説明

プログラムおよび情報処理装置

【課題】特定の患者本人の傷病に言及する傷病名であるか否かに応じたコードの付与を支援する。
【解決手段】傷病名文字列検出部120は、傷病名を表す用語の情報を含む傷病名辞書101を参照して、ある患者に関して記述された文章に含まれる文字列である対象文字列のうち、傷病名の文字列を特定する。一般論条件情報104は、特定の患者の傷病に言及していない表現の条件として予め設定された条件を表す。一般論判定部150は、特定された傷病名の文字列が、対象文字列中の文字列であって一般論条件情報104が表す条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、対象文字列を含む文章の記述の対象である患者本人の傷病に言及していない傷病名であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムおよび情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療関係の情報を処理する業務において、疾病や症状、および傷病等の名称に対して、国際機関などによって定められたコードを付与することがある。このようなコードの例として、ICD10およびMedDRA等が挙げられる。ICD10は、死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈、および比較を行うために世界保健機関(WHO)が作成したコードであり、「疾病及び関連保険問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)」の10回目の修正版である(http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html参照)。MedDRAは、日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(ICH)での検討の結果、開発された医学用語集であり、MedDRAの日本語版は「ICH国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)」と呼ばれている(http://www.sjp.jp/~jmo_new2006/php/indexj.php)。
【0003】
特許文献1には、カルテで使用される種々の病名に対してICDコードを付与する技術が開示されている。特許文献1に記載のICDコード付与装置は、病名データとICDコードとを関連付けて記憶すると共に、病名データがICDコードに対応していない場合、ICDコードに対応する病名のうち、病名データに相当する病名を関連付けて記憶する記憶手段と、処方データに含まれる病名データに基づいて、記憶手段で対応するICDコードがある場合にはICDコードを付与し、ICDコードがない場合には、記憶手段で対応する病名データに変換した後、ICDコードを付与する制御手段と、を備える。
【0004】
また、特許文献2には、表記ゆらぎを含む傷病名文字列をコード化するための技術が開示されている。特許文献2に記載の技術では、入力文字列を表記ゆらぎテーブルと照合して、入力文字列中の表記ゆらぎ部分を標準的な表記に変換し、変換後の文字列を傷病名マスタテーブルに照合して傷病名を検出し、検出した傷病名をコード化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107603号公報
【特許文献2】特開2003−256462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ある特定の患者について記述された文章に含まれる傷病名には、当該特定の患者本人の傷病に対応するものでないものもある。また、傷病名に付与すべきコードの定義において、同じ傷病名を表す文字列であっても、その文字列が患者本人の傷病に対応するものであるか否かに応じて、異なるコードを付与するよう定義されていたり、コードの付与自体を行わないよう定義されていたりすることがある。
【0007】
本発明の目的は、特定の患者について記述された文章に含まれる傷病名の文字列が当該患者本人の傷病に対応するものであるか否かに応じたコードの付与を支援できるプログラムおよび情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、傷病名を表す用語の情報を含む辞書情報を参照して、ある患者に関して記述された文章に含まれる文字列である対象文字列のうち、傷病名の文字列を特定する第1特定ステップと、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の傷病に対応していない表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の記述の対象である前記患者本人の傷病に対応するものでない傷病名として特定する第2特定ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の既往の傷病に対応する表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記患者本人の既往の傷病を表す傷病名として特定する第3特定ステップ、を前記コンピュータにさらに実行させる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の現在の傷病に対応する表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の作成の時点での前記患者本人の傷病を表す傷病名として特定する第4特定ステップ、を前記コンピュータにさらに実行させる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に係る発明において、前記第3特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象としない。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記第3特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象とせず、前記第4特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列および前記第3特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象としない。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれか1項に係る発明において、前記第1特定ステップにおいて、原因または理由を表す表現として予め設定された表現と前記対象文字列とを比較することで、前記対象文字列において原因または理由を表す部分を特定し、当該原因または理由を表す部分における前記傷病名の文字列を特定する。
【0014】
請求項7に係る発明は、傷病名を表す用語の情報を含む辞書情報を参照して、ある患者に関して記述された文章に含まれる文字列である対象文字列のうち、傷病名の文字列を特定する第1特定手段と、前記第1特定手段で特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の傷病に対応していない表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の記述の対象である前記患者本人の傷病に対応するものでない傷病名として特定する第2特定手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1または7に係る発明によると、特定の患者について記述された文章に含まれる傷病名の文字列が当該患者本人の傷病に対応するものであるか否かに応じたコードの付与を支援できる。
【0016】
請求項2に係る発明によると、特定の患者について記述された文章に含まれる傷病名の文字列が患者本人の既往の傷病を表すものであるか否かに応じたコードの付与を支援できる。
