説明

プロゲステロン受容体モジュレーターを含有する徐放性組成物

【課題】膣もしくは経皮的投与のための徐放性組成物および避妊もしくは治療のための膣リングを提供する。
【解決手段】リングは、PRM、例えばCDB−2914が、外部環境(例えば、膣粘膜)に達するためにシリコーンエラストマーを含む少なくとも1つの層のポリマー物質を通して拡散するように構成されている。使用者は日常的に配慮する必要を伴わずにコントロールされ、そして容易に終了できる。PRMの膣内もしくは経皮的吸収は、直接的に適用され、膣粘膜もしくは皮膚によって直接的に吸収されるので、肝臓初回通過効果が回避され、低用量しか必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、§119(e)の下で、参照することによりその内容が本明細書に組み込まれる20
04年7月9日に提出された米国特許出願第60/586,783号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
健康管理および疾患に関係する多数の治療プログラムにおいて、所望の生理的または薬
理学的作用を達成するためには、長期間にわたって制御された速度で身体への薬物の緩徐
な放出を提供する薬物送達器具の使用が有益であることが証明されてきた。徐放性組成物
を使用することの主要な長所は、さもなければ多数の治療薬が、患者の循環系から急速に
代謝または排出されてしまい、治療有効濃度を維持するためには頻回な薬物の投与が必要
になることにある。
【0003】
そこで経口避妊薬と比較して最小の治療指針およびコンプライアンスしか必要としない
新規の長時間作用性避妊薬の開発に対する一貫して大きな要望がある。これは、医学団体
および家族計画機構が不十分な後進国において特に当てはまる。したがって、インプラン
ト、膣リング、および経皮システムを含む数種の長時間作用性の徐放性避妊薬デリバリー
システムが開発されてきた。概観については、Sitruk-Ware,et al.,Contemporary Clin.G
ynecol.& Obstet.2:287-98(2002)を参照されたい。
【発明の概要】
【0004】
CDB−2914は、アンタゴニスト特性を備えるプロゲステロン受容体モジュレータ
ー(PRM:progesterone receptor modulator)である(抗プロゲスチンとしても知られ
る)。CDB−2914は、緊急または性交後経口避妊薬として有用であると報告されて
いる。本出願人らは、そのようなPRM、例えばCDB−2914(本明細書では「VA
−2914」とも呼ばれる)が、徐放性調製物によって経膣的もしくは経皮的に投与され
ると避妊のために有効な可能性があることを発見した。このため、そのようなPRMは長
期避妊薬として、ならびに徐放性が有益である様々な治療適応のために効果的に使用でき
る。したがって、用語「避妊」、「避妊のために有効」および「長期避妊」は、緊急もし
くは性交後投与、または1日1回の経口投与を必要とする避妊方法を除外することが意味
されている。
【0005】
したがって、本発明の第1態様は、プロゲステロン受容体モジュレーター、例えばCD
B−2914を含有する合成ポリマー物質を含む膣リング組成物に向けられる。膣リング
内に含有されるPRMの量は、所定時間にわたり治療または避妊のために有効である量で
のPRMの放出を可能にする。好ましい実施形態では、リングは、PRM、例えばCDB
−2914が、外部環境(例えば、膣粘膜)に達するためにシリコーンエラストマーを含
む少なくとも1つの層のポリマー物質を通して拡散するように構成されている。他の好ま
しい実施形態では、膣リングは、不活性ポリマーコア、(ポリマーマトリックスを形成で
きるように)その中に分散している有効量のPRM、例えばCDB−2914を有する被
覆ポリマー層、および外側ポリマー層を含有する。不活性コア、薬物含有被覆層、および
外層内のポリマーは同一であっても相違してもよい。より好ましい実施形態では、PRM
はCDB−2914であり、コア、薬物含有被覆層および外層内のポリマーは各々がシリ
コーンエラストマーを含有する、またはシリコーンエラストマーから製造されており、シ
リコーンエラストマーは同一であっても相違してもよい。さらにまた別の好ましい実施形
態では、膣リングは、PRM、例えばCDB−2914が不活性ポリマーコアを取り囲む
ポリマーマトリックスの層内に含有されているように構成されている。
【0006】
本発明の第2態様は、治療または避妊のために有効な量のPRM、例えばCDB−29
14を放出する、非膣リング徐放性組成物、例えば膣もしくは経皮ゲル、クリームもしく
はフォーム、または経皮パッチに向けられる。好ましい実施形態では、本組成物は膣ゲル
の形状にある。
【0007】
本発明の関連態様は、長期避妊のために本発明の徐放性組成物を経膣的または経皮的に
投与する工程によって使用する方法に向けられる。
【0008】
本発明のさらにまた別の態様は、例えば内因性プロゲステロンをアンタゴナイズする、
月経を誘導する、機能不全性子宮出血を治療する、IVFにおける潜在的使用のために子
宮内成熟を遅延させる、子宮内膜症、月経困難症、髄膜腫および内分泌性ホルモン依存性
腫瘍、例えば乳癌、子宮筋腫、子宮内膜増殖症を治療する、ならびに陣痛を誘発するため
などの、避妊以外の治療目的での本発明の徐放性組成物の使用に向けられる。
【0009】
本発明のまた別の態様は、本発明の徐放性組成物を作製する方法に向けられる。
【0010】
本発明の徐放性組成物は、数多くの長所を有する。注射剤または皮下インプラントとは
相違して、本発明は持続的使用を必要とするが、しかし使用者は日常的に配慮する必要を
伴わずにコントロールされ、そして容易に終了できる。PRMの膣内もしくは経皮的吸収
は、直接的に適用され、膣粘膜もしくは皮膚によって直接的に吸収されるので、肝臓初回
通過効果が回避され、低用量しか必要としない。本組成物はエストロゲン無含有であり、
