プレート式熱交換器
【課題】高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが熱劣化することを抑制でき、伝熱プレート間の封止状態を長期に亘って維持させることのできるプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして一次側主流路と二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成され、各伝熱プレートの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、二つの第二開口を取り囲むように配置された状態で隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された二次側主流路形成用ガスケットが、第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットの外周を取り囲んで配置されている。
【解決手段】積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして一次側主流路と二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成され、各伝熱プレートの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、二つの第二開口を取り囲むように配置された状態で隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された二次側主流路形成用ガスケットが、第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットの外周を取り囲んで配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体と低温流体とを熱交換させるプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器が公知である。
【0003】
そして、この種のプレート式熱交換器には、種々タイプのものがあり、例えば、図9に示す如く、それぞれ独立した複数枚の伝熱プレート10’、11’が積層され、各伝熱プレート10’,11’間にガスケット12’,13’,14’,15’が介装されたものや、図10に示す如く、伝熱プレート10’’,11’’を二枚一組にした伝熱カセットS’’が複数積層され、該伝熱カセットS’’間にガスケット12’’,14’’が介装されたものがある。
【0004】
ここで、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’のそれぞれについて具体的に説明すると、独立した複数枚の伝熱プレート10’,11’を積層したプレート式熱交換器1’は、図9に示す如く、各伝熱プレート10’,11’が長方形状に形成されており、長手方向の両端部に対して該長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)における一端側に二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’が形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’が形成されている。
【0005】
そして、該プレート式熱交換器1’は、二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’を躱す一方で二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’を取り囲むように配置された無端環状の二次側主流路形成用ガスケット12’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の一方の面間に介装され、二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’を躱す一方で二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’を取り囲むように配置された無端環状の一次側主流路形成用ガスケット13’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の他方の面間に介装されている。また、該プレート式熱交換器1’は、各第一開口100a’,100b’,110a’,110b’回りに配置されたリングガスケット14’,14’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の一方の面間に介装され、各第二開口101a’,101b’,111a’,111b’回りに配置されたリングガスケット15’,15’が伝熱プレート10’,11’の他方の面間に介装されている。
【0006】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器1’は、伝熱プレート10’,11’間に各伝熱プレート10’,11’を境にして一次側主流路R1’及び二次側主流路R2’が交互に形成され、さらに、各伝熱プレート10’,11’の二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’が連なって一次側主流路R1’に高温流体H’を流出入させる一次側流入路Ra’及び一次側流出路Rb’が形成されるとともに、各伝熱プレート10’,11’の第二開口101a’,101b’,111a’,111b’が連なって二次側主流路R2’に低温流体C’を流出入させる二次側流入路Rc’及び二次側流出路Rd’が形成さている。すなわち、該プレート式熱交換器1’は、伝熱プレート10’,11’間に介装された一次側主流路形成用ガスケット13’で一次側主流路R1’が画定されるとともに、伝熱プレート10’,11’間に介装された二次側主流路形成用ガスケット12’で二次側主流路R2’が画定され、伝熱プレート10’,11’間に介装されたリングガスケット14’,15’で一次側流入路Ra’、一次側流出路Rb’、二次側流入路Rc’及び二次側流出路Rd’が画定されている。
【0007】
これに対し、複数の伝熱カセットS’’…を積層したプレート式熱交換器1’’は、図10に示す如く、各伝熱カセットS’’内に一次側主流路R1’’が形成される一方、伝熱カセットS’’,S’’間に二次側主流路R2’’が形成されている。すなわち、この種のプレート式熱交換器1’’は、複数の伝熱カセットS’’…を積層することで、該積層方向に並ぶ伝熱プレート10’’,11’’(伝熱カセットS’’を構成する伝熱プレート10’’,11’’)を境にして一次側主流路R1’’及び二次側主流路R2’’が交互に形成されている。
【0008】
ここで伝熱カセットS’’について具体的に説明すると、各伝熱カセットS’’は、略長方形状に形成された二枚の伝熱プレート10’’,11’’で構成されている。二枚の伝熱プレート10’’,11’’のそれぞれは、長手方向の両端部に対して短手方向における一端側に二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’が形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が形成されている。
【0009】
そして、伝熱カセットS’’は、二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’を躱す一方で二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を取り囲んだ無端環状の溶接ラインWL1’’を形成し、且つ、二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’のそれぞれを包囲した無端環状の溶接ラインWL2’’,WL3’’を形成するように二枚の伝熱プレート10’’,11’’の他方の面同士を溶接することで形成されている。これにより、各伝熱カセットS’’の内部(伝熱プレート10’’,11’’間)には、二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を取り囲んだ溶接ラインWL1’’で画定された一次側主流路R1’’が形成されている。
【0010】
そして、この種のプレート式熱交換器1’’は、二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を躱す一方で二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’を取り囲むように配置された無端環状の二次側流路形成用ガスケット12’’が伝熱カセットS’’,S’’の対向面間(伝熱プレート10’’,11’’の一方の面間)に介装され、各第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’回りに配置されたリングガスケット14’’が伝熱カセットS’’,S’’の対向面間(伝熱プレート10’’,11’’の一方の面)間に介装されている。
【0011】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器1’’は、伝熱カセットS’’を形成する各伝熱プレート10’’,11’’を境にして一次側主流路R1’’及び二次側主流路R2’’が交互に形成され、さらに、各伝熱プレート10’’,11’’の二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’が連なって一次側主流路R1’’に高温流体H’’を流出入させる一次側流入路Ra’’及び一次側流出路Rb’’が形成されるとともに、各伝熱プレート10’’,11’’の二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が連なって二次側主流路R2’’に低温流体C’’を流出入させる二次側流入路Rc’’及び二次側流出路Rd’’が形成されている。
【0012】
すなわち、該プレート式熱交換器1’’は、伝熱プレート10’’,11’’同士を溶接した溶接ラインWL1’’で一次側主流路R1’’が画定されるとともに、伝熱カセットS’’(伝熱プレート10’’,11’’)間に介装された二次側主流路形成用ガスケット12’’で二次側主流路R2’’が画定されている。そして、該プレート式熱交換器1’’は、伝熱カセットS’’(伝熱プレート10’’,11’’)間に介装されたリングガスケット14’’で一次側流入路Ra’’、及び一次側流出路Rb’’が画定され、第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’回りで伝熱プレート10’’,11’’同士を溶接した溶接ラインWL2’’,WL3’’で二次側流入路Rc’’及び二次側流出路Rd’’が画定されている。
【0013】
このように、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’間の封止態様が異なるが、何れも複数枚の伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’が積層され、第一開口100a’,100b’,110a’,110b’,100a’’,100b’’,110a’’,110’’が連なって一次側主流路R1’,R1’’にのみに連通した一次側流入路Ra’,Ra’’及び一次側流出路Rb’,Rb’’が形成されるとともに、第二開口101a’,101b’,111a’,111b’,101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が連なって二次側主流路R2’,R2’’にのみに連通した二次側流入路Rc’,Rc’’及び二次側流出路Rd’,Rd’’が形成されるようになっており、一次側主流路R1’,R1’’を流通する高温流体H’,H’’と二次側主流路R2’,R2’’を流通する低温流体C’,C’’とが伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’を介して熱交換できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−343055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、何れにおいても、図11(a)及び図11(b)に示す如く、第一開口100a’,110a’,100a’’,110a’’回りに配置されたリングガスケット14’,14’’が一次側流入路Ra’,Ra’’を画定しているため、該リングガスケット14’,14’’が高温流体H’,H’’の熱の影響で熱劣化してしまう。すなわち、一次側流入路Ra’,Ra’’を流通する高温流体H’,H’’は、熱交換される前の非常に高温なものであるため、該高温流体H’,H’’を流通させる一次側流入路Ra’,Ra’’を画定したリングガスケット14’,14’’(第一開口100a’,110a’,100a’’,110a’’回りに配置されたリングガスケット14’,14’’)は、高温流体H’,H’’の高熱で熱劣化して全体が痩せてしまう(厚みが薄くなる)傾向にある。
【0016】
そのため、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、一次側流入路Ra’,Ra’’を画定するリングガスケット14’,14’’と伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’との密着性が落ちて封止状態が悪くなるといった問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが熱劣化することを抑制でき、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることのできるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るプレート式熱交換器は、プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に対して流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成されるとともに、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に対して流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、一次側主流路及び二次側主流路のうち、少なくとも二次側主流路は、全ての第二開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された環状の二次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記一次側流入路及び一次側流出路は、各第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットで画定されたプレート式熱交換器において、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成のプレート式熱交換器によれば、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されているため、該リングガスケットの周囲に二次側主流路内の低温流体が存在し、該低温流体がリングガスケットの温度上昇を抑制することになる。
【0020】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器は、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが比較的に高温になることがないため、リングガスケットの熱劣化(痩せ)を抑制し、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることができる。
【0021】
本発明の一態様として、前記一次側主流路は、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの他方の面側にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されていることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、一次側主流路を一次側主流路形成用ガスケットで画定しても、一次側主流路形成用ガスケットが熱劣化することを抑制することができる。すなわち、二次側主流路形成用ガスケットが伝熱プレートの他方の面(反対側)にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されることで、二次側主流路(低温流体)が伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用ガスケットよりも外側にまで存在することになり、該低温流体が伝熱プレートを介して一次側主流路形成用ガスケットの温度上昇を抑制することになる。
【0023】
従って、一次側主流路を一次側主流路形成用ガスケットで画定しても、該一次側主流路形成用ガスケットが不必要に高温になることがない。これにより、一次側流入路を画定するリングガスケットに加えて一次側主流路形成用ガスケットの熱劣化も抑制することができる。
【0024】
この場合、前記一次側主流路形成用ガスケットを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の保護用ガスケットを更に備えていることが好ましい。このようにすれば、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を防止することができる。すなわち、一次側主流路形成用ガスケットは、高温流体を流通させる一次側主流路を画定するため、一次側主流路の熱影響を受けて温度上昇する傾向にあり、外気に触れる外周が酸化劣化する傾向にあるが、上述の如く、一次側主流路形成用ガスケットを取り囲む環状の保護用ガスケットを更に備え、一次側主流路形成用ガスケットと保護用ガスケットとの間を密封状態にすることで、一次側主流路形成用ガスケットに対する外気の連続的な接触を防止することができ、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を低減することができる。なお、一次側主流路形成用ガスケットと保護用ガスケットとの間の密封空間内にN2 ガスを充填することで、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を更に抑制することができる。
