説明

プロテアソーム酵素阻害のための化合物

ヘテロ原子含有の三員環を含むペプチド−ベースの化合物類は、N−末端求核性(Ntn)ヒドロラーゼ類の特異的活性を効率的かつ選択的に阻害する。複数の活性を有するこれらNtnの諸活性は記載の化合物類によって差別的に阻害される。例えば20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性は本発明の化合物によって選択的に阻害される。上記ペプチド−ベースの化合物類はエポキシドまたはアジリジンを含み、N−末端官能化を含む。その他の治療的有用性として、上記ペプチド−ベースの化合物は抗炎症性特性および細胞増殖阻止をあらわすことが期待される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2004年8月6日に出願された米国仮特許出願第60/599401号、および2004年9月14日に出願された米国仮特許出願第60/610001号の優先権の利益を主張し、そして2005年4月14日に出願された米国特許出願第11/106879号の一部継続出願である。引用される出願の教示の全てが、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は酵素阻害の化合物および方法に関するものである。特に本発明は酵素阻害に基づく治療法に関係する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
真核生物において、蛋白分解には主としてユビキチン経路が介在する。その経路においては分解の標的とされる蛋白類が76アミノ酸ポリペプチドユビキチンに結合する。ひとたび標的にされると、ユビキチン化蛋白は、3種類の主要蛋白分解活性の作用によって蛋白類を短いペプチドに切断する多触媒性プロテアーゼ、26Sプロテアソーム、の基質として役立つ。プロテアソーム介在性分解は、細胞内蛋白質ターンオーバーにおける通常の機能を有し、その一方で多くのプロセス、例えば主要組織適合性複合体(MHC)クラスIプレゼンテーション、アポトーシス、細胞増殖調節、NF−κB活性化、抗原プロセッシング、および前炎症性シグナルの変換などにも重要な役割を演ずる。
【0004】
20Sプロテアソームは4つの環に組織化された28のサブユニットからなる700kDa円筒形多触媒性プロテアーゼ複合体である。酵母およびその他の真核生物において7つの異なるαサブユニットが外側環を形成し、7つの異なるβサブユニットが内側環を構成している。αサブユニットは19S(PA700)および11S(PA28)調節複合体の結合部位として役立つと共に2つのβサブユニット環によって形成される内側蛋白分解質のための物理的障壁として役立つ。したがってin vivoにおいてプロテアソームは26S粒子(“26Sプロテアソーム”)として存在すると考えられる。in vivo実験の結果、プロテアソームの20S形の阻害が26Sプロテアソームの阻害と容易に関連づけられることが判明した。粒子形成中のβサブユニットのアミノ末端プロ配列の切断は、触媒的求核剤としてはたらくアミノ末端スレオニン残基を露出させる。プロテアソームにおける触媒活性の原因であるサブユニットはアミノ末端求核性残基を有し、したがってこれらのサブユニットはN末端求核性(Ntn)ヒドロラーゼのファミリーに属する(ここで上記求核性N末端残基は例えばCys、Ser、Thr、およびその他の求核部分である)。このファミリーは例えばペニシリンGアシラーゼ(PGA)、ペニシリンVアシラーゼ(PVA)、グルタミンPRPPアミドトランスフェラーゼ(GAT)、および細菌性グリコシルアスパラギナーゼなどを含む。いたるところにあらわれるβサブユニットに加えて、より高度の脊椎動物は3種類のインターフェロン−γ−誘導性βサブユニット(LMP7、LMP2およびMECL1)も有する。これらはそれらの正常な対応部、それぞれX、Y、およびZを置換し、上記プロテアソームの触媒活性を変化させる。異なるペプチド基質の使用によって真核生物20Sプロテアソームに対する3種類の主要蛋白分解活性、すなわち大きい疎水性残基の後を切断するキモトリプシン様活性(CT−L)、塩基性残基の後を切断するトリプシン様活性(T−L);および酸性残基の後を切断するペプチジルグルタミルペプチド加水分解活性(PGPH)が確認された。上記主要プロテアソーム蛋白分解の活性には異なる触媒部位が役割を演じているようにみえる、なぜならばインヒビター類、βサブユニットにおける点突然変異、およびγインターフェロン誘導性βサブユニット類の交換によってこれら活性が異なる程度に変化するからである。
【0005】
プロテアソーム活性を阻害するために用いられる小分子の例が幾つかある;しかしこれらの化合物は細胞および分子レベルでプロテアソームの役割を調査研究するために必要な特異性、安定性または効力に欠けるのが普通である。そこで、細胞および分子レベルでプロテアソームの役割を研究するためには高い部位特異性、改善された安定性および溶解性および大きい効力を有する小分子インヒビターの合成が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明はペプチドα’,β’−エポキシドおよびペプチドα’,β’−アジリジンとして知られる分子群に関するものである。親分子はN−末端求核性(Ntn)ヒドロラーゼに効率的に非可逆的におよび選択的に結合すると考えられており、多触媒活性を有する酵素類の特定の活性を特異的に阻害できる。
【0007】
変性し、正しく折りたたまれていない蛋白の配列だけを考えるとき、プロテアソームは、シグナル依存的蛋白分解によって広範囲の細胞内蛋白のレベルを調節する構成的蛋白分解機構として理解される。そのためプロテアソームおよびその他のNtnヒドロラーゼ類の活性を特異的に妨害する試薬を同定し、それによって生物学的プロセスにおけるこれら酵素の役割を研究するためのプローブとして使用できることは非常に重要である。Ntnヒドロラーゼを標的とする化合物類をここに記載し、合成し、研究する。特定のプロテアソーム活性を強力に、選択的に、かつ非可逆的に阻害できるペプチドエポキシド類およびペプチドアジリジン類が開示され請求される。
【0008】
幾つかのその他のペプチド−ベースのインヒビターとは異なり、本明細書に記載のペプチドエポキシドおよびペプチドアジリジンは、トリプシン、キモトリプシン、カテプシンB、パパインおよびカルパインのような非−プロテアソームプロテアーゼ類を50μMまでの濃度で実質的に阻害することは期待されていない。より高濃度では阻害が認められることがあるが、そのインヒビターが単に基質と競合するのであれば上記阻害は競合的であり、非可逆的ではないと考えられる。新規のペプチドエポキシドおよびペプチドアジリジンはNF−κB活性化を阻害し、細胞培養においてp53レベルを安定させることも期待される。さらに、これらの化合物は抗炎症活性を有することが期待される。したがってこれらの化合物は、正常な生物学的プロセスおよび病的プロセスにおけるNtn酵素機能を研究する用途を有する特異的分子プローブとなり得る。
【0009】
一局面において、本発明はヘテロ原子含有三員環を含むインヒビター類を提供する。これらのインヒビターは、約50μM未満の濃度で存在する場合に、N−末端求核性ヒドロラーゼ酵素(例えば20Sプロテアソーム、または26Sプロテアソーム)の酵素活性を阻害することができる。20Sプロテアソームに関して言えば、特定のヒドロラーゼインヒビターは、約5μM未満の濃度で存在する際に20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害し、約5μM未満の濃度で存在する際に20Sプロテアソームのトリプシン様活性またはPGPH活性は阻害しない。ヒドロラーゼインヒビターは、例えばペプチドα’,β’−エポキシケトンまたはα’,β’−アジリジンケトンであり、上記ペプチドはテトラペプチドである。上記ペプチドは分岐または未分岐側鎖、例えば水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、C1−6アラルキル、C1−6アルキルアミド、C1−6アルキルアミン、C1−6カルボン酸、C1−6カルボキシルエステル、C1−6アルキルチオール、またはC1−6アルキルチオエーテル、例えばイソブチル、1−ナフチル、フェニルメチル、および2−フェニルエチルなどを含む。α’,β’−エポキシケトンまたはα’,β’−アジリジンケトンのα’−炭素はキラル炭素原子、例えば本明細書に記載されるもののような(R)またはβ形炭素でよい。
【0010】
また別の局面では、本発明は薬学的に受容可能なキャリアと、特に神経変性疾患(アルツハイマー病など)、筋消耗性疾患、癌、慢性炎症性疾患、発熱、筋非活動、除神経、神経損傷、絶食、および免疫関連病の結果を緩和するヒドロラーゼインヒビターの薬物学的有効量とを含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
また別の局面において、本発明は抗炎症組成物を提供する。
【0012】
また別の局面において、本発明は次の方法を提供する:被験体におけるHIV感染症を阻止または軽減する;被験体におけるウイルス遺伝子発現レベルに影響を与える;生体においてプロテアソームによって産生される抗原性ペプチドの種類を変える;生体における細胞性、発達性または生理学的プロセスまたは結果が特定のNtnヒドロラーゼの蛋白分解活性によって調節されるかどうかを決定する;被験体のアルツハイマー病を処置する;細胞における筋蛋白分解速度の低下;細胞における細胞内蛋白分解速度の低下;細胞におけるp53蛋白分解速度の低下;被験体におけるp53関連性癌の増殖を阻止する;細胞における抗原提示を阻止する;被験体の免疫系を抑制する;生体におけるIkB−α分解を阻止する;細胞、筋肉、器官または被験体のNF−κBの含有量を減少させる;サイクリン依存性真核細胞サイクルに影響を与える;被験体における増殖性疾患を処置する;細胞における癌蛋白のプロテアソーム依存性調節に影響を与える;被験体における癌増殖を処置する;被験体におけるp53関連性アポトーシスを処置する;および細胞においてN−末端求核性ヒドロラーゼによって処理される蛋白類をスクリーニングする。これらの方法の各々は、本明細書に記載のヒドロラーゼインヒビター類を含む組成物の有効量を被験体、細胞、組織または器官または生体に投与しまたは接触させることを含む。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は下記の詳細な説明および請求項から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は酵素インヒビターとして有用な化合物に関係する。これらの化合物はN−末端に求核基を有する酵素を阻害するのに概して有用である。例えば側鎖に求核部を有するN−末端アミノ酸、例えばスレオニン、セリン、またはシステインを有する酵素または酵素サブユニットの活性は本明細書に記載の酵素インヒビターによって効果的に阻止される。N−末端の非アミノ酸求核基、例えば保護基または糖質などを有する酵素または酵素サブユニットの活性も本明細書に記載の酵素インヒビターによって上首尾に阻害される。
【0015】
特定の操作理論によって裏付けられているわけではないが、このようなN−末端求核剤Ntnは本明細書に記載の酵素インヒビターのエポキシド官能基と共有付加物を形成すると考えられる。例えば20Sプロテアソームのβ5/Pre2サブユニットにおいて、N−末端スレオニンは、以下に記載するようにペプチドエポキシドまたはアジリジンと反応してモルホリノまたはピペラジノ付加物を非可逆的に形成すると考えられる。このような付加物の形成はエポキシドまたはアジリジンの開環分解を含むと考えられる。
【0016】
α’−炭素に結合したこのような基を含む実施形態においてα’−炭素(すなわちエポキシドまたはアジリジン環の一部を形成する炭素)の立体化学は(R)または(S)である。本発明は一部には本明細書に記載の構造−機能情報に基づいており、これは次のような好ましい立体化学関係を示唆する。好ましい化合物は指示されるアップ−ダウン(またはβ−α、このβはこのページの面上にある)または(R)−(S)関係を有する多数の立体中心を有することに注目されたい(すなわち化合物のあらゆる立体中心が、記載される優先順位に従う必要はない)。幾つかの好ましい実施形態において、α’炭素の立体化学は(R)である、すなわちX原子はβであり、または分子の平面上にある。
【0017】
立体化学に関しては、絶対的立体化学を決定するためのCahn−Ingold−Prelogの法則を以下に述べる。これらの法則は例えばOrganic Chemistry,Fox and Whitesell;Jones and Bartlett Publishers,Boston,MA(1994);Section 5−6,pp177−178に記載されている。これは参考として本明細書に組み込まれる。ペプチド類は反復主鎖構造を有し、その主鎖単位から側鎖が延びている。概して各主鎖単位は主鎖に結合した側鎖を有するが、ある場合には側鎖は水素原子である。その他の実施形態において、あらゆる主鎖単位が結合側鎖を有するわけではない。ペプチドエポキシドまたはペプチドアジリジンに有用なペプチド類は2または3個の主鎖単位を有する。プロテアソームのキモトリプシン様(CT−L)活性を阻害するのに有用な或る実施形態において、2から8までの主鎖単位が存在し、CT−L阻害のある好ましい実施形態においては2から6までの主鎖単位が存在する。
【0018】
主鎖単位から延びる側鎖は天然脂肪族または芳香族アミノ酸側鎖、例えば水素(グリシン)、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、sec−ブチル(イソロイシン)、イソブチル(ロイシン)、フェニルメチル(フェニルアラニン)など、およびアミノ酸プロリンを構成する側鎖を含むことができる。上記側鎖はその他の分岐または非分岐脂肪族または芳香族基、例えばエチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびアリール置換誘導体、例えば1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(1−ナフチル)メチル、(2−ナフチル)メチル、1−(1−ナフチル)エチル、1−(2−ナフチル)エチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル、および同様な化合物類でもよい。アリール基はさらに分岐または非分岐C1−6アルキル基、または置換アルキル基、アセチルなど、またはその他のアリール基、または置換アリール基、例えばベンゾイルなどで置換されてもよい。複素環基も側鎖置換基として使用できる。複素環基としては窒素−、酸素−、および硫黄含有アリール基、例えばチエニル、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、チアンスレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、インドリル、プリニル、キノリルなどが含まれる。
【0019】
幾つかの実施形態において、極性または帯電性残基をペプチドエポキシドまたはペプチドアジリジンに導入できる。例えば、ヒドロキシ含有(Thr、Tyr、Ser)または硫黄含有(Met、Cys)のような天然発生アミノ酸を導入でき、並びに例えばタウリン、カルニチン、シトルリン、シスチン、オルニチン、ノルロイシンのような非必須アミノ酸も導入できる。帯電性部分または極性部分を有する非天然発生側鎖置換基も含むことができる。それらは1個以上のヒドロキシ、短鎖アルコキシ、スルフィド、チオ、カルボキシル、エステル、ホスホ、アミドまたはアミノ基、または1個以上のハロゲン原子で置換された置換基を有するC1−6アルキル鎖またはC1−12アリール基などである。幾つかの好ましい実施形態においては、少なくとも1つのアリール基が上記ペプチド部分の側鎖に存在する。
【0020】
幾つかの実施形態において、主鎖単位はアミド単位[−NH−CHR−C(=O)−]であり、上記式中Rは側鎖である。このような表示は天然発生アミノ酸プロリン、またはその他の非天然発生環状二次アミノ酸類を排除するものではない。このことは当業者には公知である。
【0021】
その他の実施形態において、主鎖単位はN−アルキル化アミド単位(例えばN−メチルなど)、オレフィン同族体(1個以上のアミド結合がオレフィン結合によって置換されている)、テトラゾール同族体(テトラゾール環が主鎖上でcis−配置を示す)、またはこのような主鎖結合の組み合わせである。また別の実施形態において、アミノ酸のα−炭素はα−アルキル置換によって改変される;例えばアミノイソ酪酸。幾つかのその他の実施形態において、側鎖は例えば△Eまたは△Zデヒドロ改変によって局部的に改変され、その際二重結合が側鎖のα原子とβ原子との間に存在するか、または例えば△Eまたは△Zシクロプロピル改変によって局部的に改変され、その際シクロプロピル基が側鎖のα原子とβ原子との間に存在する。アミノ酸基を使用するまた別の実施形態においてD−アミノ酸を使用できる。その他の実施形態は側鎖−主鎖環化、ジスルフィド結合形成、ラクタム形成、アゾ結合、および“Peptides and Mimics,Design of Conformationally Constrained”by Hruby and Boteju,in“Molecular Biology and Biotechnology:A Comprehensive,Desk Reference”ed.Robert A.Meyers,VCH Publishers(1995).pp.658−664に記載されているその他の改変を含むことができる。これは参考として本明細書に組み込まれる。
【0022】
幾つかの実施形態において、主題の化合物類は式Iの構造を有するか、または薬学的に受容可能なそれらの塩である、
【0023】
【化16】

