R3及び熱交換媒体流出路R4)と対応した位置、及び第二開口101a,101b(被熱交換媒体流入路R5及び被熱交換媒体流出路R6)と対応した位置に貫通穴(採番しない)が穿設されている。そして、該一方のフレームプレート15は、図1に示す如く、その外面には配管を接続するための筒状の接続ノズル160…が各貫通穴に対応して取り付けられている。
【0056】
一対のフレームプレート15,16は、何れも長手方向と直交する幅方向の両端部に複数の切欠部(採番しない)が設けられている。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、締付手段17がボルト(採番しない)とナット(採番しない)とで構成されており、一対のフレームプレート15,16に跨るように両フレームプレート15,16の両端部に形成された切欠部内に配置したボルトに対してナットを螺合することで両フレームプレート15,16を締め付けるようになっている。
【0057】
なお、特に言及しないが、この種のプレート式熱交換器1は、一般的に、一対のフレームプレート15,16の上端部及び下端部にレールLが挿通されており、積層される複数枚の伝熱プレート10…の長手方向の両端部(上端部及び下端部)がレールLに支持されている。これにより、該プレート式熱交換器1は、一対のフレームプレート15,16の締め付けを開放した状態で各伝熱プレート10をレールLに沿ってスライドさせることができるようになっている。
【0058】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上の通りであり、組み立て時又は分解時に作業者が伝熱プレート10の長手方向の略中間部にある幅方向の両端部を持って当該伝熱プレート10の設置や運搬を行うことになる。
【0059】
本実施形態に係る伝熱プレート10は、上述の如く、幅方向内側で各ストレート部102a,103aに沿った伝熱補強領域(所定範囲)RAにある補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…が、幅方向内側にある前記伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2を基準とする幅方向内側の対称位置(主伝熱領域CA(CA1,CA2))にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して逆向きに傾斜しているため、作業者が把持することになる幅方向の両端部の長手方向の剛性が高くなり、作業者が伝熱プレート10の長手方向と直交する両端部を把持したときの撓みが抑制される。
【0060】
より具体的には、図3に示す如く、ガスケット装着溝102,103の一部であるストレート部102a,103aは、伝熱プレート(成型後の金属プレート)10の幅方向の両端縁近傍に配置されるため、幅方向内側で各ストレート部102a,103aに沿った伝熱補強領域(所定範囲)RAは作業者の把持位置を含むことになる。
【0061】
そして、伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2を基準とする幅方向内側の対称位置(主伝熱領域CA(CA1,CA2))にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…が逆向きに傾斜することで、当該伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、伝熱補強領域(所定範囲)RA外の主伝熱領域CA(CA1,CA2)にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して交差する方向に延びるため、伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の形成される主伝熱領域CA(CA1,CA2)の曲げ作用に対して対抗することになる。従って、幅方向の両側にあるストレート部102a,103a近傍での長手方向の曲げ剛性が高くなるため、作業者が幅方向の両端部を把持したときの長手方向の湾曲が抑制される。これにより、組み立て時又は分解時に作業者が伝熱プレート10の長手方向の略中間部にある幅方向の両端部を持って当該伝熱プレート10の設置や運搬を行う際にバランスを崩す虞が格段に低くなり、安全性や作業性が向上することになる。
【0062】
そして、プレート式熱交換器1を組み立てるに当り、伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102に第一ガスケット11を装着するとともに第三ガスケット装着溝104に第三ガスケット14を装着し、さらに、第二ガスケット装着溝103に第二ガスケット12を装着するとともに第四ガスケット装着溝105に第四ガスケット14を装着した上で、上述の如く、複数枚の伝熱プレート10…を積層方向で一つおきに上下反転させた状態で積層する。なお、上述の如く、伝熱プレート10にガスケット11,12,13,14を装着するに当り、積層時に隣り合う二つの伝熱プレート10,10の何れか一方にガスケット11,12,13,14が装着される。
【0063】
そして、一対のフレームプレート15,16間に積層された複数枚の伝熱プレート10…を配置した上で両フレームプレート15,16を互いに接近させるように締付手段17で締め付けることで、伝熱プレート10,10間に介装された各ガスケット11,12,13,14が弾性変形して伝熱プレート10に圧接し、隣り合う伝熱プレート10,10の伝熱用凸条111…同士及び補強伝熱用凸条111…同士が交差衝合した状態になる。すなわち、各ガスケット11,12,13,14に包囲された領域に流路が形成される。
