説明

プロスタグランジン含有凍結乾燥品

本発明のシクロデキストリンを含んでいてもよいプロスタグランジンE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物からなる製剤であり、水分含量が約1.5重量%未満であり、さらにマルトースを含む凍結乾燥品は、PGE1の分解物としてPGA1だけでなく、分解生成物(I)および/または分解生成物(II)の生成も抑制された、より安定化された凍結乾燥品であり、医薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジン(PGE1)を含有する安定化された凍結乾燥品に関する。さらに詳しくは、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる製剤であって、水分含量が約1.5重量%未満である安定化された凍結乾燥品に関する。
【背景技術】
【0002】
PGにはPGE、PGF、PGA等の種類が存在し、それぞれが様々な作用を有する。例えば、PGEの1種であるPGE1は血管拡張作用、血小板凝集抑制作用を有し、慢性動脈閉塞症等の予防または/および治療に有効であることが知られている。
しかし、PGE1は熱等に対して不安定な物質であり、分解してPGA1になることが知られており、PGA1に分解することのない安定なPGE1含有製剤の検討が多くなされている。例えば、特開昭49−66816号公報にはPGEのシクロデキストリン包接化合物またはPGE類似化合物のシクロデキストリン包接化合物の水溶液に、ビタミンCまたはクエン酸を添加して凍結乾燥する方法、特開昭54−103844号公報にはPGまたはPG類似化合物のシクロデキストリン、クエン酸水溶液に少糖類を添加して凍結乾燥する方法、特開昭57−156460号公報にはPGまたはPG類似化合物、およびシクロデキストリン、および少糖類からなる安定化組成物、特開平11−240835号公報にはPGE1をクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液に溶解し、無菌ろ過して凍結乾燥したPGE1含有注射剤組成物がある。
【0003】
一方、本発明者らはPGE1の分解生成物について鋭意検討した結果、今まで知られていたPGA1の他に、PGE1のω鎖中の15位水酸基が脱離することによって生じる、下記に示す分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が生ずることを見出した。
【0004】
これらの分解生成物は、PGE1の分解生成物として知られていたPGA1とは異なる構造であり、今までまったく知られていなかった。従来のPGE1またはそのシクロデキストリン包接化合物の安定化方法では、これらの分解生成物(I)および(II)の生成に対して全く未検討であり、かつ未解決であった。例えば、特開昭57−156460号公報に記載の解決方法、具体的には、乳糖とPGE1からなる組成物は分解生成物(I)および(II)が生成する。
医薬品において、主活性物質が経時的に分解することによって分解生成物が増加することは好ましくない。特に、PGは種類により作用が異なるので、分解生成物の有する作用が副作用となる可能性があり好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる安定化された凍結乾燥品の提供である。つまりPGE1のPGA1への分解を抑制することはもちろん、さらに分解生成物(I)および/または分解生成物(II)への分解も抑制するという、今までにないより一層安定化されたシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる凍結乾燥品を提供することであって、かつできるだけ少ない添加物によって安定化された凍結乾燥品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、水分含量が約1.5重量%未満である凍結乾燥品は安定化されること、さらに驚いたことにマルトースを添加することによって分解生成物(I)および/または分解生成物(II)の生成が極めて抑制された、より一層安定化されたシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる凍結乾燥品となることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる製剤であって、水分含量が約1.5重量%未満である凍結乾燥品、
(2)さらにマルトースを含む前記(1)に記載の凍結乾燥品、
(3)薬物がPGE1のα−シクロデキストリン包接化合物である(1)記載の凍結乾燥品、
(4)マルトースがpH約4.7〜約6.3のマルトース水溶液として添加され製造された凍結乾燥品である前記(2)記載の凍結乾燥品、
(5)1重量部のPGE1に対して、マルトースが約50〜約10000重量部である前記(2)記載の凍結乾燥品、
(6)1重量部のPGE1に対して、マルトースが約500〜約10000重量部である前記(5)記載の凍結乾燥品、
(7)1重量部のPGE1に対して、マルトースが約2000〜約3000重量部である前記(6)に記載の凍結乾燥品、
(8)1重量部のPGE1に対して、マルトースが約50〜約500重量部である前記(5)に記載の凍結乾燥品、
(9)1重量部のPGE1に対して、マルトースが約100〜約300重量部である前記(8)に記載の凍結乾燥品、
(10)バイアルに充填した前記(1)に記載の凍結乾燥品、
(11)水分含量が約1.0重量%以下である前記(1)に記載の凍結乾燥品、
(12)1凍結乾燥品当たり、PGE1を約20μg、およびマルトースを約40〜約60mg含有し、水分含量が約0.05〜約1.0重量%である前記(2)に記載の凍結乾燥品、
