説明

プロジェクション溶接構造

【課題】溶接用突起以外の部位で、溶接部材と被溶接部材とが接触することが抑制されたプロジェクション溶接構造を得ることを目的とする。
【解決手段】フランジ部30の開口側端部における端面30Aには、複数の突出部34が設けられている。これらの補強部材24Aの長手方向(シート高さ方向)に間隔を空けて設けられており、パネルフレーム22の表面22Aに形成された溶接用突起28に突き当てられて溶接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクション溶接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接部材(母材)に形成された溶接部としての溶接用突起(プロジェクション)に被溶接部材を圧接しながら通電することにより、溶接用突起に被溶接部材を溶接するプロジェクション溶接が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、複数の溶接用突起が形成されたプレート状の溶接部材が、プレート状の被溶接部材に重ね合わされてプロジェクション溶接されている。この被溶接部材を支持する電極の支持面には、各溶接用突起に対応する複数の凹部が形成されており、溶接用突起によって押圧された被溶接部材の部位が凹部内で弾性変形(湾曲等)可能になっている。これにより、溶接用突起間の高さの誤差(ばらつき)を吸収し、特定の溶接用突起に対する電流の集中を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−57462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、溶接部材及び被溶接部材の溶接面や、電極の支持面等の製造誤差により、溶接用突起に対する被溶接部材の溶接が完了する前に、溶接部材の溶接面と被溶接部材の溶接面とが溶接用突起以外の部位で接触する可能性がある。この場合、溶接用突起以外の接触部で電流の分流が発生し、溶接用突起に流れる電流量が減少するため、溶接不良の原因となる。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、溶接用突起以外の部位で、溶接部材と被溶接部材とが接触することが抑制されたプロジェクション溶接構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のプロジェクション溶接構造は、表面に複数の溶接用突起が形成された第1板材と、前記第1板材の前記表面に端面を対向させて配置される第2板材と、前記第2板材の前記端面における前記溶接用突起と対向する部位にそれぞれ設けられ、該端面から突出し、前記溶接用突起に突き当てられて溶接される複数の突出部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係るプロジェクション溶接構造によれば、第2板材の端面から突出する複数の突出部が、第1板材の表面に形成された複数の溶接用突起にそれぞれ突き当てられて溶接される。このように突出部を溶接代として用いることにより、第2板材の端面と第1板材の表面との間に、突出部の高さに応じた間隔が確保される。
【0008】
この第1板材の表面と第2板材の端面との間隔によって、製造誤差等による第1板材の表面や第2板材の端面の凹凸や歪みが吸収されるため、溶接用突起以外の部位で第1板材の表面と第2板材の端面とが接触することが抑制される。これにより、溶接用突起と突出部との接触部(溶接部)以外の部位での電流の分流が抑制されるため、溶接用突起と突出部との接触部に所定量の電流が通電される。従って、溶接用突起と突出部との接触部が所定温度に加熱されるため、溶接品質が向上する。
【0009】
また、第1板材の表面や第2板材の端面の平面精度が緩和されるため、これらの第1板材及び第2板材の製造コストを削減することができる。
【0010】
請求項2に記載のプロジェクション溶接構造は、請求項1に記載のプロジェクション溶接構造において、前記第2板材の板厚方向から見て、前記突出部の先端面の幅が、前記溶接用突起の幅よりも広くなっている。
【0011】
請求項2に係るプロジェクション溶接構造によれば、第2板材の板厚方向から見て、突出部の幅を溶接用突起の幅よりも広くしたことにより、溶接用突起に対して突出部を位置決めする際に、突出部の幅方向の位置ずれを吸収することができる。即ち、溶接用突起に対する突出部の位置決め精度が緩和されるため、生産性の向上、コスト削減を図ることができる。
【0012】
請求項3に記載のプロジェクション溶接構造は、請求項1又は請求項2に記載のプロジェクション溶接構造において、第2板材の板厚方向から見て、前記突出部の側縁と前記第2板材の前記端面とがなす角度が鈍角となっている。
【0013】
