説明

プレート式熱交換器

【課題】熱媒体が流入する流入路近傍に熱媒体の熱が作用しても、かかる部分に局部的な熱応力が発生するのを抑制することができ、熱媒体が流入する流入路近傍に局部的な割れが生じるのを防止することができるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【解決手段】積層された複数枚の伝熱プレート間に熱媒体を流通させる第一空間と被熱交換体を流通させる第二空間とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、各伝熱プレートに形成された開口が連なって第一空間に対して熱媒体を流出入させる第一流入路と第一流出路とが形成されると共に第二空間に対して被熱交換体を流出入させる第二流入路と第二流出路とが形成され、伝熱プレート同士を溶着することで第一空間と第二空間とが気密又は液密に画されているプレート式熱交換器であって、前記第二空間は、第二流入路と第二流出路との間に形成される主流路と、第二流入路から主流路に連通するように、第一流入路の外周と伝熱プレート外周縁部との間に形成されるバイパス流路とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体からなる熱媒体を流通させると共に、流体からなる被熱交換体を流通させて該被熱交換体に対して熱交換を行う熱交換器に関し、特には、積層された複数枚の伝熱プレート間に熱媒体を流通させる第一空間と被熱交換体を流通させる第二空間とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、伝熱プレート同士を溶着することで第一空間と第二空間とが気密又は液密に画されているプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被熱交換体に対して熱交換を行う熱交換器として種々のものが提供されている。その一つとして、プレート式熱交換器がある。かかるプレート式熱交換器は、小型で且つ熱交換効率が高いとして種々の分野に採用されており、図8に示す如く、複数枚の伝熱プレート100a…,100b…が積層されることで、熱湯や蒸気等の流体からなる熱媒体Mを流出入させる第一流入路P1及び第一流出路P1’が形成されると共に、水等の流体からなる被熱交換体Wを流出入させる第二流入路P2及び第二流出路P2’が形成されている。
【0003】
前記伝熱プレート100a,100bには、例えば、図9(イ)及び(ロ)に示す二種類のものが採用されている。具体的に説明すると、伝熱プレート100a,100bは、何れも略長方形状をなす一枚の板材をプレス成形したものであり、両面に複数の凹部101a(凹条)及び凸部101b(凸条)が連続して形成され、波板状をなしている。図9(イ)及び(ロ)に示した二種類の伝熱プレート100a,100bは、凹条101a及び凸条101bの形態が鏡像関係にあり、互いに重ね合わせることで、凸部101b,101b同士が干渉して凹部101a,101a間に熱媒体Mを流通させる第一空間X,X…、又は被熱交換体Wを流通させる第二空間Y,Y…を形成するように構成されている(図10参照)。尚、図9(イ)及び(ロ)に示した凹条101a及び凸条101bの形状、態様、及び組み合わせは一例である。
【0004】
各伝熱プレート100a,100bの四隅部分には、四つの開口102a,102b,103a,103bが穿設されている。この四つの開口102a,102b,103a,103bのうち、対角に配置された一対の開口102a,102b(第一開口)は、熱媒体Mを流出入させる前記第一流入路P1及び第一流出路P1’を形成するためのものであり、残りの対角に配置された一対の開口103a,103b(第二開口)は、被熱交換体Wを流出入させる前記第二流入路P2及び第二流出路P2’を形成するためのものである。
【0005】
前記プレート式熱交換器は、前記二種類の伝熱プレート100a,100bが交互に積層され、図10に示すように、伝熱プレート100a,100bの外周縁部同士が接触した状態でロウ付(ブレージング)により封止(封着)されており、各伝熱プレート100a,100bを境にして熱媒体Mを流通させる第一空間X,X…と、被熱交換体Wを流通させる第二空間Y,Y…とが気密又は液密に画された状態で交互に形成されている。
【0006】
また、隣接する伝熱プレート100a,100bの第一開口102a,102bの開口縁部であって、一方の伝熱プレート100aの一方面と他方の伝熱プレート100bの他方の面とを重ね合わせ方向(積層方向)に密着(面接触)させた状態にしてロウ付けすることで、第一開口102a,102bの開口縁部同士が封止されており、これによって、各伝熱プレート100a,100bの第一開口102a,102bが断続的に連なり、第一空間X,X…を介して連通する第一流入路P1及び第一流出路P1’が形成されている。また、隣接する伝熱プレート100a,100bの第二開口103a,103bの開口縁部であって、一方の伝熱プレート100aの他方の面と他方の伝熱プレート100bの一方の面とを重ね合わせ方向に密着させた状態にしてロウ付けすることで、第二開口103a,103bの開口縁部同士が封止されており、これによって、各伝熱プレート100a,100bの第二開口103a,103bが断続的に連なり、第二空間Y,Y…を介して連通する第二流入路P2及び第二流出路P2’が形成されている。
【0007】
上記構成のプレート式熱交換器は、熱媒体Mを供給する一次側の配管に接続された第一流入路P1から熱媒体Mを流入させて該熱媒体Mを第一空間Xを介して第一流出路P1’から流出させると同時に、被熱交換体Wを供給する二次側の配管に接続された第二流入路P2から被熱交換体Wを流入させて第二空間Yを介して第二流出路P2’から流出させることで、伝熱プレート100a,100bの存在で熱媒体Mと被熱交換体Wとが混ざるのを防止した上で、伝熱プレート100a,100bからの熱伝導によって被熱交換体Wに対する熱交換を行えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−264194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記構成のプレート式熱交換器は、高温の熱媒体Mが第一流入路P1から流入される。そして、各伝熱プレート100a,100bの第一開口102aの開口縁部同士を密着(面接触)させた状態で封止(封着)したり、伝熱プレート100a,100bの外周縁部同士を接触させた状態で封止したりすることで、熱媒体Mを流通させる第一流入路P1や第一空間X,X…等を気密状態又は液密状態にして画定するように構成されている。従って、前記高温の熱媒体Mがプレート式熱交換器に流入されることによって、第一流入路P1を画定している上記部分に熱が集中的に作用することになる。