説明

プロスタグランジン合成

【課題】式(I)のプロスタグランジン化合物を製造する方法及びその新規な中間体の提供。


式中、Aは、C〜Cアルキル、置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、BはOR”およびNHR”から選択され、R”はC〜Cアルキルである。
【解決手段】式(a)なる新規中間体により合成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体の新規な合成方法に関する。本発明は、さらに、プロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体の合成に使用できる新規な合成中間体に関する。
【0002】
PGFαプロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体は、シス配置にある2個の水酸基およびトランス配置にある2本の側鎖を有するシクロペンチル環を含んでなる。側鎖は、二重結合および様々な置換基を含むことができる。これらの物質には、多くの治療用途、例えば緑内障および眼高圧症の処置または分娩の誘発および促進、がある。
【0003】
PGFαプロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体を合成するための様々な方法が公知であり、例えばChem. Rev. (1993, vol. 93, 1533-1564頁)、国際特許第WO02/096868号明細書、第WO02/090324号明細書およびChinese Journal of Medicinal Chemistry(1998, vol. 36, 213-217頁)に記載されている。
【0004】
本発明者らは、PGFαプロスタグランジンおよびプロスタグランジン類似体を合成する別の方法を提供する。理想的には、この合成経路は、一般的に様々なプロスタグランジン化合物に応用でき、高い収率を与える。
【0005】
そこで、本発明は、式(I)を有するプロスタグランジン化合物を製造する方法を提供する。
【化1】

式中、Aは、C〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nは1〜3であり、R’は、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、BはOR”およびNHR”から選択され、R”はC〜Cアルキルであり、-----は二重結合または単結合を表す。
【0006】
スキーム1は、アリルシクロペンテノン(X)および置換されたアルケン(IX)(Pはヒドロキシ保護基である)から出発する式(I)のプロスタグランジンの合成を示す。
【0007】
スキーム1
【化2】

【0008】
スキーム1続き
【化3】

【0009】
(a)式(IX)の化合物から形成された銅酸塩試薬の1,4付加、(b)立体選択的還元、(c)ヒドロキシル保護基による保護、(d)二ヒドロキシル化、(e)還元、(f)ジオール開裂、(g)ウィッチヒ反応、(h)エステル化またはアミド化、(i)脱保護。
【0010】
日本国特許第JP59−044336号明細書および第JP57−171965号明細書は、AがCRORであり、RがC1−10アルキルであり、RがHまたはメチルであり、RがHまたはヒドロキシ保護基である式(VIIa)の化合物を硫黄化合物と反応させる、プロスタグランジンの合成方法を開示している。これらの方法は、側鎖が硫黄を含まないプロスタグランジン、例えばラタノプロスト、ビマトプロストおよびトラボプロスト、の形成には不適当である。
【0011】
一態様で、本発明は、式(VIII)の、
【化4】

式中、Aが(CHPhまたはCHOR'''であり、R'''が、メタ位置でCFにより置換されたフェニルであり、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合を表す化合物の製造方法であって、式(IX)の、
【化5】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りであり、Xが離脱基である化合物を反応させて銅酸塩試薬を形成し、この試薬が式(X)の、
【化6】

式中、Pが上に定義した通りである化合物で1,4付加を受ける、方法を提供する。
【0012】
Pは、テトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。Xはハロゲンであるのが好適であり、好ましくはヨウ素である。
【0013】
式(IX)の化合物から好適な銅酸塩試薬を形成する技術は、当業者には良く知られている。例えば、Xがヨウ素である化合物は、リチウム化されたアルカン、例えばn−BuLi、と、溶剤、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはtert−ブチルメチルエーテル(TBME)中、−78℃で1時間反応させることができる。続いて、シアン化銅およびメチルリチウムを反応混合物に加え、温度を0℃に45分かけて上昇させる。銅酸塩試薬が反応混合物中に形成される。式(X)のシクロペンテノンを反応混合物に、好ましくは−78℃で加え、銅酸塩試薬は化合物(X)への1,4付加を受け、化合物(VIII)を形成する。
【0014】
式(IX)の、-----が二重結合を表し、Xがハロゲンである化合物は、下記の工程を含んでなる方法により製造することができる。
a)式(XV)の酸塩化物をビス(トリアルキルシリルアセチレン)と反応させ、式(XIV)のアセチレンを形成し、
b)式(XIV)のアセチレンを穏やかな塩基と反応させ、式(XIII)のアセチレンを形成し、
c)式(XIII)のアセチレンをハロゲン化水素化し、式(XII)のハロゲン化ビニルを形成し、
d)式(XII)のハロゲン化ビニル中でプロキラルケトンの立体選択的還元により、式(XI)のハロゲン化ビニルを形成し、
e)式(XI)のハロゲン化ビニル中の水酸基を保護する。
【0015】
好ましい反応物を下記の反応スキームに示す。
【化7】

【0016】
式(IX)の、-----が単結合を表す化合物を合成する方法は、国際特許第WO02/90324号明細書に記載されている。
【0017】
式(X)のシクロへペンタノンは、容易に入手できる出発材料、例えばアリルマグネシウムクロリドおよび2−フルアルデヒド、から製造することができる。
【化8】

ラセミシクロペンタノンは、標準的な技術を使用して分割することができ、アルコールは保護すべきである。式(X)のシクロペンテノンを形成する別の方法は、ヨーロッパ特許第EP115680号明細書に開示されている。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は二重結合を表し、PはTHPであり、XはIである。
【化9】

【0019】
本発明は、別の態様で、式(VIII)の、
【化10】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物を提供する。
【0020】
好ましい実施態様では、本発明は、式(VIII)の、Aが(CHPhであり、-----が二重結合を表し、PがTHPである化合物を提供する。
【化11】

【0021】
本発明は、別の態様で、式(VIIa)の、
【化12】

式中、Aが(CHPhまたはCHOR'''であり、R'''が、メタ位置でCFにより置換されたフェニルであり、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合を表す化合物の製造方法であって、式(VIII)の、
【化13】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物が選択的還元を受ける方法を提供する。
【0022】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0023】
好適な選択的還元試薬は当業者には良く知られている。好ましくは、L−Selectrideをテトラヒドロフラン(THF)溶剤中、−78℃で使用し、ケトンを選択的に還元する。
【0024】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は二重結合を表し、PはTHPである。
【化14】

