説明

プロジェクタ,撮像装置

【課題】様々なプロジェクタの利用環境に対応できるようにする。
【解決手段】レーザー光源11から射出されたレーザー光に対応するホログラム再生光像を変調して投影光像として射出する光変調素子16と、光変調素子16から入射された投影光像を投射する投射光学系17と、投影光像を投射するときの焦点深度を予め定められた複数の焦点深度の中から選択する投射モード選択手段21と、挿抜可能な拡大光学系13を備え、拡大光学系13の挿抜などにより光変調素子16へ入射するホログラム再生光像の入射開口数を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタおよびプロジェクタを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源にレーザー光を利用したプロジェクタについて、様々な発明が開示されている。プロジェクタの光源としてレーザー光を利用するメリットは、焦点深度を深くすることができるため、フリーフォーカス性を有する投影が可能なことにある。一方、プロジェクタの光源としてレーザー光を利用するデメリットは、スペックルノイズが生じ、投影画像に悪影響が出ることである。
【0003】
特許文献1では、ホログラム記録媒体を振動させ、そのホログラム記録媒体へ入射させるレーザー光の光束径を拡大させて、ホログラム再生光像を光変調素子へ照射し、投影する方法が記載されている。この方法では、ホログラム記録媒体が振動していることと、レーザー光の光束径が拡大していることにより投射開口数が大きくなることとにより、スペックルノイズが略完全に除去される。しかし、特許文献1の方法では、光源にレーザー光を利用するメリットであった、フリーフォーカス性が失われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−197916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロジェクタは、その利用環境によって、フリーフォーカス性が重要視される場合もあれば、スペックルノイズが少ないことを重要視される場合もある。特許文献1の発明では、スペックルノイズが少ないことを重要視される場合には対応できるが、フリーフォーカス性が重要視される場合には対応できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプロジェクタは、レーザー光源から射出された光束を変調して投影光像として射出する光変調素子と、投射光学系を有し、光変調素子から投射光学系へ入射された投影光像を投射する投射手段と、投射手段が投影光像を投射するときの焦点深度を、予め定められた複数の焦点深度の中から選択する選択手段と、選択手段により選択された焦点深度に応じて、光変調素子に入射する光束の入射開口数を切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるプロジェクタによれば、焦点深度の異なる複数の投影方法を切り替えて利用することができ、プロジェクタの様々な利用環境に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態によるプロジェクタの上面図と正面図の一例である。
【図2】本発明の第1実施形態によるプロジェクタの内部構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるプロジェクタにおいて、焦点深度を切り替える方法について説明するための図である。
【図4】測距部について説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるプロジェクタにおける焦点深度を自動的に切り替える処理についてのフローチャートの一例である。
【図6】本発明の第2実施形態によるプロジェクタの内部構成の一例を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態によるプロジェクタにおける焦点深度を自動的に切り替える処理についてのフローチャートの一例である。
【図8】本発明の第3実施形態によるプロジェクタの上面図と正面図の一例である。
【図9】本発明の第3実施形態によるプロジェクタの内部構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3実施形態によるプロジェクタにおける焦点深度を自動的に切り替える処理についてのフローチャートの一例である。
【図11】本発明の第3実施形態によるプロジェクタの焦点深度を自動的に切り替える処理についての説明に用いる図である。
【図12】本発明の第4実施形態によるプロジェクタの焦点深度を自動的に切り替える処理についての説明に用いる図である。
【図13】本発明の第4実施形態によるプロジェクタの内部構成の一例を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4実施形態によるプロジェクタにおける焦点深度を自動的に切り替える処理についてのフローチャートの一例である。
【図15】格子のパターン画像を用いた曲面検出について説明するための図である。
【図16】曲面検出処理に関するフローチャートの一例である。
【図17】焦点深度の切り替え方法の変形例を示す図である。
【図18】本発明によるプロジェクタを備えるビデオカメラの外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるプロジェクタは、焦点深度の異なる複数の投射モードを有し、その利用状況によって適切な投射モードを切り替えることができる。たとえば、プロジェクタを机の上や三脚に固定して据置状態で利用するときは、最初に焦点調節を行えばよいため、投射開口数が大きく、焦点深度の浅い投射モードに設定する。また、プロジェクタを手持ち状態で利用するときは、スクリーンとの距離関係が変化することが考えられるため、投射開口数が小さく、焦点深度を深い投射モードに設定する。
【0010】
―第1の実施形態―
図1は、本発明の第1実施形態によるプロジェクタ1の上面図と正面図を例示したものである。プロジェクタ1は、焦点深度の浅い第1の投射モード(以降、低スペックルモードと称する)と焦点深度の深い第2の投射モード(以降、フリーフォーカスモードと称する)という二つの投射モードを有する。プロジェクタ1の上面には電源スイッチ100と、投射モード切替スイッチ101と、決定スイッチ102と、選択スイッチ103とが配されている。また、プロジェクタ1の正面には、投射開口部104と測距部105が設けられている。
【0011】
