プロセス状態監視装置
【課題】 監視対象の異常診断を迅速に行うことを支援するプロセス状態監視装置を提供する。
【解決手段】 診断用データを表示するトリガー情報表示部44、45と、トリガー情報表示部44、45で状態変化を検出するための判断基準TH1、TH2を設定する判断基準設定部42と、トリガー情報表示部44、45の診断用データと判断基準設定部42の判断基準TH1、TH2によりプロセスの状態変化や異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する要因候補変数表示部43と、要因候補変数表示部43に表示された要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付けるトレンドグラフ表示リンク部48と、トレンドグラフ表示リンク部48に命令が入力された場合に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する要因候補変数トレンド表示部48Aと、有する異常診断メイン画面40を表示するプロセス状態変化監視装置。
【解決手段】 診断用データを表示するトリガー情報表示部44、45と、トリガー情報表示部44、45で状態変化を検出するための判断基準TH1、TH2を設定する判断基準設定部42と、トリガー情報表示部44、45の診断用データと判断基準設定部42の判断基準TH1、TH2によりプロセスの状態変化や異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する要因候補変数表示部43と、要因候補変数表示部43に表示された要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付けるトレンドグラフ表示リンク部48と、トレンドグラフ表示リンク部48に命令が入力された場合に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する要因候補変数トレンド表示部48Aと、有する異常診断メイン画面40を表示するプロセス状態変化監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プロセス状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセスなどの水処理/水運用プロセスや石油化学プロセス、あるいは半導体製造プロセスなどのプロセスの運転管理では、プロセスの所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用の両立が求められる。
【0003】
ここで、所定目標性能の例としては、下水処理プロセスでは放流水質基準の遵守、汚泥消化プロセスでは生成エネルギ(メタンや水素など)の所定発生量確保、浄水プロセスでは消毒・殺菌などによる給配水水質基準の遵守などが挙げられる。
【0004】
一方、省エネ・省コスト運用の例としては、下水処理プロセスではブロワやポンプの駆動電力や薬品注入量の削減、汚泥消化プロセスでは発生エネルギ効率の最大化、浄水プロセスでは薬品注入量の最小化などがあげられる。
【0005】
所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用は、トレードオフの関係にある場合が多く、省エネ・省コストを追求すると,所定目標を達成できないリスクが高まることが多い。例えば、下水処理プロセスでブロワの電力は下水処理場の消費電力の40%程度を占めると言われるが、ブロワの電力を削減するためにブロワの送風量を絞ると水質が悪化するリスクが高まる。逆に水質悪化を防止するために十分な送風量を確保すると放流水質を規制値以内に維持するために必要以上の電力を消費してしまう場合がある。
【0006】
そのため、所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用を両立させるためには、所定目標を達成可能な範囲でできる限り省エネルギでの運用を行いつつ、所定目標を達成できない様な状態に陥らない様に目標性能に関するプロセスの状態を監視し、所定目標の達成を阻害する様な状態変化や異常状態を素早く検知し事前に対策を取ることが要求される。
【0007】
現在上下水道プラントなどで利用されているプラント監視では、プロセス管理者やオペレータは、トレンドグラフと呼ばれるプロセスの運用に関わるプロセス測定変数の時系列データを監視し、トレンドグラフ上でプロセスの状態変化や異常を監視することが多い。
【0008】
このようにトレンドグラフ上の監視では、各々のプロセス変数に対して、例えば3σ(標準偏差の3倍)などの管理限界や外部から与えた上下限値を与えて、これらの限界値を超えた場合にプロセスの異常を検出して何らかの対応をとることとなる。
【0009】
しかし、上記方法では、数百〜数千項目に及ぶプラントの計測項目のどの項目で発生するかわからない異常を常に監視することは非常に困難であって、実際には限られた項目のみを監視せざるを得なかった。
【0010】
また、通常複数のプロセス変数は物理的および人工的な制約によって互いに何らかの関係(相関など)を持っているが、管理限界値による監視では、このような変数間の関係を無視した監視しか行えない。すなわち、ある1つのプロセス変数において異常が生じた場合、それが単にその変数のみで生じた異常なのか、あるいは、他の変数にも異常が生じ、他の変数との関係性が崩れたプロセスの異常なのかを容易に判断することが困難であった。
【0011】
このような従来のプラント監視の問題を解決する方法として、主に石油化学プロセスの分野で発展してきた「多変量統計解析手法」を用いた多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)と呼ばれる方法が知られている。MSPCは、ケモメトリクス手法と呼ばれることもあり、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)に基づいた方法が広く用いられている。
【0012】
MSPC手法は、多数の計測データから多数のプロセスデータ間の相関情報を利用して少数(通常2個)の統計量データを生成し、生成された少数の統計量データによってプロセス状態の変化を検出しようとするものである。PCAを用いたMSPCでは、PCAを用いて相関の強いデータ集合(データの部分空間)を生成し、この部分空間内のデータの中心からの距離(ばらつきの程度)を表すT2統計量と呼ばれる統計量と、各時刻のデータがこの部分空間からどの程度乖離しているか(相関関係の崩れ)を示すQ統計量と呼ばれる統計量によってプロセスの状態監視を行う。そして、この2つの統計量の値を監視し、その値が予め設定したしきい値を超えた場合にプロセスが定常状態(安定運用状態)から非定常状態(異常など)に状態が変化したと判断し、この状態変化/異常の検出を行う。そして、その後、その要因となる測定変数の推定(要因分離)を行う。
【0013】
この要因分離は、通常T2統計量やQ統計量を各測定変数の寄与量と呼ばれる成分に分解し、各測定変数の寄与量の大きいものを異常要因である可能性が高い変数として推定する。異常要因推定後に、異常の検出と要因分離結果を提示された運転員が、状態変化/異常の真の要因を特定し、その状況への対策、という手順をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平07−068905号公報
【特許文献2】特開2003−096467号広報
【特許文献3】特開2005−249816号広報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】加納 学、“多変量統計的プロセス管理”、2005年6月第2版、京都大学大学院工学研究科化学工学専攻プロセスシステム工学研究室、インターネット<URL: http://tech.chase-dream.coMSPC/report-MSPC.pdf>
【非特許文献2】加納、多変量統計的プロセス監視、<URL:www-pse.cheme.kyoto-u.ac.jp/~kano/lecture/dataanalysis/DOc08_MSPC.pdf>
【非特許文献3】S.Yoon et al, Multivariate Process Monitoring and Early Fault Detection(MSPC) using PCA and PLS、<URL:http://www.umetrics.com/pdfs/events/MSPC%20Application%20at%20Honeywell%20(NPRA).pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
多変量統計プロセス監視では、原理的には、互いに相関を持つ多数の測定変数の中で生じる異常の検出とその要因変数の分離を効率的に行う事ができるが、このMSPCによる監視・診断システムを実際のプラント監視システムとして実用的な形で実現するためには、ユーザである運転員にとって理解しやすく使いやすい形で診断結果の情報を提示して、ユーザビリティを高める(=使いにくさを排除する)必要があった。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであって、監視・診断結果を運転員に理解しやすく、使いやすい形で提供するプロセス状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の態様によるプロセス状態監視装置は、監視対象から取得した2以上の測定変数から診断用データを演算し、前記診断用データから前記監視対象の異常を検出するように構成された演算部と、前記診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部で状態変化を検出するための判断基準を設定する状態変化判断基準設定部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部で設定された判断基準とによりプロセスの異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する状態変化要因候補変数表示部と、を備えた異常診断メイン画面を表示させるための表示データを生成する表示処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロセス状態監視装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図3】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図4A】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた候補変数相関表示の一例を示す図である。
【図4B】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた候補変数相関表示の一例を示す図である。
【図5】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた表示条件変更画面の一例を示す図である。
【図6】図5に示す表示条件変更画面で表示期間を1週間としたときの状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図7】図5に示す表示条件変更画面で表示期間を24時間としたときの状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図8】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部で閾値を調整する機能の一例について説明するための図である。
【図9】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化要因候補変数表示部の他の例を示す図である。
【図10】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた過去異常表示画面の一例を示す図である。
【図11】図10に示す過去異常表示画面にリンクされた過去の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作の一例を説明するための図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図19】本発明の第4実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図20】本発明の第5実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面および異常診断サブ画面の一例を示す図である。
【図21】本発明の第6実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図22】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図23】図23に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の他の例を示す図である。
【図24】図23に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の他の例を示す図である。
【図25】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の一例を示す図である。
【図26】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図27】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図28】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図29】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図30】図1に示すプロセス状態監視装置の演算部の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図31】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において構築される診断モデルの一例を説明するための図である。
【図32】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において要因分析結果の一表示例を説明するための図である。
【図33】図1に示すプロセス状態監視装置の演算部の他の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図34】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において要因分析結果の他の表示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、下水処理プロセス、排水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセス、化学プロセスなどにおける計測項目を監視するプロセス状態監視装置である。
【0021】
図1に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、ネットワークを介して監視対象(プロセス)30で計測された状態量や操作量に関する値が蓄積されるデータベース20と、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)10と、ユーザが操作する操作手段としてのキーボード12およびマウス14と、を備えている。
【0022】
監視対象30には複数のセンサが設置され、センサで計測された値を、ネットワークを介してデータベース20へ送信する。データベース20は、監視対象30が送信した計測値を受信し、例えば項目毎に計測時刻と計測時刻とを記録する。
【0023】
ヒューマンマシンインタフェース10は、データベース20や監視対象30との間で信号を送信および受信する通信手段(図示せず)と、演算部16と、表示処理部18と、表示部DYPとを備えている。
【0024】
演算部16は、所与の監視対象(プロセス)から得られる状態量や操作量に関する少なくとも2つ以上の複数の測定変数から変換あるいは合成した加工変数の時系列データから選択あるいは合成される、プロセスの状態変化や異常を検出するトリガー情報を与えるための一つ以上の診断用データを算出し、この診断用データによって前記複数の時系列データで生じる状態変化および異常を検出し、異常検出後にその要因となる変数を複数の測定変数および加工変数の中から推定するように構成されている。
【0025】
演算部16は、MSPC手法により、データベース20から受信した複数のプロセス計測データ間の相関情報を利用して、少数(通常2つ)の統計量データを生成し、生成された統計量データによりプロセス状態の変化を検出するように構成されている。
【0026】
また、PCAを用いたMSPC手法では、PCAを用いて相関の強いデータ集合(データの部分空間)を生成し、この部分空間内のデータの中心からの距離(ばらつきの程度)を表すT2統計量と呼ばれる統計量と、各時刻のデータがこの部分空間からどの程度乖離しているか(相関関係の崩れ)を示すQ統計量と呼ばれる統計量を算出する。
【0027】
演算部16は、その後、その要因となる測定変数の推定(要因分離)を行う。この要因分離は、通常T2統計量やQ統計量を各測定変数の寄与量と呼ばれる成分に分解し、各測定変数の寄与量の大きいものを異常要因である可能性が高い変数として推定する。
【0028】
演算部16は、通常T2統計量やQ統計量によってプロセスの状態監視を行う。この2つの統計量T2、Qの値を監視し、その値が予め設定したしきい値を超えた場合に、監視対象であるプロセスが定常状態(安定運用状態)から非定常状態(異常など)に状態が変化したと判断し、この状態変化および異常の検出を行う。演算部16は、T2統計量、Q統計量、各測定変数の寄与量を表示処理部18に供給する。
【0029】
表示処理部18は、演算部16から供給されるT2統計量、Q統計量、各測定変数の寄与量や、データベース20から供給されるプロセス計測データを利用して、ユーザに異常診断メイン画面40を表示するための信号を表示部DYPに供給する。
【0030】
以下に、上記プロセス状態監視装置におけるユーザへの情報提供手順と、画面表示に関わるヒューマンインタフェースの構成について説明する。
【0031】
図2に、異常診断メイン画面40の一例を示す。異常診断メイン画面40は、異常診断モデル(異常診断システム)が複数存在する場合に、診断モデルに予め番号などのタグを割り当てこのタグにより診断モデルを切り替え可能とするモデル選択部41、プロセスの状態変化や異常を検出するための診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部44、45と、状態変化検出トリガー情報表示部44、45で状態変化を検出するための判断基準である閾値TH1、TH2を設定する状態変化判断基準設定部42と、状態変化要因候補変数表示部43と、状態変化要因候補変数表示部43に表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48と、現在の年月日および時刻(YYYY(年)/MM(月)/DD(日) HH:MM(時刻))を表示する時刻表示部と、状態変化検出トリガー情報表示部44、45のQ統計量トレンドグラフとT2統計量トレンドグラフの横軸に対応する表示期間を変更するための表示条件変更リンク部46と、過去に状態変化が検出された時点を所定の範囲にわたって表示し、その中の特定の時点の過去に生じた異常を表示するようにリンクをとる過去異常リンク部47と、状態変化要因候補変数表示部43に表示された少なくとも2つの状態変化要因候補変数の組あわせに対する、2次元あるいは3次元の散布図を表示する命令を受け付ける候補変数相関表示リンク部49と、を備える。
【0032】
状態変化判断基準設定部42は、Q統計量閾値TH1を入力する入力ボックス42Aと、T2統計量閾値TH2を入力する入力ボックス42Bと、を備えている。
【0033】
状態変化検出トリガー情報表示部44、45には、異常を検出するための診断用データと合わせて、最終モデル構築日時(YYYY(年)/MM(月)/DD(日) HH:MM(時刻))と、最終モデル構築日時におけるQ統計量およびT2統計量との現在値を表示された入力ボックス44A、45Aが表示される。
【0034】
状態変化検出トリガー情報表示部44には、診断用データとしてQ統計量のトレンドグラフが表示される。Q統計量のトレンドグラフには、Q統計量の閾値TH1が破線で表示されている。図2では、Q統計量が閾値TH1を超えていることを知らせるために、現在のQ統計量が、対応するグラフ位置を点滅させる等により強調されている。
【0035】
状態変化検出トリガー情報表示部45には、診断データとしてT2統計量のトレンドグラフが表示される。T2統計量のトレンドグラフには、T2統計量の閾値TH2が破線で表示されている。
【0036】
Q統計量トレンドグラフおよびT2統計量トレンドグラフでは、例えば、非特許文献1等に記載されている主成分分析から計算されるプロセス変数間の相関関係の崩れ(乖離)を表す指標であるQ統計量とプロセス変数間の相関(超)平面上でのデータの位置の異常度(データ中心からどのくらいばらついているか)を表すT2統計量との所定の時間に亘るトレンドグラフが表示されている。
【0037】
また、表示しているトレンドグラフの右端の値(通常は現在時刻における値)が、Q統計量の入力ボックス44AとT2統計量の入力ボックス45Aとに表示されている。
【0038】
上記のように多変量統計的プロセス監視(MSPC)としてその有効性が知られているQ統計量やT2統計量と言う診断用データによって、プラント運転員が通常の管理では気づきづらいプラントで生じている異常兆候を素早く検出することができる。
【0039】
状態変化判断基準設定部42には、Q統計量閾値TH1の入力ボックス42AおよびT2統計量閾値TH2の入力ボックス42Bと、閾値変更ボタン42Cと、が表示される。ユーザは、Q統計量閾値TH1およびT2統計量閾値TH2を入力する入力ボックス42A、42Bに値を入力し、閾値変更ボタン42Cを選択することで、閾値TH1、TH2を入力した値に設定することができる。
【0040】
状態変化要因候補変数表示部43は、Q統計量トレンドグラフ44あるいはT2統計量トレンドグラフ45において、状態変化判断基準設定部42で設定した閾値42A、42Bにより何らかの異常が検出された場合に、その要因候補となる1つ以上の要因候補変数を、要因である可能性の高い順にソートして変数名をリストとして列挙する。本実施形態では、状態変化要因候補変数の候補変数名を、要因である可能性が高い順にソートして表示するテーブルを備える。図2には、要因である可能性が高い順に「雨量」、「2-3号PAC注入量」、「2-2号返送汚泥濃度」の候補変数が示されている。
【0041】
Q統計量とT2統計量との両方の診断用データで異常が生じている場合には、状態変化要因候補変数表示部43には、例えば、(1)両方の統計量の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から(1)あるいは(2)の基準で大きいものに列挙する等により要因候補変数が表示される。
【0042】
その他の方法としては、図2の状態変化要因候補変数表示部43をQ統計量用の領域とT2統計量用の領域とに分けて、各々に対して寄与量の高い順に異常要因候補変数を列挙してもよい。
【0043】
また、列挙する異常要因候補変数の数の最大値は外部から設定するように構成されてもよい。一例として、一枚の画面で同時に表示するトレンドグラフの数は1桁程度であることが多いため、例えば8個あるいは10個ぐらいまでの候補変数を列挙できるようにする。
【0044】
