説明

プロセスチャンバーのクリーニング方法およびクリーニング装置

本発明は、少なくとも1つの基板(3)、特にガラス基板をコーティングするために用いられる少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)をクリーニングする方法および装置に関する。この発明によれば、少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)は、コーティングプロセスの前に、調整パージガス(15)によって洗い流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス表面に機能層を形成することにより、ガラスにさまざまな特性を与えることができる。たとえば、光アプリケーション用のガラス、ミラーガラスや、たとえばファサードクラッディングとしてのガラス窓用として、またはディスプレイ用としての熱や日光を防ぐガラスは、特に金属層、ポリマー層、または硬質層等の層を形成した中空ガラスや平面ガラスから形成することができる。
【0003】
層は、溶液や気相からさまざまな方法で形成される。特に、コーティング材料の気相成長は、ガラス上に、均一性が高く、また必要に応じて、非常に薄い層の形成を可能とする。また、このような方法により、特に有利に、異なる材料を含む複数の層を形成することが可能である。気相成長プロセスは、真空コーティングやスパッタリングなどの物理的気相成長(PVD)プロセスと、化学的気相成長(CVD)プロセスとを含む。
【0004】
真空コーティング、特に高真空コーティングの場合には、気化しうるそれぞれのコーティング材料、特に金属材料のうち、正確に計算された量が、プロセスチャンバー内において、10−8から10−9barの間の圧力で完全に気化される。この目的のために、コーティング材料は、たとえば、抵抗加熱または誘導加温によって高真空状態のるつぼ内において加熱される。気体状態のコーティング材料は、その後、相対的に低温の基板、ガラス基板上に、非常に均一に成長される。
【0005】
スパッタリングは、たとえば、金属層や、金属酸化物層を基板上に形成するために用いられる。この目的のために、クローズドシステムでは、コーティング材料、特に金属材料が、プレート(ターゲット)の形状で、カソードとして接続される。基板、特にガラス基板と、正に帯電したアノードは、ターゲットと向かい合って配置される。10−4から10−6barに減圧されたプロセスチャンバー内の残留ガスは、希ガス、たとえばアルゴンであることが望ましい(反応性スパッタリングの場合、反応ガスを導入することも可能である)。アノードとカソード間に、電圧が印加される。電子は、アノードに向けて加速され、アノード・カソード間に位置するアルゴン原子に衝突することにより、アルゴン原子をイオン化する。正に帯電したアルゴン原子は、電界においてカソードに向けて加速される。ターゲットに向かうイオンの運動量の機械的な移動は、ターゲット原子のスパッタリングを引き起こし、それらは、たとえば1枚のガラスなどの向かい合う基板上に堆積され、フィルムを形成する。この工程の間、電子は、ターゲットの中性原子と同様にリリースされる。このようにして、定常状態のプラズマが、2つの電極間に形成される。最も一般的なプロセスは、DCスパッタリング、RFスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ガスフロースパッタリング、反応性スパッタリングおよびバイアススパッタリングである。
【0006】
化学気相成長法(CVD)は、通常、まず第一に、気層中の2つの出発原料の間の反応を必要とし、それから、反応物質が基板上に堆積される。CVDプロセスにおいて、プロセスチャンバーは、破壊的な異物を取り除くために、ガス状の出発原料の導入の前に真空にすることが好ましい。プロセスそのものは、標準圧力または周囲圧力と比較して減圧された圧力(10−5から10−2bar)で行われるからである。
【0007】
気相成長プロセスに共通した一つの特徴は、非常に低圧な状態(真空状態)が作り出されることである。このようにして、とりわけ、コーティング工程中に気相において望ましくない物質が与える悪い影響が低減される。ワーキング工程やコーティング工程は、少なくとも、好適なプロセスパラメータを設定する工程(この工程は、プロセスチャンバーやコーティングチャンバーの排気を含んでもよい)と、コーティングされる少なくとも1つの基板をコーティングチャンバー内に導入する工程と、気相からのコーティング工程(この工程は、望ましくは、減圧状態や、不完全真空状態で行われる)と、コーティングチャンバーから基板を取り出す工程と、を含む。また、コーティング工程は、連続的にまたは不連続的に行うこともできる。コーティング工程の前やコーティングプロセスの前に、水、水素、窒素、酸素や、たとえば前工程で用いられたその他の化合物やガスなどの破壊的な化合物を、プロセスチャンバーから取り除くため、コーティング装置は、空にされる。
【0008】
不連続なコーティング装置の個々のバッチ間、または連続的なコーティング装置における基板や製品の交換の間、およびクリーニングやメンテナンス作業のために、コーティング装置を開放することが好都合であるかもしれない。この場合、少なくとも周囲空気がプロセスチャンバーに入り、再度破壊的なガス、水蒸気、水またはさらなる化合物がプロセスチャンバー内に導入されうる。その後、それぞれのプロセス条件を再度設定しなければならない。この場合、破壊的な異物を取り除くために、プロセスチャンバーはまず、所定の期間、たとえば吸引ポンプによって空にされるか排気される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、実際には、一般的に、プロセスチャンバーの排気の間に、全ての異物が取り除かれるわけではないということが観測されている。たとえば、プロセスチャンバーの排気の間に、プロセスチャンバーの内壁や内部部品の上または中に凝結し、または吸着された物質や、閉じこめられたガス、特に水や水蒸気だけでなく様々な他の物質やガスが、プロセスチャンバーにおいて気相に変化する。そして、これらの物質やガスは、一般的に、吸引ポンプにより、所定の吸引時間で完全に取り除くのは不可能である。これらの物質は、その後、プロセスチャンバー、またはプロセスチャンバー内に導入された基板を汚染し、その結果として、後のコーティングプロセスに不都合な効果を及ぼす。これは、少なくとも、最初にコーティングされる基板の品質の劣化につながる。最適にコーティングされていないこれらの基板は、実際問題として、スクラップとして処分される。
【0010】
さらに、コーティング材料の固体成分は、コーティングプロセスの間に、プロセスチャンバーの内壁および内部の部品に堆積する可能性もあり、これらの固体成分は、基板上に落下した場合に、同じようにある程度の量のスクラップを生じさせる。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服、あるいは少なくとも緩和した、基板のコーティングに用いる少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、方法に関しては、請求項1の特徴によって解決され、装置に関しては、請求項21の特徴によって解決される。有利な構成および改良は、それぞれ請求項1および請求項21に従属する請求項から明らかになる。
【0013】
