説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】 プレーナ型アクチュエータの可動部温度を一定に制御して、反射ミラーの反りを抑制することを目的とする。
【解決手段】 トーションバーで軸支され駆動コイルの通電量に応じた振れ角で回動する可動部13に発熱コイル16を設け、温度検出部21で可動部13の温度を検出し、可動部13の反り量が略零となる予め定めた目標温度と検出温度を比較し、可動部温度が目標温度になるよう制御部22により発熱コイル16の通電量を制御する。これにより、可動部13に設けた駆動コイルの電流量変化により駆動コイルの発熱量が変化しても可動部13の温度を常時目標温度に維持でき、可動部13の反り量を略零にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造技術を利用して製造するプレーナ型アクチュエータに関し、特に、固定部にトーションバーを介して軸支される可動部上の反射ミラーの反りを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体製造技術を利用して製造するプレーナ型アクチュエータとして、シリコン基板を異方性エッチングして、枠状の固定部にトーションバーを介して可動部を軸支するよう形成し、更に、可動部に駆動コイルを設け、可動部の駆動コイルに静磁界を作用する例えば永久磁石のような静磁界発生手段を設け、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を回動させ、可動部に設けた例えば反射ミラーを駆動する電磁駆動タイプ(例えば、特許文献1参照)や、可動部に可動電極を設け、可動電極と対向させて固定基板に固定電極を設け、可動電極と固定電極との間に電圧を印加することにより発生する静電引力によって、可動部を回動させ、可動部の反射ミラーを駆動する静電駆動タイプ(例えば、特許文献2参照)等がある。
【特許文献1】特許第2722314号公報
【特許文献2】特開2001−13443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種のアクチュエータは、可動部上に形成する電極、コイル、絶縁膜、反射ミラー等とシリコンからなる可動部との熱膨張率の差に起因して応力が発生し、この応力の影響で可動部に反りが生じ反射ミラーに反りが生じる。この種のアクチュエータを、可動部により反射ミラーを駆動して光ビームを偏向する光学機器等に適用した場合、反射ミラーの反りは光ビームの偏向操作に悪影響を与えるという問題がある。特に、電磁駆動タイプの場合は、駆動電流により駆動コイルが発熱し、この発熱に起因して可動部に反りが生じるため、駆動前と駆動後で反り量が変化する。駆動コイルの発熱に起因する反りは、可動部の振れ角を変化させるために駆動電流を変化させると、駆動コイルの発熱量も変化するので、駆動電流量の変化に応じて反り量が変化する。従って、電磁駆動タイプの場合は、可動部の振れ角に応じて可動部上の反射ミラーの反り量が変化するという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、可動部温度を一定に制御することにより、可動部に設けた反射ミラーの反りを抑制可能なプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、可動部と、該可動部を固定部に対して回動可能に軸支するトーションバーと、前記可動部を前記トーションバーの軸回りに駆動する駆動手段と、前記可動部に設けられた反射ミラーとを備えたプレーナ型アクチュエータにおいて、前記可動部の温度を予め定めた目標温度になるよう制御する温度制御手段を備える構成とした。
かかる構成では、温度制御手段で可動部の温度を予め定めた目標温度になるよう制御することにより、可動部の反り量を略一定にすることができるようになる。
【0006】
可動部の温度を制御する場合、請求項2のように、前記可動部自体を前記温度制御手段により温度制御する構成としてもよく、請求項8のように、少なくとも前記可動部及びトーションバー部分をパッケージ内に収納し、該パッケージ内の雰囲気温度を前記温度制御手段により温度制御する構成としてもよい。
【0007】
請求項2の場合、前記温度制御手段は、請求項3のように、前記可動部を加熱する発熱部及び冷却する冷却部の少なくとも一方と、前記可動部の温度を検出する温度検出部と、該温度検出部の検出温度が前記目標温度になるよう前記発熱部及び冷却部の少なくとも一方を駆動制御する制御部とを備える構成とするとよい。
【0008】
