説明

プロジェクタ型ヘッドランプの汚れ検出装置

【課題】車両のデザイン性を損なうことなくレンズ面の汚れを高精度に検出することができるプロジェクタ型ヘッドランプの汚れ検出装置を提供すること。
【解決手段】ハウジングとその前面開口部を覆うアウタレンズ2によって画成される灯室3内に光源4、リフレクタ5、シャッタ6及びプロジェクタレンズ7を収容して成るプロジェクタ型ヘッドランプ1の前記アウタレンズ2の汚れを検出する汚れ検出装置10を、前記シャッタ6に配置された受光フォトダイオード(受光センサ)11と、該受光フォトダイオード11からの検出信号に基づいて前記アウタレンズ2の汚れを判定するコントローラ(ECU)13を含んで構成する。又、前記コントローラ(ECU)13は、前記アウタレンズ2の汚れを検出すると該アウタレンズ2を洗浄する洗浄装置20の駆動信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ型ヘッドランプの汚れを光学的に検出する汚れ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドランプのレンズ面が埃や泥等の付着によって汚れると光量不足を招く可能性があるため、必要に応じてレンズ面をワイパーで払拭したり、レンズ面に向かって洗浄液を噴射する洗浄装置が提案されている。
【0003】
ところで、斯かる洗浄装置によるヘッドランプの清掃を自動化するためにレンズ面の汚れを検出する技術が今までに提案されている。例えば、特許文献1には、第1及び第2の光センサからの光データL1,L2の差(L2−L1)が所定値以上であるか否かを判定してランプのレンズ表面の汚れを検出する検出装置が提案されている。
【0004】
又、特許文献2には、LED光源をDC/DCコンバータ回路と定電流回路及びチョッパ回路によって駆動するヘッドランプのレンズ面の汚れを外光の影響を受けることなく高精度に検出するために、レンズの反射光を検出するフォトセンサをハウジング内に配置し、該フォトセンサによるレンズの汚れ検出をチョッパ回路の出力に同期して行い、LED光源が点灯しているときだけ行うようにした検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−001542号公報
【特許文献2】特開2008−001325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2において提案された汚れ検出装置においては、光センサ(フォトセンサ)が外側から見えるために車両のデザイン性が損なわれるという問題がある。
【0007】
又、特許文献1,2において提案された汚れ検出装置では、ヘッドランプのレンズ内面で反射した反射光を光センサ(フォトセンサ)によって受光し、その光量によってレンズの汚れを検出しているが、光センサ(フォトセンサ)が受光する反射光の光量が少ないために検出精度が低いという問題もある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車両のデザイン性を損なうことなくレンズ面の汚れを高精度に検出することができるプロジェクタ型ヘッドランプの汚れ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその前面開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に光源、リフレクタ、シャッタ及びプロジェクタレンズを収容して成るプロジェクタ型ヘッドランプの前記アウタレンズの汚れを検出する汚れ検出装置を、前記シャッタに配置された受光センサと、該受光センサからの検出信号に基づいて前記アウタレンズの汚れを判定するコントローラを含んで構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記コントローラは、前記アウタレンズの汚れを検出すると該アウタレンズを洗浄する洗浄装置の駆動信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、シャッタに受光センサを配置したため、該受光センサが外側から見えず、車両のデザイン性が受光センサによって損なわれることがない。又、光源から出射した光はプロジェクタレンズを通過して平行光としてアウタレンズを透過して前方へと照射されるが、アウタレンズに汚れが付着している場合には、汚れによって光が反射し、反射した光がプロジェクタレンズによって集光して受光センサによって検出される。ここで、受光センサが検出する光量はアウタレンズの汚れに比例するため、コントローラは受光センサからの検出信号に基づいて汚れの程度を判断することができる。この場合、アウタレンズの汚れによって反射した光はプロジェクタレンズによって、焦点の近辺に配置されたシャッタ上の受光センサに集光するため、該受光センサによって汚れ(光量)が高精度に検出される。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、アウタレンズの汚れが検出されるとコントローラからの駆動信号によって洗浄装置が駆動されてアウタレンズが自動洗浄されるために省力化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る汚れ検出装置を備えたプロジェクタ型ヘッドランプ要部の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る汚れ検出装置のシステム構成図である。
