説明

プロアントシアニジン含有組成物

【課題】プロアントシアニジンが有する種々の生理活性を顕著に増強する組成物を提供すること。
【解決手段】松樹皮由来のプロアントシアニジンと茶由来のトリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する経口用組成物を提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロアントシアニジンの生理活性作用を増強するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは、各種植物中に存在する縮合または重合(以下、縮重合という)したタンニンであり、フラバン−3−オールまたはフラバン−3,4−ジオールを構成単位として縮重合した化合物群である。これらは、酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジンなどのアントシアニジンを生成することから、その名称が与えられている。プロアントシアニジンの中でも、特に重合度が2〜4の縮重合体をオリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin;以下、OPCという)という。
【0003】
プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、強力な抗酸化作用を有し(特許文献1)、さらに、血中脂質を改善する効果;抗高血圧効果;血糖値上昇抑制効果;血管の弾力性を回復させる効果(血管保護効果);ビタミンCの利用効率を高める効果;血液の流動性を改善する効果などを有することが知られている。
【0004】
近年、このようなプロアントシアニジンの種々の生理活性作用を有効利用するために、他の成分との組み合わせが検討され、プロアントシアニジンの生理活性作用の増強や他の疾病疾患に対する相乗的な効果が見出されている(特許文献2〜8)。しかし、このような作用のみならず、プロアントシアニジンが有する種々の生理活性作用をより高めることの可能な手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−16982号公報
【特許文献2】特開2003−146898号公報
【特許文献3】特開2003−95965号公報
【特許文献4】特開2002−275076号公報
【特許文献5】特許第2503107号明細書
【特許文献6】特開平5−112441号公報
【特許文献7】特開平11−80009号公報
【特許文献8】特開2002−238497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プロアントシアニジンが有する種々の生理活性作用をより高めることができる新規な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の組成物は、プロアントシアニジンと3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の経口用組成物は、(A)松樹皮由来のプロアントシアニジンと(B)茶由来の3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する。
【0009】
好ましい実施態様においては、上記3,4,5−トリヒドロキシフェニル基は、ガロイル基である。
【発明の効果】
【0010】
上記のプロアントシアニジンとトリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する組成物を経口投与あるいは経皮投与することにより、プロアントシアニジンが有する血中の脂質改善効果、脂質代謝改善効果、血糖値上昇抑制効果、抗高血圧効果、血流改善効果、美肌効果などの生理活性を顕著に増強することができる。これらの効果は、プロアントシアニジンおよびトリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類それぞれ単独投与では得られない優れた効果である。本発明の組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに効果的に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ラットに松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する飼料、松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基を有しないカテキンを含有する飼料、および松樹皮抽出物のみを含有する飼料をそれぞれ28日間摂取させた場合の、血圧上昇率の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の組成物について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0013】
本発明の組成物は、プロアントシアニジンと3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有し、必要に応じて、その他の成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0014】
(プロアントシアニジン)
