説明

プロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法

【課題】視聴者の位置を限定することなく臨場感を得ることができるプロジェクタ装置を提供することである。
【解決手段】本発明にかかるプロジェクタ装置100は、入力された映像信号に応じた映像21を投射すると共に、当該映像21の水平方向に対する投射角度を変更可能な映像投射部110と、入力された音声信号に応じた音声22を出力するスピーカ122と、を備える。スピーカ122は、スピーカ122から出力された音声22が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法に関し、特に投射映像と音声とを出力可能なプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声を出力するためのスピーカが内蔵されたプロジェクタ装置が開発されている。視聴者はこのようなプロジェクタ装置を用いることで、プロジェクタ装置から投射された映像と共に音声を楽しむことができる。
【0003】
特許文献1には、視聴者に対して臨場感を与えることができるプロジェクタ装置に関する技術が開示されている。特許文献1に開示されている技術では、映像投射装置とスクリーンとのなす角度と、映像投射装置とスクリーンとの距離と、映像投射装置と視聴者との距離と、映像投射装置と音響出力部とのなす角度とに基づいて、音像の位置を規定している。
【0004】
特許文献2には、映像が投射されるスクリーンの方向から音声が聞こえてくることを実現し、視聴者に違和感を与えないプロジェクタ装置に関する技術が開示されている。特許文献2に開示されている技術では、指向性スピーカを用いてスクリーンの方向に音声を出力し、この音声をスクリーンで反射させることで、スクリーンと同一方向から音声が聞こえるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−117624号公報
【特許文献2】特開2007−199322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピーカが内蔵されたプロジェクタ装置では、映像はスクリーンに投射されているにもかかわらず、音声はプロジェクタ装置から聞こえるため、映像と音声とが隔離されてしまい、視聴者は臨場感を楽しむことができないという問題がある。
【0007】
この問題を解決するために特許文献1に開示されている技術では、映像投射装置とスクリーンとのなす角度と、映像投射装置とスクリーンとの距離と、映像投射装置と視聴者との距離と、映像投射装置と音響出力部とのなす角度とに基づいて、音像の位置を規定している。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、音像の位置を規定するために視聴者の位置を規定しているため、例えば複数の視聴者が存在する場合は、特定の視聴者以外の視聴者は臨場感を楽しむことができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示されている技術では、指向性スピーカを用いてスクリーンの方向に音声を出力し、この音声をスクリーンで反射させることで、スクリーンと同一方向から音声が聞こえるようにしている。しかしながら、特許文献2に開示されている技術では、指向性スピーカを用いているために音が広がる範囲が限定されてしまい、視聴者に臨場感を与えることができないという問題がある。
【0009】
上記課題に鑑み本発明の目的は、視聴者の位置を限定することなく臨場感を得ることができるプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるプロジェクタ装置は、入力された映像信号に応じた映像を投射すると共に、前記映像の投射角度を変更可能な映像投射部と、入力された音声信号に応じた音声を出力するスピーカと、を備え、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように設けられている。
【0011】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が、前記映像が投射される投射面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられていてもよい。
【0012】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が、前記視聴者の背後に配置されている壁面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられていてもよい。
【0013】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が天井で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられていてもよい。
【0014】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、前記スピーカから出力された音声が、前記映像が投射される投射面または前記視聴者の背後に配置されている壁面で反射され、更に天井で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられていてもよい。
【0015】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が天井で反射され、更に前記映像が投射される投射面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられていてもよい。
【0016】
上記プロジェクタ装置において、前記映像投射部は、前記映像を天井に投射可能に構成され、前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が壁面で反射された後、更に前記天井で反射されるように設けられていてもよい。
【0017】
上記プロジェクタ装置において、前記映像投射部は、装置の設置面に平行した水平方向に対して0度以上180度以下の範囲で前記映像の投射角度を変更可能に構成されていてもよい。
【0018】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカは、当該スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度が所定の角度となるように設けられていてもよい。
【0019】
上記プロジェクタ装置において、前記プロジェクタ装置が2つのスピーカを備える場合、前記スピーカはそれぞれ所定の開き角度を有するように設けられていてもよい。
【0020】
上記プロジェクタ装置は更に、前記投射角度を検出する投射角検出部と、前記プロジェクタ装置と前記映像が投射される投射面との距離である投射距離を検出する投射距離検出部と、前記プロジェクタ装置と当該プロジェクタ装置の周囲に存在する物体との距離である空間距離を検出する空間距離検出部と、前記投射角度、前記投射距離、および前記空間距離に応じて、前記スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度を決定するスピーカ角度決定部と、前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定するスピーカ角度設定部と、を備えていてもよい。
【0021】
上記プロジェクタ装置において、前記空間距離検出部は、複数の投射角度において前記空間距離を検出してもよい。