【0064】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、上述の如く、各伝熱プレート10を境にして熱交換媒体Aを流通させる第一流路R1と被熱交換媒体Bを流通させる第二流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10に形成された二つの第一開口100a,100bが連なって熱交換媒体Aを第一流路R1に対して流出入させる熱交換媒体流入路R3及び熱交換媒体流出路R4が形成されるとともに、各伝熱プレート10に形成された二つの第二開口101a,101bが連なって被熱交換媒体Bを第二流路R2に対して流出入させる被熱交換媒体流入路R5及び被熱交換媒体流出路R6が形成される。
【0065】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、熱交換媒体流入路R3が伝熱プレート10の長手方向の一端側(組み立て時の上側)に形成されるとともに、熱交換媒体流出路R4が伝熱プレート10の長手方向の他端側(組み立て時の下側)に形成されるのに対し、被熱交換媒体流入路R5が伝熱プレート10の長手方向の他端側(組み立て時の下側)に形成されるとともに、被熱交換媒体流出路R6が伝熱プレート10の長手方向の一端側(組み立て時の上側)に形成されるようになっている。
【0066】
これにより、該プレート式熱交換器1は、図4(a)に示す如く、熱交換媒体Aが第一流路R1において伝熱プレート10の長手方向の一端側から他端側に向けて流通し、図4(b)に示す如く、被熱交換媒体Bが第二流路R2において伝熱プレート10の長手方向の他端側から一端側に向けて流通するようになっており、第一流路R1内の熱交換媒体Aと第二流路R2内の被熱交換媒体Bとが伝熱プレート10(伝熱領域CA及び伝熱補強領域RA)を介して熱交換するようになっている。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るプレート式熱交換器1用の伝熱プレート10は、幅方向内側で各ストレート部102a,103aに沿った伝熱補強領域(所定範囲)RAにある補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…が、幅方向内側にある前記伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2を基準とする幅方向内側の対称位置(主伝熱領域CA(CA1,CA2))にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して逆向きに傾斜しているため、作業者が把持することになる幅方向の両端部の長手方向の剛性が高くなり、作業者が長手方向と直交する両端部を把持したときの撓みが抑制される。
【0068】
従って、本実施形態に係る伝熱プレート10は、組み立てや分解を行うときのハンドリング性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【0069】
また、本実施形態において、前記伝熱補強領域(所定範囲)RAの補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、前記幅方向に延びる仮想線SLに対して45°又は略45°で傾斜しているため、伝熱プレート(金属プレート)10の伝熱補強領域(所定範囲)RAにおける長手方向及び幅方向の断面係数が等しく又は略等しくなり、ガスケット装着溝102,103(ストレート部102a,103a)と隣接する伝熱補強領域(所定範囲)RAの剛性が高くなる。
【0070】
また、プレート式熱交換器1は、複数枚の伝熱プレート10…を積層して流路を形成するに当り、隣り合う伝熱プレート10の伝熱用凸条111…同士を交差衝合させるようにするため、上述の如く、上記構成の伝熱プレート10を積層したときに伝熱補強領域(所定範囲)RA内の補強伝熱用凸条113…同士が直交して衝合(接触)することになり、ガスケット装着溝102,103に隣接する前記伝熱補強領域(所定範囲)RA内で長手方向及び幅方向における補強伝熱用凸条113…同士の接触点の間隔が狭くなる結果、ガスケット11,12近傍の剛性が高まり、ガスケット11,12が伝熱プレート10,10に確実に挟まれた状態(高いシール性能を発揮した状態)になる。
【0071】
さらに、前記伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2は、ストレート部102a,103aの中心線CL1から幅方向に前記金属プレートの幅方向の全寸法の5%乃至10%の距離をおいた位置に設定されているため、長手方向の曲げ剛性を高める領域を最小限に抑えて熱交換媒体A又は被熱交換媒体Bを流通させる領域を確保することができる。
【0072】
従って、上記構成の伝熱プレート10…を備えたプレート式熱交換器1は、組み立てや分解がし易くなる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
【0074】
上記実施形態において、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)の幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が主伝熱領域CA内の伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)の幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1と異なった状態で、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)の間隔P2を主伝熱領域CA(CA1,CA2)内の伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)の間隔P1を同一に設定することで、境界DL1,DL2で補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)と伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)とが位置ずれしていたが、これに限定されるものではなく、例えば、境界DL1,DL2上で補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)と伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)とが接続されるようにしてもよい。