式中、
Lは存在しないかまたは−COまたは−C(=S)Oから選択され;
XはO、NH、またはN−アルキル、好ましくはOであり;
YはNH、N−アルキル、OまたはC(R、好ましくはN−アルキル、OまたはC(Rであり;
ZはOまたはC(R、好ましくはC(Rであり;
、R、R、およびRは水素および式IIの群から独立的に選択され、より好ましくはR、R、RおよびRは全てが同一であり、より好ましくはR、R、R、およびRは全て水素である;
【0024】
【化17】

各R、R、R、RおよびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアルキル、アミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシエステル、チオールおよびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され、好ましくはR、R、R、およびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、各Rは水素であり、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルであり、RおよびRは独立的にC1−6アラルキルであり、各RはHであり;
10およびR11は水素およびC1−6アルキルから独立的に選択され、またはR10およびR11は一緒になって3ないし6員炭素環または複素環を形成し;
12およびR13は水素、金属カチオン、C1−6アルキルおよびC1−6アラルキルから独立的に選択され、またはR12およびR13が一緒になってC1−6アルキルとなり、それによって環を形成し;
mは0ないし2の整数であり;
nは0ないし2の整数、好ましくは0または1である。
【0025】
ある実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全ての同一であり、好ましくはR、R、RおよびRは全て水素である。幾つかのこのような実施形態において、R、R、RおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルであり、RおよびRは独立的にC1−6アラルキルである。
【0026】
ある好ましい実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て水素であり、RおよびRは両方ともイソブチルであり、Rはフェニルエチルであり、Rはフェニルメチルである。
【0027】
ある実施形態において、R、R、R、およびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアルキル、アミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシルエステル、チオールおよびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換される。ある実施形態において、R5およびR7の少なくとも1つはアルキルで、より好ましくはペルハロアルキルで置換されたC1−6アラルキルである。このような幾つかの実施形態において、R7はトリフルオロメチルで置換されたC1−6アラルキルである。
【0028】
ある実施形態において、YはN−アルキル、OおよびCH2から選択される。このような幾つかの実施形態において、ZはCHであり、mおよびnはいずれも0である。ある別のこのような実施形態において、ZはCHであり、mはO、nは2または3である。また別のこのような実施形態において、ZはOであり、mは1で、nは2である。
【0029】
ある実施形態において、式Iの化合物は
【0030】
【化18】

【0031】
【化19】

から選択される。
【0032】
ある実施形態において、主題の化合物類は式IIIの構造を有し、または薬学的に受容可能なそれらの塩である、
【0033】
【化20】

式中、XはO、NHまたはN−アルキルであり、好ましくはOであり;
、R、R、およびRは水素および式IIの群から独立的に選択され、
好ましくはR、R、R、およびRは全て同一であり、より好ましくはR、R、R、およびRは全て水素であり;
、R、RおよびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され、好ましくはR、R、RおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルであり、RおよびRは独立的にC1−6アラルキルである。
【0034】
ある実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て同一であり、好ましくはR、R、RおよびRは全て水素である。幾つかのこのような実施形態において、R、R、RおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはR5およびR8は独立的にC1−6アルキルであり、RおよびRは独立的にC1−6アラルキルである。
【0035】
幾つかの好ましい実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て水素であり、RおよびRはいずれもイソブチルであり、Rはフェニルエチルであり、Rはフェニルメチルである。
【0036】
幾つかの実施形態において、式IIIの化合物は下記の立体化学を有する:
【0037】
【化21】

好ましい実施形態において、上記化合物は式IVの構造を有し、または薬学的に受容可能なその塩であり、
【0038】
【化22】

式中、
XはO、NHまたはN−アルキルであり、好ましくはOであり;
、R、R、およびRは、水素および式IIの群から独立的に選択され、好ましくはR、R、R、およびRは全て同一であり、より好ましくはR、R、R、およびRは全て水素であり;および
およびRは、水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルからなる群から独立的に選択され、それらの各々はアミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され、好ましくはRおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルである。
【0039】
ある実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て同一であり、好ましくはR、R、RおよびRは全て水素である。幾つかのこのような実施形態において、RおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルである。
【0040】
ある好ましい実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て水素であり、RおよびRはいずれもイソブチルである。
【0041】
ある実施形態において、式IIIの化合物は下記の構造を有する:
【0042】
【化23】

幾つかの実施形態において、上記化合物類は式Vの構造を有し、または薬学的に受容可能なそれらの塩であり
【0043】
【化24】

式中、
XはO、NHまたはN−アルキルであり、好ましくはOであり;
、R、RおよびRは水素および式IIの群から独立的に選択され、好ましくはR、R、RおよびRは全て同一であり、より好ましくはR、R、RおよびRは全て水素であり;
、R、R、およびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、それらの各々はアミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され、好ましくはR5,R6,R7およびR8はC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルであり、RおよびRは独立的にC1−6アラルキルであり;
qは0ないし3の整数である。
【0044】
好ましい実施形態において、上記化合物は式VIの構造を有し、または薬学的に受容可能なその塩であり、
【0045】
【化25】

式中、
XはO、NH、またはN−アルキルであり、好ましくはOであり;
、R、RおよびRは水素および式IIの群から独立的に選択され、好ましくはR、R、RおよびRは全て同じであり、より好ましくはR、R、RおよびRは全て水素であり;
およびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々は、アミド、アミン、カルボン酸または薬学的に受容可能なその塩、カルボキシルエステル、チオール、チオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され、好ましくはRおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルであり;
qは0ないし3の整数である。
【0046】
ある実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て同じであり、好ましくはR、R、RおよびRは全て水素である。幾つかのこのような実施形態において、RおよびRはC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、より好ましくはRおよびRは独立的にC1−6アルキルである。
【0047】
幾つかの好ましい実施形態において、XはOであり、R、R、RおよびRは全て水素であり、RおよびRはいずれもイソブチルである。
【0048】
ある実施形態において、式VIの化合物は以下の式から選択される:
【0049】
【化26】

本発明の一局面は式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを含む本明細書に開示される組成物を含む医学的デバイスに関連する。一実施形態において、上記組成物は医学的デバイス内に挿入される。ある実施形態において、上記医学的デバイスはポリマー基質またはセラミック基質とインヒビターとを含むゲルである。前記ポリマーは天然発生物でも合成物でもよい。また別の実施形態において、前記ゲルは薬剤デポー、接着剤、縫合糸、バリヤまたはシーラントとして役立つ。
【0050】
本発明のもう一つの局面は、表面を有する基質であって、その表面上には式IまたはIII−Viのいずれかの構造を有するインヒビターが置かれている上記基質を含む医学的デバイスに関連する。一実施形態において、上記インヒビターは医学的デバイス上に直接置かれる。また別の実施形態においては、コーティングが施され、そのコーティングは式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターと共にポリマー基質またはセラミック基質とを分散または溶解して含む。
【0051】
一実施形態において、上記医学的デバイスは冠血管、血管、末梢または胆管ステントである。より詳細に述べれば、本発明のステントは拡大可能ステントである。式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを含む基質を塗布した際、上記基質はフレキシブルであってこのような拡大可能ステントの圧縮された状態および拡がった状態に適合する。本発明のまた別の実施形態において、上記ステントは患者の体内に挿入または移植できる少なくとも部分を有し、その部分は体組織への曝露に適応する表面を有し、その表面の少なくとも一部には式Iまたは式III−VIのいずれかの構造を有するインヒビターが塗布され、または式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを有する基質を含むコーティングがそこに分散または溶解している。適切なステントの一例がU.S.Pat.No.4,733,665に開示されている。これは参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
また別の実施形態において、本発明の医学的デバイスは、血管インプラント、管内デバイス、外科的シーラントまたは血管支持器などの外科的器具である。より詳細に述べれば、本発明の医学的デバイスは、式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを直接塗布したか、または式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを含む基質を塗布したカテーテル、移植可能の血管アクセスポート、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管グラフト、動脈内バルーンポンプ、縫合糸、心室補助ポンプ、薬剤溶出バリヤ、接着剤、血管ラップ、血管外/血管周囲支持器、血液フィルタ、または血管内で開くように取り付けられたフィルタである。
【0053】
幾つかの実施形態において、管内医学的デバイスに、式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有すインヒビターを塗布するか、または生物学的に容認できる基質とポリマー中に分散させた式IまたはIII−VIの任意の構造を有するインヒビターとを含むコーティングを塗布する;前記デバイスは内面と外面とを有し、内面、外面またはそれら両面の少なくとも一部にコーティングが塗布される。
【0054】
幾つかの実施形態において、医学的デバイスは血管形成術後の再狭搾を予防するために有用である。上記医学的デバイスは、式IまたはIII−VIのいずれかの構造を有するインヒビターを局所的投与することによって種々の疾患および症状を有効にに処置することもできる。このような疾患および症状としては再狭搾、炎症、リウマチ性関節炎、炎症による組織損傷、過増殖疾患、重度または関節症性乾癬、筋消耗性疾患、慢性乾癬性疾患、異常免疫反応、傷つきやすい斑を含む症状、虚血性状態に関連する損傷、およびウイルス感染および増殖などがある。本発明の薬剤を塗布した医学的デバイスを含む処置を受ける疾患および症状の例は、アテローム性硬化症、急性冠動脈症候群、アルツハイマー病、癌、発熱、筋非活動(萎縮)、神経除去、血管閉塞、発作、HIV感染症、神経損傷、アシドーシス性腎不全および肝不全などである。例えばGoldberg,United States Patent No.5,340,736を参照されたい。
【0055】
用語“Cx−yアルキル”は鎖内にxないしyの炭素を含む直鎖アルキルおよび分岐鎖アルキル基などの置換または非置換の飽和炭化水素基を言い、トリフルオロメチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルのようなハロアルキル基も含む。Cアルキルは水素を示し、その際その基は末端の位置にあり、もし内部にある場合は結合を示す。用語“C2−yアルケニル”および“C2−yアルキニル”は置換されたまたは非置換の不飽和脂肪族基の(長さ)同族体であり、上記のアルキル類に置換できるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれ含む。
【0056】
用語“アルコキシ”は結合した酸素を含むアルキル基を言う。典型的アルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどである。“エーテル”は1つの酸素によって共有結合した2つの炭化水素である。よって、あるアルキルの置換基であってそのアルキルをエーテルにする置換基はアルコキシであるかまたはアルコキシに似ている。
【0057】
用語“C1−6アルコキシアルキル”は、アルコキシ基で置換され、それによってエーテルを形成したC1−6アルキル基である。
【0058】
ここに使用される用語“C1−6アラルキル”はアリール基で置換されたC1−6アルキル基を言う。
【0059】
用語“アミン”および“アミノ”は当業者には公知であり、いずれも非置換および置換アミンおよびその塩類、例えば下記の一般式によって表される部分を言う:
【0060】
【化27】

