プレーナ型アクチュエータ及びその製造方法
【課題】駆動の安定性及びハンドリング性を向上させたプレーナ型アクチュエータ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】枠状の固定部4と、固定部4の内側に形成されるトーションバー5a,5a、5b,5bと、各トーションバーを介して固定部4に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部6a,6bとを第1半導体基板7で一体形成して備えたアクチュエータ部2と、第2半導体基板10で形成され固定部4介してアクチュエータ部2を支持する支持部3とを有し、第1半導体基板7として、少なくとも各トーションバーに対応する部位に各トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部9a,9bが形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータ1において、第2半導体基板10で形成された支持部3を、固定部4と異なる形状に形成する。
【解決手段】枠状の固定部4と、固定部4の内側に形成されるトーションバー5a,5a、5b,5bと、各トーションバーを介して固定部4に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部6a,6bとを第1半導体基板7で一体形成して備えたアクチュエータ部2と、第2半導体基板10で形成され固定部4介してアクチュエータ部2を支持する支持部3とを有し、第1半導体基板7として、少なくとも各トーションバーに対応する部位に各トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部9a,9bが形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータ1において、第2半導体基板10で形成された支持部3を、固定部4と異なる形状に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部を第1半導体基板で形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され固定部を介してアクチュエータ部を支持する支持部とを有するプレーナ型アクチュエータ及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部と、この固定部の内側に形成されるトーションバーと、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部を有したプレーナ型アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。このプレーナ型アクチュエータは、駆動手段として、駆動コイルと静磁界発生手段を備え、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を回動させる構成である。このようなプレーナ型アクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【0003】
このようなプレーナ型アクチュエータとしては、枠状の固定部と、この固定部の内側に形成されるトーションバーと、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され固定部を介してアクチュエータ部を支持する支持部とを有し、第1半導体基板として、少なくともトーションバーに対応する部位にトーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したものが本願の出願人によって提案されている(特許文献2参照)。この種のプレーナ型アクチュエータは、可動部の回動を妨げないように支持部を形成する必要があるため、支持部は枠状に形成された固定部と同形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2722314号
【特許文献2】特開2009−062295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のプレーナ型アクチュエータにおいては、アクチュエータ部の駆動の安定性や、プレーナ型アクチュエータを実装基板へ実装するときのハンドリング性等を考慮した設計が求められており、支持部の形状を工夫することで、駆動の安定性やハンドリング性を向上させることができると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に着目し、支持部の形状を工夫して駆動の安定性やハンドリング性を向上させたプレーナ型アクチュエータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によるプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、該トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、前記第2半導体基板で形成された前記支持部を、前記固定部と異なる形状に形成する。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項5に係る本発明によるプレーナ型アクチュエータの製造方法は、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、前記第1半導体基板の裏面に、第2半導体基板を貼り合わせる工程と、前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、前記第2半導体基板の裏面をパターニングして、前記固定部と異なる形状になるようにエッチングし、前記支持部以外の部分を除去し、前記支持部を形成する工程と、を備える。
【0009】
また、上記目的を達成するために、請求項8に係る本発明によるプレーナ型アクチュエータの製造方法は、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、前記第2半導体基板の表面側から、前記可動部の回動を許容する溝部を形成するようにエッチングして、前記支持部を形成する工程と、前記第1半導体基板の裏面に、前記第2半導体基板を貼り合わせる工程と、前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるプレーナ型アクチュエータによれば、支持部を固定部と異なる形状に形成することで、具体的には、例えば、この支持部の枠外面が固定部の枠外面と略面一でかつ支持部の枠幅が固定部の枠幅より幅広になるように支持部を枠状に形成したり、第2半導体基板として可動部の回動を許容する溝部が予め形成されたキャビティー基板を用いて支持部を形成したりすることで、支持部の強度を高めることができるため、駆動の安定性やハンドリング性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の上面図である。
【図2】図1に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【図3】キャビティー基板からなる第1半導体基板の上面図である。
【図4】上記第1実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法を説明する製造工程図である。
【図5】図4に続く製造工程図である。
【図6】本発明によるプレーナ型アクチュエータの第2実施形態の断面図である。
【図7】キャビティー基板からなる第2半導体基板の上面図である。
【図8】上記第2実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法を説明する製造工程図である。
【図9】図8に続く製造工程図である。
【図10】上記第2実施形態におけるプレーナ型アクチュエータの別の構成例を示す図で、の上面図である。
【図11】図10に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【図12】上記第2実施形態におけるプレーナ型アクチュエータのさらに別の構成例を示す図で、の上面図である。
【図13】図12に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるプレーナ型アクチュエータの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の上面図であり、図2は、図1のA−O−B線に沿った断面図である。
