説明

プロセスチーズ類およびその製造方法

【課題】加工デンプンを使用したプロセスチーズ類において、優れた熱溶融性と糸引き性を有したプロセスチーズ類を提供する。
【解決手段】プロセスチーズ類の製造において、化学処理が施された加工デンプンのうち、酸化デンプンを使用し、溶融塩としてクエン酸塩、モノリン酸、ポリリン酸塩から選択されるいずれか1種以上を含有することによって、得られるプロセスチーズ類に良好な熱溶融性と糸引き性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化デンプンを含有し、かつ熱溶融性と糸引き性を有するプロセスチーズ類及びその製造方法に関する。なお、本発明において「プロセスチーズ類」とは、プロセスチーズ、チーズフード等、乳等省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、公正競争規約の成分規格等において規定されたものの他、当該技術分野における通常の意味を有する範囲のものを全て包含する。
【背景技術】
【0002】
プロセスチーズ類は、主に原料であるナチュラルチーズを粉砕し、溶融塩および水を混合した後、加熱しながら混練・攪拌し乳化する乳化工程を経て、冷却・成型することによって製造される。さらに、物性や風味を付与する目的で各種食品素材や食品添加物を加える工程や、最終製品の物性を調整する目的でクリーミングなどのシェアリング処理を行う工程などを行うこともある。
プロセスチーズ類は、加熱溶融後に所望の形態に成型できるという特徴があり、ブロック型やスライス形状など、非常にバラエティに富んだ形状で市場に流通している。一方で、プロセスチーズ類は、原料となるナチュラルチーズの需給の影響を受けるため、国際的なナチュラルチーズ価格の高騰は、プロセスチーズ類の製造において大幅なコストアップ要因となる。このような背景の中、ナチュラルチーズの価格高騰時には、プロセスチーズ類の製造において、ナチュラルチーズの配合量を低減し、油脂や植物原料などを配合することによって、コスト高を吸収することが行われているが、ナチュラルチーズの配合量を減らすことによる風味や機能の悪化を十分には解消できていない。
【0003】
ナチュラルチーズの配合量を低減したプロセスチーズ類としては、例えば、加工デンプンを添加したものが存在する(特許文献1)。特許文献1によると、ナチュラルチーズに溶融塩と、酸化デンプン、エステル化デンプン及びエーテル化デンプンから選ばれた一種以上のデンプンを添加、混合して常法により加熱溶融して乳化すると、優れた耐冷凍性と耐油ちょう性を併せ持ったチーズ類が得られることが記載されている。油ちょう時に型崩れを起こさないということは、すなわち、優れた耐熱安定性を有していることを示しており、加工デンプンをプロセスチーズ類に添加した場合、耐熱保形性が付与され、糸引き性が得られないことが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3108968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を鑑みなされたものであり、加工デンプンを使用したプロセスチーズ類において、優れた熱溶融性と糸引き性を有したプロセスチーズ類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、プロセスチーズ類の製造において、化学処理が施された加工デンプンのうち、酸化デンプンを使用した際に、特定の溶融塩を用いることにより、得られるプロセスチーズ類が、良好な熱溶融性と糸引き性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の態様を含むものである。
(1)酸化デンプンと、溶融塩としてクエン酸塩、モノリン酸、ポリリン酸塩から選択されるいずれか1種以上を含有することを特徴とするプロセスチーズ類。
(2)前記溶融塩の配合量が、原料チーズ類の0.5%〜1.5%であることを特徴とする(1)記載のプロセスチーズ類。
(3)ポリリン酸塩の配合量が、原料チーズ類の1.0%未満であることを特徴とする(1)または(2)記載のプロセスチーズ類。
(4)前記酸化デンプンの配合量が0.5〜6.0%であることを特徴とする(1)または(2)または(3)記載のプロセスチーズ類。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、酸化デンプンの添加によって原料ナチュラルチーズの配合量を低減しつつ、良好な熱溶融性と糸引き性を有するプロセスチーズ類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[原材料]
本発明で用いる原料ナチュラルチーズとしては、通常、チーズ類の製造に使用される、ゴーダチーズ、チェダーチーズ等を例示することができ、特に限定されるものではないが、熟度指標については高すぎると充分な糸引き性を発現することができず、糸引き性は弱くなっていくため、20%以下、さらに望ましくは15%以下が望ましい。他の物性面、風味面については、最終的に得られるプロセスチーズ類において必要な要件を満たすよう設計、配合すれば良く、特に限定されるものではない。また2種類以上の原料ナチュラルチーズを混合して使用しても良い。なお、熟度指標は以下の式で計算する。
熟度指標(%)=(可溶性窒素量/全窒素量)×100
【0009】
また、全窒素量、可溶性窒素量については、以下の方法で定量した。