【0022】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定した後、当該設定後の角度に固定する固定モードと、前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定した後、更に、前記投射角度および前記投射距離の変更に追従して前記スピーカ角度を再設定する可変モードと、を備えていてもよい。
【0023】
上記プロジェクタ装置において、前記入力された音声信号がステレオ信号である場合、前記入力された音声信号の一方の信号である第1の信号から前記入力された音声信号の他方の信号である第2の信号を減算することで第3の信号を生成し、前記第1の信号を第1の減衰率で減衰した信号と前記第3の信号を第2の減衰率で減衰した信号とを加算することで第1の出力信号を生成し、前記第2の信号を前記第1の減衰率で減衰した信号から前記第3の信号を前記第2の減衰率で減衰した信号を減算することで第2の出力信号を生成し、前記スピーカは前記第1および第2の出力信号に応じた音声を出力してもよい。
【0024】
上記プロジェクタ装置において、前記入力された音声信号の一方の信号である前記第1の信号から前記入力された音声信号の他方の信号である前記第2の信号を減算した後の信号に位相処理を実施することで前記第3の信号を生成してもよい。
【0025】
上記プロジェクタ装置において、前記スピーカから出力された音声が反射される前記反射面に障害物がある場合、前記スピーカから出力される前記音声の音像が上方に移動するような処理を実施してもよい。
【0026】
本発明にかかるプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法は、入力された映像信号に応じた映像を投射すると共に、前記映像の投射角度を変更可能な映像投射部と、入力された音声信号に応じた音声を出力するスピーカと、を備えるプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法であって、前記スピーカから出力された音声が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように前記スピーカの角度を設定する。
【0027】
上記プロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法において、前記投射角度を検出し、前記プロジェクタ装置と前記映像が投射される投射面との距離である投射距離を検出し、前記プロジェクタ装置と当該プロジェクタ装置の周囲に存在する物体との距離である空間距離を検出し、前記投射角度、前記投射距離、および前記空間距離に応じて、前記スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度を決定し、前記スピーカ角度を前記決定された角度に設定してもよい。
【0028】
上記プロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法において、複数の投射角度において前記空間距離を検出してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、視聴者の位置を限定することなく臨場感を得ることができるプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の斜視図である。
【図1B】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の透視側面図である。
【図1C】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の正面図である。
【図1D】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の上面図である。
【図2】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置を示すブロック図である。
【図3A】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の使用例を説明するための図である。
【図3B】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の使用例を説明するための図である。
【図3C】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の使用例を説明するための図である。
【図4】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置の使用例を説明するための図である。
【図5A】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置のスピーカの配置を説明するための図である。
【図5B】実施の形態1にかかるプロジェクタ装置のスピーカの配置を説明するための図である。
【図6】実施の形態2にかかるプロジェクタ装置を示すブロック図である。
【図7】実施の形態2にかかるプロジェクタ装置が備える空間距離検出部の動作の一例を説明するための図である。
【図8】実施の形態2にかかるプロジェクタ装置のスピーカ角度決定部におけるスピーカ角度の決定方法を説明するための図である。
【図9】実施の形態2にかかるプロジェクタ装置のスピーカ角度決定部におけるスピーカ角度の決定方法を説明するための図である。
【図10】実施の形態2にかかるプロジェクタ装置のスピーカ角度を設定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施の形態3にかかるプロジェクタ装置を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3にかかるプロジェクタ装置が備える信号処理部の一例を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3にかかるプロジェクタ装置が備える信号処理部の他の例を示すブロック図である。
【図14】実施の形態3にかかるプロジェクタ装置が備える信号処理部の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1A〜図1Dは、実施の形態1にかかるプロジェクタ装置を説明するための図である。図1Aは斜視図、図1Bは透視側面図、図1Cは正面図、図1Dは上面図である。図1Aに示すように、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100は、上部筐体11と下部筐体12とを有する。上部筐体11は開口部10を備え、上部筐体11の内部に設けられた光学系(投射レンズ等)112から映像を投射することができる。
【0032】
上部筐体11は円柱状に形成されている。図1B、図1Cに示すように、上部筐体11は、下部筐体12の左側16および右側17に固定されたシャフト15を中心軸として回動可能に支持されている。光学系112は上部筐体11に固定されているので、上部筐体11がシャフト15を中心軸として回動することで、投射される映像の投射角度αを変更することができる。ここで、投射角度αは、光学系112から投射される映像の光軸41と水平方向42とがなす角度(正中面の角度)である。本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100は、例えば、水平方向42に対して0度以上180度以下の範囲で映像の投射角度αを変更することができる。例えば、投射角度が90度の場合は、天井に映像を投射することができる。また、投射角度αが0度の場合は映像が前面13側から投射され、投射角度αが180度の場合は映像が背面14側から投射される。
【0033】