電源スイッチ100は、プロジェクタ1の電源をオンまたはオフするための操作部材である。投射モード切替スイッチ101は、プロジェクタ1の投射モードを切り替えるための操作部材である。たとえば、電源スイッチ100が操作されプロジェクタ1の電源がオンになった後に投射モード切替スイッチ101が操作されると低スペックルモードに切り替わる。そして、プロジェクタ1が低スペックルモードにあるときに投射モード切替スイッチ101が操作されるとフリーフォーカスモードに切り替わる。また、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードにあるときに投射モード切替スイッチ101が操作されると低スペックルモードに切り替わる。
【0012】
決定スイッチ102および選択スイッチ103は、ユーザがプロジェクタ1に関する各種設定に用いる操作部材である。たとえば、プロジェクタ1がスクリーン上に投影した設定画面上で投射モードなどの項目を設定する。プロジェクタ1からの投影光像は、投射開口部104を介して前方に配置されたスクリーンに向けて投射される。投射開口部104は、ユーザが手動でプロジェクタ1の焦点を調節するための機構を有していてもよい。測距部105は、プロジェクタ1とスクリーンまでの距離とを測定するためのセンサである。
【0013】
図2は、プロジェクタ1の内部構成を示すブロック図である。プロジェクタ1は、その内部にレーザー光源11と、集光光学系12と、拡大光学系13と、拡大光学系駆動部22と、ホログラム記録媒体14と、振動素子15と、光変調素子16と、投射光学系17と、投射光学系駆動部20と、投射モード選択部21と、測距部105と、を備える。なお、図2ではレーザー光源11は一つだけ図示されているが、複数存在してもよい。
【0014】
集光光学系12は、レーザー光源11から射出されたレーザー光をコリメートする。集光光学系12によりコリメートされた光束(以降、コリメート光)は、ホログラム記録媒体14側へ射出される。
【0015】
拡大光学系13は、入射された光束の光束径を拡大する。拡大光学系13は、集光光学系12とホログラム記録媒体14との間に設けられている。拡大光学系13は、拡大光学系駆動部22により駆動され、集光光学系12から射出されるコリメート光の光路上に挿入された状態またはコリメート光の光路上から退避した状態に移動制御される。
【0016】
プロジェクタ1が低スペックルモードにあるとき、拡大光学系13は図2のようにコリメート光の光路上に挿入される。このとき、拡大光学系13は、コリメート光の光束径を拡大する。拡大光学系13により光束径を拡大された光束は、再生照明光としてホログラム記録媒体14へ入射する。
【0017】
プロジェクタ1がフリーフォーカスモードにあるとき、拡大光学系13は図3のようにコリメート光の光路上から退避した状態となる。このとき、集光光学系12から射出されるコリメート光が再生照明光としてホログラム記録媒体14へ入射する。
【0018】
ホログラム記録媒体14は、透過型二光束干渉法を用いたホログラム型光情報記録再生装置である。ホログラム記録媒体14上の各点には、矩形状の拡散板のホログラム像が記録されている。再生照明光を受光したホログラム記録媒体14の各点は、記録されていたホログラム再生光像を光変調素子16へ射出する。振動素子15は、スペックルノイズの低減のためにホログラム記録媒体14を振動させる。
【0019】
プロジェクタ1が低スペックルモードにあるとき、ホログラム記録媒体14に入射される再生照明光の光束径が拡大されているため、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の投射開口数が大きくなる。
【0020】
一方、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードにあるとき、ホログラム記録媒体14に入射される再生照明光の光束径は拡大されていないため、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の投射開口数は低スペックルモードよりも相対的に小さくなる。
【0021】
光変調素子16は、透過型の空間光変調器である。光変調素子16は、画像変調領域を有し、画像変調領域においてホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像を変調し、投影光像として投射光学系17へ透過させる。
【0022】
光変調素子16へ入射するホログラム再生光像は、光変調素子16の画像変調領域全体を照射する。プロジェクタ1が低スペックルモードにあるとき、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数は大きい。一方、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードにあるとき、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数は相対的に小さくなる。
【0023】
投射光学系17は、開口絞り171と、複数の投射レンズ172とを備える。投射光学系17の入射瞳位置は、光変調素子16よりも光源側に位置し、ホログラム記録媒体14上の位置173と実質的に同一の位置にある。投射光学系17の入射瞳半径は、ホログラム像を記録しているホログラム記録媒体14上の全領域面積をカバーできる程度に大きい。このように入射瞳位置を設定することにより、ホログラム再生光像に基づいた投影光像が開口絞り171にケラレなくスクリーンへ投影される。
【0024】
投射光学系駆動部20は、プロジェクタ1が低スペックルモードにあるとき、測距部105により算出されたプロジェクタ1からスクリーンまでの距離に基づいて投射光学系17を光軸方向に駆動し、投射光学系17の焦点を調節する。なお、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードにあるときは投射光学系17を予め設定された所定位置に調節する。
【0025】
投射モード選択部21は、プロジェクタ1の投射モードを選択する。投射モード選択部21は、CPU、RAM、ROMなどによって構成される。投射モード選択部21は、プロジェクタ1の筐体の振動や回転などを検出する加速度センサやジャイロセンサなどのセンサ類23に接続される。
【0026】
投射モード選択部21は、センサ類23の出力信号に基づいて、プロジェクタ1の筐体が静止しているか否かを判断する。そして、プロジェクタ1の筐体が静止していると判断されたとき、投射モード選択部21は低スペックルモードを選択する。一方、プロジェクタ1の筐体が静止していないと判断されたとき、投射モード選択部21はフリーフォーカスモードを選択する。
【0027】
投射モード選択部21がプロジェクタ1の投射モードを選択したとき、拡大光学系駆動部22により拡大光学系13が駆動されて、投射モードが切り替わる。なお、ユーザが投射モード切替スイッチ101を操作して、プロジェクタ1の投射モードを切り替えた場合は、ユーザが切り替えた投射モードを投射モード選択部21が切り替える投射モードよりも優先させる。
