説明

プロジェクター

【課題】光変調装置への応力を低減して光変調装置を配置するプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクターは、入射する光を画像情報に応じて変調する光変調装置342と、光変調装置342が取り付けられる支持部5と、光変調装置342と支持部5との間に配置される緩衝部材6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の色光を色光毎に変調する複数の光変調装置と、各光変調装置にて変調された色光を合成する色合成光学装置と、色合成光学装置にて合成された光を投写する投写レンズとを備えたプロジェクターが知られている。そして、この光変調装置を支持する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のプロジェクターは、3色の色光毎にそれぞれ設けられた反射型光変調装置、反射型偏光板、偏光板、取付部材、および各反射型光変調装置によって変調された各色光を合成する色合成光学装置を備えている。取付部材は、三角柱状に形成され、各色光用の反射型光変調装置、反射型偏光板、および偏光板が固定されている。反射型光変調装置は、反射型液晶パネルとこの反射型液晶パネルを保持する保持枠とを備え、保持枠が取付部材にネジ固定されることにより、取付部材に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−8638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、反射型光変調装置が取付部材にネジ固定される構成のため、ネジが締められる際に保持枠と取付部材との間に応力が発生して反射型光変調装置に歪が生じる恐れがある。反射型光変調装置に歪が生じると、投写される画像の画質が劣化するという課題がある。また、反射型光変調装置に歪が生じないように、保持枠および取付部材の剛性を高めると装置が大型化したり重量が重くなったりするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクターは、入射する光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置が取り付けられる支持部と、前記光変調装置と前記支持部との間に配置される緩衝部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、光変調装置と支持部との間には、緩衝部材が配置されるので、緩衝部材が配置されず、光変調装置が直接、支持部に取り付けられる構成に比べ、光変調装置が支持部に取り付けられる際の双方の部材の間に発生する応力を低減することが可能となる。すなわち、例えば、光変調装置が直接、支持部にネジ固定される場合、ネジ締めによって応力が発生し、光変調装置が直接、支持部に接着固定される場合、接着剤の硬化収縮によって応力が発生する。これに対し、本適用例によれば、緩衝部材によって光変調装置と支持部との間に発生する応力の吸収が可能となるので、光変調装置は、応力による歪が抑制され、光学特性の劣化を抑制して入射する光を変調することが可能となる。したがって、プロジェクターは、高品位の画像の投影が可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に記載のプロジェクターにおいて、前記緩衝部材は、多孔質の弾性材料により形成されていることが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、緩衝部材は、多孔質の弾性材料により形成されているので、多孔を有しない、つまり、空気が侵入する領域を有しない弾性材料で形成された緩衝部材に比べ、反発力が小さく形成される。これによって、光変調装置を支持部に取り付ける際に緩衝部材の反力が小さく、光変調装置を支持部に安定して取り付けることが可能となる。また、光変調装置や支持部が光源からの光束の照射によって温度上昇した際にも、緩衝部材の反力が小さいので、光変調装置と支持部との間に発生する応力も小さく、光変調装置は、光学特性の劣化を抑制して、入射する光を変調することが可能となる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記緩衝部材は、収縮可能な量が加えられる荷重に対する変形量を超えるような厚みを有していることが好ましい。
【0012】
緩衝部材には、所望の形状に形成される際や、光変調装置が支持部に取り付けられる際等に荷重が加わることとなる。また、緩衝部材には、支持部に支持される光変調装置の自重が加わる。
