プロジェクタ用絞り装置
【課題】2枚の絞り板を各々反対方向へ移動させて飛び飛びの位置で停止するようにしたプロジェクタ用絞り装置を提供する。
【解決手段】第1の歯車部2は部分円弧部22と欠歯歯車部21とを有する。第2の歯車部1は、第1の歯車部2の部分円弧部22と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部12、第1の歯車部2の欠歯歯車部22と対応する歯車11およびピニオン13を有し、第1の歯車部2の部分円弧部22と円弧部12とが当接しているときには第1の歯車部2が回転しても歯車11は回転せず、当接が解除されたときには第1の歯車部2の欠歯歯車部21の歯と歯車11とが噛みあうことで第1の歯車部2の回転が歯車11に伝達される。2枚の絞り板6、7は、それぞれの一部に第2の歯車部1のピニオン13と噛みあうラック64、65が形成され、第2の歯車部1のピニオン13の回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する。
【解決手段】第1の歯車部2は部分円弧部22と欠歯歯車部21とを有する。第2の歯車部1は、第1の歯車部2の部分円弧部22と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部12、第1の歯車部2の欠歯歯車部22と対応する歯車11およびピニオン13を有し、第1の歯車部2の部分円弧部22と円弧部12とが当接しているときには第1の歯車部2が回転しても歯車11は回転せず、当接が解除されたときには第1の歯車部2の欠歯歯車部21の歯と歯車11とが噛みあうことで第1の歯車部2の回転が歯車11に伝達される。2枚の絞り板6、7は、それぞれの一部に第2の歯車部1のピニオン13と噛みあうラック64、65が形成され、第2の歯車部1のピニオン13の回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ用絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの各種プロジェクタにおいては、スクリーンサイズや周囲の明るさに応じて光源からの照明光量を変化させたり、照明光学系における光軸から離れた外側の光を絞ることでコントラストを向上させたりするため、照明光量を調整できるようにしたものがある。その場合、光源自体の発光光量を変化させるのではなく、光源から分解光学系の手前の所定の位置に絞り装置を配置するのが通常である。
【0003】
直線の開口規制縁を有する2枚の絞り板を一つのモータによって各々異なる方向へ作動させるようにしたプロジェクタ用絞り装置が特許文献1に記載されている。特許文献1には、概略以下の内容が開示されている。
2枚の地板の間に、L字形をした2枚の絞り板が配置されている。地板に取り付けられ、両側に腕部を持ち軸を中心にモータによって往復回転する2つの作動部材は、複数のピンを介して2枚の絞り板を開口部の対角線に沿って往復作動させる。往復作動により、2枚の絞り板の開口規制縁は照明光路用開口の大きさを変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−302108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶プロジェクタでは、照明効率向上とスクリーン上の照度均一性改善のため、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイからなる、いわゆるレンズアレイ方式の照明光学系が用いられる。係る照明光学系を採用するプロジェクタ内に配置される絞り装置は、光路用開口が常に矩形のままで、その光路面積を変化させ得る構成としているのが通常である。開口の縁がレンズアレイの個々のレンズセグメントを跨いだ状態で停止すると、レンズセグメントを跨いだ部分の照明光が部分的にけられ、スクリーン上の照度分布に悪影響を与える。したがって、開口の縁は、レンズアレイの複数のセグメントを跨ぐことなくレンズアレイの境界に沿って停止することが望ましい。
【0006】
特許文献1等の従来のプロジェクタ用絞り装置は、モータの回転角が開口縁の移動量と略比例している。したがって、レンズアレイの複数のレンズセグメントに沿って開口縁を停止させるためには、モータの回転角度を所定の角度に制御する必要がある。また、モータはその性質上、電源が入っていない状態では、その回転軸が空回りするので、何らかの要因にて開口縁が予期せぬ位置ずれを起こすおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、2枚の絞り板を一つのモータによって各々反対方向へ移動させて飛び飛びの位置でのみ停止するようにしたプロジェクタ用絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、部分円弧部(22)と欠歯歯車部(21)とを有する第1の歯車部(2)と、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部(12)、前記第1の歯車部(2)の欠歯歯車部と対応する歯車(11)およびピニオン(13)を有し、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と円弧部(12)とが当接しているときには前記第1の歯車部(2)が回転しても前記歯車(11)は回転せず、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と前記円弧部(12)との当接が解除されたときには前記第1の歯車部(2)の前記欠歯歯車部(21)の歯と歯車(11)とが噛みあうことで前記第1の歯車部(2)の回転が前記歯車(11)に伝達される第2の歯車部(1)と、それぞれの一部に前記第2の歯車部(1)の前記ピニオン(13)と噛みあうラック(64、74)が形成され、前記第2の歯車部(1)の前記ピニオン(13)の回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する2枚の絞り板(6、7)とを備えることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置を提供する。
また、上記の構成において、前記第2の歯車部(1)の前記歯車(11)の一部には非歯車部(111)を有し、前記第1の歯車部(2)の欠歯歯車部(21)の歯が前記第2の歯車部(1)の歯車(11)の非歯車部(111)に至ったときに第2の歯車部(1)の回転が停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2枚の絞り板を一つのモータによって各々反対方向へ移動させて飛び飛びの位置でのみ停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図である。
