説明

プロジェクタ、プロジェクタの画像調整方法およびそのプログラム

【課題】プロジェクタの位置を変化させても、元の投影画像の状態を保持できるプロジェクタを提供する。
【解決手段】スクリーンSCに対し投射光を照射する光学系27〜29と、スクリーンSCに対する、プロジェクタ10の位置変化量を検出する加速度センサ35と、加速度センサ35の検出結果に応じて、スクリーンSC上に投影された投影画像Gの位置、形状および大きさを保持できるように、投影画像Gの画像調整を行なう画像調整手段(CPU31、投射光学系調整部23および画像処理部34)と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像調整機能を有するプロジェクタ、プロジェクタの画像調整方法およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサ等を用いて、スクリーンに対するプロジェクタの仰角変化(俯角変化)を検出し、その検出結果に基づいてキーストーン歪補正(台形歪補正)を行なうプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1)。この種のプロジェクタは、電源を入れて設置するだけで、スクリーン上の投影画像の歪みを自動的に調整するため、ユーザは特別な操作を行う必要がなく、便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−339671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、プロジェクタを設置する際には、仰角を変更するだけでなく、前後方向、左右方向および上下方向に移動したり、水平方向において回転したりする場合がある。しかしながら、このようなプロジェクタの位置変化に対しては、元の投影画像を保持したい場合、ユーザが手動で画像調整を行なう必要があり、ユーザビリティに課題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、プロジェクタの位置を変化させた場合に、元の投影画像の状態を保持するための画像調整処理を自動化できるプロジェクタ、プロジェクタの画像調整方法およびそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクタは、スクリーンに対し投射光を照射する照射手段と、スクリーンに対する、装置本体の前後方向における移動量を含む位置変化量を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に応じて、スクリーン上に投影された投影画像の位置、形状および大きさを保持できるように、投影画像の画像調整を行なう画像調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のプロジェクタの画像調整方法は、スクリーンに対する、装置本体の前後方向における移動量を含む位置変化量を検出するステップと、検出した装置本体の位置変化量に基づいて、スクリーン上に投影された投影画像の位置、形状および大きさを保持できるように、投影画像の画像調整を行なうステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、プロジェクタの装置本体を前後方向に移動させた場合、その位置変化量(移動量)に応じて、元の投影画像の状態を保持するための画像調整を行なうため、ユーザが手動で画像調整を行なう必要がない。これにより、プロジェクタ(装置本体)の設置場所の状態やスクリーンの設置位置に応じて、プロジェクタの位置を自由自在に変化させることができるため、初心者であっても容易に使いこなすことができる。
【0009】
上記に記載のプロジェクタにおいて、画像調整手段は、検出手段により検出した、装置本体の前後方向における移動量に基づいて、電動ズーム機能を用いた投影画像のサイズ調整、電動フォーカス機能を用いたフォーカス調整、および電動レンズシフト機能を用いた投影画像の位置調整を行なうことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、プロジェクタに一般的に搭載されている既存の機能(電動ズーム機能、電動フォーカス機能および電動レンズシフト機能)を用いて画像調整を行うことができるため、本発明の画像調整機能を搭載した場合の装置コストの上昇を抑えることができる。
【0011】
上記に記載のプロジェクタにおいて、検出手段は、装置本体の位置変化量として、スクリーンに対する、装置本体の上下方向および左右方向における移動量、水平方向における回転量、並びに仰角の変化量をさらに検出することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、プロジェクタ(装置本体)の全ての位置変化を許容することができる。すなわち、スクリーンに対する前後方向の移動だけでなく、上下方向および左右方向における移動、水平方向における回転および仰角変化があった場合でも、元の投影画像の状態を保持することができる。