本適用例によれば、緩衝部材は、収縮可能な量がこれらの加えられる荷重に対する変形量を超えるような厚みを有しているので、光変調装置と支持部との間に発生する応力を確実に低減することが可能となる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクターにおいて、前記支持部は、前記光変調装置を支持する支持ピンを備え、前記緩衝部材は、前記支持ピンが挿通される挿通孔を有し、前記光変調装置は、前記挿通孔から突出する前記支持ピンが挿入される案内孔を有し、前記案内孔に注入された接着剤により前記支持ピンを介して、前記支持部に固定されることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、光変調装置は、支持ピンに支持されて支持部に接着固定されるので、ネジ固定されるより応力が小さく、つまり歪が小さく支持部に取り付けられる。そして、接着剤は、支持ピンが挿入された案内孔に注入され、光変調装置と支持部との間には、支持ピンが挿通された緩衝部材が配置される。これによって、接着剤が注入される箇所と、緩衝部材とを近づけて構成することが可能となる。よって、接着剤の硬化収縮によって生じる光変調装置と支持部との間に発生する応力を効率よく吸収することが可能となる。よって、光変調装置は、光学特性の劣化をさらに抑制して、入射する光を変調することが可能となる。
また、緩衝部材は、挿通孔に支持ピンが挿通される構成なので、容易な組立で所望の位置に確実に緩衝部材を配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のプロジェクターの概略構成を示す模式図。
【図2】本実施形態の電気光学装置の斜視図。
【図3】本実施形態の電気光学装置の分解斜視図。
【図4】本実施形態の電気光学装置の分解斜視図。
【図5】本実施形態の電気光学装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、第1実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照して説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調してスクリーン等に投写する。
図1は、本実施形態のプロジェクター1の概略構成を示す模式図である。
プロジェクター1は、図1に示すように、外装を構成する外装筐体2、光源装置31を有する光学ユニット3を備えている。なお、図示は省略するが、外装筐体2内には、制御部、光源装置31や制御部に電力を供給する電源装置、および外装筐体2内部を冷却する冷却ファン等が配置されている。
【0017】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備え、コンピューターとして機能するものであり、プロジェクター1の動作の制御を行う。
【0018】
〔光学ユニットの主な構成〕
光学ユニット3は、制御部による制御の下、光源装置31から射出された光束を光学的に処理して投写する。
光学ユニット3は、図1に示すように、光源装置31に加え、照明光学装置32、色分離光学装置33、光学装置34、投写レンズ35、およびこれらの光学部品を光路上の所定位置に配置する光学部品用筐体36を備えている。
【0019】
光源装置31は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源311およびリフレクター312等を備えている。そして、光源装置31は、光源311から射出された光束をリフレクター312によって射出方向を揃え、照明光学装置32に向けて射出する。
【0020】
照明光学装置32は、第1レンズアレイ321、第2レンズアレイ322、偏光変換素子323、および重畳レンズ324を備えている。
第1レンズアレイ321は、マトリックス状に配列された複数の小レンズを有して構成されており、光源装置31から射出された光束を複数の光束に分割する。第2レンズアレイ322は、第1レンズアレイ321と略同様の構成を有しており、重畳レンズ324とともに、入射する光束を後述する反射型液晶パネル3421(図4参照)に略重畳させる。
偏光変換素子323は、第2レンズアレイ322から射出されたランダム偏光光を反射型液晶パネル3421で利用可能な第1の直線偏光光に揃える機能を有する。
【0021】
色分離光学装置33は、クロスダイクロイックミラー331、G光反射ダイクロイックミラー332、および反射ミラー333,334を備え、照明光学装置32から射出された光束を赤色光(以下「R光」という)、緑色光(以下「G光」という)、青色光(以下「B光」という)の3色の色光に分離する機能を有する。
【0022】
クロスダイクロイックミラー331は、B光反射ダイクロイックミラー331B、およびGR光反射ダイクロイックミラー331GRが平面視X字状に配置されて構成されている。クロスダイクロイックミラー331は、照明光学装置32から射出された光束のうち、B光をB光反射ダイクロイックミラー331Bにて反射し、G光およびR光をGR光反射ダイクロイックミラー331GRにて反射して、入射する光束を分離する。
【0023】
B光反射ダイクロイックミラー331Bにて反射されたB光は、反射ミラー333によって反射され、後述する電気光学装置340Bに射出される。一方、GR光反射ダイクロイックミラー331GRによって反射されたG光およびR光は、反射ミラー334によって反射された後、G光反射ダイクロイックミラー332に入射する。
