説明

プロスタサイクリン類似体の送達のための化合物及び方法

【課題】血管拡張の促進、血小板凝及び血栓形成の阻害、血栓溶解の刺激、細胞増殖(血管再生を含む)の阻害、細胞保護の供給、アテローム発生の防止及び血管形成の誘発のための医薬組成物及びその使用方法の提供。
【解決手段】下記一般式で表される化合物及び経口用添加剤を含む経口用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願の相互参照)
本出願は、2003年5月22日に提出された米国仮出願第60/472,407号の利益を請求
し、その内容全体は参考文献として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、プロスタサイクリン類似体ならびに血管拡張の促進、血小板凝集及び
血栓形成の阻害、血栓溶解の刺激、細胞増殖(血管再生を含む)の阻害、細胞保護の供給
、アテローム発生の防止及び血管形成の誘発におけるこの物質のの使用方法に関する。こ
れらのプロスタサイクリン模倣機構を通じて、本発明の化合物は:肺高血圧症、虚血性疾
患(たとえば末梢血管疾患、レイノー現象、強皮症、心筋虚血、虚血性脳卒中、腎不全)
、心不全(鬱血性心不全を含む)、抗凝固が必要な状態(たとえば心筋梗塞後、心臓手術
後)、血栓性微小血管症、体外循環、網膜中心静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化、炎症
性疾患(たとえばCOPD、乾癬)、高血圧(たとえば子癇前症)、生殖及び分娩、癌又は未
制御細胞増殖の他の状態、細胞/組織保存及びプロスタサイクリン治療が有益な役割を有
すると考えられる他の新生治療部位の/のための治療に使用される。これらの化合物は、
他の心血管薬(たとえばカルシウムチャネル遮断薬、ホスホジエステラーゼインヒビター
、内皮アンタゴニスト、抗血小板薬)との組合せで追加又は相乗利点も示す。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
多くの有用な薬理活性化合物は各種の理由で効果的に経口投与できず、一般に静脈内又
は筋肉内経路によって投与される。これらの投与経路は一般に、内科医又は他の医療専門
家による介入を必要とし、かなりの不快感はもちろんのこと、患者への局所外傷の可能性
を引き起こすことがある。
【0004】
このような化合物の1つの例は、プロスタサイクリンの化学的に安定な類似体であるト
レプロスチニルである。トレプロスチニルナトリウム(Remodulin(登録商標)
)は食品医薬品局(FDA)に皮下投与を承認されているが、遊離酸としてのトレプロスチ
ニルは、10%未満の絶対経口バイオアベイラビリティを有する。したがって、トレプロ
スチニルの経口的な提供には、臨床的な関心がある。
【0005】
それゆえ、トレプロスチニル又はトレプロスチニル類似体の投与によるトレプロスチニ
ルの全身バイオアベイラビリティを向上させるための安全で有効な方法への要求がある。
【発明の開示】
【0006】
(発明の要約)
1つの実施形態において、本発明は構造I:
【化4】

(式中、
1は、H、置換及び非置換ベンジル基、ならびにOR1が置換又は非置換グリコールア
ミドエステルである基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じか又は異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条件
で、H、ホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ酸又はタンパク質のエステルを形
成する基から成る群より独立して選択される)を有する化合物;
その化合物のエナンチオマー;
ならびにその化合物の薬学的に許容される塩及び多形体を提供する。
【0007】
これらの実施形態の一部において、R1は置換又は非置換ベンジル基、たとえばCH2
65である。他の実施形態において、OR1は置換又は非置換グリコールアミドエステル
であり、R1は−CH2CONR45であり、R4及びR5は同じか又は異なり、H、OH、
置換及び非置換アルキル基、−(CH2mCH3、−CH2OH、及び−CH2(CH2n
OH(但し、mは0、1、2、3又は4であり、nは0、1、2、3又は4である)から
成る群より独立して選択される。これらの実施形態のいくつかにおいて、R4及びR5の一
方又は両方は、H、−OH、−CH3、又は−CH2CH2OHから成る群より独立して選
択される。上述した実施形態のいずれかにおいて、R2及びR3の一方又は両方はHであり
うる。化合物のいくつかのエナンチオマーにおいて、R1=R2=R3=H、又はR2=R3
=H及びR1=バリニルアミドである。
【0008】
本化合物のさらなる実施形態において、R2及びR3は、ホスフェートならびにOR2
びOR3がアミノ酸のエステル、ジペプチド、トリペプチドのエステル及びテトラペプチ
ドのエステルである基より独立して選択される。一部の化合物において、R2又はR3の一
方のみがホスフェート基である。他の化合物では、R2及びR3は、OR2及びOR3がアミ
ノ酸のエステル、たとえばグリシン又はアラニンのエステルである基より独立して選択さ
れる。上の実施形態のいずれかにおいて、R2及びR3の一方はHである。本化合物のいく
つかにおいて、化合物の経口バイオアベイラビリティは、トレプロスチニルの経口バイオ
アベイラビリティよりも大きく、たとえばトレプロスチニルの経口バイオアベイラビリテ
ィよりも少なくとも50%又は100%大きい。上の化合物はp糖タンパク質輸送のイン
ヒビターをさらに含むことができる。これらの化合物のいずれも、薬学的に許容される賦
形剤をさらに含むことができる。
【0009】
本発明は:肺高血圧症、虚血性疾患、心不全、抗凝固が必要な状態、血栓性微小血管症
、体外循環、網膜中心静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化、炎症性疾患、高血圧、生殖及
び分娩、癌又は未制御細胞増殖の他の状態、細胞/組織保存及びプロスタサイクリン治療
が有益な役割を有すると考えられる他の新生治療部位の/のために上の化合物を治療的に
使用する方法も提供する。好ましい実施形態は、構造II:
【化5】

(式中、
1は、H、置換及び非置換ベンジル基、ならびにOR1が置換又は非置換グリコールア
ミドエステルである基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じか又は異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条件
で、H、ホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ酸又はタンパク質のエステルを形
成する基から成る群より独立して選択される)の化合物;
その化合物のエナンチオマー;ならびに
その化合物の薬学的に許容される塩及び多形体;
の薬学的有効量を経口投与することを含む、被験体における肺高血圧症及び/又は末梢血
管疾患を治療する方法である。
【0010】
これらの方法の一部において、OR1が置換又は非置換グリコールアミドエステルを形
成するときに、R1は−CH2CONR45であり、ここでR4及びR5は同じか又は異なり
、H、OH、置換及び非置換アルキル基、−(CH2mCH3、−CH2OH、及び−CH
2(CH2nOH(但し、mは、0、1、2、3または4であり、nは0、1、2、3ま
たは4である)から成る群より独立して選択される。他の方法において、R1はC1−C4
アルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。開示された方法に
おいて、R1は置換または非置換ベンジル基でもよい。他の方法において、R1は−CH3
または−CH265でもよい。なお他の方法において、R4及びR5は同じかまたは異な
り、H、OH、−CH3、及び−CH2CH2OHから成る群より独立して選択される。な
お他の方法において、R2及びR3の一方または両方はHである。あるいは、R2及びR3
一方または両方はHでなく、R2及びR3はホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ
酸のエステル、ジペプチド、トリペプチドのエステル及びテトラペプチドのエステルであ
る基より独立して選択される。ある方法において、R2またはR3の一方のみがホスフェー
ト基である。追加の方法において、R2及びR3は、OR2及びOR3がアミノ酸のエステル
、たとえばグリシン及びアラニンのエステルである基より独立して選択される。さらなる
方法において、R1及びR2の一方はHである。一部の例において、R1=R2=R3=H、
またはR2=R3=H及びR1=バリニルアミドである化合物のエナンチオマーが使用され
る。
【0011】
各種の方法において、化合物の経口バイオアベイラビリティは、トレプロスチニルの経
口バイオアベイラビリティよりも大きく、たとえばトレプロスチニルの経口バイオアベイ
ラビリティよりも少なくとも50%または100%大きい。本方法は、構造IIの化合物の
投与と同時に、連続して、または投与の前に、p糖タンパク質インヒビターの薬学的有効
量を投与することも含むことができる。一部の実施形態において、p糖タンパク質インヒ
ビターは、経口または静脈内投与される。開示された方法は、肺高血圧症を治療するため
に使用できる。
【0012】
本発明は、被験体にp糖タンパク質インヒビターの薬学的有効量を投与することと、ト
レプロスチニルの薬学的有効量を経口投与することとを含む、トレプロスチニルまたはそ
の薬学的に許容される塩の経口バイオアベイラビリティを上昇させる方法も提供する。こ
れらの実施形態のいくつかにおいて、p糖タンパク質インヒビターは、トレプロスチニル
の前に、またはトレプロスチニルと同時に投与される。p糖タンパク質インヒビターの投
与経路は、経口または静脈内などに変更できる。本発明は、トレプロスチニルまたはその
薬学的に許容される塩及びp糖タンパク質インヒビターを含む組成物も提供する。
【0013】
本化合物は、局所的にまたは経皮的に投与することもできる。
【0014】
本発明により、上述の化合物のいずれかを薬学的に許容される担体と組合せて含む医薬
製剤が提供される。
【0015】
上述の化合物は、癌を治療するためにも使用できる。
【0016】
本発明のさらなる目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう

【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
別途規定しない限り、「a」または「an」は「1又はそれ以上」を意味する。本発明
は、被験体または患者にプロスタサイクリン様効果を誘起する化合物及び方法を提供する
。本明細書で提供する化合物は、本発明の方法で有用な医薬製剤及び医薬品へ処方でき
る。本発明は、医薬品及び医薬製剤の調製における化合物の使用ならびに発明の分野で
概説した不十分なプロスタサイクリン活性に関連する生物状態の治療における化合物の使
用も提供する。本発明は、癌及び癌関連障害の治療のための化合物及び方法も提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本化合物は、以下の構造を有する(+)−トレプロスチ
ニルの化学誘導体である:
【化6】

【0019】
トレプロスチニルはプロスタサイクリンの化学的に安定な類似体であり、かかる物質は
、強力な血管拡張薬及び血小板凝集インヒビターである。トレプロスチニルのナトリウム
塩、(1R,2R,3aS,9aS)−[[2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ
−2−ヒドロキシ−1−[(3S)−3−ヒドロキシオクチル]−1H−ベンズ[f]イ
ンデン−5−イル]オキシ]酢酸モノナトリウム塩は、肺高血圧症の治療のための、食品
医薬品局(FDA)によって承認されたRemodulin(登録商標)として、注射用液
剤として販売されている。いくつかの実施形態において、本化合物は、(−)−トレプロ
スチニルの誘導体、(+)−トレプロスチニルのエナンチオマーである。本発明の好まし
い実施形態は、トレプロスチニルのジエタノールアミン塩である。本発明はさらに、上の
化合物の多形体をさらに含み、2つの型A及びBを以下の実施例で述べる。2つの型のう
ち、Bは好ましい。本発明の特に好ましい実施形態は、トレプロスチニルジエタノールア
ミンの型Bである。
【0020】
いくつかの実施形態において、本化合物は一般に、患者への投与、たとえば摂取の後に
トレプロスチニルに変換するトレプロスチニルのプロドラッグとして分類される。いくつ
かの実施形態において、プロドラッグはそれ自体ほとんどまたは全く活性を持たず、トレ
プロスチニルに変換された後のみに活性を示す。いくつかの実施形態において、本化合物
は、安定なエステルを作成するためにトレプロスチニルを化学的に誘導体化することによ
って生成され、ある例において、化合物はヒドロキシル基から誘導体化された。本発明の
化合物は、米国特許第4,306,075号及び第5,153,222号に見られる化合物を同様な方法で修
飾することによって提供することもできる。
【0021】
1つの実施形態において、本発明は構造I:
【化7】

(式中、
1は、H、置換及び非置換ベンジル基、ならびにOR1が置換または非置換グリコール
アミドエステルである基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じかまたは異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条
件で、H、ホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ酸またはタンパク質のエステル
を形成する基から成る群より独立して選択される)の化合物;
その化合物のエナンチオマー;及び
その化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【0022】
OR1が置換または非置換グリコールアミドエステルである、いくつかの実施形態にお
いて、R1は−CH2CONR45であり、R4及びR5は同じかまたは異なり、H、OH、
置換及び非置換アルキル基、−(CH2)mCH3、−CH2OH、及び−CH2(CH2
nOH(但し、mは0、1、2、3または4であり、nは0、1、2、3または4である
)から成る群より独立して選択される。
【0023】
当業者は、メンバーが一般的な方法で、たとえばマーカッシュグループまたは上記及び
下記の構造I及びIIのRにおいて述べられたグループにおいてグループ化される場合、本
発明が全体として挙げられたグループ全体だけでなく、グループそれぞれの各メンバー及
びメイングループの考えられるすべてのサブグループを含むこともただちに認識するであ
ろう。したがって、すべての目的のために、本発明はメイングループだけでなく、グルー
プメンバーの1又はそれ以上がないメイングループも含む。本発明は、請求された発明に
おけるグループメンバーのいずれかの1又はそれ以上の明示的除外も想定する。たとえば
1は特に、H、置換及び非置換ベンジル基、あるいはOR1が置換、または非置換グリコ
ールアミドエステルである基を除外することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、R1は置換または非置換ベンジル基、たとえば−CH2
65、−CH264NO2、−CH264OCH3、−CH264Cl、−CH264
(NO22、または−CH264Fである。ベンジル基は、オルト、メタ、パラ、オル
ト/パラ置換及びその組合せが可能である。芳香環上の適切な置換基は、ハロゲン(フッ
素、塩素、臭素、ヨウ素)、−NO2基、R16がHまたはC1−C4アルキル基である−O
16基、及びその組合せを含む。
あるいは、R1が−CH2CONR45であるとき、R4及びR5は同じかまたは異なり、H
、OH、−CH3、及び−CH2CH2OHから成る群より独立して選択される。R1がHで
ないこれらの化合物において、一般にR2及びR3の一方または両方がHである。
【0025】
いくつかの実施形態において、R2及びR3の一方または両方がHであり、R1が−CH2
CONR45であり、R4及びR5の一方または両方がH、−OH、−CH3、−CH2CH
2OHである。
【0026】
2及びR3の一方または両方がHでない化合物において、R2及びR3は、ホスフェート
ならびにOR2及びOR3がアミノ酸のエステル、ジペプチド、トリペプチドのエステル及
びテトラペプチドのエステルである基より独立して選択できる。いくつかの実施形態にお
いて、R2またはR3の一方のみがホスフェート基である。R2及びR3の少なくとも一方が
Hでない化合物において、一般にR1はHである。追加の実施形態において、R2及びR3
の一方がHであり、それゆえ構造Iの化合物は、R2及びR3の一方のみにおいて誘導体化
される。特定の化合物において、R2はHであり、R3は上で定義したとおりである。追加
の実施形態において、R1及びR3はHであり、R2はOR2がアミノ酸またはジペプチドの
エステルである基である。さらなる実施形態において、R1及びR2はHであり、R3はO
3がアミノ酸またはジペプチドのエステルである基である。
【0027】
OR2及びOR3基の一方または両方がアミノ酸またはペプチド、すなわちジペプチド、
トリペプチドまたはテトラペプチドのエステルを形成するとき、これらは一般に−COC
HR6NR78として示すことが可能であり、ここでR6はアミノ酸側鎖から成る群より選
択され、R7及びR8は同じかまたは異なり、H、及び−COCHR9NR1011から成る
群より独立して選択される。一般にアミノ酸またはペプチドの言及は、アミノ酸またはペ
プチドの天然型、すなわちL−異性体を指す。しかしながら、本化合物及び方法は、それ
に制限されず、D−異性体アミノ酸残基はL−アミノ酸の一部または全部と置換すること
ができる。同様の方法で、D−及びL−異性体の混合物も使用できる。アミノ酸がプロリ
ンである実施形態において、R7はR6と共にピロリジン環構造を形成する。R6は、天然
型アミノ酸側鎖、たとえば−CH3(アラニン)、−(CH23NHCNH2NH(アルギ
ニン)、−CH2CONH2(アスパラギン)、−CH2COOH(アスパラギン酸)、−
CH2SH(システイン)、−(CH22CONH2 (グルタミン)、−(CH22CO
OH(グルタミン酸)、−H(グリシン)、−CHCH3CH2CH3(イソロイシン)、
−CH2CH(CH32(ロイシン)、−(CH24NH2(リジン)、−(CH22SC
3(メチオニン)、−CH2Ph(フェニルアラニン)、−CH2OH(セリン)、−C
HOHCH3(トレオニン)、−CH(CH32(バリン)、
【化8】

