プロジェクタ
【課題】プロジェクタの姿勢を変更した場合でも、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、温度分布が一様となるように冷却風を送風できる構成を実現し、光源ランプの長寿命化とプロジェクタの投写品質を向上するプロジェクタを提供すること。
【解決手段】プロジェクタ1は、発光により光束を射出する発光管311を有する光源ランプ31と、発光管311に対して空気を送風し、発光管311を冷却する2つの冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)と、を備え、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76による空気の各送風方向は、光束の光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。
【解決手段】プロジェクタ1は、発光により光束を射出する発光管311を有する光源ランプ31と、発光管311に対して空気を送風し、発光管311を冷却する2つの冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)と、を備え、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76による空気の各送風方向は、光束の光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源ランプと、光源ランプから射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成する光変調装置と、画像光を投写する投写光学装置とを備えたプロジェクタが知られている。このようなプロジェクタにおいて、光源ランプは、一対の電極間を高電圧で放電させて発光させる放電式の発光管と、発光管で発光した光束を反射させて同方向に向かせる凹面形状を有し、発光管を保持固定するリフレクタとを有して構成される。また、光源ランプは、リフレクタを収容し、リフレクタからの光束の射出側に透光性部材を設置し、リフレクタと透光性部材と枠体とでリフレクタの反射面側が密閉された構造となっている。また、プロジェクタは、机上などの設置面に載置して使用するいわゆる正置き姿勢と、正置き姿勢に対して上下が逆となるように天井などから吊り下げて使用するいわゆる天吊り姿勢との2通りの姿勢で使用されている。
【0003】
そして、光源ランプは、発光管の発光に伴う発熱で発光管内の温度が上昇して熱対流が生じ、発光管の上方側と下方側とに温度差が生じてしまう。特に、発光管の最大温度部(通常は、上方側)が下方側に比べて高温側に偏り過ぎることにより、発光管の内壁に白化が生じることになる。また逆に、発光管の最低温度部(通常は、下方側)が上方側に比べて低温側に偏り過ぎることにより、発光管の内壁に黒化が生じることになる。このような現象が発生した場合には、光源ランプの明るさが低下(光源ランプの発光性能劣化)し、プロジェクタから投写される画像光の明るさが低下してしまうことになる。当然、光源ランプの寿命が短くなってしまう。なお、正置き姿勢、天吊り姿勢の両方の姿勢において、上述した白化や黒化の現象を発生させないためには、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風することが必要となる。
【0004】
なお、特許文献1には、光源装置の冷却風流入口に冷却風の流れを分割、制御する冷却風制御部材を設け、この冷却風制御部材は、移動自在、或いは自重により移動自在に取り付けられることで、プロジェクタが正置き姿勢、天吊り姿勢の両方の姿勢でも、適切な冷却風が発光管(光源ランプ)に流れるようにした技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−173085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示される技術では、プロジェクタの姿勢を切り替えた場合、ユーザが冷却風制御部材を移動させることが必要となるため、移動させることを忘れることがある。また、プロジェクタの内部に収容する光源装置を操作することになるため、ユーザに操作を行なわせることには無理がある。また、冷却風制御部材を比重の高い材質で構成し、その自重により移動させることも開示しているが、信頼性が低い面がある。
【0007】
従って、プロジェクタを正置き姿勢や天吊り姿勢に切り替えた場合に、ユーザに負担を掛けずに、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる構成を実現し、光源ランプの長寿命化とプロジェクタの投写品質向上が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)本適用例に係るプロジェクタは、(a)発光により光束を射出する発光管を有する光源ランプと、(b)発光管に対して空気を送風し、発光管を冷却する2つの冷却ファンと、を備え、2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0010】
上記プロジェクタでは、発光管を有する光源ランプと、発光管を冷却する2つの冷却ファンとを備える。そして、2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。このように、2つの冷却ファンの各送風方向は、光軸を通る平面に略平行で略同方向となるように設定されることにより、発光管に対し、発光管の光軸を通る平面の上方側となる領域と、下方側となる領域とを、光源ランプに対して同じ側から、それぞれの冷却ファンで効率よく冷却することができる。このように送風方向を設定することにより、プロジェクタを正置き姿勢や天吊り姿勢に切り替えた場合でも、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。それにより、発光管の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプの寿命劣化を抑制でき、光源ランプの長寿命化を図ることができる。また、発光管の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプの輝度低下を抑制でき、プロジェクタの投写品質も向上できる。
【0011】
なお、「光軸を通る平面」とは、基本的には、光源ランプから射出された光束の光軸は、例えば反射ミラーなどにより、反射して方向を変化させることになるが、光源ランプから射出された光束の光軸と、方向を変化させた光軸とにより形成される平面を言う。また、プロジェクタを水平な机上面に載置し(ただし、投写角度調整をしていない場合)、光源ランプから射出された光束の光軸と机上面とは略平行である場合に、光源ランプから射出された光束の光軸を通り机上面と平行となる平面を「光軸を通る平面(水平面)」と言い換えてもよい。この場合、光源ランプから射出された光束の光軸が机上面に対して傾いた場合、言い換えれば、プロジェクタが机上面に対して傾いた(投写角度調整を行なった)場合、「光軸を通る平面(水平面)」も机上面に対して傾くことになる。
また、送風方向は、冷却ファン自体や、ダクトなどの流路を用いた冷却ファンなどで設定してもよい。
【0012】
(適用例2)上記のプロジェクタであって、冷却ファンの各吐出口は、平面に略隣接し、略対称に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記プロジェクタでは、冷却ファンの各吐出口が、平面に略隣接し、略対称に配置されることにより、光源ランプに対して同じ側で、また、送風方向を隣接させて上下に重ねる形態で設定することができる。これにより、光源ランプを冷却するための送風方向をコンパクトな構成で実現でき、また、発光管を更に効率的に冷却することができる。
【0014】
(適用例3)上記のプロジェクタであって、2つの冷却ファンの動作を制御するファン駆動制御部を備え、ファン駆動制御部は、当該プロジェクタを所定の第1姿勢と所定の第2姿勢とに切り替えて画像光を投写させる場合、第1姿勢と第2姿勢との姿勢に応じて、2つの冷却ファンの動作を制御することが好ましい。
【0015】
上記プロジェクタでは、ファン駆動制御部が、プロジェクタを所定の第1姿勢(例えば、正置き姿勢)と所定の第2姿勢(例えば、天吊り姿勢)とに切り替えて画像光を投写させる場合、正置き姿勢と天吊り姿勢との姿勢に応じて2つの冷却ファンの動作を制御する。従って、ファン駆動制御部により、正置き姿勢と天吊り姿勢との姿勢に応じて各冷却ファンを適正に制御して駆動することで、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0016】
(適用例4)上記のプロジェクタであって、ファン駆動制御部は、第1姿勢と第2姿勢との姿勢に応じて、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なうことが好ましい。
【0017】
上記プロジェクタでは、ファン駆動制御部が、第1姿勢(例えば、正置き姿勢)と第2姿勢(例えば、天吊り姿勢)との姿勢に応じて、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なう。光源ランプは、発光管の発光により発熱した熱は、対流により、発光管の上部側が下部側より高温となる。また、正置き姿勢や天吊り姿勢の場合にも、その姿勢において、発光管の上部(上方)側が下部(下方)側より高温となる。そこで、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風することで、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。また、例えば、特性が略同様の2つの冷却ファンを用いて風量を制御する場合には、1つの冷却ファンの駆動電圧と風量の相関関係に基づいて、駆動電圧を制御することができるため、異なる特性の2つの冷却ファンを用いる場合に比べて、より冷却ファンの風量の制御の仕方が簡易となる。
【0018】
(適用例5)上記のプロジェクタであって、2つの冷却ファンは、遠心力ファンであり、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有していることが好ましい。
【0019】
上記プロジェクタでは、2つの冷却ファンは、相互にミラー反転した構成を有することにより、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねて略同方向に送風可能となる形態で使用することで、2つの冷却ファンの設置に要するスペースを最小限にすることができるため、光源ランプの冷却構造を小型化でき、プロジェクタの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図である。図1を参照して、本実施形態のプロジェクタ1の回路系と、光学系30の一部とを含めて、構成および動作を説明する。
【0022】
プロジェクタ1は、光源装置(光源ランプ31)から射出された光束を、画像情報に応じて光変調部35で変調して光学像を形成し、その光学像を投写光学装置(投写レンズ39)を介し、カラー画像として、投写対象面としてのスクリーン100などに投写するものである。なお、光学系30の説明は図2を用いて後述する。
【0023】
プロジェクタ1の回路系の構成に関して説明する。
本実施形態のプロジェクタ1は、A/Dコンバータ11、ビデオデコーダ12、画像処理部13、画像補正部14、OSD処理部15、液晶パネル駆動部16、ランプ駆動部17、リモコン受光部18、スイッチ部19、キー入力処理部20、電源部21などから構成される。また、プロジェクタ1は、冷却制御部70、内部温度検出部71、冷却ファン駆動部72、排気ファン73、液晶パネル冷却ファン74、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76などから構成される。
【0024】
また、プロジェクタ1は、制御部10により統括制御されている。そして、制御部10は、図示省略するCPU(Central Processing Unit)で構成される。このCPUは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有して構成される。なお、上述した回路系の構成部や光学系30は、プロジェクタ1の外装を構成する筐体5の内部に収容されている。
【0025】
冷却制御部70は、プロジェクタ1内部の冷却動作に関する制御を行なっている。また、冷却制御部70は、制御部10と同様に構成されている。なお、冷却制御部70は、制御部10の中の一部の機能として構成されていてもよい。
【0026】
冷却ファン駆動部72は、冷却制御部70からの指示により、本実施形態では、4つの冷却用のファンとなる第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、排気ファン73、および液晶パネル冷却ファン74に対し、それぞれ駆動電圧を出力して各ファンを駆動する。なお、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76は、筐体5に設置される吸気口6を介して筐体5外部の外気を吸気して、光源ランプ31に向けて送風し、発光により発生する熱を冷却している。第1冷却ファン75、第2冷却ファン76に関する詳細は後述する。
【0027】
液晶パネル冷却ファン74は、後述する光変調部35を構成する液晶パネル35a,35b,35c(図2参照)および液晶パネル35a,35b,35c近傍に設置される偏光板35e,35f,35g(図2参照)を含めて、吸気口6を介して吸気した外気を送風し、それぞれの光学素子で発生する熱を冷却している。また、排気ファン73は、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、液晶パネル冷却ファン74の外気の送風により、光学素子の熱が伝達されて温まった空気や、他の筐体5内部の温まった空気を含め、筐体5外部に排気口7を介して排気している。
【0028】
次に、他の回路系の動作説明を簡潔に行なう。
A/Dコンバータ11は、PC画像信号入力端子11aに入力したPC画像データをデジタル信号に変換し、画像処理部13に出力する。ビデオデコーダ12は、ビデオ信号入力端子12aに入力した動画像データをデジタル信号に変換した後にR・G・Bの色信号に分離し、画像処理部13に出力する。
【0029】
画像処理部13は、制御部10の指示に基づいて、A/Dコンバータ11またはビデオデコーダ12から入力したPC画像データまたは動画像データ(以降、PC画像データまたは動画像データを画像データと称す)に、フレームレート変換およびスケーリング処理などを行なう。そして、画像処理部13は、フレームレート変換、スケーリング処理などを行なった画像データを画像補正部14に出力する。
【0030】
画像補正部14は、制御部10の指示に基づいて、入力した画像データの内容に基づいて、画像データにブライトネス調整、コントラスト調整、ガンマ補正処理などを施す。このように加工された画像データは、OSD処理部15に出力される。