請求項4のように、前記発熱部は、通電により発熱する発熱体を用いる構成とするとよい。この場合、請求項5のように、前記温度検出部は、温度に応じて変化する前記発熱体の抵抗値を検出する構成とするとよい。
【0009】
請求項6のように、前記発熱部は、光照射により発熱する光吸収発熱材を用いる構成としてもよい。
請求項7のように、前記冷却部は、ペルチェ素子を用いる構成とするとよい。
【0010】
請求項9のように、前記駆動手段は、前記可動部に敷設されて通電により磁界を発生する駆動コイルと、前記トーションバーの軸方向と平行な可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に対して静磁界を作用する静磁界発生手段とを備え、前記可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に発生する磁界と前記静磁界との相互作用により前記可動部対辺部に電磁力を作用させる構成とした。
この場合、請求項10のように、前記駆動コイルに交流駆動電流を供給して前記可動部を揺動駆動する構成であるとき、前記交流駆動電流に重畳させて発熱用直流電流を前記駆動コイルに供給し、該駆動コイルが前記発熱体を兼ねる構成とするとよい。
【0011】
請求項11のように、前記目標温度は、前記可動部の反り量が略零となる温度に設定する構成とするとよい。
かかる構成では、可動部の温度を目標温度に制御することにより、可動部の反り量を略零にでき、可動部上の反射ミラーを略平坦にすることができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明のプレーナ型アクチュエータによれば、可動部の温度を目標温度になるように温度制御する構成としたので、目標温度として例えば可動部の反り量が略零となる温度を設定することにより、可動部の反り量を略零にすることができ、反射ミラーの反りを抑制して略平坦にできる。これにより、反射ミラーにより光ビームを良好に偏向操作することができる。
【0013】
特に、電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータにおいては、可動部の振れ角に関係なく反射ミラーの反り量を略一定に保持できるので、可動部の振れ角に応じて反射ミラーの反り量が変化するという問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の構成図を示す。尚、以下の各実施形態では、電磁駆動タイプに適用した場合について説明する。
図1において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、アクチュエータ本体1と、該アクチュエータ本体1の後述する可動部13を駆動制御する駆動回路2と、アクチュエータ本体1の前記可動部13自体の温度を制御する温度制御部3とを備えて構成される。
【0015】
前記アクチュエータ本体1は、図示しない光源からの光ビームを偏向するもので、例えば半導体マイクロマシン技術を応用して製造される。
図2に、アクチュエータ本体1の平面図を示す。
図2において、本実施形態のアクチュエータ本体1は、枠状の固定部11に、一対のトーションバー12,12を介して前記可動部13が回動可能に軸支される。これら固定部11、トーションバー12,12及び可動部13は、例えばシリコン基板をエッチングして一体的に形成される。可動部13の裏面側(紙面背面側)全面には、可動部13の回動動作により光源からの光ビームを偏向するための反射ミラー14が設けられる。可動部13の表面側周縁部には、可動部13を駆動するための図中実線で示す駆動コイル15と、該駆動コイル15の外側に可動部13を加熱するための図中破線で示す発熱コイル16とが設けられる。例えば、駆動コイル15は、一方のトーションバー部分を介して固定部11側に引き出されて電極端子17A,17Bに接続する。発熱コイル16は、他方のトーションバー部分を介して固定部11側に引き出されて電極端子18A,18Bに接続する。固定部11の外側には、トーションバー12,12の軸方向と平行な可動部対辺部の駆動コイル部分に静磁界を作用する一対の静磁界発生手段19A,19Bが、可動部13を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される。尚、静磁界発生手段19A,19Bは、永久磁石でも電磁石でもよい。
【0016】
このアクチュエータ本体1の駆動原理は例えば特許第2722314号公報等で詳述されており、簡単に説明する。