【図2】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図である。
【図3】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であり、カバー102を取り外した状態を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の平面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図7】第1の実施形態において、歯車部1(第2の歯車部)、歯車部2(第1の歯車部)、歯車部3(第3の歯車部)の関係を示す斜視図である。
【図8】第1の実施形態における歯車部3(第3の歯車部)に設けられた遮光板32とフォトセンサ9との関係を示す図である。
【図9】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が0度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図10】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が23度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図11】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が36度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図12】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が108度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図13】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が144度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図14】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が216度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図15】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が252度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図16】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が288度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図17】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が337度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図18】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が360度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の歯車部1(第2の歯車部)と歯車部2(第1の歯車部)の関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るプロジェクタ用絞り装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図を示す。図2は本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図を示す。図1または図2において、ベース101は絞り装置を保持する部材であり、長方形をした光路用の開口部101aを有している。カバー102はベース101との間に所定の間隔を空け、適宜な手段によってベース101に取り付けられている。カバー102には長方形をした光路用の切り込み部102aが形成されている。なお、本実施形態におけるカバー102は切り込み部102aを有しているが、ベース101と同様に開口を有する構造としてもよい。
【0013】
図3は第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であって、カバー102を取り外した状態を、また、図4は第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であって、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示している。図5は本実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図であって、ベース101、カバー102、歯車部3を取り外した状態を示している。図6は、本実施形態の平面図であってベース101、カバー102、歯車部3を取り外した状態を示している。図7は歯車部1(第2の歯車部)、歯車部2(第1の歯車部)、歯車部3(第3の歯車部)の関係を示す斜視図である。以下、図3から図7を参照して説明する。
【0014】
ベース101上には絞り板ガイド8a、8b、8c、8dが設けられている。絞り板6には溝61、62が設けられ、絞り板7には溝71、72が設けられている。絞り板ガイド8aは、絞り板6の溝61および絞り板7の溝71を貫通しており、絞り板ガイド8bは、絞り板6の溝62および絞り板7の溝72を貫通している。絞り板ガイド8c、8dには、図示していない周溝が設けられており、絞り板6、7の端部はそれぞれ絞り板ガイド8cの周溝、絞り板ガイド8dの周溝に押し当てられている。絞り板ガイド8a、8b、8c、8dにより、絞り板6、絞り板7はy軸方向(図1参照)の移動が規制されるとともに溝の方向であるx軸方向に移動可能とされている。絞り板6、7がx軸方向(図1参照)に変位することで、絞り板6、7およびベース101、カバー102の縁で形成される開口の面積、形状が変化する。
【0015】