本発明に用いられるプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好適である。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体:OPC)がさらに好ましい。OPCは、特に強力な抗酸化物質である。プロアントシアニジンは、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの植物の樹皮;ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子;大麦;小麦;大豆;黒大豆;カカオ;小豆;トチの実の殻;ピーナッツの薄皮;イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0015】
特に、OPC含有量が高いプロアントシアニジンまたはOPC含有量が高いプロアントシアニジンを含む抽出物を用いると、重合度の高いプロアントシアニジン(OPC含有量が少ないもの)を用いた場合と対比して、優れた脂質代謝改善効果、抗高血圧効果、血糖値上昇抑制効果などが得られる。
【0016】
本発明の組成物に用いられるプロアントシアニジンとしては、上記植物の樹皮、果実もしくは種子の粉砕物、またはこれらの抽出物のような材料を使用することができる。これらの中で、プロアントシアニジンを豊富に含有する点で、植物由来の抽出物を用いることが好ましく、特に、松樹皮由来の抽出物を用いることが好ましい。上記プロアントシアニジンを含む植物のうち、松樹皮がOPCを豊富に含むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。上記抽出物は、さらに、夾雑物を除去したものが好ましい。
【0017】
以下、OPCを豊富に含む松樹皮を原料植物として用いた例に挙げて、プロアントシアニジンを主成分とする抽出物の調製方法を説明する。
【0018】
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0019】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0020】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水を用いることが好ましい。これらの水には、抽出効率を向上させる点から、塩化ナトリウムなどの塩を添加することが好ましい。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、メチルエチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、水、熱水、エタノール、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく、食品、医薬品に用いるときの安全性の観点から、水、熱水、エタノール、および含水エタノールがより好ましい。
【0021】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されない。例えば、松樹皮の乾燥重量1重量部に対して、50〜120℃、好ましくは70〜100℃の熱水を1〜50重量部加えて抽出することによって、生理活性作用が高く、水溶解性の高い松樹皮抽出物を得ることができる。加温抽出法、超臨界流体抽出法などを用いてもよい。
【0022】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0023】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0024】
上記抽出により得られた松樹皮抽出物は、プロアントシアニジン含有量を増加させる目的で精製してもよい。精製には、通常、酢酸エチルなどの溶媒が用いられるが、食品、医薬品としての安全性の面から、溶媒を使用しない方法、例えば、限外濾過、あるいはダイヤイオンHP−20、セファデックス−LH20、キチンなどの吸着性担体を用いたカラム法またはバッチ法により精製することが好ましい。
【0025】
本発明において、プロアントシアニジンを主成分として含む松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法によりに調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0026】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mLで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0027】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mLを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mLに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、OPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物を得ることができる。
【0028】
上記松樹皮のような原料植物に由来する抽出物は、40重量%以上のプロアントシアニジンを含有することが好ましい。さらに、この原料植物由来の抽出物中にOPCを20重量%以上含有することが好ましく、30重量%以上含有することがより好ましい。このようにプロアントシアニジンを高い割合で含有する原料として、上述のように松樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0029】