エストロゲンに起因する副作用が回避される。本発明の組成物の使用は、結果として減少
する月経出血および失血、ならびに子宮内膜萎縮をさらに生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは本発明の膣リングの1つの実施形態の略図であり、図1Bは本発明の膣リングの1つの実施形態の断面図である。
【図2】図2Aは本発明の膣リングの別の実施形態の略図であり、図2Bは本発明の膣リングの別の実施形態の断面図である。
【図3】本発明のシェル型膣リングからのCDB−2914のインビトロ放出速度を示すグラフである。
【図4】本発明の様々な膣リングからのCDB−2914およびミフェプリストン(MF)のインビトロ放出速度を比較した表を示す。
【図5】図5Aおよび図5Bは女性における(膣リングから放出された)CDB−2914の血清レベルを示すグラフである。
【図6】CDB−2914およびNestorone(登録商標)(NES)の匹敵するインビトロ放出速度および血清レベルを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
プロゲステロン受容体モジュレーターは、混合プロゲステロン−アゴニスト−アンタゴ
ニストであると開示されており、生物学的尺度の一方の端はプロゲステロンおよび合成プ
ロゲスチンによって表され、反対側の端はオナプリストン(onapristone)およびK230211な
どの純粋プロゲステロン−アンタゴニストによって表される。さらに、Steroids,65:543-
44(2000)(preface);Chwalisz,et al.,Steroids 65:741-51(2000);およびElger,et al.,St
eroids 65:713-23(2000)も参照されたい。より低い、または最小アゴニスト活性を有する
本発明のPRMは、避妊のため、ならびに産科適応、月経調節および乳癌治療のために有
用である。はるかに大きなプロゲスチン作用活性を有するPRMは、子宮内膜症および子
宮筋腫を治療するためにより適合する。アゴニストもしくはアンタゴニスト特性の相対量
の決定は、知られている技術によって実施することができる。Elger,W.et al.(上記)お
よびWO98/05679を参照されたい。プロゲステロン受容体モジュレーターである17α−ア
セトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4
,9−ジエン−3,20−ジオン(CDB−2914)は、本発明のために好ましい活性
物質、例えば避妊薬である。本化合物の実際的な大規模合成の1つの方法は、Rao,et al.
,Steroids 65:395-400(2000)に報告されている。CDB−2914は、米国特許第4,954,
490号に開示された合成スキームによって調製することもできる。本発明において有用な
他のプロゲステロン受容体モジュレーターは、モノデメチル化CDB−2914およびジ
デメチル化CDB−2914などのCDB−2914代謝産物である。その他のPRMは
米国特許第4,954,490号に開示されている(すなわち、17β位がアセチル基によって置
換されている11β−アリール−19−ノルプロゲステロンアナログ)(およびCDB−
2914を含む)。
【0013】
本発明において使用するために適合するさらにまた別のPRMは、WO97/41145(さらに
米国特許出願第20020025951A1号)に開示された21−置換プロゲステロンアナログを含
む。本化合物は一般式:
【化1】

を有する。
【0014】
式Iでは、R1は、−OCH3、−SCH3、−N(CH32、−NHCH3、−CHO、
−COCH3および−CHOHCH3を含むがそれらに限定されない官能基である。R2
、ハロゲン、アルキル、アシル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、炭酸アルキル
、シピオニルオキシ、S−アルキルおよびS−アシルを含むがそれらに限定されない官能
基である。R3は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびアシルオキシを含むがそれ
らに限定されない官能基である。R4は、水素およびアルキルを含むがそれらに限定され
ない官能基である。最後に、Xは、=Oおよび=N−OR5(式中、R5は、水素およびア
ルキルからなる群から選択される一員である)を含むがそれらに限定されない官能基であ
る。
【0015】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、1〜12個の炭素、および好ましくは1〜6
個の炭素を有する分枝状もしくは非分枝状の、飽和もしくは不飽和の一価炭化水素ラジカ
ルを意味する。アルキル基が1〜6個の炭素原子を有する場合は、「低級アルキル」と呼
ばれる。適合するアルキルラジカルには、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−
プロピル、2−プロペニル(もしくはアリル)、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(
もしくは2−メチルプロピル)などが含まれる。本明細書で使用する用語「アルキル」は
、「置換アルキル」を含む。置換アルキルは、低級アルキル、アリール、アラルキル、ア
シル、ハロゲン(すなわち、アルキルハロ、例えばCF3)、ヒドロキシ(例、ヒドロキ
シメチル)、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、アルコキシ(例、
メトキシメチル)、メルカプトなどの1つまたは複数の官能基を含む直前に記載したアル
キルを意味する。これらの基は、低級アルキル部分の任意の炭素原子に付着させることが
できる。
【0016】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、−OR(式中、Rは、低級アルキル、置換