すなわち、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)の幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ2が主伝熱領域CA内の伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)の幅方向に延びる仮想線SLに対する角度θ1と異なった状態で、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…(補強伝熱用凹条112…)の間隔P2を主伝熱領域CA(CA1,CA2)内の伝熱用凸条111…(伝熱用凹条110…)の間隔P1と異ならせてもよい。
【0075】
上記実施形態において、主伝熱領域CAを長手方向に延びる中心線CLを基準に幅方向で二つの領域CA1,CA2に区画し、長手方向に延びる中心線CL上で二つの領域CA1,CA2の伝熱用凹条110…同士及び伝熱用凸条111…同士を接続し、主伝熱領域CA内で屈曲した複数の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…を長手方向に並べてヘリングボーン状に配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示す如く、主伝熱領域CAを長手方向で複数の分割領域DA…に区画し、各分割領域DA…内に長手方向で屈曲した伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…を幅方向に並べてヘリングボーン状に配置してもよい。
【0076】
具体的には、各分割領域DAを当該分割領域DAの幅方向に延びる中心線CL2を基準にして長手方向で二つの領域DA1,DA2に区画し、各分割領域DAにおいて、長手方向の一方の領域DA1に形成される伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…を中心線CL2から長手方向の一端側に向けて傾斜して形成し、長手方向の他方の領域DA2に形成される伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…を幅方向に延びる中心線CL2から長手方向の他端側に向けて傾斜して形成し、各分割領域DA…で一方の領域DA1内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…と他方の領域DA2内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…とを幅方向に延びる中心線CL2上で接続し、各分割領域DA…の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…のそれぞれを幅方向に延びる中心線CL2上で屈曲した状態で幅方向に並べてヘリングボーン状に配置するようにしてもよい。また、この場合、隣接する分割領域DA…の伝熱用凹条110…同士及び伝熱用凸条111…同士を分割領域DAの境界上で接続してもよい。
【0077】
そして、この場合においても、主伝熱領域CA(CA1,CA2)内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…は、幅方向に延びる仮想線SLに対して所定角度θ1で傾斜した状態になるため、主伝熱領域CAの両側にある各伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、幅方向内側にある当該伝熱補強領域(所定範囲)RAの境界DL1,DL2を基準とする幅方向内側の対称位置(主伝熱領域CAの一方の領域CA1又は他方の領域CA2)にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して逆向きに傾斜させればよい。なお、上述の如く、主伝熱領域CAを長手方向に分割した場合、伝熱補強領域RAにおいても長手方向に分割された状態になるが、伝熱補強領域RAの分割された領域のそれぞれにある補強伝熱用凹条112…及び補強伝熱用凸条113…は、幅方向に隣り合う分割領域DAの伝熱用凸条111…及び伝熱用凹条110…を対象にして傾斜方向が設定される。
【0078】
また、上記実施形態において、伝熱補強領域RAと主伝熱領域CAとの境界DL1,DL2に何ら設けなかったが、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示す如く、伝熱補強領域RAと主伝熱領域CAとの境界DL1,DL2上に、長手方向に延びる補強溝200を長手方向に断続的に形成してもよい。この場合、補強溝200は、ガスケット装着溝102,103と同様に、伝熱プレート10の両面に設けることが好ましい。すなわち、補強溝200は、一方の面側の伝熱用凸条111…の頂点と他方の面側の伝熱用凸条111…の頂点との中間位置に底部が位置するように形成することが好ましい。このようにすれば、補強溝200を画定する一対の壁部が長手方向に形成されるため、長手方向の曲げ剛性をさらに高めることができ、作業者が幅方向の両端部を把持したときの湾曲をより確実に抑制することができる。また、補強溝200で補強すれば熱交換媒体A又は被熱交換媒体Bの流れを阻害することもない。
【0079】
