説明

プロセス制御として特定の酸素取り込み速度を用いた発酵プロセス。

特定の酸素取り込み(OUR)は、発酵プロセスにおけるプロセス制御パラメータとして使用できる。OURは、少なくとも発酵プロセスの生産期の間に決定され、プロセスパラメータは、所望の範囲にOURを維持するように調整される。本発明は、特に、もはや機能しない分裂された固有のPDC経路を有する微生物を用いて発酵行われる場合に、適用できる。この分類の微生物は、厳密な好気条件下での生産が不十分である。OURをモニタリングすることにより制御される微好気は、微生物の能力を至適化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2002年5月30日に出願された米国分割出願NO.60/384,333の優先権を請求する。
【0002】
この発明は、Department of Energyにより与えられている約定No. DE-FC-36-00GO10598に基づき、米国政府のサポートによりなされている。
【0003】
乳酸は、化学処理や合成、化粧品、製薬、プラスチックおよび食品生産等における利用を含む広い産業上の実用性を有している。乳酸生産のための最も産業的なスケールのプロセスは、発酵プロセスである。様々な乳酸生産微生物が、そのような発酵プロセスにおいて使用されている。
【背景技術】
【0004】
最近のリサーチでは、乳酸発酵プロセスにおいて組換え酵母株の使用が研究されている。組換え酵母は、微生物発酵に対していくつかの長所を有すると考えられる。数種の酵母株は、高温に対してより耐性を示す。この可能性は、高い温度での発酵を可能とし、発酵速度をより早い速度に移行する。高温に対するさらなる耐性は、発酵培地における細菌のコンタミネーションを容易に一掃することができる。これは、不要な種は死滅するが所望の種は耐性を示す温度に、前記培地を容易に加熱できるためである。乳酸菌のような乳酸生産細菌は、十分な生産のために複雑な発酵培地が必要である。発酵培地の複雑さは、原料費を増加させ、培地から乳酸を分離することを困難且つ高コストとする。組換え酵母の使用には、簡易な発酵培地を使用することによるコスト削減の可能性が提案されている。
【0005】
Porroらは、S.cerevisiae、K.lactic、T.delbrueckiiおよびZ.bailii等の酵母細胞に外来LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子を挿入し、前記細胞固有の乳酸経路を分裂することによって、乳酸生産酵母の設計を試みた。非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照。Porroらは、乳酸を生産する組換え酵母を作製することができたが、その株は、商業上プロセスにおける手段として十分な程は、ほとんど機能しなかった。産業環境において使用できるためには、株は、優れた乳酸収率(例えば、乳酸への基質の高い変換)ならびに高い生産力(例えば、乳酸への基質の迅速な代謝)を示さなければならない。酵母は、高い乳酸滴定を示す培地に耐性であることが好ましい。
【0006】
さらに近年、Rajgarhia らは、Porroの組換え酵母よりも高い収率および生産力を示す組換え酵母を作製した。例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3を参照。特許文献1(WO 00/71738)に報告されているRajgarhiaの研究は、ある種の酵母種により見られる「クラブトリー陰性」表現型と呼ばれる長所を得ることの試みである。クラブトリー効果は、高い特定生育速度における培養(long-term 効果)、もしくは、高濃度グルコース存在下での培養(short- term 効果)の際に、微生物による酸素消費の阻害が原因である、好気条件下での発酵代謝の発生として定義されている。クラブトリー陰性表現型は、この効果を奏さず、また、高濃度グルコース存在下または高生育速度でさえ、酸素を消費できる。このように、クラブトリー陰性の微生物の培養は、少なくとも理論上、生育期から発酵(生産)期に、酸素供給の操作を通じて変換できる。十分な通気条件下、バイオマスおよび二酸化炭素を生産するために生育し、嫌気条件下であるがゆえに、細胞が、代わりに、乳酸または他の発酵産物を生産するための利用可能な基質を発酵する。
【非特許文献1】Porro et al., "Development of metabolically engineered Saccharonayces cefevisiae cells for the production of lactic acid", Biotechnol. Prog. 1995 May-Jun; 11 (3): 294-8.
【非特許文献2】Porro et al.,"Replacement of a metabolic pathway for large-scale production of lactic acid from engineered yeasts", App. Environ. Microbiol. 1999 Sep: 65 (9): 4211-5.
【非特許文献3】Bianchi et al. ,"Efficient homolactic fermentation by Klzyveroonyces lactis strains defective in pyruvate utilization and transformed with the heterologous LDH gene", App. Environ. Microbiol. 2001 Dec; 67 (12) 5621-5.
