説明

プロジェクター

【課題】偏光変換素子の温度上昇を抑制したプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクターは、光源から射出された光束を偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光に分離し、第1方向に沿って複数配置される偏光分離膜、偏光分離膜で分離されたいずれか一方の直線偏光光を反射し、第1方向に沿って偏光分離膜と交互に配置される反射膜、および他方の直線偏光光を一方の直線偏光光に変換する位相差板62を有する偏光変換素子6と、偏光変換素子6を保持する保持部材7と、保持部材7の光束が入射する側に配置され、偏光分離膜に向かう光束を通過させる第1の開口部81a,81b,81c、および反射膜に向かう光束を遮光する正面部81を有する遮光部材8と、偏光変換素子6から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、を備え、遮光部材8は、保持部材7より反射率の高い材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、光変調装置にて変調された光束を投写する投写レンズとを備えたプロジェクターが知られている。このようなプロジェクターとして、光束の利用効率を高め、明るい投写画像を確保するために、光源から射出された光束を1種類の直線偏光光に揃える偏光変換装置を備えたプロジェクターが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の偏光変換装置は、光源からの光束を偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光に分離し、2種類の直線偏光光をいずれか一方の直線偏光光に揃えて射出する偏光変換素子本体と、偏光変換素子本体の光束入射側に設けられ、光束の一部を遮光する固定枠とを備えている。偏光変換素子本体は、光源からの光束を2種類の直線偏光光に分離させる偏光分離膜、偏光分離膜で反射された直線偏光光を反射する反射膜、および偏光分離膜から射出された光束の偏光軸を変換する位相差板を備えている。そして、偏光変換素子本体は、接着剤を介して固定枠に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−287718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の偏光変換装置は、光束を遮光することに伴って発熱する固定枠の熱が偏光変換素子本体に伝わって偏光変換素子本体が温度上昇し、位相差板等が劣化するという課題がある。位相差板等が劣化すると、投写される画像の画質が劣化する。
また、特許文献1に記載のプロジェクターには、偏光変換素子本体を冷却するために、冷却ファン(シロッコファン)が備えられている。しかしながら、偏光変換素子本体を適正に冷却するために、大型の冷却ファンが用いられたり、小型の冷却ファンを採用する場合には、冷却ファンを高速に回転させたりすることが考えられる。これによって、特許文献1に記載のプロジェクターは、製品の大型化や、高騒音化する恐れがある。近年、投写される画像の高輝度化に伴って、この課題は顕著になっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、光源から射出された光束を変調して投写するプロジェクターであって、前記光束を偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光に分離し、第1方向に沿って複数配置される偏光分離膜、前記偏光分離膜で分離されたいずれか一方の直線偏光光を反射し、前記第1方向に沿って前記偏光分離膜と交互に配置される反射膜、および他方の直線偏光光を前記一方の直線偏光光に変換する位相差板を有する偏光変換素子と、前記偏光変換素子を保持する保持部材と、前記保持部材の前記光束が入射する側に配置され、前記偏光分離膜に向かう前記光束を通過させる第1の開口部、および前記反射膜に向かう前記光束を遮光する第1遮光部を有する遮光部材と、前記偏光変換素子から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、を備え、前記遮光部材は、前記保持部材より反射率の高い材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、偏光変換素子は、光源から射出された光束を一種類の直線偏光光に揃えて射出するので、プロジェクターは、光源から射出された光束を有効に利用して変調し、投写することが可能となる。