また、上記実施形態において、主伝熱領域CAに補強構造を設けなかったが、例えば、主伝熱領域CA内の伝熱用凸条111…及び伝熱用凹条110…を部分的に横切るように補強用の溝を設けてもよい。この場合においても、補強用の溝は、一方の面側の伝熱用凸条111…の頂点と他方の面側の伝熱用凸条111…の頂点との中間位置に底部が位置するように形成することが好ましい。このようにすれば、熱交換媒体A又は被熱交換媒体Bの流れを阻害することなく熱交換媒体A又は被熱交換媒体Bの流体圧で主伝熱領域CA内の伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…の並ぶ方向に伝熱プレート10が延びることを抑制することができる。かかる構成は、図6に示す補強溝200と組み合わせればより効果的である。
【0080】
上記実施形態において、伝熱補強領域RA内の補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…を幅方向に延びる仮想線SLに対して45°の角度で傾斜させたが、これに限定されるものではなく、補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…は、境界DL1,DL2を基準とした主伝熱領域CAの対称位置にある伝熱用凹条110…及び伝熱用凸条111…に対して交差方向に延びるように形成されればよい。但し、上述の如く、長手方向及び幅方向の強度のバランスをとるには上記実施形態と同様に補強伝熱用凸条113…及び補強伝熱用凹条112…を幅方向に延びる仮想線SLに対して45°の角度で傾斜させることが好ましことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1…プレート式熱交換器、10…伝熱プレート、11…第一ガスケット(ガスケット)、12…第二ガスケット(ガスケット)、13…第三ガスケット(ガスケット)、14…第四ガスケット(ガスケット)、15,16…フレームプレート、17…締付手段、100a,100b…第一開口、101a,101b…第二開口、102…第一ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、103…第二ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、104…第三ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、105…第四ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、102a,103a…ストレート部、110…凹条、111…凸条、112…補強凹条(凹条)、113…補強凸条(凸条)、160…接続ノズル、161…切欠部、200…補強溝、A…熱交換媒体、B…被熱交換媒体、CA…主伝熱領域、CA1,CA2…領域、CL,CL1,CL2…中心線、RA…伝熱補強領域(所定範囲)、DA…分割領域、DA1,DA2…領域、DL1,DL2…境界、L…レール、R1…第一流路、R2…第二流路、R3…熱交換媒体流入路、R4…熱交換媒体流出路、R5…被熱交換媒体流入路、R6…被熱交換媒体流出路、SL…仮想線、X1…距離、X,Y…寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形によって略長方形状の金属プレートの両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成されるとともに前記凹条及び凸条を含む領域に流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が形成され、該ガスケット装着溝が金属プレートの長手方向と直交する幅方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有するプレート式熱交換器用の伝熱プレートにおいて、幅方向内側で各ストレート部に沿った所定範囲にある凹条及び凸条は、幅方向内側にある前記所定範囲の境界を基準とする幅方向内側の対称位置にある凹条及び凸条に対して逆向きに傾斜していることを特徴とするプレート式熱交換器用の伝熱プレート。
【請求項2】
前記所定範囲の凹条及び凸条は、前記幅方向に延びる仮想線に対して45°で傾斜している請求項1に記載のプレート式熱交換器用の伝熱プレート。
【請求項3】
前記所定範囲の境界は、ストレート部の中心線から幅方向に前記金属プレートの幅方向の全寸法の5%乃至10%の距離をおいた位置に設定されている請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器用の伝熱プレート。
【請求項4】
前記所定範囲の境界上に、長手方向に延びる補強溝が長手方向に断続的に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のプレート式熱交換器用の伝熱プレート。
【請求項5】
長方形状に形成されて長手方向の一端側及び他端側に流路形成用開口が少なくとも二つ形成されるとともに両面に複数の凹条及び凸条が長手方向と直交する幅方向に延びる仮想線に対して傾斜するように形成され、且つ前記凹条及び凸条を含む領域に流路を形成すべくガスケットが配置される環状のガスケット装着溝が長手方向と直交する方向の両端縁に沿った一対のストレート部を有して形成された複数の伝熱プレートが積層され、隣り合う伝熱プレートがガスケット装着溝に配置されたガスケットを挟み込むことで、各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器において、前記伝熱プレートが請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレート式熱交換器用の伝熱プレートで構成されていることを特徴とするプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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