【特許文献1】国際公開WO 00/71738号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO 02/42471号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願PCT/US02/16223
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、我々は、ある株が、厳密な嫌気条件下で、望まれるように十分な発酵を行わないことを見出した。これは事実であり、例えば、ピルビンデカルボキシラーゼ(PDC)経路が欠損もしくは分裂した工学酵母株においてである。しかしながら、PDC経路の分裂は、生産されるエタノール量を減少させるため、このような工学設計された種の利用は、乳酸発酵において強く望まれている(所望の産物がエタノール以外のものも同様)。したがって、厳密な嫌気条件下で十分に発酵しない株に、経済的に望まれる発酵産物を生産させることができる、改良された発酵プロセスの提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態において、本発明は、発酵プロセスであり、発酵プロセスの生産期の間、特定の酸素取り込み速度をモニターし、少なくとも一つの作動パラメータが、前記測定された酸素取り込み速度に応じて制御される。
【0009】
他の形態において、本発明は、発酵微生物、微生物により発酵可能な基質を含む発酵培地において発酵プロセスを行う方法であって、前記発酵が、発酵の間、多量の溶存酸素(DO)および特定の酸素取り込み(OUR)を示し、
a) 発酵の生産期の間、前記OURを測定する工程と、
b) 発酵の前記生産期の間、飽和の1%未満のDOを維持しながら、所定の範囲内に、前記OURが維持されるような通気条件に調整する工程とを含む。
【0010】
3つめの形態において、本発明は、以下の工程を含むプロセスである。
a) 発酵微生物が炭水化物を所望の発酵産物に発酵させるOUR値の至的範囲を決定する工程、
b) 細胞が生育および繁殖(reproduce)し、培地のDOを飽和の1%未満に減少させ、細胞が少なくとも10 mmol O2/g(細胞の乾燥重量)/h(mmol O2/gdw/h)である特定の酸素取り込み速度を示すように、前記培地に通気しながら、前記工学酵母細胞を、前記細胞が代謝可能である炭水化物および1以上の栄養素を含む培地で生育させる工程、
および、それから、
c)前記至的範囲内の特定の酸素取り込み速度(OUR)での培養を提供するのに十分な微好気条件を含む発酵条件下、緩衝培地で微生物を培養する工程。
【0011】
本発明は、他の形態において、発酵プロセスであり、以下の工程を含む。
a) 細胞が生育および繁殖(reproduce)し、培地の溶存酸素濃度を飽和の1%未満に減少させ、細胞が少なくとも10 mmol O2/g(細胞の乾燥重量)/h(mmol O2/gdw/h)である特定の酸素取り込み速度を示すように、前記培地に通気しながら、分裂されたPDC経路および前記細胞に所望の発酵産物を生産させることを可能にする外来遺伝子を有する工学酵母細胞を、前記細胞が代謝可能である炭水化物を含む培地で生育させる工程、
および、
b) 約0.8〜約3.0mmol O2/gdw/hの特定の酸素取り込み速度(OUR)での培養を提供するのに十分な微好気条件を含む発酵条件下、緩衝培地で細胞を培養する工程。
【発明の効果】
【0012】
驚くことに、プロセス制御パラメータとして酸素取り込み速度を用いた微好気条件の使用は、発酵プロセスに、優れた生産速度で、所望の発酵産物の高収率を最適化、バランス化することを可能にする。OUR測定は、発酵プロセスの生産期において、最適な条件を維持するために、発酵プロセスのあるパラメータを確立し制御するために使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
OURは、単位時間における生産微生物の乾燥重量当たりの酸素消費速度である。OURは、単位時間あたりに消費される酸素量や、周期における細胞量から容易に決定される。酸素消費は、単位時間における発酵器への供給酸素量や、除去された酸素量を測定することにより容易に決定できる。それから、OURは、培地におけるバイオマスの量(乾燥重量)により酸素消費を割ることによって決定できる。バイオマスの重量は、サンプルを取り、細胞濃度(w/v)を測定し、培地全量をかけることによって決定できる。供給された酸素量は、通気速度をモニタリングすることにより簡単に測定される。発酵器に残った酸素量は、様々な分析方法、特にマススペクトル測定法によって測定できる。供給酸素と除去された酸素(oxygen removed)との差は、細胞により消費された量である。OURは、細胞の乾燥重量および単位時間により、酸素消費を割ることによって算出される。これは、簡単に、mmol(酸素)/細胞のグラム(乾燥重量)/時間で表される。
【0014】
さらに他の形態において、本発明は、発酵の生産期の間におけるOURの測定、および、測定されたOUR値に応じて発酵の少なくとも1つのパラメータを制御することに関する。測定されたOURに応じて制御される前記パラメータは、一般に、発酵培地の通気に関連する。例えば、通気速度、攪拌速度、通気ガス組成(例えば、ガス中の酸素濃度の増加または減少)、その他、培地中の微生物が酸素を消費する速度に影響するパラメータ等である。
【0015】
本発明の好ましい形態において、発酵細胞は、特定の種類の細胞について至適範囲のOURが実験的に確立された様々な通気条件下で培養される。至適OURの範囲は、一般的に、様々なファクターを考慮に入れる。例えば、発酵基質からの所望の発酵産物の収率(通常、「g(産物)/g(消費基質)」で表される)、所望の発酵産物の特定の生産力(通常、「産物の重量/乾燥細胞の重量/単位時間」で表される)、および、基質消費速度(通常、「消費基質重量/単位時間」で表される)の3つが、主要な傾向である。これらのファクターは、通常、同じ通気条件下において、全てが最適化されているわけではない。例えば、基質消費速度は、時々、OURの増加に伴って増加するが、収率は落ちる傾向にある。そのため、大きな収率ロスに伴い、迅速な産物速度の損失が釣り合い、全面的にプロセスの経済が痛手をうける。OUR値の至適範囲の確立は、一般に、全面的なプロセス経済を最適化するための収率に伴って、平衡化速度に影響する。一度OUR値の所望の範囲が確立されると、その範囲にOURを確立し維持するために、発酵条件は発酵の生産期において選択される。すでに述べたように、OURはプロセスの間で測定され、1以上の発酵パラメータがOURを前記範囲に維持するように制御される。
