説明

プロセッサおよび電子内視鏡システム

【課題】心臓の拍動によるぶれがない精細な静止画像を術者等の撮像指示に対して遅れることなく外部に出力することができる電子内視鏡用プロセッサを提供すること。
【解決手段】電子内視鏡用プロセッサは、電子内視鏡が少なくとも電気的に接続される電子内視鏡用プロセッサであって、心電図波形を測定する測定手段と、測定手段により測定された心電図波形に基づいて、画像生成可能期間を設定する期間設定手段と、を有し、期間設定手段により設定された画像生成可能期間内に、電子内視鏡から出力された画像信号に基づいて静止画像を生成する画像処理手段と、を有する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子内視鏡によって撮像された生体組織に関する画像信号に基づき静止画像を生成して外部に出力するプロセッサおよび該プロセッサを備えた電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者の体腔内の部位を観察、治療するため、電子内視鏡システムが広く知られ実用に供されている。このような電子内視鏡システムは、例えば、体腔内を撮像するための電子内視鏡、電子内視鏡により取得された撮像信号に画像処理を施すプロセッサ、プロセッサにより処理され生成されたビデオ信号を表示するモニタ等から構成されている。
【0003】
電子内視鏡で体腔内を撮像する場合、心臓の拍動によって生体組織が振動し、撮像画像がぶれてしまうといった問題点が指摘されている。この問題点を解決する一例として、以下の特許文献1に記載の構成が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−290778号公報
【0005】
特許文献1に記載の内視鏡装置によれば、電子内視鏡によって複数回同一部位に対して撮像を行う。そして、プロセッサ内において、該内視鏡により撮像された複数の画像を所定の条件に従って重畳する等のぶれを除去する画像処理を施して一枚の静止画像を生成している。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の構成では、一枚の画像を表示させるために複数回の撮像が必要とされ、さらに、画像処理においてぶれを除去する特殊な処理が必要とされる。従って、画像処理が煩雑になってしまうといった問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、心臓の拍動によるぶれがない精細な静止画像を簡易な画像処理によって生成することができる電子内視鏡用プロセッサ、および該プロセッサを備える電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る電子内視鏡用プロセッサは、電子内視鏡が少なくとも電気的に接続される電子内視鏡用プロセッサであって、心電図波形を測定する測定手段と、測定手段により測定された心電図波形に基づいて、画像生成可能期間を設定する期間設定手段と、を有し、期間設定手段により設定された画像生成可能期間内に、電子内視鏡から出力された画像信号に基づいて静止画像を生成する画像処理手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電子内視鏡用プロセッサによれば、実測された心電図波形に基づいて拍動による影響がない期間に撮像を行うことができる。これにより、例えば術者の指示に対応してぶれのない精細な静止画像を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、期間設定手段は、心電図波形に基づいて心臓の拡張期を検出し、該拡張期を画像生成可能期間として設定することが望ましい。
【0011】
請求項3に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、期間設定手段は、心電図波形を二値化処理する二値化処理部と、二値化処理された波形に基づいてR波の周期を算出する周期算出部と、該周期に基づいて拡張期を設定する拡張期検出部と、を有する。
【0012】
請求項4に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、二値化処理部は、R波のみが抽出されるような閾値によって心電図波形を二値化処理することが望ましい。
【0013】
請求項5に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、拡張期検出部は、前回のR波検出時から今回のR波検出時までの周期の中間値を求め、今回のR波検出時から該中間値分だけ経過した後次のR波検出時までの期間を拡張期として検出することができる。
【0014】
