説明

プロテアソーム阻害療法を用いた患者の同定、判定および治療方法

【課題】プロテアソーム阻害療法を含む治療に応答性である癌患者を同定または選択する方法を提供する。
【解決手段】プロテアソーム阻害を含む治療法に対する癌患者の応答性または非応答性と関連する、マーカーセット。個々のマーカーおよびマーカーセットのmRNAあるいはペプチドの発現レベルを評価することよって、治療剤または薬剤の組合せが臨床的に腫瘍の増殖速度を低下させる可能性が最も高いかを決定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2002年12月6日に出願された米国仮出願第60/431,514号の優先権を主張し、その内容をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【背景技術】
【0002】
プロテアソーム阻害は、癌治療において最近開発された重要な戦略を示す。プロテアソームは全ての細胞に存在する多酵素複合体であり、それは細胞周期の調節に関与する蛋白質の分解において役割を果たす。例えば、Kingらは、ユビキチン-プロテアソーム経路が、細胞周期、新生物の増殖および転移の調節において本質的な役割を果たすことを示した。p53、サイクリンおよびサイクリン依存性キナーゼp21およびp27KIP1を含めた鍵となる多数の調節蛋白質は、ユビキチン−プロテアソーム経路によって細胞周期の間に一時的に低下する。これらの蛋白質の順序付けされた分解は、細胞が細胞周期を通じて進み、有糸分裂を受けることを必要とする。例えば、Science 274: 1652-1659 (1996)参照。さらに、ユビキチン-プロテアソーム経路は転写調節に必要である。Palombellaらは、阻害蛋白IkBのプロテアソームを媒介とした分解によって転写因子NF-kBの活性化が調節されることを教示する。国際特許出願公開WO 95/25533参照。次に、NF-kBは、免疫および炎症性の応答に関与する遺伝子の調節において中心的な役割を果たす。例えば、Readらは、ユビキチン-プロテアソーム経路が、E-セレクチン、ICAM-1およびVCAM-1のごとき細胞接着分子の発現に必要であることを示した。Immunity 2: 493-506 (1995)参照。さらなる発見は、Zetterが、細胞接着分子が、脈管へおよびその脈管から体内の離れた組織部位サイトへ腫瘍細胞の接着および管外遊出を導くことにより、in vivoにて、腫瘍転移および血管形成に関与することを発見し、癌治療におけるプロテアソーム阻害についての役割をさらに支持する。Seminars in Cancer Biology 4: 219-229 (1993)参照。さらに、BegおよびBaltimoreは、NF-kBが抗アポトーシスの因子であり、NF-kB活性化の阻害が細胞を環境ストレスおよび細胞毒性薬剤に、より感受性とさせることを見出した。Science 274: 782 (1996)参照。
【0003】
Adamsらは、プロテアソーム阻害剤として有用なペプチドボロン酸エステルおよび酸化合物を記載している。例えば、米国特許第5,780,454号(1998)、米国特許第6,066,730号(2000)、米国特許第6,083,903号(2000)参照。それらは、筋蛋白質分解の速度を低下させ、細胞中のNF-kBの活性を低下させ、細胞中のp53蛋白質の分解速度を低下させ、細胞中のサイクリン分解を阻害し、癌細胞の増殖を阻害し、ならびにNF-kB依存性細胞接着を阻害するための、ボロン酸エステルおよびボロン酸化合物の使用について記載する。Adamsらはヒト腫瘍異種移植モデルにおいて抗腫瘍活性を示した化合物、N-ピラジンカルボニル-L-フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(PS−341、ボルテゾミブとして現在知られている)の一つの化合物を記載している。この特定の化合物は、最近、再発した難治性多発性骨髄腫を有する患者の治療のために承認を受け、さらなる血液学的癌ならびに固形腫瘍を含めたさらなる適応において臨床試験を現在受けている。
【0004】
プロテアソームが通常の生理学ならびに病理学において広範囲の役割を果たすので、治療薬としてプロテアソーム阻害剤を用いる場合にプロテアソーム阻害を最適化する (例えば、過剰のプロテアソーム阻害を回避する)ことは重要である。さらに、癌患者における療法での一つの連続した問題は療法に対する応答における個体差である。多数の利用可能な癌治療は狭い治療指数および毒性潜在性を有し、これは多数の患者が不必要で効果がなく、また有害でありさえする療法を受けることに潜在的に導く。計画された療法が個々の患者を治療するために最適化できたならば、かかる状況を低下または消失さえできる。従って、単独でまたは他の化学療法と組み合わせて、プロテアソーム阻害剤が特に有効である特定の癌患者を同定する必要性が存在する。また、プロテアソーム治療に応答しないそれらの患者(非応答者)に対して、プロテアソーム阻害剤での治療に良好に応答する特定の患者(応答者)を同定する必要性がある。従って、例えば、血液癌患者(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)ならびにプロテアソーム阻害療法から利益を得るであろう固形腫瘍癌患者を含めた癌患者の診断、病期分類、予後およびモニタリングを提供すること;またはかかる予防策へのかかる患者の素因を示すことは有益であろう。本発明はこれらの要求に指向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,780,454号(1998)
