説明

プレート式熱交換器

【課題】接着剤を用いることなく、伝熱プレートの両面にガスケットを低コストに固定することができるプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】伝熱プレート10の外周に設けられた凹凸部17の形状を、伝熱プレート10の中心軸Mに関して180°回転対称とした。これにより、スリット18を打ち抜き形成する際、裏返した伝熱プレートを同じ打ち抜き金型の上に乗せることができるため、同じ金型で2倍の数のスリット18を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
プレート式熱交換器は、伝熱プレートを積層し、伝熱プレート間に形成される流路に2種の流体を交互に流通させることで、流体間で熱交換を行うものである。伝熱プレート間にはガスケットが設けられ、このガスケットで流路を形成すると共に、流体の外部への漏れ出しを防止している。
【0003】
例えば特許文献1に示されているプレート式熱交換器は、図16に示すように、複数枚の伝熱プレート110を積層した積層体120と、積層体120の両側に設けたフレーム130とを有する。積層された伝熱プレート110のうち、手前側の端部に配された伝熱プレートを110a、奥側の端部に配された伝熱プレートを110b、これらの間に配された伝熱プレートを110cで示す。伝熱プレート110は全て同じ形状を成し、交互に上下反転させながら積層される。積層体120の中間の伝熱プレート110c同士の間にはガスケット140が設けられ、積層体120の両端の伝熱プレート110a・110bとフレーム130との間には、それぞれ上記のガスケット140と異なる形状の端部用ガスケット150が設けられる。伝熱プレート110間の形成された隙間に、異なる流体A及びBを交互に流通させることにより、流体間で熱交換が行われる(図16の矢印参照)。
【0004】
一方、特許文献2に示されている伝熱プレートには、伝熱プレートのガスケット溝の外側に、ガスケット溝に沿った方向で山部と谷部とが交互に現れる波型の凹凸部が設けられている。このように凹凸部を設けることで、隣り合う伝熱プレートの凹凸部の山部と谷部とを接触させ、伝熱プレートを安定した状態で積層することができる。このプレート式熱交換器では、凹凸部の山部にスリットを形成すると共に、ガスケット本体の外側に固定部を設け、伝熱プレートのスリットにガスケットの固定部を嵌合させることにより両者を固定している。これにより、接着剤を使用することなくガスケットを伝熱プレートに固定することができるため、メンテナンス時に劣化したガスケットを容易に交換できると共に、接着剤の臭いが流体に付くことがない。特に、食品の殺菌等に用いられる熱交換器の場合、接着剤の臭いが食品に付くことを確実に回避するため、上記のように接着剤の使用を廃止することが好ましい。
【0005】
【特許文献1】特開2004−125222号公報
【特許文献2】特開2000−97583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図16のプレート式熱交換器は、各伝熱プレート110にガスケットを固定し、この伝熱プレート110を積層することにより組み立てられる。積層体120の中間部の伝熱プレート110cには、表面(図16で見えている面)にガスケット140が固定される。積層体120の手前側端部の伝熱プレート110aには、表面に端部用ガスケット150が固定される。積層体120の奥側端部の伝熱プレート110bには、表面にガスケット140が固定されると共に、裏面に端部用ガスケット150が固定される(裏面のガスケット150は図示省略)。
【0007】
この奥側端部の伝熱プレート110bのように、プレート式熱交換の組立に際し、伝熱プレートの両面にガスケットを固定する場合がある。例えば、上記特許文献2の方法で伝熱プレートの両面にガスケットを固定しようとすると、伝熱プレートに通常の2倍の数のスリットを形成する必要がある。スリットの形成は、通常、スリット形成用の刃を有する金型による打ち抜き加工で形成されるため、スリットの数が増えるとスリットを打ち抜くための打ち抜き刃の数も増やす必要があり、コスト高を招く。
【0008】