ここでR、R10およびR10’は各々独立的に水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rをあらわし、またはRおよびR10はそれらが結合したN原子と共に環構造中に4ないし8個の原子を有する複素環を完成させ;Rはアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環をあらわす;mはゼロまたは1ないし8の整数である。好ましい実施形態において、RまたはR10の1つだけはカルボニルである、例えばR、R10、および窒素が一緒になってイミドを形成しない。さらにより好ましい実施形態において、RおよびR10(そして必要に応じてR10’)は独立的に水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−Rをあらわす。ある実施形態において、アミノ基は塩基性であり、これはプロトン化形がpK≧7.00を有することを意味する。
【0061】
用語“アミド(amide)”および“アミド(amido)”はアミノ置換カルボニルとして当業者には公知であり、次の一般式によってあらわすことができる部分を含む:
【0062】
【化28】

式中、R、R10は上に定義したものである。アミド(amide)の好ましい実施形態は不安定なイミド類を含まない。
【0063】
本明細書に使用する用語“アリール”は5−、6−、および7員置換または非置換の単環芳香族基(環の各原子は炭素である)を含む。用語“アリール”は2つ以上の環式環を有する多環式環系を含み、この環系において2つ以上の炭素が2つの隣接環に共通であり、それらの環の少なくとも1つが芳香族であり、例えばその他の環式環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、複素環(ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリル)でよい。アリール基にはベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが含まれる。
【0064】
用語“カルボサイクル”および“カルボシクリル”は環の各原子が炭素である非芳香族性置換または非置換の環を言う。用語“カルボサイクル”および“カルボシクリル”は2つ以上の環式環を有する多環式環系も含む。その際2つ以上の炭素が2つの隣接環に共通であり、少なくとも1つの環が炭素環式であり、例えば他の環式環がシクロアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/または複素環類でよい。
【0065】
用語“カルボニル”は当業者には公知であり、次の一般式によってあらわすことができるような部分を含む:
【0066】
【化29】