−(CH23NHCONH2(シトルリン)または−(CH23NH2(オルニチン)のい
ずれでもよい。Phはフェニル基を示す。
【0028】
上記の化合物において、R7及びR8は同じかまたは異なり、H、及び−COCHR9
1011から成る群より選択され、ここでR9はアミノ酸の側鎖であり、R10及びR11
同じかまたは異なり、H、及び−COCHR12NR1314から成る群より選択され、ここ
でR12はアミノ酸側鎖であり、R13及びR14は同じかまたは異なり、H、及び−COCH
15NH2から成る群より独立して選択される。当業者は、ペプチド鎖が以下のスキーム
で所望の長さまで延伸し、所望のアミノ酸残基を含むことを認識するであろう。
【0029】
OR2及びOR3基のどちらかまたは両方がペプチド、たとえばジペプチド、トリペプチ
ド、テトラペプチドなどのエステルを形成する実施形態において、ペプチドは、ホモペプ
チド、すなわち同じアミノ酸、たとえばアルギニル−アルギニンの反復、またはヘテロペ
プチド、すなわちアミノ酸の異なる組合せの構造のどちらでもよい。ヘテロジペプチドの
例は、アラニル−グルタミン、グリシル−グルタミン、リシル−アルギニンなどを含む。
【0030】
当業者によって理解されるように、R7及びR8の一方のみがジ、トリ及びテトラペプチ
ドにおけるように、さらなるアミノ酸へのペプチド結合を含むときに、得られたペプチド
鎖は線形となるであろう。R7及びR8の両方がペプチド結合を含むとき、ペプチドは分岐
可能である。
【0031】
本化合物の他の実施形態において、R1はHであり、R2またはR3の一方はホスフェー
ト基またはHであり、同時に他方のR2またはR3は、OR2またはOR3がアミノ酸のエス
テル、たとえばグリシンまたはアラニンのエステルであるような基である。
【0032】
これらの化合物の薬学的に許容される塩も、これらの化合物の医薬製剤と同様に提供
される。
【0033】
一般に、本明細書で述べる化合物は、トレプロスチニルの経口バイオアベイラビリティ
と比較して、遊離酸または塩形のどちらにおいても、向上した経口バイオアベイラビリテ
ィを有する。上述の化合物は、トレプロスチニルの経口バイオアベイラビリティと比較し
て、少なくとも25%、50%、100%、200%、400%またはそれ以上である経
口バイオアベイラビリティを有することができる。これらの化合物の絶対経口バイオアベ
イラビリティは経口投与したときに、10%、15%、20%、25%、30%及び40
%、45%、50%、55%、60%またはそれ以上の範囲を取りうる。比較のために、
皮下注入によって投与したときに、トレプロスチニルの絶対経口バイオアベイラビリティ
は約10%であるが、トレプロスチニルナトリウムは100%に近い絶対バイオアベイラ
ビリティを有する。
【0034】
当業者によって理解されるように、すべての目的のために、特に書面での説明の提供に
関して、本明細書で開示するすべての範囲、そして特に本明細書で述べるバイオアベイラ
ビリティの範囲はまた、すべての可能な下位範囲及びその下位範囲の組合せを含む。単な
る一例として、20%〜40%の範囲は、20%〜32.5%及び32.5%〜40%、
20%〜27.5%及び27.5%〜40%などに分解できる。記載した任意の範囲は、
同じ範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1など
に分解されることを十分に説明及び実現しているとして認識できる。非制限的な例として
、本明細書で述べる各範囲は、上位3分の1、中位3分の1及び下位3分の1などにただ
ちに分解できる。当業者によって理解されるように、「まで(up to)」、「少なくとも
(at least)」、「より大きい(greater than)」、「より小さい(less than)」、「
超えて(more than)」などの語はすべて、引用された数を含み、上述したような下位範
囲に続いて分解できる範囲を指す。同じ方法で、本明細書で開示したすべての比も、より
広い比に含まれるすべての下位比を含む。
【0035】
これらの化合物の投与は、経口及び非経口経路を含む、化合物が有効量で生体利用され
るどの経路によってもよい。化合物は、静脈内に、局所的に、皮下に、経皮的に、直腸か
ら、筋肉内に、経皮的に、または他の非経口経路によって投与できる。化合物は経口投与
されるときに、たとえばカプセル剤、錠剤、液剤、懸濁剤などを含む、従来のどの投薬形
で投与することもできる。
【0036】
試験は、トレプロスチニルが皮膚との接触時に刺激がありうることを示している。これ
に対して、本明細書で開示した化合物の一部は一般に、トレプロスチニルのプロドラッグ
として、皮膚に対して刺激がない。したがって本化合物は、局所または経皮投与に十分に
適している。
【0037】
被験体に投与されるときに、上の化合物、及び特に構造Iの化合物はプロスタサイクリ
ンミメティックであり、血管拡張及び/または血小板凝集の阻害の症状または障害あるい
はプロスタサイクリンが利益を示す他の障害の治療において、たとえば肺高血圧症の治療
において有用である。したがって、本発明は、本明細書で述べた化合物、たとえば上の構
造Iの化合物の1又はそれ以上の薬学的有効量を好ましくは経口的に、そのような治療が
必要な患者に投与することを含む、被験体においてプロスタサイクリン様効果を誘起させ
る方法を提供する。一例として、本化合物の血管拡張効果は、各種の形態の結合組織疾患
、たとえば狼瘡、強皮症または混合結合組織疾患から生じる、肺高血圧症を治療するため
に使用可能である。これらの化合物はそれゆえ、肺高血圧症の治療に有用である。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、構造II:
【化9】

(式中、
1は、H、置換及び非置換アルキル基、アリールアルキル基及びOR1が置換または非
置換グリコールアミドエステルを形成する基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じかまたは異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条
件で、H、ホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ酸またはタンパク質のエステル
を形成する基から成る群より独立して選択される)の化合物;
その化合物のエナンチオマー;及び
その化合物の薬学的に許容される塩の薬学的有効量を投与することによって、被験体にお
いてプロスタサイクリン様効果を促進する方法も提供する。
【0039】
OR1が置換または非置換グリコールアミドエステルを形成する基において、R1は−C
2CONR45であることが可能であり、ここでR4及びR5は同じかまたは異なり、H
、OH、置換及び非置換アルキル基、−(CH2mCH3、−CH2OH、及び−CH2
CH2nOH(但し、mは0、1、2、3または4であり、nは0、1、2、3または4
である)から成る群より独立して選択される。
【0040】
血管拡張を誘起する、または高血圧を治療する他の方法において、R1はC1−C4アル
キル基、たとえばメチル、エチル、プロピルまたはブチルであることが可能である。他の
方法において、R1は置換または非置換ベンジル基、たとえば−CH265、−CH26
4NO2、−CH264OCH3、−CH264Cl、−CH264(NO22、また
は−CH264Fである。ベンジル基は、オルト、メタ、パラ、オルト/パラ置換及び
その組合せであることが可能である。芳香環上の適切な置換基は、ハロゲン(フッ素、塩
素、臭素、ヨウ素)、−NO2基、R16がHまたはC1−C4アルキル基である−OR16
、及びその組合せを含む。
【0041】
あるいは、R1が−CH2CONR45であるとき、R4及びR5は同じかまたは異なり、
H、OH、−CH3、及び−CH2CH2OHから成る群より独立して選択される。これら
の方法において、R1がHでない場合、一般にR2及びR3の一方または両方がHである。
【0042】
ある方法において、R2及びR3の一方または両方がHであり、R1は−CH3、−CH2
65である。R2及びR3の一方または両方がHである他の方法において、R1は−CH2
CONR45であり、R4及びR5の一方または両方はH、−OH、−CH3、−CH2CH
2OHである。
【0043】
2及びR3の一方または両方がHでない方法において、R2及びR3は、ホスフェートな
らびにOR2及びOR3がアミノ酸のエステル、ジペプチド、トリペプチドのエステル及び
テトラペプチドのエステルである基より独立して選択できる。いくつかの実施形態におい
て、R2またはR3の一方のみがホスフェート基である。R2及びR3の少なくとも一方がH
でない方法において、一般にR1はHである。他の方法において、R2またはR3の一方が
Hであり、R2またはR3の他方は本明細書で別に定義されている通りである。ある方法に
おいて、R2はHであり、R3はHでない。追加の実施形態において、R1及びR3はHであ
り、R2はOR2がアミノ酸またはジペプチドのエステルである基である。さらなる実施形
態において、R1及びR2はHであり、R3はOR3がアミノ酸またはジペプチドのエステル
である基である。
【0044】
この方法において、一方または両方がアミノ酸またはペプチド、すなわちジペプチド、
トリペプチドまたはテトラペプチドのエステルを形成する場合、これらは一般に−COC
HR6NR78として示すことが可能であり、ここでR6はアミノ酸側鎖から成る群より選
択され、R7及びR8は同じかまたは異なり、H、及び−COCHR9NR1011から成る
群より独立して選択される。アミノ酸がプロリンである実施形態において、R7はR6と共
にピロリジン環構造を形成する。R6は、天然型アミノ酸側鎖、たとえば−CH3(アラニ
ン)、−(CH23NHCNH2NH(アルギニン)、−CH2CONH2(アスパラギン
)、−CH2COOH(アスパラギン酸)、−CH2SH(システイン)、−(CH22
ONH2(グルタミン)、−(CH22COOH(グルタミン酸)、−H(グリシン)、
−CHCH3CH2CH3(イソロイシン)、−CH2CH(CH32(ロイシン)、−(C
24NH2(リジン)、−(CH22SCH3(メチオニン)、−CH2Ph(フェニル
アラニン)、−CH2OH(セリン)、−CHOHCH3(トレオニン)、−CH(CH3
2(バリン)、
【化10】

−(CH23NHCONH2(シトルリン)または−(CH23NH2(オルニチン)のい
ずれでもよい。Phはフェニル基を示す。
【0045】
上の化合物において、R7及びR8は同じかまたは異なり、H、及び−COCHR9NR1
011から成る群より選択され、ここでR9はアミノ酸の側鎖であり、R10及びR11は同じ
かまたは異なり、H、及び−COCHR12NR1314から成る群より選択され、ここでR
12はアミノ酸側鎖であり、R13及びR14は同じかまたは異なり、H、及び−COCHR15
NH2から成る群より独立して選択される。当業者は、ペプチド鎖が以下のスキームで所
望の長さまで延伸し、所望のアミノ酸残基を含むことを認識するであろう。
【0046】
OR2及びOR3基のどちらかまたは両方がペプチド、たとえばジペプチド、トリペプチ
ド、テトラペプチドなどのエステルを形成する実施形態において、ペプチドは、ホモペプ
チド、すなわち同じアミノ酸残基の反復、またはヘテロペプチド、すなわちアミノ酸の異
なる組合せの構造のどちらでもよい。
【0047】
当業者によって理解されるように、R7及びR8の一方のみがジ、トリ及びテトラペプチ
ドにおけるように、さらなるアミノ酸へのペプチド結合を含むときに、得られたペプチド
鎖は線形となるであろう。R7及びR8の両方がペプチド結合を含むとき、ペプチドは分岐
可能である。
【0048】
本化合物のなお他の実施形態において、R1はHであり、R2又はR3の一方はホスフェ
ート基又はHであり、同時に他方のR2又はR3は、OR2又はOR3がアミノ酸のエステル
、たとえばグリシン又はアラニンのエステルであるような基である。
【0049】
いくつかの方法において、投与された化合物は、トレプロスチニルの経口バイオアベイ
ラビリティの少なくとも25%、50%、100%、200%、400%である経口バイ
オアベイラビリティを有することができる。一般に、経口投与したときに、より高い絶対
経口バイオアベイラビリティ、たとえば15%、20%、25%、30%及び40%、4
5%、50%、55%、60%又はそれ以上を有する化合物を投与することが好ましい。
【0050】
トレプロスチニルは、両方とも本出願内に組み込まれる、2001年12月10日に提
出された米国特許出願第10/006,197号及び2002年1月16日に提出された第10/047,8
02号に開示されている癌細胞の転移を阻害することも発見されている。したがって、上述
の化合物、及び特に構造I及びIIの化合物は、癌及び癌関連障害の治療にも使用可能であ
り、そのようなものとして本発明は、癌を治療するための製薬組成物及び方法を提供する
。本化合物を使用する適切な製剤及び方法は、本発明の化合物、たとえば構造I及びII
の化合物及び特にトレプロスチニルのプロドラッグで、2002年1月16日に提出され
た米国特許出願第10/006,197号及び第10/047,802号に開示された活性化合物を置換するこ
とによって実施できる。
【0051】
以下の構造I及び構造IIの化合物の合成は、以下のように実施できる:
【0052】
トレプロスチニルのメチルエステル(2)及びトレプロスチニルのビホスフェートエス
テルの合成
【化11】

【0053】
トレプロスチニルのメチルエステル(2)の合成
トレプロスチニルのメチルエステル(2)は、トレプロスチニル(1)1.087g(
2.8ミリモル)を無水塩酸のメタノール飽和溶液 50mlによって処理することによっ
て調製した。室温での24時間後、メタノールを乾燥まで蒸発させ、残留物をジクロロメタ
ン 200mlに取った。ジクロロメタン溶液を炭酸カリウム10%水溶液によって、次に
水によって中性pHまで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させて、濾過し、溶媒を真空中
で除去して、トレプロスチニルメチルエステル(2)を収率98%で黄色油として得た。
粗メチルエステルはたとえば続いての反応で使用した。
【0054】
トレプロスチニルのビホスフェートエステル(4)の合成
手順はSteroids, 2(6), 567-603(1963)にならって改良した。トレプロスチニルのメチ
ルエステル(2)(60mg、0.15ミリモル)を無水ピリジン 2mlに溶解させ、2−
シアノエチルホスフェート 1M(0.3ml、0.3ミリモル)の予め調製したピリジニ
ウム溶液のピリジニウム溶液(Methods in Enzymology, 1971, 18(c),54−57を参照)を
真空中で40℃にて乾燥まで濃縮した。無水ピリジンを添加し、反応混合物を再度濃縮し
た;水を完全に除去するために、操作を2回反復した。最後に残留物を無水ピリジン 2m
lに溶解させ、ジシクロヘキシルカルボジイミド 190mg(0.9ミリモル)を無水ピリ
ジン 2ml中に溶液として添加した。閉じたフラスコ内の反応混合物を室温にて48時間
に渡って磁気的に攪拌した。水 1mlを添加し、1時間後、真空中で混合物を高粘度ペー
ストになるまで濃縮した。反応混合物を、水酸化ナトリウム 35mgを含有する1/9 水
/メタノール溶液 3mlによって室温にて一晩処理した。形成された白色固体(ジシクロ
ヘキシル尿素)を濾過によって除去し、それを水で十分に洗浄した。水−メタノール溶液
を真空中でほぼ乾燥まで濃縮し、水を添加し、溶液をn−ブタノール(3x2ml)を用い
て、次にメチレンクロライド(1x2ml)を用いて抽出した。溶液のpHをスルホン酸イ
オン交換樹脂(H+cycle-Dowex)を用いた処理によって9.0に調整し、より長時間(〜
12時間)のDowex樹脂による処理は、TBDMS基の開裂及び遊離カルボキシ基の回収の両方
を引き起こす。樹脂を濾過し、溶液を乾燥まで濃縮し、対応するビスホスフェート4(4
3mg、収率52%)を得た。
【0055】
トレプロスチニルの3’−モノホスフェートエステル(8)及びトレプロスチニルの2−
モノホスフェートエステル(10)の合成
【化12】

【0056】
トレプロスチニルのモノ保護TBDMSメチルエステル(5及び6)の合成
手順はOrg. Synth. , 1998,75, 139-145から適合させた。トレプロスチニルメチルエス
テル(2)(305.8mg、0.75ミリモル)を無水ジクロロメタン 15mlに溶解さ
せ、溶液を氷浴上で0℃まで冷却した。イミダゾール(102mg、1.5ミリモル)及び
tert−ブチルジメチルシリルクロライド(226.2mg、1.5ミリモル)を添加し
、混合物を30分間攪拌しながら0℃にて維持し、次に室温にて一晩攪拌した。水(25
ml)を添加し、有機層を分離した。次に水層をジクロロメタン(3x50ml)で抽出した
。有機層をNaSO4上で乾燥させ、溶液を濾過し、溶媒を真空中で除去して、粗反応生
成物 447mgを得た。粗反応生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、35%
エチルアセテート/ヘキサン)によって分離し、ビス−TBDMS保護トレプロスチニル
メチルエステル140mg、2-TBDMS保護トレプロスチニルメチルエステル(6)16
0mg及び3’−TBDMS保護トレプロスチニルメチルエステル(5)60mgを得た。
【0057】
トレプロスチニルのモノホスフェートエステル 8/10の合成
手順はSteroids, 1963,2(6), 567-603にならって改良し、(6)及び(5)から開始す
る(8)及び(10)それぞれについて同じである。トレプロスチニルのTBDMS保護
メチルエステル(6)(46mg、0.09ミリモル)を無水ピリジン 2mlに溶解させ、
2−シアノエチルホスフェート 1M(0.2ml、0.2ミリモル)の予め調製したピリ
ジニウム溶液のピリジニウム溶液(Methods in Enzymology, 1971, 18(c),54-57を参照)
を真空中で40℃にて乾燥まで濃縮した。無水ピリジンを添加し、反応混合物を再度濃縮
した;水を完全に除去するために、操作を2回反復した。最後に残留物を無水ピリジン
2mlに溶解させ、ジシクロヘキシルカルボジイミド 116mg(0.56ミリモル)を無
水ピリジン 2ml中に溶液として添加した。閉じたフラスコ内の反応混合物を暗所で室温
にて48時間に渡って磁気的に攪拌した。水 5mlを添加し、1時間後、真空中で混合物
を高粘度ペーストになるまで濃縮した。反応混合物は、水酸化ナトリウム 100mgを1
/9 水/メタノール溶液 10mlによって室温にて一晩処理した。形成された白色固体(
ジシクロヘキシル尿素)を濾過によって除去し、それを水で十分に洗浄した。水−メタノ
ール溶液を真空中でほぼ乾燥まで濃縮し、水を添加し、溶液をn−ブタノール(3x10m
l)を用いて、次にメチレンクロライド(1x10ml)を用いて抽出した。溶液のpHをス
ルホン酸イオン交換樹脂(H+cycle-Dowex)を用いた処理によって9.0に調整した;よ
り長時間(〜12時間)のDowex樹脂による処理は、TBDMS基の開裂及び遊離カルボキシ基
の回収の両方を引き起こす。樹脂を濾過し、溶液を乾燥まで濃縮し、対応するモノホスフ
ェート8(33mg、収率68%)を得た。
【0058】
トレプロスチニルのメチルエステル(2)の合成
【化13】

【0059】
気体塩酸によって飽和させる前に(2)(1g;2.56ミリモルミリモル)をメタノ
ール(50ml)に添加し、混合物をかき混ぜて透明溶液とし、これを室温にて一晩静置し
た。溶媒を真空中で除去し、残留物を20%炭酸カリウム溶液で中和し、ジクロロメタン
で抽出した。有機層を水によって洗浄し、無水マグネシウムサルフェート上で乾燥させ、
蒸発させて粗生成物(0.96g)を得た。分取tlc(シリカゲルプレート;溶出液:7
:3(v/v)ヘキサン−エチルアセテート)による精製により、2(0.803;77
.5%)、無色油を得た。
【0060】
トリトレプロスチニルジエタノールアミン(UT-15C)の合成
トレプロスチニル酸をエタノール:水の1:1モル比の混合物に溶解させ、ジエタノー
ルアミンを添加し、溶解させる。溶液を加熱し、冷却中にアセトンを貧溶媒として添加す
る。
【0061】
トレプロスチニルメチルエステルのジグリシルエステル(12)の合成
【化14】