【0017】
請求項3に係る発明によると、特定の患者について記述された文章に含まれる傷病名の文字列が、当該文章の作成の時点での当該患者本人の傷病を表すものであるか否かに応じたコードの付与を支援できる。
【0018】
請求項4に係る発明によると、患者本人の傷病に対応するものでないと特定された傷病名の文字列について、患者本人の既往の傷病を表すものであるか否かの判断を省略できる。
【0019】
請求項5に係る発明によると、患者本人の傷病に対応するものでないと特定された傷病名の文字列について、患者本人の既往の傷病を表すものであるか否かの判断を省略でき、患者本人の傷病に対応するものでないと特定された傷病名および患者本人の既往の傷病を表すものであると特定された傷病名の文字列について、文章が作成された時点での患者本人の傷病を表すものであるか否かの判断を省略できる。
【0020】
請求項6に係る発明によると、対象文字列のうち、患者本人の傷病に対応するものでない傷病名と患者本人の傷病を表す傷病名とが混在して出現する可能性の高いことが知られている、原因または理由を表す部分に含まれる傷病名の文字列を、患者本人の傷病に対応するものであるか否かの判断の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の例による情報処理装置の内部構成の概略の例を示すブロック図である。
【図2】情報処理装置が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。
【図3】形態素解析の結果の例を示す図である。
【図4】コンピュータのハードウエア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態の例の情報処理装置は、ある特定の患者に関して記述された文章に含まれる文字列を処理対象とし、処理対象の文字列に含まれる傷病名のうち、当該特定の患者の傷病に言及するものでない傷病名を特定する。処理対象の文字列を含む文章は、例えば、医師や看護師等、医療機関の職員により作成される。以下では、説明のための具体例として、医療機関に入院した患者の退院時要約(サマリ)に含まれる文字列を処理対象とする。
【0023】
また、本実施形態の例および各種の変形例の以下の説明においては、疾病、疾患、外傷、および症状等、医療処置の対象となる現象の名称を纏めて「傷病名」と呼ぶ。また、以下の説明において、単に「傷病」と記載する場合、疾病、疾患、外傷、および症状等、医療処置の対象となる現象を含むものとする。
【0024】
また、以下の説明において、「文字列」とは、文字または記号の列を表すものとする。また、「表現」とは、何らかの意味を表す「文字列」であるとする。
【0025】
なお、以下の説明において、特定の患者の傷病に「言及する」傷病名とは、当該特定の患者が患っている(あるいは、過去に患ったことがある)傷病を表す傷病名を意味する。このため、特定の患者の傷病に「言及する」傷病名は、当該特定の患者の傷病に対応する傷病名であるとも捉えられる。
【0026】
図1に、本実施形態の例による情報処理装置の内部構成の概略の例を示す。図1の例の情報処理装置10は、参照データ記憶部100、対象文字列取得部110、傷病名文字列検出部120、形態素解析部130、原因理由説明部特定部140、一般論判定部150、既往判定部160、現疾患判定部170、および出力処理部180を備える。
【0027】
参照データ記憶部100は、情報処理装置10における処理のために必要な情報を記憶する。参照データ記憶部100は、傷病名辞書101、解析辞書102、原因理由表現情報103、一般論条件情報104、既往条件情報105、および現疾患条件情報106を含む。
【0028】
傷病名辞書101は、傷病名を表す用語を格納した辞書である。傷病名辞書101は、ICD10およびMedDRA/J等によって定められたコードに対応する傷病名を含む辞書であってよい。傷病名辞書101として、例えば、ICD10に対応する傷病名の用語集として財団法人医療情報システム開発センターが提供する「標準病名マスター」(http://www2.medis.or.jp/stdcd/byomei/index.html)等、一般に知られている用語集を用いればよい。傷病名辞書101は、後述の傷病名文字列検出部120が処理対象の文字列において傷病名を表す文字列を検出するときに参照される。
【0029】
解析辞書102は、単語と当該単語の文法上の役割等を表す情報とを対応づけて記憶すると共に、処理対象のテキストが記述された言語(本例では日本語)の文法規則を記憶した辞書である。本実施形態の例では、医療分野の文章が情報処理装置10の処理対象であるため、解析辞書102には、一般的な単語と共に医療分野の専門用語が解析辞書102に登録されるものとする。解析辞書102は、後述の形態素解析部130が処理対象の文字列の形態素解析を行うときに参照される。
【0030】
原因理由表現情報103は、処理対象の文字列において原因または理由を説明する部分(以下「原因理由説明部」とも呼ぶ)を特定するために用いられる情報である。原因理由表現情報103は、原因理由説明部に含まれる可能性の高い表現として予め設定された表現の情報を含む。例えば、日本語の「ので」,「ため」,「から」等、原因または理由を表す表現(以下、「原因理由表現」とも呼ぶ)が原因理由説明部に含まれる可能性の高い表現として予め設定される。本例の原因理由表現情報103は、原因理由表現の文字列および当該表現を構成する語の品詞等の情報を含む。原因理由表現情報103は、後述の原因理由説明部特定部140が処理対象の文字列において原因理由説明部を特定するときに参照される。
【0031】
一般論条件情報104は、特定の患者の傷病に言及していない表現の条件として予め設定された条件を表す情報である。本実施形態の例の説明では、ある傷病名が、特定の患者のものではなく、不特定の患者の傾向や当該特定の患者の他の患者の傷病について述べる場合等、一般的な事実に言及するために用いられる場合、その傷病名を「一般論」を表す傷病名と言う。一般論条件情報104が表す条件は、例えば、医療関係者に対するアンケートや退院時要約の文章の分析を行うことで、どのような表現に含まれる傷病名が一般論を表すことが多いかについての知識をシステムの設計者等が収集し、この知識を基に予め設定される。一般論条件情報104は、処理対象の文字列に含まれる傷病名が一般論を表す傷病名であるか否かを後述の一般論判定部150が判定するときに参照される。
【0032】
既往条件情報105は、特定の患者の既往の傷病に言及する表現の条件として予め設定された条件を表す情報である。「既往」の傷病とは、ある患者が過去に経験した傷病を意味する。既往条件情報105が表す条件は、例えば、医療関係者に対するアンケートや退院時要約の文章の分析を行うことで、どのような表現に含まれる傷病名が既往の傷病を表すことが多いかについての知識をシステムの設計者等が収集し、この知識を基に予め設定される。既往条件情報105は、処理対象の文字列に含まれる傷病名が既往の傷病を表す傷病名であるか否かを後述の既往判定部160が判定するときに参照される。
【0033】
現疾患条件情報106は、ある患者の現在の傷病に言及する表現の条件として予め設定された条件を表す情報である。患者の退院時要約に含まれる文字列を処理対象とする本実施形態の例では、処理対象の文字列を含む退院時要約に係る入院の期間内の当該患者の傷病を「現在」の傷病と呼ぶ。また、以下では、現在の傷病を「現疾患」と呼ぶこともある。現疾患条件情報106が表す条件は、例えば、医療関係者に対するアンケートや退院時要約の文章の分析を行うことで、どのような表現に含まれる傷病名が現疾患を表すことが多いかについての知識をシステムの設計者等が収集し、この知識を基に予め設定される。現疾患条件情報106は、処理対象の文字列に含まれる傷病名が現在の傷病を表す傷病名であるか否かを後述の現疾患判定部170が判定するときに参照される。
【0034】