【0025】
本発明の他態様として、前記複数枚の伝熱プレートは、積層方向で順々に二枚一組にされ、各組における二枚の伝熱プレートは、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲んだ無端環状の一次側主流路形成用の溶接ラインを形成するとともに各第二開口を包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ライン及び二次側流出路形成用の溶接ラインを形成するように、互いの他方の面同士が溶接されて伝熱カセットを形成し、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置され、二次側流入路及び二次側流出路は、各第二開口回りに配置された状態で伝熱カセット間に介装された別のリングガスケットで画定されてもよい。
【0026】
このようにすれば、各伝熱カセットを形成する伝熱プレート間に一次側主流路が形成され、伝熱カセット間に二次側主流路が形成される。そして、二次側主流路形成用ガスケットが伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置されるため、二次側主流路(低温流体)が伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路を画定する一次側主流路形成用の溶接ラインよりも外側にまで存在することになり、該低温流体が伝熱プレートの溶接部分(一次側主流路形成用の溶接ライン)の温度上昇を抑制することになる。
【0027】
これにより、伝熱プレート同士を溶接した溶接ライン上で発生する熱応力を抑制することができ、溶接部分に割れが生じるのを抑えることができる。従って、一次側流入路を画定するリングガスケットの熱劣化の抑制に加え、伝熱プレート同士を溶接した溶接ライン上での熱応力を抑制して割れを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明のプレート式熱交換器によれば、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが熱劣化することを抑制でき、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るプレート式熱交換器の締付手段及びレールを省略した分解斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの平面図であって、(a)は、第一伝熱プレートに一次側主流路形成用ガスケット及び第二リングガスケットを装着した状態の平面図を示し、(b)は、第二伝熱プレートに二次側主流路形成用ガスケット及び第一リングガスケットを装着した状態の平面図を示す。
【図4】同実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、一次側流入路近傍の部分断面図を示す。
【図5】同実施形態に係るプレート式熱交換器における高温流体及び低温流体の流動を説明するための説明図であって、(a)は、一次側主流路における高温流体の流れを示し、(b)は、二次側主流路における低温流体の流れを示す。
【図6】本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートにガスケットを装着した状態の平面図であって、(a)は、第一伝熱プレートに一次側主流路形成用ガスケット、第二リングガスケット、及び保護用ガスケットを装着した状態の平面図を示し、(b)は、第二伝熱プレートに二次側主流路形成用ガスケット及び第一リングガスケットを装着した状態の平面図を示す。
【図7】本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図6に示す伝熱プレートを積層したプレート式熱交換器の一次側流入路近傍の部分断面図を示す。
【図8】本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器の伝熱カセットを構成する二枚の伝熱プレートの説明図であって、(a)は、一方の伝熱プレートの平面図を示し、(b)は、他方の伝熱プレートの平面図を示す。
【図9】従来のプレート式熱交換器の分解斜視図であって、複数枚の伝熱プレートがそれぞれ独立したプレート式熱交換器の分解斜視図を示す。
【図10】従来のプレート式熱交換器の分解斜視図であって、二枚一組の伝熱プレートを溶接して形成された伝熱カセットを複数積層したプレート式熱交換器の分解斜視図を示す。
【図11】従来のプレート式熱交換器における一次側流入路近傍の部分断面図であって、(a)は、図9に示すプレート式熱交換器の部分断面図を示し、(b)は、図10に示すプレート式熱交換器の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、図1に示す如く、それぞれ独立した複数枚の伝熱プレート10,11…が積層されている。そして、該プレート式熱交換器1は、図2に示す如く、各伝熱プレート10,11を境にして高温流体Hを流通させる一次側主流路R1と低温流体Cを流通させる二次側主流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第一開口100a,100b,110a,110bが連なって高温流体Hを一次側主流路R1に対して流出入させる一次側流入路Ra及び一次側流出路Rbが形成されるとともに、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第二開口101a,101b,111a,111bが連なって低温流体Cを二次側主流路R2に対して流出入させる二次側流入路Rc及び二次側流出路Rdが形成されている。
【0032】
より具体的に説明すると、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図2に示す如く、複数枚の伝熱プレート10,11…と、各伝熱プレート10,11間に介装されるガスケット12,13,14,15と、複数枚の伝熱プレート10,11…を挟み込む一対のベースプレート16,17と、複数枚の伝熱プレート10,11…を一対のベースプレート16,17で締め付けるための締付手段18(図1参照)とを備えている。
【0033】
各伝熱プレート10,11は、図3(a)及び図3(b)に示す如く、表裏に複数の凹条(採番しない)及び凸条(採番しない)が交互に並んで形成されている。本実施形態において、各伝熱プレート10,11は、金属製のプレートをプレス成形することで凹条及び凸条が形成されている。そのため、各伝熱プレート10,11は、凹条の裏側が凸条になっている。凹条及び凸条は、伝熱プレート10,11の長手方向に延びる中心線(以下、縦中心線という)CL1に対して交差方向に延びて形成されている。なお、凹条及び凸条は、熱交換の対象となる高温流体H及び低温流体Cの性状や熱交換効率等を考慮して適宜配置が変更されるが、本実施形態においては、縦中心線CL1を境にして長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)の一端側の領域及び他端側の領域で対称(鏡像)関係になるように、縦中心線CL1に対して傾斜して形成されている。
【0034】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、伝熱プレート10,11に二種類のものが採用されている。具体的には、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、縦中心線CL1から短手方向の両端に向かうにつれて長手方向の一端側に傾斜するように凹条及び凸条が形成された第一伝熱プレート10(図3(a)参照)と、縦中心線CL1から短手方向の両端に向かうにつれて長手方向の他端側に傾斜するように凹条及び凸条が形成された第二伝熱プレート11(図3(b)参照)とを備えている。これにより、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10と第二伝熱プレート11とを交互に積層することで、互いに隣り合う伝熱プレート10,11の凸条同士が交差衝合するようになっている。
【0035】
前記第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11は、それぞれ長方形状に形成されている。そして、第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11は、長手方向の両端部に対して短手方向における一端側に二つの第一開口100a,100b,110a,110bが形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a,101b,111a,111bが形成されている。なお、本実施形態において、第一開口100a,100b,110a,110b及び第二開口101a,101b,111a,111bの何れも円形状に形成されている。
【0036】
そして、この種のプレート式熱交換器1は、各伝熱プレート10,11の少なくとも何れか一方の面にガスケット12,13,14,15を装着するためのガスケット装着溝102,103,112,113が形成される。
【0037】
ここでガスケット装着溝102,103,112,113について具体的に説明すると、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10に対し、ガスケット装着溝102,103として、二つの第二開口101a,101bを躱す一方で二つの第一開口100a,100bを取り囲んだ第一ガスケット装着溝102と、各第二開口101a,101bを包囲した第二ガスケット装着溝103とが形成されている。
【0038】
前記第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103,103は、第一伝熱プレート10の一方の面の裏側である他方の面(図において手前側に向く面)を溝状に窪ませることで形成されている。本実施形態において、第一伝熱プレート10は、金属製のプレートをプレス成形されたものであるため、第一ガスケット装着溝102の裏側(一方の面側)及び第二ガスケット装着溝103,103の裏側(一方の面側)が隆起している。すなわち、第一伝熱プレート10の一方の面において、他方の面側にある第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103,103の形成領域と対応する領域が隆起した状態になっている。
【0039】
各第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102は、該伝熱プレート10の短手方向の一端に沿って形成された第一溝部102aと、該伝熱プレート10の短手方向の他端に沿って形成された第二溝部102bと、第一溝部102aの両端と第二溝部102bの両端とを接続する一対の第三溝部102c,102cとで構成されている。
【0040】
そして、前記第二溝部102bは、長手方向の長さが第一溝部102aよりも短く設定されている。これに伴い、一対の第三溝部102c,102cは、第一溝部102a側から第二溝部102b側に向かうにつれて伝熱プレート10,11の短手方向に延びる中心線(以下、横中心線という)CL2側に傾斜するように形成されている。これにより、第一ガスケット装着溝102は、第一溝部102a、第二溝部102b、及び一対の第三溝部102c,102cが連続して台形状の領域を画定している。
【0041】
前記第二ガスケット装着溝103,103は、第二開口101a,101bの外周に沿って形成されている。本実施形態において、各第二開口101a,101bが円形状に形成されているため、第二ガスケット装着溝103,103は、第二開口101a,101b回りで円環状に形成されている。
【0042】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10の一方の面(図において奥側に向く面)に対し、二つの第一開口100a,100b及び二つの第二開口101a,101bを取り囲んだ第一環状隆起部104と、各第一開口100a,100bを包囲した第二環状隆起部105,105とが形成されている。
【0043】
前記第一環状隆起部104は、第一ガスケット装着溝102の全周を包囲するように無端環状に形成されている。本実施形態において、第一環状隆起部104は、第一溝部102a(該第一溝部102aの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第一辺部104aと、第二溝部102b(該第二溝部102bの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第二辺部104bと、第一辺部104aの両端と第二辺部104bの両端とを接続した一対の第三辺部104c,104cとで構成されており、略四角形状の領域を画定している。そして、本実施形態おいて、第一環状隆起部104は、第二ガスケット装着溝103,103(裏側の隆起した部分)に対して第二辺部104b及び第三辺部104c,104cが接続されている。すなわち、第一環状隆起部104は、第二ガスケット装着溝103,103の裏側の隆起した部分の一部(略四分の一円弧)が第二辺部104bと第三辺部104c,104cとを接続する部分になっている。
【0044】
第二環状隆起部105,105は、第一開口100a,100b毎に設けられており、それぞれ第一開口100a,100bの周縁部に沿って形成されている。本実施形態に係る第一開口100a,100bは、円形状に形成されているため、第二環状隆起部105,105は、第一開口100a,100bの開口形状に対応して円環状に形成されている。また、本実施形態において、前記第二環状隆起部105,105は、その一部が第一ガスケット装着溝102の一部(第一開口100a,100b周辺の一部)と重なるように形成されている。すなわち、第一開口100a,100b周辺にある第一ガスケット装着溝102の裏側の隆起した部分の一部は、第二環状隆起部105,105の一部を形成している。本実施形態において、上述の如く、第一伝熱プレート10は、金属製のプレートをプレス成形して形成されているため、第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105の裏側に該第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105と対応した凹部(採番しない)が形成されている。
【0045】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第二伝熱プレート11の一方の面(第一伝熱プレート10と対向する面:図において手前側に向く面)に対し、二つの第一開口110a,110b及び二つの第二開口111a,111bを取り囲んだ第三ガスケット装着溝112と、各第一開口110a,110bを包囲した第四ガスケット装着溝113,113とが形成されている。
【0046】
前記第三ガスケット装着溝112は、第一伝熱プレート10に形成された第一環状隆起部104と対向するように無端環状に形成されている。本実施形態において、第三ガスケット装着溝112は、第二伝熱プレート11の短手方向の一端に沿って形成された第四溝部112aと、第二伝熱プレート11の短手方向の他端に沿って形成された第五溝部112bと、第四溝部112aの両端と第五溝部112bの両端とを接続する一対の第六溝部112c,112cとで構成されおり、第四溝部112a、第五溝部112b、及び一対の第六溝部112c,112cが連続して略四角形状の領域を画定している。そして、第三ガスケット装着溝112は、第四ガスケット装着溝113,113の一部を含む後述の第三環状隆起部114の裏側の環状の窪みの全周に対して間隔をあけて配置されている。
【0047】
前記第四ガスケット装着溝113,113は、第一開口110a,110bの外周に沿って形成されている。本実施形態において、各第一開口110a,110bが円形状に形成されているため、第四ガスケット装着溝113,113は、第一開口110a,110b回りで円環状に形成されている。
【0048】
そして、第二伝熱プレート11は、他方の面(図において奥側を向く面)に対して、二つの第二開口111a,111bを躱す一方で二つの第一開口110a,110bを取り囲んだ第三環状隆起部114と、各第二開口111a,111bを包囲した第四環状隆起部115,115とが形成されている。
【0049】
前記第三環状隆起部114は、第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102と対応(対向)するように形成されている。すなわち、第三環状隆起部114は、第一環状隆起部104と対向する第三ガスケット装着溝112の内側で無端環状に形成されている。本実施形態において、第三環状隆起部114は、第三溝部102c,102c(該第三溝部102c,102cの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第四辺部114aと、第四溝部112a(該第四溝部112aの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第五辺部114bと、第四辺部114aの両端と第五辺部114bの両端とを接続した一対の第六辺部114c,114cとで構成されている。
【0050】