そのため、これら第一流入路P1近傍の封着された部分に熱応力が集中的に作用して局部的な割れが生じてしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、熱媒体が流入する流入路近傍に熱媒体の熱が作用しても、かかる部分に局部的な熱応力が発生するのを抑制することができ、熱媒体が流入する流入路近傍に局部的な割れが生じるのを防止することができるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプレート式熱交換器は、上記課題を解消すべくなされたもので、積層された複数枚の伝熱プレート間に熱媒体を流通させる第一空間と被熱交換体を流通させる第二空間とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、各伝熱プレートに形成された開口が連なって第一空間に対して熱媒体を流出入させる第一流入路と第一流出路とが形成されると共に第二空間に対して被熱交換体を流出入させる第二流入路と第二流出路とが形成され、伝熱プレート同士を溶着することで第一空間と第二空間とが気密又は液密に画されているプレート式熱交換器であって、前記第二空間は、第二流入路と第二流出路との間に形成される主流路と、第二流入路から主流路に連通するように、第一流入路の外周と伝熱プレート外周縁部との間に形成されるバイパス流路とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成とすることで、第二空間内に流入した被熱交換体が主流路を流通すると共にバイパス流路を流通するようになる。即ち、第二流入路から第二空間内に流入した被熱交換体は、主流路を第二流出路に向かって流通するものと、バイパス流路を経て主流路を流通し、第二流出路へ向かって流通するものとに分かれる。
【0012】
前記バイパス流路を流通する被熱交換体は、バイパス流路が第一流入路の外周と伝熱プレート外周縁部との間に形成されているため、第一流入路の外周に沿って流通することになる。
【0013】
また、前記伝熱プレートは、積層した際の前記バイパス流路に対応する部分の間隔が主流路に対応する部分の間隔よりも大きくなるように形成される構成とすることが好ましい。
【0014】
上記構成とすることで、バイパス流路を流れる被熱交換体の抵抗の方が主流路を流れる被熱交換体の抵抗よりも小さくなる。そのため、第一流入路の外周に沿って流通する被熱交換体が流れ易くなるのでバイパス流路を流れる被熱交換体の量が増え、それに伴って第一流入路の外周に接しつつ流通する被熱交換体の量も増える。
【0015】
このように、第一流入路の外周を流通する被熱交換体の量が増えると、第一流入路の外周から多くの熱量を奪うことができるので、第一流入路の外周に熱媒体からの熱が集中的に作用するのを防止することができるようになる。その結果、当該部分に熱応力が発生するのを抑制することができ、伝熱プレートに局所的な割れが発生するのを防ぐことができる。
【0016】
また、第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路が伝熱プレートの四隅に位置して形成され、前記第一流入路と第一流出路とが互いに対角に位置すると共に前記第二流入路と第二流出路とが互いに対角に位置し、前記バイパス流路と主流路とを接続する連通路を第二流出路に向いて延びるように形成すべく、積層状態で第一流入路から第二流出路に向いて延びる仕切ラインが形成されるように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成とすることで、前記バイパス流路を流通した被熱交換体は、仕切ラインによって形成される前記連通路を介して第二流出路に向かって流れ出る。従って、該バイパス流路から連通路を介して流れ出る被熱交換体は、第二流出路に向かって流通している主流路の被熱交換体と略同方向に流れ出るため、該主流路を流通する被熱交換体の流れを乱すことなく合流することができるようになる。
【0018】
また、上記のように、主流路を流通する被熱交換体に、その流れを乱すことなく前記バイパス流路から連通路を介して流れ出る被熱交換体が合流するので、該バイパス流路から連通部を介して流れ出る被熱交換体は、主流路を流通する被熱交換体に妨害されることなく流れ出ることができるため、バイパス流路を流通する被熱交換体がより流れ易くなり、流れる量が多くなる。
【0019】
従って、第一流入路の外周を構成する伝熱プレートの部位と接触しつつ流れる被熱交換体の量が多くなるため、該被熱交換体によって第一流入路の外周から奪われる熱量が多くなり、第一流入路の外周に熱媒体の熱が集中的に作用するのを防止することができるようになる。その結果、当該部分に熱応力が発生するのを抑制することができ、伝熱プレートに局所的な割れが発生するのを防ぐことができる。
【0020】
また、前記伝熱プレートは、対向配置されることで前記凸部同士が干渉するように前記主流路に対応する部分の両面に複数の凹部及び凸部が形成される構成とすることが好ましい。
【0021】
上記構成とすることで、主流路での被熱交換体が流通する際の抵抗が大きくなり、バイパス流路へ向かう被熱交換体の量が多くなる。即ち、主流路を流通する被熱交換体の抵抗が大きくなると、主流路を被熱交換体が流れ難くなる。そして、第二流入路から流入してきた被熱交換体は、流れ難くなった主流路へ向かう量が少なくなった分、前記バイパス流路へ向かう量が多くなる。
【0022】
その結果、第一流入路の外周に接しつつ流通する被熱交換体の量が多くなるので、該第一流入路の外周から被熱交換体に移行する(奪われる)熱量が多くなり(増加し)、当該部分に熱応力が発生するのを抑制することができ、伝熱プレートに局所的な割れが発生するのを防ぐことができるようになる。
【0023】
また、前記積層された複数枚の伝熱プレートを積層方向両側から挟む一対のフレーム板が設けられ、該一対のフレーム板の一方は、前記第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路に対応する位置にそれぞれ開口が設けられると共に、開口毎に前記第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路に連通する筒状のノズルが配され、少なくとも前記第一流入路に連通するノズルは、伝熱プレートの前記第二空間を形成している面の反対側の面に一端部が溶着されている構成とすることが好ましい。
【0024】
上記構成とすることで、前記一方のフレーム板に設けられた第一流入路に対応するノズルの一端が伝熱プレートの第二空間を形成している面の反対側の面に溶着されているため、該溶着されている部分に熱媒体から与えられた熱は、前記第二空間を流通する被熱交換体に奪われ、前記溶着されている部分に発生する熱応力を抑制することができるようになる。
【0025】
即ち、熱媒体は、前記一方のフレーム板に設けられた第一流入路に対応するノズルを介して第一流入路に流入されるが、その際、該ノズル内を流通する熱媒体によって前記溶着されている部分が加熱される。
【0026】
しかし、伝熱プレートの前記ノズルが溶着されている面の裏面側(反対面側)は、第二空間を形成している部分であることから、この第二空間内を流通する被熱交換体に前記溶着されている部分の熱が連続的に移行する。
【0027】
その結果、前記溶着されている部分に熱応力が発生するのを抑制することができ、局所的な割れが発生するのを防ぐことができる。
【0028】
また、前記一対のフレーム板の他方は、少なくとも第一流入路に対応する位置に開口が設けられると共に、該開口に前記第一流入路に連通する筒状のノズルが配され、該ノズルは、伝熱プレートの前記第二空間を形成している面の反対側の面に一端部が溶着されている構成とすることが好ましい。
【0029】
上記構成とすることで、伝熱プレートの積層方向において、第一流入路の両側にノズルが配されることとなり、積層された複数枚の伝熱プレートを積層方向に貫通するような流路が形成される。そのため、第一流入路の端部側において伝熱プレートに局所的な割れが発生するといった問題が生じることを防ぐことができる。