上部筐体11は、例えば駆動機構(不図示)を用いて駆動するように構成してもよく、また視聴者が手動で回動するように構成してもよい。なお、図1A〜図1Dでは、映像を投射するための構成要素として光学系112のみを示したが、映像を投射するためのこれ以外の構成要素(図2に示す映像出力部111など)も上部筐体11の内部に設けられている。
【0034】
また、図1Bに示すように、プロジェクタ装置100は下部筐体12の背面14に音声信号に応じた音声を出力するスピーカ122を備える。スピーカ122は、スピーカ122から出力される音声の出力方向43と水平方向44とがなすスピーカ角度(正中面の角度)βが所定の角度となるように取り付けられている。ここで、水平方向44とは下部筐体12の背面14の法線方向であり、プロジェクタ装置100が配置されている床等の設置面に平行である。なお、上記の水平方向42と水平方向44は互いに逆向きである。図1C、図1Dに示すように、スピーカ122_1は下部筐体12の右側17に取り付けられており、スピーカ122_2は下部筐体12の左側16に取り付けられている。
【0035】
次に、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100の構成について、図2に示すブロック図を用いて説明する。図2に示すように、プロジェクタ装置100は、入力された映像信号に応じた映像を投射する映像投射部110と、入力された音声信号に応じた音声を出力する音声処理部120と、を有する。例えば、映像投射部110は上部筐体11に収容されており、音声処理部120は下部筐体に12に収容されている。映像投射部110は、映像出力部111と光学系112と有する。また、音声処理部120は、アンプ121とスピーカ122とを有する。
【0036】
映像投射部110が備える映像出力部111は、入力された映像信号に応じて高輝度な映像を出力する。例えば、映像出力部111は、光源、反射型液晶素子、および偏光ビームスプリッタを有する。光源から出力された光は、偏光ビームスプリッタを透過し、反射型液晶素子によって外部に投射すべき投射像として反射され、再び偏光ビームスプリッタに戻る。そして、反射型液晶素子による投射像は偏光ビームスプリッタで反射されて光学系112に出力される。
【0037】
光学系112は、映像出力部111から出力された高輝度な映像を拡大して投射映像21を生成し、生成された投射映像21を投射面に投射する。光学系112は、例えば焦点を調整するためのレンズや、映像出力部111から出力された映像を拡大する投射レンズを有する。
【0038】
音声処理部120が備えるアンプ121は、入力された音声信号に応じて増幅された音声信号を生成し、生成された音声信号をスピーカ122に出力する。スピーカ122は、アンプ121から出力された音声信号に応じた音声22を出力する。ここで、スピーカ122は、スピーカ122から出力された音声が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように設けられている。スピーカ122としては、例えば可聴帯域の音声を出力することができるスピーカを用いることができる。例えば、スピーカ122として120Hz以上の音声を出力することができるスピーカを用いることができる。また、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100では、指向性スピーカ以外のスピーカを用いる。
【0039】
図3Aは、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100の使用例を説明するための図である。図3Aに示す使用例では、投射映像21は投射面23に向けて投射され、音声22は投射面23に向けて出力されている。プロジェクタ装置100は、テーブル28の上に設置されている。このとき投射される投射映像21の投射角度α1は、例えば135度〜180度程度とすることができる。ここで、投射角度α1は、プロジェクタ装置100の前面13側から投射される方向を基準としている(つまり、前面13側から水平方向に投射される投射角度を0度としている)。よって、スピーカ122が取り付けられている背面14側から投射映像21が投射される場合は、投射角度α1は鈍角となる。以下の使用例においても同様である。また、出力される音声22の角度(スピーカ角度)β1は、例えば15度〜70度程度とすることができる。
【0040】
図3Aに示す使用例では、スピーカ122から出力された音声22が、投射映像21が投射されている投射面23で反射された後、更に、天井24で反射されて視聴者25に到達するようにスピーカ角度β1が設定されている。
【0041】
上記のようにスピーカ角度β1を設定することで、スピーカ122から出力された音声22が視聴者25に直接到達することを抑制することができる。更に、スピーカ122から出力された音声22を反射面(投射面23や天井24)で反射させることで音声22を拡散させることができ、視聴者25の位置に依存することなく視聴者25が音声22に包み込まれる状況を作り出すことができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。また、視聴者25が複数いた場合でも音声22により包み込まれる状況を作り出すことができるので、視聴者全員に臨場感を与えることができる。
【0042】
なお、図3Aでは、投射面23で反射された音声22が更に天井24で反射されて視聴者25に到達する場合を示したが、投射面23で反射された音声が視聴者25に直接(つまり、天井24で反射されることなく)到達するようにスピーカ角度β1を設定してもよい。この場合は、投射面23で反射された音声が天井24に到達しないようにスピーカ角度β1を小さく設定する。
【0043】
図3Bは、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100の使用例を説明するための図である。図3Bに示す使用例では、投射映像21は投射面23に向けて投射され、音声22は天井24に向けて出力されている。プロジェクタ装置100は、テーブル28の上に設置されている。このとき投射される投射映像21の投射角度α2は、例えば135度〜180度程度とすることができる。また、出力される音声22の角度(スピーカ角度)β2は、例えば45度〜85度程度とすることができる。
【0044】
図3Bに示す使用例では、スピーカ122から出力された音声22が、天井24で反射された後、更に投射映像21が投射されている投射面23で反射されて視聴者25に到達するようにスピーカ角度β2が設定されている。
【0045】
上記のようにスピーカ角度β2を設定することで、スピーカ122から出力された音声22が視聴者25に直接到達することを抑制することができる。更に、スピーカ122から出力された音声22を反射面(投射面23や天井24)で反射させることで音声22を拡散させることができ、視聴者25の位置に依存することなく視聴者25が音声22に包み込まれる状況を作り出すことができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。また、視聴者25が複数いた場合でも音声22により包み込まれる状況を作り出すことができるので、視聴者全員に臨場感を与えることができる。
【0046】
図3Cは、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100の使用例を説明するための図である。図3Cに示す使用例では、天井24に設けられた投射面23に向けて投射映像21が投射され、更に壁面26に向けて音声22が出力されている場合を示す。このとき投射される投射映像21の投射角度α3は、例えば45度〜135度程度とすることができる(図3Cでは投射角度α3を90度としている)。また、出力される音声22の角度(スピーカ角度)β3は、例えば15度〜85度程度とすることができる。
【0047】