【0024】
G光反射ダイクロイックミラー332は、反射ミラー334によって反射されたG光およびR光のうち、G光を反射し、R光を透過して入射する光束を分離する。
そして、G光反射ダイクロイックミラー332にて反射されたG光は、後述する電気光学装置340Gに射出され、G光反射ダイクロイックミラー332を透過したR光は、後述する電気光学装置340Rに射出される。
【0025】
光学装置34は、3色の色光毎に備えられた電気光学装置340(R光用の電気光学装置を340R、G光用の電気光学装置を340G、B光用の電気光学装置を340Bとする)、および色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム345を備えている。
電気光学装置340R,340G,340Bは、色分離光学装置33で分離された各色光を画像情報に応じてそれぞれ変調し、クロスダイクロイックプリズム345に射出する。
【0026】
クロスダイクロイックプリズム345は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層膜が形成されている。クロスダイクロイックプリズム345は、誘電体多層膜が電気光学装置340R,340Bにて変調されたR光、B光を反射し、電気光学装置340Gにて変調されたG光を透過して、各色光を合成する。
【0027】
投写レンズ35は、複数のレンズを組み合わせた組レンズとして構成され、クロスダイクロイックプリズム345にて合成された光をスクリーン上に拡大投写する。
【0028】
〔電気光学装置の構成〕
ここで、電気光学装置340について詳細に説明する。
電気光学装置340R,340G,340Bは、同様の構成を有して構成されており、ここでは、電気光学装置340Gの図面を示して説明する。
図2は、電気光学装置340Gの斜視図であり、(a)は、後述する光変調装置342側から見た図、(b)は、後述する反射型偏光板3411側から見た図である。図3、図4は、電気光学装置340Gの分解斜視図である。
【0029】
電気光学装置340Gは、図2〜図4に示すように、反射型偏光板ユニット341、光変調装置342、偏光板ユニット343、光学補償素子ユニット344、支持部5および緩衝部材6を備えている。
【0030】
反射型偏光板ユニット341は、図2(b)に示すように、反射型偏光板3411、保持部材3412および押さえ板3413を備えている。
反射型偏光板3411は、ガラス基板上にアルミニウム等からなる微細な線状リブを平行に多数配列したワイヤグリッド型の構成になっている。反射型偏光板3411は、図2(b)に示すように、保持部材3412と押さえ板3413とに挟持され、支持部5に固定される。
【0031】
そして、反射型偏光板3411は、線状リブの延出方向に対して垂直な偏光方向の偏光光を透過し、線状リブの延出方向に平行な偏光方向の偏光光を反射する。本実施形態の反射型偏光板3411は、偏光変換素子323で揃えられ、色分離光学装置33で分離された第1の直線偏光光である色光を透過し、第1の直線偏光光と略直交する第2の直線偏光光を反射する。なお、反射型偏光板3411の光路前段側に位相差板を配置し、反射型偏光板3411が第2の直線偏光光を透過し、第1の直線偏光光を反射するように構成してもよい。
【0032】
光変調装置342は、図3、図4に示すように、反射型液晶パネル3421、フレキシブル基板(図示省略)、保持枠4およびヒートシンク3422を備えている。
反射型液晶パネル3421は、反射型偏光板3411および後述する光学補償素子3441を透過した第1の直線偏光光である色光を画像情報に応じて変調し、反射型偏光板3411に向けて反射する。反射型液晶パネル3421は、対向する基板間に液晶層が挟持された構造を有する、反射型の高温ポリシリコンTFT液晶パネルや、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)で構成されている。
【0033】
反射型液晶パネル3421は、保持枠4に保持されて支持部5に固定され、フレキシブル基板(図示省略)を介して制御部に接続される。そして、反射型液晶パネル3421は、対向する基板の一方の基板となる透明基板の表面3421A(図4参照)から入射する光を変調する。
【0034】
保持枠4は、反射型液晶パネル3421を保持する部材であり、後述する支持本体51に取り付けられる。保持枠4は、マグネシウム等の高耐熱で熱伝導性が高い材料で形成されており、図4に示すように、平面視矩形状に形成され、内部に反射型液晶パネル3421が収納される。保持枠4には、反射型液晶パネル3421の表面3421Aが露出する開口部41が形成され、四隅には、後述する支持ピン52が挿入される案内孔42が設けられている。
【0035】
