説明

プロアントシアニジン及びスフィンゴ脂質を含む組成物

【要 約】

【課 題】 呈味において良好なプロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを含む組成物を提供すること。

【解決手段】プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを混合すると、特にそれらの割合が重量比で3.7対1から150対1の割合となるように両者を混合することにより提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌のくすみの防止、肌荒れ防止、シミ等肌色の改善、しわ防止に功を奏し、食品として常用し、継続して摂取をすることができ、また、それを続けたいという気持ちを起こさせる要因を秘めている補助食品、所謂サプリメントに好適な、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質を含む組成物及びこれを摂取しやすく加工した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康への願いは洋の東西を問わず人類の等しく求めてやまないところであるが、近年、特に強くなって、種々の効能を期待させる補助食品が数多く、市場に出回っており、その摂取によって健康を手に入れようと、消費者は少しでも効果のあるものを求め、供給者は、これに応えるべく努力を重ねている状況にある。
【0003】
このような状況のなかにおいて、強く求められているものの一つに、皮膚の健康がある。張りのある肌、しわの少ない肌、若々しい肌、シミの少ない肌等肌の健康を保つことへの願望には強いものがある。
【0004】
加齢に加えて、地球環境の変化に伴う地表への紫外線の量の増加、これらによって引き起こされる様々な皮膚障害、日焼けによるシミの発生、しわ、たるみ等々が生じ老いを感じさせるところである。これらは、一方では、人としての生き様を深からしめながらも、一方においては、成り行きに任せるのではなく、少しでも加齢を感じさせない若々しさの維持に努めるという努力がなされているのが実状である。
【0005】
このような状況のなかで、様々な試みがなされている。例えば、抗酸化、抗炎症のための食品として、プロアントシアニジンを含む食品が提供されている。プロアントシアニジンは、フラボノイド系の化合物であって、主にフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3、4−ジオールを構成単位として二つ以上が縮重合した化合物群を総称しているものである。
【0006】
フラバン−3−オール及び/又はフラバン−3、4−ジオールを構成単位する重合度2〜4の縮重合物を、プロアントシアニジンの中でも、特にオリゴメリック・プロアントシアニジン(OPC)と呼び、ポリフェノールの一種として、ビタミンCの20倍、ビタミンEの50倍と言われるほど抗酸化作用が強いので、老化促進因子とされているスーパーオキサイド等の消去のため、様々な態様での使用がなされている。
【0007】
又、OPCには、抗酸化作用のほか、血管の強度、弾力性の回復、血中コレステロール及びLDLの低下、高血圧症に対する血圧の低下、コレステロールの付着防止等の機能があることが知られており、これらの機能のゆえに、血管の保護、血流の改善、動脈硬化の予防効果のために使用されている。
【0008】
しかしながら、プロアントシアニジンは、渋味、苦味、収斂味が強いために、そのままで経口的に摂取することには抵抗があり、その改善が試みられている。
例えば、分子量1000〜2000の澱粉加水分解物を混合し、溶解した後、噴霧乾燥等の方法により乾燥したプロアントシアニジン製剤が記載されている(特許文献1)。
【0009】
次に、スフィンゴ脂質は、スフィンゴシン或いはこれと類似した構造を有する長鎖アミノアルコールと、長鎖脂肪酸などの脂肪酸とのアミド結合を分子内に含む一連の化合物の総称である。スフィンゴ脂質の代表的化合物として広く知られているものとしてセラミドと呼ばれている一群の化合物がある。
【0010】
スフィンゴ脂質は、皮膚の保湿、水分調節、弾力性保持、コラーゲン保護、ビタミンCやEの安定化作用等の機能を持っている物質として注目を集め、機能性素材として、化粧品や食品の分野において利用が図られている。最近になって、外界から体内へ抗原物質が進入するのを抑制乃至阻止し、アトピー性皮膚炎の抑制に有効であることが見いだされ、医薬品としての開発も進められている状況にある。
【0011】
スフィンゴ脂質、殊にセラミドを化粧品や食品に利用したものとして、セラミドを含有する健康食品(特許文献2)、糖脂質を含む化粧品素材、化粧品及び食品(特許文献3)、コラーゲナーゼ抑制剤、保湿剤並びにそれを含む化粧料及び食品(特許文献4)等が知られている。
【0012】
スフィンゴ脂質の抽出方法については、例えば公知文献等(特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8)に記載され、またスフィンゴ脂質を経口的に摂取することにより、保湿、美肌、肌荒れ防止、しわ防止等の美容効果があることが報告されている(非特許文献1および非特許文献2を参照)。
【0013】
スフィンゴ脂質は、脂質特有の味を持っており、単体での摂取にあっては口腔内に後味の悪さがいつまでも残ることが、その利用を図る上で改善しなければならない欠点の一つとなっている。
【0014】
この解決を図るために、スフィンゴ脂質を、寒天、カゼイン、デキストリン、サイクロデキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸又はその塩、プロテイン、焼成又は未焼成カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等と共にスプレードライ方法、凍結乾燥方法によって粉末化されたものが市場に出されているが、摂取において、なお、後味の悪さがいつまでも口腔内に残ることは避けられない状況にある。