【0016】
生産期の間、溶解酸素濃度はほぼゼロに維持され、それは、発酵培地に酸素が溶解し始める時とほぼ同じ速度で、細胞が酸素を消費する条件を示す。生産期における溶解酸素の濃度は、一般に、飽和量(例えば、使用される温度および圧力条件の下、培地に溶解される最大量)の1%未満である。一般的に、溶解酸素含有量は、約10μmoles/L未満であり、より好ましくは5μmoles/Lである。特に、溶解酸素含有量が本質的にゼロであることが好ましい。溶解酸素は、Ingold社製であり、B Braun社が販売する商品番号33182418または3318240033のようなガス透過膜を備えた酸素電極(クラーク電極)を用いて容易に測定できる。このような機器の検出限界未満である溶解酸素含量の操作は、本発明の目的において、ほぼゼロの溶解酸素濃度を反映するとみなされる。
【0017】
本発明の特に好ましい形態において、微生物は異なる生育条件および生産条件下において培養される。生育期において、微生物は好気的に生育する。細胞は、水、生育期および生産期の両方において細胞が代謝できる炭水化物、および以下に示すような様々な栄養素を含む培地で生育させる。通気条件は、(1)細胞が少なくとも10 mmol O2/gdw/hである特定の酸素取り込み速度(OUR)を示す、(2)生育期の最後に、OURを少なくとも10 mmol O2/gdw/hに維持しながら、培地中の溶解酸素(DO)濃度を飽和量の1%未満に減少させること、から選択される。前記OURは、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも18 mmol O2/gdw/hである。生育期の間、OURは細胞の発生と同様に高いことが好ましい。そのため、最大OURは使用される特定の工学酵母細胞に幾分か依存する。一般的に、最大OURは、約20-30 mmol O2/gdw/hと推測される。PDC分裂および外来LDH遺伝子を有するK marxianus細胞は、約20-22 mmol O2/gdw/hの範囲に最大OURを示す傾向にある。
【0018】
DOは、生育期の最後においてほぼゼロに減少するとすれば、生育期の大部分において約ゼロであることが好ましい。このように、必要なOURを維持するために必要である過剰酸素は、生育期の大部分において、特に細胞が指数的に成長する間において、培地に導入されてもよい。細胞が繁殖し、バイオマスが蓄積するような成育期の間、全酸素取り込み量は増加するため、一定のOURを維持するために必要な全酸素量は増加する。しかしながら、DOは生育期の最後より前にポジティブであるため、通気を行う好ましい手段は、生育期の指数段階の始めおよび間において、必要酸素の過剰量を供給することである。バイオマスが蓄積するため、細胞により消費された全酸素は、供給された酸素が細胞により消費された酸素に匹敵する点まで増加し、DOは結果として下がる。このため、もし、これらの条件が、所望のバイオマス量が生産された時に、必要なOURに伴ってDOがゼロになるよう選択された場合、一定の通気条件が生育期の間使用される。また、通気条件は、OURが維持され、DOが生育期の最後においてほぼゼロになるように、生育期において変化させることができる。
【0019】
一度DOをほぼゼロに下げ、所望の量のバイオマスが生産されると、生産期への切り替えに先立って、ある時間帯、通気条件を維持することが好ましい(OURが少なくとも10 mmol O2/gdw/hであり、DOがゼロに等しい)。適当な時間は、約15分-2時間であり、より好ましい時間は、約30分-90分である。最も好ましい時間は、約45-75分である。生物が、非常に迅速に生産期に切り替わった場合、細胞は遅い生産速度を示す傾向にある。これらの通気条件が、非常に長く維持される場合、細胞は、遅い生産速度と同様に、所望の発酵産物について低い収率を示す傾向にある。
【0020】
培養は、通気条件の変化によって生産期に切り替わる。生産期において、微好気条件は、上述のように、OURが所定の範囲内で維持されるように選択される。数種の微生物は、生産期において、一般的な細胞の生命力および健康を促進するために、少ない酸素量を代謝することが必要と思われる。このような生物の実験は、一般的にPDC分裂を有し、特に、特定の発酵産物を生産することを可能とする外来遺伝子を有する、工学設計された酵母を含む。完全な好気条件において、これらの細胞が示す基質消費速度と発酵産物生産速度は、通常非常に低い。加えて、所望の発酵産物の収率も悪い。微好気条件下、特に特定の株に依存するあるOUR値において、細胞はより迅速に基質を代謝することができる。これは、基質消費速度および所望の発酵産物生産速度が増加することの結果である。しかしながら、酸素消費はある値を超えて増加するので、基質が二酸化炭素に変換されて所望の産物の収率が減少する。これに加えて、収率のロスが速度上昇により補償されないように、生産速度は、横ばいの傾向、もしくは、ある値を超えてOURが増加するような減少傾向となる。したがって、生産期の間ある範囲にOURを維持することは、経済的に収率や生産速度の最適なバランスを達成することとなる。
【0021】
OURの至適値は、一般的に、特定の生物に幾分か依存するが、OUR範囲は、約0.8−約3 mmol O2/gdw/hの範囲である。特定生物の至適OUR値は、容易に実験的に決定できる。OUR範囲の好ましい下限は、約1.0 mmol O2/gdw/hであり、より好ましく約1.2 mmol O2/gdw/hである。OUR範囲の好ましい上限は、約2.5 mmol O2/gdw/hであり、より好ましくは約2.0 mmol O2/gdw/hである。