(2)メチルエステル2(0.268g;0.66ミリモル)のジクロロメタン(30
ml)による磁気攪拌溶液に、N−カルボベンジルオキシグリシンp−ニトロフェニルエス
テル(0.766g;2.32ミリモル)及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(250mg
;2.05ミリモル)を続けて添加した。得られた黄色溶液を20℃にて24時間攪拌し
、次に5% 水酸化ナトリウム溶液(20ml)によって処理して、攪拌を15分間継続し
た。ジクロロメタン(50ml)を添加し、層を分離して、有機相を5% 水酸化ナトリウ
ム溶液(6x20ml)、水(30ml)、10% 塩酸(2x40ml)、5% ナトリウムバイ
カーボネート溶液(40ml)で洗浄して、無水ナトリウムサルフェート上で乾燥させた。
溶媒の除去によって、粗(11)(0.61g)を薄黄色粘性油として得た。勾配9/1
〜1/2(v/v)のヘキサン−エチルエーテルで溶出する、シリカゲルを用いたフラッ
シュカラムクロマトグラフィーによる精製により、0.445g(85.3%)の11を
、融点70〜72℃の白色結晶として得た。’Fl−NMR[CDCl3;δ(ppm)
]:3.786(s)(3H,COOCH3),3.875(d)(2H)及び3.94
0(d)(2H)(NH−CH2−COO),4.631(s)(2H,OCH2COOC
3),4.789(m)(1H,OOC−CH2NHcbzの隣)及び4.903(m)
(1H,OOCCH2NHcbzの隣),5.09(s)(4H,C65CH2O),5.
378(m)(1H)及び5.392(m)(1H)(NH),7.295−7.329
(m)(10OH,C65)。LR ESI−MS(m/z):787.1[M+H]+
,804.1[M+NH4+,809.3[M+Na]+,825.2[M+K]+,15
90.5[2M+NH4+,1595.6[2M+Ha]+
【0062】
メチルエステル、ジグリシルエステル(12)
エステル(11)(0.4g;0.51ミリモル)のメタノール(30ml)による溶液
をParr水素添加装置の圧力ボトル内に導入し、10% 活性炭担持パラジウム(0.2g
;0.197ミリモル Pd)を添加し、装置を閉じて、水素で3回パージして、50p
siにて水素を装填した。攪拌を開始し、水素添加を室温にて5時間実施した。水素を減
圧吸引によって装置から除去し、アルゴンと置換した。触媒をフィット上に配置されたセ
ライトで濾過し、濾液を真空中で濃縮して、0.240g(91%)の4を融点98〜1
00℃の白色固体として得た。
【0063】
トレプロスチニルのベンジルエステル(13)の合成
【化15】

(2)(2g;5.12ミリモル)の無水テトラヒドロフラン(20ml)による攪拌溶液
に、ベンジルブロミド(0.95ml;7.98ミリモル)及び新たに蒸留したトリエチル
アミン(1.6ml;11.48ミリモル)を室温にて続けて添加し、得られた溶液を12
時間に渡って攪拌しながら還流させた。白色沈殿が徐々に形成した。溶媒を真空中で蒸留
して除き、残留物を水(30ml)で処理した。メチレンクロライドによる抽出時に、エマ
ルジョン形成が起きる。有機層及び水層は、5% 塩酸溶液(20ml)による処理後にの
み分離できる。有機層を水で洗浄し、無水ナトリウムサルフェート上で乾燥させて蒸発さ
せ、残留物を減圧下、五酸化リン上でさらに乾燥させ、黄色粘性油(2.32g)を得て
、これを分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート;溶出液:1:2、v/v、
ヘキサン/エチルエーテル)によって精製した。収率:81.2%。
【0064】
トレプロスチニルのビス−グリシルエステル(15)の合成
【化16】

【0065】
ベンジルエステル、ジ−cbzGlyエステル(14)
ベンジルエステル13(1g;2.08ミリモル)のジクロロメタン(50ml)による
磁気攪拌溶液に、N−カルボベンジルオキシグリシンp−ニトロフェニルエステル(2.
41g;7.28ミリモル)及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(788mg;6.45ミ
リモル)を添加した。得られた黄色溶液を20℃にて21時間攪拌し、次に5% 水酸化
ナトリウム溶液(6x45ml)、10% 塩酸(2x40ml)、5%ナトリウムバイカーボ
ネート溶液(40ml)によって続けて洗浄し、無水ナトリウムサルフェートで乾燥させた

溶媒の除去、それに続く減圧下での五酸化リン上での乾燥により、粗14(2.61g)
を薄黄色油として得た。勾配9:1〜1:2(v/v)のヘキサン−エチルエーテルで溶
出する、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製により、(
14_(1.51g;84.1%)を無色の非常に粘性の油として得た。
【0066】
ジグリシルエーテル(15)
エステル(14)(0.4g;0.46ミリモル)のメタノール(30ml)による溶液
をエステル(12)について述べたように、10% Pd/C上で水素添加した。ワーク
アップ及び五酸化リン上、真空中での乾燥により、エステル15 0.170g(72.
7%)を融点155〜158℃の白色固体として得た。
【0067】
トレプロスチニルの3’−グリシルエステル19の合成
【化17】

【0068】
ベンジルエステル、t−ブチルジメチルシリルモノエステル(16)
tert−ブチルジメチルシリルクロライド(0.45g;2.98ミリモル)のジク
ロロメタン(8ml)による溶液を10分間に渡って室温にて、ベンジルエステル13(0
.83g;1.73ミリモル)及びイミダゾール(0.33g;4.85ミリモル)のジ
クロロメタン(20ml)による攪拌溶液に滴加した。攪拌を一晩継続し、次に水(20ml
)を添加し、混合物を1時間攪拌して、層を分離し、有機層を無水ナトリウムサルフェー
ト上で乾燥させて、真空中で濃縮してやや黄色の油(1.15g)を得た。粗生成物は、
モノTBDMS(16)及びジTBDMSエステル(1H−NMR)の混合物である。9:1(v/
v)ヘキサン−エチルアセテート混合物によって溶出する、シリカゲルを用いたカラムク
ロマトグラフィーにより、第1画分中にジエステル(0.618g)を、そして次の画分
中にエステル16(0.353g;13に対する収率:34.4%)をただちに得た。エ
ステル16のシリカゲルでの分析tlcは、スポット(溶出液:3:2(v/v)ヘキサン
−エチルエーテル)を1つのみ示した。結果として、上の反応条件下で、他の考えられる
異性体(側鎖ヒドロキシルにおけるモノTBDMSエステル)は観察されなかった。
【0069】
tert−ブチルジメチルシリルクロライド:エステル13のモル比を1.49に低下
させた(勾配9.5/0.5〜3/1(v/v)のヘキサン−エチルエーテルによって溶
出させる、シリカゲルを用いた生成物のフラッシュカラムクロマトグラフィーが続く)別
の実験は、望ましくないジ−OTBDMS副生成物の含有率低下(36.5%、純粋な単離物質
として)を引き起こす。モノ−OTBDMSエステル画分(45.1%;単離物質)は、エステ
ル16(98%)及び明確に分離できるその側鎖異性体(2%)より構成されていた;後
者はモノエステル画分の最後においてのみ証明された(tlc、NMR)。
【0070】
ベンジルエステル、cbz−グリシルモノエステル(18)
エステル16(0.340g;0.57ミリモル)のジクロロメタン(15ml)による
磁気攪拌溶液に、N−カルボベンジルオキシグリシンp−ニトロフェニルエステル(0.
445g;1.35ミリモル)及び4−(ジエチアミノ)ピリジン(150mg;1.2
3ミリモル)を連続して添加した。溶液を20℃にて40時間攪拌した。エステル11及
び14について述べたワークアップにより、90% 17及び10% 18(1H−NMR
)を含有する粗生成物(0.63g)を得た。保護TBDMS基を完全に除去するために、こ
の混合物をエタノール(30ml)に溶解させ、室温にて一晩攪拌することにより酸化水分
解(5% HCl、7ml)させた。次に溶媒を減圧下で除去し、残留物をジクロロメタン
(3x50ml)中で抽出した;有機層を分離し、水(50ml)で1回洗浄して、ナトリウ
ムサルフェート上で乾燥させ、真空中で濃縮して、粗エステル18(0.51g)を得た
。エステル11及び14についてのフラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製で、
エステル18(0.150g;全収率:39.1%)を無色粘性油として得た。
【0071】
グリシルモノエステル(19)
エステル18(0.15g;0.22ミリモル)のメタノール(30ml)による溶液を
、エステル12及び15について述べたように、10% Pd/C上で水素添加した。ワ
ークアップ及び真空中での五酸化リン上での乾燥により、エステル10(0.98g;9
8.0%)を、融点74〜76℃の白色光沢結晶として得た。LR ESI−MS(m/
z):448.2[M+H]+、446.4[M−H]-
【0072】
トレプロスチニルの3’−L−ロイシルエステル22の合成
【化18】

【0073】
ベンジルエステル、t−ブチルジメチルシリルモノエステル、cbz−L−ロイシルモノ
エステル(20)
エステル16(0.38g:0.64ミリモル)及びN−カルボベンジルオキシ−L−
ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.37g;1.02ミリモル)のジ
クロロメタン 10mlの攪拌溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン 10ml(0.17g
;1.39ミリモル)を添加して、次に攪拌を室温にて2日間継続した。溶媒を真空中で
除去して、粗生成物(0.9g)を、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラ
フィーにかけて、9:1 ヘキサン−エチルアセテートによって溶出させた;最初に収集
した画分により、油(0.51g)を得て、これはそのNMRスペクトル及びtlcに基づ
いて、エステル20及び開始エステル16の2:1混合物であることが判明した。シリカ
ゲルを用いた分取tlc(溶出液:エチルアセテート−ヘキサン 1:4)によって、純粋な
20を無色油として得た(7に基づいた全収率:62.6%)。
【0074】
ベンジルエステル、cbz−L−ロイシルモノエステル(21)
t−ブチルジメチルシリルモノエステル20におけるシクロペンテニルヒドロキシルの
脱保護は、均質性を確保するためにエタノール単独の代わりに1:5(v/v)クロロホ
ルム−エタノール混合物を使用したことを除いて、18について述べたような希塩酸溶液
を用いた処理によって成功した。ワークアップによって20を無色油として収率87.6
%で得た。
【0075】
L−ロイシルモノエステル(22)
21のベンジル及びN−カルボベンジルオキシ基の水素添加分解を18について実施し
た。ワークアップにより、22(95.3%)を融点118〜120℃の白色固体として
得た。
【0076】
トレプロスチニルの2−L−ロイシルエステル25の合成
【化19】

【0077】
ベンジルエステル、cbz−L−ロイシルモノエステル(21、23)及び−ジエステル
(24)
エステル13(0.53g;1.10ミリモル)及びN−カルボベンジルオキシ−L−
ロイシンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.76g;2.05ミリモル)のジ
クロロメタン(30ml)による攪拌溶液に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.29g
;2.37ミリモル)を添加し、次に攪拌を室温にて1日継続した。溶液をジクロロメタ
ン(40 ml)で希釈し、5% 水酸化ナトリウム溶液(4x25ml)、10% 塩酸(2x3
0ml)、5% ナトリウムバイカーボネート溶液(50ml)で続けて洗浄し、無水ナトリ
ウムサルフェート上で乾燥させて、減圧下で濃縮して、粗生成物(0.85g)を粘性黄
色油として得た。薄層クロマトグラフィーによって、対応するTF値によって、エステル
13及び21がcbz−L−ロイシンと同様に少量の生成物としてのみ確認できる、複合
混合物が明らかとなった。粗生成物は、シリカゲルカラムを通じてフラッシュクロマトグ
ラフィーにかけ、勾配ヘキサン−エチルエーテルを用いて溶出させた。7:3(v/v)
ヘキサン−エチルエーテルにて、第1の画分によってcbz−L−ロイシルジエステル2
4(クロマトグラフィーにかけた生成物の6%)を得たのに対して、2つの続いての画分
によって、cbz−L−ロイシルモノエステル23(純粋な単離23として、粗生成物の
54%;2に対して収率57.6%)を得た。両方の化合物の純度を分析tlc及びNMR
によって確認した。他方の異性体、cbz−L−ロイシルモノエステル21は、粗生成物
のわずか約5%を構成し、後者の分取tlcによって、わずか3:1の23/21混合物で
単離された。
【化20】

【0078】
L−ロイシルモノエステル(25)
23のエステル25への水素添加分解は、化合物12について述べたように実施したが
、反応は35psiにて一晩実施した。ワークアップ及び真空中での五酸化リン上での乾
燥によって、25を融点153〜155℃の白色固体として定量的収率で得た。
【0079】
トレプロスチニルの3’−L−アラニルエステル30の合成
【化21】

【0080】
N−Cbz−L−アラニルp−ニトロフェニルエステル(27)
N−カルボベンジルオキシ−L−アラニン(1g;4.48ミリモル)及びp−ニトロ
フェノール(1g;7.19ミリモル)を含有する無水テトラヒドロフラン(7ml)の攪
拌溶液に1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.11g;5.38ミリモル)の
テトラヒドロフラン(5ml)による微小懸濁物を30分間に渡って添加した。攪拌を室温
にて18時間継続し、氷酢酸(0.3ml)を添加し、1,3−ジシクロヘキシル尿素を濾
過して、溶媒を40℃にて真空中で除去し、粘性の黄色赤みがかった油(2.5g)を得
た。1H−NMRスペクトルは、N−カルボベンジルオキシ−Lアラニンp−ニトロフェ
ニルエステル(27)、未反応p−ニトロフェノール及び少量のDCUより成る混合物を示
し、これを次の反応段階でそのまま使用した。
【化22】

【化23】

【0081】
ベンジルエステル、cbz−L−アラニルモノエステル(29)
4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.30g;2.49ミリモル)のジクロロメタン
(3ml)による溶液を、エステル16(0.37g;0.62ミリモル)及び粗N−カル
ボベンジルオキシ−L−アラニンp−ニトロフェニルエステル(0.98g)のジクロロ
メタン(12ml)による磁気攪拌溶液中へ迅速に(5分間に渡って)滴加した。混合物を
室温にて一晩攪拌して、次にジクロロメタン(50ml)で希釈し、5% 水酸化ナトリウ
ム溶液(7x35ml)、10% 塩酸(3x35ml)、5°/a ナトリウムバイカーボネート
溶液(50ml)で完全に洗浄し、無水ナトリウムサルフェート上で乾燥させ、減圧下で濃
縮して、粗エステル28(1.1g)を得た。後者をエタノール(30ml)に溶解させて
、5% 塩酸(8ml)及びクロロホルム(5ml)を添加し、溶液を一晩攪拌した。溶媒を
真空中で除去し、残留物をジクロロメタン中に取って、5% 炭酸水素ナトリウム溶液を
用いてpH7まで洗浄し、無水ナトリウムサルフェート上で乾燥させて、溶媒を蒸発させ
て、粗29(1.04g)を得た。勾配ヘキサン−エチルエーテルで溶出させる、シリカ
ゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによる精製により、無色の非常に高粘度の油(0
.11g;16に基づいて、全収率25.8%)としての純29の画分の分離(ヘキサン
:エチルエーテル=1:1 v/vにて)が可能となった。
【0082】
L−アラニルモノエステル(30)
29におけるベンジル及びN−カルボベンジルオキシ基の除去は、12で述べたような
触媒水素添加によって実施した。エステル30は、薄黄色の部分的に結晶化した油として
得られた(収率:97.2%)。
【0083】
トレプロスチニルベンジルエステルの3’−L−バリンエステル33の合成
【化24】

トレプロスチニルのベンジルエステル13の合成
【0084】
ベンジルエステル11は、J.C. Lee et al.によってOrganic
Prep.and Proc.Intl.,1996,28(4),480−483で述
べられた方法を改良して合成した。1(620mg、1.6ミリモル)及びセシウムカーボ
ネート(782.4mg、2.4ミリモル)のアセトニトリル(30ml)による溶液に、ベ
ンジルブロミド(0.48ml、4モル)を添加し、混合物を還流下で1時間攪拌した。室
温での冷却の後、沈殿を濾過し、濾液を真空中で濃縮した。残留物をクロロホルム(15
0ml)に溶解させ、NaHCO3の2% 水溶液(3x30ml)で洗浄した。有機層を塩水
で洗浄し、NaSO4上で乾燥させて、濾過して、溶媒を真空中で除去して、粗ベンジル
エステル13 750mg(収率98%)を黄色粘性油として得た。粗ベンジルエステル
13はカラムクロマトグラフィー(100−0% ジクロロメタン(メタノール)によっ
て精製できるが、引き続く反応では粗製のまま使用できる。
【0085】
TBDMS保護トレプロスチニルベンジルエステル16の合成
TBDMS保護ベンジルエステルの合成の手順は、Organic Synth., 1998,75,139-145
から適合させた。ベンジルエステル13(679mg、1.4ミリモル)を無水ジクロロメ
タン(20ml)に溶解させ、溶液を氷浴で0℃まで冷却した。イミダゾール(192mg、
2.8ミリモル)及びtert−ブチル−ジメチルシリルクロライド(TBDMSC1)(42
0mg、2.8ミリモル)を添加し、混合物は氷浴中でさらに30分間攪拌を維持して、次
に室温で一晩放置した。水 40mlを反応混合物に添加して、有機層を分離した。水層を
ジクロロメタン 3x50mlで抽出した。合せた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し
て、溶媒を真空中で除去した。これにより、所望のモノTBDMS保護5ベンジルエステ
ルとビス−TBDMS保護ベンジルエステルとの混合物であることが判明した物質 79
5mgを得た。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(溶出液 35% エチルアセ
テート/ヘキサン)によって、純16(249mg)を得た。
【0086】
TBDMS保護トレプロスチニルベンジルエステルのN−Cbz−L−バリンエステル3
1の合成
使用した手順は、Tetrahedron Lett.,1978,46,4475-4478から適合させた。NCbz−
L−バリン(127mg、0.5ミリモル)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(
DCC)(111mg、0.5ミリモル)、化合物16(249mg、0.4ミリモル)及び4
−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(6mg、0.05モル)の無水ジクロロメタン(
15ml)による溶液を、エステル化が完了するまで室温にて攪拌した。溶液を濾過して、
形成したN,N−ジシクロヘキシル尿素を濾過した。濾液をジクロロメタン(80ml)で
希釈して、水(3x30ml)、5% 酢酸水溶液(2x30ml)及び次に再度、水(3x30
ml)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸発させて369mg
の粗31を得た。クロマトグラフィー(シリカゲル、35% エチルアセテート/ヘキサ
ン)により、純31を得た。
【0087】
トレプロスチニルベンジルエステルの3’−N−Cbz−L−バリンエステル32の合成
化合物31のTBDMS基の開裂は、Org. Letters, 2000,2(26),4177-4180に述べられた手
順の改良を使用して実施した。TBDMS保護ベンジルエステルのN−Cbz−L−バリ
ンエステル31(33mg、0.04ミリモル)をメタノール(5ml)に溶解させ、テトラ
ブチルアンモニウムトリブロミド(TBATB)(2mg、0.004ミリモル)を添加した。
反応混合物は、TBDMS脱保護が完了するまで、室温にて24時間攪拌した。メタノールを
蒸発させ、残留物をジクロロメタンに取った。ジクロロメタン溶液を塩水で洗浄し、次に
Na2SO4上で乾燥させた。乾燥剤を除去した後、溶媒を乾燥まで蒸発させて、30.2
mgの粗化合物32を得た。
【0088】
トレプロスチニルの3’−L−バリンエステル33の合成
ベンジル基及びベンジルカルボキシル基を触媒水素添加によって、大気圧にて活性炭素
担持パラジウム10重量%の存在下で除去した。ベンジルエステルの3’−N−Cbz−
L−バリンエステル32(30.2mg、0.04ミリモル)をメタノール(10ml)に溶
解させて、Pd/Cの触媒量を添加した。磁気攪拌の下で空気をフラスコから除去し、次
に水素を入れた。反応混合物を水素下で維持し、室温にて24時間攪拌して、次に水素を
真空によって除去した。次に反応混合物をセライトの層で濾過し、溶媒を真空中で除去し
て、トレプロスチニルの純粋な3’−L−バリンエステル33(15mg、0.03ミリモ
ル)を得た。
【0089】
トレプロスチニルの2−L−バリンエステル36/Trenrostinilのビス−L
−バリンエステル37の合成
トレプロスチニルの2−L−アラニンエステル36’/トレプロスチニルのビス−L−ア
ラニンエステル37’の合成
【化25】