【特許文献2】米国特許第6,066,730号(2000)
【特許文献3】米国特許第6,083,903号(2000)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Science 274: 1652-1659 (1996)
【非特許文献2】Immunity 2: 493-506 (1995)
【非特許文献3】Seminars in Cancer Biology 4: 219-229 (1993)
【非特許文献4】Science 274: 782 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プロテアソーム阻害療法を含む治療に応答性である癌患者を同定または選択する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロテアソーム阻害療法を含む治療に応答性である癌患者を同定または選択する方法に指向される。さらに、かかる治療に非応答性の患者を同定する方法が提供される。これらの方法は典型的には、患者の腫瘍(例えば、患者の癌細胞)において1以上の予測マーカーの発現レベルを測定し、次いでその試料中での発現が、プロテアソーム阻害療法に対する応答または非応答と関連する選択された予測マーカーまたはマーカーセットの発現のパターンもしくはプロフィールを含むかを決定することを含む。
【0009】
さらに、提供される方法には、結果的に、患者の予測マーカープロフィールが、患者がその治療法に応答するかまたは応答しないかを示す場合、プロテアソーム阻害療法を開始し、継続し、または始め、または中止し、中断し、または休止する工程をさらに含む治療方法が含まれる。もう一つの具体例において、プロテアソーム阻害療法でまだ処置されていない患者の分析、および患者のマーカープロフィールが、患者が非応答者であることを示す場合の患者がその治療剤に応答者でなく、かかる患者がプロテアソーム阻害療法で処置されるべきではないという同定および予測の分析のための方法が提供される。かくして、本発明で提供される方法は、プロテアソーム阻害療法の効果がないかまたは不適当な使用を解消できる。
【0010】
また、本発明は、プロテアソーム阻害療法(例えば、プロテアソーム阻害剤単独、または化学療法剤のごときさらなる剤と組み合わせた)で癌患者を治療する方法に指向され、その方法は、予測マーカープロフィールが治療剤に応答するであろうことを示す患者を選択し、次いで、プロテアソーム阻害療法で患者を治療する工程を含む。
【0011】
本発明方法および組成物は、癌に苦しむ患者に対する診断および治療における使用のために設計される。その癌は、液性または固形の腫瘍タイプのものである。液性腫瘍は、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンストローム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えば、B細胞性リンパ腫および非ホジキン・リンパ腫)を含めた血液学的起源の腫瘍を含む。固形腫瘍は、器官に由来し、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓のごとき癌を含み得る。
【0012】
本発明の方法に用いる治療剤は、プロテアソーム阻害剤として知られている新しいクラスの治療剤を含む。再発した難治性多発性骨髄腫患者の治療のために最近承認され、現在さらなる適応に関して臨床試験でテストされているプロテアソーム阻害剤の1つの例が、ボルテゾミブである。プロテアソーム阻害剤のもう一つの例は当該技術分野において知られ、さらに詳細に本明細書に記載されている。また、プロテアソーム阻害療法は、化学療法剤のごときさらなる治療剤を含み得る。従来の化学療法剤のいくつかの例を表Aに示す。また、別法として、またはこれらの化学療法剤と組み合わせて、より新しいクラスの化学療法剤もプロテアソーム阻害療法に用いることができる。
【0013】
本発明の1つの具体例は、患者における腫瘍の治療のためにプロテアソームの阻害ベースの療法を決定する方法を提供する。かかる方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し、当該(複数の)予測マーカーの発現レベルに基づいて腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害ベースの療法を決定することを含む。患者試料中の(複数の)予測マーカーの有意な発現レベルは、本明細書に提供された予測マーカーまたはマーカーセットがかかる応答性を示す場合に、患者が応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得るであろうという指標になり得る。