【0025】
本発明は、別の態様で、式(VIIa)の、
【化15】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物を提供する。
【0026】
好ましい実施態様では、本発明は、式(VIIa)の、Aが(CHPhであり、-----が二重結合を表し、PがTHPである化合物を提供する。
【化16】

【0027】
本発明は、別の態様で、式(VIIb)の、
【化17】

式中、Aが(CHPhまたはCHOR'''であり、R'''が、メタ位置でCFにより置換されたフェニルであり、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合を表す化合物の製造方法であって、式(VIIa)の、
【化18】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物がヒドロキシル保護基で保護される方法を提供する。
【0028】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0029】
ヒドロキシル基を保護する方法は当業者には良く知られている。PがTHPである場合、ヒドロキシル基は、2,3−ジヒドロ−4H−ピラン(DHP)およびピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS)との、室温でジクロロメタン(DCM)溶剤中での反応により、保護することができる。
【0030】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は二重結合を表し、PはTHPである。
【化19】

【0031】
本発明は、別の態様で、式(VIIb)の、
【化20】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物を提供する。
【0032】
好ましい実施態様では、本発明は、式(VIIb)の、Aが(CHPhであり、-----が二重結合を表し、PがTHPである化合物を提供する。
【化21】

【0033】
本発明は、別の態様で、式(VIIc)の、
【化22】

式中、Aが(CHPhまたはCHOR'''であり、R'''が、メタ位置でCFにより置換されたフェニルであり、-----が二重結合または単結合を表す化合物の製造方法であって、式(VIIa)の、
【化23】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物が脱保護される方法を提供する。
【0034】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0035】
保護されたヒドロキシル基を脱保護する方法は当業者には良く知られている。PがTHPである場合、ヒドロキシル基は、ピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS)との、メタノール溶剤中での反応により、除去することができる。
【0036】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は二重結合を表す。
【化24】

【0037】
本発明は、別の態様で、式(VIIc)の、
【化25】

式中、Aおよび-----が上に定義した通りである化合物を提供する。
【0038】
好ましい実施態様では、本発明は、式(VIIc)の、Aが(CHPhであり、-----が二重結合を表す化合物を提供する。
【化26】

【0039】
本発明は、別の態様で、式(VIa)、(VIb)、(VIc)、(Va)、(Vb)または(Vc)の、
【化27】

式中、Aが、C〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基である化合物の製造方法であって、式(VIIa)、式(VIIb)または式(VIIc)の、
【化28】

式中、AおよびPが上に定義した通りであり、-----が二重結合または単結合である化合物が二ヒドロキシル化を受ける方法を提供する。
【0040】
式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)の化合物中に2個以上の二重結合がある場合、二ヒドロキシル化を受けるのは末端の二重結合である。
【0041】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0042】
二重結合を二ヒドロキシル化する好適な方法は当業者には良く知られている。好ましい試薬は、触媒量の四酸化オスミウムの存在下におけるN−メチルモルホリン−N−オキシド(NMO)である。溶剤は、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)と水の4:1混合物である。反応は、−10〜−4℃で行うのが好適である。
【0043】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、-----は二重結合を表し、(VIIa)を反応させて(VIa)を形成する。
【化29】

【0044】
第二の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、-----は二重結合を表し、(VIIb)を反応させて(VIb)を形成する。
【化30】

【0045】
第三の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は二重結合を表し、(VIIc)を反応させて(VIc)を形成する。
【化31】

【0046】
本発明は、別の態様で、式(VIa)、(VIb)、(VIc)、(Va)、(Vb)および(Vc)の、
【化32】

式中、AおよびPが上に定義した通りである化合物を提供する。
【0047】
好ましい実施態様では、本発明は、式(VIa)、(VIb)、(Va)および(Vb)の、Aが(CHPhであり、PがTHPである化合物、および式(VIc)および(Vc)の、Aが(CHPhである化合物を提供する。
【化33】

【0048】
本発明は、別の態様で、式(Va)、(Vb)または(Vc)の、
【化34】

式中、AがC〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基である化合物の製造方法であって、式(VIa)、式(VIb)または式(VIc)の、
【化35】

式中、AおよびPが上に定義した通りである化合物が二重結合の還元を受ける方法を提供する。
【0049】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0050】
二重結合を還元する好適な方法は当業者には良く知られている。好ましい方法では、例えばエタノール溶剤中に炭素上5%Pdの触媒を含んでなる反応混合物中に、水素ガスを圧力40psiで通すことにより、二重結合を水素化する。
【0051】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、(VIa)を反応させて(Va)を形成する。
【化36】

【0052】
第二の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、(VIb)を反応させて(Vb)を形成する。
【化37】

【0053】
第三の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、(VIc)を反応させて(Vc)を形成する。
【化38】

【0054】
本発明は、別の態様で、式(IVa)、(IVb)または(IVc)の、
【化39】

式中、AがC〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合である化合物の製造方法であって、式(VIa)、(Va)、(VIb)、(Vb)、(VIc)または(Vc)の、
【化40】

式中、AおよびPが上に定義した通りである化合物がジオール開裂を受ける方法を提供する。
【0055】
Pはテトラヒドロピラニル(THP)またはシリルエーテル保護基であるのが好適である。好ましくは、PはTHP保護基である。
【0056】
ジオール開裂の好適な方法は当業者には良く知られている。好ましい方法では、2当量の過ヨウ素酸ナトリウムおよびシリカを1:1比で使用する。好適な溶剤は水とジクロロメタンの混合物である。
【0057】
好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、-----は単結合を表し、(Va)を反応させて(IVa)を形成する。
【化41】

【0058】
第二の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、PはTHPであり、-----は単結合を表し、(Vb)を反応させて(IVb)を形成する。
【化42】

【0059】
第三の好ましい実施態様では、Aは(CHPhであり、-----は単結合を表し、(Vc)を反応させて(IVc)を形成する。
【化43】

【0060】
本発明は、別の態様で、式(IVb)の、
【化44】

式中、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が単結合である化合物を提供する。
【0061】
式(IVa)、(IVb)または(IVc)の、
【化45】