【0030】
即ち、前記伝熱プレートの積層方向において、前記積層された複数枚の伝熱プレートを貫通する方向に第一流入路が形成され、その他方端部側がノズルを配されることなく伝熱プレートの一部によって封止された場合、一方端部側から流入してきた熱媒体は、他方端部側まで流通して前記伝熱プレートの第一流入路に対応する部分に当たる。このように、熱媒体が他方端部側に設けられた伝熱プレートの一部に当たることで、該伝熱プレートの一部に熱が集中的に作用し、熱応力によってかかる部分に局所的な割れが発生する。
【0031】
しかし、前記ノズルを設けることで第一流入路の他方端部側を伝熱プレートの一部で封止する必要がなくなり、前記伝熱プレートの一部に熱が集中的に作用して局所的な割れが発生するといった問題を解消することができる。
【0032】
また、その場合、前記第一流路の他方端部側に設けられたノズルの一端部と伝熱プレートとの溶着されている部分も熱媒体によって熱が加えられる。しかし、該溶着されている部分は、伝熱プレートの第二空間を形成している面の反対側の面に形成されているため、前記同様、被熱交換体に熱が移行し、該溶着されている部分に熱が集中的に作用して局所的な割れが発生することがない。
【発明の効果】
【0033】
以上より、本発明によれば、熱媒体が流入する流入路近傍に熱媒体の熱が作用しても、かかる部分に局部的な熱応力が発生するのを抑制することができ、熱媒体が流入する流入路近傍に局部的な割れが生じるのを防止することができるという優れた効果を奏し得るプレート式熱交換器を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0035】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に「熱交換器」と言うことがある。)は、ヒートポンプ給湯器や床暖房等の各種機器の凝縮器として使用されるものである。図1乃至5に示すように、該熱交換器1は、一対(二枚)のフレームプレート2a,2bと、該一対のフレームプレート2a,2b間で積層された複数枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…とを備えている。
【0036】
前記複数枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、積層状態に配置されることによって各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…間に所定の空間を形成する。該空間は、蒸気や熱湯等の流体から構成される熱媒体Mを流通させる第一空間10と、水等の流体から構成される被熱交換体Wを流通させる第二空間20との二種類の空間が存在する。前記第一空間10,…と第二空間20,…とは、各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を境にして交互に形成されている。
【0037】
また、該熱交換器1は、第一空間10,…及び第二空間20,…の他に、第一空間10,…に対して熱媒体Mを流出入させる第一流入路11と第一流出路12とが形成されると共に、第二空間20,…に対して被熱交換体Wを流出入させる第二流入路21と第二流出路22とが形成されている。
【0038】
前記一対のフレームプレート2a,2bは、前記熱交換器1の外装を構成するもので、それぞれ正面視略長方形の板状に形成されている。
【0039】
一方のフレームプレート2aには、第一流入路11、第一流出路12、第二流入路21及び第二流出路22の形成位置に対応して複数の貫通穴が穿設されている。本実施形態においては、正面視略長方形状の四隅にそれぞれ貫通穴27a〜27dが穿設されている。該貫通穴27a〜27dの開口縁部には、配管が接続される筒状の接続部(ノズル)28a〜28dが外面となる一方の面から突出するように気密又は液密に接続されている。
【0040】
尚、本実施形態において貫通穴は、正面視略長方形状の四隅にそれぞれ穿設されているが、この位置に限定される必要はなく、使用する熱媒体M、被熱交換体Wや熱交換器の設置方法、使用目的等によって好適な位置に適宜設けられれば良く、また、四箇所に限定される必要もない。
【0041】
また、各ノズル28a〜28dは、一方のフレームプレート2aと対向して隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…にも気密又は液密に接続され、第一流入路11及び第一流出路12にそれぞれ対応する二つのノズル28a,28bは、第一流入路11及び第一流出路12に対する熱媒体Mの流入及び流出(流出入)を可能とし、第二流入路21及び第二流出路22にそれぞれ対応する二つのノズル28c,28dは、第二流入路21及び第二流出路22に対する被熱交換体Wの流出入を可能としている。
【0042】
特に、熱媒体Mの流入口であるノズル28aは、該ノズル28aの熱交換器1側(フレームプレート2a側)端面全体がフレームプレート2aと対向して隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…に面接触し、該面接触部(面接触している端面全体)が溶着(ロウ付け)によって気密又は液密に接続されている。該伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…における前記溶着されている部分(溶着部)が形成されている面の反対面側には、被熱交換体Wが流通する前記第二空間20が形成されている。
【0043】
また、ノズル28aは、その基部(筒状ノズルのフレームプレート2a側部分)に肉厚(筒状ノズルを形成する周壁の壁厚)の薄い部分によって形成される膨長吸収部29(図3参照)を備えている。膨張吸収部29は、筒状に形成されたノズル28a表面(外周面)のフレームプレート2aの外側近傍に周方向に沿って設けられた凹部(溝)によって形成されている。より詳細には、周壁の肉厚が一定の筒状ノズル28aの外周面(径方向外側の周面)に、深さ及び幅が一定の凹部が前記溶着部(ノズル28aにおけるフレームプレート2aと対向して隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…側の端部)から外側に一定距離となる位置に(フレームプレート2aと対向して隣接する前記伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の外側面と平行になるように)設けられることによって形成されている。本実施形態においては、ノズル28aの肉厚tは0.003〜0.010mm、膨張吸収部29を形成する凹部の深さdは0.002〜0.009mm、幅wは0.003〜0.020mmである。また、前記溶着部から前記凹部の該溶着部側端部までの距離lが0.001〜0.010mmに設定されている。
【0044】
尚、上記数値範囲のうち、凹部の深さdは、ノズル28aの肉厚tよりも必ず小さい値(即ち、d<t)となる。例えば、tが0.003mmの時は、dが0.002mmであり、tが0.010mmの時は、dが0.009mmである。従って、tが0.003mmの時に、dが0.009mmである場合はない。
【0045】