さらに、患者における(複数の)予測マーカーの有意な発現レベルは、本明細書に供された(複数の)マーカーがかかる非応答性を示す場合に、患者が非応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得ないであろうという指標となり得る。
【0014】
さらに、本発明は、患者が腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害ベースの療法に応答性であるかを決定するための方法を提供する。かかる方法は、患者の腫瘍において少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し、予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づいて腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害ベースの療法を決定することを含む。患者試料中の予測マーカーの有意な発現レベルは、患者が応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得るであろうという指標である。患者における予測マーカーセットの有意な発現レベルは、患者が応答性の患者であり、本明細書に供された(複数の)マーカーがかかる応答性を示す場合に、プロテアソーム阻害療法から利益を得るであろうという指標となる。該方法に用いられる選択された予測マーカーは、表1、表2および表3に示す応答性の予測マーカーを含む。
【0015】
依然としてさらに、本発明は、患者が腫瘍を治療するためのプロテアソームの阻害ベースの療法に非応答であるかを決定する方法をさらに提供する。かかる方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し、次いで予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づいて腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害ベースの療法を決定することを含む。患者試料における予測マーカーの有意な発現レベルは、患者が非応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得るであろうという指標である。患者における予測マーカーセットの有意な発現レベルは、本明細書において提供された選択されたマーカーまたはマーカーセットがかかる非応答性を示す場合に、患者が非応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得ないであろうという指標となる。該方法に用いた選択された予測マーカーは、表1、表2および表3に示す非応答の予測マーカーを含む。
【0016】
発明のもう一つの具体例は、プロテアソーム阻害療法で患者における腫瘍を治療する方法を提供する。かかる治療方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し;腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害ベースの療法が、(複数の)予測マーカーの発現レベルに基づき適当であるかを決定し、次いで、患者の発現レベルが応答性の患者を示す場合に、プロテアソーム阻害療法で患者を治療することを含む。患者試料中の予測マーカーの有意な発現レベルは、本明細書に提供された(複数の)予測マーカーまたはマーカーセットが患者が応答性の患者であることを示す場合に、患者が応答性の患者であり、プロテアソーム阻害療法から利益を得るであろうという指標となる。
【0017】
ある態様において、患者の腫瘍中の予測マーカーの発現レベルは、腫瘍の試料を単離し、単離された試料またはその一部分について分析を行なうことにより決定できる。もう一つの態様において、患者の腫瘍中の予測マーカーの発現レベルは、in vivo映像技術を用いて測定できる。
【0018】
ある態様において、発現レベルの測定はmRNAの検出を含む。かかる検出は、例えば、PCR、ノーザン、ヌクレオチド配列検出、核酸プローブを用いたin vivo画像化を含めたいずれかの適切な方法によって行うことができる。もう一つの態様において、予測マーカーの発現レベルの測定は蛋白質の検出を含む。かかる検出は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、免疫測定法、蛋白質配列検出、ペプチドプローブを用いたin vivo画像化を含めた蛋白質検出のためのいずれかの適切な方法を用いて行うことができる。
【0019】
予測マーカーの発現レベルの決定は、マーカーまたはマーカーセットの発現が有意であるかを評価し、患者が応答性か非応答であるかを決定するための評価を行うために事前決定された標準的な対照発現レベルと比較できる。加えて、予測マーカーの発現レベルの決定は、患者が応答性か非応答性であるかを決定するための評価を行うために予測マーカーとして同時に測定される内部標準マーカーの発現レベルと比較できる。ある態様において、発現レベルは、かなり過剰発現されたと決定され得る。発現レベルは他の態様において低発現されてもよい。さらに他の態様において、発現レベルは、本明細書に提供された方法によって決定されるような事前決定された標準に対して決定される。