OPCは、抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果などを有する。さらに、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果;血管の弾力性を回復させる効果;血液中でのリポタンパク質が活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷したリポタンパク質が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果;活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果;ビタミンEの増強剤としての効果なども有する。
【0030】
(3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類)
本発明の組成物は、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類(以下、THPカテキン類という場合がある)を含有する。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称であり、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体、およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体などが一般的である。
【0031】
THPカテキン類としては、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどが挙げられる。これらのTHPカテキン類の中でも、トリヒドロキシフェニル基がガロイル基であるカテキン類が好ましい。このようなガロイル基を有するカテキン類としては、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどが挙げられる。
【0032】
THPカテキン類は、例えば、ツバキ科の植物(例えば、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶葉)、麻黄などの植物体に含有される。これらの植物あるいはその粉砕物または抽出物をTHPカテキン類として用いてもよい。好ましくはツバキ科の植物、あるいはその粉砕物またはその抽出物である。例えば、緑茶の葉には、約10〜15%のカテキンが含有されており、このカテキンのうち、約80%以上がTHPカテキン類であり、約50%以上がTHPカテキン類の1つであるガロイル基を有するカテキン類であるため、好適である。
【0033】
THPカテキン類は、プロアントシアニジンと相俟って、プロアントシアニジンが有する種々の生理活性作用を顕著に増強することができる。このように、THPカテキン類が、プロアントシアニジンの複数の生理活性作用を効率よく増強する材料であることは、発明者らにより初めて見出された。特に、ガロイル基を有するカテキン類は、高い抗酸化活性だけでなく、血糖値上昇抑制作用、抗高血圧作用、抗高脂血症等にも優れた効果を有することから、プロアントシアニジンが有する種々の生理活性作用をさらに顕著に増強することができる。
【0034】
THPカテキン類は、その他、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。
【0035】
(その他の成分)
本発明の組成物は、上記プロアントシアニジンとTHPカテキン類とを含み、必要に応じて、種々の成分を含有し得る。例えば、通常の食品や医薬品として添加し得る成分(賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、栄養成分、食品添加物など);および化粧品、医薬部外品などの皮膚外用剤として通常用いられる成分(美白剤、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐剤、香料、ゲル化剤、高分子ポリマー、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、各種皮膚栄養剤など)が挙げられる。
【0036】
栄養成分としては、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、リボフラビン、β-カロテン、葉酸、ビオチンなどのビタミン類;カルシウム、マグネシウム、セレン、鉄などのミネラル類;タウリン、ニンニクなどに含まれる含硫化合物;ヘスペリジン、ケルセチンなどのフラバノイド類やフラボノイド類;難消化性デキストリン、アルギン酸、キチン、キトサン、グアーガムなどの食物繊維;大豆蛋白、コラーゲンなどのタンパク質;ペプチド;アミノ酸;乳脂肪、ラード、牛脂、魚油などの動物性油脂;大豆油、菜種油などの植物性油脂;オレンジ、レモン、グレープフルーツ、いちごなどの果実およびその果汁;ローヤルゼリー、プロポリスなどが挙げられる。食品添加物としては、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖アルコール、液糖、調味料などが挙げられる。
【0037】
(プロアントシアニジン含有組成物)
本発明の組成物は、上述のように、プロアントシアニジンとTHPカテキン類とを含有し、必要に応じて、その他の成分を含有する。プロアントシアニジンおよびTHPカテキン類は、上述のように、単離された化合物、それらを含む食品材料、およびその食品材料の抽出物のいずれでもよい。例えば、プロアントシアニジンを含有する植物抽出物にTHPカテキン類を含有する植物抽出物を加える。具体的には、松樹皮、桂皮などのようにプロアントシアニジンを含有し、さらに含有されるカテキン類のほとんどがトリヒドロキシフェニル基を有しないカテキン類である植物の抽出物に、THPカテキン類を含む植物抽出物を加える。植物抽出物が、プロアントシアニジンおよびTHPカテキン類の両者を含む場合は、目的に応じて、必要とされる成分(例えば、プロアントシアニジンを多量に含有する松樹皮抽出物)を加えることによって、組成物中の各成分の量比が適宜調整され得る。