また、遮光部材は、保持部材より反射率の高い材料で形成されているので、所望の直線偏光光に変換されずに不要となる光束を効率よく反射し、保持部材および偏光変換素子の温度上昇を抑制することが可能となる。よって、偏光変換素子は、位相差板等の温度劣化が抑制され、光源から射出された光束を安定して所望の直線偏光光に揃えて射出することが可能となる。したがって、プロジェクターは、高品位な画質を維持してスクリーンへの画像の投影が可能となる。また、偏光変換素子を冷却するための冷却装置の小型化や、冷却装置に備えられた冷却ファンの低速回転駆動が可能となるので、プロジェクターの小型化や低騒音化が図れる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記保持部材は、前記第1の開口部を通過した前記光束を通過させる第2の開口部、および前記第1遮光部に積層配置される第2遮光部を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、保持部材は、遮光部材の第1の開口部から通過した光束を第2の開口部から通過させて偏光変換素子に到達させ、遮光部材の第1遮光部で遮光しきれなかった不要となる光束を第2遮光部で遮光することが可能となる。よって、光源から射出された光束を有効に利用しつつ、さらに偏光変換素子の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記遮光部材は、前記光束の光軸および前記第1方向に直交する第2方向において、大きさが異なる複数の前記第1の開口部を有していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1の開口部の第2方向における大きさを、光変調装置の視野角特性に対応して形成することで、偏光変換素子の温度上昇を抑制しつつ、投写される画像のコントラストを向上させることが可能となる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記偏光変換素子は、光束が入射する光束入射側端面に前記光束の一部を遮光する薄膜が形成され、前記薄膜は、前記偏光分離膜に向かう前記光束を通過させる第3の開口部を有して形成され、前記第1の開口部は、前記第3の開口部の縁部の少なくとも一部が露出するように形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、偏光変換素子の光束入射側端面には、第3の開口部を有する薄膜が形成され、第1の開口部は、第3の開口部の縁部の少なくとも一部が露出するように形成されている。そして、薄膜を、例えば蒸着等により形成することで、第3の開口部は、第1の開口部より精度良く形成される。これによって、第1の開口部より露出する第3の開口部の縁部により、光源から射出された光束の通過と遮光をより精度良く行うことが可能となる。よって、偏光変換素子の温度上昇を抑制しつつ、投写される画像のコントラストをさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態の偏光変換ユニットの斜視図。
【図3】第1実施形態の偏光変換ユニットの分解斜視図。
【図4】第1実施形態の偏光変換ユニットを上方から見た断面図。
【図5】第1実施形態における偏光変換ユニット近傍の光学ユニットを示す断面図。
【図6】第2実施形態の薄膜が形成された領域を説明するための図であり、(a)は、偏光変換素子の斜視図、(b)は、保持部材に保持された偏光変換素子の斜視図。
【図7】第2実施形態の偏光変換ユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、第1施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調してスクリーン等に拡大投写する。
図1は、本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、プロジェクター1は、外装を構成する外装筐体2、制御部(図示省略)、光源装置31を有する光学ユニット3、および光源装置31や制御部に電力を供給する電源装置4等を備えている。なお、図示は省略するが、外装筐体2の内部には、光学ユニット3等を冷却するための、冷却ファン等を備える冷却装置等が配置されている。
【0017】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピューターとして機能するものであり、プロジェクター1の動作の制御、例えば、画像の投写に関わる制御等を行う。
【0018】
光学ユニット3は、制御部による制御の下、光源装置31から射出された光束を光学的に処理して投写する。