(13)1凍結乾燥品当たり、PGE1を約500μg、およびマルトースを約50〜約150mg含有し、水分含量が約0.05〜約1.0重量%である前記(2)に記載の凍結乾燥品、
(14)約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されない品質である前記(10)、(12)または(13)に記載の凍結乾燥品、
(15)約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されないか、分解生成物(I)の生成率が約0.05%以下であり、分解生成物(II)の生成率が約0.15%以下の品質である前記(10)、(12)または(13)に記載の凍結乾燥品、
(16)約60℃で約1週間保存後に、実質的に形態変化しない品質である前記(10)、(12)または(13)に記載の凍結乾燥品、
(17)約60℃で約1ヶ月保存後にPGE1の残存率が、約98.5%以上の品質である前記(10)、(12)または(13)に記載の凍結乾燥品、
(18)シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含有する水溶液を(a)約−50〜−30℃で凍結する工程、(b)真空度約5〜20パスカルで、約−20〜20℃に昇温し、その温度で真空一次乾燥する工程、および(c)約25〜55℃に昇温し、その温度で二次乾燥する工程を含む前記(1)に記載の凍結乾燥品の製造方法、
(19)前記(18)に記載の製造方法によって得られる前記(1)に記載の凍結乾燥品、
(20)慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療剤である前記(1)に記載の凍結乾燥品、
(21)シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびマルトースを含有する水溶液を、水分含量が約1.5重量%未満になるよう凍結乾燥することを特徴とするPGE1分解抑制方法、
(22)シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびpHが約4.7〜約6.3のマルトースを含んでなるpHが約4.3〜約5.1の凍結乾燥用水溶液、
(23)前記(1)に記載の凍結乾燥品の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療方法、
(24)慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療剤を製造するための、前記(1)に記載の凍結乾燥品の使用、
(25)1凍結乾燥品当たり、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約20μg、およびマルトースを約50mg含むか、あるいはシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約500μg、およびマルトースを約100mg含んでなる製剤であって、水分含量が約0.1〜約0.8重量%である凍結乾燥品、
(26)約60℃で約1ヶ月保存後にPGE1の残存率が、約98.5%以上の品質である前記(25)に記載の凍結乾燥品、
(27)約60℃で約1週間保存後に、実質的に形態変化しない品質である前記(25)に記載の凍結乾燥品、
(28)約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されないか、または分解生成物(I)の生成率が約0.05%以下、分解生成物(II)の生成率が約0.15%以下の品質である前記(25)に記載の凍結乾燥品、および
(29)1凍結乾燥品当たり、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約20μg、およびマルトースを約50mg含むか、あるいはシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約500μg、およびマルトースを約100mg含んでなる製剤であって、水分含量が約0.1〜約0.8重量%であり、約60℃で約1週間保存後に実質的に形態変化しなく、PGE1の残存率が、約98.5%以上であり、かつ約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)


および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されないか、または分解生成物(I)の生成率が約0.05%以下、分解生成物(II)の生成率が約0.15%以下の品質である凍結乾燥品、
に関する。
【0008】
特開昭57−156460号公報にはPGまたはPG類似化合物、およびシクロデキストリン、および少糖類からなる安定化組成物が記載されている。しかし、PGE1とマルトースの具体的な組合せを示す記載はない。さらにPGE1が分解生成物(I)および/または分解生成物(II)に分解される旨の記載および示唆もない。また、該明細書には安定化組成物の水分含量についての記載はなく、適切な水分含量についての示唆もない。さらに、該明細書に記載されているPGE1と乳糖からなる凍結乾燥品は、分解生成物(I)および分解生成物(II)が生成した。
【0009】
本発明者らは、従来の方法では解決できないPGE1の分解生成物(I)および/または分解生成物(II)の生成を抑制し、より安定化された凍結乾燥品を提供することを、水分含量を約1.5重量%未満にすること、さらにマルトースを添加することよって初めて解決した。