図3Cに示す使用例では、スピーカ122から出力された音声22が、壁面27で反射された後、更に天井24に設けられた投射面23で反射されて視聴者25に到達するようにスピーカ角度β3が設定されている。また、図3Cに示す使用例では、投射映像21の光軸と投射面23とが交わる座標と、スピーカ122から出力された音声22が投射面23に到達する位置とが一致するように、スピーカ角度を設定している。
【0048】
上記のようにスピーカ角度β3を設定することで、スピーカ122から出力された音声22が視聴者25に直接到達することを抑制することができる。更に、スピーカ122から出力された音声22を反射面(投射面23や壁面26)で反射させることで音声22を拡散させることができ、視聴者25の位置に依存することなく視聴者25が音声22に包み込まれる状況を作り出すことができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。また、視聴者25が複数いた場合でも音声22により包み込まれる状況を作り出すことができるので、視聴者全員に臨場感を与えることができる。
【0049】
図4は、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100の使用例を説明するための図であり、8畳の部屋でプロジェクタ装置100を使用した場合の具体例を示している。図4に示す使用例では、天井24に設けられた投射面23に向けて投射映像21が投射され、更に壁面26に向けて音声22(22a、22b)が出力されている場合について説明する。このとき、プロジェクタ装置100はテーブル28の上に置かれて使用され、視聴者25はベッド29の上に横になって投射面23を見ているものとする。また、投射される投射映像21の投射角度α4は、例えば45度〜90度程度とすることができる。
【0050】
また、出力される音声22(22a、22b)の角度(スピーカ角度)はβ4以上β5以下とすることができる。ここで、スピーカ角度β4は音声22aが投射面23の中央部31に到達する角度であり、スピーカ角度β5は音声22bが投射面23の端部32に到達する角度である。このように、音声22が投射面の中央部31と端部32との間に到達するように構成することで、反射された音声22が視聴者25に到達するようにすることができる。
【0051】
スピーカ角度がβ4の場合、スピーカ122から出力された音声22aは、壁面26の座標(X1、Y1)の位置で反射された後、更に投射面23の中央部31で反射される。また、スピーカ角度がβ5の場合、スピーカ122から出力された音声22bは、壁面26の座標(X2、Y2)の位置で反射された後、更に投射面23の端部32で反射される。このとき、スピーカ122の座標を(0、0)、スピーカ122と天井24との距離を1.6m、壁面26と投射面23の中央部31との距離を1.8m、壁面26とスピーカ122との距離を0.3mとすると、次の式を導くことができる。
【0052】
tanβ4=(1.6−Y1)/1.8=Y1/0.3 ・・・式1
tanβ5=(1.6−Y2)/0.3=Y2/0.3 ・・・式2
【0053】
よって、上記の式1と式2より、Y1=0.228、Y2=0.8となり、β4=37.4度、β5=69.4度を導くことができる。したがって、図4に示す使用例の場合は、スピーカ角度を37.4度以上69.4度以下とすることができる。
【0054】
上記のようにスピーカ角度を設定することで、スピーカ122から出力された音声22が視聴者25に直接到達することを抑制することができる。更に、スピーカ122から出力された音声22を反射面(投射面23や壁面26)で反射させることで音声22を拡散させることができ、視聴者25の位置に依存することなく視聴者25が音声22に包み込まれる状況を作り出すことができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。
【0055】
図5A、図5Bは、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100のスピーカの配置を説明するための図であり、プロジェクタ装置100を上面から見た図である。図5Aに示すように、スピーカ122_1、122_2から出力される音声の出力方向35、36が互いに平行となるように(つまり、開き角度が0度となるように)スピーカ122_1、122_2を取り付けた場合、スピーカ122_1、122_2から出力された音声が壁面26に当たる際の幅W1、W2は狭くなる。
【0056】
よって、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100では、図5Bに示すように、スピーカ122_1、122_2を背面14の法線方向に対して所定の開き角度γ1、γ2を有するように取り付けることが好ましい。このようにスピーカ122_1、122_2を取り付けることで、スピーカ122_1、122_2から出力された音声が壁面26に当たる際の幅W1'、W2'を、図5Aに示した場合の幅W1、W2よりも広くすることができ、より臨場感のある音声を視聴者に提供することができる。なお、スピーカ122_1、122_2の開き角度γ1、γ2は任意に設定することができるが、例えば開き角度γ1、γ2はステレオ音像が中抜けにならない範囲で設定することができる。
【0057】
このように、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100では、スピーカ122から出力された音声22が所定の反射面(例えば、投射面23、天井24、壁26、27)で反射された後に視聴者に到達するようにスピーカ122を設けている。このため、スピーカ122から出力された音声22が視聴者25に直接到達することを抑制することができる。更に、スピーカ122から出力された音声22を反射面で反射させることで音声22を拡散させることができ、視聴者25の位置に依存することなく視聴者25が音声22に包み込まれる状況を作り出すことができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100において、スピーカ角度は、例えば約15〜85度、より好ましくは37〜70度とすることができる。
【0058】
特に本実施の形態にかかるプロジェクタ装置100では、図4に示すように、天井24に設けられた投射面23に投射映像21を投射する場合、スピーカ122から出力された音声22が壁面26で反射された後、更に天井24(投射面32)で反射されるようにスピーカを設けている。これにより、天井24に設けられた投射面23に投射映像21が投射される場合であっても、映像と音声とが隔離されてしまうことを抑制することができ、視聴者25に臨場感を与えることができる。また、視聴者25が複数いた場合でも音声22により包み込まれる状況を作り出すことができるので、視聴者全員に臨場感を与えることができる。
【0059】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、視聴者の位置を限定することなく臨場感を得ることができるプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法を提供することができる。
【0060】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2にかかるプロジェクタ装置を示すブロック図である。実施の形態2にかかるプロジェクタ装置200では、投射角検出部231、投射距離検出部232、空間距離検出部233、スピーカ角度決定部240、およびスピーカ角度設定部250を備えている点が、実施の形態1にかかるプロジェクタ装置100と異なる。これ以外は実施の形態1にかかるプロジェクタ装置と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0061】