式中、AがC〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合である化合物は、ウィッチヒ試薬と反応させ、式(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)の、
【化46】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りである化合物を形成することができる。
【0062】
好適なウィッチヒ試薬は当業者には良く知られている。好ましいウィッチヒ試薬は、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドであり、これを、テトラヒドロフラン(THF)溶剤中、0℃で、式(IVa)、(IVb)または(IVc)の化合物およびカリウムt−ブトキシドで保護する。
【0063】
例えば、式(IVa)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が単結合を表す化合物を反応させ、式(IIIa)の化合物を形成する。
【化47】

【0064】
第二の例では、式(IVb)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が単結合を表す化合物を反応させ、式(IIIb)の化合物を形成する。
【化48】

【0065】
第三の例では、式(IVc)の、Aが(CHPhであり、-----が単結合を表す化合物を反応させ、式(IIIc)の化合物を形成する。
【化49】

【0066】
式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)の、
【化50】

式中、AがC〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合を表す化合物は、エステル化またはアミド化し、式(IIa)、(IIb)および(I)の、
【化51】

式中、A、Pおよび-----が上に定義した通りであり、BがOR”およびNHR”から選択され、R”がC〜Cアルキルである化合物を形成することができる。
【0067】
好適なエステル化/アミド化試薬は当業者には良く知られている。好ましいエステル化試薬は、2−ヨードプロパン(イソプロピルヨージド)であり、反応混合物は、塩基、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)をさらに含んでなる。アセトンが好適な溶剤である。好ましいアミド化試薬はエチルアミン(EtNH)であり、反応混合物は、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC−HCl)をさらに含んでなるのが好適である。アミド化は、式(IIIa)、(IIIb)または(IIIc)の化合物を最初にエステル化してから、アミド化試薬、例えばエチルアミン、にさらす、多工程製法によっても達成できる。
【0068】
例えば、式(IIIa)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が単結合を表す化合物をエステル化し、式(IIa)の化合物を形成する。
【化52】

【0069】
第二の例では、式(IIIa)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が二重結合を表す化合物をアミド化し、式(IIa)の化合物を形成する。
【化53】

【0070】
第三の例では、式(IIIc)の、Aが(CHPhであり、-----が単結合を表す化合物をエステル化し、一般的にラタノプロストと呼ばれる式(I)の化合物を形成する。
【化54】

【0071】
式(IIa)または(IIb)の、
【化55】

式中、AがC〜Cアルキル、アリール基が所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C16アラルキル、および(CHOR’からなる群から選択され、nが1〜3であり、R’が、所望によりC〜Cアルキル、ハロおよびCFからなる群から選択された1〜3個の置換基で置換されているC〜C10アリール基を表し、Pがヒドロキシル保護基であり、-----が二重結合または単結合を表し、BがOR”およびNHR”から選択され、R”がC〜Cアルキルである化合物は、脱プロトン化し、式(I)の、
【化56】

式中、A、Bおよび-----が上に定義した通りである化合物を形成することができる。
【0072】
好適な脱プロトン化試薬は当業者には良く知られている。好ましい脱プロトン化試薬は、メタノール溶剤中のピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS)である。
【0073】
例えば、式(IIa)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が単結合を表し、BがOPrである化合物を脱プロトン化し、一般的にラタノプロストと呼ばれる式(I)の化合物を形成する。
【化57】

【0074】
第二の例では、式(IIa)の、Aが(CHPhであり、PがTHPであり、-----が二重結合を表し、BがNHEtである化合物を脱プロトン化し、一般的にビマトプロストと呼ばれる式(I)の化合物を形成する。
【化58】

【0075】
本発明は、スキーム2に示すラタノプロストを合成する方法をさらに提供する。
【0076】
スキーム2
【化59】

【0077】
スキーム2続き
【化60】

【0078】
(a)式(IX)の化合物から形成された銅酸塩試薬の1,4付加、(b)立体選択的還元、(c)ヒドロキシル保護基による保護、(d)二ヒドロキシル化、(e)還元、(f)ジオール開裂、(g)ウィッチヒ反応、(h)エステル化、(i)脱保護。
【0079】
本発明は、スキーム3に示すビマトプロストを合成する方法をさらに提供する。
【0080】
スキーム3
【化61】

【0081】
スキーム3続き
【化62】

【0082】
(a)式(IX)の化合物から形成された銅酸塩試薬の1,4付加、(b)立体選択的還元、(c)ヒドロキシル保護基による保護、(d)二ヒドロキシル化、(f)ジオール開裂、(g)ウィッチヒ反応、(h)アミド化、(i)脱保護。
【0083】
本発明は、スキーム2に示すラタノプロストを合成する方法をさらに提供する。
【0084】
スキーム4
【化63】

【0085】
スキーム4続き
【化64】

【0086】
(a)式(IX)の化合物から形成された銅酸塩試薬の1,4付加、(b)立体選択的還元、(c)ヒドロキシル保護基による保護、(d)二ヒドロキシル化、(f)ジオール開裂、(g)ウィッチヒ反応、(h)エステル化、(i)脱保護。
【0087】
ここで本発明を例により説明するが、これらの例は、本発明を制限するものではない。
【0088】
ヨウ化ビニル(1)の合成
【化65】