実際に要因候補変数として列挙する場合には、外部から設定した表示可能最大数(上記例では8個あるいは10個)に相当する様に、異常要因である可能性の高いものから順に表示可能最大数までの候補を機械的に表示する様に構成されてもよい。
【0045】
その他、上記(3)の方法に準じて、例えば各寄与量の値が通常時(異常検出がされていない場合)の寄与量値の分散を基準として2σあるいは3σ以内に入っているものは表示せずに、それ以外のものの中から表示可能最大数(上記例では8個あるいは10個)までの範囲内で、要因である可能性の高い順に列挙してもよい。
【0046】
また、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48は、この部分にマウス14によるクリックなどでアクション命令を行うと、図3に示すような状態変化要因候補変数のトレンドグラフが表示される状態変化要因候補変数トレンド表示部48Aと関連付け(リンク)されている。
【0047】
異常診断メイン画面40において、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aが表示される。
【0048】
図3に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aの一例を示す。図3に示す状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aには、異常診断メイン画面40の状態変化要因候補変数表示部43に表示された候補変数が時系列で表示される。ユーザは、トレンドグラフ48Aから、プロセスの状態変化や異常の要因となった変数を検討することが可能となる。
【0049】
トレンドグラフ48Aの表示期間は、外部から設定できるようにしておいてもよく、表示条件変更リンク部46で設定した期間に同期させ、Q統計量トレンドグラフやT2統計量トレンドグラフの表示期間と同じ範囲のトレンドグラフを表示させてもよい。
【0050】
また、図3では、異常要因候補変数を全てのトレンドグラフを一枚の画面上に表示しているが、状態変化要因候補変数表示部43に表示した異常要因候補変数を選択し、選択された変数のみのトレンドグラフを表示する様にしてもよい。また、図3では一つの画面に全てのトレンドグラフを同時表示させているが、この異常要因候補変数のトレンドグラフの個別に表示する様にしてもよい。
【0051】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、監視対象の状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数をユーザに助言することができる。これによって、ユーザは、監視対象で生じる異常兆候を早期に認識することができ、オペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。
【0052】
その結果、監視対象であるプロセスの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数のオペレータ(ユーザ)による監視や、複数の地域に分散する監視対象群の集中監視による運用、あるいは、非熟練のオペレータ(ユーザ)による監視が可能になる。
【0053】
また、多変量統計的プロセス監視をより効果的に利用するためには、候補変数相関表示リンク部49を有することが好ましい。多変量統計的プロセス監視では、そもそも一つの変数だけを監視しているだけではわからない複数の変数間の相関関係の崩れを監視して異常を検出するものであり、実際Q統計量は相関関係の崩れを表す指標である。従って、多変量統計的プロセス監視手法によって異常が検出された場合に、その要因候補変数のトレンドグラフを単に確認するだけでは、監視対象プラントで何が生じているのかをオペレータが認識できない場合もある。
【0054】
候補変数相関表示リンク部48は、この部分にマウス14によるクリックなどでアクション命令が入力された場合に、図4A、図5Bに示すような2つあるいは3つの状態変化要因候補変数の散布図を表示する状態変化要因変数相関表示部49A、49Bと関連付け(リンク)されている。
【0055】
異常診断メイン画面40において、候補変数相関表示リンク部49が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに候補変数の相関グラフ49Aまたは相関グラフ49Bが表示される。相関グラフ49Aは、横軸を「2-2号返送汚泥濃度」とし、縦軸を「雨量」とした2次元の散布図である。相関グラフ49Bは、第1軸を「雨量」とし、第2軸を「2-3号PAC注入量」とし、第3軸を「2-2号返送汚泥濃度」とした3次元の散布図である。このような表示機能を有することによって、トレンドグラフからだけでは明確に認識できない相関関係の崩れによる異常兆候を目視で確認することができる。
【0056】
この際、図4Aおよび図4Bに示した2次元あるいは3次元の散布図の軸となる2変数あるいは3変数の選択方法としては、(1)異常要因候補変数の中の異常要因である可能性の高い順に2変数/3変数を選択する。(2)図7に示す様にオペレータが見たいと考える2変数/3変数の軸を選定して表示する。(3)異常要因候補変数に提示された全ての組み合わせの2次元/3次元散布図を同時に表示する。などの方法を採用することができる
ユーザは、候補変数相関表示リンク部を選択して、2又は3の状態変化要因候補変数の散布図を表示部DYPに表示して、2又は3の変数間の関係を目視で確認することができる。
【0057】
このように、候補変数の相関グラフを表示可能とすることによって、監視対象で計測している複数の測定変数間の相関関係の崩れなど、1つの変数だけに着目していたのではわからない監視対象の異常を目視で確認することができ、ユーザは異常時に素早く対応を取ることが可能となる。
【0058】
異常診断メイン画面40において、表示条件変更リンク部46が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに診断データの表示条件を変更する変更画面46Aが表示される。変更画面46Aでは、ユーザは、異常診断メイン画面40に表示されているトレンドグラフの横軸および縦軸の条件を変更することが可能である。
【0059】
変更画面46Aは、時間軸(横軸)について最新表示時刻および表示期間を入力する入力ボックスと、統計量軸(縦軸)について最小値および最大値を入力する入力ボックスと、を備えている。
【0060】
例えば、変更画面46Aで時間軸(横軸)の表示期間を1週間とした場合、例えば図6に示すように10月1日0:00から10月7日0:00までの1週間の診断データがトレンドグラフで表示される。例えば、変更画面46Aで時間軸(横軸)の表示期間を1日(24時間)とした場合、例えば図7に示すように10月1日0:00から1日の診断データがトレンドグラフで表示される。
【0061】
図6および図7に示すトレンドグラフを比較することにより、1週間単位の表示では過去1週間と比較して急激に統計量の値が上昇しておりプロセスの状態が急速に悪化していることが読み取れる。このように状態変化検出トリガー情報表示部44、45の表示期間や表示レンジを任意に切り替え監視対象のプロセスの状態がどのように変化しているかをわかりやすく表現することができる。
【0062】
すなわち、ユーザはトレンドグラフの表示条件を変更可能とすることによって、ユーザは、短期間に生じる突発的な異常や比較的長期にわたって徐々にプラント状態が変化していくドリフト的に生じる異常を目視で確認することができ、どのような対策を取るべきかを判断する際に有効な情報を得ることができる。
【0063】
さらに、本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、状態変化判断基準設定部42で診断データあるいは重要変数に対する閾値を外部から設定するだけでなく、トレンドグラフや軌跡グラフあるいはレーダチャート上に表示した閾値をマウス14などの入力手段によるドラッグおよびドロップで調整することができる。
【0064】
例えば、状態変化検出トリガー情報表示部45において、図8に示すように、T2統計量の閾値TH2を示す破線の位置をマウス14で選択してドラッグおよびドロップすることにより、破線の位置を調整することができる。このとき、T2統計量の閾値TH2は、破線の位置に対応する値に変更される。
【0065】
ユーザが、検出したいレベルの状態変化や異常兆候に対応する閾値を、表示部DYPの画面において目視で確認しながら容易に設定することができ、ユーザが対策を取るべき状態変化と対策を取る必要のない状態変化とを容易に識別することが可能となる。
【0066】
また、Q統計量トレンドグラフやT2統計量トレンドグラフ上に表示されているしきい値をマウスでドラッグおよびドロップするなどして閾値TH2を変更すると、それが状態変化判断基準設定部42の2つのボックス42Bの閾値TH2の値に反映されるように構成されることが好ましい。このようにすることによって、実際の診断用データの値を目視で確認しながらしきい値レベルをオペレータがストレスなく調整することができる。
【0067】
図9に、状態変化要因候補変数表示部の他の例を示す。図9の状態変化要因候補変数表示部43´には、トレンドグラフとして表示するか否かを選択するための表示選択欄がさらに表示される。ユーザは、トレンドグラフを表示させたい候補変数の表示選択欄を選択した後に、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48を選択することによって、選択した候補変数のトレンドグラフを表示させることができる。
【0068】
また、異常を検出しその要因変数のトレンドグラフが表示された場合、ユーザは対策を取る必要があるか否かを判断して、対策を取る必要がある場合には適切な対策を取る。この対策を取る際の参考情報として、過去に生じた異常を見つけることができると、その時の対策に準じた対策を取ることができる可能性が高い。
【0069】
そこで、本実施形態では、異常診断メイン画面40の様に「過去の異常を見る」というボタンを設置しておき、この部分にアクション命令が入力された場合に、例えば図10に示すような過去異常画面47Aが表示される。データベース20には、例えば、過去に異常が発生した時刻、異常要因候補変数、異常時の対策の有無等が記録されている。図10に示す過去異常画面47Aでは、予め設定した所定の期間に亘る過去の異常発生日時のリストが表示される。
【0070】
また、好ましくは各々の異常発生時において異常要因候補として列挙されたものと、現在生じている異常要因候補の組について、例えば要因候補変数が一致している場合は1で一致していない場合は0を割り当てるなどして類似度を定義しておき、どの異常状態が現在の異常状態と近い異常状態であるかを順位づけておくとよい。
【0071】
さらに好ましくは、各々の異常時に対策をとったか対策を取らなかったかをデータベース20に記録しておき、対策をとった場合には、画面上の「有」(図10の対策「有」の箇所)をクリックすると、プラントオペレータが何らかの操作変更を行った操作量のトレンドグラフなどが表示されるような仕組みを持っているとより好ましい。
【0072】
このように、所定期間の過去の異常状態のリストの中から特定の過去の異常イベントを選定すると、異常診断メイン画面40が選択した時期の異常診断メイン画面50に切り替わる。なお、異常診断メイン画面50について、異常診断メイン画面40と同様の機能については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図11に、異常診断メイン画面50の一例を示す。異常診断メイン画面50へ表示が切り替わると、異常診断メイン画面40の「過去の異常を見る」の過去異常リンク部47は「現在の状態に戻る」のボタン57に切り替わる。この様に、過去に生じた異常を参照することによって、プラントオペレータ(ユーザ)は対策を取ることが容易になる。
【0074】
さらに、異常診断モデル自身を例えば季節毎や月毎などに応じて複数持っている場合、あるいは、プロセス時系列データの周波数(変化の速さ)に応じて複数持っている場合などは、診断モデル切り替え部41で適宜診断モデルを選定して切り替えることができるように構成されている。
【0075】
次に、上記プロセス状態監視装置の動作について図12を用いて説明する。データベース20に蓄積されたプロセス測定データがヒューマンマシンインタフェース10の演算部16で前処理され(ステップSA1)、診断用データ(診断統計量)が算出される。その後、演算部16は、算出した診断用データの監視を開始する(ステップSA2)。
【0076】
表示処理部18は、演算部16で算出された診断用データを取得し、異常診断メイン画面40を表示するための画像データを生成し、表示部DYPに異常診断メイン画面40を表示させる。
【0077】
演算部16は、診断用データから監視対象30の異常を検出すると(ステップSA3)、プロセス計測データから要因変数を特定する(ステップSA4)。このとき、表示処理部18は、異常診断メイン画面40で異常が検出されたことを提示し、要因変数を可能性が高い順に状態変化要因候補変数表示部43に表示する。表示処理部18は、異常診断メイン画面40でのユーザの操作に応じて、関連付けられた画面を表示したり、表示設定を変更したりして、ユーザの変数監視動作を支援する(ステップSA5)。
【0078】
以上の様な手順を踏むことによって、従来のプラント監視方法では、プラントオペレータが自分自身の判断で監視するプロセス変数を選択しそのトレンドグラフを監視していたのに対し、プラントオペレータに監視すべきプロセス変数を助言した上で対応するトレンドグラフを監視することができる。
【0079】
従来は、異常要因候補を寄与量プロット(Contribution Plot)と呼ばれるバーグラフで表示していた。このような方法で異常を検出した後に異常要因を推定することが典型的多変量統計的プロセス監視の手順であるが、これは、従来実際のプラントでプラント運転を行っているオペレータの監視方法とは異なるものである。プラントオペレータは通常はプロセス変数のトレンドグラフを監視しているため、多変量統計的プロセス監視の監視方法が如何に原理的に優れた方法であっても監視方法を急に切り替えることは好まないと考えられる。
【0080】
これに対し、本願は従来の監視方法を踏襲した上でより効率的にプラントを監視する方法を考案することを狙ったものであり、従来のトレンドグラフ監視に対して支援機能を付加した形でMSPCの監視方法を導入している。このような仕組みを取ることによって、プラントオペレータはストレスを感じることなく、現状の監視方法よりより効率的な監視を行えるようになる。
【0081】
すなわち、上記実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラントオペレータに監視すべきプロセス変数を示して監視作業を支援し、対応するトレンドグラフの監視が可能となる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、従来の監視制御システムの枠組みから大きく離れることなくオペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができるようになる。
【0082】
次に、本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において上述の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図13に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置において、表示部DYPに表示される異常診断メイン画面60の一例を示す。異常診断メイン画面60では、状態変化検出トリガー情報表示部61に表示する診断用データとして、プラントオペレータが特に重要視しているプロセス測定データあるいはプラントの管理指標など測定変数から生成した変数(以下重要変数という)を採用している。
【0084】
異常診断メイン画面60は、状態変化検出トリガー情報表示部61としてプロセス重要変数リストと、判定変数変更ボタン62と、状態変化要因候補変数表示部63と、過去異常リンク部64と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部65と、候補変数相関表示リンク部66と、を備える。
【0085】
プロセス重要変数リストは、複数の重要変数の「変数名」、「現在値」、「診断上限値」、「診断下限値」、「警告上限値」、および、「警告下限値」を表示するテーブルを備える。重要変数の診断上限値および診断下限値は、監視対象が異常か否かの判断をユーザに提示するための閾値として設定されている。重要変数の警告上限値および警告下限値は、監視対象に異常が発生していることをユーザに警告するための閾値として設定されている。
【0086】
オペレータは、診断上限値および診断下限値の設定を変更することが可能である。異常診断メイン画面60は、プロセス重要変数リストで表示される重要変数の診断上限値および診断下限値を設定する、状態変化判断基準設定部61Aをさらに備えている。
【0087】
状態変化要因候補変数表示部63は、状態変化検出トリガー情報表示部61のプロセス重要変数が、状態変化判断基準設定部61Aで設定したしきい値により異常と判断された場合に、その要因候補となる1つ以上の要因候補変数を、要因である可能性の高い順にソートして変数名をリストとして列挙するように構成されている。
【0088】
状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部65は、状態変化要因候補変数表示部63で表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける。
【0089】
候補変数相関表示リンク部66は、状態変化要因候補変数表示部63に表示された少なくとも2つ乃至3つの状態変化要因候補変数の組あわせに対する2次元あるいは3次元の散布図を表示する命令を受け付ける。
【0090】
過去異常リンク部64は、過去に状態変化が検出された時点を所定の範囲にわたって表示し、その中の特定の時点の過去に生じた異常を表示する命令を受け付ける。過去異常リンク部64は、例えば図10に示す過去異常画面47Aが表示される。
【0091】
図14に、重要変数をトレンドグラフで表示する異常診断メイン画面70の一例を示す。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、複数の重要変数のなかでプロセス重要変数リストに表示された重要変数を、トレンドグラフとして表示可能に構成されている。
【0092】
異常診断メイン画面70は、状態変化検出トリガー情報表示部71と、状態変化判断基準設定部71Aと、判定変数変更ボタン72と、状態変化要因候補変数表示部73と、表示条件変更リンク部74と、過去異常リンク部75と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部76と、候補変数相関表示リンク部77と、を備えている。
【0093】
上記のようにトレンドグラフを表示することにより、オペレータは、プロセス重要変数リストから選択した重要変数をトレンドグラフで表示して、所定期間の重要変数の変化から、異常の兆候を確認することできる。
【0094】
以下本実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作を説明する。まず、図13に示すプロセス重要変数リストには、プラント運転員がプロセス運用上重要と考えているプロセスの測定変数あるいは測定変数から合成した管理指標などが表示されている。
【0095】
例えば、監視対象が下水処理プロセスの場合、最も重要な要求事項が放流水質を規制値未満に維持することであるとし、放流水質の項目であるリン濃度や窒素濃度が重要変数として選択してもよい。また、このような直接的な指標ではなく、プラント運転上管理している好気槽汚泥滞留時間(ASRT)など測定変数から計算される管理指標が選択されてもよい。
【0096】
また、放流水質を維持するだけでなく、近年の省エネ法の改正などに伴いできる限り省エネルギでプラントを運用したいという要求事項もある。これに対応する指標としては、例えば単位処理量(1m3)当たりの電力量(kwh)を表すエネルギ原単位があり、これが重要変数として表示されてもよい。
【0097】
また、下水処理プロセスで最も電力量を消費しているのは曝気と呼ばれる空気供給操作であり、下水中に存在する酸素量を表す溶存酸素濃度(DO濃度)は曝気に伴う電力量と直接関係するためDO濃度が重要変数として選択されてもよい。
【0098】
このように、プラント運用上、プラントオペレータが最も気を配っている重要な変数をプロセス重要変数リストには表示し、その診断上限値および診断下限値を設定しておく。プロセス重要変数は、通常監視しているプロセス変数の中の要素であることが多いため、その場合には、アラーム発報を行う警報上限値および警報下限値は既に設定されていることが多い。ここでは、プロセス重要変数が通常状態より少し悪化した場合に、その要因を発見することを目的として、警報上限値よりも小さい値で通常の変動範囲よりも少し大きい値として診断上下限値を設定しておく。
【0099】
そして、このプロセス重要変数リスト一覧の中で異常判定を行う変数を1つあるいは2つ程度選択できる様にしておく。ここで、例えば放流リン水質濃度を選択した場合、好ましくは表示画面が異常診断メイン画面60から異常診断メイン画面70に切り替わり、プロセス重要変数トレンドグラフに選択した変数のトレンドグラフが表示される。
【0100】
このプロセス重要変数トレンドグラフは、表示されているデータが上述の第1実施形態のQ統計量やT2統計量ではなく、実際の物理変数や管理指標であるという点以外は全く同様の形式で表示されている。
【0101】
従って、表示条件変更リンク部74による表示範囲の切り替えや、閾値(診断上限値および診断下限値)のマウスによるドラッグおよびドロップによる変更は、上述の第1実施形態の場合と同様に実施することができる。
【0102】
次に、プロセス重要変数トレンドグラフで示している選択したプロセス重要変数が状態変化判断基準設定部71Aで設定した閾値レベルを超えた場合には、状態変化要因候補変数表示部73にその要因となる候補変数名を要因である可能性の高い順に提示される。
【0103】
要因である可能性の高い候補変数名を表示するためには、多変量統計的プロセス監視手法による診断(ステップSB5〜SB7)を、図15に示すようにバックグラウンドで実施しておき、Q統計量やT2統計量の値に対する各プロセス変数(=測定変数+加工変数)の寄与量の大きい順に提示することができる。
【0104】
この時、正常であるか異常であるかの判断は、Q統計量やT2統計量ではなく選択したプロセス重要変数で実施しているので、Q統計量あるいはT2統計量の寄与量の中で自分自身(選択したプロセス重要変数)に相当するものを除いた中で、(1)両方の統計量の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から上記(1)あるいは上記(2)の基準で大きいものに列挙する、などを行えばよい。
【0105】
その他の方法としては、図13あるいは図14の状態変化要因候補変数表示部63、73を、Q統計量用のものとT2統計量用のものとの2つの領域に分けて、各々に対して寄与量の高い順に異常要因候補変数を列挙してもよい。
【0106】
また、その他の方法としては、バックグラウンドでQ統計量およびT2統計量での診断を別途行っておき、選択したプロセス重要変数で異常が検出された時に、Q統計量およびT2統計量でも同じタイミングで異常が検出されている場合のみ、異常要因変数候補の中から、現在判断基準としているプロセス重要変数を除いた中から要因変数候補変数を列挙してもよい。
【0107】
上記のように、本実施形態では、プロセスで生じる異常兆候をQ統計量やT2統計量と言う数学的(統計的)にしか意味を持たないプラントオペレータにとってわかりにくい指標ではなく、オペレータ自身が重要と認識している変数(重要変数)を異常兆候検出のトリガーとしている。
【0108】
