説明

プレート式熱交換器

【課題】 不純物を含んだ被熱交換媒体を流通させても該不純物が堆積することなく、被熱交換媒体の流通性を確保して効率の良い熱交換を行うことのできるプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】 表裏両面に複数の凸条及び凹条が交互に形成された伝熱部を有する複数の伝熱プレートを備え、該複数の伝熱プレートが伝熱部同士を対向させて積層され、各伝熱部を境にして熱交換媒体を流通させる第一空間と被熱交換媒体を流通させる第二空間とが交互に形成されたプレート式熱交換器において、前記第一空間は、互いの凸条同士を交差衝合させた伝熱部間に形成される一方、第二空間は、凸条及び凹条の形成された領域同士が非接触の伝熱部間に形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器や湯沸し器等の種々の機器に採用されるプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱交換媒体と被熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器の一つとして、給湯器や湯沸かし器等の種々の機器に採用されるプレート式熱交換器が知られている。
【0003】
かかるプレート式熱交換器は、表裏両面に複数の凸条及び凹条が交互に形成された伝熱部を有する複数の伝熱プレートを備え、該複数の伝熱プレートが伝熱部同士を対向させて積層され、各伝熱部を境にして、熱湯や蒸気等の熱交換媒体を流通させる第一空間と水や湯等の被熱交換媒体を流通させる第二空間とが交互に形成されている。
【0004】
かかるプレート式熱交換器は、隣接する伝熱部の凸条同士を交差衝合させる(凸条同士を部分的に接触させる)ようにして複数の伝熱プレートが積層されている。これにより、各伝熱プレートの間隔を所定の間隔に保って伝熱プレート間に第一空間及び第二空間を形成するようにしている。
【0005】
そして、上記構成のプレート式熱交換器は、伝熱部の表裏両面に複数の凸条及び凹条を形成することで、伝熱面積を広くするとともに、熱交換媒体、及び被熱交換媒体の流れに乱れを与えつつ熱交換媒体、及び被熱交換媒体を流通させるようになっている。
【0006】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器は、熱交換媒体と被熱交換媒体との間での熱の移動の機会を増やすことができるため、小型でも高効率な熱交換を行えるとして、給湯器や湯沸し器等の種々の機器に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−326074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記プレート式熱交換器は、上述の如く、第一空間に熱交換媒体として純粋な熱湯や蒸気等を流通させる一方で、第二空間に水や湯等の被熱交換媒体を流通させるように構成されているが、例えば、浴槽の湯の追い焚き用の熱交換器等に採用される場合、第二空間に湯垢や髪の毛等の不純物を含む浴槽内の湯が被熱交換媒体として流通するため、凸条同士が衝合する部位に不純物が堆積してしまい、被熱交換媒体の流通が阻害されてしまうといった問題があった。
【0008】
すなわち、上記プレート式熱交換器は、第二空間が互いの凸条同士を交差衝合させた伝熱部間に形成されているため、凸条同士が衝合する部位の上流側に髪の毛等の繊維が引っ掛かったり、凸条同士が衝合する部位の下流側に被熱交換媒体が澱む領域が形成され、その領域に湯垢等の不純物が経時的に蓄積されたりして、その蓄積した不純物が第二空間を詰まらせてしまうといった問題があった。
【0009】
このように第二空間内に蓄積した不純物を除去するのに、第二空間に洗浄水を流通させて洗浄することも考えられるが、凸条同士が衝合する部位や蓄積した不純物が洗浄水の流通を阻害してしまう結果、不純物を除去することができず、第二空間が詰まってしまうことが余儀なくされている。
