説明

プログラムを表すパケット化されたデータストリームを復号化する方法

【課題】プログラム内容の再生ために使用されるプログラム特定情報(PSI)によって課される処理/記録オーバーヘッドを縮小する。
【解決手段】プログラムのデータ内容を再生する際に使用するのに適するPSIを組み込んでいる、プログラムを表すパケット化されたデータストリームが復号化される。データストリーム内のPSIパケットが識別され、そのPSIデータ内のパラメータを使用して、以前のPSIの内容に関わりなく、そのPSIデータがそのプログラムの内容を復号化するために使用されるのかどうかを判定する。PSIの内容にエラー表示がなければ、識別されたPSIデータの内容に関わりなく、現在のPSIは識別されたPSIデータで更新される。PSIの内容にエラー表示があれば、デフォルト・プログラム内容を表すパケットが復号化されたデータストリームの中に組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル信号処理の分野に関し、特に、プログラム内容を復元するために使用されるプログラム特定情報(Program Specific Information:PSI)の形成、および記憶のために該情報をディジタル・ビデオデータ中に挿入することに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオ処理および記憶への適用(アプリケーション)に当って、ディジタル・ビデオデータは、典型的には、公知の標準の要求に合うように符号化される。広く採用されている標準の1つとして、MPEG2(Moving Pictures Expert Group)による画像符号化標準があり、以下では“MPEG標準”と呼ぶ。この“MPEG標準”は、システム符号化セクション(ISO/IEC 13818−1,1994年6月10日)およびビデオ符号化セクション(ISO/IEC 13818−2,1995年1月20日)から成る。これらは、以下では、“MPEGシステム標準”および“MPEGビデオ標準”とそれぞれ呼ばれる。MPEG標準に符号化されたビデオデータは、通常多くのプログラム(program:番組)のチャンネル(例えば、チャンネル1〜125)のデータ内容を含むパケット化されたデータストリームの形式である。例えば、表示のために、デコーダがパケット化されたデータストリームを復号化し、選択されたプログラムのチャンネルのビデオデータ内容を復元するためには選択されたプログラムのチャンネルを含む個々のパケットを識別し、アセンブル(assemble:組み込み)しなければならない。
【0003】
MPEG標準は、選択されたプログラム・チャンネルの内容を復元するために、個々のデータ・パケットを識別しアセンブルする際に使用されるプログラム特定情報(Program Specific Information:PSI)を定める。PSIは、ユーザが定め得る情報要素と命令情報要素の両方を含んでおり、パケット化されたデータストリームを含む全てのプログラム・チャンネルのデータ内容を復元するのに十分な情報を含んでいるものと定義される、さらに、PSIはパケット化されたデータストリーム中に組み込まれる。これは、データストリームを貯えるのに必要な記憶容量を増大させると共に、プログラム内容の通信に利用可能な通信帯域幅を減少させる。従って、PSIは追加の符号化オーバーヘッドを表す。
【0004】
PSIが課すオーバーヘッドの程度は、PSI中に含まれるデータの量(PSIのサイズすなわち大きさ)と、パケット化されたデータストリーム内のPSIの繰り返し回数に依存する。最少限、PSIは、パケット化されたデータストリームを含む全てのプログラム・チャンネルのデータ内容を復元するのに十分な情報を含んでいる必要がある。パケット化されたデータストリーム中のPSIの最少繰り返し回数は所望のシステムの動作遅延特性により制限される。例えば、テレビジョンの視聴者がコマンドを与えるプログラム・チャンネルの変更を実行するために、デコーダは更新されたPSIを必要とする。そのため、PSIの最少繰り返し回数は、テレビジョンの視聴者が、チャンネル・コマンドの変更に応答する遅延(待ち時間)に対してどれだけ我慢できるかということにより制限される。これらの問題は本発明によるシステムにより取り扱われる。
【発明の開示】
【0005】
本願の発明者達は、或る種の応用例においては、PSIにより課せられるオーバーヘッドを減少させることが望ましいことを認識した。例えば、容量が制限されたディジタル記憶の応用例では、記録媒体上に貯えられるPSIの大きさを減少させ、記録媒体上でPSIが繰り返えされる回数を減少させることが有利である。ビデオ処理に関する或る種の応用例では、PSIの大きさを減少させて、より頻繁にPSIの繰り返えしが行えるようにし、それによってプログラム内容の復元待ち時間を減少させることが望ましい。また、発生されるPSIは、選択された記録媒体の動作特性およびユーザの要求に適合するものでなければならない。
【0006】
また、本願の発明者達は、種々の復元パラメータを必要とする第2のプログラムの内容を復元する際に、1つのプログラムのPSIの誤使用を最少にするフォーマットで、記録媒体上にPSIを貯えることが望ましいことを認識した。このような状況は、記録媒体が、異なるパケット化されたデータストリームから得られるプログラムを貯えるために使用されるとき、例えば、記録媒体が、異なるデータストリームから得られるプログラムで部分的に上書き(オーバーライト)されるときに生じる。理想的には、PSI記憶フォーマットは、プログラムの復元待ち時間を減少させると共に、ランダムアクセス・データの復元時間を最少にするものである。高速のランダムアクセスは、例えば、VCR(ビデオカセットレコーダ)の場合のように、高速再生あるいは内容のスキップ(トリック・プレイ:trick play)を伴うような記録装置の動作において特に重要である。
【0007】
本発明の原理による、ビデオ処理システムは、プログラム内容の再生ために使用されるProgram Specific Information(PSI:プログラム特定情報)によって課される処理/記録オーバヘッド(overhead)を縮小する。開示されるシステムは、圧縮されたPSI(condensed PSI:CPSI)を発生し、CPSIをパケット化されたデータストリームの中へ適応的に挿入して、縮小された処理/記録オーバーヘッドを発生する。このシステムは、種々のタイプの媒体、例えば、ビデオテープ、ディジタル・ビデオディスク(DVD)あるいはCDROM用のPSIを適応的に発生する。さらに、CPSIを使用してデータ処理能率を高める、記録媒体のフォーマットおよびパケット化されたデータストリームのフォーマットも開示される。開示されるデータ・フォーマット復号化方法は、プログラムの再生待ち時間を短縮するとともに、プログラムの境界を越える不正なPSIパラメータの使用を最小限度に抑える。開示される復号化方法はまた、デフォルト・ビデオ/オーディオ・データを再生装置に供給し、デフォルト状態およびエラー状態にある煩わしいビデオ/オーディオ出力を最小限度に抑える。
【0008】
プログラムのデータ内容を再生する際に使用するのに適するPSIを組み込んでいる、プログラムを表すパケット化されたデータストリームを復号化する方法は、そのデータストリーム内のPSIデータ・パケットを識別する。識別されたPSIデータ内のパラメータを使用して、その識別されたPSIデータが、前のPSI内容に関わりなく、そのプログラム内容を復号化するために使用されるのかどうかを判定する。そのパラメータに応答して、現在のPSIは識別されたPSIデータで更新される。この現在のPSIを使用してプログラム内容パケットが識別され、この現在のPSIを使用して、プログラム内容パケットは復号化されたデータストリームの中に組み立てられる。
【0009】
本発明の特徴により、もしPSI内容のエラー表示が存在しなければ、識別されたPSIデータの内容に関わりなく、現在のPSIは識別されたPSIデータで更新される。
【0010】
本発明の更に別の特徴により、パケット化されたデータストリーム内の制御パラメータによって与えられるPSIの有効性(validity)表示(指示)に応答して、デフォルト・プログラム内容を表すパケットがその出力データストリームの中に組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1図は、記録媒体に貯えるために、圧縮されたPSIを適応的に発生し、パケット化されたデータストリーム中に挿入する、本発明によるビデオ受像機システムを示す。この受像機システムは、種々のタイプの媒体、例えば、ビデオテープ、ディジタル・ビデオディスク(DVD)、あるいはCDROM用にPSIを適応的に発生する。また、このビデオ受像機システムは、プログラム内容の再生に使用されるプログラムを特定する情報(Program Specific Information:PSI)によって課される処理および記憶(記録)のオーバーヘッドを減少させる。