【図3】本発明に係る汚れ検出装置による汚れ検出の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る汚れ検出装置を備えたプロジェクタ型ヘッドランプ要部の分解斜視図、図2は本発明に係る汚れ検出装置のシステム構成図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、車両の前部左右に配置されるプロジェクタ型ヘッドランプ1は、不図示のハウジングとその前面開口部を覆うアウタレンズ2によって画成される灯室3内に、光源4と、リフレクタ5とシャッタ6及びプロジェクタレンズ7を収容して構成されている。ここで、光源4には放電灯やハロゲンランプ等が使用され、リフレクタ5は回転放物面状の反射面を有している。尚、左右のプロジェクタ型ヘッドランプ1の構成は左右対称であって、それらは基本的に同じであるため、以下、一方のプロジェクタ型ヘッドランプ1についてのみ説明する。
【0017】
而して、斯かるプロジェクタ型ヘッドランプ1にはアウタレンズ2の汚れを検出する汚れ検出装置10が設けられているが、該汚れ検出装置10は、灯室3内に収容された前記シャッタ6に配置された受光センサとしての受光フォトダイオード11と、該受光フォトダイオード11からの検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換器12及びA/D変換器12から入力されるデジタル信号に基づいてプロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の汚れを判定するコントローラ(ECU)13で構成されている。
【0018】
ところで、図2に示すように、車両にはプロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2を洗浄するための洗浄装置20が設けられており、この洗浄装置20は、ウォッシャタンク21から洗浄液がポンプ22によって供給されるシリンダ23と、該シリンダ23内に摺動可能に嵌挿されたピストン24と、該ピストン24をシリンダ23内に引き込む方向に付勢する不図示のリターンスプリングと、洗浄液をプロジェクタ型ヘッドランプ1に向けて噴射する噴射ノズル25と、洗浄液の圧力が所定値以上になると開いて洗浄液を前記噴射ノズル25に供給するチェックバルブ機構26を備えている。
【0019】
斯かる洗浄装置20においては、非使用時には噴射ノズル25が車両のフロントバンパの裏側に格納されており、プロジェクタ型ヘッドランプ1を洗浄する際には洗浄液の圧力によってピストン24が伸長して噴射ノズル25がフロントバンパに形成された開口部から車両前方へと突出し、洗浄液の圧力が所定値以上に高くなると、チェックバルブ機構26のバルブが開いて洗浄液が噴射ノズル25へと供給され、噴射ノズル25に開口する噴射口から洗浄液がプロジェクタ型ヘッドランプ1に向かって噴射され、該プロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の表面に付着した埃や泥等の汚れが除去される。そして、プロジェクタ型ヘッドランプ1の洗浄が終了すると、噴射ノズル25はリターンスプリングによってフロントバンパの裏側の格納位置に戻される。
【0020】
そして、図2に示すように、前記コントローラ(ECU)13にはウォッシャ駆動回路14が電気的に接続されており、このウォッシャ駆動回路14はポンプ22に電気的に接続されている。
【0021】
而して、車両の夜間走行時にはプロジェクタ型ヘッドランプ1が点灯するが、左右の各プロジェクタ型ヘッドランプ1においては、光源4から出射した光L1はリフレクタ5の反射面で反射し、シャッタ6によって配光が制御されつつプロジェクタレンズ7に向かい、該プロジェクタレンズ7を通過することによって平行光とされ、この平行光L1はアウタレンズ2を透過して車両前方へと照射される。
【0022】
ところで、プロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2に泥や埃等の汚れが付着している場合には、この汚れによって光L1が反射し、反射した光L2は図2に破線矢印にて示すようにプロジェクタレンズ7を再度通過して集光した後に受光フォトダイオード11に至り、該受光フォトダイオード11によって検出される。ここで、受光フォトダイオード11が検出する反射光L2の光量はアウタレンズ2の汚れに比例し、汚れがひどいほど受光フォトダイオード11が検出する光量が増える。
【0023】