請求項3に係るプロジェクション溶接構造によれば、第2板材の板厚方向から見て、突出部の側縁と第2板材の端面とがなす角度が鈍角とされている。ここで、プロジェクション溶接では、第1板材の溶接用突起に対して第2板材の突出部を圧接しながら、溶接用突起と突出部との接触部に電流が通電される。この際、圧接力によって突出部が歪んだり、座屈したりすると、第1板材に対して第2板材が相対的に傾き、溶接用突起と突出部との接触部以外の部位で、第1板材の表面と第2板材の端面とが接触する可能性がある。
【0014】
この対策として本発明では、第2板材の端面と突出部の側縁とがなす角度を鈍角としている。これにより、第2板材の端面と突出部の側縁とがなす角度が直角又は鋭角の構成と比較して、前述した圧接力に対する突出部の剛性が高くなる。従って、突出部の歪みや座屈が抑制されるため、溶接用突起と突出部との接触部以外の部位で、第1板材の表面と第2板材の端面とが接触することが抑制される。
【0015】
請求項4に記載のプロジェクション溶接構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造において、前記突出部が、前記第2板材の板厚方向から見て、前記第2板材の端面から凸状に突出する略台形形状とされている。
【0016】
請求項4に係るプロジェクション溶接構造によれば、第2板材の板厚方向から見て、突出部の形状を第2板材の端面から凸状に突出する略台形形状としたことにより、突出部の剛性が高くなる。従って、溶接用突起に対して突出部を圧接したときに、突出部の歪みや座屈が抑制されるため、溶接用突起と突出部との接触部以外の部位で、第1板材の表面と第2板材の端面とが接触することが抑制される。
【0017】
請求項5に記載のプロジェクション溶接構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造において、前記溶接用突起が、前記第2板材と交差する方向に延び、該溶接用突起の長手方向の中間部に前記突出部が溶接されている。
【0018】
請求項5に係るプロジェクション溶接構造によれば、溶接用突起が第2板材と交差する方向へ延びているため、溶接用突起に対して第2板材の突出部を位置決めする際に、溶接用突起の長手方向の位置ずれを吸収することができる。即ち、溶接用突起に対する突出部の位置決め精度が緩和されるため、生産性の向上、コスト削減を図ることができる。
【0019】
請求項6に記載のプロジェクション溶接構造は、請求項1〜5の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造において、前記第1板材が、車両用シートバックを構成するパネルフレームである。
【0020】
請求項6に係るプロジェクション溶接構造によれば、車両用シートバックを構成する第1板材としてのパネルフレームの表面に溶接用突起が形成されており、当該溶接用突起に第2板材の端面が突き当てられて溶接されている。従って、車両用シートバックの生産性の向上、コスト削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係るプロジェクション溶接構造によれば、溶接用突起以外の部位で、第1板材と第2板材とが接触することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接構造が適用されたリヤシートバックフレームを備える車両用リヤシートを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接構造におけるパネルフレーム及び補強部材を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接構造におけるパネルフレーム及び補強部材をシート前後方向前側から見た図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態におけるプロジェクション溶接の方法を説明する説明図であり、本発明の一実施形態における補強部材を側面側から見た図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるプロジェクション溶接の方法を説明する説明図であり、本発明の一実施形態における補強部材を長手方向から見た断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接構造の変形例を示す、図4(A)に相当する側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るプロジェクション溶接構造について説明する。なお、各図において適宜示される矢印X、Y、Zは、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造が適用されたリヤシートバックフレームを備える車両用リヤシートのシート前後方向前側、シート幅方向外側、シート高さ方向上側をそれぞれ示している。