【0090】
トレプロスチニルベンジルエステルの2−N−Cbz−L−バリンエステル34及びトレ
プロスチニルベンジルエステルのビス−N−Cbz−L−バリンエステル35の合成
使用した手順は、Tetrahedron Lett.,1978,46,4475-4478から適合させた。NCbz−
L−バリン(186mg、0.7ミリモル)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(
DCC)(167mg、0.8ミリモル)、化合物13(367mg、0.8ミリモル)及び4
−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(12mg、0.09ミリモル)の無水ジクロロメ
タン(15ml)による溶液を、室温にてエステル化が完了するまで室温にて攪拌した。溶
液を濾過して、形成したN,N−ジシクロヘキシル尿素を濾過した。濾液をジクロロメタ
ン(100ml)で希釈して、水(3x50ml)、5% 酢酸水溶液(2x50ml)及び次に
再度、水(3x50ml)で洗浄した。有機層をNaSO4上で乾燥させ、溶媒を真空中で蒸
発させて、556mgの粗生成物を得た。生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、35
% エチルアセテート/ヘキサン)で分離して、369.4mgの2−バリンエステル34
及び35 98mgのビス−バリンエステルを得た。
【0091】
トレプロスチニルベンジルエステルの2N−Cbz−L−アラニンエステル34’及びト
レプロスチニルベンジルエステルのビス−N−Cbz−L−アラニンエステル35’の合

使用した手順は、Tetrahedron Lett.,1978,46, 4475-4478から適合させた。NCbz−
L−アラニン(187mg、0.84ミリモル)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミ
ド(DCC)(175mg、0.85ミリモル)、化合物13(401mg、0.84ミリモル
)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(UMAP)(11.8mg、0.1ミリモル)の無水
ジクロロメタン(15ml)による溶液を、エステル化が完了するまで室温にて攪拌した。
溶液を濾過して、形成したN,N−ジシクロヘキシル尿素を濾過した。濾液をジクロロメ
タン(100ml)で希釈して、水(3x50ml)、5% 酢酸水溶液(2x50ml)及び次
に再度、水(3x50ml)で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を真空中
で蒸発させて、粗生成物 516mgを得た。生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、
35% エチルアセテート/ヘキサン)で分離して、93.4mgの2−アラニンエステル
34’及び227mgのビス−アラニンエステル35’を得た。
【0092】
トレプロスチニルの2−L−バリンエステル36/トレプロスチニルのビス−L−バリン
エステル37の合成
ベンジル基及びベンジルカルボキシル基を触媒水素添加によって、大気圧にて活性炭素
担持パラジウム10重量%の存在下で除去した。トレプロスチニルベンジルエステルの2
−N−Cbz−L−バリンエステル34(58.2mg、0.08ミリモル)/トレプロス
チニルベンジルエステルのビス−N−Cbz−L−バリンエステル35(55.1mg、0
.06ミリモル)をメタノール(10ml)に溶解させて、Pd/Cの触媒量を添加した。
磁気攪拌の下で空気をフラスコから除去し、水素を入れた。反応混合物を水素下で維持し
、室温にて20時間攪拌して、次に水素を真空によって除去した。次に反応混合物をセラ
イトの層で濾過し、溶媒を真空中で除去して、純粋なトレプロスチニルの2−L−バリン
エステル(40mg、0.078ミリモル)/トレプロスチニルのビス−L−バリンエステ
ル37(23mg、0.04ミリモル)を得た。
【0093】
トレプロスチニルの2−L−アラニンエステル36’/トレプロスチニルのビス−L−ア
ラニンエステル37’
ベンジル基及びベンジルカルボキシル基を触媒水素添加によって、大気圧にて活性炭素
担持パラジウム10重量%の存在下で除去した。トレプロスチニルベンジルエステルの2
−N−Cbz−L−アラニンエステル34’(87.4mg、0.13ミリモル)/トレプ
ロスチニルベンジルエステルのビス−N−Cbz−L−アラニンエステ35’(135mg
、0.15ミリモル)をメタノール(15ml)に溶解させて、Pd/Cの触媒量を添加し
た。磁気攪拌の下で空気をフラスコから除去し、水素を入れた。反応混合物を水素下で維
持し、室温にて20時間攪拌して、次に水素を真空によって除去した。次に反応混合物を
セライトの層で濾過し、溶媒を真空中で除去して、純粋なトレプロスチニルの2−L−バ
リンエステル36’(57mg、0.12モル)/トレプロスチニルのビス−L−アラニン
エステル37’(82mg、0.15モル)を得た。
【0094】
トレプロスチニルのベンジルエステル38a−eの合成
【化26】

【0095】
a 4−NO264CH2;b 4−(CH3O)C64CH2;c 2−ClC64CH2
;d 2,4−(NO2263CH2;e 4−FC64CH2。トレプロスチニルのベン
ジルエステル38a−eの合成は、ベンジルエステル13の手順を使用して実施した。
【0096】
以下に示すこれらの化合物のエナンチオマーは、上の試薬のエナンチオマー性キラリテ
ィの試薬及びシントンを使用して合成した。
【化27】

(−)−トレプロスチニルは以下のように合成できる:
【化28】

【0097】
(a)(S)−2−メチル−CBS−オキサザボロリジン、BH3・SMe2、THF、
−30℃、85%。(b)TBDMSCl、イミダゾール、CH2Cl2、95%。(c)
Co2(CO)8、CH2Cl2、2時間、室温、次にCH3CN、2時間、還流。98%。
(d)K2CO3、Pd/C(10%)、EtOH、50psi/24時間。78%(e)
NaOH、EtOH、NaBH4 95%。(f)BnBr、NaH、THF、98%。
(g)CH3OH、TsOH、96%。(h)i.p−ニトロ安息香酸、DEAD、TPP、ベン
ゼン。(i)CH3OH、KOH、94%。(j) Pd/C(10%)、EtOH、5
0psi/2時間。quant.(k)PH2PLi、THF。(l)i.ClCH2CN
、K2CO3。ii、KOH、CH3OH、還流。83%(2段階)。
【0098】
簡単には、市販薬(+)−トレプロスチニルのエナンチオマーを、キー段階としての立
体選択性分子間Pauson Khand反応及び側鎖ヒドロキシル基のMitsuno
bu反転を使用して合成した。(−)−トレプロスチニルの絶対配置は、L−バリンアミ
ド誘導体のX線構造によって確認された。
【0099】
以下の手順を使用して、(−)−トレプロスチニル-メチル−L−バリンアミドを作成
した:(−)−トレプロスチニル(391mg、1ミリモル)及びL−バリンメチルエステ
ルヒドロクロライド(184mg、1.1ミリモル)のDMF(10ml)による攪拌溶液に
Ar下で、BOP試薬(1.04g、2ミリモル)、ジイソプロピルアミン(0.52ml
、3ミリモル)を続けて添加した。反応混合物を室温にて一晩攪拌した(15時間)。真
空中での溶媒の除去及びクロマトグラフィーによる精製によって、白色固体12(481
mg、86%)を得て、これを再結晶化して(ヘキサン中10% エチルアセテート)X線
に適切な結晶を得た。
【0100】
本明細書で議論した追加の化合物を生成できるこれらの合成スキームの各種の変形は、
当業者にただちに明らかになるであろう。
【0101】
循環系でトレプロスチニルを送達するために2つの主要な障壁がある。これらの障壁の
1つは、トレプロスチニルが大きな第1の通過効果を受けることである。肝臓を通じた第
1の循環時に、トレプロスチニル血漿レベルの約60%が代謝され、これにより吸収用量
の約40%のみが残る。またトレプロスチニルの経口送達に対するより大きな障壁は、化
合物が胃腸管における流出機構を受けやすいことである。トレプロスチニルの浸透性は、
Caco-2細胞単層を通じて測定されてきた。頂端から基底への輸送速度は、1.39x106
cm/秒であると測定され、これは高度に浸透性の化合物を示している。しかしながら基
底から頂端への輸送速度は12.3x106cm/秒であり、このことはトレプロスチニル
が上皮細胞の漿膜から管腔側へ効率的に流出されることを示唆している。これらのデータ
は、トレプロスチニルが膜結合多剤トランスポーターであるp糖タンパク質に対して感受
性であることを示唆している。製薬化合物が小腸の粘膜細胞に浸透するのを、それゆえ全
身循環に吸収されるのをp糖タンパク質流出ポンプが防止することが考えられる。
【0102】
したがって本発明は、トレプロスチニル、すなわち構造Iの化合物又は構造IIの化合物
、あるいはその薬学的に許容される塩及びその組合せを、p糖タンパク質の1又はそれ以
上のインヒビターと併せて含む製薬組成物を提供する。p糖タンパク質を阻害することが
示されている多数の非細胞傷害性薬物が、米国特許第6,451,815号、第6,469,022号及び第
6,171,786号に開示されている。
【0103】
p糖タンパク質インヒビターは、ビタミンEの水溶性形態、ポリエチレングリコール、
Pluronic F−68を含むポロクサマー、ポリエチレンオキシド、Cremop
hor EL及びCremophor RH 40を含むポリオキシエチレンヒマシ油誘
導体、クリシン、(+)−タクシフォリン、ナリンゲニン、ジオスミン、ケルセチン、シ
クロスポリンA(シクロスポリンとしても既知)、ベラパミル、タモキシフェン、キニジ
ン、フェノチアジン、及び9,10−ジヒドロ−5−メトキシ−9−オキソ−N−[4−
[2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7,−ジメトキシ−2−イソキノリニル)
エチル]フェニル]−4−アクリジンカルボキサミド又はその塩を含む。
【0104】
ポリエチレングリコール(PEG)は、一般式H(OCH2CH2nOHの液体及び固
体ポリマーであり、式中、nは4以上であり、約200〜約20,000の範囲の各種の
平均分子量を有する。PEGは、アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシポリ−(オキシ
−1,2−エタンジイル)ポリエチレングリコールとしても既知である。たとえば、PE
G 200は、nの平均値が4であり、平均分子量が約190〜約210であるポリエチ
レングリコールである。PEG 400は、nの平均値が8.2〜9.1であり、平均分
子量が約380〜約420であるポリエチレングリコールである。同様にPEG 600
、PEG 1500及びPEG 4000は、それぞれ12.5〜13.9、29〜36
及び68〜84のnの平均値を、そしてそれぞれ570〜630、1300〜1600及
び3000〜3700の平均分子量を有し、PEG 1000、PEG 6000及びP
EG 8000はそれぞれ、950〜1050、5400〜6600、及び7000〜9
000の平均分子量を有する。200〜20000の可変平均分子量のポリエチレングリ
コールは、製薬分野で周知であり、容易に入手できる。
【0105】
本発明での使用に好ましいポリエチレングリコールは、約200〜約20,000の平
均分子量を有するポリエチレングリコールである。より好ましいポリエチレングリコール
は、約200〜約8000の平均分子量を有する。さらに詳細には、本発明での使用にさ
らに好ましいポリエチレングリコールは、PEG 200、PEG 400、PEG 6
00、PEG 1000、PEG 1450、PEG 1500、PEG 4000、P
EG 4600、及びPEG 8000である。本発明での使用に最も好ましいポリエチ
レングリコールは、PEG 400、PEG 1000、PEG 1450、PEG 4
600及びPEG 8000である。
【0106】
ポリソルベート80は、ソルビトール及びソルビトール無水物1モル当たり約20モル
のエチレンオキシドと共重合した、ソルビトール及びその無水物のオレアートエステルで
ある。ポリソルベート80は、ソルビタンモノ−9−オクタデカノアートポリ(オキシ−
1,2−エタンジイル)誘導体より成る。Tween 80としても既知であるポリソル
ベート80は、製薬分野において周知であり、容易に入手できる。
【0107】
水溶性ビタミンEは、d−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000ス
クシナート[TPGS]としても既知であり、天然源ビタミンEの水溶性誘導体である。
TPGSは、ポリエチレングリコール1000による結晶性d−アルファ−トコフェリル
酸スクシナートの酸基のエステル化によって調製される。この生成物は、製薬分野で周知
であり、容易に入手できる。たとえば、水水溶性ビタミンE生成物は、Eastman Corporat
ionからビタミンE TPGSとして市販されている。
【0108】
ナリンゲニンは、バイオフラボノイド化合物2,3−ジヒドロ−5,7−ジヒドロキシ
−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オンであり、4’,
5,7−トリヒドロキシフラバノンとしても既知である。ナリンゲニンは、グレープフル
ーツの果実及び皮に見出される天然生成物であるナリンゲンのアグルコンである。ナリン
ゲニンは、販売元から一般に容易に入手できる。
【0109】
ケルセチンは、バイオフラボノイド化合物2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3
,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンであり、3,3’,4’
,5,7−ペンタヒドロキシフラボンとしても既知である。ケルセチンは、クエルシトロ
ンの、ルチンの、及び他のグリコシドのアグルコンである。ケルセチンは、販売元から一
般に容易に入手できる。
【0110】
ジオスミンは、天然型フラボン系グリコシド化合物7−[[6−O−6−デオキシ−ア
ルファ−L−マンノピラノシル)−ベータ−D−グルコピラノシル]オキシ]−5−ヒド
ロキシ−2−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4
−オンである。ジオスミンは、かんきつ系果実を含む各種の植物源から単離できる。ジオ
スミンは、販売元から一般に容易に入手できる。
【0111】
クリシンは、各種の植物源から単離できる天然型化合物5,7−ジヒドロキシ−2−フ
ェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンである。クリシンは、販売元から一般に容易
に入手できる。
【0112】
ポロクサマーは、アルファ−ヒドロ−オメガ−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)ポリ
(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)ブロックコポリマーである。ポロクサマー
は、一般式HO(C24O)a(C36O)b(C24O)aHに従う、エチレンオキシド
及びプロピレンオキシドの一連の密接に関連したブロックコポリマーである。たとえば、
ポロクサマー124は「a」が12であり、「b」が20である固体であり、約2090
〜約2360の平均分子量を有し;ポロクサマー188は「a」が80であり、「b」が
27である固体であり、約7680〜約9510の平均分子量を有し;ポロクサマー23
7は「a」が64であり、「b」が37である固体であり、約6840〜約8830の平
均分子量を有し;ポロクサマー338は「a」が141であり、「b」が44である固体
であり、約12700〜約17400の平均分子量を有し;ポロクサマー407は、「a」
が101であり、「b」が56である固体であり、約9840〜約14600の平均分子
量を有する。ポロクサマーは、製薬分野でにおいて周知であり、容易に入手できる。たと
えばPluronic F-68は、BASF Corp.から市販のポロクサマーである。本発明での使用に好
ましいポロクサマーは、ポロクサマー188、Pluronic F-68などのポロクサマーである

