説明

プレーントロリー及びレール走行装置

【課題】安全で円滑な走行が可能なプレーントロリー及びレール走行装置。
【解決手段】レール2に係合し、該レールの係合面に沿って転動するローラー21を備えるプレーントロリー10であって、上記ローラーと上記係合面とが接する接触部への異物の進入を阻止する遮蔽部材を有し、上記遮蔽部材は、可撓性を有して上記係合面と接する可撓部材を有
する。可撓部材は、刷毛部材、あるいは、ゴム部材からなる。遮蔽部材の上記レールの長さ方向一方側は、上記一方側から上記長さ方向他方側に向かうにつれて、上記レールの幅方向外側に向かって傾斜しているという構成を採用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーントロリー及びレール走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トロリーコンベヤは、周知のように、例えば工場の天井に架設されたレールに沿って製品あるいは工具等の荷を移動させるのに多用されている。特許文献1には、レールに係合し、該レールの係合面に沿って転動するローラーを備えるプレーントロリーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−297735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プレーントロリーは、荷を吊り下げて移動させるだけでなく、高所で作業員が作業するための足場(ゴンドラ)を吊り下げて移動させるためにも用いられる。
高所作業現場では、足場からレールに作業員の手指が届くようにして、作業員がレールを手繰って、足場をレールに沿って移動させてしまう場合がある。この様に用いてしまうと、作業員がレールを手繰る際に、レールとローラーとの間に作業員の手指が巻き込まれる虞がある。また、レールに作業員の手指が届くため、手指を含め、ボルトやナット等の工具などの異物がレールの係合面上に載置される場合があり、該異物がレールとローラーとの間に巻き込まれると、トロリーの故障/脱落等によって走行に支障を来たす虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、安全で円滑な走行が可能なプレーントロリー及びレール走行装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、レールに係合し、該レールの係合面に沿って転動するローラーを備えるプレーントロリーであって、上記ローラーと上記係合面とが接する接触部への異物の進入を阻止する遮蔽部材を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、レールの係合面に異物が載置されても、レールとローラーとの接触部への進入を遮蔽部材が阻止するので、異物が接触部に巻き込まれてしまうことを防止することが可能となる。
【0007】
また、本発明においては、上記遮蔽部材は、可撓性を有して上記係合面と接する可撓部材を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、可撓部材は撓んで係合面と密に接することができるため、係合面上に小さな異物が載置されて場合あってもその進入を阻止でき、当該異物が接触部に巻き込まれてしまうことを防止することが可能となる。
【0008】
また、本発明においては、上記可撓部材は、刷毛部材、あるいは、ゴム部材からなるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、刷毛部材、あるいは、ゴム部材は撓んで係合面と密に接することができるため、係合面上に小さな異物が載置されて場合あってもその進入を阻止でき、当該異物が接触部に巻き込まれてしまうことを防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明においては、上記遮蔽部材の上記レールの長さ方向一方側は、上記一方側から上記長さ方向他方側に向かうにつれて、上記レールの幅方向外側に向かって傾斜しているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、トロリーがレールの長さ方向一方側に向かうと、遮蔽部材により接触部への進入を阻止された異物が該遮蔽部材の傾斜形状によって、レール幅方向外側に向かって誘導されるため、レールの係合面上に載置された異物をトロリーの移動に伴って係合面から払い落とすことが可能となる。
【0010】
また、本発明においては、上記遮蔽部材は、上記レールの長さ方向両側に設けられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、遮蔽部材がレールの長さ方向両側に設けられているので、トロリーがレールの長さ方向のいずれに向かっても異物の接触部への進入を阻止することができる。
【0011】
また、本発明においては、先に記載のプレーントロリーに吊下されたゴンドラを備えるレール走行装置を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レールに係合し、該レールの係合面に沿って転動するローラーを備えるプレーントロリーであって、上記ローラーと上記係合面とが接する接触部への異物の進入を阻止する遮蔽部材を有するという構成を採用することによって、レールの係合面に異物が載置されても、レールとローラーとの接触部への進入を遮蔽部材が阻止するので、異物が接触部に巻き込まれてしまうことを防止することが可能となる。
したがって、本発明では、安全で円滑な走行が可能なプレーントロリーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスカイゴンドラの構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスカイゴンドラの構成を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるプレーントロリーの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるプレーントロリーの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるプレーントロリーの機能を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態におけるスカイゴンドラ1の構成を示す側面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるスカイゴンドラ1の構成を示す正面図である。図3は、本発明の第1実施形態におけるプレーントロリー10の構成を示す斜視図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、スカイゴンドラ(レール走行装置)1は、所定高さに架設されたレール2に係合するプレーントロリー10と、プレーントロリー10にロープ11を介して吊下されるゴンドラ12とを有する。本実施形態のスカイゴンドラ1は、例えば、図2に示すように、LNG貯蔵タンク3の内側側壁4に保冷パネル5を設置するための作業用足場として用いられる。
【0016】
