説明

プレート式熱交換器

【課題】熱媒体が各第1流路内に効果的に流れるようにすることで、熱媒体の入口温度と被熱交換媒体の出口温度が接近しないプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】このプレート式熱交換器は、積層された複数の伝熱プレート10,20,30,40のそれぞれを境にして第1流路1と第2流路2とが交互に形成され、第1流路1同士を連通する連通路3と第2流路2同士を連通する連通路4とが設けられている。第1流路1は、熱媒体が往き方向に流れる複数の第1往路1aと、熱媒体が戻り方向に流れる複数の第1復路1bとに区分される。第1流路1同士を連通する連通路3は、熱媒体を各第1往路1aに流入させる供給路3aと、前記第2供給路を挟んで隣り合っている第1往路1aから第1復路1bに熱媒体を誘導する折返路3bと、第1復路1b内の熱媒体を回収して各第1往路に流入させることなく排出する回収路3cとに区分されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒などの熱媒体と水などの被熱交換媒体とを熱交換するための蒸発器その他のプレート式熱交換器に関し、詳しくは、伝熱プレートを境にして熱媒体を流通させる第1流路と、被熱交換媒体を流通させる第2流路とが交互に形成されたプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸発器として使用されるプレート式熱交換器は、図5示すように、複数枚の長方形状の伝熱プレート110,110,…を鉛直姿勢で積層し、この伝熱プレート110と伝熱プレート110との間に第1流路101と第2流路102とを交互に形成し、第1流路101に液体状態又は気液混合状態の熱媒体(冷媒)Rを流通させ、第2流路102に被熱交換媒体(被冷却流体)Hを流通させることで、熱媒体Rと被熱交換媒体Hとを熱交換する。
【0003】
そして、伝熱プレート110は、四隅に流体の出入口となる通路孔111〜114を設け、中間部に伝熱部(採番せず)を設け、各伝熱プレート110間にガスケット120を装着することで、例えば左側の上,下の通路孔111,113と伝熱部とが連通し、かつ、右側の上,下の通路孔112,114が伝熱部に開口しないように、あるいは、その逆になるようにされている。
【0004】
そして、各伝熱プレート110は、複数の凸条及び凹条(ともに採番せず)によって波形に形成されて、隣り合う伝熱プレート110の凸条同士が交差衝合し、各凹条で第1流路101又は第2流路102を形成している。
【0005】
しかし、このようなプレート式熱交換器にあっては、第1流路101内の熱媒体Rの流速が高められると、特に第1流路101内での下流側において熱媒体Rの圧力損失が適正範囲外となるほどに大きくなる。逆に、プレート式熱交換器は、第1流路101内で流通する熱媒体Rが低速で流れると、熱媒体Rの流量が少なくなることから熱交換効率の向上を図ることができない。
【0006】
そこで、圧力損失を適正な範囲内に止めつつ熱媒体Rの流速を高めることで、熱交換性能を向上させることができるようにしたプレート式熱交換器が特許文献1に記載されている。
【0007】
このプレート式熱交換器は、各第1流路の断面積及び第2流路の断面積が下流側を上流側よりも広くなるように、各伝熱プレートの凹条の所定箇所に膨出部を形成したことを特徴としている。こうすることにより、熱媒体Rは、上流側における流速低下を抑制でき、しかも、下流側においては流速の増大を抑制できる。したがって、このプレート式熱交換器は、熱媒体Rの上流側では境界伝熱係数を大きくし、下流側では圧力損失が大きくならないようにすることができるので、熱交換性能を高めることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−326074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プレート式熱交換器は、省エネルギ化を図るため、熱媒体Rの温度と被熱交換媒体Hとの温度差が小さくされるが、そのことにより、伝熱プレートが大型化する。一方、プレート式熱交換器は、小型化を図るため、伝熱プレートが短くされるが、そのことにより、伝熱プレートの枚数が増加する。
【0010】
そして、特許文献1に記載されたプレート式熱交換器は、熱媒体が冷媒Rである蒸発器として使用される。冷媒Rは、第1流路の上流側で気液2相状態で流れ、被熱媒体と熱交換された第1流路の下流側で気体となる。このようなプレート式熱交換器を使用すると、伝熱プレートを短くした分、枚数を増加させて伝熱面積の減少を補うと、熱媒体R及び被熱交換媒体Hの流路数が増え、流速が低下して熱交換性能が低下してしまうことがある。