請求項1に記載された、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする方法では、少なくとも1つのプロセスチャンバーは、コーティング工程の前に、調整パージガスでパージされる。
【0014】
請求項21に記載された装置は、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーのクリーニングに適し、またそれを意図したものであり、特に請求項1または請求項1に従属する1つまたは複数の請求項に記載された方法に用いられるものである。この装置は、調整パージガスを少なくとも1つのプロセスチャンバーに導入し、および/またはコーティング工程前に少なくとも1つのプロセスチャンバーに調整パージガスを通過させる、少なくとも1つのパージ装置を備える。
【0015】
基板は、ガラス製のもの、特に平面ガラスまたは中空ガラス製であることが望ましい。一般的に、コーティング工程においては、明確な特性や機能が、層の形成により、特に金属層、ポリマー層、硬質材料層の形成により、ガラスに与えられる。コーティング工程は、たとえば圧力や温度などのプロセスパラメータを設定する工程と、プロセスチャンバー内に基板を導入し、基板をコーティングする工程と、コーティングされた基板をプロセスチャンバーから取り出す工程と、を含む。コーティング工程は、非常に低い圧力で行うことが望ましいが、たとえば周囲圧力や基準圧力などのその他の好適な圧力で行ってもよい。基板をコーティングするのに用いられる方法としては、従来技術として知られる、たとえば、CVDプロセスや、真空コーティングやスパッタリングなどのPVDプロセスなどの気相成長する化学的または物理的プロセスが望ましい。
【0016】
コーティングは、1つだけのプロセスチャンバーで行ってもよいが、基板を複数のプロセスチャンバーに通過させることことも可能であり、いずれの場合にも、同じコーティング材料または異なるコーディング材料を用いられてもよい。コーティングが非常に低い圧力(真空)で行われる場合には、圧力ロックは、プロセスチャンバーの入口および出口に位置しているので、プロセスチャンバー内のプロセス条件は、基板の導入から取り出しまでの間、一定である。
【0017】
調整パージガスでのプロセスチャンバーのパージは、コーティング工程の前、すなわち、プロセスパラメータが設定される前かつ基板が導入される前に行われる。これは、プロセスチャンバーは、望ましくは、たとえば、水や、水蒸気や、その他の液体および気体などの不純物を排出するために、周囲圧力または基準圧力でパージされることを意味するので、それらの不純物は、排出時に不純物が脱着したり、気化したり、プロセスチャンバーに逃げ込むことができない。このプロセスにおいて、パージガスは、調整変数として、含水率、および/または温度、および/または圧力、および/またはガス組成に関して調整され、他の不純物を含んでいないことが望ましい。さらに、パージガスは、コーティングの前に行われるプロセスから生じてもよく、また、別のソースから生じてもよい。パージガスは、プロセスチャンバーを通過した後に、再処理されるか、処分されてもよい。
【0018】
従って、本発明が基礎としているコンセプトは、スクラップ発生率を低減し、望ましくは一切スクラップの発生しない最適なコーティングプロセスを可能とするために、コーティング工程の開始より前にプロセスチャンバーをパージすることにより、不純物または異物を可能な限りプロセスチャンバーから取り除くことである。所期のコーティング結果や所期の層を得るためには、所定のプロセスパラメータが維持される必要があるので、コーティングプロセスが異物により受ける悪影響を軽減するために、コーティングプロセスに介入することは、一般的に不可能である。それゆえ、コーティング工程の前にプロセスチャンバーをパージすることにより、プロセスチャンバーの内壁または内部部品の上または内部に閉じこめられ、凝縮され、または吸着された不純物や異物、およびコーティングプロセスが非常に低い圧力で行われる場合に、減圧の結果として気相に変化し、基板に積層されるか、または何らかの方法でコーティングプロセスに影響を与える不純物や異物は、コーティング工程が始まる前に、調整パージガスと一緒に、装置から確実に取り除くことができる。この目的ために、一例として、プロセスチャンバー中と、パージガス中とで異物の濃度の低下があるので、異物は、低濃度のパージガスとなる。クリーニング工程またはパージ工程は、たとえば、プロセスチャンバー中の温度を高めることにより補助され、その結果として、まず最初に、パージガスの吸収容量が増加され、次に、異物の気相への変化が促進される。
【0019】
さらに、パージガスの流れは、固体粒子、たとえば、プロセスチャンバーの内壁や内部部品に堆積したコーティング材料の粘着性のない粒子を、それぞれのフロー条件および粒径に応じて、少なくとも部分的に排出させることができる。
【0020】
本発明に係る方法および装置のさらなる利点は、クリーニング工程、すなわち、パージガスによるプロセスチャンバーのパージが、コーティングプロセス、またはコーティング装置とその操作を中断することなく可能なことである。これは、クリーニング工程またはパージ工程がコーティング工程の開始前のコーティングプロセスから独立して行われるからであるのと、コーティング装置の少なくとも1つのプロセスチャンバーにパージガスを供給し、および/またはパージガスを少なくとも1つのプロセスチャンバーに通過させる装置および手段が、コーティング装置に組み込まれる必要がないからである。特別な要求に応じて、パージガスを供給し、また送り込むために、既存のオープニングおよびロックを用いることが可能である。供給および排出を行う手段、およびパージガスを調整する手段は、コーティング装置から独立しており、また独立に制御することが可能である。それゆえ、本発明に係る装置は、既存のコーティング装置に容易に後から取り付けることができる。
【0021】
また、本発明に係る方法および装置は、コーティングの間に、基層における水分の含有量の低減、熱絶縁ガラスの場合には、赤いもやの低減を可能とし、低透過率によりガラスにおけるピンホールの数を最小化することを可能とし、銀の結晶化度を改善することを可能とし、そしてまた、層の硬度および層の質を改善することを可能とする。
【0022】
本発明に係る方法の特に有利な実施形態においては、パージガスは、含水率に関して調整される。全般に、パージガスの相対含水率は、パージガスが少なくとも1つのプロセスチャンバーに入る前に、高くとも30%、特に、高くとも25%、望ましくは高くとも10%、または特別な場合には高くとも実に5%に設定される。特にプロセスチャンバーの内壁や内部部品上または内に閉じこめられ、凝縮され、吸着された水や水蒸気を取り除くために、パージガスがプロセスチャンバーに供給される前に、パージガスが低い含水率または乾燥していれば、有利である。乾燥は、従来技術として知られる、全ての適当なガス乾燥方法により行うことができる。一例として、含水率は、適切な媒体への吸着により、またはガス流を冷却し、水蒸気を凝縮することにより、低減することが可能である。しかしながら、パージガスの含水率は、そうすることが有利である場合には、適切な方法により高めることも可能である。
【0023】
