説明

プロスタグランジン誘導体およびその誘導体を有効成分として含有する薬剤

【課題】 骨量低下疾患(原発性骨粗鬆症、二次性骨粗鬆症、癌骨転移、高カルシウム血症、ページェット病、骨欠損、骨壊死の骨疾患、骨の手術後の骨形成、骨移植代替療法)等の予防剤および/または治療剤の提供。
【解決手段】 前記予防剤および/または治療剤の有効成分として、特定の新規なプロスタグランジン誘導体、その非毒性塩またはそのシクロデキストリン包接化合物が極めて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(1)一般式(I)
【化1】

(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。)で示されるプロスタグランジン誘導体、その非毒性塩またはそのシクロデキストリン包接化合物、
(2)それらの製造方法、
(3)それらを有効成分として含有する薬剤、
(4)それらを有効成分として含有する持続性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンE1(PGE1と略記する。)およびプロスタグランジンE2(PGE2と略記する。)は、アラキドン酸カスケードの中の代謝産物として知られており、それらが、様々な生理作用を有していることから、様々な疾患への適用の可能性が考えられる。例えば、PGE1およびPGE2は骨形成促進作用を有していることから、骨量低下疾患、例えば、
1)原発性骨粗鬆症(例えば、加齢に伴う原発性骨粗鬆症、閉経に伴う原発性骨粗鬆症、卵巣摘出術に伴う原発性骨粗鬆症等)、
2)二次性骨粗鬆症(例えば、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、甲状腺機能亢進性骨粗鬆症、固定誘発性骨粗鬆症、ヘパリン誘発性骨粗鬆症、免疫抑制誘発性骨粗鬆症、腎不全による骨粗鬆症、炎症性骨粗鬆症、クッシング症候群に伴う骨粗鬆症、リューマチ性骨粗鬆症等)、
3)癌骨転移、高カルシウム血症、ページェット病、骨欠損(歯槽骨欠損、下顎骨欠損、小児期突発性骨欠損等)、骨壊死等の骨疾患の予防および/または治療に有用であるばかりでなく、骨の手術後の骨形成(例えば、骨折後の骨形成、骨移植後の骨形成、人工関節術後の骨形成、脊椎固定術後の骨形成、その他骨再建術後の骨形成等)の促進・治癒促進剤、また骨移植代替療法として有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−206349号明細書
【特許文献2】特開平9−110828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PGE1およびPGE2は様々な生理作用を有するために、経口投与や静脈内投与等の全身投与を行った際には、血圧低下や心拍数増加などの循環器系への影響や下痢等の作用が、副作用となる可能性が考えられる。そのため、安全に投与できる用量には限界があるという大きな問題点があった。
【0005】
一方、PGE1およびPGE2は代謝が非常に早いことが知られており、生理作用を持続させるためには、常にPGE1およびPGE2を生体内へ送り込む必要がある。このことから、投与後生体内の疾患部位でPGE1およびPGE2に変換され、しかもその速度が適度に遅く持続的に作用する化合物の創製が望まれていた。
このようなことから、安全性を確保しながら、PGE1およびPGE2を投与することが可能で、かつ持続性に優れた化合物を見出すことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、PGE1およびPGE2を局所に投与することができれば、全身投与における副作用のない治療剤(特に、骨量低下疾患の治療剤)が創製可能であると考えた。また、局所投与においても、持続製剤化が可能な化合物を見出すことができれば、全身投与における副作用がなく、投与回数の少ない治療剤(特に、骨量低下疾患の治療剤)が創製可能であると考えた。
【0007】
そこで、本発明者らは、上記した目的を解決すべく検討を重ねた。その結果、PGE1およびPGE2の1位のカルボン酸を変換した化合物、すなわち一般式(I)で示される化合物が目的を達成することを見出し、本発明を完成した。
また、本発明化合物をマイクロスフェア製剤化し、持続製剤化することにより、骨疾患への治療効果が顕著になり、かつ全身投与における副作用(例えば、心拍数や血圧低下等)のないことも見出し、本発明を完成した。
一般式(I)で示される化合物は、全く知られていない新規な化合物である。
【0008】
特開昭59-206349号明細書には、一般式(X)
【化2】

(式中、R1Xはアルキル基、R2Xは水素原子または低級アルキル基、XXは式
【化3】

で表される基を示す。)で示される化合物が血圧降下作用、血小板凝集抑制作用などを有し、血圧降下剤、血栓治療剤などとして用いられ、特に脂肪乳剤されたものが好ましい旨が記載されている。
【0009】
また、特開平9-110828号明細書には、一般式(Y)
【化4】

(式中、RY
(i)−CH2CH2−OCO−R1Yまたは
(ii)−CH2CH2−OCO−CH2−O−R2Yを表し、
1YおよびR2Yは各々独立して、C10〜20アルキル基を表す。)
で示される化合物が血流増加作用などを有し、末梢循環器障害、褥瘡、皮膚潰瘍疾患の治療剤および血行再建術後の血流維持などとして用いられ、特にリポソーム製剤されたものが好ましい旨記載されている。
【0010】
一般式(X)で示される化合物は、PGE1中のカルボキシル基とXXが表すエステル結合(−COO−または−OCO−)の間にメチレン鎖(−CH2−)またはアルキル基で置換されたメチレン鎖
【化5】

が存在する。一方、本発明の一般式(I)相当する部分では、Z2がエステル結合(−COO−または−OCO−)を表す場合は、Z1は必ず単結合以外を表す点で異なる。また、Z1が単結合を表す場合は、Z2がエステル結合(−COO−または−OCO−)以外を表す点で異なる。また、一般式(X)で示される化合物は脂肪乳剤化し、血圧降下剤、血栓治療剤として用いられている。一方、本発明の一般式(I)で示される化合物は、マイクロスフェア製剤化し、骨量低下疾患の治療剤に用いており、この点においても異なっている。
【0011】
さらに、一般式(Y)で示される化合物は、PGE1中の−COORY基中の−CH2CH2−OCO−基の先にR1Yまたは−CH2−O−R2Y基が存在し、R1YまたはR2Yは、各々独立してC10〜20アルキル基を表す。一方、本発明の一般式(I)で示される化合物の相当部分では、Z2が−OCO−基を表す場合は、Z3はC1〜9アルキル基またはOR9によって置換されたC1〜9アルキル基を表し、R9はC1〜9アルキル基を表す点で異なる。また、一般式(Y)で示される化合物は、リポソーム製剤化し、血圧降下剤、血栓治療剤として用いられている。一方、本発明の一般式(I)で示される化合物は、マイクロスフェア製剤化し、骨量低下疾患の治療剤に用いており、この点においても異なっている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
i) 一般式(I)
【化6】