ヒートシンク3422は、アルミニウム等の熱伝導性が良好な材料から形成されている。ヒートシンク3422は、図3に示すように、板状に形成された部位から突出する複数のフィンを有して形成されている。ヒートシンク3422は、フィンが形成されている側の反対側が熱伝導シート3423を介して保持枠4に貼付される。そして、ヒートシンク3422は、反射型液晶パネル3421および保持枠4から伝達される熱を放出する。
【0036】
光学補償素子ユニット344は、図3、図4に示すように、光学補償素子3441および保持板7を備えている。
光学補償素子3441は、保持板7に保持され、反射型偏光板ユニット341と光変調装置342との間で支持部5に固定される。そして、光学補償素子3441は、反射型液晶パネル3421にて正確に変調できなかった色光の位相のずれを補償し、投写される画像のコントラスト向上に寄与する。反射型液晶パネル3421にて変調され、光学補償素子3441を透過した色光の内、第2の直線偏光光は、反射型偏光板3411にて反射される。
【0037】
保持板7は、光学補償素子3441を保持し、位置調整可能に支持部5に取り付けられる。保持板7は、板金から加工されて形成されており、図4に示すように、平面視矩形状の基部71、および基部71から突出する腕部72,73および把持部74を有している。
基部71には、中央部に光が通過する開口部711が形成され、光学補償素子3441は、この開口部711を閉塞するように基部71に接着固定される。
【0038】
腕部72,73は、基部71の対向する角部から延出して形成されており、それぞれの先端は、反射型偏光板ユニット341側に屈曲され、この屈曲されている部位には、丸孔が形成されている。
把持部74は、光学補償素子3441が位置調整される際に把持される部位であり、図4に示すように、図面視における基部71の上端中央部から突出し、基部71に対して略直交するように屈曲されている。
【0039】
偏光板ユニット343は、図3、図4に示すように、偏光板3431および保持板3432を備えている。
偏光板3431は、中央部に開口部を有する板状の保持板3432に接着固定され、支持部5に固定される。偏光板3431は、反射型偏光板3411にて反射された第2の直線偏光光を透過する。すなわち、偏光板3431は、反射型偏光板3411にて反射された色光に所望の偏光光以外の偏光成分が含まれた場合であっても、所望以外の偏光成分を除去し、投写される画像のコントラスト向上に寄与する。
【0040】
支持部5は、反射型偏光板ユニット341、光変調装置342、偏光板ユニット343、および光学補償素子ユニット344を支持する。
支持部5は、図3、図4に示すように、支持本体51、および支持ピン52を備えている。
支持本体51は、アルミニウム等の高耐熱で熱伝導性が高い材料で形成されている。支持本体51は、断面が略直角二等辺三角形の三角柱状に形成された中空部材であり、図3、図4に示すように、頂角に対向する面を有する第1側面部51A、頂角の両側をそれぞれ形成する第2側面部51B、第3側面部51Cを有している。
【0041】
第1側面部51A、第2側面部51B、および第3側面部51Cには、光が通過する開口部がそれぞれ形成されている。
第2側面部51Bの四隅には、図3に示すように、保持枠4の案内孔42に対応する位置に形成されたネジ溝を有するネジ孔511が設けられている。また、第2側面部51Bには、図3の図面視における上側中央部に切欠き512が形成され、右側下部および左側上部に凹部513,514が形成されている。
【0042】
また、図4に示すように、凹部513近傍の第3側面部51Cには、円柱状の突起515が設けられ、図3に示すように、凹部514近傍には、突起515と反対方向に突出する円柱状の突起516が設けられている。光学補償素子ユニット344は、把持部74が切欠き512に挿入され、腕部72,73が凹部514,513にそれぞれ挿入される。そして、光学補償素子ユニット344は、腕部72,73の丸孔に突起516,515が挿入されて位置調整された後、支持本体51に接着固定される。
【0043】
支持ピン52は、一方の端部が支持本体51のネジ孔511に螺合され、他方の端部が支持本体51から突出するように形成されている。
支持ピン52は、支持本体51より剛性の高い材料で形成されている。本実施形態の支持ピン52は、ステンレス材で形成されている。支持ピン52は、図3に示すように、ネジ孔511に螺合するネジ部521、ネジ部521より外径が大きい座部522、および座部522より外径が小さく、ネジ部521の反対側に突出する突出部523を有している。なお、支持ピン52は、ステンレス材に限らず、支持本体51より剛性の高い材料であればよい。
【0044】
図5は、電気光学装置340Gの断面図である。
突出部523は、光変調装置342を支持する部位であり、図5に示すように、保持枠4の案内孔42に挿入可能に形成されている。突出部523は、先端部の外周面523Aがテーパー状に形成され、この先端部の中央部には、溝5231が設けられている。支持ピン52は、この溝5231にマイナスドライバーの先端が挿入されて支持本体51に螺合される。