低級アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、または置換アラルキルである)基
を意味する。適合するアルコキシラジカルには、例えば、メトキシ、エトキシ、フェノキ
シ、t−ブトキシ(例、メトキシエトキシ、メトキシメトキシなど)などが含まれる。
【0017】
本明細書で使用する用語「アシルオキシ」は、水素の除去によって有機酸から誘導され
る有機ラジカルを意味する。有機ラジカルは、アルキル、アリール、アラルキル、アシル
、ハロゲン、アミノ、チオール、ヒドロキシ、アルコキシなどの1つまたは複数の官能基
でさらに置換することができる。そのような置換有機ラジカルの例は、グリシン酸塩(例
、−OC(O)CH2NH2)である。適合するアシルオキシ基には、例えば、アセトキシ
、すなわち酢酸から誘導されるCH3COO−、ホルミルオキシ、すなわちギ酸から誘導
されるH・CO・O−、および3−シクロペンチルプロピオン酸から誘導されるシピオニ
ルオキシが含まれる。
【0018】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素原子を意味
する。
【0019】
本明細書で使用する用語「ヒドロキシ」は、−OH基を意味する。
【0020】
用語「アシル」は、−C(O)R基(式中、Rは本明細書に規定したアルキルもしくは
置換アルキル、アリールもしくは置換アリールである)を意味する。
【0021】
本明細書で使用する用語「アリール」は、一緒に縮合されている、共有結合している、
またはエチレンもしくはメチレン部分などの共通基と連結している単一または複数の環で
あってよい芳香族置換基を意味する。芳香環は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフ
ェニルメチル、2,2−ジフェニル−1−エチルを含むことができ、さらにチエニル、ピ
リジルおよびキノキサリルなどのヘテロ原子を含有してよい。アリール基は、ハロゲン原
子、またはニトロ、カルボキシル、アルコキシ、フェノキシなどの他の基とさらに置換さ
れてもよい。さらに、アリール基は、さもなければ水素原子によって占められるアリール
ラジカル(2−ピリジル、3−ピリジルおよび4−ピリジル)上の任意の位置で他の部分
に付着させることができる。
【0022】
本明細書で使用する用語「炭酸アルキル」は、−OC(O)OR基(式中、Rは、本明
細書に規定したアルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールである)を意味
する。
【0023】
本明細書で使用する用語「S−アルキル」は、−SR基(式中、Rは、低級アルキルも
しくは置換低級アルキルである)を意味する。
【0024】
本明細書で使用する用語「S−アシル」は、チオール基とアシル化剤との反応から誘導
されるチオエステルを意味する。適合するS−アシルには、例えば、S−アセチル、S−
プロピオニルおよびS−ピバロイルが含まれる。当業者は、S−アシルがそれらの調製方
法とは無関係にそのようなチオエステルを意味することを知っている。
【0025】
本明細書で使用する用語「N−オキシム」および「N−アルキルオキシム」は、=N−
OR5基(式中、R5は、例えば、水素(N−オキシム)もしくはアルキル(N−アルキル
オキシム))を意味する。当業者は、オキシムが、シン異性体、アンチ異性体またはシン
異性体およびアンチ異性体の両方の混合物からなる可能性があることを知っている。
【0026】
式I中では、所定の実施形態、つまりR1が−N(CH32である実施形態;R2がハロ
ゲンもしくはアルコキシである実施形態;R3がアシルオキシである実施形態;R4がアル
キル(例、メチルおよびエチル)である実施形態;ならびにXが=Oもしくは=N−OR
5(式中、R5は水素もしくはアルキルである)である実施形態が好ましい。より特別には
、好ましい化合物は、R1が−N(CH32である;R2がハロゲンである;R3がアシル
オキシである;およびR4がアルキルである化合物である。この実施形態のうちで、特に
好ましい化合物は、R2がF、BrもしくはClである;およびR4がメチルである化合物
である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2がアルキルである;R3
がアシルオキシである;R4がアルキルである;およびXが=Oである化合物である。さ
らに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2がアルコキシである;R3がアシル
オキシである;R4がアルキルである;およびXが=Oである化合物である。この実施形
態のうちで、特に好ましい化合物は、R2がメトキシもしくはエトキシである;およびR3
がアセトキシである化合物である。さらに好ましいのは、R1がN(CH32である;R2
がヒドロキシである;R3がアシルオキシである;R4がアルキルである;およびXが=O
である化合物である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2およびR3
がどちらもアシルオキシである;R4がアルキルである;およびXが=Oである化合物で
ある。この実施形態のうちで、特に好ましい化合物は、R2およびR3がどちらもアセトキ
シである化合物である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2がS−ア
シルである;R3がヒドロキシもしくはアシルオキシである;R4がアルキルである;およ
びXが=Oである化合物である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2
がシピオニルオキシである;R3がアセトキシである;R4がアルキルである;およびXが
=Oである化合物である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2がメト