【0022】
培養液により表されるOURは、微生物自体や、通気条件に大きく依存する。通気条件は、培地に溶解し始め、生物に利用可能となり始める酸素濃度に影響を及ぼす。与えられた生物において、OURの増加は、(1)酸素が供給される速度を増加すること、(2)小さい酸素泡の形成(液相に酸素分子の質量転移を促進するため)、により容易になる。小さい泡形成は、散布および/または攪拌を通じて容易に達成される。
【0023】
生育期における通気速度の例は、少なくとも空気約0.2体積/発酵培地体積/分(vvm)であり、好ましくは約0.3−約2vvm、さらに好ましくは約0.4-約1vvmである。生産期において、約0.01-約0.1vvmの体積であり、好ましくは約0.02-約0.75vvm、特に好ましくは約0.02−約0.5vvmである。酸素が通気ガスとして使用できる場合、体積は比例して小さくなる。通気は、細かいガス泡の形成を促進する散布のような条件下で行うことが好ましい。攪拌は、維持することが好ましく、特に、高いOUR値である場合に好ましい。一般的に、通気速度および攪拌条件は、所望のOURに達成するためにそれぞれ設定される。
【0024】
発酵産物が酸である場合、pHを約5.0-約9.0の範囲に維持するため、好ましくは約5.5-約7.0の範囲に維持するため、生産期において、培地は緩衝されている。適当な緩衝剤は、それ自体から形成された乳酸を中和する塩基性材料や、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、水酸化アンモニウム等を含む。一般に、従来の発酵プロセスにおいて使用されているこれらの緩衝剤は適切である。
【0025】
温度、細胞密度、基質の選択のような他の発酵条件は、本発明に重要とは考えられず、一般的に経済的プロセスを行うために選択される。至適温度は特定の微生物に依存するが、生育期と生産期のそれぞれにおける温度は、前記培地の凍結温度以上から約50℃の範囲である。好ましい温度は、特に生産期において、約30-45℃の範囲である。細胞が、工学設計されたK.marxianusの場合、相対的に高い温度に寛容である(40℃以上50℃まで、特に45℃まで)。他の好ましい細胞種であるC. sonorensisは、約40℃までの温度に寛容である。この温度範囲は、生産力が大きくロスすることなしに、より高い温度で発酵を行う可能性を提供する(これにより冷却コストが減少する)。高温寛容に優れる他の利点は、発酵が不要な微生物でコンタミネーションされるとすれば、多くの場合において、不要な微生物は、40℃以上、特に45℃以上に発酵培地を加熱することによって、本発明の所望の細胞をひどく損傷することなしに、選択的に殺菌できることがあげられる。
【0026】
生産期の間、発酵培地における細胞濃度は、一般に、約1-150g(乾燥細胞)/L(発酵培地)、好ましくは約3-10g(乾燥細胞)/L(発酵培地)、さらに好ましくは約3-6g(乾燥細胞)/L(発酵培地)の範囲である。
【0027】
宿主細胞が特定の炭水化物をピルビン酸に代謝するように工学設計されたものであるか否かによって、使用される特定の炭水化物は、特定の宿主細胞に依存する。グルコース、フルクトースのようなヘキソース糖、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、デンプンおよびマルトデキストリンのようなグルコースオリゴマーが好ましい。オリゴマー糖の場合、これらをモノマー糖に分解するために、発酵培地に酵素を添加することが必要である。好ましいペントース糖の一例は、キシロースである。グルコースは、最も好ましい。
【0028】
緩衝発酵において、乳酸のような酸性の発酵産物は、対応する乳酸塩を形成するように中和される。このため、酸の回復は遊離酸の再生に関与する。これは、一般に、細胞を除去し、発酵培地を、硫酸のような強酸で酸性化することによって行われる。酸から分離された塩副産物が形成される(カルシウム塩が中和剤であり、硫酸が酸性化剤である場合は石膏)。それから、T. B. Vickroy, Vol. 3, Chapter 38 of Comprehensive Biotechnology, (ed. M. Moo-Young), Pergamon, Oxford, 1985、R. Datta, et al., FEMSMicrobiol. Rev., 1995; 16: 221-231、米国特許番号4,275,234、4,771,001、5,132,456、5,420,304、5,510,526、5,641,406および5,831,122ならびに国際特許出願番号WO 93/00440に開示されるような液-液抽出、蒸留、吸着等の技術により、酸は回復される。
【0029】
培地は、一般的に、窒素源(アミノ酸タンパク質、アンモニアまたはアンモニウム塩のような無機窒素源等)、様々なビタミンや無機質等を含む、特定の細胞に必要とされる栄養素を含有する。
【0030】
本発明のプロセスは、連続的、バッチ式、またはそれらの組み合わせによって行われる。
【0031】
本発明のプロセスで使用される微生物は、(1)炭水化物を所望の発酵産物に発酵し、(2)厳密に嫌気的な条件下よりも微好気性条件下でより効率よく発酵する。特に重要な細胞は、(1)分裂されたPDC経路、および(2)所望の発酵産物を細胞に生産させることができる、少なくとも1つの機能性外来遺伝子、を有することにより特徴付けられた、遺伝的に工学設計されたある酵母細胞である。このような設計された酵母細胞は、例えば、Porro et al., "Development of metabolically engineeredSaccharo7nyces cerevisiae cells for the production of lactic acid", BiotechiioL Prog. 1995 May-Jun; 11 (3): 294-8、 Porro et al. ,"Replacement of a metabolic pathway for large-scale production of lactic acid from engineered yeasts", App.Enviroiz. Microbiol. 