この膨張吸収部29は、ノズル28a内を流れる熱媒体Mの熱によって生じるノズル28aの径方向の膨張を吸収するための部分である。即ち、熱媒体Mが流通、停止を繰り返すことで生じる温度差によるノズル28aの径方向の膨張、収縮を肉厚の薄くなった膨張吸収部29が径方向に伸縮(膨縮及び収縮)することによって内部応力を吸収し、ノズル28a自身の割れを防ぐと共に、ノズル28aの熱交換器1への接続部(溶着部)の割れも防ぐことができるようになる。
【0046】
尚、本実施形態においては、膨張吸収部29は、ノズル28aの外周面に凹部を設けることによって形成されているが、これに限定される必要はなく、ノズルの肉厚を薄くすることで径方向の伸縮を吸収できる形状であれば良い。例えば、凹部がノズルの内周面(径方向内側の周面)に設けられても良く、外周面及び内周面の両面に設けられても良い。
【0047】
他方のフレームプレート2bには、第一流入路11の形成位置に対応して貫通穴27eが穿設されている。該貫通穴27eの開口縁部には、前記ノズル28aと同一形状のノズル28eが同様に接続されている。そして、ノズル28aの中心軸とノズル28eの中心軸とが同一直線上となるように、積層される伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を挟んで対向する位置に設けられている。本実施形態においては、ノズル28eは、フレームプレート2bとの接続部と反対側の端部開口を封止板Fによって気密又は液密に封止しているが、熱交換器1の設置場所や使用目的によっては、前記端部開口を封止することなく配管を接続できるよう、開口状態にしても良い。
【0048】
複数枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のそれぞれは、正面視略長方形状に形成される本体部35と、該本体部35の外周縁部に設けられた折曲片部36とで構成されている。該折曲片部36は、本体部35と面交差する一方向側(積層方向側)に向けて本体部35の外周縁部から延出するように形成されている。そして、前記本体部35は、複数枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を積層した際に該複数枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…間に形成される第二空間20,…の後述する主流路37’に対応する伝熱部37と、後述するバイパス流路38’に対応するバイパス流路部38と、後述する連通路39’に対応する連通部39とを備える。
【0049】
伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、何れも板材をプレス加工することで形成されたもので、伝熱部37は、その両面に複数の線状の凹部(凹条40,…)及び凸部(凸条41,…)が交互に形成されており、波板形状になっている。即ち、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、板材をプレス加工されたものであるので、伝熱部37の一方の面で凹条40,…をなす部分は、他方の面で凸条41,…をなし、一方の面で凸条41,…をなす部分は他方の面で凹条40,…をなしており、伝熱部37に形成される凹条40,…及び凸条41,…が表裏における対応する部分で相反する態様で形成されている。
【0050】
バイパス流路部38は、積層状態において対向する(隣する)伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の少なくとも一方の本体部35内に形成される凹部によって構成されている。該バイパス流路部38(該凹部)は、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二流入路21と前記伝熱部37間に形成される空間とを連通するように第一流入路の外周と前記本体部35の周縁部との間に形成されている。そして、該バイパス流路部38の底部は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の積層方向と直交する方向の平坦面として形成されている。
【0051】
本実施形態においては、前記凹部(バイパス流路部38)は、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の両方にそれぞれ対向するように形成されている。この対向する前記凹部同士によって形成されるトンネル状の空間によって、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二流入路21と前記伝熱部37間に形成される空間(主流路37’)とを連通するバイパス流路38’が形成される。
【0052】
連通部39は、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の少なくとも一方の本体部35内に形成される凹部によって構成されている。該連通部39(該凹部)は、前記バイパス流路部38から第二流出路12方向に向いて延びるように、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の本体部35の長手方向外周縁部に沿って形成されている。そして、該連通部39の底部は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の積層方向と直交する方向の平坦面として形成されている。
【0053】
本実施形態においては、前記凹部(連通部39)は、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の両方にそれぞれ対向するように形成されている。この対向する前記凹部同士によって形成されるトンネル状の空間によって、積層状態において対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の前記バイパス流路部38間に形成される空間(バイパス流路38’)と前記伝熱部37間に形成される空間(主流路37’)とを接続する(連通)する連通路39’が形成される。
【0054】
そして、前記バイパス流路部38を形成する凹部の底部と、連通部39を形成する凹部の底部とは、面一となるように形成されている。しかし、これに限定される必要はなく、前記凹部の底部同士は、境界部に段差が形成されていても良い。また、前記凹部の底部は、平坦面でなく凹凸が形成されていても良い。
【0055】
また、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、板材をプレス加工することで形成され、それに伴って連通部39(凹部)が形成されると共に、その周囲に沿って凸部が形成される。そして、該凸部のうち、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の長手方向外周縁部から距離をおいて平行に形成される凸部(以下、単に「仕切ライン形成部L」という。)は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を積層すると、対向する前記凸部同士が互いに干渉して第一流入路11から第二流出路22に向いて延びる仕切ラインを形成する。
【0056】
前記仕切ライン形成部Lは、本実施形態においては凸条に形成されている。そして、該凸条は、第一流入路11側端部が該第一流入路11の径方向に向かって屈曲し、該屈曲した端部の先端が該第一流入路11の外周に接続するように形成されている。
【0057】