医薬品において、その製剤化には主薬以外の種々添加剤が必要となる場合が多いが、副作用等を考慮してできるだけ添加剤は少ないことが好ましい。本発明の凍結乾燥品は、複数の添加剤を必要とせず、マルトースのみを添加剤として添加するだけでもよく、それでもって充分に安定な製剤が得られるから大変好ましい。
【0010】
本発明において、シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上の混合物が用いられる。特に好ましくはα−シクロデキストリンである。
本発明において、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物のいずれを用いても好ましい。具体的には、PGE1、シクロデキストリンを含むPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物が用いられる。好ましくはPGE1シクロデキストリン包接化合物が用いられ、PGE1のα−シクロデキストリン包接化合物が特に好ましい。
【0011】
本発明のPGE1シクロデキストリン包接化合物は、例えば、特公昭50−3362号公報、特公昭52−31404号公報に記載されている製造方法によって製造される。PGE1シクロデキストリン包接化合物を製造する際、1重量部のPGE1に対して、シクロデキストリンを約20〜約40重量部用いて製造することが好ましく、約28〜約37重量部がより好ましい。特に好ましくは、約30〜約35重量部である。例えばα−シクロデキストリンを使用する場合は、1重量部のPGE1に対して、約30.2〜約34.7重量部が好ましい。また、シクロデキストリンを含むPGE1は通常はシフロデキストリンとPGE1との混合物である。シクロデキストリンを含むPGE1の場合に使用するシクロデキストリンの好ましい量およびより好ましい量も同様である。
【0012】
本発明で用いるマルトースの種類は特に限定されない。結晶、非結晶、無水物および水和物のマルトースであってよい。さらに、市販のマルトースをそのまま本発明に使用してもよいし、さらに精製工程を経てから使用してもよい。また、pHが約4.7〜約6.3であるマルトースが好ましく、より好ましくは約5.0〜約6.0である。pHはマルトースを水に溶解したときの値である。また、その純度は約98.0%以上であることが好ましい。
本発明で用いるマルトースは、1重量部のPGE1に対して、約50〜約10000重量部を用いることが好ましく、約100〜約5000がより好ましい。例えば、1凍結乾燥品当たりのPGE1が低含量である場合、例えば約5μg〜約50μgの場合は、1重量部のPGE1に対して約500〜約10000重量部が好ましく、より好ましくは約1500〜約5000重量部であり、特に好ましくは約2000〜約3000である。1凍結乾燥品当たりのPGE1が高含量である場合、例えば約400〜約600μgの場合は、1重量部のPGE1に対して約50〜約500重量部が好ましく、より好ましくは約100〜約300重量部である。
【0013】
本発明において、好ましい凍結乾燥品は、1凍結乾燥品当たりPGE1を約20μg、およびマルトースを約40〜約60mg含有する凍結乾燥品、および1凍結乾燥品当たりPGE1を約500μg、およびマルトースを約50〜約150mg含有する凍結乾燥品である。より好ましくは、1凍結乾燥品当たりPGE1を約20μg、およびマルトースを約50mg含有する凍結乾燥品、および1凍結乾燥品当たりPGE1を約500μg、およびマルトースを約100mg含有する凍結乾燥品である。
本発明において、マルトースの添加方法は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物と一緒に水(例えば、注射用水)に溶解することで添加する方法か、あるいはシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を水(例えば、注射用水)に溶解した水溶液を凍結乾燥した後、その凍結乾燥品に添加する方法である。より好ましくは、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物と一緒に水(例えば、注射用水)に溶解することでマルトースを添加する方法である。
【0014】
本発明の凍結乾燥品の水分含量は約1.5重量%未満である。その中でも約1.0重量%以下であることが好ましい。詳しくは、約0.05〜約1.0重量%であることが好ましく、より好ましくは約0.1〜約0.8重量%である。またその水分含量は、凍結乾燥品の製造時はもちろん、保存期間を通してその値が維持されることが好ましい。本発明では、凍結乾燥品の製造時における水分含量が、上記値の範囲にあることがより好ましい。
本発明において、凍結乾燥品の水分含量は、カールフィッシャー法によって定量される。本発明において、カールフィッシャー法は通常用いられている方法で行われ、例えば、カールフィッシャー法水分測定装置を用いて行われる。
【0015】
本発明は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる製剤であって、水分含量が約1.5重量%未満である凍結乾燥品の製造方法、およびその製造方法によって製造された凍結乾燥品をも包含する。
【0016】