なお、一般論条件情報104、既往条件情報105、および現疾患条件情報106の内容の詳細については後述する。
【0035】
対象文字列取得部110は、処理対象の文字列である対象文字列を取得する。対象文字列取得部110は、例えば、1人以上の患者の退院時要約を格納したデータベース(図示しない)において、入力装置(図示しない)を用いてユーザが指定した退院時要約を当該データベースから取得して対象文字列とすればよい。また例えば、データベース中の退院時要約のうちの一部をユーザが指定した場合、当該指定された一部をデータベースから取得して対象文字列とする。あるいは、例えば、入力装置を用いてユーザが入力した退院時要約を対象文字列として取得してもよい。対象文字列は、1つの文であってよいし、1つの文の一部であってもよい。あるいは、対象文字列は、複数の文を含んでいてもよい。以下では、説明を簡単にするため、対象文字列が1つの文であるとして説明する。
【0036】
傷病名文字列検出部120は、傷病名辞書101を参照し、対象文字列取得部110が取得した対象文字列に含まれる傷病名の文字列を検出する。この検出は、従来から知られている、文書中の特定の文字列を検索する技術を用いて行えばよい。例えば、ボイヤー・ムーア法等の各種の文字列マッチングの方法を用いることが考えられる(参考文献1:R. S. Boyer, J S. Moore, ”A Fast StringSearching Algorithm”,Communications of the Association for Computing Machinery, Vol. 20, No. 10, pp.762-772, 1977)。あるいは、類似文字列検索の技術(参考文献2:岡崎 直観, 辻井 潤一,「高速な類似文字列検索アルゴリズム」,情報処理学会創立50周年記念(第72回)全国大会講演論文集,2010)を用いてもよい。また例えば、固有表現抽出(参考URL1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E6%9C%89%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E6%8A%BD%E5%87%BA)または専門用語抽出(参考文献3:中川裕志,森辰則,湯本紘彰,「出現頻度と連接頻度に基づく専門用語抽出」,自然言語処理,Vol.10,No.1,pp.27−45,2003年1月)を行って対象文字列から抽出した文字列を、表記ゆれ解消の技術(参考文献4:特開2006−53866号公報)を用いて、傷病名辞書101に登録された用語と照合してもよい。さらに他の例では、対象文字列を含む退院時要約を格納したデータベースに関して、予め、全文検索の技術(参考URL2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E6%96%87%E6%A4%9C%E7%B4%A2)によって傷病名辞書101に登録された各用語についてのインデックス情報(各用語がデータベース中のどの文書に出現するか等を示す索引情報)を作成しておき、このインデックス情報を用いて対象文字列における傷病名の文字列を検索してもよい。なお、以下の説明では、傷病名文字列検出部120により検出される傷病名の文字列を単に「傷病名」と呼ぶこともある。
【0037】
形態素解析部130は、解析辞書102を参照し、対象文字列に対して形態素解析を行う。形態素解析部130は、一般に公開されている形態素解析ソフトウエアを用いて実現してよい。一般に公開されている形態素解析ソフトウエアとして、例えば、「JUMAN」、「茶筌」、「MeCab」等が知られている。なお、解析辞書102は、形態素解析部130を実現する形態素解析ソフトウエアに対応した構成の辞書情報としておく。
【0038】
原因理由説明部特定部140は、原因理由表現情報103を参照すると共に、対象文字列の形態素解析の結果を用いて、対象文字列に含まれる原因理由説明部を特定する。本実施形態の例では、原因理由説明部特定部140により特定された原因理由説明部に含まれる傷病名が、後述する一般論判定部150、既往判定部160、および現疾患判定部170の処理対象となる。原因理由説明部特定部140は、例えば、原因理由表現情報103における、原因理由表現の文字列およびこの表現を構成する品詞等の情報と、対象文字列の形態素解析の結果とを照合して、対象文字列において原因理由表現を特定し、特定した表現と、対象文字列中の特定した表現以前の所定の部分と、を含む部分を原因理由説明部として特定する。例えば、対象文字列である文の先頭から、原因理由表現までの部分を、原因理由説明部とすればよい。あるいは、例えば、対象文字列に対して構文解析を行い、その結果として得られる構文木において、原因理由表現に対応するノードを根(ルート)ノードとする部分木によって表される部分を原因理由説明部として特定してもよい。
【0039】
一般論判定部150は、一般論条件情報104を参照し、対象文字列に含まれる傷病名のそれぞれが、一般論を表す傷病名であるか否かを判定する。本実施形態の例において、一般論判定部150は、原因理由説明部特定部140により特定された、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名を判定の対象とする。一般論判定部150は、例えば、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、一般論条件情報104が表す条件を満たす表現に含まれる傷病名を、一般論を表す傷病名であると判定する。
【0040】
既往判定部160は、既往条件情報105を参照し、対象文字列に含まれる傷病名のそれぞれが、対象文字列を含む退院時要約に係る患者本人の既往の傷病を表す傷病名であるか否かを判定する。本実施形態の例において、既往判定部160は、原因理由説明部特定部140により特定された、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名から、一般論判定部150において一般論の傷病名であると判定されたものを除外した傷病名を判定の対象とする。既往判定部160は、例えば、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、既往条件情報105が表す条件を満たす表現に含まれる傷病名を、既往の傷病を表す傷病名であると判定する。
【0041】
現疾患判定部170は、現疾患条件情報106を参照し、対象文字列に含まれる傷病名のそれぞれが、対象文字列を含む退院時要約に係る患者本人の現在の傷病を表す傷病名であるか否かを判定する。本実施形態の例において、現疾患判定部170は、原因理由説明部特定部140により特定された、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名から、一般論判定部150で一般論を表すと判定された傷病名および既往判定部160で既往の傷病を表すと判定された傷病名を除外した傷病名を判定の対象とする。現疾患判定部170は、例えば、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、現疾患条件情報106が表す条件を満たす表現に含まれる傷病名を、現在の傷病を表す傷病名であると判定する。
【0042】
なお、対象文字列中の原因理由説明部に含まれる傷病名を、一般論判定部150、既往判定部160、および現疾患判定部170の判定対象とするのは、患者について記述された医療関係の文章において、原因または理由を説明する部分に、一般論の傷病名、既往の傷病の傷病名、および現疾患の傷病名が混在して出現することが、文章のその他の部分と比較して、より多いことが知られているためである。
【0043】
出力処理部180は、一般論判定部150、既往判定部160、および現疾患判定部170における処理の結果を出力する処理を行う。例えば、図示しない表示装置に処理の結果を表示させる。また例えば、図示しないプリンタにより処理の結果を印刷させてもよい。あるいは、図示しない記憶装置に処理の結果を保存させてもよいし、情報処理装置10にネットワークを介して接続された他の情報処理装置に処理の結果を送信してもよい。出力処理部180は、以上で挙げた出力態様の例の1つだけを実行してもよいし、複数を実行してもよい。