【0012】
ここに開示されるシステムは、放送されるプログラム(番組)を表すMPEG符号化されたトランスポート・ストリームを受信するためのMPEGコンパティブル(MPEGと両立性のある)システムに関連して説明されているが、例示的なものにすぎない。本発明の原理は、他のタイプの符号化されたデータストリームを伴う、non−MPEGコンパティブル(MPEGと両立性のない)タイプのシステムにも応用できる。例えば、本発明の原理は、ディジタル・ビデオディスク(DVD)システムおよびMPEGプログラム・ストリームにも応用できる。また、開示されたシステムは放送プログラム(番組)を処理するものとして説明されているが、これは例示的にすぎない。‘プログラム(program)’という用語は、任意の形式のパケット化されたデータ、例えば、電話のメッセージ、コンピュータ・プログラム、インターネット・データまたは他の通信情報を表す。
【0013】
概要を説明すると、第1図の受像機システムにおいて、ビデオデータで変調された搬送波は、アンテナ10で受信され、入力処理装置15で処理される。その結果生じるディジタルの出力信号は、復調器20で復調され、デコーダ30で復号化される。デコーダ30からの出力は、リモートコントロール・ユニット(リモコン)125からのコマンドに応答するトランスポート・システム25で処理される。システム25は、記録するために、更に復号化するために、あるいは他の装置に伝送するために、圧縮されたデータ出力を供給する。ビデオ受像機のユーザは見たいと思うプログラム(番組)、貯えたいと思うプログラム、記録媒体のタイプおよび記憶(記録)方法を、リモコン125を使用してオンスクリーン(on−screen)メニューにより選択する。ビデオ・デコーダ85とオーディオ・デコーダ80は、それぞれ、システム25からの圧縮されたデータを復号化して、表示用の出力を発生する。データ・ポート75は、システム25からの圧縮されたデータを他の装置、例えば、コンピュータあるいは高精細度テレビジョン(HDTV)受像機に伝送するためのインタフェースとなる。記憶装置90は、システム25からの圧縮されたデータを記録媒体105に貯える。また、記憶装置90は、復号化、他の装置への伝送、または別の記録媒体(図面を簡略化するために図示されていない)に記憶(記録)するために、再生モードにおいて、システム25によって処理するために、記録媒体105からの圧縮されたデータの検索(retrieval)を支援する。
【0014】
第1図を詳細に考察すると、アンテナ10で受信されるビデオデータで変調された搬送波は、入力処理装置15でディジタル形式に変換され処理される。入力処理装置15は、無線周波数(RF)チューナ、中間周波数(IF)混合器、および入力ビデオ信号を更に処理するのに適した比較的低い周波数帯域に変換する周波数低逓降のための増幅段を含んでいる。その結果生じるディジタルの出力信号は、復調器20で復調され、デコーダ30で復号化される。デコーダ30からの出力はトランスポート・システム25で更に処理される。
【0015】
サービス検出装置33のマルチプレクサ(MUX)37には、セレクタ35を回して、デコーダ30からの出力、またはNRSS(National Renewable Standards Committee)デスクランブル(descrambling)装置40で更に処理されたデコーダ30の出力が供給される。セレクタ35は、NRSSと両立性のある、挿入可能なデスクランブル・カード(descrambling card)の存在を検出し、カードがビデオ受像機に現在挿入されている場合に限り、デスクランブル装置40の出力をMUX37に供給する(NRSSの除去可能な条件付きアクセス・システムはEIA草案IS−679,プロジェクトPN−3639で規定されている)。デスクランブル・カードの存在を検出しなければ、セレクタ35はデコーダ30からの出力をMUX37に供給する。挿入可能なカードが存在すると、デスクランブル装置40は、例えば、付加的なプレミアム・プログラム・チャンネルをデスクランブルして、付加的なプログラム・サービスを視聴者に提供する。注目すべきは、この好ましい実施例において、NRSSデスクランブル装置40およびスマート・カード・ユニット130(スマート・カード・ユニット130については以下に述べる)は、同じシステム25のインタフェースを共有し、一回にNRSSカードまたはスマート・カードの何れかが挿入される。しかしながら、並列動作を可能にするために、インタフェースは別々にしてもよい。
【0016】
セレクタ35からMUX37に供給されるデータは、MPEGシステム標準2.4項で規定されるように、MPEGに従うパケット化されたトランスポート・データストリームの形式であり、1つもしくは2つ以上のプログラム・チャンネルのデータ内容を含んでいる。特定のプログラム・チャンネルを含む個々のパケットはPacket Identifier(PID:パケット識別子)により識別される。トランスポート・ストリームは、パケット化されたデータストリームを含む全てのプログラム・チャンネルの内容を再生するために、PIDを識別し個々のデータ・パケットをアセンブル(組み込み)するのに使用されるプログラム特定情報(Program Specific Information:PSI)を含んでいる。ビデオ受像機のユーザは、見たいと思うプログラム(番組)、貯えたいと思うプログラムおよび記録用の記憶(記録)媒体を、リモコン125を使用してオンスクリーン・メニューで選択する。システム・コントローラ115は、選択情報(インタフェース120を介して供給される)を使用して、プログラムを記憶(記録)および表示するために選択し、且つ選択された記憶装置および記録媒体に適するPSIを発生するようにシステム25を構成する。コントローラ115は、トランスポート・システム25の要素45,47,50,55,65,95を構成するために、データ・バスを介してこれらの要素の内部の制御レジスタの値を設定し、且つ制御信号CによりMUX37と110を通る信号経路を選択する。
【0017】
制御信号Cに応答して、MUX37は、セレクタ35からのトランスポート・ストリームか、あるいは再生モードにおいて、記憶(記録)インタフェース95を介して記憶装置90から取り出されるデータストリームの何れかを選択する。通常の非再生(non−playback)動作において、ユーザが見るために選択したプログラムを含んでいるデータ・パケットは、それらのPIDにより復号PID選択装置45で識別される。選択されたプログラム・パケットのヘッダ・データにおける暗号化指標(encrption indicator)が、これらのパケットが暗号化されていることを示すと、復号PID選択装置45は、これらのパケットを暗号解読装置50に送る。パケットが暗号化されていなければ、復号PID選択装置45は、暗号化されてないパケットをトランスポート・デコーダ55に送る。同様にして、ユーザが貯えるために選択したプログラムを含んでいるデータ・パケットは、それらのPIDによって記録PID選択装置47で識別される。記録PID選択装置47は、パケット・ヘッダの暗号化指標の情報に基づいて、暗号化されたパケットを暗号解読装置50に、暗号化されてないパケットをMUX110に送る。
【0018】
復号PID選択装置45および記録PID選択装置47は、PID検出フィルタを使用して、MUX37から供給される入来パケットのPIDを、コントローラ115により復号PID選択装置45および記録PID選択装置47の内部の制御レジスタ内にプレロード(preload)されたPID値と照合する。プレロードされたPIDは記録PID選択装置47および復号PID選択装置45で使用され、これから貯えようとするデータ・パケットとビデオ画像を発生するために使用される復号化しようとするデータ・パケットを識別する。プレロードされたPIDは復号PID選択装置45および記録PID選択装置47内のルックアップ・テーブルに貯えられている。PIDルックアップ・テーブルは、暗号化キーを各プレロードPIDと関連づける、復号PID選択装置45および記録PID選択装置47における、暗号化キー・テーブルにメモリ・マップされる。メモリ・マップされたPIDルックアップ・テーブルと暗号化キー・ルックアップ・テーブルにより、復号PID選択装置45と記録PID選択装置47は、プレロードされたPIDを含んでいる暗号化されたパケットを、それに関連する暗号解読を可能にする暗号化キーと照合する。暗号化されてないパケットはそれに関連する暗号化キーを有していない。復号PID選択装置45と記録PID選択装置47は、識別されたパケットおよびそれに関連する暗号化キーを暗号解読装置50に送る。また、復号PID選択装置45内のPIDルックアップ・テーブルは、送信先(destination)テーブルにメモリ・マップされる。この送信先テーブルは、プレロードされたPIDを含んでいるパケットを、それに対応するパケット・バッファ60内の送信先バッファの位置と照合する。暗号化キー、およびユーザが見るためにまたは貯えるために選択するプログラムに関連する送信先バッファ位置のアドレスは、コントローラ115により割り当てられたPIDと共に、復号PID選択装置45および記録PID選択装置47の中にプレロードされる。暗号化キーは、ISO7816−3に従うスマート・カード・システム130により、入力データストリームから抽出される暗号化符号から発生される。この暗号化キーの発生は、挿入可能なスマート・カード自体に予め貯えられる符号化された情報から決定される顧客の資格(entitlement)に依存する(1989年の国際標準機構の文書(ISO7816−3は、スマーチ・カード・システムのためのインタフェースおよび信号構成について規定している)。