従来のプロセス監視ではオペレータが重要と判断している変数を監視していたとしても、その変数で異常が現れた場合、オペレータ自身の経験や知識に基づく判断で要因を探す必要があったが、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、重要変数で異常が認識された場合に、その要因候補となる変数を確認することをオペレータに促すことができ、オペレータの判断を支援することができる。
【0109】
すなわち、本実施形態に係るプロセス状態監視システムによれば、Q統計量やT2統計量という非物理量である統計データではなくオペレータ自身が十分に良く認識している重要変数をトリガーとして異常検出を行うため、オペレータがストレスなく監視を行うことができる。
【0110】
また、プラントのオペレータが監視の際に最も気を配っている測定変数や管理指標に変化が現れた時、その変数の状態変化と同じタイミングで状態変化を生じている関連する変数を提示することができる。そのため、プラントオペレータが運転管理上特に重要視している変数で異常兆候が現れた場合に、その要因の推定を容易とすることができる。これにより、プラントオペレータが重要変数で生じている異常状態への対応を迅速に取ることができる。
【0111】
さらに、Q統計量やT2統計量による診断では、例えばセンサのメンテナンスや明らかな故障など従来のプラント監視では警報上限値および警報下限値などにより既に監視している様な明白な異常状態も全て異常として検出してしまう。これに対し、本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、プラントオペレータが本当に知りたい異常兆候のみを検出してその要因変数を探す効率を向上させることができる。
【0112】
次に、本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、異常検出を行うトリガーとなる診断用データが2つある場合に、その各々のデータを時系列データのトレンドグラフで表示するのではなく、2次元の軌跡として表示するとともに、異常判定の閾値を各々の診断用データに対する単純な閾値ではなく、複雑な形状の閾値で設定している点である。
【0113】
図16乃至図18に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置において、表示部DYPに表示される異常診断メイン画面80、90、100の一例を示す。異常診断メイン画面80と上述の異常診断メイン画面60、70とは、状態変化検出トリガー情報表示部84、94、104と状態変化判断基準設定部82、92、102のみが異なっている。
【0114】
図16に示す異常診断メイン画面80は、状態変化検出トリガー情報表示部84として、Q統計量とT2統計量との2次元軌跡表示部を備えている。図17に示す異常診断メイン画面90は、状態変化検出トリガー情報表示部94として、Q統計量とロバストQ統計量の2次元軌跡表示部を備えている。図18に示す異常診断メイン画面100は、状態変化検出トリガー情報表示部104として、放流リン濃度とエネルギ原単位との2次元軌跡表示部を備えている。
【0115】
状態変化判断基準設定部82、92、102は、2つの診断用データの相関に対する閾値を設定できる様になっている。また、2つの診断用データの軌跡がある周期を持つ閉じた軌跡を描く場合には、図15に示した2重楕円のような閾値THA、THBを設定してもよい。
【0116】
図16ではこのような形状の判断閾値を入力するボックスを描いていないが、必要なパラメータを入力する様なボックスを設けてもよい。また、複雑な形状の閾値を設定する場合には、例えば図16に示した2重楕円THA、THBのようにマウス14等を操作して画面上で閾値を自由に描くことが可能であって、描かれた形状に対応する値が判断基準として反映されるように構成されてもよい。
【0117】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラントオペレータは上述の第1実施形態の場合のように2つのトレンドグラフを監視するのではなく、1つの画面で示される2次元軌跡で異常状態を監視することになる。そのため、プラントオペレータが一つの画面のみ注目していればよく、より監視が容易になる。さらに2つの診断用データのどちらのデータに異常が生じているのかを視覚的に容易に判断できるようになる。
【0118】
例えば異常診断メイン画面80では、2次元軌跡が紙面に向かって右方向に移動する場合には、横軸にとった診断用データの異常であり、2次元軌跡が紙面に向かって上方向に移動する場合には縦軸にとった診断用データの異常であり、2次元軌跡が紙面に向かって右上方向に移動する場合には両方の診断用データの異常であるという判断が視覚的に容易に可能となる。
【0119】
また、診断用データである統計量やプロセスの重要変数は、図16に示す様な閉じた軌跡を描く場合があり、このような場合には図16に示す様に単純に2つの各々の診断用データに対する閾値TH1、TH2ではなく、閉じた軌跡に沿って図16の楕円のような判断閾値THA、THBを設けて異常兆候の判断を行うことができる。これにより、異常兆候の診断精度が向上させることが可能となる。
【0120】
診断用データが閉じた軌跡を描く場合が想定される場合は、例えば以下の様なケースがある。下水処理プロセスなどでは、流入してくる下水が人間社会の日常生活を反映して日単位の周期的な変動を持っていることが多く、そのため、例えば放流リン濃度、流入量、放流量、風量というプロセス変数も日単位の周期変動をしていることが多い。これに伴い、これらの変数から合成されるQ統計量やT2統計量も結果的に周期的な変動をしていることも多い。このような場合には、診断データ毎に設定した閾値TH1、TH2による判断ではなく、閾値THA、THBで判断することができる。こうすることによって、よりタイトに異常兆候を判断できると同時に、それを視覚的にも判断できる。
【0121】
さらに、図17や図18に示す様に2つの診断用データが互いに相関を持っている場合がある。
【0122】
図17はQ統計量とロバストQ統計量という2つの診断データで異常兆候を検出する場合の例を示している。Q統計量とロバストQ統計量との違いは次の通りである。すなわち多変量統計的プロセス監視においてQ統計量を計算するための異常診断モデルを主成分分析によって作成する際、プラントの測定変数やそれから合成される加工変数に対してそのまま主成分分析をかけた主成分から合成した統計量がQ統計量である。ロバストQ統計量は、プラント測定変数に含まれるアウトライアなどの異常データを十分に取り除いた上で、主成分分析をかけた主成分から合成したQ統計量である。
【0123】
これらの2つのデータは同じQ統計量であるが、ロバストQ統計量では異常データを十分に取り除いて導出した主成分を用いて診断用モデルが作成されているため、異常診断を行う際、正常状態から少しでも乖離したデータが混入するとそれを異常として検出し、異常に対する感度が高くなる。ところが、単純なQ統計量ではもともとある程度異常データが混入している状況で導出した主成分から合成した統計量であるため、明確な異常で無い場合には異常を検出することが困難になる。
【0124】
一方、正常データが入力された場合は、これらの2つの量は同じQ統計量というものを計算しているためある程度似た値を持つことが期待でき、Q統計量とロバストQ統計量を2次元平面に表示すると正常状態であればある相関軸周りにその値が集中する。
【0125】
プラントに異常が発生した場合にはQ統計量とロバストQ統計量の相関関係が崩れるため、図17の異常診断メイン画面90示した様に相関軸に沿ってしきい値B1、B2を設定すれば高精度が診断を行える場合がある。
【0126】
同様にプロセス重要変数によって異常検出のトリガーをかける場合にも、2つのプロセス重要変数で判断したい場合には、図17と同じ様な判断ができる場合がある。図18はその例の一つであるが、プロセス重要変数として水質規制に関わる放流リン水質濃度と省エネルギ運用に関わるエネルギ原単位の2つを監視したい場合を想定している。
【0127】
この場合放流リン水質とエネルギ原単位は完全に独立ではなく、ある程度の相関を持つと考えられる。何故なら下水の流入水質あるいは流入負荷(流入量×流入水質)が高い場合には放流リン水質は悪化しやすく、エネルギ原単位も高くなる可能性が高いからである(エネルギ原単位は単位流量当たりのエネルギであるため流入量の変動にはあまり影響を受けないと考えられるが流入水質の変動には影響される)。従って、放流リン水質とエネルギ原単位にある程度の相関が認められる場合には、各々のデータに対するしきい値で判断するよりも図18の異常診断メイン画面100に示した様な相関軸に沿ったしきい値B3、B4で判断した方が異常検出の精度を向上させることができる。
【0128】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、2つの診断データで異常検出のトリガーをかける場合、オペレータが2つの画面を同時に監視する必要がなく、一つの画面で監視できる様になりより効率的に監視することができる。
【0129】
さらに、2つの診断データで異常検出を行う場合、2つの診断データが独立に変動するデータではなく、互いに相関があったり周期性を持ったりするような何らかの関係がある場合、異常判断の基準をより精密に行うことができ、結果としてプラントオペレータにより迅速にプラントの異常兆候を提示することが可能となる。
【0130】
次に、本発明の第4実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部のみが上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置と異なっている。
【0131】
図19に本実施形態のプロセス状態監視装置における、異常診断メイン画面110の一例を示す。異常診断メイン画面110は、状態変化検出トリガー情報表示部112として、3つ以上のプロセス重要変数の値と閾値とを表示するプロセス重要変数レーダチャート表示部と、プロセス重要変数リスト113と、を有している。
【0132】
プロセス重要変数リスト113には、プラント運転員がプロセス運用上重要と考えているプロセスの測定変数あるいは測定変数から合成した管理指標などが表示されている。上述の第2実施形態の場合と同様のプロセス管理上重要なプロセス重要変数がリストアップされている。
【0133】
そして、このプロセス重要変数リスト一覧の中で異常判定を行う変数を3つ以上選択できる様にしておく。ここで、例えば放流リン水質濃度、放流窒素濃度、ASRT、エネルギ原単位、および、DO濃度の5つを選択した場合に、異常診断メイン画面110のプロセス重要変数レーダチャート112のように5つの変数についてのレーダチャートが表示される。
【0134】
プロセス重要変数レーダチャート112は、5つの各々のプロセス重要変数に対する診断上下限値が設定できるように構成されている。プロセス重要変数レーダチャート112は、5つの各々のプロセス重要変数の上限値ULを入力する入力ボックス112Uと、下限値LLを入力する入力ボックス112Lと、を備えている。入力ボックス112Uおよび入力ボックス112Lに値が入力されると、レーダチャートの表示が更新される。表示処理部18は、設定された上限値ULおよび下限値LLに応じて、プロセス重要変数をレーダチャート上にプロットする。
【0135】
プロセス重要変数レーダチャート112で表示している選択した5つのプロセス重要変数の中のいずれか一つ以上の変数が、状態変化判断基準設定部で設定した上限値ULおよび下限値LLを超えた場合には、例えば、状態変化要因候補変数表示部113にその要因となる候補変数名が要因である可能性の高い順に提示される。
【0136】
状態変化要因候補変数表示部113に候補変数名を表示する場合、上述の第2実施形態の場合と同様に、(1)両方の統計量(Q統計量およびT2統計量)の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から上記(1)あるいは上記(2)の基準で大きいものに列挙する、などを行えばよい。
【0137】
なお、本実施例ではプロセス重要変数が複3つ以上の複数ある場合についての作用を示したが、診断用データがQ統計量やT2統計量などの統計量である場合にも、これらの統計量が3つ以上存在する場合には本実施例と同様の表示を行うことができる。
【0138】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、3つ以上の診断データや重要変数によって異常検出の判断を行う場合、オペレータが複数の画面を同時に監視する必要がなく、一つの画面で監視できる様になりより効率的な監視が可能となる。
【0139】
次に、本発明の第5実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、表示処理部18は、異常診断メイン画面AMと、異常診断サブ画面ASとを並べて表示するように構成されている。例えば、異常診断メイン画面AMとして上述の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面40を表示し、異常診断サブ画面ASとして、上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面60を表示させてもよい。
【0140】
図20に、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとの並列表示の一例を示す。異常診断メイン画面AMは、上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面60と同様の構成である。異常診断サブ画面ASは、Q統計量のトレンドグラフとT2統計量のトレンドグラフと、拡大表示ボタン200と、を含む。
【0141】
プロセスオペレータがマウス14等を操作して拡大表示ボタン200をクリックすると、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとの表示内容が入れ替わる。なお、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとには、上述の第1乃至第4実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面を組み合わせて構成してもよい。
【0142】
上記プロセス状態監視装置において、例えば、プロセス重要変数による異常検出を異常診断メイン画面AMとした場合、これによって異常が検出された場合には、例えば状態変化要因候補変数表示部で異常要因変数候補を赤色で表示しておく。
【0143】
一方、異常診断サブ画面ASで表示しているQ統計量やT2統計量で異常が検出された場合には、状態変化要因候補変数表示部の異常要因変数候補を黄色(異常要因変数候補を示す色と異なる色であればよい)で表示する様にしておく。
【0144】
プロセス重要変数による異常検出と、Q統計量およびT2統計量による異常検出との画面の並列表示については、プロセスオペレータが最も関心を持って監視している方の画面を異常診断メイン画面AMとして表示部DYPの中心に表示し、もう一方の画面を異常診断サブ画面ASとして、例えばディスプレイの隅(右上、左上、左下、右下など)に小さく表示してもよい。
【0145】
また、異常診断サブ画面ASに拡大表示ボタン200を設け、これをマウス14などの入力手段でクリックすると、異常診断サブ画面ASが大きくなり2つの画面のバランスを調整することを可能にしてもよい。この場合、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとを左右あるいは上下に並列表示できるように切り換えるように構成されていることが好ましい。
【0146】
さらに、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとは固定ではなく、プラントオペレータが異常診断メイン画面AMとしたいものと、異常診断サブ画面ASとしたいものとを適宜選択できるようになっていることが好ましい。
【0147】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラント運転員が特に重点的に監視したい重要変数で生じる異常状態を監視できると同時に、同じプラントで生じうる何らかの異常兆候も同時にプラント運転員に提示することができ。
【0148】
逆に、プラントで生じうる何らかの異常兆候を常時監視すると同時に、プラント運転員が気にしている重要変数で異常が生じていないかを確認しながらプラントの運転管理が可能となる。
【0149】
いずれにしても、プラントで生じる異常情報を、重要さに応じて識別しながら監視することが可能になり、プラント運転員は異常兆候の重要さに応じて臨機応変に対応することが可能になる。
【0150】
次に、本発明の第6実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。図21に、本実施形態に係るプロセス監視装置の異常診断メイン画面120の一例を示す。異常診断メイン画面120は、Q統計量あるいはT2統計量と、重要変数とを一つのトレンドグラフの上下に並列表示するように構成されている。
【0151】
例えば、主に監視したいもの(例えば重要プロセス変数)を通常のトレンドグラフとして表示し、サブで監視しているもの(例えばQ統計量あるいはT2統計量)を上下反転させた上側からのトレンドグラフで表示してもよい。異常の検出に用いる統計量やプロセス重要変数の数が、1乃至2個に限定されている場合には、1つのグラフ描画領域内で時間軸に対して反転するように、上下に並列表示することも有効である。
【0152】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、プロセス重要変数と、Q統計量やT2統計量とのいずれかで異常が検出された場合に、異常要因候補変数を列挙するものである。この場合に、プロセス重要変数で検出される異常と、Q統計量およびT2統計量で検出される異常とを識別できるようにしておくことが好ましい。
【0153】
例えば、プロセス重要変数のトレンドグラフ及び閾値YHXを第1色で表示し、Q統計量あるいはT2統計量のトレンドグラフおよび閾値THYを第1色と異なる第2色で表示して、状態変化要因候補変数表示部123に表示される候補変数を、プロセス重要変数により検出されたものを第1色で表示し、Q統計量あるいはT2統計量により検出されたものを第2色で表示するようにしてもよい。
【0154】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラント運転員が特に重点的に監視したい重要変数で生じる異常状態を監視できると同時に、同じプラントで生じうる何らかの異常兆候も同時にプラント運転員に提示することができ。
【0155】
逆に、プラントで生じうる何らかの異常兆候を常時監視すると同時に、プラント運転員が気にしている重要変数で異常が生じていないかを確認しながらプラントの運転管理が可能となる。
【0156】
いずれにしても、プラントで生じる異常情報を、重要さに応じて識別しながら監視することが可能になり、プラント運転員は異常兆候の重要さに応じて臨機応変に対応することが可能になる。
【0157】
次に、本発明の第7実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。図22に、本実施形態に係るプロセス監視装置の異常診断メイン画面130の一例を示す。異常診断メイン画面130は、モデル選択部131と、状態変化判断基準設定部132と、所定の測定値のトレンドグラフと統計量の異常とを表示する状態変化検出トリガー情報表示部133と、表示条件変更リンク部135と、過去異常リンク部136と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部137と、候補変数相関表示リンク部138と、を備えている。
【0158】
状態変化判断基準設定部132は、Q統計量閾値を入力する入力ボックス132A、T2統計量閾値を入力する入力ボックス132Bと、閾値変更ボタン132Cと、を備えている。ユーザは、入力ボックス132Aおよび入力ボックス132Bに値を入力し、マウス14等により閾値変更ボタン132Cを選択すると、Q統計量閾値とT2統計量閾値とはユーザが入力した値へ変更される。
【0159】
本実施形態では、水質の測定値の時系列の変動を示すトレンドグラフ、測定値の基準値ライン、および統計量異常を示すプロットが共通のグラフ領域に表示されている。統計量異常を示すプロットは、Q統計量あるいはT2統計量が閾値を超えた時刻においてトレンドグラフ上に表示される。グラフ領域の周囲には、現在の水質測定値の値、水質基準値、Q統計量の値、および、T2統計量の値が表示されている。
【0160】
図22では、異常検出時点Tにおける水質は0.5mg/L未満であり、水質基準値1.0mg/Lを下回っている。すなわち、図22に示す状態変化検出トリガー情報表示部133では、水質が悪化する前に他の関連する項目が悪化したことにより、水質悪化の兆候を検出することが可能である。
【0161】
本実施形態に係るプロセス監視装置によれば、このように、プロセス状態が悪化する前にその兆候を検出できることになる。また、状態変化検出トリガー情報表示部133に、例えばユーザが選択した測定値と統計値とを同時に提示することで、プラント運転管理に必要な項目を監視しつつ、効率的に異常を検出することができる。
【0162】
図23に、状態変化検出トリガー情報表示部133における測定値のトレンドグラフ表示の他の例を示す。図23では、測定値の予測値を提示している。ここで監視したい項目の予測値は、例えば、抽出された要因候補の状態量に基づいて過去の類似状況のデータから抽出して予測値としてもよい。これによりユーザの迅速な異常対応が可能になり、プラント運転の安全性を向上させることができる。
【0163】
図24に、状態変化検出トリガー情報表示部133における測定値のトレンドグラフ表示の他の例をさらに示す。図24では、類似状況をデータから複数の値を抽出して、予測値の最大値と最小値をおのおの上限と下限として提示している。このように測定値の予測値を表示した場合であっても、プラント運転の安全性を向上させることができる。
【0164】
図25に、異常発生時の候補変数トレンド表示画面137Aの一例を示す。候補変数トレンド表示画面137Aは、異常の候補変数のトレンドグラフが、寄与量の高い順に表示される。例えば、寄与量が高い順に表示部DYPの上部から候補変数のトレンドグラフG1が複数並んで表示される。図25では、寄与量の高い順に、2-2無酸素ORPのトレンドグラフと、流入量のトレンドグラフと、放流リン濃度のトレンドグラフとの3つのグラフが、表示部DYPの上部から下部へ並んで表示されている。この場合、候補変数の寄与量が更新されると、トレンドグラフG1の並び順も更新される。
【0165】
ユーザは、異常診断メイン画面130の状態変化検出トリガー情報表示部133から異常が発生したことを知ると、候補変数トレンド表示リンク部137をマウス14等で選択して、候補変数トレンド表示画面137Aを表示させることができる。
【0166】
このように、本実施形態では、異常診断メイン画面130で、異常の検出(異常アラーム)をするだけでなく、候補変数トレンド表示画面137Aから要因候補の提示(要因ガイダンス)が可能になる。ユーザは、抽出された要因候補の刻々の測定変数の変化を監視して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0167】
図26に、候補変数トレンド表示画面の他の例を示す。図25に示す候補変数トレンド表示画面137では、抽出された要因候補をその寄与量が大きい順に表示するため、順位の入れ替わりによって表示される項目が更新される。
【0168】
これに対し、候補変数トレンド表示画面137Bは、寄与量の大きさにより更新されずに継続して所定の要因候補変数のトレンドグラフG2を表示するように構成されている。候補変数トレンド表示画面137Bは、例えば、異常が検出されたときの寄与量が最も大きい要因候補変数のトレンドグラフG2と、継続要因変数の他の候補変数の中から寄与量が大きい要因候補変数のトレンドグラフG1と、を表示する。トレンドグラフG2は、継続要因変数のトレンドグラフとして次の時刻も表示される。
