説明

プロジェクター

【課題】3D眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上させることと、プロジェクターにおいて投射光源として用いられるランプの駆動電流の増加を抑制することを両立させる。
【解決手段】プロジェクター(10)は、右眼用画像と左眼用画像が時分割で現れる3次元映像を物体に投射するための投射光を発するランプ(2102)と、右眼用シャッター及び左眼用シャッターを有する眼鏡(20)に、3次元映像の右眼用画像と左眼用画像の表示周期を表す信号に基づいて、右眼用シャッター及び左眼用シャッターの開閉状態を制御するためのシャッター同期信号を送信する同期信号送信部(15、16)と、前記表示周期を表す信号に基づいて、眼鏡の右眼用シャッターが開状態となっている期間と重なるピーク及び眼鏡の左眼用シャッターが開状態になっている期間と重なるピークを有する交流電流をランプに供給するランプ駆動部(13)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元映像(立体視を可能にする映像。3D映像とも言う)を表示するプロジェクターにおいて、3D映像鑑賞用の眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3D映像を表示可能な表示システムが知られている。そのような表示システムにおいて3D映像を表示する場合、映像表示装置に右眼用映像と左眼用映像とを順次表示したり、合成して表示したりし、3D映像を鑑賞するユーザーは右眼用映像と左目用映像を分離する3D映像鑑賞用の眼鏡(3D眼鏡とも言う)を装着する。特許文献1には、右眼用画像及び左眼用画像を表示画面に交互に表示するとともに、3D眼鏡として、右眼用液晶シャッターと左眼用液晶シャッターを有するシャッター眼鏡を用いることが記載されている。右眼用画像が表示されているときは、右眼用液晶シャッターは開、左眼用液晶シャッターは閉とされる。左眼用画像が表示されているときは、右眼用液晶シャッターは閉、左眼用液晶シャッターは開とされる。
【0003】
特許文献2及び3には、プロジェクターの光源として用いられる高圧放電ランプに交流のランプ電流を加えて点灯させる高圧放電ランプ点灯回路が開示されている。特許文献2及び3に記載の高圧放電ランプ点灯回路は、投射画像中に現れるちらつき(フリッカー)を低減するため、交流のランプ電流の各極性の半波の終了時に当該半波の極性と同じ極性を有する付加的な電流パルスを重畳させる制御手段を備える。また、特許文献3に記載の高圧放電ランプ点灯回路では、この制御手段を画像書込み信号と同期させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25436号公報
【特許文献2】特表平10−501919号公報
【特許文献3】特表2002−533884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2及び3には、プロジェクターで3D映像を表示する際に、3D眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上させることと、プロジェクターにおいて投射光源として用いられるランプの駆動電力の増加を抑制することを両立させる点については何ら記載がない。
【0006】
これに対し本発明は、プロジェクターで3D映像を表示する際に、3D眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上させることと、プロジェクターにおいて光源として用いられるランプの駆動電力の増加を抑制することを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、右眼用画像と左眼用画像が時分割で現れる3次元映像を物体に投射するための投射光を発するランプと、独立して開状態又は閉状態となる右眼用シャッター及び左眼用シャッターを有する眼鏡に、前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す信号に基づいて、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの開閉状態を制御するためのシャッター同期信号を送信する同期信号送信部と、前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す前記信号に基づいて、前記眼鏡の前記右眼用シャッターが開状態となっている期間と重なるピーク及び前記眼鏡の前記左眼用シャッターが開状態になっている期間と重なるピークを有する交流電流を前記ランプに供給するランプ駆動部とを有するプロジェクターを提供する。
このプロジェクターによれば、3D映像を表示する際に、3D眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上させることと、プロジェクターにおいて投射光源として用いられるランプの駆動電力の増加を抑制することを両立させることができる。
【0008】
好ましい態様において、前記ランプ駆動部によって供給される前記交流電流の前記ピークの前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す前記信号に対する位相が、前記ランプの輝度と前記右眼用シャッターまたは前記左眼用シャッターの透過率との積を予め定められた期間において時間積分した値が最大になるように設定されてもよい。
このプロジェクターによれば、前記ランプ駆動部によって供給される前記交流電流の前記ピークの前記3次元映像信号に対する位相が、前記ランプの輝度と前記右眼用シャッターまたは前記左眼用シャッターの透過率との積を予め定められた期間において時間積分した値が最大になるように設定されていない場合と比べて、3D眼鏡を介してユーザーに感知される画像の明るさを向上することができる。
【0009】