【0013】
上記に記載のプロジェクタにおいて、画像調整手段は、検出手段により検出した、装置本体の水平方向における回転量および仰角の変化量に基づいて、キーストーン歪補正機能を用いた投影画像の形状調整を行なうことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、キーストーン歪補正機能を用いて投影画像の形状調整を行なうことができるため、プロジェクタの水平方向における回転および仰角の変化によって、画像歪みが生じることがない。
【0015】
上記に記載のプロジェクタにおいて、検出手段による位置変化検出前の、電動ズーム機能によるズーム位置、電動フォーカス機能によるフォーカス位置、電動レンズシフト機能によるシフト位置およびキーストーン歪補正機能による補正値である調整データを記憶する記憶手段をさらに備え、画像調整手段は、検出手段の検出結果および記憶手段に記憶した調整データに基づいて、投影画像の画像調整を行なうことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、位置変化検出前の調整データを記憶しておくため、位置変化前に電動ズーム機能等による画像調整を行なっていた場合でも、位置変化前の投影画像の状態を保持することができる。
なお、記憶手段は、揮発性および不揮発性のいずれであっても良い。
【0017】
上記に記載のプロジェクタにおいて、装置本体からスクリーンまでの距離を測定する距離測定手段をさらに備え、画像調整手段は、検出手段の検出結果、記憶手段に記憶した調整データおよび距離測定手段の測定結果に基づいて、投影画像の画像調整を行なうことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、距離測定手段の測定結果に基づいて、投影画像の画像調整を行なうため、より正確に、投影画像の状態を保持することができる。例えば、前後方向における同じ移動距離でも、スクリーンからの距離2m→1mの位置に移動した場合と、スクリーンからの距離6m→5mに移動した場合とでは、元の投影画像を保持するための画像調整が異なるため、スクリーンまでの距離に基づいて画像調整処理を行うことで、元の投影画像の状態をより正確に保持することができる。
【0019】
上記に記載のプロジェクタにおいて、任意の時点で指示を行なう指示手段をさらに備え、検出手段は、指示手段によって指示された時点における装置本体の位置からの位置変化量を検出することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ユーザが、スクリーン上に所望の投影画像が投影された時点で指示を行なうことで、その投影画像の状態を保持することができる。
【0021】
本発明のプログラムは、コンピュータに、上記に記載のプロジェクタの画像調整方法における各ステップを実行させるためのものであることを特徴とする。
【0022】
このプログラムを用いることにより、プロジェクタの位置を変化させた場合に、元の投影画像の状態を保持するための画像調整処理を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクタのブロック図である。
【図2】プロジェクタを側面から見た平面図である。
【図3】プロジェクタを上面から見た平面図である。
【図4】スクリーンに対して、プロジェクタを前後方向に移動させた場合の位置変化量および投影画像の変化を示す図である。
【図5】プロジェクタの移動によって変化するパラメータを示す図である。
【図6】画像調整機能を実行した場合のプロジェクタの処理を示すフローチャートである。
【図7】画像調整処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプロジェクタ、プロジェクタの画像調整方法およびそのプログラムについて説明する。図1は、プロジェクタ10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、プロジェクタ10は、スクリーンSCに対して投射光を照射する光学系(照射手段)として、照明光学系27と、液晶ライトバルブ28と、投射光学系29と、を備えている。また、プロジェクタ10は、これらの光学系に関わる構成要素として、光源ランプ駆動部21と、液晶ライトバルブ駆動部22と、投射光学系調整部23と、シフト位置検出部24と、ズーム位置検出部25と、フォーカス位置検出部26と、を備えている。
【0025】
さらに、プロジェクタ10は、その他の構成要素として、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)31の他、画像入力部32と、操作部33(指示手段)と、画像処理部34と、加速度センサ35(検出手段)と、距離センサ36(距離測定手段)と、記憶部37(記憶手段)と、を備えている。このうち、構成要素21〜26および構成要素32〜37は、CPU31とバス39を介して接続されている。