【0020】
本発明の方法は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7のいずれかに記載された少なくとも1つの予測マーカーを用いることができる。加えて、その提供された方法は、予測マーカーセットを形成するために2、3、4、5または6個あるいはそれを超えるマーカーを用いることができる。例えば、表1、表2および/または表3におけるマーカーから選択されたマーカーセットは、本明細書に提供された方法を用いて生成でき、表1、表2または表3に記載された2および全ての間、およびその間の各組合せおよび全ての組合せを含んでいてもよい(例えば、4個の選択マーカー、16個の選択マーカー、74個の選択マーカー等)。1つの具体例において、マーカーは、表4、表5または表6に記載されたものを含む。
【0021】
本発明方法は、さらに詳細に本明細書に記載された方法を用いて、表1、表2および表3に記載された個々の予測マーカーセットから、マーカーセットを構築する能力をさらに提供する。さらなる態様において、1を超えるマーカーセットを、提供された診断方法、予後の方法および治療方法に組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明方法は、予測マーカーの発現レベルの決定が、患者がプロテアソーム阻害療法に応答性であるかを同定するために腫瘍治療に先立って測定されるように行なうことができる。
【0023】
加えて、本発明方法は、進行中の腫瘍治療と同時に行ない、患者が現在のプロテアソーム阻害療法に応答しているか、またはプロテアソーム阻害療法を含むさらなる療法に応答するでああろうかのいずれかであるかを決定できる。
【0024】
依然としてさらに、本発明方法は、患者がプロテアソーム阻害療法の今後の経過に応答性であるかを評価するために腫瘍治療を行った後に行なうことができる。
【0025】
該方法が進行中の腫瘍治療の間に、または腫瘍治療の経過の後に行なわれても、腫瘍治療は、癌治療のプロテアソーム阻害療法または別法の形態を含むことができる。提供された方法は、患者がさらにまたは将来的に、プロテアソーム阻害療法から利益を得るかを決定するように設計され、かかるプロテアソーム阻害療法を単独でまたはさらなる治療剤と組み合わせて含めることができる。
【0026】
また、本発明は、癌患者を診断、病期分類、予測、モニタリングおよび治療するための種々の試薬およびキットに関する。
【0027】
表1、表2および表3に記載された少なくとも2つの単離された予測マーカーセットを含めたマーカーセットおよびマーカーセットの同定方法が提供される。該マーカーセットは、表1、表2および表3に記載された適切な予測マーカーの検出用の試薬を含む。かかる試薬には、核酸プローブ、プライマー、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメントおよびペプチドプローブが含まれる。
【0028】
さらに、患者における腫瘍の治療のためにプロテアソーム阻害ベースの療法を決定するのに用いるキットが提供される。本発明のキットは、予測マーカー(例えば、少なくとも1つの予測マーカー)を評価するための試薬、および予測マーカーセット(例えば、表1、表2および表3から選択された少なくとも2、3、4個あるいはそれを超えるマーカー)、ならびに本明細書に提供された方法による使用説明書を含む。ある態様において、提供されるキットは、予測マーカーの評価用の核酸プローブを含む。依然として他の態様において、提供されるキットは、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメントまたは予測マーカーの評価のためのペプチド試薬を含む。
【0029】
本発明により、マーカーおよびマーカーセットは、本発明方法のポジティブな予測値が少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%および最も好ましくは約75%、80%、85%または90%以上であるように選択される。また、本発明方法に用いられるのは、通常の細胞に比較して、以下のいずれかの条件:プロテアソーム阻害療法に対して部分的な応答者、完全な応答者、最小の応答者および非応答者のいずれかの少なくとも約20%、より好ましくは約50%、最も好ましくは約75%以上において、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、腫瘍中で異なって発現されるマーカーである。
【0030】
本発明は、さらに、抗癌剤、例えば、化学療法化合物の開発のための従前に知られていないかまたは認識されていない標的を提供する。また、本発明により提供された予測マーカーおよびマーカーセットは、単独または組み合わせてのいずれかで新しい標的を提供でき、それは癌のための新規な治療剤の開発に用いることができる。かくして、その各マーカーにより示された核酸および蛋白質は、例えば、血液学的悪性腫瘍または固形腫瘍悪性腫瘍を含めた癌のための治療法(単一薬剤または複合薬剤のいずれか)の開発において標的として用いることができる。
【0031】