【0019】
復号PID選択装置45および記録PID選択装置47から暗号解読装置50に供給されるパケットは、商務省の国家技術情報サービスから提供される連邦情報標準(Federal Information Standards:FIPS)公報46,74および81で規定される、データ暗号化基準(Data Encryption Stadard:DES)に従って暗号化される。暗号解読装置50は、既知の技術を使用して復号PID選択装置45および記録PID選択装置47から供給される、対応する暗号化キーを使用して、暗号化されたパケットを解読する。暗号解読装置50からの暗号解読されたパケット、および表示用のプログラムを含む復号PID選択装置45からの暗号化されてないパケットはデコーダ55に供給される。暗号解読装置50からの暗号解読されたパケット、および記録用のプログラムを含む記録PID選択装置47からの暗号化されてないパケットはMUX110に供給される。
【0020】
パケット・バッファ60は、コントローラ115によりアクセス可能なパケット・バッファを4個含んでいる。これらのバッファのうちの1個は、コントローラ115で使用することを予定されるデータを保持するために割り当てられ、他の3個のバッファは、アプリケーション装置75,80および85で使用することを予定されるパケットを保持するために割り当てられている。コントローラ115およびアプリケーション・インタフェース70によって、パケット・バッファ60内に4個のバッファに貯えられるパケットへのアクセスは、バッファ制御装置65により制御される。復号PID選択装置45は、復号化するために復号PID選択装置45により識別される各パケットについて送信先フラグをバッファ制御装置65に送る。これらのフラグは、識別されたパケットについて、パケット・バッファ60の個々の送信先の位置を表示し、バッファ制御装置65により、内部メモリのテーブル内に貯えられる。バッファ制御装置65は、先入れ先出し(FIFO)の原理に基づいて、バッファ60内に貯えられるパケットに関連する一連の読出しおよび書込みポインタを決定する。書込みポインタは、送信先フラグと共同して、パケット・バッファ60内部の適正な送信先バッファ内にある次の空白位置に復号PID選択装置45または暗号解読装置50からの識別されたパケットを順次に貯えることを可能にする。読出しポインタは、コントローラ115とアプリケーション・インタフェース70により、パケット・バッファ60の適正な送信先バッファからパケットを順次に読出すことを可能にする。
【0021】
復号PID選択装置45と暗号解読装置50からデコーダ55に供給される、暗号化されてないパケットと暗号解読されたパケットは、MPEGシステム標準の2.4.3.2項で規定されるような、トランスポート・ヘッダを含んでいる。デコーダ55は、トランスポート・ヘッダから、暗号化されてないパケットおよび暗号解読されたパケットが適応フィールド(MPEGシステム標準による)を含んでいるかどうかを判定する。適応フィールドは、例えば、内容(content)パケットの復号化および同期化を可能にする、Program Clock Reference(PCR)などのタイミング情報を含んでいる。適応フィールドを含んでいるパケットである、タイミング情報パケットが検出されると、デコーダ55は、システム割り込み(interrupt)をセットすることにより割り込み機構を介して、パケットが受信されたことをコントローラ115に伝える。また、デコーダ55はバッファ制御装置65中のタイミング・パケット送信先フラグを変更し、そのパケットをパケット・バッファ60に供給する。バッファ制御装置65の送信先フラグを変更することにより、バッファ制御装置65は、デコーダ55により供給されるタイミング情報パケットを、アプリケーション・バッファの位置ではなく、コントローラ115で使用するデータを保持するために割り当てられたパケット・バッファ60のバッファの位置に方向転換(divert)する。
【0022】
コントローラ115は、デコーダ55によりセットされたシステム割り込みを受信すると、タイミング情報およびPCR値を読み出し、それを内部メモリに貯える。連続するタイミング情報パケットのPCR値は、システム25のマスター・クロック(27MHz)を調整するために、コントローラ115により使用される。コントローラ115で発生される、連続的なタイミング・パケットを受信する時間間隔の、PCRに基づくエスティメイト(estimate)とマスター・クロックに基づくエスティメイトとの差が、システム25のマスター・クロックを調整するために使用される。コントローラ115は、これを行うために、得られた時間エスティメイト差を利用して、マスター・クロックを発生するのに使用される電圧制御発振器の入力制御電圧を調節する。コントローラ115は、内部メモリにタイミング情報を貯えた後に、システム割り込みをリセットする。
【0023】
オーディオ、ビデオ、キャプション、その他の情報を含む、プログラム内容を含んでいる、復号PID選択装置45および暗号解読装置50からデコーダ55により受信されるパケットは、バッファ制御装置65により、デコーダ55から、パケット・バッファ60内にある指定されたアプリケーション装置のバッファに送られる。アプリケーション制御装置70は、パケット・バッファ60内の指定されたバッファから、オーディオ、ビデオ、キャプション、その他のデータを順次に取り出し、このデータを、対応するアプリケーション装置75,80,85に供給する。アプリケーション装置は、オーディオ・デコーダ80とビデオ・デコーダ85、および高速データ・ポート75から成る。データ・ポート75は、例えば、コンピュータにコンピュータ・プログラムのような高速データを供給するために使用される。あるいは、データ・ポート75は、例えば、HDTVデコーダにデータを出力するのに使用される。
【0024】
PSI情報を含むパケットは、パケット・バッファ60内のコントローラ115用バッファに送られるものとして復号PID選択装置45により認識される。PSIパケットは、プログラム内容を含んでいるパケットについて説明したのと同様に、復号PID選択装置45、暗号解読装置50およびトランスポート・デコーダ55を介して、バッファ制御装置65によりこのバッファに送られる。コントローラ115はパケット・バッファ60からPSIを読み出し、それを内部メモリに貯える。
【0025】
コントローラ115は、第2図のプロセスを使用して、この貯えられたPSIから、圧縮されたPSI(CPSI)を発生すると共に、このCPSIを、選択可能な記録媒体に貯えるのに適するパケット化されたデータストリームの中に組み込む。第2図のパケット識別および方向付けプロセスは、前に説明したように、復号PID選択装置45と記録PID選択装置47のPID、送信先および暗号化キー・ルックアップ・テーブルおよびバッファ制御装置65の機能と共同して、コントローラ115によって支配される。
【0026】
CPSIは、これから貯えようとする特定のプログラムに関連する情報を含むのに対して、PSIは、トランスポート・システム25に入力されるデータストリーム内の全てのプログラムに関連する情報を含んでいる。従って、CPSIは、PSIよりも、少ない記憶容量を占め且つ少ないオーバーヘッドを課する。また、オーバーヘッドの制約が一定とすれば、CPSIはPSIよりも頻繁にデータストリーム内で繰り返され、従って、プログラム内容の再生待ち時間を少なくするために取り出されて使用される。
【0027】