そして、該第三環状隆起部114は、第五辺部114bが第四辺部114aよりも短く設定されており、一対の第六辺部114c,114cが第二伝熱プレート11の短手方向の他端側ほど横中心線CL2側に傾斜して第四辺部114a、第五辺部114b、及び一対の第六辺部114c,114cで略台形状の領域を画定している。そして、本実施形態おいて、第三環状隆起部114は、第四ガスケット装着溝113,113(裏側の隆起した部分)に対して第四辺部114a及び第六辺部114c,114cが接続されている。すなわち、第三環状隆起部114は、第四ガスケット装着溝113,113の裏側の隆起した部分の一部(略四分の一円弧)が第四辺部114aと第六辺部114c,114cとを接続する部分になっている。
【0051】
第四環状隆起部115,115は、第一伝熱プレート10の第二ガスケット装着溝103,103に対応(対向)するように形成されている。第四環状隆起部115,115は、第二開口111a,111b毎に設けられており、それぞれ第二開口111a,111bの周縁部に沿って形成されている。すなわち、本実施形態に係る第二開口111a,111bは、円形状に形成されているため、第四環状隆起部115,115は、第二開口111a,111bの開口形状に対応して円環状に形成されている。また、本実施形態において、前記第四環状隆起部115,115は、その一部が第三ガスケット装着溝112の一部(第二開口111a,111b周辺の一部)と重なるように形成されている。すなわち、第二開口111a,111b周辺にある第三ガスケット装着溝112の裏側の隆起した部分の一部は、第四環状隆起部115,115の一部を構成している。本実施形態において、上述の如く、第二伝熱プレート11は、金属製のプレートをプレス成形して形成されているため、第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115の裏側に該第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115と対応した凹部が形成されている。
【0052】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、前記ガスケット12,13,14,15として、二つの第一開口100a,100b,110a,110b及び二つの第二開口101a,101b,111a,111bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の一方の面間に介装される環状の二次側主流路形成用ガスケット12と、二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の他方の面間に介装される一次側主流路形成用ガスケット13と、各第一開口100a,100b,110a,110b回りに配置された状態で互い隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の一方の面間に介装されるリングガスケット(以下、第一リングガスケットという)14,14と、各第二開口101a,101b,111a,111b回りに配置された状態で互い隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の他方の面間に介装されるリングガスケット(以下、第二リングガスケットという)15,15とを備えている。
【0053】
すなわち、該プレート式熱交換器1は、第一ガスケット装着溝102に装着される一次側主流路形成用ガスケット13と、第二ガスケット装着溝103,103に装着される第二リングガスケット15,15と、第三ガスケット装着溝112に装着される二次側主流路形成用ガスケット12と、第四ガスケット装着溝113,113に装着される第一リングガスケット14,14とを備えている。
【0054】
一次側主流路形成用ガスケット13は、無端環状に形成されており、第一ガスケット装着溝102の形態に対応して台形状の領域を画定するように形成されている。二次側主流路形成用ガスケット12は、無端環状に形成されており、第三ガスケット装着溝112の形態に対応して略四角形状の領域を画定するように形成されている。そして、上述の如く、二次側主流路形成用ガスケット12は、第四ガスケット装着溝113,113の一部を含む第三環状隆起部114の裏側の環状の窪みの全周に対して間隔をあけて配置された第三ガスケット装着溝112に装着されるため、二つの第一開口100a,100b,110a,110b及び二つの第二開口101a,101b,111a,111bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の一方の面間に介装された状態になり、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14が該二次側主流路形成用ガスケット12の包囲領域内に位置するように、該第一リングガスケット14,14を取り囲んでいる。
【0055】
そして、第一リングガスケット14,14及び第二リングガスケット15,15は、何れも無端環状に形成されており、第二ガスケット装着溝103,103及び第四ガスケット装着溝113,113の形態に対応して円形の領域を画定するように形成されている。
【0056】
図2に戻り、前記一対のベースプレート16,17は、厚手の金属プレートで構成されている。そして、各ベースプレート16,17は、長方形状に形成されており、各伝熱プレート10,11の平面サイズよりも大きなサイズに設定されている。そして、一対のベースプレート16,17のうち、一方のベースプレート16は、伝熱プレート10,11の第一開口100a,100b,110a,110b(一次側流入路Ra及び一次側流出路Rb)と対応した位置、及び第二開口101a,101b,111a,111b(二次側流入路Rc及び二次側流出路Rd)と対応した位置に貫通穴(採番しない)が穿設されている。そして、該一方のベースプレート16は、図1に示す如く、その外面には配管を接続するための筒状の接続ノズル160a,160b,160c,160dが各貫通穴に対応して取り付けられている。
【0057】
一対のベースプレート16,17は、何れも長手方向と直交する短手方向の両端部に複数の切欠部161…が設けられている。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、締付手段18にボルトBとナットNとが採用されており、一対のベースプレート16,17に跨るように両ベースプレート16,17の切欠部161…内に配置したボルトBに対してナットNを螺合することで両ベースプレート16,17を締め付けるようになっている。
【0058】
なお、特に言及しないが、この種のプレート式熱交換器1は、一般的に、一対のベースプレート16,17の上端部及び下端部にレールLが挿通されており、積層される複数枚の伝熱プレート10,11…の長手方向の両端部(上端部及び下端部)がレールLに支持されており、一対のベースプレート16,17の締め付けを開放した状態で各伝熱プレート10,11をレールLに沿ってスライドさせることができるようになっている。
【0059】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上の構成を備え、図3(a)及び図3(b)に示す如く、第一ガスケット装着溝102に一次側主流路形成用ガスケット13を装着するとともに第二ガスケット装着溝103,103に第二リングガスケット15,15を装着し、さらに、第三ガスケット装着溝112に二次側主流路形成用ガスケット12を装着するとともに第四ガスケット装着溝113,113に第一リングガスケット14,14を装着した上で、前記第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11が交互に積層される(図2参照)。
【0060】
そして、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10に対して第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105が形成され、第二伝熱プレート11に対して第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115が形成されているため、上述の如く、複数枚の伝熱プレート10,11…を積層する(複数枚の伝熱プレート10,11…を介装させた一対のベースプレート16,17を締め付ける)と、図4に示す如く、第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102に装着された一次側主流路形成用ガスケット13が第二伝熱プレート11の第三環状隆起部114に押圧され、第二伝熱プレート11の第四ガスケット装着溝113,113に装着された第一リングガスケット14,14が第一伝熱プレート10の第二環状隆起部105,105に押圧され、さらに、第二伝熱プレート11の第三ガスケット装着溝112に装着された二次側主流路形成用ガスケット12が第一伝熱プレート10の第一環状隆起部104に押圧されるようになっている。また、図示しないが、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10の第二ガスケット装着溝103,103に装着された第二リングガスケット15,15が第二伝熱プレート11の第四環状隆起部115,115に押圧されるようになっている。これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、各ガスケット12,13,14,15が伝熱プレート10,11に挟まれることで、伝熱プレート10,11間が封止されるようになっている。
【0061】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、上述の如く、各伝熱プレート10,11を境にして高温流体Hを流通させる一次側主流路R1と低温流体Cを流通させる二次側主流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第一開口100a,100b,110a,110bが連なって高温流体Hを一次側主流路R1に対して流出入させる一次側流入路Ra及び一次側流出路Rbが形成されるとともに、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第二開口101a,101b,111a,111bが連なって低温流体Cを二次側主流路R2に対して流出入させる二次側流入路Rc及び二次側流出路Rdが形成される。
【0062】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側流入路Raが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側に形成されるとともに、一次側流出路Rbが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側に形成されるのに対し、二次側流入路Rcが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側に形成されるとともに、二次側流出路Rdが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側に形成されるようになっている。
【0063】
これにより、該プレート式熱交換器1は、図5(a)に示す如く、高温流体Hが一次側主流路R1において第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側から他端側に向けて流通し、図5(b)に示す如く、低温流体Cが二次側主流路R2において第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側から一端側に向けて流通するようになっており、一次側主流路R1内の高温流体Hと二次側主流路R2内の低温流体Cとが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11を介して熱交換するようになっている。
【0064】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、前記二次側主流路形成用ガスケット12が一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14全体を取り囲むように配置されているため、図4に示す如く、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14の周囲に低温流体Cが存在するようになっている。すなわち、該プレート式熱交換器1は、第一リングガスケット14,14の外周に対して間隔をあけて該第一リングガスケット14,14の外側に配置されているため、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14回りに温度の低い低温流体Cが存在するようになっている。これにより、該プレート式熱交換器1は、二次側主流路R2内の低温流体Cが一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14の温度上昇を抑制するようになっている。従って、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、高温流体Hを流通させる一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14が高温になることがないため、第一リングガスケット14,14の熱劣化(痩せ)を抑制し、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持できるようになっている。
【0065】
また、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側主流路R1が二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケット13で画定され、前記二次側主流路形成用ガスケット12は、伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側に位置するように配置されているため、一次側主流路形成用ガスケット13が熱劣化することを抑制することができる。すなわち、二次側主流路形成用ガスケット12が伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側に位置するように配置されることで、二次側主流路R2(低温流体C)が伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側にまで存在することになり、一次側主流路形成用ガスケット13に対して伝熱プレート10,11の一方の面側にある低温流体Cが伝熱プレート10,11を介して一次側主流路形成用ガスケット13の温度上昇を抑制することになる。
【0066】
従って、一次側主流路R1を一次側主流路形成用ガスケット13で画定しても、該一次側主流路形成用ガスケット13が不必要に高温になることがない。これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14に加えて一次側主流路形成用ガスケット13の熱劣化も抑制することができ、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持させることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
【0068】
例えば、上記実施形態において、伝熱プレート10,11の他方の面間に一次側主流路形成用ガスケット13及び第二リングガスケット15,15のみを介装するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図6(a)に示す如く、一次側主流路形成用ガスケット13の全周を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の他方の面間に介装された環状の保護用ガスケット19を更に備えてもよい。このようにすれば、一次側主流路形成用ガスケット13の酸化劣化を防止することができる。すなわち、一次側主流路形成用ガスケット13は、高温流体Hを流通させる一次側主流路R1を画定するため、一次側主流路R1の熱影響を受けて温度上昇する傾向にあり、外気に触れる外周側から酸化劣化する傾向にあるが、上述の如く、一次側主流路形成用ガスケット13を取り囲む環状の保護用ガスケット19を更に備え、一次側主流路形成用ガスケット13と保護用ガスケット19との間の領域を密封状態にすることで、一次側主流路形成用ガスケット13に外気が連続的に触れることを防止でき、一次側主流路形成用ガスケット13の酸化劣化を低減することができる。
【0069】
この場合、図7に示す如く、伝熱プレート10,11の短手方向の両端側で保護用ガスケット19と二次側主流路形成用ガスケット12とが伝熱プレート10,11を介して重なり合うように、保護用ガスケット19を配置することが好ましい。すなわち、保護用ガスケット19は、図6(a)及び図6(b)に示す如く、伝熱プレート10の短手方向の両端に沿って配置される部分(第一ガスケット装着溝102の第一溝部102a及び第二溝部102bと平行又は略平行をなす部分)を二次側主流路形成用ガスケット12の第四溝部112a及び第五溝部112bに装着される部分と対応する配置にすることが好ましい。この場合、保護用ガスケット19が伝熱プレート10,11の他方の面間に介装されるため、第一伝熱プレート10の他方の面に対して保護用ガスケット19を装着する無端環状の保護用ガスケット装着溝106を設ける場合には、第二伝熱プレート11の一方の面に保護用ガスケット装着溝106と対向する無端環状の隆起部116を設ければよい。すなわち、第三ガスケット装着溝112(第四溝部112a及び第五溝部112b)の裏側で隆起した部分を保護用ガスケット19を押圧するための隆起部116とすればよい。
【0070】