【0015】
このような状況にあって、価値ある機能を備えているプロアントシアニジンとスフィンゴ脂質であるにも拘わらず、不思議なことに、両者を併用したものが如何なる形態においても知られていないのが実状である。
【特許文献1】特開2001−188996号
【特許文献2】特開平11−113530号
【特許文献3】特開平11−92781号
【特許文献4】特開2000−26228号
【特許文献5】特表平6−507653号
【特許文献6】特開平11−92781号
【特許文献7】特開2001−97983号
【特許文献8】特開2003−3192号
【非特許文献1】フレグランスジャーナル Vol.23,No.1,81〜89,1995
【非特許文献2】新薬と臨床 Vol.5,No.9,62(890)〜72(900),2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記した状況にある中で、本発明は、後味等の味の改善と当該組成物の継続、常用的摂取への誘惑に駆られる呈味を有する、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを含む組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る組成物乃至食品は、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを或いはこれらを含んでいるプレ混合物を混合することによって得ることができ、更に、食品として摂取することができる、適宜の形態とするために、適宜の賦形剤と共に加工することにより提供される。
【0018】
即ち、本発明は、
(1)プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを含むことを特徴とする組成物、
(2) プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質の割合が重量比で3.7対1から150対1の割合である前記(1)記載の組成物、
(3)プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質の割合が重量比で8.3対1から100対1の割合である前記(1)又は(2)記載の組成物、
(4)プロアントシアニジンがフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物である前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の組成物、
(5)フラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物の重合度が2〜4である前記(4)記載の組成物、
(6)プロアントシアニジンが、松樹皮抽出物由来であることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の組成物、
(7)スフィンゴ脂質がスフィンゴシンの長鎖脂肪酸アミド構造を含む物質である前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の組成物、
(8)プロアントシアニジンがフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物であって、スフィンゴ脂質がセラミドである前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の組成物、
(9)縮重合物の重合度が2〜4である前記(8)記載の組成物、
(10)前記(1)乃至(9)のいずれかに記載の組成物を含んでなる食品、
(11)形状が錠剤である前記(10)記載の食品、
(12)美肌作用を有する前記(10)または(11)記載の食品、
(13)前記(1)ないし(9)記載の組成物を含有し、美肌作用を有するものであることを特徴とし、美肌作用を得るために用いられる旨の表示を付した食品、
(14)美肌作用が、肌のくすみの防止、肌荒れ防止、肌色の改善、又は、しわ防止である、前記(1)、(2)または(13)記載の食品、および
(15)前記(1)乃至(9)のいずれか記載の組成物を含む肌質改善剤、
に関するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プロアントシアニジンが持っている特有の苦味、渋味、収斂味とスフィンゴ脂質が持っている特有の後味の悪さが、両者の混合によって、変化する結果、味覚的に、継続して常用することに抵抗感のない組成物が提供され、且つ、両者を混合することから新たに生まれる呈味よって、服用者が摂取後においてプロアントシアニジン及びスフィンゴ脂質の効能感を感じることができる組成物、食品又は医薬品が得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において使用されるプロアントシアニジンは、フラボノイドと総称されている一群の化合物によって構成されているものであるところ、主に、フラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする縮重合体を含む一群の化合物を指している。従って、これら以外にも、例えばフラボン、フラボノール、フラバノノール、イソフラボン等が含まれることがあり、これらを含ものをも包含して、本発明ではプロアントシアニジンと表記し、本発明の対象とするものである。
【0021】
プロアントシアニジンは、食物繊維に次ぐ第7の栄養素とも呼ばれ、人体にとっては、摂取以外に取り込むすべのないものであって、時にはポリフェノールとも称され、前記したとおり大変強力な抗酸化力を持っているものである。
【0022】