例えば、図17に、凹凸部117及びスリット118を形成した伝熱プレート110を示す。この凹凸部117は、ガスケット溝116の延在方向に沿って山部117aと谷部117bとが交互に現れる形状を成している(図示例では、理解の容易化のために、凹凸部117のうち、谷部117bを網掛で示している。)。この凹凸部117のうち、ガスケット溝116の直線部に沿った領域(以下、凹凸部117の直線部分)では、山部117a及び谷部117bの双方がストレート形状を成している。一方、凹凸部117のうち、ガスケット溝116の曲線部に沿った領域(以下、凹凸部117の曲線部分)では、山部117a及び谷部117bの双方をストレート形状とすることはできず、少なくとも一方が扇形になる。図示例では、凹凸部117の曲線部分で、扇形の山部117aとストレート形状の谷部117bとが交互に配される。この凹凸部117の曲線部分のうち、中心軸Mに関して対称な箇所には異なる形状の山部と谷部が配されており、具体的には、図17に矢印Xで示すように、扇形の山部117aの中心軸Mに関して対称位置には、ストレート形状の谷部117bが配される。
【0009】
例えば、この伝熱プレート110を打ち抜き金型に載置し、図17に示す位置にスリット18を形成した後、伝熱プレート110を中心軸Mに関して裏返して同じ金型に載置し、再び打ち抜き加工を施せば、図示例の2倍の数のスリットを形成することができる。しかし、金型は、伝熱プレート110の外周部を支持するために、外周部の形状(すなわち凹凸部117の形状)に倣った形状の支持面を有するため、伝熱プレート110を裏返すと同じ金型の上に載置することができない。すなわち、図17の矢印Xで示す扇形の山部117aと同形状の支持面に、裏返した伝熱プレート110のストレート形状の山部(図17で矢印Xで示すストレート形状の谷部117bを裏返したもの)が配されるため、形状が合わずに載置することができない。従って、上記のような伝熱プレート110の両面にガスケットを固定する場合、少なくとも一方の面のガスケットは接着剤を使用して固定せざるを得ないのが実情であった。
【0010】
本発明の課題は、接着剤を用いることなく、伝熱プレートの両面にガスケットを低コストに固定することができるプレート式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、複数枚の矩形状の伝熱プレートをガスケットを介して積層したプレート式熱交換器であって、ガスケットが、伝熱プレートの伝熱面の全周を囲むガスケット本体と、ガスケット本体の外側に設けられた固定部とを有し、伝熱プレートが、ガスケット本体を装着するためのガスケット溝と、ガスケット溝の外周に設けられ、ガスケット溝に沿った方向で山部と谷部が交互に現れる凹凸部と、凹凸部に形成され、ガスケットの固定部を嵌合させるための嵌合部とを有し、凹凸部の形状を、伝熱プレートの短辺又は長辺の中央部を通る中心軸に関して180°回転対称としたプレート式熱交換器を提供する。
【0012】
上記のように、本発明では、凹凸部の形状を、伝熱プレートの短辺又は長辺の中央部を通る中心軸に関して180°回転対称とした。これにより、両面にガスケットを固定する必要がある場合、打ち抜き金型の上に伝熱プレートを載置して一方の面に嵌合部を形成した後、伝熱プレートを裏返して同じ金型の上に載置することができる。そして、先の嵌合部と異なる場所に別の嵌合部を形成することで、新たな金型を要することなく2倍の数の嵌合部を形成することができる。
【0013】
例えば、ガスケット溝の曲線部分に沿って形成され、前記中心軸に関して対称位置にある凹凸部のうち、一方の凹凸部をストレート形状の山部と扇形の谷部とで構成し、他方の凹凸部を扇形の山部とストレート形状の谷部とで構成すれば、凹凸部の形状を、中心軸に関して180°回転対称とすることができる。尚、「ストレート形状」とは、山部又は谷部の等高線が平行に走っている形状を言い、「扇形」とは、山部又は谷部の等高線の間隔が外側へ向けて広がっている形状を言う。
【0014】
例えば特許文献2には、ガスケットの固定部に、凹凸部の山部をガスケット溝の延在方向の両側から挟む一対の係合部(突出部10)が設けられ、これにより、ガスケット溝の延在方向におけるガスケットと伝熱プレートとのズレを防止している。しかし、特許文献2の一対の係合部は、ガスケット本体から外側へ向けて互いに平行に配されているため、ストレート形状の山部と密着させることはできるが(図5参照)、扇形の山部と密着させることはできない。この点に鑑み、扇形の山部の嵌合部に嵌合するガスケットの固定部に、扇形の山部の形状に沿って互いの間隔を外側へ向けて徐々に広げ、扇形の山部をガスケット溝延在方向の両側から挟む一対の係合部を設ければ、扇形の山部にも一対の係合部を密着させることができ(図6参照)、両者を確実に係合させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のプレート式熱交換器によれば、接着剤を用いることなく、伝熱プレートの両面にガスケットを低コストに固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器を示す。このプレート式熱交換器は、伝熱プレート10、フレーム30、ガスケット40、及び端部用ガスケット50を有し、各部材の形状を除いて図11に示す従来のプレート式熱交換器と同様の構成を成している。積層された伝熱プレート10のうち、手前側端部の伝熱プレートを10a、奥側端部の伝熱プレートを10b、これらの間に配された伝熱プレートを10cで示す。尚、以下では、説明の便宜上、伝熱プレート10の短辺方向を左右方向、長辺方向を上下方向と言う。また、伝熱プレート10のうち、図1で見えている側の面を表面、見えない側の面を裏面と言う。
