説明

プレート式熱交換器

【課題】 熱影響で伝熱プレートが伸縮しても、伝熱プレート同士が溶着された溶着封止部又はその近傍に亀裂が入るのを抑制することができ、製品寿命の延命を図ることのできるプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】 積層された伝熱プレート間に各伝熱プレートを境にして第一流路と第二流路とが交互に形成され、第一流路及び第二流路の少なくとも何れか一方が、伝熱プレート同士を溶着した溶着封止部で画定されたプレート式熱交換器であって、伝熱プレートは、前記流路側で溶着封止部に沿うように、該伝熱プレートの面方向の伸縮を吸収する伸縮吸収部が形成され、伸縮吸収部は、溶着封止部から傾斜した外側立上部と、流路内部側の領域から傾斜した内側立上部とを備え、外側立上部と内側立上部とが溶着封止部に沿った曲げ稜線を形成する一つ以上の曲部を介して接続されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換媒体と被熱交換媒体とを熱交換させるためのプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレス成形された複数の伝熱プレートが積層され、伝熱プレート間に各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器が知られている。
【0003】
かかるプレート式熱交換器には、種々のタイプのものがあり、例えば、伝熱プレートの密接する部分同士をロウ付けやレーザー溶接等で線状又は帯状に溶着して溶着封止部を形成し、その溶着封止部によって第一流路及び第二流路を画定したものがある。また、二枚の伝熱プレートを線状又は帯状に溶着して溶着封止部を形成し、該溶着封止部によって第一流路又は第二流路の何れか一方が伝熱プレート間(内部)に画定された伝熱カセットを複数積層したものもある。かかるプレート式熱交換器は、複数の伝熱カセット間にガスケットを介設して伝熱カセット(伝熱プレート)間に第一流路又は第二流路の何れか他方が形成されている。
【0004】
これらのプレート式熱交換器は、伝熱プレート同士が溶着によって強固に固定されて剛性が高い上に、第一流路及び第二流路の少なくとも何れか一方が、ガスケットを介在させることなく伝熱プレート同士の溶着(溶着封止部)によって画定されるため、例えば、流通させる熱交換媒体或いは被熱交換媒体の圧力が高圧である場合や、ガスケットを劣化させるような熱交換媒体或いは被熱交換媒体を流通させる場合等に好適であるとして採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−106781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成のプレート式熱交換器は、熱交換に伴う温度変化の影響や、熱交換媒体或いは被熱交換媒体の流通に伴う圧力変化等で伝熱プレートが面方向に伸縮し、その伸縮によって伝熱プレートの溶着封止部或いはその近傍に亀裂が入ってしまう場合があった。すなわち、上記構成のプレート式熱交換器は、第一流路及び第二流路の少なくとも何れか一方を画定すべく、伝熱プレート同士が溶着によって強固に固定されているため、温度変化等によって伝熱プレートが伸縮を繰り返すと、強固に固定された溶着封止部或いはその近傍に局部的な応力が繰り返し応力として集中的に作用して疲労破壊してしまう場合があった。
【0006】
このような問題は、伝熱プレート同士を溶着したプレート式熱交換器にとっては致命的な問題である。すなわち、上記構成のプレート式熱交換器は伝熱プレートを溶着して恒久的な構造とされているため、上述の如く疲労破壊(亀裂)が生じると補修することは非常に困難である。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体或いは被熱交換媒体の流通に伴う圧力変化等で伝熱プレートが伸縮しても、伝熱プレート同士が溶着された溶着封止部又はその近傍に亀裂が入るのを抑制することができ、製品寿命の延命を図ることのできるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプレート式熱交換器は、プレス成形された複数の伝熱プレートが積層され、伝熱プレート間に各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成され、第一流路及び第二流路の少なくとも何れか一方の流路が、伝熱プレート同士を線状又は帯状に溶着した溶着封止部で画定されたプレート式熱交換器であって、前記伝熱プレートは、前記流路側で溶着封止部に沿うように、該伝熱プレートの面方向の伸縮を吸収する伸縮吸収部が形成され、該伸縮吸収部は、溶着封止部から傾斜して立ち上がる外側立上部と、流路内部側の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部とを備え、外側立上部と内側立上部とが溶着封止部に沿った曲げ稜線を形成する一つ以上の曲部を介して直接的又は間接的に接続されて構成されていることを特徴とする。なお、ここで「曲げ稜線」とは、伝熱プレートを曲げられることで出来る線を意味し、例えば、伝熱プレートが屈曲されて実際に形成される線(実際の稜線)は勿論のこと、伝熱プレートが丸みを持たせて曲げられて形成される頂部上に延びる頂線(概念的な稜線)を含む概念である。
【0009】
上記構成のプレート式熱交換器によれば、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体或いは被熱交換媒体の流通に伴う圧力変化等によって伝熱プレートが面方向に伸縮する際に、伸縮吸収部を構成する外側立上部、内側立上部、及び曲部がバネの如く弾性変形することになる。これにより、伝熱プレートの伸縮が繰り返し発生しても、溶着封止部又はその近傍に対して過大な繰り返し応力が直接的且つ集中的に作用するのを防止することができ、溶着封止部又はその近傍で疲労破壊(亀裂)が発生するのを抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様として、前記伸縮吸収部は、外側立上部と内側立上部とが溶着封止部と直交する方向に並ぶ複数の曲部を介して接続されて構成されていることが好ましい。このように複数の曲部を介在させれば、伝熱プレートの伸縮を各曲部に分散させることができ、吸収できる伝熱プレートの伸縮量を大きくすることができる。また、上述の如く、伝熱プレートの伸縮が各曲部に分散されるので、各曲部に発生する応力を小さくすることができ、曲部での疲労破壊についても抑制することができる。
【0011】
そして、前記伸縮吸収部は、前記曲部の配置パターンの異なる複数の分割吸収部が溶着封止部の長手方向に交互に設けられて形成されてもよい。このようすれば、伝熱プレートの伸縮を吸収することができる上に、各分割吸収部における曲部の配置パターンの相違で、伝熱プレート(当該プレート式熱交換器)の剛性を高めることもできる。
【0012】
また、前記伸縮吸収部は、外側立上部及び内側立上部が、溶着封止部の略全周に沿って形成されるとともに、溶着封止部の略全周に沿った曲げ稜線を形成する曲部を介して接続されてもよい。このようにすれば、伸縮吸収部を複雑な形状にすることなく伝熱プレートの伸縮を吸収することができる。
【0013】