請求項6に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、外部から静止画像生成指示を受けると、該指示を受けた時が前記画像生成可能期間内であれば直ちに、また該指示を受けた時が前記画像生成可能期間外であれば画像生成可能期間に入り次第直ちに、電子内視鏡から出力された画像信号に基づいて静止画像を生成するように画像処理手段を制御する制御手段をさらに有する。このように構成することにより、外部からの指示に対して遅れることなく、ぶれのない精細な静止画像の提供を実現することができる。
【0015】
また、請求項7に記載の電子内視鏡用プロセッサによれば、測定手段は、心電計を有しており、該心電計を電子内視鏡用プロセッサに対して着脱自在に構成することも可能である。
【0016】
別の観点から、請求項8に記載の電子内視鏡システムは、上記特徴を有するプロセッサと、該プロセッサに対して少なくとも電気的に接続される電子内視鏡と、を有することを特徴とする。
【0017】
また請求項9に記載の電子内視鏡システムは、生体組織を撮像する撮像部を有する電子内視鏡と、心電図波形を測定する測定手段と、測定手段により測定された心電図波形に基づいて、静止画像の生成が可能な期間である画像生成可能期間を設定する期間設定手段と、撮像部から出力される画像信号に所定の画像処理を施して静止画像を生成する画像処理手段と、電子内視鏡が少なくとも電気的に接続され、画像生成可能期間内に出力された画像信号に基づいて静止画像を生成するように画像処理手段を駆動制御する制御部を有するプロセッサと、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の電子内視鏡システムによれば、期間設定手段は、心電図波形から心臓の拡張期を検出し、該拡張期に対応して画像生成可能期間を設定することが望ましい。
【0019】
さらに別の観点から請求項11に記載の電子内視鏡用プロセッサは、電気的に接続された電子内視鏡を制御して観察対象を撮像する電子内視鏡用プロセッサであって、静止画像の生成を指示する信号を入力する指示信号入力手段と、心電図波形を測定する測定手段と、測定手段により測定された心電図波形に基づいて、心臓の拡張期を検出する拡張期検出手段と、電子内視鏡から定期的に送信される画像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、指示信号が拡張期に入力された場合には直ちに静止画像を生成し、指示信号が拡張期以外の期間に入力された場合には拡張期に入り次第直ちに静止画像を生成するように画像生成手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電子内視鏡用プロセッサおよび該プロセッサを有する電子内視鏡システムによれば、実測された心電図波形に基づいて心臓の拍動の影響がない期間を画像生成可能期間として設定する。そして該画像生成可能期間にのみ静止画像が生成されるように構成する。これにより、従来のような複数枚分の撮像処理や煩雑な画像処理を行うことなくぶれのない精細な静止画像を、術者等の撮像指示に対して遅れることなく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本実施形態のプロセッサおよび該プロセッサを備える電子内視鏡システムの構成および作用について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム100の概略構成を表す図である。電子内視鏡システム100は、プロセッサ10、電子内視鏡30、心電計50、モニタ70を有する。電子内視鏡30はコネクタ部30aと先端に撮像系を持つ可撓管30bと操作部(把持部)30cからなる。電子内視鏡30は、コネクタ部30aを介してプロセッサ30に光学的かつ電気的に接続される。心電計50は、被検者の心電図情報を生成する装置である。心電計50は、プロセッサ30に対して着脱自在に構成されており、以下に詳述する静止画像生成処理を行う場合に接続される。モニタ70は、プロセッサ10に接続され所定の情報を適宜表示する。
【0023】
詳しくは、プロセッサ10は、システムコントローラ1、光源部2、演算部3、タイミングコントローラ4、フロントパネル兼操作部(以下、単にフロントパネルという)5、画像処理部6、を有する。
【0024】
また、電子内視鏡30は、ライトガイド31、配光レンズ32、集光レンズ33、撮像素子34、スコープコントローラ35、一次処理部36、EEPROM37、フリーズボタン38を有する。図1に示すように、配光レンズ32、集光レンズ33、撮像素子34は、可撓管30b先端に配設される。
【0025】
電子内視鏡システム100を使用するに先だって、電子内視鏡30がプロセッサ10に接続されると、スコープコントローラ35は、EEPROM37から電子内視鏡50の識別情報(例えば機種名や型番等)や、仕様(例えば撮像素子の方式や画素数、γ特性等)等の内視鏡識別データを読み出す。そして該識別データをシステムコントローラ1に転送する。システムコントローラ1は、該識別データに対応して、電子内視鏡システム100全体を統括して制御する。これにより、本実施形態のプロセッサ10に電子内視鏡50のみならず、他の種類の電子内視鏡を接続し、使用することが可能になる。