投射角検出部231は、光学系112から投射される映像の光軸と水平方向とがなす角度である投射角度αを検出し、検出した投射角度αをスピーカ角度決定部240に出力する。例えば、投射角検出部231は、映像投射部110が収容されている上部筐体11(図1A参照)を駆動するための駆動機構が有する投射角度αに関する情報を取得することで、投射角度αを検出することができる。また、例えば、上部筐体11の角度(投射角度αに対応)を検出するセンサを設けることで、投射角度αを検出することができる。
【0062】
投射距離検出部232は、映像が投射される投射面との距離である投射距離を検出し、検出した投射距離をスピーカ角度決定部240に出力する。例えば、投射距離検出部232は、映像投射部110が備えるオートフォーカス装置(不図示)で使用される距離検出センサを用いることで、投射距離を検出することができる。
【0063】
空間距離検出部233は、プロジェクタ装置200と当該プロジェクタ装置200の周囲に存在する物体との空間距離を検出し、検出した空間距離をスピーカ角度決定部240に出力する。例えば、空間距離検出部233は、映像投射部110が備えるオートフォーカス装置(不図示)で使用される距離検出センサを用いることで、空間距離を検出することができる。図7は、空間距離検出部233の動作の一例を説明するための図である。例えば、プロジェクタ装置200の電源投入時に光学系112の投射角度αが0度から180度となるように上部筐体が動作する際に、空間距離検出部233は各投射角度αにおける空間距離を測定する。図7に示す例では、投射角度αが0度の場合の空間距離L1、投射角度αが30度の場合の空間距離L2、投射角度αが45度の場合の空間距離L3、投射角度αが90度の場合の空間距離L4、投射角度αが135度の場合の空間距離L5、投射角度αが150度の場合の空間距離L6、投射角度αが180度の場合の空間距離L7を測定する場合を示している。このように、プロジェクタ装置200と当該プロジェクタ装置200の周囲に存在する物体との空間距離を調べることで、プロジェクタ装置200がどのような空間に配置されているかを把握することができる。
【0064】
測定する空間距離の数は任意に決定することができるが、測定点が多いほどプロジェクタ装置200が配置されている空間(室内)の状況、つまりインテリア等による突起物の存在等を正確に把握することができる。なお、本実施の形態では、投射角度αが0度の場合のプロジェクタ装置200と投射面23との空間距離L1、投射角度αが90度の場合のプロジェクタ装置200と天井24との空間距離L4、投射角度αが180度の場合のプロジェクタ装置200と壁面26との空間距離L7の3つの空間距離を少なくとも測定するものとする。
【0065】
スピーカ角度決定部240は、投射角検出部231で検出した投射角度、投射距離検出部232で検出した投射距離、および空間距離検出部233で検出した空間距離に応じてスピーカ角度βを決定する。また、スピーカ角度決定部240は、決定されたスピーカ角度にスピーカの角度を設定するためのスピーカ角度設定信号241をスピーカ角度設定部250に出力する。
【0066】
スピーカ角度設定部250は、スピーカ角度決定部240によって決定された角度にスピーカ角度を設定する。例えば、スピーカ角度設定部250は、スピーカ122の角度を所定の範囲(例えば、0度から70度の範囲)で変更することができる駆動部を備え、この駆動部をスピーカ角度設定信号241に応じて駆動することで、スピーカ角度決定部240によって決定された角度にスピーカ角度を設定することができる。
【0067】
次に、スピーカ角度決定部240におけるスピーカ角度の決定方法について図8を用いて説明する。図8では、図3Bに示した使用例の場合のスピーカ角度の決定方法について説明する。スピーカ角度決定部240には、空間距離検出部233で検出された空間距離La、Lb、Lhがそれぞれ供給されている。ここで、空間距離Laはプロジェクタ装置200と投射面23との距離(投射角度αが180度)、空間距離Lbはプロジェクタ装置200と壁面26との距離(投射角度αが0度)、空間距離Lhはプロジェクタ装置200と天井24との距離(投射角度αが90度)である。また、スピーカ角度決定部240には、投射角検出部231で検出された投射角度θpと、投射距離検出部232で検出された投射距離Lp(プロジェクタ装置200と投射面23との距離)がそれぞれ供給されている。
【0068】
プロジェクタ装置200が配置されている座標を(0、0)、プロジェクタ装置200から投射される投射映像(光軸)21と投射面23とが交わる座標を(Xp、Yp)とする。ここで、プロジェクタ装置200の光学系112の位置とスピーカ122の位置は共に座標(0、0)としている。
【0069】
このような条件において、プロジェクタ装置200のスピーカ122から出力された音声22が天井24の反射点(Xr、Yr)で反射されて投射面23の座標(Xp、Yp)に到達するためのスピーカ角度θspの決定方法について説明する。
【0070】
まず、水平方向と投射方向とのなす角度をθ(θ=180−θp)とすると、Xp、Ypは次のように表すことができる。
Xp=Lp×cosθ=La ・・・式3
Yp=Lp×sinθ ・・・式4
【0071】
また、原点(0、0)と座標(Xr、Yr)とを通る直線式は、Yr=Lhであるので、次のように表すことができる。
【数1】

【0072】
同様に、音声22が天井24で反射した後の式は次のように表すことができる。
【数2】

【0073】
式6の直線がX軸と交わる点の座標は(2Xr、0)であるので、式6は次のようになる。
【数3】

【0074】
Xrを求めるために式7に座標(Xp、Yp)を代入すると、次のようになる。
【数4】

【数5】

【数6】

【0075】
よって、スピーカ角度θspは以下のように表すことができる。
【数7】

【0076】
ここで、Xpは空間距離Laであり、Ypは式4に投射距離Lp、投射角度θp(θ=180−θp)を代入することで求めることができ、Lhはプロジェクタ装置200と天井24との空間距離であるので、スピーカ角度決定部240は式11を用いてスピーカ角度θspを決定することができる。
【0077】
更に、スピーカ角度決定部240におけるスピーカ角度の決定方法について図9を用いて説明する。図9では、図3Cに示した使用例の場合のスピーカ角度の決定方法について説明する。この場合も、スピーカ角度決定部240には、空間距離検出部233で検出された空間距離La'、Lb'、Lh'がそれぞれ供給されている。ここで、空間距離La'はプロジェクタ装置200と壁面28との距離(投射角度αが0度)、空間距離Lb'はプロジェクタ装置200と壁面26との距離(投射角度αが180度)、空間距離Lh'はプロジェクタ装置200と投射面23との距離(投射角度αが90度)である。また、スピーカ角度決定部240には、投射角検出部231で検出された投射角度θpと、投射距離検出部232で検出された投射距離Lp(プロジェクタ装置200と投射面23との距離)がそれぞれ供給されている。
【0078】
プロジェクタ装置200が配置されている座標を(0、0)、プロジェクタ装置200から投射される投射映像(光軸)21と投射面23とが交わる座標を(Xp、Yp)とする。ここで、プロジェクタ装置200の光学系112の位置とスピーカ122の位置は共に座標(0、0)としている。
【0079】
このような条件において、プロジェクタ装置200のスピーカ122から出力された音声22が壁面26の反射点(Xr、Yr)で反射されて投射面23の座標(Xp、Yp)に到達するためのスピーカ角度θspの決定方法について説明する。
【0080】
図9に示す場合は、投射角度θpが90度であり、投射距離Lp=Lh'であるので、反射点の座標は(Xr、Yr)=(Lb'、Lh'/2)であることから、スピーカ角度θspは以下のようになる。