図1及び図2において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示省略の光源から光ビームを直交する2軸方向に偏向する二次元駆動の電磁駆動タイプのアクチュエータであり、アクチュエータ部2と支持部3とを備えて構成されている。
【0013】
上記アクチュエータ部2は、固定部4と、外側トーションバー5a,5aと、外側可動部6aと、内側トーションバー5b,5bと、内側可動部6bとを単結晶シリコンからなる第1半導体基板7で一体形成して備えたものである。各可動部6a,6bは、通電により磁界を発生する駆動コイル8と後述する静磁界発生手段(図示省略)とで構成される駆動手段により駆動される。本実施形態において、アクチュエータ部2は、第1半導体基板7として、図2及び図3に示すように、外側トーションバー5a,5aに対応する各部位に外側トーションバー5a,5aに応じた厚さが残るように予め断面が台形状の各溝部9aが形成されると共に、内側トーションバー5b,5b及び内側可動部6bに対応する部位を含む部位に内側トーションバー5b,5bに応じた厚さが残るように予め断面が台形状の溝部9bが形成されたキャビティー基板を用いて形成されたものである。後述するように、このキャビティー基板からなる第1半導体基板7を、支持部3を形成する第2半導体基板10に保護層11を介して接合し、その後、第1半導体基板7をエッチングして固定部4、各トーションバー5a,5a、5b,5b及び各可動部6a,6b以外の部分を除去し、図2に示すアクチュエータ部2が形成される。保護層11は、シリコンの酸化膜等から成る層であり、第1半導体基板7及び第2半導体基板10のエッチング時のストップ層となる。また、アクチュエータ部2は支持部3と反対側の面にシリコンの酸化膜等の保護層12が被覆されている。この保護層12は、駆動コイル8と第1半導体基板7間の絶縁層となる。
【0014】
上記固定部4は、図1に示すように、枠状に形成されている。この固定部4の内側には、一対の外側トーションバー5a,5aを介して枠状の外側可動部6aが回動可能に軸支されている。そして、この外側可動部6aの内側には、外側トーションバー5a,5aと軸方向が直角な内側トーションバー5b,5bを介して内側可動部6bが回動可能に軸支されている。また、外側可動部6aの支持部3と反対側の面には、図示省略する光源からの光ビームを反射する反射ミラー13が設けられている。
【0015】
上記駆動コイル8は、通電により磁界を発生するものである。この通電により発生する磁界と、外側可動部6a及び内側可動部6bを挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生手段(図示省略)による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して外側及び内側可動部6a,6bを回動させている。駆動コイル8は、本実施形態においては、外側可動部6aの支持部3とは反対側の面に敷設され、外側可動部6a及び内側可動部6bの駆動用の電気信号を重畳して供給可能に構成されている。図示省略するが、駆動コイル8の両端部は、一対の外側トーションバー5a,5aを経由して固定部4に設けた電極端子に接続され、同じく図示省略の外部の駆動回路とワイヤボンディング等の手段で電気的に接続されている。外部の駆動回路は、外側可動部6aの共振周波数で変化する電気信号と内側可動部6bの共振周波数で変化する電気信号とを重畳させた電気信号を供給するように構成する。これにより、駆動コイル8を内側可動部6bに別に設けることなく、内側可動部6bを回動させることができる。このように、内側可動部6bの周縁部等に駆動コイルを設ける必要がないため、内側可動部6bの表面全面に反射ミラー13を設けることができる。
【0016】
前記支持部3は、固定部4を支持するものであり、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10で形成され、固定部4と異なる形状に形成されている。一般的に、支持部3は、可能な限り強度が高い方が、アクチュエータ部2の駆動の安定性やプレーナ型アクチュエータを実装基板へ実装するときのハンドリング性を高めることができる。本実施形態において、支持部3は、図2に示すように、枠状に形成され、この支持部3の枠幅が固定部4の枠幅より幅広に形成されている。これにより、支持部3の強度を高めている。また、本実施形態において、支持部3は、図2に示すように、枠の外面が固定部4の枠外面と略面一になるように形成されている。このようにして、固定部4の枠の外側方向に支持部3をサイズアップせずに強度を高めることができる。
【0017】
次に、このように構成されたプレーナ型アクチュエータ1の動作を、図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
まず、駆動コイル8に外側可動部6aの共振周波数で変化する電気信号と内側可動部6bの共振周波数で変化する電気信号とを重畳させた電気信号(電流)を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、このローレンツ力により外側可動部6a及び内側可動部6bがそれぞれ回動される。外側可動部6a及び内側可動部6bは、それぞれの共振周波数に基づく周期で揺動し、反射ミラー13により光ビームを偏向走査できる。外側可動部6a及び内側可動部6bを回動させるための回転力は、駆動コイル8に流す駆動電流値に比例するので、駆動コイル8に供給する駆動電流値を制御することで、外側可動部6a及び内側可動部6bの振れ角(光ビームの偏向角度)を制御することができる。
【0019】
このような構成により、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1によれば、支持部3を、枠状に形成すると共に、その枠幅が固定部4の枠幅より幅広に形成することで、支持部3の強度を高めることができるため、駆動の安定性及びハンドリング性を向上させることができる。さらに、支持部3を枠の外面が固定部4の枠外面と略面一になるように形成することで、サイズアップせずに、駆動の安定性及びハンドリング性を向上させることができる。
【0020】
次に、上記第1実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造方法を詳細に説明する。
図4は、第1実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造工程(A)〜(D)を示すものであり、図5は、図4に続く製造工程(E)〜(G)を示すものである。尚、図4及び図5は、各製造工程における、図1のA−O−B線に沿った断面に対応する図である。
【0021】
本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の製造方法は、半導体基板7’の両面に保護層11,12を形成する工程(A)と、第1半導体基板7としてのキャビティー基板を形成する工程(B)と、第1半導体基板7に再度保護層11を形成する工程(C)と、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる工程(D)と、第1半導体基板7に駆動コイル8を形成する工程(E)と、第1半導体基板7をエッチングしてアクチュエータ部2を形成する工程(F)と、第2半導体基板10をエッチングして支持部3を形成する工程(G)と、を備えて構成される。
以下に本実施形態における上記各工程について説明する。
【0022】
工程(A)では、単結晶シリコンからなる半導体基板7’の両面に、保護層11,12を形成する。保護層11,12としては、本実施形態においては、酸化炉などを用いてシリコンの酸化膜を形成する。
【0023】
工程(B)では、半導体基板7’の裏面をパターニング後、この裏面側からウェットエッチングして、図4(B)及び図3に示すように、外側トーションバー5a,5aに対応する各部位に外側トーションバー5a,5aに応じた厚さが残るように除去し、断面が台形状の溝部9aを形成すると共に、内側トーションバー5b,5b及び内側可動部6bに対応する部位を含む部位に内側トーションバー5b,5bに応じた厚さが残るように除去し、断面が台形状の溝部9bを形成する。このようにして、溝部9a,9bが形成されたキャビティー基板からなる第1半導体基板7を形成する。ここで、ウェットエッチングの際、エッチング時間を精度よく管理してエッチング深さを精度よく管理することにより、ドライエッチングと比較して、各トーションバー5a,5a、5b,5bの厚さ精度を高めることができる。なお、図4及び図5におけるエッチングは、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングであってもよい。この場合、溝部9a,9bの断面は四角状になる。