レール2は、LNG貯蔵タンク3の屋根部6に架設され、円筒状の内側側壁4に沿って所定高さで周回して設けられている。レール2は、I形鋼、あるいは、H形鋼からなり、そのフランジ7にプレーントロリー10が走行自在に係合する構成となっている。より詳しくは、プレーントロリー10に設けられたローラー21と、フランジ7の係合面8とが鉛直方向で係合して、ローラー21が係合面8上を転動することで、プレーントロリー10がレール2に沿って走行自在な構成となっている。
【0017】
ゴンドラ12は、図1に示すように、作業員Pが複数人乗り込めるスペースを備える。ゴンドラ12の前後方向(レールの長さ方向)両側には、ロープ11を巻き取る巻取り装置13が設けられる。巻取り装置13でゴンドラ12の高さをレール2に作業員Pの手指が届く高さに調節することにより、作業員Pは、レール2を手繰って、ゴンドラ12をレール2に沿ってその長さ方向のいずれかに走行させることが可能な構成となっている。
【0018】
プレーントロリー10は、レール2のウェブ9を挟んだ位置に二組一対で設けられたローラー21と、レール2下部を跨いでローラー21をそれぞれレール2の幅方向に延びる回転軸周りに回転自在に支持する本体部22とを有する。本体部22は、ローラー21をレール2の幅方向両側でそれぞれ支持する一対の側部フレーム及び該側部フレームを接続する支軸等から構成される。
【0019】
プレーントロリー10は、ローラー21と係合面8とが接する接触部23(図1参照)への異物の進入を阻止するカバー部材(遮蔽部材)30を有する。
カバー部材30は、図3に示すように、本体部22に対し螺子部材31(例えば、ボルト、ロックナット)等により固定されており、本体部22と一体で移動する構成となっている。カバー部材30は、平面視でコの字形状を有する金属プレートであり、ローラー21及び本体部22の前方及び後方(レール2の長さ方向両側)を遮蔽する遮蔽部32を備える。
【0020】
遮蔽部32は、レール2の形状に応じた形状を有する。より詳しくは、本実施形態の遮蔽部32は、フランジ7に沿う一辺及びウェブ9に沿う一辺を備える矩形の板形状を有する。遮蔽部32とフランジ7との隙間は、作業員Pの手指の接触部23への進入を阻止する大きさ、例えば5ミリメートル以下に設定することが好ましい。但し、該隙間を小さくしすぎると、作業員Pがレール2を手繰ったときに、遮蔽部32とレール2とが擦れる場合があるため、トロリーの走行性を考慮して隙間の大きさを設定することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、プレーントロリー10がレール2の長さ方向一方側に走行する際、トロリー前方のレール2の係合面8上に作業員Pの手指、あるいは、ボルトやナット等の異物があったとしても、カバー部材30の遮蔽部32でその異物を押しのけることができるため、ローラー21と係合面8とが接する接触部23への進入を阻止し、また、異物が巻き込まれてしまうことを防止することができる。したがって、本実施形態では、安全で円滑な走行が可能なプレーントロリー10及びスカイゴンドラ1が得られる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0023】
図4は、本発明の第2実施形態におけるプレーントロリー10の構成を示す斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態におけるプレーントロリー10の機能を説明するための平面図である。
第2実施形態では、カバー部材30が、レール2の係合面8と接する可撓部材33を有する点、また、遮蔽部32が傾斜形状を有する点で、上記実施形態と異なる。
【0024】
可撓部材33は、遮蔽部32の係合面8に対向する縁部(一辺)に沿って設けられている。本実施形態の可撓部材33は、可撓性を有し係合面8に接する刷毛部材から構成されている。なお、可撓部材33としては、ゴムべら等のゴム部材、あるいは、シート状のフィルム部材等であってもよい。
この構成によれば、遮蔽部32とフランジ7との微小隙間を、可撓部材33で遮蔽することができるため、より小さな異物(例えばワッシャー、ゴミ、塵等)の接触部23への進入を阻止することができる。また、可撓部材33は、その可撓性により柔軟に変形できるため、係合面8と擦れてもトロリーの走行を阻害することなく、また、係合面8と密に接して異物を掃けることができる。
【0025】
第2実施形態の遮蔽部32は、傾斜形状を有する。より詳しくは、レール2の長さ方向一方側に設けられた遮蔽部32は、その一方側から長さ方向他方側に向かうにつれて、レール2の幅方向外側に向かって傾斜する構成となっている。
この構成によれば、図5に示すように、本体部22がローラー21の転動により、レール2の長さ方向一方側に向かうと、遮蔽部32により接触部23への進入を阻止された異物が該遮蔽部32の傾斜形状によって、レール2の幅方向外側に向かって誘導されるため、レール2の係合面8上に載置された異物をトロリーの移動に伴って払い落とすことが可能となる。なお、払い落とした異物は、ゴンドラ12等に落下するが、払い落とした異物を受ける受け皿をプレーントロリー10に別途設けても良い。
【0026】
したがって、上述の第2実施形態によれば、作業員Pの手指はもとより、レール2の係合面8上に溜まっているゴミ、埃等の小さな異物を取り除くことができ、滑らかなトロリー走行が可能となると共に、異物の巻き込みによるトロリーの故障を未然に防ぐことが可能となる。
【0027】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…スカイゴンドラ(レール走行装置)、2…レール、8…係合面、10…プレーントロリー、12…ゴンドラ、21…ローラー、23…接触部、30…カバー部材(遮蔽部材)、32…遮蔽部、33…可撓部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに係合し、該レールの係合面に沿って転動するローラーを備えるプレーントロリーであって、
前記ローラーと前記係合面とが接する接触部への異物の進入を阻止する遮蔽部材を有することを特徴とするプレーントロリー。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、可撓性を有して前記係合面と接する可撓部材を有することを特徴とする請求項1に記載のプレーントロリー。
【請求項3】
前記可撓部材は、刷毛部材、あるいは、ゴム部材からなることを特徴とする請求項2に記載のプレーントロリー。
【請求項4】
前記遮蔽部材の前記レールの長さ方向一方側は、前記一方側から前記長さ方向他方側に向かうにつれて、前記レールの幅方向外側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレーントロリー。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記レールの長さ方向両側に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレーントロリー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプレーントロリーに吊下されたゴンドラを備えるレール走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255989(P2011−255989A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130355(P2010−130355)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】