そして、前記伸縮吸収部は、隣接する伝熱プレートに対して非接触になるように形成されてもよい。このようにすれば、伝熱プレートの伸縮に伴って伸縮吸収部(曲部)が変形したとしても、隣接する伝熱プレートの伸縮吸収部同士が干渉することがなく、各伸縮吸収部(曲部)における変形の円滑性を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係るプレート式熱交換器によれば、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体或いは被熱交換媒体の流通に伴う圧力変化等で伝熱プレートが伸縮しても、伝熱プレート同士が溶着された溶着封止部又はその近傍に亀裂が入るのを抑制することができ、製品寿命の延命を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に熱交換器という。)は、図1及び図2に示す如く、プレス成形された複数の伝熱プレート10a,10bを積層して構成されたもので、該伝熱プレート10a,10b間に各伝熱プレート10a,10bを境にして熱交換媒体aを流通させる第一流路Aと被熱交換媒体bを流通させる第二流路Bとが交互に形成されている。そして、該熱交換器1は、前記第一流路A及び第二流路Bの少なくとも何れか一方が、伝熱プレート10a,10b同士を線状又は帯状に溶着した溶着封止部WL(図3参照)で画定されており、本実施形態においては、前記第一流路Aが溶着封止部WLによって画定される一方、第二流路Bが伝熱プレート10a,10b間に介設された後述する第一ガスケットG1によって画定されている。
【0017】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る熱交換器1は、伝熱プレート10a,10bが二枚一組で溶着され、内部に流体からなる熱交換媒体a、又は被熱交換媒体bの何れか一方を流通させる流路を形成した複数の伝熱カセット10と、積層された複数の伝熱カセット10間に熱交換媒体a、又は被熱交換媒体bの何れか他方を流通させる流路を形成すべく、複数の伝熱カセット10間に介設される第一ガスケットG1と、積層状態にある伝熱カセット10を挟み込む一対のフレームFa,Fbとを備える。
【0018】
これにより、本実施形態に係る熱交換器1は、伝熱カセット10内(伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10b間)に熱交換媒体a、又は被熱交換媒体bの何れか一方を流通させる流路Aが形成され、伝熱カセット10間(隣接する伝熱カセット10の伝熱プレート10a,10b間)に熱交換媒体a、又は被熱交換媒体bの何れか他方を流通させる流路Bが形成されている。なお、本実施形態においては、伝熱カセット10内に熱交換媒体aを流通させる一方、伝熱カセット10間に被熱交換媒体bを流通させるようにしている。従って、以下の説明においては、伝熱カセット10内の流路Aを第一流路といい、伝熱カセット10間の流路Bを第二流路ということとする。
【0019】
ここで伝熱カセット10を構成する伝熱プレート10a,10bについて具体的に説明すると、各伝熱プレート10a,10bは、チタンやステンレス等からなる平面視略長方形状の平板をプレス成形したもので、図3に示す如く、四隅に円形状の開口11a,11b,11c,11dが形成されるとともに、表裏に多数の凹部及び凸部が形成されている。
【0020】
伝熱プレート10a,10bに形成された主要な凹部(凸部)として、伝熱プレート10a,10b同士を溶着して封止するための封止用凹部15,16(第一封止用凹部15、第二封止用凹部16)や、ガスケットG1,G2を配設するためのガスケット配設用凹部17a,17b、第一流路A及び第二流路Bの内部を凹凸にするための流路用の凹部及び凸部(図示省略)等が形成されている。なお、上述の如く、各伝熱プレート10a,10bはプレス成形されたものであるため、何れか一方の面に形成された凹部の反対面側はそれに対応した凸部となり、凸部の反対面側はそれに対応した凹部になっている。また、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bは、互いに重ね合わされて伝熱カセット10を構成するため、重ね合わせ方向から見た前記封止用凹部15,16及びガスケット配置用凹部17a,17bの形態は同じであるが、重ね合わせ面を基準にして前記封止用凹部15,16及びガスケット配置用凹部17a,17bの凹凸が対称に形成されている。
【0021】
前記第一封止用凹部15は、伝熱プレート10a,10bの短手方向の一端側で、且つ長手方向の両端部に位置する二つの開口11a,11b(第一流入用開口11a、第一流出用開口11b)を、該伝熱プレート10a,10b上で包囲するように形成されている。本実施形態に係る第一封止用凹部15は、伝熱プレート10a,10bに短手方向の他端側から一端側に裾広がりした略台形状の領域を画定し、第一流路Aの輪郭を形成している。該第一封止用凹部15は、該凹部の底側ほど狭まるように断面略台形状に形成されている。
【0022】
また、前記第二封止用凹部16は、伝熱プレート10a,10bの短手方向の他端側で、且つ長手方向の両端部に位置する残りの二つの開口11c,11d(第二流入用開口11c、第二流出用開口11d)のそれぞれの周囲に円環状に形成されており、第一封止用凹部15と同様、該凹部の底側ほど狭まるように断面略台形状に形成されている。
【0023】
前記第一封止用凹部15及び第二封止用凹部16は、何れも伝熱カセット10の両面(外面)となる各伝熱プレート10a,10bの一方面に形成されている。すなわち、前記第一封止用凹部15及び第二封止用凹部16は、伝熱カセット10を構成すべく二枚の伝熱プレート10a,10bのそれぞれを重ね合わせた状態で、第一封止用凹部15、及び第二封止用凹部16の反対側に形成される互いの凸部(封止用凹部15,16の底部)同士が密接するように形成されている。
【0024】
前記ガスケット配設用凹部17a,17bには、第二流路Bを画定するための前記第一ガスケットG1が配設される第一ガスケット配設用凹部17aと、伝熱カセット10の第一流入用開口11a及び第一流出用開口11bと外部との連通を遮断するためのガスケット(第二ガスケット)G2が配設される第二ガスケット配設用凹部17bとが設けられている。
【0025】
第一ガスケット配設用凹部17aは、第二流入用開口11c、及び第二流出用開口11dの両方を、該伝熱プレート10a,10b上で包囲するように形成されている。本実施形態に係る第一ガスケット配設用凹部17aは、伝熱プレート10a,10bに短手方向の一端側から他端側に裾広がりした略台形状の領域を画定し、第二流路Bの輪郭を形成している。該第一ガスケット配設用凹部17aについても、該凹部の底側ほど狭まるように断面略台形状に形成され、伝熱カセット10の両面(外面)となる各伝熱プレート10a,10bの一方面に設けられている。なお、本実施形態に係る熱交換器1は、第一流路A及び第二流路Bが伝熱プレート10a,10bの長手方向に延びる中心線CLを基準にして鏡像状態で形成されるように構成されている。このため、第一流路Aを第二流路Bと鏡像状態をなす台形状の領域に形成すべく、第一封止用凹部15のうち、伝熱プレート10a,10bの短手方向の両側に位置する直線部分が、第一ガスケットG1は配設するための第一ガスケット配設用凹部17aの一部として活用される。
【0026】