前述のように受光フォトダイオード11の検出信号はA/D変換器12によってデジタル信号に変換され、このデジタル信号がコントローラ(ECU)13に入力される。すると、コントローラ(ECU)13は、受光フォトダイオード11が検出した光量によってアウタレンズ2の汚れの程度を判定し、その汚れの程度(光量の大きさ)が所定の閾値を超えるとウォッシャ駆動回路14を駆動してポンプ22に駆動信号を送信し、該ポンプ22を駆動する。すると、前述のように洗浄装置20の噴射ノズル25から洗浄液がプロジェクタ型ヘッドランプ1に向かって噴射され、該プロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の表面に付着した埃や泥等の汚れが除去される。
【0024】
ここで、以上の動作を図3に示すフローチャートに従って以下に説明する。
【0025】
車両のイグニッションスイッチがONされると(図3のステップS1)、ヘッドランプスイッチがONされてプロジェクタ型ヘッドランプ1が点灯されたか否かが判定される(ステップS2)。車両の夜間走行においてヘッドランプスイッチがONされてプロジェクタ型ヘッドランプ1が点灯されると(ステップS2での判断結果がYESである場合)には、汚れ検出がなされ(ステップS3)、汚れが検出されたか否かが判定される(ステップS4)。プロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の汚れが検出されると(ステップS4での判断結果がYESであると)、洗浄装置20が作動してプロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の表面に付着した埃や泥等の汚れが洗浄液の噴射によって除去される(ステップS5)。尚、ヘッドランプスイッチがOFFされてプロジェクタ型ヘッドランプ1が消灯されている場合(ステップS2での判断結果がNO)である場合には汚れの検出はなされず、又、アウタレンズ2の汚れが検出されない場合(ステップS4での判断結果がNOである場合)には洗浄装置20は動作しない。
【0026】
以上のように、本発明によれば、シャッタ6に受光フォトダイオード11を配置したため、該受光フォトダイオード11が外側から見えず、車両のデザイン性が受光フォトダイオード11によって損なわれることがない。
【0027】
又、プロジェクタ型ヘッドランプ1の汚れの検出に際して受光フォトダイオード11が検出する光量はアウタレンズ2の汚れに比例するため、コントローラ(ECU)13は受光フォトダイオード11からの検出信号に基づいて汚れの程度を判断することができ、アウタレンズ2の汚れによって反射した光L2はプロジェクタレンズ7によって、焦点の近辺に配置されたシャッタ6上の受光フォトダイオード11に集光するため、該受光フォトダイオード11によって汚れ(光量)を高精度に検出することができる。
【0028】
そして、プロジェクタ型ヘッドランプ1のアウタレンズ2の汚れが検出されるとコントローラ(ECU)13からの駆動信号によって洗浄装置20が駆動されてアウタレンズ2が自動洗浄されるようにしたため、省力化が図られてドライバの負担が軽減される。
【0029】
尚、以上の実施の形態では、プロジェクタヘッドランプのアウタレンズの汚れが検出された場合には洗浄液を噴射する洗浄装置を動作させてアウタレンズを自動洗浄するようにしたが、アウタレンズの表面を払拭するワイパーを動作させてアウタレンズ表面を自動清掃するようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 プロジェクタ型ヘッドランプ
2 アウタレンズ
3 灯室
4 光源
5 リフレクタ
6 シャッタ
7 プロジェクタレンズ
10 汚れ検出装置
11 受光フォトダイオード(受光センサ)
12 A/D変換器
13 コントローラ(ECU)
14 ウォッシャ駆動回路
20 洗浄装置
21 ウォッシャタンク
22 ポンプ
23 シリンダ
24 ピストン
25 噴射ノズル
26 チェックバルブ機構
L1 光源からの出射光
L2 アウタレンズからの反射光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその前面開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に光源、リフレクタ、シャッタ及びプロジェクタレンズを収容して成るプロジェクタ型ヘッドランプの前記アウタレンズの汚れを検出する装置であって、
前記シャッタに配置された受光センサと、該受光センサからの検出信号に基づいて前記アウタレンズの汚れを判定するコントローラを備えることを特徴とするプロジェクタ型ヘッドランプの汚れ検出装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記アウタレンズの汚れを検出すると該アウタレンズを洗浄する洗浄装置の駆動信号を出力することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ型ヘッドランプの汚れ検出装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−153985(P2011−153985A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16895(P2010−16895)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】