【0018】
伝熱プレート10は、図2に示すように、角部が丸まった矩形状を成し、中央部に設けられた伝熱面11と、四隅に設けられた通路孔12〜15とを有する。伝熱面11には、例えばヘリングボーン形状に配列された複数の畝が形成される(図示省略)。伝熱プレート10には、ガスケットを装着するためのガスケット溝16が、伝熱面11の全周を囲むように形成される(図1では、ガスケット溝16の中心線のみを点線で示す)。尚、図2は、積層体20の中間部の伝熱プレート10c、及び手前側端部の伝熱プレート10aを示すものである。また、スリットの数及び形成箇所以外の構成は、奥側端部の伝熱プレート10bも同様の構成を成す(図10参照)。
【0019】
伝熱プレート10には、ガスケット溝16の外側に凹凸部17が形成される。凹凸部17は、ガスケット溝16の延在方向で山部17aと谷部17b(網掛領域)とが交互に現れる波形形状を成し、ガスケット溝16に沿って伝熱プレート10の全周に亘って形成される。図3に示すように、伝熱プレート10の表面側では、凹凸部17の山部17aと伝熱面11の畝の山部11aとの間にガスケット溝16が形成され、伝熱プレート10の裏面では、凹凸部17の谷部17bと伝熱面11の畝の谷部11bとの間にガスケット溝16’が形成される。このように、伝熱プレート10の外周部に凹凸部17を設けることで、隣り合う伝熱プレート10を接触させることができ、安定した状態で伝熱プレート10を積層することができる。また、ガスケット溝16・16’にガスケット40が圧入されたとき、ガスケット溝16の内壁には大きな圧力が加わるが、ガスケット溝16の外側に凹凸部17を設けることでガスケット溝16の内壁の強度が高められ、この圧力に対向することができる。
【0020】
凹凸部17は、伝熱プレート10の短辺の中央部を通る長辺方向の中心軸Mに関して180°回転対称となるように形成される。すなわち、山部17aの中心軸Mに関して反対側には同形状の谷部17bが形成され、谷部17bの中心軸Mに関して反対側には同形状の山部17aが形成される。
【0021】
ガスケット溝16の直線部分に沿って形成された凹凸部17(以下、凹凸部17の直線部分)では、山部17aと谷部17bとが共にストレート形状に形成され、山部17a及び谷部17bの中心線が全て平行に形成される。一方、ガスケット溝16の曲線部分に沿って形成される凹凸部17(以下、凹凸部17の曲線部分)では、山部17a及び谷部17bの少なくとも一方を扇形に形成している。図示例では、中心軸Mで二分される伝熱プレート10のうち、左半分の領域における凹凸部17の曲線部分は、ストレート形状の山部17aと扇形の谷部17bとで構成し、右半分の領域における凹凸部17の曲線部分は、扇形の山部17aとストレート形状の谷部17bとで構成している。
【0022】
凹凸部17のピッチは、例えば山部17aの中心線を基準に設定される。ただし、伝熱プレート10の右半分の領域における曲線部分(図1に矢印Yで示す領域)では、山部17aが扇形になっているため、中心線を設定しにくい。従って、この領域では、ストレート形状の谷部17bの中心線を基準として凹凸部17のピッチを設定すればよい。
【0023】
凹凸部17には、ガスケット40・50の固定部42・52が嵌合する嵌合部が設けられる。図示例では、凹凸部17の山部17aに、ガスケット溝16の延在方向に延びた長方形のスリット18が嵌合部として形成される。スリット18は、ガスケット溝16に沿っておおよそ等間隔の複数箇所に設けられる。積層体20の中間部の伝熱プレート10c及び手前側端部の伝熱プレート10aでは、スリット18は中心軸Mに対して左右非対称な位置に形成される。このとき、凹凸部17の曲線部に少なくとも一つのスリット18を設けることで、大きな流体圧が加わる通路孔12〜15の周囲でガスケット40・50を確実に固定することができる。
【0024】
