説明

プロジェクタのカラーキャラクタリゼーション

本発明は、表示装置のデバイス依存色空間のデバイス依存色値を、デバイス独立色空間のデバイス独立色値に変換する。デバイス依存色値に階調曲線補正と三刺激行列を適用する行列モデルを、デバイス依存色値に適用することで、知覚線形色空間における第一の色値が決定される。そして、デバイス依存色値に差分モデルを適用することで、視覚線形色空間における差分値が決定される。差分モデルは、表示装置の実際の測定値からの行列モデルのずれをモデル化する。次に、差分値と第一の色値が加算され、その和がデバイス独立色空間に変換される。本発明によれば、行列モデルに基づく第一の値と、行列モデルのずれを考慮する差分値を加算することで、ディジタル光処理表示装置において一般的なチャネル相互依存性を考慮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーキャラクタリゼーションに関し、とくに、表示装置のデバイス依存色空間におけるデバイス依存色値から、デバイス独立色空間におけるデバイス独立色値への変換に関する。この変換は、ディジタル光処理(digital light processing)技術において一般的な(prevalent)チャネル相互依存性(channel interdependently)を考慮する。
【背景技術】
【0002】
通常、液晶ディスプレイ(LCD)およびブラウン管(CRT)のような表示装置は、異なる量の赤色、青色、緑色(RGB)の光を組み合わせて画面上に色を生成する。RGB光の特定の組み合せから生成される実際の色は、表示装置ごとに異なる。従って、異なる装置上でばらつきがない色を再現するために、表示装置の製造者らは、標準の色座標系に関して、特定の表示装置の出力を特徴付けるデバイスプロファイルを作成する。例えば、多くの場合はCIEXYZ色空間が使用される。
【0003】
通常、CRTまたはLCD技術に基づく表示装置はチャネル独立性(channel independence)を示し、カラーキャラクタリゼーションに対して、RGB各チャネルは互いに独立またはほぼ独立に機能する。CRTおよびLCD表示装置は、チャネル独立性を示すから「標準行列モデル(standard matrix model)」と呼ばれるモデルによって、うまくモデル化されてきた。標準行列モデルでは、下に示すように、通常は非線形な階調値(階調曲線)に従ってRGB値を調整し、調整したRGB値に三刺激行列を適用することで、RGB値をXYZ値にマッピングする。
R' = γr(R)
G' = γg(G)
B' = γb(B)
┌ ┐ ┌ ┐ ┌ ┐
│X│ │R'│ │Xbkpt
│Y│= S│G'│+│Ybkpt
│Z│ │B'│ │Zbkpt
└ ┘ └ ┘ └ ┘
ここで、R'、G'、B'は伝達関数γr(R)、γg(G)、γb(B)によって取得される放射スカラー量、
Xbkpt、Ybkpt、Zbkptは黒色点のXYZ測定値の成分、
Sは下式の三刺激行列。
┌ ┐
│Xcr,max Xcg,max Xcb,max
S =│Ycr,max Ycg,max Ycb,max
│Zcr,max Zcg,max Zcb,max
└ ┘
ここで、上付き文字cは黒色補正済測定値(black-corrected measurement)、
下付き文字r、g、bはチャネル、
maxは最大デバイス値を有する色ランプ点(color ramp point)。
【0004】
標準行列モデルはチャネル独立性を前提とし、CRTおよびLCD表示装置のキャラクタリゼーションに良好に適合する。
【0005】
しかし、ディジタル光処理(DLP(登録商標))技術を使用する表示装置は、チャネル相互依存性を示し、RGBチャネルは互いに独立して機能しない。このような装置においてチャネル独立性が機能しない理由は主に二つある。まず、人間の視覚系の応答に起因するアーティファクト(例えばアブニー効果)を克服するために、ディジタル光処理表示装置(以下、DLPD装置)のハードウェアには、非線形3Dルックアップテーブル(LUT)形式の色管理が実装される可能性がある。さらに、DLPD装置内に白色フィルタがある場合、充分に輝度を高めるために、RGBチャネルの寄与(contribution)に加えて第四の内部(白色)チャネルが生成される。従って、チャネル独立の帰結である加法性(additivity)の前提が無効になる。
【0006】
ディジタル光処理装置はチャネル相互依存性を示し、標準行列モデルはチャネル独立性を前提とするから、標準行列モデルだけではDLPD装置のキャラクタリゼーションを適切に行うことができない。
【0007】