本発明の凍結乾燥品は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を水(例えば、注射用水)に溶解した水溶液を凍結乾燥することによって製造される。より詳しくは、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を水(例えば、注射用水)に溶解した水溶液は、マルトースを含んでいてもよく、その水溶液を凍結乾燥するか、あるいはシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を水(例えば、注射用水)に溶解した水溶液を凍結乾燥し、その後マルトースを添加することによって、本発明の凍結乾燥品は製造される。本発明の凍結乾燥品は、好ましくは、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびマルトースを水(例えば、注射用水)に溶解した水溶液を凍結乾燥することによって製造された凍結乾燥品である。例えば、注射用水にマルトースを溶解し、その溶液にシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を溶解後、さらに注射用水で濃度調製するか、または注射用水にシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を溶解し、その溶液に注射用水に溶解したマルトース溶液を加えた後、さらに注射用水で濃度調製して得られる水溶液が用いられる。好ましくは、注射用水にマルトースを溶解し、その溶液にシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を溶解後、さらに注射用水で濃度調製した水溶液が用いられる。さらに、調製された水溶液は無菌ろ過される。また、その調製された水溶液はpHが約4.3〜約5.1、より好ましくは約4.5〜約4.8であることが好ましい。
【0017】
本発明は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびpHが約4.7〜約6.3のマルトースを含んでなるpHが約4.3〜約5.1の凍結乾燥用水溶液も包含する。
本発明の凍結乾燥品は、本発明の凍結乾燥用水溶液を凍結乾燥することにより製造される。
本発明の凍結乾燥の工程は、(a)予備凍結乾燥工程、(b)真空一次乾燥工程および(c)二次乾燥工程を包含する。詳しくは(a)予備凍結乾燥工程は、約−50〜−30℃で凍結する工程であり、(b)真空一次乾燥工程は、真空度約5〜20パスカルで、約−20〜20℃に昇温し、その温度で真空一次乾燥する工程であり、(c)二次乾燥工程は、約25〜55℃に昇温し、その温度で二次乾燥する工程である。
【0018】
より詳しくは、(a)予備凍結乾燥工程は、約−50〜−30℃で凍結する工程であり、約2〜5時間で行われる。より好ましくは約−50〜−45℃で凍結する工程であり、約2.5〜4.5時間で行われる。(b)真空一次乾燥工程は予備凍結乾燥工程に引き続いて行われる工程であり、真空度約5〜20パスカルの条件下、約−50〜−30℃から約−20〜20℃に昇温し、その温度で真空一次乾燥する工程であり、約5〜20時間で行われる。より好ましくは真空度約5〜20パスカルの条件下、約−15〜15℃に昇温し、その温度で維持する工程であり、約6〜16時間で行われる。(c)二次乾燥工程は真空一次乾燥工程に引き続いて行われる工程であり、約−20〜20℃から約25〜55℃に昇温し、その温度で乾燥し、所望により引き続いてその温度より約5〜15℃低下させ、その温度で乾燥する工程であり、約7〜10時間で行われる。より好ましくは約35〜50℃に昇温し、その温度で乾燥し、所望により引き続いてその温度より約10〜15℃低下させ、その温度で乾燥する工程であり、約7.5〜9.5時間で行われる。上記の凍結乾燥によって得られる凍結乾燥品の水分含量は、通常約1.5重量%未満であるが、例えば、真空度や温度を調節したり、凍結乾燥時間をさらに延長して水分含量をより少なくさせてもよい。
【0019】
本発明の凍結乾燥品は、例えば、注射用容器に充填される。注射用容器としては、例えば、バイアルまたはアンプルが用いられる。それらは特に限定されず、例えば、ガラス製(例えば、硬質ガラス製)、シリコンコーティングしたガラス製、または内表面を二酸化ケイ素で処理したガラス製、環状ポリオレフィン製、ポリプロピレン製等であってよい。好ましくは、バイアルであり、その容量が3〜5mLの硬質ガラス製のバイアルが好ましい。マルトース、およびシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含有する水溶液を注射容器に充填する場合、その容量は0.5〜1.5mL、好ましくは0.5〜1.0mLの水溶液が充填される。本発明においては、そのような水溶液を容器に充填した状態で凍結乾燥に付してもよい。
【0020】
本発明は、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびマルトースを含有する水溶液を、水分含量が約1.5重量%未満になるよう凍結乾燥することを特徴とするPGE1分解抑制方法をも包含する。シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物に、さらにマルトースを添加した水溶液を、水分含量が約1.5重量%未満になるように、前記の凍結乾燥を行うことによって、PGE1のPGA1への分解が抑制される上、分解生成物(I)および/または分解生成物(II)への分解も極めて少なくすることができる。
【0021】
本発明の凍結乾燥品は、PGE1のPGA1への分解が抑制され、分解生成物(I)および分解生成物(II)への分解が極めて少ない、より安定化された注射用の凍結乾燥品である。本発明における安定とは、化学的および物理的な安定性を意味する。化学的安定性には主薬であるPGE1の残存量が指標となる。物理的安定性には経時的な外観の形態変化が指標となる。物理的安定性が劣ると、凍結乾燥された内容物が収縮、融解、潮解および/または溶解等の形態変化を起こす。
【0022】