図4は、積層体20の中間部の伝熱プレート10cの表面に、ガスケット40を固定した状態を示している。ガスケット40は、伝熱プレート10cの伝熱面11を囲むように設けられたガスケット本体41と、ガスケットを伝熱プレート10cに固定するための固定部42とを有し、例えば樹脂で一体に成形される。ガスケット40は、ガスケット本体41を伝熱プレート10cのガスケット溝16に装着すると共に、固定部42を伝熱プレート10のスリット18に嵌合させることにより、伝熱プレート10cに固定される。
【0025】
ガスケット本体41は、伝熱面11及び2つの通路孔(図示例では右側の通路孔13、15)を略台形状に取り囲む第1部分41aと、他の2つの通路孔(図示例では左側の通路孔12、14)を伝熱面11から断絶するように、これらの通路孔の周りをそれぞれ囲む第2部分41bとを有する。第1部分41aの内周と第2部分41bの内周には異なる流体が流れるようになっており、各流体がガスケット40により分断されている。
【0026】
固定部42は、ガスケット本体41の外側に突出して設けられ、伝熱プレート10のスリット18に対応した位置に配される。固定部42は、図5及び図6に示すように、ガスケット本体41から外側へ向けて延びた一対の支持部42aと、支持部42aの外側端部を連結した連結部42bとが設けられる。一対の支持部42aは、山部17aをガスケット溝16の延在方向両側から挟むように配される。支持部42aと山部17aとがガスケット溝16の延在方向で係合することにより、この方向でのガスケット40と伝熱プレート10とのズレを規制することができる。このとき、支持部42aを、山部17aの形状に沿って形成することで、支持部42aと山部17aとを確実に密着させ、両者をより確実に係合させることができる。具体的には、ストレート形状の山部17aを挟む一対の支持部42aは、図5に示すように、ストレート形状の山部17aの形状に沿って平行に設け、扇形の山部17aを挟む一対の支持部42aは、図6に示すように、扇形の山部17aに沿って互いの間隔を外側へ向けて徐々に広げて設ければ良い。
【0027】
また、支持部42aは、図7に示すように、ガスケット溝16よりも下方に突出した突出部42a1を有し、この突出部42a1を谷部17bの底面、及び山部17aと谷部17bとの間の斜面部17cに密着させている。このように、支持部42aを谷部17bの底面及び斜面部17cと接触させることで、支持部42aと凹凸部17との接触領域を拡大し、ガスケット溝16の延在方向でのガスケット40と伝熱プレート10とのズレをより一層確実に規制できる。
【0028】
固定部42の連結部42bは、伝熱プレート10のスリット18に嵌合している。これにより、ガスケット溝16の延在方向と直交する方向で両者が係合し、この方向でガスケット40と伝熱プレート10とのズレが規制される。
【0029】
図8は、積層体20の手前側端部の伝熱プレート10aの表面に、端部用ガスケット50を固定した状態を示している。端部用ガスケット50は、ガスケット本体51と固定部52とを有する。ガスケット本体51は、伝熱面11を取り囲む第1部分51aと、各通路孔12〜15を伝熱面11から断絶するように、各通路孔の周りをそれぞれ取り囲む第2部分51bとを備える。すなわち、図4に示すガスケット40と比べると、通路孔13及び15と伝熱面11とを分断するガスケットが加わっている点で、構成が異なる。この端部用ガスケット50は、第1部分51aの内周には流体は流れず、第2部分51bの内周に各流体が流れるようになっている。端部用ガスケット50の固定部52は、上記のガスケット40の固定部42と全く同じ位置、同じ形状に形成される。
【0030】
図9は、積層体20の奥側端部の伝熱プレート10bであり、表面(図9で見えている面)にガスケット40を固定すると共に、裏面(図9で見えない面)に端部用ガスケット50を固定した状態を示している。伝熱プレート10bには、図10に示すように、他の伝熱プレート(図2参照)の倍の数のスリット18が形成されている。スリット18は、中心軸Mに対して左右対称な位置に形成されており、スリット18が形成された山部17aの中心軸Mに関して反対側には、スリット18が形成された谷部17bが配される。この伝熱プレート10の表裏両面にガスケット40及び端部用ガスケット50を固定すると、図9に示すように、表面にガスケット40が固定される共に、表面の谷部17bに形成されたスリット18から、裏面に固定された端部用ガスケット50の固定部52の連結部52bが見える。
【0031】