キシである;R3がアセトキシである;R4がアルキルである;およびXが=N−OR5
式中、R5が、例えば水素もしくはアルキル(例、メチル、エチルなど)である)である
化合物である。さらに好ましいのは、R1が−N(CH32である;R2およびR3がどち
らもアセトキシである;R4がアルキルである;およびXが=N−OR5(式中、R5が、
例えば水素もしくはアルキル(例、メチル、エチルなど)である)である化合物である。
【0027】
特に好ましい化合物には、17α−アセトキシ−21−フルオロ−11β−(4−N,
N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオ
ン、17α−アセトキシ−21−クロロ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニ
ル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ−
21−ブロモ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ
−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α,21−ジアセトキシ−11β−(4−N
,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジ
オン、17α−ヒドロキシ−21−アセチルチオ−11β−(4−N,N−ジメチルアミ
ノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセ
トキシ−21−アセチルチオ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19
−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ−21−エト
キシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9
−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ−21−メチル−11β−(4−N,
N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオ
ン、17α−アセトキシ−21−メトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェ
ニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ
−21−エトキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレ
グナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ−21−(3’−シクロ
ペンチルプロピオニルオキシ)−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1
9−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン、17α−アセトキシ−21−ヒ
ドロキシ−11β−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4
,9−ジエン−3,20−ジオン、17α,21−ジアセトキシ−11β−(4−N,N
−ジメチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン
3−オキシム、および17α−アセトキシ−21−メトキシ−11β−(4−N,N−ジ
メチルアミノフェニル)−19−ノルプレグナ−4,9−ジエン−3,20−ジオン3−
オキシムが含まれるがそれらに限定されない。これらの化合物を作製する方法は、米国特
許出願第20020025951A1号に開示されている。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、徐放性組成物は膣内もしくは膣リングの形状にある。こ
れらのリングは、医学的介助を受けずに単純な方法で膣内に導入できる、不活性エラスト
マー物質から作製された環状形製品である。リングは、膣の後壁と恥骨の上縁との間に適
合する。多数のタイプの膣リングが特許および非特許文献に同様に記載されている。例え
ば、米国特許第4,012,496号および第4,155,991号(どちらもSchopflin et al.への);第
4,292,965号(Nash)(3層リングについて教示している);第3,545,439号(Duncan);
第3,920,805号(Roseman);第3,991,760号および第3,995,634号(どちらもDrobish et a
l.への);第3,995,633号(Gougen);第4,250,611号および第4,286,587号(どちらもWon
gへの);第4,596,576号(de Nijs);WO95/00199(Lehtinen et al.);NL8500-470−A
;およびApter,et al.,Contraception 42:285-295(1990);Burton,et al.,Contraception
17:221-230(1978);Burton et al.,contraception 19:507-516(1979);Jackanicz,Contrace
ption 24:323-339(1981);Sivin,et al.,Contraception 24:341-358(1981);Timmer,et al.
,Contraception 43:629-642(1990);Toivonen,Contraception 20:511-518(1979);およびSi
truk-Ware,et al.,Contemporary Clin.Gynecol.& Obstet.2:287-98(2002)を参照されたい