式中、Xは結合であるかまたは酸素または硫黄をあらわし、R11は水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rまたは薬学的に受容可能な塩をあらわし、R11’は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−Rをあらわし、ここでmおよびRは上に定義されたものである。Xが酸素であり、R11またはR11’が水素でない場合、上記式は“エステル”をあらわす。Xが酸素で、R11が水素である場合、上記式は“カルボン酸”をあらわす。
【0067】
本明細書で使用される“酵素”は触媒的様態で化学反応を行う任意の部分的または完全蛋白質分子である。このような酵素は天然酵素類、融合酵素類、プロ酵素類、アポ酵素類、変性酵素類、ファルネシル化酵素類、ユビキチン化酵素類、脂肪アシル化酵素類、ゲランゲラニル化酵素類、GPI−結合酵素類、脂質結合酵素類、プレニル化酵素類、天然発生性または人工的に生成する突然変異酵素類、側鎖または主鎖が修飾された酵素類、リーダー配列を有する酵素類、および非蛋白質物質、例えばプロテオグリカン、プロテオリポソームなどである。酵素類は天然発現、プロモーテド発現、クローニング、種々の溶液ベースおよび固体ベースのペプチド合成、および当業者に公知の同様な方法によって作ることができる。
【0068】
本明細書で用いる用語“C1−6ヘテロアラルキル”はヘテロアリール基で置換されたC1−6アルキル基を言う。
【0069】
用語“ヘテロアリール”は、環構造に1ないし4個のヘテロ原子が含まれる置換または非置換の芳香族5ないし7員環構造、より好ましくは5ないし6員環を含む。用語“ヘテロアリール”は2つ以上の環式環を有し、2個以上の炭素が2つの隣接環に共通している多環式環も含む。その際それら環の少なくとも1つはヘテロ芳香族であり、例えばその他の環式環はシクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、および/または複素環類である。ヘテロアリール基は例えばピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラチン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含む。
【0070】
本明細書に使用される用語“ヘテロ原子”は炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、燐および硫黄である。
【0071】
用語“ヘテロシクリル”または“複素環基”は、環構造に1ないし4個のヘテロ原子が含まれている置換または非置換の非芳香族性3−ないし10員環構造を言う。用語“ヘテロシクリル”または“複素環基”は、2個以上の炭素が2つの隣接環に共通である2つ以上の環式環を有する多環式環も含み、その際上記環の少なくとも1つは複素環であり、その他の環式環は例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/またはヘテロシクリルでよい。ヘテロシクリル基は例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどを含む。
【0072】
用語“C1−6ヒドロキシアルキル”はヒドロキシ基で置換されたC1−6アルキル基を言う。
【0073】
本明細書に用いられる用語“インヒビター”は酵素の活性を遮断または低減する化合物を言うことを意味する(例えばsuc−LLVY−AMC、Box−LLR−AMCおよびZ−LLE−AMCのような標準的蛍光性ペプチド基質の蛋白分解的分解の阻止、20Sプロテアソームの種々の触媒活性の阻止など)。インヒビターは可逆的または非可逆的に結合でき、したがってこの用語はある酵素の自壊的基質である化合物を含む。インヒビターは酵素の活性部位の、または活性部位近くの1つ以上の部位を改変でき、またはその酵素上のいずれか別の場所に立体配座変化を起こすことができる。
【0074】
本明細書に用いられる用語“ペプチド”は標準的α−置換基を有する標準的アミド結合を含むだけでなく、以下に詳述するように、一般的に利用されるペプチド類似体、その他の改変された結合類、非天然発生性の側鎖類および側鎖改変も含む。
【0075】
用語“ポリシクリル”または“多環式”は2個以上の炭素が2つの隣接環に共通する(例えば“融合環”)2つ以上の環(例えばシクロアルキル類、シクロアルキルアルケニル類、シクロアルキルアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、および/またはヘテロシクリル類)を言う。ポリサイクルの各環は置換されていても非置換でもよい。
【0076】
用語“予防する”は当業者には公知であり、局所的再発(例えば痛み)のような症状、癌のような疾患、心不全のような症候群またはその他の任意の医学的状態に関して用いられる場合は当業者には理解されており、ある被験体の医学的異常に関して組成物を投与しない被験体に比べて症状の頻度を減らしまたはその発生を遅らせる組成物を投与することを含む。したがって癌の予防とは、例えば未処置対照集団に比べて、予防的処置を受けた患者集団では検出可能の癌増殖数が統計的および/または臨床的に有意に減少し、および/または未処置対照集団に比べて処置集団では検出可能癌増殖の出現が統計的および/または臨床的に有意に遅れることを含む。感染予防は、例えば処置集団対未処置集団において感染症の診断数が減少し、および/または処置集団対未処置集団において感染症の症状の発生が遅れることを含む。痛みの予防は例えば治療集団対未処置対照集団において対照が経験する疼痛感覚の大きさを低減し或いは疼痛感覚を遅らせることを含む。
【0077】
用語“プロドラッグ”は、生理的条件下で治療的活性薬剤に変換する化合物類を包含する。プロドラッグを作る一般的方法は生理的条件下で加水分解し、所望分子を与える選択された部分を含むことである。その他の実施形態において、プロドラッグはホスト動物の酵素活性によって変換される。
【0078】
用語“予防的または治療的”処置は当業者には公知であり、対象組成物の1種類以上を上記ホストに投与することを含む。それを不都合な状態(例えばホスト動物の疾患またはその他の不都合な状態)の臨床的発現前に投与すると、その処置は予防的である(すなわちそれは上記ホストにおける不都合な状態の発生を防ぐ)、その一方で上記不都合な状態の発生後にそれを投与する場合、その処置は治療的である(すなわちそれは存在する不都合な状態またはその副作用を低減し、緩和し、または安定化することを目的とする)。
【0079】
本明細書に用いられる用語“プロテアソーム”は免疫−および構成プロテアソームを含むものとする。
【0080】
用語“置換された”は主鎖の1個以上の炭素上の水素を置換した置換基を有する部分について言う。“置換”または“〜で置換された”は、このような置換が、置換された原子および置換基の公認された原子価にしたがうものであり、その置換の結果、自発的には再配列、環化、脱離などによる変換を受けない安定化合物が生成するという暗黙の了解を含むことは当然である。ここに使用される用語“置換された”は有機化合物の受容可能な全ての置換基を含むことを考慮している。広い局面において受容可能な置換基は、適切な有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。本発明の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満足させる、本明細書に記載の有機化合物の容認できる任意の置換基を有することができる。置換基は例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アチド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族またはヘテロ芳香族部分を含むことができる。もし適切ならば、炭化水素鎖上で置換された部分それ自体が置換され得ることは当業者には当然である。
【0081】
本処置法に関して或る化合物の“治療的有効量”とは、所望の投与形態の部分として(哺乳動物、特にヒトに)投与された際に、処置すべき疾患または異常のためのまたは美容的目的のための臨床的に受容可能な標準にしたがって症状を緩和し、状態を緩和しまたは疾患症状の発生を遅らせる製剤中の化合物の量を言う。
【0082】
用語“チオエーテル”は上に記載された硫黄部分が結合しているアルキル基を言う。好ましい実施形態において、“チオエーテル”は−S−アルキルによってあらわされる。典型的チオエーテル基にはメチルチオ、エチルチオなどが含まれる。
【0083】
本明細書に用いられる用語“処置する”または“処置”は、患者の状態が改善または安定化する仕方で、症状、臨床的徴候および基礎疾患を逆転、低減または停止させることを含む。
【0084】
(20Sプロテアソームの選択性)
本明細書に開示される酵素インヒビター類は、一部にはそれらが20Sプロテアソームの作用を阻害する故に有用である。その上、その他の20Sプロテアソームインヒビターとは異なり、ここに開示される化合物類は、その他のプロテアーゼ酵素に比べて記20Sプロテアソームに高度に選択的である。すなわち、本発明の化合物類はその他のプロテアーゼ酵素、例えばカテプシン、カルパイン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、トリペプチジルペプシダーゼIIなどよりも20Sプロテアソームに選択性を示す。20Sプロテアソームに対する上記酵素インヒビターの選択性は、約50μM未満の濃度では上記酵素インヒビターは20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示し、その一方でカテプシン、カルパイン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、トリペプチジルペプシダーゼIIのようなその他のプロテアーゼ類の触媒活性の阻害は示さないというものである。好ましい実施形態において、上記酵素インヒビターは約10μM未満の濃度で20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示し、その一方でこれらの濃度ではその他のプロテアーゼの触媒活性の阻害を示さない。より好ましい実施形態において、上記酵素インヒビターは約1μM未満の濃度で20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示し、その一方でこの濃度ではその他のプロテアーゼの触媒活性の阻害を示さない。酵素動力学的アッセイがU.S.application serial number09/569748、Example 2およびStein et al.,Biochem.(1996),35,3899−3908に開示されている。
【0085】
(キモトリプシン様活性に対する選択性)
本明細書に記載される酵素阻害化合物の特殊の実施形態は、それら化合物が20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を、トリプシン様活性およびPGPH活性と比較してより効率的かつ選択的に阻害するのでさらに有用である。20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性の特徴は、大きい疎水性残基の極近くにおけるペプチド類の切断である。特に、Ntnヒドロラーゼ類のキモトリプシン様活性は標準的基質の切断によって確認できる。このような基質の例は当業者には公知である。例えば、ロイシルバリニルチロシン誘導体が利用できる。酵素反応速度アッセイがU.S.application serial number 09/569748、Example2およびStein et al.,Biochem.(1996),35,3899−3908に開示されている。
【0086】
(酵素インヒビターの使用)
プロテアソーム阻害の生物学的結果は数多くある。細胞レベルでは、種々のプロテアソームインヒビターで細胞を処置した際にポリユビキチネーテド蛋白の蓄積、細胞の形態変化およびアポトーシスが報告された。プロテアソームの阻害は一つの抗腫瘍治療法と考えられることも示唆された。抗腫瘍化合物のスクリーニングの際にエポキソマイシンが最初に確認されたという事実は、プロテアソームが抗腫瘍化学療法の標的であることを証明するものである。よって、これらの化合物類は癌の治療に有用である。プロテアソームの阻害はNF−κB活性化の阻害およびp53レベルの安定化とも関係している。したがって本発明の化合物類を用いて細胞培養中のNF−κB活性化を阻止し、p53レベルを安定化することもできる。NF−κBは炎症の重要な調節剤であるので、抗炎症性治療処置の魅力的標的である。こうして本発明の化合物類は、非制限的にCOPD、乾癬、気管支炎、気腫および嚢胞性線維症などの慢性炎症と関連する症状を処置するために有用である。
【0087】
開示された化合物類を使用して、プロテアソームの蛋白分解機能が直接介在する筋消耗のような症状、またはプロテアソームによって処理されるNF−κBのような蛋白が間接的に介在する症状を処置することができる。プロテアソームは細胞調節(例えば細胞周期、遺伝子転写、および代謝経路)、細胞間連絡、および免疫反応(例えば抗原提示)に関係する蛋白質(酵素類など)の速やかな除去および転写後プロセッシングに関与する。以下に論ずる特殊な実施例にはβ−アミロイド蛋白および調節蛋白、例えばサイクリン類、TGF−β、および転写因子NF−κBが含まれる。
【0088】
本発明のもう一つの実施形態は、神経変性性疾患および症状、例えば非制限的に発作、神経系の虚血性損傷、神経性外傷(衝撃による脳ダメージ、脊髄損傷、神経系の外傷性ダメージなど)、多発性硬化症およびその他の免疫介在性ニューロパシー(例えばギャン−バレー症候群およびその変種、急性運動性軸索ニューロパシー、急性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、およびフィッシャー症候群)、HIV/AIDS痴呆複合症、アクソノミー、糖尿病性ニューロパシー、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、細菌性、寄生虫性、真菌性およびウイルス性髄膜炎、脳炎、血管性痴呆、多発脳梗塞性痴呆、レーヴィ小体痴呆、ピック病のような前頭葉痴呆、皮質下痴呆(ハンチントンまたは進行性核上麻痺など)、焦点性皮質萎縮症候群(一次失語症など)、代謝性毒性痴呆(慢性甲状腺機能低下またはB12不足など)、および感染症によって起きる痴呆(梅毒または慢性髄膜炎など)の処置のために本明細書に開示される化合物類の使用である。
【0089】
アルツハイマー病は老人性斑および脳血管におけるβアミロイド蛋白(β−AP)の細胞外沈着によって特徴づけられる。β−APはアミロイド蛋白前駆体(APP)に由来する39ないし42アミノ酸のペプチド断片である。APPの少なくとも3種のイソ型が知られている(695、751および770アミノ酸)。mRNAの交互スプライシングがこれらのイソ型を発生する;正常プロセッシングはβ−AP配列のある部分に影響を及ぼし、それによってβ−APの生成を阻止する。プロテアソームによる異常な蛋白プロセッシングはアルツハイマー脳のβ−APの増加の一因となる。ラットのAPPプロセッシング酵素は約10種類のサブユニット(22kDa−32kDa)を含む。25kDaサブユニットはX−Gln−Azn−Pro−Met−X−The−SerのN−末端配列を有する、それはヒト・マクロパインのβ−サブユニットと一致する(Kojima,S.et al.,Fed.Eur.Biochem.Soc.,(1992)304:57−60)。APP−プロセッシング酵素はGln15−Lys16結合を切断する;カルシウムイオンの存在下では、上記酵素はMet1−−−Asp1およびAsp1−−Ala2結合も切断し、β−APの細胞外ドメインを放出する。
【0090】
したがって一実施形態において、アルツハイマー病を処置する方法は被験体に本明細書に開示される化合物(薬学的組成物)の有効量を投与することである。このような処置は、β−APプロセッシング速度を低減し、β−AP斑形成速度を低減し、アルツハイマー病の臨床的徴候を低減することを含む。
【0091】
本発明のその他の実施形態は悪液質および筋消耗疾患に関係する。プロテアソームは網状赤血球の成熟および線維芽細胞の増殖において多くの蛋白類を分解する。インスリンまたは血清のない細胞では、蛋白分解速度はほぼ2倍になる。プロテアソームの阻害は蛋白分解を減らし、それによって筋蛋白喪失も腎臓または肝臓の窒素性負荷も共に減らす。本発明のインヒビター類は癌、慢性感染性疾患、発熱、筋非活動(萎縮)および脱神経、神経損傷、絶食、アシドーシスによる腎不全、糖尿病、および肝不全などの病気を処置するために有効である。Goldberg,U.S.Patent No.5,340,736などを参照されたい。したがって本発明の実施形態は:細胞中の筋蛋白分解を低減し;細胞外蛋白分解を低減し;細胞内のp53蛋白の分解速度を低減し;p53関連性癌の増殖を阻止するための方法を含む。これらの方法の各々は細胞(in vivoまたはin vitro、例えば被験体の筋肉)を本明細書にに開示される化合物(例えば薬学的組成物)の有効量と接触させることを含む。
【0092】
線維症は線維芽細胞の過増殖に起因する瘢痕組織の過度の連続的形成であり、TGF−βシグナリング経路の活性化と関係している。線維症は細胞外基質の広範な沈着を含み、ほとんど全ての組織内に、または幾つかの異なる組織にわたって起こり得る。TGF−β刺激の際に標的遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナリング蛋白(Smad)のレベルはプロテアソーム活性によって調節されるのが普通である(Xu et al.,2000)。しかし、TGF−βシグナリング成分類の分解の加速が癌およびその他の過増殖状態に認められる。したがって本発明のある実施形態は糖尿病性網膜症、斑変性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、IgA腎症、肝硬変、胆道閉鎖症、うっ血性心不全、硬皮症、放射線誘起性線維症および肺線維症(特発性肺線維症、コラーゲン血管病、サルコイドーシス、間湿性肺疾患および外因性肺疾患)を処置する方法に関連する。火傷患者の処置は線維症によって妨害されることが多い。そこで本発明の付加的実施形態は火傷を処置するインヒビター類の局所的または全身的投与である。手術後の創傷縫合は醜い瘢痕と関連することが多いが、これは線維症の阻止によって予防できる。こうして幾つかの実施形態において、本発明は瘢痕を阻止または低減する方法に関連する。
【0093】
プロテアソームによって処理されるその他の蛋白はRel蛋白ファミリーのメンバーであるNF−κBである。転写アクチベータ蛋白類のRelファミリーは2群に分けられる。第一群は蛋白分解プロセッシングを必要とし、p50(NF−κB、105kDa)およびp52(NF−k2、100kDa)を含む。第二群は蛋白分解プロセッシングを必要とせず、p65(RelA、Rel(c−Rel)、およびRelB)を含む。ホモ−およびヘテロダイマーはRelファミリーのメンバーによって形成できる;例えばNF−κBはp50−p65ヘテロダイマーである。IkBおよびp105の燐酸化およびユビキチネーション後、2種類の蛋白はそれぞれ分解し、処理され、細胞質から核へ転位する活性NF−κBを生成する。ユビキチン化p105は精製プロテアソームによっても処理される(Palombella et al.,Cell(1994)78:773−785)。活性NF−κBはその他の転写アクチベータ、例えばHMG1(Y)と共に立体特異的エンハンサ複合体を形成し、特定遺伝子の選択的発現を生成する。
【0094】
NF−κBは免疫および炎症反応、および有糸分裂事象に含まれる遺伝子を調節する。例えば、NF−κBは免疫グロブリン軽鎖k遺伝子、IL−2レセプタα鎖遺伝子、クラスI主要組織適合性複合遺伝子、および、IL−2、IL−6、顆粒球コロニー刺激因子、およびIFN−βなどをコードする多数のサイトカイン遺伝子の発現に必要である)(Palombella et al.,Cell(1994)78:773−785)。本発明の幾つかの実施形態はIL−2、MHC−I、IL−6、TNF−βまたはその他の前記の任意の蛋白類の発現レベルに影響を与える方法を含み、各方法は本明細書に開示される化合物の有効量を被験体に投与することを含む。p50を含む複合体は急性および免疫性反応の速やかなメディエータである(Thanos,D.and Maniatis,T.,Cell(1995)80:529−532)。
【0095】
NF−κBは、E−セレクチン、P−セレクチン、ICAM、およびVCAM−1をコードする細胞接着遺伝子の発現にも関与する(Collins,T.,Lab.Invest.(1993)68:499−508)。本発明の一実施形態は、細胞接着(例えばE−セレクチン、P−セレクチン、ICAMまたはVCAM−1が介在する細胞接着)を阻止する方法であって、本明細書に開示される化合物(または薬学的組成物)の有効量を細胞と接触させることを含む方法である。
【0096】
虚血および再潅流障害は、体組織に達する酸素が不足する状態である低酸素をおこす。この状態はIk−Bαの分解を高め、それによってNF−κBの活性化をおこす(Koong et al.,1994)。低酸素をおこす損傷の重症度はプロテアソームインヒビターの投与で低減できる(Gao et al.,2000;Bao et al.,2001;Pye et al.,2003)。そこで、本発明の幾つかの実施形態は虚血状態または再潅流障害を処置する方法であって、そのような処置を必要とする被験体に本明細書に開示される化合物の有効量を投与することを含む方法に関連する。このような症状または損傷の例としては、非制限的に急性環状動脈症候群(傷つきやすい斑)、動脈閉塞性疾患(心臓、脳、末梢動脈および血管閉塞)、アテローム硬化症(環状動脈硬化症、環状動脈疾患)、梗塞、心不全、膵炎、心筋肥大、狭搾および再狭搾が含まれる。
【0097】
NF−κBはHIV−エンハンサー/プロモータにも特異的に結合する。mac239のNefに比較して、pbj14のHIV調節蛋白Nefは、蛋白キナーゼ結合をコントロールする領域の2個のアミノ酸が異なる。蛋白キナーゼはIkBのリン酸化を信号化し、ユビキチン−プロテアソーム経路によってIkB分解をトリガーすると考えられる。分解後、NF−κBは核内に放出され、HIVの転写を高める(Cohen,J.,Science(1995)267:960)。本発明の二つの実施形態は被験体のHIV感染を阻止または低減する方法、ウイルス遺伝子発現レベルを低下させる方法であり、各方法は本明細書に記載された化合物の有効量を上記被験体に投与することを含む。
【0098】
TNFαのようなリポ多糖(LPS)誘起性サイトカインの過剰生産は敗血症性ショックと関係するプロセスの中心的なものと考えられる。さらに、LPSによる細胞の活性化における第一段階はLPSと特異的膜リセプタとの結合であることは一般に容認されている。20Sプロテアソーム複合体のα−およびβ−サブユニットはLPS結合蛋白として同定され、LPS誘起性シグナル変換が敗血症の処置または予防における重要な治療的標的であることが示唆される(Qureshi,N.et al.,J.Immun.(2003)171:1515−1525)。そのため或る実施形態において、本発明の化合物をTNFαを阻止するために使用し、敗血症性ショックを予防および/または処置できる。
【0099】
細胞内蛋白分解は、T−リンパ球に提示するための小ペプチドを生成し、MHCクラスI−介在性免疫反応を引き起こす。上記免疫系は、ウイルスに感染しているかまたは癌性トランスフォーメーションを受けた自己細胞をスクリーニングする。一実施形態はある細胞における抗原提示を阻止する方法であって、上記細胞を本明細書に記載の化合物にさらすことを含む方法である。本発明の化合物を使用してアレルギー、喘息、器官/組織拒絶(グラフト対ホスト疾患)などの免疫関連性症状、および非制限的に狼瘡、リウマチ性関節炎、乾癬、多発性硬化症を含む自己免疫病、および炎症性腸疾患(潰瘍性腸炎およびクローン病など)を処置できる。例えばもう一つの実施形態は被験体の免疫系を抑制する方法であって(例えば移植体拒絶、アレルギー、自己免疫病、および喘息など)、上記被験体に本明細書に記載の化合物の有効量を投与することを含む方法である。
【0100】
また別の実施形態は、プロテアソームまたはその他の多触媒活性を有するNtmによって生成する抗原性ペプチドの能力範囲を変える方法である。例えば、20SプロテアソームのPGPH活性が選択的に阻害された場合は、全ての酵素が阻害されなかった場合、またはプロテアソームのキモトリプシン様活性が選択的に阻害された場合に上記プロテアソームによって生産され提示されるものとは異なる抗原性ペプチドセットが、上記プロテアソームによって生産され細胞上のMHC分子に提示されると考えられる。
【0101】
幾つかのプロテアソームインヒビターはin vitroおよびin vivoにおいてユビキチン化NF−κBの分解およびプロセッシングの両方を遮断する。プロテアソームインヒビター類はIkB−α分解およびNF−κB活性化の両方を遮断する(Palmbella,et al.,Cell(1994)78:773−785;およびTraenckner,et al.,EMBO J(1994)13:5433−5441)。本発明の一実施形態はIkB−α分解を阻止する方法であって、上記細胞を本明細書に記載の化合物と接触させることを含む方法である。その他の実施形態は細胞、筋肉、器官または被験体における細胞内NF−κB含有量を低減する方法であって、上記細胞、筋肉、器官または被験体と本明細書に記載の化合物とを接触させることを含む方法である。
【0102】
蛋白分解プロセッシングを必要とするその他の真核細胞転写因子類には一般的転写因子TFIIA、単純ヘルペスウイルスVP16アクセサリー蛋白(ホスト細胞因子)、ウイルス誘起性INF調節因子2蛋白、および膜結合ステロール調節要素結合蛋白1がある。
【0103】
本発明のその他の実施形態はサイクリン依存性真核生物の細胞周期に影響を与える方法であって、細胞を本明細書に記載の化合物にさらすことを含む方法である。サイクリンは細胞周期のコントロールに関係する蛋白である。プロテアソームはサイクリンの分解に関与する。サイクリンの例としては、有糸分裂サイクリン、G1サイクリン、およびサイクリンBが含まれる。サイクリンの分解によって、細胞は一つの細胞周期(例えば有糸分裂)から出て、別の周期(例えば分割)に入ることができる。全てのサイクリンはp34.sup.cdc2蛋白キナーゼまたは関連キナーゼ類と結合する。蛋白分解標的シグナルはアミノ酸42−RAALGNISEN−50(破壊ボックス)に局在する。サイクリンはユビキチンリガーゼを受けやすい形に変換し、或いはサイクリン特異的リガーゼが有糸分裂中に活性化されるという証拠がある(Ciechanover,A.,Cell,(1994)79:13−21)。プロテアソームの阻害はサイクリン分解を阻止し、したがって例えばサイクリン関連性癌における細胞増殖を阻止する(Kumatori et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:7071−7075)。本発明の一実施形態は被験体における増殖性疾患(例えば癌、乾癬または再狭搾)を処置する方法であって、上記被験体に本明細書に記載の化合物の有効量を投与することを含む方法である。本発明は被験体のサイクリン関連性炎症を処置する方法であって、被験体に本明細書に記載の化合物の治療的有効量を投与することを含む方法も包含する。
【0104】
その他の実施形態はオンコプロテイン類のプロテアソーム依存性調節に影響を与える方法および癌増殖を処置または阻止する方法であって、各方法は細胞(in vivo、例えば被験体中、またはin vitro)を本明細書に記載の化合物にさらすことを含む。HPV−16およびHPV−18由来のE6蛋白は粗網状赤血球溶解物中のp53のATP−およびユビキチン依存性結合および分解を刺激する。劣性癌遺伝子p53は突然変異した熱不安定性E1を有する細胞系において許容できない温度で蓄積することが示された。p53の濃度増加はアポトーシスにつながる。ユビキチン系によって分解されたプロトオンコプロテインの例はc−Mos、c−Fos、およびc−Junなどである。一実施形態はp53関連アポトーシスを処置する方法であって、被験体に本明細書に記載の化合物の有効量を投与することを含む方法である。
【0105】
もう一つの実施形態において、開示された化合物類は原生動物寄生虫によって生ずる感染症のような寄生虫感染症の処置のために有用である。これらの寄生虫のプロテアソームは主として細胞の分化および複製活性に関係していると考えられる(Paugam et al.,Trends Parasitol.2003,19(2):55−59)。さらにエントアメーバ種はプロテアソームインヒビターにさらされると被包能力を失うことが判明している(Gonzales,et al.,Arch.Med.Res.1997,28,Spec No.139−140)。このような幾つかの実施形態において、開示された化合物類は、Plasmodium sps.(マラリアを発生させるP.falciparum、P.vivax、P,malariae、およびP.ovaleを含む)、Trypanosoma sps.(シャーガス病をおこすT.cruzi、アフリカ眠り病をおこすT.bruceiを含む)、Leishmania種(L.amazonensis、L.donovani、L.infantum、L.mexicanaなど)、Toxoplazma gondii、Entamoeba histolytica、Entamoeba invadens、およびGiardia lambiaから選択される原生動物寄生虫によって生ずるヒトの寄生虫感染症の処置に有用である。幾つかの実施形態において、開示される化合物類は、Plasmodium hemani、Cryptosporidium 種、Echinococcus granulosus、Eimeria tenella、Sarcocystis neurona、およびNeurospora crassaから選択される原生動物寄生虫によって生ずる動物および家畜の寄生虫感染症の処置に有用である。寄生虫病の処置にプロテアソームインヒビターとして有用なその他の化合物類がWO98/10779に記載されており、それは本明細書にそのまま組み込まれる。
【0106】