工程(a) 機械的攪拌機、滴下漏斗、冷却浴および内部温度プローブを取り付けた5リットルの三口丸底フラスコに、AlCl(217.48g、1.63モル、1.1当量)およびCHCl(1リットル)をN雰囲気下で入れた。この反応混合物を、攪拌しながら、氷/塩/メタノール浴を使用して冷却した。温度が≦−10℃になった後、3−フェニルプロピオニルクロリド(Aldrich、250g、1.48モル、1当量)およびビス(トリメチルシリル)アセチレン(GFS Chemicals、278g、1.63モル、1.1当量)をCHCl(1リットル)に入れた溶液を、滴下漏斗を経由して徐々に加え、加えている間、温度を≦0℃に維持した。全部加えた後、冷却浴を取り外し、混合物を攪拌しながらRTに温めた。〜0.5時間後、TLCにより反応完了を監視した。反応完了後(約20分間)、混合物をリン酸塩緩衝液(pH〜7、4リットル)中に攪拌しながら徐々に注ぎ込んだ。有機層を分離し、水層をCHCl(500ml)で抽出した。有機層を一つに合わせ、10%水性NaCl(2x750ml)で洗浄し、無水MgSO(500g)上で除湿し、濾過し、溶剤を真空除去し、暗色のオイルを得た。このオイルを高真空下、RTで〜18時間さらに乾燥させた。
【0089】
工程(b) 機械的攪拌機および滴下漏斗を取り付けた12リットルの三口丸底フラスコに、工程(a)で得たオイル(316g、1.37モル、1当量)およびメタノール(3リットル)を入れた。これに、0.01M Na.10HO(HO3リットル中11.44g)を、滴下漏斗を経由して攪拌しながら徐々に加えた。混合物を室温で攪拌した。反応の進行は、TLCにより監視した。反応完了後(約30分間)、1N HCl(82.6ml)を使用して反応混合物のpHを〜3(pH紙)に調節した。溶剤を真空中で除去し、水層をCHCl(3x500ml)で抽出した。有機層を一つに合わせ、食塩水(500ml)で洗浄し、無水MgSO上で除湿し、濾過し、溶剤を真空除去し、暗色の粘性オイルを得た。このオイルをシリカゲル(550g)のプラグに、溶離液として2.5%EtOAc/ヘプタン(v/v、5L)を使用して通した。
【0090】
工程(c) 機械的攪拌機、滴下漏斗、および内部温度プローブを取り付けた5リットルの三口丸底フラスコに、工程(b)で得たオイル(121.36g、0.77モル、1当量)、NaI(117.42g、0.78モル、1.02モル)、n−BuNI(28.4g、0.077モル、10モル%)およびMTBE(1213ml)を入れた。攪拌を開始した。これに、滴下漏斗を経由して4M HSO(348g)を攪拌しながら徐々に加えた。〜0.5時間後、4M HSO(174g)をさらに加えた。反応の完了をTLCにより監視した。反応完了後(約4.5時間)、反応混合物を4リットルの分液漏斗に移した。有機層を分離し、水層をMTBE(500ml)で抽出した。有機層を一つに合わせ、5%水性NaHCO(2x750ml)、飽和食塩水(750ml)で洗浄し、MgSO(300g)上で除湿し、溶剤を真空除去し、赤褐色の粘性オイルを得た。このオイルをシリカゲル(600g)のパッドに、溶離液として2.5%EtOAc/ヘプタン(v/v、6L)を使用して通し、粘性オイルを得たが、これを高真空下、RTで〜18時間さらに乾燥させた。
【0091】
工程(d) 冷却浴、機械的攪拌機、N入口および内部温度プローブを取り付けた1リットルの三口丸底フラスコに、工程(c)で得たオイル(35g、0.12モル、1当量)、無水トルエン(350ml)およびR−2−メチル−CBS−オキサゾボロリジン(Calley Chemicals、24.47ml、20モル%、1Mトルエン溶液)を入れた。混合物を、攪拌しながら、アセトン−ドライアイス浴中で−78℃(内部温度)に冷却し、カテコールボラン(Calley Chemicals、29.34g、0.25モル、2当量)の無水トルエン(260ml)溶液をシリンジポンプ輸送により8〜9時間かけて加えた。加え終わった後、反応フラスコを浴中に維持し、反応混合物をRTに一晩かけて徐々に温めた。TLC分析により、反応が完了したことが分かった。この混合物を≦10℃に冷却し(塩/氷浴)、メタノール(150ml)を徐々に加えた。この混合物を室温(〜20℃)に温め、4N NaOH溶液(165ml)を加えた。2相溶液を室温で〜45分間攪拌し、次いで分液漏斗に移した。有機層を分離し、水層をトルエン(100ml)で逆洗浄した。有機層を一つに合わせ、4N HCl(2x150ml)、飽和食塩水(250ml)で洗浄し、MgSO(100g)上で除湿し、濾過し、溶剤を真空除去し、粘性オイルを得たが、このオイルはRTで放置することにより、固化した。粗製物を、シリカゲルクロマトグラム(250g)により、5%EtOAc−ヘプタン(v/v)を使用して精製した。生成物は固体(30g)として得られ、これをヘプタン(60mL)を使用して室温でさらに粉末化し、灰色がかった白色の固体を得た。この固体を吸引濾過し、高真空下、室温で〜16時間乾燥させた。
【0092】
工程(e) 工程(d)の生成物の水酸基を、3,4−ジヒドロ−2H−ピランおよび標準的な技術を使用して保護した。
【0093】
シクロペンタノン(2)の合成
【化66】