【0031】
OSD処理部15は、制御部10の指示に基づいて、メニュー画面やメッセージ画面などのOSD(On Screen Display)画像を、画像補正部14から入力される画像データに重畳する処理を行なう。なお、制御部10からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部15は、画像補正部14から出力される画像データを、そのまま投写用映像信号として液晶パネル駆動部16に出力する。
【0032】
液晶パネル駆動部16は、OSD処理部15から入力した投写用映像信号をそれぞれの光変調部35(液晶パネル35a,35b,35c)に出力し駆動する。ランプ駆動部17は、制御部10の制御信号により、光源ランプ31の点灯・消灯などの動作を実行させる。
【0033】
リモコン受光部18は、リモコン(リモートコントローラ)8から出力されるリモート制御信号を受信し、キー入力処理部20に出力する。キー入力処理部20は、入力したリモート制御信号をデジタルコードデータに変換して制御部10に出力する。また、スイッチ部19は、プロジェクタ1の外面に設置され、例えば押ボタン式のキースイッチを有しており、キースイッチを押下すると、押下されたキースイッチに応じて制御信号をキー入力処理部20に出力する。キー入力処理部20は、同様に、入力した制御信号をデジタルコードデータに変換して制御部10に出力する。なお、制御部10は、入力されたデジタルコードデータに対する制御信号を制御内容に応じて、画像処理部13、画像補正部14、OSD処理部15、ランプ駆動部17、および冷却制御部70などに出力することにより、投写条件の変更などの動作を実行させる。
【0034】
また、電源部21は、プロジェクタ1の外部の商用電源などから電源ケーブル(図示省略)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示省略)で変圧・整流・平滑などの処理を行ない、安定化させた直流電圧をプロジェクタ1を構成する各部に供給する。
【0035】
内部温度検出部71はサーミスタで構成されている。内部温度検出部71は、光源ランプ31の近傍および光変調部35(液晶パネル35a,35b,35c)の近傍にそれぞれ1つ設置され、光源ランプ31の近傍および光変調部35の近傍の温度を、光源ランプ温度、液晶パネル温度として、代用して検出する。
【0036】
冷却制御部70は、上述したように、プロジェクタ1内部の冷却動作に関する制御を行なっている。詳細には、冷却制御部70は、内部温度検出部71で検出された光源ランプ温度および液晶パネル温度と、初期的に設定されるそれぞれの所定の温度とに基づいて比較判断し、光源ランプ温度および液晶パネル温度が適正な温度範囲内となるように制御する。そして、冷却制御部70は、初期的に設定される適正な温度範囲より高くなったと判断した場合には、冷却ファン駆動部72を駆動し、対応する第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、液晶パネル冷却ファン74の駆動電圧の制御を行ない、高くなった光源ランプ温度または液晶パネル温度を適正な温度範囲内に入れる。
【0037】
図2は、プロジェクタの光学系の構造を示す図である。図2を参照して、光学系30の構成および動作を説明する。
【0038】
なお、図2では、投写レンズ39からの投写方向をY軸とし、Y軸に直交する2軸をそれぞれX軸およびZ軸とする。図2以降の図も同様である。なお、X軸およびY軸は、図2に示すように、光源ランプ31から投写レンズ39に至る光束の光軸Aによって形成される平面(図2中、紙面に平行な面)内で互いに直交する軸である。また、Z軸は、前記平面に直交する軸である。なお、光軸Aによって形成される平面を、光軸を通る平面と呼称する。
【0039】
本実施形態のプロジェクタ1の光学系30は、発光により光束を射出する光源装置としての光源ランプ31と、光源ランプ31から射出された光束を複数の部分光束に分割し、液晶パネル35a,35b,35c上に重畳して結像させる照明光学装置32と、光源ランプ31から射出された光束を赤緑青の3色光に分離する色分離光学系33と、色分離光学系33から射出された各色光により照明され、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調部35とを備える。また、プロジェクタ1は、光変調部35により形成された各色光の光学像を合成するクロスダイクロイックプリズム37と、クロスダイクロイックプリズム37から射出される合成された光学像(カラー画像など)をスクリーン100(図1参照)などに投写するための投写光学装置としての投写レンズ39とを備える。
【0040】
光源ランプ31は、図2に示すように、一対の電極(図示省略)間で放電発光が行われる発光部311aを有する発光管311と、発光管311(発光部311a)で発光した光束を前方(+X軸方向)に反射する反射面を有するリフレクタ312とで構成される。また、光源ランプ31は、防爆ガラス40とランプハウジング50とにより光源ユニット60を構成している。防爆ガラス40は、光源ランプ31が、万が一に破裂した場合、光源ランプ31以降の光学系30に影響が及ぶことを防止するために、光源ランプ31の前方に設置される透光性を有する部材である。また、ランプハウジング50は、光源ランプ31を内部に収容し、一方の端部に防爆ガラス40を固定した部材である。
【0041】
なお、光源ユニット60は、プロジェクタ1から着脱自在(交換可能)に設置されている。そして、光源ユニット60を交換する際は、ランプハウジング50に形成されている把持部(図示省略)を把持して交換を行なうことができる。
また、図2に示す光学系30には、光源ランプ31を冷却する第1冷却ファン75、第2冷却ファン76も図示している。第1冷却ファン75、第2冷却ファン76に関しては後述する。
【0042】
発光管311(発光部311a)で発行した光束は、リフレクタ312の反射面により光源ランプ31の前方側に射出方向を揃えて集束光として射出され、防爆ガラス40を透過する。透過した光束は、凹レンズ32bによって平行化して次段の光学系30に射出される。なお、本実施形態の光源ランプ31は、放電式の高圧水銀ランプを用いている。また、本実施形態のリフレクタ312は、楕円面リフレクタで構成しているが、光源ランプ31から射出された光束を略平行化して反射する放物面リフレクタとして構成してもよい。この場合には、凹レンズ32bを省略する。
【0043】
照明光学装置32は、凹レンズ32bと、一対のフライアイレンズ32d,32eと、偏光変換部材32gと、重畳レンズ32hとを備える。凹レンズ32bは、光源ランプ31からの光束を平行化する役割を有するが、上述したように省略することもできる。一対のフライアイレンズ32d,32eは、マトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズにより凹レンズ32bを経た光源ランプ31からの光束を部分光束に分割して個別に集光・発散させる。
【0044】
偏光変換部材32gは、フライアイレンズ32eから射出された光束を例えば図2の紙面に垂直なS偏光成分のみに変換して次段の光学系30に射出する。重畳レンズ32hは、偏光変換部材32gから射出された光束を全体として適宜収束(結像)させることにより、光変調部35を構成する光変調装置としての各色光用の液晶パネル35a,35b,35cに対する重畳照明を可能にする。従って、両フライアイレンズ32d,32eと偏光変換部材32gと重畳レンズ32hとを経た光束は、以下で説明する色分離光学系33を経て、光変調部35に設けられた各色光用の液晶パネル35a,35b,35cを均一に重畳照明する。
【0045】
色分離光学系33は、第1ダイクロイックミラー33aと、第2ダイクロイックミラー33bと、補正光学系である3つのフィールドレンズ33f,33g,33hと、反射ミラー33j,33m,33n,33oとを備えて構成される。ここで、光源ランプ31からの略白色の光束は、重畳レンズ32hを経て、反射ミラー33jで光路(光軸A)を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー33aに入射する。そして、第1ダイクロイックミラー33aは、赤緑青の3色光のうち、例えば赤色光および緑色光を反射し青色光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー33bは、入射した赤色光および緑色光のうち、例えば緑色光を反射し赤色光を透過させる。
【0046】
第1ダイクロイックミラー33aを通過した青色光は、例えばS偏光のまま、反射ミラー33mを経てフィールドレンズ33fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー33aで反射されて第2ダイクロイックミラー33bで更に反射された緑色光は、例えばS偏光のままフィールドレンズ33gに入射する。更に、第2ダイクロイックミラー33bを通過した赤色光は、例えばS偏光のまま、第1レンズLL1、第2レンズLL2、および反射ミラー33n,33oを経て、入射角度を調節するためのフィールドレンズ33hに入射する。第1レンズLL1、第2レンズLL2、およびフィールドレンズ33hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介して略そのままフィールドレンズ33hに伝達する機能を備えている。
【0047】
光変調部35は、光変調装置としての3つの液晶パネル35a,35b,35cと、各液晶パネル35a,35b,35cを挟むように配置される3組の偏光板35e,35f,35gとを備える。ここで、青色光用の液晶パネル35aと、これを挟む一対の偏光板35eとは、輝度変調後の光学像のうち青色光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色光用の液晶ライトバルブを構成する。同様に、緑色光用の液晶パネル35bと、対応する偏光板35fも、緑色光用の液晶ライトバルブを構成し、赤色光用の液晶パネル35cと、偏光板35gも、赤色光用の液晶ライトバルブを構成する。
【0048】
青色光用の液晶パネル35aには、色分離光学系33の第1ダイクロイックミラー33aを透過することにより分岐された青色光が、フィールドレンズ33fを介して入射する。緑色光用の液晶パネル35bには、色分離光学系33の第2ダイクロイックミラー33bで反射されることにより分岐された緑色光が、フィールドレンズ33gを介して入射する。赤色光用の液晶パネル35cは、第2ダイクロイックミラー33bを透過することにより分岐された赤色光が、フィールドレンズ33hを介して入射する。
【0049】
各液晶パネル35a,35b,35cは、入射した各色光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置であり、各液晶パネル35a,35b,35cにそれぞれ入射した3色の色光は、各液晶パネル35a,35b,35cに電気的信号として入力された投写用映像信号に応じて変調される。その際、偏光板35e,35f,35gにより、各液晶パネル35a,35b,35cに入射する各色光の偏光方向が調整されると共に、各液晶パネル35a,35b,35cから射出される変調光から所定の偏光方向の成分光が光学像として取り出される。
【0050】
クロスダイクロイックプリズム37は、光合成部材であり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜37a,37bが形成されている。一方の誘電体多層膜37aは青色光を反射し、他方の誘電体多層膜37bは赤色光を反射する。
【0051】
このクロスダイクロイックプリズム37は、液晶パネル35aからの青色光を誘電体多層膜37aで反射して進行方向を右側(+Y軸方向)に射出させ、液晶パネル35bからの緑色光を2つの誘電体多層膜37a,37bを介して直進・射出させ、液晶パネル35cからの赤色光を誘電体多層膜37bで反射して進行方向を左側(+Y軸方向)に射出させる。
【0052】
投写レンズ39は、クロスダイクロイックプリズム37で合成されたカラーの光学像を、所望の倍率で、プロジェクタ1の外部に設置されるスクリーン100上に投写する。つまり、各液晶パネル35a,35b,35cに入力された投写用映像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画が、スクリーン100上に投写される。
【0053】
図3は、プロジェクタの姿勢を模式的に示す図であり、図3(a)は、正置き姿勢を示す図であり、図3(b)は、天吊り姿勢を示す図であり、図3(c)は、光軸を通る平面に関しての説明図である。図3を参照して、正置き姿勢αおよび天吊り姿勢βに関して説明する。
【0054】
図3(a)に示すように、所定の第1姿勢としての正置き姿勢αとは、投写レンズ39からの投写方向(Y軸)が略水平方向となる姿勢を意味する。言い換えると、光源ランプ31からの光軸Aが、略水平となる姿勢を意味する。正置き姿勢αは、通常、机上面110などにプロジェクタ1を載置して使用する姿勢である。また、図3(b)に示すように、所定の第2姿勢としての天吊り姿勢βとは、正置き姿勢α(図3(a))の状態からX軸(光軸A)またはY軸を中心として180°回転させた姿勢を意味する。天吊り姿勢βは、通常、天井から吊り下げてプロジェクタ1を使用する姿勢である。
【0055】
また、図3(c)に示すように、プロジェクタ1を机上面110に載置した場合(正置き姿勢αの場合)、光源ランプ31から射出される光束の光軸Aは、机上面110に対して略平行となる。また、X軸とY軸とで形成される平面も机上面110に対して略平行となる。この状態で、光軸Aを通る平面とは、光軸Aを通り机上面110に平行な平面となる。言い換えると、光軸Aを通る平面とは、X軸とY軸とで形成される平面に平行な平面となる。
【0056】
プロジェクタ1の姿勢を正置き姿勢αまたは天吊り姿勢βに切り替えた(変更した)場合、例えば、正常な画像で使用している正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した場合、本実施形態では、プロジェクタ1に対して画像の向きを180°回転させる制御(上下左右を逆転させる制御)を行なわせないと、天吊り姿勢βで投写された画像は上下左右が逆となる。また逆に、正常な画像で使用している天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した場合も同様に、プロジェクタ1に対して画像の向きを180°回転させる制御を行なわせる必要がある。
【0057】
なお、本実施形態では、上記のように、姿勢を変更した場合には、ユーザによるプロジェクタ1への操作指示入力により、変更した姿勢に対応する画像に切り替えることができる。詳細には、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合、例えば正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した場合、ユーザは、最初に、リモコン8またはスイッチ部19を使用して、「投写条件を設定するメニュー画面に切り替える」旨の入力操作を行なう。この入力による信号をキー入力処理部20で処理して制御部10に出力する。制御部10は、この信号に基づいて、対応する動作を行なうようにOSD処理部15に指示する。OSD処理部15は、制御部10からの指示に基づいて、投写条件を設定するメニュー画面に切り替え、そのメニュー画面を投写する。