また、前記第二ガスケット配設用凹部17bは、第一流入用開口11a及び第一流出用開口11bのそれぞれの周囲に設けられている。該第二ガスケット配設用凹部17bについても、該凹部の底側ほど狭まるように断面略台形状に形成され、伝熱カセット10の両面(外面)となる各伝熱プレート10a,10bの一方面に設けられている。
【0027】
前記流路用の凹部及び凸部は、前記第一封止用凹部15に包囲される領域、及び第一ガスケット配設用凹部17aに包囲される領域に複数設けられている。該複数の流路用の凹部及び凸部は、伝熱プレート10a,10bの長手方向に延びる中心線CLに対して交差方向に延びるように形成され、それぞれが伝熱プレート10a,10bの面方向で交互に形成されている。そして、流路用の凹部及び凸部は、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bは、重ね合わせた状態で、相手側の流路用の凹部及び凸部に対して交差した態様となり、凸部同士が点接触するように形成されている。
【0028】
前記伝熱カセット10は、上記構成の二枚の伝熱プレート10a,10bを重ね合わせた状態で、両伝熱プレート10a,10bの第一封止用凹部15の底部同士が線状又は帯上に溶着され(本実施形態においてはレーザー溶接によって線溶接され)、第一封止用凹部15の底部同士が封止された溶着封止部WLが形成されるとともに、該溶着封止部WLで画定された第一流路Aが形成されている。該溶着封止部WLは、第一封止用凹部15に沿って形成されるため、これによって画定された領域内には第一流入用開口11a、及び第一流出用開口11bが含まれている。これにより、伝熱プレート10a,10b間で溶着封止部WLによって画定された第一流路Aは、図4(a)に示す如く、伝熱プレート10a,10bの長手方向の一端側にある第一流入用開口11a(第一流入用開口11aが連なって形成される第一流入路R1(図2参照))から流れ込む熱交換媒体aが台形状の流れを作って、長手方向の他端側にある第一流出用開口11b(第一流出用開口11b…が連なって形成される下流側の第一流出路R2(図2参照))から流れ出るように形成されている。また、該伝熱カセット10は、伝熱プレート10a,10bの第二封止用凹部16の底部同士も溶着(本実施形態においてはレーザー溶接によって線溶接)されている。これにより、第二流入用開口11c及び第二流出用開口11dの周囲が封止され、これらの開口11c,11dと第一流路Aや外部との連通が遮断されている。なお、図において、線溶接による溶接線を三点鎖線で示している。
【0029】
図3に戻り、本実施形態に係る伝熱カセット10(伝熱プレート10a,10b)には、該伝熱カセット10内の流路(本実施形態においては第一流路A)側で溶着封止部WLに沿うように、伝熱プレート10a,10bの面方向の伸縮を吸収するための伸縮吸収部20が形成されている。すなわち、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体a或いは被熱交換媒体bの流通に伴う圧力変化等で伝熱プレート10a,10bが全体的に伸縮するため、伸縮吸収部20は、熱交換媒体a或いは被熱交換媒体b(本実施形態においては熱交換媒体a)の影響を受ける流路内部側(本実施形態においては第一流路Aの内側)に溶着封止部WLの全長に亘って沿うように形成されている。
【0030】
ここで伸縮吸収部20について具体的に説明すると、該伸縮吸収部20は、図5(a)〜(c)に示す如く、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部31,41と、第一流路Aの内部側(伸縮吸収部20よりも内側)の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部32,42とを備え、外側立上部31,41と内側立上部32,42とが、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成し且つ溶着封止部WLと直交する方向に間隔を有して配設された二つ以上の曲部50a…,60a…を介して間接的に接続されている。なお、曲げ稜線は、伝熱プレートを曲げられることで出来る線で、図において明確に示しているが、本実施形態においては、曲部50a…,60a…がプレス成形によって丸みを持って形成されることから、ここで言う曲げ稜線BLとは、曲部50a…,60a…の頂部上に延びる頂線を意味するものである。但し、曲部50a…,60a…が屈曲された場合においては、現実に折り曲げ線が形成されるため、その折り曲げ線が曲げ稜線BLとなることは言うまでもない。
【0031】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、伝熱カセット10内の流れを考慮して、溶着封止部WLの長手方向に曲部50a…の配置パターンの異なる第一伸縮吸収部(分割吸収部)30と第二伸縮吸収部(分割吸収部)40とが交互に形成されている。なお、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20についても、対向する相手方に対して重ね合わせ面(溶着封止部WLを構成する第一封止用凹部15の底部同士が互いに密接する密接面P)を基準に断面形状が対称となるように形成されている。
【0032】
前記第一伸縮吸収部30は、図5(b)に示す如く、外側立上部(以下、第一外側立上部という。)31と内側立上部(以下、第一内側立上部という。)32とが二つの曲部50a…を介して接続されている。具体的には、本実施形態に係る第一伸縮吸収部30は、封止用凹部15の底部でもある溶着封止部WLから伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一外側立上部31と、該伸縮吸収部20よりも第一流路A側の領域(伝熱プレート10a,10bの内側の領域)から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一内側立上部32と、第一外側立上部31と第一内側立上部32とを接続し、これらの間で前記密接面Pと同方向に延びるように平坦に形成された接続部33とで構成されている。
【0033】
これにより、本実施形態に係る第一伸縮吸収部30は、断面が伝熱カセット10の外側に天部を有する台形状に形成されている。すなわち、本実施形態に係る第一伸縮吸収部30は、第一外側立上部31と接続部33との接続部分、及び、第一内側立上部32と接続部33との接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図5(a)参照)を形成した曲部50a…が形成されている。
【0034】
他方、第二伸縮吸収部40は、図5(c)に示す如く、外側立上部(以下、第二外側立上部41という。)と内側立上部(以下、第二内側立上部42という。)とが三つの曲部60a…を介して間接的に接続されている。具体的には、本実施形態に係る第二伸縮吸収部40は、第一封止用凹部15の底部でもある溶着封止部WLから伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第二外側立上部41と、該伸縮吸収部20よりも第一流路A側の領域(伝熱プレート10a,10bの内側の領域)から伝熱カセット10の内側(相手側の伝熱プレート10a,10b側)に向けて傾斜した第二内側立上部42と、第二外側立上部41と第二内側立上部42とを接続する接続部43とで構成されている。
【0035】