【0024】
工程(C)では、第1半導体基板7の溝部9a,9bの内面に再度保護層11を形成する。
【0025】
工程(D)では、第1半導体基板7の裏面(溝部9a,9b形成側)に、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10を貼り合わせる。ここで、第1半導体基板7及び第2半導体基板10の加工(工程(F)及び工程(G))は、通常減圧した状態で行われるため、第1半導体基板7の溝部9a,9bに残留した空気が減圧下で膨張して、第1半導体基板7と第2半導体基板10との貼着面を剥離させたりしてしまうおそれがある。そのため、第1半導体基板7のエッチング(工程(B))を行う際に、図示省略するが予め空気抜き用の連通孔を形成するようにしたり、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる前に第1半導体基板7の溝部9a,9b内を充填材で埋めるようにしたりするとよい。
【0026】
工程(E)では、第1半導体基板7の表面に配線材料をスパッタリングした後、パターニングして不要な部分をエッチングし、図示省略するが、駆動コイル8を外側可動部6aに形成する。
【0027】
工程(F)では、第1半導体基板7の表面をパターニングし、保護層12および第1半導体基板7をエッチングして固定部4、外側トーションバー5a,5a、内側トーションバー5b,5b、外側可動部6a及び内側可動部6b以外の部分を除去し、アクチュエータ部2を形成する。この際、図5(F)に示すように、エッチングは、第1半導体基板7の下面及び溝部の内面に形成された保護層11に到達するまで行われる。
【0028】
工程(G)では、第2半導体基板10の裏面(第1半導体基板7と反対側)をパターニングして、支持部3が枠状で、その枠外面が固定部4の枠外面と略面一で、かつ、その枠幅が固定部4の枠幅より幅広になるように、第2半導体基板10をエッチングして支持部3を形成する。この際、第2半導体基板10に接する部分の保護層11は、エッチング時のストップ層として機能する。一方、第1半導体基板7の溝部9a,9bの内面に形成された保護層11は、このエッチング時にトーションバー等の裏面が不必要に削られ表面の荒れが発生することを確実に防止する。そして、第1半導体基板10と第2半導体基板10の間にある保護層11をエッチングし、固定部4以外の部分を除去する。最後に、第1半導体基板7の表面の反射ミラーを形成する箇所以外をマスキング治具等によりマスキングし、反射ミラーの材料をスパッタリングし、反射ミラー13を形成することにより、図1及び図2に示すプレーナ型アクチュエータ1が形成される。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態によるプレーナ型アクチュエータについて説明する。
図6は、本発明によるプレーナ型アクチュエータ1の第2実施形態の断面図であり、図2と同様にA−O−B線に沿った断面図である。尚、第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の上面図は図1と同じである。図1に示す第1実施形態と同一の構成については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。また、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の動作は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0030】
本実施形態においては、支持部3を形成する第2半導体基板10は、図6及び図7に示すように、外側可動部6a及び内側可動部6bの回動を許容する回動許容溝部9cが予め形成されたキャビティー基板であり、回動許容溝部9cの断面が台形状に形成されている。この第2半導体基板10は、保護層11を介して第1半導体基板7に接合されている。
【0031】
このような構成により、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1によれば、支持部3を、各可動部6a,6bの回動を許容する回動許容溝部9cが形成されたキャビティー基板とすることで、支持部3の強度を第1実施形態の枠状の支持部と比べてさらに高めることができるため、ハンドリング性及び駆動の安定性をさらに向上させることができる。さらに、本実施形態のように、上記回動許容溝部9cが形成された支持部3は、回動許容溝部9c内にエアだまり領域を形成することができるため、外側可動部6a及び内側可動部6bが回動する際に、エアダンパーとして機能する。したがって、外側可動部6a及び内側可動部6bのQ値が高く、駆動制御が難しい場合には、本実施形態の支持部3の構造を採用することにより、支持部3をエアダンパーとして機能させることができるため、外側可動部6a及び内側可動部6bのQ値を下げることができ、駆動制御が容易になる。また、例えば、一般的に一枚の半導体基板上に複数のアクチュエータチップが形成され、洗浄用の水等を噴霧しながらダイシングして、単一のアクチュエータチップを形成するが、本実施形態の支持部3の構造を採用し、支持部3側から洗浄用の水等を噴霧してダイシングすることにより、アクチュエータ部2の破損等を心配することなくダイシングすることが可能となる。なお、本実施形態においては、第2半導体基板10の上面の形状は、図6及び図7に示すように、固定部4の下面より広くなるように形成した場合で説明したが、これに限らず、固定部4の下面と同じ形状又は固定部の下面より狭く形成してもよい。この場合であっても、支持部3はアクチュエータ部2の裏面を覆うように形成されているため、単なる枠状の従来の支持部よりも強度を高めることができる。
【0032】
次に、上記第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造方法を詳細に説明する。
図8は、第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造工程(A)〜(D)を示すものであり、図9は、図8に続く製造工程(E)及び(H)を示すものである。尚、図8及び図9は、各製造工程における、図1のA−O−B線に沿った断面に対応する図である。尚、第1実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法と同一の構成については説明を簡略化する。
【0033】
本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の製造方法は、半導体基板7’に保護層12を形成する工程(A)と、第1半導体基板7としてのキャビティー基板を形成する工程(B)と、第2半導体基板10に保護層11を形成する工程(C)と、第2半導体基板12をエッチングして支持部を形成する工程(D)と、第2半導体基板10に再度保護層11を形成する工程(E)と、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる工程(F)と、第1半導体基板7に駆動コイル8を形成する工程(G)と、第1半導体基板7をエッチングしてアクチュエータ部2を形成する工程(H)と、を備えて構成される。
以下に本実施形態における上記各工程について説明する。
【0034】
工程(A)では、単結晶シリコンからなる半導体基板7’の表面に保護層12を形成する。そして、工程(B)では、第1実施形態の工程(B)と同様に、半導体基板7’をパターニング及びウェットエッチングして、溝部9a及び溝部9bが形成されたキャビティー基板からなる第1半導体基板7を形成する。
【0035】
工程(C)では、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10の表面に、保護層11を形成する。工程(D)では、第2半導体基板10の表面をパターニング後、ウェットエッチングして、外側可動部6a及び内側可動部6bの回動を許容する断面が台形状の回動許容溝部9cを形成し、支持部3を形成する。なお、このエッチングは、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングであってもよい。この場合、回動許容溝部9cの断面は四角状になる。