上記のような伝熱プレート10は、伝熱面11及び凹凸部17をプレス成形した後、スリット18を打ち抜き加工して形成される。スリット18を形成するための打ち抜き金型は、例えば図11に示すように、伝熱プレート10を下方から支持する下型60と、伝熱プレート10の上方からスリット18を打ち抜く打ち抜き刃70とを有する。下型60は、伝熱プレート10の凹凸部17と同じ形状の支持面61を有する。支持面61には、打ち抜き刃70を降下させたときに嵌り込む逃げ溝62が形成される。下型60の支持面61に伝熱プレート10を載置した状態で、打ち抜き刃70を降下させると、打ち抜き刃70が逃げ溝62に収容されながら伝熱プレート10を貫通し、スリット18が形成される。このとき、打ち抜き刃70の刃面71を、山部17aに沿った形状、図示例では刃面71の両端部を下方に突出させた形状とすることで、刃面71の全体で均一に圧力を加えることができると共に、伝熱プレート10の表面にバリが形成されることを防止できる。また、打ち抜き刃70の位置がスリット18の形成予定箇所から僅かにずれた場合(図12に点線で示す)、上記のように打ち抜き刃70の刃面71を山部17aの形状に沿った形状とすることで、打ち抜き刃70が山部17aの両側の斜面部17cで案内され、正確な位置にスリット18を形成することができる。こうして打ち抜き刃70が斜面部17cで案内される際、打ち抜き刃70の刃面71の端部で斜面部17cの一部(図12にPで示す部分)が傷つくことがあるが、この部分はスリット18として打ち抜かれるため、完成品に傷が残ることはない。
【0032】
上記の打ち抜き金型に設けられる打ち抜き刃70は、図2に示されるスリット18の数だけ設ければ良い。例えば、片面にのみガスケットが固定される伝熱プレート(図2参照)の場合、一度の打ち抜き加工で全てのスリット18が形成される。一方、両面にガスケットが固定される伝熱プレート(図10参照)の場合、打ち抜き加工を一回行って図2と同様の箇所にスリット18を形成した後、伝熱プレート10を中心軸Mに関して表裏反転させ、上記の打ち抜き金型の下型60の上に載置して再び打ち抜き加工を行う。このように伝熱プレート10を表裏反転させたときに、凹凸部17が中心軸Mに関して180°回転対称な形状を成すことにより、表裏反転させた伝熱プレート10も同じ下型60に載置することができるため、同じ打ち抜き金型を用いて2倍の数のスリット18を形成することができる。
【0033】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明する。
【0034】
上記では、スリット18が山部17aに形成される場合を示しているが、これに限らず、スリットを谷部17bに形成することもできる。谷部17bにスリットを形成するための打ち抜き金型70’は、図13に示すように、谷部17bの形状に合わせて、両端部を上方に切欠いた形状を成している。これにより、バリの生成を防止できると共に、打ち抜き刃70’がスリットの形成予定箇所からずれた場合(図14に点線で示す)、斜面部17cで打ち抜き刃70’を案内することができる。ただし、斜面部17cで打ち抜き刃70’を案内する際、打ち抜き刃70’の刃面71’で斜面部17cの一部(図14にP’で示す部分)に傷がつくことがあるが、この部分はスリットで打ち抜かれる領域ではないので完成品に傷が残る。このような傷が残ることを避けたい場合は、上記実施形態のように、スリットを山部17aに形成すればよい。
【0035】
また、上記では、プレート式熱交換器の組立に際し、図1に示すように、各伝熱プレート10に一つずつガスケット40(あるいは端部用ガスケット50)を固定する方法を示しているが、これに限られず、例えば一枚おきの伝熱プレート10の両面にガスケットを固定して組み立てることもできる。この場合、一枚おきの伝熱プレート10に表面のガスケット及び裏面のガスケットの双方を固定するためのスリット18が形成され、両面にガスケットが固定された伝熱プレートと、ガスケットが固定されていない伝熱プレートとを交互に積層して組み立てられる。例えば、2種類の形状の伝熱プレートを交互に積層する場合、それぞれの伝熱プレートに応じた形状のガスケットが必要となることがあるが、上記のように1枚おきの伝熱プレートの両面にガスケットを固定すれば、一方の伝熱プレートに固定するための形状を成した一種類のガスケットを用意すれば足りるため、低コスト化を図ることができる。
【0036】
また、上記では、伝熱プレート10の中心軸Mを、短辺の中央部を通る長辺方向に設けているが、これに限らず、例えば中心軸Mを、長辺の中央部を通る短辺方向に設けても良い。
【0037】
また、上記では、通路孔12〜15のうち、左半分の通路孔12・14に一方の流体を流通させ、右半分の通路孔13・15に他方の流体を流通させるようにしているが、これに限らず、例えば図15に示すように、一方の対角位置の通路孔13・14に一方の流体Aを流通させ、他方の対角位置の通路孔12・15に他方の流体Bを流通させるようにしてもよい。この場合、隣り合う伝熱プレート10cに固定されるガスケット40は、表裏反転させた形状となるが、通常、固定部42は表裏対象な形状には形成されていないため(図7参照)、同じガスケット40を使用することができない。従って、図15の構成の場合は、上記のように一枚おきの伝熱プレートの両面にガスケットを固定することで、同じ形状のガスケットを使用することができる。