本発明において使用されるところのプロアントシアニジンは、松、樫、山桃等の樹皮、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実又は種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウの葉、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラナニアの根、日本の緑茶等に多く含まれているとされている。これらには、前記したフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールを主としたオリゴメリック・プロアントシアニジン(OPC)が多いとされている。これら植物からの抽出物が粉体で又は添加剤と共に加工されたものが市場に出されている。
【0023】
本発明においては、プロアントシアニジンとしては、上記のOPCを多く含む樹皮、果実もしくは種子の破砕物、またはこれらの抽出物などの、食品原料を使用することができる。特に、松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、本発明においてプロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0024】
以下、OPCを抱負に含む松樹皮の抽出物を例に挙げて、プロアントシアニジンの調製方法を説明する。
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の松樹皮抽出物が好ましい。
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0025】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、及び含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0026】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
超臨界流体抽出法は、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程および目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0027】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類などの目的とする被抽出物の抽出流体に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
超臨界抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0028】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法と組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0029】
従って、本発明において使用されるプロアントシアニジン、殊にOPCは、上記した植物体からの抽出物として市場に提供されているものを好適に使用することができる。例えば、商品名フラバンジェノール((株)東洋新薬社製)、商品名ピクノジェノール((株)トレードピア製)等の商品が挙げられる。
【0030】
本発明でいうスフィンゴ脂質とは、スフィンゴシンと称する炭素数16〜22、主には炭素数18からなる高級アミノアルコールと、脂肪酸とがアミド結合した一群の化合物(セラミドと称されている)である。
脂肪酸は飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸いずれであってもよく、脂肪酸の鎖の長さによって、種々のものが、存在することとなる。
本発明は、特定の鎖長のものだけを対象としているものではなく、凡そスフィンゴ脂質と称されるもの全てを対象とするものである。
【0031】
アミド結合に与る脂肪酸の鎖長は、特に限定されるものではないけれども、炭素数8〜26、好ましくは、炭素数14〜18の直鎖又は分岐鎖であってよく、一つ以上の水酸基を置換していてもよい。
【0032】
また、スフィンゴ脂質を構成する高級アミノアルコールは水酸基が二つ存在するので、これに糖、リン酸、シアル酸、コリン、エタノールアミン等が一あるいは数種が結合していることがあるが、これらが結合した化合物も使用することができる。水酸基には、糖としてグルコース、マンノース、ガラクトース等が結合していてもよく、特に、グルコースが1〜4個結合するのが望ましい。
【0033】
本発明でいうセラミドには、糖(主にガラクトース)がグリコシルエーテル結合したグルコシルセラミドもスフィンゴ脂質に含まれる。
本発明において使用されるスフィンゴ脂質は、これを含有する稲、大豆、トウモロコシ、ベニバナ、ゴマ、アブラナ、ひまわり、アブラヤシ、ココヤシ、オリーブ、綿、小麦等の種子から抽出することによって得られたものを好適に使用することができる。抽出方法については、既に、前記した特許文献に記載され、公知となっている。
【0034】
又、抽出されたスフィンゴ脂質は、寒天、カゼイン、デキストリン、環状オリゴ糖、ゼラチン、ペクチン、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カラーギーナン、アルギン酸又はその塩、プロテイン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、焼成又は未焼成カルシウム等と共にスプレイドライ、凍結乾燥等の方法によって固体化、粉末化されて、市場に提供されているので、これを使用することができる。従って、これら市場で入手される商品は、必ずしもスフィンゴ脂質100%のものでないこともある。例えば、3w/w%〜6w/w%含量のものとして市販されている。
【0035】
市場から入手できるスフィンゴ脂質としては、例えば、商品名オリザセラミド−P(オリザ油化(株)製)、商品名こんにゃくセラミド(粉末タイプ)(ユニチカ(株)製)、商品名ニッサンN−セラミド(日本油脂(株)製)、ニップンセラミドRPS(日本製粉(株)製)等が挙げられる。
