説明

プロジェクタ装置

【課題】プロジェクタ装置において、投影光に係る色温度の検出とホワイトバランスの調整を明るい下で正確で簡便に行なうことが可能で、しかも、投影光による映像の位置をスクリーン上で移動可能にする。
【解決手段】プロジェクタ装置1の投影用光学手段8の後段に投影光を遮蔽し得る蓋体9を備え、且つ、蓋体9にセンサ手段10を付設し、加えて、投影用光学手段8を装置本体であるケーシング2に対して投影用光学手段8の軸線に平行にスライドさせ得るスライド手段8と、投影用光学手段8のスライドにセンサ手段19を追従させ得る追従手段19を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光源からの白色光を受けてデジタルマイクロミラーデバイス手段及び投影用光学手段を介した投影光をスクリーン上に投射して所望の映像を得る、いわゆるデジタル・ライト・プロセッシング方式(以下、DLP方式と称する。)のプロジェクタ装置に関する。
特に、投影用光学手段がその軸線に関して装置本体に対して平行にスライドする構成であって、しかも、投影光のホワイトバランスの調整を高精度で簡便に得ることが可能なプロジェクタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
DLP方式のプロジェクタ装置においては、投影光の質を意味するホワイトバランスが所望のものであることが非常に重要である。そこで、所望のホワイトバランスを確保するために、投影光のホワイトバランスをセンシングし、調整することが必要になって来る。
投影用の光のホワイトバランスをセンシングして調整する構成のDLP方式のプロジェクタ装置として、例えば、以下の特許文献で示されているものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−188196号公報(第1頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
DLP方式のプロジェクタ装置は、使用時に光源手段から大量の熱が発生し、その発生した熱で装置本体に温度変化が生じて形状に変化が生じる。又、DLP方式のプロジェクタ装置は、使用に伴って、光学系において光透過率や反射率等に経年変化が生じる。
【0005】
DLP方式のプロジェクタ装置は、上述した温度変化や経年変化によって、投影光についての映像上の色彩の質を示す、所謂ホワイトバランスに変化が生じて所定通りのものが保持されず、結果的に当初に考えていた色調の映像が得られなくなるという問題が生じる。
【0006】
斯かる問題を解決する方法として、投影光についてのホワイトバランスをセンシングし、必要に応じて所定通りのものとなるように調整すればよいということになる。
上記公報で示されたDLP方式のプロジェクタ装置は、DMDからの反射光のうち投影すべき方向と異なる方向に反射された光(OFF光)をセンシングして光の情報を得、その情報に基づいてホワイトバランスを調整する構成になっている。
【0007】
DLP方式のプロジェクタ装置において投影光についてのホワイトバランスをセンシングして必要に応じて所定通りのものとなるように調整する場合、ホワイトバランスのセンシングは投影されて結像されたスクリーン上で行なうのが最も妥当であり正確である。
しかしながら、現実にはスクリーン面とプロジェクタ装置は大きな距離で隔たっており、スクリーン面でのセンシング結果をプロジェクタ装置にフィードバックさせるには大掛かりな手段が必要になるという問題があった。
又、DLP方式のプロジェクタ装置における投影光についてのホワイトバランスのセンシングは、その投影光のみ検出対象とすべきことから光のない状態で行なう必要があるが、スクリーン上で色温度のセンシング及びホワイトバランスの調整を行う作業は煩雑であり、問題はより一層深刻であった。
【0008】
つまり、光のホワイトバランスのセンシングを投影用の光そのものに行い、しかも、そのセンシング及びそのセンシング結果に基づく調整が簡便である必要がある。
斯かる目的に対して、本願発明の発明者は鋭意工夫し、投影用光学手段の後段に投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る、ケーシングに対してスライドする蓋体を備え、その蓋体に投影用の光に係る色温度を検出するためのセンサ手段を付設して所望通りのホワイトバランスが得られるように調整の制御を行なう構成のプロジェクタ装置を創案し、特許出願を行なっている。
【0009】
ここで、斯かる構成のプロジェクタ装置では、ホワイトバランスのセンシングを投影用光学手段からの投影光そのものについて行なう構成であることより、センシングの結果は妥当で正確と受取れる。
又、そのホワイトバランスのセンシングを投影用光学手段からの投影光を遮蔽する蓋体に付設のセンサ手段で行なう構成であることより、検出は簡便に行うことができる。
【0010】