かくして、抗癌治療剤として用いる新規な化合物の同定についてのスクリーニング方法のための同定された予測マーカー、ならびに対応する核酸およびペプチドの使用のための方法がさらに提供される。かかる新しく同定された化合物は、単独で、または補完的な治療剤としてプロテアソーム阻害療法と組み合わせて有用であり得る。
【0032】
本発明は、部分的には、腫瘍がプロテアソーム阻害療法での治療によって有効に処置され得るかを決定するために用いることができる個々のマーカーおよびマーカーセットの同定に基づいている。例えば、本明細書に提供される組成物および方法は、患者がプロテアソーム阻害治療剤に応答性かまたは非応答性であるかを決定するために用いることができる。これらの同定に基づいて、本発明は、限定なくして、以下を提供する:
1)プロテアソーム阻害療法が腫瘍増殖を停止させるかまたは遅延させるのに有効であるか否かを決定する方法および組成物;
2)腫瘍の処置に用いたプロテアソーム阻害療法(プロテアソーム阻害薬剤または薬剤の組合せ)の有効性をモニタリングする方法および組成物;
3)腫瘍の処置に用いた治療剤の組合せを同定する方法および組成物;
4)特定の患者における腫瘍の治療に有効である特定の治療剤、および治療剤の組合せを同定する方法および組成物;
5)腫瘍処置用の治療剤のための新しい標的を同定する方法および組成物;および
6)腫瘍処置用の新しい治療剤を同定する方法および組成物。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
特記しない限りは、本明細書に用いた全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される同一の意味を有する。また、本明細書に記載されたものと同様のまたは等価な方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、その好ましい方法および材料は本明細書に記載されている。(表を含めた)本願を通して参照された全てのGenBankまたはRefSeqデータベースの記録の内容をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。論争の場合には、定義を含めた本明細書は管理されるであろう。
【0034】
冠詞「ある」を本明細書に用いて、冠詞の文法上の対象の1または1を超えて(すなわち、少なくとも1つ)を言及する。一例として、「ある要素」は、少なくとも1つの要素を意味し、1を超える要素を含むことができる。
【0035】
「マーカー」は、表1、表2または表3のいずれかにリストされたAffymetrixプローブセット識別子(identifier)と関連した少なくとも1つの核酸または蛋白質に対応する天然に発生するポリマーである。例えば、マーカーは、限定なくして、ゲノムDNAのセンスおよびアンチセンス(すなわち、その中で生じるいずれのイントロンも含む)、ゲノムDNAから転写されたRNAの翻訳により生成したRNA、およびスプライシングされたRNAの翻訳により生成された蛋白質(すなわち、膜貫通シグナル配列のごとき正常に切断された領域の切断の前後の蛋白質を含む)を含む。また、本明細書に用いた「マーカー」は、(スプライシングされたRNAを含めた)ゲノムDNAの転写により生成されたRNAの逆転写により作成されたcDNAを含み得る。「マーカーセット」はある群のマーカーである。本発明のマーカーは、表1、表2および表3に記載された予測マーカーを含む。
【0036】
本明細書に用いた「予測マーカー」は、患者の腫瘍細胞において異なる発現を有すると同定され、かつプロテアソーム阻害剤療法での治療に対してポジティブまたはネガティブのいずれにも応答する患者の特性に代表的であるマーカーを含む。例えば、予測マーカーは、非応答性の患者における上方調節されるマーカーを含み;あるいは、予測マーカーは、応答性の患者において上方調節されるマーカーを含む。同様に、予測マーカーは、非応答性の患者において下方調節されるそれらのマーカー、ならびに応答性の患者における下方調節されるマーカーも含むことを意図される。かくして、本明細書に用いた予測マーカーは、これらの可能性の各々および全てを含むことを意図し、さらに、予測マーカーとして各々のものを含むことができ;あるいは、参照が、「予測マーカー」または「予測マーカーセット」になされる場合に1以上または全ての特性を集合的に含むことができる。
【0037】
本明細書に用いた「自然発生の」核酸分子とは、天然に発生する(例えば、天然蛋白質をコード化する)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子をいう。
【0038】
「プローブ」なる用語は、特に意図した標的分子、例えば、本発明のマーカーに選択的に結合できるいずれかの分子をいう。プローブは、当業者により合成できるか、または適当な生物学的製剤から誘導できる。標的分子の検出の目的のために、プローブは、本明細書に記載されるごとく標識されるように特に設計し得る。プローブとして利用できる分子の例には、限定されるものではないが、RNA、DNA、蛋白質、抗体および有機モノマーが含まれる。
【0039】