【0011】
このような各種の課題を解決するため、図6及び図7に示すような2パスと称されるプレート式熱交換器(蒸発器)が提案されている。この蒸発器も、多数枚の伝熱プレート210,210,…を一定の間隔を空けて鉛直姿勢で積層し、各伝熱プレート210,210の間に第1流路201と第2流路202とを交互に形成している。
【0012】
そして、各伝熱プレート210,210の上部と下部に連通孔211,212を形成し、伝熱プレート210,210間に図示しないガスケットを装着し又はろう付けすることにより、隣り合っている第1流路201,201同士を連通する連通路203を設け、また、隣り合っている第2流路202,202同士を連通する連通路204(図7では採番せず)を設けたものとされている。
【0013】
ただし、最も外側の2枚の伝熱プレート210,210は、上部に連通孔211を設けない、又は連通孔211を塞ぎ、また、中心の1枚の伝熱プレート210は下部に連通孔212を設けない、又は連通孔212を塞ぐことで、冷媒Rが流れる連通路203が図面において下側左半分の上流側203aと、上側の中間203bと、下側右半分の下流側203cとに区分される。
【0014】
そして、冷媒Rは、図面において、上流側の連通路203aから左半分の第1流路201内を上向きに流れ、中間の連通路203bを右方向に流れた後、右半分の第1流路201内を下向きに流れる。一方、被熱交換媒体である被冷却流体Hが右半分の第2流路202内を上向きに流れ、左半分の第2流路202内を下向きに流れる。
【0015】
この蒸発器は、冷媒R及び被冷却流体Hの流速低下を防止することができるとともに、伝熱プレート210の枚数を少なくすることができる。しかし、この蒸発器は、左半分の複数の第1流路201内を上向きに流れた冷媒Rが中間の連通路203bで合流し、そして、右半分の複数の第1流路201内に分流する。したがって、この右半分の第1流路201内を下向きに流れる冷媒Rは、量や質が均等にならず、右半分の第2流路202を流れている被冷却流体Hとうまく熱交換できないことがある。
【0016】
また、蒸発器で使用される冷媒Rは、重量比で20〜30%の気体と80〜70%の液体の気液2相状態で第1流路201内に流入し、被冷却流体Hと熱交換されることで蒸発する。したがって、冷媒Rは、蒸発の進行に伴って体積が著しく膨張し、第1流路201内の下流側ほど流速が大きくなり、圧力損失が大きく生じる。また、冷媒Rは、第1流路201内の上流側で速度が小さい。
【0017】
そして、伝熱プレート210は本来、高伝熱係数−低圧力損失の特性を有していることが好ましい。しかし、伝熱プレート210は、高伝熱係数を求めると高圧力損失になり、低圧力損失を求めると低伝熱係数になるというように、伝熱係数と圧力損失とがトレードオフの関係にある。
【0018】
したがって、冷媒Rの下流側において圧力損失が過度にならない特性を有する伝熱プレート210は、冷媒Rの上流側及び被冷却流体Hに対して低伝熱係数−低圧力損失に過ぎ、理想的な伝熱特性にならない。冷媒Rの上流側において理想的な特性は、高伝熱係数−高圧力損失であるが、このような特性の伝熱プレート210は、冷媒Rの下流側及び被冷却流体Hに対して圧力損失が過大になる。被冷却流体Hに対して圧力損失が大きい(高伝熱係数−高圧力損失に過ぎる)特性の伝熱プレート210を備えた蒸発器は、被冷却流体Hを圧送するポンプが大型化する。
【0019】
要するに、本来であれば、冷媒Rの上流側においては高伝熱係数−高圧力損失の特性が好ましく、冷媒Rの下流側においては低伝熱係数−低圧力損失の特性が好ましく、被冷却媒体Hに対しては、中伝熱係数−中圧力損失の特性が好ましいが、前述の事情により、低伝熱係数−低圧力損失の特性の伝熱プレートを使用せざるを得ず、結果的に冷媒Rの上流側及び被冷却媒体Hの伝熱係数が低い状態で使用しなければならなくなる。
【0020】
また、冷媒Rとして、単一成分冷媒、共沸混合冷媒、疑似共沸混合冷媒を使用する場合は、冷媒R側の圧力損失により、冷媒R側の入口温度が上昇する。そうすると、被冷却流体Hの出口温度と近似し、熱交換が緩慢になり、その結果、大型の蒸発器を使用しなければならなくなる。
【0021】