試料チーズ10gを秤量し、0.5Mクエン酸ナトリウム溶液40ml、温湯30mlを加え、均質化した。得られた溶液を200mlに定容したものを試料チーズ溶液とした。全窒素量については上記試料溶液をそのまま10mlを採取、可溶性窒素量については、上記試料溶液100mlを採取、1.41N塩酸10ml、水15mlを加えpH4.4とし、カゼインを沈殿させた上澄みをろ過し、ろ液10mlを試料溶液とし、それぞれケルダール法を用いて窒素量を定量した。
【0010】
一般的にプロセスチーズ類に熱溶融性と糸引き性を付与するためには、溶融塩としてクエン酸塩、もしくはモノリン酸塩を少量添加、具体的には原料チーズに対して0.5%未満を配合する。溶融塩を0.5%以上添加した場合、たとえ熱溶融性を付与することができても、良好な糸引き性を付与することが難しい。一方、プロセスチーズ類に加工デンプンを配合する場合、溶融塩の配合量を0.5%未満としても、充分な熱溶融性と糸引き性を付与することは難しい。本発明では、加工デンプンとして酸化デンプンを用い、かつ溶融塩を一般的な熱溶融性と糸引き性を有するプロセスチーズ類が得られる配合よりもイオン交換作用がやや強くし、より乳化力が強くなるように配合することにより、プロセスチーズ類における加工デンプン添加系での熱溶融性と糸引き性を発現することができた。
【0011】
本発明で用いる溶融塩としては、一般的にプロセスチーズ類の製造に使用されるクエン酸塩、リン酸塩等を例示することができる。しかし、酸化デンプンを添加した場合、加工デンプンを配合しないプロセスチーズ類に熱溶融性と糸引き性を付与するための溶融塩配合では良好な熱溶融性と糸引き性は付与できない。酸化デンプンを配合する場合、溶融塩の合計配合量が1.5%より大きくなると、糸引き性を発現するために必要なタンパク質構造まで分解することとなり、たとえ良好な熱溶融性を有していたとしても、チーズ特有の良好な糸引き性は発現されない。その傾向は、特にポリリン酸塩を多く使用した場合に強く発現し、良好な熱溶融性、糸引き性を付与させるためには、クエン酸塩、又はモノリン酸塩の単独使用、もしくはポリリン酸塩を併用する場合には、合計配合量は1.0%未満に留めることが必要である。なお、本発明で言うポリリン酸塩は構造上リンを2個以上持つものを指し、ジリン酸塩も包含することとする。
【0012】
本発明に用いる酸化デンプンとしては、天然デンプンを次亜塩素酸ナトリウムで処理したものを例示することができる。この酸化デンプンの原料となる天然デンプンについては、バレイショ、コーン、小麦由来等のものを例示することができるが、天然のデンプン源とすることができるものであれば、特に限定されるものではない。酸化処理の程度により、元の天然デンプンの特徴を残すことも可能である。通常、1種類の天然デンプンを原料とし酸化処理を行うものが多いが、2種類以上の天然デンプンを混合したものを原料としても良い。また、プロセスチーズ類に使用する場合、最終的に得られるプロセスチーズ類に求められる物性、機能に応じて、酸化デンプンの単独使用や、複数の酸化デンプンの併用、酸化デンプンと他の加工デンプンやデンプンとの併用も可能である。通常、デンプン類をいろいろな食品群に使用する場合、水和し、糊化させるため、比較的高い温度と水和時間が必要となる。一般的にデンプン類の加工処理は、溶解温度のコントロール、易溶解性、耐酸性、耐せん断性、老化耐性の付与等、デンプン類の持つ欠点を補うために行われる処理である。酸化デンプンについても例外ではないが、酸化処理はデンプン分子の解重合を行う処理と考えられるため、酸化デンプンは、溶解温度の低下、溶解液の低粘度化、高い粘度安定性、低老化性、透明性、デンプン臭の低下等の特徴を持つ。
【0013】
本発明によれば、副原材料として、脱脂粉乳、ホエー粉、ホエータンパク濃縮物(WPC)等の乳製品、ホエータンパク分離物(WPI)等の乳成分、ローカストビンガム、キサンタンガム、グアガム等の安定剤、モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、安定剤機能、乳化剤機能を持ち合わせたカゼインナトリウム、酸化デンプン以外のデンプン、加工デンプン、大豆白絞油、パーム油等の植物性脂肪、砂糖、甘味料などの糖質類、酸味料、pH調整剤、調味料、香辛料、香料、等々、プロセスチーズ類において使用可能なものを、物性調整や風味調整などそれぞれの目的に応じた形で選択できる。
【0014】
[製造方法]
本発明における乳化処理は、通常、チーズ類の乳化に用いられる乳化剤や安定剤を適宜使用して、乳化機、例えば低速せん断乳化釜等を用いて、50〜200rpmの低速で撹拌すること、高速せん断乳化釜等を用いて、400〜1500rpmの中速から高速で撹拌すること等が挙げられるが、特に限定されるものではない。プロセスチーズ類の製造において、一般的に低速せん断乳化釜を用いた場合には、乳化が弱く大きな脂肪球が存在するため、熱や圧力に対して弱い組織となる傾向があり、高速せん断乳化釜を用いた場合には、乳化が強く小さな脂肪球を形成し、タンパク質によるネットワーク形成がなされるため、硬く熱に対して溶けにくい傾向があるため、本発明品が良好な熱溶融性と糸引き性を有するためには、低速せん断乳化機の使用が望ましい。また、一般的に水分が増加するほど、包材への付着性が高まる傾向があるが、本願発明では、加工デンプン、特に酸化デンプンを使用することによって、付着性を抑制できるものである。
【0015】
なお、本発明における加熱時の糸引き性は、以下の方法で評価した。
(加熱時の糸引き性)