このようすれば、ベースプレート16,17を締付手段18で締め付けたときに、図7に示す如く、伝熱プレート10,11の短手方向の両端側において、二次側主流路形成用ガスケット12と保護用ガスケット19とが伝熱プレート10,11の積層方向で一列に並んだ状態で、第二伝熱プレート11の第三ガスケット装着溝112に装着された二次側主流路形成用ガスケット12が第一伝熱プレート10の第一環状隆起部104に押圧されるとともに、保護用ガスケット19が隆起部116(第四溝部112a及び第五溝部112bの裏側の隆起した部分)に押圧されることになる。これにより、積層された複数枚の伝熱プレート10,11は、短手方向の両端で不用意に撓むことがなく、伝熱プレート10,11間の封止を確実にすることができる。
【0071】
上記実施形態において、第一ガスケット装着溝102の一部が第二環状隆起部105,105の裏側の窪みの一部と重なり、また、第二ガスケット装着溝103,103の一部が第一環状隆起部104の裏側の窪みの一部と重なるように、第一伝熱プレート10に対して第一ガスケット装着溝102、第二ガスケット装着溝103,103、第一環状隆起部104、第二環状隆起部105,105を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ガスケット装着溝102が第二環状隆起部105,105の裏側の窪みよりも外側に位置し、第二ガスケット装着溝103,103が第一環状隆起部104の裏側の窪みよりも内側に位置するように、第一ガスケット装着溝102、第二ガスケット装着溝103,103、第一環状隆起部104、第二環状隆起部105,105を形成してもよい。
【0072】
また、第三ガスケット装着溝112の一部が第四環状隆起部115,115の裏側の窪みの一部と重なるとともに、第四ガスケット装着溝113,113の一部が第三環状隆起部114の裏側の窪みの一部と重なるように、第二伝熱プレート11に対して第三ガスケット装着溝112、第四ガスケット装着溝113,113、第三環状隆起部114、第四環状隆起部115,115を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第三ガスケット装着溝112が第四環状隆起部115,115の裏側の窪みよりも外側に位置し、第四ガスケット装着溝113,113が第三環状隆起部114の裏側の窪みよりも内側に位置するように、第三ガスケット装着溝112、第四ガスケット装着溝113,113、第三環状隆起部114、第四環状隆起部115,115を形成してもよい。
【0073】
なお、言うまでもないが、この場合、第一ガスケット装着溝102に対して第三環状隆起部114が重なり、第二ガスケット装着溝103,103に対して第四環状隆起部115,115が重なり、第三ガスケット装着溝112に対して第一環状隆起部104が重なり、第四ガスケット装着溝113,113に対して第二環状隆起部105,105が重なるように、これらが配置されることは言うまでもない。
【0074】
上記実施形態において、二種類の伝熱プレート10,11を交互に配置するようにしたが、これはガスケット12,13,14,15を装着するガスケット装着溝102,103,112,113を伝熱プレート10,11の一方の面又は他方の面の何れか一方に形成し、伝熱プレート10,11の一方の面又は他方の面の何れか他方にガスケット装着溝102,103,112,113と対向する隆起部104,105,114,115を形成したためであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、伝熱プレート10,11の横中心線CL2を基準に該長手方向の一端側の領域と該長手方向の他端側の領域とで鏡像配置になるように、伝熱プレート10,11の両面の同じ位置(表裏で対応する位置)に同形態のガスケット装着溝102,103,112,113を形成すれば、一種類の伝熱プレート10,11で上記実施形態と同様のプレート式熱交換器1にすることができる。
【0075】
この場合、上記実施形態とは異なり、各ガスケット12,13,14,15は、隣り合う二枚の伝熱プレート10,11に挟み込まれた状態(対向し合う面(一方の面間、又は他方の面間)に介装された状態)で、隣り合う二枚の伝熱プレート10,11のそれぞれに形成されたガスケット装着溝102,103,112,113に装着(嵌着)された状態となるため、隣り合う伝熱プレート10,11(ガスケット装着溝102,103,112,113の内面)に圧接するようにガスケット12,13,14,15の厚みを設定することは勿論のことである。また、この場合において、伝熱プレート10,11が一種類で構成されているため、反転された伝熱プレート11の一方の面が反転されていない伝熱プレート10の他方の面であり、反転された伝熱プレート11の他方の面が反転されていない伝熱プレート10の他方の面であることは言うまでもない。
【0076】
上記実施形態において、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14とともに一次側流出路Rbを画定する第一リングガスケット14を二次側主流路形成用ガスケット12で取り囲み、二次側主流路R2内に二つのリングガスケット14,14を介在させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、一次側流出路Rbを画定する第一開口100b,110b及びその周囲に配置される第一リングガスケット14を躱した状態で、二次側流入路Rc及び二次側流出路Rd(全ての第二開口101a,101b,111a,111b)とともに一次側流入路Raを画定する第一開口100a,110a及びその周囲に配置される第一リングガスケット14を二次側主流路形成用ガスケット12で取り囲み、二次側主流路R2内に一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15のみを介在させるようにしてもよい。
【0077】
すなわち、一次側流出路Rbを流通する高温流体Hは、熱交換後のもので一次側流入路Raを流通する高温流体Hに比して温度が低くなるため、一次側流出路Rbを画定する第二リングガスケット15は、一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15に比して熱劣化しにくいことから、一次側流出路Rbを画定する第二リングガスケット15を二次側主流路R2の外側に配置して一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15のみを二次側主流路R2内に配置するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、第一開口100a,100b,110a,110bの周囲に第一リングガスケット14,14を一重で配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一リングガスケット14,14の外側を包囲する別のリングガスケットをさらに配置し、該別のリングガスケットと第一リングガスケット14,14との間の領域を密封状態にしてもよい。このようにすれば、第一リングガスケット14,14の酸化劣化を低減でき、さらに、第一リングガスケット14,14が高温流体Hに対する化学的な劣化や経年劣化等で破断しても、該第一リングガスケット14,14を包囲する別のリングガスケットの存在で一次側流入路Raを流通する高温流体Hが二次側主流路R2内に流れ込んでしまうことを防止することができる。
【0079】
上記実施形態において、伝熱プレート10,11の他方の面間に介装されるガスケット12,15として、それぞれ独立した二次側主流路形成用ガスケット12と第二リングガスケット15とを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、二次側主流路形成用ガスケット12の一部と第二リングガスケット15の一部とを接続したものであってもよい。この場合、伝熱プレート10,11には、ガスケット12,15の態様に応じたガスケット装着溝が形成されることは言うまでもない。
【0080】
上記実施形態において、複数枚の伝熱プレート10,11…をそれぞれ独立したものを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数枚の伝熱プレート10,11…を積層方向で順々に二枚一組にし、図9(a)及び図9(b)に示す如く、各組における二枚の伝熱プレート(重ね合わされた二枚の伝熱プレート)10,11が伝熱カセットSを形成したものであってもよい。具体的には、二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲んだ無端環状の一次側主流路R1形成用の溶接ラインWL1を形成するとともに二つの第二開口101a,101b,111a,111bのそれぞれを包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ラインWL2及び二次側流出路形成用の溶接ラインWL3を形成するように、各組の二枚の伝熱プレート10,11の他方の面同士を線溶接して伝熱カセットSを形成し、該伝熱カセットSを複数積層するようにしてもよい。
【0081】
すなわち、各組における二枚の伝熱プレート10,11の対向面(他方の面)同士であって、上記実施形態で一次側主流路形成用ガスケット13及び第一リングガスケット14,14を配置した領域(図中、二点鎖線で示す部分)同士を線溶接することで、各組における二枚の伝熱プレート10,11を伝熱カセットにするようにしてもよい。なお、このように二枚の伝熱プレート10,11を溶接するに当り、二枚の伝熱プレート10,11の溶接領域同士を接触させる必要があるため、各組における二枚の伝熱プレート10,11の溶接領域の他方の面を相手側の伝熱プレート10,11に向けて膨出(隆起)させて形成することは言うまでもない。
【0082】
この場合において、伝熱カセットS,S間(伝熱プレート10,11の一方の面間)に介装される二次側主流路形成用ガスケット12は、少なくとも一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14を取り囲むとともに伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側に位置するように配置すればよい。なお、この場合、上述の如く、伝熱カセットS,S間に二次側主流路形成用ガスケット12及び第一リングガスケット14,14を介装するため、伝熱カセットSを構成する二枚の伝熱プレート10,11は、何れも一方の面(外側に向く面)に対し、第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103が配置及び形態を合わせて形成される。
【0083】
このようにすれば、各伝熱カセットを形成する伝熱プレート10,11間に一次側主流路R1が形成され、伝熱カセットS,S間に二次側主流路R2が形成される。そして、二次側主流路形成用ガスケット12が一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14を取り囲むとともに伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側に位置するように配置されているため、二次側主流路R2(低温流体C)が伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路R1を画定する一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側にまで存在することになり、該低温流体Cが伝熱プレート10,11を介して一次側主流路形成用の溶接ライン(溶接部分)WL1の温度上昇を抑制することになる。
【0084】
これにより、伝熱プレート10,11同士を溶接した溶接ラインWL1上で発生する熱応力を抑制することができ、溶接部分WL1に割れが生じるのを抑えることができる。従って、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14の熱劣化の抑制に加え、伝熱プレート10,11同士を溶接した溶接ラインWL1上での熱応力を抑制して割れを防止することができ、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持させることができる。
【0085】
上記実施形態において、各伝熱プレート10,11に対して第一開口100a,100b,110a,110bを二つ形成するとともに、第二開口101a,101b,111a,111bを二つ形成したが、これに限定されるものではなく、第一開口100a,100b,110a,110bを三つ以上形成してもよいし、第二開口101a,101b,111a,111bを三つ以上形成してもよい。
【0086】
すなわち、上記実施形態において、一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdをそれぞれ一つずつ形成したが、これに限定されるものではなく、一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdをそれぞれが少なくとも一つずつ形成できるように、第一開口及び第二開口のそれぞれを二つ以上形成するようにしてもよい。この場合においても、二次側主流路形成用ガスケット12は、一次側流入路Raを画定する全ての第一リングガスケット14の外周を取り囲むように配置することで、第一リングガスケット14の周囲に低温流体Cを存在させることができ、当該第一リングガスケット14の熱劣化を抑制することができる。
【0087】
また、第一開口100a,100b,110a,110b及び第二開口101a,101b,111a,111bの配置(一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdの配置)は、上記実施形態に限定されるものではなく、一次側主流路R1への高温流体Hの流入状態や、一次側主流路R1内での高温流体Hの流通状態、二次側主流路R2への低温流体Cの流入状態や、二次側主流路R2内での低温流体Hの流通状態等を考慮して適宜変更可能である。なお、言うまでもないが、これらの配置を変更した場合であっても、二次側主流路形成用ガスケット12は、全ての第二開口101a,101b,111a,111bと一次側流入路Raを形成する第一開口100a,110aを取り囲むように配置し、一次側主流路形成用ガスケット13又は一次側主流路形成用の溶接ラインWL1は、全ての第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で、全ての第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置することは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1…プレート式熱交換器、10…第一伝熱プレート(伝熱プレート)、11…第二伝熱プレート(伝熱プレート)、12…二次側主流路形成用ガスケット(ガスケット)、13…一次側主流路形成用ガスケット(ガスケット)、14…第一リングガスケット(リングガスケット)、15…第二リングガスケット(リングガスケット)、16,17…ベースプレート、18…締付手段、19…保護用ガスケット、100a,100b,110a,110b…第一開口、101a,101b,111a,111b…第二開口、102…第一ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、102a…第一溝部、102b…第二溝部、102c…第三溝部、103…第二ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、104…第一環状隆起部(隆起部)、104a…第一辺部、104b…第二辺部、104c…第三辺部、105…第二環状隆起部、112…第三ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、112a…第四溝部、112b…第五溝部、112c…第六溝部、113…第四ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、114…第三環状隆起部、114a…第四辺部、114b…第五辺部、114c…第六辺部、115…第四環状隆起部、160a,160b,160c,160d…接続ノズル、161…切欠部、L…レール、B…ボルト、N…ナット、C…低温流体、H…高温流体、R1…一次側主流路、R2…二次側主流路、Ra…一次側流入路、Rb…一次側流出路、Rc…二次側流入路、Rd…二次側流出路、S…伝熱カセット、WL1…溶接ライン、WL2…溶接ライン、WL3…溶接ライン、CL1…縦中心線(長手方向に延びる中心線)、CL2…横中心線(短手方向に延びる中心線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体と低温流体とを熱交換させるプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器が公知である。
【0003】
そして、この種のプレート式熱交換器には、種々タイプのものがあり、例えば、図9に示す如く、それぞれ独立した複数枚の伝熱プレート10’、11’が積層され、各伝熱プレート10’,11’間にガスケット12’,13’,14’,15’が介装されたものや、図10に示す如く、伝熱プレート10’’,11’’を二枚一組にした伝熱カセットS’’が複数積層され、該伝熱カセットS’’間にガスケット12’’,14’’が介装されたものがある。
【0004】
ここで、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’のそれぞれについて具体的に説明すると、独立した複数枚の伝熱プレート10’,11’を積層したプレート式熱交換器1’は、図9に示す如く、各伝熱プレート10’,11’が長方形状に形成されており、長手方向の両端部に対して該長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)における一端側に二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’が形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’が形成されている。
【0005】