標準行列モデルに加えて、他のモデルも表示装置のキャラクタリゼーションのために開発されてきた。例えば、あるモデルは、チャネル相互依存性を示す表示装置のチャネル相互作用をモデル化するために、階調曲線と三刺激行列の間のインタセプトLUT (intercepting LUT)を使用する(非特許文献1参照)。しかし、このモデルは、DLPD装置によくある白色フィルタの影響を考慮しない。別のモデルは、白色フィルタの存在を補償するために白色スカラ量を適用する。しかし、このモデルは、DLPD装置にみられるチャネル相互依存性を必ずしも考慮しない(非特許文献2参照)。
【0008】
【非特許文献1】Woolfe, Geoff J. et al「an Improved Method for CRT Characterization Based on Spectral Data」Proceedings of CIE Expert Symposium 1997 on Colour Standards for Imaging Technology
【非特許文献2】Wyble, David R. and Zhang, Hongpin「Colorimetric Characterization Model for DLP Projectors」Proceedings of IS&T/SID Eleventh Color Imaging Conference
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、チャネル相互依存性を示すDLPD装置のような装置のために、デバイス依存色空間からデバイス独立色空間へ値を変換する際に上述した問題に対処する。とくに、本発明は、標準行列モデルの出力と、表示装置の実際の測定値からの標準行列モデルのずれ(deviation)をモデル化する差分モデルの出力を組み合わせる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの面において、本発明は、表示装置のデバイス依存色空間のデバイス依存色値を、デバイス独立色空間のデバイス独立色値へ変換する。行列モデルをデバイス依存色値に適用することで、第一の色値を知覚線形(perceptually linear)色空間において決定する。この行列モデルは、階調曲線補正と三刺激行列をデバイス依存色値に適用する。そして、差分値を視覚線形色空間において決定する。差分値は、差分モデルをデバイス依存色値に適用することで決定される。差分モデルは、表示装置の実際の測定値からの行列モデルのずれをモデル化する。差分値と第一の色値を加算して、その和をデバイス独立色空間へ変換する。
【0011】
好ましくは、差分モデルはルックアップテーブル(LUT)を構成し、そのLUTの値の線形補間に基づき差分値を決定する。LUTの値は、不均等に離間された表示装置の実際の測定値に対応して、不均等に離間していることが好ましい。
【0012】
行列モデルの適用は、デバイス独立色空間の色値を提供することが好ましい。この色値は、知覚線形色空間の第一の色値へ変換される。デバイス独立色空間は好ましくはCIEXYZであり、知覚線形色空間は好ましくはCIELUVである。
【0013】
デバイス依存色値からデバイス独立色値への変換の間、デバイス依存色値のカラーチャネルが相互依存して機能するように、表示装置は好ましくはチャネル相互依存性を示す。さらに、表示装置はプロジェクタが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、標準行列モデルの出力と、表示装置の実際の測定値からの標準行列モデルのずれをモデル化する差分モデルの出力を組み合わせるから、DLPD装置において一般的なチャネル相互依存性を考慮することができる。
【0015】
本発明の本質をすばやく理解するために概要を説明した。添付する図面と関連する、以下の好適な実施例の詳細な説明を参照することで、本発明は、さらに完璧に理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の色変換モデルは、RGBのようなデバイス依存色空間の色値を、XYZのようなデバイス独立色空間の色値へ変換する。図3に示すように、標準行列モデル300をRGB値に適用することで、第一の色値が決定される。標準行列モデル300は、階調曲線301、302、303で構成される階調曲線補正と三刺激行列304をRGB値に適用する。標準行列モデル300のXYZ色空間における出力は、変換器305を介して、知覚線形空間へ変換される。好適な実施例において、知覚線形色空間はLuv色空間である。
【0017】