【0026】
なお、請求項に係る「画像調整手段」とは、CPU31、投射光学系調整部23および画像処理部34を、主要構成要素とする。つまり、プロジェクタ10の位置が変化した場合に、スクリーンSC上に投影された投影画像Gの位置、形状および大きさを位置変化前の状態のまま保持できるように、これらCPU31、投射光学系調整部23および画像処理部34によって画像調整処理を行う。
【0027】
光源ランプ駆動部21は、照明光学系27に含まれる光源ランプを駆動する。光源ランプとしては、放電発光型のものであっても自己発光素子(発光ダイオードなど)であっても良い。液晶ライトバルブ駆動部22は、画像処理部34により処理された画像データに基づいて、画像形成素子である液晶ライトバルブ28を駆動する。
【0028】
投射光学系調整部23は、モータを有しており、投射光学系29に含まれる投射レンズの位置を調整する。当該投射レンズは、筒状の鏡筒内に、ズームレンズやフォーカスレンズなど複数のレンズが収容された組レンズとして構成される。
【0029】
具体的には、投射光学系調整部23は、投射レンズを、光源光軸LAに直交する方向に移動させることによって、投射光学系29のシフト位置を調整する(電動レンズシフト機能)。また、投射光学系調整部23は、投射レンズに含まれるズームレンズを、これを支持するズームリングの回転によって、光源光軸LAに平行な方向に移動させることにより、投射光学系29のズーム位置を調整する(電動ズーム機能)。さらに、投射光学系調整部23は、投射レンズに含まれるフォーカスレンズを、これを支持するフォーカスリングの回転によって、光源光軸LAに直交する方向に移動させる(複数のレンズの相対位置を変更させる)ことにより、投射光学系29のフォーカス位置を調整する(電動フォーカス機能)。なお、光源光軸LAとは、照明光学系27から射出される光の中心軸を指し、液晶ライトバルブ28の有効表示領域(画像形成面)の中心を通る。
【0030】
シフト位置検出部24は、投射光学系29のシフト位置を検出する。ズーム位置検出部25は、投射光学系29のズーム位置を検出する。また、フォーカス位置検出部26は、投射光学系29のフォーカス位置を検出する。なお、これら各検出部(シフト位置検出部24、ズーム位置検出部25およびフォーカス位置検出部26,以下、「投射検出部20」と総称する)の検出結果は、投射光学系調整部23による画像調整のために用いられる。また、投射検出部20としては、ロータリーエンコーダや可変抵抗器など、周知の位置検出手段を適用可能である。
【0031】
画像入力部32は、メモリーカードMCなどの外部記憶媒体から画像データを取得する。この場合、画像入力部32は、画像データを読み出すメモリカードスロットにより構成される。また、画像入力部32は、パーソナルコンピュータ47やビデオレコーダ48等の外部装置から画像データを取得することも可能である。この場合、画像入力部32は、パーソナルコンピュータ47から出力されたRGB信号やビデオレコーダ48から出力されたコンポジット信号を受信するインターフェースにより構成される。
【0032】
操作部33は、ユーザによって操作されるものであり、電源ボタンや各種設定(コントラスト設定、色補正、環境設定など)を行うためのキー群を有する。当該キー群には、任意の時点で画像調整機能を実行させるための画像調整実行キー44が含まれる。スクリーンSC上に所望の投影画像Gが投影されている時点でこの画像調整実行キー44が押下されると、所望の投影画像Gの状態(投影画像Gの位置、形状および大きさ)を保持させることができるようになっている(詳細については後述する)。
【0033】
画像処理部34は、キーストーン歪補正部45を有し、画像処理プログラムに基づいて所定の画像処理を実行する。キーストーン歪補正部45は、プロジェクタ10の水平方向における回転や仰角変化に伴う画像の歪みを補正する。例えば、プロジェクタ10があおり投射を行なう場合、液晶ライトバルブ28に歪のない画像が形成されると、スクリーンSC上の投影画像Gが略台形状に歪んでしまう。そこで、液晶ライトバルブ28に略台形状に歪んだ画像(スクリーンSC上に投影される投影画像Gの逆画像)を形成すれば、スクリーンSC上に歪のない画像(正しいアスペクト比を有する矩形画像)を投影させることができる。すなわち、キーストーン歪補正部45は、画像調整処理に伴って、この補正済みの画像データを生成する処理を行う。
【0034】