さらに好ましい態様において、前記ランプ駆動部は、前記眼鏡の前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれもが閉状態にある期間において、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれかが開状態にある期間と比べて、前記ランプの輝度を低下させてもよい。
このプロジェクターによれば、前記眼鏡の前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれもが閉状態にある期間において、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれかが開状態にある期間と比べて、前記ランプの輝度を低下させない場合と比べて、クロストークが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係る表示システムの全体構成を示す模式図。
【図2】プロジェクターの映像投射部の構成を示す平面図。
【図3】眼鏡の外観を例示する図。
【図4】表示システムの機能的構成を示すブロック図。
【図5】ランプ駆動部の構成を示すブロック図。
【図6】書込み開始信号、ランプ駆動電流及びランプ輝度の一例を示すグラフ。
【図7】一実施形態における表示システムの各部の動作に対するランプ輝度パルスの生成タイミングを示す図。
【図8】比較例における表示システムの各部の動作に対するランプ輝度パルスの生成タイミングを示す図。
【図9】比較例における眼鏡の透過率及びランプ輝度を示す図。
【図10】図9に示した例において眼鏡越しに測定される光強度を示す図。
【図11】一実施形態における眼鏡の透過率及びランプ輝度を示す図。
【図12】図11に示した例において眼鏡越しに測定される光強度を示す図。
【図13】変形例1における眼鏡の透過率及びランプ輝度を示す図。
【図14】図13に示した例において眼鏡越しに測定される光強度を示す図。
【図15】変形例2における眼鏡の透過率及びランプ輝度を示す図。
【図16】図15に示した例において眼鏡越しに測定される光強度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る表示システム1の全体構成を示す図である。表示システム1は、プロジェクター10、眼鏡20、及びスクリーンSCを有する。図1の例において、プロジェクター10は、入力された映像信号に応じた画像をスクリーンSCの前方からスクリーンSCに投射するフロントプロジェクターである。尚、プロジェクター10は、スクリーンSCの後方からスクリーンSCに画像を投射するリアプロジェクターでもよい。本実施形態において、プロジェクター10に入力される映像信号が示す映像は、右眼用画像(以下、「右眼画像」という。)と左眼用画像(以下、「左眼画像」という。)とが時分割で(即ち、時間的にずれて)交互に現れる3D映像とする。3D映像を構成する個々の静止画をフレームと言う。従って、3D映像の場合、通常、右眼画像と左眼画像が1フレーム置きに現れる。尚、ここでいう映像は主として動画を想定しているが、静止画であってもよい。スクリーンSCは、プロジェクター10から投射される映像を映し出す面を提供する物体の一例である。スクリーンSCの代わりに、壁面などを用いてもよい。眼鏡20は、右眼画像及び左眼画像を、眼鏡20を装着したユーザーの右眼及び左眼に独立して視覚させるための3D眼鏡である。
【0012】
図2は、プロジェクター10の映像投射部(図4において符号14で示す)の構成を示す平面図である。本例において、プロジェクター10は、液晶パネルをRGB各色のライトバルブとして用いた3板式プロジェクターである。
【0013】
図2に示されるように、プロジェクター10の内部には、超高圧(Ultra High Pressure)水銀ランプ等の高圧放電ランプを白色光源として有するランプユニット2102が設けられている。ランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106及び2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)色、G(緑)色、B(青)色の3原色に分離される。分離された投射光は、各原色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bにそれぞれ導かれる。なお、B色の光は、他のR色やG色と比較すると光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123及び出射レンズ2124を有するリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0014】
プロジェクター10において、ライトバルブ100R、100G及び100Bの各々は、画素毎に透過率を設定可能な液晶パネルからなる。ライトバルブ100R、100G及び100Bには、R色、G色、B色のそれぞれの原色成分の階調レベルを画素毎に指定する映像信号が供給され、供給された映像信号に応じて、ライトバルブ100R、100G及び100Bがそれぞれ駆動される。ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、ダイクロイックプリズム2112において、R色及びB色の光は90度に屈折し、G色の光は直進する。したがって、各原色の画像が合成された後、スクリーンSCには、投射レンズ群2114によってカラー画像が投射される。
【0015】
なお、ライトバルブ100R、100G及び100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R色、G色、B色のそれぞれに対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射される。したがって、ライトバルブ100R、100Bによる水平走査方向は、ライトバルブ100Gによる水平走査方向と逆向きにして、左右を反転させた像を表示する構成となっている。尚、図2では、ライトバルブ100R、100G、100Bを構成する液晶パネルを透過型とし、透過型のプロジェクターを構成したが、液晶パネルを反射型とし、反射型のプロジェクターを構成してもよい。