【0094】
工程(a) オーバーヘッド機械的攪拌機、温度プローブ、および滴下漏斗を取り付けた22リットル三口丸底フラスコを窒素掃気し、2MアリルマグネシウムクロリドのTHF溶液(8リットル、16モル)を入れた。このフラスコを氷浴中で冷却し、内部温度を5℃に冷却した。2−フルアルデヒド(1.2kg、12.5モル)の無水THF溶液(2リットル)をグリニャール溶液に、内部温度を12℃未満に維持しながら、4.75時間かけて徐々に加えた。15分後のTLC分析は、反応が完了したことを示していた。飽和NHCl(4リットル)、水(2リットル)、および濃HCl(1.41リットル)を順次加えることにより、反応を停止させた。層を分離し、水層を酢酸エチル(3リットル)で抽出した。一つに合わせた有機層を食塩水(NaCl800gを水3リットルに溶解)で洗浄し、回転蒸発装置で濃縮し、付加生成物を暗色オイル(2.1kg)として得たが、これはさらに精製せずに使用した。H NMRスペクトルは構造に一致していた。
【0095】
工程(b) オーバーヘッド機械的攪拌機、温度プローブ、および加熱マントルを取り付けた22リットル三口丸底フラスコに、pH4.80の緩衝溶液を入れた。工程(a)の生成物(500g、2.9モル)を1,4−ジオキサン(1.5リットル)に入れた溶液を一度に加え、混合物を約95℃に5.5時間かけて加熱した。反応混合物をこの温度で約60時間攪拌し、その時点でTLC分析は、工程(a)の生成物がほとんど完全に消費されたことを示していた。反応混合物を50℃に冷却し、固体NaCl(6kg)を攪拌しながら加えた。得られた溶液を酢酸エチル(1x3リットルおよび1x2リットル)で抽出し、一つに合わせた有機相をMgSO上で除湿した。乾燥剤を濾別し、濾液を減圧下で濃縮した。残留オイルをトルエン(250ml)と共に蒸発させ、高真空下で乾燥させ、赤みがかった褐色の粘性オイル(456g)を得た。
【0096】
工程(c) オーバーヘッド機械的攪拌機、および窒素入口を取り付けた5リットル三口丸底フラスコに、上記のエノン(enone)混合物(456g)、トルエン(3.5リットル)、トリエチルアミン(367.3g、3.6モル)、および無水トリブロモアセトアルデヒド(92.65g、0.33モル)を入れた。得られた混合物を室温で21時間攪拌し、水(3リットル)で希釈した。相を分離し、水層を酢酸エチル(3x0.75リットル)で抽出した。一つに合わせた有機相を25%wt/v食塩水溶液(2リットル)で洗浄し、MgSO上で除湿した。乾燥剤を濾別し、濾液を減圧下で濃縮し、暗色の粘性オイル(415g)を得た。残留オイルをトルエン(250ml)と共に蒸発させ、高真空下で乾燥させ、赤みがかった褐色の粘性オイル(456g)を得た。このオイルを、シリカゲル(1kg)上、15:85酢酸エチル−ヘプタン(7リットル)、30:70酢酸エチル−ヘプタン(2リットル)、および50:50酢酸エチル−ヘプタン(5リットル)で溶離させるクロマトグラフィーにかけ、エノンをオイルとして得た(199g、収率50%)。
【0097】
工程(d) 工程(c)で製造したエノンを模擬移動床キラルクロマトグラフィー(SMB)により分割した。所望のR−鏡像異性体を>99%光学純度で得た。
【0098】
シクロペンテノン(2)を形成するために、工程(d)で形成されたR−鏡像異性体を、3,4−ジヒドロ−2H−ピランおよび標準的な技術を使用して保護した。
【0099】
例1 式(IX)の化合物から形成された銅酸塩試薬の1,4−付加
【化67】

【0100】
磁気攪拌棒、温度プローブ、およびゴム隔膜を取り付け、乾燥させた250ml三口丸底フラスコを窒素掃気した。このフラスコに、ヨウ化ビニル(1)(8.43g、22.65mmol)のtert−ブチルメチルエーテル(TBME、40ml)溶液を入れ、アセトン−ドライアイス浴中で冷却した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.517M、9.5ml、23.8mmol)を加え、混合物を−78℃で2時間攪拌した。
【0101】
磁気攪拌棒、温度プローブ、およびゴム隔膜を取り付け、乾燥させた1リットル三口丸底フラスコを窒素掃気し、固体のシアン化第一銅(2.12g、23.78mmol)を入れた。無水TBME(60ml)を加え、フラスコをアセトン−ドライアイス浴中で−78℃に冷却した。メチルリチウムのTHF−クメン溶液(1M、23.78ml、23.78mmol)を、攪拌している懸濁液に徐々に加えた。完全に加えた後、フラスコを氷浴中に入れ、中身を30分間攪拌し、透明な溶液を得た。銅酸塩溶液を−78℃に再冷却し、ビニルリチウム溶液を250mlフラスコからカニューラを通して加えた。得られた黄色溶液を−40℃に急速に温め、20分間攪拌し、−78℃に再冷却した。シクロペンテノン(2)(2.52g、11.34mmol)を無水TBME(30ml)に入れた溶液をカニューラにより加え、混合物を−78℃で30分間攪拌した。反応フラスコを冷却浴から取り出し、飽和NHCl(15ml)を注意深く加えることにより、反応を停止させた。層を分離し、有機層を1:9NHOH−NHCl(2x200ml)で洗浄する。一つに合わせた水性洗浄液をTBME(100ml)で逆抽出した。一つに合わせた有機層を飽和食塩水(100ml)で洗浄し、除湿し(NaSO)、濾過し、濃縮して淡黄色オイル(22.80g)を得た。このオイルを、シリカゲル(200g)上、1:9酢酸エチル−ヘプタン(1リットル)および1.5:8.5酢酸エチル−ヘプタン(3リットル)で溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋な生成物(3)を得た(4.15g、収率78.6%)。H NMRは構造と一致した。
【0102】
例2 立体選択的還元
【化68】

磁気攪拌棒、温度プローブ、および滴下漏斗を取り付け、乾燥させた250ml三口丸底フラスコを窒素掃気した。このフラスコに、L-SelectrideのTHF溶液(1M、16.25ml、16.25mmol)を入れ、アセトン−ドライアイス浴中で−78℃に冷却した。(3)(3.80g、8.13mmol)の無水THF(60ml)溶液を、滴下漏斗から35分かけて徐々に加え、混合物を−78℃で4.5時間攪拌した。TLC分析は、反応完了を示していた。冷却浴を取り外し、30%過酸化水素(2.2ml、19.4mmol)、続いて飽和NHCl(50ml)を加えることにより、反応を停止させた。酢酸エチル(200ml)を加え、層を分離した。水層を酢酸エチル(200ml)で抽出した。一つに合わせた有機層を10%重亜硫酸ナトリウム(50ml)で洗浄し、除湿し(NaSO)、濾過し、濃縮して粗製物(5.05g)を得た。この物質を、シリカゲル(75g)上、1:9酢酸エチル−ヘプタンおよび3:7酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋な生成物(4)を得た(3.25g、収率85.1%)。H NMRは構造と一致した。
【0103】
例3a 選択的二ヒドロキシル化
【化69】