本発明の凍結乾燥品は、40℃、湿度75%で6ヶ月間保存する加速試験において、PGE1の残存率が約99.0%以上であり、実質的にケーキ状である形態を保持し、外観の形態が変化しない品質であることが好ましい。形態変化とは、ケーキ状である凍結乾燥品の収縮、融解、潮解および/または溶解を意味する。また、60℃で1ヶ月間保存する苛酷試験において、PGE1の残存率が約98.5%以上であることが好ましく、60℃で1週間保存後に実質的にケーキ状である形態を保持し、外観の形態が変化しない品質であることが好ましい。形態変化は前記と同じ意味を表わす。また60℃で約1ヶ月保存後に、実質的にケーキ状である形態を保持し、外観の形態が変化しない品質であることがより好ましい。これらの加速試験および苛酷試験から考え、室温で少なくとも3年間保存する長期保存試験におけるPGE1の残存率は約98.5%以上であって、実質的にケーキ状である形態を保持し、外観性状が変化しない品質であることが好ましく、より好ましくは残存率が約99.0%以上であって、実質的にケーキ状である形態を保持し、外観の形態が変化しない品質であることである。
【0023】
一方、本発明の凍結乾燥品は、40℃、湿度75%で6ヶ月間保存する加速試験においてPGE1の分解物の生成率は約1.0%以下であることが好ましい。特に好ましくは、PGA1への分解率が約1.0%以下であり、分解生成物(I)および/または分解生成物(II)が実質的に生成しないことである。60℃で1ヶ月間保存する苛酷試験においては、PGE1の分解物の生成率は約1.5%以下であることが好ましい。特に好ましくは約1.0%以下であり、中でもPGA1への分解率が約0.8%以下であり、分解生成物(I)および/または分解生成物(II)が実質的に生成しないか、あるいは分解生成物(I)への分解率が約0.05%以下であり、分解生成物(II)への分解率が約0.15%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の凍結乾燥品は医薬として有用である。例えば、慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療剤として有用である。より詳しくは、慢性動脈閉塞症、例えば、バージャー病または閉塞性動脈硬化症における四肢潰瘍ならびに安静時疼痛、末梢血行障害に伴う自覚症状ならびに末梢循環、神経機能および/または運動機能障害、血行再建術後の血流、動脈管依存性先天性心疾患、脊柱管狭窄症(頸部、胸部または腰部)ならびにそれに伴う自覚症状(例えば、麻痺、知覚鈍麻、疼痛、しびれ症状)、筋力低下、間歇跛行または歩行能力低下の予防および/または治療剤として有用である。また、高血圧症または虚血性心疾患を合併する場合等の外科手術時の低血圧維持や、外科手術時の異常高血圧の救急処置にも有効である。本発明の凍結乾燥品は、年齢、体重、疾患、その症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、相応しい溶解液(例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、種々輸液)に溶解後、1日1時間から24時間の範囲で動脈内または静脈内に持続的投与される。
【発明の効果】
【0025】
シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物およびマルトースを含有し、水分含量が約1.5重量%未満である本発明の凍結乾燥品は、PGE1のPGA1、分解生成物(I)および/または分解生成物(II)への分解が抑制された従来品よりもより安定なPGE1凍結乾燥品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
注射用水(800mL)にマルトース(83.3g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(1145mg:PGE1として33.3mg)を加え、注射用水で全量(1000mL)とした。溶液を無菌ろ過後、0.6mLずつバイアルに充填した。1500本のバイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約20パスカルの真空度で、徐々に昇温して10℃で7時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.8重量%である凍結乾燥品を製造した。
【実施例2】
【0028】
実施例1と同様にして得た1500本のバイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約15パスカルの真空度で、徐々に昇温して5℃で7時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.4重量%である凍結乾燥品を製造した。
【実施例3】
【0029】
実施例1と同様にして得た1500本のバイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、徐々に昇温して5℃で7時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.3重量%である凍結乾燥品を製造した。
【実施例4】
【0030】
注射用水(6L)にマルトース(625g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(8.59g:PGE1として250mg)を加え、注射用水で全量(7.5L)とした。溶液を無菌ろ過後、0.6mLずつバイアルに充填した。12000本のバイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、徐々に昇温して5℃で7時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.1重量%である凍結乾燥品を製造した。
【実施例5】
【0031】