該第二伸縮吸収部40の接続部43は、第二外側立上部41の先端から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した接続傾斜部43aと、該接続傾斜部43aの先端と第二内側立上部42の先端との間で前記密接面P(前記接続部33)と同方向に延びて平坦に形成された接続平坦部43bとで構成されている。
【0036】
これにより、第二伸縮吸収部40は、第二外側立上部41と接続傾斜部43aとで外側に凸をなす断面山形を呈し、接続傾斜部43a、接続平坦部43b、及び第二内側立上部42が外側で凹をなす断面台形状を呈している。すなわち、該第二伸縮吸収部40は、第二外側立上部41と接続傾斜部43aとの接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成した曲部60aが外側に凸をなして形成され、接続傾斜部43aと接続平坦部43bとの接続部分、及び、接続平坦部43bと第二内側立上部42との接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図5(a)参照)を形成した曲部60b,60cが伝熱カセット10の内側(各伝熱プレート10a,10bの他方面側)に凸をなして形成されている。
【0037】
これにより、本実施形態に係る第二伸縮吸収部40は、伝熱プレート10a,10bの両面に凸部と凹部とが並んで形成され、断面が略波形を呈している。なお、本実施形態においては、第二伸縮吸収部40の第二外側立上部41が第一伸縮吸収部30の第一外側立上部31の略半分の長さに設定されている。すなわち、第二伸縮吸収部40は、伝熱プレート10a,10bの板厚方向において、第一伸縮吸収部30の略半分の高さで形成されている。
【0038】
前記第一外側立上部31及び第二外側立上部41の基点は、溶着封止部WLに沿った同一線上に位置し、第一内側立上部32及び第二内側立上部42の基端についても、溶着封止部WLに沿った同一線上に位置している。
【0039】
これにより、本実施形態に係る伸縮吸収部20(第一伸縮吸収部30及び第二伸縮吸収部40)は、溶着封止部WLの長手方向と直交する方向の幅が同じで、各立上部31,32,41,42が溶着封止部WLの略全長に亘って沿い、曲部50a…,60a…が溶着封止部WLに沿って断続的に形成されている。
【0040】
本実施形態において、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bは、第二伸縮吸収部40、40の接続平坦部43b、43b同士が接触し、伝熱カセット10が積層された状態で隣接する伝熱カセット10の伝熱プレート10a,10bの第一伸縮吸収部30の接続部33,33同士が略接触した状態になるように形成されている。これにより、各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20は、各伝熱プレート10a,10bの伸縮を吸収する機能以外に、伝熱プレート10a,10b同士の位置決め機能も担えるように構成されている。
【0041】
前記第一ガスケットG1は、弾性材料で成形されたもので、伝熱カセット10に挟まれた状態でシール性を発揮させるようになっている。前記第一ガスケットG1は、図2及び図3に示す如く、第一ガスケット配設用凹部17aの形状(第二流路Bの輪郭)に対応して台形状を呈して無端環状に形成されている。そして、第二ガスケット配設用凹部17bに嵌め込まれるガスケット(第二ガスケット)は、伝熱カセット10,10間を封止して、第一流路Aに対して第一流入用開口11a、及び第一流出用開口11bから熱交換媒体a或いは被熱交換媒体b(本実施形態においては熱交換媒体a)を流出入可能にするためのものである。従って、該第二ガスケットG2も、弾性材料で成形されたもので、伝熱カセット10に挟まれた状態でシール性を発揮させるようになっており、本実施形態においては、第二ガスケット配設用凹部17bの形状に対応して円環状に形成されている。
【0042】
そして、本実施形態に係る熱交換器1は、上述の如く、第一及び第二ガスケットG1,G2を第一及び第二ガスケット配設用凹部17a,17bに配設して伝熱カセット10を重ね合わせることで、伝熱カセット10間に被熱交換媒体bを流通させる第二流路Bが形成される。第二流路Bは、伝熱カセット10の長手方向に延びる中心線CLを基準にして第一流路Aと鏡像関係をなすように伝熱カセット10間において形成されている。すなわち、第一ガスケットG1が第一ガスケット配設用凹部17aに沿って配設されるため、該第一ガスケットG1によって画定された領域内に第二流入用開口11c、及び第二流出用開口11dが含まれている。これにより、伝熱プレート10a,10b間で第一ガスケットG1によって画定された第二流路Bは、図4(b)に示す如く、伝熱プレート10a,10bの長手方向の他端側にある第二流入用開口11c(第二流入用開口11cが連なって形成される第二流入路R3(図2参照))から流れ込む被熱交換媒体bが台形状の流れを作って、長手方向の一端側にある第二流出用開口11d(第二流出用開口11d…が連なって形成される下流側の第二流出路R4(図2参照))から流れ出るように形成されている。また、第二ガスケット配設用凹部17bに第二ガスケットG2が配設されることで、上述の如く、第一流入用開口11a及び第一流出用開口11bの周囲が封止され、これらの開口11a,11bと第二流路Bや外部との連通が遮断されている。
【0043】
図1及び図2に戻り、前記一対のフレームFa,Fbのそれぞれは、伝熱カセット10よりも大きな平面視長方形状をなす厚板鋼板である。該一対のフレームFa,Fbのうち、一方のフレームFaには、伝熱カセット10(伝熱プレート10a,10b)の開口11a,11b,11c,11d(第一流入用開口11a、第一流出用開口11b、第二流入用開口11c、第二流出用開口11d)の形成位置と対応するように四つの開口100a,100b,100c,100dが形成されている。該四つの開口100a,100b,100c,100dのうち、フレームFaの短手方向の一端側に形成された一対の開口100a,100bは、熱交換媒体aを流出入させるための第一流入口及び第一流出口を構成し、短手方向の他端側に形成された一対の開口100c,100dは、被熱交換媒体bを流出入させるための第二流入口及び第二流出口を構成する。
【0044】
他方のフレームFbには、開口が形成されておらず、該熱交換器1のフレームとしてのみ機能するようになっている。一対のフレームFa,Fbのそれぞれの短手方向の両端部には、積層した(重ね合わせた)複数の伝熱カセット10を該フレームFa,Fbを介して締結させる締結手段Mを配置するための切欠部V,V…が長手方向に間隔を有して複数形成されている。本実施形態に係る締結手段Mには、長尺なボルトSと該ボルトSに螺合されるナットNとで構成されており、前記ボルトSのネジ部を一対のフレームFa,Fbの切欠部V,V…内に配置した状態でナットNを締め付けることで、一対のフレームFa,Fb間の複数の伝熱カセット10に対して締め付け力を作用させ、前記第一ガスケットG1及び第二ガスケットG2のシール性を発揮させる様になっている。
【0045】
本実施形態に係る熱交換器1は、以上の構成からなり、第一流路Aに熱交換媒体aを流通させるとともに、第二流路Bに被熱交換媒体bを流通させると、伝熱プレート10a,10bを介して熱交換媒体aと被熱交換媒体bとの間で熱交換されることになる。