パージガスは、少なくとも1つのプロセスチャンバーに入る前に、特にフィルタリングにより、異物を取り除かれていれば特に有利である。これにより、パージガスがプロセスチャンバー内にさらなる不純物を同伴するのを防ぐことができる。従来から知られる全ての適当なガス精製方法が、パージガスから異物を取り除くために用いることができる。一例として、パージガスは、所期の純度に応じて、コースフィルター、ファインフィルターまたはHEPAフィルターなどの適当なフィルターエレメントを用いて精製することが可能である。
【0024】
パージガスの温度は、パージガスが少なくとも1つのプロセスチャンバーに入る前に、所定の温度範囲に、望ましくは、所定の温度値、特に、特に20℃から90℃の温度範囲、望ましくは、60℃から80℃の温度範囲に設定されていればまた有利である。加熱されたパージガスにより、凝縮され、吸着された不純物を、より首尾よく気相に転換することができる。さらに、パージガスの温度が高くなればなるほど、パージガスは、より多くの水蒸気を取り除くことができる(水に関しては、モリエ線図を参照)。
【0025】
パージガスの圧力は、少なくとも1つのプロセスチャンバーに入る前に、所定の圧力値、望ましくは、0.8barから1.5barの圧力範囲に設定されれば特にまた有利である。プロセスチャンバー中の流速は、圧力を用いて設定される。パージガスは、おおむね、プロセスチャンバーを、周囲圧力または減圧状態で通過するので、プロセスチャンバーを通過する相対的に高い流速および大きな流量を実現するためには、周囲圧力よりも高い圧力で調整装置からパージガスが流れれば有利である。しかしながら、さらに、不純物が気相に変化するのをより容易にするために、パージガスが、周囲圧力と比べて減圧されたプロセスチャンバーを通過するか、または精製工程の間に、プロセスチャンバーにおいて減圧状態が作り出されることもまた有利である。
【0026】
本発明に係る方法において用いられるパージガスは、空気、特に周囲空気、および/または不活性ガスであることが望ましい。空気でのパージ、特に周囲空気でのパージが好ましい。空気は、相対的に費用がかからず、大量に使用できるからであり、プロセスエアーサーキットからすでに調整された適当なガスを用いることもできる。不活性ガスは、たとえば、コーティングプロセスに酸素が存在していないか、またはその他の破壊的なガスが存在していると考えられる場合に、パージに用いるのが望ましい。さらに、パージガスとして、さらなるガスや混合ガスを用いることができる。それらのガスは、所期の、適当な濃度で、周囲空気の1つ以上の構成成分を含んでいることが望ましい。
【0027】
本発明に係る方法では、有利な実施形態において、調整パージガスは、クリーニング工程またはパージ工程の間、少なくとも1つのプロセスチャンバーを、望ましくは連続的に流れる。しかしながら、少なくとも1つのクリーニングステップは、プロセスチャンバーを調整パージガスで満たし、それからパージガスを排出することによって行われる場合もまた有利である。これは、上記の実施形態の通気、たとえば後に続いてプロセスチャンバーを通る通気と組み合わせて行われてもよい。これは、プロセスチャンバーに位置していた不純物が、調整パージガス中に移動され、パージガスとともに確実に排出されることを可能にする。フラッディング工程と排出工程を含むクリーニングステップにおいては、一例として、パージガスが排出されているときには、容易に不純物を気相に移動させることができるので、減圧状態を作り出すのは容易である。コーティング工程の直後に、パージガスをプロセスチャンバー中に流すこともまた、有利である。その結果として、真空でコーティングしている間、プロセスチャンバーの圧力は、コーティング工程が終了した後に、パージガスによって高められる。このようにして、特定のコーティング工程に応じて、基板や製品の交換の際の、プロセスチャンバー内への不純物の導入を減少することができる。
【0028】
コーティングが非常に低い圧力(真空状態)で行われる場合には、通常、圧力ロックがプロセスチャンバーの入口、および/または出口に存在する。その圧力ロックを通って、少なくとも1つの基板は、それぞれ、プロセスチャンバーに導入され、プロセスチャンバーから取り出される。圧力ロックは、プロセスチャンバー内のプロセス条件、特に圧力が、基板の導入と取り出しの間に変化することを防止する。複数のプロセスチャンバーが直列に接続されている場合には、一般と同様に、これらのプロセスチャンバー間に少なくとも1つの圧力ロックがある。これは、非常によくあることであるが、コーティング装置のさまざまなプロセスチャンバーにおいて、異なる圧力が設定されている場合に、特に必要とされる。圧力ロックは、プロセスチャンバー間でガスが交換されるのを防ぐ。圧力ロックは、基板がそれぞれの周囲圧力で、すなわち、特に最初のプロセスチャンバーへの導入の間には、ほぼ基準圧力で、さらなるプロセスチャンバーへの導入の間には、先行するプロセスチャンバーにおけるそれぞれの圧力で、圧力ロック内に入るように設計される。その後、圧力ロックは、閉じられ、ガスの排気または追加により、それぞれの後続のプロセスチャンバーの圧力に設定される。その後、圧力ロックは、基板を受け入れるために、後続のプロセスチャンバーに向けて開かれ、基板がプロセスチャンバー内に導入され、圧力ロックは、再び閉じられ、ガスの排気または追加により初期の圧力に戻される。従来技術では、周囲空気の追加により、それぞれの均圧が一般的に行われてきた。しかしながら、この場合、異物が周囲空気と一緒に圧力ロックに入るかもしれず、これらの異物は、本方法の間中、装置内に同伴する可能性があり、ひいてはコーディングプロセスに影響を与える可能性がある。
【0029】
本方法の特に好適な改良、または請求項8(適宜独立項に変形しうる)に記載の方法において、クリーニング工程の間、調整パージガスは、押し流され、望ましくは、少なくとも1つのプロセスチャンバーの入口および/または出口に配置された圧力ロックを連続的に流れる。このようにして、圧力ロックの排気の間、気相に変位し、たとえば基板を汚染する可能性がある圧力ロック内の不純物を取り除くことも可能である。
【0030】
さらに、調整パージガスが、圧力ロックの均圧のために圧力ロックに流れる場合、および/または、少なくとも1つの基板が圧力ロックに入る前および/または1つの基板が圧力ロック内にある間に、圧力ロックが調整パージガスでパージされる場合は、特に有利である。
【0031】
これは、まず第一に、異物が外部から圧力ロックに進入するのを防ぐことを可能とし、次に、既に圧力ロック内にある異物、または基板によって導入された異物が取り除かれることを可能とする。ここでは、一例として、まず最初に、圧力チャンバーにおける均圧がパージガスを用いて行われ、さらに、たとえば気相からの異物や既に導入された基板からの異物を取り除くために、パージガスを短時間圧力ロックに流すことが考えられる。そして、圧力チャンバーは、その後空にされる。このように、コーティング工程は、事実上、周囲空気が完全に排除された状態で行われる。圧力ロックから排出されたパージガスは、周囲に排出されるか、またはパージガスサーキットに供給され、再生される。
【0032】
パージガスが、さまざまなガス流から混合される場合は、特に有利である。この場合、一例として、コーティングの前に行われるプロセスからのガス流は、クリーニング工程のコストを低減するために、調整された周囲空気または調整ガス、望ましくは不活性ガスから成るパージガス流と混合される。
【0033】
パージガスは、サーキットを通過する場合に特にまた有利である。この場合、少なくとも1つのパージガスから出たパージガスは、含水率、および/または異物の負荷(ローディング)、および/または圧力、および/またはガス組成に関して調整され、少なくとも1つのプロセスチャンバーまたはコーティングとは独立した他のプロセスにフィードバックされる。