【0038】
本発明の組成物中のプロアントシアニジンとTHPカテキン類との含有割合は、任意である。好ましくは、プロアントシアニジン100重量部に対して、上記THPカテキン類を1重量部〜5000重量部、より好ましくは3重量部〜2000重量部、さらに好ましくは10重量部〜1000重量部、最も好ましくは50重量部〜500重量部の割合で含有し得る。
【0039】
本発明の組成物中のプロアントシアニジンの含有量に特に制限はない。好ましくは、成人1日あたりの摂取量が、プロアントシアニジンとして1〜1000mg、より好ましくは2〜500mgとなるように含有することが好ましい。経皮投与の場合は、局所的な投与となるため、所定濃度であることが好ましく、具体的には、プロアントシアニジンが、組成物中に、好ましくは0.00001重量%〜20重量%、より好ましくは0.0001重量%〜10重量%、さらに好ましくは0.001重量%〜10重量%、最も好ましくは0.01重量%〜10重量%の割合で含有され得る。
【0040】
本発明の組成物中のTHPカテキン類の含有量に特に制限はない。好ましくは成人1日あたりの摂取量が、10mg〜10000mg、より好ましくは20mg〜5000mgとなるように含有することが好ましい。経皮投与の場合は、プロアントシアニジンと同様に局所的な投与となるため、所定濃度であることが好ましく、具体的には、THPカテキン類が、組成物中に、好ましくは0.00001重量%〜20重量%、より好ましくは0.0001重量%〜20重量%、さらに好ましくは0.001重量%〜20重量%、最も好ましくは0.01重量%〜20重量%の割合で含有され得る。
【0041】
本発明の組成物は、目的に応じて、例えば、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして、各種の形態に調製することができる。
【0042】
上述の用途のうち、本発明の組成物を食品、医薬品、医薬部外品などとして経口摂取(投与)する場合、その形態に特に制限はない。例えば、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、丸剤、粉末(散剤)、顆粒、ティーバッグ、飴状の粘稠な液体、液体、ペーストなどの当業者が通常用いる形態で利用される。これらは、形状または好みに応じて、そのまま摂取してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでもよく、成分を浸出させたものを摂取してもよい。
【0043】
本発明の組成物を医薬部外品、化粧品などとして皮膚に塗布する場合にも、これらの形態に特に制限はなく、軟膏剤、クリーム剤、乳液、ローション、パック、湿布剤、浴用剤などの従来皮膚外用剤に用いられる形態であればいずれでもよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0045】
本実施例においては、プロアントシアニジンを含む材料としてプロアントシアニジンを40重量%(OPCとして材料中20重量%含有)含有する松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、東洋新薬株式会社)を用いた。THPカテキン類としては、カテキンを80重量%含有し、このうちガロイル基を有するカテキン類を60重量%以上含有する緑茶由来の抽出物(商品名:ポリフェノン70S、東京フードテクノ株式会社)およびエピガロカテキンガレートを93重量%含有する緑茶由来の抽出物(商品名:テアビゴ、ロシュ・ビタミン・ジャパン株式会社)を用いた。ここで、上記「ポリフェノン70S」を、THPカテキン類を48重量%以上含有することから、「茶カテキン48」といい、「テアビコ」は、THPカテキン類を93重量%以上含有することから、「茶カテキン93」ということにする。トリヒドロキシフェニル基を有しないカテキン類としてカテキン(シグマ アルドリッチ ジャパン)を用いた。
【0046】
(実施例1)
次の材料を混合し、精製飼料を調製した:コーンスターチ29.49重量%、ミルクカゼイン20重量%、アルファルファミール10重量%、α-ポテトスターチ10重量%、セルロースパウダー10重量%、シュークロース10重量%、大豆油6重量%、ミネラル混合物(AIN−76)3.5重量%、ビタミン混合物(AIN−76)1重量%、およびアスコルビン酸0.01重量%。松樹皮抽出物が全体の1.0重量%および茶カテキン48が全体の0.5重量%となるように、これらを精製飼料に混合し、成形して固形飼料を調製した(飼料1とする)。
【0047】
(実施例2)
茶カテキン48の代わりに、茶カテキン93を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形飼料を調製した(飼料2とする)。
【0048】
(比較例1)
茶カテキン48の代わりに、カテキンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固形飼料を調製した(飼料3とする)。
【0049】
(比較例2)
茶カテキン48を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、固形飼料を調製した(飼料4とする)。
【0050】
(比較例3)
松樹皮抽出物を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、固形飼料を調製した(飼料5とする)。