【0046】
そして、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体a或いは被熱交換媒体bの流体圧力等によって伝熱プレート10a,10bが面方向に伸縮しようとすると、その伸縮が各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20によって吸収され、強固に固定された溶着封止部WL、或いはその近傍で過大な力が作用することが防止される。すなわち、各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20は、溶着封止部WLの内側近傍に設けられ、しかも、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部(第一外側立上部31、第二外側立上部41)と、該伸縮吸収部20の内側の領域に対して傾斜して立ち上がる内側立上部(第一内側立上部32、第二内側立上部42)とが溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成する曲部50a…,60a…を介して間接的に接続されているので、伝熱プレート10a,10bの伸縮が各立上部31,32,41,42や曲部50a…,60a…(主として曲部50a…,60a…)の弾性変形によって吸収される。
【0047】
特に、外側立上部31,41が溶着封止部WLに対して傾斜するとともに、内側立上部32,42が伝熱プレート10a,10bの第一流路Aの内部側の領域(温度変化に伴って伸縮する方向)に対して傾斜しているため、伸縮に伴う伝熱プレート10a,10bの面方向の力(伸縮力)が、曲部50a…,60a…をバネの如く弾性変形させるように作用することになり、より効率的に伝熱プレート10a,10bの伸縮が吸収される。
【0048】
従って、本実施形態に係る熱交換器1は、溶着封止部WLに直接的に過大な応力が作用することが防止される結果、溶着封止部WL又はその近傍での亀裂の発生(疲労破壊の発生)が防止され、製品寿命の延命を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0049】
次に、本発明の第二実施形態に係る熱交換器について説明する。本実施形態に係る熱交換器は、伝熱プレートに設けられた伸縮吸収部の形態以外は、第一実施形態と同様の構成であるため、第一実施形態と同一また相当する構成については、第一実施形態の説明に用いた各図を参照するとともに第一実施形態と同一名称及び同一符号を付して説明を割愛し、伸縮吸収部のみについて説明する。
【0050】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、図6(a)〜(c)に示す如く、第一実施形態と同様、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部31,41と、該伸縮吸収部20よりも内側(第一流路A内部側)の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部32,42とを備え、外側立上部31,41と内側立上部32,42とが溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成し、且つ溶着封止部WLと直交する方向に間隔を有して形成された二つ以上の曲部50a…,60a…を介して間接的に接続されている。
【0051】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、第一実施形態と同様、溶着封止部WLの長手方向に曲部50a…の配置パターンの異なる第一伸縮吸収部(分割吸収部)30と第二伸縮吸収部(分割吸収部)40とが交互に形成されている。なお、前記伸縮吸収部20は、対向する相手方に対して密接面Pを基準に断面形状が対称となるように形成されている。
【0052】
前記第一伸縮吸収部30は、外側立上部(以下、第一外側立上部という。)31と内側立上部(以下、第一内側立上部という。)32とが五つの曲部50a…を介して接続されている。具体的には、本実施形態に係る第一伸縮吸収部30は、図6(b)に示す如く、封止用凹部15の底部でもある溶着封止部WLから伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一外側立上部31と、伸縮吸収部20よりも第一流路A側の領域から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一内側立上部32と、第一外側立上部31と第一内側立上部32とを接続する接続部33とで構成されている。
【0053】
本実施形態に係る第一伸縮吸収部30の接続部33は、第一実施形態とは異なった形態に設定されており、第一外側立上部31の先端から密接面Pと略同方向に延びるように平坦に形成された外側平坦接続部33a’と、該外側平坦接続部33a’の先端から伝熱カセット10の内側に傾斜した下り傾斜接続部33b’と、該下り傾斜接続部33b’の先端から伝熱カセット10の外側に傾斜した上り傾斜接続部33c’と、該上り傾斜接続部33c’の先端と第一内側立上部32の先端との間で密接面Pと略同方向に延びるように平坦に形成された内側平坦接続部33d’とで構成されている。
【0054】
これにより、本実施形態に係る第一伸縮吸収部30は、断面形状が天部の中央に凹みを形成した台形状を呈している。すなわち、該第一伸縮吸収部30は、第一外側立上部31と外側平坦接続部33a’との接続部分、第一内側立上部32と内側平坦接続部33d’との接続部分、外側平坦接続部33a’と下り傾斜接続部33b’との接続部分、及び上り傾斜接続部33c’と内側平坦接続部33d’との接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図6(a)参照)を形成した曲部50a,50b,50d,50eが外側に凸をなして形成され、下り傾斜接続部33b’と上り傾斜接続部33c’との接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図6(a)参照)を形成した曲部50cが伝熱カセット10の内側(各伝熱プレート10a,10bの他方面側)に凸をなして形成されている。
【0055】
他方、第二伸縮吸収部40は、図6(c)に示す如く、外側立上部(以下、第二外側立上部という。)41と内側立上部(以下、第二内側立上部という。)42とが四つの曲部60a…を介して間接的に接続されている。具体的には、本実施形態に係る第二伸縮吸収部40は、第一封止用凹部15の底部でもある溶着封止部WLから伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第二外側立上部41と、伸縮吸収部20よりも第一流路A側の領域から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した第二内側立上部42と、第二外側立上部41と第二内側立上部42とを接続する接続部43とで構成されている。
【0056】