【0010】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、不純物を含んだ被熱交換媒体を流通させても該不純物が堆積することなく、被熱交換媒体の流通性を確保して効率の良い熱交換を行うことのできるプレート式熱交換器を提供することを第一の課題とし、この第一の課題に併せて、被熱交換媒体に含まれる不純物の蓄積される領域を形成することなく、複数の伝熱プレートを適正な配置にすることのできるプレート式熱交換器を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプレート式熱交換器は、第一の課題を解決すべく、表裏両面に複数の凸条及び凹条が交互に形成された伝熱部を有する複数の伝熱プレートを備え、該複数の伝熱プレートが伝熱部同士を対向させて積層され、各伝熱部を境にして熱交換媒体を流通させる第一空間と被熱交換媒体を流通させる第二空間とが交互に形成されたプレート式熱交換器において、前記第一空間は、互いの凸条同士を交差衝合させた伝熱部間に形成される一方、第二空間は、凸条及び凹条の形成された領域同士が非接触の伝熱部間に形成されることを特徴とする。
【0012】
上記プレート式熱交換器によれば、前記第一空間が、互いの凸条同士を交差衝合させた伝熱部間に形成されるので、第一空間において、凸条及び凹条の凹凸形状や凸条同士の衝合する部位の存在で熱交換媒体の流れに適度な乱れを与えつつ該熱交換媒体を流通させることができ、該熱交換媒体の熱が伝熱プレート(伝熱部)に対して効率よく伝わることになる。他方、第二空間は、凸条及び凹条の形成された領域同士が非接触の伝熱部間に形成されるので、伝熱部同士が部分的に接触する部位、すなわち、不純物が堆積する原因となる部位が存在せず、不純物を含むような被熱交換媒体であっても該不純物を堆積させることなく円滑に流通させることができる。
【0013】
そして、第二空間を形成する伝熱部においても凸条及び凹条が形成されているため、伝熱面積を広くすることができる上に、凸条及び凹条の凹凸形状で被熱交換媒体の流れに適度な乱れを与えつつ該被熱交換媒体を流通させることができ、第一空間内を流通する熱交換媒体との熱交換を伝熱部を介して効率的に行うことができる。
【0014】
そして、第二の課題を解決すべく、各伝熱プレートは、外方に向けて延出した鍔部を外周に備え、隣接する伝熱プレートの少なくとも何れか一方の鍔部には、他方の伝熱プレートの鍔部を支持し、第二空間を形成する伝熱部同士を所定間隔で維持させる支持部が設けられていることが好ましい。このようにすれば、第二空間内に不純物を堆積させる原因となる部位を形成することなく、第二空間を形成する伝熱部(伝熱プレート)を適正に配置することができる。特に、当該プレート式熱交換器を作製するにあたり、伝熱プレートを積層するだけで各伝熱プレートを適切に位置決めすることができ、製作効率の観点においても非常に有効である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るプレート式熱交換器によれば、不純物を含んだ被熱交換媒体を流通させても流路が詰まることなく、熱交換媒体と被熱交換媒体との間で高効率な熱交換を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【0016】
また、本発明の一態様に係るプレート式熱交換器によれば、被熱交換媒体に含まれる不純物の蓄積される領域を形成することなく、複数の伝熱プレートを適正な配置にすることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、給湯器や湯沸かし器等の種々の機器の熱交換器として採用されるもので、図1、図2(a)及び(b)に示す如く、複数の伝熱プレート10a,10b…を備え、該複数の伝熱プレート10a,10b…が積層されることで、各伝熱プレート10a,10b(後述する伝熱部100)を境にして熱交換媒体Hを流通させる第一空間Aと被熱交換媒体Cを流通させる第二空間Bとが交互に形成されている。また、伝熱プレート10a,10bに設けられた開口12,12,13,13が連なり、前記第一空間Aに熱交換媒体Hを流出入させる熱交換媒体流入路A1及び熱交換媒体流出路A2が形成されるとともに、前記第二空間Bに被熱交換媒体Cを流出入させる被熱交換媒体流入路B1及び被熱交換媒体流出路B2が形成されている。
【0019】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、二種類の伝熱プレート10a,10bが交互に積層されている。