マーカーの「通常の」発現レベルは、癌で苦しまない患者における、同様の環境または応答状況下の細胞におけるマーカーの発現レベルである。また、マーカーの通常の発現レベルは、「対照試料」(例えば、疾患に関連したマーカーを有しない健康な対象からの試料)の発現レベルをいうこともできる。対照試料は対照のデータベースで構成されてもよい。あるいは、マーカーの「通常の」発現レベルは、腫瘍が誘導された同一患者からの同様の環境または応答状況下で非腫瘍細胞におけるマーカーの発現レベルである。
【0040】
マーカーの「過剰発現」および「低発現」とは、マーカーの通常の発現レベルより、各々、より大きいかまたはより小さいレベル(例えば、1.5倍を超える、少なくとも2倍、少なくとも3倍、より大きいかまたは小さいレベル等)での患者のマーカーの発現をいう。
【0041】
「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間または同一の核酸鎖の2つの領域間での広範囲の概念の配列相補性をいう。第一の核酸領域のアデノシン残基は、残基がチミンまたはウラシルであるならば第一の領域に逆平行である第2の核酸領域の残基と特異的な水素結合を形成(「塩基対形成」)できることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基が、残基がグアニンであるならば、第1の鎖へ逆平行である第2の核酸鎖の残基と塩基対形成できることが知られている。その2つの領域が逆平行の様式で配置される場合に、その第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が、第2の領域の残基と塩基対形成できるならば、核酸の第1の領域は、同一または異なる核酸の第2の領域に相補的である。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それによって、第1および第2の部分が逆平行の様式で配置される場合に、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、第2の部分におけるヌクレオチド残基と塩基対形成できる。より好ましくは、第1の部分の全てのヌクレオチド残基は、第2の部分におけるヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0042】
本明細書に用いた「相同性の」とは、同一の核酸鎖の2つの領域、または2つの異なった核酸の領域間のヌクレオチド配列類似性をいう。双方の領域におけるヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基によって占有される場合に、その領域はその位置にて相同性である。各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同一の残基によって占有されるならば、第1の領域は第2の領域に相同性である。2つの領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基によって占有された2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合によって表現される。一例として、ヌクレオチド配列5'-ATTGCC-3'を有する領域、およびヌクレオチド配列5'-TATGGC-3'を有する領域は、50%の相同性を共有する。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それによって、各部分のヌクレオチド残基部分の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%は、同一のヌクレオチド残基で占有される。より好ましくは、各部分の全てのヌクレオチド残基位置は、同一のヌクレオチド残基によって占有される。
【0043】
基質から解離するマーカーの実質的なフラクションなくして基質が液体(例えば、標準的なセーラインクエン酸塩、pH7.4)で濯ぐことができるようにマーカーが基質と共有結合または非共有結合しているならば、マーカーが基質に固定される。
【0044】
本明細書に用いた、「有意な」発現、または「有意に」発現したマーカーとは、応答性または非応答性を示す予測マーカーの異なる発現をいうことを意図する。患者におけるマーカーまたはマーカーセットは、マーカーまたはマーカーセットの発現レベルが、発現を評価するために使用されたアッセイの標準誤差より大きな量によって通常のレベルより、各々、大きいかまたは小さいならば、マーカーまたはマーカーセットの発現の通常のレベルより高い(または低い)レベルで「有意」に発現される。好ましくは、有意な発現レベルは、少なくとも2倍であり、より好ましくは、3、4、5または10倍の量である。あるいは、患者におけるマーカーまたはマーカーセットの発現は、発現レベルが通常の発現レベルのマーカーまたはマーカーセットより、各々、少なくとも約2倍、好ましくは、約3、4または5倍高いかまたは低いならば、発現の通常のレベルより、「有意に」高いかまたは低いと考えることができる。依然としてさらに、「有意な」発現レベルとは、本明細書に供された方法により決定された予測マーカーセットについての予め決定されたスコアに合うか、それを超えるかそれ未満であるかのいずれかのレベルをいうこともできる。
【0045】