【0113】
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、可変量のエチレンオキシドにヒマシ油又は水素
添加ヒマシ油のどちらかを反応させることによって得られる一連の物質である。これらの
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、製薬分野でにおいて周知であり、複数の異なる種
類の物質は、BASF Corporationから入手できるCremophorsを含めて、市販されている。ポ
リオキシエチレンヒマシ油誘導体は、疎水性及び親水性成分の複合混合物である。たとえ
ばポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor ELとしても既知である)において、疎水性構成
要素は約83%の全混合物を含み、主成分はグリセロールポリエチレングリコールリシン
オレアートである。他の疎水性構成要素は、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルと
共に、多少の未変性ヒマシ油を含む。ポリオキシル35ヒマシ油(17%)の親水性部分
は、ポリエチレングリコール及びグリセリルエトキシラートより成る。
【0114】
ポリオキシル40において、混合物の成分の約75%の水素添加ヒマシ油(Cremophor
RH 40)は、疎水性である。これらは主に、グリセロールポリエチレングリコールの脂肪
酸エステル及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルを含む。親水性部分は、ポリエ
チレングリコール及びグリセロールエトキシラートより成る。本発明での使用に好ましい
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、ポリオキシル35ヒマシ油、たとえばCremophor
EL、及びポリオキシル40水素添加ヒマシ油、たとえばCremophor RH 40である。Cremoph
or EL及びCremophor RH 40は、BASF Corporationから市販されている。
【0115】
ポリエチレンオキシドは、一般式(OCH2CH2)nに従うエチレンオキシドの非イオ
ン性ホモポリマーであり、nはオキシエチレン基の平均数を表す。ポリエチレンオキシド
は、製薬分野にて周知である各種のグレードで入手可能であり、複数の異なる種類の物質
が市販されている。ポリエチレンオキシドの好ましいグレードは、市販されているNFなど
である。
【0116】
(+)−タクシフォリンは、(2R−トランス)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニ
ル)−2,3−ジヒドロ−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−
オンである。(+)−タクシフォリンの他の一般名は、(+)−ジヒドロケルセチン;3
,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシ−フラバノン;ジケルチン;タクシフォリオー
ル;及びジスチリンである。(+)−タクシフォリンは製薬分野にて周知であり、容易に
購入できる。
【0117】
本発明の使用に好ましいp糖タンパク質インヒビターは、水溶性ビタミンE、たとえば
ビタミンE TPGS、及びポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールの
うち、最も好ましいp糖タンパク質インヒビターは、PEG 400、PEG 1000
、PEG 1450、PEG 4600及びPEG 8000である。
【0118】
p糖タンパク質インヒビターの投与は、経口及び非経口経路を含む、p糖タンパク質イ
ンヒビターが有効量で生物利用されるいずれかの経路による。経口投与が好ましいが、p
糖タンパク質インヒビターは静脈内に、局所的に、皮下に、鼻腔内に、直腸から、筋肉内
に、又は他の非経口経路によっても投与される。経口投与される場合、p糖タンパク質イ
ンヒビターはたとえば、カプセル剤、錠剤、液剤、懸濁剤などを含む、いずれかの好都合
な投薬形態で投与される。
【0119】
一般に、p糖タンパク質インヒビターの有効なp糖タンパク質阻害量は、消化管に存在
するp糖タンパク質仲介活性輸送系の活性の阻害を提供するのに有効な量である。有効な
p糖タンパク質阻害量は、選択された特定のp糖タンパク質インヒビター、治療される患
者の種、投薬計画、ならびに評価及び評定する製薬当業者の能力のすべて十分範囲内にあ
る他の因子によって変わる、1日用量としてのp糖タンパク質インヒビター約5mg〜約1
000mgで変化可能である。しかしながら好ましい量は通例、約50mg〜約500mgであ
り、さらに好ましい量は通例、約100mg〜約500mgである。p糖タンパク質インヒビ
ターの上の量は、1日につき1回から複数回で投与できる。通例、経口投薬では、用量は
1日につき1回、2回又は3回の用量を必要とする計画に基づいて投与されるであろう。
【0120】
水溶性ビタミンE又はポリエチレングリコールがp糖タンパク質インヒビターとして選
択される場合、好ましい量は通例は、約5mg〜約1000mgであり、さらに好ましい量は
通例、約50mg〜約500mgであり、なお好ましい量は通例は約100mg〜約500mgで
あろう。水溶性ビタミンE又はポリエチレングリコールの最も好ましい量は、約200mg
〜約500mgであろう。水溶性ビタミンE又はポリエチレングリコールの上の量は、1日
につき1回から複数回で投与できる。通例、用量は、1日につき1回、2回又は3回の用
量を必要とする計画に基づいて投与され、1回又は2回が好ましい。
【0121】
本明細書で使用するように、「同時投与」という用語は、消化管でのp糖タンパク質仲
介輸送を阻害するp糖タンパク質インヒビターの薬理効果が消化管から化合物が吸収され
る時点で現れるようにするための、トレプロスチニルならびに本明細書で述べた構造I及
びIIを含む米国特許第4,306,075号及び第5,153,222号に述べられている化合物を含めた、
血管拡張及び/又は血小板凝集阻害特性を有する化合物と、p糖タンパク質インヒビター
との両方の患者への投与を指す。もちろん化合物及びp糖タンパク質インヒビターは、異
なる時点に、又は同時に投与できる。たとえば、p糖タンパク質インヒビターは、血管拡
張化合物の投薬に備えて患者を前治療するために、患者に治療用化合物の投与前の時点に
投与できる。その上、治療用化合物の第1の用量の投与前にp糖タンパク質インヒビター
の定常状態レベルを達成するために、p糖タンパク質インヒビターによって前治療される
ことは患者にとって好都合である。血管拡張及び/又は血小板凝集阻害化合物及びp糖タ
ンパク質インヒビターが独立した投薬形態で、又は同じ経口投薬形態でのいずれかで、実
質的に同時に投与されることも検討される。
【0122】
本発明はさらに、血管拡張及び/又は血小板凝集阻害化合物及びp糖タンパク質インヒ
ビターが独立した投薬形態で、又は同じ併用経口形態で投与されることを提供する。化合
物及びp糖タンパク質インヒビターの同時投与は、化合物及びp糖タンパク質インヒビタ
ーの両方を含有する併用投薬形態の経口投与によって好都合に実施される。
【0123】
それゆえ本発明の追加の実施形態は、本明細書で述べた化合物の有効な血管拡張及び/
又は血小板凝集阻害量及びp糖タンパク質インヒビターの有効なp糖タンパク質阻害量を
含む、経口投与用併用製薬組成物である。この併用経口投薬形態は、血管拡張及び/又は
血小板凝集阻害化合物及びp糖タンパク質インヒビターの両方の即時放出を提供するか、
あるいは血管拡張及び/又は血小板凝集阻害化合物及びp糖タンパク質インヒビターの一
方又は両方の持続放出を提供する。当業者は、血管拡張及び/又は血小板凝集阻害化合物
及びp糖タンパク質インヒビターの同時投与の所望の効果を達成するために、併用投薬形
態の適切な特性をただちに決定できるであろう。
【0124】
したがって本発明は、p糖タンパク質インヒビターの同時投与による、トレプロスチニ
ル、構造I又はIIの薬剤、及びその薬学的に許容される塩のバイオアベイラビリティの向
上を提供する。これらの化合物及びp糖タンパク質インヒビターの同時投与により、化合
物の全量は、そうでなければp糖タンパク質インヒビターの非存在時に血液中で循環する
量を超えて上昇させることができる。それゆえ本発明による同時投与は、化合物単独の投
与で見られた上昇を超える、本化合物のAUCの上昇を引き起こすことができる。
【0125】
通例、バイオアベイラビリティは、薬剤投与後の各種の時点における血液中の薬剤濃度
を測定することによって評価することと、次に血液中で循環している薬剤の全量を得るた
めに、時間に対して得られた値を積分することとによって評価される。この測定は、曲線
下面積(AUC)と呼ばれ、薬剤のバイオアベイラビリティの直接測定値である。
【0126】
本発明の範囲を制限することなく、いくつかの実施形態において、R2及びR3ヒドロキ
シル基にてトレプロスチニルを誘導体化することは、これらの部位を遮断することによっ
て、経口トレプロスチニル送達に対する障壁を克服するのに役立つことができ、それゆえ
代謝速度が低下して、化合物に初回通過効果の一部をバイパスさせることが考えられる。
またプロドラッグは、露出したアミノ酸によって、胃腸管に存在するジペプチドトランス
ポーター系から積極的に吸収される。したがって本発明は、トレプロスチニルの初回通過
効果を低下させる、及び/又は胃腸管の流出機構を低下させる化合物、たとえば構造I及
びIIに見られる化合物を提供する。
【0127】
被験体の高血圧を治療する方法のいくつかの実施形態において、被験体は哺乳類であり
、いくつかの実施形態において、被験体はヒトである。
【0128】
医薬製剤は、上述の実施形態のいずれかの化合物のいずれかを単独で又は組合せて、
薬学的に許容される担体、たとえば本明細書で述べた担体と組合せて含む。
【0129】
本発明は、血管収縮及び/又は血小板凝集に関連する各種の障害を治療又は改善するた
めの、本発明の1又はそれ以上の化合物、又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容
される担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などを混合することによって調製され得る組成物も
提供する。治療的に有効な用量はさらに、障害の症状の改善を生じるのに十分な本発明の
1又はそれ以上の化合物の量を指す。本発明の製薬組成物は、当業界で周知の方法、たと
えば特に従来の造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、乳化、又は磨砕工程によって
製造される。組成物は、たとえば粒剤、顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、
坐剤、注射剤、乳剤、エリキシル剤、懸濁剤又は液剤の形態でありうる。本組成物は、た
とえば経口投与による、経粘膜投与による、直腸投与による、経皮又は皮下投与はもちろ
んのこと、髄腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、眼内又は脳室内注射による各種の
投与経路用に処方できる。本発明の1つ又は複数の化合物は、上の経路のいずれかによっ
て、たとえば全身方式よりも局所方式で、たとえば持続放出剤形としての注射でも投与で
きる。以下の投薬形態は、一例として与えられ、本発明を制限するものとして解釈すべき
ではない。
【0130】
経口、頬側、及び舌下投与では、粉剤、懸濁剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲ
ルカプセル剤、及びカプレット剤が固体投薬形態として許容される。これらはたとえば、
本発明の1又はそれ以上の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの
添加剤又は賦形剤、たとえばデンプン又は他の添加剤を混合することによって調製できる
。適切な添加剤又は賦形剤は、スクロース、ラクトース、セルロース糖、マンニトール、
マルチトール、デキストラン、ソルビトール、デンプン、寒天、アルギネート、キチン、
キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイ
ン、アルブミン、合成又は半合成ポリマー又はグリセリド、メチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドンである。場合により、経
口投薬形態は、投与を補助する他の成分、たとえば不活性希釈剤、又は潤滑剤、たとえば
マグネシウムステアレート、又は保存剤、たとえばパラベン又はソルビン酸、又は抗酸化
剤、たとえばアスコルビン酸、トコフェロール又はシステイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤
、緩衝剤、甘味料、香味剤又は香料剤を含有することができる。さらに識別のために、染
料又は顔料を添加できる。錠剤はさらに、当業界で既知の適切なコーティング材料によっ
て処理できる。
【0131】
さらに試験は、十二指腸に投与されたときに、トレプロスチニル、及び特に構造I及びI
Iの化合物を含む本化合物がバイオアベイラビリティを向上させたことを示している。し
たがって本発明の1つの実施形態は、十二指腸送達を実現する医薬製剤と同様に、所望
の化合物の十二指腸への優先的送達を包含する。十二指腸投与は、当業界で既知のどの手
段によっても実現できる。これらの実施形態の1つにおいて、本化合物は、腸溶コーティ
ング投薬形態で処方できる。一般に腸溶コーティング投薬形態は通常、低いpHで溶解し
ないが、3以上のpH状態に暴露されたときに迅速に溶解するポリマーによってコーティ
ングされる。この送達形態は、pHが約1〜2である胃と、pHが4を超える傾向がある
十二指腸とのpHの差を利用する。
【0132】
経口投与の液体投薬形態は、不活性希釈剤、たとえば水を含有することのできる、薬学
的に許容される乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤、スラリー剤及び液剤の形態で
ある。医薬製剤は、滅菌液体、たとえばこれに限定されるわけではないが、油、水、ア
ルコール、及びこれらの組合せを使用して、液状懸濁剤又は液剤として調製される。薬学
的に適切な界面活性剤、懸濁剤、乳化剤は、経口又は非経口投与のために添加される。
【0133】
上記のように、懸濁剤は油を含み得る。そのような油は、これに限定されるわけではな
いが、ラッカセイ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油及びオリーブ油を含む。懸濁剤調
製物は、脂肪酸のエステル、たとえばエチルオレアート、イソプロピルミリステート、脂
肪酸グリセリド及びアセチル化脂肪酸グリセリドも含有する。懸濁剤剤形は、アルコール
、たとえばこれに限定されるわけではないが、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘ
キサデシルアルコール、グリセロール及びプロピレングリコールを含む。エーテル、たと
えばこれに限定されるわけではないが、ポリ(エチレングリコール)、石油炭化水素、た
とえば鉱油及びワセリン;及び水も懸濁剤剤形で使用される。
【0134】
注射用投薬形態は一般に、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して調製される水
性懸濁剤又は油性懸濁剤を含む。注射用形態は、溶媒又は希釈剤によって調製される、溶
液相で、又は懸濁剤の形態である。許容される溶媒又はビヒクルは、滅菌水、リンゲル液
、又は等張性食塩水溶液を含む。あるいは滅菌油は、溶媒又は懸濁剤として利用される。
好ましくは、油又は脂肪酸は非揮発性であり、天然又は合成油、脂肪酸、モノ−、ジ−又
はトリ−グリセリドを含む。
【0135】
注射の場合、医薬製剤は、上述のような適切な溶液による再構成に適切な粉剤でもよ
い。これらの例は、これに限定されるわけではないが、凍結乾燥、回転乾燥又は噴霧乾燥
粉剤、アモルファス粉剤、顆粒剤、沈殿剤、又は微粒子剤を含む。注射の場合、剤形は場
合により安定剤、pH調節剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調節剤及びこれらの
組合せを含有する。化合物は、注射による、たとえばボーラス注入又は連続輸液による非
経口投与用に処方される。注射用の単位投薬形態は、アンプルに、又は複数用量容器に入
れられる。
【0136】
上述のそれらの代表的な投薬形態に加えて、薬学的に許容される賦形剤及び担体は、当
業者に一般に既知であり、それゆえ本発明に含まれる。そのような賦形剤及び担体はたと
えば、参考文献として本明細書に組み込まれる、"Remingtons Pharmaceutical Sciences"
Mack Pub. Co. , New Jersey (1991)で述べられている。
【0137】
本発明の剤形は、短期作用性、高速放出性、長期作用性、及び持続放出性として設計さ
れる。それゆえ医薬製剤は、制御放出用に、又は低速放出用にも処方される。
【0138】
本組成物は、たとえば、ミセル又はリポソーム、あるいはその他のカプセル化形態も含
む、あるいは長期貯蔵及び/又は送達効果を提供するために長期放出形態で投与される。
したがって医薬製剤は、ペレット又はシリンダー内に圧縮して、筋肉内又は皮下にデポ
ー注射又はインプラント、たとえばステントとしてインプラントされる。そのようなイン
プラントは、既知の不活性材料、たとえばシリコーン及び生分解性ポリマーを利用する。
【0139】
特定の投薬形態は、疾患の状態、被験体の年齢、体重、一般健康状態、性別、及び食餌
、投薬間隔、投与経路、排出速度、及び薬剤の組合せに応じて調整される。有効量を含有
する上の投薬形態のいずれも、十分に日常的な実験の範囲内であり、したがって十分に本
発明の範囲内である。
【0140】
治療的に有効な用量は、投与経路及び投薬形態に応じて変わる。本発明の好ましい1つ
又は複数の化合物は、高い治療指数を示す剤形である。治療指数は、LD50とED50との
間の比として表現できる、毒性効果と治療効果との間の用量比である。LD50は母集団の
50%が死に至る用量であり、ED50は母集団の50%に治療的に有効である用量である
。LD50及びED50は、動物細胞培養物又は実験動物における標準の薬学的手順によって
決定される。
【0141】
医薬製剤を調製する方法は、上述の化合物のいずれかと、薬学的に許容される担体及
び水又は水溶液とを混合することを含む。
【0142】
本発明の医薬製剤及び医薬品は、薬学的に許容される担体と組合せて、上述の構造I
、IIの化合物又はその薬学的に許容される塩の実施形態のいずれかの化合物のいずれかを
含む。それゆえ本発明の化合物は、医薬品及び医薬製剤を調製するために使用される。
一部のそのような実施形態において、医薬品及び医薬製剤は、構造Iの化合物又はその
薬学的に許容される塩の実施形態のいずれかの化合物のいずれかを含む。本発明は、プロ
スタサイクリン様効果のための、構造I、IIの化合物又はその薬学的に許容される塩の実
施形態のいずれかの化合物のいずれかの使用を提供する。本発明は、構造I、IIの化合物
又はその薬学的に許容される塩の実施形態のいずれかの化合物のいずれかの使用あるいは
肺高血圧症の治療も提供する。
【0143】
本発明は、構造I又はIIの化合物の1又はそれ以上を化合物の使用説明書と共に含むキ
ットにも関する。別の実施形態において、本明細書で述べたプロスタサイクリン様効果を
持つ化合物を、1又はそれ以上のp糖タンパク質インヒビターと組合せて有するキットは
、キットの使用説明書と共に提供される。
【0144】
一例として、本発明のキットは、本発明のバイオエンハンサーを含有する1又はそれ以
上の錠剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルカプセル剤又は液体剤形、及び本明細書で述
べたプロスタサイクリン様効果化合物を、上述の範囲内の投薬量で含有する1又はそれ以
上の錠剤、カプセル剤、カプレット剤、ゲルカプセル剤又は液体剤形を含む。そのような
キットは、病院、クリニック、医務室又は患者自宅において、促進剤及び標的剤の同時投
与を促進するために使用される。キットは、促進剤及び標的剤の同時投与のための印刷さ
れた投薬情報も挿入物として含むべきである。
【0145】
以下の省略形及び定義は、本出願を通じて使用される:
一般に、ある元素、たとえば水素、すなわちHへの言及は、その元素のすべての同位体
を含むものとする。たとえばR基が水素、すなわちHを含むと定義される場合、それは重
水素及び三重水素も含む。
【0146】
本明細書で使用するように、「p糖タンパク質インヒビター」という用語は、消化管内
に存在するp糖タンパク質仲介活性輸送系の活性を阻害する有機化合物を指す。この輸送
系は、小腸管腔から吸収された薬剤を消化管上皮内へ積極的に運搬し、管腔内へ戻す。こ
のp糖タンパク質仲介活性輸送系の阻害は、より少ない薬剤が運搬されて管腔内へ戻され
るようにし、それゆえ消化管上皮に渡る正味の薬剤輸送を増加させて、血液中の最終的に
利用できる薬剤の量を増加させるであろう。
【0147】
「経口バイオアベイラビリティ」及び「経口投与時のバイオアベイラビリティ」という
句は、本明細書で使用するように、患者に経口投与された薬剤の所与の量の全身バイオア
ベイラビリティ(すなわち血中/血漿レベル)を指す。
【0148】
「非置換アルキル」という句は、ヘテロ原子を含有しないアルキル基を指す。それゆえ
この句は、直鎖アルキル基、たとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘ
キシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを含む。この
句は直鎖アルキル基の分岐鎖異性体も含み、これに限定されるわけではないが、一例とし
て提供される以下:−CH(CH32、−CH(CH3)(CH2CH3)、−CH(CH2
CH32、−C(CH33、−C(CH2CH33、−CH2CH(CH32、−CH2
H(CH3)(CH2CH3)、−CH2CH(CH2CH32、−CH2C(CH33、−C
2C(CH2CH33、−CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、−CH2CH2
H(CH32、−CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、−CH2CH2CH(CH2
32、−CH2CH2C(CH33、−CH2CHC(CH2CH33、−CH(CH3)
CH2CH(CH32、−CH(CH3)CH(CH3)CH(CH32、−CH(CH2
3)CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)などを含む。この句は、環状アルキル
基、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロ
ヘプチル、及びシクロオクチルならびに上で定義した直鎖及び分岐アルキル基によって置
換されたそのような環も含む。この句は、多環アルキル基、たとえばこれに限定されるわ
けではないが、アダマンチル、ノルボニル、及びビシクロ[2.2.2]オクチルならび
に上で定義したような直鎖及び分岐鎖アルキル基によって置換されたそのような環も含む
。それゆえ非置換アルキル基という句は、第1級アルキル基、第2級アルキル基、及び第
3級アルキル基を含む。非置換アルキル基は、親化合物中の1又はそれ以上の炭素原子、
酸素原子、窒素原子、及び/又は硫黄原子に結合される。好ましい非置換アルキル基は、
直鎖及び分岐鎖アルキル基ならびに1〜20個の炭素原子を有する環状アルキル基を含む
。さらに好ましいそのような非置換アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有し、なおさ
らに好ましいそのような基は、1〜5個の炭素原子を有する。最も好ましい非置換アルキ
ル基は、1〜3個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキル基を有し、メチル、エチル
、プロピル、及び−CH(CH32を含む。
【0149】
「置換アルキル」という句は、炭素又は水素への1又はそれ以上の結合が非水素及び非
炭素原子、たとえばこれに限定されるわけではないが、ハライド中のハロゲン原子、たと
えばF、Cl、Br、及びI;及び基、たとえばヒドロキシル基、アルコキシ基、アリー
ルオキシ基、及びエステル基中の酸素原子;基、たとえばチオール基、アルキル及びアリ
ールスルフィド基、スルホン基、スルホニル基、及びスルホキシド基中の硫黄原子;基、
たとえばアミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキ
ルアリールアミン、ジアリールアミン、N−オキシド、イミド、及びエナミン中の窒素;
基、たとえばトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリール
シリル基、及びトリアリールシリル基中のケイ素原子;ならびに各種の他の基中のヘテロ
原子への結合によって置換される、上で定義した非置換アルキル基を指す。置換アルキル
基は、炭素又は水素原子への1又はそれ以上の結合がヘテロ原子、たとえばカルボニル、
カルボキシ、及びエステル基中の酸素;基、たとえばイミン、オキシム、ヒドラゾン、及
びニトリル中の窒素中の基も含む。好ましい置換アルキル基は、特に、炭素又は水素原子
への1又はそれ以上の結合がフッ素原子への1又はそれ以上の結合によって置換されるア
ルキル基を含む。置換アルキル基の1つの例は、トリフルオロメチル基及びトリフルオロ
メチル基を含む他のアルキル基である。他のアルキル基は、置換アルキル基がヒドロキシ
ル、アルコキシ、アリールオキシ基、又はヘテロシクリルオキシ基を含有するように、炭
素又は水素原子への1又はそれ以上の結合が酸素原子への結合によって置換されるアルキ
ル基を含む。なお他のアルキル基は、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリ
ールアミン、(アルキル)(アリール)アミン、ジアリールアミン、ヘテロシクリルアミ
ン、(アルキル)(ヘテロシクリル)アミン、(アリール)(ヘテロシクリル)アミン、
又はジヘテロシクリルアミン基を有するアルキル基を含む。
【0150】
「非置換アリールアルキル」という句は、非置換アルキル基の水素又は炭素結合が上で
定義したアリール基への結合によって置換される上で定義した非置換アルキル基を指す。
たとえば、メチル(−CH3)は非置換アルキル基である。メチル基の水素原子がフェニ
ル基への結合によって置換される場合、たとえばメチルの炭素がベンゼンの炭素に結合し
ている場合、化合物は非置換アリールアルキル基(すなわちベンジル基)である。それゆ
えこの句は、これに限定されるわけではないが、基、たとえば特にベンジル、ジフェニル
メチル、及び1−フェニルエチル(−CH(C65)(CH3))を含む。
【0151】
「置換アリールアルキル」という句は、置換アリール基が非置換アリール基に関して有
するのと同様の、非置換アリールアルキル基に関する意味を有する。しかしながら置換ア
リールアルキル基は、基のアルキル部分の炭素又は水素結合が非炭素又は非水素原子への
結合によって置換される基も含む。置換アリールアルキル基の例は、これに限定されるわ
けではないが、特に−CH2C(=O)(C65)、及び−CH2(2−メチルフェニル)
を含む。
【0152】
「薬学的に許容される塩」は、無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸、あるいは塩基性
又は酸性アミノ酸を有する塩を含む。無機塩基の塩として、本発明はたとえばアルカリ金
属、たとえばナトリウム又はカリウム;アルカリ土類金属、たとえばカルシウム及びマグ
ネシウム又はアルミニウム;及びアンモニアを含む。有機塩基の塩として、本発明はたと
えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、
ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンを含む。無機酸の塩として、本発明はた
とえば、塩酸、ヒドロホウ酸、硝酸、硫酸、及びリン酸を含む。有機酸の塩として、本発
明はたとえば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マ
レイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及
びp−トルエンスルホン酸を含む。塩基性アミノ酸の塩として、本発明はたとえば、アル
ギニン、リジン及びオルニチンを含む。酸性アミノ酸はたとえば、アスパラギン酸及びグ
ルタミン酸を含む。
【0153】
本発明の文脈内での「治療」は、生体状態、障害又は疾患に関連する症状の緩和、ある
いはこれらの症状のさらなる進行又は悪化の停止、あるいは疾患又は障害の防止又は予防
を意味する。たとえば肺高血圧症を有する患者を治療する文脈内で、正しい治療は、肺及
び/又は全身動脈血管床の直接血管拡張の低減及び血小板凝集の阻害を含む。この血管拡
張の結果は一般に、右及び左心室後負荷を低減し、そして心拍出量及び1回拍出量を増加
させた。用量関連陰性変力及び変弛緩効果も生じることが可能である。これらの物理的効
果の外部への発現は、高血圧の症状、たとえば息切れの減少、及び運動能力の上昇を含み
うる。
【0154】
それゆえ一般に述べられる本発明は、例示のために提供され、本発明を制限するもので
はない以下の実施例への参照によってさらにただちに理解されるであろう。
(実施例)
【実施例1】
【0155】
本実施例において、経口的に、十二指腸内に、結腸内に、及び門脈経由で投薬した後の
ラットにおけるトレプロスチニルのバイオアベイラビリティを比較して、バイオアベイラ
ビリティに対する考えられる障壁を決定した。バイオアベイラビリティに加えて、多数の
薬物動態学的パラメータを決定した。
【0156】
動物への投薬
トレプロスチニルのバイオアベイラビリティは、Sprague-Dawleyオスラットで評価した
。外科的に改変したラット15匹をHilltop Lab Animals(スコットデール、ペンシルべ
ニア州)より購入した。動物はHilltopからAbsorption SystemsのWest Chester Universi
ty facility (ウェストチェスター、ペンシルベニア州)に出荷され、そこで実験に使用
する前の少なくとも24時間に渡って収容した。動物は投薬前約16時間に渡って絶食さ
せた。本実験で使用したラット15匹を5つのグループ(I、II、III、IV及びV)に分割
した。
【0157】
動物の重量及び投薬計画を表1に示す。
【表1】