本実施形態では、絞り板6、7にはそれぞれ切り込み部6a、7aが設けられている。切り込み部6a、7aは、絞り板6、7およびベース101、カバー102の縁で形成される開口の形状を所望の形状にするために設けるものであり、切り込み部の形状、大きさは任意に設定できる。また、切り込み部6a、7aはなくてもよい。
【0016】
次に絞り板を変位させる機構について説明する。絞り板6、7にはそれぞれ、開口部63および開口部73が設けられ、開口部63の上側の一部、開口部73の下側の一部にはそれぞれラック64、ラック74が形成されている。歯車部1は、ベース101に回転可能に保持されており、歯車部1の回転軸は開口部63、73の上下方向の開口中心に略一致している。歯車部1はベース101側から、ピニオン13、歯車11、円弧部12が同軸状に結合して構成され、3つの部分はお互いに同軸回転する。
【0017】
本実施形態の円弧部12においては、円周方向に等間隔(45度ピッチ)に8ケ所の凹状の円弧が設けられている。これは絞り板6、7を変位させて停止する位置が7ケ所あるためである。なお、円弧部12の凹状の円弧の数は必ずしも8ケ所に限定されない。絞り板6、7の停止する位置の数に応じて凹状の円弧の数を変更することができる。
【0018】
歯車部1のピニオン13の歯は絞り板6、7のラック64、74の歯と噛みあっている。したがって、歯車部1が回転するとき、歯車部1のピニオン13の回転は絞り板6、7のラック64、74の直線変位に変換され、絞り板6、7はx軸方向(図1参照)に、お互い逆方向に変位する。
【0019】
次に、モータ5の連続回転運動を歯車部1の断続回転運動に変換する機構について説明する。図7において、モータ5の回転軸は、ウォームギア4と結合している。本実施形態ではモータとしてステッピングモータを用いている。ステッピングモータはパルス20に対してモータが1回転する仕様としている。
【0020】
歯車部3は、はすば歯車31と遮光板32とからなる。歯車部2と歯車部3は、歯車部2に形成されたD形状の軸と歯車部3に形成されたD形状の穴により同軸状に結合され(図4、図7参照。)、同時回転を行う。歯車部2は、ベース101側から欠歯歯車部21と部分円弧部22とから構成されている。ウォームギア4は歯車部3のはすば歯車31の歯と噛みあっている。本実施形態では、ウォームギア4が15回転すると、はすば歯車31が1回転する仕様としている。モータ5の回転運動はウォームギア4を通じてはすば歯車31の回転運動に変換される。歯車部2は歯車部3と同時回転する。
【0021】
歯車部2に隣接して歯車部1が設けられる。歯車部2の欠歯歯車部21は歯車部1の歯車11と相対している。また、歯車部2の部分円弧部22は歯車部1の円弧部12と相対している。ここで、歯車部1の歯車11、円弧部12と、歯車部2の欠歯歯車部21、部分円弧部22で、いわゆるジェネバ機構(ジェネバストップ)が構成されている。ジェネバ機構とは、連続回転運動を断続回転運動に変換する機構の一種である。ジェネバ機構において、連続回転運動をする部分を原動車、断続回転運動をする部分を従動車と呼ぶ場合がある。本実施形態においては、歯車部2が原動車、歯車部1が従動車の機能を果たす。
【0022】
今、原動車である歯車部2の部分円弧部22が従動車である歯車部1の円弧部12と当接している状態を考える。歯車部2の部分円弧部22が従動車である歯車部1の円弧部12と当接している間は、歯車部2が回転しても歯車部1は回転しない。歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が歯車部1の円弧部12の凹状の円弧の中で空転するからである。
【0023】
歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が空転していくにつれ、歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が歯車部1の円弧部12の凹状の円弧から外れる状態となる。
外れると同時に、歯車部2の欠歯歯車部21の歯が歯車11の歯に噛み合いはじめる。歯車部2の欠歯歯車部21の歯が歯車11の歯に噛み合うと、歯車部2の回転に応じて歯車部1は回転し始める。回転により歯車部1の円弧部12の凹状の円弧が1つ送られた状態になった時に、1つ送られた歯車部1の円弧部12の凹状の円弧に歯車部2の凸状の円弧が入り始める。1つ送られた歯車部1の円弧部12の凹状の円弧に歯車部2の凸状の円弧が入ると、歯車部2が回転しても歯車部1が回転しない状態となる。
【0024】
以上の一連の動作を繰り返すことにより、原動車である歯車部2の連続回転運動が、従動車である歯車部1の断続回転運動に変換される。本実施形態においては、歯車部1の円弧部12の円弧の数は8個であるので、歯車部1は8つの異なった角度で停止する。歯車部2の凸状の円弧が歯車部1の凹状の円弧に入って、歯車部1が停止している状態では、歯車部1に外的な回転力が与えられても歯車部1は回転しない。歯車部1が回転しない状態は、絞り板6、7がx軸方向に変位しない状態である。この状態を逆にいうと、絞り板6、7に外力が加わっても歯車部1が回転しないため、絞り板6、7は停止状態を保つ。
【0025】
既述の通り、本実施形態のプロジェクタ用絞り装置に係る歯車部1の円弧部12においては、円周方向に等間隔(45度ピッチ)に8ケ所の凹状の円弧が設けられており、一方歯車部2の部分円弧部22においては1個の凸状の円弧を有する。円弧部12の凹状の円弧と部分円弧部22の凸状の円弧とは、凹凸状の円弧が当接する条件より、同じ曲率半径であることが望ましい。ただし、部品の寸法公差、配置精度を考慮して、本実施形態では円弧部12の凹状の円弧の曲率半径は、3〜3.05mm、部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径は2.975〜3mmとしている。円弧部12の凹状の円弧の曲率半径が部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径と比べて大きくなりすぎると歯車部1が停止する位置の誤差が大きくなるため、円弧部12の曲率半径は、歯車部1の停止する位置の誤差が許容できる範囲にすることが必要である。一方、円弧部12の凹状の円弧の曲率半径に比較して部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径が大きくなると両円弧が当接しにくくなるので、部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径は円弧部12の凹状の円弧の曲率半径に比較してあまり大きくならないようにする必要がある。