【0016】
図3は、眼鏡20の外観を例示する図である。図3に示すように、眼鏡20は、フレーム201を有しており、通常の視力矯正用眼鏡のレンズに相当する部分に、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lが設けられている。右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lは、例えば液晶シャッターであり、プロジェクター10から送信される、後述するシャッター同期信号に応じて開閉する。ここで、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lが「開」であるとは、透過率が所定のしきい値(例えば5%)以上の状態にあることをいい、「閉」であるとは、透過率が所定のしきい値(例えば5%)未満の状態にあることをいう。また、眼鏡20は、フレーム201の前面(即ち、眼鏡20がユーザーによって装着されたとき、ユーザーの前方に向く面)に設けられた赤外線受光部204を有する。赤外線受光部204は、例えばフォトダイオードなどの受光素子を有し、プロジェクター10から赤外線伝送により送信されるシャッター同期信号を受信する。
【0017】
図4は、プロジェクター10、眼鏡20、スクリーンSCを含む表示システム1の機能的構成を示すブロック図である。図4に示すように、プロジェクター10は、映像信号取得部11、映像信号処理部12、ランプ駆動部13、映像投射部14、同期信号生成部15、及び赤外線発光部16を有する。映像信号取得部11、映像信号処理部12、ランプ駆動部13、及び同期信号生成部15の機能は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置により、ROM(Read Only Memory)やハードディスク等の記憶装置に格納されたプログラムを実行することによって実現してもよい。
【0018】
映像信号取得部11は、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤーやパーソナルコンピューターなどの外部装置から映像信号を取得する。映像信号がプロジェクター10に備えられたハードディスクなどの記憶装置に格納されている場合、映像信号取得部11は映像信号を記憶装置から取得してもよい。上記したように、本例では、映像信号取得部11が取得する映像信号は3D映像を示す映像信号(以下、3D映像信号という)であることを想定している。映像信号取得部11が取得した3D映像信号は、映像信号処理部12に入力される。
【0019】
映像信号処理部12は、映像信号取得部11から入力された映像信号に対し様々な処理を行う。映像信号処理部12が行う処理には、映像信号取得部11から入力された映像信号からRGB各色の映像信号を分離し、映像投射部14のライトバルブ100R、100G、100Bにそれぞれ供給する処理が含まれる。また、映像信号処理部12は、映像信号によって表される映像を構成する各画像のデーターをライトバルブ100R、100G及び100Bへ書込むときの書込み開始のタイミング(即ち、ライトバルブ100R、100G及び100Bの走査の開始のタイミング)を示す書込み開始信号(スタートパルスとも言う)を生成し、ランプ駆動部13及び同期信号生成部15に供給する。尚、ある画像のデーター書込みの開始から、次の画像のデーター書込みの開始までの期間をフレーム期間と言う。書込み開始信号は、3次元映像の右眼用画像と左眼用画像の表示周期を表す信号の一例である。
【0020】
ランプ駆動部13は、映像信号処理部12から供給される書込み開始信号に基づいて、映像投射部14のランプユニット2102を駆動するランプ駆動電流を生成する。このランプ駆動電流の生成については、後に詳述する。
【0021】
映像投射部14の構成は、図2に例示した。映像信号処理部12から映像投射部14に入力されたRGB各色の映像信号は、映像投射部14のライトバルブ100R、100G及び100Bの制御に用いられ、映像投射部14は、映像信号に応じた映像をスクリーンSCに投射する。映像信号処理部12から映像投射部14に供給される映像信号は3D映像信号であるので、映像投射部14は、3D映像信号によって表される映像に含まれる右眼画像及び左眼画像を時分割で交互にスクリーンSCに投射し、スクリーンSC上に表示する。
【0022】
同期信号生成部15は、映像信号処理部12から供給される書込み開始信号に基づいてシャッター同期信号を生成する。ここで、シャッター同期信号とは、スクリーンSCに右眼画像が表示されるときには、眼鏡20の右眼用シャッター206Rが開状態となり、左眼用シャッター206Lが閉状態となり、スクリーンSCに左眼画像が表示されるときには、眼鏡20の右眼用シャッター206Rが閉状態となり、左眼用シャッター206Lが開状態となるように(即ち、スクリーンSCに表示される画像に同期してシャッター206R、206Lの開閉がなされるように)、眼鏡20の右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを制御するときの制御タイミングを示す信号である。シャッター同期信号は、シャッター206R、206Lを開状態とするタイミング及び閉状態とするタイミングの両方を示す信号であってよい。あるいは、シャッター206R、206Lが、開(または閉)状態となった後、予め決められた時間後に閉(または開)状態となるように設定されている場合、シャッター同期信号は、シャッター206R、206Lを開(または閉)状態とするタイミングのみを示す信号であってもよい。
【0023】