【0028】
図4は、測距部105の一構成例を示す図である。図4に示す測距部105は、赤外線射出部51と赤外線検出部52とを備える。赤外線検出部52は、検出光学系52aと赤外線検知アレイ52bとを有する。赤外線検知アレイ52bは、複数の赤外線受光素子53を有する。
【0029】
赤外線射出部51は、プロジェクタ1の前方にあるスクリーン200に向けて所定の射出角度で赤外線を射出する。赤外線検出部52は、スクリーン200によって反射した赤外線を検出する。赤外線検出部52に入射した赤外線は、検出光学系52aにより赤外線検知アレイ52bのいずれかの赤外線受光素子53に導かれ、いずれの赤外線受光素子53に導かれたかによってスクリーン200までの距離を測定することができる。
【0030】
検出光学系52aにより赤外線がいずれの赤外線受光素子53に導かれるかは、赤外線が検出光学系52aに入射する角度によって決まる。そして、検出光学系52aへの入射角度はスクリーン200における赤外線の反射角度θにより決まる。スクリーン200における赤外線の反射角度θは、プロジェクタ1の前面とスクリーン200との間の距離が長くなるほど小さくなる。
【0031】
図5は、プロジェクタ1の投射モードに関する切替処理に関するフローチャートの一例である。図5の処理は、プロジェクタ1の電源がオンになったときに開始する。ステップS100では、投射モード選択部21は、センサ類23の出力に基づいて、プロジェクタ1の筐体が静止しているか否かを判定する。切替処理は、プロジェクタ1の筐体が静止している場合はステップS101に進み、プロジェクタ1の筐体が静止していない場合はステップS111に進む。
【0032】
ステップS101では、投射モード選択部21は、プロジェクタ1が低スペックルモードか否かを判定する。切替処理は、プロジェクタ1が低スペックルモードであるとき、ステップS100に戻る。一方、プロジェクタ1が低スペックルモードでないときは、ステップS102に進む。
【0033】
ステップS102では、投射モード選択部21は、拡大光学系駆動部22を用いて拡大光学系13をコリメート光の光路上へ挿入して、プロジェクタ1を低スペックルモードに切り替える。プロジェクタ1が低スペックルモードに切り替わった後、切替処理はステップS100に戻る。
【0034】
ステップS111では、投射モード選択部21は、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードか否かを判定する。投射モード選択部21は、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードであるとき、ステップS100の処理に戻る。一方、プロジェクタ1がフリーフォーカスモードでないときは、ステップS112の処理に進む。
【0035】
ステップS112では、投射モード選択部21は、拡大光学系駆動部22を用いて拡大光学系13をコリメート光の光路上から退避させて、プロジェクタ1をフリーフォーカスモードに切り替える。プロジェクタ1がフリーフォーカスモードに切り替わった後、切替処理はステップS100に戻る。
【0036】
前述したとおり、投射光学系駆動部20は、プロジェクタ1の投射モードが切り替わるたびに、投射光学系17を光軸方向に駆動し、投射光学系17の焦点を調節する。すなわち、ステップS102においてプロジェクタ1が低スペックルモードに切り替わるたびに、投射光学系駆動部20は、測距部105により算出されたプロジェクタ1からスクリーンまでの距離に基づいて投射光学系17の焦点を調節する。一方、ステップS112においてプロジェクタ1がフリーフォーカスモードに切り替わるたびに、投射光学系駆動部20は投射光学系17を予め設定された所定位置に調節する。
【0037】
以上で説明した第1実施形態は、以下の作用効果を奏する。
プロジェクタ1はレーザー光源11から射出されたレーザー光に対応したホログラム再生光像を変調して投影光像を射出する光変調素子16を有する。そして、光変調素子16から投射光学系17へ入射された投影光像は、スクリーンに向けて投射される。投射モード選択部21は、プロジェクタ1の筐体が静止しているか否かに基づいて、プロジェクタ1を焦点深度が浅い低スペックルモードとするか、焦点深度が深いフリーフォーカスモードとするかを選択する。投射モード選択部21は、プロジェクタ1を低スペックルモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路中に挿入して、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の光束径を拡大する。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が大きくなり、投影光像の焦点深度が浅くなる。また、投射モード選択部21は、プロジェクタ1をフリーフォーカスモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路から退避させる。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が低スペックルモードより小さくなり、投影光像の焦点深度が深くなる。これにより、プロジェクタ1は、焦点深度の異なる複数の投影方法を切り替えて利用することができ、様々な利用環境に対応できる。
【0038】
―第2の実施形態―
本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態によるプロジェクタは、投射モードの切替処理が第1実施形態によるプロジェクタ1と異なる。図6は、本発明の第2実施形態によるプロジェクタ2の内部構成の一例を示すブロック図である。プロジェクタ1と同様の構成については同じ符号が付されており、その説明を省略する。プロジェクタ2は、投射モード選択部21の代わりに投射モード選択部31を備える。投射モード選択部31は、CPU、RAM、ROMなどによって構成され、測距部105および拡大光学系駆動部22に接続されている。
【0039】
プロジェクタ2の投射モード選択部31は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離が低スペックルモードの焦点深度より大きく変化したとき、一時的にプロジェクタ2をフリーフォーカスモードに切り替える。そして、投射モード選択部31は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化が低スペックルモードの焦点深度より小さくなったとき、プロジェクタ2を低スペックルモードに切り替える。
【0040】