しかしながら、プロジェクタ装置は現在多機能性が求められ、スクリーン上の映像位置がスライド可能であることが考えられる。スクリーン上の映像位置をスライド可能なプロジェクタ装置は、装置本体に対して投影用光学手段がその軸線に平行にスライドする構成となる。
斯かる構成では、上記特許出願のプロジェクタ装置では、蓋体と装置本体であるケーシングがスライド可能に連結された構成であるので、投影用光学手段が装置本体に対してスライドすることに対して蓋体が投影用光学手段の光出力側端部に追従させることができず、結果的に、投影用光学手段がその軸線に平行にスライドする構成のプロジェクタ装置では簡便にホワイトバランスのセンシングを行なうことができないという問題が生じる。
【0011】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、スクリーン上の映像位置がスライド可能であるように装置本体に対して投影用光学手段がその軸線に平行にスライド可能であって、投影光についてのホワイトバランスのセンシングと調整が妥当で正確に行うことが確保でき、しかも、そのホワイトバランスのセンシングと調整が大掛かりにならず簡便に行うことが可能なプロジェクタ装置を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライド可能とし、且つ、投影用光学手段が装置本体に対してスライドする際には、そのスライドする投影用光学手段に投影光に係る色温度を検出するセンサ手段が追従してスライドするように構成したプロジェクタ装置である。
【0013】
その詳細な構成は、一つに、装置本体と、その装置本体に内設され、白色光を出力する光源手段と、その光源からの白色光を入力し複数の原色光に分光して出力する分光器と、その分光器によって出力された複数の原色光にそれぞれ対応して受けて、映像を構成するための光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス手段と、そのデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光を透過させ、所望の大きさに拡大した映像を得るための投影用光学手段と、前記投影用光学手段の後段に配設され、投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る蓋体と、その蓋体の投影用の光を遮蔽する側の面に付設され、前記投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するためのセンサ手段と、前記デジタルマイクロミラーデバイス手段からの光が映像に係るデータに基づいて所定の映像を構成するように、前記デジタルマイクロミラーデバイス手段の作動を制御し、且つ、前記センサ手段からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段が備えられ、
加えて、上記投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドさせるスライド手段と、前記投影用光学手段がスライド手段によって装置本体に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段を追従してスライドさせる追従手段が具備されてなるプロジェクタ装置であり、
二つには、装置本体と、その装置本体に内設され、白色光を出力する光源手段と、その光源からの白色光を入力し複数の原色光に分光して出力するカラーホイール手段と、そのカラーホイール手段によって出力された複数の原色光にそれぞれ対応して受けて、映像を構成するための光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス手段と、そのデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光を透過させ、所望の大きさに拡大した映像を得るための投影用光学手段と、前記投影用光学手段の後段に配設され、投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る蓋体と、その蓋体の投影用の光を遮蔽する側の面に付設され、前記投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するためのセンサ手段と、前記複数のデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光が映像に係るデータに基づいて所定の映像を構成するように、前記カラーホイール手段とデジタルマイクロミラーデバイス手段の出力を制御し、且つ、前記センサ手段からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段が備えられ、