そして、該プレート式熱交換器1’は、二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’を躱す一方で二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’を取り囲むように配置された無端環状の二次側主流路形成用ガスケット12’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の一方の面間に介装され、二つの第二開口101a’,101b’,111a’,111b’を躱す一方で二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’を取り囲むように配置された無端環状の一次側主流路形成用ガスケット13’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の他方の面間に介装されている。また、該プレート式熱交換器1’は、各第一開口100a’,100b’,110a’,110b’回りに配置されたリングガスケット14’,14’が隣り合う伝熱プレート10’,11’の一方の面間に介装され、各第二開口101a’,101b’,111a’,111b’回りに配置されたリングガスケット15’,15’が伝熱プレート10’,11’の他方の面間に介装されている。
【0006】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器1’は、伝熱プレート10’,11’間に各伝熱プレート10’,11’を境にして一次側主流路R1’及び二次側主流路R2’が交互に形成され、さらに、各伝熱プレート10’,11’の二つの第一開口100a’,100b’,110a’,110b’が連なって一次側主流路R1’に高温流体H’を流出入させる一次側流入路Ra’及び一次側流出路Rb’が形成されるとともに、各伝熱プレート10’,11’の第二開口101a’,101b’,111a’,111b’が連なって二次側主流路R2’に低温流体C’を流出入させる二次側流入路Rc’及び二次側流出路Rd’が形成さている。すなわち、該プレート式熱交換器1’は、伝熱プレート10’,11’間に介装された一次側主流路形成用ガスケット13’で一次側主流路R1’が画定されるとともに、伝熱プレート10’,11’間に介装された二次側主流路形成用ガスケット12’で二次側主流路R2’が画定され、伝熱プレート10’,11’間に介装されたリングガスケット14’,15’で一次側流入路Ra’、一次側流出路Rb’、二次側流入路Rc’及び二次側流出路Rd’が画定されている。
【0007】
これに対し、複数の伝熱カセットS’’…を積層したプレート式熱交換器1’’は、図10に示す如く、各伝熱カセットS’’内に一次側主流路R1’’が形成される一方、伝熱カセットS’’,S’’間に二次側主流路R2’’が形成されている。すなわち、この種のプレート式熱交換器1’’は、複数の伝熱カセットS’’…を積層することで、該積層方向に並ぶ伝熱プレート10’’,11’’(伝熱カセットS’’を構成する伝熱プレート10’’,11’’)を境にして一次側主流路R1’’及び二次側主流路R2’’が交互に形成されている。
【0008】
ここで伝熱カセットS’’について具体的に説明すると、各伝熱カセットS’’は、略長方形状に形成された二枚の伝熱プレート10’’,11’’で構成されている。二枚の伝熱プレート10’’,11’’のそれぞれは、長手方向の両端部に対して短手方向における一端側に二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’が形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が形成されている。
【0009】
そして、伝熱カセットS’’は、二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’を躱す一方で二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を取り囲んだ無端環状の溶接ラインWL1’’を形成し、且つ、二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’のそれぞれを包囲した無端環状の溶接ラインWL2’’,WL3’’を形成するように二枚の伝熱プレート10’’,11’’の他方の面同士を溶接することで形成されている。これにより、各伝熱カセットS’’の内部(伝熱プレート10’’,11’’間)には、二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を取り囲んだ溶接ラインWL1’’で画定された一次側主流路R1’’が形成されている。
【0010】
そして、この種のプレート式熱交換器1’’は、二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’を躱す一方で二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’を取り囲むように配置された無端環状の二次側流路形成用ガスケット12’’が伝熱カセットS’’,S’’の対向面間(伝熱プレート10’’,11’’の一方の面間)に介装され、各第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’回りに配置されたリングガスケット14’’が伝熱カセットS’’,S’’の対向面間(伝熱プレート10’’,11’’の一方の面)間に介装されている。
【0011】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器1’’は、伝熱カセットS’’を形成する各伝熱プレート10’’,11’’を境にして一次側主流路R1’’及び二次側主流路R2’’が交互に形成され、さらに、各伝熱プレート10’’,11’’の二つの第一開口100a’’,100b’’,110a’’,110b’’が連なって一次側主流路R1’’に高温流体H’’を流出入させる一次側流入路Ra’’及び一次側流出路Rb’’が形成されるとともに、各伝熱プレート10’’,11’’の二つの第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が連なって二次側主流路R2’’に低温流体C’’を流出入させる二次側流入路Rc’’及び二次側流出路Rd’’が形成されている。
【0012】
すなわち、該プレート式熱交換器1’’は、伝熱プレート10’’,11’’同士を溶接した溶接ラインWL1’’で一次側主流路R1’’が画定されるとともに、伝熱カセットS’’(伝熱プレート10’’,11’’)間に介装された二次側主流路形成用ガスケット12’’で二次側主流路R2’’が画定されている。そして、該プレート式熱交換器1’’は、伝熱カセットS’’(伝熱プレート10’’,11’’)間に介装されたリングガスケット14’’で一次側流入路Ra’’、及び一次側流出路Rb’’が画定され、第二開口101a’’,101b’’,111a’’,111b’’回りで伝熱プレート10’’,11’’同士を溶接した溶接ラインWL2’’,WL3’’で二次側流入路Rc’’及び二次側流出路Rd’’が画定されている。
【0013】
このように、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’間の封止態様が異なるが、何れも複数枚の伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’が積層され、第一開口100a’,100b’,110a’,110b’,100a’’,100b’’,110a’’,110’’が連なって一次側主流路R1’,R1’’にのみに連通した一次側流入路Ra’,Ra’’及び一次側流出路Rb’,Rb’’が形成されるとともに、第二開口101a’,101b’,111a’,111b’,101a’’,101b’’,111a’’,111b’’が連なって二次側主流路R2’,R2’’にのみに連通した二次側流入路Rc’,Rc’’及び二次側流出路Rd’,Rd’’が形成されるようになっており、一次側主流路R1’,R1’’を流通する高温流体H’,H’’と二次側主流路R2’,R2’’を流通する低温流体C’,C’’とが伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’を介して熱交換できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−343055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、何れにおいても、図11(a)及び図11(b)に示す如く、第一開口100a’,110a’,100a’’,110a’’回りに配置されたリングガスケット14’,14’’が一次側流入路Ra’,Ra’’を画定しているため、該リングガスケット14’,14’’が高温流体H’,H’’の熱の影響で熱劣化してしまう。すなわち、一次側流入路Ra’,Ra’’を流通する高温流体H’,H’’は、熱交換される前の非常に高温なものであるため、該高温流体H’,H’’を流通させる一次側流入路Ra’,Ra’’を画定したリングガスケット14’,14’’(第一開口100a’,110a’,100a’’,110a’’回りに配置されたリングガスケット14’,14’’)は、高温流体H’,H’’の高熱で熱劣化して全体が痩せてしまう(厚みが薄くなる)傾向にある。
【0016】
そのため、上記二種類のプレート式熱交換器1’,1’’は、一次側流入路Ra’,Ra’’を画定するリングガスケット14’,14’’と伝熱プレート10’,11’,10’’,11’’との密着性が落ちて封止状態が悪くなるといった問題がある。
【0017】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが熱劣化することを抑制でき、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることのできるプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るプレート式熱交換器は、プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に対して流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成されるとともに、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に対して流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、一次側主流路及び二次側主流路のうち、少なくとも二次側主流路は、全ての第二開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された環状の二次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記一次側流入路及び一次側流出路は、各第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットで画定されたプレート式熱交換器において、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されていることを特徴とする。
【0019】
上記構成のプレート式熱交換器によれば、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されているため、該リングガスケットの周囲に二次側主流路内の低温流体が存在し、該低温流体がリングガスケットの温度上昇を抑制することになる。
【0020】
これにより、上記構成のプレート式熱交換器は、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが比較的に高温になることがないため、リングガスケットの熱劣化(痩せ)を抑制し、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることができる。
【0021】
本発明の一態様として、前記一次側主流路は、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの他方の面側にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されていることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、一次側主流路を一次側主流路形成用ガスケットで画定しても、一次側主流路形成用ガスケットが熱劣化することを抑制することができる。すなわち、二次側主流路形成用ガスケットが伝熱プレートの他方の面(反対側)にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されることで、二次側主流路(低温流体)が伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用ガスケットよりも外側にまで存在することになり、該低温流体が伝熱プレートを介して一次側主流路形成用ガスケットの温度上昇を抑制することになる。
【0023】
従って、一次側主流路を一次側主流路形成用ガスケットで画定しても、該一次側主流路形成用ガスケットが不必要に高温になることがない。これにより、一次側流入路を画定するリングガスケットに加えて一次側主流路形成用ガスケットの熱劣化も抑制することができる。
【0024】
この場合、前記一次側主流路形成用ガスケットを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の保護用ガスケットを更に備えていることが好ましい。このようにすれば、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を防止することができる。すなわち、一次側主流路形成用ガスケットは、高温流体を流通させる一次側主流路を画定するため、一次側主流路の熱影響を受けて温度上昇する傾向にあり、外気に触れる外周が酸化劣化する傾向にあるが、上述の如く、一次側主流路形成用ガスケットを取り囲む環状の保護用ガスケットを更に備え、一次側主流路形成用ガスケットと保護用ガスケットとの間を密封状態にすることで、一次側主流路形成用ガスケットに対する外気の連続的な接触を防止することができ、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を低減することができる。なお、一次側主流路形成用ガスケットと保護用ガスケットとの間の密封空間内にN2 ガスを充填することで、一次側主流路形成用ガスケットの酸化劣化を更に抑制することができる。
【0025】
本発明の他態様として、前記複数枚の伝熱プレートは、積層方向で順々に二枚一組にされ、各組における二枚の伝熱プレートは、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲んだ無端環状の一次側主流路形成用の溶接ラインを形成するとともに各第二開口を包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ライン及び二次側流出路形成用の溶接ラインを形成するように、互いの他方の面同士が溶接されて伝熱カセットを形成し、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置され、二次側流入路及び二次側流出路は、各第二開口回りに配置された状態で伝熱カセット間に介装された別のリングガスケットで画定されてもよい。
【0026】
このようにすれば、各伝熱カセットを形成する伝熱プレート間に一次側主流路が形成され、伝熱カセット間に二次側主流路が形成される。そして、二次側主流路形成用ガスケットが伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置されるため、二次側主流路(低温流体)が伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路を画定する一次側主流路形成用の溶接ラインよりも外側にまで存在することになり、該低温流体が伝熱プレートの溶接部分(一次側主流路形成用の溶接ライン)の温度上昇を抑制することになる。
【0027】
これにより、伝熱プレート同士を溶接した溶接ライン上で発生する熱応力を抑制することができ、溶接部分に割れが生じるのを抑えることができる。従って、一次側流入路を画定するリングガスケットの熱劣化の抑制に加え、伝熱プレート同士を溶接した溶接ライン上での熱応力を抑制して割れを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明のプレート式熱交換器によれば、高温流体を流通させる一次側流入路を画定するリングガスケットが熱劣化することを抑制でき、伝熱プレート間の封止状態を良好な状態で長期に亘って維持させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器の全体斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係るプレート式熱交換器の締付手段及びレールを省略した分解斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートの平面図であって、(a)は、第一伝熱プレートに一次側主流路形成用ガスケット及び第二リングガスケットを装着した状態の平面図を示し、(b)は、第二伝熱プレートに二次側主流路形成用ガスケット及び第一リングガスケットを装着した状態の平面図を示す。
【図4】同実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、一次側流入路近傍の部分断面図を示す。
【図5】同実施形態に係るプレート式熱交換器における高温流体及び低温流体の流動を説明するための説明図であって、(a)は、一次側主流路における高温流体の流れを示し、(b)は、二次側主流路における低温流体の流れを示す。