【0169】
このように、寄与量の大きさにより更新されずに継続して所定の要因候補変数のトレンドグラフG2を表示すると、寄与量の大きさの順位の入れ替わりによって表示される項目が更新されることがなくなり、トレンドグラフG2の表示が継続される。
【0170】
したがって、ユーザは、寄与量の大きさの順位の入れ替わりに関わらず、継続要因変数を監視することができ、抽出された要因候補の刻々の測定変数の変化を観察して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0171】
図27に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンド表示画面137Cは、図26に示す候補変数トレンド表示画面137Bの表示画面に、継続要因変数のトレンドグラフG2を表示させる設定を行う継続表示ボタンBTと、寄与量が大きい要因であることを表示する印MKと、がさらに表示される。
【0172】
プラント運転員は、候補変数トレンド表示画面137Cにおいて、継続表示ボタンBTをマウス14等で選択することによって、要因候補変数のトレンドグラフG1を継続候補変数のトレンドグラフG2として設定することができる。また、トレンドグラフG1、G2の近傍には、表示されている候補変数について寄与量が大きいか否かを示す印MKが表示されるため、ユーザは、印MKの有無から注目すべき項目か否かを判断することができる。
【0173】
図28に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンド表示画面137Dは、あらかじめ設定された項目を固定変数とし、固定変数のトレンドグラフG3と、要因候補変数のトレンドグラフG1とを表示させている。
【0174】
固定変数は、プロセス状態監視装置が監視するプロセスやプラントに応じて、あらかじめ設定された項目である。あらかじめ注目すべき項目が特定されているプロセスおよびプラントを監視するプロセス状態監視装置では、プラント運転員は、候補変数トレンド表示画面137Dにおいて、継続して表示させる項目を選択することなく、注目すべき項目のトレンドグラフG3を表示させることができる。また、表示されている候補変数について寄与量が大きいか否かを示す印MKが表示されるため、プラント運転員は、印MKの有無から注目すべき項目か否かを判断することができる。
【0175】
図29に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンドグラフ137Eは、ある系列に異常が発生した場合に、連係する系列の測定変数も要因候補として表示させる。
【0176】
例えば、候補変数トレンド表示画面137Eでは、2−2系列に異常は生じた場合、2−2系列に関連する2−1系列の測定値も連係要因候補としてトレンドグラフを表示させている。候補変数トレンド表示画面137Eは、2−2系列の要因候補(2-2無酸素ORG、放流リン濃度、2-2返送汚泥濃度)の3つのトレンドグラフG1と、2−1系列の連係要因候補(2-1無酸素ORG、2-1返送汚泥濃度)の2つのトレンドグラフG4とを備えている。
【0177】
このように、連係して動作している系列等の関連項目を、異常が発生した系列の候補変数と同時に監視することができるようにすることによって、異常の検出(異常アラーム)をするだけでなく、候補変数トレンド表示画面137Eから要因候補および連係要因候補の提示(要因ガイダンス)が可能になる。ユーザは、抽出された要因候補および連係要因候補の刻々の測定変数の変化を監視して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0178】
次に、本発明の第8実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス監視装置の演算部16では、図30に示す診断モデル構築部16Aに加えて、要因分析部16Bと、項目入力部16Cと、を備えている。
【0179】
診断モデル構築部16Aは、データベース20から測定変数を取得し、主成分分析の共分散行列を演算する。図31に、共分散行列の一例をとして行列P(i、j)を示す。共分散行列Pは、主成分分析による主成分が20成分、要因数が25要因の例である。
【0180】
項目入力部16Cは、例えば、プロセス異常が発生した際に、異常が発生した測定変数や、統計量の異常に対する寄与量が大きい測定変数がプロセス異常の監視項目として入力されるように構成されていてもよく、ユーザがマウス14やキーボード12等の入力手段を操作することにより監視する必要性が高い項目を監視項目として入力することが可能に構成されてもよい。ここで入力される監視項目としての測定変数は、1つであっても複数であっても良い。
【0181】
要因分析部16Bには、診断モデル構築部16Aで構築された主成分分析の共分散行列Pと、項目入力部16Cで入力された監視項目とが供給され、分析結果を出力する。要因分析部16Bから出力された分析結果は、表示処理部18へ出力される。表示処理部18は、分析結果を受信して、分析結果を表示部DYPに表示させる信号を表示部DYPへ出力する。
【0182】
以下に、要因分析部16Bの作用の一例について説明する。まず、診断モデル構築部16Aで演算された主成分分析の共分散行列Pが、例えば図31に示す行列P(i、j)であるとする。また、項目入力部16Cで与えられたプロセス異常の項目は、第k番目の項目であるとする。
【0183】
このとき要因分析部16Bにおいて、第k番目に関する分析結果は、例えば以下のように演算される。
【0184】
まずP(i、k) (i=1、・・・、20)が、例えば25項目の平均的な値である1/25より大きい、すなわち
P(i、k) > 1/25
である成分を、第1主成分〜第20主成分の中から抽出する。例えばi=2、5、8、14が選択されたとする。この第2、5、8、14の4つの成分の値から、新たに第k番目に関する有効成分ベクトルP’を、4成分の合成平均として次のように演算する。
【0185】
P’=[p’(1)、p’(2)、・・・、p’(k)、・・・、p’(25)]
p’(1)=1/4×{P(2、1)+P(5、1)+P(8、1)+P(14、1)}
p’(2)=1/4×{P(2、2)+P(5、2)+P(8、2)+P(14、2)}
:
p’(k)=1/4×{P(2、k)+P(5、k)+P(8、k)+P(14、k)}
:
p’(25)=1/4×{P(2、25)+P(5、25)+P(8、25)+P(14、25)}
上記有効成分ベクトルP’の成分の値が大きい項目が、検出したいプロセス異常の項目、第k番目に関連が強い項目である。要因分析部16Bは、上記の有効成分ベクトルP’を分析結果として出力する。表示処理部18は、有効成分ベクトルP’が分析結果として供給されると、分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べたグラフ表示させる信号を表示部DYPへ出力する。
【0186】
図33に、要因分析結果の一表示例を示す。図33では、検出したいプロセス異常の項目(第k番目)を放流リン濃度として要因分析した場合の分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べた円グラフG1を表示している。この円グラフG1には、主成分の値のプロットと、主成分名と、が表示されている。ここでは、2系分配流入量や1号無酸素ORP、1号PAC注入量、2号無酸素ORP、2号PAC注入量が、放流リン濃度の異常との関連が強いことを示している。
【0187】
ここで図32に示すように、平均値、ここでは1/25以下の項目の値を表示しないことで、値が大きい、すなわち関連がより強い項目を容易に認知することができる。
【0188】
図33に、演算部16の構成の他の例を示す。図33に示す場合では、演算部16は、項目並び替え部16Dと、項目順位入力部16Eと、をさらに備えている。項目順位入力部16Eには、プラント運転員がキーボード12やマウス14等の入力手段を操作することによって、項目の並び替え順が入力される。例えば、項目順位入力部16Eには、予め設定された重要な管理項目の順や、値の大きい項目順や、その他の任意の順位が入力される。
【0189】
項目並び替え部16Dは、項目順位入力部16Eから供給された項目順に従って、有効成分ベクトルP’の成分の順位を並び替えて、分析結果として出力する。項目並び替え部16Dから出力された分析結果は、表示処理部18へ供給される。表示処理部18は、有効成分ベクトルP’が分析結果として供給されると、分析結果を主成分のグラフとして表示部DYPの異常診断画面に表示させる。
【0190】
図34に、項目順を並び変えた分析結果を表示させた場合の表示例を示す。図34では、一例として、値が大きい順に項目を並び替えた分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べた円グラフG2を表示している。このように、値が大きい順に項目を並び替えて分析結果を表示させると、2系分配流入量や1号無酸素ORP、1号PAC注入量、2号無酸素ORP、2号PAC注入量が、放流リン濃度の異常との関連が強いことをより容易に判断することができる。
【0191】
従来の監視制御システムでは、プラントの運転員自身の判断で選択したプロセス変数の動き(トレンド)を監視していたが、上記の本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プロセスの状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数を運転員に助言することができ、運転員はプラントの状態の変化に気づくことが容易になる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期に運転員が認識することができ、運転員がプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。
【0192】
また、第8実施形態に係るプロセス状態監視装置では、検出したいプロセス異常の項目に対して関連が強い要因項目が一目で判別できるようになる。これにより要因が抽出されたとき、運転員が検出したいプロセス異常の項目に異常が生じる可能性を予測することが容易になる。
【0193】
また、運転員が分析結果を見ることにより、診断モデルを用いて検出したいプロセス異常が検出できるかどうかが、容易に判断できるようになる。
【0194】
その結果、プラントの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数の運転員によるプラント運転や複数の地域に分散するプラント群の集中監視による運用、あるいは、非熟練の運転員によるプラント運転などが可能になる。
【0195】
なお、例えば、上記第8実施形態に係るプロセス状態監視装置は、演算部16が項目入力部16Cを備えていたが、運転員が監視すべき重要な測定変数が監視対象等に応じて予め設定されている場合には、項目入力部16Cは省略してもよい。その場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0196】
また、上記実施形態に係るプロセス状態監視装置は、演算部が項目順位入力部16Eを備えていたが、予め分析結果の並び順が監視対象等に応じて設定されている場合には、項目順位入力部16Eを省略してもよい。その場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0197】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プロセスの状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数をオペレータに助言することができ、オペレータがプラントの状態の変化に気づきやすくなる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、オペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。その結果、プラントの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数のオペレータによるプラント運転や複数の地域に分散するプラント群の集中監視による運用、あるいは、非熟練のオペレータによるプラント運転などが可能になる。
【0198】
すなわち、上記第1実施形態乃至第8実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、従来のトレンドグラフと呼ばれるプロセス変数の時系列データによる監視方法を踏襲しながら、プラントオペレータに数百〜数千項目にも及ぶプロセス変数のどの項目を重点的に監視すれば良いかをオンラインで支援し、ユーザが監視対象の異常診断を迅速に行うことを支援することができる。
【0199】
これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、従来の監視制御システムの枠組みを維持しながらオペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができるようになる。
【0200】
上記第1実施形態乃至第8実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。いずれの場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0201】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0202】
DYP…表示部、TH1…Q統計量閾値、TH2…T2統計量閾値、THA.THB…判断閾値、UL…上限値、LL…下限値、AM…異常診断メイン画面、AS…異常診断サブ画面、10…ヒューマンマシンインタフェース、12…キーボード、14…マウス、16…演算部、18…表示処理部、20…データベース、30…監視対象、40…異常診断メイン画面、41…モデル選択部、42…状態変化判断基準設定部、42A、42B…入力ボックス、43…状態変化要因候補変数表示部、44、45…状態変化検出トリガー情報表示部、46…表示条件変更リンク部、46A…変更画面、47…過去異常リンク部、48…状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部、49…候補変数相関表示リンク部、G1、G2…グラフ、16A…診断モデル構築部、16B…要因分析部、16C…項目入力部、16D…項目並び替え部、16E…項目順位入力部。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プロセス状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセスなどの水処理/水運用プロセスや石油化学プロセス、あるいは半導体製造プロセスなどのプロセスの運転管理では、プロセスの所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用の両立が求められる。
【0003】
ここで、所定目標性能の例としては、下水処理プロセスでは放流水質基準の遵守、汚泥消化プロセスでは生成エネルギ(メタンや水素など)の所定発生量確保、浄水プロセスでは消毒・殺菌などによる給配水水質基準の遵守などが挙げられる。
【0004】
一方、省エネ・省コスト運用の例としては、下水処理プロセスではブロワやポンプの駆動電力や薬品注入量の削減、汚泥消化プロセスでは発生エネルギ効率の最大化、浄水プロセスでは薬品注入量の最小化などがあげられる。
【0005】
所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用は、トレードオフの関係にある場合が多く、省エネ・省コストを追求すると,所定目標を達成できないリスクが高まることが多い。例えば、下水処理プロセスでブロワの電力は下水処理場の消費電力の40%程度を占めると言われるが、ブロワの電力を削減するためにブロワの送風量を絞ると水質が悪化するリスクが高まる。逆に水質悪化を防止するために十分な送風量を確保すると放流水質を規制値以内に維持するために必要以上の電力を消費してしまう場合がある。
【0006】
そのため、所定目標性能の達成と省エネルギ・省コスト運用を両立させるためには、所定目標を達成可能な範囲でできる限り省エネルギでの運用を行いつつ、所定目標を達成できない様な状態に陥らない様に目標性能に関するプロセスの状態を監視し、所定目標の達成を阻害する様な状態変化や異常状態を素早く検知し事前に対策を取ることが要求される。
【0007】
現在上下水道プラントなどで利用されているプラント監視では、プロセス管理者やオペレータは、トレンドグラフと呼ばれるプロセスの運用に関わるプロセス測定変数の時系列データを監視し、トレンドグラフ上でプロセスの状態変化や異常を監視することが多い。
【0008】
このようにトレンドグラフ上の監視では、各々のプロセス変数に対して、例えば3σ(標準偏差の3倍)などの管理限界や外部から与えた上下限値を与えて、これらの限界値を超えた場合にプロセスの異常を検出して何らかの対応をとることとなる。
【0009】
しかし、上記方法では、数百〜数千項目に及ぶプラントの計測項目のどの項目で発生するかわからない異常を常に監視することは非常に困難であって、実際には限られた項目のみを監視せざるを得なかった。
【0010】
また、通常複数のプロセス変数は物理的および人工的な制約によって互いに何らかの関係(相関など)を持っているが、管理限界値による監視では、このような変数間の関係を無視した監視しか行えない。すなわち、ある1つのプロセス変数において異常が生じた場合、それが単にその変数のみで生じた異常なのか、あるいは、他の変数にも異常が生じ、他の変数との関係性が崩れたプロセスの異常なのかを容易に判断することが困難であった。
【0011】
このような従来のプラント監視の問題を解決する方法として、主に石油化学プロセスの分野で発展してきた「多変量統計解析手法」を用いた多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)と呼ばれる方法が知られている。MSPCは、ケモメトリクス手法と呼ばれることもあり、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)に基づいた方法が広く用いられている。
【0012】
MSPC手法は、多数の計測データから多数のプロセスデータ間の相関情報を利用して少数(通常2個)の統計量データを生成し、生成された少数の統計量データによってプロセス状態の変化を検出しようとするものである。PCAを用いたMSPCでは、PCAを用いて相関の強いデータ集合(データの部分空間)を生成し、この部分空間内のデータの中心からの距離(ばらつきの程度)を表すT2統計量と呼ばれる統計量と、各時刻のデータがこの部分空間からどの程度乖離しているか(相関関係の崩れ)を示すQ統計量と呼ばれる統計量によってプロセスの状態監視を行う。そして、この2つの統計量の値を監視し、その値が予め設定したしきい値を超えた場合にプロセスが定常状態(安定運用状態)から非定常状態(異常など)に状態が変化したと判断し、この状態変化/異常の検出を行う。そして、その後、その要因となる測定変数の推定(要因分離)を行う。
【0013】
この要因分離は、通常T2統計量やQ統計量を各測定変数の寄与量と呼ばれる成分に分解し、各測定変数の寄与量の大きいものを異常要因である可能性が高い変数として推定する。異常要因推定後に、異常の検出と要因分離結果を提示された運転員が、状態変化/異常の真の要因を特定し、その状況への対策、という手順をとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平07−068905号公報
【特許文献2】特開2003−096467号広報
【特許文献3】特開2005−249816号広報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】加納 学、“多変量統計的プロセス管理”、2005年6月第2版、京都大学大学院工学研究科化学工学専攻プロセスシステム工学研究室、インターネット<URL: http://tech.chase-dream.coMSPC/report-MSPC.pdf>
【非特許文献2】加納、多変量統計的プロセス監視、<URL:www-pse.cheme.kyoto-u.ac.jp/~kano/lecture/dataanalysis/DOc08_MSPC.pdf>
【非特許文献3】S.Yoon et al, Multivariate Process Monitoring and Early Fault Detection(MSPC) using PCA and PLS、<URL:http://www.umetrics.com/pdfs/events/MSPC%20Application%20at%20Honeywell%20(NPRA).pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
多変量統計プロセス監視では、原理的には、互いに相関を持つ多数の測定変数の中で生じる異常の検出とその要因変数の分離を効率的に行う事ができるが、このMSPCによる監視・診断システムを実際のプラント監視システムとして実用的な形で実現するためには、ユーザである運転員にとって理解しやすく使いやすい形で診断結果の情報を提示して、ユーザビリティを高める(=使いにくさを排除する)必要があった。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであって、監視・診断結果を運転員に理解しやすく、使いやすい形で提供するプロセス状態監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の態様によるプロセス状態監視装置は、監視対象から取得した2以上の測定変数から診断用データを演算し、前記診断用データから前記監視対象の異常を検出するように構成された演算部と、前記診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部で状態変化を検出するための判断基準を設定する状態変化判断基準設定部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部で設定された判断基準とによりプロセスの異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する状態変化要因候補変数表示部と、を備えた異常診断メイン画面を表示させるための表示データを生成する表示処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロセス状態監視装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図3】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図4A】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた候補変数相関表示の一例を示す図である。
【図4B】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた候補変数相関表示の一例を示す図である。
【図5】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた表示条件変更画面の一例を示す図である。
【図6】図5に示す表示条件変更画面で表示期間を1週間としたときの状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図7】図5に示す表示条件変更画面で表示期間を24時間としたときの状態変化検出トリガー情報表示部の一例を示す図である。