1999 Sep: 65 (9): 4211-5、およびBianchi et al. ,"Efficient homolactic fermentation by Kluyverimyces lactis strains defective in pyruvate utilaization and transdormed with the heterologous LDH gene", App. Environ. Microbiol. 2001 Dec; 67(12)5621-5、WO 00/71738、WO 02/42471、PCT/US02/16223、および2002年5月20日に出願された米国仮出願No.60/384,333等に開示されている。前記細胞は、また、クラブトリー陰性表現型を示すことが好ましい。これは、高濃度グルコースの存在下や高い生育速度の通気条件において呼吸および生育できるためである。
【0032】
「分裂(disrupted)」は、PDC経路の機能が少なくとも90%減少するように変化していることを意味する。その機能を弱めもしくは取り除くように、経路(経路と関連する1以上の遺伝子)を変化させることにより、または経路が機能するために必要な1以上の遺伝子を取り除くことにより、分裂を達成できる。PDC遺伝子を欠損している細胞が好ましい。
【0033】
好ましい外来遺伝子は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子である。前記遺伝子は、細胞のゲノムに挿入されることが好ましい。設計された酵母細胞は、外来遺伝子のシングルコピーでもよいし、マルチプルコピーを有してもよい。2以上の外来遺伝子を含むこともできる。特に好ましい形態においては、前記細胞のゲノムにおける欠損した固有のPDC遺伝子部位に、前記遺伝子が挿入されていることが好ましい。特に好ましい形態において、LDH遺伝子は、前記細胞に固有のオペレーティブプロモーターやターミネーター配列(特に、PDCプロモーターやターミネーター配列)の機能制御下であることが好ましい。これらの好ましい細胞および特に好ましい細胞は、2002年5月30日に出願した米国仮出願No.60/384,333およびそれに含まれる関連文献においてより詳細に開示されている。
【0034】
Lactobacillus helveticus, Pedicoccus acidolactici, Lactobacillus casei, Kluyveromyces thermotolerans, Torulaspora delbrueckii, Schizosaccharomyces pombii および B. megateriumは、工学設計された酵母の生産に使用するためにクローニングできる、安定なL-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を有する株である。好ましい2つのL-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、L. helveticusとB. megateriumのL-乳酸デヒドロゲナーゼである。Lactobacillus helveticus, Lactobacillus johnsonii, Lactobacillus bulgaricus, Lactobacillus delbrueckii, Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus pentosusは、工学設計された酵母の生産に使用するためにクローニングできる、安定なD-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を有する株である。好ましいD-乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子は、L. helveticusのD-乳酸デヒドロゲナーゼである。
【0035】
商業的使用において、設計した細胞は、様々な特性を示すとよい。酵母は、多くの割合の炭水化物が所望の発酵産物に変化するとよい(例えば、高収率の産物を生産)。高い生産力、例えば、単位時間において細胞重量あたり多くの量の発酵産物を生産することである。前記細胞は、高濃度の発酵産物に耐性であることが好ましい。この最後の特性は、高濃度の開始炭水化物を利用する発酵プロセスを可能とする。
【0036】
一般的に、本発明の発酵プロセスは、以下の特徴のいくつかまたは全てを示すことが望ましい。
A. 収率が、少なくとも30g(発酵産物)/g(基質)、好ましくは少なくとも40g(発酵産物)/g(基質)、より好ましくは少なくとも60g(発酵産物)/g(基質)、さらに好ましくは75g(発酵産物)/g(基質)である。理論上の望ましい収率は100%であるが、実用上の収率の限界は約98%である。
B. 特定の生産力が、少なくとも0.1g(発酵産物)/g(細胞)/時間、好ましくは少なくとも0.3 g(発酵産物)/g(細胞)/時間、より好ましくは少なくとも0.4 g(発酵産物)/g(細胞)/時間、特に約0.5 g(発酵産物)/g(細胞)/時間である。特定の生産力は、できるだけ高いことが好ましい。
C. 滴定値(発酵産物の最大濃度)が、少なくとも15g/L(発酵培地)であり、好ましくは少なくとも20g/Lであり、より好ましくは40g/Lであり、さらに好ましくは80g/Lであり、また、150g/Lまでであり、好ましくは約120g/Lまでである。乳酸の場合、高濃度乳酸溶液(例えば、約150g/L以上)は、約35℃以下の温度で、非常に粘性またはゲル化する傾向にあるため、発酵培地の温度は、すぐに達成しうる適定の高値に影響する。約35-50℃のような高い発酵温度は、ゲル化または粘度が上昇することなく、高い滴定値を可能とする。
【0037】