そこで、本発明は、第1に、熱媒体が各第1流路内に効果的に流れるようにすることで、熱媒体の入口温度と被熱交換媒体の出口温度が接近しないようにすることができ、第2に、適切なプレート特性を得ることで、大型化しないようにしたプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るプレート式熱交換器は、積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして第1流路と第2流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに流入孔、流出孔、通過孔の全て又は一部が形成され、熱媒体が第2流路内に流入することなく第1流路間で流れるように前記流入孔又は流出孔を連通させる連通路と、被熱交換媒体が第1流路内に流入することなく第2流路内で流れるように前記流入孔又は流出孔を連通させる連通路とが設けられたプレート式熱交換器において、前記第1流路は、熱媒体が往き方向に流れる複数の第1往路と、熱媒体が戻り方向に流れる複数の第1復路とに区分され、前記第1流路間を連通させる連通路は、熱媒体を各第1往路に流入させる供給路と、前記第2流路を挟んで隣り合っている第1往路から第1復路に熱媒体を誘導する折返路と、第1復路内の熱媒体を回収して各第1往路に流入させることなく排出する回収路とに区分されていることを特徴としている。
【0023】
このプレート式熱交換器によれば、第1流路が複数の第1往路と複数の第1復路とに区分され、各第1往路と第1復路とが第2流路を挟んで隣り合い、連通路が供給路と折返路と回収路とに区分され、熱媒体が各供給路から各第1往路に流入し、各第1往路内から各折返路を通って、隣り合っている第1復路内を流れることにより、第2流路内の被熱交換媒体と熱交換され、さらに、熱媒体が回収路に排出され、熱媒体が回収路から各第1往路に流入しないことにより、被熱交換媒体と交換する熱媒体の量や質を均等にすることができる。
【0024】
また、前記本発明に係るプレート式熱交換器において、前記第1往路を形成する伝熱プレートは、高伝熱係数−高圧力損失の特性を有し、前記第1復路を形成する伝熱プレートは、低伝熱係数−低圧力損失の特性を有していることが好ましい。
【0025】
第1往路内を往き方向に流れる熱媒体は、気液2相状態で流入するため、流速が小さいことから、高伝熱係数の特性の伝熱プレート間を流れることが好ましい。また、第1復路内を戻り方向に流れる熱媒体は、速度が大きいことから、低圧力損失の特性の伝熱プレート間を流れることが好ましい。そして、このプレート式熱交換器は、このような特性に合致した伝熱プレートによって第1往路及び第1復路が形成されるため、熱媒体と被熱交換媒体とを効果的に熱交換することができる。
【0026】
また、前記本発明に係るプレート式熱交換器において、前記隣り合っている第1往路から第1復路に熱媒体を誘導する折返路が複数設けられ、該折返路ごとに連通する流出孔及び流入孔が複数設けられていることが好ましい。
【0027】
このプレート式熱交換器によれば、複数の流出孔及び流入孔が伝熱プレートに設けられ、各流出孔と流入孔との間に折返路が設けられることにより、第1往路内に流入した熱媒体は、各流出孔の方に分散して流れ、片寄って流れないようにすることができる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明によれば、第1往路と第1復路とに区分された第1流路、そして、供給路、折返路、回収路に区分された連通路を備えたプレート式熱交換器が提供されることにより、熱交換された熱媒体が連通路内で合流したり、再び熱媒体として使用されたりすることがないため、装置が大型化することなく、熱媒体が各第1流路内に効果的に流れ、熱媒体の入口温度と被熱交換媒体の出口温度が接近しないようにすることができる。
【0029】
また、請求項2に記載の発明によれば、第1往路を形成する伝熱プレートは、高伝熱係数−高圧力損失の特性を有し、前第1復路を形成する伝熱プレートは、低伝熱係数−低圧力損失の特性を有していることにより、適切なプレート特性を得ることができ、装置が大型化しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るプレート式熱交換器の第1の実施形態であって、要部を示す概略分解斜視図である。
【図2】本発明に係るプレート式熱交換器の第1の実施形態であって、流れの概念を示す説明図である。
【図3】本発明に係るプレート式熱交換器の第2の実施形態であって、流れの概念を示す説明図である。
【図4】本発明に係るプレート式熱交換器の第3の実施形態であって、要部を示す概略分解斜視図である。
【図5】従来のプレート式熱交換器の要部を示す概略分解斜視図である。