【0026】
図8は、本実施形態における歯車部3に設けられた遮光板32とフォトセンサ9との関係を示した図である。フォトセンサ9が歯車部3の遮光板32を挟むような状態に配置されている。遮光板32がフォトセンサ9のギャップ部を通過するとフォトセンサ9の受光部は遮光状態となり歯車部3および歯車部2の回転位相を確認できる。本実施形態においては多少のフォトセンサ9の取り付け位置のばらつきは許容される。歯車部2の回転停止角度が多少すれても断続回転する歯車部1が所定停止角度において停止状態になっていれば、絞り板6、7の停止位置が所定位置からずれることはないからである。
【0027】
図9〜図18は、本実施形態において、歯車部2が、0度から360度回転した場合の歯車部1および遮光板6、7の動作を示す図である。図中、(A)は全体を、(B)は歯車部1と歯車部2(および歯車部3)およびフォトセンサ9の部分を拡大して示している。また、(C)は歯車部1と歯車部2の部分を拡大して示している。なお、歯車部2と歯車部3は既述の通り同軸状に結合され、同時回転を行う。
【0028】
図9は、遮光板部31が上向きになりフォトセンサ9の受光が遮光されている状態を示している。この位置での歯車部2の角度を0度と置く。歯車部2は反時計方向に連続回転運動する。歯車部1は、時計方向に断続回転する。絞り板6の切り込み部6と絞り板7の切り込み部7aとの距離は、初期値として54mmであるとする。
【0029】
図10は、歯車部2が反時計方向に23度回転した状態を示している。図11は歯車部2が反時計方向に36度回転した状態を示している。これらの場合、歯車部1は停止しており、絞り板6、7も動かない。歯車部2と歯車部3が反時計方向に23度回転するとフォトセンサ9が受光状態となる。
【0030】
図12は歯車部2が反時計方向に108度回転した状態を示している。歯車部2が反時計方向に108度回転した状態で初めて歯車部1が時計方向に回転開始し、絞り板6、7はお互いの絞り板が接近する方向に動き始める。
【0031】
図13は、歯車部2が反時計方向に144度回転した状態を示している。図14は歯車部2が反時計方向に216度回転した状態を示している。これらの場合、歯車部1は時計方向に回転運動中で、絞り板6、7はお互いの絞り板が接近する方向に動いている。図15は、歯車部2が反時計方向に252度回転した状態を示している。反時計方向に252度回転した状態で、歯車部1の回転は終了し、絞り板6、7の動きも止まる。
【0032】
図16は、歯車部2が反時計方向に288度回転した状態を示している。図17は歯車部2が反時計方向に337度回転した状態を示している。これらの場合、モータ5が回転していても歯車部1は回転せず絞り板6、7も動かない。歯車部2が反時計方向に337度、回転した状態でフォトセンサ9の受光が遮光される。
【0033】
図18は歯車部2が、反時計方向に360度回転した場合を示している。絞り板6の凹部と絞り板7の凹部の距離は、歯車部2が、360度回転することで54mmから48.6mmに減少する。また、歯車部2が360度反時計方向に回転することにより、歯車部1は、円弧部12の円弧が1個だけ時計方向に送られた状態になる。
【0034】
さらに歯車部2を反時計方向に回転させると、歯車部2と歯車部1の相対動作については、図9から図18と同様な動作が進行する。
【0035】
<第2の実施形態>
図19は本発明の第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の歯車部1と歯車部2の関係を示す斜視図である。第1の実施形態におけるプロジェクタ用絞り装置では、歯車部1の歯車11は全周にわたり歯車が設けられている。それに対して、第2の実施形態においては、歯車11は一部の領域111において歯車が刻まれていない。
【0036】
第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置においても、モータ5の連続回転運動はウォームギア4を通じて歯車部3のはすば歯車31の連続回転運動に変換され、歯車部2の連続回転運動は歯車部1の断続回転運動に変換される。しかしながら、歯車部1が断続回転して、ある回転位置に至ったときには、歯車部2の欠歯歯車部21は、歯車部1の歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)111に達する。その時点でモータが回転しても、歯車部1はそれ以上回転しなくなる。
【0037】
絞り板のラック64、74のx軸方向の位置に対する歯車部1の歯車11における歯車の刻まれていない領域(非歯車部)111の角度を、特定の角度として組立てすることにより、絞り板6、7が最も接近した状態の時に、歯車部1がそれ以上回転しなくなったり、逆に絞り板6、7が最も開いた状態の時に、歯車部1がそれ以上回転しなくなったりさせることができる。すなわち、歯車部1の歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)111を設けることで、絞り板6、7が最も接近した状態のときにストッパーとして作用させたり、逆に最も開いた状態のときにストッパーとして作用させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 歯車部(第2の歯車部)、11 歯車、12 円弧部、13 ピニオン、
111 歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)、
2 歯車部(第1の歯車部)、21 欠歯歯車部、22 部分円弧部、
3 歯車部(第3の歯車部)、31 はす歯歯車、32 遮光板
4 ウォームギア
5 モータ
6 絞り板、 6a 切り込み部、61 溝、62 溝、63 開口部、
64 ラック、
7 絞り板、 7a 切り込み部、71 溝、72 溝、73 開口部、
74 ラック、
8a、8b、8c、8d 絞り板ガイド
9 フォトセンサ、
101 ベース、101a 開口部
102 カバー、102a 切り込み部
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ用絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクタなどの各種プロジェクタにおいては、スクリーンサイズや周囲の明るさに応じて光源からの照明光量を変化させたり、照明光学系における光軸から離れた外側の光を絞ることでコントラストを向上させたりするため、照明光量を調整できるようにしたものがある。その場合、光源自体の発光光量を変化させるのではなく、光源から分解光学系の手前の所定の位置に絞り装置を配置するのが通常である。