【図6】本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器に採用される伝熱プレートにガスケットを装着した状態の平面図であって、(a)は、第一伝熱プレートに一次側主流路形成用ガスケット、第二リングガスケット、及び保護用ガスケットを装着した状態の平面図を示し、(b)は、第二伝熱プレートに二次側主流路形成用ガスケット及び第一リングガスケットを装着した状態の平面図を示す。
【図7】本発明の他実施形態に係るプレート式熱交換器の部分断面図であって、図6に示す伝熱プレートを積層したプレート式熱交換器の一次側流入路近傍の部分断面図を示す。
【図8】本発明の別の実施形態に係るプレート式熱交換器の伝熱カセットを構成する二枚の伝熱プレートの説明図であって、(a)は、一方の伝熱プレートの平面図を示し、(b)は、他方の伝熱プレートの平面図を示す。
【図9】従来のプレート式熱交換器の分解斜視図であって、複数枚の伝熱プレートがそれぞれ独立したプレート式熱交換器の分解斜視図を示す。
【図10】従来のプレート式熱交換器の分解斜視図であって、二枚一組の伝熱プレートを溶接して形成された伝熱カセットを複数積層したプレート式熱交換器の分解斜視図を示す。
【図11】従来のプレート式熱交換器における一次側流入路近傍の部分断面図であって、(a)は、図9に示すプレート式熱交換器の部分断面図を示し、(b)は、図10に示すプレート式熱交換器の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係るプレート式熱交換器について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態に係るプレート式熱交換器は、図1に示す如く、それぞれ独立した複数枚の伝熱プレート10,11…が積層されている。そして、該プレート式熱交換器1は、図2に示す如く、各伝熱プレート10,11を境にして高温流体Hを流通させる一次側主流路R1と低温流体Cを流通させる二次側主流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第一開口100a,100b,110a,110bが連なって高温流体Hを一次側主流路R1に対して流出入させる一次側流入路Ra及び一次側流出路Rbが形成されるとともに、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第二開口101a,101b,111a,111bが連なって低温流体Cを二次側主流路R2に対して流出入させる二次側流入路Rc及び二次側流出路Rdが形成されている。
【0032】
より具体的に説明すると、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、図2に示す如く、複数枚の伝熱プレート10,11…と、各伝熱プレート10,11間に介装されるガスケット12,13,14,15と、複数枚の伝熱プレート10,11…を挟み込む一対のベースプレート16,17と、複数枚の伝熱プレート10,11…を一対のベースプレート16,17で締め付けるための締付手段18(図1参照)とを備えている。
【0033】
各伝熱プレート10,11は、図3(a)及び図3(b)に示す如く、表裏に複数の凹条(採番しない)及び凸条(採番しない)が交互に並んで形成されている。本実施形態において、各伝熱プレート10,11は、金属製のプレートをプレス成形することで凹条及び凸条が形成されている。そのため、各伝熱プレート10,11は、凹条の裏側が凸条になっている。凹条及び凸条は、伝熱プレート10,11の長手方向に延びる中心線(以下、縦中心線という)CL1に対して交差方向に延びて形成されている。なお、凹条及び凸条は、熱交換の対象となる高温流体H及び低温流体Cの性状や熱交換効率等を考慮して適宜配置が変更されるが、本実施形態においては、縦中心線CL1を境にして長手方向と直交する方向(以下、短手方向という)の一端側の領域及び他端側の領域で対称(鏡像)関係になるように、縦中心線CL1に対して傾斜して形成されている。
【0034】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、伝熱プレート10,11に二種類のものが採用されている。具体的には、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、縦中心線CL1から短手方向の両端に向かうにつれて長手方向の一端側に傾斜するように凹条及び凸条が形成された第一伝熱プレート10(図3(a)参照)と、縦中心線CL1から短手方向の両端に向かうにつれて長手方向の他端側に傾斜するように凹条及び凸条が形成された第二伝熱プレート11(図3(b)参照)とを備えている。これにより、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10と第二伝熱プレート11とを交互に積層することで、互いに隣り合う伝熱プレート10,11の凸条同士が交差衝合するようになっている。
【0035】
前記第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11は、それぞれ長方形状に形成されている。そして、第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11は、長手方向の両端部に対して短手方向における一端側に二つの第一開口100a,100b,110a,110bが形成され、長手方向の両端部に対して短手方向における他端側に二つの第二開口101a,101b,111a,111bが形成されている。なお、本実施形態において、第一開口100a,100b,110a,110b及び第二開口101a,101b,111a,111bの何れも円形状に形成されている。
【0036】
そして、この種のプレート式熱交換器1は、各伝熱プレート10,11の少なくとも何れか一方の面にガスケット12,13,14,15を装着するためのガスケット装着溝102,103,112,113が形成される。
【0037】
ここでガスケット装着溝102,103,112,113について具体的に説明すると、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10に対し、ガスケット装着溝102,103として、二つの第二開口101a,101bを躱す一方で二つの第一開口100a,100bを取り囲んだ第一ガスケット装着溝102と、各第二開口101a,101bを包囲した第二ガスケット装着溝103とが形成されている。
【0038】
前記第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103,103は、第一伝熱プレート10の一方の面の裏側である他方の面(図において手前側に向く面)を溝状に窪ませることで形成されている。本実施形態において、第一伝熱プレート10は、金属製のプレートをプレス成形されたものであるため、第一ガスケット装着溝102の裏側(一方の面側)及び第二ガスケット装着溝103,103の裏側(一方の面側)が隆起している。すなわち、第一伝熱プレート10の一方の面において、他方の面側にある第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103,103の形成領域と対応する領域が隆起した状態になっている。
【0039】
各第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102は、該伝熱プレート10の短手方向の一端に沿って形成された第一溝部102aと、該伝熱プレート10の短手方向の他端に沿って形成された第二溝部102bと、第一溝部102aの両端と第二溝部102bの両端とを接続する一対の第三溝部102c,102cとで構成されている。
【0040】
そして、前記第二溝部102bは、長手方向の長さが第一溝部102aよりも短く設定されている。これに伴い、一対の第三溝部102c,102cは、第一溝部102a側から第二溝部102b側に向かうにつれて伝熱プレート10,11の短手方向に延びる中心線(以下、横中心線という)CL2側に傾斜するように形成されている。これにより、第一ガスケット装着溝102は、第一溝部102a、第二溝部102b、及び一対の第三溝部102c,102cが連続して台形状の領域を画定している。
【0041】
前記第二ガスケット装着溝103,103は、第二開口101a,101bの外周に沿って形成されている。本実施形態において、各第二開口101a,101bが円形状に形成されているため、第二ガスケット装着溝103,103は、第二開口101a,101b回りで円環状に形成されている。
【0042】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10の一方の面(図において奥側に向く面)に対し、二つの第一開口100a,100b及び二つの第二開口101a,101bを取り囲んだ第一環状隆起部104と、各第一開口100a,100bを包囲した第二環状隆起部105,105とが形成されている。
【0043】
前記第一環状隆起部104は、第一ガスケット装着溝102の全周を包囲するように無端環状に形成されている。本実施形態において、第一環状隆起部104は、第一溝部102a(該第一溝部102aの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第一辺部104aと、第二溝部102b(該第二溝部102bの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第二辺部104bと、第一辺部104aの両端と第二辺部104bの両端とを接続した一対の第三辺部104c,104cとで構成されており、略四角形状の領域を画定している。そして、本実施形態おいて、第一環状隆起部104は、第二ガスケット装着溝103,103(裏側の隆起した部分)に対して第二辺部104b及び第三辺部104c,104cが接続されている。すなわち、第一環状隆起部104は、第二ガスケット装着溝103,103の裏側の隆起した部分の一部(略四分の一円弧)が第二辺部104bと第三辺部104c,104cとを接続する部分になっている。
【0044】
第二環状隆起部105,105は、第一開口100a,100b毎に設けられており、それぞれ第一開口100a,100bの周縁部に沿って形成されている。本実施形態に係る第一開口100a,100bは、円形状に形成されているため、第二環状隆起部105,105は、第一開口100a,100bの開口形状に対応して円環状に形成されている。また、本実施形態において、前記第二環状隆起部105,105は、その一部が第一ガスケット装着溝102の一部(第一開口100a,100b周辺の一部)と重なるように形成されている。すなわち、第一開口100a,100b周辺にある第一ガスケット装着溝102の裏側の隆起した部分の一部は、第二環状隆起部105,105の一部を形成している。本実施形態において、上述の如く、第一伝熱プレート10は、金属製のプレートをプレス成形して形成されているため、第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105の裏側に該第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105と対応した凹部(採番しない)が形成されている。
【0045】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、第二伝熱プレート11の一方の面(第一伝熱プレート10と対向する面:図において手前側に向く面)に対し、二つの第一開口110a,110b及び二つの第二開口111a,111bを取り囲んだ第三ガスケット装着溝112と、各第一開口110a,110bを包囲した第四ガスケット装着溝113,113とが形成されている。
【0046】
前記第三ガスケット装着溝112は、第一伝熱プレート10に形成された第一環状隆起部104と対向するように無端環状に形成されている。本実施形態において、第三ガスケット装着溝112は、第二伝熱プレート11の短手方向の一端に沿って形成された第四溝部112aと、第二伝熱プレート11の短手方向の他端に沿って形成された第五溝部112bと、第四溝部112aの両端と第五溝部112bの両端とを接続する一対の第六溝部112c,112cとで構成されおり、第四溝部112a、第五溝部112b、及び一対の第六溝部112c,112cが連続して略四角形状の領域を画定している。そして、第三ガスケット装着溝112は、第四ガスケット装着溝113,113の一部を含む後述の第三環状隆起部114の裏側の環状の窪みの全周に対して間隔をあけて配置されている。
【0047】
前記第四ガスケット装着溝113,113は、第一開口110a,110bの外周に沿って形成されている。本実施形態において、各第一開口110a,110bが円形状に形成されているため、第四ガスケット装着溝113,113は、第一開口110a,110b回りで円環状に形成されている。
【0048】
そして、第二伝熱プレート11は、他方の面(図において奥側を向く面)に対して、二つの第二開口111a,111bを躱す一方で二つの第一開口110a,110bを取り囲んだ第三環状隆起部114と、各第二開口111a,111bを包囲した第四環状隆起部115,115とが形成されている。
【0049】
前記第三環状隆起部114は、第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102と対応(対向)するように形成されている。すなわち、第三環状隆起部114は、第一環状隆起部104と対向する第三ガスケット装着溝112の内側で無端環状に形成されている。本実施形態において、第三環状隆起部114は、第三溝部102c,102c(該第三溝部102c,102cの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第四辺部114aと、第四溝部112a(該第四溝部112aの裏側の隆起した部分)に対して所定間隔をあけて略平行をなす第五辺部114bと、第四辺部114aの両端と第五辺部114bの両端とを接続した一対の第六辺部114c,114cとで構成されている。
【0050】
そして、該第三環状隆起部114は、第五辺部114bが第四辺部114aよりも短く設定されており、一対の第六辺部114c,114cが第二伝熱プレート11の短手方向の他端側ほど横中心線CL2側に傾斜して第四辺部114a、第五辺部114b、及び一対の第六辺部114c,114cで略台形状の領域を画定している。そして、本実施形態おいて、第三環状隆起部114は、第四ガスケット装着溝113,113(裏側の隆起した部分)に対して第四辺部114a及び第六辺部114c,114cが接続されている。すなわち、第三環状隆起部114は、第四ガスケット装着溝113,113の裏側の隆起した部分の一部(略四分の一円弧)が第四辺部114aと第六辺部114c,114cとを接続する部分になっている。
【0051】
第四環状隆起部115,115は、第一伝熱プレート10の第二ガスケット装着溝103,103に対応(対向)するように形成されている。第四環状隆起部115,115は、第二開口111a,111b毎に設けられており、それぞれ第二開口111a,111bの周縁部に沿って形成されている。すなわち、本実施形態に係る第二開口111a,111bは、円形状に形成されているため、第四環状隆起部115,115は、第二開口111a,111bの開口形状に対応して円環状に形成されている。また、本実施形態において、前記第四環状隆起部115,115は、その一部が第三ガスケット装着溝112の一部(第二開口111a,111b周辺の一部)と重なるように形成されている。すなわち、第二開口111a,111b周辺にある第三ガスケット装着溝112の裏側の隆起した部分の一部は、第四環状隆起部115,115の一部を構成している。本実施形態において、上述の如く、第二伝熱プレート11は、金属製のプレートをプレス成形して形成されているため、第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115の裏側に該第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115と対応した凹部が形成されている。
【0052】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、前記ガスケット12,13,14,15として、二つの第一開口100a,100b,110a,110b及び二つの第二開口101a,101b,111a,111bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の一方の面間に介装される環状の二次側主流路形成用ガスケット12と、二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の他方の面間に介装される一次側主流路形成用ガスケット13と、各第一開口100a,100b,110a,110b回りに配置された状態で互い隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の一方の面間に介装されるリングガスケット(以下、第一リングガスケットという)14,14と、各第二開口101a,101b,111a,111b回りに配置された状態で互い隣り合う伝熱プレート10,11(第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11)の他方の面間に介装されるリングガスケット(以下、第二リングガスケットという)15,15とを備えている。
【0053】
すなわち、該プレート式熱交換器1は、第一ガスケット装着溝102に装着される一次側主流路形成用ガスケット13と、第二ガスケット装着溝103,103に装着される第二リングガスケット15,15と、第三ガスケット装着溝112に装着される二次側主流路形成用ガスケット12と、第四ガスケット装着溝113,113に装着される第一リングガスケット14,14とを備えている。
【0054】