[式中、Z1
(1)単結合、
(2)C1〜4アルキレン基、
(3)C2〜4アルケニレン基、または
(4)C2〜4アルキニレン基を表し、
2は、
(1)−COO−、
(2)−OCO−、
(3)−CONR1−、
(4)−NR2CO−、
(5)−SO2−、
(6)−SO2NR3−、
(7)−NR4SO2−、
(8)−NR5CONR6−、
(9)−NR7COO−、
(10)−OCONR8−、または
(11)−OCOO−を表し、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子またはC1〜9アルキル基を表し、
3は、
(1)C1〜9アルキル基、
(2)C2〜9アルケニル基、
(3)C2〜9アルキニル基、
(4)Cyc1、または
(5)OR9、SR10、NR1112またはCyc1によって置換されたC1〜9アルキル基を表すか、
1とZ3基が結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員の単環飽和ヘテロ環を表してもよく、上記ヘテロ環はさらに酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される1個のヘテロ原子を含んでもよく、また該ヘテロ環は置換基によって置換されていてもよく、
9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、
(1)水素原子、
(2)C1〜9アルキル基、
(3)Cyc1、または
(4)Cyc1によって置換されたC1〜4アルキル基を表し、
Cyc1は、一部または全部が飽和されていてもよいC3〜15の単環、二環または三環式炭素環アリールまたは酸素原子、窒素原子または硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、一部または全部が飽和されていてもよい3〜15員の単環、二環または三環式ヘテロ環アリールを表し、また該炭素環およびヘテロ環は置換基によって置換されていてもよく、
【化7】

は、一重結合または二重結合を表す。
ただし、Z1が単結合のとき、Z2は−COO−および−OCO−を表さない。]
で示されるプロスタグランジン誘導体、その非毒性塩またはそのシクロデキストリン包接化合物、
ii)それらの製造方法、
iii)それらを有効成分として含有する薬剤、または
iv)それらを有効成分として含有する持続性製剤に関する。
【0013】
本明細書中、C1〜4アルキレンとは、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基およびそれらの異性体である。
本明細書中、C2〜4アルケニレン基とは、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン基およびそれらの異性体である。
本明細書中、C2〜4アルキニレン基とは、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン基およびそれらの異性体である。
本明細書中、C1〜9アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル基およびそれらの異性体である。
【0014】
本明細書中、C2〜9アルケニル基とは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル基およびそれらの異性体である。
本明細書中、C2〜9アルキニル基とは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル基およびそれらの異性体である。
【0015】
本明細書中、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から選択される1個のヘテロ原子を含んでもよい5〜7員の単環飽和ヘテロ環とは、例えば、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、パーヒドロピリミジン、パーヒドロピリダジン、パーヒドロアゼピン、パーヒドロジアゼピン、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、パーヒドロオキサゼピン、パーヒドロチアゼピン、モルホリン、チオモルホリン環等が挙げられる。
【0016】
本明細書中、一部または全部が飽和されていてもよいC3〜15の単環、二環または三環式炭素環アリールとは、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリドデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、ベンゼン、インデン、ナフタレン、インダン、テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[3,3,0]オクタン、ビシクロ[4,3,0]ノナン、ビシクロ[4,4,0]デカン、スピロ[4,4]ノナン、スピロ[4,5]デカン、スピロ[5,5]ウンデカン、フルオレン、アントラセン、9,10−ジヒドロアントラセン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.3.1]−2−ヘプテン、アダマンタン、ノルアダマンタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アセナフセン等が挙げられる。
【0017】
本明細書中、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、一部または全部が飽和されていてもよい3〜15員の単環、二環または三環式ヘテロ環アリールのうち、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、3〜15員の単環、二環または三環式ヘテロ環アリールとしては、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チアイン(チオピラン)、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、チアジアゼピン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、ベンゾオキセピン、ベンゾオキサゼピン、ベンゾオキサジアゼピン、ベンゾチエピン、ベンゾチアゼピン、ベンゾチアジアゼピン、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、アクリジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン環等が挙げられる。
【0018】
また、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、一部または全部飽和された3〜15員の単環、二環または三環式ヘテロ環アリールとしては、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチアイン(ジヒドロチオピラン)、テトラヒドロチアイン(テトラヒドロチオピラン)、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、テトラヒドロオキサジアジン、テトラヒドロチアジアジン、テトラヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロカルバゾール、テトラヒドロカルバゾール、パーヒドロカルバゾール、ジヒドロアクリジン、テトラヒドロアクリジン、パーヒドロアクリジン、ジヒドロジベンゾフラン、ジヒドロジベンゾチオフェン、テトラヒドロジベンゾフラン、テトラヒドロジベンゾチオフェン、パーヒドロジベンゾフラン、パーヒドロジベンゾチオフェン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ベンゾジオキサラン、ベンゾジオキサン、クロマン、ベンゾジチオラン、ベンゾジチアン、8−アザ−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン環等が挙げられる。
【0019】
本明細書中、炭素環またはヘテロ環の置換基としては、C1〜4アルキル基、C1〜4アルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ニトロ基、ニトリル基等が挙げられる。
本明細書中、C1〜4アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基およびそれらの異性体である。
本明細書中、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子である。
【0020】
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R、S体、α、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0021】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【化8】

は紙面の向こう側(すなわちα−配置)に結合していることを表し、
【化9】

は紙面の手前側(すなわちβ−配置)に結合していることを表し、
【化10】

はα−配置、β−配置またはそれらの混合物であることを表し、
【化11】

は、α−配置とβ−配置の混合物であることを表す。
【0022】
一般式(I)で示される化合物は、公知の方法で非毒性の塩に変換される。
非毒性の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、酸付加塩等が挙げられる。
塩は、毒性のない、水溶性のものが好ましい。適当な塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩、薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩が挙げられる。
【0023】
酸付加塩は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられる。
一般式(I)で示される化合物およびそれらの塩は、溶媒和物に変換することもできる。
【0024】
溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)のような溶媒和物が挙げられる。
一般式(I)で示される本発明化合物は、α−、β−あるいはγ−シクロデキストリン、あるいはこれらの混合物を用いて、特公昭50-3362号、同52-31404号または同61-52146号明細書記載の方法を用いることによりシクロデキストリン包接化合物に変換することができる。シクロデキストリン包接化合物に変換することにより、安定性が増大し、また水溶性が大きくなるため、薬剤として使用する際好都合である。
【0025】
本発明の化合物を表す一般式(I)中、Z1として好ましくは、単結合またはC1〜4アルキレン基であり、特に好ましくは、単結合、メチレン基またはエチレン基である。
2として好ましくは、−OCO−、−CONR1−、−NR2CO−または−NR4SO2−基である。
1、R2、R4として好ましくは、水素原子、C1〜9アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、C4〜9アルキル基であり、特に好ましくは、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基である。
【0026】
3として好ましくは、C1〜9アルキル基、Cyc1またはOR9によって置換されたC1〜9アルキル基であり、より好ましくは、C4〜9アルキル基、一部または全部が飽和されていてもよいC3〜15の単環、二環または三環式炭素環アリールまたはOR9によって置換されたC3〜9アルキル基であり、特に好ましくは、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチル−1−エチルプロピル、3−フェニルプロピル、3−メトキシプロピル、4−フェニルブチル、4−メトキシブチル基である。
【0027】
一般式(I)で示される化合物のうち、好ましい化合物としては、
一般式(I-A-1)
【化12】