可動部13上の駆動コイル15に電流を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段19A,19Bによる静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、トーションバー12,12の軸方向と平行な可動部対辺部に互いに逆方向の回転力が発生し、トーションバー12,12のばね力と発生した回転力とが釣合う位置まで可動部13は回動する。駆動コイル15に直流電流を流せば駆動電流量に応じた回動位置で可動部13は停止し反射ミラー14により光ビームを所望の方向に偏向できる。また、駆動コイル15に交流電流を流せば可動部13が揺動し、反射ミラー14により光ビームを偏向走査できる。発生する回転力は、駆動コイル15に流す駆動電流値に比例するので、駆動コイル15に供給する駆動電流値を制御することで、可動部13の振れ角(光ビームの偏向角度)を制御できる。ここで、駆動コイル15と静磁界発生手段19A,19Bで駆動手段を構成する。
【0017】
前記駆動回路2は、アクチュエータ本体1の駆動コイル15に供給する駆動電流量を制御し、可動部13の振れ角を制御するものである。
前記温度制御部3は、可動部13の温度を予め定めた目標温度(例えば、本実施形態では可動部13の反り量が零となる温度とする)になるように制御するもので、図3に示すように、可動部13に設ける発熱部としての前述した発熱コイル16と、温度検出部21と、制御部22とを備えて構成される。
【0018】
前記発熱コイル16は、通電により発熱して可動部13を加熱する。
前記温度検出部21は、可動部13の温度を検出するもので、本実施形態では、可動部13の温度に応じて変化する発熱コイル16の抵抗値を検出する。
前記制御部22は、前記温度検出部21の検出値に基づいて可動部13が前記目標温度になるよう発熱コイル16に供給する電流量を制御して発熱コイル16の発熱量を制御するものである。具体的には、制御部22は、予め実験により計測した可動部温度と発熱コイル抵抗値との対応関係を示した抵抗値−可動部温度の換算データと、同じく実験により計測した、可動部13を単位温度(例えば1℃)上昇させるに必要な供給電流量データとを、予め記憶したメモリを備え、温度検出部21から入力する抵抗検出値を前記換算データに基づいて可動部温度を推定し、推定した温度と目標温度の差に基づいて前記供給電流量データから発熱コイル16に供給する電流量を演算し供給する。
【0019】
ここで、本実施形態では、アクチュエータ本体1の可動部13は、想定される最大駆動電流(最大振れ角)を駆動コイル15に供給したときの可動部温度より高い温度で可動部13の反り量が略零となるよう設計してある。例えば、最大駆動電流を駆動コイル15に供給したときの可動部13の温度が100℃とした場合、可動部13は例えば200℃で反り量が略零となるよう設計し、この場合の目標温度を200℃とする。
【0020】
次に、図4のフローチャートを参照して本実施形態の温度制御動作を説明する。
ステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)では、駆動回路2から駆動コイル15に駆動電流を供給して可動部13を駆動する。駆動コイル15は発熱して可動部13の温度は上昇する。これにより、発熱コイル16が加熱されて抵抗値が変化する。
ステップ2では、制御部22が温度検出部21で検出された発熱コイル16の抵抗値に対応する可動部温度Tをメモリ内の前記換算データから読み出す。
【0021】
ステップ3では、ステップ2で読み出した可動部温度Tと予め設定された目標温度T0を比較する。ここで、T=T0であれば、ステップ4に進み、制御部22から発熱コイル16に供給する発熱用電流値を現状値に維持しステップ2に戻る。T<T0であれば、ステップ5に進み、可動部温度Tと目標温度T0の差を計算し、前記供給電流量データから供給電流量を計算し、制御部22から発熱コイル16に供給する電流量を計算した供給電流量分増大してステップ2に戻る。T>T0であれば、ステップ6に進み、可動部温度Tと目標温度T0の差から前記供給電流量データに基づいて減少する電流量を計算し、制御部22から発熱コイル16に供給する電流量を前記計算分減少させてステップ2に戻る。
【0022】
尚、駆動電流だけでは可動部温度Tは目標温度T0より低いので、駆動してから目標温度T0になるまではステップ3→ステップ5→ステップ2の経路で発熱コイル16の供給電流量を増大し、可動部温度Tが目標温度T0に到達してから前述のようなステップ3の判定結果に基づいた発熱用電流値の増減制御となる。