第一の色値の決定に加えて、差分モデル306をRGB値に適用することで、Luv空間の差分値が決定される。差分モデル306は、表示装置の実際の測定値からの標準行列モデル300のずれをモデル化する。そして、差分値と第一の色値は加算され、その和は、変換器307を介して、XYZのデバイス独立色空間に変換される。標準行列モデル300に基づく第一の値に、標準行列モデル300のずれをモデル化する差分モデル306に基づく差分値を加算するので、DLPD装置において一般的なチャネル相互依存性が考慮される。
【0018】
好適な実施例において、差分モデル306は、入力RGBに基づき補間を行って出力Luv値を取得するために、低密度(sparsely-populated)のルックアップテーブル(LUT)として実装される。
【0019】
本発明の色変換モデルは、デバイス独立色値を表示装置が使用可能なデバイス依存色値に変換するために、デバイスドライバまたはコンピュータのオペレーティングシステムが含む色管理モジュール(CMM)によって利用可能である。デバイス独立色空間からデバイス依存色空間へ戻す変換は、反転(inversion)として知られる。好適な実施例において、色変換モデルは、ともに三次元であるRGB色空間からXYZ色空間へ色値を変換するため、反転は、三つの未知数がある三つの非線形方程式を解くことと等価である。色変換モデルの反転を行う技術が幾つかある。その一つは、米国特許出願第10/840,307号「Color Characterization With Enhanced Purity」に記載されている。その内容は参考として、本件に組み込まれる。
【0020】
色変換モデルを構築するためには、最初に、充分な測定データのサンプリングが必要である。図1は、表示装置の測定データをサンプリングする典型的な装置を示す。コンピュータ装置100は、表示装置101と測色装置104とインタフェイスする。好適な実施例において、表示装置101は、チャネル相互依存性を示すDLPD装置である。このような装置の一つは、テキサス・インスツルメンツ(登録商標)のDLP(登録商標)技術に基づくプロジェクタである。当該技術は、テキサス・インスツルメンツ(登録商標)のDigital Mirror Device(TM)チップを使用する。
【0021】
表示装置101のデバイス依存色空間をRGBとすると、コンピュータ装置100は、RGB値を表示装置101に供給する。コンピュータ装置100は、供給したRGB値をカラーパッチ103として表示スクリーン102に表示させるために、表示装置101を制御する。測色装置104は、カラーパッチ103の色に対応するデバイス独立色値の測定に使用される。測色装置104は、分光測光器、測色計、または、色を測定し、CIEXYZのようなデバイス独立色空間の測色値を出力可能な任意の測色装置でよい。
【0022】
多数の測定(つまり包括的な9×9×9=729サンプル点)を行わず、表示装置101に関する充分なサンプルデータを取得するために注目すべきことは、RGB値が小さい場合の表示装置101の出力は標準行列モデル300に近似する傾向にあることである。標準行列モデル300に近似(close adherence)する理由は二つ(two-fold)ある。一つは、表示装置101のハードウェアに実装された補正(例えばアブニー効果用)は、通常、純度の高い色(saturated color)に対してのみ著しい効果があることである。二つ目は、表示装置101に白色フィルタがある場合、通常、特定のデバイス閾値に達した後、白色チャネルが活性化することである。
【0023】
標準行列モデル300は、より低い値に対しては良好に動作するので、デバイス値が低い範囲は重視せずに、表示装置101の出力を不均等にサンプリングすることができる。好適な実施例において、0、選択閾値x、255を含む各チャネル五個のサンプル点で充分である。表示装置101内部の予備知識がないと仮定すると、xは128に設定され、残る二点はxから255の範囲内に位置するように設定される。好適な実施例において、R、G、Bの各チャネルにおけるサンプル格子の選択は次のようになる。
0, 128, 160, 224, 255
【0024】
従って、5×5×5=125の測定値を利用する。しかし、閾値の予備知識があれば、閾値と残りの測定点は、それに従って割り当てることができる。各五つの測定値を取得するために、コンピュータ装置100は、表示装置101を制御して、表示スクリーン102に上記RGB値をカラーパッチ103として表示させる。カラーパッチ103は、測色装置104により測定され、カラーパッチ103の各RGB値は、対応するXYZ値に割り当てられる。
【0025】