(式中、Z3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-A-2)
【化13】

(式中、Z3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-B-1)
【化14】

(式中、R1またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-B-2)
【化15】

(式中、R1またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-B-3)
【化16】

(式中、R1またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-B-4)
【化17】

(式中、R1またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-C-1)
【化18】

(式中、R2またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-C-2)
【化19】

(式中、R2またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-C-3)
【化20】

(式中、R2またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-C-4)
【化21】

(式中、R2またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-D-1)
【化22】

(式中、R4またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-D-2)
【化23】

(式中、R4またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-D-3)
【化24】

(式中、R4またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物、
一般式(I-D-4)
【化25】

(式中、R4またはZ3は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
本発明の具体的な化合物としては、表1〜表14で示される化合物、実施例の化合物およびそれらの非毒性塩が挙げられる。





































【0029】
【表1】










【0030】
【表2】










【0031】
【表3】










【0032】
【表4】










【0033】
【表5】










【0034】
【表6】










【0035】
【表7】










【0036】
【表8】










【0037】
【表9】










【0038】
【表10】










【0039】
【表11】










【0040】
【表12】










【0041】
【表13】










【0042】
【表14】










【0043】
[本発明化合物の製造方法]
本発明化合物のうち、一般式(I)で示される化合物は、以下の方法または実施例に記載した方法で製造することができる。
一般式(I)で示される本発明化合物は、一般式(II)
【化26】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、一般式(III)
【化27】

(式中、Z3-1はZ3と同じ意味を表すが、Z3によって表される基に含まれる水酸基またはアミノ基は保護が必要な場合には保護されているものとする。Qは水酸基またはハロゲン原子を表し、他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物をエステル化反応に付し、必要に応じて保護基の脱保護反応に付すことにより、製造することができる。
【0044】
一般式(III)において、Qが水酸基を表す場合のエステル化反応は公知であり、例えば、
(1)酸ハライドを用いる方法、
(2)混合酸無水物を用いる方法、
(3)縮合剤を用いる方法等が挙げられる。
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)酸ハライドを用いる方法は、例えば、カルボン酸を有機溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中または無溶媒で、酸ハライド化剤(オキザリルクロライド、チオニルクロライド等)と−20℃〜還流温度で反応させ、得られた酸ハライドを三級アミン(ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等)の存在下、アルコールと不活性有機溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、0〜40℃で反応させることにより行なわれる。また、有機溶媒(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)中、アルカリ水溶液(重曹水または水酸化ナトリウム溶液等)を用いて、酸ハライドと0〜40℃の温度で反応させることにより行なうこともできる。
【0045】
(2)混合酸無水物を用いる方法は、例えば、カルボン酸を有機溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中または無溶媒で、三級アミン(ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等)の存在下、酸ハライド(ピバロイルクロライド、トシルクロライド、メシルクロライド等)、または酸誘導体(クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル等)と、0〜40℃で反応させ、得られた混合酸無水物を有機溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中、アルコールと0〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0046】
(3)縮合剤を用いる方法は、例えば、カルボン酸とアルコールを、有機溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)中またはそれらの混合溶媒中、または無溶媒で、三級アミン(ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等)の存在下または非存在下、縮合剤(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨウ素、メチル 3−メチル−2−フルオロピリジニウム トシレート、メタンスルホニルオキシベンゾトリアゾール等)を用い、1−ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt)を用いるか用いないで、0〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0047】
これら(1)、(2)および(3)の反応は、いずれも不活性ガス(アルゴン、窒素等)雰囲気下、無水条件で行なうことが望ましい。
一般式(III)において、Qがハロゲン原子を表す場合のエステル化反応は、例えば、有機溶媒(ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド等)中、塩基(炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)の存在下、0〜150℃で反応させることにより行うことができる。
【0048】
保護基の脱保護反応は以下の方法によって行うことができる。
水酸基またはアミノ基の保護基の脱保護反応は、よく知られており、例えば、
(1)アルカリ加水分解、
(2)酸性条件下における脱保護反応、
(3)加水素分解による脱保護反応、
(4)シリル基の脱保護反応等が挙げられる。
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応は、例えば、有機溶媒(メタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはこれらの混合溶媒等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0〜40℃の温度で行なわれる。
【0049】
(2)酸条件下での脱保護反応は、例えば、有機溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)中または有機溶媒の非存在下またはその水溶液中、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等)、または無機酸(塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(臭化水素/酢酸等)中、0〜100℃の温度で行なわれる。
【0050】
(3)加水素分解による脱保護反応は、例えば、溶媒(エーテル系(テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等)、アルコール系(メタノール、エタノール等)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン等)、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、アミド系(ジメチルホルムアミド等)、水、酢酸エチル、酢酸またはそれらの2以上の混合溶媒等)中、触媒(パラジウム−炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル等)の存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下またはギ酸アンモニウム存在下、0〜200℃の温度で行なわれる。
【0051】
(4)シリル基の脱保護反応は、例えば、水と混和しうる有機溶媒(テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを用いて、0〜40℃の温度で行なわれる。
また、水酸基の保護基としては、例えばメトキシメチル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、アセチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基等が挙げられる。
【0052】
アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等が挙げられる。
水酸基またはアミノ基の保護基としては、上記した以外にも容易にかつ選択的に脱離できる基であれば特に限定されない。例えば、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis 3rd edition, Wiley, New York, 1999に記載されたものが用いられる。
【0053】
当業者には容易に理解できることではあるが、これらの脱保護反応を使い分けることにより、目的とする本発明化合物を容易に製造することができる。
一般式(I)で示される本発明化合物は、一般式(IV)
【化28】

(式中、THPはテトラヒドロピラン−2−イル基を表し、他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物と、一般式(III)
【化29】