【0029】
多数の基本的リングデザイン、例えば均質リング、2層リング、Rosemanリングおよび
3層リングなどが当分野において知られている。例えば、Weiner et al.,Acta Obstet Gy
necol.Scand,Suppl.54,1977 p.35;Rosemanへの米国特許第3,920,805号およびSchopflenへ
の米国特許第4,012,496号を参照されたい。ポリマー物質、例えばポリマーおよび樹脂は
、それらの用語は当業者によって一般に理解されているように、生理学的に容認可能かつ
不活性である。均質なリングでは、避妊薬は不活性のエラストマーマトリックス全体に実
質的に均質に分散している。例えば、Duncanへの米国特許第3,545,439号およびVictor,et
al.,Contraception 12:261,1975を参照されたい。図2AおよびBに略図で示した2層リ
ングは、避妊薬を含有する(例えば、マトリックスを形成できるようにそれに浸漬した、
またはそれが分散されている)不活性で生理学的に容認できる合成樹脂もしくはエラスト
マーの第2リングによって取り囲まれた、ポリマー物質、例えばエラストマーリングを含
有する。例えば、Schoepflin,et al.への米国特許第4,012,496号を参照されたい。Rosema
nリングでは、避妊薬を含有する不活性エラストマーの薄層はエラストマーの中心不活性
コアの上へ成形されている。図1AおよびBに略図で示した3層リングは、合成エラスト
マーの中心不活性コアを取り囲んでいる避妊薬を含有する不活性エラストマーの層を含有
し、この層は順に避妊薬の放出速度を制御するために様々な厚さの不活性エラストマーの
外層によって取り囲まれている。さらにまた別の膣リングデザインは、米国特許第5,972,
372号の中に教示されている。この特許は、第1ポリマー材料の膣リング本体を含有する
膣リングを教示し、前記膣リングは、前記本体の外部への開口部を規定する少なくとも1
つの中空内部チャネルであって該開口部を通して膣内へ投与できる薬物を含有するコアを
受け入れるために適応しているチャネルと、そして該チャネル内に配置されたコアとを含
有し、該コアは第2ポリマー物質内に分散した薬学的有効量の少なくとも1つの膣内へ投
与できる薬物を含有する。第1および第2ポリマー物質は、同一であっても相違してもよ
い。‘372特許は、シェル型リング、均質リング、およびコアリング(各々が同一または
相違する活性薬を含有してよい、少なくとも2つの安価なコアを有するリング)の図示を
さらに含有する。本発明において使用するために好ましい膣リングは2層および3層リン
グである。
【0030】
リングの一般構造とは別に、本出願人らは、リングを作製するために通常使用されるポ
リマー物質の全てが薬物、特にCDB−2914および密接に関連する構造的誘導体など
のPRMの容認できる放出速度を提供するとは限らないことも発見した。実施例に例示す
るように、本出願人らは、予想外にもCDB−2914がシリコーンエラストマーから他
のPRM、ミフェプリストンより高い放出速度を示すことを発見した。ポリオルガノシロ
キサン、例えばポリジメチルシロキサンまたはジメチルシロキサンおよびメチルビニルシ
ロキサンのコポリマーなどのシリコーンエラストマー、従来型シリコーンゴム、ポリウレ
タン、SILASTIC 382(Dow Corning社)、ラテックスゴム、ポリアミド、ポリエステル、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン酢酸ビニルおよびナイロンなどの様々な生理
学的に容認できる樹脂もしくはエラストマーは文献において膣リングを作製するために適
合すると開示されている。本発明の膣リングは、好ましくはシリコーンエラストマー、お
よびより好ましくは特に以下などの医用オルガノポリシロキサンなどのシリコーンゴムを
含有する:
1.例えば米国特許第2,541,137号;第2,723,966号;第2,863,846号;第2,890,188号お
よび第3,022,951号に記載されたような、過酸化物硬化触媒、例えば過酸化ベンゾイルも
しくはジ−p−過酸化クロロベンゾイルを約200℃の温度で用いて加硫処理しなければ
ならず、熱後処理を必要とする熱硬化性オルガノポリシロキサン。
2.硬化触媒の存在下および大気湿度下で架橋剤の添加後に室温でエラストマーへ硬化
するRTV(室温加硫処理)タイプのヒドロキシル基を末端に持つオルガノポリシロキサ
ン。典型的な硬化触媒は、カルボン酸の金属塩、好ましくはスズ塩、例えばスズ(II)
オクタン酸塩およびスズ(II)−2−ヘキサノン酸エチルである。
3.また別の添加物を含まない大気湿度下の室温で硬化される一成分系シリコーンゴム
組成物。これらの一成分組成物は、主として2つの末端に位置する加水分解可能なアシル
オキシ基、例えばアセトキシを有するオルガノポリシロキサンを含有する;アシルオキシ
基は大気湿度下で加水分解されると、硬化エラストマーへポリマーを架橋させる三官能シ
ロキサン単位を形成する。そのようなオルガノポリシロキサンは、例えば、米国特許第2,
927,907号および第3,035,016号ならびに英国特許第798,669号および第804,199号に記載さ
れている。
4.室温またはわずかに上昇した温度下で白金触媒され、追加して架橋結合できる二成
分系ジメチルポリシロキサン組成物。薬物層は上記のクラス2および3から選択されたエ
ラストマーから構築することができ、外層は、クラス1のエラストマーが薬物層と接触さ
れる前に硬化されることを前提に、上記のクラス1〜4から選択されたエラストマーから
構築することができる。コア、薬物層、および外層内に使用するために好ましいエラスト
マーはポリジメチルシロキサンである。
【0031】
徐放性組成物中に存在するプロゲステロン受容体モジュレーターの量は、当業者にはよ