【図8】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部で閾値を調整する機能の一例について説明するための図である。
【図9】図2に示す異常診断メイン画面の状態変化要因候補変数表示部の他の例を示す図である。
【図10】図2に示す異常診断メイン画面にリンクされた過去異常表示画面の一例を示す図である。
【図11】図10に示す過去異常表示画面にリンクされた過去の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作の一例を説明するための図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の他の例を示す図である。
【図19】本発明の第4実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図20】本発明の第5実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面および異常診断サブ画面の一例を示す図である。
【図21】本発明の第6実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図22】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面の一例を示す図である。
【図23】図23に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の他の例を示す図である。
【図24】図23に示す異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部の他の例を示す図である。
【図25】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の一例を示す図である。
【図26】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図27】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図28】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図29】本発明の第7実施形態に係るプロセス状態監視装置の候補変数トレンド表示画面の他の例を示す図である。
【図30】図1に示すプロセス状態監視装置の演算部の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図31】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において構築される診断モデルの一例を説明するための図である。
【図32】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において要因分析結果の一表示例を説明するための図である。
【図33】図1に示すプロセス状態監視装置の演算部の他の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図34】本発明の第8実施形態に係るプロセス状態監視装置において要因分析結果の他の表示例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、下水処理プロセス、排水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセス、化学プロセスなどにおける計測項目を監視するプロセス状態監視装置である。
【0021】
図1に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、ネットワークを介して監視対象(プロセス)30で計測された状態量や操作量に関する値が蓄積されるデータベース20と、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)10と、ユーザが操作する操作手段としてのキーボード12およびマウス14と、を備えている。
【0022】
監視対象30には複数のセンサが設置され、センサで計測された値を、ネットワークを介してデータベース20へ送信する。データベース20は、監視対象30が送信した計測値を受信し、例えば項目毎に計測時刻と計測時刻とを記録する。
【0023】
ヒューマンマシンインタフェース10は、データベース20や監視対象30との間で信号を送信および受信する通信手段(図示せず)と、演算部16と、表示処理部18と、表示部DYPとを備えている。
【0024】
演算部16は、所与の監視対象(プロセス)から得られる状態量や操作量に関する少なくとも2つ以上の複数の測定変数から変換あるいは合成した加工変数の時系列データから選択あるいは合成される、プロセスの状態変化や異常を検出するトリガー情報を与えるための一つ以上の診断用データを算出し、この診断用データによって前記複数の時系列データで生じる状態変化および異常を検出し、異常検出後にその要因となる変数を複数の測定変数および加工変数の中から推定するように構成されている。
【0025】
演算部16は、MSPC手法により、データベース20から受信した複数のプロセス計測データ間の相関情報を利用して、少数(通常2つ)の統計量データを生成し、生成された統計量データによりプロセス状態の変化を検出するように構成されている。
【0026】
また、PCAを用いたMSPC手法では、PCAを用いて相関の強いデータ集合(データの部分空間)を生成し、この部分空間内のデータの中心からの距離(ばらつきの程度)を表すT2統計量と呼ばれる統計量と、各時刻のデータがこの部分空間からどの程度乖離しているか(相関関係の崩れ)を示すQ統計量と呼ばれる統計量を算出する。
【0027】
演算部16は、その後、その要因となる測定変数の推定(要因分離)を行う。この要因分離は、通常T2統計量やQ統計量を各測定変数の寄与量と呼ばれる成分に分解し、各測定変数の寄与量の大きいものを異常要因である可能性が高い変数として推定する。
【0028】
演算部16は、通常T2統計量やQ統計量によってプロセスの状態監視を行う。この2つの統計量T2、Qの値を監視し、その値が予め設定したしきい値を超えた場合に、監視対象であるプロセスが定常状態(安定運用状態)から非定常状態(異常など)に状態が変化したと判断し、この状態変化および異常の検出を行う。演算部16は、T2統計量、Q統計量、各測定変数の寄与量を表示処理部18に供給する。
【0029】
表示処理部18は、演算部16から供給されるT2統計量、Q統計量、各測定変数の寄与量や、データベース20から供給されるプロセス計測データを利用して、ユーザに異常診断メイン画面40を表示するための信号を表示部DYPに供給する。
【0030】
以下に、上記プロセス状態監視装置におけるユーザへの情報提供手順と、画面表示に関わるヒューマンインタフェースの構成について説明する。
【0031】
図2に、異常診断メイン画面40の一例を示す。異常診断メイン画面40は、異常診断モデル(異常診断システム)が複数存在する場合に、診断モデルに予め番号などのタグを割り当てこのタグにより診断モデルを切り替え可能とするモデル選択部41、プロセスの状態変化や異常を検出するための診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部44、45と、状態変化検出トリガー情報表示部44、45で状態変化を検出するための判断基準である閾値TH1、TH2を設定する状態変化判断基準設定部42と、状態変化要因候補変数表示部43と、状態変化要因候補変数表示部43に表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48と、現在の年月日および時刻(YYYY(年)/MM(月)/DD(日) HH:MM(時刻))を表示する時刻表示部と、状態変化検出トリガー情報表示部44、45のQ統計量トレンドグラフとT2統計量トレンドグラフの横軸に対応する表示期間を変更するための表示条件変更リンク部46と、過去に状態変化が検出された時点を所定の範囲にわたって表示し、その中の特定の時点の過去に生じた異常を表示するようにリンクをとる過去異常リンク部47と、状態変化要因候補変数表示部43に表示された少なくとも2つの状態変化要因候補変数の組あわせに対する、2次元あるいは3次元の散布図を表示する命令を受け付ける候補変数相関表示リンク部49と、を備える。
【0032】
状態変化判断基準設定部42は、Q統計量閾値TH1を入力する入力ボックス42Aと、T2統計量閾値TH2を入力する入力ボックス42Bと、を備えている。
【0033】
状態変化検出トリガー情報表示部44、45には、異常を検出するための診断用データと合わせて、最終モデル構築日時(YYYY(年)/MM(月)/DD(日) HH:MM(時刻))と、最終モデル構築日時におけるQ統計量およびT2統計量との現在値を表示された入力ボックス44A、45Aが表示される。
【0034】
状態変化検出トリガー情報表示部44には、診断用データとしてQ統計量のトレンドグラフが表示される。Q統計量のトレンドグラフには、Q統計量の閾値TH1が破線で表示されている。図2では、Q統計量が閾値TH1を超えていることを知らせるために、現在のQ統計量が、対応するグラフ位置を点滅させる等により強調されている。
【0035】
状態変化検出トリガー情報表示部45には、診断データとしてT2統計量のトレンドグラフが表示される。T2統計量のトレンドグラフには、T2統計量の閾値TH2が破線で表示されている。
【0036】
Q統計量トレンドグラフおよびT2統計量トレンドグラフでは、例えば、非特許文献1等に記載されている主成分分析から計算されるプロセス変数間の相関関係の崩れ(乖離)を表す指標であるQ統計量とプロセス変数間の相関(超)平面上でのデータの位置の異常度(データ中心からどのくらいばらついているか)を表すT2統計量との所定の時間に亘るトレンドグラフが表示されている。
【0037】
また、表示しているトレンドグラフの右端の値(通常は現在時刻における値)が、Q統計量の入力ボックス44AとT2統計量の入力ボックス45Aとに表示されている。
【0038】
上記のように多変量統計的プロセス監視(MSPC)としてその有効性が知られているQ統計量やT2統計量と言う診断用データによって、プラント運転員が通常の管理では気づきづらいプラントで生じている異常兆候を素早く検出することができる。
【0039】
状態変化判断基準設定部42には、Q統計量閾値TH1の入力ボックス42AおよびT2統計量閾値TH2の入力ボックス42Bと、閾値変更ボタン42Cと、が表示される。ユーザは、Q統計量閾値TH1およびT2統計量閾値TH2を入力する入力ボックス42A、42Bに値を入力し、閾値変更ボタン42Cを選択することで、閾値TH1、TH2を入力した値に設定することができる。
【0040】
状態変化要因候補変数表示部43は、Q統計量トレンドグラフ44あるいはT2統計量トレンドグラフ45において、状態変化判断基準設定部42で設定した閾値42A、42Bにより何らかの異常が検出された場合に、その要因候補となる1つ以上の要因候補変数を、要因である可能性の高い順にソートして変数名をリストとして列挙する。本実施形態では、状態変化要因候補変数の候補変数名を、要因である可能性が高い順にソートして表示するテーブルを備える。図2には、要因である可能性が高い順に「雨量」、「2-3号PAC注入量」、「2-2号返送汚泥濃度」の候補変数が示されている。
【0041】
Q統計量とT2統計量との両方の診断用データで異常が生じている場合には、状態変化要因候補変数表示部43には、例えば、(1)両方の統計量の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から(1)あるいは(2)の基準で大きいものに列挙する等により要因候補変数が表示される。
【0042】
その他の方法としては、図2の状態変化要因候補変数表示部43をQ統計量用の領域とT2統計量用の領域とに分けて、各々に対して寄与量の高い順に異常要因候補変数を列挙してもよい。
【0043】
また、列挙する異常要因候補変数の数の最大値は外部から設定するように構成されてもよい。一例として、一枚の画面で同時に表示するトレンドグラフの数は1桁程度であることが多いため、例えば8個あるいは10個ぐらいまでの候補変数を列挙できるようにする。
【0044】
実際に要因候補変数として列挙する場合には、外部から設定した表示可能最大数(上記例では8個あるいは10個)に相当する様に、異常要因である可能性の高いものから順に表示可能最大数までの候補を機械的に表示する様に構成されてもよい。
【0045】
その他、上記(3)の方法に準じて、例えば各寄与量の値が通常時(異常検出がされていない場合)の寄与量値の分散を基準として2σあるいは3σ以内に入っているものは表示せずに、それ以外のものの中から表示可能最大数(上記例では8個あるいは10個)までの範囲内で、要因である可能性の高い順に列挙してもよい。
【0046】
また、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48は、この部分にマウス14によるクリックなどでアクション命令を行うと、図3に示すような状態変化要因候補変数のトレンドグラフが表示される状態変化要因候補変数トレンド表示部48Aと関連付け(リンク)されている。
【0047】
異常診断メイン画面40において、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aが表示される。
【0048】
図3に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aの一例を示す。図3に示す状態変化要因候補変数のトレンドグラフ48Aには、異常診断メイン画面40の状態変化要因候補変数表示部43に表示された候補変数が時系列で表示される。ユーザは、トレンドグラフ48Aから、プロセスの状態変化や異常の要因となった変数を検討することが可能となる。
【0049】
トレンドグラフ48Aの表示期間は、外部から設定できるようにしておいてもよく、表示条件変更リンク部46で設定した期間に同期させ、Q統計量トレンドグラフやT2統計量トレンドグラフの表示期間と同じ範囲のトレンドグラフを表示させてもよい。
【0050】
また、図3では、異常要因候補変数を全てのトレンドグラフを一枚の画面上に表示しているが、状態変化要因候補変数表示部43に表示した異常要因候補変数を選択し、選択された変数のみのトレンドグラフを表示する様にしてもよい。また、図3では一つの画面に全てのトレンドグラフを同時表示させているが、この異常要因候補変数のトレンドグラフの個別に表示する様にしてもよい。
【0051】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、監視対象の状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数をユーザに助言することができる。これによって、ユーザは、監視対象で生じる異常兆候を早期に認識することができ、オペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。
【0052】
その結果、監視対象であるプロセスの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数のオペレータ(ユーザ)による監視や、複数の地域に分散する監視対象群の集中監視による運用、あるいは、非熟練のオペレータ(ユーザ)による監視が可能になる。
【0053】
また、多変量統計的プロセス監視をより効果的に利用するためには、候補変数相関表示リンク部49を有することが好ましい。多変量統計的プロセス監視では、そもそも一つの変数だけを監視しているだけではわからない複数の変数間の相関関係の崩れを監視して異常を検出するものであり、実際Q統計量は相関関係の崩れを表す指標である。従って、多変量統計的プロセス監視手法によって異常が検出された場合に、その要因候補変数のトレンドグラフを単に確認するだけでは、監視対象プラントで何が生じているのかをオペレータが認識できない場合もある。
【0054】
候補変数相関表示リンク部48は、この部分にマウス14によるクリックなどでアクション命令が入力された場合に、図4A、図5Bに示すような2つあるいは3つの状態変化要因候補変数の散布図を表示する状態変化要因変数相関表示部49A、49Bと関連付け(リンク)されている。
【0055】
異常診断メイン画面40において、候補変数相関表示リンク部49が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに候補変数の相関グラフ49Aまたは相関グラフ49Bが表示される。相関グラフ49Aは、横軸を「2-2号返送汚泥濃度」とし、縦軸を「雨量」とした2次元の散布図である。相関グラフ49Bは、第1軸を「雨量」とし、第2軸を「2-3号PAC注入量」とし、第3軸を「2-2号返送汚泥濃度」とした3次元の散布図である。このような表示機能を有することによって、トレンドグラフからだけでは明確に認識できない相関関係の崩れによる異常兆候を目視で確認することができる。
【0056】
この際、図4Aおよび図4Bに示した2次元あるいは3次元の散布図の軸となる2変数あるいは3変数の選択方法としては、(1)異常要因候補変数の中の異常要因である可能性の高い順に2変数/3変数を選択する。(2)図7に示す様にオペレータが見たいと考える2変数/3変数の軸を選定して表示する。(3)異常要因候補変数に提示された全ての組み合わせの2次元/3次元散布図を同時に表示する。などの方法を採用することができる
ユーザは、候補変数相関表示リンク部を選択して、2又は3の状態変化要因候補変数の散布図を表示部DYPに表示して、2又は3の変数間の関係を目視で確認することができる。
【0057】
このように、候補変数の相関グラフを表示可能とすることによって、監視対象で計測している複数の測定変数間の相関関係の崩れなど、1つの変数だけに着目していたのではわからない監視対象の異常を目視で確認することができ、ユーザは異常時に素早く対応を取ることが可能となる。
【0058】
異常診断メイン画面40において、表示条件変更リンク部46が、ユーザによって選択されると、表示部DYPに診断データの表示条件を変更する変更画面46Aが表示される。変更画面46Aでは、ユーザは、異常診断メイン画面40に表示されているトレンドグラフの横軸および縦軸の条件を変更することが可能である。
【0059】
変更画面46Aは、時間軸(横軸)について最新表示時刻および表示期間を入力する入力ボックスと、統計量軸(縦軸)について最小値および最大値を入力する入力ボックスと、を備えている。
【0060】
例えば、変更画面46Aで時間軸(横軸)の表示期間を1週間とした場合、例えば図6に示すように10月1日0:00から10月7日0:00までの1週間の診断データがトレンドグラフで表示される。例えば、変更画面46Aで時間軸(横軸)の表示期間を1日(24時間)とした場合、例えば図7に示すように10月1日0:00から1日の診断データがトレンドグラフで表示される。
【0061】
図6および図7に示すトレンドグラフを比較することにより、1週間単位の表示では過去1週間と比較して急激に統計量の値が上昇しておりプロセスの状態が急速に悪化していることが読み取れる。このように状態変化検出トリガー情報表示部44、45の表示期間や表示レンジを任意に切り替え監視対象のプロセスの状態がどのように変化しているかをわかりやすく表現することができる。
【0062】
すなわち、ユーザはトレンドグラフの表示条件を変更可能とすることによって、ユーザは、短期間に生じる突発的な異常や比較的長期にわたって徐々にプラント状態が変化していくドリフト的に生じる異常を目視で確認することができ、どのような対策を取るべきかを判断する際に有効な情報を得ることができる。
【0063】
さらに、本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、状態変化判断基準設定部42で診断データあるいは重要変数に対する閾値を外部から設定するだけでなく、トレンドグラフや軌跡グラフあるいはレーダチャート上に表示した閾値をマウス14などの入力手段によるドラッグおよびドロップで調整することができる。
【0064】
例えば、状態変化検出トリガー情報表示部45において、図8に示すように、T2統計量の閾値TH2を示す破線の位置をマウス14で選択してドラッグおよびドロップすることにより、破線の位置を調整することができる。このとき、T2統計量の閾値TH2は、破線の位置に対応する値に変更される。
【0065】
ユーザが、検出したいレベルの状態変化や異常兆候に対応する閾値を、表示部DYPの画面において目視で確認しながら容易に設定することができ、ユーザが対策を取るべき状態変化と対策を取る必要のない状態変化とを容易に識別することが可能となる。
【0066】
また、Q統計量トレンドグラフやT2統計量トレンドグラフ上に表示されているしきい値をマウスでドラッグおよびドロップするなどして閾値TH2を変更すると、それが状態変化判断基準設定部42の2つのボックス42Bの閾値TH2の値に反映されるように構成されることが好ましい。このようにすることによって、実際の診断用データの値を目視で確認しながらしきい値レベルをオペレータがストレスなく調整することができる。
【0067】
図9に、状態変化要因候補変数表示部の他の例を示す。図9の状態変化要因候補変数表示部43´には、トレンドグラフとして表示するか否かを選択するための表示選択欄がさらに表示される。ユーザは、トレンドグラフを表示させたい候補変数の表示選択欄を選択した後に、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部48を選択することによって、選択した候補変数のトレンドグラフを表示させることができる。
【0068】
また、異常を検出しその要因変数のトレンドグラフが表示された場合、ユーザは対策を取る必要があるか否かを判断して、対策を取る必要がある場合には適切な対策を取る。この対策を取る際の参考情報として、過去に生じた異常を見つけることができると、その時の対策に準じた対策を取ることができる可能性が高い。
【0069】
そこで、本実施形態では、異常診断メイン画面40の様に「過去の異常を見る」というボタンを設置しておき、この部分にアクション命令が入力された場合に、例えば図10に示すような過去異常画面47Aが表示される。データベース20には、例えば、過去に異常が発生した時刻、異常要因候補変数、異常時の対策の有無等が記録されている。図10に示す過去異常画面47Aでは、予め設定した所定の期間に亘る過去の異常発生日時のリストが表示される。
【0070】
また、好ましくは各々の異常発生時において異常要因候補として列挙されたものと、現在生じている異常要因候補の組について、例えば要因候補変数が一致している場合は1で一致していない場合は0を割り当てるなどして類似度を定義しておき、どの異常状態が現在の異常状態と近い異常状態であるかを順位づけておくとよい。
【0071】
さらに好ましくは、各々の異常時に対策をとったか対策を取らなかったかをデータベース20に記録しておき、対策をとった場合には、画面上の「有」(図10の対策「有」の箇所)をクリックすると、プラントオペレータが何らかの操作変更を行った操作量のトレンドグラフなどが表示されるような仕組みを持っているとより好ましい。
【0072】
このように、所定期間の過去の異常状態のリストの中から特定の過去の異常イベントを選定すると、異常診断メイン画面40が選択した時期の異常診断メイン画面50に切り替わる。なお、異常診断メイン画面50について、異常診断メイン画面40と同様の機能については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
図11に、異常診断メイン画面50の一例を示す。異常診断メイン画面50へ表示が切り替わると、異常診断メイン画面40の「過去の異常を見る」の過去異常リンク部47は「現在の状態に戻る」のボタン57に切り替わる。この様に、過去に生じた異常を参照することによって、プラントオペレータ(ユーザ)は対策を取ることが容易になる。
【0074】