プロセスチーズ類15gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジ(松下電器産業社製:NE-S1A)で30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融したプロセスチーズ類の中央部に入れて10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでにプロセスチーズ類が伸びた長さを測定した。その値が200mm以上を糸引き性が良好であるものとする。
【0016】
以下、実施例を示しながら、本発明を具体的に説明する。
なお、各原料の配合率については、原料チーズ配合率を100%とした時の外割%として配合率を記した。
【実施例1】
【0017】
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g(0.5%)、ポリリン酸ナトリウム20g(0.2%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を50g(0.5%)、300g(3%)、600g(6%)添加した後、最終の水分含量が45重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。対照として、酸化デンプン無添加品についても、同様の方法で調製した。
【0018】
[比較例1]
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g(0.5%)、ポリリン酸ナトリウム20g(0.2%)、加工デンプンとしてファリネックスVA70C(松谷化学工業社)を50g(0.5%)、300g(3%)、600g(6%)添加した後、最終の水分含量が45重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0019】
[試験例1]
実施例1、比較例1で得られたプロセスチーズ類の乳化仕上がり時の状態、冷却後の剥離性評価について、以下の方法で試験を行った。
(1) 乳化仕上り時の粘度
乳化時の加熱攪拌、保持後の粘度を測定した。粘度測定は高粘度用のビスコテスター(VT−04)を使用し、回転数は62.5rpm、2号ローターを用い、乳化、保持後の温度である約80℃で測定した。
(2) 冷却後の剥離性
冷却後のプロセスチーズを切り出し、サンプルチーズとカートン内フィルムとの剥離性について評価した。
(3) 糸引き性評価
プロセスチーズ類15gを直径65mmのシャーレに採取し、500Wの電子レンジ(松下電器産業社製:NE−S1A)で30秒加熱した後、2mm規格のL字型六角レンチの短辺(16mm)がシャーレの底につくように溶融したプロセスチーズ類の中央部に入れて10cm/秒の速度で引き上げたときに、切断するまでにプロセスチーズ類が伸びた長さを測定した。その値が200mm以上を糸引き性が良好であるものとする。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1の結果より、酸化デンプンであるとり粉梅SM添加系では、添加率の上昇とともに、若干の粘度低下と糸引き性評価値低下がみられたが、充分な熱溶融性と糸引き性が発現された。比較例の置換架橋デンプンであるファリネックスVA70C添加系では、少量添加では、若干の糸引き性を発現したが、添加率の上昇とともに糸引き性が消失した。しかし、通常、糸引き性を持たないとされる高せん断乳化機で乳化し、溶融塩量も多めのプロセスチーズにおける“糸を引かない”という傾向とは明らかに異なり、糸を引こうとするが突然切れるような現象が生じた。これは、糸引き性の発現に強く関与するカゼインの構造が残存しているにもかかわらず、置換架橋デンプンにより形成される3次元網目構造と相反する力を生じることとなり、カゼインの応力に対する配向性が発現しにくく、結果として糸引き性が発現されにくくなっているものと推測する。また、酸化デンプン添加系では、フィルムとの剥離性も充分に確保されており、家庭用向け商品群で想定される個包装形態、例えば、カートンタイプ、ポーションタイプ、スライスタイプ等のアルミやフィルムで包装される形態においても、充分な剥離性を示し、個包装タイプのチーズとしての商品価値が高いことが期待できる。実際にスライスフィルムに充填、速やかに氷冷後、5℃冷蔵庫にて24時間以上冷却後のフィルム剥離性は市販の「とろける」タイプスライスチーズと遜色の無いレベルであることを確認した。一方、酸化デンプンを使用することなく、置換架橋デンプンのみを用いた場合、風味、充填適性とともに、特に剥離性が劣ることが明らかとなった。
【実施例2】
【0022】
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g、ポリリン酸ナトリウム0g(0%)、20g(0.2%)、50g(0.5%)、100g(1.0%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0023】
[比較例2]
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g(0.5%)、ポリリン酸ナトリウム150g(1.5%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0024】
[試験例2]
実施例2、比較例2で得られたプロセスチーズ類の乳化仕上がり時の状態、冷却後の剥離性評価について、試験例1と同様に実施した。その結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
表2の結果から、溶融塩の添加量を1.5%以下、特にポリリン酸塩の添加量を1.0%以下にすることによって、良好な糸曳き性を有するプロセスチーズ類が得られることが明らかとなった。
【実施例3】
【0027】