さらに、階調性のキャラクタリゼーションを行うために、RGBランプごとにサンプル点が取得される。階調ランプごとにS字状(S-shaped or sigmoidal)の階調曲線を取り込むキャラクタリゼーションを達成するために、ランプごとに充分な点(少なくとも九点)を得ることが推奨される。好適な実施例において、追加の4×3=12の測定値が作成される。
R = 32, 64, 96, 192, G = B = 0
G = 32, 64, 96, 192, R = B = 0
B = 32, 64, 96, 192, R = G = 0
【0026】
従って、好適な実施例の測定値の総数は125+12=137である。
【0027】
好適な実施例において、上記の測定値は、表示装置の製造者または表示装置用のカラープロファイルを作成する第三者によって取得される。測定結果は「measurement only profile」またはMOPと呼ぶコンピュータファイルに、RGBデバイス値と、対応するXYZ測定値の対の形式で格納される。その結果、MOPは、表示装置の色変換モデルを構築するために、エンドユーザに提供される。
【0028】
本実施例は、エンドユーザによるMOPの使用に関するが、表示装置の製造業が色変換モデルと反転モデルを構築して、最終結果のみをエンドユーザに提供する場合も含む。
【0029】
図2は、表示装置のカラーキャラクタリゼーションを行う典型的な装置を示す。コンピュータ装置200は、提供されたMOP内のデータ対を使用して、表示装置101の色変換モデルを構築する。コンピュータ装置200は、MOPを読み、測定値の集合を初期解析して不均等なサンプル格子とランプの決定を行うことが可能なコンピュータプログラムを含むことが好ましい。このタスクに関して簡単なアルゴリズムが存在し、その擬似コード(pseudo-code)を下にリストする。
for each (サンプルデータ)
if(R, G, Bがすべて等しい)
Rは不均等なLUTのサンプル格子内の点
if(G=B=0)
赤色ランプ上のサンプルデータ
if(R=B=0)
緑色ランプ上のサンプルデータ
if(R=G=0)
青色ランプ上のサンプルデータ
【0030】
上記アルゴリズムは、測定値の集合がRGB立方体の不均等に離間された完全なサンプル点と、三つのランプ上の追加測定値を含み、他の無関係の測定値を含まないと仮定する。さらに、アルゴリズムは、サンプル格子が固定かつ予め決定されているという仮定に基づかず、MOPのデータに基づきサンプル格子を決定する。これによって、閾値の予備知識がサンプル格子に組み込まれる場合が考慮される。
【0031】
MOPの解析後、本発明の色変換モデルを構築することができる。しかし、上記の方法と異なる方法で測定値がサンプリングされたとしても、本発明の色変換モデルは、DLPD装置において一般的なチャネル相互依存性を考慮可能である。例えば、多数の測定値(例えば、包括的な9×9×9=729のサンプル点)が表示装置101に対して作成された場合でも、このような色変換を構築することができる。上記のRGBデータのサンプリングは、色変換モデルの構築に充分な測定データを依然として提供しながら、作成するデータ測定値の数を単純に減少するものである。
【0032】
図3に示す色変換モデルの構造に注目すると、標準行列モデル300は、差分モデル306の構築前に構築されることが好ましい。しかし、標準行列モデル300の構築前に、フレア(flare)の影響を除去する必要がある。フレアは、表示装置101に黒色が表示された場合に生成される非ゼロの光量と定義することができる。フレアを除去すると、デバイス値R=G=B=0のXYZ測定値はX=Y=Z=0である。従って、フレアを除去するために、上付き文字cは黒色補正済測定値を示し、各測定値からR=G=B=0のXYZ測定値が下式のように減算される。
Xc = X - Xbkpt
Yc = Y - Ybkpt
Zc = Z - Zbkpt
【0033】
フレアが除去されると、三刺激行列304は下式のように構築される。
┌ ┐
│Xcr,max Xcg,max Xcb,max
S =│Ycr,max Ycg,max Ycb,max
│Zcr,max Zcg,max Zcb,max
└ ┘
ここで、下付き文字r、g、bはチャネルを表す、
maxはデバイス値が255のランプ点を示す。
【0034】
三刺激行列の構築後、各ランプの測定値から階調曲線301、302、303を構築することができる。あるランプについて、デバイス値(Ri, Gi, Bi)と測色値(Xi, Yi, Zi)(i=1, 2, ..., N)のN組の測定値を想定することができる。各点は、一つのランプ上にあり、R、G、Bのうちの二つは0である。階調曲線上のi番目の点について、デバイス値diはmax(Ri, Gi, Bi)である。放射スカラ量di'は下式で与えられる。