【0020】
該二種類の伝熱プレート10a,10bは、前記開口12,13の周辺部の凹凸の態様と、後述する鍔部102(支持部103)の態様とが異なる以外は、基本構成が同一に設定されている。具体的には、各伝熱プレート10a,10bは、何れもステンレス合金やチタン合金製の平板をプレス成形したもので、第一空間Aと第二空間Bとを仕切る伝熱部100と、該伝熱部100の外周の全周から該伝熱部100の一方面側に延出した嵌合部101と、該嵌合部101の先端から外方に向けて延出した鍔部102とを備えている。
【0021】
前記伝熱部100は、図3(a)及び(b)に示す如く、平面視略長方形状を形成され、前記熱交換媒体流入路A1、熱交換媒体流出路A2、被熱交換媒体流入路B1及び被熱交換媒体流出路B2を形成するための開口12,12,13,13が四隅に形成されている。
【0022】
前記伝熱部100は、表裏両面に複数の凸条20…及び凹条21…が交互に形成されている。前記凸条20…及び凹条21…は、該伝熱部100の長手方向の中心線(基準線)に対して傾斜状態で延びるように形成されている。本実施形態において、凸条20…及び凹条21…は、中心線を境に、伝熱部100の短手方向の一端側の領域と、伝熱部100の短手方向の他端側の領域とで鏡像状態をなすように形成され、平面視において、いわゆる、ヘリングボーン形状(魚の骨形状)を呈し、断面において波形状を呈している。なお、伝熱部100は、上述の如く、プレス成形によって形成されたものであるため、一方の面の凸条20…の裏面(他方の面)は凹条21…となり、一方の面の凹条21…の裏面は凸条20…となっている。
【0023】
図1及び図2に戻り、前記嵌合部101は、伝熱プレート10a,10b…同士を積層した状態で、隣接する伝熱プレート10a,10b…の嵌合部101に嵌合できるように形成され、該嵌合部101,101同士がロウ付けされることにより、前記伝熱部100,100間(第一空間A及び第二空間B)を封止できるようになっている
【0024】
前記鍔部102は、伝熱プレート10a,10bの外周の全周に設けられており、伝熱部100の面方向と同方向に延出し、積層された他の伝熱プレート10a,10b…の鍔部102と対向するように形成されている。そして、該鍔部102には、積層されて隣接する伝熱プレート10a,10b…の鍔部102を支持する支持部103…が形成されている。該支持部103…は、鍔部102を部分的に隆起させて形成されている。
【0025】
具体的に説明すると、本実施形態に係る鍔部102は、嵌合部101と鍔部102との境界(稜線)に沿って断続的に切断され、図4に示す如く、該切断された範囲を伝熱プレート10a,10b…(伝熱部100)の他方面側に略台形状に隆起させることで複数の支持部103…が形成されている。複数の支持部103…は、第二空間Bを画定する一方の伝熱プレート10a…の伝熱部100と他方の伝熱プレート10b…の伝熱部100とが非接触状態で所定間隔を開けるように(図7参照)、一方の伝熱プレート10a…の外周が他方の伝熱プレート10b…の外周を支持するように形成されている。
【0026】
そのため、一方の伝熱プレート10a…の支持部103…と、他方の伝熱プレート10b…の支持部103…とは、前記稜線の延びる方向において、支持部103…が1ピッチ(支持部103…1個分)ずれた位置に形成され、一方の伝熱プレート10b…の支持部103…が他方の伝熱プレート10b…の鍔部102(隆起させていない部分)を支持するようになっている。
【0027】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、何れの伝熱プレート10a,10bにも台形状に隆起した支持部103を設けているため、複数の伝熱プレート10a,10b…を積層した状態で、側面視において複数の支持部103…及び鍔部102によってハニカム形状を呈し、該プレート式熱交換器全体の強度を高めるようにしている。なお、支持部103…は伝熱プレート10a,10b…の全周に亘って設けてもよいが、本実施形態においては、伝熱プレート10a,10b…の短手方向の両端側の鍔部102の略全長に複数の支持部103…を設けるとともに、伝熱プレート10a,10b…の長手方向の両端側の鍔部102の一部に複数の支持部103…を設けている。
【0028】