加えて、本発明の発酵プロセスは、高容量の生産力を達成することが好ましい。容量生産力は、単位時間における発酵培地容量当たりの生産物量として表され、一般に、g(生産物)/L(培地)/hr(時間)である。容量生産力は、少なくとも1.5g/L/hrであり、好ましくは少なくとも2.0g/L/hrであり、より好ましくは少なくとも2.5g/L/hrである。好ましい細胞密度である3-6g(細胞)/L(発酵培地)の場合、最大生産力は約5.0g/L/hrまでとなる傾向があり、より一般的には、約4.0g/L/hrまでである。これらの容量生産力が、培地pH、温度または両方が前述の段落で述べた範囲内である場合に達成するように、発酵を行うことが非常に好ましい。
【0038】
本発明により生産される乳酸は、ラクチド、2つの乳酸分子の環状無水物を生産するのに有用である。乳酸の立体異性体に依存して、乳酸は、D-ラクチド(D-乳酸2分子から形成)、L-ラクチド(L-乳酸2分子から形成)またはD-L-ラクチド(L-乳酸1分子とD-乳酸1分子とから形成)となる。乳酸からラクチドを生産する簡便な方法は、Gruberらの米国特許5,142,023に開示されている重合/脱重合方法がある。
【0039】
次に、ラクチドは、ポリ乳酸ポリマー(PLA)およびコポリマーの生産のためのモノマーとして有用である。これらのポリマーの製造方法は、例えば、Gruberらの米国特許5,142,023に開示されている。好ましいPLA産物は、Gruberらの米国特許5,338,822に開示されている溶融安定なポリマーである。このようなPLAは、半晶質または非晶質である。
【0040】
以下の実施例は、本発明の一形態を例示するものであるが、その範囲や要旨を制限するものではない。部および%は、特に示さない限り重量である。
【実施例1】
【0041】
CD587と称される遺伝子工学で設計された酵母細胞の接種原料を、100g/1グルコースを含有する100ml CaCO3緩衝(42g/l)酵母抽出物(10g/1)-ペプトン(20g/1)培地を入れた250mlの攪拌フラスコに接種した。OD600=10の時点で、細胞を遠心分離により回収し、続いて15%(w/v)グリセロール溶液に懸濁し、1.5mlに等分して-80℃で保存した。
【0042】
CD587細胞は、PDC遺伝子欠損のK.marxianus細胞であり、固有のPDCプロモーターおよびターミネーター配列の制御下、そのゲノムの欠損PDC遺伝子部位に外来L.helveticusのD-LDH遺伝子が挿入されている。CD587細胞およびその調製物は、2002年5月30日に出願した米国分割出願No.60/384,333に十分に開示されている。
【0043】
生育期は、1.5mlグリセロール原料を3L培地に接種することにより開始する。初期OD600は0.05である。生育期は、800rpmの一定攪拌速度の下、流速1.5 L/min (0.5 vvm)の継続的な空気散布によって好気的に行う。生育は、DOが空気飽和の5%に減少するまで継続する。これは、オフガス(off-gas)中の一定の二酸化炭素濃度と一致する。OURは、供給した空気量のモニタリングおよびマススペクロメトリーを用いた酸素に対するオフガス(off-gas)の分析により測定した。生育期の間、OURは約20.8±2.5mmol 02/gdw/hrである。これらの条件下、OURは、利用可能な酸素を代謝する細胞の能力により制限される。最終的な細胞密度は、約4g/Lである。
【0044】
DOがゼロに到達すると、生産期が始まる前に、通気条件を1時間維持する。前記生産期は、空気流速を0.1 L/min (0.033vvm)に瞬時にかえ、攪拌速度を50rpmに減少することにより開始する。この通気条件の変化は、結果として、生産期においてOURを1.5±0.1mmol 02/gdw/hrおよびDOをゼロとする。発酵は、約60時間継続させる。グルコース消費速度、乳酸生産速度および乳酸収率は、段階的に抜き取ったサンプルのHPLC/IC/GC-MS分析により測定する。生産期における結果を、表1に示す。
【0045】
(表1)
最大乳酸滴定量 106±3.1 g/kg
グルコース消費速度 1.2±0.05 g/gdw/h
乳酸生産速度 1.1±0.04 g/gdw/h
乳酸収率(生産期) 0.92±0.03 g(乳酸)/g(グルコース)
% 回収炭素 99%±3.0
乳酸の光学純度 >99.9
【0046】
この実施例は、連続ランにおけるOUR値(約1.2, 2.2, 2.8, 3.0 および 3.2)に影響するように、生産期における通気条件を変化させて数回繰り返す。結果を図1のグラフに示す。図1に示すように、1.2〜3.0の範囲におけるOURの増加に伴って、収率(曲線1)は徐々に著しく減少する。増加(あるいは変則的)は、OUR3.2でのさらに大きな減少の前に見られる。これらの減少する収率は、酸素が段々と利用可能になるため、増加した細胞の呼吸と一致する。乳酸生産速度(曲線3)は、OUR約1.2〜2.2の範囲内でわずかに増加し、それから、増加する前に、OURが2.8に増加するため減少する。しかしながら、OUR値3もしくはそれ以上での増加する生産速度の利益は、増加する収率ロスのために失われる。急速な細胞呼吸のためOURが1.2〜2.8に増加し、続いて、OURが3.0以上に増加するので、グルコース利用速度(曲線2)はわずかに増加する。図2のデータは、この株について、至適OUR値が約0.8〜約2.2の範囲であり、特に約1.0〜約1.5の範囲であることを示している。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、工学設計されたCD558株を用いて数回繰り返し行われる。CD558株は、PDC欠損のK.marxiamls細胞である。これは、そのゲノムにランダムに挿入された外来のL.helveticus D-LDH遺伝子を含む。前記LDH遺伝子は、S.cerevisiae PGK-1プロモーターおよびS. cerevisiae Gal-10ターミネーター配列の制御下にある。それぞれのランにおいて、生育期におけるOURは約20.5 mmol O2/gdw/hrである。生産期における通気条件は、OURを変化させるために、散布速度および攪拌速度を制御することにより、ランごとで変化させる。それぞれのランにおけるOUR値は、約0.6, 1.4, 1.7 および 2.2である。OUR1.7の生産期における結果を表2に示す。