【0034】
コーティング工程の前に、少なくとも1つの基板は、通常コーティング工程に先立つ基板処理工程において前処理され、特に基板洗浄工程において、望ましくは水やその他の適当な液体を用いて洗浄され、そして続く基板乾燥工程において乾燥される。基板乾燥工程において少なくとも1つの基板を乾燥するための少なくともいくらかの調整乾燥ガス、および/または基板乾燥工程から排出される少なくともいくらかの乾燥ガスが、少なくとも部分的に、調整パージガス(15)として使用される場合、特に有利である。
【0035】
さらに、特に有利な実施形態においては、クリーニング工程の前および/または間に、少なくとも1つのプロセスチャンバーは、少なくとも部分的に、特に少なくとも1つのプロセスチャンバー壁の少なくとも1部が、加熱される。この目的のためには、熱は、プロセスチャンバーの外側に配置された加熱装置により、外部から供給されることが望ましい。そして、少なくとも1つのプロセスチャンバーは、たとえば誘導加熱により、または放射線により、または熱伝導により、少なくとも20℃から60℃の温度程度に、特に、40℃から60℃の温度に加熱される。プロセスチャンバー、またはプロセスチャンバー壁は、プロセスチャンバー、特に、プロセスチャンバー壁に配置されたシールおよび内部部品を形成するのに用いられる材料が許すのであれば、さらに高い温度で加熱されてもよい。プロセスチャンバーの加熱は、クリーニング工程全体の前、および/または間に、連続して行われてもよいし、また、クリーニング工程を一時的に補助するために、ある時間間隔だけ行われてもよい。
【0036】
コーディングプロセスの間、コーティング材料は、一般的に、基板だけでなく、プロセスチャンバーの内壁、および/または内部部品上にも堆積される。複数の基板が連続してコーティングされる場合、これらの堆積物は、堆積物として知られる物が形成されるまで、壁や内部部品に堆積または蓄積される可能性がある。この場合、ほんのわずかな振動がおきた場合や、重力により、堆積物の一部が離れる危険性がある。これは、その後、基板や製品を汚染する。これらの製品は、実際問題として、スクラップとして処分するほかない。
【0037】
本発明に係る方法および装置の特に望ましい改良では、少なくとも1つのパルス発生装置は、コーティング操作の前および/または間に、少なくとも1つの機械的パルスを、少なくとも1つのプロセスチャンバーのプロセスチャンバー壁、特に外壁に与える。この方法により、狙った堆積物の除去、すなわち、プロセスチャンバーの内壁および内部部品に堆積、蓄積したコーティング材料粒子や堆積物をたたき落とすことができる。
【0038】
これら特徴は、独立の請求項として、たとえば次のように記載することも可能である。少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする方法であって、少なくとも1つのパルス発生装置は、コーティング工程の前および/または間に、少なくとも1つの機械的パルスを、少なくとも1つのプロセスチャンバーのプロセスチャンバー壁、特に外壁に与える方法。または、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする装置であって、パルスを、少なくとも1つのプロセスチャンバーのプロセスチャンバー壁、特に外壁に発生させるパルス発生装置を備える装置。
【0039】
機械的パルス発生装置を備えることにより、規則的な間隔で、または要求に応じて、これらの堆積物をたたき落とすことができる。これは、基板がプロセスチャンバーに存在しないとき、すなわち、コーティング工程の前、または複数の基板に対して行われるコーティングプロセスの間に、行われることが望ましい。
【0040】
機械的パルス発生装置にとって、少なくとも1つのハンマー、および/または少なくとも1つの圧縮空気ノズル、および/または少なくとも1つの振動ユニット、および/または少なくとも1つの超音波発生装置が用いられることが望ましい。さらに、本発明に係る装置の少なくとも1つのパルス発生装置は、少なくとも1つの制御ユニットを備えてもよい。機械的パルスは、少なくとも1つのプロセス変数に応じて、自動的にトリガーされることが望ましい。さらに、機械的パルスの強さは、汚染度に応じて設定されてもよい。この場合、適切なセンサーがプロセスチャンバーに設けられる必要がある。機械的パルス、すなわちたたき落とし工程をトリガーするプロセス変数は、それぞれの度に、プロセスチャンバー内に基板が存在しないことを示す変数であることが望ましい。これは、コーティング装置に干渉することなく、たとえば、コーティング装置における基板の搬送速度、またはプロセスチャンバーの温度や圧力であってよい。制御ユニットは、パルスがトリガーされる時間、パルスの強度、機械的パルスが生成される期間を制御する。この目的のために、プロセス変数を決定するための手段、特にプロセスチャンバーの汚染度を検出する手段があってもよい。これらは、たとえば、プロセスチャンバー内に導入された光センサーであってもよい。基板の搬送速度や、プロセスチャンバーの温度、圧力などのその他のプロセス変数は、好適な実施形態においてパルス発生装置の制御ユニットがコーティング装置に接続されるのであれば、コーティング装置の制御装置から取ってもよい。
【0041】
さらに、少なくとも1つのプロセスチャンバーから出る少なくともいくつかのパージガスを、機械的パルスを生成するために用いることも可能である。たとえば、圧縮空気ノズルからの気流によりまたは空気ハンマーを作動させることによりパルスを生成するために用いることも可能である。
【0042】
請求項21に記載された装置では、少なくとも1つのプロセスチャンバーに調整パージガスを導入し、および/または調整パージガスを少なくとも1つのプロセスチャンバーに通過させる少なくとも1つのパージ装置は、少なくとも1つのパージガス供給ラインと、少なくとも1つのパージガス送出ユニット、特にポンプおよび/またはファンと、を備え、それらは、流れの方向に見て、少なくとも1つのプロセスチャンバーの上流および/または下流に配置される。
【0043】
本発明に係る装置の特に有利な実施形態においては、プロセスチャンバーに入る前にパージガスを調整する少なくとも1つの調整装置が備えられる。この場合、パージガスの含水率を設定するために、特に吸着ユニットまたは冷却ユニット、望ましくは、吸収冷凍機の形態の少なくとも1つの調整装置が備えられ、および/または、パージバスの温度を設定する少なくとも1つの調整装置が、特に加熱装置の形態で備えられ、および/または、パージガスの圧力を設定する少なくとも1つの調整装置が、特にコンプレッサーの形態で備えられ、および/または、パージガスから異物を分離する少なくとも1つの調整装置が、特にフィルターユニットの形態で備えられることが望ましい。上述したように、従来技術から理解される全ての適切な装置を、この目的のために利用することができる。組み合わされた調整装置では、二つ以上のパージガスの特性や調整変数を設定することが可能である。
【0044】