尚、本実施形態の場合、発熱コイル16の電流変化が可動部13に作用する駆動力に影響を与えるが、駆動コイル15に供給する駆動電流を発熱用電流量の変化に応じて制御すればよい。
【0023】
かかる第1実施形態の構成によれば、可動部13の振れ角変化に伴って駆動コイル15の駆動電流値が変化し駆動コイル15の発熱量が変化しても、発熱コイル16の発熱量を制御することで、可動部13の温度を可動部1の反り量が零となる目標温度T0に保持できる。従って、駆動電流の変化に関係なく可動部13、言い換えれば反射ミラーを略平坦に保持でき、光ビームの偏向操作性を向上できる。
【0024】
アクチュエータ本体1の可動部13上における発熱部の取付け構造は、第1実施形態に限定されるものではない。
以下に、発熱部の取付け構造の例を示す。
図5の第2実施形態は、発熱コイル16を、アクチュエータ本体1の可動部13上においてトーションバー12,12の中心軸線に対して略対称に配置する構成である。この場合、図中上下の発熱コイル16の巻回方向を同じ方向として発熱コイル16に流れる電流によって生じる磁界に起因して発生する電磁力が互い相殺されるようにして可動部13の駆動に影響を与えないようにする。尚、図では図中上下の発熱コイルを接続して1本の発熱コイルとしたが、別々の発熱コイルとしてもよい。
【0025】
図6の第3実施形態は、アクチュエータ本体1の可動部13を、枠状の周縁部13aに4本の梁部13bを介して中央部13cを固定支持し、中央部13cの表裏両面に反射ミラー14を設ける構造とし、前記4本の梁部13b上に発熱コイル16をそれぞれ敷設する構成である。この場合も、各梁部13b上の発熱コイル16を接続して1本の発熱コイルとしてもよく、それぞれ独立した別々の発熱コイルとしてもよい。
【0026】
尚、図5及び図6で、発熱コイルを別々のものとした場合は、1つの発熱コイルの抵抗値から可動部温度を推定するようにしてもよく、また、各発熱コイルの抵抗値をそれぞれ検出し各検出値を可動部温度に換算した後、これら換算した各温度の平均値を可動部温度として推定するようにしてもよい。
【0027】
図7の第4実施形態は、発熱部として、高抵抗材料(例えばポリシリコン、カーボン等)で形成した板状の発熱体を用いた例であり、アクチュエータ本体1の可動部13中央部に、発熱部として高抵抗材料(例えばポリシリコン、カーボン等)で形成した板状の発熱体31を発熱部として設ける構成である。可動部13の温度は、発熱体31の抵抗値を検出して前述のように換算データを用いて推定すればよい。尚、図5及び図6で、発熱コイル16を、板状の発熱体に置き換えても良いことは言うまでもない。
【0028】
図8の第5実施形態は、発熱部として、光の照射により発熱する光吸収発熱材を用いた例であり、アクチュエータ本体1の可動部13中央部に、例えば矩形状の光吸収発熱材32を発熱部として設ける構成である。この場合、可動部13の温度は、可動部13に温度センサを設けて検出する。従って、図8の構成のアクチュエータ本体1の場合、温度制御部3′は、例えば、図9に示すように、光吸収発熱体32と、可動部13上の温度センサ33と、制御部34と、光吸収発熱体32に対して光、例えばレーザ光を発光するレーザ発光部35とを備え、温度センサ33の検出温度に応じて制御部34がレーザ発光部35のレーザ出力を制御して、光吸収発熱体32の発熱量を制御する構成とすればよい。
【0029】
尚、図5〜図8は、各実施形態の要部である可動部13部分を示したもので、各実施形態のアクチュエータ本体1のその他の構成は、図2に示すものと同様である。また、図5〜図8では、駆動コイル14を図の簡素化のため図中1本線で示してある。
【0030】
駆動コイル15に交流駆動電流を供給して可動部13を揺動する交流駆動タイプの場合、駆動コイル15に交流駆動電流に重畳させて発熱用直流電流を流すことにより、駆動コイル14を発熱コイルとして利用することができ、発熱コイル16や発熱体31を省略でき、アクチュエータ本体1の構成を簡素化できる。
また、発熱コイル16や発熱体31を用いる構成では、これら発熱コイル16や発熱体31及び駆動コイル15の上面に絶縁層を介して反射ミラーを形成することで、可動部13の両面に反射ミラー14を形成することが可能である。
【0031】
上記実施形態では、可動部13に加熱部を設けて可動部温度を一定に制御する構成を示したが、可動部13に冷却部を設けて可動部温度を一定に制御する構成としてもよい。
図10に、可動部に冷却部を設けた本発明の第6実施形態を示す。