【0036】
工程(E)では、第2半導体基板10の回動許容溝部9cの内面に再度保護層11を形成する。
【0037】
工程(F)では、第1半導体基板7の裏面側に第2半導体基板10を貼り合わせる。この際、溝部9a,9b内と同様に、第2半導体基板10の回動許容溝部9c内を充填材で埋めるようにしてもよい。
【0038】
工程(G)では、図示省略するが、配線材料をスパッタリングした後パターニング及びエッチングし、駆動コイル8を外側可動部6aに形成する。
【0039】
工程(H)では、保護層12および第1半導体基板7をエッチングして固定部4、外側トーションバー5a,5a、内側トーションバー5b,5b、外側可動部6a及び内側可動部6b以外の部分を除去し、アクチュエータ部2を形成する。この際、第1半導体基板7に接する部分の保護層11は、エッチング時のストップ層として機能し、第2半導体基板10の回動許容溝部9cの内面に形成された保護層11は、このエッチング時に回動許容溝部9cの内面が不必要に削られ表面の荒れが発生することを確実に防止する。そして、第1半導体基板7と第2半導体基板10の間にある保護層11をエッチングし、固定部4以外の部分を除去する。最後に、反射ミラー13を形成することにより、図6に示すプレーナ型アクチュエータ1が形成される。
【0040】
なお、上記第2実施形態において、支持部3を形成する第2半導体基板10は、図6に示すように、単にアクチュエータ部2に対して略凹形状に形成されたものとして説明したが、これに限らず、別の構成例を示す図10及び図11に示すように、回動許容溝部9c内の各可動部6a,6bの回動を妨げない箇所に凸部9dが残るように予め形成されたものとしてもよい。これにより、凸部9dがリブとして機能し、支持部3の強度を図6に示す支持部と比べてさらに高めることができるため、駆動の安定性及びハンドリング性をさらに向上させることができる。
【0041】
また、上記第2実施形態において、固定部4は、図1及び図6に示したように、枠状に形成した場合で説明したが、これに限らず、さらに別の構成例を示す図12、及び図12のA−O−B線に沿った断面を表した図13に示すように、固定部4は、図1における一対の外側トーションバー5a,5aの軸方向と平行な2辺を除去した形状であってもよい。この場合、支持部3についても、図12及び図13に示すように、その上面の形状を固定部4に対応した形状に形成する。これらにより、一枚の半導体基板により多くのアクチュエータチップを形成することができる。また、静磁界発生手段を外側可動部6a及び内側可動部6bにより近づけることができるので、駆動力を向上させることができ、さらには、プレーナ型アクチュエータの小型化を実現することができる。なお、図12及び図13に示す構成においても、図10及び図11に示したように、回動許容溝部9c内の各可動部6a,6bの回動を妨げない箇所に凸部9dが残るように予め形成されたものとしてもよい。
【0042】
また、上記第1及び第2実施形態において、アクチュエータ部2は、各トーションバー5a,5a、5b,5bに対応する部位に加えて、内側可動部6bに対応する部位にも溝部が形成された例で説明したが、内側可動部6bの部位を外側可動部6aや固定部4と同一の厚みにしてもよい場合は、内側可動部6bに対応する部位に溝部を形成しなくてもよい。溝部は、少なくとも各トーションバー5a,5a、5b,5bに対応する部位に各トーションバー5a,5a、5b,5bに応じた厚さが残るように形成されていればよく、各トーションバー5a,5a、5b,5b以外の部位については、アクチュエータの設計仕様により適宜その形成位置を決めることができる。
【0043】
また、上記第1及び第2実施形態において、駆動コイル8を外側可動部6aにのみ設けた場合で説明したが、これに限らず、図示省略するが、従来と同様に外側可動部6aに外側駆動コイルを設け、内側可動部6bに内側駆動コイルを設けて、各駆動コイルに対応する可動部の共振周波数で変化する交流電流をそれぞれ供給して揺動させてもよい。また、このように各可動部に駆動コイルを設ける場合は、各駆動コイルに直流電流を供給して、供給したそれぞれの駆動電流値に応じた回動位置で外側可動部6a及び内側可動部6bを停止させ、反射ミラー13を所望の方向に向けて、光ビームをその方向に偏向させる構成としてもよい。光スキャナの場合を例として作用を説明したが、本発明は光スキャナ以外にも適用できるものである。さらに、上記第1及び第2本実施形態においては、反射ミラー13を形成した場合で説明したが、反射ミラー13を設けなくてもよい。
【0044】
また、上記第1及び第2実施形態においては、二次元アクチュエータを製造する場合について説明したが、本発明は一次元アクチュエータを製造する場合にも適用できるものである。また、本発明は、上述した電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータだけでなく、静電駆動タイプ、圧電駆動タイプ等、あらゆるプレーナ型アクチュエータに適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 アクチュエータ部
3 支持部
4 固定部
5a,5a 外側トーションバー
5b,5b 内側トーションバー
6a 外側可動部
6b 内側可動部
7 第1半導体基板
8 駆動コイル(駆動手段)
9a,9b 溝部
9c 溝部(回動許容溝部)
9d 凸部
10 第2半導体基板
11 保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部を第1半導体基板で形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され固定部を介してアクチュエータ部を支持する支持部とを有するプレーナ型アクチュエータ及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部と、この固定部の内側に形成されるトーションバーと、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部を有したプレーナ型アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。このプレーナ型アクチュエータは、駆動手段として、駆動コイルと静磁界発生手段を備え、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を回動させる構成である。このようなプレーナ型アクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【0003】
このようなプレーナ型アクチュエータとしては、枠状の固定部と、この固定部の内側に形成されるトーションバーと、トーションバーを介して固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され固定部を介してアクチュエータ部を支持する支持部とを有し、第1半導体基板として、少なくともトーションバーに対応する部位にトーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したものが本願の出願人によって提案されている(特許文献2参照)。この種のプレーナ型アクチュエータは、可動部の回動を妨げないように支持部を形成する必要があるため、支持部は枠状に形成された固定部と同形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2722314号
【特許文献2】特開2009−062295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のプレーナ型アクチュエータにおいては、アクチュエータ部の駆動の安定性や、プレーナ型アクチュエータを実装基板へ実装するときのハンドリング性等を考慮した設計が求められており、支持部の形状を工夫することで、駆動の安定性やハンドリング性を向上させることができると考えられる。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点に着目し、支持部の形状を工夫して駆動の安定性やハンドリング性を向上させたプレーナ型アクチュエータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によるプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、該トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、前記第2半導体基板で形成された前記支持部を、前記固定部と異なる形状に形成する。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項5に係る本発明によるプレーナ型アクチュエータの製造方法は、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、前記第1半導体基板の裏面に、第2半導体基板を貼り合わせる工程と、前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、前記第2半導体基板の裏面をパターニングして、前記固定部と異なる形状になるようにエッチングし、前記支持部以外の部分を除去し、前記支持部を形成する工程と、を備える。