赤外線発光部16は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの赤外線発光素子を有し、同期信号生成部15により生成されたシャッター同期信号を赤外線伝送によって眼鏡20に送信する。赤外線発光部16は、プロジェクター10の本体とは別体として設け、プロジェクター10の本体に有線または無線で接続してもよい。その場合、赤外線発光部16を、スクリーンSCの近くに、スクリーンSCに対峙したユーザーの方に向くように配置し、赤外線発光部16から発信されたシャッター同期信号がユーザーに装着された眼鏡20の赤外線受光部204で受信されるようにしてもよい。あるいは、赤外線発光部16をプロジェクター10の本体と一体に設け、赤外線発光部16からシャッター同期信号をスクリーンSCに向けて発信し、スクリーンSCによって反射されたシャッター同期信号が眼鏡20の赤外線受光部204で受信されるようにしてもよい。同期信号生成部15及び赤外線発光部16は、本発明の同期信号送信部の一例である。
【0024】
眼鏡20は、図3に示した赤外線受光部204及びシャッター206R、206Lに加え、シャッター駆動部210を有する。シャッター駆動部210の機能は、CPUなどの演算処理装置によりROMやフラッシュメモリー等の記憶装置に格納されたプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0025】
シャッター駆動部210は、赤外線受光部204が受信したシャッター同期信号に基づいて、眼鏡20のシャッター206R、206Lを開閉駆動する。赤外線受光部204によりシャッター同期信号が受信されないときは、シャッター206R、206Lの開閉駆動を停止する(シャッター206R、206Lは開状態となる)。
【0026】
図5は、ランプ駆動部13の構成を示すブロック図である。ランプ駆動部13は、交流−直流変換器131と、直流−交流変換器132と、コントローラー133とを有する。コントローラー133は、ROM等の記憶装置に格納されたプログラムを実行する演算処理装置であってよい。交流−直流変換器131は、図示しない交流電源電圧が印加される入力端子K1、K2を有し、コントローラー133からの制御信号に応じた大きさの直流電流を生成する。交流−直流変換器131は、例えば、特許文献2の図2に示された手段Iと同様に、入力端子K1、K2に印加された交流電源電圧を直流に変換する整流ブリッジと、整流ブリッジから出力された直流電流の大きさをコントローラー133からの制御信号に応じて変換するダウンコンバーター(直流−直流変換器)とを含むものであってよい。
【0027】
直流−交流変換器132は、交流−直流変換器131から供給された直流電流を交流のランプ駆動電流に変換し、ランプユニット2102に供給する。直流−交流変換器132は、例えばトランジスターやサイリスターのようなスイッチング素子をブリッジ接続したものであってよい。スイッチング素子のオン/オフのタイミングはコントローラー133からの制御信号によって制御され、それによって直流−交流変換器132から出力される交流のランプ駆動電流の周期や位相(即ち、極性切替のタイミング)が制御される。直流−交流変換器132は、例えば、特許文献2の図2に示された手段IIと同様の回路構成であってよい。
【0028】
コントローラー133は、映像信号処理部12から入力される書込み開始信号(スタートパルス)に同期した交流のランプ駆動電流がランプユニット2102に供給されるように、直流−交流変換器132に含まれるブリッジ回路のスイッチング素子をオン/オフ動作させるための制御信号を生成する。また、コントローラー133は、ランプ駆動電流が書込み開始信号に対して所定の遅延時間だけ位相がずれたピーク(電流パルス)を有するように交流−直流変換器131の出力電流を制御するための制御信号を生成する。
【0029】
図6は、書込み開始信号、ランプ駆動電流及びランプ輝度の一例を示すグラフである。図6に示すように、書込み開始信号は、1フレーム期間に対応する予め定められた周期を有するパルス列である。直流−交流変換器132からランプユニット2102に供給されるランプ駆動電流は、書込み開始信号に対応した周期を有する振幅Imの矩形波状の交流電流の各極性の半波の終了時に当該半波と同じ極性のパルス状の電流(以下、電流パルス)PIが重畳された電流であり、電流パルスPIが重畳された部分においてピーク振幅Ipを有している。このように、電流パルスPIを交流電流に重畳することにより、電極の温度が上昇し、放電アークの安定性が増大する(例えば、特許文献2参照)。本例において、電流パルスPIは、書込み開始信号に対し第1の遅延時間Td1だけ位相が遅れており、パルス幅ΔTを有する。
【0030】
図6に示したランプ駆動電流は、コントローラー133の制御の下、直流−交流変換器132に含まれるブリッジ回路のスイッチング素子を、書込み信号から第2の遅延時間Td2=Td1+ΔTだけ遅延したタイミングでオン/オフ動作させて、書込み信号から第2の遅延時間Td2だけ遅延したタイミングで極性が切り替わる矩形波状の交流電流を生成すると共に、交流−直流変換器131の出力電流の大きさを、書込み信号から第1の遅延時間Td1だけ遅延したタイミングで、パルス幅に対応した予め決められた期間ΔTだけ増加させることにより生成される。即ち、第1の遅延時間Td1は、ランプ駆動電流における電流パルス(ピーク)の生成タイミングを表し、第2の遅延時間Td2は、ランプ駆動電流の極性の切替のタイミングを表す。コントローラー133は、交流−直流変換器131への制御信号の生成タイミングを調整することで、第1の遅延時間Td1を調整し、直流−交流変換器132への制御信号の生成タイミングを調整することで、第2の遅延時間Td2を調整する。
【0031】
上記したようなランプ駆動電流が供給された場合にランプユニット2102から発せられる光の強度(ランプ輝度と言う)を、図6の最下段のグラフに示す。ランプ輝度は、ランプユニット2102に供給される電流の大きさ(絶対値)に応じて変化する。そのため、図示されているように、ランプ輝度は、ランプ駆動電流の電流パルスPIに対応したピーク値LpのパルスPL(ランプ輝度パルスと言う)を有する。また、ランプ輝度は、隣り合うランプ輝度パルスPLの間の部分では、電流パルスPIが重畳されていない場合の矩形波状の交流電流に対応した概ね一定の値Lmを有する。