癌または腫瘍は、該方法より治療または診断される。「癌」または「腫瘍」は、初期の腫瘍およびいずれの転移も含めた患者におけるいずれの新生物の増殖も含むことが意図される。癌は液性または固形腫瘍タイプであり得る。液性腫瘍は、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンストローム症候群、慢性リンパ性白血病、他の白血病)、およびリンパ腫(例えば、B細胞性リンパ腫および非ホジキン・リンパ腫)を含めた血液学的な起源の腫瘍を含む。固形腫瘍は臓器に起因し、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓のごとき癌を含むことができる。腫瘍細胞を含めた、本明細書に用いた癌細胞とは、異常な(増加した)速度で分裂する細胞をいう。癌細胞は、限定されるものではないが、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原生癌、黒色腫、腎細胞癌、肝癌−肝細胞癌、胆管癌、胆管細胞癌、乳頭状癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫(semonoma)、胎児性癌、乳癌、消化器癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌および頚頭部領域の扁平上皮癌のごとき癌;線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫のごとき肉腫;骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ性白血病)およびリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、暗殻細胞リンパ腫、びまん性のB細胞大リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫またはホジキン疾患)のごとき血液学的な癌;および神経膠腫、脳膜髄膜腫(meningoma)、髄芽腫、シュワン細胞腫または上衣腫(epidymoma)を含む神経系の腫瘍が含まれる。
【0046】
癌は、治療剤との接触の不存在下でのその増殖に比較して、治療剤との接触の結果としてその増殖速度が阻害されるならば治療剤に対して「応答性」である。癌の増殖は種々の方法で測定でき、例えば、腫瘍サイズまたは腫瘍タイプに適切な腫瘍マーカーの発現を測定し得る。例えば、骨髄腫と関連したマーカー、およびプロテアソーム阻害療法に対するその応答を同定するために用いた応答性の定義は、Bladeら, Br J Haematol. 1998 Sep;102(5): 1115-23に記載されたSouthwestern Oncology Group (SWOG)の判定基準が用いられた(例えば、表C参照)。プロテアソーム阻害療法に応答性であることの質は変化し、異なる条件下で、異なる癌は所与の治療剤に対して異なるレベルの「応答性」を示す。依然としてさらに、応答性の測定は、患者の生活の質、転移の程度等を含めた腫瘍の増殖サイズを超えたさらなる判定基準を用いて評価できる。加えて、臨床的な予後のマーカーおよび変数は適用可能な状況下で評価できる(例えば、骨髄腫におけるM蛋白質および前立腺癌におけるPSAレベル)。
【0047】
癌は、治療剤との接触の不存在下でその増殖を比較した場合に、その増殖速度が治療剤との接触の結果として阻害されないかまたは非常に低い程度で阻害されるならば「非応答性」である。前記のごとく、癌の増殖は、種々の方法で測定でき、例えば、腫瘍サイズまたはその腫瘍タイプに適当な腫瘍マーカーの発現を測定してもよい。例えば、治療剤に対する多発性骨髄腫の非応答性と関連したマーカーを同定するために用いた応答定義、Bladeに記載されたSouthwestern Oncology Group (SWOG)判定基準を本明細書の実験に用いた。治療剤に非応答性であることの質は、異なる状態下で高度に変化し、異なる癌は所与の治療剤に対する異なるレベルの「非応答性」を示す。依然としてさらに、非応答性の測定は、患者の生活の質、転移の程度等を含めた腫瘍の増殖サイズを超えたさらなる基準を用いて評価できる。加えて、臨床的な予後マーカーおよび変数は、適用可能な状況下で評価できる(例えば、骨髄腫におけるM蛋白質および前立腺癌におけるPSAレベル)。
【0048】
「治療」は、腫瘍の収縮をもたらすと同様にさらなる腫瘍増殖を予防または阻害することを意味する。また、治療は腫瘍の転移の予防を含むことを意図する。腫瘍は、癌または腫瘍の(当該技術分野において知られおよび本明細書に記載された応答性/非応答性指標によって決定されるごとき)少なくとも1つの症状が緩和、終了、遅延、最小化または予防されるならば「阻害される」かまたは「治療される」。いずれかのプロテアソーム阻害剤を用いた処置による腫瘍の身体的または他のいずれかの症状の緩和は、本発明の範囲内である。
【0049】
本明細書に用いた「薬剤」なる用語は、腫瘍細胞を含めた癌細胞が、治療のプロトコールにおいて曝露され得るいずれかのものとして広範囲に定義される。本発明の文脈において、かかる薬剤は、限定されるものではないが、プロテアソーム阻害薬剤ならびにさらに詳細に本明細書に記載された化学療法剤を含む。