【0036】
本発明に係る組成物は、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを含んでなるものであるが、その他に、適宜の添加剤が加えられることは支障なくなされ、添加剤を含んだものも、本発明が対象としているものである。
【0037】
本発明に係る組成物において、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質との割合は、重量比で、3.7対1から150対1、好ましくは8.3対1から100対1である。この割合は、本発明に係る組成物の呈味との関係から重要な要因である。食品、取り分け要素の補給を謀る健康食品の場合、継続して摂取されることが必要欠くべからざる要件であることから、摂取の際の呈味が極めて重要である。単に、甘、酸、辛、苦のみならず、効能効果が期待できる充足感を呈味から感じ取ることができなければ、忘れ去られてしまうことになるからである。
【0038】
俗に謂う、あの味が忘れられない、もう一度味わってみたいという思いを呈味から記憶に残すことが大切である。例えて言えば、ゴーヤの苦味がなくなってしまえば、食する魅力が消えてしまうのと軌を一にすると言える。
従って、素材の味を消してしまう、或いは変えてしまうのではなく、程々に残す。これによって、効能効果が期待されると共に、その味に惹かれて、更に継続して摂取を続けたい気持ちを起こさせることができるのである。このような意味合いから、本発明においては、効能感なる表現を使用している。
【0039】
前記したとおり市場で入手できる商品を使用する場合は、その他に種々の添加剤を含むことがある。又、これらの商品を使用する場合であっても、更に添加剤を使用することは、適宜、支障なく行うことができる。斯かる場合を含めて、添加剤としては、例えば、ビタミン類(ビタミンCなど)、乳糖、セルロース、白糖、ブドウ糖、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、デキストリン、ソルビトール、マンニトール等通常使用されているところのものが挙げられる。
【0040】
この外に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、デンプン糊等の結合剤、更には、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤や着色剤、矯味剤として市場にあるものを適宜、使用することができる。
【0041】
本発明に係る組成物は、植物体から抽出したプロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを、場合により適宜の添加剤を使用して、混合することにより造ることができる。或いは又、抽出されたプロアントシアニジン、スフィンゴ脂質を加工し、市場に提供されている前記した商品を場合により添加剤を使用して混合することにより造ることができる。
組成物中のプロアントシアニジンの配合量は、プロアントシアニジンの摂取量が大人一人当たり、一日10mg〜300mg、好ましくは40mg〜200mgとなることを目安として、決めるとよい。
【0042】
上記混合における方法は、通常使用されているV型混合機、流動層造粒機、ニーダー混合機等の攪拌混合機能を備えているものを使用することができる。
【0043】
本発明に係る組成物は、プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とが均一に混じっているものであればよく、結合剤を使用して造粒したものであっても、単に混合したものであってもよい。
【0044】
本発明に係る食品又は医薬品の形態としては、特の限定されるものではなく、ゼリー状、ヨーグルト状、麺製品、パン類から医薬品のような錠剤、カプセル剤、顆粒剤、トローチに至るまで如何なる形態のものであっても良いが、携帯の便利さや、咀嚼等による摂取の容易さ、扱い安さ等から錠剤の形が好ましい。斯かる錠剤は、食品や医薬品の分野において、通常行われている方法、例えば日本薬局方記載の方法に倣って造ることができ、被覆等により着色も適宜行うことができる。
例えば、錠剤を製造する場合、ロータリー打錠機など用いて、上述の混合された組成物を、常法により圧縮成形して、製造することができる。
【0045】
本発明により得られる組成物の評価は、5名の専門パネラーによる官能テストによる方法を採用している。パネラーは、提試粉末0.3gを直接口に含んで唾液で口腔内に分散して呈味を確認し、下記基準により行う。
4点:渋味、収斂味、後味等呈味は劣るが、高い効能感があるもの。
3点:渋味、収斂味、後味等呈味はやや劣るが、効能感があるもの。
2点:渋味、収斂味、後味等呈味はやや良いが、効能感が僅かに低いもの。
1点:渋味、収斂味、後味等呈味は良いが、殆ど効能感がないもの。
以上を基準とし、0.5点刻みで評価を行い、点数を合計して平均値を求め、2.0以上3.5を超えないものを好適なものとしている。2.0以上で3.0を越えないものをより好適としている。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を記述して本発明を具体的に詳述するが、これによって本発明が限定等されるものではない。
【0047】
実施例1
セルロース(商品名:セオラスST−02、旭化成(株)製)80重量%に対し、OPC含有植物抽出物(商品名:フラバンジェノール、(株)東洋新薬製)とスフィンゴ脂質含有米抽出物(商品名:オリザセラミド−P(スフィンゴ脂質3重量%含有)、オリザ油化(株)製)の混合粉体を20重量%として、混合粉体の比率を変えた組成物を製造した。仕込み量を約1kgとし、混合はビニール袋混合によって行った。それぞれの組成物について、5名の専門パネラーにより、前記した基準に従い官能試験を行い、評価を行った。
混合比率の変化と製造された組成物の評価を表1に示した。
【表1】