(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物をエステル化反応に付し、酸化反応に付し、さらに脱保護反応に付すことによっても製造することができる。
【0054】
このエステル化反応は、前記した方法により行われる。
この酸化反応は公知であり、例えば
(1)スワン酸化(Swern oxidation)を用いる方法、
(2)デス−マーチン試薬(Dess-Martin Reagent)を用いる方法,
(3)テンポ(TEMPO)試薬を用いる方法
(4)三酸化イオウ・ピリジン錯体を用いる方法
等が挙げられる。
【0055】
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)スワン酸化を用いる方法は、例えば、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン等)中、オキザリルクロライドとジメチルスルホキシドを−78℃で反応させ、得られた溶液にアルコール化合物を反応させ、さらに三級アミン(トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペリジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等)と−78〜20℃で反応させることにより行なわれる。
【0056】
(2)デス−マーチン試薬を用いる方法は、例えば、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、t−ブチルアルコール等)中、デス−マーチン試薬(1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンゾヨードキソール−3−(1H)−オン)の存在下、塩基(ピリジン等)の存在下または非存在下、0〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0057】
(3)TEMPO試薬を用いる方法は、例えば、有機溶媒(クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、水等)中またはそれらの混合溶媒中、テンポ試薬(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ,フリーラジカル)および再酸化剤(過酸化水素水、次亜塩素酸ナトリウム、3−クロロ過安息香酸、ヨードベンゼンジアセテート、ポタシウムパーオキシモノスルフェート(オキソン;商品名)等)を用いて、四級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド等)の存在下または非存在下、無機塩(臭化ナトリウム、臭化カリウム等)の存在下または非存在下、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム等)の存在下または非存在下、−20〜60℃で反応させることにより行なわれる。
【0058】
(4)三酸化イオウ・ピリジン錯体を用いる方法は、例えば、有機溶媒(酢酸エチル、ジメチルスルホキシド等)中またはそれらの混合溶媒中、三級アミン(トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等)存在下、三酸化イオウ・ピリジン錯体を用いて、−20〜60℃で反応させることにより行なわれる。
【0059】
酸化反応としては、上記した以外にも容易にかつ選択的にアルコールをケトンへ酸化できるものであれば特に限定されない。例えば、ジョーンズ酸化、PCCによる酸化または「Comprehensive Organic Transformations」(Richard C. Larock, VCH Publishers, Inc., (1989) page 604-614)に記載されたものが用いられる。
【0060】
テトラヒドロピラン−2−イル基の脱保護反応は公知であり、前記した酸条件下での脱保護反応により行われる。
一般式(II)、(III)および(IV)で示される化合物はそれ自体公知であるか、あるいは公知の方法により容易に製造することができる。
【0061】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。精製は各反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【0062】
[医薬品への適用]
本発明者らは、PGE1およびPGE2を局所に投与することができれば、全身投与における副作用のない治療剤(特に、骨量低下疾患の治療剤)が創製可能であると考えた。また、局所投与においても、持続製剤化が可能な化合物を見出すことができれば、全身投与における副作用がなく、投与回数の少ない治療剤(特に、骨量低下疾患の治療剤)が創製可能であると考えた。
【0063】
一般式(I)で示される本発明化合物は、骨量低下疾患、例えば、
1)原発性骨粗鬆症(例えば、加齢に伴う原発性骨粗鬆症、閉経に伴う原発性骨粗鬆症、卵巣摘出術に伴う原発性骨粗鬆症等)、
2)二次性骨粗鬆症(例えば、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、甲状腺機能亢進性骨粗鬆症、固定誘発性骨粗鬆症、ヘパリン誘発性骨粗鬆症、免疫抑制誘発性骨粗鬆症、腎不全による骨粗鬆症、炎症性骨粗鬆症、クッシング症候群に伴う骨粗鬆症、リューマチ性骨粗鬆症等)、
3)癌骨転移、高カルシウム血症、ページェット病、骨欠損(歯槽骨欠損、下顎骨欠損、小児期突発性骨欠損等)、骨壊死等の骨疾患の予防および/または治療に有用であるばかりでなく、骨の手術後の骨形成(例えば、骨折後の骨形成、骨移植後の骨形成、人工関節術後の骨形成、脊椎固定術後の骨形成、その他骨再建術後の骨形成等)の促進・治癒促進剤、また骨移植代替療法として有用であると考えられる。
【0064】
しかしながら、本発明化合物は上記した疾患だけでなく、PGE1またはPGE2において一般的に知られている様々な疾患への適用の可能性が考えられる。
例えば、血流増加作用を有していることから、末梢循環器障害(例えば、慢性動脈閉塞症、振動病等)、褥瘡、皮膚潰瘍(例えば、熱傷、糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍、術後潰瘍等)疾患の治療剤および血行再建術後の血流維持、勃起不全治療剤、血小板凝集抑制作用や血圧降下作用を有していることから、血圧降下剤、血栓治療剤として有用であると考えられる。
【0065】
一般式(I)で示される化合物またはそれらの非毒性塩は、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、
および/または
3)その化合物の副作用の軽減
のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0066】
一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、一般式(I)で示される化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、一般式(I)で示される化合物を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0067】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、一般式(I)で示される化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
例えば、一般式(I)で示される化合物の骨疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、ビスホスホネート製剤、ビタミンD製剤、カルシウム補助剤、エストロゲン製剤、カルシトニン製剤、イソフラボン系製剤、タンパク同化ステロイド剤、ビタミンK製剤、カテプシンK阻害剤、プロスタグランジン類、スタチン、副甲状腺ホルモン、成長因子等が挙げられる。
【0068】
例えば、一般式(I)で示される化合物の勃起不全に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、ホスホジエステラーゼ5阻害剤等が挙げられる。
例えば、一般式(I)で示される化合物の血圧降下剤としての効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシンII拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ホスホジエステラーゼ4阻害剤、利尿剤等が挙げられる。
【0069】
ホスホジエステラーゼ4阻害剤としては、例えば、ロリプラム、シロミラスト(商品名アリフロ)、Bay19−8004、NIK−616、シロミラスト(BY−217)、シパムフィリン(BRL−61063)、アチゾラム(CP−80633)、SCH−351591、YM−976、V−11294A、PD−168787、D−4396、IC−485等が挙げられる。
ホスホジエステラーゼ5阻害剤としては、例えば、シルデナフィル等が挙げられる。
【0070】
ビスホスホネート製剤としては、例えば、アレンドロネートナトリウム、クロドロネート二ナトリウム、パミドロネート二ナトリウム、エチドロネート二ナトリウム、イバンドロネート、インカドロネート二ナトリウム、ミノドロネート、オルパドロネート、リセドロネートナトリウム、チルドロネート、ゾレドロネート等が挙げられる。
カルシトニン製剤としては、例えば、カルシトニン、エルカトニン等が挙げられる。
【0071】
プロスタグランジン類(以下、PGと略記する。)としては、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。
PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)等が挙げられる。
成長因子としては、例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インシュリン様成長因子等が挙げられる。
利尿剤としては、例えば、マンニトール、フロセミド、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、メタゾラミド、トリクロルメチアジド、メフルシド、スピロノラクトン、アミノフィリン等が挙げられる。
【0072】
一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の重量比は特に限定されない。
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
また、一般式(I)で示される化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0073】
一般式(I)で示される本発明化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、局所的に非経口の形で投与される。
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、0.1ngから10mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0074】
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
一般式(I)で示される本発明化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を投与する際には、非経口投与のための注射剤等として用いられる。
【0075】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0076】
[局所への適用]
本発明の局所投与としては、疾患(特に、骨量低下疾患)の部位へPGE1またはPGE2を局所的に供給できればよく、その投与方法に限定されない。例えば、筋肉内、皮下、臓器、関節部位などへの注射剤、埋め込み剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤、軟膏剤等が挙げられる。
【0077】
本発明の持続性製剤としては、疾患(特に、骨量低下疾患)の部位で、PGE1またはPGE2を持続的に供給できればよく、その製剤に限定されない。例えば、徐放性注射剤(例えば、マイクロカプセル製剤、マイクロスフェア製剤、ナノスフェア製剤等)、埋め込み製剤(例えば、フィルム製剤等)等が挙げられる。
本発明のマイクロカプセル製剤、マイクロスフェア製剤、ナノスフェア製剤とは、活性成分として一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤との併用剤を含有し、生体内分解性重合物との微粒子状の医薬組成物である。
【0078】
本発明の生体内分解性重合物とは、脂肪酸エステル重合体またはその共重合体、ポリアクリル酸エステル類、ポリヒドロキシ酪酸類、ポリアルキレンオキサレート類、ポリオルソエステル、ポリカーボネートおよびポリアミノ酸類が挙げられ、これらは1種類またはそれ以上混合して使用することができる。脂肪酸エステル重合体またはその共重合体とは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸および乳酸−グリコール酸共重合体が挙げられ、これらは1種類またはそれ以上混合して使用することができる。その他に、ポリα−シアノアクリル酸エステル、ポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリトリメチレンオキサート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリγ−ベンジル−L−グルタミン酸およびポリL−アラニンの1種類またはそれ以上混合も使用することができる。好ましくは、ポリ乳酸、ポリグルコール酸または乳酸−グリコール酸共重合体であり、より好ましくは、乳酸−グリコール酸共重合体である。
【0079】
本発明に使用されるこれらの生体内分解性高分子重合物の平均分子量は約2,000ないし約800,000のものが好ましく、より好ましくは約5,000ないし約200,000である。例えば、ポリ乳酸において、その重量平均分子量は約5,000から約100,000のものが好ましい。さらに好ましくは約6,000から約50,000である。ポリ乳酸は、自体公知の製造方法に従って合成できる。乳酸−グリコール酸共重合物においては、その乳酸とグリコール酸との組成比は約100/0から約50/50(W/W)が好ましく、特に約90/10から50/50(W/W)が好ましい。乳酸−グリコール酸共重合物の重量平均分子量は約5,000から約100,000が好ましい。さらに好ましくは約10,000から80,000である。乳酸−グリコール酸共重合物は、自体公知の製造方法に従って合成できる。
【0080】
本明細書中、重量平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量をいう。
前記した生体内分解性高分子重合物は、本発明の目的が達成される限り、一般式(I)化合物の薬理活性の強さと、目的とする薬物放出によって変えることができ、例えば当該生理活性物質に対して約0.2ないし10,000倍(重量比)の量で用いられ、好ましくは約1ないし1,000倍(重量比)、さらに好ましくは約1ないし100倍(重量比)の量で用いるのがよい。
【0081】
本発明のマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノスフェアは、例えば水中乾燥法(例えば、o/w法、w/o/w法等)、相分離法、噴霧乾燥法、超臨界流体による造粒法あるいはこれらに準ずる方法などが挙げられる。
【0082】
以下に、水中乾燥法(o/w法)と噴霧乾燥法について、具体的な製造方法を記述する。
(1)水中乾燥法(o/w法)本方法においては、まず生体内分解性重合物の有機溶媒溶液を作製する。本発明のマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノスフェアの製造の際に使用する有機溶媒は、沸点が120℃以下であることが好ましい。該有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、脂肪族エステル(例、酢酸エチル等)、エーテル類、芳香族炭化水素、ケトン類(アセトン等)等が挙げられる。これらは2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリルである。有機溶媒は、好ましくはジクロロメタンである。生体内分解性重合物の有機溶媒溶液中の濃度は、生体内分解性重合物の分子量、有機溶媒の種類などによって異なるが、一般的には約0.01〜約80%(v/w)から選ばれる。好ましくは約0.1〜約70%(v/w)、さらに好ましくは約1〜約60%(v/w)である。
【0083】
このようにして得られた生体内分解性重合物の有機溶媒溶液中に、一般式(I)化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を、添加し溶解させる。この一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤との併用剤の添加量は、薬物の種類、骨形成における作用機作および効果の持続時間等により異なるが、生体内分解性高分子重合物の有機溶媒溶液中の濃度として、約0.001%〜約90%(w/w)、好ましくは約0.01%〜約80%(w/w)、さらに好ましくは約0.3〜30%(w/w)である。
【0084】
次いで、このようにして調製された有機溶媒溶液をさらに水相中に加えて、撹拌機、乳化機などを用いてo/wエマルジョンを形成させる。この際の水相体積は一般的には油相体積の約1倍〜約10,000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約2倍〜約5,000倍から選ばれる。特に好ましくは、約5倍〜約2,000倍から選ばれる。前記外相の水相中に乳化剤を加えてもよい。乳化剤は、一般的に安定なo/wエマルジョンを形成できるものであれば何れでもよい。乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが挙げられる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。外水相中の乳化剤の濃度は、好ましくは約0.001%〜約20%(w/w)である。さらに好ましくは約0.01%〜約10%(w/w)、特に好ましくは約0.05%〜約5%(w/w)である。
【0085】
油相の溶媒の蒸発には、通常用いられる方法が採用される。該方法としては、撹拌機、あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧して行うか、ロータリーエバポレーターなどを用いて、真空度を調節しながら行う。このようにして得られたマイクロスフェアは遠心分離法あるいは濾過して分取した後、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤、乳化剤などを、例えば界面活性剤溶液またはアルコール等で数回繰り返し洗浄した後、再び、蒸留水または賦形剤(マンニトール、ソルビトール、ラクトース等)を含有した分散媒などに分散して凍結乾燥する。前記したo/w法においては、一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を生体内分解性重合物の有機溶媒溶液中に分散させる方法、すなわちs/o/w法によりマイクロスフェアを製造してもよい。
【0086】
(2)噴霧乾燥法によりマイクロスフェアを製造する場合には、生体内分解性重合物と一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を溶解した有機溶媒またはエマルジョンを、ノズルを用いてスプレードライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、きわめて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒または水を揮発させマイクロスフェアを調製する。ノズルとしては、二液体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等がある。このとき、所望により、o/wエマルジョンの噴霧と同時にマイクロスフェアの凝集防止を目的として、有機溶媒または凝集防止剤(マンニトール、ラクトース、ゼラチン等)の水溶液を別ノズルより噴霧する事も有効である。このようにして得られたマイクロスフェアは、必要があれば加温し、減圧化でマイクロスフェア中の水分及び溶媒の除去をより完全に行う。
【0087】
フィルム製剤とは、前記の生体内分解性重合物と一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を有機溶媒に溶解した後、蒸留乾固し、フィルム状としたものまたは生体内分解性重合物と一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤の併用剤を適当な溶剤に溶かした後、増粒剤(セルロース類、ポリカーボネート類等)を加えて、ゲル化したもの等がある。
【0088】
本発明のマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノスフェアは、例えばそのまま、あるいは球状、棒状、針状、ペレット状、フィルム状、クリーム状の医薬組成物を原料物質として種々の剤型に製剤化することもできる。
【0089】
また、この製剤を用いて、局所投与用の非経口剤(例、筋肉内、皮下、臓器、関節部位などへの注射剤、埋め込み剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤、懸濁剤等の液剤、軟膏剤等)などとして投与することもできる。例えば、マイクロスフェアを注射剤とするには、マイクロスフェアを分散剤、保存剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤等と共に水性懸濁剤とすることにより実用的な注射用製剤が得られる。また、植物油あるいはこれにレシチンなどのリン脂質を混合したもの、あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(例、ミグリオール812等)と共に分散して油性懸濁剤として実際に使用できる注射剤とする。
【0090】
マイクロスフェアの粒子径は、例えば懸濁注射剤として使用する場合にはその分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば平均粒子径として約0.1〜約300μmの範囲が挙げられる。好ましくは、約1〜150μm、さらに好ましくは、約2〜100μmの範囲の粒子径である。本発明の医薬組成物は、前記のように懸濁液であることが好ましい。本発明の医薬組成物は微粒子状であることが好ましい。なぜならば該医薬組成物は、通常の皮下あるいは筋肉内注射に使用される注射針を通して投与される方が、患者に対し過度の苦痛を与えることがないからである。本発明の医薬組成物は特に注射剤であることが好ましい。マイクロスフェアを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0091】
本発明の医薬組成物は、一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤との併用剤の作用が徐放性を有し、生体内分解性重合物の種類、配合量などによりその徐放期間は異なるが、通常1週から3カ月の徐放期間を有するので、骨低下疾患等に用いることができる。これらの中で特に骨折患者の場合、患部を固定しギブスなどで覆うことが多いため、頻回投与を避け1回の投与で持続的に治癒促進することが望まれるため、本発明の医薬組成物は特に有効である。
【0092】
本発明の医薬組成物の投与量は、一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤との併用剤の種類と含量、剤型、薬物放出の持続時間、投与対象動物などにより異なるが、一般式(I)で示される化合物、または一般式(I)で示される化合物と他の薬剤との併用剤の有効量であればよい。例えばマイクロスフェアとして骨折部位に使用する場合、1回当りの投与量として、成人(体重50kg)当たり、有効成分として約0.001mgから500mg。好ましくは約0.01mgから50mgを1週間ないし3カ月に1回投与すればよい。
【実施例】
【0093】
以下、参考例および実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示した。
【0094】
実施例1
2−ヘプタノイルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化30】