一次側主流路形成用ガスケット13は、無端環状に形成されており、第一ガスケット装着溝102の形態に対応して台形状の領域を画定するように形成されている。二次側主流路形成用ガスケット12は、無端環状に形成されており、第三ガスケット装着溝112の形態に対応して略四角形状の領域を画定するように形成されている。そして、上述の如く、二次側主流路形成用ガスケット12は、第四ガスケット装着溝113,113の一部を含む第三環状隆起部114の裏側の環状の窪みの全周に対して間隔をあけて配置された第三ガスケット装着溝112に装着されるため、二つの第一開口100a,100b,110a,110b及び二つの第二開口101a,101b,111a,111bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の一方の面間に介装された状態になり、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14が該二次側主流路形成用ガスケット12の包囲領域内に位置するように、該第一リングガスケット14,14を取り囲んでいる。
【0055】
そして、第一リングガスケット14,14及び第二リングガスケット15,15は、何れも無端環状に形成されており、第二ガスケット装着溝103,103及び第四ガスケット装着溝113,113の形態に対応して円形の領域を画定するように形成されている。
【0056】
図2に戻り、前記一対のベースプレート16,17は、厚手の金属プレートで構成されている。そして、各ベースプレート16,17は、長方形状に形成されており、各伝熱プレート10,11の平面サイズよりも大きなサイズに設定されている。そして、一対のベースプレート16,17のうち、一方のベースプレート16は、伝熱プレート10,11の第一開口100a,100b,110a,110b(一次側流入路Ra及び一次側流出路Rb)と対応した位置、及び第二開口101a,101b,111a,111b(二次側流入路Rc及び二次側流出路Rd)と対応した位置に貫通穴(採番しない)が穿設されている。そして、該一方のベースプレート16は、図1に示す如く、その外面には配管を接続するための筒状の接続ノズル160a,160b,160c,160dが各貫通穴に対応して取り付けられている。
【0057】
一対のベースプレート16,17は、何れも長手方向と直交する短手方向の両端部に複数の切欠部161…が設けられている。すなわち、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、締付手段18にボルトBとナットNとが採用されており、一対のベースプレート16,17に跨るように両ベースプレート16,17の切欠部161…内に配置したボルトBに対してナットNを螺合することで両ベースプレート16,17を締め付けるようになっている。
【0058】
なお、特に言及しないが、この種のプレート式熱交換器1は、一般的に、一対のベースプレート16,17の上端部及び下端部にレールLが挿通されており、積層される複数枚の伝熱プレート10,11…の長手方向の両端部(上端部及び下端部)がレールLに支持されており、一対のベースプレート16,17の締め付けを開放した状態で各伝熱プレート10,11をレールLに沿ってスライドさせることができるようになっている。
【0059】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、以上の構成を備え、図3(a)及び図3(b)に示す如く、第一ガスケット装着溝102に一次側主流路形成用ガスケット13を装着するとともに第二ガスケット装着溝103,103に第二リングガスケット15,15を装着し、さらに、第三ガスケット装着溝112に二次側主流路形成用ガスケット12を装着するとともに第四ガスケット装着溝113,113に第一リングガスケット14,14を装着した上で、前記第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11が交互に積層される(図2参照)。
【0060】
そして、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10に対して第一環状隆起部104及び第二環状隆起部105,105が形成され、第二伝熱プレート11に対して第三環状隆起部114及び第四環状隆起部115,115が形成されているため、上述の如く、複数枚の伝熱プレート10,11…を積層する(複数枚の伝熱プレート10,11…を介装させた一対のベースプレート16,17を締め付ける)と、図4に示す如く、第一伝熱プレート10の第一ガスケット装着溝102に装着された一次側主流路形成用ガスケット13が第二伝熱プレート11の第三環状隆起部114に押圧され、第二伝熱プレート11の第四ガスケット装着溝113,113に装着された第一リングガスケット14,14が第一伝熱プレート10の第二環状隆起部105,105に押圧され、さらに、第二伝熱プレート11の第三ガスケット装着溝112に装着された二次側主流路形成用ガスケット12が第一伝熱プレート10の第一環状隆起部104に押圧されるようになっている。また、図示しないが、該プレート式熱交換器1は、第一伝熱プレート10の第二ガスケット装着溝103,103に装着された第二リングガスケット15,15が第二伝熱プレート11の第四環状隆起部115,115に押圧されるようになっている。これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、各ガスケット12,13,14,15が伝熱プレート10,11に挟まれることで、伝熱プレート10,11間が封止されるようになっている。
【0061】
これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、上述の如く、各伝熱プレート10,11を境にして高温流体Hを流通させる一次側主流路R1と低温流体Cを流通させる二次側主流路R2とが交互に形成され、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第一開口100a,100b,110a,110bが連なって高温流体Hを一次側主流路R1に対して流出入させる一次側流入路Ra及び一次側流出路Rbが形成されるとともに、各伝熱プレート10,11に形成された二つの第二開口101a,101b,111a,111bが連なって低温流体Cを二次側主流路R2に対して流出入させる二次側流入路Rc及び二次側流出路Rdが形成される。
【0062】
本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側流入路Raが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側に形成されるとともに、一次側流出路Rbが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側に形成されるのに対し、二次側流入路Rcが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側に形成されるとともに、二次側流出路Rdが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側に形成されるようになっている。
【0063】
これにより、該プレート式熱交換器1は、図5(a)に示す如く、高温流体Hが一次側主流路R1において第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の一端側から他端側に向けて流通し、図5(b)に示す如く、低温流体Cが二次側主流路R2において第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11の長手方向の他端側から一端側に向けて流通するようになっており、一次側主流路R1内の高温流体Hと二次側主流路R2内の低温流体Cとが第一伝熱プレート10及び第二伝熱プレート11を介して熱交換するようになっている。
【0064】
そして、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、前記二次側主流路形成用ガスケット12が一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14全体を取り囲むように配置されているため、図4に示す如く、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14の周囲に低温流体Cが存在するようになっている。すなわち、該プレート式熱交換器1は、第一リングガスケット14,14の外周に対して間隔をあけて該第一リングガスケット14,14の外側に配置されているため、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14回りに温度の低い低温流体Cが存在するようになっている。これにより、該プレート式熱交換器1は、二次側主流路R2内の低温流体Cが一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14の温度上昇を抑制するようになっている。従って、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、高温流体Hを流通させる一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14が高温になることがないため、第一リングガスケット14,14の熱劣化(痩せ)を抑制し、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持できるようになっている。
【0065】
また、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側主流路R1が二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケット13で画定され、前記二次側主流路形成用ガスケット12は、伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側に位置するように配置されているため、一次側主流路形成用ガスケット13が熱劣化することを抑制することができる。すなわち、二次側主流路形成用ガスケット12が伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側に位置するように配置されることで、二次側主流路R2(低温流体C)が伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用ガスケット13よりも外側にまで存在することになり、一次側主流路形成用ガスケット13に対して伝熱プレート10,11の一方の面側にある低温流体Cが伝熱プレート10,11を介して一次側主流路形成用ガスケット13の温度上昇を抑制することになる。
【0066】
従って、一次側主流路R1を一次側主流路形成用ガスケット13で画定しても、該一次側主流路形成用ガスケット13が不必要に高温になることがない。これにより、本実施形態に係るプレート式熱交換器1は、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14に加えて一次側主流路形成用ガスケット13の熱劣化も抑制することができ、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持させることができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
【0068】
例えば、上記実施形態において、伝熱プレート10,11の他方の面間に一次側主流路形成用ガスケット13及び第二リングガスケット15,15のみを介装するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図6(a)に示す如く、一次側主流路形成用ガスケット13の全周を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレート10,11の他方の面間に介装された環状の保護用ガスケット19を更に備えてもよい。このようにすれば、一次側主流路形成用ガスケット13の酸化劣化を防止することができる。すなわち、一次側主流路形成用ガスケット13は、高温流体Hを流通させる一次側主流路R1を画定するため、一次側主流路R1の熱影響を受けて温度上昇する傾向にあり、外気に触れる外周側から酸化劣化する傾向にあるが、上述の如く、一次側主流路形成用ガスケット13を取り囲む環状の保護用ガスケット19を更に備え、一次側主流路形成用ガスケット13と保護用ガスケット19との間の領域を密封状態にすることで、一次側主流路形成用ガスケット13に外気が連続的に触れることを防止でき、一次側主流路形成用ガスケット13の酸化劣化を低減することができる。
【0069】
この場合、図7に示す如く、伝熱プレート10,11の短手方向の両端側で保護用ガスケット19と二次側主流路形成用ガスケット12とが伝熱プレート10,11を介して重なり合うように、保護用ガスケット19を配置することが好ましい。すなわち、保護用ガスケット19は、図6(a)及び図6(b)に示す如く、伝熱プレート10の短手方向の両端に沿って配置される部分(第一ガスケット装着溝102の第一溝部102a及び第二溝部102bと平行又は略平行をなす部分)を二次側主流路形成用ガスケット12の第四溝部112a及び第五溝部112bに装着される部分と対応する配置にすることが好ましい。この場合、保護用ガスケット19が伝熱プレート10,11の他方の面間に介装されるため、第一伝熱プレート10の他方の面に対して保護用ガスケット19を装着する無端環状の保護用ガスケット装着溝106を設ける場合には、第二伝熱プレート11の一方の面に保護用ガスケット装着溝106と対向する無端環状の隆起部116を設ければよい。すなわち、第三ガスケット装着溝112(第四溝部112a及び第五溝部112b)の裏側で隆起した部分を保護用ガスケット19を押圧するための隆起部116とすればよい。
【0070】
このようすれば、ベースプレート16,17を締付手段18で締め付けたときに、図7に示す如く、伝熱プレート10,11の短手方向の両端側において、二次側主流路形成用ガスケット12と保護用ガスケット19とが伝熱プレート10,11の積層方向で一列に並んだ状態で、第二伝熱プレート11の第三ガスケット装着溝112に装着された二次側主流路形成用ガスケット12が第一伝熱プレート10の第一環状隆起部104に押圧されるとともに、保護用ガスケット19が隆起部116(第四溝部112a及び第五溝部112bの裏側の隆起した部分)に押圧されることになる。これにより、積層された複数枚の伝熱プレート10,11は、短手方向の両端で不用意に撓むことがなく、伝熱プレート10,11間の封止を確実にすることができる。
【0071】
上記実施形態において、第一ガスケット装着溝102の一部が第二環状隆起部105,105の裏側の窪みの一部と重なり、また、第二ガスケット装着溝103,103の一部が第一環状隆起部104の裏側の窪みの一部と重なるように、第一伝熱プレート10に対して第一ガスケット装着溝102、第二ガスケット装着溝103,103、第一環状隆起部104、第二環状隆起部105,105を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一ガスケット装着溝102が第二環状隆起部105,105の裏側の窪みよりも外側に位置し、第二ガスケット装着溝103,103が第一環状隆起部104の裏側の窪みよりも内側に位置するように、第一ガスケット装着溝102、第二ガスケット装着溝103,103、第一環状隆起部104、第二環状隆起部105,105を形成してもよい。
【0072】
また、第三ガスケット装着溝112の一部が第四環状隆起部115,115の裏側の窪みの一部と重なるとともに、第四ガスケット装着溝113,113の一部が第三環状隆起部114の裏側の窪みの一部と重なるように、第二伝熱プレート11に対して第三ガスケット装着溝112、第四ガスケット装着溝113,113、第三環状隆起部114、第四環状隆起部115,115を形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、第三ガスケット装着溝112が第四環状隆起部115,115の裏側の窪みよりも外側に位置し、第四ガスケット装着溝113,113が第三環状隆起部114の裏側の窪みよりも内側に位置するように、第三ガスケット装着溝112、第四ガスケット装着溝113,113、第三環状隆起部114、第四環状隆起部115,115を形成してもよい。
【0073】
なお、言うまでもないが、この場合、第一ガスケット装着溝102に対して第三環状隆起部114が重なり、第二ガスケット装着溝103,103に対して第四環状隆起部115,115が重なり、第三ガスケット装着溝112に対して第一環状隆起部104が重なり、第四ガスケット装着溝113,113に対して第二環状隆起部105,105が重なるように、これらが配置されることは言うまでもない。
【0074】
上記実施形態において、二種類の伝熱プレート10,11を交互に配置するようにしたが、これはガスケット12,13,14,15を装着するガスケット装着溝102,103,112,113を伝熱プレート10,11の一方の面又は他方の面の何れか一方に形成し、伝熱プレート10,11の一方の面又は他方の面の何れか他方にガスケット装着溝102,103,112,113と対向する隆起部104,105,114,115を形成したためであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、伝熱プレート10,11の横中心線CL2を基準に該長手方向の一端側の領域と該長手方向の他端側の領域とで鏡像配置になるように、伝熱プレート10,11の両面の同じ位置(表裏で対応する位置)に同形態のガスケット装着溝102,103,112,113を形成すれば、一種類の伝熱プレート10,11で上記実施形態と同様のプレート式熱交換器1にすることができる。
【0075】