【0048】
実施例2
スフィンゴ脂質含有物としてこんにゃく芋抽出物(商品名:こんにゃくセラミド(粉末タイプ スフィンゴ脂質3重量%、サイクロデキストリンを含む)、ユニチカ(株)製)を使用した他は、実施例1と同様にして組成物を製造し、同様の評価を行った。
混合比率の変化と製造された組成物の評価を表2に示した。
【表2】

【0049】
実施例3
スフィンゴ脂質含有物として小麦抽出物(商品名:ニッサン N−セラミド(スフィンゴ脂質4重量%を含む、精製小麦末、二酸化ケイ素を含む)、日本油脂(株)製)を使用した他は実施例1と同様にして組成物を製造し、同様の評価をした。
混合比率の変化と製造された組成物の評価を表3に示した。
【表3】

【0050】
実施例4
スフィンゴ脂質含有物として米胚芽抽出物(商品名:ニップンセラミドRPS(スフィンゴ脂質含有量6重量%、環状オリゴ糖を含む)日本製粉(株)製)を使用した他は、実施例1と同様にして、組成物を製造し、同様の評価をした。
混合比率の変化と製造された組成物の評価を表4に示した。
【表4】

【0051】
実施例5
セルロース(商品名:セオラスST−02、旭化成(株)製)80重量%に対し、OPC含有植物抽出物(商品名:ピクノジェノール、(株)トレードピア製)とスフィンゴ脂質含有米抽出物(商品名:オリザセラミド−P(スフィンゴ脂質3重量%含有、炭酸カルシウム、デンプン分解物を含む)、オリザ油化(株)製)の混合粉体を20重量%として混合粉体の比率を変えた組成物を製造した。仕込み量を約1kgとし、混合はビニール袋混合によって行った。製造した組成物の官能評価は実施例1と同様にした。
混合比率の変化と製造された組成物の評価を表5に示した。
【表5】

