説明

プロスタグランジン産生抑制剤

【課題】プロスタグランジン産生抑制作用を有し、抗炎症又はニキビ等の皮膚炎症性症状の改善のために有用な素材の提供。
【解決手段】エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とするプロスタグランジンE2産生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジン産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は本来、生体の合目的的な防御反応である。例えば、生体に病原体や毒素が侵入すると、侵入部位で局所的に炎症反応が生じ、その部位で血管透過性の亢進や、白血球の浸出が起こり、結果として病原体の増殖を抑制し、全身への毒素の拡散を予防する。一方、炎症反応は、血管拡張、血管透過性亢進、発痛、発熱、発赤、腫脹等の不快な状態をもたらすことがあり、また過剰な炎症反応は、生体の自己組織の損傷や自己免疫疾患を引き起こす。
【0003】
皮膚における炎症性の症状としては、赤ら顔、ニキビ、アトピー性皮膚炎等が知られている。これらの症状は、従来子供や若者の間で多く見られていたが、近年では、より上の世代の患者も増えている。また近年の美容への関心の高まりにより、これらの症状については、美容的に好ましくないものとして治療への要求が高い。
【0004】
プロスタグランジン(PGs)は炎症性メディエーターの1つとして知られている。非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)の作用機序に、PGsの産生抑制作用があることも報告されている。PGsは、他の種々の炎症性メディエーターと協働することによって炎症反応を制御している。外傷や病原体の感染により組織が損傷を受けると、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わり、そこにシクロオキシゲナーゼ(COX)が作用してPGsが生成される。PGsは、その他の因子とともに、血管拡張、血管透過性亢進、痛覚感作、白血球遊走を引き起こし、発痛、発熱、発赤、腫れ等の炎症症状をもたらす。PGsの産生を制御することにより、炎症反応を制御し、赤ら顔、ニキビ、アトピー性皮膚炎等の皮膚における炎症性の症状を改善することができる。
【0005】
エゾムラサキツツジ(Rhododendron dauricum)は、メラニン生成抑制作用を有し、美白化粧料に含有することができることが開示されている(特許文献1)。一方、この植物がPGs産生に関与することや、抗炎症効果を発揮することはこれまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−206819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プロスタグランジン産生抑制作用を有し、抗炎症又はニキビ等の皮膚炎症性症状の改善のために有用な素材の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、抗炎症又はニキビ等の皮膚炎症性症状の改善のために使用できる素材について検討したところ、エゾムラサキツツジがプロスタグランジンE2産生を抑制する作用を有し、抗炎症やニキビ等の皮膚炎症性症状の改善のために有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とするプロスタグランジンE2産生抑制剤。
(2)抽出物がエタノール水溶液抽出物である(1)記載のプロスタグランジンE2産生抑制剤。
(3)エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とする抗炎症剤。
(4)抽出物がエタノール水溶液抽出物である(3)記載の抗炎症剤。
(5)エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とするニキビ改善剤。
(6)抽出物がエタノール水溶液抽出物である(5)記載のニキビ改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プロスタグランジンE2の産生を抑制することができるプロスタグランジン産生抑制剤が提供される。当該プロスタグランジン産生抑制剤は、抗炎症作用を有し、ニキビ等の皮膚炎症性症状を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】植物エキスによるPGE2産生抑制。
【発明を実施するための形態】
【0012】
プロスタグランジンE2(PGE2)は、体内の中枢から末梢にわたって存在する、体内で最も多いプロスタグランジンである。PGE2は種々の生理活性を有する。PGE2とPGI2の産生を介して、ブラジキニンの発痛作用や血管透過性亢進作用や、ブラジキニンやヒスタミンによる炎症性滲出が増強されることが以前から知られている。またPGE2は発熱の最終メディエーターとしても知られている(日薬理誌, 117:248−254, 2001;日薬理誌, 117:255−261, 2001;日薬理誌, 120:373−378, 2002)。
従って、プロスタグランジンE2の産生を抑制することによって、発熱を抑制することとともに他の炎症性メディエーター(ブラジキニンやヒスタミン等)や炎症性サイトカインの作用を抑えることで炎症反応を抑制することを介して、抗炎症効果が達成される。
【0013】