MPEGシステム標準2.4.4項で規定されるPSIは、暗号化されない4つの要素もしくは情報のテーブルから成る。これらのテーブルは、Program Association Table(PAT)、Program Map Table(PMT)、Network Information Table(NIT)、およびConditional Access Table(CAT)である。各テーブルには、特定のPIDにより認識されるデータ・パケットから形成される。PMTは、1つのプログラムを構成する個々のパケット化されたデータストリームを識別するPIDラベルを規定する。これら個々のデータストリームは、MPEG標準において、基本的ストリームと呼ばれる。基本的ストリームには、種々の言語についてのデータストリーム、例えば、ビデオ、オーディオ、およびキャプション・データストリームが含まれる。PATは、PMTを含むパケットの識別およびアセンブリイ(assembly)を可能にするPIDとプログラム番号とを関連づける。NITはオプションであり、物理的なネットワーク・パラメータ(例えば、衛星伝送チャンネル周波数、トランスポンダ・チャンネルなど)を規定するために構成され使用される。CATは、条件付きアクセス情報、例えば、ユーザの資格に依存するプログラムへのアクセスを管理する暗号化符号を含んでいる。
【0028】
第2図のステップ205で、コントローラ115(第1図)は、ステップ200の開始に続くシステムの起動(power−up)で初期化手順を行う。ステップ205で、コントローラ115は、PATテーブルおよびCATテーブルについてMPEGで規定されるPID値(それぞれ、PIDの16進法値0000および0001)を復号PID選択装置45(第1図)のPID検出フィルタにロードする。また、コントローラ115は、復号PID選択装置45の送信先テーブルを更新することにより、パケット・バッファ60内のコントローラ・バッファにPATパケットおよびCATパケットを予め割り当てる。復号PID選択装置45により検出されるPATパケットおよびCATパケットは、バッファ制御装置65の制御の下に、デコーダ55を介して、パケット・バッファ60内のコントローラ・バッファに送られる。ステップ205で、バッファ制御装置65は、PSIパケットがパケット・バッファ60内に存在することを、PSI割り込み(interrupt)を介して、コントローラ115に伝える。コントローラ115は、PSI割り込みを受け取ると、その指定されたパケット・バッファ60のバッファ内に貯えられたパケットに繰り返しアクセスして、完全なCATおよびPATデータを内部メモリに貯える。コントローラ115は、このプロセスを繰り返して、PATからPMTおよびNITパケットを識別するPIDを決定した後に、完全なPMTおよびNITデータを内部メモリに貯える。コントローラ115は、バッファ60に連続的にアクセスし、受像機が起動されている間、PSI割り込みを受け取ると、PSIパケットを内部メモリに貯える。その結果、コントローラ115は、システム25に入力されるトランスポート・データストリームの完全なPSIを含むPAT,PMT,NITよびCATデータをその内部メモリに貯える。
【0029】
第2図のステップ210で、ユーザが貯えたいと思うプログラム、暗号化された形式で貯えられるプログラム、および記録用に使用される媒体と装置を識別する、ユーザにより発生されるデータ(SP,SM,SE)は、コントローラ115(第1図)に入力される。リモコン125を使ってオンスクリーン・メニューを選択したあと、ユーザの選択するデータがインタフェース120を介してコントローラ115に入力される。ステップ215で、入力された選択データ(SP)に応答して、コントローラ115は、貯えるために選択されたプログラムについてのPIDを、貯えられたPSIから取り出す。貯えようとするプログラムのPIDが、コントローラ115により、記録PID選択装置47の検出フィルタにロードされる。これにより、記録PID選択装置47は、記録用に選択されたプログラムを含んでいるパケットを識別することができる。
【0030】
第2図のステップ215で、記録PID選択装置47(第1図)は、暗号化されてないパケットをマルチプレクサ(MUX)110に供給し、暗号化されたパケット(パケット・ヘッダ・データ内の暗号化指標により識別される)を、関連する暗号化キートと共に、暗号解読装置50に供給する。第2図のステップ215で、暗号化キーは、前に説明したように、選択されたプログラム(SP)についてCATから得られる暗号化符号からスマート・カード130(第1図)によって発生されたあとで、記録PID選択装置47に供給される。しかしながら、もし選択データSEが、暗号化された記憶を要求するならば、記録PID選択装置47は、貯えようとする暗号化されたパケットをMUX110に送る。その結果、第2図のステップ215で、貯えようとするプログラム(SP)を含んでいるパケットは、選択データSEに応答して、暗号化された形式か暗号解読された形式の何れかの形式でMUX110に供給される。ステップ225で、コントローラ115は、システム25に入力されるトランスポート・データストリームから捕捉されるフル(full)PSI(Program Specific Information)から、記録用に選択されたプログラム(SP)について圧縮されたCPSI(Condensed PSI:CPSI)を形成する。第3図に示すプロセスを使用して、コントローラ115は、第2図のステップ225で貯えられる各プログラムについてCPSIを形成する。
【0031】
第3図のステップ305で、ステップ300の開始に続いて、コントローラ115は、貯えようとするプログラムを構成する基本的ストリームのPID値、およびPMTとNITを識別するPID値を変更する。偶然一致する場合を除き、変更されたPID値は、システム25に入力されるトランスポート・データストリームのPSIにおいて再生される、対応するPID値とは異なる。変更されるPID値を決定するために、一定のベース(base)PIDを割り当てて、PMTを識別すると共に、所定のオフセット値をベースPIDに加えて、ビデオ、オーディオ、キャプション、PCRおよびNITについてのPID値を決定する。貯えられる2つのプログラム(プログラム1およびプログラム2)についての例示的なPID割り当てスキーム(scheme)を第1表に示す。
【0032】
第1表から理解できるように、この2つのプログラムについて、対応する基本的ストリームに同じPID値が与えられている。例えば、プログラム1とプログラム2のビデオ・ストリームは何れも、PID=0401で識別される。対応する基本的ストリームに同じPID値を割り当てると、デコーダまたは再生装置で行われるデータの検索または再生が簡単化される。デコーダは、最初にPIDデマッピング(de−mapping)データを捕捉しアセンブル(組み込み)する必要なしに、ストリームを直接識別する。しかしながら、このようにPIDの数値を変更すると、PIDに曖昧さが生じるので、数値の変更された、別々のプログラムに属している基本的ストリームが混じり合わないことが要求される。同じPIDを共有し且つ異なるプログラムに属する基本的ストリームが混じり合うと、プログラムのアセンブリ(組み立て)に誤りが生じる。そのため、ステップ305のPID数値の変更が使用されるのは、別々のプログラムに属する基本的ストリームの幾つかのグループが個別に識別できる場合である。このような場合として、データストリームの発生やテープによる記録があり、この場合、個々のプログラムの基本的ストリームは混ぜ合わされない。また、このような場合として、ディスクによる記録があり、この場合、ディスクによる記録情報は、個々のプログラムに属する基本的ストリームの各グループを分離するのに利用できる。
【0033】
あるいは、PIDの曖昧さを避ける他のPID割り当てスキームも使用できる。例えば、米国ATSC(Advanced Television Systems Comittee)によって作成された、“HDTV伝送のためのディジタル・テレビジョン標準(1995年4月21日)”の8.4.7.1項で高精細度テレビジョン(HDTV)信号の復号化について提案されるように、特定のプログラムを別々に識別するために、ベースPID値が割り当てられる。あるいは、プログラムを構成する基本的ストリームのPID数値は、変更されずに伝送されたものとして、記録される。このようなスキームを実施するのは簡単であるが、データ検索プロセスを簡略化しない。PATとCATを識別するPIDは、それぞれ、MPEG標準に規定されるように、0000と0001(16進法)であることに注目されたい。
【0034】
【表1】

【0035】