圧力ロックが少なくとも1つのプロセスチャンバーの入口および/または出口に設けられている場合には、有利な改良が行われた装置または請求項25(適宜独立項に変形しうる)に記載された装置は、プロセスチャンバーの入口および/またはプロセスチャンバーの出口に配置された、調整パージガスを少なくとも1つの圧力ロックに導入し、および/または、調整パージガスを少なくとも1つの圧力ロックに通過させる供給装置、および/または、少なくとも1つの圧力ロックからパージガスを排出する少なくとも1つの排出装置、を備える。その後、圧力ロックの均圧および/または調整パージガスでの圧力ロックのパージは、少なくとも1つの供給装置を介して行われる。供給装置は、一例として、少なくとも1つの供給ラインと、ファンおよび/またはポンプなどの少なくとも1つの供給ユニットと、を備えてもよい。少なくとも1つの排出装置(これは、一例として、少なくとも1つの排気ライン、および、ファンおよび/またはポンプなどの少なくとも1つの排気ユニットを備えてもよい)によって圧力ロックから排気されるパージガスは、少なくとも1つの調整装置にフィードバックされる。
【0045】
さらに、この装置は、クリーニング工程の前および/または間に、少なくとも1つのプロセスチャンバーの少なくとも一部を加熱するために、少なくとも1つの加熱装置を備えることが望ましく、この加熱装置は、プロセスチャンバーの外側に配置されることが望ましい。加熱装置は、特に誘導加熱により、放射線により、または熱伝導により、プロセスチャンバーを加熱する。
【0046】
基板は、コーティング工程の前に、基板処理装置において処理されるので、最適なコーティング結果を得ることができる。この目的のために、一例として、基板または基板の表面は、基板洗浄装置にて洗浄され、その後基板乾燥装置において乾燥される。一例として、調整されたガス、望ましくは空気、特に周囲空気が、同じように基板乾燥に必要とされる。
【0047】
本発明の有利な実施形態においては、少なくとも1つの調整装置は、少なくとも1つのプロセスチャンバーの上流に接続された基板処理装置のうち、少なくとも1つの調整装置、特に、続く基板乾燥装置に伴う基板洗浄装置に対応する。これにより、エネルギー消費とコストの削減が可能となる。
【0048】
基板乾燥装置から出た少なくともいくつかの乾燥ガス、および/または基板乾燥装置のうち少なくとも1つの調整装置において調整された少なくともいくつかの乾燥ガスを、プロセスチャンバーに導入する少なくとも1つの手段を備えてもよい。これは、パージ目的にとって依然として十分に低い含水率のパージガスを得るために、調整されたガスを基板乾燥装置からの廃棄ガスと混合することができることを意味するか、または、基板乾燥のために用意されていた単にいくつかの乾燥ガスが分岐され、コーティング装置のうち少なくとも1つのプロセスチャンバーにパージガスとして入ることを意味する。再利用をするために、基板乾燥装置から排出された乾燥ガスと少なくとも1つのプロセスチャンバーから排出されたパージガスが、再度混同され、少なくとも1つの共通の調整装置にフィードバックされる場合、非常に経済的な循環を実現することができる。
【0049】
請求項32に記載された、プロセスチャンバーにて少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングする方法において、そのプロセスチャンバーは、コーティング工程の前に、請求項1から20のいずれかに記載された方法によって、および/または請求項21から31のいずれかに記載された装置を用いて洗浄される。さらに、クリーニング工程のあとに、プロセスチャンバーの圧力は、周囲圧力に対して、望ましくは、10−7barから10−3barの範囲に減少され、それからコーティングプロセス、特に、気相によるコーティングプロセス、望ましくは、PVDまたはCVDプロセスが開始されてもよい。
【0050】
請求項34に記載された、プロセスチャンバーにて少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングする装置、特に請求項32または請求項33に記載された方法を実行するための装置は、コーティング工程の前に、調整パージガスでパージすることによりプロセスチャンバーをクリーニングする別々の装置、特に請求項21から31のいずれかに記載された装置を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明は、典型的な実施形態に基づき、および添付図面を参照して、より詳細に説明される。
【0052】
図1から図4において、対応する部分および変形例は、同様の符号によって示される。
【0053】
図1は、ガラス洗浄装置22、ガラス乾燥装置1、およびコーティング装置2を示す。これらは、従来技術のガラス処理プロセスにおいても用いることが可能なものである。前もって製造されたガラス基板3は、ガラス洗浄装置22において、望ましくは水や、その他の適当な液体で洗浄され、そしてその後、ガラス乾燥装置1において乾燥される。これにより、ガラス基板は、コーティング装置2、今回の場合ではマグネトロンコーティング装置に、可能な限り最小限の水分量しか持ち込まない。この水分は、コーティング工程に悪影響を及ぼす可能性があるからである。ガラス基板3は、コンベアベルト4に載った状態で、ガラス乾燥装置1の乾燥チャンバー6を搬送され、調整乾燥ガス5を浴びせされる。調整乾燥ガス5は、多くのポイントにおいて乾燥チャンバー6の中に吹き込まれ、ガラス基板3の表面からの水分が調整乾燥ガス5によって取り除かれるようにガラス基板3上に流される。水分を含んだ乾燥ガスは、その後、乾燥チャンバー6から排出される。
【0054】
乾燥されたガラス基板3は、その後コーティング装置2に入り、そこでは複数のプロセスチャンバー7を通過する。プロセスチャンバー7では、マグネトロンスパッタリングプロセスで、ガラス基板3に対して、1つまたは複数の物質の1つまたは複数の層が形成される。スパッタリングプロセスは、10−6bar程度の減圧された状態で行うことが望ましい。ガラス基板3が通過しているときに個々のプロセスチャンバー7において減圧された状態が維持されるように、圧力ロック(図示せず)が、少なくともガラス乾燥装置1とプロセスチャンバー7の間、および個々のプロセスチャンバー7の間、および最後のプロセスチャンバー7の後に設けられる。圧力ロックをガラス基板3は通過し、そこにおいて均圧が行われる。
【0055】
マグネトロンスパッタリングは、DCやRFスパッタリングの変形であり、グロー放電の電界に、横磁界が重ね合わされる。この目的のために、永久磁石が通常ターゲットの後に配設される。永久磁石の磁界はターゲットを通過してプラズマ空間にまで延び、これはカソードとして働く。この結果、プラズマは、ターゲットの前で磁性シリンダに取り囲まれ、電子は、ターゲットの前で、環状またはらせん状の軌道をとる。これは、プラズマのイオン化度のかなりの増加につながり、そしてそれ故、噴霧速度とコーティング速度の増加につながる。さらに、電子による基板の衝撃が減少し、その結果として、基板の熱応力が減少する。しばしば配備されるマグネトロンスパッタリング改良機は、反応性マグネトロンスパッタリングとバイアスアシストされたマグネトロンスパッタリングを含む(INOのインターネットサイト−表面技術の効果的な活用のための情報システム、www.schichttechnik.net参照)。マグネトロンスパッタリングは、特にさまざまな金属(たとえば、銀)および金属酸化物(たとえば酸化亜鉛)を堆積させるために用いられる。これらは、適切な組成および層構成において、特に日光にから保護し、熱絶縁性を与える層として機能する。
【0056】