く理解されているように、典型的には、使用された特定化合物の活性;治療される個体の
年齢、体重、身体全体の健康、性別および食事;投与の時間および経路;排出速度;以前
に投与されていた他の薬物;ならびに治療中の特定疾患の重症度に依存する。
【0032】
プロゲステロン受容体モジュレーター、例えばCDB−2914は、治療もしくは避妊
のために有効な量の薬物の毎日の放出を可能にするために有効な量で膣リング内に存在す
る。これは、リング内から膣天井内、そして周囲組織内への薬物の拡散によって発生する
。上述した考察とは別に、膣リングの場合には、薬物の量は、リングの寸法、投与の期間
(すなわち、リングが膣内に維持することが意図される期間の量)、リングエラストマー
内での薬物の溶解度、薬物リザーバーの表面積、薬物がその表面に達するためにリング本
体全体に拡散しなければならない距離および薬物の分子量、ならびに所定の作用を達成す
るために1日量ベースでリングから放出される必要がある薬物量に依存する。長期間の避
妊のためには、量は一般に、約400μg〜約3,000μg/日、より典型的には約1
,500μg〜2,500μg/日の範囲内である。より好ましい実施形態では、放出さ
れる量は約2mgである。しかし、400μg未満および3,000μgを超える量もま
た有用なことがある。膣リングは、典型的には1カ月から約1年間の範囲内の期間にわた
り有効な避妊を提供するために十分な薬物を含有するように設計できる。一部の実施形態
では、リングは、約3カ月間にわたる避妊効果を提供するために十分な薬物を含有する。
これらの基準を前提に、膣リング内に含有される薬物の量は、一般に約0.2〜約6g、
および好ましくは約1〜約4gの間で変動する。例えば、1年間にわたり膣内にとどまる
ことが意図されているリングは、典型的には約2gの薬物を含有する。
【0033】
膣リングの寸法は、当業者であれば標準技術を用いて決定することができる。一般に、
膣リングは、典型的には約40mm〜約70mm、好ましくは50mm〜65mm、およ
びより好ましくは約58mmの全径を有する。リングの全断面径は、一般に約2mm〜約
10mm、および好ましくは約6〜8mm、およびより好ましくは約4〜8mmの範囲内
である。そこで、不活性コアの厚さは、一般に約1mm〜約9mm;薬物含有層の厚さは
、一般に約0.5mm〜約2.0mmの範囲内である;ならびに3層リングの場合には、
外層の厚さは、一般に約0.05mm〜約0.6mm、好ましくは約0.1mm〜約0.
3mmの範囲内である。外層の厚さは、薬物が膣組織に到達するために移動しなければな
らない距離に影響を及ぼす。そこで、これは薬物の放出速度を制御するために変動してよ
い。
【0034】
組成物が長期間の継続的避妊目的に使用される好ましい実施形態では、避妊薬、例えば
CDB−2914は、リング内の唯一の活性物質である。そこで好ましい実施形態では、
リングは、アンドロゲン、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、エストロゲンまた
は選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどの他の活性物質を含有していない。他方
、不活性添加物もまた存在してもよい。例えば、リングの構造的完全性は、フュームドシ
リカもしくは珪藻土などの粒子状物質の添加によって強化することができる。
【0035】
本発明の膣リングは、標準技術によって調製することができる。例えば、膣リングを調
製する方法は、米国特許第4,292,965号に記載されている。一部の実施形態では、リング
は、例えばマトリックスを形成するために、まず最初に薬物を混合する工程、またはエラ
ストマー内に薬物を分散させる工程によって調製される。薬物が実質的に一様な分散を達
成するためにマトリックス物質と混合されると、結果として生じる分散の所望の形状は、
成形する工程、鋳造する工程、押出成形する工程、または他の適切なプロセスによって達
成される。3層リングの場合には、例えば、エラストマーコアを含有するゴムチューブ(
例、シリコーン)内へ分散物を充填し、その後にチューブの両端を結合してリングを形成
することができる。また別の方法は同時押出成形を含む。これらの実施形態では、それら
の1つが薬物を含有するエラストマーの層が同時押出成形され、さらに薬物の融点より低
い温度で加熱する工程によって硬化される。適合する医用接着剤は、医用シリコーンA型
を含む。
【0036】
本発明の組成物は、プロゲステロン受容体モジュレーター、例えばCDB−2914の
持続性放出を提供する非膣リング徐放性組成物、例えばクリーム、ゲル、ゼリー、フォー
ムおよび坐剤(例えば、発泡性坐剤)の形状をさらに取ることができる。これらの組成物
は各々、少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤、担体もしくは希釈剤を含有する。当
業者は、例えば当分野における標準文書を頼ることによって、様々なタイプの徐放性組成
物を作製するために適切なものを選択することができる。例えば、本発明による膣クリー
ムは、炭化水素ベース(例、白色ワセリン)、溶媒(例、グリセリンもしくはプロピレン
グリコール)および乳化剤(例、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリル硫
酸ナトリウム)を含有してよい。膣ゼリーは、溶媒(例、グリセリンもしくはプロピレン
グリコール)、ゲル生成剤(例、アルギン酸ナトリウム(特にカルシウムイオンを有する
)、トラガカントガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナト
リウム、カルボマーおよびポリビニルアルコール)ならびに非球形もしくは非精子固定化
保存料を含有してよい。膣フォームは、フッ素化炭化水素噴射剤および界面活性剤もしく
は乳化剤を含有してよい。これらのタイプの組成物の数多くの例は、当分野において知ら