注射用水(39L)にマルトース(6500g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(1083g:PGE1として32.5g)を加え、注射用水で全量(65L)とした。溶液を無菌ろ過後、1mLずつバイアルに充填した。60000本のバイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、徐々に昇温して−15℃で25時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.3重量%である凍結乾燥品を製造した。
【0032】
比較例1
注射用水(800mL)にPGE1シクロデキストリン包接化合物(1333mg)を溶解し、注射用水で全量(1000mL)とした。溶液を無菌ろ過後、0.5mLずつバイアルに充填した。1500本のバイアルを7時間かけて−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、5時間かけて昇温後、30℃で6時間乾燥して凍結乾燥品を製造した。
【0033】
比較例2
注射用水(800mL)に注射用ラクトース(100g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(1333mg)を加え、注射用水で全量(1000mL)とした。溶液を無菌ろ過後、0.5mLずつアンプルに充填した。アンプルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、徐々に昇温して5℃で5.5時間乾燥した。その後、45℃で最終乾燥して、水分含量0.8重量%である凍結乾燥品を製造した。
【0034】
比較例3
注射用水(400mL)にマルトース(41.7g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(667mg)を加え、注射用水で全量(500mL)とした。溶液を無菌ろ過後、0.6mLずつバイアルに充填した。バイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約5パスカルの真空度で、徐々に昇温して−10℃で3.5時間乾燥した。その後、30℃で最終乾燥して、水分含量2.4重量%である凍結乾燥品を製造した。
【0035】
比較例4
注射用水(400mL)にマルトース(41.7g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(667mg)を加え、注射用水で全量(500mL)とした。溶液を無菌ろ過後、0.6mLずつバイアルに充填した。バイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約20パスカルの真空度で、徐々に昇温して10℃で3.5時間乾燥した。その後、30℃で最終乾燥して、水分含量1.6重量%である凍結乾燥品を製造した。
【0036】
比較例5
注射用水(30L)に注射用ラクトース(6000g)を溶解後、PGE1シクロデキストリン包接化合物(1000g;PGE1として30g)を加え、注射用水で全量(60L)とした。溶液を無菌ろ過後、1mLずつバイアルに充填した。バイアルを−40℃以下に冷却して溶液を凍結させ、次いで約10パスカルの真空度で、徐々に昇温して0℃で12時間乾燥した。その後、30℃で最終乾燥して、水分含量0.5〜0.7重量%である凍結乾燥品を製造した。
【0037】
実施例6:加速試験条件下での安定性試験
実施例1〜4および比較例2〜4で製造した凍結乾燥品を、温度40℃、湿度75%で6ヶ月間保存した時、および比較例1で製造した凍結乾燥品を温度50℃で1ヶ月間保存した時の、PGE1残存量、PGA1生成量、分解生成物(I)および(II)の生成量を測定し、かつその外観を観察した。結果を表1に示す。なお、NDは非検出(non−detect)を意味する。
【0038】
なお、PGE1残存量、PGA1生成量、分解生成物(I)および(II)の生成量は以下の方法によって測定した。
(A)PGE1残存量、PGA1生成量の測定
実施例および比較例の凍結乾燥品について各々10個を対象とした。凍結乾燥品が入っているバイアル1個につき水(0.1mL)を加えて溶解し、10個分の溶解液を集めた。バイアル1個につき,水/アセトニトリル混液(0.13mL;11:2(v/v)を加え、容器内部を洗い、10個分の洗液を先に集めた溶解液に加えた。同様の洗浄操作をもう一度繰り返した。集めた溶解液および洗浄液に内標準溶液(0.4mL)を加え、試料溶液とした。別にPGE1標準品(10mg)をアセトニトリルに溶解して20mLとした。PGA1標準品(1mg)をアセトニトリルに溶解して10mLとした。PGE1標準品の溶液(10mL)に、PGA1標準品の溶液(5mL)と、内標準溶液(10mL)を加えた。この溶液は常時−15℃以下で保存し、用時室温にもどした後必要量をとり、1当量のアセトニトリルと2当量の精製水を加えて希釈して標準溶液とした。試料溶液(40μL)および標準溶液(40μL)について、下記条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、内標準物質のピーク面積に対するPGE1およびPGA1のピーク面積の比QtPGE1、QtPGA1、QsPGE1およびQsPGA1を求めた。
【0039】
PGE1量(mg)=PGE1標準品量(mg)×QtPGE1/QsPGE1×1/500
PGA1量(mg)=PGA1標準品量(mg)×QtPGA1/QsPGA1×1/500
内標準溶液=テストステロン(内部標準物質1g)のアセトニトリル溶液(2000mL)
なお、PGE1残存率とPGA1生成率の計算は以下の通りである。