【0048】
(表2)
最大乳酸滴定量 111 g/kg
グルコース消費速度 0.94 g/gdw/h
乳酸生産速度 0.83 g/gdw/h
乳酸収率(生産期) 0.89 g(乳酸)/g(グルコース)
% 回収炭素 95.6%
乳酸の光学純度 >99.9
【0049】
図2は、OUR変化が、どのように生産速度および収率に影響を与えているかを示す。この株について、乳酸の収率(曲線1)は、OURが1.4付近である時に最大に達し、0.7〜2.2の範囲において、非常に強くOURに依存することを示している。乳酸生産速度(曲線3)もOUR値と類似したピークである。グルコース消費速度(曲線2)は、OURが約2.2になるまで増加し、それから減少する。この株についての図2のデータは、至適OURが約1〜約1.7の範囲であり、特に1.2〜1.5の範囲であることを示している。
【実施例3】
【0050】
実施例1を3回繰り返す。これらのランの一回目(3A)は、生産期におけるOURが2.1 mmol 02/gdw/hである以外は、実施例1と同様に行う。二回目のラン(3B)の間、生育期におけるDOがゼロに到達した際に、培養は迅速に生産期に切り替わる。実施例3Aと同じ通気条件において、OURは1.8 mmol 02/gdw/hである。三回目のラン(3C)において、通気は、DOがゼロに達した後1.5時間を越える生育期の最後まで継続させ、実施例3Aと同じ通気条件下で、生産期におけるOURは1.4 mmol 02/gdw/hである。結果を表3に要約する。
【0051】
(表3)
特性 実施例No.
3A 3B 3C
保持時間:DO=0 1hr 0 >1.5hr
OUR:生産期(mmol/gdw/h) 2.1 1.8 1.4
最大乳酸滴定量(g/kg) 112.3 84 94
グルコース消費速度(g/gdw/h) 1.22 1.06 0.40
乳酸生産速度(g/gdw/h) 1.20 0.93 0.32
乳酸収率(生産期、g/g) 0.89 0.84 0.79
% 回収炭素(生産期) 105 104.3 98
乳酸の光学純度(%) >99.9 >99.9 >99.9
【0052】
生産における与えられた通気条件下、OURは、微生物の代謝活性の指標となる。保持時間がゼロまたは1.5を超える(保持時間1時間後に相当する)際のOURの減少は、微生物がこれらの条件下でうまく機能していないことを示す。これは、また、グルコース消費、乳酸生産および収率の減少をもたらす。
【実施例4】
【0053】
酵母細胞CD587の接種原料を、160g/lのグルコースを添加した緩衝無機物培地(pH 5.5)を用いた14リットルの実験室用バイオリアクターにおいて、好気的に培養する。通気は、5リットル/分の速度で攪拌しながら、空気散布により供給する。この初期成育期の間におけるDOは、はじめ100%であり、サイクルの間に20%に減少する。OURは約20 mmol O2/gdw/hに維持される。OD600が10の時に、4リットルの培養液を、170g/lのグルコースを添加した220リットルの生育培地を入れた240リットルの生産スケール培養器に移す。細胞は、さらに好気条件下、42℃、pH5.5で8時間培養する。DOは、この時間の間に開始値100からゼロに減少する。OURは、15リットル/分の通気により、20 mmol O2/gdw/hに維持する。培養は、1時間、DOをゼロに維持する。それから、培養液は、OUR1.5〜1.7 mmol O2/gdw/hに達するために通気を減少することにより、生産期に切り替える。緩衝剤(Ca(OH)2)をpH5.5±0.1に維持するために、必要に応じて添加する。DOは生産期の間0%のままである。グルコースは30分以内に消費され、乳酸滴定量は114g/kgとなる。生産期におけるグルコース消費速度の平均は1.1g/g DW.h-1である。生産収率0.76g(乳酸)/g(グルコース)、全収率(生育期を含む)0.67g(乳酸)/g(グルコース)の場合、乳酸生産速度の平均は、0.8 g/g DW. h-1である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、遺伝的に変化させた、あるK.rnarxianus種についての、グルコース消費、乳酸生産および収率におけるOURの影響を示すグラフである。
【図2】図2は、遺伝的に変化させた、他のK.rnarxianus種についての、グルコース消費、乳酸生産および収率におけるOURの影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物が発酵基質を発酵させ、特定の酸素取り込み速度が、発酵プロセスの生産期の間モニタリングされ、そして、少なくとも1つの作動パラメータが、前記測定された酸素取り込み速度に応じて制御される、発酵プロセス。
【請求項2】
前記溶存酸素濃度が、飽和量の1%未満である、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記作動パラメータが、通気速度、攪拌速度および通気ガス組成から選択された1以上のパラメータである、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
前記微生物が、分裂した固有のPDC経路を有する、遺伝子工学で設計された酵母である、請求項2記載のプロセス。
【請求項5】
前記微生物が、細胞に所望の発酵産物を生産させることを可能にする、少なくとも1つの機能性外来遺伝子を有する、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記外来遺伝子が、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
前記微生物が、Candida属またはKluyveromyces属である、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