図10において、本実施形態のアクチュエータは、アクチュエータ本体1の可動部13を冷却する冷却部としてペルチェ素子を用いる構成である。ペルチェ素子は、n型半導体41、p型半導体42、上部電極43及び下部電極44A,44Bを備えて構成される。本実施形態では、可動部13に、n型半導体41領域とp型半導体42領域を形成し、これらn型半導体41領域とp型半導体42領域に跨るように上部電極43を形成し、n型半導体41領域とp型半導体42領域のそれぞれ接続するよう各下部電極44A,44Bをトーションバー12,12部分を介して枠状の固定部11に形成し、n型半導体41領域に接続する下部電極44A側をプラス(+)とし、p型半導体42領域に接続する下部電極44B側をマイナス(−)とし電流を供給する構成とする。
尚、アクチュエータ本体1の構成は、発熱コイル16に代えてペルチェ素子を設けたことを除いて図2と同様である。駆動コイル15は、図面の簡略化のため図示を省略してある。
【0032】
かかる構成では、ペルチェ素子に電流を供給すると、上部電極43側で吸熱作用が生じ、下部電極44A,44B側で放熱作用が生じ、可動部13を冷却することができ、供給電流量を制御すれば冷却量を制御できる。従って、駆動コイル15に駆動電流を供給したときの可動部13の温度を検出し、検出温度と目標温度との差に応じて、可動部温度が目標温度になるようペルチェ素子に供給する電流量を制御して可動部13を冷却し、可動部13を常時目標温度に制御する。
【0033】
ここで、本実施形態の場合、アクチュエータ本体1の可動部13は、想定される最小駆動電流(最小振れ角)を駆動コイル15に供給したときの可動部温度より低い温度で可動部13の反り量が略零となるよう設計することが望ましい。
【0034】
ペルチェ素子の形成方法を簡単に説明すると、例えばボロンを拡散又はイオン注入にてp型半導体42領域を形成し、例えばリンを拡散又はイオン注入にてn型半導体41領域を形成し、アルミニウムをスパッタ又は蒸着により堆積させ、その後、エッチングにより上部電極43、下部電極44A,44Bを形成する。駆動コイル15は、ペルチェ素子形成後にその上に絶縁膜を形成し、該絶縁膜上に形成すればよい。
【0035】
尚、アクチュエータ本体1にペルチェ素子を形成する場合、図10の構成に限るものではなく、図11に示す第7実施形態のように、トーションバー12,12部分にn型半導体41とp型半導体42領域を形成する構成としてもよく、図12に示す第8実施形態のように、固定部11にn型半導体41とp型半導体42領域を形成し、上部電極43を可動部13とトーションバー12,12部分に形成する構成としてもよい。
【0036】
また、図13に示す第9実施形態のように、n型半導体41領域及びp型半導体42領域と上部電極43を固定部11に形成し、下部電極44A,44Bを可動部13に形成して、ペルチェ素子の放熱部側を可動部13に形成する構成とすれば、ペルチェ素子を用いて可動部13を加熱する構成とすることも可能である。
尚、図11〜図13では、駆動コイル及び静磁界発生手段は図面の簡素化のため図示を省略してある。
【0037】
上記実施形態では、可動部13に発熱部及び/又は冷却部を直接取付けて可動部自体を加熱及び/又は冷却する構成としたが、アクチュエータ本体1の少なくとも可動部及びトーションバーをパッケージ等に収納する構成では、パッケージ内の雰囲気温度を可動部が目標温度となるように温度制御する構成としてもよい。
【0038】
また、上記各実施形態では、電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータの例を示したが、前述した静電引力を利用する静電駆動タイプにも適用できることは言うまでもない。
【0039】
また、上記各実施形態では、1次元駆動タイプの例を示したが、特許第2722314号公報に記載されている、軸方向が互いに直交する第1トーションバーと第2トーションバーによりそれぞれ軸支される外側可動部と内側可動部を有する2次元駆動タイプのプレーナ型アクチュエータにも適用できる。更に、可動部に発熱部と冷却部の両方を設けて可動部を加熱・冷却できる構成として、可動部の温度を制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す概略構成図
【図2】アクチュエータ本体の構成図
【図3】温度制御部の構成図
【図4】第1実施形態の動作を説明するフローチャート
【図5】本発明の第2実施形態の可動部部分を示す概略構成図
【図6】本発明の第3実施形態の可動部部分を示す概略構成図
【図7】本発明の第4実施形態の可動部部分を示す概略構成図
【図8】本発明の第5実施形態の可動部部分を示す概略構成図