れている。例えば、WO第03/093,322号、および米国特許第5,595,980号;第4,585,647号;
第4,368,186号;第5,766,681号;第6,207,696号;第4,310,510号;および第4,795,761号
を参照されたい。これらの組成物は、1つまたは複数の他の活性物質、例えば殺精子剤を
さらに含有してよい。
【0037】
膣ゲルが好ましい。ゲルの性能は、活性物質の溶解度、増強剤およびゲル化成分の選択
、ならびに結果として生じる調製物の安定性などの因子に依存する。アルコールは回避さ
れなければならない。プロゲステロン受容体モジュレーター、特にCDB−2914は水
溶性ではないが、それらはシクロデキストリン内の水溶性安定性複合体で調製することが
できる。ゲル化剤には、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、カルボポル、およびカ
ルボキシメチルセルロースが含まれる。本組成物は、膣環境と適合する調製物を作製する
ための量でpH調整剤をさらに含むことができる。一般に、約5〜約6のpHを有する調
製物が膣投与のために適合する。
【0038】
経皮ゲルは、典型的には、PRMの他に、カルボポル、メチルセルロース、カルボキシ
メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースなどの1つまたは複数のゲル
化剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、グリセロー
ルなどの1つまたは複数の有機溶媒、およびジメチルスルホキシド、ウレアおよびその誘
導体などの1つまたは複数の浸透強化剤、界面活性剤(例、スクロースモノラウレート、
グリセロールモノオレエート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコールラウ
レート、およびネオペンチルグリコールジカルプレト)、ポリオール、胆汁塩および誘導
体、脂肪酸および誘導体、アゾンおよびリポソームを含有する。経皮ゲルは皮膚へ直接的
に、または経皮パッチもしくは経皮的治療システムとしても知られているパッチによって
適用できる。当分野においては多数の経皮パッチが知られている。それらは、例えば実質
的にPRMにとって不浸透性の裏層;例えば接着させられて、または例えばPRMが経皮
的に吸収されるのを許容するために用量単位を治療される被験者の皮膚と密接に接触させ
るように接着する、感圧接着剤のような接着手段によって裏層と接触している、ポリマー
から形成されてよい活性基質含有リザーバーを含有してよい。それらは取り外せる保護層
をさらに含有してよい。例えば、米国特許第4,788,062号;第4,818,540号;第6,207,696
号;第6,476,029号;および第6,521,250号を参照されたい。
【0039】
これらの徐放性組成物中のプロゲステロン受容体モジュレーター、例えばCDB−29
14の量は、一般に約0.2g〜約6gの間で変動する。徐放性組成物の投与は、例えば
上述した多数の考察、および特に避妊もしくは治療作用が意図される時間の長さによって
変動する。一般に、膣に投与される徐放性組成物は、1日1回、そして経皮パッチについ
ては3〜7日毎に1回投与される。
【0040】
膣リングの場合と同様に、本発明の他の徐放性組成物が避妊目的に使用される場合は、
PRM、例えばCDB−2914はリング内の唯一の活性物質であることが好ましい。そ
こで、それらは、アンドロゲン、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、エストロゲ
ンまたは選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどの他の活性物質を含有していない
ことが好ましい。他方、これらならびに任意の実施形態では、不活性の医薬上許容される
添加物もまた存在してよい。
【0041】
以下では、本発明を実施例によって説明する。それらは、本明細書に開示した本発明の
範囲を限定することは決して意図されていない。他に特別に指示していない限り、全部分
は重量である。
【実施例】
【0042】
[実施例1:リングの調製]
3層リングは、不活性シリコーン製チューブ(活性物質を含んでいない)を外側シリコ
ーン製チューブ内へ挿入する工程によって調製した。CDB−2914とシリコーンエラ
ストマーとの混合物は、不活性コアと外膜との間隙内に注入した。CDB−2914を含
有するシリコーンマトリックスを重合化させた後、医用シリコーン系接着剤を用いてチュ
ーブの両端を結合してリングを形成した。
【0043】
[実施例2:3層リングからのCDB−2914のインビトロ放出速度]
スクリューキャップ付き500mL広口ポリエチレン製ボトル内に、糸を使用して実施
例1で調製したリングを個別に吊り下げた。400mLの再蒸留した水を添加し、このボ
トルを37℃の攪拌水浴中へ配置した。水浴は、1インチの100ストローク/分を行う
ように設定した。水浴溶液は24時間毎に取り替えた。水性溶媒中のCDB−2914濃
度をHPLCによって測定してCDB−2914の放出速度を決定した。CDB−291
4のインビトロ放出速度は、図3にグラフ表示した。
【0044】
[実施例3:本発明の様々な膣リングからのCDB−2914およびミフェプリストンの
放出速度の比較]
同一インビトロ放出速度分析を用いて、数種の径のシリコーン製チューブ、および速度
限定層として18%エチレン酢酸ビニル(EVA)を含有するチューブを用いて、CDB
−2914(20%の負荷(W/W))またはミフェプリストン(20%の負荷(W/W
))のいずれかを含有する膣リングを調製した。リングは、シリコーン製チューブ内に充
填されたシリコーンエラストマーマトリックス内でCDB−2914を混合する工程によ
って調製した。重合した後、チューブを長さ16cmに切断し、医用接着剤を用いて両端
を結合するとリングが形成された。この膣リングは、シリコーンゴムと活性物質との内層