【0095】
(5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エン酸(PGE2、120mg)の酢酸エチル(1.7ml)溶液に2−ヒドロキシエチル ヘプタノエート(594mg)とトリエチルアミン(0.095ml)を加えた。混合物に1−メタンスルホニルオキシベンゾトリアゾール(87mg)を加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物にt−ブチル メチル エーテル、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、トリエチルアミンを加えた。混合物を室温で30分間撹拌した。混合物に水を加え、抽出した。抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:3→0:1)によって精製し、以下の物性値を有する本発明化合物(137mg)を得た。
【0096】
TLC:Rf 0.50 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.69 (dd, J=15.0, 6.6 Hz, 1H), 5.59 (dd, J=15.0, 7.8 Hz, 1H), 5.48-5.33 (m, 2H), 4.27 (s, 4H), 4.20-4.02 (m, 2H), 2.74 (dd, J=18.9, 8.1 Hz, 1H), 2.60 (m, 1H), 2.49-2.00 (m, 12H), 1.78-1.43 (m, 6H), 1.42-1.20 (m, 12H), 0.99-0.87 (m, 6H)。
【0097】
実施例1(1)〜1(3)
2−ヒドロキシエチル ヘプタノエートの代わりに相当するアルコール誘導体を用いて、実施例1と同様の操作をし、以下に示した本発明化合物を得た。
【0098】
実施例1(1)
2−ヘキサノイルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化31】