【0058】
次に、ユーザは、投写されたメニュー画面を確認して、リモコン8またはスイッチ部19を使用して、「正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した画像に切り替える」旨の項目をチェックする(入力操作を行なう)。制御部10は、この入力操作を読み込み、対応する動作を行なうように画像処理部13に指示する。画像処理部13は、制御部10からの指示に基づいて、現在の画像データに対して180°回転した画像データに変換して、次段に出力する。このような一連の動作の結果、投写される画像が180°回転した画像に切り替えられる。これにより、天吊り姿勢βにおいて、正常な投写画像とすることができる。
【0059】
なお、天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した場合も、同様に、投写条件を設定するメニュー画面に切り替え、次に、「天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した画像に切り替える」旨の項目をチェックすることで、投写される画像が180°回転した画像に切り替えられる。この操作も上述したと同様のため、説明は省略する。
【0060】
図4および図5は、光源ランプの冷却構造を模式的に示す図である。なお、図4は、+Z軸方向から見た場合の冷却構造を示す図である。また、図5は、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合の冷却構造を示す図である。図4および図5を参照して、本実施形態の光源ランプ31の冷却構造に関して説明する。
【0061】
第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、光源ユニット60に対して設置されている。そして、第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、光源ユニット60を構成する光源ランプ31、詳細には発光管311に空気を送風して光源ランプ31(発光管311)を冷却する。
【0062】
なお、上述したが、光源ユニット60は、光源ランプ31、防爆ガラス40、ランプハウジング50とにより構成されている。そして、ランプハウジング50は、図4、図5に示すように、光源ランプ31を内部に収容し、+X軸方向の端部に防爆ガラス40を固定した略直方体形状を有している。
【0063】
また、ランプハウジング50は、図4、図5に示すように、Y軸方向に交差する一方の端面には、光束が射出される前方側で、外部の空気を内部に導入するための導入口51が略四角形に形成されている。また、導入口51は、図5に示すように、光軸Aを通る平面(この平面を平面Bと呼称する)を中心として、Z軸方向で略対称となるように開口されている。また、ランプハウジング50は、導入口51に略対向する他方の端面において、導入口51から導入された空気が光源ランプ31の内部を流動し、その結果、温められた空気を外部に排出する排出口52が形成されている。
【0064】
また、導入口51の内周縁に沿って、略四角形の管状を有する第1ダクト511が、ランプハウジング50の内部に向かって突出するように形成されている。詳細には、第1ダクト511は、図4に示すように、導入口51の内周縁から、ランプハウジング50内部に向かって突出し、また、その送風方向の中心が発光管311の発光部311aに略向くように、−X軸方向に傾斜した状態で形成されている。なお、第1ダクト511の先端は、リフレクタ312の反射面での光束の反射に影響しない位置まで延びている。そして、第1ダクト511は、導入口51を介してランプハウジング50内部に導入された空気を、−Y軸方向から+Y軸方向に向け、また、傾斜した方向(発光部311aに略向く方向)に整流する。詳細には、光軸Aを通る平面Bを中心として、平面Bに略平行で略同方向(発光部311aに略向く方向)で、平面Bに対して略対称となる方向に送風するように整流する。
【0065】
第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、ファン回転軸方向から吸入した空気を回転接線方向に吐出する遠心力ファン(いわゆるシロッコファン)で構成されている。また、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互にミラー反転した構成を有している。その構成により、本実施形態では、シート状の防振部材120を介して、図5に示すように、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを相互に向かい合わせ、図4、図5に示すように、それぞれの外形が略一致するように、Z軸方向に重ねた形態としている。
【0066】
この形態では、詳細には、第1冷却ファン75は+Z軸方向から空気を吸入し、第2冷却ファン76は−Z軸方向から空気を吸入する。また、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761とは、Z軸方向で重なり、また、同方向(+Y軸方向)に送風可能となる。なお、本実施形態では、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、平面Bと略一致するように設置した防振部材120を挟持する形態で筐体5内部に固定されている。よって、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761は、平面Bに略隣接し、略対称となる位置に配置されている。
【0067】
なお、第1冷却ファン75の+Z軸方向には、第1冷却ファン導入ダクト91が設置され、第2冷却ファン76の−Z軸方向には、第2冷却ファン導入ダクト92が設置されている。なお、この第1冷却ファン導入ダクト91および第2冷却ファン導入ダクト92は、図示省略するが、第3ダクト90から分岐されたダクトとであり、第3ダクト90は、図示省略するが、図1に示すように、筐体5に形成された吸気口6に接続されている。従って、第1冷却ファン75および第2冷却ファン76が駆動した場合、吸気口6から外気を第3ダクト90内に導入(吸気)し、導入した空気は、第1冷却ファン導入ダクト91および第2冷却ファン導入ダクト92に分岐されて流動し、対応する第1冷却ファン75および第2冷却ファン76に導入することができる。
【0068】
また、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761は、ランプハウジング50に形成された導入口51と対向している。そして、吐出口751,761と導入口51との間には、略四角形の管状を有する第2ダクト80が設置されている。この第2ダクト80は、吐出口751の外形に対応した管状の第1冷却ファン吐出ダクト81と、吐出口761の外形に対応した管状の第2冷却ファン吐出ダクト82とが連結した形態となっている。詳細には、第2ダクト80は、図5に示すように、管中央部に隔壁80aを設けて第1冷却ファン吐出ダクト81と第2冷却ファン吐出ダクト82とを形成している。
【0069】
なお、第2ダクト80は、この隔壁80aの平面が平面Bと略一致するように設置している。従って、第2ダクト80は、隔壁80aを中心(平面Bを中心)にしてZ軸方向に対称に第1冷却ファン吐出ダクト81と第2冷却ファン吐出ダクト82とを構成している。なお、第1冷却ファン75の吐出口751から吐出された空気は、第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動し、第2冷却ファン76の吐出口761から吐出された空気は、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する。
【0070】
次に、冷却構造における空気の流動に関して説明する。なお、図4、図5において、空気の流動方向を模式的に白抜き矢印で示している。
上述したように、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76が駆動(回転)することにより、吸気口6を介して外気を吸気する。吸気した外気(空気)は、第3ダクト90内を流動し、また、第1冷却ファン導入ダクト91と第2冷却ファン導入ダクト92とに分岐されて更に流動する。そして、第1冷却ファン導入ダクト91内を流動した空気は、+Z軸方向から第1冷却ファン75に導入(吸入)される。第1冷却ファン75に吸入された空気は、吐出口751から+Y方向に吐出される。一方、第2冷却ファン導入ダクト92内を流動した空気は、−Z軸方向から第2冷却ファン76に導入(吸入)される。第2冷却ファン76に吸入された空気は、吐出口761から+Y方向に吐出される。
【0071】
第1冷却ファン75の吐出口751から吐出された空気は、第2ダクト80の第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動する。なお、第1冷却ファン吐出ダクト81の外形が吐出口751と略同一の形状であり、また、第1冷却ファン吐出ダクト81に急激な断面変化や急激な曲がりがないため、第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動する空気は整流される。同じく、第2冷却ファン76の吐出口761から吐出された空気は、第2ダクト80の第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する。また、第1冷却ファン吐出ダクト81と同様に、第2冷却ファン吐出ダクト82の外形が吐出口761と略同一の形状であり、また、第2冷却ファン吐出ダクト82に急激な断面変化や急激な曲がりがないため、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する空気は整流される。
【0072】
第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動した空気は、導入口51から第1ダクト511内に流入する。なお、以降の説明上、この流入した空気を空気W1(図5参照)と呼称する。また、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動した空気は、導入口51から第1ダクト511内に流入する。なお、以降の説明上、この流入した空気を空気W2(図5参照)と呼称する。但し、図4には、流入した空気に符号を付記していないが、空気W1,W2とも、図中の白抜き矢印で略示すように光源ランプ31内を流動する。
【0073】
第1ダクト511内に流入した空気W1は、整流されたまま第1ダクト511内を流動し、第1ダクト511から吐出される。また、同様に、第1ダクト511内に流入した空気W2は、整流されたまま第1ダクト511内を流動し、第1ダクト511から吐出される。整流されて第1ダクト511から吐出された空気W1,W2は、光軸Aを通る平面Bを中心として、平面Bに略平行で略同方向(発光部311aに略向く方向)で、平面Bに対して略対称となる方向に向かう。また、空気W1,W2は、光軸Aを通る平面Bに隣接して流動する。
【0074】
従って、空気W1は、発光管311(発光部311a)を光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した+Z軸方向の領域側を主に流動する。これに対して、空気W2は、発光管311(発光部311a)を光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した−Z軸方向の領域側を主に流動する。これにより、空気W1は、主に発光管311(発光部311a)の+Z軸方向の領域側を冷却し、空気W2は、主に発光管311(発光部311a)の−Z軸方向の領域側を冷却することになる。また、このような送風方向で流動した空気W1,W2は、発光管311(発光部311a)の発生した熱を奪い、温められて、光源ランプ31内を図4、図5に矢印で示すように流動し、ランプハウジング50に形成された排出口52を介して光源ユニット60の外部に排出される。なお、排出された空気W1,W2は、前述したように、排気ファン73により、排気口7を介して、プロジェクタ1の外部に排気される。このような一連の空気の流動により、光源ランプ31で発生する熱が冷却される。
【0075】
図6は、プロジェクタの姿勢と風量との関係を模式的に説明する図であり、図6(a)は、プロジェクタを正置き姿勢で使用する場合の模式図であり、図6(b)は、プロジェクタを天吊り姿勢で使用する場合の模式図である。詳細には、図6(a)は、図3(a)に示したプロジェクタ1を正置き姿勢αで使用する場合であり、正置き姿勢αで使用するユーザが、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合を示す図である。また、図6(b)は、図3(b)に示したプロジェクタ1を天吊り姿勢βで使用する場合であり、天吊り姿勢βで使用するユーザが、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合を示す図である。図6を参照して、プロジェクタ1の正置き姿勢αと天吊り姿勢βとにおける風量との関係を説明する。
【0076】
なお、図6においては、図中に白抜き矢印で示す空気W1,W2の矢印の幅は、空気W1,W2の風量の違いを示しており、幅が広い矢印は、幅が狭い矢印に比べて、風量が多いことを示している。
【0077】
発光管311で発生する熱は、重力の方向に対して逆の方向となる上方に移動する。従って、プロジェクタ1を正置き姿勢αや天吊り姿勢βに姿勢を変更した場合であっても、その姿勢において、発光管311で発生する熱は、重力に対して、上方に対流して移動する。これにより、発光管311の下側(重力を基準とする)に比べて、発光管311の上側(重力を基準とする)の方が熱くなり易い。
【0078】
図6(a)に示すように、プロジェクタ1を正置き姿勢αで使用する場合には、発光管311(発光部311a)は、光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した+Z軸方向の領域側(発光部311aの上方側)が、−Z軸方向の領域側(発光部311aの下方側)より熱くなり易い。従って、正置き姿勢αにおいては、平面Bの上方で送風することになる第1冷却ファン75から吐出する空気W1の風量を、平面Bの下方で送風することになる第2冷却ファン76から吐出する空気W2の風量に比べて風量が多くなるように送風する。これにより、発光部311aの上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となる。
【0079】