【0158】
サンプルは以下の時点で回収した。
IV及びIPV:0(投薬前)2、5、15、30、60、120、240、360、4
80分
ID、IC及び経口:0(投薬前)5、15、30、60、120、240、360、4
80分
【0159】
カニューレ挿入したラットの頚静脈から全血約0.50〜0.75mLを収集した。血液
をヘパリン処理した管に移し、遠心分離にかけるまで氷上に置いた。遠心分離の後、血漿
はAbsorption Systemsへの出荷前に、−70℃にて凍結するまで氷上に置いた。

血漿サンプルの分析
【0160】
サンプルは以下の方法を使用して分析した:
投薬溶液の調製
投薬溶液は、トレプロスチニルジエタノールアミン 15.2mg(遊離酸形態12.0m
g)に5% デキストロース 24mLを化合することによって調製した。次に溶液を超音波
処理して溶解させ、最終濃度0.5mg/mLとした。投薬溶液の最終pHは4.6であった
。投薬時に、投薬溶液は透明及び均質であった。

標準及びサンプルの調製
【0161】
ラット血漿サンプル中のトレプロスチニルの濃度を決定するために、標準は、Lampire
Biological Laboratories(ロット番号021335263)から入手したヘパリン中に収集したラ
ット血漿を用いて、トレプロスチニル1000、300、100、30、10、3、1及
び0.3ng/mLを含有するように調製した。血漿標準は血漿サンプルと同じように処理し
た。
【0162】
血漿サンプルは固相抽出によって調製した。抽出プレートを平衡にした後、血漿サンプ
ル 150μlをウェルに入れ、真空を引いた。次に抽出床を0.2% ギ酸を含むアセト
ニトリル:脱イオン水(25:75)600μlで洗浄した。化合物を90% アセトニト
リル及び10% アンモニウムアセテート 600μlで溶出させた。溶出液を回収し、乾
燥まで蒸発させた。残留物はトルブタミド(内部標準として使用)0.5μg/mLを含む
アセトニトリル:脱イオン水(50: 50)150μlで再構成した。
【0163】
HPLC条件
カラム:Keystone Hypersil BDS C18 30x2mm 内径3μm
移動相緩衝液:pH3.5までの25mM NH4OH/85% ギ酸
リザーバーA:10% 緩衝液及び90% 水
リザーバーB:10%緩衝液及び90% アセトニトリル
移動相組成:
勾配プログラム:
時間 期間 勾配曲線 %A %B
-0.1 0.10 0 80 20
0 3.00 1.0 10 90
3.00 1.00 1.0 0 100
4.00 2.00 0 80 20

流速:300μL/分
注入量:10μL
ランタイム:6.0分
保持時間:2.6分
質量分析計
機器:PE SCIEX API2000
インタフェース:エレクトロスプレー(「ターボイオンスプレー」)
方式:多段反応モニタリング(MRM)

前駆物質イオン 生成物イオン
トレプロスチニル 389.2 331.2
IS 269.0 170.0

噴霧ガス:25 乾燥ガス:60,350℃ カーテンガス:25 イオンスプレー:-5000V
オリフィス:-80V リング:-350V Q0:10V IQ1:11V R01:11V IQ2:35
V R02*40V IQ3:55V R03:45V CADガス:4
【0164】
方法の検証
表2にトレプロスチニルによってスパイクしたラット血漿の平均回収数(n=6)及び
変動係数(c.v.)を挙げる。すべてのサンプルをトルブタミド 0.5μg/mLを含む50
:50 dH2O:アセトニトリルで作成した標準曲線と比較して、血漿から回収したトレ
プロスチニルのパーセントを決定した。
【表2】

【0165】
薬物動態学的解析
薬物動態学的解析は、各時点の平均血漿濃度に対して実施した。
データは、薬物動態学的プログラムWinNonlin v. 3.1(2)を用いて、非コンパートメ
ント解析にかけた。
【0166】
(結果)
臨床観察
実験前に、十分な感受性によって解析できる血漿濃度を達成するために、トレプロスチ
ニルの超薬物動態学的用量が必要とされることに注目した。1mg/kgの用量を使用す
ると、静脈内に、及び門脈静脈経由で投薬された動物で多少の悪影響が認められた。
【0167】
静脈内に投薬されたすべてのラットは、投薬5分後に強い傾眠の徴候を示したが、投薬
30分後には完全に正常活動まで回復した。加えて、投薬15分後に、門脈静脈を介して
投薬された3匹の動物すべてが、傾眠の徴候を示した。1匹のラット(#123)は、3
0分間のサンプルを吸収する前に死亡した。他のラットは完全に回復した。残りの動物は
化合物の投与後に悪性の反応を一切示さなかった。
【0168】
サンプルの解析
各投与経路の平均血漿濃度を表3に示す。
【表3】

λ濃度は解析方法の定量限界(limit of quantitation(LOQ))の範囲内である。
【0169】
静脈内、門脈内、十二指腸内、結腸内及び経口投薬の血漿濃度対時間曲線を図1及び2
に示す。図3は、5つすべての投与経路の平均血漿濃度対時間曲線を示す。これらの図に
示す実験において、ジエタノールアミン塩を使用した。表4は、トレプロスチニルについ
て決定した薬物動態的パラメータを示す。各ラットの個々のバイオアベイラビリティは表
5に見出される。
【表4】

【表5】

【0170】
(結論)
トレプロスチニルは、94分間の末端血漿中半減期を有する。トレプロスチニルの分布
相は10.3分間の半減期を有し、化合物の分布及び排出の90%超は投薬後60分後ま
でに発生する。分布容積(Vd=1.98L/kg)は、ラットの体水分量(0.67L/
kg)よりも大きく、組織中への広範囲に及ぶ分配を示している。トレプロスチニルの全身
クリアランス(88.54mL/分/kg)は肝血流量より大きく、肝外クリアランス機構が
化合物の排出に関与していることを示している。
【0171】
トレプロスチニルの初回通過肝臓排出は、40.3%の平均門脈静脈バイオアベイラビ
リティを生じる。十二指腸内、結腸内及び経口投薬の後に、迅速だが不完全な吸収が見ら
れる(Tmax<5分)。門脈静脈(40.3%)及び十二指腸内(24.1%)のバイ
オアベイラビリティを比較することによって、化合物の約60%が小腸に吸収されること
が明らかになる。平均十二指腸内バイオアベイラビリティは、経口バイオアベイラビリテ
ィよりほぼ3倍高く、胃(stomach or gastric)排出におけるトレプロスチニルの分解が
全身吸収の程度に影響を及ぼすことを示唆している。
【実施例2】
【0172】
この実施例において、オスSprague-Dawleyラットにおけるトレプロスチニル濃度を、以
下の化合物の1回経口投薬後に決定した:
【化29】

トレプロスチニルベンジルエステル
【化30】

トレプロスチニルジグリシン
【化31】

トレプロスチニルメチルエステル
【0173】
(実験)
投薬溶液の調製
【0174】
すべての投薬ビヒクルは、投薬前2時間以内に調製した。
【0175】
1.トレプロスチニルメチルエステル
トレプロスチニルメチルエステルの溶液は、トレプロスチニルメチルエステル 2.2
1mgをジメチルアセトアミド(DMA)0.85mLで溶解させることによって調製した。こ
の溶液を次にPEG 400:ポリソルベート80:水、40:1:49 7.65mLで希釈した
。投薬ビヒクルの最終濃度は、トレプロスチニル 0.25mg/mLに等しい、トレプロス
チニルメチルエステル 0.26mg/mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶液
であった。
【0176】
2.トレプロスチニルベンジルエステル
トレプロスチニルベンジルエステルの溶液は、トレプロスチニルベンジルエステル 2
.58mgをジメチルアセトアミド(DMA)0.84mLで溶解させることによって調製した
。この溶液を次にPEG 400:ポリソルベート80:水、40:1:49 7.54mLで希釈
した。投薬ビヒクルの最終濃度は、トレプロスチニル 0.25mg/mLに等しい、トレプ
ロスチニルベンジルエステル 0.268mg/mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透
明な溶液であった。
【0177】
3.トレプロスチニルジグリシン
トレプロスチニルジグリシンの溶液は、化合物 1.86mgをジメチルアセトアミド(D
MA)0.58mLで溶解させることによって調製した。この溶液を次にPEG 400:ポ
リソルベート80:水、40:1:49 5.18mLで希釈した。投薬ビヒクルの最終
濃度は、トレプロスチニル 0.25mg/mLに等しい、トレプロスチニルジグリシン
0.323mg/mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶液であった。
【0178】
動物への投薬
各プロドラッグの投薬後のトレプロスチニルの血漿濃度は、オスSprague-Dawleyラット
にて評価した。ラットはHilltop Lab Animals(スコットデール、ペンシルべニア州)よ
り購入した。動物はHilltopからAbsorption SystemsのWest Chester University facilit
y (ウェストチェスター、ペンシルベニア州)に出荷された。動物を実験に使用する前の
少なくとも24時間に渡って収容した。動物は投薬前約16時間に渡って絶食させた。本
実験で使用したラットは3つのグループ(I、II及びIII)に分割した。グループI〜IIIに
は同じ日に投薬した。
【0179】
動物の重量及び投薬計画を表6に示す。
【表6】

【0180】
動物には経口胃管栄養法を介して投薬した。血液サンプルは頚静脈カニューレから以下
の時点に採取した:
0(投薬前)5、15、30、60、120、240、360及び480分
【0181】
血液サンプルを採取し、ヘパリン500単位/mL生理的食塩水の溶液30μLを含有す
る管に入れ、13,000rpmで10分間遠心分離した。次に血漿約200μLを取って、
サンプル中に残存するプロドラッグを安定化するために酢酸4μLを含有する、適切にラ
ベルを貼ったポリプロピレン管に分配した。血漿サンプルを−20℃にて凍結させ、氷上
でAbsorption Systems Exton Facilityに運搬した。そこでは分析まで−80℃の冷凍庫
で保管した。
【0182】
血漿サンプルの分析
血漿サンプルは実施例1に述べたように分析した。簡潔には、トレプロスチニルを血漿
から液液抽出によって抽出し、次にLC/MS/MSによって分析した。分析検証結果は
、実施例1で以前に報告した。分析結果の定量下限(lower limit of quantification(L
LOQ))は、0.01ng/mLであった。サンプルは不変のプロドラッグについてはア
ッセイしなかった。
【0183】
分析実験の受入基準
各実験を通じて、曲線当たり最低5個の点及び最低2個の品質管理サンプル(QC)を持
つ2つの標準曲線を分散させた。各投与経路は、逆算に使用した標準曲線によってカッコ
内に記載されている。標準及びQCは、受入れられる実験については15%(LLOQで
は20%)以内の正確度及び精密度でなければならない。すべての標準及びQCの少なくと
も75%が受入基準に合格しなければならない。
【0184】
薬物動態学的解析
薬物動態学的解析は、各時点における個々のラットのトレプロスチニルの血漿濃度及び
各時点での群内の3匹すべての平均血漿濃度に対して実施した。データは、薬物動態学的
プログラムWinNonlin v. 3.1(2)を用いて、非コンパートメント解析にかけた。
【0185】
(結果)
臨床観察
トレプロスチニルメチルエステル、トレプロスチニルベンジルエステル又はトレプロス
チニルジグリシンの経口投与後に悪性の反応は観察されなかった。
【0186】
酸性化ラット血漿中のプロドラッグの血漿安定性
サンプルを採取した後にプロドラッグの活性形への変換を終結させるために、血漿を酸
性化した。赤血球の遠心分離の直後に、酢酸を各血漿サンプルに2%(v/v)の濃度ま
で添加した。各プロドラッグの試験管内血漿安定性は、化合物が酸性化血漿中で安定であ
るようにするために実施した。このアッセイを実施するために、2% 酢酸をLampire Bio
logicalから入手したブランクのラット血漿に添加した。酸性化ラット血漿は、プロドラ
ッグの添加前に3分間に渡って37℃にて平衡にした。各プロドラッグの初期濃度は、1
000ng/mLであった。血漿の100μL分割量(時点あたりn=3)を0、60及び12
0分にて採取した。各分割量HCl 20μLと合せ、ボルテックスにかけた。次に液−液
抽出を実施し、各サンプルのトレプロスチニルの濃度を決定した。酢酸化ラット血漿中の
各時点におけるトレプロスチニルの濃度を表7に与える。トレプロスチニルの少量がトレ
プロスチニルメチルエステル及びトレプロスチニルジグリシンの純粋な化合物サンプルに
存在するように思われる。トレプロスチニルの濃度は実験の経過を通じて一定のままであ
り、酢酸化血漿で起こる、プロドラッグの活性化合物への変換がなかったことを示す。
【表7】

【0187】
トレプロスチニルメチルエステル、トレプロスチニルベンジルエステル又はトレプロス
チニルジグリシンの投与後の平均トレプロスチニル血漿濃度を表8に示す。
【表8】

【0188】
図4〜7は、各プロドラッグの投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対
時間曲線のグラフ表示を含有する。表9は、各図及び表示された情報を示す。
【表9】

【0189】
薬物動態学的解析
プロドラッグのバイオアベイラビリティは、トレプロスチニルがラットに投薬された実
施例1に基づく活性化合物のバイオアベイラビリティと比較して決定した。以下の式は、
相対バイオアベイラビリティ(F)を決定するために使用した:
相対F=(AUC(フ゜ロト゛ラック゛用量)/用量)/(AUC(トレフ゜ロスチニル用量)/用
量)*100
【0190】
バイオアベイラビリティは、実施例1で決定したラットのトレプロスチニルの静脈内投
薬とも比較して決定した。結果を表10に示す。
【表10】