【0104】
アルケン(4)(2.5g、5.3mmol)のTHF(20ml)溶液を−9℃に冷却し、N−メチルモルホリンオキシド一水和物(NMO、1.6g、11.7mmol)の水(4ml)溶液を加えた。反応温度を−7℃未満に維持しながら四酸化オスミウム(60mg、0.236mmol)の水(1.5ml)溶液を徐々に加えた。全部加えた後、反応混合物を−7〜−5℃で4時間攪拌した。固体の重亜硫酸ナトリウム(1.5g)を加えることにより、反応を停止し、混合物を5分間攪拌し、シーライトの床を通して濾過した。フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、一つに合わせた濾液を、飽和水性重炭酸ナトリウムおよび水で洗浄した。有機層を除湿し(NaSO)、濾過し、濃縮して粗製物を暗色オイルとして得た。このオイルを、シリカゲル(50g)上、1:99メタノール−ジクロロメタンおよび5:95メタノール−ジクロロメタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋なトリオール(7)を黄色のオイルとして得た(2.3g、収率86.8%)。H NMRは構造と一致した。
【0105】
例3b 選択的二ヒドロキシル化
【化70】

【0106】
アルケン(5)(11.37g、20.17mmol)のTHF(100ml)溶液を−9℃に冷却し、N−メチルモルホリンオキシド一水和物(NMO、6.84g、50.42mmol)の水(20ml)溶液を加えた。反応温度を−6.5℃未満に維持しながら四酸化オスミウム(256mg、1.010mmol)の水(6.42ml)溶液を徐々に加えた。全部加えた後、反応混合物を−10〜−7.8℃で4時間攪拌した。固体の重亜硫酸ナトリウム(6.84g)を加えることにより、反応を停止し、混合物を5分間攪拌し、シーライトの床を通して濾過した。フィルターケーキを酢酸エチル(200ml)で洗浄し、一つに合わせた濾液を、飽和水性重炭酸ナトリウムおよび水で洗浄した。有機層を除湿し(NaSO)、濾過し、濃縮して粗製物を暗色オイルとして得た。このオイルを、シリカゲル(140g)上、70:30酢酸エチル−ヘプタン、酢酸エチル、および2:98メタノール−酢酸エチルで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋なジオール(8)を得た(8.70g、収率72.1%)。H NMRは構造と一致した。
【0107】
例4a 還元
【化71】

【0108】
アルケン(7)(2.3g、4.6mmol)のエタノール(200ml)溶液および活性炭上5%パラジウム(水50〜60重量%を含む、300mg)を水素40psi下で4時間攪拌した。触媒(200mg)を新たに装填し、水素化を8時間続行した。H NMRは、二重結合が完全に還元されたことを示した。反応混合物をシーライトの床を通して濾過し、濾液を濃縮してトリオール(10)をオイルとして得た(2.1g、収率91.3%)。
【0109】
例4b 還元
【化72】

【0110】
アルケン(8)(9.32g、15.59mmol)の酢酸エチル(200ml)溶液および活性炭上5%パラジウム(水50〜60重量%を含む、1.0g)を水素45psi下で18時間攪拌した。新しい触媒(0.5g)を装填し、水素化を2日間続行した。再度新しい触媒(0.5g)を装填し、水素化を1日間続行した。H NMRは、二重結合が完全に還元されたことを示した。反応混合物を濾過し、濃縮乾固させ、残留物をエタノール(200ml)中に溶解させ、活性炭上5%パラジウム(0.5g、水素40psi)上で24時間水素化した。反応混合物をシーライトの床を通して濾過し、濾液を濃縮してジオール(11)を無色オイルとして得た(8.40g、収率89.8%)。
【0111】
例5a ジオール開裂
【化73】

【0112】
過ヨウ素酸ナトリウム(1.90g、8.14mmol)、シリカゲル(2.00g)および水(2ml)を、自由に流動する粉末が得られるまで攪拌した。この粉末を、トリオール(10)(2.10g、4.14mmol)のジクロロメタン(25ml)溶液に一度に加え、混合物を室温で2時間攪拌した。NaSO(5g)の短いパッドを通して固体を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。粗製物をシリカゲル(30g)上、20:80酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、生成物(13)をオイルとして得たが、これは保存中に徐々に固化した(1.65g、収率83.8%)。H NMRは構造と一致した。
【0113】
例5b ジオール開裂
【化74】

【0114】
過ヨウ素酸ナトリウム(5.00g、23.38mmol)、シリカゲル(5.00g)および水(5ml)を、自由に流動する粉末が得られるまで攪拌した。この粉末を、ジオール(11)(7.00g、11.69mmol)のジクロロメタン(50ml)溶液に一度に加え、混合物を室温で3時間攪拌した。NaSO(10g)の短いパッドを通して固体を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。粗製物をシリカゲル(55g)上、15:85酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、アルデヒドを得た(2.25g、収率33.9%)。H NMRは構造と一致した。
【0115】
例5c ジオール開裂
【化75】

【0116】
過ヨウ素酸ナトリウム(155.0g、724.6mmol)、シリカゲル(275g)および水(175ml)を、自由に流動する粉末が得られるまで攪拌した。この粉末を、粗製トリオール(7)(230g、369mmol)のジクロロメタン(1.5リットル)溶液に一度に加え、混合物を室温で4時間攪拌した。固体の無水硫酸ナトリウム(500g)を加え、混合物を10分間攪拌した。固体を真空濾過により集め、濾液をシリカゲル(750g)のプラグに通した。プラグをジクロロメタン(2リットル)および酢酸エチル(2.5リットル)で順次洗浄し、一つに合わせた濾液を濃縮乾固させた。残留物をトルエン(0.5リットル)に溶解させ、濃縮乾固させて粗製ラクトール(23)(180g)を得た。H NMRは構造と一致した。
【0117】
例6a ウィッチヒオレフィン化
【化76】

