説明

プロジェクタの熱対策構造

【課題】 プロジェクタの発熱領域が熱抑制領域に悪影響を及ぼすのを抑制し、しかも、軽量化や小型化を図ることのできるプロジェクタの熱対策構造を提供する。
【解決手段】 携帯可能なプロジェクタ1の内部を発熱領域4と熱抑制領域16とに区画し、これら発熱領域4と熱抑制領域16との間に介装体20を介在する。そして、この介装体20を、不織布あるいはガラスペーパーからなる薄い断熱層21とする。空隙率が90%以上の不織布あるいはガラスペーパーからなる薄い断熱層21を介在するので、プロジェクタ1の軽量化や小型化に資することができ、プロジェクタ1の持ち運び、収納、保管等に支障を来たすことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、店舗、ショールーム、展示会等でスクリーンに映像を投写するプロジェクタの熱対策構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯することが可能な軽量・小型のプロジェクタが盛んに開発・製造され、テレビやビデオ映像を大画面で観賞する場合、ホームシアターを満喫する場合、あるいはパソコンに接続してビジネスプレゼンテーシヨンする場合等に用いられている(特許文献1、2参照)。
【0003】
ところで、プロジェクタには様々な課題があるが、その一つとして熱対策があげられる。この点について説明すると、プロジェクタは、その筐体に熱源である高出力の光源や画像処理用の回路基板が内蔵され、この回路基板には回路素子が実装されているが、何ら熱対策を施さないと、光源の熱が回路基板や回路素子に悪影響を及ぼし、誤動作や機能不全を招くおそれがある。
この点に鑑み、従来においては、光源と回路基板や回路素子との間にウレタン等の厚い断熱材を介在させたり、回路基板や回路素子を大型の専用冷却ファンにより送風して冷却する手法が採用されている。
【特許文献1】特開2006‐72149号公報
【特許文献2】特開2005‐157237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来におけるプロジェクタは、以上のように構成され、光源と回路基板や回路素子との間に厚い断熱材を介在させたり、回路基板や回路素子を大型の専用冷却ファンにより送風・冷却している。
しかしながら、係る手法を採用する場合には、熱対策とはなるものの、取り付けのための大きなスペースを要するので、プロジェクタの軽量化や小型化を図ることができず、持ち運び、収納、保管等に支障を来たすという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、プロジェクタの発熱領域が熱抑制領域に悪影響を及ぼすのを抑制し、しかも、軽量化や小型化を図ることのできるプロジェクタの熱対策構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、プロジェクタの内部を介装体により発熱領域と熱抑制領域とに区画したものであって、
介装体は、不織布あるいはガラスペーパーからなる断熱層を含んでなることを特徴としている。
【0007】
なお、介装体には、断熱層に重ね設けられる発塵防止層を含ませることができる。
また、介装体には、断熱層に対向する放熱層を含ませることができる。
また、介装体には、断熱層と放熱層との間に介在される空気層を含ませることができる。
また、介装体の断熱層に高分子物質を含浸させることもできる。
【0008】
さらに、介装体を、断熱層と放熱層とから積層形成し、断熱層を発熱領域側に配置するとともに、放熱層を熱抑制領域側に配置することも可能である。
さらにまた、介装体を、断熱層と放熱層とから形成してこれらの間には空気層を介在形成し、断熱層を発熱領域側に配置するとともに、放熱層を熱抑制領域側に配置することも可能である。
【0009】
ここで、特許請求の範囲におけるプロジェクタは、携帯タイプ、天吊タイプ、書画カメラ装置に接続されるタイプ等でも良い。このプロジェクタの内部を介装体により発熱領域と熱抑制領域とに区画する方法としては、発熱領域と熱抑制領域との間に略板形の介装体を介在させる方法、介装体を所定の形状(例えば、箱形、中空の半球形、中空の半楕球殻形等)に加工して発熱領域又は熱抑制領域を被覆したり、包装したり、あるいは嵌合等する方法等があげられる。
【0010】
発熱領域と熱抑制領域とは、単数複数を特に問うものではない。抑制領域は、プロジェクタ内の空間でも良いし、単数複数の回路部品等でも良い。さらに、断熱層は、発塵防止層や放熱層と同じ大きさでも良いし、そうでなくても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロジェクタの発熱領域の熱が熱抑制領域に悪影響を及ぼすのを抑制し、しかも、プロジェクタの軽量化や小型化を図ることができるという効果がある。
また、介装体に、断熱層に重ね設けられる発塵防止層を含ませれば、発塵防止層が断熱層からの発塵を防止するので、介装体の加工や製法の簡素化を図ることができる。
また、介装体に、断熱層に対向する放熱層を含ませれば、放熱層が断熱層等の熱を放熱するので、断熱層の蓄熱を抑制することができる。
【0012】
また、断熱層と放熱層との間に空気層を介在すれば、断熱効果をさらに向上させることが可能になる。
また、介装体の断熱層に高分子物質を含浸させれば、介装体からの発塵を防止してプロジェクタの各種レンズや映像に悪影響が生じるのを抑制することが可能になる。さらに、断熱層に塑性変形する高分子物質を含浸させることにより、金型を使用して介装体を容易に成形したり、絞り加工したり、あるいは曲げ加工等することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるプロジェクタの熱対策構造は、図1や図2に示すように、プロジェクタ1の内部を発熱領域4と熱抑制領域16とに区画し、これら発熱領域4と熱抑制領域16との間に熱対策用の介装体20を区画壁として介在し、この介装体20を薄い断熱層21により形成するようにしている。