光学ユニット3は、図1に示すように、光源装置31に加え、インテグレーター照明光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34、電気光学装置35、投写レンズ36、およびこれらの光学部品31〜36を光路上の所定位置に配置する光学部品用筐体37を備える。
【0019】
光学ユニット3は、図1に示すように平面視略L字状に形成され、一方の端部に光源装置31が着脱可能に配置され、他方の端部に投写レンズ36が配置される。なお、以下では、説明の便宜上、光源装置31から光束が射出される方向を+X方向、投写レンズ36から光束が射出される方向を+Y方向(前方向)、プロジェクター1が机上等に据え置かれた据置姿勢における上方を+Z方向(上方向)として記載する。また、Y方向を第1方向、Z方向を第2方向とし、X方向は、光源装置31から射出された光束の光軸Cに沿う方向となる。
【0020】
光源装置31は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源311、リフレクター312および光透過部材としての平行化レンズ313等を備えている。光源装置31は、光源311から射出された光束をリフレクター312にて反射した後、平行化レンズ313よって射出方向を揃え、インテグレーター照明光学系32に向けて射出する。
【0021】
インテグレーター照明光学系32は、第1レンズアレイ321、第2レンズアレイ322、偏光変換ユニット5、および重畳レンズ324を備える。
第1レンズアレイ321は、光源装置31から射出された光束を複数の部分光束に分割する光学素子であり、光軸Cに対して略直交する面内にマトリクス状に配列される複数の小レンズを備えている。
【0022】
第2レンズアレイ322は、第1レンズアレイ321と略同様の構成を有しており、重畳レンズ324とともに、第1レンズアレイ321から射出された部分光束を後述する液晶ライトバルブ351の表面に重畳させる。
【0023】
偏光変換ユニット5は、第2レンズアレイ322を透過したランダム偏光光を液晶ライトバルブ351で利用可能な略1種類の直線偏光光に揃える機能を有する。偏光変換ユニット5については、後で詳細に説明する。
【0024】
色分離光学系33は、2枚のダイクロイックミラー331,332、および反射ミラー333を備え、インテグレーター照明光学系32から射出された光束を赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)、青色光(以下「B光」という)の3色の色光に分離する機能を有する。
【0025】
リレー光学系34は、入射側レンズ341、リレーレンズ343、および反射ミラー342,344を備え、色分離光学系33で分離されたR光をR光用の液晶ライトバルブ351Rまで導く機能を有する。なお、光学ユニット3は、リレー光学系34がR光を導く構成としているが、これに限らず、例えば、B光を導く構成としてもよい。
【0026】
電気光学装置35は、光変調装置としての液晶ライトバルブ351および色合成光学装置としてクロスダイクロイックプリズム352を備え、色分離光学系33で分離された各色光を画像情報に応じて変調し、変調した各色光を合成する。
【0027】
液晶ライトバルブ351は、3色の色光毎に備えられており(R光用の液晶ライトバルブを351R、G光用の液晶ライトバルブを351G、B光用の液晶ライトバルブを351Bとする)、それぞれ透過型の液晶パネル、およびその両面に配置された入射側偏光板、射出側偏光板を有している。
【0028】
液晶ライトバルブ351は、図示しない微小画素がマトリクス状に形成された矩形状の画素領域を有し、各画素が表示画像信号に応じた光透過率に設定され、画素領域内に表示画像を形成する。そして、色分離光学系33で分離された各色光は、液晶ライトバルブ351にて変調された後、クロスダイクロイックプリズム352に射出される。
【0029】
クロスダイクロイックプリズム352は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。クロスダイクロイックプリズム352は、誘電体多層膜が液晶ライトバルブ351R,351Bにて変調された色光を反射し、液晶ライトバルブ351Gにて変調された色光を透過して、各色光を合成する。
【0030】
投写レンズ36は、複数のレンズを有して構成され、クロスダイクロイックプリズム352にて合成された光をスクリーン上に拡大投写する。
【0031】
電源装置4は、詳細な説明は省略するが、電源ブロックおよび光源装置31を駆動する光源駆動ブロックを備え、制御部および光源311等の電子部品に電力を供給する。
【0032】