また、図6(b)に示すように、プロジェクタ1を天吊り姿勢βで使用する場合には、発光管311(発光部311a)は、光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した−Z軸方向の領域側(発光部311aの上方側)が、+Z軸方向の領域側(発光部311aの下方側)より熱くなり易い。従って、天吊り姿勢βにおいては、平面Bの上方で送風することになる第2冷却ファン76から吐出する空気W2の風量を、平面Bの下方で送風することになる第1冷却ファン75から吐出する空気W1の風量に比べて風量が多くなるように送風する。これにより、発光部311aの上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となる。
【0080】
なお、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、本実施形態の場合、特性が略同様の冷却ファンを用いている。従って、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合に、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の風量を切り替える場合には、第1冷却ファン75または第2冷却ファン76の1方の冷却ファンの駆動電圧と風量の相関関係に基づいて、駆動電圧を制御している。また、冷却制御部70が記憶する駆動電圧の制御プログラムは、プロジェクタ1の姿勢が変更された場合、それに応じて、発光部311aの上方側と下方側を動作させる冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)を切り替えることで対応している。なお、このような制御および駆動を行なうのは、ファン駆動制御部であり、ファン駆動制御部は、本実施形態では、制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72を有して構成される。
【0081】
なお、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合には、ユーザによるプロジェクタ1への操作指示入力により、変更した姿勢に対応して、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の駆動電圧の制御を切り替える。また、この操作指示入力は、前述した、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合に、投写する画像を切り替える場合の操作を行なうことに連動して切り替えることができる。従って、操作方法は、前述したと同様となるため、説明は省略する。
【0082】
なお、制御部10は、投写する画像を切り替える操作入力が行なわれたと判断した場合には、前述したように、OSD処理部15や画像処理部13に指示することに併せて、冷却制御部70に指示する。そして、冷却制御部70は、駆動電圧の制御プログラムにおける第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを切り替えて、冷却ファン駆動部72を駆動することにより、姿勢に対応した適正な制御を行なう。
【0083】
上述した実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態のプロジェクタ1によると、発光管311を有する光源ランプ31と、発光管311を冷却する2つの冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)とを備える。そして、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76による空気の各送風方向は、光束の光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。このように、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の各送風方向は、光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向となるように設定されることにより、発光管311に対し、発光管311の光軸Aを通る平面Bの上方側となる領域と、下方側となる領域とを、光源ランプ31に対して同じ側(本実施では、光源ランプ31に対して−Y軸側)から、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とにより効率よく冷却することができる。このように送風方向を設定することにより、プロジェクタ1を正置き姿勢αや天吊り姿勢βに切り替えた場合でも、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。それにより、発光管311の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプ31の寿命劣化を抑制でき、光源ランプ31の長寿命化を図ることができる。また、発光管311の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプ31の輝度低下を抑制でき、プロジェクタ1の投写品質も向上できる。
【0084】
(2)本実施形態のプロジェクタ1によると、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の各吐出口751、761は、平面Bに略隣接し、略対称となる位置に配置されることにより、光源ランプ31に対して同じ側(本実施形態では、光源ランプ31に対して−Y軸側)で、また、送風方向を隣接させて上下に重ねる形態で設定することができる。これにより、光源ランプ31を冷却するための送風方向をコンパクトな構成で実現でき、また、発光管311を更に効率的に冷却することができる。
【0085】
(3)本実施形態のプロジェクタ1によると、ファン駆動制御部としての、制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72が、プロジェクタ1を所定の第1姿勢(正置き姿勢α)と所定の第2姿勢(天吊り姿勢β)とに切り替えて画像光を投写させる場合、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の動作を制御する。従って、ファン駆動制御部により、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを適正に制御して駆動することで、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0086】
(4)本実施形態のプロジェクタ1によると、ファン駆動制御部(制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72)が、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて、平面Bの上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面Bの下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なう。これにより、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0087】
(5)本実施形態のプロジェクタ1によると、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互にミラー反転した構成を有し、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねて略同方向に送風可能となっている。この構成により、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の設置に要するスペースを最小限にすることができるため、光源ランプ31の冷却構造を小型化でき、プロジェクタ1の小型化を図ることができる。
【0088】
なお、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良などを加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の吐出口751,761に、第2ダクト80を用いて、光源ユニット60(ランプハウジング50の導入口51)に接続しているが、この第2ダクト80は、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の吐出口751,761に直接形成することでもよい。
【0089】
(変形例2)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76から吐出された空気W1,W2の送風方向は、平面Bに略隣接して略対称となる方向に設定されているが、隣接していなくても、また、対称でなくてもよく、平面Bに略平行で略同方向に送風する方向により、発光管311に対して空気W1,W2を送風するように、それぞれ設定されていればよい。
【0090】
(変形例3)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有しているが、この構成には限られない。2つの冷却ファンは外形などが異なっていてもよい。また、外形が同じ(特性が同じ)でもミラー反転した構成を有さなくてもよい。また、ミラー反転した構成であっても、あえて一致するように重ねる必要はなく、プロジェクタ1を構成する他の部材との配置関係により適宜配置することでもよい。
【0091】
(変形例4)前記実施形態のプロジェクタ1では、送風方向として、光源ランプ31に対して−Y軸側から送風する形態としているが、これに限られず、+Y軸側、またはX軸方向から送風する形態としてもよい。
【0092】
(変形例5)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の位置は、平面Bと略一致するように、また、光源ランプ31の近傍に、相互に向かい合わせて設置している。しかし、これに限られず、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の位置は、プロジェクタ1を構成する他の部材との配置関係により適宜配置することでもよい。そして、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の設置位置を決めた場合、その設置位置からダクトなどを用いて、本実施形態の場合では、ランプハウジング50の導入口51に接続する構造とすることでよい。
【0093】
(変形例6)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置としての液晶パネル35a,35b,35cは、透過型の液晶パネルを用いているが、反射型の液晶パネルなど、反射型の光変調装置を用いることも可能である。
【0094】
(変形例7)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置としての液晶パネル35a,35b,35cを用いている。しかし、これに限らず、一般に、入射光を画像情報に応じて変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを用いてもよい。なお、マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)を用いることができる。
【0095】
(変形例8)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置は、赤色光、緑色光、および青色光に対応する3つの液晶パネル35c,35b,35aを用いるいわゆる3板方式を採用しているが、これに限らず、単板方式を採用してもよい。また、コントラストを向上するための液晶パネルを追加して採用してもよい。
【0096】
(変形例9)前記実施形態のプロジェクタ1は、フロントタイプのプロジェクタとして適用しているが、投写対象面としてのスクリーンを一体で有するリアタイプのプロジェクタにも適用できる。
【0097】
なお、本発明を実施するための最良の形態を、上記記載で開示しているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して図示し、かつ、説明しているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対し、詳細な構成部材の形状・材質・数量・設置位置などにおいて、当業者が様々な変形(変更ならびに改良)を加えることができるものである。従って、詳細な構成部材の形状・材質・数量・設置位置などにおいて、当業者が様々な変形を加えることにより実施する場合も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図。
【図2】プロジェクタの光学系の構造を示す図。
【図3】プロジェクタの姿勢を模式的に示す図であり、(a)は正置き姿勢を示す図であり、(b)は天吊り姿勢を示す図であり、(c)は光軸を通る平面に関しての説明図。
【図4】光源ランプの冷却構造を模式的に示す図。
【図5】光源ランプの冷却構造を模式的に示す図。
【図6】プロジェクタの姿勢と風量との関係を模式的に説明する図であり、(a)はプロジェクタを正置き姿勢で使用する場合の模式図であり、(b)はプロジェクタを天吊り姿勢で使用する場合の模式図。
【符号の説明】
【0099】
1…プロジェクタ、10…制御部、31…光源ランプ、40…防爆ガラス、50…ランプハウジング、51…導入口、52…排出口、60…光源ユニット、70…冷却制御部、72…冷却ファン駆動部、75…第1冷却ファン、76…第2冷却ファン、80…第2ダクト、90…第3ダクト、100…スクリーン、311…発光管、311a…発光部、312…リフレクタ、511…第1ダクト、A…光軸、B…平面、W1,W2…空気、α…正置き姿勢、β…天吊り姿勢。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源ランプと、光源ランプから射出された光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成する光変調装置と、画像光を投写する投写光学装置とを備えたプロジェクタが知られている。このようなプロジェクタにおいて、光源ランプは、一対の電極間を高電圧で放電させて発光させる放電式の発光管と、発光管で発光した光束を反射させて同方向に向かせる凹面形状を有し、発光管を保持固定するリフレクタとを有して構成される。また、光源ランプは、リフレクタを収容し、リフレクタからの光束の射出側に透光性部材を設置し、リフレクタと透光性部材と枠体とでリフレクタの反射面側が密閉された構造となっている。また、プロジェクタは、机上などの設置面に載置して使用するいわゆる正置き姿勢と、正置き姿勢に対して上下が逆となるように天井などから吊り下げて使用するいわゆる天吊り姿勢との2通りの姿勢で使用されている。
【0003】