また、支持部103を設ける主たる目的は、第二空間Bを形成する伝熱部100同士を非接触状態にすることにあるため、対向する伝熱プレート10a,10bのうちの一方の伝熱プレート10aに支持部103を設け、他方の伝熱プレート10bに該支持部103に支持される鍔部102のみを設けるようにしてもよい。但し、プレート式熱交換器1の全体的な剛性を高めるには、本実施形態のように各伝熱プレート10a,10bに支持部103を設けることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図2(a)及び(b)に示す如く、伝熱部100の四隅の開口12,12,13,13のうち、該伝熱部100の長手方向の一端側で短手方向の一端側の開口12…が連なって熱交換媒体流入路A1が形成され、伝熱部100の長手方向の他端側で短手方向の他端側の開口12…が連なって熱交換媒体流出路A2が形成されている。また、伝熱部100の四隅の開口12,12,13,13のうち、該伝熱部100の長手方向の他端側で短手方向の一端側の開口13…が連なって被熱交換媒体流入路B1が形成され、伝熱部100の長手方向の一端側で短手方向の他端側の開口13…が連なって被熱交換媒体流出路B2が形成されている。これにより、該プレート式熱交換器1は、図5(a)及び(b)に示す如く、第一空間A及び第二空間B内で斜傾流を形成するようになっている。
【0030】
各伝熱プレート10a,10bの基本構成は以上の通りであるが、二種類の伝熱プレート10a,10bのうち、一方の伝熱プレート10aは、図3(a)に示す如く、長手方向の一端側で短手方向の一端側の開口12の周辺部と、長手方向の他端側で短手方向の他端側の開口12の周辺部とが、伝熱部100の他方面(図において手前側)側に膨出(凸出)して形成され、長手方向の一端側で短手方向の他端側の開口13の周辺部と、長手方向の他端側で短手方向の一端側の開口13の周辺部とが、伝熱部100の他方面側で凹む(一方面側に膨出(凸出)する)ように形成されている。なお、図3において波線のハッチングを付した領域が、紙面に対して手前側に凸をなし、斜めのハッチングを付した領域が、紙面に対して奥側に凹をなしている。
【0031】
他方の伝熱プレート10bは、図3(b)に示す如く、長手方向の一端側で短手方向の一端側の開口12の周辺部と、長手方向の他端側で短手方向の他端側の開口12の周辺部とが、伝熱部100の他方面側で凹む(一方面側に膨出(凸出)する)ように形成され、長手方向の一端側で短手方向の他端側の開口13の周辺部と、長手方向の他端側で短手方向の一端側の開口13の周辺部が、伝熱部100の他方面(図において手前側)側に膨出(凸出)して形成されている。
【0032】
これにより、二種類の伝熱プレート10a,10bを積層した状態で、対向する伝熱部100,100の開口12,12,13,13の凸出した周辺部同士が密接し、各伝熱プレート10a,10bの伝熱部100の長手方向の一端側で短手方向の一端側にある開口12が連なって、第一空間Aにのみ連通する熱交換媒体流入路A1となり、長手方向の他端側で短手方向の他端側にある開口12が連なって、第一空間Aにのみ連通する熱交換媒体流入路A1となる一方、伝熱部100の長手方向の他端側で短手方向の一端側の開口13が連なって、第二空間Bにのみ連通する被熱交換媒体流入路B1となり、伝熱部100の長手方向の一端側で短手方向の他端側の開口13が連なって、第二空間Bにのみ連通する被熱交換媒体流出路B2になるようになっている(図2(a)及び(b)参照)。
【0033】
上述のように、基本構成が同一で開口12,13の周辺部の凹凸態様を異にする二種類の伝熱プレート10a,10bを採用することを前提に、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図6に示す如く、上層側から下層側に向けて同種の伝熱プレート10a,10bを積層順に伝熱部100の面上において180°反転させるようにして、二種類の伝熱プレート10a,10bを交互に積層されている。
【0034】