、および速度を限定する外層を有する。18%のEVAを含有するシリコーンを用いると
、CDB−2914は約96μg/リング/日の速度で放出されたが、他方ミフェプリス
トンの放出はごくわずかであった。シリコーン製チューブCを用いると、CDB−291
4はミフェプリストンの3倍を超える速度で拡散した(160μg/リング/日対48μ
g/リング/日)。シリコーン製チューブDおよびシリコーン製チューブEから作製した
リングを用いる実験もまた実施した。結果は、図4の表に示した。結果は、CDB−29
14とミフェプリストンとの構造類似性(例、Stratton,et al.,Human Reproduction 15(
5):1092-99(2000)に例示されている)にもかかわらず、CDB−2914は、シリコーン
をベースとする膣リングから予想外に高い放出速度を示した。結果は、本発明の膣リング
内の速度限定ポリマーとしてのEVAの使用が、シリコーンエラストマーより好ましくな
いこともさらに示している。
【0045】
[実施例4:女性における本発明の膣リングのインビボ使用]
2カ所のクリニックにおいて薬物動態試験が広範囲で実施された。CDB−2914お
よびその免疫応答性代謝産物の血清レベルを測定するために、ラジオイムノアッセイおよ
び液体クロマトグラフィー/質量分光法(LC/MS)が使用された。2つの方法の結果
は匹敵していた。被験者にリングを挿入した後、CDB−2914は血流内に吸収され、
持続的に上昇し、挿入から約7日後にプラトー(2〜3ng/mL)に達した。血清レベ
ルは、第29日にリングの抜去により減少した(図5Aおよび5Bを参照)。リングの挿
入直後にCDB−2914のバースト放出は観察されなかった。合成プロゲスチンである
Nestorone(登録商標)(NES)に比較して、CDB−2914は血流内へより容易に吸収
され、CDB−2914の血清濃度はNestoroneの血清濃度より高かった(図6を参照)

【0046】
本明細書に言及した全特許および非特許刊行物は、本発明が関係する分野の当業者の水
準の指標である。これらの刊行物および特許出願全ては、まるで各々の個別刊行物もしく
は特許出願が詳細かつ個別に本明細書に参照により組み込まれているかのように同程度ま
で参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書では本発明を特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は
本発明の原則および適用を単に例示しているに過ぎないと理解されたい。このため、例示
的実施形態には多数の修飾を加えられること、そして他の構成を添付の特許請求の範囲に
よって規定された本発明の精神および範囲から逸脱せずに考察できると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロゲステロン受容体モジュレーター(PRM)を中に含有する合成ポリマーを含む膣リング組成物であって、前記PRMが以下の式:
【化1】

(式中、R1は、−OCH3、−SCH3、−N(CH32、−NHCH3、−CHO、−COCH3および−CHOHCH3からなる群から選択される官能基である;R2は、ハロゲン、アルキル、アシル、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、炭酸アルキル、シピオニルオキシ、S−アルキルおよびS−アシルからなる群から選択される官能基である;R3は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびアシルオキシからなる群から選択される官能基である;R4は、水素およびアルキルからなる群から選択される官能基である;およびXは、=Oおよび=N−OR5(式中、R5は水素またはアルキル基である)を表す)によって表される21−置換プロゲステロンを含む、膣リング組成物。
【請求項2】
前記ポリマーがシリコーンエラストマーを含む、請求項1に記載の膣リング。
【請求項3】
前記ポリマーが非シリコーン樹脂を含む、請求項1に記載の膣リング。
【請求項4】
前記ポリマーを被覆するシリコーンエラストマーの層をさらに含む、請求項1に記載の膣リング。
【請求項5】
前記ポリマーおよびPRMを含む外層によって取り囲まれたポリマーコアをさらに含む、請求項1に記載の膣リング。
【請求項6】
前記ポリマーが非シリコーンポリマーである、請求項5に記載の膣リング。
【請求項7】
前記ポリマーがシリコーンエラストマーを含む、請求項5に記載の膣リング。
【請求項8】
前記ポリマーコアおよび前記外層のそれぞれが、同一であっても相違してもよいシリコーンエラストマーを含む、請求項5に記載の膣リング。
【請求項9】
前記コア中の前記シリコーンエラストマーがポリジメチルシロキサンを含み、前記外層中の前記シリコーンエラストマーがポリジメチルシロキサンを含む、請求項8に記載の膣リング。
【請求項10】
前記PRMの量が0.2g〜6gである、請求項1に記載の膣リング。
【請求項11】
前記PRMの量が1〜4gである、請求項1に記載の膣リング。
【請求項12】
前記PRMの量が2gである、請求項1に記載の膣リング。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−40400(P2012−40400A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219461(P2011−219461)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2007−520580(P2007−520580)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(599092479)ザ・ポピュレイション・カウンシル,インコーポレイテッド (6)
【出願人】(507008563)
【Fターム(参考)】