光学部品用筐体37は、詳細な説明は省略するが、上方に開口部を有し、容器状に形成された下部筐体371、および下部筐体371の開口部を閉塞するように形成された上部筐体372(いずれも図5に一部を示す)を備えている。
下部筐体371は、外装筐体2の底面に沿って配置される底面部3711と、底面部3711の端縁から起立する側面部3712(いずれも図5参照)とを有している。下部筐体371は、側面部3712の内壁面に複数の溝が設けられており、第1レンズアレイ321等の各光学部品は、側端部がこの溝に挿入されて配置される。
【0033】
ここで、偏光変換ユニット5について詳細に説明する。
図2は、偏光変換ユニット5の斜視図である。図3は、偏光変換ユニット5の分解斜視図である。
偏光変換ユニット5は、図2、図3に示すように、偏光変換素子6、保持部材7、および遮光部材8を備えている。
【0034】
先ず、偏光変換素子6について説明する。
図4は、偏光変換ユニット5を上方(+Z方向)から見た断面図であり、+Y側の端部側を省略した図である。なお、図4においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜異ならせてある。
【0035】
偏光変換素子6は、図3、図4に示すように、偏光変換素子アレイ61、および位相差板62を備え、Y方向(第1方向)およびZ方向(Z方向)において光軸Cを中心に略対称に形成されている。
偏光変換素子アレイ61は、断面が平行四辺形の柱状の透光性部材がY方向(第1方向)に沿って複数貼り合わされた形状を有しており、界面には、図4に示すように、偏光分離膜61Sと反射膜61Rとが交互に設けられている。
【0036】
偏光変換素子アレイ61は、光束が入射する側の光束入射側端面6A、および光束入射側端面6Aと略平行に形成され、光束が射出される光束射出側端面6Bを有している。偏光分離膜61Sおよび反射膜61Rは、光軸Cに対して略45°の角度をなすように形成され、第1方向に沿って交互に配置される。
【0037】
偏光分離膜61Sは、光源311から射出された光束を偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光に分離する。具体的に、偏光分離膜61Sは、第1の直線偏光光としてのS偏光光を反射し、第2の直線偏光光としてのP偏光光を透過して光源311から射出された光束を分離する。
反射膜61Rは、偏光分離膜61Sで分離されたS偏光光を反射する。
【0038】
位相差板62は、有機の延伸フィルムを有して構成され、偏光変換素子アレイ61の光束射出側端面6Bに配置されている。位相差板62は、偏光分離膜61Sに対応する領域(偏光分離膜61Sを通過した光束が射出される領域)に接着などによって固定され、偏光分離膜61Sで分離されたP偏光光をS偏光光に変換する。
【0039】
偏光変換素子アレイ61は、光束入射側端面6Aの偏光分離膜61Sに対応する領域(有効領域6E)に入射する光束をS偏光光に揃えて射出し、反射膜61Rに対応する領域(無効領域6U)においては、入射する光束を所望のS偏光光に変換しない。この有効領域6Eおよび無効領域6Uは、図3に示すように、Z方向がY方向より長い長方形状を有し、所定間隔でY方向(第1方向)に沿って交互に配置される。
【0040】
有効領域6Eは、具体的に、図3、図4に示すように、光軸Cを含む領域に形成される有効領域6Ea、光軸Cから離れる方向に順次形成される一対の有効領域6Eb,6Ec(図4においては、+Y側の有効領域6Ecを省略する)を有している。
そして、無効領域6Uは、有効領域6Ea、6Eb,6Ecの間、および有効領域6Ecの外側に形成される。
【0041】
次に、保持部材7について詳細に説明する。
保持部材7は、鋼材やAl合金製等の板金で形成され、接着剤を介して偏光変換素子6を保持すると共に、光源311から射出された光束の一部を遮光する。
保持部材7は、図3に示すように、第2遮光部としての正面部71、正面部71の上端から+X方向に屈曲された上面部72、および正面部71の下端から+X方向に屈曲された下面部73を有している。
【0042】
正面部71は、偏光変換素子6の光束入射側端面6Aを覆う大きさに形成され、光束が通過する複数の第2の開口部71a,71b,71cが形成されている。
第2の開口部71a,71b,71cは、偏光変換素子6の有効領域6Ea,6Eb,6Ecにそれぞれ対応して形成されている。
【0043】
具体的に、第2の開口部71a,71b,71cは、有効領域6Ea,6Eb,6Ecと同等の大きさに形成され、第2の開口部71a,71b,71cを通過した光束が有効領域6Ea,6Eb,6Ecに入射されるように形成されている。つまり、第2の開口部71a,71b,71cは、偏光分離膜61Sに向かう光束を通過させるように形成されている。そして、保持部材7は、第2の開口部71a,71b,71c以外の正面部71で光束を遮光することとなる。