【0099】
TLC:Rf 0.67 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.68 (dd, J=15.3, 6.3 Hz, 1H), 5.57 (dd, J=15.3, 7.8 Hz, 1H), 5.48-5.28 (m, 2H), 4.27 (s, 4H), 4.18-4.02 (m, 2H), 2.75 (dd, J=19.2, 7.5 Hz, 1H), 2.48-1.98 (m, 13H), 1.75-1.45 (m, 4H), 1.45-1 .20 (m, 12H), 0.95-0.80 (m, 6H)。
【0100】
実施例1(2)
2−バレリルルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化32】

【0101】
TLC:Rf 0.49 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.69 (dd, J=15.0, 6.0Hz, 1H), 5.61 (dd, J=15.0, 8.0 Hz, 1H), 5.49-5.30 (m, 2H), 4.27 (s, 4H), 4.20-4.02 (m, 2H), 2.75 (dd, J=19.0, 7.8Hz, 1H), 2.55 (m, 1H), 2.48-2.00 (m, 12H), 1.75-1.25 (m, 14H), 0.95-0.86 (m, 6H)。
【0102】
実施例1(3)
2−(2−エチル−2−メチルブチリルオキシ)エチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化33】

【0103】
TLC:Rf 0.56 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.68 (dd, J=15.6, 6.3Hz, 1H), 5.57 (dd, J=15.6, 8.4 Hz, 1H), 5.45-5.30 (m, 2H), 4.28 (s, 4H), 4.19-4.03 (m, 2H), 2.82-2.70 (m, 2H), 2.49-2.00 (m, 10H), 1.78-1.22 (m, 14H), 1.10 (s, 3H), 0.96 -0.79 (m, 9H)。
【0104】
参考例1
(N,N−ジブチルカルバモイル)メチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−2−[(1E,3S)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−1−オクテニル]−5−ヒドロキシシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化34】

【0105】
(5Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−2−[(1E,3S)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−1−オクテニル]−5−ヒドロキシシクロペンチル]ヘプト−5−エン酸(CAS登録番号:37786-09-7)(698mg)のジメチルホルムアミド(6.5ml)溶液に、2−ブロモ−N,N−ジブチルアセトアミド(433mg)と炭酸カリウム(294mg)を加えた。反応混合物を55℃で一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、t−ブチル メチル エーテルで抽出した。抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(796mg)を得た。得られた化合物は、精製することなしに次の反応に用いた。
TLC:Rf 0.53 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1)。
【0106】
参考例2
(N,N−ジブチルカルバモイル)メチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−2−[(1E,3S)−3−(テトラヒドロピラン−2−イル)オキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化35】