【0032】
図7は、本実施形態における表示システム1の各部の動作に対するランプ輝度パルスPLの生成タイミングを示す図である。尚、以下の説明で、液晶パネル(ライトバルブ)100R、100G及び100Bを互いに区別する必要がない場合、まとめて液晶パネル100と言う。図7に示すように、液晶パネル100には、予め定められた周期(フレーム期間)で右眼画像と左眼画像が交互に表示される。液晶パネル100に表示される各画像を表すデータ(画像データと言う)の液晶パネル100への書込みは、対応する書込み開始信号(スタートパルス)の生成に応じて開始される。ここで、1画像分の画像データを液晶パネル100に書込むには所定の時間がかかるので、ある書込み開始信号生成からその書込み開始信号に対応した画像データの書込みが終了するまでの期間は、書込みが終了した画素に対応した新たな画像(例えば右眼画像)の一部と、書込みが終了していない画素に対応した前の画像(例えば左眼画像)の一部が混在して表示されることとなる。
【0033】
眼鏡20の右眼用シャッター206Rは液晶パネル100に右眼画像が表示されているときに開となるように、左眼用シャッター206Lは液晶パネル100に左眼画像が表示されているときに開となるように、プロジェクター10から送信されるシャッター同期信号に基づいて制御される。より詳細には、右眼用シャッター206Rは、右眼画像が表示されるフレーム期間の後半部分において開となり、残りの期間は閉となるように制御される。左眼用シャッター206Lは、左眼画像が表示されるフレーム期間の後半部分において開となり、残りの期間は閉となるように制御される。このような右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの制御は、例えば、プロジェクター10の同期信号生成部15において、書込み開始信号から所定の遅延時間(本例ではフレーム期間の半分)遅れたシャッター同期信号を生成し、赤外線発光部16を通じて眼鏡20に送信することにより実現される。
【0034】
上記したように、各画像のフレーム期間の開始から所定の期間は、右眼画像の一部と左眼画像の一部が混在して表示されるため、その期間に右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lが開状態となると、右眼画像と左眼画像が分離されずにユーザーの右眼または左眼に届く(即ち、クロストークが発生する)ことになる。右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを対応する画像のフレーム期間の後半部分においてのみ開状態とすることにより、右眼画像の一部と左眼画像の一部が混在して表示される期間に右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lが開状態となり、右眼画像と左眼画像が分離されずにユーザーの右眼または左眼に届くのが防止される。尚、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを対応する画像のフレーム期間のどの部分において開状態とするかは、画像データの書込みに要する時間に応じて調整してよく、後半部分に限らない。例えば、画像データの書込みがフレーム期間の4分の1の時間で終了する場合、残りの期間(即ち、フレーム期間の終了前4分の3の期間)、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを開状態としてよい。要は、右眼画像の一部と左眼画像の一部が混在して表示される期間に右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lが開状態とならないように、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lをフレーム期間の一部で開状態とすればよい。
【0035】
図7に示すように、本実施形態において、ランプ輝度パルスPLは、右眼用シャッター206Rが開になっている期間、及び、左眼用シャッター206Lが開になっている期間と重なっている。図6を参照して説明したように、ランプ輝度パルスPLは、ランプユニット2102に供給されるランプ駆動電流における電流パルスPIに対応している。即ち、書込み開始信号に対する電流パルスPIの遅延時間である第1の遅延時間Td1は、電流パルスPI(即ち、ランプ駆動電流のピーク)が、右眼用シャッター206Rが開になっている期間、及び、左眼用シャッター206Lが開になっている期間と重なるように調整されており、図5に示したランプ駆動部13のコントローラー133は、そのように設定された第1の遅延時間Td1に基づいて電流パルスPIが重畳された交流のランプ駆動電流を生成する。言い換えると、ランプ駆動部13は、右眼用シャッター206Rが開になっている期間に重なる電流パルスPIと左眼用シャッター206Lが開になっている期間と重なるPIとを有するランプ駆動電流をランプユニット2102に供給する。尚、ランプ駆動電流の極性切替のタイミングを示す第2の遅延時間Td2は、ランプ駆動電流の電流パルスPIが、ランプ駆動電流の各極性の半波の終了部分に生じるように、第1の遅延時間Td1及び電流パルスPIの幅ΔTに基づいて設定される。
【0036】