【0024】
先ず、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造が適用されたリヤシートバックフレーム18を備える車両用リヤシート10の構成について説明する。
【0025】
図1に示されるように、車両用リヤシート10は、着座した乗員の臀部及び大腿部を支持するリヤシートクッション12と、リヤシートクッション12のシート前後方向後側の端部に設けられ、乗員の背部を支持するリヤシートバック14と、リヤシートバック14の上端部に設けられ、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16を備えている。リヤシートクッション12は、図示しない車体のリヤフロアパンの上面に取り付けられている。リヤシートバック14は、所謂トランクスルー用の左右分割可倒式リヤシートバックの片側を構成しており、二人掛け用のリヤシートバックとされている。なお、図1において、リヤシートバック14の右側には、図示しない一人掛け用のリヤシートバックが配置される構成になっている。
【0026】
車両用シートバックとしてのリヤシートバック14は、骨格部材としてのリヤシートバックフレーム18を備えている。このリヤシートバックフレーム18には、図示しないシート表皮で覆われたクッション材が支持されている。また、リヤシートバックフレーム18は、第1板材としてのパネルフレーム22と、このパネルフレーム22を補強する複数(本実施形態では、4つ)の補強部材24A〜24Dとを備えている。
【0027】
パネルフレーム22は、鋼、鉄等の溶接可能な金属製の板材を薄肉の板状にプレス加工したプレス部品とされている。パネルフレーム22の下端部におけるシート幅方向の両端部には、パネルフレーム22をシート前後方向に回転可能に支持する一対の回転ヒンジ26が設けられている。各回転ヒンジ26は、図示しない車体のリヤフロアパンの上面に固定されるヒンジベース26Aと、このヒンジベース26Aにヒンジ結合されたL字形状のヒンジアーム26Bを備えている。ヒンジアーム26Bは、補強部材24A,24Bに溶接等によってそれぞれ固定されている。
【0028】
複数の補強部材24A〜24Dは、パネルフレーム22のシート前後方向前側に配置されている。補強部材24A,24Bは、長手方向をシート高さ方向にしてパネルフレーム22のシート幅方向の両端部に沿って配置され、補強部材24Cは、長手方向をシート幅方向にしてパネルフレーム22の上端部に沿って配置されている。また、補強部材24Dは、補強部材24Bの下端部から補強部材24Cの長手方向の中央部に渡って配置されている。これらの補強部材24A〜24D及びパネルフレーム22に、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造が適用されており、各補強部材24A〜24Dがパネルフレーム22の表面22Aにプロジェクション溶接(以下、単に「溶接」という場合がある)で接合されている。
【0029】
次に、パネルフレーム22と補強部材24Aを例に、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造について説明する。
【0030】
図2に示されるように、パネルフレーム22の表面(シート前後方向の前側の面)22Aには、当該パネルフレーム22の表面22Aから突出する複数の溶接用突起(プロジェクション)28が形成されている。これらの溶接用突起28は、プレス成形によって、シート高さ方向及びシート幅方向に所定の間隔を空けて形成されている。また、図3に示されるように、各溶接用突起28は、パネルフレーム22の板厚方向(シート前後方向)から見て、補強部材24Aの長手方向(シート高さ方向)と交差(本実施形態では、略直交)する方向(シート幅方向)に延びる略楕円形とされており、その長手方向の中間部に、後述する補強部材24Aの突出部34が突き当てられて溶接されるようになっている。これにより、溶接用突起28に突出部34を位置決めする際に、溶接用突起28の長手方向の位置ずれ(位置決め誤差)が吸収可能になっている。また、図4(A)に示されるように、溶接用突起28の高さH(突出量)は、その板厚、材質等を考慮し、補強部材24Aの突出部34が突き当てられて押し潰されたときに、当該溶接用突起28が破れないような高さに設定されている。
【0031】
図2に示されるように、補強部材24Aは、鋼、鉄等の溶接可能な金属製の板材を断面C形(断面コ字形)にプレス加工した薄肉のプレス部品とされ、対向する一対のフランジ部30と、これらのフランジ部30を繋ぐウェブ部32を備えている。この補強部材24Aは、断面が開いた開口側をパネルフレーム22の表面22Aに向けると共に、パネルフレーム22の表面22Aに対してフランジ部30が略垂直になるように配置される。換言すると、パネルフレーム22と各フランジ部30とは、補強部材24Aの長手方向(図2においては矢印Z方向)から見て、それぞれ略T字形状に配置される。