【0014】
プロジェクタ1は、図1に示すように、携帯可能な大きさ・重量の筐体2を備え、この筐体2の内部が光源6を含む発熱領域4と、画像処理用の回路基板17を含む熱抑制領域16とに二分される。筐体2は、例えばABS樹脂やポリカーボネート等の成形材料を使用して平面略長方形の箱形に成形され、周壁には、筐体2内部の排気風を外部に排気する排気口3等が配設される。
【0015】
発熱領域4は、図2に示すように、筐体2内のリフレクタ5に内蔵されて前方のレンズ7に光線(同図の矢印参照)を照射するハロゲンランプ等の光源6と、レンズ7から反射ミラー8を介して照射された光線を均一にするライトトンネル9と、このライトトンネル9の光線出力部側に位置して赤、青、緑の光線を透過するカラーホイール10と、このカラーホイール10の光線出力部側に位置するコンデンサレンズ11と、このコンデンサレンズ11を通過した赤、青、緑の光線の光軸を均一に調整する複数の折り返しミラー12と、この複数の折り返しミラー12から赤、青、緑の光線が入射するDMD(ディジタルマイクロミラーデバイス)13と、このDMD13により表示された画像をスクリーンに拡大して投影する投影レンズ14とを備えて構成される。
【0016】
カラーホイール10は、赤、青、緑の光線を透過させる複数のフィルタを回転可能に備えた構造に構成される。また、DMD13は、複数の微小ミラーを備えた反射型表示素子であり、各入射光の色の画像形成のため、各ミラーの中で画像を形成するミラーをオンすることにより、オンされたミラーの光を投影レンズ14に照射するよう機能する。
【0017】
なお、発熱領域4には、上記構成部品の他、リフレクタ5,光源6,及びライトトンネル9等を冷却する冷却ファン15、リフレクタ5,光源6,DMD13,冷却ファン15等に電力を供給する電源基板(図示せず)等が配設される。
【0018】
熱抑制領域16は、画像処理用の回路基板17を備え、この回路基板17には、各種の回路素子18や部品が多数実装される。この回路素子18や部品としては、例えば、半導体IC、インターフェイス用コネクタ、音響部品等があげられる。
【0019】
介装体20は、空隙率が90%以上(例えば、樹脂発泡体の発泡倍率に換算すると、10倍以上)の薄く柔軟な不織布あるいはガラスペーパーからなる可撓性の断熱層21により形成され、高分子物質である所定の樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、エポキシ等)やエラストマー(例えば、シリコーンゴム)が必要に応じて含浸されることにより、断熱層21の周縁部が綻びて繊維やガラス繊維等からなる塵等が発生しないように形成される。
【0020】
不織布としては、例えばガラス、熱可塑性樹脂、液晶ポリマー等を用いた市販のタイプ(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、日本メディカルプロダクツ株式会社製)が用いられる。また、ガラスペーパーは、耐熱性や電気絶縁性に優れる極細のガラス繊維を抄造した市販のタイプ(例えば、日本無機株式会社製、日本板硝子株式会社製、王子特殊紙株式会社製)等が使用される。
【0021】
樹脂やエラストマーの含浸は、例えば溶剤に溶融した樹脂等を溶かして溶液を調製し、この溶液中に介装体20を漬けて樹脂等を浸透させ、その後、介装体20を引き上げて乾燥させる浸漬法により行われる。
このような介装体20は、筐体2の内壁に取付具を介し設置されて発熱領域4と熱抑制領域16とを非連通状態に仕切り、発熱領域4の光源6からの熱が熱抑制領域16の回路基板17や回路素子18等に悪影響を及ぼすのを抑制防止するよう機能する。
【0022】
上記構成によれば、光源6と回路基板17や回路素子18等との間に厚い断熱材(例えば2.5〜3.0mm)を介在させたり、回路基板17や回路素子18等を大型の専用冷却ファンにより送風・冷却するのではなく、空隙率が90%以上の不織布あるいはガラスペーパーからなる薄い断熱層(例えば1.0〜1.5mm)21を介在するので、プロジェクタ1の軽量化や小型化に大いに資することができ、プロジェクタ1の持ち運び、収納、保管等に支障を来たすことがない。
【0023】
また、発熱領域4からの熱が熱抑制領域16に悪影響を及ぼすのを空隙率の大きい断熱層21が遮断して抑制防止するので、プロジェクタ1の誤動作や機能不全を招くおそれをきわめて有効に排除することができる。また、介装体20である断熱層21中に樹脂等を含浸させて発塵を防止するので、各種のレンズ、ミラー、映像等に悪影響を及ぼすことがない。
【0024】
また、断熱層21に塑性変形する樹脂等を含浸させることにより、金型を使用して断熱層21を容易に成形したり、絞り加工したり、あるいは曲げ加工等することが可能になる。さらに、介装体20を柔軟な平板の断熱層21とするので、加工の容易化が大いに期待できる。
【0025】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、介装体20を薄い断熱層21により形成し、この断熱層21を熱抑制領域16である回路基板17の回路素子18等の形状に応じて箱形に屈曲形成し、この断熱層21を回路素子18等に嵌合して被覆保護するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
【0026】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、断熱が必要な回路素子18等にのみ介装体20を嵌合して被覆保護することができるので、材料の削減や無駄を省くことができるのは明らかである。