加速度センサ35は、画像調整実行キー44が押下された時点からの、プロジェクタ10(装置本体11)の位置変化量を検出する。なお、加速度センサ35としては、圧電体型、半導体ひずみゲージ型、サーボ型のいずれを用いても良い。本実施形態では、装置本体11の複数箇所に加速度センサ35が搭載されており、CPU31は、各加速度センサ35から出力される計測値に基づいて、装置本体11の前後方向、上下方向および左右方向における移動量、水平方向における回転量、並びに仰角の変化量を検出する。なお、「前後方向」、「上下方向」、「左右方向」、「水平方向」および「仰角」とは、スクリーンSCに対するプロジェクタ10の位置変化を指すものであり、図2(プロジェクタ10を側面から見た平面図)および図3(プロジェクタ10を上面から見た平面図)に示すとおりである。なお、両図において、参照番号50は、プロジェクタ10を設置する設置台を示している。
【0035】
距離センサ36は、投射レンズ近傍に設けられており、プロジェクタ10からスクリーンSCまでの距離を測定する。当該距離センサ36は、上記の画像調整処理に用いられる。例えば、前後方向における同じ移動距離でも、スクリーンSCからの距離1m→2mの位置に移動した場合と、スクリーンSCからの距離5m→6mに移動した場合とでは、元の投影画像Gを保持するための画像調整量を異ならせる必要がある。そこで、プロジェクタ10からスクリーンSCまでの距離を一つのパラメータとして画像調整処理を行うことで、元の投影画像Gをより正確に保持することができる。なお、加速度センサ35としては、半導体レーザやパルスレーザを用いたレーザ型、超音波型のいずれを用いても良い。
【0036】
記憶部37は、画像調整実行キー44が押下された時点(加速度センサ35による位置検出前)の、投射検出部20の検出結果およびキーストーン歪補正部45の補正値である調整データを記憶する。また、画像調整処理により、調整データが変化した場合は、随時調整データを更新する。さらに、記憶部37は、電源OFF前の調整データを保持しておくことで、電源ON後に読み出し可能となっている。すなわち、本実施形態の記憶部37は、書き換え可能であって且つ不揮発性であることが前提である。なお、記憶部37の更新は、画像調整実行キー44の押下後、定期的に行なっても良いし、プロジェクタ10の移動検出に伴って行なうようにしても良い。
【0037】
上記の構成により、CPU31は、画像調整実行キー44が押下されると、その時点における調整データを記憶部37に記憶する。その後、加速度センサ35の検出結果からプロジェクタ10の位置変化を検出すると、記憶部37から読み出した調整データと、位置変化量と、距離センサ36の検出結果と、に基づいて、画像調整実行キー44が押下された時点で投影されていたと考えられる投影画像Gを再現するための画像調整処理を行う。すなわち、スクリーンSC上に投影される投影画像Gは、画像調整実行キー44が押下された時点の状態に保持される。この構成により、プロジェクタ10の設置場所の状態やスクリーンSCの設置位置に応じて、プロジェクタ10の位置を変化させても、自動的に画像調整処理が実行されるため、元の投影画像Gを再現するための手動による画像調整を必要とせず、初心者であっても容易に使いこなすことができる。なお、元の投影画像Gは、必ずしも矩形領域ではなく、略台形に歪んだ画像であっても良いし、その大きさや表示状態も問わない。
【0038】
次に、図4および図5を参照し、画像調整処理の具体例について説明する。ここでは、スクリーンSCに対して、プロジェクタ10を前後方向に移動させた場合を例示する。図4(a)は、スクリーンSCから距離L1だけ離間した位置(位置:L1)に設置されたプロジェクタ10を上側から見た平面図、並びに当該プロジェクタ10の照射によって投影画像G1が投影されたスクリーンSCの正面図であり、同図(b)は、スクリーンSCから距離L2だけ離間した位置(位置:L2)に設置されたプロジェクタ10を上側から見た平面図、並びに当該プロジェクタ10の照射によって投影画像G2が投影されたスクリーンSCの正面図である。
【0039】
例えば、画像調整機能が実行されない場合、同図(a)に示すように、スクリーンSC上に所定の矩形領域から成る投影画像(所望の投影画像)G1が投影されている状態で(位置:L1)、プロジェクタ10を後方(矢印61参照)に移動させると(位置:L2)、同図(b)に示すように、スクリーンSC上には、投影画像G1よりも表示領域が広い投影画像G2が投影される。このときの位置変化量(移動量)は、L2−L1=ΔLである。これに対し、同図(a)に示すように、スクリーンSC上に所定の矩形領域から成る投影画像G1が投影されている状態(位置:L1)で画像調整機能が実行された場合、プロジェクタ10を後方(矢印61参照)に移動させても(位置:L2)、画像調整処理により、スクリーンSC上には、投影画像G1が投影される。
【0040】