【0003】
直線の開口規制縁を有する2枚の絞り板を一つのモータによって各々異なる方向へ作動させるようにしたプロジェクタ用絞り装置が特許文献1に記載されている。特許文献1には、概略以下の内容が開示されている。
2枚の地板の間に、L字形をした2枚の絞り板が配置されている。地板に取り付けられ、両側に腕部を持ち軸を中心にモータによって往復回転する2つの作動部材は、複数のピンを介して2枚の絞り板を開口部の対角線に沿って往復作動させる。往復作動により、2枚の絞り板の開口規制縁は照明光路用開口の大きさを変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−302108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶プロジェクタでは、照明効率向上とスクリーン上の照度均一性改善のため、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイからなる、いわゆるレンズアレイ方式の照明光学系が用いられる。係る照明光学系を採用するプロジェクタ内に配置される絞り装置は、光路用開口が常に矩形のままで、その光路面積を変化させ得る構成としているのが通常である。開口の縁がレンズアレイの個々のレンズセグメントを跨いだ状態で停止すると、レンズセグメントを跨いだ部分の照明光が部分的にけられ、スクリーン上の照度分布に悪影響を与える。したがって、開口の縁は、レンズアレイの複数のセグメントを跨ぐことなくレンズアレイの境界に沿って停止することが望ましい。
【0006】
特許文献1等の従来のプロジェクタ用絞り装置は、モータの回転角が開口縁の移動量と略比例している。したがって、レンズアレイの複数のレンズセグメントに沿って開口縁を停止させるためには、モータの回転角度を所定の角度に制御する必要がある。また、モータはその性質上、電源が入っていない状態では、その回転軸が空回りするので、何らかの要因にて開口縁が予期せぬ位置ずれを起こすおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、2枚の絞り板を一つのモータによって各々反対方向へ移動させて飛び飛びの位置でのみ停止するようにしたプロジェクタ用絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、部分円弧部(22)と欠歯歯車部(21)とを有する第1の歯車部(2)と、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部(12)、前記第1の歯車部(2)の欠歯歯車部と対応する歯車(11)およびピニオン(13)を有し、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と円弧部(12)とが当接しているときには前記第1の歯車部(2)が回転しても前記歯車(11)は回転せず、前記第1の歯車部(2)の部分円弧部(22)と前記円弧部(12)との当接が解除されたときには前記第1の歯車部(2)の前記欠歯歯車部(21)の歯と歯車(11)とが噛みあうことで前記第1の歯車部(2)の回転が前記歯車(11)に伝達される第2の歯車部(1)と、それぞれの一部に前記第2の歯車部(1)の前記ピニオン(13)と噛みあうラック(64、74)が形成され、前記第2の歯車部(1)の前記ピニオン(13)の回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する2枚の絞り板(6、7)とを備えることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置を提供する。
また、上記の構成において、前記第2の歯車部(1)の前記歯車(11)の一部には非歯車部(111)を有し、前記第1の歯車部(2)の欠歯歯車部(21)の歯が前記第2の歯車部(1)の歯車(11)の非歯車部(111)に至ったときに第2の歯車部(1)の回転が停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2枚の絞り板を一つのモータによって各々反対方向へ移動させて飛び飛びの位置でのみ停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図である。
【図2】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図である。
【図3】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であり、カバー102を取り外した状態を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の平面図であり、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示す図である。
【図7】第1の実施形態において、歯車部1(第2の歯車部)、歯車部2(第1の歯車部)、歯車部3(第3の歯車部)の関係を示す斜視図である。
【図8】第1の実施形態における歯車部3(第3の歯車部)に設けられた遮光板32とフォトセンサ9との関係を示す図である。
【図9】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が0度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図10】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が23度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図11】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が36度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図12】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が108度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図13】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が144度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