ある実施形態において、開示された化合物は寄生虫のプロテアソーム活性を非可逆的に阻害する。このような非可逆的阻害は赤血球および白血球において回復せずに酵素活性の停止を誘起することが示された。このような実施形態においては、血球は長い半減期を有するので、寄生虫への反復被曝に対して長期間の治療的防御がもたらされるかも知れない。ある実施形態において、血球のこの長い半減期は、今後の感染に対する化学的予防に関してより長期の防御をもたらすかも知れない。
【0107】
20Sプロテアソームに結合するインヒビターは骨器官培養において骨の形成を刺激することも証明された。さらに、このようなインヒビターをマウスに全身投与すると、あるプロテアソームインヒビターは骨量および骨形成速度を70パーセント増加させた(Garrett,I.R.et al.,J.Clin.Invest.(2003)111:1771−1782)。これはユビキチン−プロテアソーム機構が骨芽細胞の分化および骨形成を調節することを示唆するものである。そこでここに開示される化合物類は骨粗鬆症のような骨損失と関連する疾患の処置および/または予防に有用である。
【0108】
骨組織は骨細胞を刺激する能力を有する因子類のすぐれた供給源である。例えばウシ骨組織の抽出液は骨の構造的一体性を維持する役割を有する構造蛋白だけでなく、骨細胞の増殖を刺激することができる生物学的に活性な骨成長因子類も含む。これら後者の因子類のなかには、骨形態発生蛋白(BMPs)と呼ばれる最近報告された骨ファミリーがある。これら成長因子の全てはその他の細胞型、並びに骨細胞に影響を有する。Hardy,M.H.et al.,Trans Genet(1992)8:55−61は、発生中に骨形態発生蛋白(BMPs)が毛包に分化発現している証拠を報告している。Harris,S.E.et al.,J Bone Miner Res(1994)9:855−863は骨細胞中のBMP−2およびその他の物質類の発現に与えるTGF−βの影響を報告している。成熟中および細胞増殖期後にも成熟毛包におけるBMP−2発現がおきる(Hardy,et al.,(1992,supra)。したがって本発明の化合物は毛包の成長を刺激するためにも有用であるらしい。
【0109】
開示される化合物類は、プロテアソームを含むNtnヒドロラーゼ類によって処理された蛋白(例えば酵素、転写因子)のスクリーニングのための診断薬(例えば診断キットに使用、または臨床研究室において使用)としても有用であることを最後に述べる。開示される化合物類はX/MB1サブユニットまたはα鎖に特異的に結合し、それに関連する蛋白分解活性を阻害する研究試薬としても有用である。例えばプロテアソームのその他のサブユニット(およびその特異的インヒビター)の活性を測定できる。
【0110】
大部分の細胞蛋白は成熟中または活性化中に蛋白分解プロセッシングを受ける。本明細書に開示される酵素インヒビター類を使用して細胞性、発達的または生理的プロセスまたは生成物が、特定のNtnヒドロラーゼの蛋白分解活性によって調節されるのかどうかを調べることができる。そのような方法の一つは、生体、完全無傷の細胞標本、または細胞抽出液を入手し;上記生体、細胞標本または細胞抽出液を本明細書に記載の化合物にさらし;上記化合物にさらされた生体、細胞標本、または細胞抽出液をシグナルにさらし、上記プロセスまたは生成物をモニターすることを含む。本明細書に開示される化合物類の高い選択性により、所定の細胞性、発育的または生理学的プロセスにおけるNtn(例えば20Sプロテアソーム)を速やかかつ正確に排除し、または関連づけることができる。
【0111】
(投与)
本明細書に記載のように作られる化合物類は、当業者には公知のように、処置すべき病気、患者の年齢、症状、および体重によって種々の形で投与できる。例えば上記化合物を経口投与する場合、それらは錠剤、カプセル、顆粒、粉末またはシロップとして処方され;または非経口投与のためには注射(静脈内、筋肉内、または皮下)、点滴製剤、または座薬として処方できる。眼の粘膜経路によって適用する場合には、それらは点眼薬または眼軟膏として処方される。これら組成物は一般的手段によって作ることができ、所望ならば活性成分を任意の一般的添加物または賦形剤、例えば結合剤、崩壊剤、滑剤、矯味薬、溶解剤、懸濁補助剤、乳化剤、コーティング剤、シクロデキストリンおよび/または緩衝剤と混合できる。投与量は患者の症状、年齢および体重、処置または予防すべき疾患の性質および重症度、投与経路および薬剤型によって変動するが、概して化合物の1日量0.01ないし2000mgが成人患者には推奨され、これは単回投与または分割投与できる。単回投与型を作るためにキャリア物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に治療的効果をもたらす化合物量である。
【0112】
所定の患者における治療効果として最も有効な結果を与える正確な投与時間および/または組成物量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティ、患者の生理的状態(年齢、性別、疾患の種類および病期、全身的状態、所定量に対する反応性、および薬物療法の種類など)、投与経路などに依存する。しかし上記の指針は例えば最適時間および/または投与量を決めるなど、上記処置を微調整するための基礎として役立ち、これには上記被験体のモニターおよび投与量および/またはタイミングの調節からなる日常的実験だけが必要である。
【0113】
用語“薬学的に受容可能な”は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび動物の組織と接触しても過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題または合併症を起こさず、合理的利益/リスク比を示す、適切に使用できるリガンド、物質、組成物、および/または投与型について言う。
【0114】
本明細書に使用される用語“薬学的に受容可能なキャリア”とは、薬学的に受容可能な物質、組成物または媒体、例えば液体または固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル剤などを意味する。各キャリアは上記組成物のその他の成分と適合し、患者に無害であるという点で“容認”できなければならない。薬学的に受容可能なキャリアとして役立つ物質類の例として:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)コーンスターチ、ポテトスターチなどの澱粉類、および置換または非置換β−シクロデキストリンなど;(3)セルロースおよびその誘導体類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、およびセルロースアセテートなど;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび座剤用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールのようなグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)無パイロジェン水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)薬学的組成物に用いられるその他の無毒性適合物質類が含まれる。幾つかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は無パイロジェンである、すなわち患者に投与した際顕著な温度上昇をおこさない。
【0115】
用語“薬学的に受容可能な塩”とは上記インヒビターの比較的無毒性の無機および有機酸付加塩を言う。これらの塩は上記インヒビターの最後の分離および精製中に現場で作ることができ、または別に、遊離塩基の形の精製したインヒビターを適切な有機または無機酸と反応させ、生成した塩を分離することによって作ることができる。典型的塩としては臭化水素、塩化水素、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレエート、フマール酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、ナフチレート、メシレート、グルコヘプトネート、ラクトビオネート、ラウリルスルホネート塩類、およびアミノ酸塩類などがある(例えばBerge etal.,(1977)“Pharmaceutical Salts”、J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。
【0116】
その他の場合、本発明の方法に有用なインヒビター類は1個以上の酸性官能基を含み、そのため薬学的に受容可能な塩基類と共に薬学的に受容可能な塩を形成できる。これらの場合の“薬学的に受容可能な塩類”とはインヒビターの比較的無毒性の無機および有機塩基付加塩を言う。これらの塩類も同様に上記インヒビターの最後の分離および精製中に現場で、または別に、遊離酸の形の精製インヒビターと適切な塩基、例えば薬学的に受容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩と、アンモニアと、または薬学的に受容可能な有機第一、第二または第三アミンとを反応させることによって作ることができる。典型的アルカリまたはアルカリ土類塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩などである。塩基付加塩の形成に有用な典型的有機アミンはエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを含む(Berge etal.,supra参照)。
【0117】
湿潤剤、乳化剤および滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど、並びに着色料、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味剤および芳香剤、保存料および抗酸化剤も上記組成物中に存在し得る。
【0118】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例には(1)アスコルビン酸、システイン塩酸、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアミノール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、α−トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤;および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤がある。
【0119】
経口投与に適した組成物は、カプセル、カシェ剤、ピル、錠剤、トローチ(香味料を含む基剤、一般にはスクロースおよびアカシアまたはトラガントを使用)、粉末、顆粒の形で、または水溶性または水不溶性液中の溶液または懸濁液として、または水中油または油中水液体エマルションとして、またはエリキシルまたはシロップとして、または香剤(ゼラチンとグリシン、またはスクロースとアカシアのような不活性基質を使用)としておよび/または口中洗浄液などの形であり、各々は所定量のインヒビターを活性成分として含む。組成物は一塊、舐剤またはペーストとしても投与できる。
【0120】
経口投与のための固体投与型(カプセル、錠剤、ピル、糖衣錠、粉末、顆粒など)において活性成分は1種類以上の薬学的に受容可能なキャリア、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または次の任意のものと混合される:(1)澱粉、シクロデキストリン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニット、および/または珪酸のようなフィラーまたは展開剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシア、(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)アガール−アガール、炭酸カルシウム、ポテトまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、ある種の珪酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)湿潤剤、例えばアセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート;(8)カオリンおよびベントナイトクレーのような吸収材;(9)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物;(10)着色料。カプセル、錠剤およびピルの場合には薬学的組成物は緩衝剤も含むことができる。同様なタイプの固体組成物はラクロースまたはミルクシュガー並びに高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて軟−および硬充填ゼラチンカプセルのフィラーとしても用いられる。
【0121】
錠剤は必要に応じて1種類以上の補助成分と共に圧縮または成形によって作ることができる。圧縮錠剤は結合剤(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えばナトリウム澱粉グリコレート、または架橋ナルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて作られる。成形錠剤は適切な機械で、不活性液体希釈剤で湿らせた上記粉末インヒビターの混合物を成形することによって作られる。
【0122】
錠剤およびその他の固体投与型、例えば糖衣錠、カプセル、ピルおよび顆粒は、必要に応じて腸溶コーティングおよび当業者には公知のその他の塗膜を含むコーティング類および外皮でしるしづけをし、或いは製造してもよい。また、所望の放出プロフィールが得られるような種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他のポリマー基質、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、上記投与型の活性成分の放出が遅くなりまたは放出が調節されるようにそれらを処方することができる。それらは例えば細菌フィルターを使用して濾過することによって、または滅菌水、またはその他の滅菌注射用メジウムに溶解できる無菌固体組成物の形の滅菌剤を使用直前に挿入することによって滅菌することができる。これらの組成物は必要に応じて乳白剤を含んでもよく、それらは活性成分だけを、好ましくは消化管のある部分において必要に応じて徐々に放出する組成物でもよい。使用できる埋封組成物の例は重合物質およびワックス類である。上記活性成分は、適切ならば1種類以上の上記の賦形剤と共にミクロ封入型にすることもできる。
【0123】
経口投与のための液体投与型は薬学的に容認できるエマルション、ミクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルなどである。活性成分に加えて、液体投与型はこの分野で一般的に用いられる不活性希釈剤、例えば水またはその他の溶媒類、溶解剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に綿実油、グラウンドナット、コーン、胚芽、オリーブ、カスタードおよびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、およびソルビタンの脂肪酸エステル類およびこれらの混合物を含むことができる。
【0124】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、着色剤、芳香剤および保存料も含むことができる。
【0125】
懸濁液は活性成分の他に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガール−アガールおよびトラガント、およびこれらの混合物などの懸濁剤を含むことができる。
【0126】
直腸または膣内投与のための製剤は座薬として作られる。それは1種類以上のインヒビターを、室温では固体であるが体温では液体であり、そのため直腸または膣内で溶け、活性物質を放出するような1種類以上の適切な非刺激性賦形剤またはキャリア、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座剤用ワックスまたはサリチレートなどと混合することによって作ることができる。
【0127】
膣内投与に適した組成物としては、この分野に適することが知られているキャリア類を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー処方がある。
【0128】
インヒビターの局所的または経皮的投与のための投与型としては粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤などがある。上記活性成分は無菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアと、および必要ならば任意の保存料、緩衝剤、または噴射剤と混合できる。
【0129】
上記軟膏、ペースト、クリームおよびゲルはインヒビターの他に、動物および植物性脂肪、油類、ワックス類、パラフィン類、澱粉、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン類、ベントナイト類、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物などの賦形剤を含むことができる。
【0130】
粉末およびスプレーはインヒビターの他に、ラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれら物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーはその他にクロロフルオロ炭化水素のような一般的噴射剤および、ブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素を含むことができる。
【0131】
本発明のインヒビターはエアロゾルによって投与することもできる。これは上記組成物を含む水性エアロゾル、リポソーム製剤、または固体粒子によって実現する。非水性(例えばフルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用できる。超音波ネブライザが好ましい。なぜならばそれらは上記化合物の分解をおこす上記製剤の剪断被曝を最小にするからである。
【0132】
水性エアロゾルは上記製剤の水性溶液または懸濁液を一般的な薬学的に受容可能なキャリアおよび安定剤と共に処方することによって調製するのが普通である。上記キャリアおよび安定剤は特定の組成物の要求によって種々様々であるが、一般的には非イオン性界面活性剤(ツイーン類、プルロニックス、ソルビタンエステル類、レシチン、クレモフォル類)、薬学的に受容可能な補助溶媒、例えばポリエチレングリコール、血清アルブミンなどの無害蛋白類、オレイン酸、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類、または糖アルコール類を含む。エアロゾルは一般的に等張溶液から作られる。
【0133】
経皮パッチは、インヒビターを体内に調節的に送達するという付加的利点を有する。このような投与型は上記薬剤を適切な媒質に溶解または分散することによって作ることができる。本発明のインヒビターの皮膚内への溶融を高めるために吸収促進剤も使用できる。このような溶融速度は速度調節膜を備えるかまたはインヒビターをポリマー基質またはゲルに分散させることによって調節できる。
【0134】
非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は1種類以上のインヒビターと、1種類以上の薬学的に受容可能な滅菌した水性または非水性溶液、分散剤、懸濁剤またはエマルション、または使用直前に溶解して無菌注射用溶液を生成できる無菌粉末との組み合わせを含む。上記無菌粉末は抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、上記組成物を被験体レシピエントの血液と等張にする溶質類、または懸濁剤または濃化剤を含むことができる。
【0135】
本発明の薬学的組成物に用いられる適切な水性、非水性キャリアの例は、水、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびエチルオレエートなどの注射用有機エステル類を含む。正しい流動性は、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散体の場合には必要な粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。
【0136】
これらの組成物は保存料、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のようなアジュバントも含むことができる。微生物作用は種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの挿入によって確実に阻止できる。糖、塩化ナトリウムなど浸透圧調節剤を組成物中に含めることも好ましい。その上、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる作用物質の挿入によって注射薬剤型の吸収を長引かせることができる。
【0137】
ある場合には薬剤効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの上記薬剤の吸収を遅くすることが所望される。例えば非経口投与薬剤型の吸収遅延は油性媒質に上記薬剤を溶解または懸濁することによって実現する。
【0138】
注射できるデポー型はポリラクチド−ポリグリコリドのような生体内分解性ポリマー類中にインヒビターを挿入したミクロ封入基質を形成することによって作られる。薬剤対ポリマーの比および特定のポリマーの性質によって、薬剤放出はコントロールされる。その他の生体内分解性ポリマーの例はポリ(オルトエステル類)およびポリ(無水物類)などである。デポー注射用組成物は上記薬剤を体組織との適合性を有するリポソーム類またはミクロエマルションに封じ込めることによっても作られる。
【0139】
上記製剤は経口的、非経口的、局所的または直腸内に投与できる。それらは各投与経路に適した形で与えられるのは当然である。例えばそれらは錠剤またはカプセル型で、注射、吸入、眼ローション、軟膏、座薬、注入によって;ローションまたは軟膏によって局所的に;そして直腸内に座薬によって投与される。経口投与が好ましい。
【0140】
本明細書に使用される用語“非経口投与”および“非経口的に投与される”は、経腸および局所投与以外の投与法、通常は注射による投与法を意味し、非制限的に静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管的、皮下、皮内、関節内、表皮下、関節内、クモ膜下、脊椎内および胸骨内注射および注入を含む。
【0141】
本明細書に使用する用語“全身的投与”“全身的に投与する”“末梢的投与”および“末梢的に投与する”は直接中枢神経系に投与することを除いて、リガンド、薬剤またはその他の物質を投与すること。例えばそれが患者の系に入り、代謝およびその他の同様なプロセスを受けるような皮下投与などを意味する。
【0142】
これらのインヒビターは任意の適切な経路、例えば経口的、鼻孔内(スプレーなど)、直腸内、膣内、非経口的、脳槽内経路によって、およびバッカルおよび舌下など局所的に、粉末、軟膏または滴によって、ヒトおよびその他の動物に投与され、治療する。
【0143】
選択される投与経路には無関係に、適切な水和型で使用できるインヒビター、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の一般的方法によって薬学的に受容可能な投与型に処方される。
【0144】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投与レベルは、特定の患者、組成物および投与法によってその患者に毒性を与えずに所望の治療的反応が効果的に得られるように種々変更される。
【0145】
薬学的に受容可能な混合物中の開示された化合物濃度は、投与される化合物の量、使用化合物の薬物動態的特性、および投与経路など幾つかの要因によって変化する。概して本発明の組成物は、本明細書に開示される化合物をその他の諸物質中約0.1−10%w/v含む水溶液に調製され、非経口投与される。典型的投与範囲は1日約0.01ないし約50mg/kg体重を1−4回に分けて与える。各分割用量は、本発明の同一または異なる化合物類を含むことができる。投与量は患者の全体的健康状態および選択され化合物の処方および投与経路を含む幾つかの要因に依存する。
【0146】
本発明のまた別の局面は1種類以上のその他の治療薬をプロテアソームインヒビターと共に投与する共同治療を提供する。このような共同治療は個々の治療成分を同時投与、逐次投与、または分離投与することによって達成される。
【0147】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は1種類以上のその他のプロテアソームインヒビターと共に投与される。
【0148】
ある実施形態において、本発明の化合物は化学療法剤と共に投与される。適切な化学療法剤は天然産物、例えばビンカアルカロイド類(すなわちビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン類(すなわちエトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびイダルビシン)、アントラサイクリン類、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシンなど、酵素類(全身的にL−アスパラギンを代謝し、それ自体はアスパラギンを合成する能力をもたない細胞を喪失させるL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェンマスタードのような抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミン類およびメチルメラミン類(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソ尿素類(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンス−デカルバジニン(DTIC);抗増殖性/抗有糸分裂性抗代謝物、例えば葉酸類似物(メトトレキセート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロキシウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体および関連インヒビター類(メルカプトプリン、チオグアイン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン);アロマターゼインヒビター類(アナストロゾール、エキセメスタン、およびレトロゾール);および白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトーテン、アミノグルテチミド;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター類(トリコスタチン、酪酸ナトリウム、アピシダン、スベロイルアニリドヒドロアミック酸);ホルモン類(すなわちエストロゲン)および、黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストのようなホルモンアゴニスト類(ゴセレリン、ループロリドおよびトリプトレリン)を含む。その他の化学療法剤はメクロレタミン、カンプトテシン、イフォスファミド、タモキシフェン、ラロキシフェン、ゲンシタビン、ナベルビン、または前記のものの任意の類似体または誘導体変形物を含む。
【0149】
ある実施形態において、本発明の化合物はサイトカインと共に投与される。サイトカインには、非制限的に、インターフェロンγ、α、およびβ、インターロイキン1−8、10および12、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CFS)、TNF−αおよびβおよびTGF−βが含まれる。
【0150】
ある実施形態において、本発明の化合物はステロイドと共に投与される。適切なステロイドは非制限的に21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメサゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコルト、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフプレドネート、エノキソロン、フルアザコルト、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニド、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリソン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノアセテート、プレドニゾロン燐酸ナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトル、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、およびそれらの塩類および/または誘導体類である。
【0151】
ある実施形態において、本発明の化合物は免疫療法剤と共に投与される。適切な免疫療法剤は非制限的にMDRモジュレータ類(ベラパミル、バルスポルダール、ビリコダール、タリキダール、ラニキダール)、シクロスポリン、タリドミド、およびモノクローナル抗体類を含む。モノクローナル抗体類はnakedまたは結合どちらでもよく、例えばリツキシマブ、トシツモマブ、アレンツズマブ、エプラツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ゲンツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ、セツキシマブ、エルロチニブおよびトラスツズマブを含む。
【実施例】
【0152】
(スキーム1:実施例1の合成)
【0153】
【化30】