第3図のステップ310で、コントローラ115は、PID値(16進法)を0000として、program association table(PAT)を作る。有利なことに、PATは現在貯えられている1個のプログラムについてのみ作られ、貯えられる各プログラム毎に新しいPATが作られる。従って、PATは、1つのprogram map table(PMT)の識別のために必要とされるエントリーだけを含む。第1表に示す例示的プログラムにおいて、プログラム1とプログラム2のCPSTはPATを含み、1個のPMTを識別するPIDエントリー(0400)を有する。あるいは、PATは、貯えるためにユーザが選択した全てのプログラムについて、または前に記録媒体に貯えられたプログラムを加えて貯えるためにユーザが選択した全てのプログラムについて、PMTを識別するためのエントリーを含むように形成される。後者のタイプのPATを作るために、コントローラ115は、予め記録されたPMTのPIDを記録インタフェース95と記憶装置90を介して記録媒体105から再生してから、このPATを作る。NITが作られる場合(あとで述べる)、NITパケットの識別を可能にするPIDもこのPATの中に含まれる。
【0036】
ステップ315で、コントローラ115は、構成要素の基本的ストリームを識別するために、所定の変更されたPID値を使用して、これから貯えようとする各プログラムについてPMTを作る。貯えようとする個々のプログラムを含む基本的ストリームは、前に貯えられたPSIデータから、コントローラ115により決定される。ステップ320で、コントローラ115は、インタフェース120(第1図)を介して供給されるユーザ入力データSEから、個々のプログラムが暗号化された形式で貯えられるのかどうかを判定する。プログラムが暗号化されない形式で貯えられる場合、コントローラ115は、第3図のステップ330から実行を続け、CAT(Conditional Access Table:条件付きアクセス・テーブル)を作らない。もしSEデータが、暗号化されたプログラムの記録を要求するならば、コントローラ115は、ステップ325で、暗号化符号を組み込んでいるそのプログラムについてCATを作る。貯えられた暗号化符号は、そのあとに続くプログラム検索動作で再生され、例えば、表示用に暗号化されたプログラムの解読を可能にする暗号化キーを発生するのに使用される。暗号化キーは、前に述べたようにして、挿入可能なスマート・カードに予め貯えられたエンタイトルメント(entitlement:資格)データにより許可される場合にのみ、再生された符号から発生される。
【0037】
ここで述べた暗号化システムは例示的なものにすぎない。暗号解読用に別の暗号化符号または暗号化キーの記録を伴う、別の暗号化機構(mechanism)を使用することもできる。符号の記録を伴わない、他のエンタイトルメント(entitlement)機構は必ずしもCATを必要としない。また、暗号化符号をCAT以外の他のCPSIの情報テーブルの中へ組み込むことにより、CATの必要性を無くすこともできる。例えば、暗号化符号は、PMTのCA descriptor(記述子)の個人的データ部(MPEGシステム標準2.6.16項による)に組み込むこともできる。この方法の利点は、プログラムを構成する基本的ストリームと符号を直接関連づけ、基本的ストリームを符号にリンクさせる別個のディレクトリイ(directory)の必要性を無くすことである。
【0038】
ステップ325または320に続いて、ステップ330で、コントローラ115は、貯えようとする各プログラムごとにネットワーク情報テーブルNIT(NIT:Network Information Table)を作る。コントローラ115により作られるNITには、個人的データが含まれ、これには、例えば、プログラムの名称、長さ、説明、暴力/性的内容の格付け、プログラムが記録される日時と、それに加えて、オプションの情報(例えば、編集されたバージョンをユーザが選択できるかどうか)が含まれる。貯えられた個人的データは、前に貯えられたPSI情報から、あるいは更に、リモコン125とインタフェース120を介してユーザが入力するデータから、コントローラ115で検査される。NITはオプションであり、ユーザは、メニュー選択により、貯えようとする任意のあるいは全てのプログラムについてNITを省略するように選択することもできる。その場合、第3図のステップ330は無視される。
【0039】
また、個人的データは、NIT以外のCPSIの情報テーブルの中に組み込まれることもある。例えば、個人的データは、PMTのUser Private descriptor(記述子)部分(MPEGシステム標準2.6項による)に組み込まれる場合もある。この方法の利点は、プログラムを構成する基本的ストリームと個人的データを直接関連付けるので、基本的ストリームを個人的データにリンクさせるために別個のディレクトリイの必要性をなくすことである。
【0040】
ステップ335で、コントローラ115は個々のプログラムについて作られたPATとPMTをアセンブルして、各プログラムについてCPSI(Compressed Program Specifif Information)を形成する。コントローラ115は更に、各プログラムについて作られたオプションのCATおよびNITデータをアセンブルしてCPSIに組み込む。従って、CPSIはPATとPMTを含み、またCATとNITの何れか一方または両方を含む。この作られたCPSIは、システム25に入力されるデータストリームから貯えるために選択された特定のプログラムに関連する情報を含み、貯えるために選択されなかったプログラムに関連するPSI(Program Specific Information)を除外する。
【0041】
しかしながら、CPSIは、入力されたトランスポート・データストリームから貯えるために選択された1つ以上のプログラムについても作られる。その場合、CPSIは単一のPATとPMTを含み、そして単一のCATと単一のNITを含むこともある。この場合、これらのテーブルは、MPEG標準で規定されるように、貯えるために選択されたこれら複数のプログラムの識別と再生をサポート(support)するデータを含む。プログラムが、例えば、システム25に入力される2つの別個のトランスポート・データストリームから貯えるために選択される場合、そのCPSIは単一のPATと2個のPMT(貯えようとする各プログラムについて1個のPMT)を含むであろう。また、CPSIは、1個のCATと2個のNIT(貯えようとする各プログラムについて1個のNIT)を含むであろう。
【0042】
記録媒体からプログラムを回復する際に、再生装置が異なるプログラムのCPSIを不正に使用すると、問題が起こる。CPSIデータ(例えば、PMT)が不正に使用されると、プログラム内容を復元する際に、データ・パケットの識別およびアセンブリイに誤りを生じ、例えば表示または処理に関して無効のデータを生じる。このような問題は、例えば、再生装置が再生されたプログラムのCPSIを使用しないかあるいはCPSIが変わったことに気付かずに、別のプログラムについて前に得られたCPSIを使用し続ける場合に起こる。記録媒体が1つ以上のプログラムを含んでいる場合に、これが起こる可能性が増す。その場合、再生装置は、例えば、トリック・ブレイあるいは検索動作の間にプログラムの境界を越えて、前のプログラムのCPSIを使用し続ける。プログラムの境界を越えて不正なCPSIパラメータを使用する問題を緩和するために、コントローラ115は、ステップ340で、第4図のプロセスを使用することにより、CPSIをフォーマット化する。
【0043】
第4図のステップ405で、ステップ400の開始に続き、コントローラ115は、インタフェース120を介して供給される入力データ(SM)からユーザが選択する記憶装置と記録媒体のタイプを判定する。もし選択された媒体が線型タイプ、すなわち、例えば、ディジタルVHS(DVHS)に使用されるビデオテープのような、順次アクセス媒体であるなら、コントローラ115は、ステップ410に続いて、ステップ425を実行するように指令される。ステップ425で、コントローラ115は、MPEGシンタックス(syntax)(MPEGシステム標準2.4.4−2.4.4.11)に従って、PAT,PMT,CAT,NITパケット・フォーマットに関連するバージョン(version)番号を変更する。バージョン番号は、貯えようとするプログラム内でCPSIの連続的な繰り返しの間にバージョン番号を連続的に増加させることにより変更される。バージョン番号計数器はオーバフロー状態を通して連続的に増加される。デコーダまたは再生装置は、記録媒体105からプログラムを取り出すと、連続するバージョン番号の変化を検出し、取り出されたプログラム内に生じる度に、PAT,MAT,PMT,CATおよびNIT情報を使用する。
【0044】