【0026】
また、術者は、心電計50に接続された複数の電極を該被検者の体表における所定部位に取り付ける。心電計50は、常時被検者の心電図波形をプロセッサ10の演算部3に出力している。該心電図波形は、術者がフリーズボタン38を操作することにより開始される静止画像生成処理の際に用いられる。静止画像生成処理については後述する。
【0027】
プロセッサ10のシステムコントローラ1は、上記の通り、プロセッサ10のみならず電子内視鏡システム100全体を統括して制御する。具体的には、プロセッサ1の主電源が投入されると、システムコントローラ1は、電子内視鏡30が接続されていることを確認後、光源部2を発光制御する。光源部2は、光源21、絞り22、絞り駆動機構23、集光レンズ24を有する。システムコントローラ1からの制御信号を受信すると、光源21から光が照射される。本実施形態では、光源21は周知の白色光源、例えばメタルハライドランプや、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を使用する。絞り駆動機構23は、絞り22を透過する光が生体組織の撮像に好適な光量となるように絞り22を駆動制御している。
【0028】
光源21から照射された光は、絞り22、集光レンズ24を介して電子内視鏡30のライトガイド31、より詳しくはライトガイド31の入射端31aに入射する。ライトガイド160は光ファイバ束である。よって、入射光は、ライトガイド31内を伝送し、射出端31bから射出される。射出光は、配光レンズ32を介して可撓管30bの先端から照射され、観察対象を照明する。
【0029】
照明された観察対象からの反射光は、対物レンズ33を介して撮像素子34の受光面で光学像を結ぶ。撮像素子34は、例えば受光面前面にオンチップカラーフィルタが搭載されるカラーCCDを想定する。カラーフィルタは、R、G、Bのいずれかのカラーチップが各画素に対応して連続して配列されている。なお、本発明において、撮像素子34は原色フィルタを搭載したものに限定されず、例えば補色フィルタを搭載したものであっても良い。
【0030】
撮像素子34は、システムコントローラ1の制御に基づいてスコープコントローラ35によって駆動制御される。撮像素子34の駆動制御について詳説する。
【0031】
システムコントローラ1は、識別データに対応してタイミングコントローラ4を制御する。タイミングコントローラ4は、システムコントローラ1の制御下、撮像素子の駆動に関するタイミング信号を定期的にスコープコントローラ35に送信する。スコープコントローラ35は、タイミングコントローラ4により規定される所定のタイミングで、撮像素子34に駆動信号を送信する。撮像素子34は、スコープコントローラ35から送信される駆動信号に同期して、上記光学像に基づく各色の画像信号を生成し、一次処理部36に定期的に送信する。
【0032】
一次処理部36は、画像信号にA/D変換をはじめ、後述する各観察モードに好適な画像が生成されるように所定の処理を行う。所定の処理には例えば、色毎のゲイン調整や解像度調整、ホワイトバランスやブラックバランスの調整、ガンマ補正、エンハンス処理等がある。なお、一次処理部36が行う上記の各処理における調整レベル等は、システムコントローラ1からの制御の下、スコープコントローラ35により設定される。一次処理部36によって所定の処理を施されたデジタル画像信号は、プロセッサ10の画像処理部6に入力する。
【0033】
画像処理部6は、画像信号が入力する順に、画像メモリ61、二次処理部62を有する。一次処理部36から出力された画像信号は、各色(ここではR、G、B)に関する画像データとして順次画像メモリ61に格納される。格納された各色に対応する画像データは、タイミングコントローラ4から送信されるタイミング信号に同期して二次処理部62に一斉に出力される。該タイミング信号は、例えばモニタ70の周期に対応して送信される。
【0034】
二次処理部62は、画像メモリ61から読み出された画像データにD/A変換を施し、モニタ70の規格に適合する映像信号(ビデオ信号)を生成する。生成された映像信号は、順次モニタ70に出力される。モニタ70は、二次処理部62から出力される映像信号を受信すると該信号に対応する動画像を表示する。
【0035】
術者は、モニタ70に表示される体腔内の動画像を観察しつつ、電子内視鏡30の先端、より詳しくは可撓管30bの先端を観察対象の近傍に配設する。
【0036】
そして、可撓管30bの先端が観察対象近傍に位置した状態で、術者が電子内視鏡30の操作部30cに配設されたフリーズボタン38を操作すると、プロセッサ10のシステムコントローラ1は、心電計50からの心電図波形に関する情報を参照しつつ、静止画像生成処理を開始する。以下、本発明の主たる特徴の一つである静止画像生成処理について詳述する。