【0044】
第2の開口部71aの上端、下端の+Y側角部には、図3に示すように、内側に突出する位置合わせ部712がそれぞれ形成されている。それぞれの位置合わせ部712は、Y方向に沿う端面712Y、およびZ方向に沿う端面712Zを有して形成されている。
また、正面部71の下端の両側には、下方に突出する一対の突起部711が形成されている。
【0045】
上面部72は、図2に示すように、偏光変換素子6の上方に位置するように形成され、Y方向における両端には、下方に屈曲された突起部721が設けられている。
下面部73は、図3に示すように、一対の突起部711の間に設けられ、偏光変換素子6の下方に位置するように形成されている。
【0046】
偏光変換素子6は、Y方向における中心となる透明性部材の境界と端面712Zとが一致するように位置合わせされ、光束入射側端面6Aと正面部71の+X側との間にUV接着剤が配置されて保持部材7に固定される。
【0047】
次に、遮光部材8について詳細に説明する。
遮光部材8は、保持部材7より反射率の高い部材で形成され、保持部材7の光束が入射する側に配置される。遮光部材8は、光源311から射出された光束の一部を遮光する。本実施形態の遮光部材8は、アルミニウムの板材にアルミニウムの薄膜が蒸着された構成を有し、光束の反射率が95%程度の部材が採用されている。なお、遮光部材8は、アルミニウム材に限らず、保持部材7より反射率の高い部材で形成されていれば、他の部材を用いてもよい。
【0048】
遮光部材8は、図3に示すように、第1遮光部としての正面部81、正面部81の上端に設けられた複数の爪部82、および正面部81の下端から+X方向に屈曲された屈曲部83を有している。
【0049】
正面部81は、図2に示すように、保持部材7の正面部71に対して上端側が小さく形成され、正面部71の光束が入射する側に積層配置される。そして、正面部81には、図3に示すように、光束が通過する第1の開口部81a,81b,81cが形成されている。
【0050】
第1の開口部81a,81b,81cは、保持部材7の第2の開口部71a,71b,71cに対応して形成され、光源311から射出された光束が通過する。そして、遮光部材8は、第1の開口部81a,81b,81c以外の正面部81で光束を遮光することとなる。
【0051】
第1の開口部81a,81b,81cは、Y方向(第1方向)における大きさが第2の開口部71a,71b,71cと同等に形成され、Z方向(第2方向)においては、それぞれが異なる大きさに形成されている。
【0052】
具体的に、第1の開口部81aは、−X方向から見て第2の開口部71aの下端部と略同一の位置から正面部81の上端まで形成されている。つまり、遮光部材8は、第1の開口部81aの下方の正面部81および屈曲部83で、光軸Cの+Y側を形成する部位と、−Y側を形成する部位とが繋がるような形状を有している。
そして、第1の開口部81bは、第1の開口部81aより上下が小さく、第1の開口部81cは、第1の開口部81bより上下が小さく形成されている。換言すると、第1の開口部81a,81b,81cは、光軸Cから遠ざかる程、Z方向(第2方向)が小さく形成されている。
【0053】
そして、遮光部材8は、第1の開口部81a,81b,81cがZ方向(第2方向)において異なる大きさに形成されることによって、液晶ライトバルブ351の視野角特性に対応して液晶ライトバルブ351に入射する光束を制限している。すなわち、正面部81は、光束入射側端面において、光軸Cを通るZ方向の中心軸に対して略45°の方向から入射する光束を制限している。
【0054】
また、正面部81には、図3に示すように、光軸Cの+Y側の第1の開口部81bの下方に、保持部材7側に突出し、第2の開口部71bに挿入可能な位置決め部811が形成されている。
【0055】
爪部82は、図2、図3に示すように、正面部81の上端から突出して複数設けられ、保持部材7の第2の開口部71b,71cの上側の部位に挿入可能となるように、+X側に屈曲されている。
遮光部材8は、爪部82が第2の開口部71b,71cの上側に挿入され、位置決め部811が第2の開口部71bに挿入されて位置決めされ、UV接着剤によって保持部材7に固定される。
【0056】
図5は、偏光変換ユニット5近傍の光学ユニット3を示す断面図である。
光学部品用筐体37は、前述したように、下部筐体371、および上部筐体372を備え、下部筐体371には、底面部3711および側面部3712が形成されている。