本実施形態に係る第二伸縮吸収部40の接続部43は、第一実施形態と異なり、第二外側立上部41の先端から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した第一下り傾斜接続部45aと、第一下り傾斜接続部45aの先端から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一上り傾斜接続部45bと、第一上り傾斜接続部45bの先端と第二内側立上部42の先端との間で、第一上り傾斜接続部45bの先端から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した第二下り傾斜接続部45cとで構成されている。
【0057】
これにより、該第二伸縮吸収部40の接続部43は、第二外側立上部41と第一下り傾斜接続部45aとの接続部分、第一上り傾斜接続部45bと第二下り傾斜接続部45cとの接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図6(a)参照)を形成した曲部60a,60cが伝熱カセット10の外側(各伝熱プレート10a,10bの一方面側)に凸をなして形成され、第一下り傾斜接続部45aと第一上り傾斜接続部45bとの接続部分、及び第二内側立上部42と第二下り傾斜接続部45cとの接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図6(a)参照)を形成した曲部60b,60dが伝熱カセット10の内側(各伝熱プレート10a,10bの他方面側)に凸をなして形成されている。従って、本実施形態に係る第二伸縮吸収部40は、伝熱プレート10a,10bの両面に複数の凸部と凹部とが並んで断面波形状を呈している。本実施形態においても、第二伸縮吸収部40の第二外側立上部41が第一伸縮吸収部30の第一外側立上部31の略半分の長さに設定され、第二伸縮吸収部40が、伝熱プレート10a,10bの板厚方向において、第一伸縮吸収部30の略半分の高さで形成されている。
【0058】
図6(a)に示す如く、前記第一外側立上部31及び第二外側立上部41の基点は、溶着封止部WLに沿った同一線上に位置し、第一内側立上部32及び第二内側立上部42の基端についても、溶着封止部WLに沿った同一線上に位置している。
【0059】
これにより、本実施形態に係る伸縮吸収部20(第一伸縮吸収部30及び第二伸縮吸収部40)は、溶着封止部WLの長手方向と直交する方向の幅が同じで、各立上部31,32,41,42が溶着封止部WLの略全長に亘って沿い、曲部50a…,60a…が溶着封止部WLに沿って断続的に形成されている。
【0060】
本実施形態に係る熱交換器1は、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bの第二伸縮吸収部40(内側に凸をなす曲部60b,60b、60d,60d)同士が接触し、積層状態で隣接する伝熱カセット10の伝熱プレート10a,10bの第一伸縮吸収部30(外側平坦接続部33a’33a’、及び内側平坦接続部33d’,33b’)同士が略接触した状態になるようになっており、各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20は、伝熱プレート10a,10bの伸縮を吸収する機能以外に、伝熱プレート10a,10b同士の位置決め機能も担えるように構成されている。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る熱交換器1は、伸縮吸収部20の形態が第一実施形態とは異なるものの、熱交換に伴う温度変化や熱交換媒体a或いは被熱交換媒体bの流体圧の変化等によって伝熱プレート10a,10bが面方向に伸縮しても、その伸縮が各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20によって吸収され、強固に固定された溶着封止部WL、或いはその近傍で過大な力が作用することが防止される。
【0062】
すなわち、本実施形態においても、各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20が溶着封止部WLの内側近傍に設けられ、しかも、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部(第一外側立上部31、第二外側立上部41)と、該伸縮吸収部20の内側の領域に対して傾斜して立ち上がる内側立上部(第一内側立上部32、第二内側立上部42)とが溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成する曲部50a…,60a…を介して間接的に接続されているので、伝熱プレート10a,10bの伸縮が各立上部31,32,41,42や曲部50a…,60a…(主として曲部50a…,60a…)の弾性変形によって吸収される。
【0063】
また、第一実施形態と同様、外側立上部31,41が溶着封止部WLに対して傾斜するとともに、内側立上部32,42が伝熱プレート10a,10bの第一流路Aの内部側の領域(温度変化に伴って伸縮する方向)に対して傾斜しているため、伸縮に伴う伝熱プレート10a,10bの面方向の力(伸縮力)が、曲部50a…,60a…をバネの如く弾性変形させるように作用することになり、より効率的に伝熱プレート10a,10bの伸縮を吸収することができる。
【0064】
従って、本実施形態に係る熱交換器1においても、溶着封止部WLに直接的に過大な応力が作用することが防止される結果、溶着封止部WL又はその近傍での亀裂の発生(疲労破壊の発生)が防止され、製品寿命の延命を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0065】
次に、本発明の第三実施形態に係る熱交換器について説明する。本実施形態に係る熱交換器は、伝熱プレートに設けられた伸縮吸収部の形態以外は、第一及び第二実施形態と同様の構成であるため、これらと同一また相当する構成については、第一実施形態の説明に用いた各図を参照するとともに第一実施形態と同一名称及び同一符号を付して説明を割愛し、伸縮吸収部のみについて説明する。
【0066】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、図7(a)〜(c)に示す如く、第一及び第二実施形態と同様、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部31,41と、該伸縮吸収部20よりも内側(第一流路A内部側)の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部32,42とを備え、外側立上部31,41と内側立上部32,42とが溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成し、且つ溶着封止部WLと直交する方向に間隔を有して形成された六つの曲部50a…を介して間接的に接続されている。本実施形態においても、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20は、対向する相手方に対して密接面Pを基準に断面形状が対称となるように形成されている。
【0067】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、図7(a)に示す如く、第一及び第二実施形態とは異なり、溶着封止部WLの長手方向に同じパターンの曲部50a…が連続して形成されている。具体的には、本実施形態に係る伸縮吸収部20は、図7(b)に示す如く、溶着封止部WLの略全長に亘って沿うように連続して形成されており、溶着封止部WLから伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した外側立上部21と、伸縮吸収部20よりも第一流路A側の領域から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した内側立上部22と、外側立上部21と内側立上部22とを接続する接続部23とで構成されている。