この場合、上記実施形態とは異なり、各ガスケット12,13,14,15は、隣り合う二枚の伝熱プレート10,11に挟み込まれた状態(対向し合う面(一方の面間、又は他方の面間)に介装された状態)で、隣り合う二枚の伝熱プレート10,11のそれぞれに形成されたガスケット装着溝102,103,112,113に装着(嵌着)された状態となるため、隣り合う伝熱プレート10,11(ガスケット装着溝102,103,112,113の内面)に圧接するようにガスケット12,13,14,15の厚みを設定することは勿論のことである。また、この場合において、伝熱プレート10,11が一種類で構成されているため、反転された伝熱プレート11の一方の面が反転されていない伝熱プレート10の他方の面であり、反転された伝熱プレート11の他方の面が反転されていない伝熱プレート10の他方の面であることは言うまでもない。
【0076】
上記実施形態において、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14とともに一次側流出路Rbを画定する第一リングガスケット14を二次側主流路形成用ガスケット12で取り囲み、二次側主流路R2内に二つのリングガスケット14,14を介在させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、一次側流出路Rbを画定する第一開口100b,110b及びその周囲に配置される第一リングガスケット14を躱した状態で、二次側流入路Rc及び二次側流出路Rd(全ての第二開口101a,101b,111a,111b)とともに一次側流入路Raを画定する第一開口100a,110a及びその周囲に配置される第一リングガスケット14を二次側主流路形成用ガスケット12で取り囲み、二次側主流路R2内に一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15のみを介在させるようにしてもよい。
【0077】
すなわち、一次側流出路Rbを流通する高温流体Hは、熱交換後のもので一次側流入路Raを流通する高温流体Hに比して温度が低くなるため、一次側流出路Rbを画定する第二リングガスケット15は、一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15に比して熱劣化しにくいことから、一次側流出路Rbを画定する第二リングガスケット15を二次側主流路R2の外側に配置して一次側流入路Raを画定する第二リングガスケット15のみを二次側主流路R2内に配置するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、第一開口100a,100b,110a,110bの周囲に第一リングガスケット14,14を一重で配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一リングガスケット14,14の外側を包囲する別のリングガスケットをさらに配置し、該別のリングガスケットと第一リングガスケット14,14との間の領域を密封状態にしてもよい。このようにすれば、第一リングガスケット14,14の酸化劣化を低減でき、さらに、第一リングガスケット14,14が高温流体Hに対する化学的な劣化や経年劣化等で破断しても、該第一リングガスケット14,14を包囲する別のリングガスケットの存在で一次側流入路Raを流通する高温流体Hが二次側主流路R2内に流れ込んでしまうことを防止することができる。
【0079】
上記実施形態において、伝熱プレート10,11の他方の面間に介装されるガスケット12,15として、それぞれ独立した二次側主流路形成用ガスケット12と第二リングガスケット15とを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、二次側主流路形成用ガスケット12の一部と第二リングガスケット15の一部とを接続したものであってもよい。この場合、伝熱プレート10,11には、ガスケット12,15の態様に応じたガスケット装着溝が形成されることは言うまでもない。
【0080】
上記実施形態において、複数枚の伝熱プレート10,11…をそれぞれ独立したものを採用したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数枚の伝熱プレート10,11…を積層方向で順々に二枚一組にし、図9(a)及び図9(b)に示す如く、各組における二枚の伝熱プレート(重ね合わされた二枚の伝熱プレート)10,11が伝熱カセットSを形成したものであってもよい。具体的には、二つの第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で二つの第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲んだ無端環状の一次側主流路R1形成用の溶接ラインWL1を形成するとともに二つの第二開口101a,101b,111a,111bのそれぞれを包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ラインWL2及び二次側流出路形成用の溶接ラインWL3を形成するように、各組の二枚の伝熱プレート10,11の他方の面同士を線溶接して伝熱カセットSを形成し、該伝熱カセットSを複数積層するようにしてもよい。
【0081】
すなわち、各組における二枚の伝熱プレート10,11の対向面(他方の面)同士であって、上記実施形態で一次側主流路形成用ガスケット13及び第一リングガスケット14,14を配置した領域(図中、二点鎖線で示す部分)同士を線溶接することで、各組における二枚の伝熱プレート10,11を伝熱カセットにするようにしてもよい。なお、このように二枚の伝熱プレート10,11を溶接するに当り、二枚の伝熱プレート10,11の溶接領域同士を接触させる必要があるため、各組における二枚の伝熱プレート10,11の溶接領域の他方の面を相手側の伝熱プレート10,11に向けて膨出(隆起)させて形成することは言うまでもない。
【0082】
この場合において、伝熱カセットS,S間(伝熱プレート10,11の一方の面間)に介装される二次側主流路形成用ガスケット12は、少なくとも一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14を取り囲むとともに伝熱プレート10,11の一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側に位置するように配置すればよい。なお、この場合、上述の如く、伝熱カセットS,S間に二次側主流路形成用ガスケット12及び第一リングガスケット14,14を介装するため、伝熱カセットSを構成する二枚の伝熱プレート10,11は、何れも一方の面(外側に向く面)に対し、第一ガスケット装着溝102及び第二ガスケット装着溝103が配置及び形態を合わせて形成される。
【0083】
このようにすれば、各伝熱カセットを形成する伝熱プレート10,11間に一次側主流路R1が形成され、伝熱カセットS,S間に二次側主流路R2が形成される。そして、二次側主流路形成用ガスケット12が一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14,14を取り囲むとともに伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側に位置するように配置されているため、二次側主流路R2(低温流体C)が伝熱プレート10,11の他方の面側で一次側主流路R1を画定する一次側主流路形成用の溶接ラインWL1よりも外側にまで存在することになり、該低温流体Cが伝熱プレート10,11を介して一次側主流路形成用の溶接ライン(溶接部分)WL1の温度上昇を抑制することになる。
【0084】
これにより、伝熱プレート10,11同士を溶接した溶接ラインWL1上で発生する熱応力を抑制することができ、溶接部分WL1に割れが生じるのを抑えることができる。従って、一次側流入路Raを画定する第一リングガスケット14の熱劣化の抑制に加え、伝熱プレート10,11同士を溶接した溶接ラインWL1上での熱応力を抑制して割れを防止することができ、伝熱プレート10,11間の封止状態を長期に亘って維持させることができる。
【0085】
上記実施形態において、各伝熱プレート10,11に対して第一開口100a,100b,110a,110bを二つ形成するとともに、第二開口101a,101b,111a,111bを二つ形成したが、これに限定されるものではなく、第一開口100a,100b,110a,110bを三つ以上形成してもよいし、第二開口101a,101b,111a,111bを三つ以上形成してもよい。
【0086】
すなわち、上記実施形態において、一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdをそれぞれ一つずつ形成したが、これに限定されるものではなく、一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdをそれぞれが少なくとも一つずつ形成できるように、第一開口及び第二開口のそれぞれを二つ以上形成するようにしてもよい。この場合においても、二次側主流路形成用ガスケット12は、一次側流入路Raを画定する全ての第一リングガスケット14の外周を取り囲むように配置することで、第一リングガスケット14の周囲に低温流体Cを存在させることができ、当該第一リングガスケット14の熱劣化を抑制することができる。
【0087】
また、第一開口100a,100b,110a,110b及び第二開口101a,101b,111a,111bの配置(一次側流入路Ra、一次側流出路Rb、二次側流入路Rc、及び二次側流出路Rdの配置)は、上記実施形態に限定されるものではなく、一次側主流路R1への高温流体Hの流入状態や、一次側主流路R1内での高温流体Hの流通状態、二次側主流路R2への低温流体Cの流入状態や、二次側主流路R2内での低温流体Hの流通状態等を考慮して適宜変更可能である。なお、言うまでもないが、これらの配置を変更した場合であっても、二次側主流路形成用ガスケット12は、全ての第二開口101a,101b,111a,111bと一次側流入路Raを形成する第一開口100a,110aを取り囲むように配置し、一次側主流路形成用ガスケット13又は一次側主流路形成用の溶接ラインWL1は、全ての第二開口101a,101b,111a,111bを躱す一方で、全ての第一開口100a,100b,110a,110bを取り囲むように配置することは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1…プレート式熱交換器、10…第一伝熱プレート(伝熱プレート)、11…第二伝熱プレート(伝熱プレート)、12…二次側主流路形成用ガスケット(ガスケット)、13…一次側主流路形成用ガスケット(ガスケット)、14…第一リングガスケット(リングガスケット)、15…第二リングガスケット(リングガスケット)、16,17…ベースプレート、18…締付手段、19…保護用ガスケット、100a,100b,110a,110b…第一開口、101a,101b,111a,111b…第二開口、102…第一ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、102a…第一溝部、102b…第二溝部、102c…第三溝部、103…第二ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、104…第一環状隆起部(隆起部)、104a…第一辺部、104b…第二辺部、104c…第三辺部、105…第二環状隆起部、112…第三ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、112a…第四溝部、112b…第五溝部、112c…第六溝部、113…第四ガスケット装着溝(ガスケット装着溝)、114…第三環状隆起部、114a…第四辺部、114b…第五辺部、114c…第六辺部、115…第四環状隆起部、160a,160b,160c,160d…接続ノズル、161…切欠部、L…レール、B…ボルト、N…ナット、C…低温流体、H…高温流体、R1…一次側主流路、R2…二次側主流路、Ra…一次側流入路、Rb…一次側流出路、Rc…二次側流入路、Rd…二次側流出路、S…伝熱カセット、WL1…溶接ライン、WL2…溶接ライン、WL3…溶接ライン、CL1…縦中心線(長手方向に延びる中心線)、CL2…横中心線(短手方向に延びる中心線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に対して流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成されるとともに、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に対して流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、一次側主流路及び二次側主流路のうち、少なくとも二次側主流路は、全ての第二開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された環状の二次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記一次側流入路及び一次側流出路は、各第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットで画定されたプレート式熱交換器において、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記一次側主流路は、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの他方の面側にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されている請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記一次側主流路形成用ガスケットを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の保護用ガスケットを更に備えている請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記複数枚の伝熱プレートは、積層方向で順々に二枚一組にされ、各組における二枚の伝熱プレートは、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲んだ無端環状の一次側主流路形成用の溶接ラインを形成するとともに各第二開口を包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ライン及び二次側流出路形成用の溶接ラインを形成するように、互いの他方の面同士が溶接されて伝熱カセットを形成し、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置され、二次側流入路及び二次側流出路は、各第二開口回りに配置された状態で伝熱カセット間に介装された別のリングガスケットで画定されている請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項1】
プレス成形された複数枚の伝熱プレートが積層され、各伝熱プレートを境にして高温流体を流通させる一次側主流路と低温流体を流通させる二次側主流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第一開口が連なって高温流体を一次側主流路に対して流出入させる一次側流入路及び一次側流出路が形成されるとともに、各伝熱プレートに形成された少なくとも二つの第二開口が連なって低温流体を二次側主流路に対して流出入させる二次側流入路及び二次側流出路が形成され、一次側主流路及び二次側主流路のうち、少なくとも二次側主流路は、全ての第二開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの一方の面間に介装された環状の二次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記一次側流入路及び一次側流出路は、各第一開口回りに配置された状態で前記一方の面間に介装されたリングガスケットで画定されたプレート式熱交換器において、前記二次側主流路形成用ガスケットは、第一開口回りに配置されるガスケットのうち、少なくとも一次側流入路を画定するリングガスケットの外周を取り囲むように配置されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記一次側主流路は、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の一次側主流路形成用ガスケットで画定され、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの他方の面側にある一次側主流路形成用ガスケットよりも外側に位置するように配置されている請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記一次側主流路形成用ガスケットを取り囲むように配置された状態で互いに隣り合う伝熱プレートの他方の面間に介装された環状の保護用ガスケットを更に備えている請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記複数枚の伝熱プレートは、積層方向で順々に二枚一組にされ、各組における二枚の伝熱プレートは、全ての第二開口を躱す一方で全ての第一開口を取り囲んだ無端環状の一次側主流路形成用の溶接ラインを形成するとともに各第二開口を包囲した無端環状の二次側流入路形成用の溶接ライン及び二次側流出路形成用の溶接ラインを形成するように、互いの他方の面同士が溶接されて伝熱カセットを形成し、前記二次側主流路形成用ガスケットは、伝熱プレートの一方の面側で一次側主流路形成用の溶接ラインの外周を取り囲むように配置され、二次側流入路及び二次側流出路は、各第二開口回りに配置された状態で伝熱カセット間に介装された別のリングガスケットで画定されている請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−257047(P2011−257047A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131335(P2010−131335)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]