底面部3711には、保持部材7の突起部711が挿入される穴(図示省略)が形成され、側面部3712の上面には、保持部材7の突起部721が挿入される穴(図示省略)が形成されている。偏光変換ユニット5は、突起部711,721が底面部3711、側面部3712の穴にそれぞれ挿入され、図5に示すように、下部筐体371に配置される。
【0057】
また、底面部3711には、図5に示すように、偏光変換ユニット5の下方に位置する孔(空気導入口3713)が形成され、上部筐体372には、偏光変換ユニット5の上方に位置する孔(空気排出口3721,3722)が形成されている。空気排出口3721は、位相差板62の上方に位置し、空気排出口3722は、遮光部材8の上方に位置するように形成されている。
【0058】
ここで、偏光変換ユニット5に入射する光束の光路について説明する。
光源311から射出され、第2レンズアレイ322を透過した光束は、図4に示すように、一部が第1の開口部81a,81b,81cおよび第2の開口部71a,71b,71cを通過し、一部が正面部81,71によって遮光される。また、正面部71の光路前段側に配置され、正面部71より反射率の高い正面部81は、正面部71より多くの光束を遮光する。
【0059】
第1の開口部81a,81b,81cおよび第2の開口部71a,71b,71cを通過した光束は、有効領域6Eに入射し、偏光分離膜61Sにて、S偏光光が反射し、P偏光光が透過して2つの直線偏光光に分離される。偏光分離膜61Sにて反射したS偏光光は、反射膜61Rにて反射して偏光変換素子アレイ61から射出される。一方、偏光分離膜61Sを透過したP偏光光は、偏光変換素子アレイ61を透過して位相差板62に入射する。位相差板62に入射したP偏光光は、位相差板62にて、S偏光光に変換されて射出される。
【0060】
このように、偏光変換ユニット5は、反射膜61Rに向かう光束、つまり所望の直線偏光光に変換されずに不要となる光束を正面部81,71にて遮光し、偏光分離膜61Sに向かう光束を、第1の開口部81a,81b,81cおよび第2の開口部71a,71b,71cにて通過させる。そして、偏光変換素子6は、第1の開口部81a,81b,81cおよび第2の開口部71a,71b,71cを通過した光束をS偏光光に揃えて射出する。
【0061】
次に、偏光変換ユニット5に送風される空気の流れについて説明する。
偏光変換ユニット5は、図示しない冷却ファンから送風された空気によって冷却される。
具体的に、図5に示すように、冷却ファンから送風された空気は、空気導入口3713から光学部品用筐体37内に導入され、偏光変換ユニット5を冷却した後、空気排出口3721,3722から排出される。より具体的に、空気導入口3713から導入された空気は、偏光変換素子6の光束射出側端面6B側、および遮光部材8の光束が入射する側に流通し、主に位相差板62を冷却して、光学部品用筐体37外に排出される。
【0062】
また、偏光変換ユニット5に送風される空気は、遮光部材8を備えない偏光変換ユニットの構成に比べ、風量や風速が小さく設定されている。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)遮光部材8は、保持部材7より反射率の高い材料で形成されているので、所望の直線偏光光に変換されずに不要となる光束を効率よく反射し、保持部材7および偏光変換素子6の温度上昇を抑制することが可能となる。よって、偏光変換素子6は、位相差板62等の温度劣化が抑制され、光源311から射出された光束を安定して所望の直線偏光光に揃えて射出することが可能となる。したがって、プロジェクター1は、高品位な画質を維持してスクリーンへの画像の投影が可能となる。
また、遮光部材8を備えない偏光変換ユニットの構成に比べ、偏光変換素子6に送風する空気の風量や風速を小さくできるので、冷却装置の小型化や、冷却装置に備えられた冷却ファンの低速回転駆動が可能となり、プロジェクター1の小型化や低騒音化が図れる。
【0064】
(2)保持部材7は、遮光部材8の第1の開口部81a,81b,81cから通過した光束を第2の開口部71a,71b,71cから通過させて偏光変換素子6に到達させ、遮光部材8の正面部81で遮光しきれなかった不要となる光束を平面部71で遮光することが可能となる。よって、光源311から射出された光束を有効に利用しつつ、さらに偏光変換素子6の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0065】
(3)遮光部材8は、第1の開口部81a,81b,81cがZ方向(第2方向)において異なる大きさに形成され、液晶ライトバルブ351の視野角特性に対応して液晶ライトバルブ351に入射する光束を制限している。これによって、遮光部材8は、偏光変換素子6の温度上昇を抑制しつつ、スクリーンに投写される画像のコントラストを向上させることが可能となる。