加えて、上記投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドさせるスライド手段と、前記投影用光学手段がスライド手段によって装置本体に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段を追従してスライドさせる追従手段が具備されてなるプロジェクタ装置である。
【0014】
上述した構成のプロジェクタ装置において、投影用光学手段がスライド手段の出力で装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドすると、投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するセンサ手段を保持する蓋体は追従手段によってスライドする投影用光学手段に追従してスライドする。
【0015】
又、この発明のプロジェクタ装置において、制御手段が、上記デジタルマイクロミラーデバイス手段からの光の出力レベルを100から0パーセントまで変化させる際に、各レベルに対応してホワイトバランスの調整を行なうように構成されたものが挙げられる。
更に、制御手段が、上記デジタルマイクロミラーデバイス手段からの光の出力レベルを100から0パーセントまで変化させる際に、各レベルに対応した基準値を記憶した記憶部を備えてなるプロジェクタ装置が挙げられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明を、図1〜図3に示す実施例に基づき詳述する。しかし、この実施例によって、この発明が限定されるものではない。
プロジェクタ装置1は、図1に示すように、ケーシング2と、光源手段3と、分光器4と、デジタルマイクロミラーデバイス手段5,6,7(以下、DMD手段と称する)と、投影用光学手段8と、蓋体9と、センサ手段10と、制御手段11が備えられている。
【0017】
ケーシング2は、装置本体の主要部分を構成し、前部に投影用光学手段8からの投影光を通過させてスクリーン(図示省略)の方向に送るための開口部12が開設されている。
【0018】
光源手段3は白色光を出力するものであり、その出力のON−OFFは制御手段11によって制御されている。
【0019】
分光器4は、光源3からの白色光を入力して複数の原色光である赤(R)、緑(G)及び青(B)の三色に分光して出力するものである。
【0020】
DMD手段5,6,7はそれぞれ、分光器4からの赤(R)、緑(G)及び青(B)の原色光を受けて、所定の映像を構成するように投影用光学手段8に反射光を送るものである。
DMD手段5,6,7の反射光送りの制御は、映像に係るビデオ信号データに基づき投影用の光を反射して送出するように制御手段11によって制御されている。
【0021】
投影用光学手段8は、DMD手段5,6,7からの投影のための光を透過させて、拡大してスクリーン上で所望の大きさの像を得るためのものである。
投影用光学手段8は具体的に、レンズ群(図示省略)とそれらレンズ群(図示省略)を所定状態で保持する筒体13から主に構成されている。
尚、DMD手段5,6,7と投影用光学手段8の間には、集光器14が介在されている。
【0022】
蓋体9は、投影用光学手段8の後段に配設され、投影用光学手段8を透過して来る投影光を遮蔽し得るものである。
蓋体9は、図2に示すように、投影用光学手段8に対して左右の方向、つまり矢印A及びB方向にスライドすることによって、投影用光学手段8からの投影光をそれぞれ遮蔽及び解放する構成になっている。
【0023】
蓋体9は、投影用光学手段8と運動系が同一の部材に固定されたギアード・モータ15と、ギアード・モータ15で駆動されるピニオンギア16と、蓋体9の底部に形成されたラックギア17から主に構成されている。
【0024】
センサ手段10は、蓋体9の投影光を遮蔽する側の面に付設され、投影用光学手段8からの投影光に係る色温度を検出するためのものである。
つまり、センサ手段10は、制御手段11と接続されており、DMD手段5,6,7からの投影用光学手段8を介した投影光が制御手段11に記憶されたデータに基づいて所定の映像を構成するように、DMD手段5,6,7の作動を制御して色温度の調整のための検出を行なうものである。
【0025】
制御手段11は、投影光がスクリーン上でビデオ信号データに基づいた所定の映像を構成するように、DMD手段5,6,7の作動を制御し、且つ、センサ手段10からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように検出と調整の制御を行なうものである。
【0026】
加えて、プロジェクタ装置1は、投影用光学手段8を装置本体を構成するケーシング2に対して投影用光学手段8の光軸に平行にスライドさせるスライド手段18と、投影用光学手段8がスライド手段18によってケーシング2に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段8からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段10を追従してスライドさせる追従手段19が備えられている。