【0032】
第2板材としてのフランジ部30の開口側の端部における端面30Aには、複数の突出部34が設けられている。各突出部34は、フランジ部30の端面30Aにおける溶接用突起28と対向する部位にそれぞれ設けられている。具体的には、各突出部34は、プレス形成によって補強部材24Aの長手方向(シート高さ方向)に間隔を空けて形成されており、パネルフレーム22に形成された複数の溶接用突起28にそれぞれ突き当てられて溶接されるようになっている。
【0033】
図4(A)に示されるように、突出部34は、フランジ部30の端面30Aから凸状に突出し、フランジ部30の板厚方向(図2においてはシート幅方向(矢印Y方向))から見て、その先端面34Aを上底(又は下底)とした略台形形状とされている。フランジ部30の板厚方向から見た先端面34Aの幅Wは、パネルフレーム22に形成された溶接用突起28の幅Wよりも広くされており、先端面34Aの幅方向の中間部が、溶接用突起28に突き当てられて溶接されるようになっている。これにより、溶接用突起28に突出部34を位置決めする際に、突出部34の幅方向(補強部材24Aの長手方向)の位置ずれ(位置決め誤差)が吸収可能になっている。
【0034】
また、突出部34は、フランジ部30の端面30Aから立ち上がり、突出部34の先端面34Aへ延びる側縁としての斜面34B,34Cを有している。これらの斜面34B,34Cとフランジ部30の端面30Aとがなす角度θは、フランジ部30の板厚方向から見て、それぞれ鈍角(90°<θ<180°)とされている。これにより、突出部34の高さ方向の剛性が確保されている。この突出部34を溶接代として用いることにより、突出部34を溶接用突起28に溶接したときに、フランジ部30の端面30Aとパネルフレーム22の表面22Aとの間に、突出部34の高さH(突出量)に応じた間隔D(図4(B)参照)が確保されるようになっている。この突出部34の高さHは、その板厚や材質、溶接用突起28との溶接強度等を考慮して適宜設定される。
【0035】
なお、角度θは、鈍角に限らず直角又は鋭角でも良いし、斜面34Bと斜面34Cとで角度θを異なる値に設定しても良い。また、本実施形態では、突出部34の側縁として斜面34B,34Cを例に説明したが、この側縁は湾曲面等でも良い。
【0036】
次に、本実施形態におけるプロジェクション溶接の方法の一例について説明する。
【0037】
図4(A)に示されるように、先ず、表面22Aを上に向けた状態で、パネルフレーム22を下側平板電極40の上に載置する。次に、補強部材24Aを、その開口側を下に向けた状態でパネルフレーム22の上に載置する。この際、パネルフレーム22の表面22Aに形成された複数の溶接用突起28の上に、補強部材24Aのフランジ部30の端面30Aに設けられた突出部34がそれぞれ位置するように、パネルフレーム22に対して補強部材24Aを位置決めする。
【0038】
次に、補強部材24Aの上方に設けられた上側平板電極42を、図示しない昇降機構によって下方へ平行移動して補強部材24Aを押圧し、パネルフレーム22の表面22Aに形成された溶接用突起28に対して、フランジ部30の端面30Aに設けられた突出部34を略垂直に突き当てる。更に、図4(B)及び図5に示されるように、パネルフレーム22の表面22Aと突出部34の先端面34Aとの隙間が所定の隙間Sになるまで、図示しない昇降機構によって上側平板電極42を下方へ平行移動し、突出部34を溶接用突起28に圧接しながら、下側平板電極40及び上側平板電極42に電圧を印加する。これにより、突出部34と溶接用突起28との接触部(溶接部)に電流が流れ、抵抗発熱によって溶接用突起28の温度が上昇する。この温度上昇に伴って溶接用突起28が軟化すると共に、軟化された溶接用突起28が突出部34によって押し潰され、溶接用突起28が突出部34に溶着される。
【0039】
その後、下側平板電極40及び上側平板電極42に対する電圧の印加を停止すると共に、図示しない昇降機構によって上側平板電極42を上方へ平行移動し、溶接用突起28を冷却固化する。これにより、補強部材24Aのフランジ部30の端面30Aとパネルフレーム22の表面22Aとの間に間隔Dを空けた状態で、複数の溶接用突起28に対し、各突出部34が同時に又は並行して溶接される。
【0040】
次に、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造の作用について説明する。
【0041】