【図9】第5実施形態の温度制御部の構成図
【図10】本発明の第6実施形態のアクチュエータ本体を示す構成図
【図11】本発明の第7実施形態のアクチュエータ本体を示す構成図
【図12】本発明の第8実施形態のアクチュエータ本体を示す構成図
【図13】本発明の第9実施形態のアクチュエータ本体を示す構成図
【符号の説明】
【0041】
1 アクチュエータ本体
2 駆動回路
3 温度制御部
11 固定部
12 トーションバー
13 可動部
14 反射ミラー
15 駆動コイル
16 発熱コイル
19A,19B 静磁界発生手段
21 温度検出部
22,34 制御部
31 発熱体
32 光吸収発熱材
33 温度センサ
41 n型半導体
42 p型半導体
43 上部電極
44A,44B 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、該可動部を固定部に対して回動可能に軸支するトーションバーと、前記可動部を前記トーションバーの軸回りに駆動する駆動手段と、前記可動部に設けられた反射ミラーとを備えたプレーナ型アクチュエータにおいて、
前記可動部の温度を予め定めた目標温度になるよう制御する温度制御手段を備える構成としたプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動部自体を前記温度制御手段により温度制御する構成とした請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記温度制御手段は、前記可動部を加熱する発熱部及び冷却する冷却部の少なくとも一方と、前記可動部の温度を検出する温度検出部と、該温度検出部の検出温度が前記目標温度になるよう前記発熱部及び冷却部の少なくとも一方を駆動制御する制御部とを備える構成である請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記発熱部は、通電により発熱する発熱体を用いる構成とした請求項3に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記温度検出部は、温度に応じて変化する前記発熱体の抵抗値を検出する構成とした請求項4に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記発熱部は、光照射により発熱する光吸収発熱材を用いる構成とした請求項3に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項7】
前記冷却部は、ペルチェ素子を用いる構成とした請求項3〜6のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項8】
少なくとも前記可動部及びトーションバー部分をパッケージ内に収納し、該パッケージ内の雰囲気温度を前記温度制御手段により温度制御する構成とした請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項9】
前記駆動手段は、前記可動部に敷設されて通電により磁界を発生する駆動コイルと、前記トーションバーの軸方向と平行な可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に対して静磁界を作用する静磁界発生手段とを備え、前記可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に発生する磁界と前記静磁界との相互作用により前記可動部対辺部に電磁力を作用させる構成とした請求項1〜8のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項10】
前記駆動コイルに交流駆動電流を供給して前記可動部を揺動駆動する構成であるとき、前記交流駆動電流に重畳させて発熱用直流電流を前記駆動コイルに供給し、該駆動コイルが前記発熱体を兼ねる構成とした請求項9に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項11】
前記目標温度は、前記可動部の反り量が略零となる温度に設定する構成とした請求項1〜10のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−162949(P2006−162949A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354021(P2004−354021)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】