【0051】
(実施例3:血中の脂質改善効果および脂質代謝改善効果)
3週齢の雄性モルモット(日本エスエルシー株式会社)に市販の固形飼料(RC4、オリエンタル酵母株式会社)を一週間与えて馴化させた。このモルモットを総無作為化法により一群7匹ずつわけた。各群のモルモットに上記飼料1〜5をそれぞれ28日間自由摂取させた。さらに、対照群として精製飼料を自由摂取した群を設けた。摂取期間終了後、各群のモルモットの血中の総コレステロール値、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、およびトリグリセリドの濃度を測定した。結果を表1に示す。なお、測定方法は以下のとおりである。
【0052】
総コレステロール(mg/dL)は、「セロテック」TCHO−L(株式会社セロテック製)を用いて、酵素法により測定した。
【0053】
LDLコレステロール(mg/dL)は、コレステストLDL(第一化学薬品株式会社製)を用いて、酵素法により測定した。
【0054】
HDLコレステロール(mg/dL)は、コレステストHDL(第一化学薬品株式会社製)を用いて、酵素法により測定した。
【0055】
トリグリセリド(mg/dL)は、「セロテック」TG−L(株式会社セロテック製)を用いて、酵素法により測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果から、実施例の松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する飼料(飼料1および2)を摂取した群は、比較例の松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基(THP基)を有しないカテキンを含む飼料(飼料3)、あるいは松樹皮抽出物およびTHPカテキン類のいずれか一方のみを含む飼料(飼料4および5)を摂取した群に比べて、血中総コレステロール、およびトリグリセリドの含有量が低いことがわかる。さらに、コレステロールのうち、善玉といわれるHDLコレステロールの血中濃度が高いことがわかる。これらのことは、プロアントシアニジンとTHPカテキン類とを含有する組成物が、それぞれ単独で摂取した場合には得られない優れた血中脂質改善効果および脂質代謝改善効果を有することを示す。
【0058】
(実施例4)
松樹皮抽出物が全体の0.5重量%および茶カテキン48が全体の0.5重量%となるように、基本飼料(MF飼料、オリエンタル酵母株式会社)に混合し、成形して固形飼料を調製した(飼料6とする)。
【0059】
(比較例4)
茶カテキン48の代わりに、カテキンを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、固形飼料を調製した(飼料7とする)。
【0060】
(比較例5)
茶カテキン48を混合しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、固形飼料を調製した(飼料8とする)。
【0061】
(実施例5:血糖値上昇抑制効果)
1群5匹の4週齢のSD系ラット(日本エスエルシー株式会社)に上記飼料6〜8をそれぞれ2週間自由摂取させた。さらに、対照群として基本飼料を自由摂取した群を設けた。摂取期間終了後、12時間絶食した。その後、各群のラットそれぞれに、グルコースが250mg/100g体重となるように、20重量%グルコース溶液を強制経口投与することによりグルコース負荷試験を行った。負荷試験直前の血糖値と負荷試験後60分経過後の血糖値を測定し、血糖値上昇抑制効果を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果から、実施例の松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する飼料(飼料6)を摂取した群は、比較例の松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基(THP基)を有しないカテキンを含む飼料(飼料7)、あるいは松樹皮抽出物のみを含む飼料(飼料8)を摂取した群に比べて、血糖値の上昇が抑制されていることがわかる。
【0064】
上記表1および表2の結果から、松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する組成物は、血中脂質改善効果および血糖値上昇抑制効果を有するため、ダイエットに対しても高い効果が得られるものと考えられる。
【0065】
(実施例6:抗高血圧効果)
4週齢の雄性のSHRラット(SHR等疾患モデル共同研究会)に基本飼料と水とを1週間与えて馴化させた。このラットを各群の体重の平均値がほぼ均一となるように、一群7匹ずつわけた。各群のラットに上記飼料6〜8をそれぞれ28日間自由摂取させた。さらに、対照群として基本飼料を自由摂取した群を設けた。なお、摂取期間中、NaClを1重量%含有する飲水を全群に自由摂取させた。
【0066】
飼料給餌開始日を0日目として、7、14、21、および28日目に、各群のラットの収縮期血圧を非観血式自動血圧計(BP−98A:ソフトロン)を用いて測定した。給餌開始日の収縮期血圧に対する各給餌日数経過後の収縮期血圧の上昇率を以下の式からそれぞれ算出した。収縮期血圧の上昇率の推移を図1に示す。
【0067】
【数1】

【0068】