プロセスチャンバー7が空にされている場合、プロセスチャンバー7の内壁や内部部品上または内に閉じこめられ、凝縮され、または吸着された物質、特に水は、気相に変化し、コーティングプロセスを妨害するので、コーティング工程においてコーディングされる少なくとも最初のガラス基板3は、スクラップとして廃棄するしかない。
【0057】
コーティング装置2がコーティング工程よりも前に本発明に係る方法により洗浄されている場合、スクラップの発生を減らし、さらにはなくすことができる。
【0058】
図2は、本発明に係る方法の有利な実施形態のフロー図を示す。図は、コーティング装置2を概略的に示しており、その内部には、少なくとも1つのプロセスチャンバー7(図2には図示せず)が含まれる。最初のステップでは、周囲空気8が吸引され、その後フィルター9において外周空気から異物10が取り除かれる。異物10は、連続的に、または規則的な間隔で、フィルター9から排出される。
【0059】
さらに次の方法ステップでは、浄化された周囲空気は、含水率を設定するために調整装置に入る。調整装置は、この場合冷凍機であり、吸収冷凍機としてまたは圧縮冷凍機として設計されてもよい。このどちらも、従来技術から知られるものである。そこでは、周囲空気は所定の温度に冷却され、その間にプロセス水は凝縮される。凝縮物12は、連続的に排出される。
【0060】
この方法により乾燥された周囲空気8は、その後、加熱装置において、コーティング装置2における蒸発および/または脱着プロセスを加速するために、望ましくは60℃から80℃の温度に再加熱される。このとき、暖かく、乾燥した周囲空気8は、25%以下の相対含水率であることが望ましく、飽和状態まで比較的多量の水を吸収することができる。
【0061】
コンプレッサー14において、周囲空気8は所定の圧力に圧縮され、コーティング装置2に吹き込まれる。また、このようにして、調整パージガス15の流速を設定することができる。ファン17は、コーティング装置2の出口側において、水分を含んだパージガス16を吸引し、気体流がプロセスチャンバー7を通過するのを補助することができる。
【0062】
調整パージガス15は、コーティング装置2において、不純物を取り除くために、少なくとも1つのプロセスチャンバー7と、個々のプロセスチャンバーの上流、下流、および間の圧力ロックとの両方をパージするために用いられる。その後、水分を含んだパージガス16は、最も単純な場合では、完全に周囲に放出される。
【0063】
しかしながら、水分を含んだパージガス16の流量の一部または全部を、パージガス再循環18を経由して調整装置9、11、13、14にフィードバックすることも可能である。この場合、周囲空気8を、水分を含んだパージガス16と混合することも可能である。
【0064】
コーティング装置2におけるコーティングプロセスの間に、調整パージガス15は、望ましくは圧力ロックの均圧のために、および/または圧力ロックとその中に位置するガラス基板3をパージするために、圧力ロックに流され続ける。
【0065】
図3は、本発明に係る方法のさらに有利な実施形態を示す。図は、コーティング装置2を同じように概略的に示しており、その内部には、少なくとも1つのプロセスチャンバー7(図示せず)が含まれる。図2を参照して説明したように、周囲空気8は、調整装置9(フィルター)、11(冷凍機)、13(加熱装置)、14(コンプレッサー)において、同様に調整される。
【0066】
図3に示された実施形態では、調整装置9、11、13、14は、コーティング装置2用のパージガスとガラス乾燥装置1用の乾燥ガスを処理するために設計されている。上述のように調整された周囲空気8の一部は、調整パージガス15としてコーティング装置2に導入される。ファン17は、気体流がコーティング装置2を流れるのを補助し、水分を含んだパージガス16の一部または全部は、排出されるか、または、その一部または全部は、パージガス再循環18を経由してフィルター9に戻される。前と同じように、周囲空気8は、水分を含んだパージガス16と混合することも可能である。
【0067】
コーティング装置2におけるコーティングプロセスの間、調整パージガス15は、前と同じように、圧力ロックの均圧のため、および/または圧力ロックとその中に位置するガラス基板3をパージするために、圧力ロックに流される。
【0068】
調整された周囲空気8は、調整乾燥ガス5としてガラス乾燥装置1に供給される。水分を含んだ乾燥ガス19は、ガラス乾燥装置1から排出され、周囲に部分的にまたは完全に放出される。しかし、図3に示されるように、水分を含んだ乾燥ガス19の流量の一部または全部を、プロセスに再循環させることも可能である。この場合、一例として、水分を含んだ乾燥ガス19のいくらかは、乾燥ガス再循環20を経由して既に調整されている周囲空気8に追加されることもでき、このようにして、調整パージガス15を生成することができる。しかしながら、水分を含んだ乾燥ガス19は、乾燥ガス再循環21を経由してフィルター9にフィードバックされることが望ましく、この場合、水分を含んだ乾燥ガス19は、周囲空気8、および/または水分を含んだパージガス16と混合されてもよい。
【0069】
図4は、特に、プロセスチャンバー7の内壁36や内部部品27上のコーティング材料の堆積物25として知られる、固体不純部を除去するための、本発明に係る装置の機械的パルス発生装置の有利な実施形態を示す。図4は、プロセスチャンバー7を、断面図で概略的に図示している。このようなコーティング材料の堆積物25は、プロセスチャンバーの内壁26および内部部品27上に位置している。機械的パルス発生装置23は、堆積物25を除去するために設けられる。機械的パルス発生装置は、この場合、一種のハンマーであり、ガイドレール24上をプロセスチャンバー7に沿って誘導可能である(プロセスチャンバーに沿った矢印の方向を参照)。適切な誘導により、プロセスチャンバー7の、特にプロセスチャンバーの外壁28の縦方向および横方向の両方に、機械的パルス発生装置を誘導することが可能である。機械的パルス発生装置は、プロセスチャンバー7の全長にわたってもよく、その結果として、プロセスチャンバー7、特にプロセスチャンバーの外壁28を、その縦方向に対して横切る方向に動かすだけでよくなる。機械的パルス発生装置23は、矢印によって示される方向に、プロセスチャンバーの外壁28に達するまで、プロセスチャンバーの外壁28に対して垂直に移動させることが可能である。衝突によって与えられるパルスは、プロセスチャンバーの外壁28を通ってプロセスチャンバーの内壁26、および/または内部部品27、およびそこに堆積している堆積物25に伝達される。その結果、堆積物25は、少なくとも部分的に剥離され、重力により落下する。その小片は、その後、プロセスチャンバー7から取り除くことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来技術に係るガラス洗浄およびガス乾燥装置と、それに伴うコーティング装置を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すコーティング装置の、本発明に係る方法の有利な実施形態におけるフロー図を概略的に示す図である。
【図3】図1に示すフロー図の、本発明に係る方法のさらに有利な実施形態におけるフロー図を概略的に示す図である。
【図4】本発明に係る装置における機械的パルス発生装置の有利な実施形態を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 ガラス乾燥装置
2 コーティング装置
3 ガラス基板
4 コンベアベルト