これにより、一方の伝熱プレート10aの一方面側と他方の伝熱プレート10bの他方面側(対向した伝熱部100)の凸条20…同士が交差衝合した態様となり、図7(a)に示す如く、伝熱部100が部分的に接触した領域と、図7(b)に示す如く、伝熱部100同士が非接触の領域とを有する第一空間Aが形成される。そして、図4に示す如く、一方の伝熱プレート10aの支持部103が、他方の伝熱プレート10aの鍔部102を支持する結果、プレート式熱交換器1の内部において、図7(a)及び(b)に示す如く、他方の伝熱プレート10bの他方面(伝熱部100の凸条20…及び凹条21…の形成された領域)と一方の伝熱プレート10aの一方面(伝熱部100の凸条20…及び凹条21…の形成された領域)とが全領域に亘って非接触で対向し、該領域(伝熱部100,100)間に第二空間Bが形成される。
【0035】
本実施形態においては、二種類の伝熱プレート10a,10bの凸条20…、凹条21…の形状、配置、及びサイズを同一に設定しているため、第二空間Bを形成する伝熱部100,100は、凸条20…及び凹条21同士が略平行をなし、一方の伝熱プレート10aの凹条21に他方の伝熱プレート10bの凸条20を対向させた態様をなしている。また、支持部103の高さ(鍔部102から隆起した高さ)設定により、第二空間Bを形成する伝熱部100,100は、非接触状態(所定の間隔)を維持しつつ一方の伝熱プレート10aの凹条21に他方の伝熱プレート10bの凸条20が入り込んだ態様をなしている。
【0036】
なお、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図1に示す如く、積層された状態で最も外側に位置する一方の伝熱プレート10aのみに、配管接続される筒状のノズル30a,30b,30c,30dを四隅部分の開口12,12,13,13の周辺部に接続したものを採用し、最も外側に位置する他方の伝熱プレート10bのみに開口12,12,13,13が形成されていないものを採用している。
【0037】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、最も外側にある一方の伝熱プレート10aとこれに隣接する他方の伝熱プレート10b…との間に第一空間Aを形成し、最も外側にある他方の伝熱プレート10b…とこれに隣接する伝熱プレート10a…との間に第一空間Aを形成するように、上述の如く、複数の伝熱プレート10a,10b…が順々に積層されている。
【0038】
そして、該プレート式熱交換器1は、積層状態にある伝熱プレート10a,10b…同士の接触する部位(第一空間Aを形成する伝熱部100の凸条20…同士、嵌合部101,101同士、開口12,12,13,13の周辺部同士)が溶着(ロウ付け)されることにより一体的に構成されている。なお、ロウ付けは、複数の伝熱プレート10a,10b…を積層するに当って伝熱プレート10a,10b…間に銅板(銅箔)等を介装しておき、これを全体的に加熱して溶かすことによって行われる。
【0039】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上の構成からなり、次に、上記構成のプレート式熱交換器1の作動について、該プレート式熱交換器1を給湯器(追い炊き器)に採用した場合を一例にして説明する。
【0040】
該プレート式熱交換器1は、熱交換媒体流入路A1のノズル30aが熱湯等の熱交換媒体Hを供給する配管に液密に接続される一方、熱交換媒体流出路A2のノズル30bが熱交換媒体Hを再加熱するための加熱源に繋がる配管に接続される。これにより、当該プレート式熱交換器1は、熱交換媒体Hの加熱循環経路の一部を構成することになる。
【0041】
他方、被熱交換媒体流入路B1のノズル30cは、ポンプを介して浴槽に接続された往路配管に接続され、被熱交換媒体流出路B2のノズル30dは、浴槽に接続された復路配管に接続される。これにより、該プレート式熱交換器1は、浴槽内の水(湯)を循環させる循環経路の一部を構成することになる。
【0042】
そして、各循環経路で熱交換媒体H及び被熱交換媒体Cを循環させると、第一空間Aを流通する熱交換媒体Hと、第二空間Bを流通する被熱交換媒体Cとが、伝熱プレート10a,10b…(伝熱部100)を介して熱交換されることになる。この際、熱交換媒体Hは、対向する凸条20…及び凹条21…の存在で流れに適度な乱れを生じさせつつ、凸条20…同士の衝合した部位を躱すように迂曲して第一空間A内を流通し、該熱交換媒体Hの熱が効率よく伝熱部100に伝達される。
【0043】