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g(0.5%)、150g(1.5%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0028】
[比較例3]
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム20g(0.2%)、200g(2.0%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0029】
[試験例3]
実施例3、比較例3で得られたプロセスチーズ類の乳化仕上がり時の状態、冷却後の剥離性評価について、試験例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表3の結果から、クエン酸ナトリウム単独使用の場合、添加量を0.5−1.5%とすることによって、良好な糸引き性を有するプロセスチーズ類が得られることが明らかになった。クエン酸ナトリウムは、添加量が少なすぎると乳化が不安定でオイルオフを引き起こし、多すぎると糸引き性が消失した。
【実施例4】
【0032】
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてモノリン酸ナトリウム50g(0.5%)、150g(1.5%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0033】
[比較例4]
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてモノリン酸ナトリウム20g(0.2%)、200g(2.0%)、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
【0034】
[試験例4]
実施例4、比較例4で得られたプロセスチーズ類の乳化仕上がり時の状態、冷却後の剥離性評価について、試験例1と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
表4の結果から、モノリン酸ナトリウム単独使用の場合、添加量を0.5−1.5%とすることによって、良好な糸引き性を有するプロセスチーズ類が得られることが明らかになった。モノリン酸ナトリウムはクエン酸ナトリウム同様、添加量が少なすぎると乳化が不安定でオイルオフを引き起こし、多すぎると糸引き性が消失した。
【実施例5】
【0037】
熟度25%のチェダーチーズ6kgおよび熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕、混合した。混合チーズ10kgを低速せん断乳化釜に投入し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50g(0.5%)、ポリリン酸ナトリウム20g(0.2%)、植物性油脂として精製パーム油(不二製油社)を1kg、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が47重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、チーズフードを得た。得られたチーズフードを薄切りにし、食パンの上に4枚乗せ、オーブントースターにて2分間焼いたところ、適度なオイルオフを生じ、良好な熱溶融性と糸引き性を発現した。
【実施例6】
【0038】
熟度8%のゴーダチーズ4kgを原料ナチュラルチーズとして用い、粉砕した。粉砕チーズ4kgを低速せん断乳化釜に投入し、これにカゼインナトリウム400g、食塩150g、寒天(伊那食品工業社)50g、溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ポリリン酸ナトリウム20g、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬社)30g、安定剤としてローカストビンガム40g、pH調整剤として無水クエン酸15g、植物性油脂として精製パーム油(不二製油社)を3kg、酸化デンプンとしてとり粉梅SM(松谷化学工業社)を300g(3%)添加した後、最終の水分含量が46重量%となるように水を添加し、80rpmで80℃まで加熱攪拌した。酸化デンプンの水和時間を考慮し、80rpm、80℃にて2分間保持した。加熱したチーズについては、350gカートンに充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、乳等を主要原料とする食品(以下、乳主原)を得た。得られた乳主原を薄切りにし、食パンの上に4枚乗せ、オーブントースターにて2分間焼いたところ、適度なオイルオフを生じ、良好な熱溶融性と糸引き性を発現した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化デンプンと、溶融塩としてクエン酸塩、モノリン酸塩、ポリリン酸塩から選択されるいずれか1種以上を含有することを特徴とするプロセスチーズ類。
【請求項2】
前記溶融塩の配合量が、原料チーズ類の0.5%〜1.5%以下であることを特徴とする請求項1記載のプロセスチーズ類。
【請求項3】
前記ポリリン酸塩の配合量が、原料チーズ類の1.0%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプロセスチーズ類。
【請求項4】
前記酸化デンプンの配合量が0.5〜6.0%であることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のプロセスチーズ類。