【0044】
図2は、情報処理装置10が行う処理の手順の例を示すフローチャートである。情報処理装置10は、例えば、ユーザが図示しない入力装置を用いて対象文字列を指定し、処理の開始を指示した場合に、図2の例の手順の処理を開始する。
【0045】
まず、情報処理装置10の対象文字列取得部110は、対象文字列を取得する(ステップS10)。本例では、退院時要約を格納した図示しないデータベースから、ある患者の退院時要約においてユーザが指定した文を対象文字列として取得する。対象文字列取得部110は、取得した対象文字列を傷病名文字列検出部120に渡す。
【0046】
傷病名文字列検出部120は、傷病名辞書101を参照し、対象文字列において傷病名を表す文字列を検出する(ステップS12)。傷病名を表す文字列の検出は、傷病名文字列検出部120について図1を参照して上記で説明したとおり、従来から知られている技術を用いて行えばよい。例えば対象文字列が以下に示す[例文1]であり、傷病名辞書101に用語「下痢」が含まれている場合、ステップS12で、傷病名「下痢」が検出される。
【0047】
[例文1]
抗生剤Aで下痢をすることがあるので、選択肢から除外した。
【0048】
傷病名文字列検出部120は、対象文字列およびステップS12の検出結果の傷病名文字列を形態素解析部130に渡し、形態素解析部130は、解析辞書102を参照し、受け取った対象文字列を形態素解析する(ステップS14)。ステップS14の形態素解析は、図1を参照して形態素解析部130について上記で説明したように、一般に公開されている形態素解析ソフトウエアを用いて行えばよい。[例文1]を、形態素解析ソフトウエア「JUMAN」を用いて形態素解析した結果の例を図3に示す。
【0049】
図3の例の表において、各行の情報は、1つの形態素の情報を表す。図3の例の表の「表記」の項目は、各形態素の対象文字列における表記(つまり、対象文字列中に出現する文字列)を表す。「読み」の項目は、各形態素の読み方を表す。「原型」の項目は、各形態素の文法上の変化における原型の表記を表す。「品詞」の項目は、各形態素の文法上の品詞を表す。「活用の種類」の項目の値は、活用語である(品詞が動詞、助動詞、形容詞、または形容動詞である)形態素に対して設定され、対応する形態素の活用の種類を表す。「活用形」の項目の値は、活用語である形態素に対して設定され、対応する形態素の対象文字列中での活用形を表す。
【0050】
形態素解析部130は、図3に例示するような形態素解析の結果を原因理由説明部特定部140に渡す。
【0051】
ステップS14の形態素解析の結果を形態素解析部130から受け取った原因理由説明部特定部140は、原因理由表現情報103を参照し、対象文字列中の原因理由説明部を特定する(ステップS16)。例えば、図3の例の形態素解析結果の場合、原因理由説明部特定部140は、形態素「の」および形態素「で」の連続を、原因理由表現として特定する。そして、対象文字列[例文1]の文の先頭から、特定した原因理由表現「ので」までの部分「抗生剤Aで下痢をすることがあるので」を原因理由説明部として特定する。原因理由説明部特定部140は、ステップS16で特定した原因理由説明部を、ステップS12で検出された傷病名およびステップS14の形態素解析の結果と共に、一般論判定部150に渡す。
【0052】
一般論判定部150の判定により、ステップS16で特定された原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、一般論を表す傷病名が特定される(ステップS18)。ステップS18で、一般論判定部150は、原因理由説明部に含まれる傷病名のそれぞれについて、一般論条件情報104を参照して、一般論を表す傷病名であるか否かを判定する。一般論判定部150は、判定対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現が、一般論条件情報104が表す条件を満たす場合に、判定対象の傷病名が一般論を表すものと判定する。以下、一般論条件情報104の内容の具体例および一般論判定部150による判定の具体例を説明する。
【0053】
本具体例において、一般論条件情報104は、以下に示す[条件例1a]〜[条件例1f]を含む。[条件例1a]〜[条件例1f]は、それぞれ、特定の患者の傷病に言及していない表現のパタンとして予め設定されたパタンを含み、当該パタンに合致することを、「特定の患者の傷病に言及していない表現である」ことの条件として定める。各条件例1a〜1fに含まれるパタンは、退院時要約の分析や医療機関の職員等に対するアンケート等を事前に行うことで得られた、一般論の傷病名を含むことが多い表現のパタンである。一般論判定部150は、判定の対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現が、以下の条件例1a〜1fのいずれかを満たす場合に、当該傷病名が一般論の傷病名を表すと判定する。
【0054】
また、以下の各条件例1a〜1fで示されるパタンにおいて、「{A}」という記述は、「A」で表されるカテゴリの表現を示す。例えば、「{傷病名}」であれば、傷病名のカテゴリの表現を示す。対象文字列の原因理由説明部に含まれる傷病名が、傷病名のカテゴリの表現に該当する。なお、原因理由説明部中に「{傷病名}(等)の症状」という表現がある場合、この全体を{傷病名}とみなして、パタンに合致するか否かの判定が行われる。また、「{原因理由表現}」は、原因または理由を表す表現のカテゴリを示し、ステップS16で原因理由説明部特定部140が対象文字列中で特定した原因理由表現が当該カテゴリに該当する。また、「{助詞}」および「{動詞現在形}」のように、文法上の品詞や活用形を表すカテゴリについては、対象文字列の形態素解析の結果を用いて、当該カテゴリの表現が処理対象の原因理由説明部に存在するか否かを判定すればよい。傷病名、原因理由表現、および文法上の品詞や活用形に該当しないカテゴリ({他の患者について記述されていることを示す表現}、{他の患者の存在を示す表現})については、各カテゴリに含まれる表現を予め一般論条件情報104中に登録しておき、登録された表現と原因理由説明部中の文字列とを照合すればよい。
【0055】
なお、以下の各条件例1a〜1fで示すパタンは、正規表現の規則を利用して記述されている。具体的には、「.」(ドット)は任意の1文字を示し、「+」は直前の要素の1回以上の連続を示す。「?」は、直前の要素が省略可能である(つまり、0回または1回出現する)ことを示す。例えば、「.+」は任意の文字の連続を示す。また、「({助詞})?」は{助詞}が省略可能であることを示す。
【0056】
[条件例1a]
「対象文字列が言及する患者本人の他の患者について記述されていることを示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件であり、次のパタン例1aに合致する表現は当該条件を満たすものとする。
パタン例1a:
{他の患者について記述されていることを示す表現}.+{傷病名}.+{原因理由表現}
【0057】