【0027】
スライド手段18は、ケーシング2と一体化された一対の支持部材20,21に対してスライド部材22,23を上下方向(矢印C及びD方向)にスライドさせ、更に、スライド部材22,23の側に対して投影用光学手段8を保持するマウント部材24を左右方向(矢印A及びB方向)にスライドさせるものである。
【0028】
スライド手段18は具体的に、ケーシング2と一体化された一対の支持部材20,21と、支持部材20,21に対して上下方向にスライド可能なスライド部材22,23と、スライド部材22,23と一体化されたスライド板25と、支持部材20とスライド部材22の間に介在されて支持部材20に対してスライド部材22を矢印C及びD方向にスライドさせるための駆動手段であるステップ式のギアード・モータ26及び送りねじ手段27と、スライド板25に対して矢印A及びB方向にスライド可能なマウント部材24と、スライド板25とマウント部材24の間に介在されてスライド板25に対してマウント部材24を矢印A及びB方向にスライドさせるための駆動手段であるギアード・モータ28及び送りねじ手段29から主に構成されている。
【0029】
追従手段19は具体的に、投影用光学手段8を保持するマウント部材24と、マウント部材24にスライド可能に支持されている蓋体9から主に構成されている。
【0030】
ここで、色温度の調整、つまり、センサ手段10からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段11の制御とは、例えば図3に示すように、入力レベルが0から255までの256の諧調に変化することに対して出力レベルが0から1023までの1024階調に対応して一義的に変化する特性曲線(γカーブ)に従うように、分光器4とDMD手段5,6,7の作動を制御することである。
尚、色温度の調整の基準となる図3に示すデータは、制御手段の記憶部(図示省略)に記憶されている。
【0031】
プロジェクタ装置1は、上述したように構成されている。
以下において、プロジェクタ装置1の色温度の調整を説明する。
操作者は、まずプロジェクタ装置1のメインスイッチをONにして作動を開始させ、リモコン手段(図示省略)を操作して制御手段11を介してギアード・モータ15を逆方向に出力させて蓋体9を矢印B方向にスライドさせる。
ここで、投影用光学手段8は蓋体9のほぼ中央部の遮蔽部に位置することになって投影光は遮蔽される状態になり、且つ、センサ手段10が投影用光学手段8の最終段レンズを覆うことになる。
【0032】
次に、操作者は、上記リモコン装置及び制御手段11を介して光源手段3から白色光を出力させる。
ここで、光源手段3からの白色光は、分光器4を介することによってR、G及びBの原色光となってそれぞれ、DMD手段5、6及び7へと進む。
DMD手段5、6及び7へと進んだ原色光のR、G及びBは、入力が100パーセントであってビデオ信号データに基づいた検査用の白色光となって投影用光学手段8の方向に反射されて送出される。
続いて、DMD手段5、6及び7からの原色光のR、G及びBは、投影用光学手段8に進み、投影光となって更に蓋体9の方向に進むが、蓋体9によって光路が閉塞されていてセンサ手段10に到る。
【0033】
ここで、センサ手段10は投影光をセンシングしてそのデータを制御手段11に送る。
制御手段11は、センサ手段10からのデータが入力レベルと出力レベルの関係が内蔵メモリの100パーセント入力レベルの際の値に合致しているか否かを判断し、合致していれば問題なしとして次に進むように指示する。
【0034】
つまり、入力レベルが100パーセントである場合の白色光についてR、G及びBの比(色温度)がどのような構成であるかをセンサ手段10が検出する。
制御手段11はその検出した結果が所定の割合のR、G及びBの比(色温度)で構成されているか否かを内蔵メモリに記憶された値に基づいて判断し、所定の割合で構成されていると判断されると問題がないとして、次の段階のセンシングに進むように指示が出される構成になっている。
【0035】
他方、制御手段11が、100パーセントの入力レベルの白色光が、所定の割合のR、G及びBの比(色温度)で構成されていないと判断された場合は、制御手段11は内蔵メモリに記憶されたと同じ値が得られるように、DMD手段5、6及び7に色温度の調整を行なうための信号を送る。
ここで、出力レベルが100パーセントである場合の色温度が確保されると、出力レベルが5パーセントだけ低い95パーセントの場合について入力レベルと出力レベルとの関係をセンシングし、必要に応じて、DMD手段5、6及び7に作用して色温度の調整を行なう。
【0036】