【0191】
(結論)
この実験では、ラットにおけるトレプロスチニルのプロドラッグの相対経口バイオアベ
イラビリティを決定した。トレプロスチニルメチルエステルは、活性化合物を投薬した後
よりも小さい、トレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)を生じた。プロ
ドラッグのトレプロスチニルベンジルエステル及びトレプロスチニルジグリシンはどちら
も、活性化合物を投与した後よりも大きいトレプロスチニル平均AUCを有していた。ト
レプロスチニルジグリシンは、全身循環に達するトレプロスチニルの4倍以上である、4
33%の最も高い相対バイオアベイラビリティを有していた。トレプロスチニルジグリシ
ンの投与後のトレプロスチニルの9ng/mLのCmaxは、投薬後240分で生じた。ト
レプロスチニルの投薬後のCmaxは5ng/mLであり、投薬後わずか5分で発生する。
トレプロスチニルベンジルエステルは226±155%の相対バイオアベイラビリティを
有し、7.2ng/mLのCmaxは投薬後120分で発生した。AUCは無限に外挿され
ないことにも注目すべきである。
(参考文献)
1.WinNonlin User's Guide, version 3.1, 1998-1999, Pharsight Co., Mountain View
, CA 94040.
【実施例3】
【0192】
本実施例は、トレプロスチニルの1回十二指腸投薬の投与後のトレプロスチニル及び本
発明の各種のプロドラッグの薬物動態学的実験を示す。
【0193】
本実験において、トレプロスチニルモノホスフェート(環)、トレプロスチニルモノバ
リン(環)、トレプロスチニルモノアラニン(環)又はトレプロスチニルモノアラニン(
鎖)、トレプロスチニルのプロドラッグの1回の十二指腸内投薬後のオスSprague-Dawley
ラットのトレプロスチニルの曲線下面積を比較した。化合物は以下の通りであって:
【化32】

以下の置換基を有する:

化合物 R123
トレプロスチニル H -PO3H3
モノホスフェート(環)
トレプロスチニル H -COCH(CH(CH3)2)NH2
モノバリン(環)
トレプロスチニル H -COCH(CH3)NH2
モノアラニン(環)
トレプロスチニル H H -COCH(CH3)NH2
モノアラニン(鎖)
【0194】
(実験)
投薬溶液の調製
すべての投薬ビヒクルは、投薬前2時間以内に調製した。
【0195】
1.トレプロスチニルモノホスフェート(環)
トレプロスチニルモノホスフェート(環)の投薬溶液は、トレプロスチニルモノホスフ
ェート(環)1.01mgをジメチルアセトアミド(DMA)0.167mLに溶解することに
よって調製した。この溶液をPEG 400:ポリソルベート80:水、40:1:49 1.5
0mlでさらに希釈した。投薬ビヒクルの最終濃度は、トレプロスチニル 0.5mg/mLに
等しい、プロドラッグ 0.603mg/mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶
液であった。
【0196】
2.トレプロスチニルモノバリン(環)
トレプロスチニルモノバリン(環)の50mg/mL溶液をジメチルアセトアミド(DMA)
中で調製した。次の50mg/mL ストック溶液の25μL 分割量をDMA 175μL及びPEG
400:ポリソルベート80:水、40:1:49 1.8mLで希釈した。投薬ビヒクルの最
終濃度は、トレプロスチニル 0.5mg/mLに等しい、プロドラッグ 0.625mg/mLで
あった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶液であった。
【0197】
3.トレプロスチニルモノアラニン(環)
トレプロスチニルモノアラニン(環)の溶液は、トレプロスチニルモノアラニン(環)
1.05mgを溶解するまでジメチルアセトアミド(DMA)0.178mLに溶解させ
ることによって調製した。この溶液をPEG 400:ポリソルベート80:水、40:
1:49 1.60mLでさらに希釈した。投薬ビヒクルの最終濃度は、トレプロスチニ
ル 0.5mg/mLに等しい、トレプロスチニルモノアラニン(環)0.590mg/
mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶液であった。
【0198】
4.トレプロスチニルモノアラニン(鎖)
トレプロスチニルモノアラニン(鎖)の溶液は、トレプロスチニルモノアラニン(鎖)
0.83mgを溶解するまでジメチルアセトアミド(DMA)0.14mLに溶解するこ
とによって調製した。この溶液をPEG 400:ポリソルベート80:水、40:1:
49 1.26mLによってさらに希釈した。投薬ビヒクルの最終濃度は、トレプロスチ
ニル 0.5mg/mLに等しい、トレプロスチニルモノアラニン(鎖)0.591mg
/mLであった。投薬ビヒクルは、投薬時に透明な溶液であった。
【0199】
動物への投薬
各プロドラッグの経口投与後のトレプロスチニルの血漿濃度は、オスSprague-Dawleyラ
ットにて評価した。ラット12匹をHilltop Lab Animals(スコットデール、ペンシルべ
ニア州)より購入した。動物はHilltopからAbsorption SystemsのWest Chester Universi
ty facility (ウェストチェスター、ペンシルベニア州)に出荷された。動物を実験に使
用する前の少なくとも24時間に渡って収容した。動物は投薬前約16時間に渡って絶食
させた。本実験で使用したラットは4つのグループに分割した。動物の体重及び投薬計画
を表11に示す。
【表11】

【0200】
動物は、十二指腸留置カニューレを介して投薬した。血液サンプルは頚静脈カニューレ
から以下の時点に採取した:0(投薬前)5、15、30、60、120、240、36
0及び480分。
【0201】
血液サンプルを採取し、ヘパリン500単位/mL生理的食塩水の溶液30μLを含有す
る管に入れ、13,000rpmで10分間遠心分離した。次に血漿約200μLを取って、
サンプル中に残存するプロドラッグを安定化するために酢酸4μLを含有する、適切にラ
ベルを貼ったポリプロピレン管に分配した。血漿サンプルを−20℃にて凍結させ、氷上
でAbsorption Systems Exton Facilityに運搬した。そこでは分析まで−80℃の冷凍庫
で保管した。
【0202】
血漿サンプルの分析
血漿サンプルは上述の方法を使用して分析した。簡潔には、トレプロスチニルを血漿か
ら固相抽出によって抽出し、次にLC/MS/MSによって分析した。分析結果の定量下
限(lower limit of quantification(LLOQ))は、0.03ng/mLであった。
【0203】
分析実験の受入基準
曲線当たり最低5個の点、及び3つの濃度において最低2個の品質管理サンプル(QC)
を持つ4つの標準曲線を分散させた。各プロドラッグのセットは、逆算に使用した標準曲
線によってカッコ内に記載されている。標準及びQCは、受入れられる実験については15
%(LLOQでは20%)以内の正確度及び精密度でなければならない。すべての標準及びQC
の少なくとも75%が受入基準を通過しなければならない。
【0204】
薬物動態学的解析
薬物動態学的解析は、各時点における個々のラットのトレプロスチニルの血漿濃度及び
各時点での群内の3匹すべての平均血漿濃度に対して実施した。
【0205】
データは、薬物動態学的プログラムWinNonlin v. 3.1(2)を用いて、非コンパートメ
ント解析にかけた。
【0206】
(結果)
臨床観察
トレプロスチニルモノホスフェート(環)、トレプロスチニルモノバリン(環)、トレ
プロスチニルモノアラニン(環)又はトレプロスチニルモノアラニン(鎖)の十二指腸内
投与後に悪性の反応は観察されなかった。
【0207】
酸性化ラット血漿中のプロドラッグの生体外血漿安定性
サンプルを採取した後にプロドラッグの活性形への変換を終結させるために、血漿を酸
性化した。赤血球の遠心分離の直後に、酢酸(v/v)を各血漿サンプルに2%の濃度ま
で添加した。各プロドラッグの試験管内血漿安定性は、化合物が酸性化血漿中で安定であ
るようにするために実施した。このアッセイを実施するために、2%酢酸をLampire Biol
ogicalから入手したブランクのラット血漿に添加した。酸性化ラット血漿は、プロドラッ
グの添加前に3分間に渡って37℃にて平衡にした。各プロドラッグの初期濃度は、10
00ng/mLであった。血漿の100μL分割量(時点あたりn=3)を0、60及び120
分にて採取した。血漿サンプルのサンプル調製は上述のように実施し、トレプロスチニル
の濃度を監視した。
【0208】
トレプロスチニル濃度は、実験の2時間の期間に渡ってプロドラッグによってスパイク
された酢酸化血漿サンプルのいずれにおいても上昇しなかった。
【0209】
サンプルの解析
トレプロスチニルモノホスフェート(環)、トレプロスチニルモノバリン(環)、トレ
プロスチニルモノアラニン(環)又はトレプロスチニルモノアラニン(鎖)の投与後の平
均トレプロスチニル血漿濃度を表12に示す。
【表12】

【0210】
図8〜12は、各プロドラッグの投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度
対時間曲線のグラフ表示を含有する。表13は、各図及び表示された情報を示す。
【表13】

【0211】
薬物動態学的解析
プロドラッグのバイオアベイラビリティは、トレプロスチニルがラットに投薬された実
施例1に基づく活性化合物のバイオアベイラビリティと比較して決定した。以下の式は、
相対バイオアベイラビリティ(F)を決定するために使用した:
相対F=(AUC(フ゜ロト゛ラック゛用量)/用量)/(AUC(トレフ゜ロスチニル用量)/用
量)*100
【0212】
絶対バイオアベイラビリティも、実施例1で決定したラットのトレプロスチニルの静脈
内投薬からのデータを使用して見積もった。結果を表14に示す。
【表14】

【0213】
(結論)
トレプロスチニルの4つのプロドラッグの相対十二指腸内バイオアベイラビリティをラ
ットにおいて決定した。すべての化合物は、活性化合物よりも低い相対十二指腸内バイオ
アベイラビリティを有していた。トレプロスチニルモノホスフェート(環)及びトレプロ
スチニルモノアラニン(環)がそれぞれ56%及び38%の最高の相対十二指腸内バイオ
アベイラビリティを有する。トレプロスチニルモノホスフェート(環)及びトレプロスチ
ニルモノアラニン(鎖)のTmaxは投薬後5分で発生した。トレプロスチニルモノバリン(
環)及びトレプロスチニルモノアラニン(環)は、それぞれ120分及び60分のTmax
を有するより長い吸収時間を有した。最大トレプロスチニル濃度は、トレプロスチニルモ
ノホスフェート(環)及びトレプロスチニルモノアラニン(鎖)の投薬後に最高であった
。それらは投薬後5分で約9ng/mLに達した。バイオアベイラビリティは、トレプロスチ
ニル血漿レベルによって測定されたように経口投薬したときよりも十二指腸内投薬したと
きに、はるかに高かった。
(参考文献)
1.WinNonlin User's Guide, version 3.1, 1998-1999,Pharsigllt Co. , Mountain Vie
w, CA 94040.
【実施例4】
【0214】
本実施例において、以下の構造IIの
【化33】

化合物であって、以下の置換基:
【数1】

を有する化合物の1回経口又は十二指腸内投薬の後のトレプロスチニル濃度がオスSpragu
e-Dawleyラットにおいて決定される:
【0215】
これらの化合物の例は:
【化34】

【化35】

【0216】
プロドラッグの調製及び分析は、上の実施例1及び2に述べたように行われる。加えて
、トレプロスチニル、トレプロスチニルナトリウムならびに実施例2及び本実施例に示し
た化合物の経口バイオアベイラビリティは、可変濃度の各種の異なるp糖タンパク質阻害
化合物に近接して、又は同時に投与され、化合物の経口バイオアベイラビリティに対する
p糖タンパク質インヒビターの効果を決定するために試験される。p糖タンパク質インヒ
ビターは、静脈内及び経口的の両方で投与されるであろう。
【実施例5】
【0217】
トレプロスチニルジエタノールアミンを用いた臨床試験
概要
UT-15C(トレプロスチニルジエタノールアミン)の持続放出(SR)固体投薬形態による
臨床試験に直ちに進む前に、経口「即時放出」溶液の薬物動態学の決定が実施された。第
1の臨床試験(01-101)は、UT-15Cの経口溶液の上昇する用量が血漿中で検出可能なレベ
ルを達成するため能力、潜在的な用量−血漿濃度関係、UT-15Cのバイオアベイラビリティ
及び全体的な安全性を評価した。ボランティアに約8時間に渡って薬剤を放出する持続放
出剤形をシミュレートする方法で、溶液を投与した。
【0218】
第2の臨床試験(01-102)は、2つのSR固体投薬形態プロトタイプ(すなわち1.カプ
セル剤内の微小粒子ビーズ及び2.錠剤)が血漿中で検出可能なレベルを達成するため能
力及びこれらの血漿薬剤濃度に対する食物の潜在的な影響を評価した。SRプロトタイプは
、約8時間の期間に渡ってUT-15Cを放出するように設計された。
【0219】
2つの臨床試験の詳細を以下で述べる。
臨床試験01-101
健康な成人ボランティアに経口溶液として投与されたUT-15C(トレプロスチニルジエタ
ノールアミン)の複数の上昇する濃度の安全性、耐容性、及び薬物動態学的試験(バイオ
アベイラビリティの試験を含む)
【0220】
UT-15Cの経口溶液を健康なボランティア24名に投与して、UT-15Cの安全性及び薬物動
態学的プロフィールはもちろんのこと、そのバイオアベイラビリティも評価した。SR放出
プロフィールを模倣するために、用量は2時間おきに、用量当たり0.05mg(合計=0
.2mg)、用量当たり0.125mg(合計=0.5mg)、用量当たり0.25mg(合計=
1.0mg)、又は用量当たり0.5mg(合計=2.0mg)のいずれかにて、4回の用量で
投与された。試験エンドポイントは、標準安全性評価(有害事象、バイタルサイン、臨床
パラメータ、理学的検査、及び心電図)はもちろんのこと、薬物動態学的パラメータも含
んでいた。
【0221】
すべての被験体は4回すべての予定された用量を投与され、試験をすべて完了した。ト
レプロスチニル血漿濃度は、UT-15Cの経口溶液投薬の後にすべての被験体で検出可能であ
った。AUCinf及びCmaxはどちらも、4回の投薬分割量それぞれについて用量と共に線形方
式に上昇した。本試験で観察された最高濃度は、UT-15C全用量2.0mg中の3回目の0.
25mgの溶液投薬分割量の後の5.51ng/mLであった。静脈内トレプロスチニルナトリ
ウムの過去のデータに基づいて、UT-15Cの用量0.2mg、0.5mg、1.0mg及び2.0
mgの平均絶対バイオアベイラビリティ値はそれぞれ、21%、23%、24%及び25%
と概算された。本試験の結果をそれぞれ図13A〜13Dに示す。
【0222】
UT-15Cは投与されたすべての用量において、被験体の大多数によって十分に許容された
。血液学、臨床化学、検尿、バイタルサイン、理学的検査及びECGにおける臨床的に著し
い、治療中に発生した変化はなかった。最も頻繁に報告された有害事象は、潮紅、頭痛、
及びめまいであった。UT-15C(トレプロスチニルジエタノールアミン)によるこの安全性
プロフィールは、報告された安全性プロフィールならびにRemodulin(トレプロスチニル
ナトリウム)及び他のプロスタサイクリン類似体の製品ラベル表示と一致している。それ
ゆえトレプロスチニルの塩形態を変化させることは、プロトコル規定投薬計画(すなわち
1日4回の全用量の場合の、2時間おきに1回用量)後の予期できない安全性上の問題を
生じなかった。
【0223】
臨床試験01-102A
絶食及び摂食後状態の健康な成人ボランティアに投与されたUT-15C(トレプロスチニル
ジエタノールアミン)の持続放出カプセル剤及び錠剤剤形の1回用量を比較する安全性、
耐容性、及び薬物動態学的試験
【0224】
01-102試験は、(1)UT-15C SR錠剤プロトタイプ及び、(2)UT-15C SRカプセル剤プ
ロトタイプ(カプセル剤内の微小粒子ビーズ)の安全性及び薬物動態学的プロフィールを
絶食及び摂食後状態の両方で評価及び比較するように設計された。SR投薬形態のそれぞれ
は、約8時間の期間に渡ってUT-15C(1mg)を放出するように設計された。健康な成人ボ
ランティア14名にSR錠剤剤形が投与されるように割り当てたのに対し、さらにボランテ
ィア14名をSRカプセル剤剤形が投与されるように割り当てた。被験体は、絶食及び摂食
後状態の両方でその割り当てられたSRプロトタイプの1回用量(1mg)を投与されるよう
に無作為化した。クロスオーバー設計は、摂食後/絶食状態を分離する7日間のウォッシ
ュアウト期間を用いた。試験の摂食後部では、被験体は高カロリー、高脂肪食を与えられ
た。試験エンドポイントは、標準安全性評価(有害事象、バイタルサイン、臨床パラメー
タ、理学的検査、及び心電図)はもちろんのこと、薬物動態学的パラメータも含んでいた

【0225】
UT-15C SR錠剤及びカプセル剤を投与されたすべての被験体は、検出可能なトレプロス
チニル血漿濃度を有していた。0〜24時間の曲線下面積(AUC0-24)の計算は、UT-15C
SRへの総曝露は以下の順序で生じた:錠剤摂食後>カプセル剤絶食>錠剤絶食>カプセル
剤摂食後。図14は、絶食及び摂食後状態での2つの剤形の薬物動態学的プロフィールを
示す。
【0226】
UT-15C SR錠剤及びカプセル剤は、被験体の大多数によって許容された。すべての有害
事象は、重症度が軽度から中程度であり、試験01-101及びRemodulinの製品ラベル表示に
述べられているものと同様であった。加えて、試験を通じてバイタルサイン、臨床パラメ
ータ、理学的検査、又は心電図における治療中に発生した変化はなかった。
【0227】
これらの結果は、検出可能であり、潜在的に治療的な薬剤濃度は、UT-15Cの固体投薬形
態から得られることと、これらの濃度は持続放出剤形技術によって長期間に渡って維持で
きることとを示している。
【0228】
トレプロスチニルジエタノールアミンの多形体
UT-15Cの2つの結晶性形態が、アモルファス形態と同様に確認された。準安定性である
第1の形態を形態Aと呼ぶ。熱力学的にさらに安定である第2の形態は、形態Bである。
各形態は特徴付けされ、どの形態が熱力学的に安定であるかを示すために、相互変換試験
を実施した。形態Aは、表15の方法に従って作成する。形態Bは、表16の手順に従っ
て、形態Aから作成した。
【表15】