パタン例1aにおける{他の患者について記述されていることを示す表現}の例としては、「当科の患者で」、「当院の患者で」、「別の患者で」、「他の患者で」等が挙げられる。これらのような表現を「他の患者について記述されていることを示す表現」のカテゴリの表現として一般論条件情報104に予め登録しておき、判定の対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現と照合することで、上記のパタン例1aに合致するか否かが判定される。例えば、対象文字列が「当院の患者で薬剤Aの投与により肝機能障害を起こしたことがあったので、候補から外した。」であり、原因理由説明部が「当院の患者で薬剤Aの投与により肝機能障害を起こしたことがあったので」であり、判定の対象の傷病名が「肝機能障害」であるとする。この場合、一般論判定部150は、他の患者について記述されていることを示す表現として予め一般論条件情報104に登録されている表現と原因理由説明部中の文字列とを照合し、他の患者について記述されていることを示す表現の1つである「当院の患者で」が原因理由説明部に含まれていることを確認する。さらに、この「当院の患者で」と傷病名「肝機能障害」との間に1文字以上の繰り返しがあり、さらに、傷病名「肝機能障害」と原因理由表現「ので」との間に1文字以上の繰り返しがあることから、一般論判定部150は、傷病名「肝機能障害」を含む原因理由説明部中の表現がパタン例1aに合致すると判定する。そして、この「肝機能障害」が一般論の傷病名を表すものであると判定する。
【0058】
[条件例1b]
「対象文字列が言及する患者本人の他の患者の存在を示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件であり、次のパタン例1bに合致する表現は条件例1bを満たすものとする。
パタン例1b:
{傷病名}.+{他の患者の存在を示す表現}{原因理由表現}
【0059】
パタン例1bにおける{他の患者の存在を示す表現}の例として、以下の表現が挙げられる。
・「患者がいる」,「患者がいた」
・「高齢者がいる」,「高齢者がいた」
・「妊婦がいる」,「妊婦がいた」
・「乳児がいる」,「乳児がいた」
【0060】
また、他の患者の存在を示す表現のカテゴリに含まれる表現として上述の例の表現が一般論条件情報104に登録されている場合に、一般論判定部150がパタン例1bに合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「黄疸」、「妊娠高血圧」、および「急性脳炎」がステップS12で検出された傷病名であるとする。
・(黄疸が現れた患者がいるので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れた患者がいたので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れた高齢者がいるので)、薬剤Aを投与した。
・(妊娠高血圧を発症した妊婦がいるので)、薬剤Aを投与した。
・(急性脳炎を発症した乳児がいるので)、薬剤Aを投与した。
【0061】
[条件例1c]
「傷病名が頻度を表す表現と共に用いられている」という条件であり、次のパタン例1cに合致する表現は条件例1cを満たすものとする。
パタン例1c:
{傷病名}.+{頻度を表す表現}{原因理由表現}
【0062】
パタン例1cにおける{頻度を表す表現}の例としては、「ことが多い」、「ことは少ない」、「ことはまれである」等の表現が挙げられる。また、この例の表現が頻度を表す表現のカテゴリに含まれる表現として一般論条件情報104に登録されている場合に、一般論判定部150がパタン例1cに合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「黄疸」がステップS12で検出された傷病名であるとする。
・(黄疸が現れることが多いので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れることは少ないので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れることはまれであるので)、薬剤Aを投与した。
【0063】
[条件例1d]
「傷病名が伝聞を表す表現と共に用いられている」という条件であり、次のパタン例1dに合致する表現は条件例1dを満たすものとする。
パタン例1d:
{傷病名}.+{伝聞を表す表現}{原因理由表現}
【0064】
パタン例1dにおける{伝聞を表す表現}の例としては、以下の表現が挙げられる。
・「言われている」,「言われていた」
・「症例がある」,「症例があった」
・「例がある」,「例があった」
・「症例が報告されている」,「症例が報告されていた」
【0065】
また、伝聞を表す表現のカテゴリに含まれる表現として上述の例の表現が一般論条件情報104に登録されている場合に、一般論判定部150がパタン例1dに合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「発熱」および「黄疸」がステップS12で検出された傷病名であるとする。
【0066】
・(発熱を引き起こすと言われているので)、薬剤Aを投与した。
・(発熱を引き起こすと言われていたので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れた症例があるので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れた例があるので)、薬剤Aを投与した。
・(黄疸が現れた症例が報告されているので)、薬剤Aを投与した。
【0067】
[条件例1e]
「傷病名が何らかの可能性の存在を示す表現と共に用いられている」という条件であり、次のパタン例1eに合致する表現は条件例1eを満たすものとする。
パタン例1e:
{傷病名}({助詞})?{動詞現在形}{可能性の存在を示す表現}{原因理由表現}
【0068】
パタン例1eにおける{可能性の存在を示す表現}の例としては、「可能性/恐れ/危険性/リスク/こと/場合がある」および「可能性/恐れ/危険性/リスク/こと/場合があった」等が挙げられる。この例の表現が可能性の存在を示す表現のカテゴリに含まれる表現として一般論条件情報104に登録されている場合に、一般論判定部150がパタン例1eに合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「腎機能障害」および「黄疸」がステップS12で検出された傷病名であるとする。
・(腎機能障害を起こす可能性があるため)、薬剤Aは選択肢から除外した。
・(黄疸が現れる可能性があったので)、薬剤Aを投与した。
【0069】
[条件例1f]
「医薬品や処置に関する記述であることを示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件を表し、次のパタン例1fに合致する表現は条件例1fを満たすものとする。
パタン例1f:
{医薬品や処置に関する記述であることを示す表現}.+{傷病名}.+{原因理由表現}
【0070】
パタン例1fにおける{医薬品や処置に関する記述であることを示す表現}の例として、以下の表現が挙げられる。
【0071】
・「{医薬品名}は」,「{医薬品名}には」
・「{処置名}は」,「{処置名}には」
【0072】
上述の例において、{医薬品名}および{処置名}に該当する表現は、予め一般論条件情報104の中に登録しておけばよい。あるいは、一般論条件情報104とは別に、医薬品名および処置名を含む辞書情報(図示しない)を用意しておき、この辞書情報を参照して、これらの表現に該当するか否かを判定する処理を行ってもよい。医薬品や処置に関する記述であることを示す表現のカテゴリに含まれる表現として上述の例の表現が一般論条件情報104に登録されている場合に、一般論判定部150がパタン例1fに合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「腎機能障害」および「めまい」がステップS12で検出された傷病名であるとする。
【0073】
・(薬剤Aには腎機能障害の可能性があるため)、薬剤Aは選択肢から除外した。
・(薬剤Aにはめまいなどの副作用があったので)、薬剤Bを投与した。
・(薬剤Aにはめまいなどを起こす副作用があったので)、薬剤Bを投与した。
【0074】
以上、一般論条件情報104の内容および一般論判定部150による判定の具体例を説明した。本具体例では、一般論判定部150により上述の条件例1a〜1fのいずれかを満たすと判定された表現に含まれる傷病名が、図2のステップS18において、一般論を表す傷病名として特定される。
【0075】