(A)の合成
MeCN 900mL中、NBocロイシン(19.81g、85.67mmol、1.0eq.)およびフェニルアラニンベンジルエステル(25.0g、85.67mmol、1.0eq.)の溶液に、DIEA(44.29g、60mL、342.68mmol、4.0eq.)を加え、その混合物を氷浴中で0℃に冷却した。この混合物にHOBT(18.52g、137.08mmol、1.6eq.)を加えた。その後これにPyBOP(71.33g、137.08mmol、1.6eq.)を5分間にわたって数回に分けて加えた。この反応物をアルゴン気流下に置き、一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残った物質をEtOAc500mL中にとり、飽和NaHCO、HOおよびブラインで洗い、MgSO4上で乾燥した。MgSO4を濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。70%TFA/DCM(150mL)の0℃冷却溶液にBocNHLeuPheOBz(25.0g、53.35mmol、1.0eq.)を加えた。溶液を撹拌し、2時間にわたって室温にまで温めた。このとき上記混合物は濃縮され、高度の真空下に2時間置くとジペプチドアミンのTFA塩が生成した。生じた油にBocNHLeuPheCOH(14.68g、53.35mmol、1.0eq.)、550mLのMeCNおよびDIEA(27.58g、37.2mL、213.4mmol、4.0eq.)を加え、この混合物を氷浴中で0℃に冷やした。冷却した混合物にHOBT(11.53g、85.36mmol、1.6eq.)を加え、その後PyBOP(44.42g、85.36mmol、1.6eq.)を5分間にわたって数回に分けて加えた。反応物をアルゴン気流下に置き、一晩にわたって室温にまで温めた。そのときに白色沈殿が生成した。反応混合物を冷やし、固体を濾過によって集め、その後冷MeCNで洗うと(A)(24.86g)が得られた。
【0154】
(B)の合成
中間体(A)(23.0mmol、14.5g)をTFA/DCM(80%)と混合し、室温で1時間撹拌すると混合物は濃縮された。それを高度真空下に2時間置くと(B)が得られた。
【0155】
(C)の合成
MeCN(100mL)中(B)(1.6mmol、1eq.)の溶液に5−クロロバレリル塩化物(1.9mmol、0.24mL、1.2eq.)およびDIEA(6.4mmol、1.2mL、4eq.)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、その後濃縮すると固体が得られた。上記固体を集め、エーテルで洗うとアルキル塩化物が得られた。乾燥アセトン(100mL)中上記アルキル塩化物(0.21mmol、0.134g)の溶液にNaI(2.5mmol、0.387g)を加え、反応物を一晩還流した。反応混合物を真空下で濃縮し、残留物をEtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去すると(C)が得られた。
【0156】
(D)の合成
THF(2mL)中(C)(0.040mmol、30.0mg)の溶液に、ピペリジン(0.048mmol、5.0mg)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。室温で2時間撹拌後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水、ブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%Pd/C(30.0mg)を加えた。混合物を水素気流下に2時間置いた。反応物をセライトによって濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(D)(11.0mg)が得られた。
【0157】
化合物1の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.098mmol、5.2eq.)の撹拌溶液に(D)(0.019mmol、0.014g、1eq.)、DIEA(0.50mmol、88μL、20eq.)およびHOBT(0.20mmol、0.0272g、10.5eq.)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.20mmol、0.0272g、10.5eq.)を数回に分けて加えた。反応物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物をその後飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物1が得られた(5.1mg)。IC5020S CT−L<50nM、IC50細胞ベースのCT−L<50nM。
【0158】
(スキーム2:実施例2の合成)
【0159】
【化31】