そして、光源ランプは、発光管の発光に伴う発熱で発光管内の温度が上昇して熱対流が生じ、発光管の上方側と下方側とに温度差が生じてしまう。特に、発光管の最大温度部(通常は、上方側)が下方側に比べて高温側に偏り過ぎることにより、発光管の内壁に白化が生じることになる。また逆に、発光管の最低温度部(通常は、下方側)が上方側に比べて低温側に偏り過ぎることにより、発光管の内壁に黒化が生じることになる。このような現象が発生した場合には、光源ランプの明るさが低下(光源ランプの発光性能劣化)し、プロジェクタから投写される画像光の明るさが低下してしまうことになる。当然、光源ランプの寿命が短くなってしまう。なお、正置き姿勢、天吊り姿勢の両方の姿勢において、上述した白化や黒化の現象を発生させないためには、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風することが必要となる。
【0004】
なお、特許文献1には、光源装置の冷却風流入口に冷却風の流れを分割、制御する冷却風制御部材を設け、この冷却風制御部材は、移動自在、或いは自重により移動自在に取り付けられることで、プロジェクタが正置き姿勢、天吊り姿勢の両方の姿勢でも、適切な冷却風が発光管(光源ランプ)に流れるようにした技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−173085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示される技術では、プロジェクタの姿勢を切り替えた場合、ユーザが冷却風制御部材を移動させることが必要となるため、移動させることを忘れることがある。また、プロジェクタの内部に収容する光源装置を操作することになるため、ユーザに操作を行なわせることには無理がある。また、冷却風制御部材を比重の高い材質で構成し、その自重により移動させることも開示しているが、信頼性が低い面がある。
【0007】
従って、プロジェクタを正置き姿勢や天吊り姿勢に切り替えた場合に、ユーザに負担を掛けずに、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる構成を実現し、光源ランプの長寿命化とプロジェクタの投写品質向上が課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)本適用例に係るプロジェクタは、(a)発光により光束を射出する発光管を有する光源ランプと、(b)発光管に対して空気を送風し、発光管を冷却する2つの冷却ファンと、を備え、2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0010】
上記プロジェクタでは、発光管を有する光源ランプと、発光管を冷却する2つの冷却ファンとを備える。そして、2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。このように、2つの冷却ファンの各送風方向は、光軸を通る平面に略平行で略同方向となるように設定されることにより、発光管に対し、発光管の光軸を通る平面の上方側となる領域と、下方側となる領域とを、光源ランプに対して同じ側から、それぞれの冷却ファンで効率よく冷却することができる。このように送風方向を設定することにより、プロジェクタを正置き姿勢や天吊り姿勢に切り替えた場合でも、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。それにより、発光管の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプの寿命劣化を抑制でき、光源ランプの長寿命化を図ることができる。また、発光管の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプの輝度低下を抑制でき、プロジェクタの投写品質も向上できる。
【0011】
なお、「光軸を通る平面」とは、基本的には、光源ランプから射出された光束の光軸は、例えば反射ミラーなどにより、反射して方向を変化させることになるが、光源ランプから射出された光束の光軸と、方向を変化させた光軸とにより形成される平面を言う。また、プロジェクタを水平な机上面に載置し(ただし、投写角度調整をしていない場合)、光源ランプから射出された光束の光軸と机上面とは略平行である場合に、光源ランプから射出された光束の光軸を通り机上面と平行となる平面を「光軸を通る平面(水平面)」と言い換えてもよい。この場合、光源ランプから射出された光束の光軸が机上面に対して傾いた場合、言い換えれば、プロジェクタが机上面に対して傾いた(投写角度調整を行なった)場合、「光軸を通る平面(水平面)」も机上面に対して傾くことになる。
また、送風方向は、冷却ファン自体や、ダクトなどの流路を用いた冷却ファンなどで設定してもよい。
【0012】
(適用例2)上記のプロジェクタであって、冷却ファンの各吐出口は、平面に略隣接し、略対称に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記プロジェクタでは、冷却ファンの各吐出口が、平面に略隣接し、略対称に配置されることにより、光源ランプに対して同じ側で、また、送風方向を隣接させて上下に重ねる形態で設定することができる。これにより、光源ランプを冷却するための送風方向をコンパクトな構成で実現でき、また、発光管を更に効率的に冷却することができる。
【0014】
(適用例3)上記のプロジェクタであって、2つの冷却ファンの動作を制御するファン駆動制御部を備え、ファン駆動制御部は、当該プロジェクタを所定の第1姿勢と所定の第2姿勢とに切り替えて画像光を投写させる場合、第1姿勢と第2姿勢との姿勢に応じて、2つの冷却ファンの動作を制御することが好ましい。
【0015】
上記プロジェクタでは、ファン駆動制御部が、プロジェクタを所定の第1姿勢(例えば、正置き姿勢)と所定の第2姿勢(例えば、天吊り姿勢)とに切り替えて画像光を投写させる場合、正置き姿勢と天吊り姿勢との姿勢に応じて2つの冷却ファンの動作を制御する。従って、ファン駆動制御部により、正置き姿勢と天吊り姿勢との姿勢に応じて各冷却ファンを適正に制御して駆動することで、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0016】
(適用例4)上記のプロジェクタであって、ファン駆動制御部は、第1姿勢と第2姿勢との姿勢に応じて、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なうことが好ましい。
【0017】
上記プロジェクタでは、ファン駆動制御部が、第1姿勢(例えば、正置き姿勢)と第2姿勢(例えば、天吊り姿勢)との姿勢に応じて、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なう。光源ランプは、発光管の発光により発熱した熱は、対流により、発光管の上部側が下部側より高温となる。また、正置き姿勢や天吊り姿勢の場合にも、その姿勢において、発光管の上部(上方)側が下部(下方)側より高温となる。そこで、平面の上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面の下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風することで、光源ランプ(発光管)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。また、例えば、特性が略同様の2つの冷却ファンを用いて風量を制御する場合には、1つの冷却ファンの駆動電圧と風量の相関関係に基づいて、駆動電圧を制御することができるため、異なる特性の2つの冷却ファンを用いる場合に比べて、より冷却ファンの風量の制御の仕方が簡易となる。
【0018】
(適用例5)上記のプロジェクタであって、2つの冷却ファンは、遠心力ファンであり、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有していることが好ましい。
【0019】
上記プロジェクタでは、2つの冷却ファンは、相互にミラー反転した構成を有することにより、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねて略同方向に送風可能となる形態で使用することで、2つの冷却ファンの設置に要するスペースを最小限にすることができるため、光源ランプの冷却構造を小型化でき、プロジェクタの小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図である。図1を参照して、本実施形態のプロジェクタ1の回路系と、光学系30の一部とを含めて、構成および動作を説明する。
【0022】
プロジェクタ1は、光源装置(光源ランプ31)から射出された光束を、画像情報に応じて光変調部35で変調して光学像を形成し、その光学像を投写光学装置(投写レンズ39)を介し、カラー画像として、投写対象面としてのスクリーン100などに投写するものである。なお、光学系30の説明は図2を用いて後述する。
【0023】
プロジェクタ1の回路系の構成に関して説明する。
本実施形態のプロジェクタ1は、A/Dコンバータ11、ビデオデコーダ12、画像処理部13、画像補正部14、OSD処理部15、液晶パネル駆動部16、ランプ駆動部17、リモコン受光部18、スイッチ部19、キー入力処理部20、電源部21などから構成される。また、プロジェクタ1は、冷却制御部70、内部温度検出部71、冷却ファン駆動部72、排気ファン73、液晶パネル冷却ファン74、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76などから構成される。
【0024】
また、プロジェクタ1は、制御部10により統括制御されている。そして、制御部10は、図示省略するCPU(Central Processing Unit)で構成される。このCPUは、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有して構成される。なお、上述した回路系の構成部や光学系30は、プロジェクタ1の外装を構成する筐体5の内部に収容されている。
【0025】
冷却制御部70は、プロジェクタ1内部の冷却動作に関する制御を行なっている。また、冷却制御部70は、制御部10と同様に構成されている。なお、冷却制御部70は、制御部10の中の一部の機能として構成されていてもよい。
【0026】
冷却ファン駆動部72は、冷却制御部70からの指示により、本実施形態では、4つの冷却用のファンとなる第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、排気ファン73、および液晶パネル冷却ファン74に対し、それぞれ駆動電圧を出力して各ファンを駆動する。なお、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76は、筐体5に設置される吸気口6を介して筐体5外部の外気を吸気して、光源ランプ31に向けて送風し、発光により発生する熱を冷却している。第1冷却ファン75、第2冷却ファン76に関する詳細は後述する。
【0027】
液晶パネル冷却ファン74は、後述する光変調部35を構成する液晶パネル35a,35b,35c(図2参照)および液晶パネル35a,35b,35c近傍に設置される偏光板35e,35f,35g(図2参照)を含めて、吸気口6を介して吸気した外気を送風し、それぞれの光学素子で発生する熱を冷却している。また、排気ファン73は、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、液晶パネル冷却ファン74の外気の送風により、光学素子の熱が伝達されて温まった空気や、他の筐体5内部の温まった空気を含め、筐体5外部に排気口7を介して排気している。
【0028】
次に、他の回路系の動作説明を簡潔に行なう。
A/Dコンバータ11は、PC画像信号入力端子11aに入力したPC画像データをデジタル信号に変換し、画像処理部13に出力する。ビデオデコーダ12は、ビデオ信号入力端子12aに入力した動画像データをデジタル信号に変換した後にR・G・Bの色信号に分離し、画像処理部13に出力する。
【0029】
画像処理部13は、制御部10の指示に基づいて、A/Dコンバータ11またはビデオデコーダ12から入力したPC画像データまたは動画像データ(以降、PC画像データまたは動画像データを画像データと称す)に、フレームレート変換およびスケーリング処理などを行なう。そして、画像処理部13は、フレームレート変換、スケーリング処理などを行なった画像データを画像補正部14に出力する。
【0030】
画像補正部14は、制御部10の指示に基づいて、入力した画像データの内容に基づいて、画像データにブライトネス調整、コントラスト調整、ガンマ補正処理などを施す。このように加工された画像データは、OSD処理部15に出力される。
【0031】
OSD処理部15は、制御部10の指示に基づいて、メニュー画面やメッセージ画面などのOSD(On Screen Display)画像を、画像補正部14から入力される画像データに重畳する処理を行なう。なお、制御部10からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部15は、画像補正部14から出力される画像データを、そのまま投写用映像信号として液晶パネル駆動部16に出力する。
【0032】
液晶パネル駆動部16は、OSD処理部15から入力した投写用映像信号をそれぞれの光変調部35(液晶パネル35a,35b,35c)に出力し駆動する。ランプ駆動部17は、制御部10の制御信号により、光源ランプ31の点灯・消灯などの動作を実行させる。
【0033】
リモコン受光部18は、リモコン(リモートコントローラ)8から出力されるリモート制御信号を受信し、キー入力処理部20に出力する。キー入力処理部20は、入力したリモート制御信号をデジタルコードデータに変換して制御部10に出力する。また、スイッチ部19は、プロジェクタ1の外面に設置され、例えば押ボタン式のキースイッチを有しており、キースイッチを押下すると、押下されたキースイッチに応じて制御信号をキー入力処理部20に出力する。キー入力処理部20は、同様に、入力した制御信号をデジタルコードデータに変換して制御部10に出力する。なお、制御部10は、入力されたデジタルコードデータに対する制御信号を制御内容に応じて、画像処理部13、画像補正部14、OSD処理部15、ランプ駆動部17、および冷却制御部70などに出力することにより、投写条件の変更などの動作を実行させる。
【0034】
また、電源部21は、プロジェクタ1の外部の商用電源などから電源ケーブル(図示省略)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示省略)で変圧・整流・平滑などの処理を行ない、安定化させた直流電圧をプロジェクタ1を構成する各部に供給する。
【0035】
内部温度検出部71はサーミスタで構成されている。内部温度検出部71は、光源ランプ31の近傍および光変調部35(液晶パネル35a,35b,35c)の近傍にそれぞれ1つ設置され、光源ランプ31の近傍および光変調部35の近傍の温度を、光源ランプ温度、液晶パネル温度として、代用して検出する。