PGE1残存率(%)=PGE1量(mg)/0.02(mg)×100
PGA1生成率(%)=PGA1量(mg)/0.02(mg)×100
【0040】
[操作条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:205nm)
カラム:内径約4.6mm、長さ約150mmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填(SUPERIOREX ODS 資生堂No.41503)。カラムは、標準溶液(40μL)につき、上記の条件で操作するとき、PGE1、内標準物質、PGA1の順に溶出し、それぞれのピークが完全に分離するものを用いた。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:0.02mol/Lリン酸二水素カリウム溶液にリン酸を加えてpH4.0に調整した液/アセトニトリルの混液(13:8v/v)
流量:PGE1の保持時間が約6分となるように調整(1.1mL/min)
【0041】
(B)分解生成物(I)および(II)生成量の測定
上記(A)で調製した試料溶液(40μL)につき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、内標準物質のピーク面積に対する分解生成物(I)および(II)のピーク面積の比を百分率で評価した。
[操作条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:235nm)
流量:分解生成物(I)および(II)の保持時間が各々約24分および30分となるように調整した(1.4mL/min)。
その他の条件は(A)と同様に操作した。
【0042】


【0043】
本発明の凍結乾燥品は、保存後のPGE1残存率が非常に高く、PGA1生成率を低く抑え、かつ分解生成物(I)および(II)は検出されなかった。また、外観も白色ケーキ状であり、収縮、融解、潮解および/または溶解等の外観の形態変化は見られなかった。これに対し、マルトースを含有しない比較例1、およびマルトースの代わりにラクトースを含有する比較例2の凍結乾燥品は、分解生成物(I)および(II)が検出された。さらに、比較例1の凍結乾燥品の形態はリング状であり、PGA1の生成率が高く、PGE1の残存率は低かった。また、マルトースを含有し、水分含量が1.5重量%を越える比較例3および比較例4の凍結乾燥品は、分解生成物(I)および(II)は検出されなかったが、PGA1の生成率が大変高く、PGE1の残存率が大変低かった。
【0044】
実施例7:苛酷試験条件下での安定性試験
実施例1〜5および比較例2〜5で製造した凍結乾燥品を、温度60℃で1ヶ月間保存した時、および比較例1で製造した凍結乾燥品を温度50℃で1ヶ月間保存した時のPGE1残存量、PGA1生成量、分解生成物(I)および(II)の生成量を測定し、かつその外観を観察した。PGE1残存量および分解生成物の生成量は、実施例6と同様の方法にて測定した。なお、実施例5および比較例5におけるPGE1残存率、PGA1生成率の計算方法は、
PGE1残存率(%)=PGE1量(mg)/0.5(mg)×100
PGA1残存率(%)=PGA1量(mg)/0.5(mg)×100
である。
結果を表2および表3に示す。
【0045】


【0046】
本発明の凍結乾燥品は、保存後のPGE1残存率が非常に高く、分解生成物(I)および(II)は検出されないか、もしくは極少量の生成でしかなかった。また、外観も白色ケーキ状であり、収縮、融解、潮解および/または溶解等の外観の形態変化は見られなかった。これに対し、マルトースを含有しない比較例1、およびマルトースの代わりにラクトースを含有する比較例2および比較例5の凍結乾燥品は多くの分解生成物(I)および(II)が生成していた。マルトースを含有し、水分含量が1.5重量%を越える比較例3および比較例4の凍結乾燥品は、1週間保存後に白色ケーキが融解し、無色の飴に変化したため、PGE1残存率および分解生成物の測定はできなかった。
【0047】
これらの実験結果より、本発明の水分含量が約1.5%未満であり、マルトースを含有する凍結乾燥品は、PGA1の生成を低く抑え、かつ分解生成物(I)および/または分解生成物(II)への分解を生じないか、あるいは極力分解を抑え、かつ融解、潮解および/または溶解等の外観の形態変化が起こらない、安定性に大変優れた凍結乾燥品であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、今までにないより安定化されたシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含有してなる、医薬として有用な凍結乾燥品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含んでなる製剤であって、水分含量が約1.5重量%未満である凍結乾燥品。
【請求項2】
さらにマルトースを含む請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項3】
薬物がPGE1のα−シクロデキストリン包接化合物である請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項4】
マルトースがpH約4.7〜約6.3のマルトース水溶液として添加され製造された凍結乾燥品である請求の範囲第2項に記載の凍結乾燥品。
【請求項5】
1重量部のPGE1に対して、マルトースが約50〜約10000重量部である請求の範囲第2項に記載の凍結乾燥品。
【請求項6】
1重量部のPGE1に対して、マルトースが約500〜約10000重量部である請求の範囲第5項に記載の凍結乾燥品。