【0068】
本実施形態に係る伸縮吸収部20の接続部23は、外側立上部31の先端から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した第一下り傾斜接続部23aと、第一下り傾斜接続部23aの先端から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第一上り傾斜接続部23bと、第一上り傾斜接続部23bの先端から伝熱カセット10の内側に向けて傾斜した第二下り傾斜接続部23cと、第二下り傾斜接続部23cの先端から伝熱カセット10の外側に向けて傾斜した第二上り傾斜接続部23dと、第二上り傾斜接続部23dの先端と内側立上部22との間で密接面Pと同方向に延びるように平坦に形成された平坦接続部23eとで構成されている。
【0069】
これにより、該伸縮吸収部20の接続部23は、外側立上部21と第一下り傾斜接続部23aとの接続部分、第一上り傾斜接続部23bと第二下り傾斜接続部23cとの接続部分、第二上り傾斜接続部23dと平坦接続部23eとの接続部分、及び内側立上部22と平坦接続部23eとの接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図7(a)参照)を形成した曲部50a,50c,50e,50fが伝熱カセット10の外側(各伝熱プレート10a,10bの一方面側)に凸をなして形成されている。また、該接続部23は、第一下り傾斜接続部23aと第一上り傾斜接続部23bとの接続部分、及び第二下り傾斜接続部23cと第二上り傾斜接続部23dとの接続部分に、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BL(図7(a)参照)を形成した曲部50b,50dが伝熱カセット10の内側(各伝熱プレート10a,10bの他方面側)に凸をなして形成されている。従って、本実施形態に係る伸縮吸収部20は、溶着封止部WLの略全長に沿って断面波形状に形成されている。
【0070】
本実施形態に係る伸縮吸収部20は、平坦接続部23eが溶着封止部WL側にある各曲部50a…よりも伝熱カセット10の外側に位置するように形成されており、積層された状態で隣接する伝熱カセット10(伝熱プレート10a,10b)の伸縮吸収部20の平坦接続部23e,23e同士が略接触した状態になるようになっている。その一方で、該伸縮吸収部20は、伝熱カセット10を構成する二枚の伝熱プレート10a,10bの内側に凸をなす曲部50a…同士が非接触状態になる(内側の曲部50a…間に隙間が形成される)とともに、積層状態で隣接する伝熱カセット10(伝熱プレート10a,10b)の伸縮吸収部20における外側に凸をなす曲部50a…同士も非接触状態になる(外側の曲部50a…間に隙間が形成される)ように構成されている。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る熱交換器1は、伸縮吸収部20の形態が第一及び第二実施形態とは異なるものの、熱交換に伴う温度変化によって伝熱プレート10a,10bが面方向に伸縮しようとすると、その伸縮が各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20によって吸収され、強固に固定された溶着封止部WL、或いはその近傍において過大な作用することが防止される。
【0072】
すなわち、本実施形態においても、各伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20が溶着封止部WLの内側近傍に設けられ、しかも、溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部21と、該伸縮吸収部20の内側の領域に対して傾斜して立ち上がる内側立上部22とが溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成する曲部50a…を介して間接的に接続されているので、伝熱プレート10a,10bの伸縮が各立上部21,22や曲部50a…(主として曲部50a…)の弾性変形によって吸収される。
【0073】
また、第一実施形態と同様、外側立上部21が溶着封止部WLに対して傾斜するとともに、内側立上部22が伝熱プレート10a,10bの第一流路Aの内部側の領域(温度変化に伴って伸縮する方向)に対して傾斜しているため、伸縮に伴う伝熱プレート10a,10bの面方向の力(伸縮力)が、曲部50a…をバネの如く弾性変形させるように作用することになり、より効率的に伝熱プレート10a,10bの伸縮を吸収することができる。
【0074】
その上、対向する伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20(凸をなす曲部50a…)同士が非接触状態になるようにしたので、伝熱プレート10a,10bの伸縮に伴って伸縮吸収部20(曲部50a…)が変形したとしても、隣接する伝熱プレート10a,10b同士が干渉することがなく、伸縮吸収部20の変形の円滑性を確実に確保することができる。
【0075】
従って、本実施形態に係る熱交換器1においても、溶着封止部WLに直接的に過大な応力が作用することが防止される結果、溶着封止部WL又はその近傍での亀裂の発生(疲労破壊の発生)が防止され、製品寿命の延命を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0076】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記した何れの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
上記実施形態において、二枚の伝熱プレート10a,10bを溶着した伝熱カセット10を複数積層したプレート式熱交換器1について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数の伝熱プレート10a,10bを積層し、これらを互いに溶着したプレート式熱交換器1であってもよい。
【0078】
この場合においては、熱交換媒体aを流通させる第一流路A、及び非熱交換媒体aを流通させる第二流路Bの何れもが、伝熱プレート10a,10bの溶着によって画定されるので、第一流路A及び第二流路Bを画定するための溶着封止部WL近傍の内側に伸縮吸収部20を設けるようにすればよい。すなわち、溶着によって固定される溶着封止部WLに沿うようにして伸縮吸収部20を設け、該伸縮吸収部20を、溶着封止部WLに沿った曲げ稜線BLを形成する曲部50a…を介して、該溶着封止部WLから傾斜して立ち上がる外側立上部31と該伸縮吸収部20の内側の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部32とを直接的又は間接的に接続した構成にすればよい。
【0079】