以下、同様にして、入力レベルと出力レベルとの関係が図3に示すような特性となるように、5パーセントずつ入力レベルを下げて行き、ほぼ0パーセントまでのセンシング及び必要に応じての色温度調整を行なう。
尚、入力レベルが0パーセントでは測定が不可能であるから、実質的に0パーセントと見なし得る値、例えば、0.5パーセントの値を用いる。
【0037】
プロジェクタ装置1は上述したように、その時点その時点での色温度のセンシングを投影用光学手段8を介しての投影用の光について直接に行なっているから、投影用の光ではない光について行なう色温度のセンシングの場合に比して、より正確なセンシング結果を得ることができ、更には、投影光に対してより適切な色温度調整を行なうことが可能である。
【0038】
又、プロジェクタ装置1は上述したように、色温度の検出及びホワイトバランスの調整を蓋体9に付設したセンサ手段10からの検出結果に基づき、制御手段11によって行なうことが可能な構成であることより、スクリーン面で色温度のセンシングを行なう場合に比してセンシング及びホワイトバランスの調整が大掛かりにならず簡便に行なうことが可能になっている。
【0039】
加えて、従来技術のように、スクリーン面で色温度のセンシングを行なう場合には、プロジェクタ装置からの投影光のみで他の光があってはならないから、色温度のセンシングの作業自体が明るさが極めて低い環境下で行なうので作業性が悪くなりがちである。
しかし、プロジェクタ装置1はまわりの明るさに関係なく色温度のセンシングを行うことができ、色温度のセンシング及びホワイトバランスの調整において作業性が確保されている。
【0040】
上述したプロジェクタ装置1の色温度の調整では、入力レベルが100パーセントである場合の白色光についてR、G及びBの比(色温度)がどのような構成であるかを求め、必要に応じてホワイトバランスの調節を行なう。
【0041】
次に、出力レベルが5パーセントだけ低い95パーセントの場合について入力レベルと出力レベルとの関係をセンシングする。
それ以降は、同様に入力レベルを5パーセントずつ下げているが、センシングの精度と色温度調節に費やす時間等に基づき、入力レベルを例えば3パーセントずつ下げるなど、その値を適宜選択するのがよい。
【0042】
尚、図3に示す出力レベルと出力レベルの関係を示す特性曲線は連続しているが、実際のR、G及びBの比(色温度)の構成のセンシングにおいては離散値となる。
このことは、R、G及びBの比(色温度)の構成が連続的に変化した場合を想定して所望したものであり、且つ、特異点を有していないことを示している。
【0043】
又、プロジェクタ装置1は、色温度のチェック及び調節は図3に示した特性曲線(γ曲線)に基づいて行なうようになっているが、特性曲線は所望により適宜選択するのがよく、又、制御手段11に記憶される特性曲線は適宜書換可能な構成であることが望ましい。
【0044】
プロジェクタ装置1は、上述した色温度の検出及びホワイトバランスの調整を終えると、操作者は上記リモコン手段を操作して制御手段11を介してギアード・モータ15を正方向に出力させて蓋体9を矢印A方向にスライドさせる。
ここで、投影用光学手段8は蓋体9の上記遮蔽部が外された位置を取ることになって、投影用光学手段8からの投影光はスクリーンの方向に進むことが可能な状態になる。
【0045】
操作者は、所望の映像をスクリーン上に映すように、上記リモコン手段を操作して、所望のビデオ信号データを選択し、プロジェクタ装置1を出力させようとする。
しかしながら、その際、スクリーンに対してプロジェクタ装置1からの投影光による映像が所望の位置から外れる場合がある。
【0046】
斯かる場合には、操作者は、プロジェクタ装置1のスライド手段18を作用させて、プロジェクタ装置1からの投影光による映像がスクリーン上で所望の位置となるように、ケーシング2に対して投影用光学手段8をスライドさせることが可能になっている。
つまり、ギアード・モータ26を出力させて送りねじ手段27を作用すると、スライド部材22,23と一体化されたスライド板25がケーシング2と一体の支持部材20,21に対して矢印C及びD方向にスライドする。
又、ギアード・モータ28を出力させて送りねじ手段29を作用させると、投影用光学手段8を保持しているマウント部材24はスライド板25に対して矢印A及びB方向にスライドする。
【0047】
よって、投影用光学手段8は、ケーシング2に対し、投影用光学手段8の軸線について矢印A及びB方向と矢印C及びD方向にスライドが可能であり、所望の量だけスライドさせることで、プロジェクタ装置1からの投影光による映像にスクリーン上で所望の位置を取らせることが可能である。
【0048】
加えて、プロジェクタ装置1は追従手段19が備えられており、ケーシング2に対して投影用光学手段8がスライドする際には、センサ手段10は蓋体9とマウント部材24を介して投影用光学手段8と同じ運動系にあるから、同じ方向に同じ距離だけスライドすることになって、投影用光学手段8がケーシング2に対してスライドしてもセンサ手段10は色温度の検出及びホワイトバランスの調整を行うことが可能である。