【図6】図5と異なる従来のプレート式熱交換器の要部を示す概略分解斜視図である。
【図7】図6に示したプレート式熱交換器の流れの概念を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係るプレート式熱交換器の第1ないし第3の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。このプレート式熱交換器は、熱媒体として冷媒Rを使用し、被熱交換媒体として被冷却流体Hを使用する蒸発器として説明する。なお、以下の説明では、適宜、上下左右と表現するが、これは、図面での場合であって、実際に使用などする場合において、各位置が図面と異なる場合があることはいうまでもない。
【0032】
第1の実施形態のプレート式熱交換器は、図1及び図2に示すように、複数の長方形状の伝熱プレート10,20,30,40が鉛直姿勢で積層され、各伝熱プレート10,20,30,40を境にして第1流路1と第2流路2とが交互に形成されている。第1流路1内には冷媒Rが流され、第2流路2内には被冷却流体Hが流されるが、プレート式熱交換器全体として見たときに、図1及び図2において、冷媒Rは左から右方向に流れ、被冷却流体Hは右から左方向に流れる。
【0033】
そして、基本的に、第1流路1は、第1伝熱プレート10と第2伝熱プレート20との間に形成され、第2流路2は、2枚の第1伝熱プレート10,10の間及び2枚の第2伝熱プレート20,20の間に形成される。
【0034】
また、冷媒Rの上流(図面において左)側で最も外側の伝熱プレート(以下、「第3伝熱プレート30」という。)と第1伝熱プレート10との間、及び、冷媒Rの下流(図面において右)側で最も外側の伝熱プレート(以下、「第4伝熱プレート40」という。)と第1伝熱プレート10との間にも第2流路2が形成される。
【0035】
したがって、このプレート式熱交換器は、冷媒Rの上流側から下流方向に、第3伝熱プレート30、第1伝熱プレート10、第2伝熱プレート20、第2伝熱プレート20、第1伝熱プレート10、第1伝熱プレート10、第2伝熱プレート20、第2伝熱プレート20、第1伝熱プレート10というように重ね合わされ、最後に第1伝熱プレート10と第4伝熱プレート40とが重ね合わされる。
【0036】
そして、基本的に、第1伝熱プレート10には、下端左側に冷媒Rの流入孔11、下端右側に冷媒Rの流出孔12、下端中央と上端中央とに被冷却流体Hの通過孔13,14が設けられている。また、基本的に、第2伝熱プレート20には、下端中央に被冷却流体Hの流入孔23、上端中央に冷却流体の流出孔24、下端両側と上端左側とに冷媒Rの通過孔21,22が設けられている。
【0037】
そして、第3伝熱プレート30には、下端左側に冷媒Rの流入孔31、上端中央に被冷却流体Hの流出孔34が設けられている。また、第4伝熱プレート40には、下端右側に冷媒Rの流出孔42、下端中央に被冷却流体Hの流入孔43が設けられている。
【0038】
そして、各伝熱プレート10,20,30,40の間には、第1流路1及び第2流路2を形成するとともに、連通路3,4を設けるガスケット(図示せず)が装着され、又はろう付けされている。
【0039】
そして、このガスケット又はろう付けによって、第1流路1は、冷媒Rを往き方向(図面では上向き)に流す複数の第1往路1aと、冷媒Rを戻り方向(図面では下向き)に流す複数の第1復路1bとに区分され、さらに、冷媒Rが第1流路1間で流れるようにする連通路3は、供給路3a、折返路3b、回収路3cに区分されている。
【0040】
第1往路1aは、第1伝熱プレート10と第2伝熱プレート20の間に形成され、第1復路1bは、第2伝熱プレート20と第1伝熱プレート10との間に形成される。したがって、第1往路1aと第1復路は、第2流路2を挟むように隣り合う。
【0041】
供給路3aは、隣り合っている2枚の第2伝熱プレート20,20の下端左側の通過孔21,21の間を第2流路2から遮断することで、冷媒Rが第2流路2内に流入することなく、また、隣り合っている上流側の第2伝熱プレート20の通過孔21の周囲と下流側の第1伝熱プレート10の流入孔11の周囲とを遮断することで、冷媒Rが第1復路1b内に流入することなく、冷媒Rを各第1往路1a内に流入させる。
【0042】
また、折返路3bは、隣り合っている2枚の第2伝熱プレート20,20の上端左側の通過口22,22の周囲を第2流路2から遮断することで、冷媒Rが第2流路2内に流入しないようにし、かつ、第1伝熱プレート10の上端に孔が形成されていないことによって、冷媒Rは、隣り合っている第1往路1aから第1復路1b内に流入する。