さらに、異常診断モデル自身を例えば季節毎や月毎などに応じて複数持っている場合、あるいは、プロセス時系列データの周波数(変化の速さ)に応じて複数持っている場合などは、診断モデル切り替え部41で適宜診断モデルを選定して切り替えることができるように構成されている。
【0075】
次に、上記プロセス状態監視装置の動作について図12を用いて説明する。データベース20に蓄積されたプロセス測定データがヒューマンマシンインタフェース10の演算部16で前処理され(ステップSA1)、診断用データ(診断統計量)が算出される。その後、演算部16は、算出した診断用データの監視を開始する(ステップSA2)。
【0076】
表示処理部18は、演算部16で算出された診断用データを取得し、異常診断メイン画面40を表示するための画像データを生成し、表示部DYPに異常診断メイン画面40を表示させる。
【0077】
演算部16は、診断用データから監視対象30の異常を検出すると(ステップSA3)、プロセス計測データから要因変数を特定する(ステップSA4)。このとき、表示処理部18は、異常診断メイン画面40で異常が検出されたことを提示し、要因変数を可能性が高い順に状態変化要因候補変数表示部43に表示する。表示処理部18は、異常診断メイン画面40でのユーザの操作に応じて、関連付けられた画面を表示したり、表示設定を変更したりして、ユーザの変数監視動作を支援する(ステップSA5)。
【0078】
以上の様な手順を踏むことによって、従来のプラント監視方法では、プラントオペレータが自分自身の判断で監視するプロセス変数を選択しそのトレンドグラフを監視していたのに対し、プラントオペレータに監視すべきプロセス変数を助言した上で対応するトレンドグラフを監視することができる。
【0079】
従来は、異常要因候補を寄与量プロット(Contribution Plot)と呼ばれるバーグラフで表示していた。このような方法で異常を検出した後に異常要因を推定することが典型的多変量統計的プロセス監視の手順であるが、これは、従来実際のプラントでプラント運転を行っているオペレータの監視方法とは異なるものである。プラントオペレータは通常はプロセス変数のトレンドグラフを監視しているため、多変量統計的プロセス監視の監視方法が如何に原理的に優れた方法であっても監視方法を急に切り替えることは好まないと考えられる。
【0080】
これに対し、本願は従来の監視方法を踏襲した上でより効率的にプラントを監視する方法を考案することを狙ったものであり、従来のトレンドグラフ監視に対して支援機能を付加した形でMSPCの監視方法を導入している。このような仕組みを取ることによって、プラントオペレータはストレスを感じることなく、現状の監視方法よりより効率的な監視を行えるようになる。
【0081】
すなわち、上記実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラントオペレータに監視すべきプロセス変数を示して監視作業を支援し、対応するトレンドグラフの監視が可能となる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、従来の監視制御システムの枠組みから大きく離れることなくオペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができるようになる。
【0082】
次に、本発明の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において上述の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図13に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置において、表示部DYPに表示される異常診断メイン画面60の一例を示す。異常診断メイン画面60では、状態変化検出トリガー情報表示部61に表示する診断用データとして、プラントオペレータが特に重要視しているプロセス測定データあるいはプラントの管理指標など測定変数から生成した変数(以下重要変数という)を採用している。
【0084】
異常診断メイン画面60は、状態変化検出トリガー情報表示部61としてプロセス重要変数リストと、判定変数変更ボタン62と、状態変化要因候補変数表示部63と、過去異常リンク部64と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部65と、候補変数相関表示リンク部66と、を備える。
【0085】
プロセス重要変数リストは、複数の重要変数の「変数名」、「現在値」、「診断上限値」、「診断下限値」、「警告上限値」、および、「警告下限値」を表示するテーブルを備える。重要変数の診断上限値および診断下限値は、監視対象が異常か否かの判断をユーザに提示するための閾値として設定されている。重要変数の警告上限値および警告下限値は、監視対象に異常が発生していることをユーザに警告するための閾値として設定されている。
【0086】
オペレータは、診断上限値および診断下限値の設定を変更することが可能である。異常診断メイン画面60は、プロセス重要変数リストで表示される重要変数の診断上限値および診断下限値を設定する、状態変化判断基準設定部61Aをさらに備えている。
【0087】
状態変化要因候補変数表示部63は、状態変化検出トリガー情報表示部61のプロセス重要変数が、状態変化判断基準設定部61Aで設定したしきい値により異常と判断された場合に、その要因候補となる1つ以上の要因候補変数を、要因である可能性の高い順にソートして変数名をリストとして列挙するように構成されている。
【0088】
状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部65は、状態変化要因候補変数表示部63で表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける。
【0089】
候補変数相関表示リンク部66は、状態変化要因候補変数表示部63に表示された少なくとも2つ乃至3つの状態変化要因候補変数の組あわせに対する2次元あるいは3次元の散布図を表示する命令を受け付ける。
【0090】
過去異常リンク部64は、過去に状態変化が検出された時点を所定の範囲にわたって表示し、その中の特定の時点の過去に生じた異常を表示する命令を受け付ける。過去異常リンク部64は、例えば図10に示す過去異常画面47Aが表示される。
【0091】
図14に、重要変数をトレンドグラフで表示する異常診断メイン画面70の一例を示す。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、複数の重要変数のなかでプロセス重要変数リストに表示された重要変数を、トレンドグラフとして表示可能に構成されている。
【0092】
異常診断メイン画面70は、状態変化検出トリガー情報表示部71と、状態変化判断基準設定部71Aと、判定変数変更ボタン72と、状態変化要因候補変数表示部73と、表示条件変更リンク部74と、過去異常リンク部75と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部76と、候補変数相関表示リンク部77と、を備えている。
【0093】
上記のようにトレンドグラフを表示することにより、オペレータは、プロセス重要変数リストから選択した重要変数をトレンドグラフで表示して、所定期間の重要変数の変化から、異常の兆候を確認することできる。
【0094】
以下本実施形態に係るプロセス状態監視装置の動作を説明する。まず、図13に示すプロセス重要変数リストには、プラント運転員がプロセス運用上重要と考えているプロセスの測定変数あるいは測定変数から合成した管理指標などが表示されている。
【0095】
例えば、監視対象が下水処理プロセスの場合、最も重要な要求事項が放流水質を規制値未満に維持することであるとし、放流水質の項目であるリン濃度や窒素濃度が重要変数として選択してもよい。また、このような直接的な指標ではなく、プラント運転上管理している好気槽汚泥滞留時間(ASRT)など測定変数から計算される管理指標が選択されてもよい。
【0096】
また、放流水質を維持するだけでなく、近年の省エネ法の改正などに伴いできる限り省エネルギでプラントを運用したいという要求事項もある。これに対応する指標としては、例えば単位処理量(1m3)当たりの電力量(kwh)を表すエネルギ原単位があり、これが重要変数として表示されてもよい。
【0097】
また、下水処理プロセスで最も電力量を消費しているのは曝気と呼ばれる空気供給操作であり、下水中に存在する酸素量を表す溶存酸素濃度(DO濃度)は曝気に伴う電力量と直接関係するためDO濃度が重要変数として選択されてもよい。
【0098】
このように、プラント運用上、プラントオペレータが最も気を配っている重要な変数をプロセス重要変数リストには表示し、その診断上限値および診断下限値を設定しておく。プロセス重要変数は、通常監視しているプロセス変数の中の要素であることが多いため、その場合には、アラーム発報を行う警報上限値および警報下限値は既に設定されていることが多い。ここでは、プロセス重要変数が通常状態より少し悪化した場合に、その要因を発見することを目的として、警報上限値よりも小さい値で通常の変動範囲よりも少し大きい値として診断上下限値を設定しておく。
【0099】
そして、このプロセス重要変数リスト一覧の中で異常判定を行う変数を1つあるいは2つ程度選択できる様にしておく。ここで、例えば放流リン水質濃度を選択した場合、好ましくは表示画面が異常診断メイン画面60から異常診断メイン画面70に切り替わり、プロセス重要変数トレンドグラフに選択した変数のトレンドグラフが表示される。
【0100】
このプロセス重要変数トレンドグラフは、表示されているデータが上述の第1実施形態のQ統計量やT2統計量ではなく、実際の物理変数や管理指標であるという点以外は全く同様の形式で表示されている。
【0101】
従って、表示条件変更リンク部74による表示範囲の切り替えや、閾値(診断上限値および診断下限値)のマウスによるドラッグおよびドロップによる変更は、上述の第1実施形態の場合と同様に実施することができる。
【0102】
次に、プロセス重要変数トレンドグラフで示している選択したプロセス重要変数が状態変化判断基準設定部71Aで設定した閾値レベルを超えた場合には、状態変化要因候補変数表示部73にその要因となる候補変数名を要因である可能性の高い順に提示される。
【0103】
要因である可能性の高い候補変数名を表示するためには、多変量統計的プロセス監視手法による診断(ステップSB5〜SB7)を、図15に示すようにバックグラウンドで実施しておき、Q統計量やT2統計量の値に対する各プロセス変数(=測定変数+加工変数)の寄与量の大きい順に提示することができる。
【0104】
この時、正常であるか異常であるかの判断は、Q統計量やT2統計量ではなく選択したプロセス重要変数で実施しているので、Q統計量あるいはT2統計量の寄与量の中で自分自身(選択したプロセス重要変数)に相当するものを除いた中で、(1)両方の統計量の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から上記(1)あるいは上記(2)の基準で大きいものに列挙する、などを行えばよい。
【0105】
その他の方法としては、図13あるいは図14の状態変化要因候補変数表示部63、73を、Q統計量用のものとT2統計量用のものとの2つの領域に分けて、各々に対して寄与量の高い順に異常要因候補変数を列挙してもよい。
【0106】
また、その他の方法としては、バックグラウンドでQ統計量およびT2統計量での診断を別途行っておき、選択したプロセス重要変数で異常が検出された時に、Q統計量およびT2統計量でも同じタイミングで異常が検出されている場合のみ、異常要因変数候補の中から、現在判断基準としているプロセス重要変数を除いた中から要因変数候補変数を列挙してもよい。
【0107】
上記のように、本実施形態では、プロセスで生じる異常兆候をQ統計量やT2統計量と言う数学的(統計的)にしか意味を持たないプラントオペレータにとってわかりにくい指標ではなく、オペレータ自身が重要と認識している変数(重要変数)を異常兆候検出のトリガーとしている。
【0108】
従来のプロセス監視ではオペレータが重要と判断している変数を監視していたとしても、その変数で異常が現れた場合、オペレータ自身の経験や知識に基づく判断で要因を探す必要があったが、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、重要変数で異常が認識された場合に、その要因候補となる変数を確認することをオペレータに促すことができ、オペレータの判断を支援することができる。
【0109】
すなわち、本実施形態に係るプロセス状態監視システムによれば、Q統計量やT2統計量という非物理量である統計データではなくオペレータ自身が十分に良く認識している重要変数をトリガーとして異常検出を行うため、オペレータがストレスなく監視を行うことができる。
【0110】
また、プラントのオペレータが監視の際に最も気を配っている測定変数や管理指標に変化が現れた時、その変数の状態変化と同じタイミングで状態変化を生じている関連する変数を提示することができる。そのため、プラントオペレータが運転管理上特に重要視している変数で異常兆候が現れた場合に、その要因の推定を容易とすることができる。これにより、プラントオペレータが重要変数で生じている異常状態への対応を迅速に取ることができる。
【0111】
さらに、Q統計量やT2統計量による診断では、例えばセンサのメンテナンスや明らかな故障など従来のプラント監視では警報上限値および警報下限値などにより既に監視している様な明白な異常状態も全て異常として検出してしまう。これに対し、本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、プラントオペレータが本当に知りたい異常兆候のみを検出してその要因変数を探す効率を向上させることができる。
【0112】
次に、本発明の第3実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置は、異常検出を行うトリガーとなる診断用データが2つある場合に、その各々のデータを時系列データのトレンドグラフで表示するのではなく、2次元の軌跡として表示するとともに、異常判定の閾値を各々の診断用データに対する単純な閾値ではなく、複雑な形状の閾値で設定している点である。
【0113】
図16乃至図18に、本実施形態に係るプロセス状態監視装置において、表示部DYPに表示される異常診断メイン画面80、90、100の一例を示す。異常診断メイン画面80と上述の異常診断メイン画面60、70とは、状態変化検出トリガー情報表示部84、94、104と状態変化判断基準設定部82、92、102のみが異なっている。
【0114】
図16に示す異常診断メイン画面80は、状態変化検出トリガー情報表示部84として、Q統計量とT2統計量との2次元軌跡表示部を備えている。図17に示す異常診断メイン画面90は、状態変化検出トリガー情報表示部94として、Q統計量とロバストQ統計量の2次元軌跡表示部を備えている。図18に示す異常診断メイン画面100は、状態変化検出トリガー情報表示部104として、放流リン濃度とエネルギ原単位との2次元軌跡表示部を備えている。
【0115】
状態変化判断基準設定部82、92、102は、2つの診断用データの相関に対する閾値を設定できる様になっている。また、2つの診断用データの軌跡がある周期を持つ閉じた軌跡を描く場合には、図15に示した2重楕円のような閾値THA、THBを設定してもよい。
【0116】
図16ではこのような形状の判断閾値を入力するボックスを描いていないが、必要なパラメータを入力する様なボックスを設けてもよい。また、複雑な形状の閾値を設定する場合には、例えば図16に示した2重楕円THA、THBのようにマウス14等を操作して画面上で閾値を自由に描くことが可能であって、描かれた形状に対応する値が判断基準として反映されるように構成されてもよい。
【0117】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラントオペレータは上述の第1実施形態の場合のように2つのトレンドグラフを監視するのではなく、1つの画面で示される2次元軌跡で異常状態を監視することになる。そのため、プラントオペレータが一つの画面のみ注目していればよく、より監視が容易になる。さらに2つの診断用データのどちらのデータに異常が生じているのかを視覚的に容易に判断できるようになる。
【0118】
例えば異常診断メイン画面80では、2次元軌跡が紙面に向かって右方向に移動する場合には、横軸にとった診断用データの異常であり、2次元軌跡が紙面に向かって上方向に移動する場合には縦軸にとった診断用データの異常であり、2次元軌跡が紙面に向かって右上方向に移動する場合には両方の診断用データの異常であるという判断が視覚的に容易に可能となる。
【0119】
また、診断用データである統計量やプロセスの重要変数は、図16に示す様な閉じた軌跡を描く場合があり、このような場合には図16に示す様に単純に2つの各々の診断用データに対する閾値TH1、TH2ではなく、閉じた軌跡に沿って図16の楕円のような判断閾値THA、THBを設けて異常兆候の判断を行うことができる。これにより、異常兆候の診断精度が向上させることが可能となる。
【0120】
診断用データが閉じた軌跡を描く場合が想定される場合は、例えば以下の様なケースがある。下水処理プロセスなどでは、流入してくる下水が人間社会の日常生活を反映して日単位の周期的な変動を持っていることが多く、そのため、例えば放流リン濃度、流入量、放流量、風量というプロセス変数も日単位の周期変動をしていることが多い。これに伴い、これらの変数から合成されるQ統計量やT2統計量も結果的に周期的な変動をしていることも多い。このような場合には、診断データ毎に設定した閾値TH1、TH2による判断ではなく、閾値THA、THBで判断することができる。こうすることによって、よりタイトに異常兆候を判断できると同時に、それを視覚的にも判断できる。
【0121】
さらに、図17や図18に示す様に2つの診断用データが互いに相関を持っている場合がある。
【0122】
図17はQ統計量とロバストQ統計量という2つの診断データで異常兆候を検出する場合の例を示している。Q統計量とロバストQ統計量との違いは次の通りである。すなわち多変量統計的プロセス監視においてQ統計量を計算するための異常診断モデルを主成分分析によって作成する際、プラントの測定変数やそれから合成される加工変数に対してそのまま主成分分析をかけた主成分から合成した統計量がQ統計量である。ロバストQ統計量は、プラント測定変数に含まれるアウトライアなどの異常データを十分に取り除いた上で、主成分分析をかけた主成分から合成したQ統計量である。
【0123】
これらの2つのデータは同じQ統計量であるが、ロバストQ統計量では異常データを十分に取り除いて導出した主成分を用いて診断用モデルが作成されているため、異常診断を行う際、正常状態から少しでも乖離したデータが混入するとそれを異常として検出し、異常に対する感度が高くなる。ところが、単純なQ統計量ではもともとある程度異常データが混入している状況で導出した主成分から合成した統計量であるため、明確な異常で無い場合には異常を検出することが困難になる。
【0124】
一方、正常データが入力された場合は、これらの2つの量は同じQ統計量というものを計算しているためある程度似た値を持つことが期待でき、Q統計量とロバストQ統計量を2次元平面に表示すると正常状態であればある相関軸周りにその値が集中する。
【0125】
プラントに異常が発生した場合にはQ統計量とロバストQ統計量の相関関係が崩れるため、図17の異常診断メイン画面90示した様に相関軸に沿ってしきい値B1、B2を設定すれば高精度が診断を行える場合がある。
【0126】
同様にプロセス重要変数によって異常検出のトリガーをかける場合にも、2つのプロセス重要変数で判断したい場合には、図17と同じ様な判断ができる場合がある。図18はその例の一つであるが、プロセス重要変数として水質規制に関わる放流リン水質濃度と省エネルギ運用に関わるエネルギ原単位の2つを監視したい場合を想定している。
【0127】
この場合放流リン水質とエネルギ原単位は完全に独立ではなく、ある程度の相関を持つと考えられる。何故なら下水の流入水質あるいは流入負荷(流入量×流入水質)が高い場合には放流リン水質は悪化しやすく、エネルギ原単位も高くなる可能性が高いからである(エネルギ原単位は単位流量当たりのエネルギであるため流入量の変動にはあまり影響を受けないと考えられるが流入水質の変動には影響される)。従って、放流リン水質とエネルギ原単位にある程度の相関が認められる場合には、各々のデータに対するしきい値で判断するよりも図18の異常診断メイン画面100に示した様な相関軸に沿ったしきい値B3、B4で判断した方が異常検出の精度を向上させることができる。
【0128】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、2つの診断データで異常検出のトリガーをかける場合、オペレータが2つの画面を同時に監視する必要がなく、一つの画面で監視できる様になりより効率的に監視することができる。
【0129】
さらに、2つの診断データで異常検出を行う場合、2つの診断データが独立に変動するデータではなく、互いに相関があったり周期性を持ったりするような何らかの関係がある場合、異常判断の基準をより精密に行うことができ、結果としてプラントオペレータにより迅速にプラントの異常兆候を提示することが可能となる。
【0130】
次に、本発明の第4実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、異常診断メイン画面の状態変化検出トリガー情報表示部のみが上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置と異なっている。
【0131】
図19に本実施形態のプロセス状態監視装置における、異常診断メイン画面110の一例を示す。異常診断メイン画面110は、状態変化検出トリガー情報表示部112として、3つ以上のプロセス重要変数の値と閾値とを表示するプロセス重要変数レーダチャート表示部と、プロセス重要変数リスト113と、を有している。
【0132】
プロセス重要変数リスト113には、プラント運転員がプロセス運用上重要と考えているプロセスの測定変数あるいは測定変数から合成した管理指標などが表示されている。上述の第2実施形態の場合と同様のプロセス管理上重要なプロセス重要変数がリストアップされている。
【0133】
そして、このプロセス重要変数リスト一覧の中で異常判定を行う変数を3つ以上選択できる様にしておく。ここで、例えば放流リン水質濃度、放流窒素濃度、ASRT、エネルギ原単位、および、DO濃度の5つを選択した場合に、異常診断メイン画面110のプロセス重要変数レーダチャート112のように5つの変数についてのレーダチャートが表示される。
【0134】
プロセス重要変数レーダチャート112は、5つの各々のプロセス重要変数に対する診断上下限値が設定できるように構成されている。プロセス重要変数レーダチャート112は、5つの各々のプロセス重要変数の上限値ULを入力する入力ボックス112Uと、下限値LLを入力する入力ボックス112Lと、を備えている。入力ボックス112Uおよび入力ボックス112Lに値が入力されると、レーダチャートの表示が更新される。表示処理部18は、設定された上限値ULおよび下限値LLに応じて、プロセス重要変数をレーダチャート上にプロットする。
【0135】
プロセス重要変数レーダチャート112で表示している選択した5つのプロセス重要変数の中のいずれか一つ以上の変数が、状態変化判断基準設定部で設定した上限値ULおよび下限値LLを超えた場合には、例えば、状態変化要因候補変数表示部113にその要因となる候補変数名が要因である可能性の高い順に提示される。
【0136】
状態変化要因候補変数表示部113に候補変数名を表示する場合、上述の第2実施形態の場合と同様に、(1)両方の統計量(Q統計量およびT2統計量)の寄与量の総和の大きいもの順に列挙する、(2)各統計量の寄与量の大きいもの順に順位をつけて順位の総和の大きいもの順に列挙する、あるいは、(3)各統計量の寄与量が通常時の寄与量の値の分散を基準として例えば2σあるいは3σ以上離れている値を示す変数のみを抽出し、その中から上記(1)あるいは上記(2)の基準で大きいものに列挙する、などを行えばよい。