5 調整乾燥ガス
6 乾燥チャンバー
7 プロセスチャンバー
8 周囲空気
9 フィルター
10 異物
11 冷凍機
12 凝縮物
13 加熱装置
14 コンプレッサー
15 調整パージガス
16 水分を含んだパージガス
17 ファン
18 パージガス再循環
19 水分を含んだ乾燥ガス
20 乾燥ガス再循環
21 乾燥ガス再循環
22 ガラス洗浄装置
23 機械的パルス発生装置
24 ガイドレール
25 堆積物
26 プロセスチャンバーの内壁
27 内部部品
28 プロセスチャンバーの外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基板(3)、特にガラス製の基板をコーティングするための、少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)のクリーニング方法であって、
前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)は、コーティング工程の前に、調整パージガス(15)でパージされることを特徴とするプロセスチャンバーのクリーニング方法。
【請求項2】
前記パージガスの含水率は、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に入る前に、所定の水分レベル、特に相対含水率が高くとも30%、特に高くとも25%、望ましくは高くとも10%、または、さらに言えば高くとも5%に設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パージガスは、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に入る前に、特にフィルタリングによって、異物が取り除かれることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パージガスの温度は、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に入る前に、少なくとも所定の温度範囲、望ましくは、少なくとも所定の温度値、特に20℃から90℃の温度範囲、望ましくは60℃から80℃の温度範囲に設定されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記パージガスの圧力は、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に入る前に、少なくとも所定の圧力値、望ましくは0.8barから1.5barの圧力範囲に設定されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
使用される前記パージガスは、空気、特に周囲空気、および/または不活性ガスであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
クリーニング工程の間に、前記調整パージガス(15)は、望ましくは連続的に、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に流れ、および/または、少なくとも1つのクリーニングステップは、プロセスチャンバー(7)に調整パージガス(15)を満たし、その後パージガス(16)を排出することにより、実行されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記クリーニング工程の間に、少なくとも1つの基板(3)、特にガラス製の基板をコーティングするための、少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)の入口および/または出口に配置された圧力ロックは、調整パージガスまたは前記調整パージガス(15)でパージされることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
圧力ロックにおける均圧のために、調整パージガス(15)は、圧力ロックに流入し、および/または、前記圧力ロックは、前記少なくとも1つの基板(3)が前記圧力ロックに入る前および/または前記少なくとも1つの基板(3)が前記圧力ロックの中にある間に、調整パージガス(15)でパージされることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記パージガスは、さまざまなガス流から混合されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記パージガスは、サーキットを通過することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)から出る前記パージガス(16)は、含水量、および/または異物の負荷(ローディング)、および/または温度、および/または圧力、および/またはガス組成に関して調整されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの基板(3)は、前記コーティング工程に先立つ基板処理工程において、特に基板洗浄工程(22)の後に行われる基板乾燥工程(1)において、前処理を施されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記基板乾燥工程(1)において前記少なくとも1つの基板を乾燥するための少なくともいくらかの調整乾燥ガス(5)、および/または前記基板乾燥工程(1)から排出される少なくともいくらかの乾燥ガス(19)は、少なくとも部分的に、調整パージガス(15)として使用されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)は、少なくとも部分的に、特に少なくとも1つのプロセスチャンバー壁の少なくとも一部が、望ましくは外部から、クリーニング工程の前および/または間に、加熱されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)は、少なくとも部分的に、特に誘導加熱により、および/または放射線により、および/または熱伝導により、20℃から60℃の温度範囲、特に40℃から60℃の温度範囲に加熱されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのパルス発生装置(23)は、コーティング工程の前および/または間に、少なくとも1つの機械的パルスを、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)のプロセスチャンバー壁、特に外壁(28)に与えることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
パルス発生装置(23)として、少なくとも1つのハンマー、および/または少なくとも1つの圧縮空気ノズル、および/または少なくとも1つの振動ユニット、および/または少なくとも1つの超音波発生装置が用いられることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記機械的パルスは、少なくとも1つのプロセス変数に応じて自動的にトリガーされ、および/または、前記機械的パルスの強さは、汚染度に応じて設定されることを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセスチャンバーから出た少なくともいくらかのパージガス(16)は、前記機械的パルスを生成するために用いられることを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの基板(3)、特にガラス製の基板をコーティングするための少なくとも1つのプロセスチャンバーをクリーニングする、特に前記請求項のいずれかに記載された方法を行う装置であって、