【0107】
参考例1で製造した化合物(796mg)の酢酸エチル(4ml)とジメチルスルホキシド(2.1ml)混合溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.39ml)をアルゴン雰囲気下、0℃で加えた。混合物に同温度で、三酸化硫黄・ピリジン錯体(634mg)を加えた。反応混合物を15分間撹拌した。反応混合物に1N塩酸を加え、t−ブチル メチル エーテルで抽出した。抽出物を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物(820mg)を得た。得られた化合物は、精製することなしに次の反応に用いた。
TLC:Rf 0.72 (酢酸エチル:ヘキサン=1:1)。
【0108】
実施例2
(N,N−ジブチルカルバモイル)メチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート
【化36】

【0109】
参考例2で製造した化合物(820mg)のメタノール(5.3ml)、アセトニトリル(5.3ml)、ジメトキシエタン(5.3ml)混合溶液に、0.1N塩酸(5.3ml)を加えた。反応混合物を35℃で3.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1→0:1)によって精製し、以下の物性値を有する本発明化合物(460mg)を得た。
【0110】
TLC:Rf 0.27 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3):δ 5.68 (dd, J=15.3, 6.3 Hz, 1H), 5.56 (dd, J=15.3, 7.8 Hz, 1H), 5.48-5.28 (m, 2H), 4.72 (s, 2H), 4.18-4.00 (m, 2H), 3.37-3.25 (m, 2H), 3.20-3.07 (m, 3H), 2.80-2.68 (m, 2H), 2.52-2.02 (m, 9H), 1.80-1.23 (m, 18H), 1.00-0.85 (m, 9H)。
【0111】
実施例3
2−ヘプタノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化37】

【0112】
(5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エン酸(PGE2)の代わりに、7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタン酸(PGE1)を用いて、実施例1と同様の操作をし、以下の物性値を有する本発明化合物を得た。
【0113】
TLC:Rf 0.44 (クロロホルム:メタノール=9:1);
NMR (CDCl3):δ 5.69 (dd, J=15.3, 6.6 Hz, 1H), 5.56 (dd, J=15.3, 8.1 Hz, 1H), 4.27 (s, 4H), 4.18-4.01 (m, 2H), 2.92-2.70 (m, 2H), 2.42-2.19 (m, 7H), 2.00 (m, 1H), 1.70-1.20 (m, 26H), 0.96-0.82 (m, 6H)。
【0114】
実施例3(1)〜3(7)
2−ヒドロキシエチル ヘプタノエートの代わりに相当するアルコール誘導体を用いて、実施例3と同様の操作をし、以下に示した本発明化合物を得た。
【0115】
実施例3(1)
3−ヘキサノイルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化38】

【0116】
TLC:Rf 0.52 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.75-5.47 (2H, m), 4.20-3.95 (6H, m), 3.25-3.10 (1H, m), 2.82-2.67 (1H, m), 2.45-2.13 (7H, m), 2.07-1.90 (3H, m), 1.80-1.20 (24H, m), 0.95-0.85 (6H, m)。
【0117】
実施例3(2)
3−オクタノイルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化39】

【0118】
TLC:Rf 0.61 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.75-5.47 (2H, m), 4.20-3.95 (6H, m), 3.30-3.10 (1H, m), 2.83-2.65 (1H, m), 2.45-2.15 (7H, m), 2.05-1.90 (3H, m), 1.80-1.20 (28H, m), 0.95-0.83 (6H, m)。
【0119】
実施例3(3)
2−ヘキサノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化40】

【0120】
TLC:Rf 0.59 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.75-5.47 (2H, m), 4.26 (4H, s), 4.20-3.97 (2H, m), 3.50-3.30 (1H, m), 2.83-2.65 (1H, m), 2.42-2.13 (7H, m), 2.05-1.92 (1H, m), 1.80-1.20 (24H, m), 0.95-0.83 (6H, m)。
【0121】
実施例3(4)
2−オクタノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化41】

【0122】
TLC:Rf 0.61 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.76-5.47 (2H, m), 4.26 (4H, s), 4.20-3.97 (2H, m), 3.35-3.20 (1H, m), 2.82-2.65 (1H, m), 2.45-2.12 (7H, m), 2.05-1.90 (1H, m), 1.80-1.20 (28H, m), 0.95-0.83 (6H, m)。
【0123】
実施例3(5)
2−(4−フェニルブタノイルオキシ)エチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化42】

【0124】
TLC:Rf 0.57 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 7.35-7.13 (5H, m), 5.77-5.47 (2H, m), 4.26 (4H, s), 4.20-3.95 (2H, m), 3.25-3.10 (1H, m), 2.82-2.60 (3H, m), 2.43-2.13 (7H, m), 2.05-1.90 (3H, m), 1.85-1.10 (18H, m), 0.95-0.82 (3H, m)。
【0125】
実施例3(6)
3−プロピオニルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化43】

【0126】
TLC:Rf 0.55 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.77-5.47 (2H, m), 4.20-3.97 (6H, m), 2.82-2.67 (1H, m), 2.43-2.13 (7H, m), 2.07-1.90 (3H, m), 1.75-1.10 (19H, m), 1.33 (3H, t, J=7Hz), 0.95-0.83 (3H, m)。
【0127】
実施例3(7)
2−デカノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化44】

【0128】
TLC:Rf 0.19 (酢酸エチル);
NMR (CDCl3):δ 5.68 (dd, J=15, 7 Hz, 1H), 5.54 (dd, J=15, 9 Hz, 1H), 4.26 (s, 4H), 4.10 (q, J=7 Hz, 1H), 4.04 (d, J=8.5 Hz, 1H), 2.73 (dd, J=18, 7 Hz, 1H), 2.37-2.29 (m, 5H), 2.21 (dd, J=18, 9.5 Hz, 1H), 1.98 (m, 1H), 1.63-1.26 (m, 34H), 0.89 (m, 6H)。
【0129】
実施例4
(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)メチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート
【化45】