ニキビは、ざ瘡(ざそう)、アクネ(acne)とも称され、ホルモン分泌、毛包管角化異常、皮脂分泌亢進、機械刺激や化学刺激、細菌等の様々な要因によって発症する、脂腺性毛包に生じる炎症性の皮膚疾患である。ニキビは、炎症の進行とともに悪化し、皮膚組織を傷害する(化粧品辞典、日本化粧品技術者会(編)、丸善株式会社、平成15年12月15日発行、第629-631頁)。ニキビ治療の手段の1つとして、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の適用が推奨されている(尋常性ざ瘡治療ガイドライン[日本皮膚科学会ガイドライン]、日皮会誌 118(10):1893-1923, 2008)。
【0014】
本明細書において、「エゾムラサキツツジ」とは、ツツジ科ツツジ属のRhododendron dauricumを指す。
上記に挙げた植物の抽出物は、特に限定されない限り、当該植物の任意の部位、例えば全草、葉、茎、芽、花、蕾、木質部、樹皮、地衣体、根、根茎、仮球茎、球茎、塊茎、種子、果実、菌核若しくは樹脂等、又はそれらの組み合わせからの抽出物であればよいが、好ましくは葉である。上記に挙げた部位は、そのまま抽出工程に付されてもよく、又は粉砕、切断若しくは乾燥された後に抽出工程に付されてもよい。
【0015】
上記抽出物としては、市販されているものを利用してもよく、又は常法により得られる各種溶剤抽出物、又はその希釈液、その濃縮液、その乾燥末、ペースト若しくはその活性炭処理したものであってもよい。一例として、本発明における抽出物は、上記植物を室温(例えば、1〜30℃)若しくは加温(室温〜溶媒沸点)下にて抽出するか、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。
【0016】
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤;ならびにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類及びその水溶液が挙げられ、アルコール類としてはエタノールが好ましい。より好ましい溶剤は、水及びエタノール水溶液である。
【0017】
アルコール類と水との配合割合(容量比)としては、0.001〜100:99.999〜0が好ましく、5〜95:95〜5がより好ましく、20〜80:80〜20がさらに好ましく、30〜70:70〜30がさらにより好ましく、40〜60:60〜40がなお好ましい。エタノール水溶液の場合、エタノール類濃度が40〜60容量%であることが好ましい。
溶剤の使用量としては、植物(乾燥質量換算)1gに対して1〜100mLが好ましい。抽出条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されないが、抽出時間としては、1分間〜2ヶ月間が好ましく、10分間〜5週間がより好ましく、抽出温度は、0℃〜溶媒沸点が好ましく、5〜70℃がより好ましい。通常、低温なら長時間、高温なら短時間の抽出を行う。
抽出物を得る抽出手段は、具体的には、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等の手段を用いることができる。
抽出条件の例として、15〜40℃で1時間〜5週間、約70℃で5時間、等が挙げられる。
また、抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出が望ましい。この固液抽出の好適な条件の一例としては、10〜100℃(好ましくは20〜70℃)下、100〜5000rpmで30〜300分間の攪拌が挙げられる。
抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。
【0018】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処置行為を含まない概念である。
【0019】
本明細書において、「改善」とは、疾患、症状又は状態の好転、疾患、症状又は状態の悪化の防止又は遅延、あるいは疾患、症状又は状態の進行の逆転、防止又は遅延をいう。
【0020】
後記実施例に示すように、エゾムラサキツツジ又はその抽出物は、細胞のPGE2産生を抑制する作用を有する。従って、上記植物又はその抽出物は、PGE2産生抑制剤として有用である。また、上記植物又はその抽出物は、当該PGE2産生抑制作用を介して、抗炎症作用を発揮することができ、皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善に有用である。
【0021】
すなわち、上記植物又はその抽出物は、PGE2産生抑制のために使用することができる。あるいは、上記植物又はその抽出物は、抗炎症のために使用することができ、また当該抗炎症効果に基づいて、皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善のため、好ましくはニキビの改善のために使用することができる。
当該植物又はその抽出物は、いずれか1種類が単独で使用されてもよく、あるいは任意の2種類以上が組み合わせて使用されてもよい。当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する組織、器官、細胞における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。
【0022】
従って、一態様として、本発明は、エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分として含有するPGE2産生抑制剤を提供する。