図14】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が216度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図15】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が252度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図16】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が288度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図17】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が337度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図18】第1の実施形態において、歯車部2(第1の歯車部)の回転角が360度の場合の歯車部1(第2の歯車部)および遮光板6、7の動作を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の歯車部1(第2の歯車部)と歯車部2(第1の歯車部)の関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るプロジェクタ用絞り装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図を示す。図2は本発明の第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図を示す。図1または図2において、ベース101は絞り装置を保持する部材であり、長方形をした光路用の開口部101aを有している。カバー102はベース101との間に所定の間隔を空け、適宜な手段によってベース101に取り付けられている。カバー102には長方形をした光路用の切り込み部102aが形成されている。なお、本実施形態におけるカバー102は切り込み部102aを有しているが、ベース101と同様に開口を有する構造としてもよい。
【0013】
図3は第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であって、カバー102を取り外した状態を、また、図4は第1の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の正面図であって、ベース101、カバー102、歯車部3(第3の歯車部)を取り外した状態を示している。図5は本実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の背面図であって、ベース101、カバー102、歯車部3を取り外した状態を示している。図6は、本実施形態の平面図であってベース101、カバー102、歯車部3を取り外した状態を示している。図7は歯車部1(第2の歯車部)、歯車部2(第1の歯車部)、歯車部3(第3の歯車部)の関係を示す斜視図である。以下、図3から図7を参照して説明する。
【0014】
ベース101上には絞り板ガイド8a、8b、8c、8dが設けられている。絞り板6には溝61、62が設けられ、絞り板7には溝71、72が設けられている。絞り板ガイド8aは、絞り板6の溝61および絞り板7の溝71を貫通しており、絞り板ガイド8bは、絞り板6の溝62および絞り板7の溝72を貫通している。絞り板ガイド8c、8dには、図示していない周溝が設けられており、絞り板6、7の端部はそれぞれ絞り板ガイド8cの周溝、絞り板ガイド8dの周溝に押し当てられている。絞り板ガイド8a、8b、8c、8dにより、絞り板6、絞り板7はy軸方向(図1参照)の移動が規制されるとともに溝の方向であるx軸方向に移動可能とされている。絞り板6、7がx軸方向(図1参照)に変位することで、絞り板6、7およびベース101、カバー102の縁で形成される開口の面積、形状が変化する。
【0015】
本実施形態では、絞り板6、7にはそれぞれ切り込み部6a、7aが設けられている。切り込み部6a、7aは、絞り板6、7およびベース101、カバー102の縁で形成される開口の形状を所望の形状にするために設けるものであり、切り込み部の形状、大きさは任意に設定できる。また、切り込み部6a、7aはなくてもよい。
【0016】
次に絞り板を変位させる機構について説明する。絞り板6、7にはそれぞれ、開口部63および開口部73が設けられ、開口部63の上側の一部、開口部73の下側の一部にはそれぞれラック64、ラック74が形成されている。歯車部1は、ベース101に回転可能に保持されており、歯車部1の回転軸は開口部63、73の上下方向の開口中心に略一致している。歯車部1はベース101側から、ピニオン13、歯車11、円弧部12が同軸状に結合して構成され、3つの部分はお互いに同軸回転する。
【0017】
本実施形態の円弧部12においては、円周方向に等間隔(45度ピッチ)に8ケ所の凹状の円弧が設けられている。これは絞り板6、7を変位させて停止する位置が7ケ所あるためである。なお、円弧部12の凹状の円弧の数は必ずしも8ケ所に限定されない。絞り板6、7の停止する位置の数に応じて凹状の円弧の数を変更することができる。
【0018】
歯車部1のピニオン13の歯は絞り板6、7のラック64、74の歯と噛みあっている。したがって、歯車部1が回転するとき、歯車部1のピニオン13の回転は絞り板6、7のラック64、74の直線変位に変換され、絞り板6、7はx軸方向(図1参照)に、お互い逆方向に変位する。
【0019】
次に、モータ5の連続回転運動を歯車部1の断続回転運動に変換する機構について説明する。図7において、モータ5の回転軸は、ウォームギア4と結合している。本実施形態ではモータとしてステッピングモータを用いている。ステッピングモータはパルス20に対してモータが1回転する仕様としている。
【0020】
歯車部3は、はすば歯車31と遮光板32とからなる。歯車部2と歯車部3は、歯車部2に形成されたD形状の軸と歯車部3に形成されたD形状の穴により同軸状に結合され(図4、図7参照。)、同時回転を行う。歯車部2は、ベース101側から欠歯歯車部21と部分円弧部22とから構成されている。ウォームギア4は歯車部3のはすば歯車31の歯と噛みあっている。本実施形態では、ウォームギア4が15回転すると、はすば歯車31が1回転する仕様としている。モータ5の回転運動はウォームギア4を通じてはすば歯車31の回転運動に変換される。歯車部2は歯車部3と同時回転する。