【0118】
磁気攪拌棒、温度プローブ、およびゴム隔膜を取り付け、乾燥させた250ml三口丸底フラスコを窒素掃気した。このフラスコに、固体4−カルボキシブチルホスホニウムブロミド(3.67g、8.27mmol)および無水THF(20ml)を入れ、氷−メタノール浴中で−12℃に冷却した。カリウムtert−ブトキシド(1.86g、16.54mmol)の無水THF(20ml)溶液を、内部温度を−9℃未満に維持しながら、シリンジにより加えた。得られたオレンジ−赤色の懸濁液を−9℃〜−12℃で1時間攪拌した。ラクトール(13)(1.60g、3.39mmol)の無水THF(20ml)溶液を、温度を−6℃未満に維持しながら、シリンジにより加えた。得られた懸濁液を低温で2時間攪拌し、水(50ml)を加えて反応停止させた。THFを減圧下で除去し、残留物にTBME(100ml)を加えた。層を分離し、有機層を6%水性塩化ナトリウム(60ml)で洗浄した。一つに合わせた水層を、5%水性クエン酸でpH4.0に酸性化し、酢酸エチル(2x100ml)で抽出した。一つに合わせた酢酸エチル抽出液を水(100ml)で洗浄し、除湿し(NaSO)、濾過し、無色のシロップ(1.90g)に濃縮し、これを、それ以上の精製を行わずに、次の工程に使用した。H NMRは、このシロップが酸(16)と未反応ウィッチヒ塩の混合物であることを示した。
【0119】
例6b ウィッチヒオレフィン化
【化77】

【0120】
磁気攪拌棒、温度プローブ、およびゴム隔膜を取り付け、乾燥させた250ml三口丸底フラスコを窒素掃気した。このフラスコに、固体4−カルボキシブチルホスホニウムブロミド(3.51g、7.93mmol)および無水THF(100ml)を入れ、氷−メタノール浴中で−10℃に冷却した。カリウムtert−ブトキシド(1.78g、15.85mmol)の無水THF(10ml)溶液を、シリンジにより加えた。得られたオレンジ−赤色の懸濁液を0℃で1時間攪拌し、−10℃に冷却し、アルデヒド(14)(2.25g、3.96mmol)の無水THF(15ml)溶液をシリンジにより加えた。得られた懸濁液を低温で2時間攪拌し、水(50ml)を加えて反応停止させた。THFを減圧下で除去し、混合物をTBME(2x70ml)で洗浄した。一つに合わせた有機層を水(50ml)で抽出した。一つに合わせた水層を、5%水性クエン酸でpH3.0に酸性化し、酢酸エチル(2x100ml)で抽出した。一つに合わせた酢酸エチル抽出液を除湿し(NaSO)、濾過し、濃縮して粗製物(17)(3.30g)を得たが、これを、それ以上の精製を行わずに、次の工程に使用した。
【0121】
例6c ウィッチヒオレフィン化
【化78】

【0122】
オーバーヘッド攪拌機、温度プローブ、およびゴム隔膜を取り付け、乾燥させた5リットル三口丸底フラスコを窒素掃気した。このフラスコに、固体4−カルボキシブチルホスホニウムブロミド(360.8g、814.4mmol)および無水THF(1.2リットル)を入れ、氷−塩浴中で−10℃に冷却した。カリウムtert−ブトキシド(182.4g、1628.5mmol)の無水THF(0.5リットル)溶液を、内部温度を0℃未満に維持しながら、カニューラにより加えた。得られたオレンジ−赤色の懸濁液を0℃未満で2時間攪拌した。ラクトール(23)(180g、369mmol)の無水THF(0.4ml)溶液を、温度を0℃未満に維持しながら、カニューラにより加えた。得られた懸濁液を低温で1時間攪拌し、水(0.6リットル)を注意深く加えて反応停止させた。溶剤を減圧下で除去し、残留物に水(1.4リットル)を加えた。40%水性クエン酸(300ml)を加えて水性混合物のpHを4〜4.5に調節し、酢酸エチル(1x1.5リットルおよび1x0.6リットル)で抽出した。一つに合わせた酢酸エチル抽出液を飽和食塩水(0.5リットル)で洗浄し、除湿し(NaSO)、濾過し、濾液を濃縮乾固させた。残留物をアセトン(1.0リットル)で粉末化し、濾過し、フィルターケーキをアセトン(2x0.6リットル)で洗浄した。濾液に含まれていた粗製物(26)は、それ以上の精製を行わずに、次の工程に使用した。
【0123】
例7a エステル化
【化79】

【0124】
例6aから得た組成オレフィン化生成物(1.84g)をアセトン(20ml)に溶解させ、この溶液を氷浴中で冷却した。この溶液を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、2.02g、19.86mmol)、および2−ヨードプロパン(3.38g、13.24mmol)で処理し、室温で窒素雰囲気下で16時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(100ml)と5%水性クエン酸(50ml)の間で分配した。層を分離し、有機層を飽和水性重炭酸ナトリウム(20ml)で洗浄し、除湿(NaSO)した。乾燥剤を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。残留物をシリカゲル(30g)上、15:85酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋なエステル(19)を得た(1.41g、ラクトール(13)からの収率69.2%)。H NMRは構造と一致した。
【0125】
例7b エステル化
【化80】

【0126】
例6bから得た組成オレフィン化生成物(3.30g)をアセトン(30ml)に溶解させ、この溶液を氷浴中で冷却した。この溶液を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、2.85g、18.72mmol)、および2−ヨードプロパン(4.77g、28.06mmol)で処理し、室温で窒素雰囲気下で64時間攪拌した。かさばった沈殿物が生じた。反応混合物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(170ml)と5%水性クエン酸(75ml)の間で分配した。層を分離し、有機層を水(75ml)、飽和水性重炭酸ナトリウム(75ml)で洗浄し、除湿(NaSO)した。乾燥剤を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。残留物をシリカゲル(30g)上、15:85酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋なエステル(20)を得た(2.18g、アルデヒド(14)からの収率80.7%)。H NMRは構造と一致した。
【0127】
例7c エステル化
【化81】