【数8】

【0081】
ここで、Lb'はプロジェクタ装置200と壁面26との空間距離、Lh'はプロジェクタ装置200と投射面23との空間距離であるので、スピーカ角度決定部240は式12を用いてスピーカ角度θspを決定することができる。
【0082】
以上、図8、図9を用いてスピーカ角度決定部240におけるスピーカ角度の決定方法について説明したが、これらは一例であり、スピーカ角度決定部240は図8、図9に示した以外の使用例におけるスピーカ角度を決定することができる。また、投射角度、投射距離、および空間距離に応じたスピーカ角度を予め試験により求めておき、スピーカ角度決定部240にこれらの関係を示すテーブルを予め格納するようにしてもよい。スピーカ角度決定部240にこのようなテーブルを格納することで、投射角度、投射距離、および空間距離に応じたスピーカ角度を、計算をすることなく求めることができる。
【0083】
図10は、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置200のスピーカ角度を設定する際の動作を説明するためのフローチャートである。まず、プロジェクタ装置200は、電源がオンになると初期化処理を実行する(ステップS1)。例えば、初期化処理として、上部筐体11(図1参照)が投射角度0度から180度まで動作することの確認、オートフォーカス装置の動作確認、およびオートフォーカス装置で使用される距離検出センサの動作確認が実施される。
【0084】
次に、プロジェクタ装置200の空間距離検出部233は、プロジェクタ装置200と周囲との距離である空間距離を検出する(ステップS2)。例えば、空間距離検出部233は、オートフォーカス装置で使用される距離検出センサを用いて、投射角度0度、投射角度90度、投射角度180度における空間距離を検出する。なお、ステップS2の空間距離を検出する動作は、ステップS1の初期化処理に含めてもよい。
【0085】
次に、投射角検出部231は、投射面に投射されている映像の投射角度を検出する(ステップS3)。例えば、投射角検出部231は、映像投射部110が収容されている上部筐体11(図1A参照)を駆動するための駆動機構が有する投射角度αに関する情報を取得することで、投射角度αを検出することができる。また、投射距離検出部232は、プロジェクタ装置200と投射面との投射距離を検出する(ステップS3)。例えば、投射距離検出部232は、映像投射部110が備えるオートフォーカス装置で使用される距離検出センサを用いることで、投射距離を検出することができる。
【0086】
次に、スピーカ角度決定部240は、投射角検出部231で検出した投射角度、投射距離検出部232で検出した投射距離、および空間距離検出部233で検出した空間距離に応じてスピーカ角度βを決定する(ステップS4)。スピーカ角度決定部240がスピーカ角度を決定する際は、例えば図8、図9で説明した方法を用いることができる。
【0087】
次に、スピーカ角度設定部250は、スピーカ角度決定部240によって決定された角度にスピーカ角度を設定する(ステップS5)。例えば、スピーカ角度設定部250は、スピーカ122の角度を変更する駆動部を動作させることで、スピーカ角度をスピーカ角度決定部240で決定された角度に設定することができる。
【0088】
本実施の形態にかかるプロジェクタ装置200では、スピーカ122の動作モードとして、固定モードと可変モードとを有する。固定モードは、スピーカ角度をスピーカ角度決定部240によって決定された角度に設定した後、設定後の角度に固定するモードである。また、可変モードは、スピーカ角度をスピーカ角度決定部240によって決定された角度に設定した後、更に、投射角度および投射距離の変更に追従してスピーカ角度を再設定するモードである。なお、スピーカ122の動作モードは、例えば外部に設けられた入力手段を用いてユーザによって設定される。
【0089】
スピーカ角度設定部250は、ステップS5においてスピーカ角度をスピーカ角度決定部240で決定された角度に設定した後、スピーカ122の動作モードを確認する(ステップS6)。そして、スピーカ122の動作モードが固定モードである場合(ステップS7:Yes)、スピーカ角度を設定する動作を終了する。この場合は、スピーカ角度が、ステップS5で設定されたスピーカ角度に固定される。一方、スピーカ122の動作モードが可変モードである場合(ステップS7:No)、ステップS3からステップS6の動作を繰り返す。
【0090】
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、視聴者の位置を限定することなく臨場感を得ることができ、かつ視聴者が複数いた場合でも視聴者全員に臨場感を与えることができるプロジェクタ装置およびプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法を提供することができる。特に、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置200では、投射角検出部231で検出した投射角度、投射距離検出部232で検出した投射距離、および空間距離検出部233で検出した空間距離に応じてスピーカ角度を設定することができるので、プロジェクタ装置200を設置する空間に応じて、より適切なスピーカ角度を設定することができる。
【0091】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図11は、実施の形態3にかかるプロジェクタ装置を示すブロック図である。実施の形態3にかかるプロジェクタ装置300では、スピーカ角度設定部350にユーザ情報が供給される点、音声処理部320に信号処理部323が追加されている点が、図6に示した実施の形態2にかかるプロジェクタ装置200と異なる。これ以外は実施の形態2にかかるプロジェクタ装置と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0092】
スピーカ角度設定部350は、スピーカ角度決定部240から出力されたスピーカ角度設定信号241と、ユーザ設定情報とを入力する。本実施の形態にかかるプロジェクタ装置300では、スピーカ角度設定部350がユーザ設定情報を入力するように構成することで、スピーカ角度決定部240で決定したスピーカ角度よりも優先して、視聴者(ユーザ)が求めている角度にスピーカ角度を合わせることができる。
【0093】
信号処理部323は、音声信号とユーザ設定情報とを入力し、所定の信号処理を施した後の信号をアンプ121に出力する。このとき、信号処理部323がスピーカ角度設定信号241を入力するようにしてもよい。
【0094】
例えば、プロジェクタ装置300が小型のプロジェクタ装置である場合、プロジェクタ装置300に内蔵されるスピーカ122は、左スピーカと右スピーカとの間隔が狭くなるため、モノラルの音声を出力した場合と音像イメージが同等となる場合がある。このため、ボーカル音のような同相成分は6dB程度音圧レベルが増加し、ボーカル音だけが突出した音楽となって聴こえる。更に、ボーカル音の音像が左右のスピーカの中心線上に縦長に伸び、各楽器の音像のバランスが悪くなる場合がある。このような問題を解決するために、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置300では、信号処理部323を用いて同相成分を弱めるような処理を実施することができる。
【0095】
左側音声入力信号(第1の信号)をLi、右側音声入力信号(第2の信号)をRi、左側音声出力信号(第1の出力信号)をLo、右側音声出力信号(第2の出力信号)をRoとすると、信号処理部323は次のような信号処理を実施することができる。
Lo=αLi+β(Li−Ri)
Ro=αRi−β(Li−Ri)