【0049】
尚、プロジェクタ装置1では追従手段19が投影用光学手段8とセンサ手段10を同じ運動系に乗せることによって構成しているが、他に、投影用光学手段8をスライドさせた際にその方向とその距離を検出し、センサ手段10を同じ方向に同じ距離だけスライドさせる構成であってもよい。
【0050】
以下において、プロジェクタ装置の他の形態例を説明する。
他の形態例のプロジェクタ装置は、装置本体と、その装置本体に内設された白色光を出力する光源手段と、その光源からの白色光を入力し複数の原色光に分光して出力するカラーホイール手段と、そのカラーホイール手段によって出力された複数の原色光にそれぞれ対応して受けて、映像を構成するための光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス手段と、そのデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光を透過させ、所望の大きさに拡大した映像を得るための投影用光学手段と、前記投影用光学手段の後段に配設され、投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る蓋体と、その蓋体の投影用の光を遮蔽する側の面に付設され、前記投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するためのセンサ手段と、前記複数のデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光が映像に係るデータに基づいて所定の映像を構成するように、前記カラーホイール手段とデジタルマイクロミラーデバイス手段の出力を制御し且つ前記センサ手段からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段と、前記投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドさせるスライド手段と、前記投影用光学手段がスライド手段によって装置本体に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段を追従してスライドさせる追従手段を備えて構成されている。
【0051】
装置本体及び光源手段は、プロジェクタ装置1のケーシング2及び光源手段3と同じ構成で作用を行なうものである。
カラーホイール手段は、半径方向に区分けの領域にR、G及びBに色分けされた円板形状の色フィルタと、その色フィルタを所定の角速度で回転駆動するモータから主に構成されている。
尚、このモータは、映像用ビデオ信号データに基づき、制御手段によってその回転が制御されている。
【0052】
デジタルマイクロミラーデバイス手段は、プロジェクタ装置1と異なり、R、G及びBの三つの原色光を単体で処理する構成となっている。
投影用光学手段と、蓋体と、センサ手段と、制御手段と、スライド手段及び追従手段は、プロジェクタ装置1の対応するそれぞれと、実質的に同じ構成になっている。
【0053】
他の形態例のプロジェクタ装置は、上述したように構成されている。
従って、他の形態例のプロジェクタ装置はプロジェクタ装置1と同様に、投影光について色温度の検出及びホワイトバランスの調整を明るい下で簡便に行うことが可能である。
【0054】
又、他の形態例のプロジェクタ装置はプロジェクタ装置1と同様にスライド手段の作用によって、投影用光学手段をその軸線に平行に装置本体(ケーシング)に対してスライド移動が可能であって、映像をスクリーン上で所望の位置に移動させることができる。
更に、他の形態例のプロジェクタ装置は、投影用光学手段をその軸線に平行に装置本体(ケーシング)に対してスライドさせた際、追従手段が作用して投影用光学手段のスライドにセンサ手段が追従して同じ方向に同じ距離だけスライドさせる構成になっている。
【0055】
従って、他の形態例のプロジェクタ装置では、投影用光学手段からの投影光による映像がスクリーン上の所望の位置から外れている場合、操作者は投影用光学手段を装置本体に対してスライドさせて映像をスクリーン上の所望の位置に移動させるとよい。
この際、センサ手段は、追従手段によって投影用光学手段と同方向に同じ距離だけスライドするから、他の形態例のプロジェクタ装置は投影光について色温度の検出及びホワイトバランスの調整に支障が生じない。
【0056】
プロジェクタ装置1の蓋体9及び他の形態例のプロジェクタ装置の蓋体はスライドすることによって投影光を遮蔽する構成であるが、蓋体の一点を中心とした振り子状の回転による開閉、蝶番状の運動による開閉を行なう構成であってもよい。
【0057】
【発明の効果】