投射モード選択部31は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離に関する情報を測距部105から取得し、測距部105から取得した情報に基づいて、プロジェクタ2の投射モードを選択する。測距部105は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離を測定しており、測定された距離に関する情報(距離情報と称する)を投射モード選択部31へリアルタイムに送信している。なお、ユーザが投射モード切替スイッチ101を操作して、プロジェクタ2の投射モードを切り替えた場合、ユーザが切り替えた投射モードは、投射モード選択部31が切り替える投射モードよりも優先する。
【0041】
図7は、本発明の第2の実施形態によるプロジェクタ2の投射モードの切替処理に関するフローチャートの一例である。図7の処理は、プロジェクタ2の電源がオンになったときに処理を開始する。測距部105は、プロジェクタ2の電源がオンになると、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の測定を開始して、投射モード選択部31への距離情報の送信を開始する。
【0042】
ステップS200では、投射モード選択部31は、受信した距離情報に基づいて、所定の長さの期間におけるプロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化幅の算出処理を開始する。所定の長さの期間とは、たとえば現在時刻からその所定時間前(たとえば、1分前)の時刻までの期間である。また、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化幅とは、所定の長さの期間において測距部105により測定された距離の最大値と最小値の差である。
【0043】
ステップS201では、投射モード選択部31は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化幅が低スペックルモードの焦点深度以下か否かを判定する。切替処理は、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化幅が低スペックルモードの焦点深度以下である場合はステップS202に進み、プロジェクタ2の前面からスクリーンまでの距離の変化幅が第1焦点深度よりも大きい場合はステップS211に進む。
【0044】
ステップS202では、投射モード選択部31は、プロジェクタ2が低スペックルモードか否かを判定する。切替処理は、プロジェクタ2が低スペックルモードであるとき、ステップS201に戻る。一方、プロジェクタ2が低スペックルモードでないときは、ステップS203に進む。
【0045】
ステップS203では、投射モード選択部31は、拡大光学系駆動部22を用いて拡大光学系13をコリメート光の光路上へ挿入して、プロジェクタ2を低スペックルモードに切り替える。プロジェクタ2が低スペックルモードに切り替わったら、切替処理はステップS201に戻る。
【0046】
ステップS211では、投射モード選択部31は、プロジェクタ2がフリーフォーカスモードか否かを判定する。投射モード選択部31は、プロジェクタ2がフリーフォーカスモードであるとき、ステップS201の処理に戻る。一方、プロジェクタ2がフリーフォーカスモードでないときは、ステップS212の処理に進む。
【0047】
ステップS212では、投射モード選択部31は、拡大光学系駆動部22を用いて拡大光学系13をコリメート光の光路上から退避させて、プロジェクタ2をフリーフォーカスモードに切り替える。プロジェクタ2がフリーフォーカスモードに切り替わったら、切替処理はステップS201に戻る。
【0048】
なお、第1の実施形態と同様に、投射光学系駆動部20は、プロジェクタ2の投射モードが切り替わるたびに、投射光学系17を光軸方向に駆動し、投射光学系17の焦点を調節する。すなわち、ステップS203においてプロジェクタ2が低スペックルモードに切り替わったときは、投射光学系駆動部20は、測距部105により算出されたプロジェクタ2からスクリーンまでの距離に基づいて投射光学系17の焦点を調節する。一方、ステップS212においてプロジェクタ2がフリーフォーカスモードに切り替わったときは、投射光学系駆動部20は、投射光学系17を予め設定された所定位置に調節する。
【0049】
以上で説明した第2実施形態は、以下の作用効果を奏する。
プロジェクタ2はレーザー光源11から射出されたレーザー光に対応したホログラム再生光像を変調して投影光像を射出する光変調素子16を有する。そして、光変調素子16から投射光学系17へ入射された投影光像は、スクリーンに向けて投射される。投射モード選択部31は、測距部105から受信した距離情報に基づいて、プロジェクタ2を焦点深度が浅い低スペックルモードとするか、焦点深度が深いフリーフォーカスモードとするかを選択する。投射モード選択部31は、プロジェクタ2を低スペックルモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路中に挿入して、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の光束径を拡大する。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が大きくなり、投影光像の焦点深度が浅くなる。また、投射モード選択部31は、プロジェクタ2をフリーフォーカスモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路から退避させる。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が低スペックルモードより小さくなり、投影光像の焦点深度が深くなる。これにより、プロジェクタ2は、焦点深度の異なる複数の投影方法を切り替えて利用することができ、様々な利用環境に対応できる。
【0050】
―第3の実施形態―
本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態によるプロジェクタは、投射モードの切替処理が第1実施形態によるプロジェクタ1や第2実施形態によるプロジェクタ2と異なる。
【0051】
図8は、本発明の第3実施形態によるプロジェクタ3の上面図と正面図を例示したものである。図8に示すように、プロジェクタ3は、測距部105を複数備える。複数の測距部105は、プロジェクタ3の前面からスクリーンまでの距離をそれぞれ測定する。
【0052】
図9は、プロジェクタ3の内部構成の一例を示すブロック図である。図9において、プロジェクタ1と同様の構成については同じ符号が付されており、その説明を省略する。プロジェクタ3は、投射モード選択部21の代わりに投射モード選択部41を備える。投射モード選択部41は、CPU、RAM、ROMなどによって構成され、複数の測距部105と、拡大光学系駆動部22とに接続されている。