ここで、α+β=1、0≦α≦1、0≦β≦1である。なお、(Li−Ri)信号は高い周波数成分が主体となるため、(Li−Ri)信号がαLi、αRiと加減算された際に耳障りとなる場合は、LPF(Low-Pass Filter)を用いて高い周波数帯域成分をカットしてもよい。
【0096】
図12は、上記の信号処理を実施する信号処理部323の一例を示すブロック図である。図12に示す信号処理部323は、加減算器361、367、368、ローパスフィルタ362、およびアッテネータ364、365、366を有する。加減算器361は、左側音声入力信号Liから右側音声入力信号Riを減算する処理を実施し、処理後の信号(第3の信号:Li−Ri)をローパスフィルタ362に出力する。信号(Li−Ri)には、同相ではない成分が残っている。ローパスフィルタ362は、信号(Li−Ri)に含まれている高周波成分を除去して、アッテネータ364に出力する。なお、(Li−Ri)信号がαLi、αRiと加減算された際に耳障りとならない場合は、ローパスフィルタ362を省略することができる。アッテネータ364は、ローパスフィルタ362で処理した後の信号(Li−Ri)を減衰率(第2の減衰率)βで減衰して信号β(Li−Ri)を生成し、生成した信号β(Li−Ri)を加減算器367、368に出力する。
【0097】
アッテネータ365は、左側音声入力信号Liを減衰率(第1の減衰率)αで減衰して信号αLiを生成し、生成した信号αLiを加減算器367に出力する。加減算器367は、αLiとβ(Li−Ri)とを加算する処理を実施し、処理後の信号αLi+β(Li−Ri)を左側音声出力信号Loとして出力する。
【0098】
アッテネータ366は、右側音声入力信号Riを減衰率αで減衰して信号αRiを生成し、生成した信号αRiを加減算器368に出力する。加減算器368は、αRiからβ(Li−Ri)を減算する処理を実施し、処理後の信号αRi−β(Li−Ri)を右側音声出力信号Roとして出力する。
【0099】
このような処理を実施することで、左側音声出力信号Loと右側音声出力信号Roの同相成分を弱めることができるので、バランスのとれた音像イメージを視聴者に提供することができる。なお、アッテネータ364、365、366の減衰率α、βは、ユーザがユーザ設定情報を信号処理部323に供給することで設定することができる。
【0100】
また、音楽において特に高い周波数成分をもつ楽器(トライアングルやハイハットシンバル、パーカッション系の効果音など)は、スピーカの指向性が比較的鋭いことを利用してパニングにより左右どちらかにパンさせて音に拡がりを出すことが多い。しかし、プロジェクタ装置300に内蔵される左スピーカと右スピーカの間隔が狭いと、パニングしていてもスピーカの位置よりも音が拡がることはない。よって、この問題を解決するために、図13に示す信号処理部323'では、ローパスフィルタ362から出力された信号(Li−Ri)に位相差を加えることで音の拡がりを出すことができる。
【0101】
つまり、図13に示す信号処理部323'では、ローパスフィルタ362の後段にAPF(All-Pass Filter)363を設けて、ローパスフィルタ362から出力された信号(Li−Ri)に位相差を加えている。なお、図13に示した信号処理部323'のその他の構成は、図12に示した信号処理部323と同様である。
【0102】
加減算器367は、アッテネータ365で減衰されたαLiとAPF363で位相処理されたβ(Li−Ri)とを加算する処理を実施し、処理後の信号αLi+β(Li−Ri)を左側音声出力信号Loとして出力する。また、加減算器368は、アッテネータ366で減衰されたαRiからAPF363で位相処理されたβ(Li−Ri)を減算する処理を実施し、処理後の信号αRi−β(Li−Ri)を右側音声出力信号Roとして出力する。このような処理により、視聴者の左右の耳に届く左側音声と右側音声の時間差が強調されるため、左右に拡がりをもった音像をつくり出すことができる。
【0103】
また、プロジェクタ装置が使用される室内環境によっては、天井に照明ユニットがある場合や、周囲の壁の前面に家具が置かれている場合も想定される。この場合、プロジェクタ装置のスピーカ角度を調整しただけでは、臨場感を十分に得ることができない場合もある。図14に示した信号処理部323''では音像を上方に移動する処理を実施することで、このような問題を解決することができる。
【0104】
図14に示す信号処理部323''は、PEQ(Parametric Equalizer)フィルタ部381、382、およびフィルタテーブル383を有する。PEQフィルタ部381、382には、スピーカ角度情報が供給される。ここで、スピーカ角度情報とは、例えばスピーカ角度決定部240から出力されたスピーカ角度設定信号241やユーザがユーザ設定情報として入力したスピーカ角度である。なお、音像を上方に移動する処理の効果をより高めたい場合は、PEQフィルタ部381、382において、供給されるスピーカ角度情報に所定量の角度を追加してもよい。
【0105】
フィルタテーブル383は、水平面0度、スピーカ角度0度における頭部伝達関数のスペクトル特性と、スピーカ角度を所定の角度で増加した複数個のスピーカ角度における頭部伝達関数のスペクトル特性とを比較した時に、スピーカ角度の上昇により変化が生じているピーク部分およびディップ部分の周波数とその増減レベルを記述したテーブルである。フィルタテーブル383は、PEQフィルタ部381、382から供給されたスピーカ角度情報に応じたパラメータをPEQフィルタ部381、382に出力する。
【0106】
PEQフィルタ部381は、入力されたスピーカ角度情報に応じたパラメータをフィルタテーブル383から取得し、入力された左側音声入力信号Liに対して、取得したパラメータに記述された中心周波数のレベルを増減する処理を行い、処理後の信号を左側音声出力信号Loとして出力する。また、PEQフィルタ部382は、入力されたスピーカ角度情報に応じたパラメータをフィルタテーブル383から取得し、入力された右側音声入力信号Riに対して、取得したパラメータに記述された中心周波数のレベルを増減する処理を行い、処理後の信号を右側音声出力信号Roとして出力する。
【0107】
このような処理により音像を上方に移動することができ、プロジェクタ装置が使用される室内に照明ユニットや家具が配置されている場合であっても、視聴者に対して臨場感を提供することができる。
【0108】
なお、本実施の形態にかかるプロジェクタ装置300では、信号処理部323は、図12〜図14に示した構成を少なくとも一つ備えていればよい。また、信号処理部323は図12〜図14に示した構成を全て備えていてもよい。また、上記で説明した実施の形態では、入力される音声信号がステレオ信号であり、プロジェクタ装置が備えるスピーカが2つである場合について説明したが、本発明は2チャンネルに限定されることはなく、音声信号が3チャンネル以上でスピーカが3つ以上の場合にも適用することができる。スピーカが3つ以上の場合は、例えばスピーカをラインアレイ状に配置してもよい。
【0109】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0110】
10 開口部
11 上部筐体
12 下部筐体
13 前面
14 背面
15 シャフト
21 投射映像
22 音声
23 投射面
24 天井
25 視聴者
26、27 壁面
28 テーブル
100、200、300 プロジェクタ装置
110 映像投射部
111 映像出力部
112 光学系
120 音声処理部
121 アンプ
122 スピーカ
231 投射角検出部
232 投射距離検出部
233 空間距離検出部
240 スピーカ角度決定部
250 スピーカ角度設定部
323 信号処理部
361、367、368 加減算器
362 ローパスフィルタ
363 APF