【0036】
冷却制御部70は、上述したように、プロジェクタ1内部の冷却動作に関する制御を行なっている。詳細には、冷却制御部70は、内部温度検出部71で検出された光源ランプ温度および液晶パネル温度と、初期的に設定されるそれぞれの所定の温度とに基づいて比較判断し、光源ランプ温度および液晶パネル温度が適正な温度範囲内となるように制御する。そして、冷却制御部70は、初期的に設定される適正な温度範囲より高くなったと判断した場合には、冷却ファン駆動部72を駆動し、対応する第1冷却ファン75、第2冷却ファン76、液晶パネル冷却ファン74の駆動電圧の制御を行ない、高くなった光源ランプ温度または液晶パネル温度を適正な温度範囲内に入れる。
【0037】
図2は、プロジェクタの光学系の構造を示す図である。図2を参照して、光学系30の構成および動作を説明する。
【0038】
なお、図2では、投写レンズ39からの投写方向をY軸とし、Y軸に直交する2軸をそれぞれX軸およびZ軸とする。図2以降の図も同様である。なお、X軸およびY軸は、図2に示すように、光源ランプ31から投写レンズ39に至る光束の光軸Aによって形成される平面(図2中、紙面に平行な面)内で互いに直交する軸である。また、Z軸は、前記平面に直交する軸である。なお、光軸Aによって形成される平面を、光軸を通る平面と呼称する。
【0039】
本実施形態のプロジェクタ1の光学系30は、発光により光束を射出する光源装置としての光源ランプ31と、光源ランプ31から射出された光束を複数の部分光束に分割し、液晶パネル35a,35b,35c上に重畳して結像させる照明光学装置32と、光源ランプ31から射出された光束を赤緑青の3色光に分離する色分離光学系33と、色分離光学系33から射出された各色光により照明され、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調部35とを備える。また、プロジェクタ1は、光変調部35により形成された各色光の光学像を合成するクロスダイクロイックプリズム37と、クロスダイクロイックプリズム37から射出される合成された光学像(カラー画像など)をスクリーン100(図1参照)などに投写するための投写光学装置としての投写レンズ39とを備える。
【0040】
光源ランプ31は、図2に示すように、一対の電極(図示省略)間で放電発光が行われる発光部311aを有する発光管311と、発光管311(発光部311a)で発光した光束を前方(+X軸方向)に反射する反射面を有するリフレクタ312とで構成される。また、光源ランプ31は、防爆ガラス40とランプハウジング50とにより光源ユニット60を構成している。防爆ガラス40は、光源ランプ31が、万が一に破裂した場合、光源ランプ31以降の光学系30に影響が及ぶことを防止するために、光源ランプ31の前方に設置される透光性を有する部材である。また、ランプハウジング50は、光源ランプ31を内部に収容し、一方の端部に防爆ガラス40を固定した部材である。
【0041】
なお、光源ユニット60は、プロジェクタ1から着脱自在(交換可能)に設置されている。そして、光源ユニット60を交換する際は、ランプハウジング50に形成されている把持部(図示省略)を把持して交換を行なうことができる。
また、図2に示す光学系30には、光源ランプ31を冷却する第1冷却ファン75、第2冷却ファン76も図示している。第1冷却ファン75、第2冷却ファン76に関しては後述する。
【0042】
発光管311(発光部311a)で発行した光束は、リフレクタ312の反射面により光源ランプ31の前方側に射出方向を揃えて集束光として射出され、防爆ガラス40を透過する。透過した光束は、凹レンズ32bによって平行化して次段の光学系30に射出される。なお、本実施形態の光源ランプ31は、放電式の高圧水銀ランプを用いている。また、本実施形態のリフレクタ312は、楕円面リフレクタで構成しているが、光源ランプ31から射出された光束を略平行化して反射する放物面リフレクタとして構成してもよい。この場合には、凹レンズ32bを省略する。
【0043】
照明光学装置32は、凹レンズ32bと、一対のフライアイレンズ32d,32eと、偏光変換部材32gと、重畳レンズ32hとを備える。凹レンズ32bは、光源ランプ31からの光束を平行化する役割を有するが、上述したように省略することもできる。一対のフライアイレンズ32d,32eは、マトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズにより凹レンズ32bを経た光源ランプ31からの光束を部分光束に分割して個別に集光・発散させる。
【0044】
偏光変換部材32gは、フライアイレンズ32eから射出された光束を例えば図2の紙面に垂直なS偏光成分のみに変換して次段の光学系30に射出する。重畳レンズ32hは、偏光変換部材32gから射出された光束を全体として適宜収束(結像)させることにより、光変調部35を構成する光変調装置としての各色光用の液晶パネル35a,35b,35cに対する重畳照明を可能にする。従って、両フライアイレンズ32d,32eと偏光変換部材32gと重畳レンズ32hとを経た光束は、以下で説明する色分離光学系33を経て、光変調部35に設けられた各色光用の液晶パネル35a,35b,35cを均一に重畳照明する。
【0045】
色分離光学系33は、第1ダイクロイックミラー33aと、第2ダイクロイックミラー33bと、補正光学系である3つのフィールドレンズ33f,33g,33hと、反射ミラー33j,33m,33n,33oとを備えて構成される。ここで、光源ランプ31からの略白色の光束は、重畳レンズ32hを経て、反射ミラー33jで光路(光軸A)を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー33aに入射する。そして、第1ダイクロイックミラー33aは、赤緑青の3色光のうち、例えば赤色光および緑色光を反射し青色光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー33bは、入射した赤色光および緑色光のうち、例えば緑色光を反射し赤色光を透過させる。
【0046】
第1ダイクロイックミラー33aを通過した青色光は、例えばS偏光のまま、反射ミラー33mを経てフィールドレンズ33fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー33aで反射されて第2ダイクロイックミラー33bで更に反射された緑色光は、例えばS偏光のままフィールドレンズ33gに入射する。更に、第2ダイクロイックミラー33bを通過した赤色光は、例えばS偏光のまま、第1レンズLL1、第2レンズLL2、および反射ミラー33n,33oを経て、入射角度を調節するためのフィールドレンズ33hに入射する。第1レンズLL1、第2レンズLL2、およびフィールドレンズ33hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介して略そのままフィールドレンズ33hに伝達する機能を備えている。
【0047】
光変調部35は、光変調装置としての3つの液晶パネル35a,35b,35cと、各液晶パネル35a,35b,35cを挟むように配置される3組の偏光板35e,35f,35gとを備える。ここで、青色光用の液晶パネル35aと、これを挟む一対の偏光板35eとは、輝度変調後の光学像のうち青色光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色光用の液晶ライトバルブを構成する。同様に、緑色光用の液晶パネル35bと、対応する偏光板35fも、緑色光用の液晶ライトバルブを構成し、赤色光用の液晶パネル35cと、偏光板35gも、赤色光用の液晶ライトバルブを構成する。
【0048】
青色光用の液晶パネル35aには、色分離光学系33の第1ダイクロイックミラー33aを透過することにより分岐された青色光が、フィールドレンズ33fを介して入射する。緑色光用の液晶パネル35bには、色分離光学系33の第2ダイクロイックミラー33bで反射されることにより分岐された緑色光が、フィールドレンズ33gを介して入射する。赤色光用の液晶パネル35cは、第2ダイクロイックミラー33bを透過することにより分岐された赤色光が、フィールドレンズ33hを介して入射する。
【0049】
各液晶パネル35a,35b,35cは、入射した各色光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置であり、各液晶パネル35a,35b,35cにそれぞれ入射した3色の色光は、各液晶パネル35a,35b,35cに電気的信号として入力された投写用映像信号に応じて変調される。その際、偏光板35e,35f,35gにより、各液晶パネル35a,35b,35cに入射する各色光の偏光方向が調整されると共に、各液晶パネル35a,35b,35cから射出される変調光から所定の偏光方向の成分光が光学像として取り出される。
【0050】
クロスダイクロイックプリズム37は、光合成部材であり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜37a,37bが形成されている。一方の誘電体多層膜37aは青色光を反射し、他方の誘電体多層膜37bは赤色光を反射する。
【0051】
このクロスダイクロイックプリズム37は、液晶パネル35aからの青色光を誘電体多層膜37aで反射して進行方向を右側(+Y軸方向)に射出させ、液晶パネル35bからの緑色光を2つの誘電体多層膜37a,37bを介して直進・射出させ、液晶パネル35cからの赤色光を誘電体多層膜37bで反射して進行方向を左側(+Y軸方向)に射出させる。
【0052】
投写レンズ39は、クロスダイクロイックプリズム37で合成されたカラーの光学像を、所望の倍率で、プロジェクタ1の外部に設置されるスクリーン100上に投写する。つまり、各液晶パネル35a,35b,35cに入力された投写用映像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画が、スクリーン100上に投写される。
【0053】
図3は、プロジェクタの姿勢を模式的に示す図であり、図3(a)は、正置き姿勢を示す図であり、図3(b)は、天吊り姿勢を示す図であり、図3(c)は、光軸を通る平面に関しての説明図である。図3を参照して、正置き姿勢αおよび天吊り姿勢βに関して説明する。
【0054】
図3(a)に示すように、所定の第1姿勢としての正置き姿勢αとは、投写レンズ39からの投写方向(Y軸)が略水平方向となる姿勢を意味する。言い換えると、光源ランプ31からの光軸Aが、略水平となる姿勢を意味する。正置き姿勢αは、通常、机上面110などにプロジェクタ1を載置して使用する姿勢である。また、図3(b)に示すように、所定の第2姿勢としての天吊り姿勢βとは、正置き姿勢α(図3(a))の状態からX軸(光軸A)またはY軸を中心として180°回転させた姿勢を意味する。天吊り姿勢βは、通常、天井から吊り下げてプロジェクタ1を使用する姿勢である。
【0055】
また、図3(c)に示すように、プロジェクタ1を机上面110に載置した場合(正置き姿勢αの場合)、光源ランプ31から射出される光束の光軸Aは、机上面110に対して略平行となる。また、X軸とY軸とで形成される平面も机上面110に対して略平行となる。この状態で、光軸Aを通る平面とは、光軸Aを通り机上面110に平行な平面となる。言い換えると、光軸Aを通る平面とは、X軸とY軸とで形成される平面に平行な平面となる。
【0056】
プロジェクタ1の姿勢を正置き姿勢αまたは天吊り姿勢βに切り替えた(変更した)場合、例えば、正常な画像で使用している正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した場合、本実施形態では、プロジェクタ1に対して画像の向きを180°回転させる制御(上下左右を逆転させる制御)を行なわせないと、天吊り姿勢βで投写された画像は上下左右が逆となる。また逆に、正常な画像で使用している天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した場合も同様に、プロジェクタ1に対して画像の向きを180°回転させる制御を行なわせる必要がある。
【0057】
なお、本実施形態では、上記のように、姿勢を変更した場合には、ユーザによるプロジェクタ1への操作指示入力により、変更した姿勢に対応する画像に切り替えることができる。詳細には、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合、例えば正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した場合、ユーザは、最初に、リモコン8またはスイッチ部19を使用して、「投写条件を設定するメニュー画面に切り替える」旨の入力操作を行なう。この入力による信号をキー入力処理部20で処理して制御部10に出力する。制御部10は、この信号に基づいて、対応する動作を行なうようにOSD処理部15に指示する。OSD処理部15は、制御部10からの指示に基づいて、投写条件を設定するメニュー画面に切り替え、そのメニュー画面を投写する。
【0058】
次に、ユーザは、投写されたメニュー画面を確認して、リモコン8またはスイッチ部19を使用して、「正置き姿勢αから天吊り姿勢βに変更した画像に切り替える」旨の項目をチェックする(入力操作を行なう)。制御部10は、この入力操作を読み込み、対応する動作を行なうように画像処理部13に指示する。画像処理部13は、制御部10からの指示に基づいて、現在の画像データに対して180°回転した画像データに変換して、次段に出力する。このような一連の動作の結果、投写される画像が180°回転した画像に切り替えられる。これにより、天吊り姿勢βにおいて、正常な投写画像とすることができる。
【0059】
なお、天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した場合も、同様に、投写条件を設定するメニュー画面に切り替え、次に、「天吊り姿勢βから正置き姿勢αに変更した画像に切り替える」旨の項目をチェックすることで、投写される画像が180°回転した画像に切り替えられる。この操作も上述したと同様のため、説明は省略する。
【0060】
図4および図5は、光源ランプの冷却構造を模式的に示す図である。なお、図4は、+Z軸方向から見た場合の冷却構造を示す図である。また、図5は、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合の冷却構造を示す図である。図4および図5を参照して、本実施形態の光源ランプ31の冷却構造に関して説明する。
【0061】
第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、光源ユニット60に対して設置されている。そして、第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、光源ユニット60を構成する光源ランプ31、詳細には発光管311に空気を送風して光源ランプ31(発光管311)を冷却する。
【0062】