別の方法を使用して、バージョン番号を変更し、デコーダを始動させてCPSIを再び捕捉することもできる。バージョン番号は、プログラムの記録の開始時に連続して生じる最初の2つのCPSIの間に、またはそのプログラム内で選択されたCPSIの発生の間に、または記録媒体上で異なるプログラムの間に、増加される。異なるプログラム間の境界で生じるバージョン番号は特定の番号だけ異なる必要はない。しかしながら、1つのプログラム内で、作られる連続的なバージョン番号は、MPEGに従うためには1つだけ異ならなくてはならない。MPEGに従わないアプリケーション(application)の場合、CPSIテーブルのバージョン番号は1つのプログラム内で任意の値だけ異なる。ステップ425で使用される別の方法では、別の指標を指定して、再生装置にコマンドを送り、CPSIが発生するごとに、あるいは選択されたCPSIが発生すると、そのCPSIを使用する。割り当てられた指標は、MPEG体系(シンタックス:syntax)と両立性があり、個人的データ部分、例えばPATあるいはCATの適応フィールドに位置する(MPEGシステム標準の2.4.3.4項)。指標は任意に規定され、あるいは、例えば、パケット・ヘッダ適応フィールド内の‘不連続性指標(discontinuity indicator)’のような、現存する指標(MPEGシステム標準の2.4.3.5で規定される)である。この不連続性指標は‘1’に設定され、CPSIに潜在的に不連続性があるので、次に発生するPAT,PMT,CATおよびNIT情報を使用すべきであることを、デコーダまたは再生装置に指示する。不連続性指標をこのように使用することはMPEG標準で意図されていない。
【0045】
MPEGと両立性のないデータストリームの場合、更に別の方法も利用でき、例えば、MPEGと両立性のない指標を指定するか、あるいはプログラムの開始または終了を示す信号を使用する。別の技術は、バージョン番号に関係なく、検索されるデータストリームに生じるあらゆるCPSIを識別して使用するように再生装置を構成する。この場合、ステップ425は無視される。
【0046】
選択された記録媒体105が、非線形タイプ、すなわち、非順次アクセスに対応する媒体、例えば、CDROMまたはDVDのようなディスク媒体であるならば、コントローラ115は、ステップ415に続いて、ステップ430を実行するように指令される。非線形タイプの媒体では、CPSIデータは、その媒体上にある1つまたはそれ以上の特定のディレクトリイ位置に、あるいは線形タイプの媒体と同様に、プログラム内容の内部に貯えられる。ステップ430で、CPSIがディレクトリイ位置に貯えられる場合、コントローラ115は、ディレクトリイ位置にあるPAT,PMT,CAT,NITパケットに関連するバージョン番号を変更する。バージョン番号は、MPEG体系に従って増加され、記録媒体105(第1図)上で異なるプログラム間で異なるようにされる。ステップ430で、CPSIがプログラム内容の内部に貯えられる場合、コントローラ115は、線形タイプの媒体の場合、ステップ425に関連して説明したようにバージョン番号を変更する。CPSI要素のバージョン番号が異なるプログラム間で異なることを確実にするために、コントローラ115は、予め記録されたプログラムまたはファイルのバージョン番号を、記録インタフェース95と記憶装置90を介して記録媒体105から再生した後、増加されたバージョン番号を作りCPSIデータ内に挿入する。
【0047】
ステップ430で、バージョン番号を変更する他の方法もある。しかしながら、CPSIバージョン番号は、記録媒体105に貯えられる異なるプログラム間で異ならなくてはならない。あるいは、プログラムが開始したときまたはプログラムの境界を越えたとき、ステップ430で、CPSIを使用するようにデコーダにコマンドを送るために別の指標が指定される。割り当てられた指標は、MPEG体系と両立性があり、個人的データ部分、例えば、PATまたはCATの適応フィールドに位置する(MPEGシステム標準の2.4.3.4項)。この指標は任意に定められるか、あるいはステップ425に関連して述べたように、パケット・ヘッダ適応フィールド内の‘不連続性指標’のような現存する指標である。MPEGと両立性のないデータストリームの場合、CPSIを使用するようにデコーダまたは再生装置にコマンドを送る指標が指定される。この指標は、例えば、プログラムの記録の開始または終了を示す。
【0048】
選択された記録媒体105が、ソリッドステート、すなわち、RAMのような半導体メモリであれば、コントローラ115は、ステップ420に続いてステップ430を実行するように指令される。ソリッドステート型の媒体の場合、非線形媒体と同様に、CPSIデータは典型的に、その媒体上で1つまたはそれ以上の特定のディレクトリイ位置に貯えられ、他の記憶位置から容易にアクセスできる。従って、コントローラ115は、非線形媒体についてCPSIをフォーマット化したように、ソリッドステート媒体についてもCPSIをフォーマット化することにより、不正なCPSIパラメータをプログラムの境界を越えて使用するという問題を軽減する。すなわち、コントローラ115はステップ430のプロセスを使用する。
【0049】
第4図のプロセスは、第3図のステップ340のCPSIのフォーマット化を完了するステップ425または430に続いて、ステップ435で終了する。第3図のプロセスは、第2図のステップ225の、貯えるように選択されたプログラムについてCPSIの形成を完了するステップ340に続くステップ345で終了する。コントローラ115は第2図のプロセスを継続し、ステップ230を実行する。
【0050】
ステップ230で、コントローラ115は、MPEG体系に従ってCPSIデータを幾つかのセクション(section)の形式にする(MPEGシステム標準の2.4.4.3−2.4.4.11項)。セクションは、PATデータおよびPMTデータについて形成される。これらのテーブルが先に述べた第3図のプロセスでCPSIの中に組み込まれるなら、セクションはオプションのCATおよびNIT(個人的データ)についても形成される。その結果生じるパケット化されたデータには、テーブル識別子、セクション長さ識別子、および第4図のプロセスで前に決定されたバージョン番号が含まれる。注目すべきことは、PATセクションも、特定のトランスポート・ストリームにPATを関連付けるトランスポート・ストリーム識別子を含むことである。コントローラ115は、この識別子を元のPSIデータから得て、それをCPSIのPATセクションのトランスポート・ストリーム識別フィールドに挿入する。しかしながら、このフィールドは変更せずにあるいは空白のままにしておくこともできる。
【0051】
ステップ230で、コントローラ115はヘッダ・データをCPSIデータ・セクションに加えて、CPSIデータをフォーマット化し、且つパケット化し、貯えようとするデータストリームに挿入する。コントローラ115は、MPEGシステム標準の2.4.3.2と2.4.3.3項に従って、コントローラ115の内部メモリに貯えられるPSIヘッダ・データからヘッダを作る。しかしながら、CPSIセクション・データは、対応するPSIセクション・データと長さが異なる。従って、‘連続性計数(continuity count)’指標および‘ペイロード・ユニット・スタート(pay load start)’指標を含むパラメータは、コントローラ115で作られ、ヘッダ・データ内部にあるそれぞれの指標フィールド内に挿入される。コントローラ115で作られる新しい連続性計数指標は、例えば、PSI要素の各PIDごとのパケット数ではなく、対応するCPSI要素の各PIDごとのパケット数を表す。コントローラ115で作られる新しいペイロード・ユニット・スタート指標は、例えば、PSIセクションの最初のバイトではなく、対応するCPSIセクションの最初のバイトを識別する。
【0052】
第2図のステップ235において、ステップ230で形成されるMPEGと両立性のあるパケット化されたセクション・データの形式をなすCPSIはコントローラ115によりMUX110(第1図)に供給される。ステップ215に関連して前に述べたように、記録PID選択装置47または暗号解読装置50からのプログラム内容パケット・データストリームも、MUX110に供給される。ステップ235で、コントローラ115は、経路選択信号Cを使用してMUX110に入力されるプログラム内容とCPSIデータストリームを多重化し、MUX110から記録インタフェース95に出力される複合データストリームを作る。複合データストリームは、プログラム内容パケットとCPSIパケットを含む。コントローラ115は、バッファ制御装置65(第1図)からのPSI割り込み信号に応答して、貯えようとするプログラム・データストリームの中に挿入されるCPSIパケットの挿入を同期させる。ステップ205に関連して述べたように、PSI割り込み(interrupt)は、バッファ60内にPSIパケットの存在を示す。このようにして、パケット化された、CPSIのPAT,PMT,CATおよびNITセクションはPSIの位置に挿入され、対応するPSIセクションと入れ代わる。暗号化されないCPSIデータは、MUX110に入力される暗号化されたまたは暗号化されないプログラム内容データストリームの中に挿入でき、暗号化されたまたは暗号化されない記録用のプログラムが作られる。
【0053】