【0053】
投射モード選択部41は、プロジェクタ3の前面からスクリーンまでの距離に関する情報を複数の測距部105から取得し、複数の測距部105から取得した情報に基づいて、プロジェクタ3の投射モードを選択する。複数の測距部105の各々は、プロジェクタ3の前面からスクリーンまでの距離をそれぞれ測定しており、測定された距離に関する情報を投射モード選択部31へリアルタイムに送信している。
【0054】
プロジェクタ3の投射モード選択部41は、複数の測距部105がそれぞれ測定した距離の差を算出する。そして、投射モード選択部41は、その差が所定値以下のときプロジェクタ3を低スペックルモードに切り替える。また一方で、投射モード選択部41は、その差が所定値より大きいときプロジェクタ3をフリーフォーカスモードに切り替える。
【0055】
なお、ユーザが投射モード切替スイッチ101を操作してプロジェクタ3の投射モードを切り替えた場合は、投射モード選択部41は、ユーザが切り替えた投射モードを投射モード選択部41が切り替える投射モードよりも優先させる。
【0056】
図11は、投射モード選択部41が実行する切替処理について説明するための図である。図11には、複数の測距部105aおよび105bとスクリーン300とが図示されている。測距部105aは、スクリーン300の面上の点P1までの距離L1を測定している。測距部105bは、スクリーン300の面上の点P2までの距離L2を測定している。図11の例では、投射モード選択部41(図11では不図示)は、測距部105aおよび測距部105bがそれぞれ測定した距離の差|L1−L2|を算出する。距離の差|L1−L2|は、スクリーン300が投影光像の投影方向301に対して垂直な平面のとき零となる。図11では、スクリーン300と投影光像の投影方向301とは直交しておらず、傾斜角度θを成している。投射モード選択部41は、距離の差|L1−L2|が所定値(たとえば、プロジェクタ3の焦点深度)以下のとき(傾斜角度θが所定角度より大きいとき)プロジェクタ3を低スペックルモードに切り替える。また一方で、投射モード選択部41は、その差|L1−L2|が所定値より大きいとき(傾斜角度θが所定角度より小さいとき)プロジェクタ3をフリーフォーカスモードに切り替える。フリーフォーカスモードに切り替えることにより、スクリーン300の投影光像の一部がぼけて画質が低下することを抑制することができる。
【0057】
図10は、本発明の第3の実施形態によるプロジェクタ3の投射モードの切替処理に関するフローチャートの一例である。図10の処理は、プロジェクタ3の電源がオンになったときに処理を開始する。複数の測距部105は、プロジェクタ3の電源がオンになると、プロジェクタ3の前面からスクリーンまでの距離の測定を開始し、投射モード選択部41への距離情報の送信を開始する。
【0058】
ステップS300では、投射モード選択部41は、複数の測距部105の各々から受信した距離情報に基づいて、複数の測距部105の各々により測定された距離の差(たとえば、図11の|L1−L2|)が所定値以下か否かを判定する。切替処理は、測定された複数の距離の差が所定値以下であると判定された場合、スクリーンが投影光像の投影方向に対して実質的に垂直であって、凹凸が少ない平面であると判断し、ステップS301に進む。一方、切替処理は、測定された複数の距離の差が所定値を超えている場合、スクリーンと投影光像の投影方向との成す傾斜角度θが大きかったり、スクリーンに凹凸があったりすると判断し、ステップS311に進む。
【0059】
ステップS301では、投射モード選択部41は、プロジェクタ3が低スペックルモードか否かを判定する。切替処理は、プロジェクタ3が低スペックルモードであるとき、ステップS300に戻る。一方、プロジェクタ3が低スペックルモードでないときは、ステップS302に進む。
【0060】
ステップS302では、拡大光学系駆動部22が拡大光学系13をコリメート光の光路上へ挿入し、プロジェクタ3を低スペックルモードに切り替える。プロジェクタ3が低スペックルモードに切り替わったら、切替処理はステップS300に戻る。
【0061】
ステップS311では、投射モード選択部41の演算部は、プロジェクタ3がフリーフォーカスモードか否かを判定する。投射モード選択部41は、プロジェクタ3がフリーフォーカスモードであるとき、ステップS300の処理に戻る。一方、プロジェクタ3がフリーフォーカスモードでないときは、ステップS312の処理に進む。
【0062】
ステップS312では、拡大光学系駆動部22が拡大光学系13をコリメート光の光路上から退避させ、プロジェクタ3をフリーフォーカスモードに切り替える。プロジェクタ3がフリーフォーカスモードに切り替わったら、切替処理はステップS300に戻る。
【0063】
なお、第1の実施形態と同様に、投射光学系駆動部20は、プロジェクタ3の投射モードが切り替わるたびに、投射光学系17を光軸方向に駆動し、投射光学系17の焦点を調節する。すなわち、ステップS302においてプロジェクタ3が低スペックルモードに切り替わったときは、投射光学系駆動部20は、複数の測距部105により算出されたプロジェクタ3からスクリーンまでの距離に基づいて投射光学系17の焦点を調節する。一方、ステップS312においてプロジェクタ2がフリーフォーカスモードに切り替わったときは、投射光学系駆動部20は、投射光学系17を予め設定された所定位置に調節する。
【0064】
以上で説明した第3実施形態は、以下の作用効果を奏する。
プロジェクタ3はレーザー光源11から射出されたレーザー光に対応したホログラム再生光像を変調して投影光像を射出する光変調素子16を有する。そして、光変調素子16から投射光学系17へ入射された投影光像は、スクリーンに向けて投射される。投射モード選択部41は、複数の測距部105によりそれぞれ測定されたスクリーンまでの距離同士の差が所定値以下か否かに基づいて、プロジェクタ3を焦点深度が浅い低スペックルモードとするか、焦点深度が深いフリーフォーカスモードとするかを選択する。投射モード選択部41は、プロジェクタ3を低スペックルモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路中に挿入して、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の光束径を拡大する。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が大きくなり、投影光像の焦点深度が浅くなる。また、投射モード選択部41は、プロジェクタ3をフリーフォーカスモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路から退避させる。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が低スペックルモードより小さくなり、投影光像の焦点深度が深くなる。これにより、プロジェクタ3は、焦点深度の異なる複数の投影方法を切り替えて利用することができ、様々な利用環境に対応できる。特に、プロジェクタ3は、複数の測距部105を用いてスクリーンまでの距離を測定して、その測定結果に基づいて焦点深度を変更することで、スクリーンが傾斜していることやスクリーンが凹凸を有している場合にも対応することができる。