調整パージガス(15)を前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)に導入し、および/または調整パージガス(15)が、コーティング工程の前に、前記少なくとも1つのプロセスチャンバーを通過するように、少なくとも1つのパージ装置が備えられることを特徴とする装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つのパージ装置は、少なくとも1つのパージガス供給ラインと、少なくとも1つのパージガス送出ユニット(14、17)、特にポンプおよび/またはファンと、を備え、それらは、流れの方向に見て、前記少なくとも1つのプロセスチャンバー(7)の上流および/または下流に配置されることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1つの調整装置(9、11、13、14)は、調整パージガスが前記プロセスチャンバー(7)に入るよりも前に、調整パージガスを供給されることを特徴とする請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
少なくとも1つの調整装置(11)は、前記パージガスの含水量を設定するために、特に吸着ユニットまたは冷却ユニット、望ましくは、吸収冷凍機の形で備えられ、および/または、
少なくとも1つの調整装置(13)は、前記パージガスの温度を設定するために、特に加熱装置の形で備えられ、および/または、
少なくとも1つの調整装置(14)は、前記パージガスの圧力を設定するために、特にコンプレッサーの形で備えられ、および/または、
少なくとも1つの調整装置(9)は、前記パージガスから異物を分離するために、特にフィルターユニットの形で備えられることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
少なくとも1つの供給装置は、少なくとも1つの基板(3)、特にガラス製の基板をコーティングするためのプロセスチャンバー(7)の入口、および/または少なくとも1つの基板(3)、特にガラス製の基板をコーティングするためのプロセスチャンバーの出口に配置された少なくとも1つの圧力ロック内に、調整パージガスまたは前記調整パージガス(15)を導入し、および/または、調整パージガスまたは前記調整パージガス(15)を少なくとも1つの圧力ロックに通過させるために備えられ、
および/または、少なくとも1つの排出装置は、前記少なくとも1つの圧力ロックからの前記パージガスを排出するために備えられることを特徴とする請求項21から24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つの加熱装置は、クリーニング工程の前および/または間に、少なくとも1つのプロセスチャンバーの少なくとも一部を加熱するために備えられ、その加熱装置は、望ましくは前記プロセスチャンバー(7)の外側に配置されることを特徴とする請求項21から25のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
少なくとも1つのパルス発生装置(23)が備えられ、それは、コーティング工程の前に、少なくとも1つの機械的パルスを、前記少なくとも1つのプロセスチャンバーのプロセスチャンバー壁、特に外壁(28)に与えることを特徴とする請求項21から26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つのパルス発生装置(23)は、少なくとも1つのハンマー、および/または少なくとも1つの圧縮空気ノズル、および/または少なくとも1つの振動ユニット、および/または少なくとも1つの超音波発生装置、および/または少なくとも1つの制御ユニットを含むことを特徴とする請求項21から27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
プロセス変数を決定する少なくとも1つの手段、特にプロセスチャンバーの汚染度を検出する少なくとも1つの手段があることを特徴とする請求項21から28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つの調整装置(9、11、13、14)は、前記少なくとも1つのプロセスチャンバーの上流に接続された基板処理装置、特に、上流の基板洗浄装置(22)とともに基板乾燥装置(1)の少なくとも1つの調整装置(9、11、13、14)であることを特徴とする請求項21から29のいずれかに記載の装置。
【請求項31】
前記基板乾燥装置から出る少なくともいくらかの乾燥ガス(19)、および/または前記少なくとも1つの調整装置に準備されていた少なくともいくつかの乾燥ガス(5)を、前記調整パージガス(15)の少なくとも一部としてプロセスチャンバー(7)に導入するための少なくとも1つの装置を備えることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
プロセスチャンバーにおいて、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングする方法であって、
前記プロセスチャンバー(7)は、コーティング工程の前に、請求項1から18のいずれかに記載された方法によって洗浄され、および/または請求項19から28のいずれかに記載された装置を用いて洗浄されることを特徴とする方法。
【請求項33】
前記クリーニング工程の後に、前記プロセスチャンバー(7)の圧力は、周囲圧力に対して、望ましくは10−7barから10−3barの範囲の圧力に、減圧され、それからコーティングプロセス、特に、気相によるコーティングプロセス、望ましくは、PVDまたはCVDプロセスが開始されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
プロセスチャンバー(7)において、少なくとも1つの基板、特にガラス製の基板をコーティングするための、特に請求項29または30に記載の方法を実行するための装置であって、コーティング工程の前に、調整パージガス(15)でパージすることによりプロセスチャンバー(7)をクリーニングする分離装置、特に請求項19から28のいずれかに記載された装置を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−513754(P2007−513754A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543370(P2006−543370)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000250
【国際公開番号】WO2005/061132
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506198632)ヴィースナー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】