なお、上述したが、光源ユニット60は、光源ランプ31、防爆ガラス40、ランプハウジング50とにより構成されている。そして、ランプハウジング50は、図4、図5に示すように、光源ランプ31を内部に収容し、+X軸方向の端部に防爆ガラス40を固定した略直方体形状を有している。
【0063】
また、ランプハウジング50は、図4、図5に示すように、Y軸方向に交差する一方の端面には、光束が射出される前方側で、外部の空気を内部に導入するための導入口51が略四角形に形成されている。また、導入口51は、図5に示すように、光軸Aを通る平面(この平面を平面Bと呼称する)を中心として、Z軸方向で略対称となるように開口されている。また、ランプハウジング50は、導入口51に略対向する他方の端面において、導入口51から導入された空気が光源ランプ31の内部を流動し、その結果、温められた空気を外部に排出する排出口52が形成されている。
【0064】
また、導入口51の内周縁に沿って、略四角形の管状を有する第1ダクト511が、ランプハウジング50の内部に向かって突出するように形成されている。詳細には、第1ダクト511は、図4に示すように、導入口51の内周縁から、ランプハウジング50内部に向かって突出し、また、その送風方向の中心が発光管311の発光部311aに略向くように、−X軸方向に傾斜した状態で形成されている。なお、第1ダクト511の先端は、リフレクタ312の反射面での光束の反射に影響しない位置まで延びている。そして、第1ダクト511は、導入口51を介してランプハウジング50内部に導入された空気を、−Y軸方向から+Y軸方向に向け、また、傾斜した方向(発光部311aに略向く方向)に整流する。詳細には、光軸Aを通る平面Bを中心として、平面Bに略平行で略同方向(発光部311aに略向く方向)で、平面Bに対して略対称となる方向に送風するように整流する。
【0065】
第1冷却ファン75および第2冷却ファン76は、ファン回転軸方向から吸入した空気を回転接線方向に吐出する遠心力ファン(いわゆるシロッコファン)で構成されている。また、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互にミラー反転した構成を有している。その構成により、本実施形態では、シート状の防振部材120を介して、図5に示すように、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを相互に向かい合わせ、図4、図5に示すように、それぞれの外形が略一致するように、Z軸方向に重ねた形態としている。
【0066】
この形態では、詳細には、第1冷却ファン75は+Z軸方向から空気を吸入し、第2冷却ファン76は−Z軸方向から空気を吸入する。また、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761とは、Z軸方向で重なり、また、同方向(+Y軸方向)に送風可能となる。なお、本実施形態では、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、平面Bと略一致するように設置した防振部材120を挟持する形態で筐体5内部に固定されている。よって、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761は、平面Bに略隣接し、略対称となる位置に配置されている。
【0067】
なお、第1冷却ファン75の+Z軸方向には、第1冷却ファン導入ダクト91が設置され、第2冷却ファン76の−Z軸方向には、第2冷却ファン導入ダクト92が設置されている。なお、この第1冷却ファン導入ダクト91および第2冷却ファン導入ダクト92は、図示省略するが、第3ダクト90から分岐されたダクトとであり、第3ダクト90は、図示省略するが、図1に示すように、筐体5に形成された吸気口6に接続されている。従って、第1冷却ファン75および第2冷却ファン76が駆動した場合、吸気口6から外気を第3ダクト90内に導入(吸気)し、導入した空気は、第1冷却ファン導入ダクト91および第2冷却ファン導入ダクト92に分岐されて流動し、対応する第1冷却ファン75および第2冷却ファン76に導入することができる。
【0068】
また、第1冷却ファン75の吐出口751と第2冷却ファン76の吐出口761は、ランプハウジング50に形成された導入口51と対向している。そして、吐出口751,761と導入口51との間には、略四角形の管状を有する第2ダクト80が設置されている。この第2ダクト80は、吐出口751の外形に対応した管状の第1冷却ファン吐出ダクト81と、吐出口761の外形に対応した管状の第2冷却ファン吐出ダクト82とが連結した形態となっている。詳細には、第2ダクト80は、図5に示すように、管中央部に隔壁80aを設けて第1冷却ファン吐出ダクト81と第2冷却ファン吐出ダクト82とを形成している。
【0069】
なお、第2ダクト80は、この隔壁80aの平面が平面Bと略一致するように設置している。従って、第2ダクト80は、隔壁80aを中心(平面Bを中心)にしてZ軸方向に対称に第1冷却ファン吐出ダクト81と第2冷却ファン吐出ダクト82とを構成している。なお、第1冷却ファン75の吐出口751から吐出された空気は、第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動し、第2冷却ファン76の吐出口761から吐出された空気は、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する。
【0070】
次に、冷却構造における空気の流動に関して説明する。なお、図4、図5において、空気の流動方向を模式的に白抜き矢印で示している。
上述したように、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76が駆動(回転)することにより、吸気口6を介して外気を吸気する。吸気した外気(空気)は、第3ダクト90内を流動し、また、第1冷却ファン導入ダクト91と第2冷却ファン導入ダクト92とに分岐されて更に流動する。そして、第1冷却ファン導入ダクト91内を流動した空気は、+Z軸方向から第1冷却ファン75に導入(吸入)される。第1冷却ファン75に吸入された空気は、吐出口751から+Y方向に吐出される。一方、第2冷却ファン導入ダクト92内を流動した空気は、−Z軸方向から第2冷却ファン76に導入(吸入)される。第2冷却ファン76に吸入された空気は、吐出口761から+Y方向に吐出される。
【0071】
第1冷却ファン75の吐出口751から吐出された空気は、第2ダクト80の第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動する。なお、第1冷却ファン吐出ダクト81の外形が吐出口751と略同一の形状であり、また、第1冷却ファン吐出ダクト81に急激な断面変化や急激な曲がりがないため、第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動する空気は整流される。同じく、第2冷却ファン76の吐出口761から吐出された空気は、第2ダクト80の第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する。また、第1冷却ファン吐出ダクト81と同様に、第2冷却ファン吐出ダクト82の外形が吐出口761と略同一の形状であり、また、第2冷却ファン吐出ダクト82に急激な断面変化や急激な曲がりがないため、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動する空気は整流される。
【0072】
第1冷却ファン吐出ダクト81内を流動した空気は、導入口51から第1ダクト511内に流入する。なお、以降の説明上、この流入した空気を空気W1(図5参照)と呼称する。また、第2冷却ファン吐出ダクト82内を流動した空気は、導入口51から第1ダクト511内に流入する。なお、以降の説明上、この流入した空気を空気W2(図5参照)と呼称する。但し、図4には、流入した空気に符号を付記していないが、空気W1,W2とも、図中の白抜き矢印で略示すように光源ランプ31内を流動する。
【0073】
第1ダクト511内に流入した空気W1は、整流されたまま第1ダクト511内を流動し、第1ダクト511から吐出される。また、同様に、第1ダクト511内に流入した空気W2は、整流されたまま第1ダクト511内を流動し、第1ダクト511から吐出される。整流されて第1ダクト511から吐出された空気W1,W2は、光軸Aを通る平面Bを中心として、平面Bに略平行で略同方向(発光部311aに略向く方向)で、平面Bに対して略対称となる方向に向かう。また、空気W1,W2は、光軸Aを通る平面Bに隣接して流動する。
【0074】
従って、空気W1は、発光管311(発光部311a)を光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した+Z軸方向の領域側を主に流動する。これに対して、空気W2は、発光管311(発光部311a)を光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した−Z軸方向の領域側を主に流動する。これにより、空気W1は、主に発光管311(発光部311a)の+Z軸方向の領域側を冷却し、空気W2は、主に発光管311(発光部311a)の−Z軸方向の領域側を冷却することになる。また、このような送風方向で流動した空気W1,W2は、発光管311(発光部311a)の発生した熱を奪い、温められて、光源ランプ31内を図4、図5に矢印で示すように流動し、ランプハウジング50に形成された排出口52を介して光源ユニット60の外部に排出される。なお、排出された空気W1,W2は、前述したように、排気ファン73により、排気口7を介して、プロジェクタ1の外部に排気される。このような一連の空気の流動により、光源ランプ31で発生する熱が冷却される。
【0075】
図6は、プロジェクタの姿勢と風量との関係を模式的に説明する図であり、図6(a)は、プロジェクタを正置き姿勢で使用する場合の模式図であり、図6(b)は、プロジェクタを天吊り姿勢で使用する場合の模式図である。詳細には、図6(a)は、図3(a)に示したプロジェクタ1を正置き姿勢αで使用する場合であり、正置き姿勢αで使用するユーザが、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合を示す図である。また、図6(b)は、図3(b)に示したプロジェクタ1を天吊り姿勢βで使用する場合であり、天吊り姿勢βで使用するユーザが、光源ランプ31の光束射出側(+X軸方向)から見た場合を示す図である。図6を参照して、プロジェクタ1の正置き姿勢αと天吊り姿勢βとにおける風量との関係を説明する。
【0076】
なお、図6においては、図中に白抜き矢印で示す空気W1,W2の矢印の幅は、空気W1,W2の風量の違いを示しており、幅が広い矢印は、幅が狭い矢印に比べて、風量が多いことを示している。
【0077】
発光管311で発生する熱は、重力の方向に対して逆の方向となる上方に移動する。従って、プロジェクタ1を正置き姿勢αや天吊り姿勢βに姿勢を変更した場合であっても、その姿勢において、発光管311で発生する熱は、重力に対して、上方に対流して移動する。これにより、発光管311の下側(重力を基準とする)に比べて、発光管311の上側(重力を基準とする)の方が熱くなり易い。
【0078】
図6(a)に示すように、プロジェクタ1を正置き姿勢αで使用する場合には、発光管311(発光部311a)は、光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した+Z軸方向の領域側(発光部311aの上方側)が、−Z軸方向の領域側(発光部311aの下方側)より熱くなり易い。従って、正置き姿勢αにおいては、平面Bの上方で送風することになる第1冷却ファン75から吐出する空気W1の風量を、平面Bの下方で送風することになる第2冷却ファン76から吐出する空気W2の風量に比べて風量が多くなるように送風する。これにより、発光部311aの上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となる。
【0079】
また、図6(b)に示すように、プロジェクタ1を天吊り姿勢βで使用する場合には、発光管311(発光部311a)は、光軸Aを通る平面BでZ軸方向に2分割した−Z軸方向の領域側(発光部311aの上方側)が、+Z軸方向の領域側(発光部311aの下方側)より熱くなり易い。従って、天吊り姿勢βにおいては、平面Bの上方で送風することになる第2冷却ファン76から吐出する空気W2の風量を、平面Bの下方で送風することになる第1冷却ファン75から吐出する空気W1の風量に比べて風量が多くなるように送風する。これにより、発光部311aの上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となる。
【0080】
なお、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、本実施形態の場合、特性が略同様の冷却ファンを用いている。従って、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合に、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の風量を切り替える場合には、第1冷却ファン75または第2冷却ファン76の1方の冷却ファンの駆動電圧と風量の相関関係に基づいて、駆動電圧を制御している。また、冷却制御部70が記憶する駆動電圧の制御プログラムは、プロジェクタ1の姿勢が変更された場合、それに応じて、発光部311aの上方側と下方側を動作させる冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)を切り替えることで対応している。なお、このような制御および駆動を行なうのは、ファン駆動制御部であり、ファン駆動制御部は、本実施形態では、制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72を有して構成される。
【0081】
なお、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合には、ユーザによるプロジェクタ1への操作指示入力により、変更した姿勢に対応して、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の駆動電圧の制御を切り替える。また、この操作指示入力は、前述した、プロジェクタ1の姿勢を変更した場合に、投写する画像を切り替える場合の操作を行なうことに連動して切り替えることができる。従って、操作方法は、前述したと同様となるため、説明は省略する。
【0082】
なお、制御部10は、投写する画像を切り替える操作入力が行なわれたと判断した場合には、前述したように、OSD処理部15や画像処理部13に指示することに併せて、冷却制御部70に指示する。そして、冷却制御部70は、駆動電圧の制御プログラムにおける第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを切り替えて、冷却ファン駆動部72を駆動することにより、姿勢に対応した適正な制御を行なう。