【0027】
次に、図4は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、介装体20である断熱層21の表裏両面に発塵防止層22を図示しない粘着フィルムを介しそれぞれ積層して一体化するようにしている。
【0028】
各発塵防止層22としては、例えばPETフィルム、断熱効果の高いスポンジ、発泡シートや金属箔等からなる放熱性のシート等があげられる。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、各発塵防止層22が樹脂含浸の場合よりも断熱層21の発塵をさらに効果的に防止するので、介装体20である断熱層21に樹脂を含浸させる必要が全くなく、断熱層21の加工や製法の簡素化を図ることができるのは明らかである。
【0029】
次に、図5は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、断熱層21を相対向する放熱層23と発塵防止層22との間に挟持させて一体化させ、介装体20を多層構造に形成するようにしている。
【0030】
放熱層23と発塵防止層22とは、断熱層21の表裏面に粘着フィルムを介しそれぞれ粘着して積層される。放熱層23は、例えばアルミニウム板、銅板、銅合金板等を使用して形成され、断熱層21とは反対側の熱抑制領域16側に面するよう配置される。但し、熱抑制領域16の回路基板17や回路素子18等に対する問題が懸念される場合には、樹脂に放熱性のフィラーを充填して形成することができる。
【0031】
この場合の放熱層23の樹脂としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、PVC、ポリスチレン、BR、SBR、熱可塑性エラストマー等があげられる。また、放熱性のフィラーとしては、熱伝導性の酸化アルミニウム、ボロンナイトライト等の金属酸化物、金属窒化物等が用いられる。また、発塵防止層22は、断熱層21に粘着して積層されるが、必要がなければ省略することもできる。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
【0032】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、放熱層23が冷却ファン15では逃がしきれない熱や断熱層21の熱を放熱して逃がすので、断熱層21の放熱層23側の蓄熱に伴う不具合を解消することができるのは明白である。また、放熱層23が撓みやすい断熱層21の支持板として機能するので、簡易な構成で断熱層21の形状保持が期待でき、取り扱いも容易化する。
【0033】
次に、図6は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、断熱層21と放熱層23との間に乾燥した空気の空気層24をスペーサ層25を介し一体形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、断熱層21と放熱層23との間に熱伝導の少ない空気層24を介在するので、放熱層23に熱が非常に伝わりにくく、簡素な構成で断熱効果をさらに向上させることができるのは明白である。
【0035】
なお、上記実施形態ではプロジェクタ1に介装体20を単に内蔵したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、内蔵した介装体20の一部を筐体2の外部に露出させ、放熱効果を向上させたり、介装体20の断熱層21と放熱層23の大きさを相違させ、放熱層23のみを筐体2の外部に露出させ、放熱効果を得るようにしても良い。さらにこの際、介装体20の放熱層23に略同一材料の熱伝導層を積層して放熱効果を向上させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の実施形態におけるプロジェクタを模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の実施形態におけるプロジェクタを模式的に示す部分断面説明図である。
【図3】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の第4の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明に係るプロジェクタの熱対策構造の第5の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プロジェクタ
2 筐体
4 発熱領域
6 光源
14 投射レンズ
16 熱抑制領域
17 回路基板
18 回路素子
20 介装体
21 断熱層
22 発塵防止層
23 放熱層
24 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタの内部を介装体により発熱領域と熱抑制領域とに区画したプロジェクタの熱対策構造であって、
介装体は、不織布あるいはガラスペーパーからなる断熱層を含んでなることを特徴とするプロジェクタの熱対策構造。
【請求項2】
介装体は、断熱層に重ね設けられる発塵防止層を含んでなる請求項1記載のプロジェクタの熱対策構造。
【請求項3】
介装体は、断熱層に対向する放熱層を含んでなる請求項1又は2記載のプロジェクタの熱対策構造。
【請求項4】
介装体は、断熱層と放熱層との間に介在される空気層を含んでなる請求項3記載のプロジェクタの熱対策構造。
【請求項5】
介装体の断熱層に高分子物質を含浸させた請求項1ないし4いずれかに記載のプロジェクタの熱対策構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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