【0137】
なお、本実施例ではプロセス重要変数が複3つ以上の複数ある場合についての作用を示したが、診断用データがQ統計量やT2統計量などの統計量である場合にも、これらの統計量が3つ以上存在する場合には本実施例と同様の表示を行うことができる。
【0138】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、3つ以上の診断データや重要変数によって異常検出の判断を行う場合、オペレータが複数の画面を同時に監視する必要がなく、一つの画面で監視できる様になりより効率的な監視が可能となる。
【0139】
次に、本発明の第5実施形態に係るプロセス状態監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態では、表示処理部18は、異常診断メイン画面AMと、異常診断サブ画面ASとを並べて表示するように構成されている。例えば、異常診断メイン画面AMとして上述の第1実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面40を表示し、異常診断サブ画面ASとして、上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面60を表示させてもよい。
【0140】
図20に、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとの並列表示の一例を示す。異常診断メイン画面AMは、上述の第2実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面60と同様の構成である。異常診断サブ画面ASは、Q統計量のトレンドグラフとT2統計量のトレンドグラフと、拡大表示ボタン200と、を含む。
【0141】
プロセスオペレータがマウス14等を操作して拡大表示ボタン200をクリックすると、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとの表示内容が入れ替わる。なお、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとには、上述の第1乃至第4実施形態に係るプロセス状態監視装置の異常診断メイン画面を組み合わせて構成してもよい。
【0142】
上記プロセス状態監視装置において、例えば、プロセス重要変数による異常検出を異常診断メイン画面AMとした場合、これによって異常が検出された場合には、例えば状態変化要因候補変数表示部で異常要因変数候補を赤色で表示しておく。
【0143】
一方、異常診断サブ画面ASで表示しているQ統計量やT2統計量で異常が検出された場合には、状態変化要因候補変数表示部の異常要因変数候補を黄色(異常要因変数候補を示す色と異なる色であればよい)で表示する様にしておく。
【0144】
プロセス重要変数による異常検出と、Q統計量およびT2統計量による異常検出との画面の並列表示については、プロセスオペレータが最も関心を持って監視している方の画面を異常診断メイン画面AMとして表示部DYPの中心に表示し、もう一方の画面を異常診断サブ画面ASとして、例えばディスプレイの隅(右上、左上、左下、右下など)に小さく表示してもよい。
【0145】
また、異常診断サブ画面ASに拡大表示ボタン200を設け、これをマウス14などの入力手段でクリックすると、異常診断サブ画面ASが大きくなり2つの画面のバランスを調整することを可能にしてもよい。この場合、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとを左右あるいは上下に並列表示できるように切り換えるように構成されていることが好ましい。
【0146】
さらに、異常診断メイン画面AMと異常診断サブ画面ASとは固定ではなく、プラントオペレータが異常診断メイン画面AMとしたいものと、異常診断サブ画面ASとしたいものとを適宜選択できるようになっていることが好ましい。
【0147】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラント運転員が特に重点的に監視したい重要変数で生じる異常状態を監視できると同時に、同じプラントで生じうる何らかの異常兆候も同時にプラント運転員に提示することができ。
【0148】
逆に、プラントで生じうる何らかの異常兆候を常時監視すると同時に、プラント運転員が気にしている重要変数で異常が生じていないかを確認しながらプラントの運転管理が可能となる。
【0149】
いずれにしても、プラントで生じる異常情報を、重要さに応じて識別しながら監視することが可能になり、プラント運転員は異常兆候の重要さに応じて臨機応変に対応することが可能になる。
【0150】
次に、本発明の第6実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。図21に、本実施形態に係るプロセス監視装置の異常診断メイン画面120の一例を示す。異常診断メイン画面120は、Q統計量あるいはT2統計量と、重要変数とを一つのトレンドグラフの上下に並列表示するように構成されている。
【0151】
例えば、主に監視したいもの(例えば重要プロセス変数)を通常のトレンドグラフとして表示し、サブで監視しているもの(例えばQ統計量あるいはT2統計量)を上下反転させた上側からのトレンドグラフで表示してもよい。異常の検出に用いる統計量やプロセス重要変数の数が、1乃至2個に限定されている場合には、1つのグラフ描画領域内で時間軸に対して反転するように、上下に並列表示することも有効である。
【0152】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置では、プロセス重要変数と、Q統計量やT2統計量とのいずれかで異常が検出された場合に、異常要因候補変数を列挙するものである。この場合に、プロセス重要変数で検出される異常と、Q統計量およびT2統計量で検出される異常とを識別できるようにしておくことが好ましい。
【0153】
例えば、プロセス重要変数のトレンドグラフ及び閾値YHXを第1色で表示し、Q統計量あるいはT2統計量のトレンドグラフおよび閾値THYを第1色と異なる第2色で表示して、状態変化要因候補変数表示部123に表示される候補変数を、プロセス重要変数により検出されたものを第1色で表示し、Q統計量あるいはT2統計量により検出されたものを第2色で表示するようにしてもよい。
【0154】
本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プラント運転員が特に重点的に監視したい重要変数で生じる異常状態を監視できると同時に、同じプラントで生じうる何らかの異常兆候も同時にプラント運転員に提示することができ。
【0155】
逆に、プラントで生じうる何らかの異常兆候を常時監視すると同時に、プラント運転員が気にしている重要変数で異常が生じていないかを確認しながらプラントの運転管理が可能となる。
【0156】
いずれにしても、プラントで生じる異常情報を、重要さに応じて識別しながら監視することが可能になり、プラント運転員は異常兆候の重要さに応じて臨機応変に対応することが可能になる。
【0157】
次に、本発明の第7実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。図22に、本実施形態に係るプロセス監視装置の異常診断メイン画面130の一例を示す。異常診断メイン画面130は、モデル選択部131と、状態変化判断基準設定部132と、所定の測定値のトレンドグラフと統計量の異常とを表示する状態変化検出トリガー情報表示部133と、表示条件変更リンク部135と、過去異常リンク部136と、状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部137と、候補変数相関表示リンク部138と、を備えている。
【0158】
状態変化判断基準設定部132は、Q統計量閾値を入力する入力ボックス132A、T2統計量閾値を入力する入力ボックス132Bと、閾値変更ボタン132Cと、を備えている。ユーザは、入力ボックス132Aおよび入力ボックス132Bに値を入力し、マウス14等により閾値変更ボタン132Cを選択すると、Q統計量閾値とT2統計量閾値とはユーザが入力した値へ変更される。
【0159】
本実施形態では、水質の測定値の時系列の変動を示すトレンドグラフ、測定値の基準値ライン、および統計量異常を示すプロットが共通のグラフ領域に表示されている。統計量異常を示すプロットは、Q統計量あるいはT2統計量が閾値を超えた時刻においてトレンドグラフ上に表示される。グラフ領域の周囲には、現在の水質測定値の値、水質基準値、Q統計量の値、および、T2統計量の値が表示されている。
【0160】
図22では、異常検出時点Tにおける水質は0.5mg/L未満であり、水質基準値1.0mg/Lを下回っている。すなわち、図22に示す状態変化検出トリガー情報表示部133では、水質が悪化する前に他の関連する項目が悪化したことにより、水質悪化の兆候を検出することが可能である。
【0161】
本実施形態に係るプロセス監視装置によれば、このように、プロセス状態が悪化する前にその兆候を検出できることになる。また、状態変化検出トリガー情報表示部133に、例えばユーザが選択した測定値と統計値とを同時に提示することで、プラント運転管理に必要な項目を監視しつつ、効率的に異常を検出することができる。
【0162】
図23に、状態変化検出トリガー情報表示部133における測定値のトレンドグラフ表示の他の例を示す。図23では、測定値の予測値を提示している。ここで監視したい項目の予測値は、例えば、抽出された要因候補の状態量に基づいて過去の類似状況のデータから抽出して予測値としてもよい。これによりユーザの迅速な異常対応が可能になり、プラント運転の安全性を向上させることができる。
【0163】
図24に、状態変化検出トリガー情報表示部133における測定値のトレンドグラフ表示の他の例をさらに示す。図24では、類似状況をデータから複数の値を抽出して、予測値の最大値と最小値をおのおの上限と下限として提示している。このように測定値の予測値を表示した場合であっても、プラント運転の安全性を向上させることができる。
【0164】
図25に、異常発生時の候補変数トレンド表示画面137Aの一例を示す。候補変数トレンド表示画面137Aは、異常の候補変数のトレンドグラフが、寄与量の高い順に表示される。例えば、寄与量が高い順に表示部DYPの上部から候補変数のトレンドグラフG1が複数並んで表示される。図25では、寄与量の高い順に、2-2無酸素ORPのトレンドグラフと、流入量のトレンドグラフと、放流リン濃度のトレンドグラフとの3つのグラフが、表示部DYPの上部から下部へ並んで表示されている。この場合、候補変数の寄与量が更新されると、トレンドグラフG1の並び順も更新される。
【0165】
ユーザは、異常診断メイン画面130の状態変化検出トリガー情報表示部133から異常が発生したことを知ると、候補変数トレンド表示リンク部137をマウス14等で選択して、候補変数トレンド表示画面137Aを表示させることができる。
【0166】
このように、本実施形態では、異常診断メイン画面130で、異常の検出(異常アラーム)をするだけでなく、候補変数トレンド表示画面137Aから要因候補の提示(要因ガイダンス)が可能になる。ユーザは、抽出された要因候補の刻々の測定変数の変化を監視して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0167】
図26に、候補変数トレンド表示画面の他の例を示す。図25に示す候補変数トレンド表示画面137では、抽出された要因候補をその寄与量が大きい順に表示するため、順位の入れ替わりによって表示される項目が更新される。
【0168】
これに対し、候補変数トレンド表示画面137Bは、寄与量の大きさにより更新されずに継続して所定の要因候補変数のトレンドグラフG2を表示するように構成されている。候補変数トレンド表示画面137Bは、例えば、異常が検出されたときの寄与量が最も大きい要因候補変数のトレンドグラフG2と、継続要因変数の他の候補変数の中から寄与量が大きい要因候補変数のトレンドグラフG1と、を表示する。トレンドグラフG2は、継続要因変数のトレンドグラフとして次の時刻も表示される。
【0169】
このように、寄与量の大きさにより更新されずに継続して所定の要因候補変数のトレンドグラフG2を表示すると、寄与量の大きさの順位の入れ替わりによって表示される項目が更新されることがなくなり、トレンドグラフG2の表示が継続される。
【0170】
したがって、ユーザは、寄与量の大きさの順位の入れ替わりに関わらず、継続要因変数を監視することができ、抽出された要因候補の刻々の測定変数の変化を観察して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0171】
図27に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンド表示画面137Cは、図26に示す候補変数トレンド表示画面137Bの表示画面に、継続要因変数のトレンドグラフG2を表示させる設定を行う継続表示ボタンBTと、寄与量が大きい要因であることを表示する印MKと、がさらに表示される。
【0172】
プラント運転員は、候補変数トレンド表示画面137Cにおいて、継続表示ボタンBTをマウス14等で選択することによって、要因候補変数のトレンドグラフG1を継続候補変数のトレンドグラフG2として設定することができる。また、トレンドグラフG1、G2の近傍には、表示されている候補変数について寄与量が大きいか否かを示す印MKが表示されるため、ユーザは、印MKの有無から注目すべき項目か否かを判断することができる。
【0173】
図28に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンド表示画面137Dは、あらかじめ設定された項目を固定変数とし、固定変数のトレンドグラフG3と、要因候補変数のトレンドグラフG1とを表示させている。
【0174】
固定変数は、プロセス状態監視装置が監視するプロセスやプラントに応じて、あらかじめ設定された項目である。あらかじめ注目すべき項目が特定されているプロセスおよびプラントを監視するプロセス状態監視装置では、プラント運転員は、候補変数トレンド表示画面137Dにおいて、継続して表示させる項目を選択することなく、注目すべき項目のトレンドグラフG3を表示させることができる。また、表示されている候補変数について寄与量が大きいか否かを示す印MKが表示されるため、プラント運転員は、印MKの有無から注目すべき項目か否かを判断することができる。
【0175】
図29に、候補変数トレンド表示画面の他の例をさらに示す。候補変数トレンドグラフ137Eは、ある系列に異常が発生した場合に、連係する系列の測定変数も要因候補として表示させる。
【0176】
例えば、候補変数トレンド表示画面137Eでは、2−2系列に異常は生じた場合、2−2系列に関連する2−1系列の測定値も連係要因候補としてトレンドグラフを表示させている。候補変数トレンド表示画面137Eは、2−2系列の要因候補(2-2無酸素ORG、放流リン濃度、2-2返送汚泥濃度)の3つのトレンドグラフG1と、2−1系列の連係要因候補(2-1無酸素ORG、2-1返送汚泥濃度)の2つのトレンドグラフG4とを備えている。
【0177】
このように、連係して動作している系列等の関連項目を、異常が発生した系列の候補変数と同時に監視することができるようにすることによって、異常の検出(異常アラーム)をするだけでなく、候補変数トレンド表示画面137Eから要因候補および連係要因候補の提示(要因ガイダンス)が可能になる。ユーザは、抽出された要因候補および連係要因候補の刻々の測定変数の変化を監視して状況を把握し,異常を取り除く対策を実施することができる。
【0178】
次に、本発明の第8実施形態に係るプロセス監視装置について図面を参照して説明する。本実施形態に係るプロセス監視装置の演算部16では、図30に示す診断モデル構築部16Aに加えて、要因分析部16Bと、項目入力部16Cと、を備えている。
【0179】
診断モデル構築部16Aは、データベース20から測定変数を取得し、主成分分析の共分散行列を演算する。図31に、共分散行列の一例をとして行列P(i、j)を示す。共分散行列Pは、主成分分析による主成分が20成分、要因数が25要因の例である。
【0180】
項目入力部16Cは、例えば、プロセス異常が発生した際に、異常が発生した測定変数や、統計量の異常に対する寄与量が大きい測定変数がプロセス異常の監視項目として入力されるように構成されていてもよく、ユーザがマウス14やキーボード12等の入力手段を操作することにより監視する必要性が高い項目を監視項目として入力することが可能に構成されてもよい。ここで入力される監視項目としての測定変数は、1つであっても複数であっても良い。
【0181】
要因分析部16Bには、診断モデル構築部16Aで構築された主成分分析の共分散行列Pと、項目入力部16Cで入力された監視項目とが供給され、分析結果を出力する。要因分析部16Bから出力された分析結果は、表示処理部18へ出力される。表示処理部18は、分析結果を受信して、分析結果を表示部DYPに表示させる信号を表示部DYPへ出力する。
【0182】
以下に、要因分析部16Bの作用の一例について説明する。まず、診断モデル構築部16Aで演算された主成分分析の共分散行列Pが、例えば図31に示す行列P(i、j)であるとする。また、項目入力部16Cで与えられたプロセス異常の項目は、第k番目の項目であるとする。
【0183】
このとき要因分析部16Bにおいて、第k番目に関する分析結果は、例えば以下のように演算される。
【0184】
まずP(i、k) (i=1、・・・、20)が、例えば25項目の平均的な値である1/25より大きい、すなわち
P(i、k) > 1/25
である成分を、第1主成分〜第20主成分の中から抽出する。例えばi=2、5、8、14が選択されたとする。この第2、5、8、14の4つの成分の値から、新たに第k番目に関する有効成分ベクトルP’を、4成分の合成平均として次のように演算する。
【0185】
P’=[p’(1)、p’(2)、・・・、p’(k)、・・・、p’(25)]
p’(1)=1/4×{P(2、1)+P(5、1)+P(8、1)+P(14、1)}
p’(2)=1/4×{P(2、2)+P(5、2)+P(8、2)+P(14、2)}
:
p’(k)=1/4×{P(2、k)+P(5、k)+P(8、k)+P(14、k)}
:
p’(25)=1/4×{P(2、25)+P(5、25)+P(8、25)+P(14、25)}
上記有効成分ベクトルP’の成分の値が大きい項目が、検出したいプロセス異常の項目、第k番目に関連が強い項目である。要因分析部16Bは、上記の有効成分ベクトルP’を分析結果として出力する。表示処理部18は、有効成分ベクトルP’が分析結果として供給されると、分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べたグラフ表示させる信号を表示部DYPへ出力する。
【0186】
図33に、要因分析結果の一表示例を示す。図33では、検出したいプロセス異常の項目(第k番目)を放流リン濃度として要因分析した場合の分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べた円グラフG1を表示している。この円グラフG1には、主成分の値のプロットと、主成分名と、が表示されている。ここでは、2系分配流入量や1号無酸素ORP、1号PAC注入量、2号無酸素ORP、2号PAC注入量が、放流リン濃度の異常との関連が強いことを示している。
【0187】
ここで図32に示すように、平均値、ここでは1/25以下の項目の値を表示しないことで、値が大きい、すなわち関連がより強い項目を容易に認知することができる。
【0188】
図33に、演算部16の構成の他の例を示す。図33に示す場合では、演算部16は、項目並び替え部16Dと、項目順位入力部16Eと、をさらに備えている。項目順位入力部16Eには、プラント運転員がキーボード12やマウス14等の入力手段を操作することによって、項目の並び替え順が入力される。例えば、項目順位入力部16Eには、予め設定された重要な管理項目の順や、値の大きい項目順や、その他の任意の順位が入力される。
【0189】
項目並び替え部16Dは、項目順位入力部16Eから供給された項目順に従って、有効成分ベクトルP’の成分の順位を並び替えて、分析結果として出力する。項目並び替え部16Dから出力された分析結果は、表示処理部18へ供給される。表示処理部18は、有効成分ベクトルP’が分析結果として供給されると、分析結果を主成分のグラフとして表示部DYPの異常診断画面に表示させる。
【0190】
図34に、項目順を並び変えた分析結果を表示させた場合の表示例を示す。図34では、一例として、値が大きい順に項目を並び替えた分析結果に基づいて、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べた円グラフG2を表示している。このように、値が大きい順に項目を並び替えて分析結果を表示させると、2系分配流入量や1号無酸素ORP、1号PAC注入量、2号無酸素ORP、2号PAC注入量が、放流リン濃度の異常との関連が強いことをより容易に判断することができる。
【0191】
従来の監視制御システムでは、プラントの運転員自身の判断で選択したプロセス変数の動き(トレンド)を監視していたが、上記の本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プロセスの状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数を運転員に助言することができ、運転員はプラントの状態の変化に気づくことが容易になる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期に運転員が認識することができ、運転員がプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。
【0192】
また、第8実施形態に係るプロセス状態監視装置では、検出したいプロセス異常の項目に対して関連が強い要因項目が一目で判別できるようになる。これにより要因が抽出されたとき、運転員が検出したいプロセス異常の項目に異常が生じる可能性を予測することが容易になる。
【0193】
また、運転員が分析結果を見ることにより、診断モデルを用いて検出したいプロセス異常が検出できるかどうかが、容易に判断できるようになる。
【0194】
その結果、プラントの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数の運転員によるプラント運転や複数の地域に分散するプラント群の集中監視による運用、あるいは、非熟練の運転員によるプラント運転などが可能になる。
【0195】
なお、例えば、上記第8実施形態に係るプロセス状態監視装置は、演算部16が項目入力部16Cを備えていたが、運転員が監視すべき重要な測定変数が監視対象等に応じて予め設定されている場合には、項目入力部16Cは省略してもよい。その場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0196】
また、上記実施形態に係るプロセス状態監視装置は、演算部が項目順位入力部16Eを備えていたが、予め分析結果の並び順が監視対象等に応じて設定されている場合には、項目順位入力部16Eを省略してもよい。その場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0197】