ステップS18の後、対象文字列の原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、ステップS18で一般論を表す傷病名として特定されなかった傷病名の中から、対象文字列が言及する患者本人の既往の傷病を表す傷病名が特定される(ステップS20)。ステップS20で、既往判定部160は、原因理由説明部に含まれる傷病名であって一般論を表す傷病名として特定されなかった傷病名について、既往条件情報105を参照して、前述の患者本人の既往の傷病を表す傷病名であるか否かを判定する。既往判定部160は、判定の対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現が、既往条件情報105が表す条件を満たす場合に、判定対象の傷病名が患者本人の既往の傷病を表すものと判定する。以下、既往条件情報105の内容の具体例および既往判定部160による判定の具体例を説明する。
【0076】
本具体例において、既往条件情報105は、以下に示す[条件例2a]〜[条件例2c]を含む。[条件例2a]〜[条件例2c]は、それぞれ、特定の患者の既往の傷病に言及する表現のパタンとして予め設定されたパタンを含み、当該パタンに合致することを、「患者本人の既往の傷病に言及する表現である」ことの条件の少なくとも一部として定める。各条件例2a〜2cに含まれるパタンは、退院時要約の分析や医療機関の職員に対するアンケート等を事前に行うことで得られた、既往の傷病を表す傷病名を含むことが多い表現のパタンである。既往判定部160は、判定の対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現が、以下の条件例2a〜2cのいずれかを満たす場合に、当該傷病名が患者本人の既往の傷病の傷病名を表すと判定する。なお、以下の各条件例2a〜2cで示されるパタンの記述のルールは、一般論条件情報104に関して上述したパタン例1a〜1fと同様である。
【0077】
[条件例2a]
「既往の存在を示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件であり、次のパタン例2aに合致する表現は条件例2aを満たすものとする。
パタン例2a:
{傷病名}.+{既往の存在を示す表現}{原因理由表現}
【0078】
パタン例2aにおける{既往の存在を示す表現}のカテゴリに含まれる表現として、例えば、以下のような表現を既往条件情報105に予め登録しておく。
【0079】
・「既往がある」,「既往があった」
・「経験がある」,「経験があった」
・「経歴がある」,「経歴があった」
・「既往歴を有している」,「既往歴を有していた」
【0080】
以上の例の表現が既往の存在を示す表現のカテゴリに含まれる表現として既往条件情報105に登録されている場合に、既往判定部160が[パタン例2a]に合致すると判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。なお、以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「心筋梗塞」がステップS20の判定の対象の傷病名であるとする。
・(心筋梗塞の既往があるので)、薬剤Aを投与した。
・(心筋梗塞を起こした経験があるので)、薬剤Aを投与した。
・(心筋梗塞の経歴があったので)、薬剤Aを投与した。
・(心筋梗塞の既往歴を有しているので)、薬剤Aを投与した。
【0081】
[条件例2b]
「ある事柄の存在を示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件である。次のパタン例2bに合致する表現であって、{動詞}の時制および{事柄の存在を示す表現}が後述の条件を満たす表現は、条件例2bを満たすものとする。
パタン例2b:
{傷病名}({助詞})?{動詞}{事柄の存在を示す表現}{原因理由表現}
【0082】
本例では、パタン例2bの{事柄の存在を示す表現}として、「ことがあった」および「ことがある」が既往条件情報105に登録される。さらに、既往条件情報105において、「ことがあった」および「ことがある」のそれぞれについて、{動詞}の時制について以下の条件が設定される。
・パタン例2bに合致する表現が「ことがあった」を含む場合、{動詞}の時制を問わず、条件例2bを満たすとみなす。
・パタン例2bに合致する表現が「ことがある」を含む場合、{動詞}の時制が過去形または過去進行形である場合のみ、条件例2bを満たすとみなす。
【0083】
既往判定部160によって条件例2bを満たすと判定される表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「肝機能障害」が判定対象の傷病名であるとする。
・(肝機能障害を起こすことがあったので)、薬剤Aを投与した。
・(肝機能障害を起こしたことがあったので)、薬剤Aを投与した。
・(肝機能障害を起こしたことがあるので)、薬剤Aを投与した。
【0084】
なお、条件例2bにおいて、パタン例2bに合致する表現が「ことがある」を含む場合に、{動詞}の時制を過去形または過去進行形に限定するのは、例えば「することがある」等のように、「ことがある」の直前の動詞が現在形である場合、患者本人の既往の傷病に言及するのではなく、一般論の傷病名である可能性があるためである(上述の一般論と判定する[条件例1e]参照)。
【0085】
[条件例2c]
「過去の時間を表す表現が傷病名と共に用いられている」という条件である。本例では、判定の対象の傷病名を含む表現が、次のパタン例2cに合致し、かつ、この表現を含む文字列中に「以前」「前回」「過去」など、過去の時間を表す表現が含まれる場合に、条件例2cが満たされるとする。
パタン例2c:
{傷病名}({助詞})?{用言;現在進行形/過去形/過去進行形}{原因理由表現}
【0086】
パタン例2cにおいて、{用言;現在進行形/過去形/過去進行形}は、時制が現在進行形、過去形、または過去進行形である用言(述語になり得る品詞。動詞、形容詞、形容動詞)を表す。条件例2cを満たすと既往判定部160が判定する表現を含む対象文字列の例を以下に示す。なお、以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「嘔吐症状」が判定の対象の傷病名であるとする。
・(以前化学療法で嘔吐症状強かったので)、薬剤A点滴。
【0087】
以上、既往条件情報105の内容および既往判定部160による判定の具体例を説明した。本具体例では、既往判定部160により上述の条件例2a〜2cのいずれかを満たすと判定された表現に含まれる傷病名が、図2のステップS20において、既往の傷病を表す傷病名として特定される。
【0088】
ステップS20の後、対象文字列の原因理由説明部に含まれる傷病名のうち、ステップS18で一般論を表す傷病名として特定されず、かつ、ステップS20で既往の傷病を表す傷病名として特定されなかった傷病名の中から、対象文字列が言及する患者本人の現在の傷病を表す傷病名が特定される(ステップS22)。ステップS22で、現疾患判定部170は、原因理由説明部に含まれる傷病名であって一般論を表す傷病名としても既往の傷病を表す傷病名としても特定されなかった傷病名について、現疾患条件情報106を参照して、前述の患者本人の現在の傷病を表す傷病名であるか否かを判定する。以下、現疾患条件情報106の内容の具体例および現疾患判定部170による判定の具体例を説明する。
【0089】
本具体例において、現疾患条件情報106は、以下に示す[条件例3a]および[条件例3b]を含む。[条件例3a]および[条件例3b]は、それぞれ、特定の患者の現在の傷病に言及する表現のパタンとして予め設定されたパタンを含み、当該パタンに合致することを、「患者本人の現在の傷病に言及する表現である」ことの条件の少なくとも一部として定める。各条件例3a,3bに含まれるパタンは、退院時要約の分析や医療機関の職員に対するアンケート等を事前に行うことで得られた、現疾患を表す傷病名を含むことが多い表現のパタンである。現疾患判定部170は、判定の対象の傷病名を含む原因理由説明部中の表現が、以下の条件例3a,3bのいずれかを満たす場合に、当該傷病名が患者本人の現在の傷病の傷病名を表すと判定する。なお、以下の各条件例3a,3bで示されるパタンの記述のルールは、一般論条件情報104および既往条件情報105に関して上述したパタン例1a〜1f,2a〜2cと同様である。