発酵微生物、微生物により発酵可能な基質を含む発酵培地において発酵プロセスを行う方法であって、
前記発酵培地が、多量の溶存酸素(DO)を有し、前記発酵が、特定の酸素取り込み(OUR)を示し、
a)発酵の生産期の間、前記OURを測定する工程、
b)発酵の前記生産期の間、飽和の1%未満にDOを維持しながら、所定の範囲内に前記OURが維持されるような通気条件に調整する工程を含む、発酵プロセスを行う方法。
【請求項9】
前記工程b)におけるOURが、約0.8〜約3.0mmol O2/gdw/hの範囲に維持され、DOが、10μmol O2/L未満に維持される、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
前記微生物が、クラブトリー陰性表現型を示す酵母細胞である、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記酵母細胞が、Kluyveromyces属またはCandida属である、請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
前記酵母細胞が、分裂されたPDC経路、および、前記細胞に所望の発酵産物を生産させることを可能にする少なくとも1つの機能性外来遺伝子を有する、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
前記外来遺伝子が、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記基質が、ヘキソース糖を含む、請求項8記載のプロセス。
【請求項15】
前記ヘキソース糖が、グルコースを含む、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
以下の工程を含むプロセス。
a)微生物が炭水化物を所望の発酵産物に発酵させる、OUR値の至的範囲を決定する工程、
b)細胞が生育および繁殖(reproduce)し、培地の溶存酸素濃度を飽和の1%未満に減少させ、細胞が少なくとも10 mmol O2/g(細胞の乾燥重量)/h(mmol O2/gdw/h)である特定の酸素取り込み速度を示すように、前記培地に通気しながら、前記工学酵母細胞を、前記微生物が代謝可能である炭水化物および1以上の栄養素を含む培地で生育させる工程、
および、それから
c)前記至的範囲内の特定の酸素取り込み速度(OUR)での培養を提供するのに十分な微好気条件を含む発酵条件下、緩衝培地で細胞を培養する工程。
【請求項17】
前記微生物が、クラブトリー陰性表現型(Crabtree negative phenotype)を示す酵母細胞である、請求項9記載のプロセス。
【請求項18】
前記酵母細胞が、Kluyveromyces属またはCandida属である、請求項17記載のプロセス。
【請求項19】
前記酵母細胞が、分裂されたPDC経路、および、前記細胞に所望の発酵産物を生産されることを可能にする少なくとも1つの機能性外来遺伝子を有する、請求項18記載のプロセス。
【請求項20】
前記外来遺伝子が、乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子である、請求項19記載のプロセス。
【請求項21】
工程a)における前記OURが、少なくとも10 mmol O2/gdw/hである、請求項16記載のプロセス。
【請求項22】
前記炭水化物が、ヘキソース糖を含む、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
前記ヘキソース糖が、グルコースを含む、請求項22記載のプロセス。
【請求項24】
以下の工程を含むプロセス。
a) 細胞が生育および繁殖(reproduce)し、培地の溶存酸素濃度をゼロに減少させ、細胞が少なくとも10 mmol O2/g(細胞の乾燥重量)/h(mmol O2/gdw/h)である特定の酸素取り込み速度を示すように、前記培地に通気しながら、分裂されたPDC経路および細胞に所望の発酵産物を生産させることを可能にする外来遺伝子を有する遺伝子工学で設計された酵母細胞を、前記細胞が代謝可能である炭水化物を含む培地で生育させる工程、
および
b)約0.8〜約3.0mmol O2/gdw/hの特定の酸素取り込み速度(OUR)での培養を提供するのに十分な微好気条件を含む発酵条件下、緩衝培地で細胞を培養する工程。
【請求項25】
前記酵母細胞が、クラブトリー陰性表現型(Crabtree negative phenotype)を示す酵母細胞である、請求項24記載のプロセス。
【請求項26】
前記外来遺伝子が、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)遺伝子である、請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
前記酵母細胞が、Kluyveromyces属またはCandida属である、請求項26記載のプロセス。
【請求項28】
工程a)における前記OURが、少なくとも18mmol O2/gdw/hである、請求項24記載のプロセス。
【請求項29】
前記炭水化物が、ヘキソース糖を含む、請求項24記載のプロセス。
【請求項30】
ヘキソース糖が、グルコースを含む、請求項28記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2005−528111(P2005−528111A)
【公表日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510437(P2004−510437)
【出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/016825
【国際公開番号】WO2003/102200
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(504438060)カーギル ダウ エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】