図1の結果から、実施例の松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する飼料(飼料6)を摂取した群は、比較例の松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基(THP基)を有しないカテキンを含む飼料(飼料7)、あるいは松樹皮抽出物のみを含む飼料(飼料8)を摂取した群に比べて、血圧の上昇を抑制していることがわかる。このことは、松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する組成物が、高血圧症の予防・治療剤として有効であることを示す。
【0069】
(実施例7)
松樹皮抽出物、茶カテキン93、および賦形剤を表3に記載の割合(重量%)にて混合して錠剤(1錠当たり、約200mg)を製造し、これを食品1とした。
【0070】
(比較例6および7)
実施例7と同様にして、表3に記載の成分を混合して錠剤(1錠当たり、約200mg)をそれぞれ製造し、これらを食品2および3とした。
【0071】
【表3】

【0072】
(実施例8:血流改善効果)
22〜63歳までの健常男女24名(男性12名、女性12名)を被験者とし、性別を均等にする以外はランダムに3群にわけた。各群8名の被験者について、まず、食品摂取前に血流量を測定した。次いで、被験者に上記食品1〜3(1錠当たり約200mg)を1日あたり2錠の割合で水100mLと共に摂取させた。この摂取を28日間にわたって行い、摂取期間終了後、再度血流量を測定した。血流量は、右手の人差し指の皮下の部位を血流計(レーザー血流画像化装置PIM II;Sweden Permied社)を用いて測定した。なお、測定前の3時間は飲食を避け、安静にしてもらった。結果を表4に示す。表4の値は、平均値±標準誤差であり、数値が大きいほど、血流量が多いことを示す。
【0073】
【表4】

【0074】
表4の結果から、実施例の松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する食品(食品1)を摂取した群は、比較例の松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基(THP基)を有しないカテキンを含む食品(食品2)、あるいは松樹皮抽出物のみを含む食品(食品3)を摂取した群に比べて、血流量が大きく増加していることがわかる。このことは、松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する組成物が、末梢組織における血流改善効果を有することを示す。
【0075】
(実施例9)
松樹皮抽出物、茶カテキン48、アルコール、グリセリン、および1,3−ブチレングリコールを表5に記載の割合(重量%)にて精製水に溶解させ、化粧水を調製した。これを化粧水1とした。
【0076】
(比較例8および9)
実施例9と同様にして、表5に記載の成分を混合して精製水に溶解させ、化粧水を調製した。これらを化粧水2および3とした。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例10:美肌効果)
肌の荒れ(シミ、シワ、およびクスミ)について悩みを持つ18名の女性を被験者としてランダムに3群にわけた。各群の被験者の肌の荒れについて気になる個所に、上記化粧水1〜3(2mL)を就寝前に1日1回の頻度で塗布した。この塗布を28日間にわたって行った。塗布期間終了後にシミ、シワ、およびクスミについて改善効果があったかどうかを自己評価してもらい、各項目について明らかに改善効果があった人数をカウントした。結果を表6に示す。
【0079】
【表6】

【0080】
表6の結果から、実施例の松樹皮抽出物とTHPカテキン類とを含有する化粧水(化粧水1)を塗布した群は、比較例の松樹皮抽出物およびTHPカテキン類のいずれか一方のみを含有する化粧水(化粧水2および3)を塗布した群に比べて、シワ、シミ、およびクスミが改善されていることがわかる。このことは、松樹皮抽出物とトリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する組成物が、美肌効果を有することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の組成物は、経口投与(摂取)あるいは経皮投与(塗布)することにより、プロアントシアニジンが有する脂質代謝改善効果、血中の脂質改善効果、血糖値上昇抑制効果、抗高血圧効果、血流改善効果、美肌効果などの生理活性作用を顕著に増強することができる。これらの効果は、プロアントシアニジンおよびTHPカテキン類をそれぞれ単独で投与した場合には得られない優れた効果である。本発明の組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに利用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)松樹皮由来のプロアントシアニジンと(B)茶由来の3,4,5−トリヒドロキシフェニル基を有するカテキン類とを含有する、経口用組成物。
【請求項2】
前記3,4,5−トリヒドロキシフェニル基が、ガロイル基である、請求項1に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−159283(P2010−159283A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64994(P2010−64994)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【分割の表示】特願2003−295193(P2003−295193)の分割
【原出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】