【0021】
歯車部2に隣接して歯車部1が設けられる。歯車部2の欠歯歯車部21は歯車部1の歯車11と相対している。また、歯車部2の部分円弧部22は歯車部1の円弧部12と相対している。ここで、歯車部1の歯車11、円弧部12と、歯車部2の欠歯歯車部21、部分円弧部22で、いわゆるジェネバ機構(ジェネバストップ)が構成されている。ジェネバ機構とは、連続回転運動を断続回転運動に変換する機構の一種である。ジェネバ機構において、連続回転運動をする部分を原動車、断続回転運動をする部分を従動車と呼ぶ場合がある。本実施形態においては、歯車部2が原動車、歯車部1が従動車の機能を果たす。
【0022】
今、原動車である歯車部2の部分円弧部22が従動車である歯車部1の円弧部12と当接している状態を考える。歯車部2の部分円弧部22が従動車である歯車部1の円弧部12と当接している間は、歯車部2が回転しても歯車部1は回転しない。歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が歯車部1の円弧部12の凹状の円弧の中で空転するからである。
【0023】
歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が空転していくにつれ、歯車部2の部分円弧部22の凸状の円弧が歯車部1の円弧部12の凹状の円弧から外れる状態となる。
外れると同時に、歯車部2の欠歯歯車部21の歯が歯車11の歯に噛み合いはじめる。歯車部2の欠歯歯車部21の歯が歯車11の歯に噛み合うと、歯車部2の回転に応じて歯車部1は回転し始める。回転により歯車部1の円弧部12の凹状の円弧が1つ送られた状態になった時に、1つ送られた歯車部1の円弧部12の凹状の円弧に歯車部2の凸状の円弧が入り始める。1つ送られた歯車部1の円弧部12の凹状の円弧に歯車部2の凸状の円弧が入ると、歯車部2が回転しても歯車部1が回転しない状態となる。
【0024】
以上の一連の動作を繰り返すことにより、原動車である歯車部2の連続回転運動が、従動車である歯車部1の断続回転運動に変換される。本実施形態においては、歯車部1の円弧部12の円弧の数は8個であるので、歯車部1は8つの異なった角度で停止する。歯車部2の凸状の円弧が歯車部1の凹状の円弧に入って、歯車部1が停止している状態では、歯車部1に外的な回転力が与えられても歯車部1は回転しない。歯車部1が回転しない状態は、絞り板6、7がx軸方向に変位しない状態である。この状態を逆にいうと、絞り板6、7に外力が加わっても歯車部1が回転しないため、絞り板6、7は停止状態を保つ。
【0025】
既述の通り、本実施形態のプロジェクタ用絞り装置に係る歯車部1の円弧部12においては、円周方向に等間隔(45度ピッチ)に8ケ所の凹状の円弧が設けられており、一方歯車部2の部分円弧部22においては1個の凸状の円弧を有する。円弧部12の凹状の円弧と部分円弧部22の凸状の円弧とは、凹凸状の円弧が当接する条件より、同じ曲率半径であることが望ましい。ただし、部品の寸法公差、配置精度を考慮して、本実施形態では円弧部12の凹状の円弧の曲率半径は、3〜3.05mm、部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径は2.975〜3mmとしている。円弧部12の凹状の円弧の曲率半径が部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径と比べて大きくなりすぎると歯車部1が停止する位置の誤差が大きくなるため、円弧部12の曲率半径は、歯車部1の停止する位置の誤差が許容できる範囲にすることが必要である。一方、円弧部12の凹状の円弧の曲率半径に比較して部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径が大きくなると両円弧が当接しにくくなるので、部分円弧部22の凸状の円弧の曲率半径は円弧部12の凹状の円弧の曲率半径に比較してあまり大きくならないようにする必要がある。
【0026】
図8は、本実施形態における歯車部3に設けられた遮光板32とフォトセンサ9との関係を示した図である。フォトセンサ9が歯車部3の遮光板32を挟むような状態に配置されている。遮光板32がフォトセンサ9のギャップ部を通過するとフォトセンサ9の受光部は遮光状態となり歯車部3および歯車部2の回転位相を確認できる。本実施形態においては多少のフォトセンサ9の取り付け位置のばらつきは許容される。歯車部2の回転停止角度が多少すれても断続回転する歯車部1が所定停止角度において停止状態になっていれば、絞り板6、7の停止位置が所定位置からずれることはないからである。
【0027】
図9〜図18は、本実施形態において、歯車部2が、0度から360度回転した場合の歯車部1および遮光板6、7の動作を示す図である。図中、(A)は全体を、(B)は歯車部1と歯車部2(および歯車部3)およびフォトセンサ9の部分を拡大して示している。また、(C)は歯車部1と歯車部2の部分を拡大して示している。なお、歯車部2と歯車部3は既述の通り同軸状に結合され、同時回転を行う。
【0028】
図9は、遮光板部31が上向きになりフォトセンサ9の受光が遮光されている状態を示している。この位置での歯車部2の角度を0度と置く。歯車部2は反時計方向に連続回転運動する。歯車部1は、時計方向に断続回転する。絞り板6の切り込み部6と絞り板7の切り込み部7aとの距離は、初期値として54mmであるとする。
【0029】
図10は、歯車部2が反時計方向に23度回転した状態を示している。図11は歯車部2が反時計方向に36度回転した状態を示している。これらの場合、歯車部1は停止しており、絞り板6、7も動かない。歯車部2と歯車部3が反時計方向に23度回転するとフォトセンサ9が受光状態となる。
【0030】
図12は歯車部2が反時計方向に108度回転した状態を示している。歯車部2が反時計方向に108度回転した状態で初めて歯車部1が時計方向に回転開始し、絞り板6、7はお互いの絞り板が接近する方向に動き始める。
【0031】
図13は、歯車部2が反時計方向に144度回転した状態を示している。図14は歯車部2が反時計方向に216度回転した状態を示している。これらの場合、歯車部1は時計方向に回転運動中で、絞り板6、7はお互いの絞り板が接近する方向に動いている。図15は、歯車部2が反時計方向に252度回転した状態を示している。反時計方向に252度回転した状態で、歯車部1の回転は終了し、絞り板6、7の動きも止まる。
【0032】