上記のように、本実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、プロセスの状態変化を生じさせている監視すべきプロセス変数をオペレータに助言することができ、オペレータがプラントの状態の変化に気づきやすくなる。これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、オペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができる。その結果、プラントの運用を効率的に行うことができるようになり、少人数のオペレータによるプラント運転や複数の地域に分散するプラント群の集中監視による運用、あるいは、非熟練のオペレータによるプラント運転などが可能になる。
【0198】
すなわち、上記第1実施形態乃至第8実施形態に係るプロセス状態監視装置によれば、従来のトレンドグラフと呼ばれるプロセス変数の時系列データによる監視方法を踏襲しながら、プラントオペレータに数百〜数千項目にも及ぶプロセス変数のどの項目を重点的に監視すれば良いかをオンラインで支援し、ユーザが監視対象の異常診断を迅速に行うことを支援することができる。
【0199】
これによって、プラントで生じる異常兆候を早期にオペレータが認識することができ、従来の監視制御システムの枠組みを維持しながらオペレータがプラントの状態変化に対して素早く対策をとることができるようになる。
【0200】
上記第1実施形態乃至第8実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。いずれの場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0201】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0202】
DYP…表示部、TH1…Q統計量閾値、TH2…T2統計量閾値、THA.THB…判断閾値、UL…上限値、LL…下限値、AM…異常診断メイン画面、AS…異常診断サブ画面、10…ヒューマンマシンインタフェース、12…キーボード、14…マウス、16…演算部、18…表示処理部、20…データベース、30…監視対象、40…異常診断メイン画面、41…モデル選択部、42…状態変化判断基準設定部、42A、42B…入力ボックス、43…状態変化要因候補変数表示部、44、45…状態変化検出トリガー情報表示部、46…表示条件変更リンク部、46A…変更画面、47…過去異常リンク部、48…状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部、49…候補変数相関表示リンク部、G1、G2…グラフ、16A…診断モデル構築部、16B…要因分析部、16C…項目入力部、16D…項目並び替え部、16E…項目順位入力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象から取得した2以上の測定変数から診断用データを演算し、前記診断用データから前記監視対象の異常を検出するように構成された演算部と、
前記診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部で状態変化を検出するための判断基準を設定する状態変化判断基準設定部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部で設定された判断基準とによりプロセスの異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する状態変化要因候補変数表示部と、を備えた異常診断メイン画面を表示させるための表示データを生成する表示処理部と、を備えたプロセス状態変化監視装置。
【請求項2】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化要因候補変数表示部に表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部をさらに備え、
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面を表示させる表示データを生成するように構成されているプロセス状態変化監視装置。
【請求項3】
前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部の判断基準によりプロセスの異常が検出された場合に、前記演算部は前記要因候補変数を要因である可能性の高い順にソートするように構成され、前記表示処理部は要因である可能性の高い順に前記要因候補変数を表示する表示データを生成するように構成されている請求1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記状態変化検出トリガー情報表示部で表示する診断用データとして用いる統計量を多変量解析により演算する手段を備え、
前記表示処理部は、前記状態変化検出トリガー情報表示部で前記統計量を時系列表示させる表示データを生成するように構成されている請求項1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項5】
前記診断用データは、前記測定変数、あるいは、測定変数から生成された変数である請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項6】
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記診断用データのトレンドグラフを含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のプロセス状態監視装置。
【請求項7】
前記診断用データは第1データと第2データとを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記第1データと前記第2データとの2次元平面おけるプロットの時間的な動きを軌跡で表示する2次元軌跡部を備える請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項8】
ユーザが操作する操作手段をさらに備え、
前記演算部は、ユーザが前記操作手段を操作して前記2次元軌跡部上に描画した判断基準を設定可能に構成されている請求項7記載のプロセス状態監視装置。
【請求項9】
前記診断用データは、3種類以上のデータを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記3種類以上のデータをプロットしたレーダチャートを備える請求項1記載のプロセス監視装置。
【請求項10】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化要因候補変数表示部に表示された少なくとも2つの状態変化要因候補変数の散布図を表示する命令を受け付ける候補変数相関表示リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記候補変数相関表示リンク部に命令が入力された場合に、前記少なくとも2つの状態変化要因候補変数の散布図を表示させるように構成されている請求項1記載のプロセス監視装置。
【請求項11】
前記異常診断メイン画面は、過去に検出された異常の情報を所定範囲にわたって表示する命令を受け付ける過去異常表示リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記過去異常表示リンク部に命令が入力された場合に、過去に検出された異常の情報を表示するように構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項12】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データの表示期間を変更する画面を表示させる表示条件変更リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記表示条件変更リンク部に命令が入力された場合に、表示条件変更画面を表示するように構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項13】
ユーザが操作する操作手段をさらに備え、
前記演算部は、前記状態変化判断基準設定部で診断データに対する閾値を前記操作手段によるドラッグおよびドロップすることにより設定可能に構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項14】
前記表示処理部は、前記異常診断メイン画面と並列して異常診断サブ画面をさらに表示する表示データを生成するように構成され、
前記異常診断サブ画面は、前記異常診断メイン画面よりも小さく表示される請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項15】
前記診断データは、第1データと第2データとを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、時間軸に対して互いに反転されるように表示された、前記第1データのトレンドグラフと、前記第2データのトレンドグラフとを備える請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項16】
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記測定変数のトレンドグラフと、前記診断用データによる異常検出を提示するプロットとを備え、前記診断用データによる異常が検出された場合、前記プロットが前記測定変数のトレンドグラフ上に表示されるように構成されている、請求項1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項17】
前記演算部は、過去に検出された異常の情報から前記測定変数のトレンドグラフの予測値を演算し、前記表示処理部は前記予測値を表示する表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項18】
前記演算部は、過去に検出された異常の情報から、異常発生時の前記測定変数の最大値および最小値を演算し、前記表示処理部は前記最大値を上限値とし前記最小値を下限値とする予測値を表示する表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項19】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項20】
前記表示処理部は、前記複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフの中の1以上のトレンドグラフを、異常に対する寄与量の大きさに関わらず継続して表示させる表示データを生成するように構成されている請求項19記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項21】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、予め設定された変数のトレンドグラフと、異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフと、を表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項22】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、前記監視対象の異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフと、前記監視対象と連係する系列の前記複数の状態変化要因候補変数に対応する連係候補変数のトレンドグラフと、を表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項23】
監視対象から取得した複数の測定変数の値が記録される記録手段と、
前記複数の測定変数間の相関から診断モデルを演算する診断モデル構築部と、入力された測定変数の項目と関連の大きい成分を前記診断モデルから抽出して分析結果を出力する要因分析部と、を備えた演算部と、
前記分析結果が入力され、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べたグラフを表示させる信号を出力する表示処理部と、を備えたプロセス状態監視装置。
【請求項24】
前記演算部は、監視項目とする測定変数を前記要因分析部へ入力可能とする項目入力部をさらに備えた請求項23記載のプロセス状態監視装置。
【請求項25】
前記演算部は、前記要因分析部での分析結果の成分を並び替えて前記表示処理部へ出力する項目並び替え部をさらに備える請求項23記載のプロセス状態監視装置。
【請求項26】
前記演算部は、前記要因分析部での分析結果の並び順を前記項目並び替え部へ入力可能とする項目順位入力部をさらに備える請求項25記載のプロセス状態監視装置。
【請求項1】
監視対象から取得した2以上の測定変数から診断用データを演算し、前記診断用データから前記監視対象の異常を検出するように構成された演算部と、
前記診断用データを表示する状態変化検出トリガー情報表示部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部で状態変化を検出するための判断基準を設定する状態変化判断基準設定部と、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部で設定された判断基準とによりプロセスの異常が検出された場合に、その要因となる要因候補変数の変数名を列挙する状態変化要因候補変数表示部と、を備えた異常診断メイン画面を表示させるための表示データを生成する表示処理部と、を備えたプロセス状態変化監視装置。
【請求項2】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化要因候補変数表示部に表示された少なくとも一つ以上の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示するための命令を受け付ける状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部をさらに備え、
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面を表示させる表示データを生成するように構成されているプロセス状態変化監視装置。
【請求項3】
前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データと前記状態変化判断基準設定部の判断基準によりプロセスの異常が検出された場合に、前記演算部は前記要因候補変数を要因である可能性の高い順にソートするように構成され、前記表示処理部は要因である可能性の高い順に前記要因候補変数を表示する表示データを生成するように構成されている請求1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記状態変化検出トリガー情報表示部で表示する診断用データとして用いる統計量を多変量解析により演算する手段を備え、
前記表示処理部は、前記状態変化検出トリガー情報表示部で前記統計量を時系列表示させる表示データを生成するように構成されている請求項1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項5】
前記診断用データは、前記測定変数、あるいは、測定変数から生成された変数である請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項6】
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記診断用データのトレンドグラフを含む請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のプロセス状態監視装置。
【請求項7】
前記診断用データは第1データと第2データとを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記第1データと前記第2データとの2次元平面おけるプロットの時間的な動きを軌跡で表示する2次元軌跡部を備える請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項8】
ユーザが操作する操作手段をさらに備え、
前記演算部は、ユーザが前記操作手段を操作して前記2次元軌跡部上に描画した判断基準を設定可能に構成されている請求項7記載のプロセス状態監視装置。
【請求項9】
前記診断用データは、3種類以上のデータを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記3種類以上のデータをプロットしたレーダチャートを備える請求項1記載のプロセス監視装置。
【請求項10】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化要因候補変数表示部に表示された少なくとも2つの状態変化要因候補変数の散布図を表示する命令を受け付ける候補変数相関表示リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記候補変数相関表示リンク部に命令が入力された場合に、前記少なくとも2つの状態変化要因候補変数の散布図を表示させるように構成されている請求項1記載のプロセス監視装置。
【請求項11】
前記異常診断メイン画面は、過去に検出された異常の情報を所定範囲にわたって表示する命令を受け付ける過去異常表示リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記過去異常表示リンク部に命令が入力された場合に、過去に検出された異常の情報を表示するように構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項12】
前記異常診断メイン画面は、前記状態変化検出トリガー情報表示部の診断用データの表示期間を変更する画面を表示させる表示条件変更リンク部を備え、
前記表示処理部は、前記表示条件変更リンク部に命令が入力された場合に、表示条件変更画面を表示するように構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項13】
ユーザが操作する操作手段をさらに備え、
前記演算部は、前記状態変化判断基準設定部で診断データに対する閾値を前記操作手段によるドラッグおよびドロップすることにより設定可能に構成されている請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項14】
前記表示処理部は、前記異常診断メイン画面と並列して異常診断サブ画面をさらに表示する表示データを生成するように構成され、
前記異常診断サブ画面は、前記異常診断メイン画面よりも小さく表示される請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項15】
前記診断データは、第1データと第2データとを含み、
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、時間軸に対して互いに反転されるように表示された、前記第1データのトレンドグラフと、前記第2データのトレンドグラフとを備える請求項1記載のプロセス状態監視装置。
【請求項16】
前記状態変化検出トリガー情報表示部は、前記測定変数のトレンドグラフと、前記診断用データによる異常検出を提示するプロットとを備え、前記診断用データによる異常が検出された場合、前記プロットが前記測定変数のトレンドグラフ上に表示されるように構成されている、請求項1記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項17】
前記演算部は、過去に検出された異常の情報から前記測定変数のトレンドグラフの予測値を演算し、前記表示処理部は前記予測値を表示する表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項18】
前記演算部は、過去に検出された異常の情報から、異常発生時の前記測定変数の最大値および最小値を演算し、前記表示処理部は前記最大値を上限値とし前記最小値を下限値とする予測値を表示する表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項19】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフを表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項20】
前記表示処理部は、前記複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフの中の1以上のトレンドグラフを、異常に対する寄与量の大きさに関わらず継続して表示させる表示データを生成するように構成されている請求項19記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項21】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、予め設定された変数のトレンドグラフと、異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフと、を表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項22】
前記表示処理部は、前記状態変化要因変数トレンドグラフ表示リンク部に命令が入力された場合に、前記監視対象の異常に対する寄与量が大きい順に複数の状態変化要因候補変数のトレンドグラフと、前記監視対象と連係する系列の前記複数の状態変化要因候補変数に対応する連係候補変数のトレンドグラフと、を表示する状態変化要因候補変数トレンド表示画面をさらに表示させる表示データを生成するように構成されている請求項16記載のプロセス状態変化監視装置。
【請求項23】
監視対象から取得した複数の測定変数の値が記録される記録手段と、
前記複数の測定変数間の相関から診断モデルを演算する診断モデル構築部と、入力された測定変数の項目と関連の大きい成分を前記診断モデルから抽出して分析結果を出力する要因分析部と、を備えた演算部と、
前記分析結果が入力され、半径方向を成分値として円周方向に複数の成分のプロットを並べたグラフを表示させる信号を出力する表示処理部と、を備えたプロセス状態監視装置。
【請求項24】
前記演算部は、監視項目とする測定変数を前記要因分析部へ入力可能とする項目入力部をさらに備えた請求項23記載のプロセス状態監視装置。
【請求項25】
前記演算部は、前記要因分析部での分析結果の成分を並び替えて前記表示処理部へ出力する項目並び替え部をさらに備える請求項23記載のプロセス状態監視装置。
【請求項26】
前記演算部は、前記要因分析部での分析結果の並び順を前記項目並び替え部へ入力可能とする項目順位入力部をさらに備える請求項25記載のプロセス状態監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2012−138044(P2012−138044A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291645(P2010−291645)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年 6月30日 社団法人日本下水道協会発行の「第47回下水道研究発表会講演集」に発表 平成22年10月15日 環境システム計測制御学会発行の「環境システム計測制御学会誌 第15巻2/3号」に発表
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年 6月30日 社団法人日本下水道協会発行の「第47回下水道研究発表会講演集」に発表 平成22年10月15日 環境システム計測制御学会発行の「環境システム計測制御学会誌 第15巻2/3号」に発表
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【Fターム(参考)】
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