また、本実施形態においては、凹条40,…及び凸条41,…の態様(例えば、傾斜方向)を異にし、バイパス流路部38、連通部39及び仕切ライン形成部Lの積層方向における凹凸が逆である二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…が採用されている(図5(イ)及び(ロ)参照)。
【0058】
即ち、本実施形態に係る熱交換器1は、積層した状態で対向する凸条41,…同士(凹条40,…同士)が交差し(積層方向から見て格子状の配置となり)、その凸条41,…同士の交点で互いに点接触するよう、凹条40,…及び凸条41,…が形成されると共に、積層した状態で対向するバイパス流路部38間及び連通部39間がトンネル状の空間となるように形成された二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…が採用されている。
【0059】
これにより、二種類の伝熱プレート3a,3bを交互に重ねる(積層する)ことで、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…間において、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の対向する凹条40,…によって第一空間10,…の主流路37’と第二空間20,…の主流路37’とが交互に形成される。また、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の対向するバイパス流路部38,…と、対向する連通部39,…と、対向する仕切ライン形成部L,…とによって、バイパス流路38’及び連通路39’が第二流入路21と主流路37’とを連通するようなトンネル形状を第二空間20,…内に形成する。
【0060】
尚、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を積層した状態で、隣接する二枚の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のうち一方のフレームプレート2a側の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の折曲片部36が、他方のフレームプレート2b側の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の折曲片部36に外嵌した状態になり、隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の凸条40,…同士が点接触し、隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一空間10を形成する面のバイパス流路部38同士及び連通部39同士が面接触し、隣接する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二空間20を形成する面の仕切ライン形成部L同士が線接触するように寸法設定されている。
【0061】
即ち、バイパス流路部38と連通部39とは、板材をプレス加工することで形成されているので、一方の面(第二空間20,…を形成する面)が凹部として形成されていれば、他方の面(第一空間10,…を形成する面)の対応する部位は、凸部として形成されている。
【0062】
従って、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一空間10,…を形成する面において、対向するバイパス流路部38同士及び対向する連通部39同士は、それぞれ接触するような凸部として形成されていることから、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二空間20,…を形成する面において、対向するバイパス流路部38及び対向する連通部39同士は、それぞれ凹部同士が対向することとなり、空間が形成される。該空間のうち、バイパス流路部38に対応する空間部分は、バイパス流路38’を構成し、連通部39に対応する空間部分は、連通路39’を構成している。
【0063】
そして、前記バイパス流路38’は、凹部からなるバイパス流路部38同士が対向して配置されることによって形成されていることから、第二流入路21と主流路37’とを連通するように第一流入路11の外周と前記本体部35の周縁部との間に形成される。
【0064】
また、前記連通路39’は、凹部からなる連通部39同士が対向して配置されることによって形成されていることから、バイパス流路38’と主流路37’とを接続し、第一流入路11から第二流出路22に向いて延びるように、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の長手側周縁部に沿って形成される。
【0065】
各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、長手方向一端側の一方側隅部に第一流入路11を形成するための第一流入路用開口11’が穿設され、同じく一端側の他方側隅部に第二流入路21を形成するための第二流入路用開口21’が形成されている。即ち、第一流入路用開口11’と第二流入路用開口21’とは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の長手方向の一端部であって、前記長手方向と直交する方向(短手方向)の両端部(一端側の隅部)にそれぞれ形成されている。
【0066】
また、各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…は、長手方向他端側の他方側隅部(前記第一流入路用開口11’と対角方向隅部)に第一流出路12を形成するための第一流出路用開口12’が穿設され、同じく他端側の一方側隅部(前記第二流入路用開口21’と対角方向隅部)に第二流出路22を形成するための第二流出路用開口22’が形成されている。即ち、第一流出路用開口12’と第二流出路用開口22’とは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の長手方向の他端部であって、前記長手方向と直交する方向(短手方向)の両隅部(他端側の隅部)にそれぞれ形成されている。
【0067】
これにより、第一流入路用開口11’及び第一流出路用開口12’は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の本体部35の対角に、また、第二流入路用開口21’及び第二流出路用開口22’は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の本体部35の対角に形成される。
【0068】
前記第一流出路用開口12’、第二流入路用開口21’及び第二流出路用開口22’は、それぞれ略同径の円形状の穴として形成(穿設)されている。そして、第一流入路用開口11’は、他の開口12’,21’,22’よりも大径の円形状の穴として形成されている。
【0069】
本実施形態に係る熱交換器1は、上記構成の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…同士を溶着(ロウ付け、又はブレージング)することで第一空間10,…と第二空間20,…とが気密又は液密に画されている。具体的には、積層された伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の外周(本実施形態においては嵌合状態にある折曲片部36同士)をロウ付けすることで、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の外周縁部間が全周に亘って封止されている。