【0009】
また、上記目的を達成するために、請求項8に係る本発明によるプレーナ型アクチュエータの製造方法は、枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、前記第2半導体基板の表面側から、前記可動部の回動を許容する溝部を形成するようにエッチングして、前記支持部を形成する工程と、前記第1半導体基板の裏面に、前記第2半導体基板を貼り合わせる工程と、前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるプレーナ型アクチュエータによれば、支持部を固定部と異なる形状に形成することで、具体的には、例えば、この支持部の枠外面が固定部の枠外面と略面一でかつ支持部の枠幅が固定部の枠幅より幅広になるように支持部を枠状に形成したり、第2半導体基板として可動部の回動を許容する溝部が予め形成されたキャビティー基板を用いて支持部を形成したりすることで、支持部の強度を高めることができるため、駆動の安定性やハンドリング性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の上面図である。
【図2】図1に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【図3】キャビティー基板からなる第1半導体基板の上面図である。
【図4】上記第1実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法を説明する製造工程図である。
【図5】図4に続く製造工程図である。
【図6】本発明によるプレーナ型アクチュエータの第2実施形態の断面図である。
【図7】キャビティー基板からなる第2半導体基板の上面図である。
【図8】上記第2実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法を説明する製造工程図である。
【図9】図8に続く製造工程図である。
【図10】上記第2実施形態におけるプレーナ型アクチュエータの別の構成例を示す図で、の上面図である。
【図11】図10に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【図12】上記第2実施形態におけるプレーナ型アクチュエータのさらに別の構成例を示す図で、の上面図である。
【図13】図12に示すプレーナ型アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるプレーナ型アクチュエータの実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明によるプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の上面図であり、図2は、図1のA−O−B線に沿った断面図である。
図1及び図2において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示省略の光源から光ビームを直交する2軸方向に偏向する二次元駆動の電磁駆動タイプのアクチュエータであり、アクチュエータ部2と支持部3とを備えて構成されている。
【0013】
上記アクチュエータ部2は、固定部4と、外側トーションバー5a,5aと、外側可動部6aと、内側トーションバー5b,5bと、内側可動部6bとを単結晶シリコンからなる第1半導体基板7で一体形成して備えたものである。各可動部6a,6bは、通電により磁界を発生する駆動コイル8と後述する静磁界発生手段(図示省略)とで構成される駆動手段により駆動される。本実施形態において、アクチュエータ部2は、第1半導体基板7として、図2及び図3に示すように、外側トーションバー5a,5aに対応する各部位に外側トーションバー5a,5aに応じた厚さが残るように予め断面が台形状の各溝部9aが形成されると共に、内側トーションバー5b,5b及び内側可動部6bに対応する部位を含む部位に内側トーションバー5b,5bに応じた厚さが残るように予め断面が台形状の溝部9bが形成されたキャビティー基板を用いて形成されたものである。後述するように、このキャビティー基板からなる第1半導体基板7を、支持部3を形成する第2半導体基板10に保護層11を介して接合し、その後、第1半導体基板7をエッチングして固定部4、各トーションバー5a,5a、5b,5b及び各可動部6a,6b以外の部分を除去し、図2に示すアクチュエータ部2が形成される。保護層11は、シリコンの酸化膜等から成る層であり、第1半導体基板7及び第2半導体基板10のエッチング時のストップ層となる。また、アクチュエータ部2は支持部3と反対側の面にシリコンの酸化膜等の保護層12が被覆されている。この保護層12は、駆動コイル8と第1半導体基板7間の絶縁層となる。
【0014】
上記固定部4は、図1に示すように、枠状に形成されている。この固定部4の内側には、一対の外側トーションバー5a,5aを介して枠状の外側可動部6aが回動可能に軸支されている。そして、この外側可動部6aの内側には、外側トーションバー5a,5aと軸方向が直角な内側トーションバー5b,5bを介して内側可動部6bが回動可能に軸支されている。また、外側可動部6aの支持部3と反対側の面には、図示省略する光源からの光ビームを反射する反射ミラー13が設けられている。
【0015】
上記駆動コイル8は、通電により磁界を発生するものである。この通電により発生する磁界と、外側可動部6a及び内側可動部6bを挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される二対の静磁界発生手段(図示省略)による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して外側及び内側可動部6a,6bを回動させている。駆動コイル8は、本実施形態においては、外側可動部6aの支持部3とは反対側の面に敷設され、外側可動部6a及び内側可動部6bの駆動用の電気信号を重畳して供給可能に構成されている。図示省略するが、駆動コイル8の両端部は、一対の外側トーションバー5a,5aを経由して固定部4に設けた電極端子に接続され、同じく図示省略の外部の駆動回路とワイヤボンディング等の手段で電気的に接続されている。外部の駆動回路は、外側可動部6aの共振周波数で変化する電気信号と内側可動部6bの共振周波数で変化する電気信号とを重畳させた電気信号を供給するように構成する。これにより、駆動コイル8を内側可動部6bに別に設けることなく、内側可動部6bを回動させることができる。このように、内側可動部6bの周縁部等に駆動コイルを設ける必要がないため、内側可動部6bの表面全面に反射ミラー13を設けることができる。
【0016】
前記支持部3は、固定部4を支持するものであり、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10で形成され、固定部4と異なる形状に形成されている。一般的に、支持部3は、可能な限り強度が高い方が、アクチュエータ部2の駆動の安定性やプレーナ型アクチュエータを実装基板へ実装するときのハンドリング性を高めることができる。本実施形態において、支持部3は、図2に示すように、枠状に形成され、この支持部3の枠幅が固定部4の枠幅より幅広に形成されている。これにより、支持部3の強度を高めている。また、本実施形態において、支持部3は、図2に示すように、枠の外面が固定部4の枠外面と略面一になるように形成されている。このようにして、固定部4の枠の外側方向に支持部3をサイズアップせずに強度を高めることができる。
【0017】
次に、このように構成されたプレーナ型アクチュエータ1の動作を、図1及び図2を参照して説明する。