本実施形態では、前述したように、補強部材24Aのフランジ部30の端面30Aに突出部34が設けられている。この突出部34を溶接代として用いることにより、パネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとの間に、突出部34の高さHに応じた間隔Dが確保される。この間隔Dによって、例えば、製造誤差等によるパネルフレーム22の表面22Aや、フランジ部30の端面30A、下側平板電極40及び上側平板電極42の支持面等の凹凸や歪みが吸収されるため、パネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとの接触が抑制される。これにより、突出部34と溶接用突起28との接触部(溶接部)以外の部位での電流の分流が抑制されるため、溶接用突起28と突出部34との接触部に所定量の電流が流れる。従って、溶接用突起28と突出部34との接触部が所定の温度に加熱されるため、溶接品質が向上する。
【0042】
また、突出部34によってパネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとの間隔Dを確保することにより、パネルフレーム22の表面22Aや、フランジ部30の端面30Aの平面精度が緩和される。従って、パネルフレーム22及び補強部材24Aのフランジ部30の製造コストを削減することができる。更に、下側平板電極40及び上側平板電極42の支持面等の平面精度や、下側平板電極40を平行移動させる昇降機構(図示省略)の移動精度も緩和されるため、これらの溶接装置の製造コストも削減することができる。
【0043】
更にまた、本実施形態では、パネルフレーム22の表面22Aと突出部34の先端面34Aとの間に隙間Sを空けた状態で、溶接用突起28に突出部34を溶接する。この隙間Sによって、複数の突出部34間の高さHの誤差(ばらつき)や、突出部34の先端面34Aの凹凸や歪みが吸収される。従って、突出部34の高さ精度や、先端面34Aの平面精度が緩和されるため、突出部34の製造コストも削減することができる。
【0044】
また、図4(A)に示されるように、フランジ部30の板厚方向(シート幅方向)から見て、突出部34の幅Wを溶接用突起28の幅Wよりも広くしたことにより、溶接用突起28に対して突出部34を位置決めする際に、突出部34の幅方向の位置ずれを吸収することができる。また、図3に示されるように、溶接用突起28がフランジ部30と交差する方向へ延びているため、溶接用突起28に対して突出部34を位置決めする際に、溶接用突起28の長手方向の位置ずれも吸収することができる。従って、溶接用突起28に対する突出部34の位置決め精度が緩和されるため、製造コストを削減することができる。
【0045】
更に、突出部34の斜面34B,34Cと、フランジ部30の端面30Aがなす角度θ(図4(A)参照)が鈍角とされている。前述したように、本実施形態におけるプロジェクション溶接では、溶接用突起28に対して突出部34を圧接しながら、溶接用突起28と突出部34との接触部に電流を通電する。この際、圧接力によって突出部34が歪んだり、座屈したりすると、パネルフレーム22に対してフランジ部30が相対的に傾き、溶接用突起28と突出部34との接触部以外の部位でパネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとが接触する可能性がある。このようにパネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとが接触すると、前述したように電流の分流が発生し、溶接不良の原因となる。特に、本実施形態では、複数の溶接用突起28に対し、各突出部34を同時に又は並行して溶接する。この場合、パネルフレーム22に対してフランジ部30が相対的に傾くと、溶接用突起28の位置によって、当該溶接用突起28に突出部34が接触するタイミングに差が生じ、又はタイミングの差が大きくなる結果、複数の溶接用突起28間で通電量にばらつきが生じて溶接不良の原因となる。
【0046】
この対策として本実施形態では、突出部34の斜面34B,34Cと、フランジ部30の端面30Aとがなす角度θを鈍角に設定している。これにより、突出部34の斜面34B,34Cとフランジ部30の端面30Aとがなす角度θが直角又は鋭角の構成と比較し、前述した圧接力に対する突出部34の剛性が高くなる。従って、突出部34の歪みや座屈が抑制されるため、溶接品質が向上する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るプロジェクション溶接構造によれば、溶接用突起28と突出部34との接触部以外の部位で、パネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとが接触することを抑制することができる。