【0070】
また、上述のように、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の外周縁部間が封止されると共に、隣接して対向する伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一流入路用開口11’縁部間、第一流出路用開口12’縁部間、第二流入路用開口21’縁部間及び第二流出路用開口22’縁部間もロウ付けによって封止され、さらに、第一空間10,…におけるバイパス流路部38間、連通部39間及び第二空間20,…における仕切ライン形成部L間もロウ付けされている。
【0071】
伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…(二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のうちの一方)は、第二空間20,…を形成する面の第一流入路用開口11’縁部及び第一流出路用開口12’縁部が、積層して隣する他の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…(二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のうちの他方)の第二空間20,…を形成する面の第一流入路用開口11’縁部及び第一流出路用開口12’縁部と密接するような形状に形成されている。
【0072】
従って、上述のように密接する部位(開口縁部)同士をロウ付けすることにより、各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一流入路用開口11’が断続的に連なって熱媒体Mを流入させるための第一流入路11が各第一空間10,…にのみ連通して形成されると共に、第一流出路用開口12’が断続的に連なって、熱媒体Mを流出させるための第一流出路12が第一空間10,…にのみ連通して形成される。
【0073】
そして、積層方向における前記第一流入路11の両側(フレームプレート2a側及びフレームプレート2b側)にはノズル28a及び28eがそれぞれ接続されており、該ノズル28a及び28eの内孔も流路を構成する。即ち、両ノズル28a,28eの内孔及び断続的に連なった第一流入路用開口11’,…によって、熱交換器1を積層方向に貫通するような流路が形成される。
【0074】
また、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…(二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のうちの他方)は、第一空間10,…を形成する面の第二流入路用開口21’縁部及び第二流出路用開口22’縁部が、積層して隣する他の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…(二種類の伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のうちの一方)の第一空間10,…を形成する面の第二流入路用開口21’縁部及び第二流出路用開口22’縁部と密接するような形状に形成されている。
【0075】
従って、上述のように密接する部位(開口縁部)同士をロウ付けすることにより、各伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二流入用開口21’が断続的に連なって被熱交換体Wを流入させるための第二流入路21が各第二空間20,…にのみ連通して形成されると共に、第二流出用開口22’が断続的に連なって、被熱交換体Wを流出させるための第二流出路22が第二空間20,…にのみ連通して形成されている。
【0076】
これらによって、第一流入路用開口11’、第一流出用開口12’、第二流入用開口21’及び第二流出用開口22’の配置に対応して、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の積層方向から見て(正面視)、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の四隅には、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の積層方向に延びる第一流入路11、第一流出路12、第二流入路21及び第二流出路22が形成される。
【0077】
本実施形態に係る熱交換器1は、上記構成からなり、次に、床暖房等の装置に採用した時(被熱交換体Wに対する熱交換を行う時)の熱媒体M及び被熱交換体Wの流れについて、図6にも基づいて説明する。
【0078】
熱媒体Mは、配管の接続されたノズル28aを介して第一流入路11に流れ込み、該第一流入路11に連通する各第一空間10,…に流れ込むことになる。その一方で、被熱交換体Wは、配管の接続されたノズル28cを介して第二流入路21に流れ込み、該第二流入路21に連通する各第二空間20,…に流れ込むことになる。従って、第一空間10,…に流れ込んだ熱媒体Mは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の一端側(熱交換器1の上部側)の第一流入路11から他端側(熱交換器1の下部側)の第一流出路12に向けて対角線状に流れる(図6(イ)参照)のに対し、第二空間20,…に流れ込んだ被熱交換体Wは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の一端側(熱交換器1の上部側)の第二流入路21から他端側(熱交換器1の下部側)の第二流出路22に向け、前記第一空間10,…を流れる熱媒体Mと交差する方向の対角線状に流れ(図6(ロ)参照)、第一空間10,…と第二空間20,…との間で伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の伝熱部37を介して互いに熱交換される。
【0079】
その際、第二流入路21から第二空間20,…内に流入した被熱交換体Wは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の短手方向に拡がりつつ伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の他端に設けられた第二流出路22に向けて主流路37’を流れる被熱交換体W(図6(ロ)の矢印α参照)と、第二流入路21の短手方向(第一流入路11方向)に向かい、第一流入路11の外周と伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の本体部35外周縁部との間に形成されるバイパス流路38’を経て、該バイパス流路38’と主流路37’とを接続する連通路39’を流れた後、主流路37’を流れている前記被熱交換体Wと合流する被熱交換体W(図6(ロ)矢印β参照)とに分かれる。
【0080】