上記何れの実施形態においても、外側立上部21,31,41と内側立上部22,32,42とを間接的に接続して伸縮吸収部20を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、外側立上部21,31,41と内側立上部22,32,42とを同じ方向に傾斜させ、それぞれの先端を曲部50a…を介して直接的に接続した態様であってもよい。すなわち、外側立上部21,31,41と内側立上部22,32,42とを溶着封止部WLに沿って曲げ稜線BLの形成した一つの曲部50a…を介して直接接続した態様であってもよい。このようにしても、溶着封止部WL及び伸縮吸収部20よりも内側の領域(伝熱プレート10a,10bの面方向)に対して外側立上部31と内側立上部32とが傾斜した態様をなし、伝熱プレート10a,10bが伸縮したときに曲部50a…が弾性変形することになる。従って、温度変化や圧力変化等による伝熱プレート10a,10bの伸縮を吸収することができ、溶着封止部WL又はその近傍に亀裂が発生するのを防止することができる。
【0080】
上記実施形態において、何れも伸縮吸収部20の少なくとも一部と隣接する伝熱プレート10a,10bに接触させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、隣接する伝熱プレート10a,10bの伸縮吸収部20同士を完全に非接触となる(伸縮吸収部20間に隙間が形成される)ように構成し、他の部位で伝熱プレート10a,10b同士の位置決めを行うように構成しても勿論よい。
【0081】
上記第一及び第二実施形態において、曲部50a…,60a…の配置パターンの異なる分割吸収部として第一伸縮吸収部30及び第二伸縮吸収部40の二つを交互に配設して伸縮吸収部20を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、曲部の配置パターンを異にする分割吸収部を三パターン以上設定し、これらを交互に配設して伸縮吸収部20を構成するようにしてもよい。また、第三実施形態の如く、単一な形態をなす伸縮吸収部20を溶着封止部WLの略全長に亘って沿うように設けても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第一乃至第三実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図を示す。
【図2】第一乃至第三実施形態に係るプレート式熱交換器の分解斜視図を示す。
【図3】第一乃至第三実施形態に係る伝熱プレート(伝熱カセット)の概略平面図を示す。
【図4】第一乃至第三実施形態に係るプレート式熱交換器の熱交換媒体及び被熱交換媒体の流れを説明するための説明図であって、(a)は、第一流路内の流れを示し、(b)は、第二流路内の流れを示す。
【図5】第一実施形態に係る伸縮吸収部の説明図であって、(a)は、図3のX部分の拡大部分平面部を示し、(b)は、(a)のI−I断面を示し、(c)は、(a)のII−II断面を示す。
【図6】第二実施形態に係る伸縮吸収部の説明図であって、(a)は、図3のX部分の拡大部分平面部を示し、(b)は、(a)のIII−III断面を示し、(c)は、(a)のIV−IV断面を示す。
【図7】第三実施形態に係る伸縮吸収部の説明図であって、(a)は、図3のX部分の拡大部分平面部を示し、(b)は、(a)のV−V断面を示し、(c)は、(a)のVI−VI断面を示す。
【符号の説明】
【0083】
1…プレート式熱交換器(熱交換器)、10…伝熱カセット、10a,10b…伝熱プレート、11a…第一流入用開口(開口)、11b…第一流出用開口(開口)、11c…第二流入用開口(開口)、11d…第二流出用開口(開口)、15…第一封止用凹部(封止用凹部)、16…第二封止用凹部(封止用凹部)、17a…第一ガスケット配設用凹部(ガスケット配設用凹部)、17b…第二ガスケット配設用凹部(ガスケット配設用凹部)、20…伸縮吸収部、21…外側立上部、22…内側立上部、23…接続部、23a…第一下り傾斜接続部、23b…第一上り傾斜接続部、23c…第二下り傾斜接続部、23d…第二上り傾斜接続部、23e…平坦接続部、30…第一伸縮吸収部、31…第一外側立上部(外側立上部)、32…第一内側立上部(内側立上部)、33…接続部、33a’…外側平坦接続部、33b’…下り傾斜接続部、33c’…上り傾斜接続部、33d’…内側平坦接続部、40…第二伸縮吸収部、41…第二外側立上部(外側立上部)、42…第二内側立上部(内側立上部)、43…接続部、43a…接続傾斜部、43b…接続平坦部、45a…第一下り傾斜接続部、45b…第一上り傾斜接続部、45c…第二下り傾斜接続部、50a〜50f,60a〜60d…曲部、100a,100b,100c,100d…開口、a…第一流入口、b…第一流出口、c…第二流入口、d…第二流出口、A…第一流路、B…第二流路、BL…曲げ稜線CL…中心線、Fa,Fb…フレーム、G1…第一ガスケット(ガスケット)、G1…第二ガスケット(ガスケット)P…密接面、R1…第一流入路、R2…第一流出路、R3…第二流入路、R4…第二流出路、V…切欠部、M…締結手段、S…ボルト、N…ナット、WL…溶着封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形された複数の伝熱プレートが積層され、伝熱プレート間に各伝熱プレートを境にして熱交換媒体を流通させる第一流路と被熱交換媒体を流通させる第二流路とが交互に形成され、第一流路及び第二流路の少なくとも何れか一方の流路が、伝熱プレート同士を線状又は帯状に溶着した溶着封止部で画定されたプレート式熱交換器であって、前記伝熱プレートは、前記流路側で溶着封止部に沿うように、該伝熱プレートの面方向の伸縮を吸収する伸縮吸収部が形成され、該伸縮吸収部は、溶着封止部から傾斜して立ち上がる外側立上部と、流路内部側の領域から傾斜して立ち上がる内側立上部とを備え、外側立上部と内側立上部とが溶着封止部に沿った曲げ稜線を形成する一つ以上の曲部を介して直接的又は間接的に接続されて構成されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記伸縮吸収部は、外側立上部と内側立上部とが溶着封止部と直交する方向に並ぶ複数の曲部を介して接続されて構成されている請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記伸縮吸収部は、前記曲部の配置パターンの異なる複数の分割吸収部が溶着封止部の長手方向に交互に設けられて形成されている請求項2記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記伸縮吸収部は、外側立上部及び内側立上部が、溶着封止部の略全周に沿って形成されるとともに、溶着封止部の略全周に沿った曲げ稜線を形成する曲部を介して接続されている請求項1又は2記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
前記伸縮吸収部は、隣接する伝熱プレートに対して非接触になるように形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−255826(P2007−255826A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82788(P2006−82788)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)