従って、溶接品質を確保しつつ、リヤシートバック14の製造コストを削減することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、パネルフレーム22の表面22Aと突出部34の先端面34Aとの間に隙間Sを空けた状態で、溶接用突起28に突出部34を溶接したが、図6に示されるように、パネルフレーム22の表面22Aに突出部34の先端面34Aを接触させた状態で、溶接用突起28に突出部34を溶接しても良い。即ち、突出部34を溶接代として用いるだけでなく、パネルフレーム22の表面22Aとフランジ部30の端面30Aとの間隔Dを確保するスペーサ(ストッパ)として用いても良い。これにより、パネルフレーム22の表面22Aと突出部34の先端面34Aとの隙間Sの管理(制御)が不要になるため、製造コストを削減することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、突出部34の形状をフランジ部30の板厚方向から見て略台形形状にしたが、例えば、突出部34の形状をフランジ部30の板厚方向から見て正方形、長方形、扇形にしても良い。また、溶接用突起28の形状は、パネルフレーム22の板厚方向(シート前後方向)から見て略楕円形に限らず、例えば、パネルフレーム22の板厚方向(シート前後方向)から見て円形でも良い。更に、溶接用突起28及び突出部34の数や配置は適宜変更可能である。
【0050】
更に、上記実施形態では、第1板材として平板状のパネルフレーム22を例に説明したが、第1板材は、溶接用突起が形成可能な表面(平面)を備えた板材であれば良く、その断面形状は、例えばC形、L形等でも良い。また、第2板材として補強部材24Aのフランジ部30を例に説明したが、第2板材は、第1板材の溶接用突起に突き当てられる端面を備えた板材であれば良い。なお、第2板材は、第1板材の表面に対して必ずしも略垂直である必要はないが、溶接時における第1板材と第2板材との圧接力の伝達効率を考慮すると、第1板材の表面に対して略垂直であることが望ましい。また、本実施形態における第2板材は、フランジ部30のように補強部材24Aの一部を構成する板材も含む概念である。
【0051】
更にまた、上記実施形態では、リヤシートバックフレーム18を構成するパネルフレーム22と補強部材24Aとのプロジェクション溶接構造を例に説明したが、上記実施形態に係るプロジェクション溶接構造は、プロジェクション溶接可能な種々の板材に適用可能であり、例えば、車両用ドアフレームや、電子機器の筐体フレーム、建材等に適用可能である。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、上記実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
14 リヤシートバック(車両用シートバック)
22 パネルフレーム(第1板材)
22A 表面
30 フランジ部(第2板材)
28 溶接用突起
30A 端面
34 突出部
34A 先端面
34B 斜面(側縁)
34C 斜面(側縁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の溶接用突起が形成された第1板材と、
前記第1板材の前記表面に端面を対向させて配置される第2板材と、
前記第2板材の前記端面における前記溶接用突起と対向する部位にそれぞれ設けられ、該端面から突出し、前記溶接用突起に突き当てられて溶接される複数の突出部と、
を備えるプロジェクション溶接構造。
【請求項2】
前記第2板材の板厚方向から見て、前記突出部の先端面の幅が、前記溶接用突起の幅よりも広くなっている請求項1に記載のプロジェクション溶接構造。
【請求項3】
前記第2板材の板厚方向から見て、前記突出部の側縁と前記第2板材の前記端面とがなす角度が鈍角となっている請求項1又は請求項2に記載のプロジェクション溶接構造。
【請求項4】
前記突出部が、前記第2板材の板厚方向から見て、前記第2板材の端面から凸状に突出する略台形形状とされている請求項1〜3の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造。
【請求項5】
前記溶接用突起が、前記第2板材と交差する方向に延び、該溶接用突起の長手方向の中間部に前記突出部が溶接されている請求項1〜4の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造。
【請求項6】
前記第1板材が、車両用シートバックを構成するパネルフレームである請求項1〜5の何れか1項に記載のプロジェクション溶接構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223789(P2012−223789A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93120(P2011−93120)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)