【0090】
[条件例3a]
「現在、何らかの事態が生じている可能性があることを示す表現と共に傷病名が用いられている」という条件であり、次のパタン例3a−1またはパタン例3a−2に合致する表現は条件例3aを満たすものとする。
パタン例3a−1:
{傷病名}の{可能性の存在を示す表現}{原因理由表現}
パタン例3a−2:
{傷病名}({助詞})?{動詞;過去形/現在進行形/過去進行形}{可能性の存在を示す表現}{原因理由表現}
【0091】
パタン例3a−1,3a−2における{可能性の存在を示す表現}のカテゴリに含まれる表現として、本例では、「可能性/恐れ/危険性/リスクがある」,「可能性/恐れ/危険性/リスクがあった」を現疾患条件情報106に予め登録しておく。パタン例3a−1,3a−2では、{可能性の存在を示す表現}から、一般論条件情報104に含まれる条件例1eのパタン例1e中の{可能性の存在を示す表現}に含まれる「こと/場合がある」,「こと/場合があった」を除外している。「こと/場合がある」,「こと/場合があった」との表現は、「現在」何らかの事態が生じている可能性に言及するのではなく、一般的な事実を述べていると考えられるためである。
【0092】
また、パタン例3a−2において、{動詞;過去形/現在進行形/過去進行形}は、時制が過去形、現在進行形、または過去進行形である動詞を表す。
【0093】
現疾患判定部170により条件例3aを満たすと判定される表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「腎機能障害」が判定対象の傷病名であるとする。
・(腎機能障害の可能性があるため)、薬剤Aは選択肢から除外した。
・(腎機能障害を起こした可能性があるため)、薬剤Aの投与を中止した。
【0094】
[条件例3b]
次のパタン例3bに合致する表現であって{用言}の時制が現在形である表現は、条件例3bを満たすとする。また、表現がパタン例3bに合致し、かつ{用言}の時制が現在進行形、過去形、または過去進行形の場合であって、当該表現を含む文字列中に過去の時間を表す表現(例えば、「以前」、「前回」、「過去」等)が含まれない場合にも、条件例3bは満たされるとする。
パタン例3b:
{傷病名}({助詞})?{用言}{原因理由表現}
【0095】
現疾患判定部170により条件例3bを満たすと判定される表現を含む対象文字列の例を以下に示す。以下の例において、()内の文字列がステップS16で特定された原因理由説明部であるとする。また、以下の例において、文字列「発熱」および「急性腎炎」が判定対象の傷病名であるとする。
・(発熱続くので)、薬剤A投与。
・(急性腎炎と診断されたので)、薬剤A投与。
【0096】
以上、現疾患条件情報106の内容および現疾患判定部170による判定の具体例を説明した。本具体例では、現疾患判定部170により上述の条件例3a,3bのいずれかを満たすと判定された表現に含まれる傷病名が、図2のステップS22において、現在の傷病を表す傷病名として特定される。
【0097】
なお、上述の2つの条件例3a,3bのうち、条件例3aを満たす表現は、対象文字列に係る患者本人の現在の傷病に言及しているとの解釈だけでなく、一般的な可能性に言及しているとの解釈も成立する場合がある。例えば、条件例3aを満たすと判定される対象文字列の例「腎機能障害の可能性があるため、薬剤Aは選択肢から除外した。」の文において、「腎機能障害の可能性がある」は、患者本人についての言明であるとの解釈、および、単なる一般的な言明との解釈の両方が成立する。つまり、条件例3aを満たす表現に含まれる傷病名は、患者本人の現在の傷病を表すものであるか、あるいは、一般論を表すものであると捉えられる。したがって、現疾患判定部170は、判定対象の傷病名を含む表現が条件例3aを満たす場合、現在の傷病および一般論の両方の可能性がある旨を判定結果としてもよい。
【0098】
ステップS22の後、出力処理部180は、ステップS18,S20,S22の処理の結果を出力する(ステップS24)。ステップS24で、出力処理部180は、例えば、対象文字列における原因理由説明部に含まれる傷病名に関連付けて、当該傷病名が一般論、既往の傷病、および患者本人の現在の傷病のいずれを表す傷病名として特定されたかを表す情報、または、いずれにも該当しなかった旨を表す情報を出力する。原因理由説明部中の傷病名が一般論、既往の傷病、または現在の傷病を表す傷病名であるとステップS18,S20またはS22で特定されていた場合、出力処理部180は、当該傷病名を含む表現が満たす条件に関する情報をさらに出力してもよい。例えば、一般論条件情報104、既往条件情報105、および現疾患条件情報106が表す条件のいずれを満たすことによって一般論、既往の傷病、または現在の傷病を表す傷病名であると特定されたのかを表す情報を出力してもよい。また例えば、現疾患条件情報106の条件例3aに関して上述したように、判定の対象の傷病名について、現在の傷病名および一般論の両方の可能性があるとの判定結果が得られた場合は、ステップS24で、その旨を表す情報を出力してもよい。ステップS24の出力を確認したユーザは、対象文字列の原因理由説明部に含まれる傷病名が一般論、既往の傷病、および現在の傷病のいずれを表す可能性が高いかを把握することになる。
【0099】
ステップS24の後、図2の例の手順の処理は終了する。
【0100】
図2の例の手順の処理の終了後、情報処理装置10は、ステップS24で出力された情報を用いて、対象文字列中の傷病名に対して、ICD10等により定められたコードを付与する処理をさらに行ってもよい。例えば、対象文字列中の傷病名が一般論、既往の傷病、および現在の傷病のいずれかを表す傷病名として特定されていれば、それに対応するコードを当該傷病名に付与し、当該傷病名と付与したコードとを関連付けて、図示しない記憶装置に登録する。また例えば、対象文字列中の傷病名について、一般論および現在の傷病の両方の可能性があると判定されていた場合は、当該傷病名が一般論を表す場合のコードと、当該傷病名が現在の傷病を表す場合のコードと、を当該傷病名に関連付けて記憶装置に登録する。さらに、その後、情報処理装置10は、傷病名と当該傷病名に関連付けて記憶装置に登録されたコードとを表示装置に表示させると共に、ユーザによるコードの修正の入力を受け付けて、傷病名に関連付けられたコードを修正してもよい。
【0101】
以上で説明した実施形態の例は、本発明の実施の態様の一例に過ぎず、各種の変形例があってよい。例えば、上述の実施形態の例では、対象文字列が1つの文であるとして説明したが、対象文字列が1つの文の一部である場合および対象文字列が複数の文を含む場合も、上述の実施形態の例の処理は同様に実行してよい。対象文字列が1つの文の一部である場合は、1つの文を対象文字列とする上述の例の処理をそのまま適用すればよい。対象文字列が複数の文を含む場合、例えば、句点や感嘆符等、文の区切りを表す記号として予め設定された記号を対象文字列から検索し、検索された記号によって対象文字列を文ごとに分割して、分割された各文に対して上述の実施形態の例と同様の処理を行えばよい。
【0102】
上述の実施形態の例では、対象文字列のうち、原因理由説明部を、一般論判定部150、既往判定部160、および現疾患判定部170の処理対象とするが、一変形例では、対象文字列の全体をこれらの判定部の処理対象としてもよい。本変形例では、情報処理装置10は、参照データ記憶部100中に原因理由表現情報103を保持する必要がなく、原因理由説明部特定部140も備えていなくてよい。また、本変形例では、図2の例のステップS16で原因理由説明部を特定する処理が省略される。なお、本変形例では、上述の条件例1a〜1f,2a〜2c,3a,3bに示す各パタン例において、{原因理由表現}を除いたパタンを用いて条件の判定を行えばよい。