ステップ235で、コントローラ115は、ユーザが記録用に選択した媒体のタイプに関係なく、貯えようとするデータストリーム内で生じる各PSIデータを、対応するCPSIデータに代える。しかしながら、選択されたPSI位置にCPSIを挿入することにより、または貯えようとするプログラムの中に一度だけCPSIを挿入することにより、符号化オーバーヘッドが更に低減される。貯えようとするプログラム内のCPSIの繰り返し回数は、いくつかの要因、例えば、PSI要素最少繰り返し回数の制約、ユーザの好み、データ記憶容量の制約、あるいは選択された記録媒体のタイプに基づいてコントローラ115で決定される。ATSCが高精細度テレビジョン(HDTV)のために提案した方法では、PATの繰り返しの最小間隔100msを含む、あるPSI要素について最少繰り返し回数が指定されている(HDTV伝送用ディジタル・テレビジョン標準、付録C,5.4項、1995年4月12日)。更に、例えば、非線形またはソリッドステート型記録媒体において、CPSIの繰り返し回数を減らすこと、あるいは貯えられるプログラム内に一度だけCPSIを挿入することは、プログラム再生待ち時間に悪影響を与えない。その理由は、このようなタイプの記録媒体は急速な非順次的(ランダムな)データ・アクセスを可能にするからである。
【0054】
ステップ240で、記録インタフェース95は、CPSIを組み込んでいるパケット化されたデータストリーム(以下CPSIストリームと称す)の形式で貯えられるプログラムをMUX110から受け取る。第2図で、CPSIストリームを発生するためにコントローラ115が使用するプロセスはステップ245で終了する。注目すべきことは、ステップ240で、このCPSIストリームは、記録インタフェース95を経由する記録でなく、他のアプリケーション、例えばインタフェース70を経由する表示または通信にも使用される。
【0055】
MUX110からのCPSIストリームは記録インタフェース95でバッファされ、そのデータ内のギャップおよびビット・レートの変動を縮少する。バッファされたデータは記録媒体105に貯えるのに適するように記憶装置90で処理される。コントローラ115は、標準化されたCEBus制御プロトコル(ホーム・オートメーション標準(CEBus)、EIA/IS−60,1989年12月)を使用してI/Oポート100を経由するコマンドにより記憶デバイス90(第1図)の動作を開始させ、そして制御する。記憶装置90は線形記録媒体DVHS型デバイスであり、既知の誤り符号化技術、例えば、チャンネル符号化、インタリーブおよびリード・ソロモン(Reed Solomon)符号化を使用し、記録インタフェース95からのバッファされたデータストリームを符号化して、記録するのに適する符号化されたデータストリームを発生する。記憶装置90は、その結果生じる、CPSIを組み込んでいる符号化されたデータストリームをテープ媒体105に貯える。
【0056】
他のテープ記憶システムは、2つのデータストリームを並列に記録することができる。第1のデータストリームは、典型的には、プログラム内容の大部分を含み、テープ上に従来のようにヘリカル状に貯えられる。第2のデータストリームは、典型的には、データ密度とビット・レートがずっと低く、テープの端の方に位置する補助トラックに、線形(非ヘリカル状)に、並列に貯えられる。このタイプの記憶システムでは、記憶装置90は、CPSIデータをCPSIストリームから分離し、CPSIデータを補助トラックに貯える。記憶装置90は、テープに記録された各プログラムが、関連するCPSIデータを、プログラムの内容と並列に補助トラック内に運ぶようにCPSIデータを貯える。補助トラック内のCPSIデータの繰り返し回数は、補助トラックのデータ・レートの制約に依り調整される。あるいは、CPSIはヘリカル補助トラックに貯えられ、あるいはトラック情報エリア(Track Information Area:TIA)およびインサート・トラック情報(Insert and Track Information)セクタ(ITIセクタ)を含む、データ管理エリア(領域)に貯えられる。データ管理エリアは、プログラム内容と並行するヘリカル状または非ヘリカル状のトラックに貯えられる。
【0057】
記憶装置90は、第1図の実施例で、線形タイプの記録媒体にデータを貯えるDVHS装置として述べたが、任意のタイプの記憶装置でもよい。例えば、記憶装置90は、データをRAMあるいはDVDまたはCDROMに貯えるソリッドステートあるいは非線形タイプの装置でもよい。記憶装置90および記録媒体105が非線形あるいはソリッドステート・タイプであるならば、記憶装置90はCPSIストリームからCPSIデータを分離して、そのCPSIデータを記録媒体の指定されたディレクトリイ部分に貯える。これにより、CPSIの記録が繰り返されるのが避けられ、且つ必要とされる記憶容量が縮小されるので有利である。あるいは、記憶装置90は、CPSIデータが2度以上繰り返されるCPSIストリーム(形成されて記憶装置90に入力される)を貯える。
【0058】
更に、第1図のトランスポート・システム25は、線形、非線形およびソリッドステートなど種々のタイプの複数の記憶装置の動作をサポートする、複数の蓄積/再生経路を組み込むこともできる。第1図に示す単一の記録/再生路は、すでに述べたように、装置47,90,95,105,110から成る。並列の記憶機能を生じるようにこれらの要素を重複することにより、システム25は複数の記憶経路を組み込むように容易に拡張される。特定の記憶装置のために予定される記憶経路およびプログラムは、前に述べたように、リモコン125でオンスクリーン・メニューを選択してから、インタフェース120を介してコントローラ115に入力される、ユーザにより発生されるデータ(SP,SM)により選択される。
【0059】
第1図のシステム25は、第5図のプロセスを使用して、再生モードで、記憶装置90および媒体105からプログラムを再生する。再生されたデータストリームはシステム25で処理され、表示または出力用のアプリケーション装置75,80および85に供給される。あるいは、プログラム・データストリームは他の並列記憶装置(図面を簡略にするために第1図に示されていない)に貯えられる。
【0060】
第5図で、ステップ500の開始に続いてステップ505で、ユーザの発生するデータ(SR,SM)は、再生しようとするプログラムと、プログラムを再生する記憶装置を識別するシステム25(第1図)のコントローラ115に入力される。ユーザ選択データは、リモコン125を使って、オンスクリーン・メニューの選択に続きインタフェース120を介してコントローラ115に入力される。例示的目的のために、記憶装置90(第1図)から再生されるプログラムはユーザが選択するものと仮定する。ステップ510で、前に述べたように、コントローラ115は、標準化されたCEBus制御プロトコルを使用し、I/Oポート100を経由するコマンドにより記録媒体105から記憶装置90によって選択されたプログラム・データストリームの再生を開始させる。記憶装置90は、媒体105から取り出される、誤り符号化されたデータを復号化し、貯えるために記憶装置90に初めに供給された対応するデータを再生する。記憶装置90はDVHS線形タイプの記憶装置または別のタイプの記憶装置、例えば、ソリッドステートRAMまたは非線形のDVDまたはCDROMタイプの装置である。ステップ510で、復号化され再生されたデータストリームは記憶装置90を介して記録インタフェース95に転送される。このデータ転送は、標準CEBusを介してコントローラ115により制御され且つ同期化される。記録インタフェース95は記憶装置90から受け取るデータをバッファし、データ・パケット間の時間的間隔を調整し、MPEGと両立し且つMPEGビット・レートの制約に従う、バッファされたデータ出力を発生する。
【0061】
ステップ515で、コントローラ115は、経路選択信号Cを使用して、記録インタフェース95からのバッファされた出力(プレイバック・データストリーム)をMUX37を介してPID選択装置45と記録PID選択装置47に送る。ステップ520で、復号PID選択装置45と記録PID選択装置47およびシステム25の残りの装置は、プレイバック・データストリームを、MUX110を介して貯えるために、あるいはインタフェース70を介してアプリケーション用に処理する。記録インタフェース95からのプレイバック・データストリームおよびセレクタ35から伝送されるデータストリームは、MUX37を介する選択に続いて、システム25により同様に処理される。これらのデータストリームは何れも、伝送されるデータストリームについて前に述べた方法で処理される。しかしながら、MUX37を介して選択されるプレイバック・データストリームは既にCPSIを組み込んでいる。従って、再生モードにおいて、コントローラ115は、ステップ520で、第2図〜第4図に関連して述べたCPSIの形成に関連するステップを実行しない。
【0062】