図16は、歯車部2が反時計方向に288度回転した状態を示している。図17は歯車部2が反時計方向に337度回転した状態を示している。これらの場合、モータ5が回転していても歯車部1は回転せず絞り板6、7も動かない。歯車部2が反時計方向に337度、回転した状態でフォトセンサ9の受光が遮光される。
【0033】
図18は歯車部2が、反時計方向に360度回転した場合を示している。絞り板6の凹部と絞り板7の凹部の距離は、歯車部2が、360度回転することで54mmから48.6mmに減少する。また、歯車部2が360度反時計方向に回転することにより、歯車部1は、円弧部12の円弧が1個だけ時計方向に送られた状態になる。
【0034】
さらに歯車部2を反時計方向に回転させると、歯車部2と歯車部1の相対動作については、図9から図18と同様な動作が進行する。
【0035】
<第2の実施形態>
図19は本発明の第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置の歯車部1と歯車部2の関係を示す斜視図である。第1の実施形態におけるプロジェクタ用絞り装置では、歯車部1の歯車11は全周にわたり歯車が設けられている。それに対して、第2の実施形態においては、歯車11は一部の領域111において歯車が刻まれていない。
【0036】
第2の実施形態に係るプロジェクタ用絞り装置においても、モータ5の連続回転運動はウォームギア4を通じて歯車部3のはすば歯車31の連続回転運動に変換され、歯車部2の連続回転運動は歯車部1の断続回転運動に変換される。しかしながら、歯車部1が断続回転して、ある回転位置に至ったときには、歯車部2の欠歯歯車部21は、歯車部1の歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)111に達する。その時点でモータが回転しても、歯車部1はそれ以上回転しなくなる。
【0037】
絞り板のラック64、74のx軸方向の位置に対する歯車部1の歯車11における歯車の刻まれていない領域(非歯車部)111の角度を、特定の角度として組立てすることにより、絞り板6、7が最も接近した状態の時に、歯車部1がそれ以上回転しなくなったり、逆に絞り板6、7が最も開いた状態の時に、歯車部1がそれ以上回転しなくなったりさせることができる。すなわち、歯車部1の歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)111を設けることで、絞り板6、7が最も接近した状態のときにストッパーとして作用させたり、逆に最も開いた状態のときにストッパーとして作用させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 歯車部(第2の歯車部)、11 歯車、12 円弧部、13 ピニオン、
111 歯車11における歯車が刻まれていない領域(非歯車部)、
2 歯車部(第1の歯車部)、21 欠歯歯車部、22 部分円弧部、
3 歯車部(第3の歯車部)、31 はす歯歯車、32 遮光板
4 ウォームギア
5 モータ
6 絞り板、 6a 切り込み部、61 溝、62 溝、63 開口部、
64 ラック、
7 絞り板、 7a 切り込み部、71 溝、72 溝、73 開口部、
74 ラック、
8a、8b、8c、8d 絞り板ガイド
9 フォトセンサ、
101 ベース、101a 開口部
102 カバー、102a 切り込み部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分円弧部と欠歯歯車部とを有する第1の歯車部と、
前記第1の歯車部の部分円弧部と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部、前記第1の歯車部の欠歯歯車部と対応する歯車およびピニオンを有し、前記第1の歯車部の部分円弧部と円弧部とが当接しているときには前記第1の歯車部が回転しても前記歯車は回転せず、前記第1の歯車部の部分円弧部と前記円弧部との当接が解除されたときには前記第1の歯車部の前記欠歯歯車部の歯と歯車とが噛みあうことで前記第1の歯車部の回転が前記歯車に伝達される第2の歯車部と、
それぞれの一部に前記第2の歯車部の前記ピニオンと噛みあうラックが形成され、前記第2の歯車部の前記ピニオンの回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する2枚の絞り板と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置。
【請求項2】
前記第2の歯車部の前記歯車の一部には非歯車部を有し、前記第1の歯車部の欠歯歯車部の歯が前記第2の歯車部の歯車の非歯車部に至ったときに第2の歯車部の回転が停止することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用絞り装置。
【請求項1】
部分円弧部と欠歯歯車部とを有する第1の歯車部と、
前記第1の歯車部の部分円弧部と対応して円周方向に凹状の円弧が複数設けられている円弧部、前記第1の歯車部の欠歯歯車部と対応する歯車およびピニオンを有し、前記第1の歯車部の部分円弧部と円弧部とが当接しているときには前記第1の歯車部が回転しても前記歯車は回転せず、前記第1の歯車部の部分円弧部と前記円弧部との当接が解除されたときには前記第1の歯車部の前記欠歯歯車部の歯と歯車とが噛みあうことで前記第1の歯車部の回転が前記歯車に伝達される第2の歯車部と、
それぞれの一部に前記第2の歯車部の前記ピニオンと噛みあうラックが形成され、前記第2の歯車部の前記ピニオンの回転に応じてそれぞれが反対の方向に移動する2枚の絞り板と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ用絞り装置。
【請求項2】
前記第2の歯車部の前記歯車の一部には非歯車部を有し、前記第1の歯車部の欠歯歯車部の歯が前記第2の歯車部の歯車の非歯車部に至ったときに第2の歯車部の回転が停止することを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ用絞り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−42614(P2012−42614A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182481(P2010−182481)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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