なお、プロジェクタ10が、同図(a)の状態から同図(b)の状態に移動する間、刻々と変化するプロジェクタ10の位置およびスクリーンSCからの距離に応じて、画像調整処理を繰り返し実行することにより、スクリーンSC上に、投影画像G1を投影し続けるようにしても良いが、実際には、画像調整処理に時間を要するため、所定時間毎に位置変化量を検出し、段階的に投影画像G2から投影画像G1の状態に変化させることとなる。また、CPU31の性能等により、画像調整処理に多くの時間を要する場合は、プロジェクタ10を後方(矢印61参照)に移動させた後に、所定時間を掛けて投影画像G2から投影画像G1の状態に変化させても良いし、プロジェクタ10の移動後、投影を中断し(投影画像Gを非表示とし)、所定時間後に画像調整処理後の投影画像G1を表示するようにしても良い。
【0041】
図5は、図4に示したプロジェクタ10の移動によって変化する各種パラメータを示したものである。例えば、位置:L1における投射検出部20の検出結果を含む調整データ(プロジェクタ10が位置:L1に位置し、投影画像G1を投影していたときの、電動ズーム機能によるズーム位置、前記電動フォーカス機能によるフォーカス位置、前記電動レンズシフト機能によるシフト位置および前記キーストーン歪補正機能による補正値を示す値)がB1であった場合、画像調整実行キー44の押下をトリガとして、調整データ:B1を記憶部37に記憶する。ここで、プロジェクタ10が移動されると(位置変化量:ΔL)、画像調整処理により、位置:L2では調整データがB2となる。このとき、調整データ:B2は、画像調整実行キー44の押下時における調整データ:B1と、位置変化量:ΔLと、位置:L2におけるスクリーンSCからの距離(L2)と、をパラメータとする所定のアルゴリズムに基づいて算出される。なお、算出された調整データ:B2は、記憶部37に記憶される。
【0042】
また、位置:L2の状態(調整データ:B2が記憶された状態)で、電源OFF/ONされると、記憶部37から調整データ:B2を読み出し、その調整データに基づいて投影画像G1を投影する。これにより、電源OFF前に設置されていた場所のまま投影を再開する場合、所望の投影画像(投影画像G1)を投影させることができる。なお、電源OFF前に設置されていた場所とは異なる場所で投影を再開する場合は、調整データをリセットするための所定の操作により、記憶部37に記憶されている調整データを消去することができるようになっている。
【0043】
次に、図6および図7のフローチャートを参照し、画像調整機能を実行した場合のプロジェクタ10の処理について説明する。なお、ここではCPU31を主体として説明する。図6に示すように、画像調整実行キー44の操作により、画像調整機能の実行が指示されると(S01)、その時点の調整データを記憶部37に記憶する(S02)。ここで、加速度センサ35の出力値に基づいて、位置変化があったか否かを判別し(S03)、位置変化があった場合は(S03:Yes)、その位置変化量および距離センサ36の値を検出する(S04)。そして、S02において記憶した調整データ、並びにS04における検出値に基づいて、画像調整処理を行う(S05)。
【0044】
次に、図7は、図6のS05に相当する画像調整処理のサブルーチンである。図7に示すように、CPU31は、加速度センサ35の出力値に応じて、S04において検出した位置変化量に、前後方向の移動量が含まれるか否かを判別する(S51)。すなわち、前後方向の移動があった場合は(S51:Yes)、投射光学系調整部23により所定の画像調整を行なう。具体的には、前後方向の移動量に基づいて、電動ズーム機能による投影画像Gの投射サイズの調整、電動フォーカス機能による投影画像Gのフォーカス調整、電動レンズシフト機能による投影画像Gの投射位置の調整を行なう(S52)。
【0045】
続いて、S04において検出した位置変化量に、上下または左右方向の移動量が含まれるか否かを判別する(S53)。すなわち、上下方向または左右方向の少なくとも一方における移動があった場合は(S53:Yes)、投射光学系調整部23により所定の画像調整を行なう。具体的には、上下または左右方向の移動量に基づいて、電動レンズシフト機能による投影画像Gの投射位置の調整を行なう(S54)。
【0046】
続いて、S04において検出した位置変化量に、水平方向の回転量が含まれるか否かを判別する(S55)。すなわち、水平方向に回転された場合は(S55:Yes)、画像処理部34(キーストーン歪補正部45)による補正および投射光学系調整部23による画像調整を行なう。具体的には、水平方向の回転量に基づいて、横キーストーン歪補正による投影画像Gの投射形状の調整、電動レンズシフト機能による投影画像Gの投射位置の調整を行なう(S56)。
【0047】
さらに、S04において検出した位置変化量に、仰角の変化量が含まれるか否かを判別する(S57)。すなわち、仰角または俯角の変化があった場合は(S57:Yes)、画像処理部34(キーストーン歪補正部45)による補正および投射光学系調整部23による画像調整を行なう。具体的には、仰角の変化量に基づいて、縦キーストーン歪補正による投影画像Gの投射形状の調整、電動レンズシフト機能による投影画像Gの投射位置の調整を行なう(S58)。
【0048】