【0065】
―第4の実施形態―
本発明の第4の実施形態について説明する。本発明の第4の実施形態によるプロジェクタは、投射モードの切替処理が第1〜第3の実施形態によるプロジェクタ1〜3と異なる。第4の実施の形態によるプロジェクタは、スクリーンが平面であるか曲面であるかを検出して、その判別結果に基づいて投射モードを切り替える。スクリーンが曲面である状況とは、たとえばコップや円柱などをスクリーンとして利用する状況である。
【0066】
図12に示すように、曲面を有するスクリーン400と本発明の第4の実施形態によるプロジェクタ4との間の投影方向401の距離は、スクリーン400の面上の位置によって異なる。スクリーン400とプロジェクタ4との間の投影方向401の距離の最大値と最小値の差がプロジェクタ4の焦点深度よりも大きくなると、プロジェクタ4は投影像の一部がぼけて低品質の画像を投影する虞がある。そこで、プロジェクタ4は、スクリーン400に画像を投影する際は、焦点深度が深いフリーフォーカスモードを用いることで、画質の低下を抑制する。
【0067】
図13は、プロジェクタ4の内部構造の一例を示すブロック図である。プロジェクタ4は、撮像部50と投射モード選択部51と投射光学系駆動部52を備えている。撮像部50は、スクリーンを所定のフレームレートで撮像する。撮像部50は、スクリーンの撮像画像を投射モード選択部51へ出力する。
【0068】
投射モード選択部51は、CPU、RAM、ROMなどによって構成され、撮像部50と拡大光学系駆動部22と投射光学系駆動部52とに接続されている。投射モード選択部51は、撮像部50が出力する撮像画像に基づいて、スクリーンの曲面検出と、投影光学系18の合焦位置を検出する焦点検出処理と、投射モードの選択処理とを実行する。投射モード選択部51が実行する焦点検出処理は、たとえば公知のコントラストAF方式を用いればよい。投射光学系駆動部52は、投射モード選択部51が検出した合焦位置まで投影光学系18を駆動する。
【0069】
図14は、投射モード選択部51が実行する投射モード選択処理に関するフローチャートである。ステップS400では、投射モード選択部51は、撮像部50からのスクリーンに関する撮像画像の取得を開始する。以降、投射モード選択部51は、フレームごとにスクリーンに関する撮像画像を取得する。
【0070】
ステップS410では、投射モード選択部51は、撮像部50から取得した各フレームごとの撮像画像に基づいて、プロジェクタ4の移動などに伴うスクリーンの変化が発生したか否かを判定する。このステップS410の処理に関しては、その詳細を後述する。投射モード選択部51は、ステップS410が肯定判定された場合は処理をステップS420に進め、否定判定された場合は処理をステップS410に進める。
【0071】
ステップS420では、投射モード選択部51は、撮像部50が撮像した各フレームごとの撮像画像に基づいて、スクリーン上の投影画像の焦点が合っているか否かを判定する。投射モード選択部51は、ステップS420が肯定判定された場合は処理をステップS410に進め、否定判定された場合は処理をステップS430に進める。
【0072】
ステップS430では、投射モード選択部51は、プロジェクタ4をフリーフォーカスモードに切り替える。ステップS440では、投射モード選択部51は、投射開口部104から図15(a)に例示するような格子状のパターン画像を投射する。格子状のパターン画像は、投射モード選択部51のROMやその他の記憶媒体に記憶されている。ステップS450では、投射モード選択部51は、撮像画像に含まれるパターン画像の格子の歪みに基づいて、スクリーンが曲面か否かを判定する。投射モード選択部51は、その格子の形状が所定量以上歪んでいるとき(たとえば、図15(b))、スクリーンが曲面であると判定する。投射モード選択部51は、ステップS450が肯定判定された場合は処理をステップS460に進め、否定判定された場合は処理をステップS470に進める。ステップS460では、投射モード選択部51は、プロジェクタ4をフリーフォーカスモードに切り替える。ステップS470では、投射モード選択部51は、プロジェクタ4を低スペックルモードに切り替える。
【0073】
ステップS460では、投射モード選択部51は、プロジェクタ4をフリーフォーカスモードに切り替える。ステップS470では、投射モード選択部51は、プロジェクタ4を低スペックルモードに切り替える。ステップS480では、投射モード選択部51は、焦点検出処理により投射光学系17を焦点調節する。
【0074】
なお、ユーザが投射モード切替スイッチ101を操作してプロジェクタ4の投射モードを切り替えた場合は、投射モード選択部51は、ユーザが切り替えた投射モードを投射モード選択部51が上記の処理を用いて切り替えた投射モードよりも優先させる。
【0075】
図16は、図14のステップS410で投射モード選択部51が実行する処理に関するフローチャートである。ステップS411では、投射モード選択部51は、撮像部50から取得した各フレームごとの撮像画像から、スクリーンに向けて投射した投影画像の画像データを、画像処理を用いて差し引く。これにより、各フレームごとの撮像画像からスクリーンに関する画像が抽出される。
【0076】
ステップS412では、投射モード選択部51は、ステップS411で抽出されたスクリーンに関する画像を、前フレームのスクリーンに関する画像と比較して、所定割合(たとえば50%)以上変化したか否かを判定する。投射モード選択部51は、ステップS412が肯定判定された場合は処理をステップS413に進め、ステップS412が否定判定された場合は処理をステップS414に進める。
【0077】
ステップS413では、図14のステップS410の判定結果として、スクリーンが変化したと判定する。一方、ステップS414では、図14のステップS410の判定結果として、スクリーンが変化していないと判定する。
【0078】
以上で説明した第4実施形態は、以下の作用効果を奏する。