【0043】
また、回収路3cは、隣り合っている2枚の伝熱プレート10,10の流出孔12,12を遮断し、かつ、隣り合っている上流側の第1伝熱プレート10の流出孔12の周囲と下流側の第2伝熱プレート20の通過孔21の周囲を遮断することで、第1復路1b内の冷媒Rを回収し、この回収された冷媒Rが第1往路1aや第2流路2内に流入しないように排出する。
【0044】
なお、第3伝熱プレート30に隣り合っている第1伝熱プレート10には、冷媒Rの流出孔12が設けられていない、又は流出孔12が遮蔽されている。また、第4伝熱プレート40に隣り合っている第1伝熱プレート10には、冷媒Rの流入孔11が設けられていない、又は流入孔11が遮蔽されている。
【0045】
そして、被冷却流体Hが第1復路1b及び第1往路1aに流れることなく第2流路2に流れるようにするための連通孔4は、供給連通路4aと回収連通路4bとに区分されている。
【0046】
供給連通路4aは、第1伝熱プレート10の下端中央の通過孔13の周囲と第2伝熱プレート20の流入孔23の周囲との間を遮断することで、被冷却流体Hを第2流路2内に流入させる。また、回収連通路4bは、第1伝熱プレート10の上端中央の通過孔14の周囲と第2伝熱プレート20の流出孔24の周囲との間を遮断することで、被冷却流体Hを第2径路2内から回収して排出する。
【0047】
第1の実施形態のプレート式熱交換器は、以上のように構成され、次に、動作について説明する。このプレート式熱交換器は、冷媒Rが第3伝熱プレート30の流入孔31から供給路3a内に供給され、被冷却流体Hが第4伝熱プレート40の流入孔から供給連通路4a内に供給されるようにして使用する。
【0048】
冷媒Rは、供給路3a内から第1往路1a内を往き方向(図面において上向き)に流れ、折返路3bを経由して(図面において右向きに流れ)、前記第1往路1aに隣り合っている第1復路1b内を戻り方向(図面において下向き)に流れる。一方、被冷却流体Hは、供給連通路4aから回収連通路4bの方向(図面において上向き)に第2流路2内を全て流れる。
【0049】
第2流路2が第1往路1aと第1復路1bとの間に挟まれていることから、第1伝熱プレート10と第2伝熱プレート20を介して、冷媒Rと被冷却流体Hとが熱交換される。ただし、冷媒Rと被冷却流体Hは、同一方向に流れる部位(並行流)と反対方向に流れる部位(対向流)とが設けられる。
【0050】
冷媒Rは、第1往路1a側で被冷却流体Hと並行流となることによって、第1径路1aの上流側で温度が上昇したとしても、被冷却流体Hとの温度差を十分に確保することができる。また、冷媒Rは、第1復路1b側で被冷却流体Hと対向流となることによって、温度差を確保することができる。したがって、このプレート式熱交換器は、冷媒Rを完全に蒸発させた上で、過熱度を得ることができる。
【0051】
そして、第1復路1b内を戻り方向に流れ、熱交換された冷媒Rは、回収路3c内を流れ下流側の第1往路1a内を流れることなく、第4伝熱プレート40の流出孔42からガス化して排出される。一方、熱交換された被冷却流体Hは、第2流路2内から回収連通路4bの方向に流れ、第3伝熱プレート30の流出孔34から排出される。
【0052】
したがって、このプレート式熱交換器は、冷媒Rが第1復路1b内を高速で流れても、圧力損失が小さいため、温度上昇が小さくなり、このことによって、熱交換が緩慢になることもない。また、熱媒体Rは、単一成分冷媒、共沸混合冷媒、疑似共沸混合冷媒であっても、好適に使用することができる。
【0053】
次に、本発明に係るプレート式熱交換器の第2の実施形態について図3を参照しながら説明する。このプレート式熱交換器は、第1往路1aを形成する伝熱プレートが高伝熱係数−高圧力損失の特性を有し、第1復路1bを形成する伝熱プレートが低伝熱係数−低圧力損失の特性を有することを特徴としている。したがって、第2流路2が高伝熱係数−高圧力損失と低伝熱係数−低圧力損失のプレート10,20の間に形成され、結局、このプレート式熱交換器の流路1,2は、3種類の特性をもつ。
【0054】
第2実施形態では、第1往路1aを形成する伝熱プレート10,20が高伝熱係数−高圧力損失の特性を有し、第2流路2が高伝熱係数−高圧力損失と低伝熱係数−低圧力損失のプレート10,20の間に形成されていることから、冷媒Rは、第1往路1a内を低速で流れても被冷却流体Hと十分に熱交換することができ、また、第1復路1bを形成する伝熱プレートが低伝熱係数−低圧力損失の特性を有していることから、冷媒Rは、第1復路1b内を高速で流れても圧力損失は大きくならない。