【0037】
図2は、演算部3が行う処理の流れを示すフローチャートである。図3は、システムコントローラ1が静止画像生成処理時に行う処理の流れを示すフローチャートである。図4は、静止画像生成処理に関するタイミングチャートである。
【0038】
被検者の心臓拍動時の電圧変化は、心電計50によって、心電図波形として測定される。測定された心電図波形は順次演算部3に出力される。
【0039】
図4(A)に測定された心電図波形を示す。図4(A)に示すように心電図波形は、主として心房収縮時に表れるP波、心室収縮時に表れるQRS波、心室収縮の解除時に表れるT波が順次連続して構成される。なお、図4(A)において、各波を示すアルファベットには、説明の便宜上、通し番号としての数字を付記している。
【0040】
一般に、QRS波とT波が発生する期間は心臓が収縮運動している時間帯とされ、それ以外の期間は心臓が拡張している時間帯とされる。本文では、前者を収縮期といい、後者を拡張期という。従来、問題視されていた静止画像にぶれが生じる原因は、収縮期に起こる振動が被写体である生体組織に伝播することによる。従って、収縮期ではなく拡張期にのみ撮像された画像信号に基づいて静止画像を生成すれば、従来の問題は良好に解決される。
【0041】
ここで、収縮期と拡張期の境界は、個人差もあって必ずしも明確ではない。そこで、本実施形態の演算部3では、図2に示す処理を行うことにより、収縮期と拡張期を明確に区別し、拡張期に対応する静止画像生成可能期間を設定している。
【0042】
まず、演算部3は、心電計50によって生成された心電図波形が入力されると(S1)、該波形の解析を行う(S3)。S2における波形の解析とは、具体的にはR波のみを抽出した二値化データを生成することを意味する。詳しくは、演算部3は、予め、P波およびT波を含まず、R波のみを検出することができる閾値Vrefを保有している。そして、S1において入力された心電図波形を閾値Vrefによって二値化処理して、拍動に関するデジタルデータに変換する。図4(A)では、閾値Vrefを一点鎖線で示す。また、変換されたデジタルデータを図4(B)に示す。
【0043】
演算部3は、閾値Vrefを一種類のみ有している構成であっても良いし、複数種類有する構成であっても良い。閾値Vrefを複数種類有する構成の場合としては、例えば、年齢や性別によって異なる値を閾値として設定することが可能である。この場合、術者は被検者の年齢や性別をフロントパネル5に入力することにより、システムコントローラ1が演算部3に該入力に対応した閾値Vrefを設定する。
【0044】
演算部3は、次いで、図4(B)に示すデジタルデータに基づき、R波の周期を算出する(S5)。R波の周期は、前回の立ち上がり検出時から今回立ち上がり検出時までの期間を計測することにより求まる。S5においてR波周期が算出されると、演算部3は次いでS7において画像生成可能期間を設定する。詳しくは、S7において、演算部3はまずR波周期の中間値を算出する。そして、直前に検出したR波に対応する立ち上がり時から該中間値を加算した時点までを収縮期として検出し、該収縮期以降次回立ち上がり検出時までの期間を拡張期として検出する。そして、該拡張期を生体組織の振動が静止画像の撮像に影響がない期間、つまり画像生成可能期間として設定する。
【0045】
例えば、心電計においてR1波が測定された時点での演算部3の処理を説明する。この場合、演算部3は、S5において、心電図波形のR0波に対応するH0レベル立ち上がり検出時から同波形のR1波に対応するH1レベル立ち上がり検出時までの期間t0をR波周期として算出する。
【0046】
そして、S5においてR波周期t0が算出されると、演算部3は次いでS7において画像生成可能期間を設定する。すなわち、H1レベル立ち上がり検出時にt0の1/2倍の時間を加算した時点(収縮期終了時点)から、H2レベル立ち上がり検出時までの期間u1を画像生成可能期間として設定する。他のR2波、R3波…Rn波(ただし、nは自然数、以下同様とする。)が測定された時点においても同様の処理がなされ、画像生成可能期間u2、u3、…unが設定される。
【0047】
S7による画像生成可能期間の設定が完了すると、演算部3は、現時点が画像生成可能期間内であるか否かの判断を行う(S9)。そして演算部3は、画像生成可能期間内であれば、静止画像の生成を許可する許可信号をシステムコントローラ1に送信する(S9:YES)。また演算部3は、現時点が該期間外であれば、静止画像の生成を許可しない(つまり待機状態とする)待機信号をシステムコントローラ1に送信する(S9:NO)。図4(C)において、Hが許可信号であり、Lが待機信号である。
【0048】
