説明

プロジェクト進捗管理システム

【課題】 プロジェクトの人的なリスクや超過勤務の発生を回避すること。
【解決手段】 定期的に更新される従業員個人個人のスキルデータと従業時間データを管理する第1の手段と、労使協定等で制定された残業制限、年休行使日数、プロジェクト固有の労務協定等の規定データを管理する第2の手段と、プロジェクト計画に割当てた個々の従業員に発生している負荷を個々の従業員の前記スキルデータと従業時間データおよび前記規定データに基づき検査し、過負荷が発生している従業員が存在する場合にはメッセージを出力し、人員および日程の再調整を行う第3の手段とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ソフトウェア開発の計画と進捗状況を管理する場合に使用されるプロジェクト進捗管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクト進捗管理に関する技術として、例えば下記の特許文献1および特許文献2に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示されたものは、プロジェクトの開発工程で発生した懸念とアローダイアグラムとを関連付け、それぞれの懸念に対し重要度を付加することで、プロジェクトリーダがアローダイアグラムを用いてプロジェクトの計画や進捗を管理する上で、重要度の高い懸念が含まれる工程やそれが全体に与える影響を考慮するための手段として利用しようとするものである。
また、特許文献2に開示されたものは、プロジェクトに携わる従業者の身体的特徴を予め記録しておき、日々の測定値との比較により、プロジェクトを管理する上で、プロジェクトリーダが従業者の日々の健康への配慮を容易とし、プロジェクト全体の安全性を高めようとするものである。
【特許文献1】特開2000−47865号公報
【特許文献2】特開2001−282975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、複数人の従業員が携わっている工程に対しても、工程そのもの管理しか対象でなく、工程に携わる従業員個人個人を管理することができない問題がある。
また、特許文献2に記載の技術は、従業員個人個人の健康に配慮することができるものの、あくまでも日々の測定値を元に考慮するため、プロジェクト計画ではなく、日々の業務管理を主眼としており、プロジェクトの計画時にどのような問題が発生するかを予期することは不可能であるという問題がある。また、実際に従業員に健康の問題が発生しても、それがプロジェクト全体にどのように影響するかを容易に把握することは不可能であるという問題がある。
また、既存のプロジェクト進捗管理システムでは、プロジェクト毎に従業員の稼動を管理しているため、プロジェクトに新たに追加された人員について、プロジェクトリーダは、彼らの従前のプロジェクトでの勤務状況について配慮するのは困難であり、従業員の過労を見過ごし、リーダ、部門、会社の管理責任を問われるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、これまでのプロジェクトを構成する各工程までを管理の対象とするやり方では表に出てこない、各工程に携わる複数の従業員個人個人までを管理の対象とすることによって、各工程に潜在している従業員個人個人レベルのスキルに関するリスクや負荷が多くなることによる従業員の精神的ストレスや身体的ストレスに関する健康リスクを顕著にし、その問題点に容易に対応することができるプロジェクト進捗管理システムを提供することにある。
特に、現在のように過労死が社会問題化している状況において、多数のプロジェクトに携わる従業員について、残業時間や年休の行使状況等を一元管理することによって、労務上の無理がないかをリーダが容易にチェックでき、プロジェクトの人的なリスクや超過勤務の発生を回避することができるプロジェクト進捗管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、定期的に更新される従業員個人個人のスキルデータと従業時間データを管理する第1の手段と、労使協定等で制定された残業制限、年休行使日数、プロジェクト固有の労務協定等の規定データを管理する第2の手段と、プロジェクト計画に割当てた個々の従業員に発生している負荷を個々の従業員の前記スキルデータと従業時間データおよび前記規定データに基づき検査し、過負荷が発生している従業員が存在する場合にはメッセージを出力し、人員および日程の再調整を行う第3の手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従業員の勤務状況を管理する手段と連携し、プロジェクト計画に割当てた従業員一人一人に着目し、各人の勤務状況、各人のスキルとタスクに必要とされるスキルとの差異から生じる精神的ストレス等を未然にチェックし、過負荷が発生している従業員が存在する場合にはメッセージを出力し、人的なリスクや超過勤務の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面を参照して具体的に説明する。
本発明は、様々な分野において利用できるが、ここではソフトウェア開発におけるプロジェクト計画、進捗管理に適用した場合を代表して説明する。
図1は、本発明のプロジェクト進捗管理システムの実施形態を示すシステム構成図である。
図1において、101は、従業員勤務管理サーバであり、所属部署、出勤実績、年休取得実績、残業実績、出勤予定、年休取得予定、残業予定を管理し、その管理内容は日々更新されるようになっている。
102は、従業員スキル管理サーバであり、従業員個人の業務経験、スキルレベルを記録しており、その内容は日々更新されるようになっている。