【0038】
また、上記では、伝熱プレート10の凹凸部17に設けられた嵌合部として、プレートを完全に貫通するスリット18が例示されているが、これに限らず、例えば凹凸部17の山部17aを貫通させずに凹ませて、この凹部を嵌合部としてもよい。
【0039】
また、上記では、凹凸部17の曲線部分において、山部17a及び谷部17bの一方をストレート形状とし、他方を扇形としているが、これに限らず、例えば山部及び谷部の双方を扇形としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】プレート式熱交換器の分解斜視図である。
【図2】伝熱プレートの平面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】ガスケットを固定した伝熱プレートの平面図である。
【図5】図3のA部拡大図である。
【図6】図3のB部拡大図である。
【図7】図5をZ方向から見た側面図である。
【図8】端部用ガスケットを固定した伝熱プレートの平面図である。
【図9】表面にガスケットを固定し、裏面に端部用ガスケットを固定した伝熱プレートの平面図である。
【図10】図9の伝熱プレートの平面図である。
【図11】スリットを形成する打ち抜き金型を示す断面図である。
【図12】図11の打ち抜き刃が案内される様子を示す断面図である。
【図13】スリットを形成する打ち抜き金型の他の例を示す断面図である。
【図14】図13の打ち抜き刃が案内される様子を示す断面図である。
【図15】他の例のプレート式熱交換器の斜視図である。
【図16】従来のプレート式熱交換器の斜視図である。
【図17】凹凸部の谷部を全てストレート形状に形成した伝熱プレートの平面図である。
【符号の説明】
【0041】
10(10a〜10c) 伝熱プレート
11 伝熱面
12〜15 通路孔
16 ガスケット溝
17 凹凸部
17a 山部
17b 谷部
17c 斜面部
18 スリット(嵌合部)
20 積層体
30 フレーム
40 ガスケット
41 ガスケット本体
42 固定部
42a 支持部
42b 連結部
50 端部用ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の矩形状の伝熱プレートをガスケットを介して積層したプレート式熱交換器であって、
ガスケットが、伝熱プレートの伝熱面の全周を囲むガスケット本体と、ガスケット本体の外側に設けられた固定部とを有し、
伝熱プレートが、ガスケット本体を装着するためのガスケット溝と、ガスケット溝の外周に設けられ、ガスケット溝に沿った方向で山部と谷部が交互に現れる凹凸部と、凹凸部に形成され、ガスケットの固定部を嵌合させるための嵌合部とを有し、
凹凸部の形状を、伝熱プレートの短辺又は長辺の中央部を通る中心軸に関して180°回転対称としたプレート式熱交換器。
【請求項2】
ガスケット溝の曲線部分に沿って形成され、前記中心軸に関して対称位置にある凹凸部のうち、一方の凹凸部をストレート形状の山部と扇形の谷部とで構成し、他方の凹凸部を扇形の山部とストレート形状の谷部とで構成した請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
ガスケット溝の曲線部分に沿って形成された凹凸部に、嵌合部が形成された扇形の山部を設け、この嵌合部に嵌合するガスケットの固定部に、扇形の山部の形状に沿って互いの間隔を外側へ向けて徐々に広げ、扇形の山部をガスケット溝延在方向の両側から挟む一対の係合部を設けた請求項1又は2記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−127527(P2010−127527A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302776(P2008−302776)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 2008国際食品工業展 (FOOMA JAPAN 2008) 主催者名 社団法人日本食品機械工業会 開設日 平成20年5月27日から30日 開設場所 東京国際展示場(東京ビッグサイト) 東京都江東区有明3−21−1 出品者名 株式会社日阪製作所 出品製品 食品用プレート式熱交換器
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】