図7において、右眼光強度及び左眼光強度は、液晶パネル100を制御してスクリーンSCに右眼画像及び左眼画像として予め定められた共通の画像(例えば、全面白色の画像)を表示したときに、スクリーンSCに向けて配置した眼鏡20の右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを通過する光の強度を示す。右眼光強度は、右眼用シャッター206Rの透過率とランプ輝度の積に概ね比例し、左眼光強度は、左眼用シャッター206Lの透過率とランプ輝度の積に概ね比例する。ここでは、簡単のため、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの開状態における透過率は一定であるとする。図示されているように、右眼光強度は、右眼用シャッター206Rが閉の期間では概ねゼロであり、右眼用シャッター206Rが開の期間においては、ランプ輝度パルスPLと重ならない部分では概ね一定の値を有し、ランプ輝度パルスPLと重なる部分ではパルス状に値が増加している。同様に、左眼光強度は、左眼用シャッター206Lが閉の期間では概ねゼロであり、左眼用シャッター206Lが開の期間においては、ランプ輝度パルスPLと重ならない部分では概ね一定の値を有し、ランプ輝度パルスPLと重なる部分ではパルス状に値が増加している。
【0037】
図8は、比較例における表示システム1の各部の動作に対するランプ輝度パルスPLの生成タイミングを示す図である。図8に示した例では、ランプ輝度パルスPLが右眼用シャッター206Rが開になっている期間、及び、左眼用シャッター206Lが開になっている期間のいずれにも重なっていない点が、図7に示した例と異なる。そのため、図8に示した例では、右眼光強度及び左眼光強度は、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間において、パルス状に値が増加する部分のない概ね一定の値となっている。
【0038】
眼鏡20を装着してスクリーンに投射された画像を観賞するユーザーが感知する画像の明るさは、各フレーム期間(予め定められた期間の一例)に右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを通過する光の強度(即ち、右眼光強度及び左眼光強度)を時間積分した値(即ち、時間平均)に依存する。従って、図8に示す例では、図7に示した例と比べて、右眼光強度及び左眼光強度にランプ輝度パルスPLに対応してパルス状に増加する部分がない分、光強度の時間積分値が小さく、眼鏡20を装着したユーザーが感知する画像の明るさが低下する。言い換えると、図7に示した本実施形態においては、ランプ駆動電流のピーク(電流パルスPI)が、右眼用シャッター206Rが開になっている期間、及び、左眼用シャッター206Lが開になっている期間と重なるようにランプ駆動電流のピークの位相(即ち、書込み開始信号に対する第1の遅延時間Td1)が設定されていることから、ランプ駆動電流のピークが、右眼用シャッター206Rが開になっている期間、及び、左眼用シャッター206Lが開になっている期間のいずれとも重ならない場合と比べて、眼鏡20を介してユーザーに感知される画像の明るさが向上する。
【0039】
図7及び図8に示した例では、簡単のため、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの開状態における透過率は一定であるとした。しかしながら、実際には、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの開状態における透過率は一定ではなく変化する。
【0040】
図9は、比較例における眼鏡20の透過率及びランプ輝度を示す図である。図9において、実線はランプ輝度を、そのピークの値を1として相対的に示している。また、点線は右眼用シャッター206Rの透過率を、その最大値を1として相対的に示している。同様に、一点鎖線は左眼用シャッター206Lの透過率を、その最大値を1として相対的に示している。図9において、右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lの透過率が、所定の値(例えば、相対値が0.1)以上のとき、右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lは開状態にあると言う。図示されているように、開状態において、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの各々の透過率は、最初急激に上昇した後、しばらく緩やかに上昇する。そして、閉状態へ状態変更の指示の後、急激に下降している。即ち、方形波がなまった形状を呈する。このように、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lの透過率は、開状態において一定ではなく変化している。図9に示した例では、ランプ輝度パルスPLは、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間のいずれとも重なっていない。
【0041】
図10は、図9に示した例において眼鏡20越しに測定される光強度を示す図である。ここで、眼鏡20越しに測定される光強度とは、図7及び図8を参照して説明したのと同様に、液晶パネル100を制御してスクリーンSCに右眼画像及び左眼画像として予め定められた共通の画像(例えば、全面白色の画像)を表示したときに、スクリーンSCに向けて配置した眼鏡20の右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lを通過する光の強度である。図10において、点線は右眼用シャッター206Rを通過した光の強度であり、一点鎖線は左眼用シャッター206Lを通過した光の強度である。これらの光強度は、ランプ輝度の相対値が1でシャッターの透過率の相対値が1のときに測定される光強度を1として相対的に示されている。右眼用シャッター206Rを通過した光の強度は、右眼用シャッター206Rの透過率とランプ輝度の積に概ね比例し、左眼用シャッター206Lを通過した光の強度は、左眼用シャッター206Lの透過率とランプ輝度の積に概ね比例する。上述したように、図9に示した例では、ランプ輝度パルスPLは、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間のいずれとも重なっていないため、図10に示す眼鏡20越しに測定される光強度は、ランプ輝度パルスPLに対応してパルス状に増加する部分のない波形となっている。