Xci・XcN + Yci・YcN + Zci・ZcN
di' = ───────────────
XcN・XcN + YcN・YcN + ZcN・ZcN
【0035】
i=1は黒色点に対応するから、i=1のときXc=Yc=Zc=0かつdi'=0である。他方、i=Nのときdi'=1である。言い換えれば、各階調曲線は、端点において0および1を通過し、これは望ましい特性である。図4はチャネルの典型的な階調曲線を示すグラフである。
【0036】
点(di, di')について、階調曲線301、302、303は、線形補間またはスプライン補間により構築することができる。階調曲線301、302、303は、R、G、Bの各チャネルに対して構築され、三つの伝達関数γr(R)、γg(G)、γb(B)が得られる。従って、標準行列モデル300に対応する最終計算モデル(X, Y, Z)T=M(R, G, B)は、下式で与えられる。
R' = γr(R)
G' = γg(G)
B' = γb(B)
┌ ┐ ┌ ┐ ┌ ┐
│X│ │R'│ │Xbkpt
│Y│= S│G'│+│Ybkpt
│Z│ │B'│ │Zbkpt
└ ┘ └ ┘ └ ┘
【0037】
標準行列モデル300の構築後、標準行列モデルの出力と実際の測定値の差が、差分モデル306によってモデル化される。標準行列モデル300と差分モデル306の組み合わせは、DLPD装置において一般的なチャネル相互依存性を考慮する、より一般的なカラーモデルを提供する。
【0038】
図5は、実施例の差分モデルの構築を示すフローチャートである。好適な実施例において、差分モデル306は不均等なLUTとして実装される。LUTの構築において、LUTの格納される、各サンプルRGBデータ点の差分値が計算される。開始バブル500に続き、サンプルRGBデータ点を選択する(501)。選択されたRGBデータ点に対応する測定XYZ値をLuvに変換する(502)。標準行列モデル300が出力するXYZ値もLuvに変換する(503)。次に、測定Luv値と出力Luv値の差分を計算し(504)、この差分をLUTの適切なノードに格納するために使用する(505)。すべてのサンプルRGB点を処理したか否かを調べる(506)。すべてのサンプルRGB点を処理した場合は終了バブル507において処理を終了する。そうでなければ、新たなサンプルRGBデータ点を選択し(501)、各サンプルRGBデータ点の差分値を決定するまで処理を繰り返す。
【0039】
標準行列モデルの出力と実際の測定値の差分は「欠陥」として知られる。通常、ある閾値以下のRGB値について、欠陥は小さいか無視することができる。従って、上述したように、この閾値を超える範囲で、より頻度が高いサンプリングを行えば、測定値の数を減少させるとともに、欠陥の非線形関数形式を保つことができる。
【0040】
さらに、LUTの出力空間は知覚線形空間である。そのような出力空間は、LUT上で行われる線形(四面体)補間を許容するからである。好適な実施例は、CIELUVの知覚線形空間を使用する。上述したように、本実施例において、LUTの入力空間は、標準行列モデルの入力空間、つまり、RGBのデバイス依存色空間と同一である。
【0041】
図3に示すように、標準行列モデル300と差分モデル306が構築されると、入力RGB値は、二つの計算経路を通過する。第一の経路は標準行列モデル300で、階調曲線301、302、303を有し、XYZ値を出力する。この直後にXYZからLuvへの(変換器305を介する)変換が続く。第二の経路は差分モデル306で、四面体補間を用いる不均等なLUTとして実装されることが好ましい。差分モデル306の出力は、構成上、Luv空間にある。二つの出力の和が計算され、予測Luv値が得られる。予測Luv値は(変換器307を介して)XYZに変換され、これが表示装置101用の色変換モデルの期待出力である。
【0042】
本発明によれば、標準行列モデル300に基づく値と、標準行列モデル300のずれをモデル化する差分モデル306に基づく差分値が加算され、DLPD装置において一般的なチャネル相互依存性を考慮することができる。
【0043】
本発明の特定の実施例に関して上述した。本発明は、上述した実施例に限定されず、本発明の趣旨の範囲から逸脱せずに、当業者により様々な変更および変形が行われてもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】表示装置の測定データをサンプリングする典型的な装置を示す図、
【図2】表示装置のカラーキャラクタリゼーションを行う典型的な装置を示す図、
【図3】本発明の一実施例による色変換モデルを示す図、