別の態様として、本発明は、エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分として含有する抗炎症剤を提供する。
また別の態様として、本発明は、エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分として含有する皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善剤を提供する。好ましくは、上記皮膚における炎症性症状の改善剤は、ニキビ改善剤である。
一態様として、上記剤は、本質的に上記植物又はその抽出物のうちの少なくとも1から構成される。
【0023】
上記植物又はその抽出物は、PGE2産生抑制のため、抗炎症のため、又は皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善のための組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等の製造のために使用することができる。当該組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等もまた、本発明の範囲内である。
【0024】
上記組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等は、ヒト又は非ヒト動物用として製造され、又は使用され得る。上記植物若しくはその抽出物は、当該組成物、医薬、医薬部外品、化粧料等に配合され、PGE2産生抑制のため、抗炎症のため、又は皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善のための有効成分であり得る。
【0025】
上記医薬又は医薬部外品は、上記植物若しくはその抽出物を有効成分として含有する。当該医薬又は医薬部外品は、任意の投与形態で投与され得る。投与は経口でも非経口でもよい。経口投与のための剤型としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、ならびにエリキシロール、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態が挙げられ、非経口投与のための剤型としては、注射、輸液、局所、外用剤、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス、貼布剤等が挙げられる。
当該医薬又は医薬部外品は、好ましくは非経口形態であり得、より好ましくは皮膚外用剤の形態であり得る。
【0026】
上記医薬又は医薬部外品は、上記植物若しくはその抽出物を単独若しくは複数で含有していてもよく、又は薬学的に許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、滑沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、当該医薬や医薬部外品は、上記植物又はその抽出物のPGE2産生抑制作用が失われない限り、他の有効成分や薬理成分を含有していてもよい。
【0027】
上記医薬又は医薬部外品は、上記植物若しくはその抽出物から、あるいは必要に応じて上記担体及び/又は他の有効成分や薬理成分を組みあわせて、常法により製造することができる。当該医薬又は医薬部外品における上記植物若しくはその抽出物の含有量は、例えば皮膚外用剤とする場合、上記植物又は抽出物の乾燥質量換算で、0.01〜100質量%とするのが好ましく、0.05〜70質量%とするのがより好ましく、0.1〜20質量%とするのがさらに好ましく、0.5〜10質量%とするのがさらにより好ましい。
【0028】
上記化粧料は、上記植物若しくはその抽出物を有効成分として含有する。当該化粧料は、上記植物若しくはその抽出物を単独若しくは複数で含有していてもよく、又は化粧料として許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、滑沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、当該化粧料は、上記植物又はその抽出物のPGE2産生抑制作用が失われない限り、他の有効成分や化粧成分、例えば、保湿剤、美白剤、紫外線保護剤、細胞賦活剤、洗浄剤、角質溶解剤、メークアップ成分(例えば、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、チーク、口紅、アイメーク、アイブロウ、マスカラ、その他)等を含有していてもよい。化粧料とする場合の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧料に使用され得る任意の形態が挙げられる。好ましくは、上記化粧料は、ニキビ用化粧料、又はほてり、赤み、痒み若しくはアレルギーを抑える抗炎症化粧料であり得る。より好ましくは、上記化粧料はニキビ用化粧料である。
【0029】
上記化粧料は、上記植物若しくはその抽出物から、あるいは必要に応じて上記担体及び/又は他の有効成分や化粧成分を組みあわせて、常法により製造することができる。当該化粧料における上記植物若しくはその抽出物の含有量は、上記植物又はその抽出物の乾燥質量換算で、0.01〜100質量%とするのが好ましく、0.05〜70質量%とするのがより好ましく、0.1〜20質量%とするのがさらに好ましく、0.5〜10質量%とするのがさらにより好ましい。