プロジェクタ4はレーザー光源11から射出されたレーザー光に対応したホログラム再生光像を変調して投影光像を射出する光変調素子16を有する。そして、光変調素子16から投射光学系17へ入射された投影光像は、スクリーンに向けて投射される。投射モード選択部51は、スクリーンが曲面か否かに基づいて、プロジェクタ4を焦点深度が浅い低スペックルモードとするか、焦点深度が深いフリーフォーカスモードとするかを選択する。投射モード選択部51は、プロジェクタ4を低スペックルモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路中に挿入して、ホログラム記録媒体14から射出されるホログラム再生光像の光束径を拡大する。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が大きくなり、投影光像の焦点深度が浅くなる。また、投射モード選択部51は、プロジェクタ4をフリーフォーカスモードとするとき、拡大光学系13をコリメート光の光路から退避させる。これにより、光変調素子16に入射するホログラム再生光像の入射開口数が低スペックルモードより小さくなり、投影光像の焦点深度が深くなる。これにより、プロジェクタ4は、焦点深度の異なる複数の投影方法を切り替えて利用することができ、様々な利用環境に対応できる。特に、プロジェクタ4は、スクリーンが曲面を有することを検出して、その検出結果に基づいて焦点深度を変更することで、コップや円柱などの曲面を有するスクリーンに投影する場合にも対応することができる。
【0079】
以上で説明した各実施形態は、以下のように変形して実施できる。
〔1〕上記の各実施形態では、ユーザが投射モード切替スイッチ101を操作して各プロジェクタ1〜4の投射モードを切り替えたとき、ユーザが切り替えた投射モードを、投射モード選択部21、31、41、51が切り替えた投射モードよりも優先させた。しかし、逆に投射モード選択部21、31、41、51が切り替えた投射モードを、ユーザが切り替えた投射モードよりも優先するようにしてもよい。また、いずれの投射モードを優先するかを決定スイッチ102および選択スイッチ103を用いて設定できるようにしてもよい。
【0080】
〔2〕図5、図7、図10、図14では、投射モード選択部21、31、41、51が投射モードを選択したとき、拡大光学系駆動部22がユーザに切り替えを実行するか否かを確認することなくプロジェクタ1〜4の投射モードを切り替えた。しかし、投射モード選択部21、31、41、51が投射モードを選択した後、ユーザに切り替えを実行するか否かを確認した上でプロジェクタ1〜4の投射モードを切り替えることにしてもよい。また、拡大光学系駆動部22が自動的にプロジェクタ1〜4の投射モードを切り替えるのではなく、投射モード選択部21、31、41、51の演算部が選択した投射モードへの切り替えを促す所定のメッセージをスクリーン上に表示し、ユーザに投射モード切替スイッチ101を介して手動で投射モードを切り替えさせることにしてもよい。
【0081】
〔3〕プロジェクタ1〜4は、一つの拡大光学系13を挿抜することにより、低スペックルモードとフリーフォーカスモードとを切り替えた。しかし、プロジェクタ1〜3は、光束径の拡大倍率が異なる拡大光学系を複数備えていることにしてもよい。また、光束径を縮小する縮小光学系をさらに備えることにしてもよい。そして、複数の拡大光学系や縮小光学系を用いて、低スペックルモードおよびフリーフォーカスモードとは異なる焦点深度で投影光像を投影可能にしてもよい。
【0082】
また、プロジェクタ1〜4の投射モードを切り替える手段は、拡大光学系や縮小光学系の挿抜に限定しない。たとえば、図17に示すように拡大光学系13をMEMSミラーやガルバノミラーなどの走査光学系19に変更し、拡大光学系駆動部22を走査光学系19の角度を周期的に変更する走査光学系駆動部500に変更してもよい。このとき、集光光学系12から射出されるコリメート光は、走査光学系19によりホログラム記録媒体14へ再生照明光として反射される。投射モード選択部21、31、41、51は、走査光学系駆動部500に走査光学系19の振れ角を指示し、再生照明光を受光するホログラム記録媒体14の領域を制御する。低スペックルモードのときは走査光学系19の振れ角が大きくなるように制御し、フリーフォーカスモードのときは走査光学系19の振れ角が小さくなるように制御すればよい。
【0083】
〔4〕ホログラム記録媒体14は、透過型ホログラムを記録するものとしたが、反射型ホログラムを記録するものとしてもよい。また、光変調素子16は透過型の空間光変調器としたが、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)やDMD(Digital Mirror Device)のような反射型の光変調素子を用いてもよい。また、ホログラム記録媒体14は、コリメート光を透過するマイクロレンズに変更してもよい。
【0084】
〔5〕プロジェクタ3に備わる複数の測距部105は、ステレオカメラに置き換えても良い。プロジェクタ3の投射モード選択部41は、ステレオカメラから取得したスクリーンの奥行情報に基づいて、図10のステップS300の判定を行うことにしてもよい。また、プロジェクタ4の撮像部50についても、ステレオカメラに置き換えられる。その場合、プロジェクタ4の投射モード選択部51は、ステレオカメラから取得したスクリーンの奥行情報に基づいて、スクリーンが曲面を有することを判断することにすればよい。
【0085】
〔6〕本発明は、プロジェクタ付きカメラ、プロジェクタ付きビデオカメラ、プロジェクタ付き携帯電話などにも適用できる。図18は、プロジェクタ付きビデオカメラの一例である。図18に示すプロジェクタ付きビデオカメラ600は、バリアングルモニタ601の裏面側にプロジェクタ用の投射部602を備える。プロジェクタ付きビデオカメラ600は、その撮像部603と投射部602とを用いて、本発明の第4の実施形態のプロジェクタ4と同様の処理を行うことができる。たとえば、プロジェクタ付きビデオカメラ600は、投射部602で投射した格子状のパターン画像を撮像部603で撮像して、その撮像結果に基づいてスクリーンの曲面を検出することにしてもよい。そして、プロジェクタ付きビデオカメラ600がスクリーンの曲面を検出したとき、フリーフォーカスモードによる投影を行うことにしてもよい。
【0086】
また、本発明が適用されたプロジェクタ付きカメラおよびプロジェクタ付きビデオカメラが手振れ補正機能を有する場合、手振れを検出するための角速度センサ等を、プロジェクタ1のセンサ類23として利用することにしてもよい。
【0087】
また、プロジェクタ付きカメラ、プロジェクタ付きビデオカメラ、プロジェクタ付き携帯電話などでは、クレイドルに設置されたことを検出することにしてもよい。そして、クレイドルに設置されたことを検出したとき、プロジェクタを搭載した電子機器が静止状態にあると判断して、低スペックルモードに切り替えることにしてもよい。なお、クレイドルに設置されたことの検出は、クレイドルから所定の信号を受信することにすればよい。