第5図に示す例示的な再生モードで、システム25は、プレイバック・データストリームをトランスポート復号化し、復号化されたデータを、表示用のアプリケーション・デコーダ80と85に供給する。このモードで、システム25は、MPEG標準に従って、プレイバック・データストリームに含まれるCPSIデータを使用し、選択されたプログラムSRを表すトランスポート復号化されたデータストリームを供給する。
【0063】
ステップ520で、コントローラ115は、バッファ60を介してプレイバック・データストリームCPSIデータにアクセスし、データを検査して、連続的なCPSI要素間でバージョン番号に変更が生じていないか調べる。また、コントローラ115は、パケット・ヘッダ適応フィールドにおける‘不連続性指標’(MPEGシステム標準の2.4.3.5で規定される)で示される不連続性がないかプレイバック・データストリームを検査する。バージョン番号の変更または不連続性が検出されると、コントローラ115は最新の完全なCPSIデータを使用して、プレイバック・データストリームをトランスポート復号化する。また、コントローラ115は、他の種々の状態(例えば、トランスポート誤り表示および特定のPIDの連続的なパケット間の連続性計数値の不一致の検出など)に基づき最新の完全なCPSIデータを使用するようにプログラミングされる。これらのパラメータはいずれも、プレイバック・データストリーム・パケット・ヘッダ内に存在する(MPEGシステム標準の2.4.3.2項に規定される)。また、コントローラ115は、MPEG標準で規定される、presentation time stamps(PTSs:再生タイム・スタンプ)またはdecoding time stamps(DTSs:復号化タイム・スタンプ)またはユーザが規定する他のtime stamps(タイム・スタンプ)間の不連続性が検出される、CPSIを使用するようにプログラミングされる。しかしながら、MPEGと両立性のある体系では、不連続性の指標は連続性計数値の不一致の発生を表示するように設定されることが要求される。
【0064】
第1図に関して前に述べたのと同様にして、PIDフィルタ45と47、暗号解読装置50、デコーダ55、バッファ60、およびバッファ制御装置65を使用してプレイバック・データストリームをトランスポート復号化する際に、このCPSIが利用される。トランスポート復号化されたデータストリーム(CPSIを除く)は、インタフェース70を介して、MPEG復号化および画像再生用アプリケーション・デコーダ80と85に供給される。他のモードで、システム25は、CPSIを組み込んでいるプレイバック・データストリームを、他のアプリケーション装置(例えば、高速データ・ポート75)に供給する。それからCPSIは、必要に応じて、これらのアプリケーション装置またはそれに続く装置によりプレイバック・データストリームをトランスポート復号化する際に利用できる。プレイバック・データストリームが、例えば、記憶装置90以外の第2の記憶装置に貯えられる場合、MUX110は、CPSIを組み込んでいるデータストリームを、第2の記録インタフェースを介して、その第2の記憶装置に供給する。更に、この第2の装置とインタフェース(いずれも第1図に示されていない)はそれぞれ、記憶装置90と記録インタフェース95の動作と機能を模倣する。
【0065】
デフォルト(default)期間の間、システム25は、CPSIを使用する前に、‘blueスクリーン’または‘freezeフレーム’のような表示用の所定の画像を表す復号化されたデータをビデオ・デコーダ85に供給する。同様に、デフォルト期間の間、システム25は、バージョン番号の変更を検出してCPSIを使用する前に、オーディオ・デコーダ80にデータを供給して、音声出力を消去する。これらの手段は、正しいCPSIデータが使用されて視聴用の有効なマテリアル(material:素材)が供給されるまで、再生装置への煩わしいビデオ/オーディオ出力を防止する。デフォルト期間には、CPSI要素のバージョン番号の変更が検出されるまで、下記の何れかの状態からの期間が含まれる:
a)プログラム指標またはシステム起動の終了の検出;
b)早送りまたは内容飛ばし(トリック・プレイ)を伴うユーザ・コマンドの検出;または
c)有効なビデオ・パケットが検出されていないことを示す、誤り状態の検出。
【0066】
アプリケーション・デコーダ80と85によりMPEG復号化された、インタフェース70からのデータは、それぞれデコーダ80と85内の音声再生装置と画像再生装置を通して表示される。これにより、ステップ530で終了する再生プロセスは完了する。コントローラ115は不正なCPSIデータの使用を防止するために前に述べた他の方法のうちの任意の方法を代わりに使用できることに注目すべきである。
【0067】
第1図のアーキテクチャは唯一のものではない。同じ目的を達成するために、本発明の原理に従って他のアーキテクチャも得られる。更に、第1図のアーキテクチャの要素の機能および第2図〜第5図の処理ステップは、マイクロプロセッサのプログラミングされた命令(インストラクション)の範囲内で全体的にまたは部分的に実施することもできる。また、本発明の原理は、MPEGと両立性のない任意の形体のエレクトロニック・プログラム・ガイドに応用され、また本発明の原理は、MPEGと両立性のあるPSIテーブルで伝送されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】種々のタイプの記録媒体に貯えるために、圧縮されたPSIを適応的に発生し、パケット化されたデータストリーム中に挿入する、本発明によるビデオ受像機システムを示す。
【図2】PSIから圧縮されたプログラム特定情報(Condensed Program Specific Information:CPSI)を発生し、選択可能な記録媒体に貯えるのに適するパケット化されたデータストリーム中に組み込むプロセスのフローチャートを示す。
【図3】選択された記録媒体に選択されたプログラムを貯えるためにCPSIを形成するプロセスのフローチャートを示す。
【図4】プログラムを復号化する間、正しいCPSIが使用されるようにCPSIをフォーマットするプロセスのフローチャートを示す。
【図5】選択された記憶装置から選択されたプログラムを再生するプロセスのフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムのデータ内容を再生する際に使用するプログラム特定情報を組み込んでいる、プログラムを表すパケット化されたデータストリームを復号化する方法であって、
前記データストリーム内のプログラム特定情報データ・パケットを識別するステップと、
識別されたプログラム特定情報データを検査して、前記識別されたプログラム特定情報データの劣化を示すエラーを調べるステップと、
前記識別されたプログラム特定情報データを使用して、プログラム内容パケットを識別するステップと、
前記エラーに応答して、デフォルト・プログラム内容を表すパケットを、復号化されたデータストリームの中に組み立てるステップ、
前記識別されたプログラム特定情報データを使用して、前記プログラム内容パケットを、前記復号化されたデータストリームの中に組み立てるステップとから成る、前記復号化する方法。
【請求項2】
前記エラーが存在しない場合に、現在のプログラム特定情報が前記識別されたプログラム特定情報データで更新される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記デフォルト・プログラム内容が所定のビデオ画像を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記所定のビデオ画像が1フレーム(静止画)を表す、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記デフォルト・プログラム内容が消音されたオーディオ出力を表す、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−199624(P2008−199624A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31264(P2008−31264)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【分割の表示】特願2007−258382(P2007−258382)の分割
【原出願日】平成9年5月22日(1997.5.22)
【出願人】(391000818)トムソン コンシユーマ エレクトロニクス インコーポレイテツド (166)
【氏名又は名称原語表記】THOMSON CONSUMER ELECTRONICS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】