【0055】
なお、伝熱プレートの表面にヘリンボンパターンの凸条と凹条が形成されている場合は、凸条・凹条の方向と伝熱プレートの上辺・下辺(短辺)とのなす角度が小さい波形(ヘ字状)よりも大きい波形(Λ字状)の方が低圧力損失の特性を持たせることができる。したがって、第1往路1aを形成する伝熱プレート10,20は、ヘ字状の凸条と凹条を形成したものとし、第1復路1bを形成する伝熱プレート20,10は、Λ字状の凸条と凹条を形成したものを使用してもよい。
【0056】
次に、本発明に係るプレート式熱交換器の第3の実施形態について図4を参照しながら説明する。このプレート式熱交換器は、隣り合っている第1往路1aから第1復路1bに冷媒Rを誘導する折返路3bが複数設けられ、この折返路3bごとに連通する複数(図面では2個)の流出孔22,22を第2伝熱プレート20に形成したことを特徴としている。したがって、このプレート式熱交換器には、複数本(図面では2本)の折返路3b,3bが設けられる。
【0057】
このプレート式熱交換器は、第2伝熱プレート20に複数の流出孔22,22が設けられることで、冷媒Rが第1往路1a内を片寄ることなく分散して流れるものとすることができる。また、折返路3bでの冷媒Rの流れ抵抗が1本の折返路3bの場合よりも小さくなるため、第1往路1aを流れた冷媒Rは、スムーズに第2復路を流れるようなる。したがって、このプレート式熱交換器は、折返路3bが1本の場合よりも、冷媒Rを多く流すことができ、熱交換の効率を高めることができる。
【0058】
なお、本発明は、前記第1ないし第3の実施形態に限定することなく種々変更することができる。例えば、本発明は、蒸発器に限定することなく、熱媒体は、冷媒Rでなく油などを使用してもよい。また、前記実施形態で説明した上下左右の位置は、図面に即した説明であって、実際の使用に際して任意の位置にすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1………第1流路
1a……第1往路
1b……第1復路
2………第2流路
3………連通路
3a……供給路
3b……折返路
3c……回収路
4………連通路
4a……供給連通路
4b……回収連通路
10……伝熱プレート
11……流入孔
12……流出孔
13……通過孔
14……通過孔
20……伝熱プレート
21……通過孔
22……通過孔
23……流入孔
24……流出孔
30……伝熱プレート
31……流入孔
34……流出孔
40……伝熱プレート
42……流出孔
43……流入孔
H………被熱交換媒体(被冷却流体)
R………熱媒体(冷媒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の伝熱プレートのそれぞれを境にして第1流路と第2流路とが交互に形成され、各伝熱プレートに流入孔、流出孔、通過孔の全て又は一部が形成され、熱媒体が第2流路内に流入することなく第1流路間で流れるように前記流入孔又は流出孔を連通させる連通路と、被熱交換媒体が第1流路内に流入することなく第2流路内で流れるように前記流入孔又は流出孔を連通させる連通路とが設けられたプレート式熱交換器において、
前記第1流路は、熱媒体が往き方向に流れる複数の第1往路と、熱媒体が戻り方向に流れる複数の第1復路とに区分され、前記第1流路間を連通させる連通路は、熱媒体を各第1往路に流入させる供給路と、前記第2流路を挟んで隣り合っている第1往路から第1復路に熱媒体を誘導する折返路と、第1復路内の熱媒体を回収して各第1往路に流入させることなく排出する回収路とに区分されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記第1往路を形成する伝熱プレートは、高伝熱係数−高圧力損失の特性を有し、前記第1復路を形成する伝熱プレートは、低伝熱係数−低圧力損失の特性を有していることを特徴とする請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記隣り合っている第1往路から第1復路に熱媒体を誘導する折返路が複数設けられ、該折返路ごとに連通する流出孔及び流入孔が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229880(P2012−229880A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99066(P2011−99066)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)