364、365、366 アッテネータ
381、382 PEQフィルタ部
383 フィルタテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号に応じた映像を投射すると共に、前記映像の投射角度を変更可能な映像投射部と、
入力された音声信号に応じた音声を出力するスピーカと、を備え、
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように設けられている、
プロジェクタ装置。
【請求項2】
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が、前記映像が投射される投射面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられている、請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が、前記視聴者の背後に配置されている壁面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられている、請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項4】
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が天井で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられている、請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項5】
前記スピーカは、前記スピーカから出力された音声が、前記映像が投射される投射面または前記視聴者の背後に配置されている壁面で反射され、更に天井で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられている、請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項6】
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が天井で反射され、更に前記映像が投射される投射面で反射された後に前記視聴者に到達するように設けられている、請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項7】
前記映像投射部は、前記映像を天井に投射可能に構成され、
前記スピーカは、当該スピーカから出力された音声が壁面で反射された後、更に前記天井で反射されるように設けられている、
請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項8】
前記映像投射部は、装置の設置面に平行した水平方向に対して0度以上180度以下の範囲で前記映像の投射角度を変更可能に構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項9】
前記スピーカは、当該スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度が所定の角度となるように設けられている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項10】
前記プロジェクタ装置が2つのスピーカを備える場合、前記スピーカはそれぞれ所定の開き角度を有するように設けられている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項11】
前記プロジェクタ装置は更に、
前記投射角度を検出する投射角検出部と、
前記プロジェクタ装置と前記映像が投射される投射面との距離である投射距離を検出する投射距離検出部と、
前記プロジェクタ装置と当該プロジェクタ装置の周囲に存在する物体との距離である空間距離を検出する空間距離検出部と、
前記投射角度、前記投射距離、および前記空間距離に応じて、前記スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度を決定するスピーカ角度決定部と、
前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定するスピーカ角度設定部と、を備える、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項12】
前記空間距離検出部は、複数の投射角度において前記空間距離を検出する、請求項11に記載のプロジェクタ装置。
【請求項13】
前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定した後、当該設定後の角度に固定する固定モードと、
前記スピーカ角度を前記スピーカ角度決定部によって決定された角度に設定した後、更に、前記投射角度および前記投射距離の変更に追従して前記スピーカ角度を再設定する可変モードと、を備える、
請求項11または12に記載のプロジェクタ装置。
【請求項14】
前記入力された音声信号がステレオ信号である場合、
前記入力された音声信号の一方の信号である第1の信号から前記入力された音声信号の他方の信号である第2の信号を減算することで第3の信号を生成し、
前記第1の信号を第1の減衰率で減衰した信号と前記第3の信号を第2の減衰率で減衰した信号とを加算することで第1の出力信号を生成し、
前記第2の信号を前記第1の減衰率で減衰した信号から前記第3の信号を前記第2の減衰率で減衰した信号を減算することで第2の出力信号を生成し、
前記スピーカは前記第1および第2の出力信号に応じた音声を出力する、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項15】
前記入力された音声信号の一方の信号である前記第1の信号から前記入力された音声信号の他方の信号である前記第2の信号を減算した後の信号に位相処理を実施することで前記第3の信号を生成する、請求項14に記載のプロジェクタ装置。
【請求項16】
前記スピーカから出力された音声が反射される前記反射面に障害物がある場合、前記スピーカから出力される前記音声の音像が上方に移動するような処理を実施する、請求項1乃至15のいずれか一項に記載のプロジェクタ装置。
【請求項17】
入力された映像信号に応じた映像を投射すると共に、前記映像の投射角度を変更可能な映像投射部と、入力された音声信号に応じた音声を出力するスピーカと、を備えるプロジェクタ装置のスピーカ角度設定方法であって、
前記スピーカから出力された音声が所定の反射面で反射された後に視聴者に到達するように前記スピーカの角度を設定する、
スピーカ角度設定方法。
【請求項18】
前記投射角度を検出し、
前記プロジェクタ装置と前記映像が投射される投射面との距離である投射距離を検出し、
前記プロジェクタ装置と当該プロジェクタ装置の周囲に存在する物体との距離である空間距離を検出し、
前記投射角度、前記投射距離、および前記空間距離に応じて、前記スピーカから出力される前記音声の出力方向と装置の設置面に平行した水平方向とがなすスピーカ角度を決定し、
前記スピーカ角度を前記決定された角度に設定する、
請求項17に記載のスピーカ角度設定方法。
【請求項19】
複数の投射角度において前記空間距離を検出する、請求項18に記載のスピーカ角度設定方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−109047(P2013−109047A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252238(P2011−252238)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】