【0030】
また本発明は、細胞のPGE2産生を抑制する方法を提供する。当該方法は、PGE2産生能を有し且つPGE2産生を抑制させたい細胞に、エゾムラサキツツジ又はその抽出物を添加する工程を含む。
本発明においてPGE2産生を抑制する「細胞」は、天然又は遺伝子工学的に改変されたPGE2産生能又はPGE2発現能を有する細胞であれば特に限定されない。好ましくは、細胞としては、皮膚構成細胞が挙げられ、より好ましくは表皮細胞若しくは真皮線維芽細胞が挙げられる。
あるいは、当該「細胞」は、上記で挙げた細胞の細胞片または細胞分画物であってもよく、あるいは上記で挙げた細胞を含む組織又は上記で挙げた細胞に由来する培養物であってもよい。細胞が細胞培養物の場合、好ましくは、当該細胞は、上記植物又はそれらの抽出物の存在下で培養される。
添加される上記植物又はその抽出物の濃度は、細胞が細胞培養物の場合、培養物中での最終濃度として、上記植物又はその抽出物の乾燥質量換算で、0.00001〜5%(w/v)とするのが好ましく、0.0001〜2%(w/v)とするのがより好ましく、0.001〜1%(w/v)とするのがなお好ましい。
【0031】
また本発明において、エゾムラサキツツジ又はその抽出物は、PGE2産生抑制のため、抗炎症のため、又は皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などを改善するために、それらを必要とする対象に有効量で投与され得る。
一態様において、当該投与は、健康増進又は美容目的により非治療的に行われる。
好ましくは、当該投与は皮膚への局所投与である。
投与の対象としては、炎症反応の低減を必要とする動物、及び皮膚における炎症性症状、例えば、ニキビ、ほてり、痒み、赤み、赤ら顔、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性皮膚炎などの改善を必要とする動物が挙げられる。好ましくは、投与の対象としては、ニキビに罹患している動物が挙げられる。動物は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0032】
好ましい投与量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得る。例えば、ヒトの皮膚に外用投与する場合、投与量は、上記植物又は抽出物の乾燥質量換算で、成人(60kg)1人当たり、0.001〜1000mg/日とすることが好ましく、0.01〜100mg/日がより好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0034】
製造例1 エゾムラサキツツジ抽出物の調製
エゾムラサキツツジの葉(新和物産)40gに50%エタノール水溶液400mLを加え、常温で43日間浸漬した。これをろ過し、エゾムラサキツツジ抽出液を得た。抽出液の濃縮固形分は6.68gであった。固形分濃度は2.36%(w/v)であった。50%エタノールで希釈し、固形分濃度を1.0%(w/v)として試験に用いた。
【0035】
実施例1 植物のプロスタグランジンE2産生抑制作用
ヒト真皮線維芽細胞(Fibrocell、倉敷紡績株式会社より購入)は37℃、5%CO2存在下で培養した。培養液は、DMEM培地(インビトロジェン株式会社)を用いた。細胞を、24ウエルプレートに1×105cells/ウエル(N=2)となるように播き、DMEM培地(インビトロジェン株式会社)で24時間培養し、その後、培地に試験物質として製造例1で調製した抽出物(最終濃度0.1%v/v;エキス分として0.001%w/v%)、又は陰性対照として50%エタノール(0.1%v/v)を培地に添加した。30分間後、サイトカイン(IL-1α及びTNFα、終濃度各2.5ng/ml)を培地に添加し、さらに24時間培養した。参照のため、サイトカイン非添加群を調製した。培地を回収し、遠心により浮遊した細胞を除去した後、残りの培地中のPGE2の定量を行った。PGE2の定量は、Prostaglandin E2 Parameter Assay Kit(R&D SYSTEMS社)を用いたELISAにより定量した。
定量の結果を表1に示す。サイトカイン添加陰性対照群の産生量に対するパーセントで表した。エゾムラサキツツジの抽出物により、サイトカイン添加後の細胞のPGE2産生が抑制された。
【0036】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とするプロスタグランジンE2産生抑制剤。
【請求項2】
抽出物がエタノール水溶液抽出物である請求項1記載のプロスタグランジンE2産生抑制剤。
【請求項3】
エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とする抗炎症剤。
【請求項4】
抽出物がエタノール水溶液抽出物である請求項3記載の抗炎症剤。
【請求項5】
エゾムラサキツツジ又はその抽出物を有効成分とするニキビ改善剤。
【請求項6】
抽出物がエタノール水溶液抽出物である請求項5記載のニキビ改善剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144462(P2012−144462A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3051(P2011−3051)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】