次にシステムコントローラ1の処理について図3を参照しつつ説明する。静止画像生成処理に関して、システムコントローラ1は、操作部30cから術者によるフリーズボタン38の操作に対応する制御信号が送信されるまで待機状態にある(S15:NO)。該制御信号を受信すると(S15:YES)、システムコントローラ1は、静止画像の生成を指示されたと判断し、S17の処理に移る。
【0049】
S17において、システムコントローラ1は、演算部3から送信される信号を参照し、該信号が許可信号であるか否かを判別する。そして、許可信号が送信されていれば(S17:YES)、画像処理部6を駆動制御し、静止画像を生成させる(S19)。また、待機信号が送信されていれば(S17:NO)、静止画像の生成には不適な時間帯であると判断し、許可信号が送信されるまで待機状態に入る。
【0050】
S19におけるシステムコントローラ1の駆動制御がなされると、画像処理部6は、一次処理部36から定期的に送信される画像信号を画像データとして画像メモリ61に格納する、換言すれば画像メモリ内のデータ更新処理を中断する。これにより、タイミングコントローラ4からのタイミング信号に同期して画像処理部6からモニタ70に出力される画像は常に同一内容になる。つまり、モニタ70には静止画像が表示される。
【0051】
ここで、モニタ70に表示される静止画像は、心臓の拡張期に対応する画像生成可能期間内に撮像された画像信号に基づいて生成されたものである。つまり、拍動に伴う生体組織の振動がない期間内に撮像された画像である。そのため該静止画像は、ぶれのない精細な状態で表示されている。さらに、一枚の静止画像を表示するために、複数回の撮像を行ったり、ぶれを除去するための特殊な画像処理を施すことがないため、非常に迅速に静止画像を表示することができる。そのため、術者に快適な操作感と適切なタイミングでの静止画像観察を提供することができる。
【0052】
なお、ここで、術者が図示しない記録ボタンを操作することにより、上記の精細な静止画像データをプロセッサ10内部あるいは外部に設けられた記録媒体に保存することも可能である。
【0053】
以上が本発明の実施形態である。なお、本発明に係るプロセッサや電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形を行うことができる。
【0054】
上記実施形態では、心電計50はプロセッサ10に対して着脱自在に構成された独立した装置であると説明した。本発明に係るプロセッサ10は、心電計50の機能を搭載することも可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、演算部3は、予め格納された閾値Vrefを使用すると説明した。ここで、上記のように心電図波形は個人差があり、また病状によって変動することもあり得る。そこで、フロントパネル5等に閾値Vrefを微調整するための操作部を設けて、術者の操作に応じて閾値Vrefを現在の被検者に適合するように変化させるように構成しても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、前回算出されたR波周期の中間値経過時点を今回の画像生成可能期間の開始時点として説明したが、必ずしも中間値経過時点でなくても良い。画像生成可能期間の開始時点を遅めに設定すればするほど、より確実にぶれのない静止画像を提供することができる。また、該開始時点を早めに設定すればするほど、フリーズボタン38操作後静止画像表示までの所要時間をより一層短縮することができる。つまり、画像生成可能期間の開始時点は、以上のバランスを考慮して適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態の電子内視鏡システムを概略的に示した図である。
【図2】本実施形態の演算部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本実施形態のシステムコントローラが静止画像生成処理時に行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の静止画像生成処理に関するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 システムコントローラ
2 光源部
3 演算部
4 タイミングコントローラ
6 画像処理部
61 画像メモリ
62 二次処理部
10 プロセッサ
30 電子内視鏡
34 撮像素子
35 スコープコントローラ
36 一次処理部
38 フリーズボタン
50 心電計
70 モニタ
100 電子内視鏡システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡が少なくとも電気的に接続される電子内視鏡用プロセッサであって、
心電図波形を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記心電図波形に基づいて、静止画像の生成が可能な画像生成可能期間を設定する期間設定手段と、