【0130】
7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタン酸(PGE1、144mg)のジメチルホルムアミド(1.5ml)溶液に、クロロメチル ヘキシルオキシホルメート(96mg)、フッ化カリウム(82mg)、ヨウ化カリウム(5mg)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:2)によって精製し、以下の物性値を有する本発明化合物(145mg)を得た。
【0131】
TLC:Rf 0.23 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
NMR (CDCl3):δ 5.78 (2H, s), 5.78-5.50 (2H, m), 4.18 (2H, t, J=7.5 Hz), 4.21-3.98 (2H, m), 3.50-3.00 (1H, bs), 2.75 (1H, dd, J=15, 7.5 Hz), 2.34 (2H, t, J=7.5 Hz), 2.42-2.18 (3H, m), 2.10-1.85 (1H, m), 1.85-1.10 (26H, m), 1.00-0.90 (6H, m)。
【0132】
製剤例1〜2
ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記する)(ポリ乳酸:グリコール酸=3:1(モル%)、重量平均分子量70,000、PLGA75-65、三井化学株式会社)90mgと以下の本発明化合物10mgのジクロロメタン(1mL)溶液を調製した。TKロボミックス(特殊機化、MARK II 2.5型)を用いて、6,000rpmで撹拌した0.1%ポリビニルアルコール(ナカライテスク株式会社)水溶液(300ml)中に、上記で調製した溶液を加え、室温で2分間撹拌し、O/Wエマルジョンとした。このO/Wエマルジョンを室温で3時間撹拌し、ジクロロメタンを揮発させ、油相を固化させた後、遠心分離器(日立、05PR-22)を用いて、3,000rpmで10分間遠心分離した。上清を除き、注射用蒸留水(35mL)で分散後、遠心分離器を用いて、3,000rpmで10分間遠心分離した。上清を除き、0.2%Tween80液(35mL)で分散後、遠心分離器を用いて、3,000rpmで10分間遠心分離した。上清を除き、注射用蒸留水(35mL)で分散後、再び遠心分離器を用いて、3,000rpmで10分間遠心分離した。最終的に上清を除き、沈殿物をドライアイス-メタノールに浸し、凍結後、減圧下で乾燥させることによって、マイクロスフェアを製造した。
【0133】
上記の方法により、実施例1の化合物および実施例3の化合物のマイクロスフェアを製造した。以下、実施例1の化合物のマイクロスフェアを製剤例1、実施例3のマイクロスフェアを製剤例2と記す。
【0134】
製剤試験例
製剤例1および2のマイクロスフェア(約10mg)に適当な内部標準含有のアセトニトリル溶液を加えて、超音波処理し、溶解した。この溶液中の各本発明化合物含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、マイクロスフェア中の本発明化合物の封入効率を次式により算出した。
【数1】

その結果、製剤例1は、96.0%、製剤例2は、94.6%の封入効率であった。
【0135】
[本発明化合物の効果]
(1)骨折治癒促進作用
[実験方法]
R. Sakai(Bone, 25, 191-196 (1999))、H. Kawaguchi(Endcrinology, 135, 774-781 (1994))およびT. Hoshino(J Biomed Mater Res, 51, 229-306 (2000))らの方法に準じ、8週齢の雄性IGS系ラットをもちいて骨折モデルを作成した。ペントバルビタール・Na麻酔したラットの左後足の毛を刈り、ビクシリンS500(500mg力価)(明治製菓(株)を10mg力価/100μL蒸留水/bodyの用量で筋肉内投与した後、腓骨部位の皮膚(膝関節裏からアキレス腱まで)を切開し、筋肉組織を剥離し、腓骨を露出させた。鋭利なハサミを用いて腓骨中央部付近を切断し、骨折部位を作製後、骨の位置を骨折前の状態に修正した。術創部を閉じ、縫合した後、ヨードチンキ/消毒用エタノールを用いて術創部を消毒した。骨折作成後、術創部を閉じる前に一度だけ製剤例1または2のマイクロスフェアの0.2% Tween 80を含む生理食塩水懸濁液(活性薬物量として0.03mg/kg含有)を添加した。実験開始から17日目にラットをCO2ガスで安楽死させた後、両後足の筋肉等の結合組織を取り除き、両側の腓骨を採取した。採取した腓骨は軟X線撮像をおこない、骨折線の有無や仮骨形成等の骨折治癒の進展を評価するとともに、骨折部位周辺の骨密度測定、および、骨強度測定をおこなった。
【0136】
(1)小焦点X線拡大撮影システムを用いた仮骨領域の骨密度測定
採取した腓骨の骨折部位の仮骨領域骨密度をC. Matsumoto(Calcif Tissue Int, 55, 324-329 (1994))、山崎 薫(日本臨床, 56, 1464-1468 (1998))、中川 恵一(先端医療,4(6) (1996))らの報告を参考に測定した。小焦点X線拡大撮影システム(μフォーカスX線拡大撮像システム(FUJIFILM)/イメージングプレート(BAS-IP MS 2025,FUJIFILM))を用いて管電圧40kV、管電流100μA、照射時間5秒のX線出射条件で4倍拡大撮像を行った。撮像に際しては、骨密度測定用の検量線を作成するためのマウス用骨塩定量ファントム((株)京都科学)を併置した。次に撮像をバイオイメージングアナライザー BAS-1800(FUJIFILM)/Image Reader(FUJIFILM)で読みとった後、Image Gauge(ver.3.1.12,FUJIFILM)を用いて画像処理を行った。仮骨領域として骨折線(面)を基準として遠位(踵)方向および近位(膝)方向に各3mmの関心領域(Region of interest: 以下ROIと略記する)を設定し、骨塩定量ファントムより得られた検量線から各ROIの骨密度を算出した。骨折側の仮骨領域の骨密度は、以下の数式により算出し、平均値±標準誤差(mg/cm2)で表記した。
【0137】
【数2】

Aは近位部仮骨領域ROI面積を表し、
Bは遠位部仮骨領域ROI面積を表す。
【0138】
(2)3点折り曲げ試験による骨強度測定
T. Hoshino(J Biomed Mater Res, 51, 229-306 (2000))らの報告に準じて、3点折り曲げ試験を行った。インストロン万能材料試験機5544型(インストロンジャパン)/Merlin(インストロンジャパン;version 22043)を用いて折り曲げ速度2.5mm/sec、サンプルホルダー幅10mmの条件で破壊強度およびエネルギー吸収を測定した。骨強度データは、各個体それぞれについて、非骨折側に対する骨折側の相対的な骨強度として算出し、平均値±標準誤差(% of intact)で表記した。
【0139】
[結果]
製剤例1または2のマイクロスフェア(活性薬物量として0.03mg/kg含有)と対照群(0.2% Tween 80を含む生理食塩水)を骨折部に一度だけ処置した場合の骨折治癒促進効果を表15に示した。
【0140】
【表15】

【0141】
表15から明らかなように、上記の本発明の製剤例1または2のマイクロスフェアを一度だけ処置した場合の骨折治癒促進効果は、非常に強いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)2−ヘプタノイルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート、
(2)2−ヘキサノイルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート、
(3)2−バレリルオキシエチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート、
(4)2−(2−エチル−2−メチルブチリルオキシ)エチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート、
(5)(N,N−ジブチルカルバモイル)メチル (5Z)−7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプト−5−エノート、
(6)2−ヘプタノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(7)3−ヘキサノイルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(8)3−オクタノイルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(9)2−ヘキサノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(10)2−オクタノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(11)2−(4−フェニルブタノイルオキシ)エチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(12)3−プロピオニルオキシプロピル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(13)2−デカノイルオキシエチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
(14)(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)メチル 7−[(1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(1E,3S)−3−ヒドロキシ−1−オクテニル]−5−オキソシクロペンチル]ヘプタノエノート、
それらの非毒性塩またはそれらのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含有するマイクロスフェア製剤またはフィルム製剤。
【請求項2】
局所投与用骨量低下疾患の予防および/または治療剤である請求項1に記載の製剤。

【公開番号】特開2010−6835(P2010−6835A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230262(P2009−230262)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2002−216039(P2002−216039)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】