ここで、前記第一流入路11の外周(第一流入路11を形成するために、積層された伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二空間20,…を形成する面の第一流入用開口11’縁部同士を密接させてロウ付けした部分)の一部は、前記バイパス流路38’の内周面の一部を構成している。従って、該バイパス流路38’を流れる被熱交換体Wは、バイパス流路38’の内周面の一部を構成している第一流入路11の外周に接しつつ流れることになる。そのため、第一流入路11内を流通する熱媒体Mによって該第一流入路11の外周に熱が与えられても、前記バイパス流路38’内を流れる被熱交換体Wによって熱が連続的に奪われるため、該第一流入路11の外周に熱が蓄積されることはない。
【0081】
また、バイパス流路38’の主流路37’側端部が連通路39’によって主流路37’と接続されており、該連通路39’は、第一流入路11から第二流出路22に向いて延びるように形成されていることから、前記バイパス流路38’内で第一流入路11の外周から熱を奪った後の被熱交換体Wは、第二流入路から第二流出路に向けて主流路37’を流れる被熱交換体Wの流れを乱すことなく(被熱交換体Wの流れに逆らうことなく)合流する。
【0082】
即ち、バイパス流路38’から流れ出る被熱交換体Wは、連通路39’に沿って流れ出ることで、主流路37’を流れる被熱交換体Wの流れに対し、入射角が鋭角となるように合流する。そのため、主流路37’を流れる被熱交換体Wが逆行するように連通路39’に流れ込んで、バイパス流路38’内を流れる被熱交換体Wの流れを妨げることがない。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る熱交換器1は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…によって形成される前記第二空間20,…が、第二流入路21と第二流出路22との間に形成される主流路37’と、第二流入路21から主流路37’まで連通するように、第一流入路11の外周と伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…外周縁部との間に形成されるバイパス流路38’とを備えることによって、第一流入路11の外周が熱媒体Mによって加熱されても、前記バイパス流路38’を流れる被熱交換体Wによって熱が連続的に奪い去られるため、該第一流入路11の外周に熱が蓄積されることがなくなる。
【0084】
その結果、第一流入路11の外周に熱媒体Mからの熱が集中的に作用するのを防止することができるようになる。これにより、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の一部(第一流入路11の外周)に熱応力が発生するのを抑制することができ、伝熱プレートに局所的な割れが発生するのを防ぐことができる。
【0085】
また、熱交換器1を使用する機器の運転を断続的にする(運転、停止を繰り返す)ことによって、前記第一流入路11内で熱媒体Mが流通、停止を繰り返したとしても、第一流入路11の外周に熱が蓄積されることがないため、第一流入路11の外周に発生する温度差(熱媒体Mの流通時と停止時との温度差)が小さくなる。そのため、熱疲労による割れを防ぐこともできる。
【0086】
即ち、第一流入路11の外周は、その内部を流通する熱媒体Mによって熱が与えられても、バイパス流路38’を流通する被熱交換体Wが次々に該熱を奪い続けるため、熱が蓄積しないので温度が上がらなくなり、第一流入路11を熱媒体Mが流れている時と、流れていない時との温度差が小さくなる。そのため、第一流入路11の外周に熱が集中的に作用して熱応力が発生することを防ぐことができるようになり、熱媒体Mと被熱交換体Wとの温度差が大きい用途であっても、該温度差に起因する熱応力による局所的な割れが発生するのを防ぐことができるようになる。
【0087】
また、本実施形態のように、第一流入路11の熱媒体Mが流入してくる側と反対端部側に前記ノズル28aと同様にノズル28eが接続されることで、積層された複数枚の伝熱プレートを積層方向に貫通するような流路が形成される。そのため、第一流入路11の該反対端部側に該第一流入路を封止するために配置される第一流入路用開口11’が穿設されていない伝熱プレート3a’(図7参照)の第一流入路11に対応する部分11”に熱が集中的に作用して熱応力が発生し、局所的な割れが発生するといった問題が生じることを防ぐことができる。
【0088】
即ち、従来の熱交換器1のように、前記伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の積層方向において、前記積層された複数枚の伝熱プレートに対し直交する方向に第一流入路11が形成され、その流入側と反対端部側がノズルを配されることなく第一流入路用開口11’が穿設されていない伝熱プレート3a’によって封止された場合、一方端部側から流入してきた熱媒体Mは、他方端部側まで流れて前記第一流入路用開口11’が穿設されていない伝熱プレート3a’の第一流入路11に対応する部分11”に当たる(接する)。該部分11”は、第一流入路11と直交する伝熱プレート3a’の一部によって形成され、その面積は、第一流入路11の横断面(第一流入路11と直交する方向の断面)と同一となる。従って、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一流入路11を形成する第一流入路用開口11’よりも、熱媒体Mと接する面積は極めて大きくなる。従って、熱媒体が第一流入路11の他方端部側に設けられた第一流入路用開口11’が穿設されていない伝熱プレート3a’の第一流入路11に対応する部分11”に当たることで、該部分11”に多くの熱が作用し、熱応力によってかかる部分に局所的な割れが発生する。
【0089】
しかし、前記ノズル28eを第一流入路11の他方端部側に接続することで第一流入路11の他方端部側を封止するための第一流入路用開口11’が穿設されていない伝熱プレート3a’を設ける必要がなくなる。そのため、前記第一流入路11に対応する部分11”に多くの熱が作用して局所的な割れが発生するといった問題を解消することができる。
【0090】
また、その場合、前記第一流路11の他方端部側に接続されたノズル28eの一端部と伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…との溶着部が熱媒体Mによって熱が加えられるため、かかる部分に熱応力の発生が懸念される。しかし、該溶着部は、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第二空間20,…を形成している面の反対側の面に形成されていることから、前記同様、被熱交換体Wが流通している限り熱を連続的に奪い続けるため、該溶着部に熱が集中的に作用して局所的な割れが発生することはない。
【0091】
さらに、第一流入路11の他方端部側を伝熱プレート3a’の一部で封止(端部処理)する場合よりも、ノズル28eを接続する方が、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の形状の加工や密封処理を行うよりも容易に行うことができるため、熱交換器1を作製するための時間及びコストを抑制することができる。
【0092】
尚、本発明に係る熱交換器は、上記実施形態に限定される必要はなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0093】
例えば、本実施形態において、バイパス流路部38を形成する凹部は、積層した伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…の第一空間において、対向しているバイパス流路部38間の間隔が無く、密接するような深さに設定されているが、これに限定される必要はない。