(F)の合成
THF(2mL)中(C)(0.040mmol、0.030g)の溶液に、モルフォリン(0.050mmol)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。室温で2時間撹拌した後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%Pd/C(30.0mg)を加え、混合物を1気圧の水素下に2時間置いた。反応物をセライトで濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(F)(19.0mg)が得られた。
【0160】
化合物2の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.098mmol、3.2eq.)の撹拌溶液に、(F)(0.030mmol、0.018g、1eq.)、DIEA(0.50mmol、88μL、17eq.)、およびHOBT(0.20mmol、27.2mg、6.7eq.))を加えた。その混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.20mmol、0.105g、6.7eq.)を数回に分けて加えた。混合物をその後5℃で窒素気流下で一晩撹拌した。反応物をその後飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物2(6.0mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースのCT−L<50nM。
【0161】
(スキーム3:実施例3の合成)
【0162】
【化32】

(G)の合成
THF(2mL)中(C)(0.040mmol、30.0mg)の溶液に、N−メチルピペラジン(0.050mmol、5.0mg)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。室温で2時間撹拌後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エーテルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%PdC(30.0mg)を加え、混合物を1気圧の水素中に2時間置いた。反応物をセライトで濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(G)が得られた(31.0mg)。
【0163】
化合物3の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.098mmol、3.2eq.)の溶液に(G)(0.030mmol、18.0mg、1eq.)、DIEA(0.50mmol、88μL、17eq.)、およびHOBT(0.20mmol、27.2mg、6.7eq.)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.20mmol、0.105g、6.7eq.)を数回に分けて加えた。混合物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物3(3.9mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0164】
(スキーム4:実施例5の合成)
【0165】
【化33】

(I)の合成
MeCN(120mL)中(B)(2.0mmol、1eq.)の溶液に、4−クロロブチル塩化物(2.8mmol、0.32mL、1.2eq.)およびDIEA(8mmol、1.4mL、4eq.)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、その後濃縮すると固体が得られた。その固体を集め、エーテルで洗うと塩化アルキル(0.808g)が得られた。乾燥アセトン(10mL)中塩化アルキル(0.09mmol、0.060g)の溶液にNaI(0.86mmol、0.130g)を加え、反応物を一晩還流した。内容物を真空下で濃縮し、残留物をDCMに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると(I)(0.050g)が得られた。
【0166】
(J)の合成
THF(2mL)中(I)(0.040mmol、30.0mg)の溶液にピペリジン(0.050mmol、4.0mg)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。一晩室温で撹拌した後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%Pd/C(0.020g)を加え、混合物を1気圧の水素中に2時間置いた。反応物をセライトで濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(J)が得られた。
【0167】
化合物5の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.098mmol、4.9eq.)の撹拌溶液に、(J)(0.020mmol、1eq.)、DIEA(0.18mmol、31μL、9eq.)およびHOBT(0.074mmol、10.0mg、3.7eq.)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.07mmol、36.0mg、3.7eq.)を数回に分けて加えた。混合物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO4上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物5(18.2mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0168】
(スキーム5:実施例6の合成)
【0169】
【化34】

(K)の合成
THF(2mL)中(I)(0.040mmol、30.0mg)の溶液に、モルフォリン(0.050mmol、5.0mg)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。一晩室温で撹拌後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過して除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%Pd/C(20.0mg)を加え、混合物を1気圧の水素中に2時間置いた。反応物をセライトで濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(K)が得られた。
【0170】
化合物6の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.151mmol、1.2eq.)の溶液に(K)(0.126mmol、0.075g、1eq.)、DIEA(0.50mmol、88μL、4eq.)およびHOBT(0.20mmol、27.0mg、1.6eq.)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.202mmol、0.105g、1.6eq.)を数回に分けて加えた。混合物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物6(46.6mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0171】
(スキーム6:実施例7の合成)
【0172】
【化35】

(L)の合成
THF(2mL)中(I)(0.040mmol、30.0mg)の溶液に、N−メチルピペラジン(0.050mmol、5.0mg)およびDIEA(0.040mmol、0.5mg)を加えた。室温で一晩撹拌後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルを1:1EtOAc/MeOH(10mL)に溶解し、5%Pd/C(20.0mg)を加え、混合物を1気圧の水素中に2時間置いた。反応物をセライトによって濾過し、揮発物を減圧下で除去すると(L)が得られた。
【0173】
化合物7の合成
DMF(3mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.098mmol、1.5eq.)の撹拌溶液に(L)(0.065mmol、0.075g、1eq.)、DIEA(0.50mmol、88μL、8eq.)およびHOBT(0.20mmol、27.0mg、3.1eq.)を加えた。その混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.20mmol、0.105g、3.1eq.)を数回に分けて加えた。その後混合物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物7(4.8mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0174】
(スキーム7:実施例8の合成)
【0175】
【化36】

(N)の合成
化合物(B)(0.39mmol)をDMF(6mL)に溶解し、4−モルフォリノ酢酸(0.507mmol、0.074g)を加え、その後DIEA(3.9mmol、0.504g、0.68mL)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.62mmol、0.32g)を加え、室温に温めながらアルゴン気流下で一晩撹拌した。その混合物をブライン(50mL)で希釈し、EtOAc(5x20mL)で抽出した。上記有機層を合一し、飽和NaHCO(5x15mL)およびブライン(1x25mL)で洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去すると中間体エステル(M)(0.195g)が得られた。(M)(0.150g、0.23mmol)に10%Pd/C(0.05g)を加え、その後MeOHとEtOAcとの1:1混合物 5mLを加え、混合物を水素気流下に置いた。2時間後、内容物をセライトのプラグによって濾過し、真空下で濃縮すると(N)(0.12g)が得られた。
【0176】
化合物8の合成
MeCN(5mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.27mmol、0.083mg、1.3eq.)の撹拌溶液に(N)(0.17mmol、0.10g、1eq.)、DIEA(1.73mmol、0.30mL、10eq.)およびHOBT(0.27mmol、0.037mg、1.6eq.)を加えた。混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.27mmol、0.14g、1.6eq.)を数回に分けて加えた。その混合物をアルゴン気流下で5℃で一晩撹拌し、その後反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮してペーストにした。上記粗物質を最少量のMeOHに溶解し、急速撹拌中の0℃の冷水(100mL)に徐々に加えた。化合物8をその後濾過によって抽出した(0.080g)。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0177】
(スキーム8:実施例9の合成)
【0178】
【化37】

(P)の合成
DMF(10mL)中(O)[フェニルアラニンベンジルエステルの代わりにフェニルアラニンメチルエステルを用い、(B)の合成と同様な方法によって合成した](1.8mmol、1eq.)の0℃溶液に、クロロアセチル塩化物(2.7mmol、0.22mL、1.5eq.)およびDIEA(3.5mmol、1.4mL、3eq.)を加えた。混合物を温め、室温で一晩撹拌した。反応物を真空下で濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、NaSO上で乾燥した。NaSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去すると(P)(0.64g)が得られた。
【0179】
(Q)の合成
THF(20mL)中(P)(0.188mmol、0.10g)の溶液に、N−メチルピペラジン(0.226mmol、22.0mg)およびKI(0.04mmol、6.4mg)を加えた。室温で一晩撹拌後、内容物を濃縮し、EtOAcに溶解し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去すると粗エステル(0.095g)が得られた。その粗エステル(0.095g)を3:1MeOH/H2O(8mL)に溶解し、0℃に冷やし、LiOH(1.6mmol、39.0mg)を加えた。その混合物を5℃で一晩撹拌し、飽和NHClで反応を停止し、水(20mL)で希釈し、1NのHClでpHを3に調節した。混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を合一し、NaSO上で乾燥した。NaSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去すると(Q)(20.0mg)が得られた。
【0180】
化合物9の合成
DMF(1mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.082mmol、2.4eq.)の撹拌溶液に(Q)(0.034mmol、0.075g、1eq.)、DIEA(0.29mmol、50μL、8.5eq.)およびHOBT(0.13mmol、18.0mg、3.8eq.)を加えた。その混合物を氷浴中で0℃に冷やし、BOP(0.13mmol、0.058g、3.8eq.)を数回に分けて与えた。混合物をその後5℃で窒素気流下で一晩撹拌した。反応物をその後飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濾過し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物9が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0181】
(スキーム9:実施例10の合成)
【0182】
【化38】