【0045】
緩衝部材6は、多孔質の弾性材料により形成され、図5に示すように、光変調装置342と支持本体51との間に配置される。本実施形態の緩衝部材6は、ウレタン樹脂製の発泡材が使用されており、多孔を有しない、つまり、空気が侵入する領域を有しないゴム等の弾性部材に対し、反発力が小さく形成されている。
緩衝部材6は、支持ピン52に対応して配置されている。緩衝部材6は、ロール状に巻かれた板状の母材や、大判状の板材の母材から切断されて形成されている。緩衝部材6は、図3に示すように、平面視円形の板状に形成され、中央には、突出部523が挿通される挿通孔61が形成されている。
緩衝部材6は、図5に示すように、支持本体51に取り付けられた支持ピン52が挿通孔61に挿通され、支持本体51に載置される。
【0046】
光変調装置342は、挿通孔61から突出する突出部523が案内孔42に挿入され、図5の図面視において、支持本体51に載置された緩衝部材6の上方に配置される。反射型液晶パネル3421は、表面3421A(図4参照)が第2側面部51Bの開口部から支持本体51の内側に露出した状態となる。そして、光変調装置342は、図5に示すように、案内孔42(突出部523が挿入された側とは反対側)にUV接着剤等の接着剤8が注入されて支持部5に固定される。
【0047】
具体的に、接着剤8は、図5に示すように、突出部523の外周面523Aおよび溝5231と、案内孔42の内面との間に注入される。そして、図5の図面視における外周面523Aの下方の突出部523と案内孔42とは、隙間が詰められて形成されていることにより、接着剤8は、案内孔42の下端から殆どが漏れ出ないようになっている。
このように、光変調装置342は、保持枠4と支持本体51との間に緩衝部材6が配置され、4つの案内孔42に注入された接着剤8により、部分的に支持部5に接着固定される。そして、光変調装置342は、保持枠4が支持本体51に接触しない状態(非接触状態)で、支持ピン52を介して支持本体51に固定される。
【0048】
また、緩衝部材6は、収縮可能な量が加えられる荷重に対する変形量を超えるような厚みを有し、非接触状態が維持されるように形成されている。具体的に、緩衝部材6には、母材から切断加工される際に押圧力が加わり、光変調装置342が緩衝部材6の上方に配置される際に光変調装置342の自重が加わる。そして、緩衝部材6には、案内孔42に注入された接着剤8が硬化収縮する際に保持枠4と支持本体51との間に生じる応力が加わる。そして、緩衝部材6は、これらの荷重が加わっても非接触状態が維持されるような厚みを有している。
【0049】
反射型偏光板ユニット341は、反射型偏光板3411が位置調整された後、第1側面部51Aの開口部を覆うように、第1側面部51Aにネジ固定される。偏光板ユニット343は、第3側面部51Cの開口部を覆うように、第3側面部51Cに接着固定される。
【0050】
電気光学装置340R,340Bは、前述したように、電気光学装置340Gと同様に構成され、緩衝部材6が光変調装置342と支持本体51との間に配置される。そして、電気光学装置340R,340Bの光変調装置342は、非接触状態が維持されるように支持部5にそれぞれ固定される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクター1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)光変調装置342は、保持枠4と支持本体51との間に緩衝部材6が配置され、非接触状態で、支持ピン52を介して支持本体51に固定される。これによって、光変調装置342と支持部5との間に緩衝部材6が介在されず、光変調装置342が直接、支持部5に取り付けられる構成に比べ、光変調装置342が支持部5に取り付けられる際等に双方の部材の間に発生する応力を低減することが可能となる。よって、光変調装置342は、応力による歪が抑制されるので、光学特性の劣化を抑制して入射する光を変調することが可能となる。したがって、プロジェクター1は、高品位の画像の投影が可能となる。
【0052】
(2)緩衝部材6は、多孔質の弾性材料により形成されているので、多孔を有しない、つまり、空気が侵入する領域を有しない弾性材料で形成された緩衝部材6に比べ、反発力が小さく形成される。これによって、光変調装置342を支持部5に取り付ける際に緩衝部材6の反力が小さく、光変調装置342を支持部5に安定して取り付けることが可能となる。また、光変調装置342や支持部5が光源311からの光束の照射によって温度上昇した際にも、緩衝部材6の反力が小さいので、光変調装置342と支持部5との間に発生する応力も小さく、光変調装置342は、光学特性の劣化を抑制して、入射する光を変調することが可能となる。
【0053】
(3)緩衝部材6は、収縮可能な量が加えられる荷重に対する変形量を超えるような厚みを有し、保持枠4と支持本体51とが接触しない非接触状態が維持されるように形成されている。これによって、光変調装置342と支持部5との間に発生する応力を確実に低減することが可能となる。