【0042】
図11は、一実施形態における眼鏡20の透過率及びランプ輝度を示す図である。また、図12は、図11に示した例において眼鏡20越しに測定される光強度を示す図である。図11の例では、ランプ輝度パルスPLが、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間と重なっている点が、図9の例と異なる。より詳細には、図11の例では、ランプ輝度パルスPLの立ち下がりと、右眼用シャッター206Rの透過率または左眼用シャッター206Lの透過率が最大値となる点とが概ね一致している。その結果、図12に示すように、眼鏡20越しに測定される光強度は、ランプ輝度パルスPLに対応してパルス状に増加する部分を有する波形となっている。これにより、図10に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値を100とすると、図12に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値は105.6となり、5.6%増加する。即ち、眼鏡20を介してユーザーに感知される画像の明るさが5.6%増加する。
【0043】
2.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例のうち、2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
2−1.変形例1
上記実施形態の図11及び図12に示した例では、ランプ輝度パルスPLの立ち下がりと、右眼用シャッター206Rの透過率または左眼用シャッター206Lの透過率が最大値となる点とが概ね一致するようにしたが、本発明はこれに限定されない。右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間と重なっていれば、ランプ輝度パルスPLの生成タイミング(即ち、電流パルスPIの生成タイミング)は様々に変更してよい。
【0045】
図13は、変形例1に係る眼鏡20の透過率及びランプ輝度を示す図である。また、図14は、図13に示した例において眼鏡20越しに測定される光強度を示す図である。図13の例では、ランプ輝度パルスPLが、右眼用シャッター206Rまたは左眼用シャッター206Lの透過率が最大値となる前の、透過率の相対値が約0.8の時点で、右眼用シャッター206Rが開の期間または左眼用シャッター206Lが開の期間と重なっている点が、図11の例と異なる。この場合も、図14に示すように、眼鏡20越しに測定される光強度は、ランプ輝度パルスPLに対応してパルス状に増加する部分を有する。これにより、図10に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値を100とすると、図14に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値は104.4となり、4.4%増加する。即ち、眼鏡20を介してユーザーに感知される画像の明るさが4.4%増加する。
【0046】
図13及び図14に示した例でも、ランプ輝度パルスPLが、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間のいずれとも重ならない場合と比べて、眼鏡20を介してユーザーに感知される画像の明るさが増加する。しかしながら、図13及び図14に示した例では、図11及び図12に示した例と比べると、眼鏡20越しに測定される光強度の1フレーム期間の時間積分値が小さい。このように、ランプ輝度パルスPLが、右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間と重なっていても、ランプ輝度パルスPLと右眼用シャッター206Rが開の期間及び左眼用シャッター206Lが開の期間との位相関係によって、眼鏡20越しに測定される光強度の1フレーム期間の時間積分値が変化する。従って、眼鏡20越しに測定される光強度の1フレーム期間の時間積分値が極力大きくなるように、ランプ輝度パルスPLの位相(即ち、電流パルスPIの位相)をランプ駆動部13のコントローラー133で調整するとよい。また、眼鏡20越しに測定される光強度は、上述したように、ランプ輝度と眼鏡20のシャッター20R、20Lの透過率の積に略比例する。したがって、ランプ輝度と眼鏡20のシャッター20R、20Lの透過率の積の1フレーム期間の積分値が最大になるように、ピーク(電流パルスPI)を有するランプ駆動電流をコントローラー133で制御するとよい。
【0047】
2−2.変形例2
図15は、変形例2に係る眼鏡20の透過率及びランプ輝度を示す図である。また、図16は、図15に示した例において眼鏡20越しに測定される光強度を示す図である。図15の例では、ランプ輝度パルスPLの幅(即ち、電流パルスPIの幅ΔT)が、図11に示したランプ輝度パルスPLの幅より広く(約3倍)、また、隣り合うランプ輝度パルスPLの間の部分における概ね一定のランプ輝度Lmの値(ランプ輝度パルスPLの輝度Lpに対する相対値)が、図11に示した例におけるランプ輝度Lmの値より小さい点が図11に示した例と異なる。図15の例でも、図11に示した例と同様に、ランプ輝度パルスPLの立ち下がりと、右眼用シャッター206Rの透過率または左眼用シャッター206Lの透過率が最大値となる点とが概ね一致している。その結果、図16に示すように、眼鏡20越しに測定される光強度は、ランプ輝度パルスPLに対応してパルス状に増加する部分を有する波形となっている。これにより、図10に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値を100とすると、図16に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値は120.8となり、20.8%増加する。この値は、図11の例に対応した図12に示した眼鏡20越しに測定される光強度を1フレーム期間において時間積分した値105.6よりも大きい。