【0066】
(4)遮光部材8は、爪部82および位置決め部811が保持部材7の第2の開口部71b,71cに挿入されて保持部材7に位置決めされる。これによって、簡素な構成で容易に遮光部材8を保持部材7に位置決めすることが可能となる。
【0067】
(5)遮光部材8の爪部82は、保持部材7に挿入されるので、保持部材7の−X側には、スペースが設けられる。これによって、このスペースを利用して部材、例えば光学フィルター等の光学部品を配置したりすることが可能となる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るプロジェクター1について、図面を参照して説明する。以下の説明では、第1実施形態のプロジェクター1と同様の構造および同様の部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0069】
本実施形態のプロジェクター1は、第1実施形態の偏光変換素子6と構成の異なる偏光変換素子16を備えている。そして、本実施形態の偏光変換ユニット15は、この偏光変換素子16に加え、第1実施形態と同様の保持部材7、および遮光部材8を備えている。
【0070】
偏光変換素子16は、第1実施形態の偏光変換素子6の光束入射側端面6Aの一部に薄膜16Fを有して構成されている。
薄膜16Fは、光束を遮光する材料(例えばアルミニウム、クロムやその合金等)で蒸着により形成され、液晶ライトバルブ351の視野角特性に対応して液晶ライトバルブ351に入射する光束を制限するように形成されている。
【0071】
図6は、薄膜16Fが形成された領域を説明するための図であり、(a)は、偏光変換素子16の斜視図、(b)は、保持部材7に保持された偏光変換素子16の斜視図である。
薄膜16Fは、図6(a)に示すように、第3の開口部16a,16b,16cが設けられるように成膜される。第3の開口部16a,16b,16cは、偏光分離膜61Sに向かう光束を通過させるように形成されている。
【0072】
具体的に、第3の開口部16aは、有効領域6Eaの略全領域が露出するように、第3の開口部16b,16cは、有効領域6Eb,6Ecの上下方向における中央部が露出するように形成されている。また、第3の開口部16cは、第3の開口部16bより小さく形成されている。
【0073】
また、薄膜16Fは、第3の開口部16aの上端、下端に、Y方向に沿う縁部を有するように成膜された位置決め部16Fpを有している。
薄膜16Fは、マスクが用いられて成膜されるが、このマスクが光束入射側端面6Aの面外で繋がるよう、第3の開口部16a,16b,16cに加え、無効領域6U内にも一部が露出するように成膜される。
【0074】
図7は、偏光変換ユニット15の平面図であり、光束が入射する側から見た図である。
偏光変換素子16は、図7に示すように、Y方向における中心となる透明性部材の境界と端面712Zとが一致し、位置決め部16Fpの縁部と端面712Yとが一致するように保持部材7に位置合わせされる。そして、偏光変換素子16は、第1実施形態の偏光変換素子6と同様に、UV接着剤によって保持部材7に固定される。
遮光部材8は、第1実施形態と同様に、保持部材7に固定される。
【0075】
第1の開口部81a,81b,81cは、図7に示すように、第3の開口部16a,16b,16cの上下の縁部が露出するように形成されている。また、第1の開口部81a,81b,81cは、Y方向において、第2の開口部71a,71b,71cの縁部が露出するように形成されている。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、第1実施形態の効果(に加え、以下の効果を得ることができる。
薄膜16Fは、蒸着により形成されるので、第3の開口部16a,16b,16cを第1の開口部81a,81b,81cより精度良く形成することが可能となる。これによって、第1の開口部81a,81b,81cより露出する第3の開口部16a,16b,16cの縁部により、光源311から射出された光束の通過と遮光をより精度良く行うことが可能となる。よって、偏光変換素子16の温度上昇を抑制しつつ、投写される画像のコントラストをさらに向上させることが可能となる。
【0077】
(変形例)
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
前記実施形態では、偏光変換素子6,16および遮光部材8は、保持部材7にそれぞれUV接着剤を用いて固定されているが、接着剤は、UV接着剤に限らず、例えばシリコン系の接着剤や、UV接着剤より熱伝導性が低い接着剤等を用いてもよい。また、接着剤は、1種類に限らず複数種類の接着剤を併用してもよい。