【0054】
(4)光変調装置342は、支持ピン52に支持されて支持部5に接着固定されるので、ネジ固定されるより応力が小さく、つまり歪が小さく支持部5に取り付けられる。そして、接着剤8は、支持ピン52が挿入された案内孔42に注入され、光変調装置342と支持部5との間には、支持ピン52が挿通された緩衝部材6が配置される。これによって、接着剤8が注入される箇所と、緩衝部材6とを近づけて構成することが可能となる。よって、接着剤8の硬化収縮によって生じる光変調装置342と支持部5との間に発生する応力を効率よく吸収することが可能となる。よって、光変調装置342は、光学特性の劣化をさらに抑制して、入射する光を変調することが可能となる。
また、緩衝部材6は、挿通孔61に支持ピン52が挿通される構成なので、容易な組立で所望の位置に確実に緩衝部材6を配置することが可能となる。
また、光変調装置342は、保持枠4の四隅に設けられた案内孔42に支持ピン52が挿入される構成なので、バランス良く支持本体51に支持され、耐衝撃性の向上も可能となる。
【0055】
(5)緩衝部材6によって、光変調装置342と支持部5との間に発生する応力が低減するので、保持枠4および支持部5の小型化、軽量化、ひいてはプロジェクター1の小型化、軽量化が図れる。
【0056】
なお、前記実施形態は、以下のように変更してもよい。
前記実施形態の緩衝部材6は、ウレタン樹脂製の発泡材により形成されているが、他の材料で多孔質の弾性材料により形成してもよい。また、多孔を有しない材料として、ゴム等の部材より反発係数の小さなゲル状の部材を用いて形成してもよい。
【0057】
前記実施形態の緩衝部材6は、4つの緩衝部材6がそれぞれ個別に形成されて構成されているが、4つの緩衝部材6を繋ぐ架橋部を設け、4つの緩衝部材6が一体化するように構成してもよい。また、この架橋部が保持枠4と支持本体51との間を覆い、第2側面部51Bの開口部から塵埃の侵入を防止する防塵部材として機能するように構成してもよい。
【0058】
支持ピン52は、螺合によって支持本体51に接続されるように構成されているが、螺合に限らず、溶接等で接合するように構成してもよい。
【0059】
前記実施形態のプロジェクター1は、光変調装置342として反射型液晶パネル3421を用いているが、透過型液晶パネルを利用したものであってもよい。
【0060】
光源311は放電型のランプに限らず、その他の方式のランプや発光ダイオード等の固体光源で構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…プロジェクター、3…光学ユニット、4…保持枠、5…支持部、6…緩衝部材、8…接着剤、31…光源装置、42…案内孔、51…支持本体、51A…第1側面部、51B…第2側面部、51C…第3側面部、52…支持ピン、311…光源、340,340B,340G,340R…電気光学装置、341…反射型偏光板ユニット、342…光変調装置、343…偏光板ユニット、344…光学補償素子ユニット、345…クロスダイクロイックプリズム、511…ネジ孔、521…ネジ部、522…座部、523…突出部、3411…反射型偏光板、3412…保持部材、3413…押さえ板、3421…反射型液晶パネル、3421A…表面、3422…ヒートシンク、3423…熱伝導シート、3431…偏光板、3432…保持板、3441…光学補償素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置が取り付けられる支持部と、
前記光変調装置と前記支持部との間に配置される緩衝部材と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記緩衝部材は、多孔質の弾性材料により形成されていることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクターであって、
前記緩衝部材は、収縮可能な量が加えられる荷重に対する変形量を超えるような厚みを有していることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクターであって、
前記支持部は、前記光変調装置を支持する支持ピンを備え、
前記緩衝部材は、前記支持ピンが挿通される挿通孔を有し、
前記光変調装置は、前記挿通孔から突出する前記支持ピンが挿入される案内孔を有し、前記案内孔に注入された接着剤により前記支持ピンを介して、前記支持部に固定されることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73041(P2013−73041A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212187(P2011−212187)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】