なお、図7に示した画像調整処理における各工程の実行順序は任意である。また、2方向以上に位置変化があった場合は、S52,S54,S56,S58における各画像調整を同時に実行しても良い。
【0049】
また、図7では、前後方向、上下方向、左右方向、水平回転、仰角の5つの位置変化に基づいて、画像調整処理を行うものとしたが、前後方向および上下方向の移動に対してのみ、元の投影画像Gを保持するための画像調整を行なうなど、必ずしもプロジェクタ10の5つ全ての位置変化に基づいて、画像調整処理を行う必要はない。また、画像調整処理の対象となる位置変化を、上記の5つの中からユーザが選択・設定できるように構成しても良い。
【0050】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、プロジェクタ10の位置変化量に応じて、元の投影画像Gの状態を保持するための画像調整を行なうため、ユーザが手動で画像調整を行なう必要がない。これにより、プロジェクタ10(装置本体11)の設置場所の状態やスクリーンSCの設置位置に応じて、プロジェクタの位置を自由自在に変化させることができるため、初心者であっても容易に使いこなすことができる。
【0051】
また、画像調整処理は、プロジェクタ10に一般的に搭載されている既存の機能(電動ズーム機能、電動フォーカス機能および電動レンズシフト機能、キーストーン歪補正機能)を用いて画像調整を行うことができるため、本発明の画像調整機能を搭載した場合の装置コストの上昇を抑えることができる。
【0052】
また、画像調整機能実行前(位置変化検出前)の調整データを記憶しておくため、位置変化前に電動ズーム機能等による画像調整を行なっていた場合でも、位置変化前の投影画像Gの状態を正確に保持することができる。さらに、画像調整処理は、プロジェクタ10からスクリーンSCまでの距離を考慮して行なうため、より正確に、元の投影画像Gの状態を保持することができる。
【0053】
なお、上記の実施形態では、画像調整処理として、画像処理部34による補正および投射光学系調整部23による画像調整を行なうものとしたが、これらの機能を用いると、画像調整の限度が生じてしまう(例えば、ズーム位置やフォーカス位置の限界など)。したがって、その限度を超えてプロジェクタ10の位置が変化した場合、電子音を発生させるなどして、それ以上プロジェクタ10の位置を変化させると、元の投影画像Gを保持するための画像調整処理が実行できないことをユーザに報知することが好ましい。この構成によれば、ユーザは、画像調整処理が実行可能な範囲でプロジェクタ10の位置を変化させることができる。なお、上記の実施形態で示した画像調整処理の手段以外にも、周知の画像処理を行うことによって、元の投影画像Gを保持するようにしても良い。
【0054】
また、上記の実施形態では、スクリーンSCまでの前後方向における距離をパラメータの一つとして、位置変化後の調整データを算出するものとしたが、これ以外に、スクリーンSCに対する左右方向および/または上下方向の位置を測定し、その測定結果を用いて位置変化後の調整データを算出するようにしても良い。この構成によれば、より正確に、元の投影画像Gの状態を保持することができる。
【0055】
また、上記の実施形態では、プロジェクタ10の位置変化を検出したとき、記憶部37から読み出した調整データと、位置変化量と、距離センサ36の検出結果と、に基づいて、画像調整処理を行うものとしたが、調整データと距離センサ36の検出結果を用いることは絶対条件ではなく、位置変化量のみに基づいて画像調整処理を行うことも当然可能である。
【0056】
また、上記の実施形態では、画像調整実行キー44の押下をトリガとして、画像調整機能を実行するものとしたが、プロジェクタ10の位置変化をトリガとしても良い。この場合、プロジェクタ10の位置変化が停止した時点(位置変化が無くなって所定時間経過した時点)で、画像調整処理を行うことが好ましい。この構成によれば、ユーザによる画像調整実行キー44の操作の手間を省くことができる。
【0057】
また、プロジェクタ10の全ての位置変化に応じて、画像調整処理(画像処理部34による補正および投射光学系調整部23による画像調整)を行なう画像調整モードと、プロジェクタ10の水平方向の回転や仰角の変化に応じて、キーストーン歪補正処理(画像処理部34による補正)を行なう通常モードとを切り替え可能に構成し、画像調整実行キー44の押下時ではなく、画像調整モードに切り替えられた時点の調整データを記憶しておくようにしても良い。この構成によれば、従来キーストーン歪補正機能を使い慣れているユーザにとって、操作が容易である。
【0058】
また、上記の実施形態に示したプロジェクタ10の各構成要素をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピュータを、プロジェクタ10の各手段として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0059】