他方、第二空間Bにおいては、第一空間Aとは異なり、対向する伝熱部100が非接触状態であるため、被熱交換媒体Cは、伝熱部100間を抜けるようにして(凸条20…及び凹条21…の形状に沿うように)、被熱交換媒体流入路B1から被熱交換媒体流出路B2に向けて流通し、伝熱プレート10a,10b…(伝熱部100)を介して伝わる熱交換媒体Hの熱を受け、熱交換媒体Hと被熱交換媒体Cとの熱交換が行われることになる。そして、湯垢等の不純物を含んだ浴槽内の湯が循環されたとしても、該被熱交換媒体Cを流通させる第二空間Bには、不純物を堆積させるように凸条20…の接触部分が存在しないため、第二空間B内に不純物が堆積されることなく、被熱交換媒体Cの循環が長期に亘って円滑に行われることになる。
【0044】
以上のように、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一空間Aが互いの凸条20…同士を接触させた伝熱部100,100間に形成されているので、第一空間Aにおいて、接触状態にある凸条20…の存在で熱交換媒体Hの流れに適度な乱れを与えつつ熱交換媒体Hを流通させることができ、該熱交換媒体Hの熱を伝熱プレート10a,10b…(伝熱部100)に対して効率よく熱が伝わることになる。その一方で、第二空間Bが非接触の状態の伝熱部100間に形成されているので、凸条20…同士が接触した部位、すなわち、不純物が堆積する原因となる部位が存在せず、不純物を含むような被熱交換媒体Cを第二空間B内で円滑に流通させることができる。
【0045】
そして、第二空間Bを形成する伝熱部100においても凸条20…及び凹条21…が形成されているため、伝熱面積を広くすることができる上に、凸条20…及び凹条21…の凹凸形状で被熱交換媒体Cの流れに適度な乱れを与えつつ被熱交換媒体Cを流通させることができ、第一空間A内を流通する熱交換媒体Hとの熱交換を伝熱部100を介して効率的に行うことができる。
【0046】
また、各伝熱プレート10a,10b…は、前記伝熱部100の外周に鍔部102を備え、第二空間Bを形成する伝熱プレート10a…の一方の鍔部102に、第二空間Bを形成する相手方の伝熱プレート10b…の鍔部102を支持し、第二空間Bを形成すべく対向した伝熱部100同士を所定間隔で維持させる支持部103を設けるようにしたので、第二空間B内に不純物を堆積させる原因となる部位形成することなく、対向する伝熱部100の間隔を熱交換に好ましい間隔にすることができる。特に、当該プレート式熱交換器1を作成するにあたり、伝熱プレート10a,10b…を適切な位置に配置することができ、製作効率の観点においても非常に有効である。
【0047】
前記凸条20…及び凹条21…は、基準線に対して傾斜状態で伸長し、該伸長方向と直交する方向に交互に形成された複数の凸条20…及び凹条21…で構成されているので、第一空間Aを形成する伝熱プレート10a,10bの一方を他方に対して180°反転させて積層することで、凸条20…同士を点接触させた状態にすることができる。
【0048】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
上記実施形態において、プレート式熱交換器1を浴槽の湯を追い焚きするための熱交換器として説明したが、これに限定されるものではなく、前記プレート式熱交換器1は、非熱交換媒体Cを流通させる配管系(循環系)が、外部から何らかの不純物が入り込むような開放型であれば有効に機能する。もちろん、非熱交換媒体Cを流通させる配管系(循環系)が、外部から何ら不純物が入り込むことのない閉塞型の配管系等であっても採用できることは言うまでもない。
【0050】
上記実施形態において、各伝熱プレート10a,10bの凸条20…、凹条21…の形状、配置、及びサイズを同一に設定し、非接触状態を維持しつつ対向する凹条21…に凸条20…が入り込んだ態様の伝熱部100間に第二空間Bを形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第二空間Bを形成する伝熱部100,100の凸条20…及び凹条21…の形成された領域同士が非接触となることを前提に、例えば、第二空間Bを形成する伝熱部100の凸条20…同士が対向するように、各伝熱部100の凸条20…及び凹条21を形成するようにしたり、第二空間Bを形成する伝熱部100の凸条20…同士が交差するように、各伝熱部100の凸条20…及び凹条21…を形成するようにしたりしてもよい。このようにしても、互いの凸条20…同士が非接触となるため、上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0051】