【0094】
即ち、バイパス流路部38を形成する凹部の深さは、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を積層した際に、被熱交換体Wが流れる第二空間20,…において、第二流入路21から流入した被熱交換体Wが、熱媒体Mから加えられた第一流入路11の外周の熱を奪いながら流れるために第一流入路11の外周に接しつつ流れることができる流路が形成されるような深さ又は高さであれば良い。
【0095】
この場合、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…のバイパス流路部38の底部に凸部又は凹部(凸条又は凹条)等を形成しても(即ち、平坦面で無くても)良いが、伝熱プレート3a,3b,3a,3b,…を積層した際、バイパス流路38’を流れる被熱交換体Wによる第一流入路11の外周の冷却効率が高い方が好ましいため、バイパス流路38’を流れる被熱交換体Wの量が多くなるよう、主流路37’よりも被熱交換体Wが流れる際の抵抗が少なくなるような形状が好ましい。
【0096】
また、本実施形態においては、バイパス流路38’と主流路37’とが連通(接続)するように、その境界部に第一流入路11から第二流出路22に向いて真っ直ぐに延びる連通路39’が設けられているが、必ずしも設ける必要はなく、また、真っ直ぐである必要はない。
【0097】
即ち、連通路39’は、バイパス流路38’から流れ出る被熱交換体Wが主流路37’を流れる被熱交換体Wの流れを乱すことなく合流できるような形状であれば曲がっていても良く、テーパのように連通路39’のバイパス流路38’側(入り口側)と主流路37’側(出口側)との開口面積が異なっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係るプレート式熱交換器の概略斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る図1のI−I断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る図1のII−II断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る図1のIII−III断面図を示す。
【図5】同実施形態に係るプレート式熱交換器を構成する伝熱プレートの正面図であって、(イ)は、一方の伝熱プレートの正面図を示し、(ロ)は、他方の伝熱プレートの正面図を示す。
【図6】同実施形態に係るプレート式熱交換器内の熱媒体及び被熱交換体の流れを説明するための図であって、(イ)は、第一空間内での熱媒体の流れを示し、(ロ)は、第二空間内での被熱交換体の流れを示す。
【図7】同実施形態に係るプレート式熱交換器を構成する第一流入用開口が穿設されていない伝熱プレートの部分拡大正面図を示す。
【図8】従来のプレート式熱交換器の全体斜視図を示す。
【図9】従来のプレート式熱交換器を構成する伝熱プレートの正面図であって、(イ)は、一方の伝熱プレートの正面図を示し、(ロ)は、他方の伝熱プレートの正面図を示す。
【図10】図7のA−A断面図であって、従来のプレート式熱交換器の第一流路近傍の部分拡大図を示す。
【符号の説明】
【0099】
1…プレート式熱交換器、2a,2b…フレームプレート、3a,3a’,3b…伝熱プレート、10…第一空間、11…第一流入路、11’…第一流入路用開口、12…第一流出路、12’…第一流出路用開口、20…第二空間、21…第二流入路、21’…第二流入路用開口、22…第二流出路、22’…第二流出路用開口、27a,27b,27c,27d,27e…開口、28a,28b,28c,28d,28e…ノズル、29…膨張吸収部、35…本体部、36…折曲片部、37…伝熱部、37’…主流路、38…バイパス流路部、38’…バイパス流路、39…連通部、39’…連通路、40…凹条、41…凸条、α…主流路での被熱交換体Wの流れ、β…バイパス流路での被熱交換体Wの流れ、L…仕切ライン形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数枚の伝熱プレート間に熱媒体を流通させる第一空間と被熱交換体を流通させる第二空間とが各伝熱プレートを境にして交互に形成され、各伝熱プレートに形成された開口が連なって第一空間に対して熱媒体を流出入させる第一流入路と第一流出路とが形成されると共に第二空間に対して被熱交換体を流出入させる第二流入路と第二流出路とが形成され、伝熱プレート同士を溶着することで第一空間と第二空間とが気密又は液密に画されているプレート式熱交換器であって、前記第二空間は、第二流入路と第二流出路との間に形成される主流路と、第二流入路から主流路に連通するように、第一流入路の外周と伝熱プレート外周縁部との間に形成されるバイパス流路とを備えることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記伝熱プレートは、積層した際の前記バイパス流路に対応する部分の間隔が主流路に対応する部分の間隔よりも大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路が伝熱プレートの四隅に位置して形成され、前記第一流入路と第一流出路とが互いに対角に位置すると共に前記第二流入路と第二流出路とが互いに対角に位置し、前記バイパス流路と主流路とを接続する連通路を第二流出路に向いて延びるように形成すべく、積層状態で第一流入路から第二流出路に向いて延びる仕切ラインが形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱プレートは、対向配置されることで前記凸部同士が干渉するように前記主流路に対応する部分の両面に複数の凹部及び凸部が形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記積層された複数枚の伝熱プレートを積層方向両側から挟む一対のフレーム板が設けられ、該一対のフレーム板の一方は、前記第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路に対応する位置にそれぞれ開口が設けられると共に、開口毎に前記第一流入路、第一流出路、第二流入路及び第二流出路に連通する筒状のノズルが配され、少なくとも前記第一流入路に連通するノズルは、伝熱プレートの前記第二空間を形成している面の反対側の面に一端部が溶着されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のプレート式熱交換器。
【請求項6】
前記一対のフレーム板の他方は、少なくとも第一流入路に対応する位置に開口が設けられると共に、該開口に前記第一流入路に連通する筒状のノズルが配され、該ノズルは、伝熱プレートの前記第二空間を形成している面の反対側の面に一端部が溶着されていることを特徴とする請求項5記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−205634(P2007−205634A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24892(P2006−24892)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)