【図4】あるチャネルに対する典型的な階調曲線を示すグラフ、
【図5】本発明の一実施例による差分モデルの構築を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のデバイス依存色空間におけるデバイス依存色値をデバイス独立色空間のデバイス独立色値に変換する方法であって、
階調曲線補正と三刺激行列を前記デバイス依存色値に適用する行列モデルを、前記デバイス依存色値に適用することにより、知覚線形色空間における第一の色値を決定し、
前記表示装置の実際の測定値からの前記行列モデルのずれをモデル化する差分モデルを前記デバイス依存色値に適用することにより、前記知覚線形色空間における差分値を決定し、
前記差分値と前記第一の色値を加算し、その和をデバイス独立色空間に変換することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記差分モデルはルックアップテーブル(LUT)を含み、前記差分値は前記LUTの値の線形補間に基づき決定されることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記LUTの値は、前記表示装置の不均等に離間された実際の測定値に対応して、不均等に離間されていることを特徴とする請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記行列モデルの適用は前記デバイス独立色空間の色値を提供し、前記第一の色値の決定ステップは、前記デバイス独立色空間の色値から前記知覚線形色空間の前記第一の色値への変換を行うことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項5】
前記デバイス依存色値から前記デバイス独立色値への変換の間、前記デバイス依存色値のカラーチャネルが相互依存して機能するように、前記表示装置はチャネル相互依存性を示すことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項6】
前記チャネル相互依存性は、前記表示装置のカラーホイールに対する白色フィルタの影響に基づくことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記チャネル相互依存性は、前記表示装置のハードウェアに実装された非線形三次元LUTに基づくことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項8】
前記表示装置はプロジェクタであることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項9】
前記デバイス独立色空間はCIEXYZであることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項10】
前記知覚線形色空間はCIELUVであることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項11】
デバイス独立色値をデバイス依存色値に変換する装置であって、請求項1に記載された行列モデルと差分モデルを利用して、デバイス依存色値を、表示装置が利用可能なデバイス依存色値に変換することを特徴とする装置。
【請求項12】
表示装置のデバイス依存色空間のデバイス依存色値を、デバイス独立色空間のデバイス独立色値に変換する、コンピュータが読み取り可能な媒体に格納されたコンピュータが実行可能な処理ステップであって、
請求項1から請求項10の何れかに記載された方法を実行可能な処理ステップを有することを特徴とする処理ステップ。
【請求項13】
表示装置のデバイス依存色空間のデバイス依存色値を、デバイス独立色空間のデバイス独立色値に変換するコンピュータが実行可能な処理ステップを格納するコンピュータが読み取り可能な媒体であって、
前記処理ステップは、請求項1から請求項10の何れかに記載された方法を実行可能な処理ステップを含むことを特徴とする媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−515340(P2008−515340A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534600(P2007−534600)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/030612
【国際公開番号】WO2006/039023
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】