【0078】
前記実施形態のプロジェクター1は、偏光変換素子6が入射する光束をS偏光光に揃えるように構成されているが、P偏光光に揃えるように構成してもよい。
【0079】
遮光部材8の屈曲部83に冷却ファンから送風された空気を導く形状を盛り込み、遮光部材8の表面に空気が効率よく導かれるように形成してもよい。
また、遮光部材8の一部を光学部品用筐体37から突出させ、この突出する部位に空気が流通するように構成してもよい。
【0080】
前記実施形態の偏光変換ユニット5は、第1の開口部81a,81b,81cから第3の開口部16a,16b,16cの上下の縁部が露出するように形成されているが、上下の縁部に限らず他の縁部、例えば、Y方向における縁部が露出するように構成してもよい。
【0081】
前記実施形態の第1の開口部81a,81b,81cは、Z方向(第2方向)において異なる大きさに形成されているが、同等の大きさとなるように形成してもよい。
また、前記実施形態の正面部71に第2の開口部71a,71b,71c以外の開口部を設けてもよい。
【0082】
前記実施形態のプロジェクター1は、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブ351を用いているが、反射型液晶ライトバルブを利用したものであってもよい。
【0083】
光源311は放電型のランプに限らず、その他の方式のランプや発光ダイオード等の固体光源で構成してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…プロジェクター、3…光学ユニット、5,15…偏光変換ユニット、6,16…偏光変換素子、7…保持部材、8…遮光部材、16F…薄膜、16a,16b,16c…第3の開口部、31…光源装置、35…電気光学装置、61…偏光変換素子アレイ、61R…反射膜、61S…偏光分離膜、62…位相差板、71,81…正面部、71a,71b,71c…第2の開口部、81a,81b,81c…第1の開口部、311…光源、351,351B,351G,351R…液晶ライトバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光束を変調して投写するプロジェクターであって、
前記光束を偏光方向が互いに直交する2種類の直線偏光光に分離し、第1方向に沿って複数配置される偏光分離膜、前記偏光分離膜で分離されたいずれか一方の直線偏光光を反射し、前記第1方向に沿って前記偏光分離膜と交互に配置される反射膜、および他方の直線偏光光を前記一方の直線偏光光に変換する位相差板を有する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子を保持する保持部材と、
前記保持部材の前記光束が入射する側に配置され、前記偏光分離膜に向かう前記光束を通過させる第1の開口部、および前記反射膜に向かう前記光束を遮光する第1遮光部を有する遮光部材と、
前記偏光変換素子から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
を備え、
前記遮光部材は、前記保持部材より反射率の高い材料で形成されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記保持部材は、前記第1の開口部を通過した前記光束を通過させる第2の開口部、および前記第1遮光部に積層配置される第2遮光部を有していることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクターであって、
前記遮光部材は、前記光束の光軸および前記第1方向に直交する第2方向において、大きさが異なる複数の前記第1の開口部を有していることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記偏光変換素子は、光束が入射する光束入射側端面に前記光束の一部を遮光する薄膜が形成され、
前記薄膜は、前記偏光分離膜に向かう前記光束を通過させる第3の開口部を有して形成され、
前記第1の開口部は、前記第3の開口部の縁部の少なくとも一部が露出するように形成されていることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11790(P2013−11790A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145375(P2011−145375)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】