【0128】
例6cから得た酸(26)を含む一つに合わせた濾液を、オーバーヘッド攪拌機、温度プローブ、および滴下漏斗を取り付け、乾燥させた5リットル三口丸底フラスコ中に移した。フラスコの内容物を氷浴中で5℃に冷却し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、225.0g、1480.6mmol)と、温度を10℃に維持しながら混合した。ヨードメタン(315.1g、2221.2mmol)を15℃未満で徐々にに加え、混合物を室温で窒素雰囲気下で一晩攪拌した。ヨードメタン(105.0g、740.4mmol)をさらに加え、混合物を5時間攪拌した。沈殿した塩を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。残留物を酢酸エチル(2.5リットル)と10%水性クエン酸(0.6リットル)の間で分配した。層を分離し、水層を酢酸エチル(0.6リットル)で抽出した。一つに合わせた有機層を20%食塩水(0.6リットル)、飽和水性重炭酸ナトリウム(0.5リットル)で洗浄し、除湿(NaSO)した。乾燥剤を濾別し、濾液を濃縮乾固させた。残留物をシリカゲル(2kg)上、15:85酢酸エチル−ヘプタン、続いて25:75酢酸エチル−ヘプタンで溶離させるクロマトグラフィーにかけ、純粋なエステル(48)(86.8g)および僅かに汚染された生成物画分(58.5g、ラクトール(23)からの総収率69.3%)を得た。H NMRは構造と一致した。
【0129】
例8a 脱保護
【化82】

【0130】
エステル(19)(1.41g、2.35mmol)のメタノール(20ml)溶液に、ピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS、30mg、0.12mmol)を加え、この混合物を、52℃に維持してある油浴中で4時間加熱した。TLCは、出発材料のすべてが消費されたことを示した。反応混合物に固体重炭酸ナトリウム(50mg)を加え、溶剤を減圧下で除去した。残留物を、シリカゲル(30g)上、30:70酢酸エチル−ヘプタン(1リットル)、50:50酢酸エチル−ヘプタン(1リットル)、および65:35酢酸エチル−ヘプタン(1.5リットル)で溶離させるクロマトグラフィーにかけ、ラタノプロスト(21)を無色のオイルとして得た(910mg、収率90.0%)。H NMRは構造と一致した。
【0131】
例8b 脱保護
【化83】

【0132】
エステル(20)(2.15g、3.15mmol)のメタノール(40ml)溶液に、ピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS、10mg、0.04mmol)を加え、この混合物を、45℃に維持してある油浴中で6時間加熱した。TLCは、出発材料のすべてが消費されたことを示した。反応混合物に固体重炭酸ナトリウム(200mg)を加え、溶剤を減圧下で除去した。残留物を、酢酸エチル(150ml)と水との間で分配した。層を分離し、有機相を飽和重炭酸塩ナトリウム(25ml)、および水(25ml)で洗浄した。溶剤を除去し、残留物を、シリカゲル(40g)上、35:65酢酸エチル−ヘプタン(1リットル)、および50:50酢酸エチル−ヘプタン(1リットル)で溶離させるクロマトグラフィーにかけ、ラタノプロスト(21)を無色のオイルとして得た(1.14g、収率83.7%)。H NMRは構造と一致した。
【0133】
例8c 脱保護
【化84】

【0134】
エステル(48)(86.7g、152.6mmol)のメタノール(600ml)溶液に、ピリジニウムp−トルエンスルホネート(PPTS、1.0g、4.0mmol)を加え、この混合物を室温で一晩、次いで40℃で4時間攪拌した。TLCは、出発材料のすべてが消費されたことを示した。溶剤を減圧下で除去し、残留物を、酢酸エチル(1.0リットル)と飽和水性重炭酸塩ナトリウム(300ml)との間で分配した。層を分離し、水層を酢酸エチル(0.2リットル)で抽出した。一つに合わせた有機相を濃縮乾固させ、残留物をメタノール中に溶解させ、濃縮乾固させ、粗製エステル(49)(62.4g)をオイルとして得た。H NMRは構造と一致した。
【0135】
例9 アミド化
【化85】

【0136】
磁気攪拌棒を取り付けた2リットルの厚壁ガラス容器に、エステル(49)(85.2g、212.7mmol)のメタノール(0.4リットル)溶液および70%エチルアミン水溶液(0.4リットル)を入れた。この容器を密封し、90℃に維持した油浴中で45時間加熱および攪拌した。TLC分析は、エステル(49)の消費を示した。揮発分を減圧下で除去し、残留物を、酢酸エチル(1.5リットル)と飽和食塩水(0.7リットル)との間で分配した。層を分離し、水層を酢酸エチル(2x0.5リットル)で抽出した。一つに合わせた有機相を除湿(NaSO)し、濾過し、濃縮乾固させた。残留物を、シリカゲル(1kg)上、80:20酢酸エチル−ヘプタン(4リットル)、酢酸エチル(12リットル)、1:99メタノール−酢酸エチル(16リットル)、および2:99メタノール−酢酸エチル(16リットル)で溶離させるクロマトグラフィーにかけた。残留物をtert−ブチルメチルエーテルで粉末化し、ビマトプロスト(22)を白色固体として得た(47.2g)。Hおよび13C NMRは構造と一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VIIb)の化合物。
【化1】

(上記式中、
Aが(CHPhまたはCHOR'''であり、
Pが、ヒドロキシル保護基であり、
-----が二重結合または単結合を表す。)
【請求項2】
式(IVb)の化合物。
【化2】

(上記式中、
Aが(CHPhであり、
PがTHPであり、
-----が単結合である。)
【請求項3】
式(IX)[式中、-----が二重結合を表し、Xがハロゲンである。]の化合物を合成する方法であって、
a)式(XV)[ Aが(CHPhまたはCHOR'''である。]の酸塩化物をビス(トリアルキルシリルアセチレン)と反応させ、式(XIV)のアセチレンを形成し、
【化3】

b)式(XIV)のアセチレンを穏やかな塩基と反応させ、式(XIII)のアセチレンを形成し、
【化4】

c)式(XIII)のアセチレンをハロゲン化水素化し、式(XII)のハロゲン化ビニルを形成し、
【化5】

d)式(XII)のハロゲン化ビニル中でプロキラルケトンの立体選択的還元を行い、式(XI)のハロゲン化ビニルを形成し、
【化6】

e)式(XI)のハロゲン化ビニル中の水酸基を保護する、
【化7】

各工程を含んでなる、方法。

【公開番号】特開2011−201883(P2011−201883A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91348(P2011−91348)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【分割の表示】特願2006−544532(P2006−544532)の分割
【原出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】