前記期間設定手段により設定された前記画像生成可能期間内に前記電子内視鏡から出力された画像信号に基づいて、静止画像を生成する画像処理手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子内視鏡用プロセッサにおいて、
前記期間設定手段は、前記心電図波形に基づいて心臓の拡張期を検出し、該拡張期を前記画像生成可能期間として設定することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項3】
請求項2に記載の電子内視鏡用プロセッサにおいて、
前記期間設定手段は、前記心電図波形を二値化処理する二値化処理部と、二値化処理された波形に基づいてR波の周期を算出する周期算出部と、前記周期に基づいて前記拡張期を検出する拡張期検出部と、を有することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項4】
請求項3に記載の電子内視鏡用プロセッサにおいて、
前記二値化処理部は、R波のみが抽出されるような閾値によって前記心電図波形を二値化処理することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の電子内視鏡用プロセッサにおいて、
前記拡張期検出部は、前回のR波検出時から今回のR波検出時までの前記周期の中間値を求め、今回のR波検出時から該中間値分だけ経過した後次のR波検出時までの期間を前記拡張期として検出することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項6】
外部から静止画像生成指示を受けると、該指示を受けた時が前記画像生成可能期間内であれば直ちに、また該指示を受けた時が前記画像生成可能期間外であれば画像生成可能期間に入り次第直ちに、前記電子内視鏡から出力された画像信号に基づいて静止画像を生成するように前記画像処理手段を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子内視鏡用プロセッサにおいて、
前記測定手段は、心電計を有し、
前記心電計は前記電子内視鏡用プロセッサに対して着脱自在に構成されていることを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の電子内視鏡用プロセッサと、
前記電子内視鏡用プロセッサに対して少なくとも電気的に接続される電子内視鏡と、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項9】
生体組織を撮像する撮像部を有する電子内視鏡と、
心電図波形を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記心電図波形に基づいて、静止画像の生成が可能な画像生成可能期間を設定する期間設定手段と、
前記撮像部から出力される画像信号に所定の画像処理を施して静止画像を生成する画像処理手段と、
前記電子内視鏡が少なくとも電気的に接続され、前記画像生成可能期間内に出力された前記画像信号に基づいて静止画像を生成するように前記画像処理手段を駆動制御する制御部を有するプロセッサと、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項10】
請求項9に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記期間設定手段は、前記心電図波形から心臓の拡張期を検出し、該拡張期に対応して前記画像生成可能期間を設定することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項11】
電気的に接続された電子内視鏡を制御して観察対象を撮像する電子内視鏡用プロセッサであって、
静止画像の生成を指示する信号を入力する指示信号入力手段と、
心電図波形を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された前記心電図波形に基づいて、心臓の拡張期を検出する拡張期検出手段と、
前記電子内視鏡から定期的に送信される画像信号に基づいて画像を生成する画像生成手段と、
前記指示信号が前記拡張期に入力された場合には直ちに静止画像を生成し、前記指示信号が前記拡張期以外の期間に入力された場合には前記拡張期に入り次第直ちに静止画像を生成するように前記画像生成手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡用プロセッサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−93220(P2008−93220A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279410(P2006−279410)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】