【表16】

【0229】
結晶形態の特徴付け:
形態A
合成された初期物質(形態Aと呼ぶ)は、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(
DSC)、熱重量分析(TG)、加熱ステージ顕微鏡、赤外(IR)及びラマン分光法を使用し
て特徴付けした。形態Aの代表的なXRPDを図15に示す。形態AのIR及びRamanスペクト
ルを図16及び17にそれぞれ示す。形態Aの熱データを図18に示す。DSCサーモグラ
ムは、溶融と一致する103℃における吸熱を示す(加熱ステージ顕微鏡から)。サンプ
ルは、溶融からの冷却時に針状に再結晶することが観察された。TGデータは、100℃ま
で測定可能な重量損失を示さず、物質が溶媒和していないことを示している。水分収着デ
ータを図9にグラフで示す。形態A物質は、(65〜75% RHで始まる)実験経過中
に著しい重量増加(>33%)を示し、物質が吸湿性であることを示す。加えて、トレプ
ロスチニルジエタノールアミンの吸湿性は、湿潤チャンバ内で約52% RH及び68%
RHにて評価した。物質は52% RH及び68% RHチャンバ内それぞれでの23日後
に、重量が4.9%及び28%増加した。
【0230】
上の特徴付けデータに基づいて、形態Aは吸湿性で103℃にて溶融する、結晶性無水
物質である。
【0231】
形態B
トレプロスチニルジエタノールアミン形態Bは、表16に示すように1,4−ジオキサ
ン及びトルエン中で形態Aの加熱スラリー(50℃)から作成した。1,4−ジオキサン
から単離した物質を使用して、形態Bを十分に特徴付けした。形態Bの代表的なXRPDパタ
ーンを図20に示す。形態A及び形態BのXRPDパターンは同様であるが、著しい相違が約
12〜17°2θの範囲で観察される(図20)。
【0232】
形態Bの熱データを図21に示す。DSCサーモグラム(サンプルID 1557−17−0
1)は、(加熱ステージ顕微鏡によって決定された)溶融事象と一致する107℃での単
一吸熱を示す。TGは、100℃まで最小限の重量損失を示す。
【0233】
形態Bの水分収着/脱着データを図22に示す。5% RHにて最小限の重量損失があ
り、物質は95% RHにて約49%の水を吸収する。95%から5% RHへの脱着時に
、サンプルは約47%を損失する。
【0234】
形態A及び形態Bは、DSC曲線で容易に検出できる。上の特徴付けデータに基づいて、
形態Bは107℃にて溶融する結晶性物質であると思われる。
【0235】
熱力学特性:
各種の温度における熱力学的に最も安定な形態を判定するために、相互変換実験を実施
した。これらの試験は、形態A及び形態Bの物質を使用して、2つの異なる溶媒中で実施
し、データを表17にまとめる。イソプロパノール中での実験は、7日、11日及び1日
後それぞれの周囲15℃及び30℃にて、形態Bへの完全な変換を示す。テトラヒドロフ
ラン中での実験も、周囲15度、及び30℃条件にて形態Bへの変換を示す。完全な変換
は、15℃にて11日後、及び30℃にて1日後に得られた。しかしながら周囲条件にお
いて、得られたXRPDデータに基づき、形態Aの少量が7日後に残存していた。完全な変換
は、長期のスラリー時間にて発生しやすい。これらのスラリー相互変換実験に基づいて、
形態Bは最も熱力学的に安定な形態と思われる。形態A及び形態Bは、モノトロピックに
関連していると考えられ、形態Bはより熱的に安定である。
【表17】

【0236】
本明細書で開示したすべての参考文献は、それへの参照により特に組み込まれる。
【0237】
好ましい実施形態を例示及び説明したが、本明細書て定義したそのより広い態様におい
て、本発明から逸脱せずに当業技術に従って、変更又は改良をその中で実施できることを
理解すべきである。
本発明は以下の態様を包含するものである。
(1)
構造I
【化1】

(式中、
1は、H、置換及び非置換ベンジル基、ならびにOR1が置換又は非置換グリコールア
ミドエステルである基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じか又は異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条件
で、H、ホスフェート、ならびにOR2及びOR3がアミノ酸又はタンパク質のエステルを
形成する基から成る群より独立して選択される)を有する化合物;
そのエナンチオマー;及び
該化合物の薬学的に許容される塩。
(2)
1が置換又は非置換ベンジル基である、(1)に記載の化合物。
(3)
1がCH265である、(3)に記載の化合物。
(4)
OR1が置換又は非置換グリコールアミドエステルであり、R1が−CH2CONR45
であり、R4及びR5が同じか又は異なり、H、OH、置換及び非置換アルキル基、−(C
2mCH3、−CH2OH、及び−CH2(CH2nOH(但し、mは0、1、2、3又
は4であり、nは0、1、2、3又は4である)から成る群より独立して選択される、(1)に記載の化合物。
(5)
4及びR5の一方又は両方が、H、−OH、−CH3、又は−CH2CH2OHから成る
群より独立して選択される、(4)に記載の化合物。
(6)
4及びR5がH、−OH、−CH3、又は−CH2CH2OHである、(4)に記載の化合物。
(7)
2及びR3の一方又は両方がHである、(1)に記載の化合物。
(8)
2及びR3がホスフェートならびにOR2及びOR3がアミノ酸のエステル、ジペプチド
、トリペプチドのエステル及びテトラペプチドのエステルである基より独立して選択され
る、(1)に記載の化合物。
(9)
2又はR3の一方のみがホスフェート基である、(8)に記載の化合物。
(10)
2及びR3が、OR2及びOR3がアミノ酸のエステルである基より独立して選択される
、(8)に記載の化合物。
(11)
2及びR3の一方又は両方がグリシン又はアラニンのエステルである、(10)に記載の化合物。
(12)
2及びR3の一方がHである、(1)に記載の化合物。
(13)
2がHである、(10)に記載の化合物。
(14)
1がHである、(1)に記載の化合物。
(15)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより高い、(1)に記載の化合物。
(16)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより少なくとも50%高い、(15)に記載の化合物。
(17)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより少なくとも100%高い、(16)に記載の化合物。
(18)
p糖タンパク質輸送のインヒビターをさらに含む、(1)に記載の化合物。
(19)
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、(1)に記載の化合物。
(20)
被験体においてプロスタサイクリンが利益を示す肺高血圧症及び/又は他の障害を治療
する方法であって、構造II:
【化2】

(式中、
1は、H、置換及び非置換アルキル基、アリールアルキル基及びOR1が置換又は非置
換グリコールアミドエステルを形成する基から成る群より独立して選択され;
2及びR3は、同じか又は異なり、R1、R2及びR3のすべてがHではないという条件
で、H、ホスフェート、ならびにOR2及びOR3がアミノ酸又はタンパク質のエステルを
形成する基から成る群より独立して選択される)の化合物;
そのエナンチオマー;及び
化合物の薬学的に許容される塩の薬学的有効量を経口投与することを含む方法。
(21)
OR1が置換又は非置換グリコールアミドエステルを形成するとき、R1が−CH2CO
NR45であり、ここでR4及びR5は同じか又は異なり、H、OH、置換及び非置換アル
キル基、−(CH2mCH3、−CH2OH、及び−CH2(CH2nOH(但し、mは0
、1、2、3又は4であり、nは0、1、2、3又は4である)から成る群より独立して
選択される、(20)に記載の方法。
(22)
1がC1−C4アルキル基である、(21)に記載の方法。
(23)
1がメチル、エチル、プロピル又はブチルから成る群より選択される、(22)に記載の方法。
(24)
1が置換又は非置換ベンジル基である、(20)に記載の方法。
(25)
1が−CH3又は−CH265である、(24)に記載の方法。
(26)
4及びR5が同じか又は異なり、H、OH、−CH3、及び−CH2CH2OHから成る
群より独立して選択される、(21)に記載の方法。
(27)
2及びR3の一方又は両方がHである、(20)に記載の方法。
(28)
2及びR3の一方又は両方がHでなく、R2及びR3がホスフェートならびにOR2及び
OR3がアミノ酸のエステル、ジペプチド、トリペプチドのエステル及びテトラペプチド
のエステルである基より独立して選択される、請求項20に記載の方法。
(29)
2又はR3の一方のみがホスフェート基である、(20)に記載の方法。
(30)
2及びR3が、OR2及びOR3がアミノ酸のエステルである基より独立して選択される
、(28)に記載の方法。
(31)
2及びR3の一方又は両方がグリシン又はアラニンのエステルである、(30)に記載の方法。
(32)
1がHである、(28)に記載の方法。
(33)
2及びR3の一方がHである、(28)に記載の方法。
(34)
2がHである、(33)に記載の方法。
(35)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより高い、(20)に記載の方法。
(36)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより少なくとも50%高い、(35)に記載の方法。
(37)
前記化合物の経口バイオアベイラビリティがトレプロスチニルの経口バイオアベイラビ
リティより少なくとも100%高い、(36)に記載の方法。
(38)
p糖タンパク質インヒビターの薬学的有効量を投与することをさらに含む、(20)に記載の方法。
(39)
前記p糖タンパク質インヒビターが構造IIの化合物と同時に投与される、(38)に記載の方法。
(40)
前記p糖タンパク質インヒビターが構造IIの化合物の投与前に投与される、(38)に記載の方法。
(41)
前記p糖タンパク質インヒビターが経口的に、又は静脈内に投与される、(38)に記載の方法。
(42)
前記方法が肺高血圧症を治療するために使用される、(20)に記載の方法。
(43)
被験体にp糖タンパク質インヒビターの薬学的有効量を投与することと、トレプロスチ
ニルの薬学的有効量を経口投与することとを含む、トレプロスチニル又はその薬学的に許
容される塩の経口バイオアベイラビリティを上昇させる方法。
(44)
前記p糖タンパク質インヒビターがトレプロスチニルと同時に投与される、(43)に記載の方法。
(45)
前記p糖タンパク質インヒビターがトレプロスチニルの投与前に投与される、(43)に記載の方法。
(46)
前記p糖タンパク質インヒビターが経口的に、又は静脈内に投与される、(43)に記載の方法。
(47)
トレプロスチニル又はその薬学的に許容される塩及びp糖タンパク質インヒビターを含
む組成物。
(48)
前記薬学的に許容される塩がジエタノールアミンである、(1)の化合物。
(49)
以下の構造:
【化3】

を有する、(1)の化合物。
(50)
前記化合物が形態Bの多形体である、(1)の化合物。
(51)
前記化合物は、図20に示すようなX線粉末回折パターンを有する、(50)に記載の化合物。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1A】実施例1で述べたラットにおけるトレプロスチニルジエタノールアミン塩の静脈内投薬の血漿濃度対時間曲線を示す;
【図1B】実施例1で述べたラットにおけるトレプロスチニルジエタノールアミン塩の腹腔内投薬の血漿濃度対時間曲線を示す;
【図2A】実施例1で述べたラットにおけるトレプロスチニルジエタノールアミン塩の十二指腸内投薬の血漿濃度対時間曲線を示す;
【図2B】実施例1で述べたラットにおけるトレプロスチニルジエタノールアミン塩の結腸内投薬の血漿濃度対時間曲線を示す;
【図2C】実施例1で述べたラットにおけるトレプロスチニルジエタノールアミン塩の経口投薬の血漿濃度対時間曲線を示す;
【図3】実施例1で述べた投与経路の平均血漿濃度対時間曲線を対数スケールで示す;
【図4】実施例2で述べたトレプロスチニルメチルエステルのラットにおける経口投与後の、ラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図5】実施例2で述べたトレプロスチニルベンジルエステルのラットにおける経口投与後の、ラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図6】実施例2で述べたトレプロスチニルジグリシンのラットにおける経口投与後の、ラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図7】トレプロスチニル(1mg/kg当たり)と比較した、実施例2で述べたトレプロスチニルベンジルエステル(0.5mg/kg)及びトレプロスチニルジグリシン(0.5mg/kg)のラットにおける経口投与後の、ラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である。
【図8】実施例3で述べたトレプロスチニルモノホスフェート(環)の十二指腸内投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図9】実施例3で述べたトレプロスチニルモノバリン(環)の十二指腸内投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図10】実施例3で述べたトレプロスチニルモノアラニン(環)の十二指腸内投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図11】実施例3で述べたトレプロスチニルモノアラニン(鎖)の十二指腸内投与後のラットにおけるトレプロスチニルの血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である;
【図12】実施例3で述べた、実施例1によるトレプロスチニル単独と比較した各プロドラッグの平均血漿濃度対時間曲線のグラフ表現である。トレプロスチニルを1mg/kgで投薬したのに対して、プロドラッグは0.5mg/kgで投薬した。
【図13】A〜Dは、用量当たり0.05mg(合計=0.2mg)、用量当たり0.125mg(合計=0.5mg)、用量当たり0.25mg(合計=1.0mg)、又は用量当たり0.5mg(合計=2.0mg)のいずれかの4つの用量で2時間おきに投与された用量をそれぞれ示す。
【図14】絶食及び給餌状態でのUT−15C持続放出錠剤及び持続放出カプセル剤の薬物動態学的プロフィールを示す。
【図15】多形型AのX線粉末回折スペクトルを示す。
【図16】多形型AのIRスペクトルを示す。
【図17】多形型Aのラマンスペクトルを示す。
【図18】多形型Aの熱データを示す。
【図19】多形型Aの湿度収着データを示す。
【図20】多形型BのX線粉末回折スペクトルを示す。
【図21】多形型Bの熱データを示す。
【図22】多形型Bの湿度収着データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造I
【化1】


(式中、
は、H、置換及び非置換ベンジル基、ならびにORが置換又は非置換グリコールアミドエステルである基から成る群より独立して選択され;
及びRは、同じか又は異なり、R、R及びRのすべてがHではないという条件で、H、ホスフェート、ならびにOR及びORがアミノ酸のエステル、ジペプチドのエステル、トリペプチドのエステルまたはテトラペプチドのエステルを形成する基から成る群より独立して選択される)を有する化合物;
そのエナンチオマー;
該化合物の薬学的に許容される塩;及び
経口用添加剤;
を含む経口用医薬組成物。
【請求項2】
が置換又は非置換ベンジル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
がCHである、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
ORが置換又は非置換グリコールアミドエステルであり、Rが−CHCONRであり、R及びRが同じか又は異なり、H、OH、置換及び非置換アルキル基、−CH(CHOH(但し、nは0、1、2、3又は4である)から成る群より独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
及びRの一方又は両方が、H、−OH、−CH、又は−CHCHOHから成る群より独立して選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
及びRの両方がH、−OH、−CH、又は−CHCHOHである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
及びRの一方又は両方がHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
及びRがホスフェートならびにOR及びORがアミノ酸のエステル、ジペプチドのエステル、トリペプチドのエステル及びテトラペプチドのエステルである基より独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
又はRの一方のみがホスフェート基である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
及びRが、OR及びORがアミノ酸のエステルである基より独立して選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
OR及びORの一方又は両方がグリシン又はアラニンのエステルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
及びRの1つがHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
がHである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
がHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
p糖タンパク質輸送のインヒビターをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
構造II:
【化2】


(式中、
は、H、置換及び非置換アルキル基、アリールアルキル基及びORが置換又は非置換グリコールアミドエステルを形成する基から成る群より独立して選択され;
及びRは、同じか又は異なり、R、R及びRのすべてがHではないという条件で、H、ホスフェート、ならびにOR及びORがアミノ酸のエステル、ジペプチドのエステル、トリペプチドのエステルまたはテトラペプチドのエステルを形成する基から成る群より独立して選択される)の化合物;
そのエナンチオマー;及び
化合物の薬学的に許容される塩の薬学的有効量を、肺高血圧、末梢血管疾患、腎不全、レイノー現象又は強皮症から選択される疾患の治療用経口医薬品の製造のための使用。
【請求項17】
ORが置換又は非置換グリコールアミドエステルを形成するとき、Rが−CHCONRであり、ここでR及びRは同じか又は異なり、H、OH、置換及び非置換アルキル基、−CH(CHOH(但し、nは0、1、2、3又は4である)から成る群より独立して選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
がC−Cアルキル基である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
がメチル、エチル、プロピル又はブチルから成る群より選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
が置換又は非置換ベンジル基である、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
が−CH又は−CHである、請求項16に記載の使用。
【請求項22】
及びRが同じか又は異なり、H、OH、−CH、及び−CHCHOHから成る群より独立して選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項23】
及びRの一方又は両方がHである、請求項16に記載の使用。
【請求項24】
及びRが、ホスフェート、ならびに、OR及びORがアミノ酸のエステル、ジペプチドのエステル、トリペプチドのエステル及びテトラペプチドのエステルである基より独立して選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項25】
又はRの一方のみがホスフェート基である、請求項16に記載の使用。
【請求項26】
及びRが、OR及びORがアミノ酸のエステルである基より独立して選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
OR及びORの一方又は両方がグリシン又はアラニンのエステルである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
がHである、請求項24に記載の使用。
【請求項29】
及びRの1つがHである、請求項24に記載の使用。
【請求項30】
がHである、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記疾患が、肺高血圧症である、請求項16〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記疾患が、末梢血管疾患である、請求項16〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記疾患が、レイノー現象である、請求項16〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記疾患が、強皮症である、請求項16〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記疾患が、腎不全である、請求項16〜30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
以下の構造:
【化3】


を有する化合物。
【請求項37】
前記化合物が107℃で融解する請求項36の化合物。
【請求項38】
前記化合物は、図20に示すX線粉末回折パターンを有する、形態Bの多形体である、請求項36に記載の化合物。
【請求項39】
以下の構造:
【化4】


を有する化合物の薬理学的有効量を含む、肺高血圧症、末梢血管疾患、腎不全、レイノー現象又は強皮症から選択される疾患の治療用経口用医薬を製造するための使用。
【請求項40】
前記化合物が107℃で融解する請求項39の使用。
【請求項41】
前記化合物は、図20に示すX線粉末回折パターンを有する、形態Bの多形体である、請求項39の使用。
【請求項42】
前記疾患が、肺高血圧症である、請求項39〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項43】
前記疾患が、末梢血管疾患である、請求項39〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項44】
前記疾患が、強皮症である、請求項39〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項45】
前記疾患が、レイノー現象である、請求項39〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項46】
前記疾患が、腎不全である、請求項39〜41のいずれかに記載の使用。
【請求項47】
トレプロスチニルのジエタノールアミン塩の治療学的有効量及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬製剤
【請求項48】
前記医薬製剤が、カプセル、錠剤、液剤及び懸濁剤から選択される剤形である、請求項47に記載の医薬製剤
【請求項49】
前記医薬製剤が、(+)−トレプロスチニルのジエタノールアミン塩を含む、請求項47に記載の医薬製剤
【請求項50】
前記医薬製剤が、107℃で融解する(+)−トレプロスチニルのジエタノールアミン塩の多形体を含む、請求項49に記載の医薬製剤
【請求項51】
トレプロスチニルのジエタノールアミン塩を、カルシウムチャネル遮断薬、ホスホジエステラーゼインヒビターおよび内皮アンタゴニストから選択される少なくとも1つのさらなる心血管薬との組合せを含む、治療用組成物
【請求項52】
肺高血圧症、末梢血管疾患、腎不全、レイノー現象又は強皮症から選択される疾患の治療用である、請求項51に記載の治療用組成物

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−162539(P2012−162539A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63484(P2012−63484)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2006−533395(P2006−533395)の分割
【原出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【出願人】(505431536)ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】