103はプロジェクト情報管理サーバであり、プロジェクト特有の情報、すなわち、予定生成物、予定期間、予定人員、予定スキル、詳細日程等が記録される。さらに、プロジェクトの人員や派遣会社との契約、労使協定等から、残業の制限値、一定期間内の年休数、休日出勤制限等のプロジェクト特有の基準値を保管する。また、予定スキルを社内規定に基づき数値化し、予定スキルに満たない従業員は精神的負荷がかかることを考慮し、プロジェクト毎に精神的負荷に対して、年休取得予定の上積み値をプロジェクトの基準値として設定する。
プロジェクトが開始された後は、一定の期間毎に、進捗状況が更新される。
104はプロジェクト進捗画面表示クライアントである。
【0008】
図2は、プロジェクトの計画や進捗管理に用いるガントチャート図の一例を示すものである。
図2において、201は期日、202はプロジェクトを構成するタスク、203はタスクが実施される期間を太い横棒で示している。204は「タスク3」が実施される10月半ば頃より、「タスク3」に携わる従業員の誰かにプロジェクトで定めた基準値を超えた負荷がかかることを点線にて示している。
【0009】
図3は、図2の「タスク3」を構成する従業員の構成図である。
図3において、302は「タスク3」に従事する従業員の名前である。
303は、各従業員が「タスク3」に従事する予定日を太い横棒で示している。
304は、従業員Cが10月半ばから、連続出勤のため、プロジェクトで定めた年休取得予定基準値を満たしていないことを示し、改善しなければ、従業員Cの健康を損ない、プロジェクトの進捗に著しい問題が発生する恐れがあることや、法的な問題が発生することを示している。
【0010】
以上の説明を踏まえて、本実施形態に係るプロジェクト計画・進捗管理処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。
プロジェクトリーダがプロジェクトを新規に計画する際、プロジェクト進捗画面クライアント104のプロジェクト進捗管理画面から、プロジェクト情報管理サーバ103にアクセスし、プロジェクト情報管理サーバ103内に新規プロジェクト情報を作成する。ここには、社内規定や労使協定、プロジェクトに関係する派遣会社や契約社員との契約をベースに、新規プロジェクトでの残業制限値、休出制限値、年休取得頻度を設定する(S41、S42)。
次に、プロジェクトを複数タスクに分割し、タスク毎に、タスクの性質、環境を考慮し、タスク遂行に必要と思われるスキルレベルを設定する(S43)。
次に、従業員勤務管理サーバ101と連携して、従業員勤務管理サーバ101内の従業員名簿から、所属部署等の項目を参考に、各タスクに適切と思われる人員を選出し、各タスクに割り振る(S44)。なお、当該タスクが特定のスキルを有する従業員を優先的に確保すべきこと等があらかじめわかっている場合には、このステップで従業員スキル管理サーバ102とも連携して、当該タスク適切と思われる人員を選出するような構成としてもよい。
次に、タスク毎の人員、日程を調整する(S45)。
次に、従業員勤務管理サーバ101と連携し、各タスクの従業員毎に、タスク開始時までの連続勤務時間、累積残業時間、休日取得データを取得する。ここでは、例えば、直前のプロジェクトが激務であり、休息が不十分なまま、新たなプロジェクトに参加する従業員をフォローできるように、初期値として、サーバ101からデータを取得する(S46)。
次に、従業員スキル管理サーバ102と連携し、タスク毎に予定された予定スキルレベル、スキル要件に満たない従業員を検索し、該当者に対して、残業制限値、年休取得頻度、休出制限値等にプロジェクトで規定された修正値を加味して調整する。
これは、難度の高いタスクに従事する場合、調査や検討等など、実質的な業務以外の作業が発生することを想定し、タスク毎の重み付けをする意味を含む(S47)。
次に、従業員勤務管理サーバ102と連携し、残業制限、休出制限、年休取得頻度制限などのプロジェクト制限値をオーバーしたタスクがあれば、図2の203のように点線で出力する(S48)。ここで図2の204の点線部分をマウスでクリックすると、図3の「タスク3」を構成する従業員一覧が出力され、304のように、従業員Cが連続勤務により、プロジェクト基準値をオーバーしたことを表示する。
次に、S48の判定で基準値をオーバーしていた場合は、S45に戻り、人員の追加、タスク日程の調整を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施も形態を示するシステム構成図である。
【図2】プロジェクトの各タスクのスケジュールを示すガントチャート図である。
【図3】タスク毎に、そのタスクに従事する従業員のスケジュールを示すガントチャート図である。
【図4】従業員の負荷を計算するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0012】
101 従業員勤務管理サーバ
102 従業員スキル管理サーバ
103 プロジェクト情報管理サーバ
104 プロジェクト進捗管理表示クライアント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的に更新される従業員個人個人のスキルデータと従業時間データを管理する第1の手段と、労使協定等で制定された残業制限、年休行使日数、プロジェクト固有の労務協定等の規定データを管理する第2の手段と、プロジェクト計画に割当てた個々の従業員に発生している負荷を個々の従業員の前記スキルデータと従業時間データおよび前記規定データに基づき検査し、過負荷が発生している従業員が存在する場合にはメッセージを出力し、人員および日程の再調整を行う第3の手段とを備えることを特徴とするプロジェクト進捗管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−72801(P2006−72801A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256899(P2004−256899)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)