【0052】
実施例6
実施例1におけるサンプル(6)69g、火棘抽出物777g、ビタミンC(VC−80R、日本油脂(株)製)111g、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F、三菱化学フーズ(株)製)25g、微粒二酸化ケイ素(サイロページ760、富士シリシア化学(株)製)18gを秤取し、混合した。得られた混合物を1錠の重さが290mgとなるように加圧成形して錠剤を得た。
錠剤を服用した結果、強い苦味等の飲み難さは感じられず、且つ、弱い渋みの効能感があることから、継続飲用可能と判断された。
【0053】
実施例7
実施例6で調製した錠剤を用いて、美肌効果を評価した。
実施例6の錠剤を被験食品とし、プラセボとの二重盲検試験とした。対象は40歳代〜50歳代の健常女性13名とし、無作為に被験食品群6名、プラセボ群7名にわけて試験を実施した。プラセボは外観を被験食品と同一にして調製した。すなわち、乳糖(乳糖(200M)、メグレ・ジャパン(株)製)730g、セルロース(セオラスST−02、旭化成(株)製)160g、クチナシ色素(ナチュラルイエローFT−6B、池田糖化(株)製)67g、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F、三菱化学フーズ(株)製)25g、微粒二酸化ケイ素(サイロページ760、富士シリシア化学(株)製)18gを秤取し、混合した。得られた混合物を1錠の重さが290mgとなるように加圧成形してプラセボ錠剤を得た。
摂取期間はいずれも2ヶ月間とした。被験食品、プラセボを各群1日4錠、自由に摂取することとした。検査は摂取開始直前、摂取終了直後(摂取2ヵ月後)とした。
評価項目は、美肌効果の指標として、メラニン量、水分量、水分蒸散量とした。メラニン量、水分量の測定部位は頬部とし、水分蒸散量の測定部位は上腕部とした。なお、測定は出来る限り環境を同一に保つ為、測定前には規定条件に設定した室内(室温20±5℃、相対湿度50±10%)を用意し、対象者は洗顔後、規定条件に設定した室内に20分以上安静に待機してもらった。
メラニン量の測定は、Courage+Khazaka Electronic GmbH社「MexameterMX18」を用いた。この装置は、660nmと880nmの波長の光を皮膚に照射することにより、皮膚から反射される光を測定するものである。
水分量の測定は、Courage+Khazaka Electronic GmbH社「Corneometer CM825」を用いた。この装置は、水の遊電定数がその他の物質の誘電定数と著しくことなることを利用して、角層の水分量によって異なる静電容量より間接的に角質水分量を算出するものである。
水分蒸散量は、Courage+Khazaka Electronic Gmbh社「Tewameter TM210」を用いた。この装置は、皮膚や物体の表面から蒸発する水分がFickの法則に従って拡散すると仮定し、センサーを通過する水分の温湿度を測定することにより、その値から蒸散量(g/hm2)を算出するものである。
【0054】
<結果>
【表6】

【表7】

【表8】

【0055】
その結果、メラニン量(表6)、水分量(表7)、水分蒸散量(表8)の各項目について、被験食品群のプラセボ群に比較して著しい改善効果が認められた。特にメラニン量に対する効果が顕著であった。これらの改善効果は、肌のくすみの防止、肌荒れ防止、肌色の改善、又は、しわ防止といった美肌作用に有効である効果である。
以上より、本発明の組成物は、肌のくすみの防止、肌荒れ防止、肌色の改善、又は、しわ防止といった美肌作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明に係る組成物は、食品、就中、健康食品、所謂サプリメントとして食生活を補助することができるものである。従って、本発明は当該分野における産業に利用されるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質の割合が重量比で3.7対1から150対1の割合である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
プロアントシアニジンとスフィンゴ脂質の割合が重量比で8.3対1から100対1の割合である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
プロアントシアニジンがフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物である請求項1乃至3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
フラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物の重合度が2〜4である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
プロアントシアニジンが、松樹皮抽出物由来であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
スフィンゴ脂質がスフィンゴシンの長鎖脂肪酸アミド構造を含む物質である請求項1乃至5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
プロアントシアニジンがフラバン−3−オール及び/又はフラバン−3,4−ジオールの縮重合物であって、スフィンゴ脂質がセラミドである請求項1乃至7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
縮重合物の重合度が2〜4である請求項8記載の組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の組成物を含んでなる食品。
【請求項11】
形状が錠剤である請求項10記載の食品。
【請求項12】
美肌作用を有する請求項10または11記載の食品。
【請求項13】
請求項1ないし9記載の組成物を含有し、美肌作用を有するものであることを特徴とし、美肌作用を得るために用いられる旨の表示を付した食品。
【請求項14】
美肌作用が、肌のくすみの防止、肌荒れ防止、肌色の改善、又は、しわ防止である、請求項12または13記載の食品。
【請求項15】
請求項1乃至9のいずれか記載の組成物を含む肌質改善剤。


【公開番号】特開2006−89448(P2006−89448A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280539(P2004−280539)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】