上記実施形態において、対向する伝熱部100を非接触状態で維持させ、該伝熱部100間に第二空間Bを形成すべく、支持部103を台形状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、支持部103は、鍔部102を部分的に膨出させるようにして形成してもよい。但し、プレート式熱交換器1の全体の強度を高めるには、上記実施形態のように、各伝熱プレート10a,10bのそれぞれに台形状を呈する支持部103を複数形成し、プレート式熱交換器1の周囲をハニカム構造にすることが好ましい。
【0052】
また、支持部103は、鍔部102自体を変形等をさせて形成されるものに限定されるものではなく、例えば、別体で作製した支持部103を鍔部102に取り付けるようにしても勿論よい。すなわち、一方が他方を支持できる形態であれば支持部103の形態は種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプレート式熱交換器の斜視図を示す。
【図2】同実施形態にかかるプレート式熱交換器の断面図であって、(a)は、図1のI−I断面を示し、(b)は、図1のII−IIの断面を示す。
【図3】同実施形態にかかるプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの説明図であって、(a)は、一方の伝熱プレートを示し、(b)は、他方の伝熱プレートを示す。
【図4】同実施形態にかかるプレート式熱交換器の部分側面図を示す。
【図5】同実施形態にかかるプレート式熱交換器の熱交換媒体及び被熱交換媒体の流れを説明するための説明図であって、(a)は、第一空間内の流れを示し、(b)は、第二空間の流れを示す。
【図6】同実施形態にかかるプレート式熱交換器の伝熱プレートの積層態様を説明するための説明図を示す。
【図7】同実施形態にかかるプレート式熱交換器の第一空間及び第二空間を説明するための説明図であって、(a)は、第一空間を形成する伝熱部の凸条同士が接触した領域と第二空間の説明図を示し、(b)は、第一空間を形成する伝熱部の凸条同士が非接触の領域と第二空間の説明図を示す。
【符号の説明】
【0054】
1…プレート式熱交換器、10a,10b…伝熱プレート、12,12,13,13…開口、20…凸条、21…凹条、30a,30b,30c,30d…ノズル、100…伝熱部、101…嵌合部、102…鍔部、103…支持部、A…第一空間、A1…熱交換媒体流入路、A2…熱交換媒体流出路、B…第二空間、B1…被熱交換媒体流入路、B2…被熱交換媒体流出路、C…被熱交換媒体、H…熱交換媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏両面に複数の凸条及び凹条が交互に形成された伝熱部を有する複数の伝熱プレートを備え、該複数の伝熱プレートが伝熱部同士を対向させて積層され、各伝熱部を境にして熱交換媒体を流通させる第一空間と被熱交換媒体を流通させる第二空間とが交互に形成されたプレート式熱交換器において、前記第一空間は、互いの凸条同士を交差衝合させた伝熱部間に形成される一方、第二空間は、凸条及び凹条の形成された領域同士が非接触の伝熱部間に形成されることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
各伝熱プレートは、外方に向けて延出した鍔部を外周に備え、隣接する伝熱プレートの少なくとも何れか一方の鍔部には、他方の伝熱プレートの鍔部を支持し、第二空間を形成する伝熱部同士を所定間隔で維持させる支持部が設けられている請求項1記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−121956(P2008−121956A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304963(P2006−304963)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】