この発明は、投影用光学手段からの投影用の光を遮蔽する蓋体にセンサ手段を付設し、他方、投影用光学手段をその軸線に平行に装置本体に対してスライド可能な構成とし、且つ、投影用光学手段のスライドにセンサ手段が追従させる構成としたことにより、明るい下で簡便で高い精度の色温度の検出及びホワイトバランスの調節が可能であり、又、スクリーン上での投影光による映像の位置を移動可能とし、更に、スクリーン上で投影光による映像の位置を移動させた際であってもセンサ手段が投影用光学手段のスライドに追従して色温度の検出及びホワイトバランスの調節を行ない得るプロジェクタ装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態例の構成を示す構成説明図である。
【図2】図1に示す実施の形態例の要部を示す斜視図である。
【図3】図1に示す実施の形態例の色温度に係る入力と出力との関係を示す特性曲線の図である。
【符号の説明】
1 プロジェクタ装置
2 ケーシング
3 光源手段
4 分光器
5、6、7 DMD手段
8 投影用光学手段
9 蓋体
10 センサ手段
11 制御手段
18 スライド手段
19 追従手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、その装置本体に内設され、白色光を出力する光源手段と、その光源からの白色光を入力し複数の原色光に分光して出力する分光器と、その分光器によって出力された複数の原色光にそれぞれ対応して受けて、映像を構成するための光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス手段と、そのデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光を透過させ、所望の大きさに拡大した映像を得るための投影用光学手段と、前記投影用光学手段の後段に配設され、投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る蓋体と、その蓋体の投影用の光を遮蔽する側の面に付設され、前記投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するためのセンサ手段と、前記デジタルマイクロミラーデバイス手段からの光が映像に係るデータに基づいて所定の映像を構成するように、前記デジタルマイクロミラーデバイス手段の作動を制御し、且つ、前記センサ手段からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段が備えられ、
加えて、上記投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドさせるスライド手段と、前記投影用光学手段がスライド手段によって装置本体に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段を追従してスライドさせる追従手段が具備されてなるプロジェクタ装置。
【請求項2】
装置本体と、その装置本体に内設され、白色光を出力する光源手段と、その光源からの白色光を入力し複数の原色光に分光して出力するカラーホイール手段と、そのカラーホイール手段によって出力された複数の原色光にそれぞれ対応して受けて、映像を構成するための光を反射するデジタルマイクロミラーデバイス手段と、そのデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光を透過させ、所望の大きさに拡大した映像を得るための投影用光学手段と、前記投影用光学手段の後段に配設され、投影用光学手段を透過して来る投影光を遮蔽し得る蓋体と、その蓋体の投影用の光を遮蔽する側の面に付設され、前記投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出するためのセンサ手段と、前記複数のデジタルマイクロミラーデバイス手段からの光が映像に係るデータに基づいて所定の映像を構成するように、前記カラーホイール手段とデジタルマイクロミラーデバイス手段の出力を制御し、且つ、前記センサ手段からの検出結果に基づいて投影光のホワイトバランスが所望通りの出力となるように調整の制御を行なう制御手段が備えられ、
加えて、上記投影用光学手段を装置本体に対して投影用光学手段の光軸に平行にスライドさせるスライド手段と、前記投影用光学手段がスライド手段によって装置本体に対してスライドされる際に、スライドする投影用光学手段からの投影光に係る色温度を検出し得るようにセンサ手段を追従してスライドさせる追従手段が具備されてなるプロジェクタ装置。
【請求項3】
追従手段が、投影用光学手段を保持する保持部材と、その保持部材と運動系の同じ蓋体を備えて構成されるなる請求項1若しくは請求項2に記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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