(R)の合成
DMF(4mL)中ベンジル2−ブロモアセテート(4.56mmol、0.715mL)および4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン(3.8mmol、0.466mL)の溶液にNaH(5.7mmol、0.136g)を加え、その混合物を窒素気流下で一晩撹拌した。反応物をブラインで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を合一し、水およびブラインで洗い、MgSO上で乾燥した。そのMgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗エステルをフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。精製したエステルを1:1MeOH/EtOAc(10mL)に溶解し、5%Pd/C(0.100g)を加え、混合物を一晩水素気流中に置いた。反応物をパージし、セライトで濾過し、真空下で濃縮すると(R)(0.107g)が得られた。
【0183】
(S)の合成
DMF(15mL)中(B)(0.56mmol)の溶液に、化合物(R)(0.56mmol、0.107g)を加え、その後DIEA(2.24mmol、0.391mL)を加えた。その混合物を氷浴中で0℃に冷やし、HOBT(0.90mmol、0.121g)およびPyBOP(0.90mmol、0.466g)を加え、反応物をアルゴン気流下で室温にまで温めながら一晩撹拌した。混合物をブライン(50mL)で希釈し、EtOAc(5x20mL)で抽出した。有機層を合一し、飽和NaHCO(5x15mL)およびブライン(1x25mL)で洗い、MgSO上で乾燥した。そのMgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去すると(S)が得られた。
【0184】
(T)の合成
1:1MeOH/EtOAc(10mL)中(S)(0.56mmol)の溶液に、5%Pd/C(0.1g)を加え、混合物を一晩水素気流中に置いた。反応物をパージし、セライトによって濾過し、真空下で濃縮すると(T)が得られた。
【0185】
化合物10の合成
DMF(10mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288を参照](0.164mmol、1.0eq.)の撹拌溶液に、(T)(0.16mmol、0.100g、1eq.)、DIEA(0.64mmol、112μL、4.0eq.)、およびHOBT(0.25mmol、35.0mg、1.6eq.)を加えた。その混合物を氷浴中で0℃に冷やし、PyBOP(0.25mmol、0.133g、1.6eq.)を数回に分けて加えた。混合物を窒素気流下で5℃で一晩撹拌した。反応物を飽和NaClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水およびブラインで洗い、無水MgSO上で乾燥し、濃縮して油にし、それをフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると化合物10(19.0mg)が得られた。IC5020SCT−L<50nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0186】
(スキーム10:実施例13の合成)
【0187】
【化39】

(W)の合成
DCM(20mL)中Fmoc−Phe(4−CF)−OH(2.2mmol、1.0g)の溶液に1−メチルイミジゾール(6.7mmol、0.370mL)を加えた。上記溶液が均質になったとき、1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール(MSNT)(2.9mmol、0.870g)を加えた。MSNTが溶解した後、その反応混合物をワング樹脂(0.8mmol、1.0g)に加え、生じた溶液を45分間振とうさせた。樹脂を濾過し、DMF(50mL)、MeOH(50mL)およびDCM(50mL)で洗った。生成した樹脂を空気乾燥すると(W)が得られた。
【0188】
(X)の合成
(W)(0.40mmol、0.5g)に20%ピペリジン/DMF(10mL)を加え、生じた不均質溶液を20分間振とうさせた。混合物を濾過し、樹脂をDMF(20mL)、MeOH(20mL)およびDCM(20mL)で洗い、空気乾燥した。樹脂を上記反応条件に二度目にさらすと(X)が得られた。
【0189】
(Y)の合成
(X)(0.40mmol)にDMF(20mL)、Fmoc−Leu−OH(0.40mmol、0.143g)、DIEA(1.6mmol、0.12mL)、HOBT(0.64mmol、0.086g)およびBOP(0.64mmol、0.178g)を加え、この反応混合物を一晩振とうさせた。上記反応混合物を濾過し、樹脂をDMF(40mL)、MeOH(40mL)、およびDCM(40mL)で洗い、空気乾燥すると(Y)が得られた。
【0190】
(Z)の合成
(Y)(0.08mmol、0.10g)に20%ピペリジン/DMF(2mL)を加え、生成した不均質溶液を20分間振とうさせた。上記溶液を濾過し、樹脂をDMF(10mL)、MeOH(10mL)およびDCM(10mL)で洗浄し、空気乾燥した。樹脂を上記反応条件に二度目にさらすと(Z)が得られた。
【0191】
(AA)の合成
(Z)(0.08mmol、0.10g)にDMF(20mL)、Fmoc−hPhe−OH(0.40mmol、0.143g)、DIEA(1.6mmol、0.12mL)、HOBT(0.64mmol、0.062mg)、およびBOP(0.64mmol、0.178g)を加え、反応混合物を一晩振とうさせた。上記反応混合物を濾過し、樹脂をDMF(40mL)、MeOH(40mL)、およびDCM(40mL)で洗浄し、空気乾燥すると(AA)が得られた。
【0192】
(BB)の合成
(AA)(0.08mmol、0.10g)に20%ピペリジン/DMF(2ml)を加えた。生成した不均質溶液を20分間振とうさせた。上記溶液を濾過し、樹脂をDMF(10mL)、MeOH(10mL)およびDCM(10mL)で洗浄し、空気乾燥させた。上記樹脂を上記反応条件に二度目にさらすと(BB)が得られた。
【0193】
(CC)の合成
(BB)(0.08mmol、0.10g)にDMF(2mL)、4−モルホリノ酢酸(0.10mmol、0.015g)、DIEA(0.17mmol、0.029mL)、HOBT(0.11mmol、0.016g)およびBOP(0.11mmol,0.051g)を加え、反応混合物を一晩振とうさせた。上記反応混合物を濾過し、樹脂をDMF(15mL)、MeOH(15mL)、およびDCM(15mL)で洗浄し、空気乾燥すると(CC)が得られた。
【0194】
(DD)の合成
(CC)(0.08mmol、0.10g)に50%TFA/DCM(2mL)を加え、上記混合物を20分間振とうさせた(樹脂は紫色になった)。反応物を濾過し、樹脂をDCM(10mL)で洗った。揮発物を減圧下で除去し、生成した油をDCM(10mL)で希釈し、合計3回蒸発させると(DD)が得られた。
【0195】
化合物13の合成
MeCN(2mL)中(E)[Bioorg.Med.Chem.Lett.,1999,9,2283−2288](0.11mmol、0.019g)の撹拌溶液に(DD)(0.1mmol)、DIEA(2.9mmol、0.5mL)、HOBT(0.2mmol、0.032g)、およびBOP(0.23mmol、0.103g)を加え、上記混合物を室温で一晩撹拌した。反応物をブライン(15mL)で希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水、飽和NaHCO、およびブラインで洗浄し、無水MgSO上で乾燥した。MgSOを濾過によって除去し、揮発物を減圧下で除去した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると13(12.6mg)が得られた。IC5020SCT−L<500nM、IC50細胞ベースCT−L<50nM。
【0196】
(等価物)
当業者は日常的実験を用いて本明細書に記載の化合物およびその使用法の多数の等価物を確認し、または確かめることができる。このような等価物は本発明の範囲内にあると考えられ、以下の請求項に含まれる。
【0197】
上記の参考文献および刊行物は全て、参考として本明細書中に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化1】

式中、
XはO、NHまたはN−アルキルであり;
YはNH、N−アルキル、OまたはC(Rであり;
ZはOまたはC(Rであり;
、R、RおよびRは全て水素であり;
各R、R、R、RおよびRは、水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、これらの各々は必要に応じて、アルキル、アミド、アミン、カルボン酸またはその薬学的に受容可能な塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で置換され;
10およびR11は水素およびC1−6アルキルから独立的に選択されるか、またはR10およびR11は一緒になって3−ないし6員炭素環または複素環を形成し;
12およびR13は水素、金属カチオン、C1−6アルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択されるか、またはR12およびR13は一緒になってC1−6アルキルをあらわし、それによって環を形成し;
mは0から2までの整数であり;
nは0から2までの整数、好ましくは0または1である、
化合物。
【請求項2】
XがOである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
、R、RおよびRがC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され;Rは水素である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
およびRが独立的にC1−6アラルキルであり、RおよびRが独立的にC1−6アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
、R、RおよびRが全て水素である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Yがn−アルキル、OおよびCHから選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
ZがCHであり、mおよびnがいずれも0である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
ZがCHであり、mが0であり、nが2または3である、請求項6記載の化合物。
【請求項9】
ZがOであり、mが1であり、nが2である、請求項6記載の化合物。
【請求項10】
以下の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化2】

【請求項11】
以下の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化3】

【請求項12】
以下の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化4】

【請求項13】
以下の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化5】

【請求項14】
下記の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化6】

【請求項15】
下記の構造を有する、請求項1記載の化合物:
【化7】

【請求項16】
式IIIの構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化8】

式中、
XはO、NH、およびN−アルキルから選択され;
、R、RおよびRは全て水素であり;
、R、RおよびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアミド、アミン、カルボン酸またはその薬学的に受容可能な塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換される、
化合物。
【請求項17】
XがOである、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
、R、RおよびRがC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキルおよびC1−6アラルキルから独立的に選択される、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
およびRが独立的にC1−6アラルキルであり、RおよびRが独立的にC1−6アルキルである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
式IVの構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化9】

式中、
XはO、NH、またはN−アルキルであり;
、R、R、およびRは全て水素であり;
およびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアミド、アミン、カルボン酸またはその薬学的に受容可能な塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換される、
化合物。
【請求項21】
XがOである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
およびRが独立的にC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから選択される、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
およびRが独立的にC1−6アルキルである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
およびRがいずれもイソブチルである、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
以下の構造を有する、請求項20記載の化合物:
【化10】

【請求項26】
式Vの構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化11】

XはO、NHまたはN−アルキルであり;
、R、RおよびRは全て水素であり;
、R、RおよびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアミド、アミン、カルボン酸またはその薬学的に受容可能な塩、カルボキシルエステル、チオールおよびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され;
qは0から3までの整数である、
化合物。
【請求項27】
XがOである、請求項26記載の化合物。
【請求項28】
、R、RおよびRがC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択される、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
およびRが独立的にC1−6アラルキルであり、RおよびRが独立的にC1−6アルキルである、請求項28記載の化合物。
【請求項30】
式VIの構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、
【化12】

式中、
XはO、NHまたはN−アルキルであり;
、R、RおよびRは全て水素であり;
およびRは水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、およびC1−6アラルキルから独立的に選択され、その各々はアミド、アミン、カルボン酸またはその薬学的に受容可能な塩、カルボキシルエステル、チオール、およびチオエーテルから選択される基で必要に応じて置換され;
qは1から3までの整数である、
化合物。
【請求項31】
XがOである、請求項30記載の化合物。
【請求項32】
およびRがC1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、およびC1−6アラルキルから独立的に選択される、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
およびRが独立的にC1−6アルキルである、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
およびRがいずれもイソブチルである、請求項33記載の化合物。
【請求項35】
以下の構造を有する、請求項30記載の化合物:
【化13】

【請求項36】
以下の構造を有する、請求項30記載の化合物:
【化14】

【請求項37】
以下の構造を有する、請求項30記載の化合物:
【化15】

【請求項38】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項39】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、炎症の治療法。
【請求項40】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、HIV感染を阻止または軽減する方法。
【請求項41】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、神経変性疾患の治療法。
【請求項42】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、筋肉消耗性疾患の治療法。
【請求項43】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、癌の治療法
【請求項44】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、慢性感染症の治療法。
【請求項45】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、過増殖性状態の治療法。
【請求項46】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、筋非活動の治療法。
【請求項47】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、免疫関連症状の治療法。
【請求項48】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、被験体におけるウイルス遺伝子発現レベルに影響を与える方法。
【請求項49】
請求項1、16、20、26および30のいずれかの項に記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、生体内のプロテアソームによって生成される種々の抗原性ペプチドを変化させる方法。

【公表番号】特表2008−509166(P2008−509166A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525077(P2007−525077)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/028246
【国際公開番号】WO2006/017842
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(506343520)プロテオリックス, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】