また、上記の実施形態では、液晶表示方式を採用しているが、CRT表示方式やライトスイッチ表示方式(マイクロミラーデバイス方式)など、表示原理は問わない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…プロジェクタ 11…装置本体 20…投射検出部 23…投射光学系調整部 31…CPU 33…操作部 34…画像処理部 35…加速度センサ 36…距離センサ 37…記憶部 44…画像調整実行キー 45…キーストーン歪補正部 G…投影画像 SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに対し投射光を照射する照射手段と、
前記スクリーンに対する、装置本体の前後方向における移動量を含む位置変化量を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に応じて、前記スクリーン上に投影された投影画像の位置、形状および大きさを保持できるように、前記投影画像の画像調整を行なう画像調整手段と、を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記画像調整手段は、前記検出手段により検出した、前記装置本体の前後方向における移動量に基づいて、電動ズーム機能を用いた前記投影画像のサイズ調整、電動フォーカス機能を用いたフォーカス調整、および電動レンズシフト機能を用いた前記投影画像の位置調整を行なうことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記検出手段は、前記装置本体の位置変化量として、前記スクリーンに対する、前記装置本体の上下方向および左右方向における移動量、水平方向における回転量、並びに仰角の変化量をさらに検出することを特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記画像調整手段は、前記検出手段により検出した、前記装置本体の水平方向における回転量および仰角の変化量に基づいて、キーストーン歪補正機能を用いた前記投影画像の形状調整を行なうことを特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記検出手段による位置変化検出前の、前記電動ズーム機能によるズーム位置、前記電動フォーカス機能によるフォーカス位置、前記電動レンズシフト機能によるシフト位置および前記キーストーン歪補正機能による補正値である調整データを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記画像調整手段は、前記検出手段の検出結果および前記記憶手段に記憶した前記調整データに基づいて、前記投影画像の画像調整を行なうことを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記装置本体から前記スクリーンまでの距離を測定する距離測定手段をさらに備え、
前記画像調整手段は、前記検出手段の検出結果、前記記憶手段に記憶した前記調整データおよび前記距離測定手段の測定結果に基づいて、前記投影画像の画像調整を行なうことを特徴とする請求項5に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
任意の時点で指示を行なう指示手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記指示手段によって指示された時点における前記装置本体の位置からの位置変化量を検出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
スクリーンに対する、装置本体の前後方向における移動量を含む位置変化量を検出するステップと、
検出した前記装置本体の位置変化量に基づいて、前記スクリーン上に投影された投影画像の位置、形状および大きさを保持できるように、前記投影画像の画像調整を行なうステップと、を備えたことを特徴とするプロジェクタの画像調整方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項8に記載のプロジェクタの画像調整方法における各ステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109363(P2013−109363A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2532(P2013−2532)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2007−241277(P2007−241277)の分割
【原出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】