【0018】
まず、駆動コイル8に外側可動部6aの共振周波数で変化する電気信号と内側可動部6bの共振周波数で変化する電気信号とを重畳させた電気信号(電流)を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、このローレンツ力により外側可動部6a及び内側可動部6bがそれぞれ回動される。外側可動部6a及び内側可動部6bは、それぞれの共振周波数に基づく周期で揺動し、反射ミラー13により光ビームを偏向走査できる。外側可動部6a及び内側可動部6bを回動させるための回転力は、駆動コイル8に流す駆動電流値に比例するので、駆動コイル8に供給する駆動電流値を制御することで、外側可動部6a及び内側可動部6bの振れ角(光ビームの偏向角度)を制御することができる。
【0019】
このような構成により、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1によれば、支持部3を、枠状に形成すると共に、その枠幅が固定部4の枠幅より幅広に形成することで、支持部3の強度を高めることができるため、駆動の安定性及びハンドリング性を向上させることができる。さらに、支持部3を枠の外面が固定部4の枠外面と略面一になるように形成することで、サイズアップせずに、駆動の安定性及びハンドリング性を向上させることができる。
【0020】
次に、上記第1実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造方法を詳細に説明する。
図4は、第1実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造工程(A)〜(D)を示すものであり、図5は、図4に続く製造工程(E)〜(G)を示すものである。尚、図4及び図5は、各製造工程における、図1のA−O−B線に沿った断面に対応する図である。
【0021】
本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の製造方法は、半導体基板7’の両面に保護層11,12を形成する工程(A)と、第1半導体基板7としてのキャビティー基板を形成する工程(B)と、第1半導体基板7に再度保護層11を形成する工程(C)と、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる工程(D)と、第1半導体基板7に駆動コイル8を形成する工程(E)と、第1半導体基板7をエッチングしてアクチュエータ部2を形成する工程(F)と、第2半導体基板10をエッチングして支持部3を形成する工程(G)と、を備えて構成される。
以下に本実施形態における上記各工程について説明する。
【0022】
工程(A)では、単結晶シリコンからなる半導体基板7’の両面に、保護層11,12を形成する。保護層11,12としては、本実施形態においては、酸化炉などを用いてシリコンの酸化膜を形成する。
【0023】
工程(B)では、半導体基板7’の裏面をパターニング後、この裏面側からウェットエッチングして、図4(B)及び図3に示すように、外側トーションバー5a,5aに対応する各部位に外側トーションバー5a,5aに応じた厚さが残るように除去し、断面が台形状の溝部9aを形成すると共に、内側トーションバー5b,5b及び内側可動部6bに対応する部位を含む部位に内側トーションバー5b,5bに応じた厚さが残るように除去し、断面が台形状の溝部9bを形成する。このようにして、溝部9a,9bが形成されたキャビティー基板からなる第1半導体基板7を形成する。ここで、ウェットエッチングの際、エッチング時間を精度よく管理してエッチング深さを精度よく管理することにより、ドライエッチングと比較して、各トーションバー5a,5a、5b,5bの厚さ精度を高めることができる。なお、図4及び図5におけるエッチングは、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングであってもよい。この場合、溝部9a,9bの断面は四角状になる。
【0024】
工程(C)では、第1半導体基板7の溝部9a,9bの内面に再度保護層11を形成する。
【0025】
工程(D)では、第1半導体基板7の裏面(溝部9a,9b形成側)に、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10を貼り合わせる。ここで、第1半導体基板7及び第2半導体基板10の加工(工程(F)及び工程(G))は、通常減圧した状態で行われるため、第1半導体基板7の溝部9a,9bに残留した空気が減圧下で膨張して、第1半導体基板7と第2半導体基板10との貼着面を剥離させたりしてしまうおそれがある。そのため、第1半導体基板7のエッチング(工程(B))を行う際に、図示省略するが予め空気抜き用の連通孔を形成するようにしたり、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる前に第1半導体基板7の溝部9a,9b内を充填材で埋めるようにしたりするとよい。
【0026】
工程(E)では、第1半導体基板7の表面に配線材料をスパッタリングした後、パターニングして不要な部分をエッチングし、図示省略するが、駆動コイル8を外側可動部6aに形成する。
【0027】
工程(F)では、第1半導体基板7の表面をパターニングし、保護層12および第1半導体基板7をエッチングして固定部4、外側トーションバー5a,5a、内側トーションバー5b,5b、外側可動部6a及び内側可動部6b以外の部分を除去し、アクチュエータ部2を形成する。この際、図5(F)に示すように、エッチングは、第1半導体基板7の下面及び溝部の内面に形成された保護層11に到達するまで行われる。
【0028】
工程(G)では、第2半導体基板10の裏面(第1半導体基板7と反対側)をパターニングして、支持部3が枠状で、その枠外面が固定部4の枠外面と略面一で、かつ、その枠幅が固定部4の枠幅より幅広になるように、第2半導体基板10をエッチングして支持部3を形成する。この際、第2半導体基板10に接する部分の保護層11は、エッチング時のストップ層として機能する。一方、第1半導体基板7の溝部9a,9bの内面に形成された保護層11は、このエッチング時にトーションバー等の裏面が不必要に削られ表面の荒れが発生することを確実に防止する。そして、第1半導体基板10と第2半導体基板10の間にある保護層11をエッチングし、固定部4以外の部分を除去する。最後に、第1半導体基板7の表面の反射ミラーを形成する箇所以外をマスキング治具等によりマスキングし、反射ミラーの材料をスパッタリングし、反射ミラー13を形成することにより、図1及び図2に示すプレーナ型アクチュエータ1が形成される。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態によるプレーナ型アクチュエータについて説明する。
図6は、本発明によるプレーナ型アクチュエータ1の第2実施形態の断面図であり、図2と同様にA−O−B線に沿った断面図である。尚、第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の上面図は図1と同じである。図1に示す第1実施形態と同一の構成については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。また、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の動作は、第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0030】
本実施形態においては、支持部3を形成する第2半導体基板10は、図6及び図7に示すように、外側可動部6a及び内側可動部6bの回動を許容する回動許容溝部9cが予め形成されたキャビティー基板であり、回動許容溝部9cの断面が台形状に形成されている。この第2半導体基板10は、保護層11を介して第1半導体基板7に接合されている。
【0031】