【0048】
このように、図15及び図16に示した例では、図11及び図12に示した例と比べて、隣り合うランプ輝度パルスPLの間の部分におけるランプ輝度Lmの値が低下されているにも関わらず、ランプ輝度パルスPLの幅を増大したことにより、眼鏡20越しに測定される光強度の1フレーム期間における時間積分値が向上している。従って、眼鏡20を介してユーザーに感知される画像の明るさの向上と、ランプ消費電力の抑制とが両立される。また、隣り合うランプ輝度パルスPLの間の部分におけるランプ輝度Lmを低下させることで、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lのいずれも閉の期間におけるランプ輝度(即ち、そのとき表示されている画像の輝度)が、右眼用シャッター206R及び左眼用シャッター206Lのいずれかが開状態にある期間に比べて低下する。これにより、シャッター206R及び206Lの開閉速度(即ち、液晶の応答速度)に制限があること等に起因して生じるクロストークが、当該期間においてランプ輝度Lmを低下させない場合と比べて低減される。
【0049】
2−3.変形例3
上記実施形態では、交流電流により駆動される高圧放電ランプとして超高圧水銀ランプを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、高圧放電ランプを金属ハロゲン化物ランプとしてもよい。駆動電流が映像信号に同期したピークを含み、駆動電流の大きさに応じた輝度で発光するランプであれば、どのようなランプでもよい。
【0050】
2−4.変形例4
上記実施形態では、赤外線発光部16により、赤外線伝送でシャッター同期信号を眼鏡20へ送信したが、本発明はこれに限らない。赤外線伝送以外の手段を使ってシャッター同期信号を送信してもよい。例えば、無線によりシャッター同期信号を送信してもよい。
【0051】
2−5.変形例5
上記実施形態では、ランプ駆動電流の電流パルスPIが、交流のランプ駆動電流の各極性の半波の終了部分に生じるようにランプ駆動部13の交流−直流変換器の出力電流を制御したが、本発明はこれに限定されない。電流パルスPIが、交流のランプ駆動電流の各極性の半波の開始部分や中間部分に生じるようにランプ駆動部13の交流−直流変換器の出力電流を制御してもよい。また、ランプ駆動電流は矩形波状の交流電流にパルスが重畳されたものに限らず、三角波状または正弦波状の交流電流であってもよい。
【0052】
2−6.変形例6
上記実施形態では、プロジェクター10は、3つのライトバルブ100R、100G及び100Bを用いた3板式プロジェクターであったが、本発明はこれに限定されない。RGB各色の画素を有する1枚のカラー液晶パネルを用いた単板式プロジェクターであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…表示システム、10…プロジェクター、11…映像信号取得部、12…映像信号処理部、13…ランプ駆動部、131…交流−直流変換器、132…直流−交流変換器、133…コントローラー、14…映像投射部、15…同期信号生成部、16…赤外線発光部、20…眼鏡、201…フレーム、204…赤外線受光部、206R…右眼用シャッター、206L…左眼用シャッター、210…シャッター駆動部、100R、100G、100B…ライトバルブ、2102…ランプユニット、2106…ミラー、2108…ダイクロイックミラー、2112…ダイクロイックプリズム、2114…投射レンズ群、2121…リレーレンズ系、2122…入射レンズ、2123…リレーレンズ、2124…出射レンズ、SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像と左眼用画像が時分割で現れる3次元映像を物体に投射するための投射光を発するランプと、
独立して開状態又は閉状態となる右眼用シャッター及び左眼用シャッターを有する眼鏡に、前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す信号に基づいて、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターの開閉状態を制御するためのシャッター同期信号を送信する同期信号送信部と、
前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す前記信号に基づいて、前記眼鏡の前記右眼用シャッターが開状態となっている期間と重なるピーク及び前記眼鏡の前記左眼用シャッターが開状態になっている期間と重なるピークを有する交流電流を前記ランプに供給するランプ駆動部と
を有するプロジェクター。
【請求項2】
前記ランプ駆動部によって供給される前記交流電流の前記ピークの前記3次元映像の前記右眼用画像と前記左眼用画像の表示周期を表す前記信号に対する位相が、前記ランプの輝度と前記右眼用シャッターまたは前記左眼用シャッターの透過率との積を予め定められた期間において時間積分した値が最大になるように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記ランプ駆動部は、前記眼鏡の前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれもが閉状態にある期間において、前記右眼用シャッター及び前記左眼用シャッターのいずれかが開状態にある期間と比べて、前記ランプの輝度を低下させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−74407(P2013−74407A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211115(P2011−211115)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】