【0088】
〔7〕第4の実施形態のプロジェクタ4や図18のプロジェクタ付きビデオカメラ600のような撮像部を備えるプロジェクタでは、撮像部から出力される撮像画像を解析して、そのプロジェクタが静止状態にあるか否かを判定することにしてもよい。たとえば、被写体像を撮像した撮像画像が所定時間以上連続して変化しなければプロジェクタが静止状態にあると判定することにすればよい。そして、撮像画像を解析してプロジェクタが静止状態にあることが検出された場合は、低スペックルモードに切り替えることにすればよい。
【0089】
第4の実施形態によるプロジェクタ4は、図14のステップS440において、スクリーンが曲面であるか否かを判定するために格子状のパターン画像をスクリーンへ投射した。しかし、格子状のパターン画像は、スクリーンの曲面を検出すること以外にも利用できる。たとえば、図11のようにスクリーンが傾斜していることを検出することにも利用することができる。また、スクリーンが曲面であることを検出するために投射するパターン画像は、図15(a)のものだけに限定しない。
【0090】
以上で説明した各実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。また、発明の特徴が損なわれない範囲で任意に各実施の形態や各種の変形例を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,2,3,4 プロジェクタ
13 拡大光学系
17 投射光学系
21,31,41,51 投射モード選択部
22 拡大光学系駆動部
50 撮像部
101 投射モード切替スイッチ
105 測距部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源から射出された光束を変調して投影光像として射出する光変調素子と、
投射光学系を有し、前記光変調素子から前記投射光学系へ入射された投影光像を投射する投射手段と、
前記投射手段が前記投影光像を投射するときの焦点深度を、予め定められた複数の焦点深度の中から選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された焦点深度に応じて、前記光変調素子に入射する光束の入射開口数を切り替える切替手段とを備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記予め定められた複数の焦点深度は、第1の焦点深度と、前記第1の焦点深度より深い第2の焦点深度とを含むことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
プロジェクタ筐体が静止しているか否かを判断する静止判断手段をさらに備え、
前記選択手段は、前記プロジェクタ筐体が静止していると前記静止判断手段が判断しているときは前記第1の焦点深度を選択し、前記プロジェクタ筐体が静止していないと前記静止判断手段が判断しているときは前記第2の焦点深度を選択することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプロジェクタにおいて、
投影光像を投射されるスクリーンまでの距離を測定する測距手段と、
前記スクリーンまでの距離に基づいて前記投射光学系の焦点を調節する焦点調節手段とをさらに備えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクタにおいて、
前記選択手段は、所定の長さの期間において前記測距手段により測定された距離の変化幅が前記第1の焦点深度よりも大きいとき前記第2の焦点深度を選択し、前記変化が前記第1の焦点深度以下のとき前記第1の焦点深度を選択することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のプロジェクタにおいて、
前記測距手段は、前記スクリーンまでの距離を測定する測距手段を複数備え、
前記選択手段は、前記複数の測距手段がそれぞれ測定した前記スクリーンまでの距離の差が所定値より大きいとき前記第2の焦点深度を選択し、前記距離の差が所定値以下のとき前記第1の焦点深度を選択することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
投影光像が投射されるスクリーンが曲面を有するか否かを判断する曲面判断手段をさらに備え、
前記選択手段は、前記スクリーンが曲面を有すると前記曲面判断手段が判断した場合は前記第2の焦点深度を選択し、前記スクリーンが曲面を有さないと前記曲面判断手段が判断した場合は前記第1の焦点深度を選択することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタにおいて、
前記スクリーンを撮像して撮像画像を出力する撮像手段をさらに備え、
前記曲面判断手段は、所定の画像が投射された前記スクリーンを前記撮像手段が撮像して撮像画像を出力し、前記所定の画像と前記撮像手段に撮影された前記撮影画像とを比較して前記スクリーンが曲面を有することを判断することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のプロジェクタにおいて、
前記撮像画像に基づいて前記スクリーンの変化を検出するスクリーン変化検出手段とを備え、
前記選択手段は、前記スクリーン変化検出手段が前記スクリーンの変化を検出したとき、前記第2の焦点深度を選択し、
前記投射手段は、選択された前記第2の焦点深度で前記所定の画像を前記スクリーンに投射することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記投射光学系の入射瞳位置は、前記光変調素子より前記レーザー光源側の光軸上の位置にあることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
レーザー光源から射出された光束が入射され、ホログラム像に基づくホログラム再生光像を射出するホログラム記録媒体とをさらに備え、
前記ホログラム記憶媒体から射出された前記ホログラム再生光像は、前記光変調素子に入射し変調されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のプロジェクタを備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−15820(P2013−15820A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−116231(P2012−116231)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】