【請求項7】
1重量部のPGE1に対して、マルトースが約2000〜約3000重量部である請求の範囲第6項に記載の凍結乾燥品。
【請求項8】
1重量部のPGE1に対して、マルトースが約50〜約500重量部である請求の範囲第5項に記載の凍結乾燥品。
【請求項9】
1重量部のPGE1に対して、マルトースが約100〜約300重量部である請求の範囲第8項に記載の凍結乾燥品。
【請求項10】
バイアルに充填した請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項11】
水分含量が約1.0重量%以下である請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項12】
1凍結乾燥品当たり、PGE1を約20μg、およびマルトースを約40〜約60mg含有し、水分含量が約0.05〜約1.0重量%である請求の範囲第2項に記載の凍結乾燥品。
【請求項13】
1凍結乾燥品当たり、PGE1を約500μg、およびマルトースを約50〜約150mg含有し、水分含量が約0.05〜約1.0重量%である請求の範囲第2項に記載の凍結乾燥品。
【請求項14】
約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されない品質である請求の範囲第10項、第12項または第13項に記載の凍結乾燥品。
【請求項15】
約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されないか、分解生成物(I)の生成率が約0.05%以下であり、分解生成物(II)の生成率が約0.15%以下の品質である請求の範囲第10項、第12項または第13項に記載の凍結乾燥品。
【請求項16】
約60℃で約1週間保存後に、実質的に形態変化しない品質である請求の範囲第10項、第12項または第13項に記載の凍結乾燥品。
【請求項17】
約60℃で約1ヶ月保存後にPGE1の残存率が、約98.5%以上の品質である請求の範囲第10項、第12項または第13項に記載の凍結乾燥品。
【請求項18】
シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物を含有する水溶液を(a)約−50〜約−30℃で凍結する工程、(b)真空度約5〜約20パスカルで、約−20〜20℃に昇温し、その温度で真空一次乾燥する工程、および(c)約25〜55℃に昇温し、その温度で二次乾燥する工程を含む請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品の製造方法。
【請求項19】
請求の範囲第18項に記載の製造方法によって得られる請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項20】
慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療剤である請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品。
【請求項21】
シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびマルトースを含有する水溶液を、水分含量が約1.5重量%未満になるよう凍結乾燥することを特徴とするPGE1分解抑制方法。
【請求項22】
シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物、およびpHが約4.7〜約6.3のマルトースを含んでなるpHが約4.3〜約5.1の凍結乾燥用水溶液。
【請求項23】
請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療方法。
【請求項24】
慢性動脈閉塞症、末梢血行障害、動脈管依存性先天性心疾患および/または脊柱管狭窄症の予防および/または治療剤を製造するための、請求の範囲第1項に記載の凍結乾燥品の使用。
【請求項25】
1凍結乾燥品当たり、シクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約20μg、およびマルトースを約50mg含むか、あるいはシクロデキストリンを含んでいてもよいPGE1、またはPGE1シクロデキストリン包接化合物をPGE1として約500μg、およびマルトースを約100mg含んでなる製剤であって、水分含量が約0.1〜約0.8重量%である凍結乾燥品。
【請求項26】
約60℃で約1ヶ月保存後にPGE1の残存率が、約98.5%以上の品質である請求の範囲第25項に記載の凍結乾燥品。
【請求項27】
約60℃で約1週間保存後に、実質的に形態変化しない品質である請求の範囲第25項に記載の凍結乾燥品。
【請求項28】
約60℃で約1ヶ月保存後に、分解生成物(I)

および/または分解生成物(II)

が実質的に検出されないか、または分解生成物(I)の生成率が約0.05%以下、分解生成物(II)の生成率が約0.15%以下の品質である請求の範囲第25項に記載の凍結乾燥品。

【国際公開番号】WO2005/046699
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515457(P2005−515457)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016848
【国際出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【特許番号】特許第3829874号(P3829874)
【特許公報発行日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】