このような構成により、本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1によれば、支持部3を、各可動部6a,6bの回動を許容する回動許容溝部9cが形成されたキャビティー基板とすることで、支持部3の強度を第1実施形態の枠状の支持部と比べてさらに高めることができるため、ハンドリング性及び駆動の安定性をさらに向上させることができる。さらに、本実施形態のように、上記回動許容溝部9cが形成された支持部3は、回動許容溝部9c内にエアだまり領域を形成することができるため、外側可動部6a及び内側可動部6bが回動する際に、エアダンパーとして機能する。したがって、外側可動部6a及び内側可動部6bのQ値が高く、駆動制御が難しい場合には、本実施形態の支持部3の構造を採用することにより、支持部3をエアダンパーとして機能させることができるため、外側可動部6a及び内側可動部6bのQ値を下げることができ、駆動制御が容易になる。また、例えば、一般的に一枚の半導体基板上に複数のアクチュエータチップが形成され、洗浄用の水等を噴霧しながらダイシングして、単一のアクチュエータチップを形成するが、本実施形態の支持部3の構造を採用し、支持部3側から洗浄用の水等を噴霧してダイシングすることにより、アクチュエータ部2の破損等を心配することなくダイシングすることが可能となる。なお、本実施形態においては、第2半導体基板10の上面の形状は、図6及び図7に示すように、固定部4の下面より広くなるように形成した場合で説明したが、これに限らず、固定部4の下面と同じ形状又は固定部の下面より狭く形成してもよい。この場合であっても、支持部3はアクチュエータ部2の裏面を覆うように形成されているため、単なる枠状の従来の支持部よりも強度を高めることができる。
【0032】
次に、上記第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造方法を詳細に説明する。
図8は、第2実施形態のプレーナ型アクチュエータ1の製造工程(A)〜(D)を示すものであり、図9は、図8に続く製造工程(E)及び(H)を示すものである。尚、図8及び図9は、各製造工程における、図1のA−O−B線に沿った断面に対応する図である。尚、第1実施形態のプレーナ型アクチュエータの製造方法と同一の構成については説明を簡略化する。
【0033】
本実施形態におけるプレーナ型アクチュエータ1の製造方法は、半導体基板7’に保護層12を形成する工程(A)と、第1半導体基板7としてのキャビティー基板を形成する工程(B)と、第2半導体基板10に保護層11を形成する工程(C)と、第2半導体基板12をエッチングして支持部を形成する工程(D)と、第2半導体基板10に再度保護層11を形成する工程(E)と、第1半導体基板7と第2半導体基板10を貼り合わせる工程(F)と、第1半導体基板7に駆動コイル8を形成する工程(G)と、第1半導体基板7をエッチングしてアクチュエータ部2を形成する工程(H)と、を備えて構成される。
以下に本実施形態における上記各工程について説明する。
【0034】
工程(A)では、単結晶シリコンからなる半導体基板7’の表面に保護層12を形成する。そして、工程(B)では、第1実施形態の工程(B)と同様に、半導体基板7’をパターニング及びウェットエッチングして、溝部9a及び溝部9bが形成されたキャビティー基板からなる第1半導体基板7を形成する。
【0035】
工程(C)では、単結晶シリコンからなる第2半導体基板10の表面に、保護層11を形成する。工程(D)では、第2半導体基板10の表面をパターニング後、ウェットエッチングして、外側可動部6a及び内側可動部6bの回動を許容する断面が台形状の回動許容溝部9cを形成し、支持部3を形成する。なお、このエッチングは、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングであってもよい。この場合、回動許容溝部9cの断面は四角状になる。
【0036】
工程(E)では、第2半導体基板10の回動許容溝部9cの内面に再度保護層11を形成する。
【0037】
工程(F)では、第1半導体基板7の裏面側に第2半導体基板10を貼り合わせる。この際、溝部9a,9b内と同様に、第2半導体基板10の回動許容溝部9c内を充填材で埋めるようにしてもよい。
【0038】
工程(G)では、図示省略するが、配線材料をスパッタリングした後パターニング及びエッチングし、駆動コイル8を外側可動部6aに形成する。
【0039】
工程(H)では、保護層12および第1半導体基板7をエッチングして固定部4、外側トーションバー5a,5a、内側トーションバー5b,5b、外側可動部6a及び内側可動部6b以外の部分を除去し、アクチュエータ部2を形成する。この際、第1半導体基板7に接する部分の保護層11は、エッチング時のストップ層として機能し、第2半導体基板10の回動許容溝部9cの内面に形成された保護層11は、このエッチング時に回動許容溝部9cの内面が不必要に削られ表面の荒れが発生することを確実に防止する。そして、第1半導体基板7と第2半導体基板10の間にある保護層11をエッチングし、固定部4以外の部分を除去する。最後に、反射ミラー13を形成することにより、図6に示すプレーナ型アクチュエータ1が形成される。
【0040】
なお、上記第2実施形態において、支持部3を形成する第2半導体基板10は、図6に示すように、単にアクチュエータ部2に対して略凹形状に形成されたものとして説明したが、これに限らず、別の構成例を示す図10及び図11に示すように、回動許容溝部9c内の各可動部6a,6bの回動を妨げない箇所に凸部9dが残るように予め形成されたものとしてもよい。これにより、凸部9dがリブとして機能し、支持部3の強度を図6に示す支持部と比べてさらに高めることができるため、駆動の安定性及びハンドリング性をさらに向上させることができる。
【0041】
また、上記第2実施形態において、固定部4は、図1及び図6に示したように、枠状に形成した場合で説明したが、これに限らず、さらに別の構成例を示す図12、及び図12のA−O−B線に沿った断面を表した図13に示すように、固定部4は、図1における一対の外側トーションバー5a,5aの軸方向と平行な2辺を除去した形状であってもよい。この場合、支持部3についても、図12及び図13に示すように、その上面の形状を固定部4に対応した形状に形成する。これらにより、一枚の半導体基板により多くのアクチュエータチップを形成することができる。また、静磁界発生手段を外側可動部6a及び内側可動部6bにより近づけることができるので、駆動力を向上させることができ、さらには、プレーナ型アクチュエータの小型化を実現することができる。なお、図12及び図13に示す構成においても、図10及び図11に示したように、回動許容溝部9c内の各可動部6a,6bの回動を妨げない箇所に凸部9dが残るように予め形成されたものとしてもよい。
【0042】
また、上記第1及び第2実施形態において、アクチュエータ部2は、各トーションバー5a,5a、5b,5bに対応する部位に加えて、内側可動部6bに対応する部位にも溝部が形成された例で説明したが、内側可動部6bの部位を外側可動部6aや固定部4と同一の厚みにしてもよい場合は、内側可動部6bに対応する部位に溝部を形成しなくてもよい。溝部は、少なくとも各トーションバー5a,5a、5b,5bに対応する部位に各トーションバー5a,5a、5b,5bに応じた厚さが残るように形成されていればよく、各トーションバー5a,5a、5b,5b以外の部位については、アクチュエータの設計仕様により適宜その形成位置を決めることができる。
【0043】
また、上記第1及び第2実施形態において、駆動コイル8を外側可動部6aにのみ設けた場合で説明したが、これに限らず、図示省略するが、従来と同様に外側可動部6aに外側駆動コイルを設け、内側可動部6bに内側駆動コイルを設けて、各駆動コイルに対応する可動部の共振周波数で変化する交流電流をそれぞれ供給して揺動させてもよい。また、このように各可動部に駆動コイルを設ける場合は、各駆動コイルに直流電流を供給して、供給したそれぞれの駆動電流値に応じた回動位置で外側可動部6a及び内側可動部6bを停止させ、反射ミラー13を所望の方向に向けて、光ビームをその方向に偏向させる構成としてもよい。光スキャナの場合を例として作用を説明したが、本発明は光スキャナ以外にも適用できるものである。さらに、上記第1及び第2本実施形態においては、反射ミラー13を形成した場合で説明したが、反射ミラー13を設けなくてもよい。
【0044】
また、上記第1及び第2実施形態においては、二次元アクチュエータを製造する場合について説明したが、本発明は一次元アクチュエータを製造する場合にも適用できるものである。また、本発明は、上述した電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータだけでなく、静電駆動タイプ、圧電駆動タイプ等、あらゆるプレーナ型アクチュエータに適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 アクチュエータ部
3 支持部
4 固定部
5a,5a 外側トーションバー