【0103】
また、上述の実施形態の例では、図2の例の手順の処理において、ステップS18で一般論を表す傷病名として特定されなかった傷病名をステップS20の処理対象とし、さらに、一般論および既往の傷病のいずれとしても特定されなかった傷病名をステップS22の処理対象とする。一変形例では、原因理由説明部に含まれる傷病名について、ステップS18,S20,S22の処理をすべて行ってもよい。一般論条件情報104、既往条件情報105、および現疾患条件情報106が表す条件に含まれるパタンの設定によっては、一般論、既往、および現疾患のうちの2以上の条件を満たす表現も存在し得る。このため、本変形例では、各傷病名についてステップS18,S20,S22の処理をすべて行い、一般論、既往、および現疾患のうちの2以上として特定された傷病名があれば、その旨を表す情報をステップS24で出力する。
【0104】
また例えば、図2の例の手順の処理の順番を一部、入れ替えてもよい。例えば、形態素解析(ステップS14)を行った後で傷病名の検出(ステップS12)を行ってもよい。また例えば、傷病名の検出(ステップS12)は、原因理由説明部の特定(ステップS16)の後に、対象文字列中の原因理由説明部のみを処理対象として行ってもよい。また例えば、一般論を表す傷病名の特定(ステップS18)、既往の傷病を表す傷病名の特定(ステップS20)、および現在の傷病を表す傷病名の特定(ステップS22)の処理の順番を入れ替えてもよい。
【0105】
さらに他の変形例では、既往の傷病を表す傷病名の特定(ステップS20)、および現在の傷病を表す傷病名の特定(ステップS22)の少なくとも一方を省略してもよい。
【0106】
なお、以上では、患者の退院時要約に含まれる文字列を対象文字列とする場合を例にとり、本発明の各種の実施形態の例および変形例を説明したが、当然ながら、対象文字列の取得元の文章は、ある患者について記述している文章であれば、退院時要約の他の文章であってもよい。
【0107】
以上に例示した情報処理装置10は、典型的には、汎用のコンピュータにて上述の情報処理装置10の各部の機能または処理内容を記述したプログラムを実行することにより実現される。コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、図4に示すように、CPU(中央演算装置)80、メモリ(一次記憶)82、各種I/O(入出力)インタフェース84等がバス86を介して接続された回路構成を有する。また、そのバス86に対し、例えばI/Oインタフェース84経由で、ハードディスクドライブ(HDD)88やCDやDVD、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体を読み取るためのディスクドライブ90が接続される。このようなドライブ88または90は、メモリに対する外部記憶装置として機能する。実施形態の処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、またはネットワーク経由で、HDD88等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがメモリに読み出されCPUにより実行されることにより、実施形態の処理が実現される。
【0108】
なお、以上では、情報処理装置10を1台のコンピュータにより実現する例の実施形態を説明したが、情報処理装置10の上述の例の各種の機能を複数のコンピュータに分散させて実現してもよい。
【符号の説明】
【0109】
10 情報処理装置、80 CPU、82 メモリ、84 I/Oインタフェース、86 バス、88 HDD、90 ディスクドライブ、100 参照データ記憶部、101 傷病名辞書、102 解析辞書、103 原因理由表現情報、104 一般論条件情報、105 既往条件情報、106 現疾患条件情報、110 対象文字列取得部、120 傷病名文字列検出部、130 形態素解析部、140 原因理由説明部特定部、150 一般論判定部、160 既往判定部、170 現疾患判定部、180 出力処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷病名を表す用語の情報を含む辞書情報を参照して、ある患者に関して記述された文章に含まれる文字列である対象文字列のうち、傷病名の文字列を特定する第1特定ステップと、
前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の傷病に対応していない表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の記述の対象である前記患者本人の傷病に対応するものでない傷病名として特定する第2特定ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の既往の傷病に対応する表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記患者本人の既往の傷病を表す傷病名として特定する第3特定ステップ、
を前記コンピュータにさらに実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の現在の傷病に対応する表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の作成の時点での前記患者本人の傷病を表す傷病名として特定する第4特定ステップ、
を前記コンピュータにさらに実行させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第3特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象としない、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第3特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象とせず、
前記第4特定ステップにおいて、前記第1特定ステップで特定された傷病名の文字列のうち、前記第2特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列および前記第3特定ステップにおいて特定された傷病名の文字列を処理対象としない、
ことを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第1特定ステップにおいて、原因または理由を表す表現として予め設定された表現と前記対象文字列とを比較することで、前記対象文字列において原因または理由を表す部分を特定し、当該原因または理由を表す部分における前記傷病名の文字列を特定する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
傷病名を表す用語の情報を含む辞書情報を参照して、ある患者に関して記述された文章に含まれる文字列である対象文字列のうち、傷病名の文字列を特定する第1特定手段と、
前記第1特定手段で特定された傷病名の文字列が、前記対象文字列中の文字列であって特定の患者の傷病に対応していない表現の条件として予め設定された条件を満たす文字列に含まれる場合に、当該特定された傷病名の文字列を、前記対象文字列を含む前記文章の記述の対象である前記患者本人の傷病に対応するものでない傷病名として特定する第2特定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203772(P2012−203772A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69357(P2011−69357)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】