【0083】
上述した実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)本実施形態のプロジェクタ1によると、発光管311を有する光源ランプ31と、発光管311を冷却する2つの冷却ファン(第1冷却ファン75、第2冷却ファン76)とを備える。そして、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76による空気の各送風方向は、光束の光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向にそれぞれ設定されている。このように、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の各送風方向は、光軸Aを通る平面Bに略平行で略同方向となるように設定されることにより、発光管311に対し、発光管311の光軸Aを通る平面Bの上方側となる領域と、下方側となる領域とを、光源ランプ31に対して同じ側(本実施では、光源ランプ31に対して−Y軸側)から、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とにより効率よく冷却することができる。このように送風方向を設定することにより、プロジェクタ1を正置き姿勢αや天吊り姿勢βに切り替えた場合でも、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。それにより、発光管311の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプ31の寿命劣化を抑制でき、光源ランプ31の長寿命化を図ることができる。また、発光管311の白化や黒化の現象を抑制できるため、光源ランプ31の輝度低下を抑制でき、プロジェクタ1の投写品質も向上できる。
【0084】
(2)本実施形態のプロジェクタ1によると、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の各吐出口751、761は、平面Bに略隣接し、略対称となる位置に配置されることにより、光源ランプ31に対して同じ側(本実施形態では、光源ランプ31に対して−Y軸側)で、また、送風方向を隣接させて上下に重ねる形態で設定することができる。これにより、光源ランプ31を冷却するための送風方向をコンパクトな構成で実現でき、また、発光管311を更に効率的に冷却することができる。
【0085】
(3)本実施形態のプロジェクタ1によると、ファン駆動制御部としての、制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72が、プロジェクタ1を所定の第1姿勢(正置き姿勢α)と所定の第2姿勢(天吊り姿勢β)とに切り替えて画像光を投写させる場合、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の動作を制御する。従って、ファン駆動制御部により、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とを適正に制御して駆動することで、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0086】
(4)本実施形態のプロジェクタ1によると、ファン駆動制御部(制御部10、冷却制御部70、および冷却ファン駆動部72)が、正置き姿勢αと天吊り姿勢βとの姿勢に応じて、平面Bの上方で送風することになる一方の冷却ファンが、平面Bの下方で送風することになる他方の冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なう。これにより、光源ランプ31(発光管311)の上方側と下方側とに偏った温度差を生じさせず、上方側と下方側との温度分布が一様となるように冷却風を送風できる。
【0087】
(5)本実施形態のプロジェクタ1によると、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互にミラー反転した構成を有し、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねて略同方向に送風可能となっている。この構成により、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76の設置に要するスペースを最小限にすることができるため、光源ランプ31の冷却構造を小型化でき、プロジェクタ1の小型化を図ることができる。
【0088】
なお、上述した実施形態に限定されず、種々の変更や改良などを加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の吐出口751,761に、第2ダクト80を用いて、光源ユニット60(ランプハウジング50の導入口51)に接続しているが、この第2ダクト80は、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の吐出口751,761に直接形成することでもよい。
【0089】
(変形例2)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76から吐出された空気W1,W2の送風方向は、平面Bに略隣接して略対称となる方向に設定されているが、隣接していなくても、また、対称でなくてもよく、平面Bに略平行で略同方向に送風する方向により、発光管311に対して空気W1,W2を送風するように、それぞれ設定されていればよい。
【0090】
(変形例3)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75と第2冷却ファン76とは、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有しているが、この構成には限られない。2つの冷却ファンは外形などが異なっていてもよい。また、外形が同じ(特性が同じ)でもミラー反転した構成を有さなくてもよい。また、ミラー反転した構成であっても、あえて一致するように重ねる必要はなく、プロジェクタ1を構成する他の部材との配置関係により適宜配置することでもよい。
【0091】
(変形例4)前記実施形態のプロジェクタ1では、送風方向として、光源ランプ31に対して−Y軸側から送風する形態としているが、これに限られず、+Y軸側、またはX軸方向から送風する形態としてもよい。
【0092】
(変形例5)前記実施形態のプロジェクタ1では、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の位置は、平面Bと略一致するように、また、光源ランプ31の近傍に、相互に向かい合わせて設置している。しかし、これに限られず、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の位置は、プロジェクタ1を構成する他の部材との配置関係により適宜配置することでもよい。そして、第1冷却ファン75、第2冷却ファン76の設置位置を決めた場合、その設置位置からダクトなどを用いて、本実施形態の場合では、ランプハウジング50の導入口51に接続する構造とすることでよい。
【0093】
(変形例6)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置としての液晶パネル35a,35b,35cは、透過型の液晶パネルを用いているが、反射型の液晶パネルなど、反射型の光変調装置を用いることも可能である。
【0094】
(変形例7)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置としての液晶パネル35a,35b,35cを用いている。しかし、これに限らず、一般に、入射光を画像情報に応じて変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調装置などを用いてもよい。なお、マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(Digital Micro mirror Device)を用いることができる。
【0095】
(変形例8)前記実施形態のプロジェクタ1の光学系30において、光変調部35を構成する光変調装置は、赤色光、緑色光、および青色光に対応する3つの液晶パネル35c,35b,35aを用いるいわゆる3板方式を採用しているが、これに限らず、単板方式を採用してもよい。また、コントラストを向上するための液晶パネルを追加して採用してもよい。
【0096】
(変形例9)前記実施形態のプロジェクタ1は、フロントタイプのプロジェクタとして適用しているが、投写対象面としてのスクリーンを一体で有するリアタイプのプロジェクタにも適用できる。
【0097】
なお、本発明を実施するための最良の形態を、上記記載で開示しているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して図示し、かつ、説明しているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対し、詳細な構成部材の形状・材質・数量・設置位置などにおいて、当業者が様々な変形(変更ならびに改良)を加えることができるものである。従って、詳細な構成部材の形状・材質・数量・設置位置などにおいて、当業者が様々な変形を加えることにより実施する場合も本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本実施形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図。
【図2】プロジェクタの光学系の構造を示す図。
【図3】プロジェクタの姿勢を模式的に示す図であり、(a)は正置き姿勢を示す図であり、(b)は天吊り姿勢を示す図であり、(c)は光軸を通る平面に関しての説明図。
【図4】光源ランプの冷却構造を模式的に示す図。
【図5】光源ランプの冷却構造を模式的に示す図。
【図6】プロジェクタの姿勢と風量との関係を模式的に説明する図であり、(a)はプロジェクタを正置き姿勢で使用する場合の模式図であり、(b)はプロジェクタを天吊り姿勢で使用する場合の模式図。
【符号の説明】
【0099】
1…プロジェクタ、10…制御部、31…光源ランプ、40…防爆ガラス、50…ランプハウジング、51…導入口、52…排出口、60…光源ユニット、70…冷却制御部、72…冷却ファン駆動部、75…第1冷却ファン、76…第2冷却ファン、80…第2ダクト、90…第3ダクト、100…スクリーン、311…発光管、311a…発光部、312…リフレクタ、511…第1ダクト、A…光軸、B…平面、W1,W2…空気、α…正置き姿勢、β…天吊り姿勢。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光により光束を射出する発光管を有する光源ランプと、
前記発光管に対して空気を送風し、前記発光管を冷却する2つの冷却ファンと、を備え、
前記2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、前記光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタであって、
前記冷却ファンの各吐出口は、前記平面に略隣接し、略対称に配置されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクタであって、
前記2つの冷却ファンの動作を制御するファン駆動制御部を備え、
前記ファン駆動制御部は、当該プロジェクタを所定の第1姿勢と所定の第2姿勢とに切り替えて画像光を投写させる場合、前記第1姿勢と前記第2姿勢との姿勢に応じて、前記2つの冷却ファンの動作を制御することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクタであって、
前記ファン駆動制御部は、前記第1姿勢と前記第2姿勢との姿勢に応じて、前記平面の上方で送風することになる一方の前記冷却ファンが、前記平面の下方で送風することになる他方の前記冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なうことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
前記2つの冷却ファンは、遠心力ファンであり、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、前記略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有していることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項1】
発光により光束を射出する発光管を有する光源ランプと、
前記発光管に対して空気を送風し、前記発光管を冷却する2つの冷却ファンと、を備え、
前記2つの冷却ファンによる空気の各送風方向は、前記光束の光軸を通る平面に略平行で略同方向にそれぞれ設定されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタであって、
前記冷却ファンの各吐出口は、前記平面に略隣接し、略対称に配置されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクタであって、
前記2つの冷却ファンの動作を制御するファン駆動制御部を備え、
前記ファン駆動制御部は、当該プロジェクタを所定の第1姿勢と所定の第2姿勢とに切り替えて画像光を投写させる場合、前記第1姿勢と前記第2姿勢との姿勢に応じて、前記2つの冷却ファンの動作を制御することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクタであって、
前記ファン駆動制御部は、前記第1姿勢と前記第2姿勢との姿勢に応じて、前記平面の上方で送風することになる一方の前記冷却ファンが、前記平面の下方で送風することになる他方の前記冷却ファンに比べて風量が多くなるように送風する制御を行なうことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のプロジェクタであって、
前記2つの冷却ファンは、遠心力ファンであり、相互に向かい合わせて外形が略一致するように重ねた場合に、前記略同方向に送風可能となるように、相互にミラー反転した構成を有していることを特徴とするプロジェクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−198640(P2009−198640A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38387(P2008−38387)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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