5b,5b 内側トーションバー
6a 外側可動部
6b 内側可動部
7 第1半導体基板
8 駆動コイル(駆動手段)
9a,9b 溝部
9c 溝部(回動許容溝部)
9d 凸部
10 第2半導体基板
11 保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、該トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、
前記第2半導体基板で形成された前記支持部を、前記固定部と異なる形状に形成したことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記支持部を枠状に形成する構成とし、該支持部の枠外面が前記固定部の枠外面と略面一で、かつ、該支持部の枠幅が前記固定部の枠幅より幅広になるように、該支持部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2半導体基板は、前記可動部の回動を許容する溝部が予め形成されたキャビティー基板であることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2半導体基板は、前記溝部内の前記可動部の回動を妨げない箇所に凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、
半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、
前記第1半導体基板の裏面に、第2半導体基板を貼り合わせる工程と、
前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、
前記第2半導体基板の裏面をパターニングして、前記固定部と異なる形状になるようにエッチングし、前記支持部以外の部分を除去し、前記支持部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
前記支持部を形成する工程は、前記支持部の枠外面が前記固定部の枠外面と略面一で、かつ、当該支持部の枠幅が前記固定部の枠幅より幅広になるように、前記第2半導体基板をエッチングして前記支持部を枠状に形成することを特徴とする請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記キャビティー基板を形成する工程の後に、前記第1半導体基板の前記溝部の内面に保護層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、
半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、
前記第2半導体基板の表面側から、前記可動部の回動を許容する溝部を形成するようにエッチングして、前記支持部を形成する工程と、
前記第1半導体基板の裏面に、前記第2半導体基板を貼り合わせる工程と、
前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記支持部を形成する工程において、該溝部内の前記可動部の回動を妨げない箇所に凸部が残るように、前記第2半導体基板をエッチングして前記支持部を形成することを特徴とする請求項8に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記支持部を形成する工程の後に、前記第2半導体基板の前記溝部の内面に保護層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項1】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、該トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段により駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータにおいて、
前記第2半導体基板で形成された前記支持部を、前記固定部と異なる形状に形成したことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記支持部を枠状に形成する構成とし、該支持部の枠外面が前記固定部の枠外面と略面一で、かつ、該支持部の枠幅が前記固定部の枠幅より幅広になるように、該支持部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2半導体基板は、前記可動部の回動を許容する溝部が予め形成されたキャビティー基板であることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記第2半導体基板は、前記溝部内の前記可動部の回動を妨げない箇所に凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、
半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、
前記第1半導体基板の裏面に、第2半導体基板を貼り合わせる工程と、
前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、
前記第2半導体基板の裏面をパターニングして、前記固定部と異なる形状になるようにエッチングし、前記支持部以外の部分を除去し、前記支持部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
前記支持部を形成する工程は、前記支持部の枠外面が前記固定部の枠外面と略面一で、かつ、当該支持部の枠幅が前記固定部の枠幅より幅広になるように、前記第2半導体基板をエッチングして前記支持部を枠状に形成することを特徴とする請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
前記キャビティー基板を形成する工程の後に、前記第1半導体基板の前記溝部の内面に保護層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
枠状の固定部と、該固定部の内側に形成されるトーションバーと、前記トーションバーを介して前記固定部に回動可能に軸支され駆動手段によって駆動される可動部とを第1半導体基板で一体形成して備えたアクチュエータ部と、第2半導体基板で形成され前記固定部を介して前記アクチュエータ部を支持する支持部とを有し、前記第1半導体基板として、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように予め溝部が形成されたキャビティー基板を用いて形成したプレーナ型アクチュエータの製造方法において、
半導体基板の裏面側からエッチングして、少なくとも前記トーションバーに対応する部位に該トーションバーに応じた厚さが残るように除去して前記溝部を形成して、前記第1半導体基板としてのキャビティー基板を形成する工程と、
前記第2半導体基板の表面側から、前記可動部の回動を許容する溝部を形成するようにエッチングして、前記支持部を形成する工程と、
前記第1半導体基板の裏面に、前記第2半導体基板を貼り合わせる工程と、
前記第1半導体基板の表面をパターニングして、エッチングし、前記固定部、前記トーションバー及び前記可動部以外の部分を除去し、前記アクチュエータ部を形成する工程と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記支持部を形成する工程において、該溝部内の前記可動部の回動を妨げない箇所に凸部が残るように、前記第2半導体基板をエッチングして前記支持部を形成することを特徴とする請求項8に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記支持部を形成する工程の後に、前記第2半導体基板の前記溝部の内面に保護層を形成する工程を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載のプレーナ型アクチュエータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−176450(P2012−176450A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39608(P2011−39608)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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