【0050】
「プロテアソーム阻害剤」は、20Sまたは26Sプロテアソーム、またはその活性を直接的または間接的に阻害するいずれの物質も意味するものである。好ましくは、かかる阻害は特異的であり、すなわち、プロテアソーム阻害剤は、もう一つの関係のない生物学的効果を生成するのに必要な阻害剤の濃度より低濃度にてプロテアソーム活性を阻害する。好ましくは、プロテアソーム阻害に必要なプロテアソーム阻害剤濃度は、関係がない生物学的効果を生成するのに必要な濃度より、少なくとも2倍低く、好ましくは少なくとも5倍低く、さらにより好ましくは少なくとも10倍低く、最も好ましくは少なくとも20倍低い。プロテアソーム阻害剤は、ペプチドアルデヒド、ペプチドボロン酸、ラクタシスチンおよびラクタシスチンアナログ、ビニルスルホンおよびアルファ.'ベータ'−エポキシケトンを含む。プロテアソーム阻害剤は、本明細書にさらに詳細に記載される。
【0051】
キットは、本発明のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するための、少なくとも1つの試薬、例えば、プローブを含むいずれかの製品(article of manufacture)(例えば、包装または容器)である。製品は、本発明方法を行なうために1ユニットとして宣伝、流通または販売し得る。かかるキットに含まれる試薬は、応答性および非応答性のマーカー発現を検出するのに用いたプローブ/プライマーおよび/または抗体を含む。加えて、本発明のキットは、適当な検出アッセイを記載する説明書を好ましくは含み得る。かかるキットは、例えば、癌の症状を示す患者、特に、プロテアソーム阻害療法で治療できる、例えば、血液学的な癌(例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、白血病、固形腫瘍(例えば、肺、胸、卵巣等)を含めた癌の可能な存在を示す患者を診断および評価するために臨床的な設定において都合よく用いることができる。
【0052】
その発現が薬剤に対する応答性と関連する本発明のマーカーを、表1、表2、表3、表4、表5、表6および表7に記載する。腫瘍における記載された1以上のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価すると、いずれの治療剤または薬剤の組合せが癌細胞の増殖速度を低下する可能性が最も高いかを決定できる。また、癌における記載された1以上のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価すると、いずれの治療剤または剤の組合せが癌細胞の増殖速度を低下する可能性が最も低いかを決定できる。従って、記載された1以上のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価すると、効力のないまたは適当でない治療剤を除去できる。また、1以上のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価することにより、抗癌剤についての新しい標的を同定できる。かくして、1つの具体例において、本発明方法に用いた腫瘍細胞は、骨髄試料からのものである。重要なことには、これらの決定は、患者ベースにより患者に、または薬剤ベースにより薬剤で行うことができる。かくして、特定の治療処置が特定の患者または患者のグループ/クラスに役立つか否か、特定の治療が継続されるべきであるかを決定できる。
【0053】
表1は、44種の骨髄腫の患者試料からの遺伝子に適用された統計解析を用いて同定されたマーカーをリストする。表1におけるマーカーは、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブでの処置に応答性か、または非応答性のいずれかである患者からの試料において有意に発現された。かくして、同定されたマーカーが、当該技術分野において知られたボルテゾミブまたは他のプロテアソーム阻害療法ならびに本明細書にさらに詳細に記載されたものに対する応答を含めて、プロテアソーム阻害療法に対する患者の応答を予期して同定するための予測モデルにおいて機能できると認識するであろう。特に、表1におけるマーカーは、療法に対するポジティブな応答性と関係する(本明細書において、「非予測マーカー(NR)」という)。療法に対するポジティブな応答(完全、部分的または最小のいずれか、表C参照)を持つ患者を以下に「応答者」という。加えて、表1における予測マーカーは、薬剤に対するネガティブなまたは貧弱な応答性(「非予測マーカー(NR)」として本明細書でいう)と関係している。治療に対する貧弱な応答(進行性または難治性の疾患という;表C参照)を持つ患者は、「非応答者」と以下にいう。治療に対する応答がない患者は以下に「安定性である」という(表C参照)。
【0054】
表2は、再発性および難治性の多発性骨髄腫の患者における疾患進行までの時間(TTP)の予測を決定するためにCox比例ハザードモデルを用いて適用した統計解析を用いて同定したマーカーをリストする。これらのマーカーは、より速い速度で疾患において進行するようであり、他の患者より療法に応答性でない患者において有意に発現されるさらなる予測マーカーとして有用である。これらの予測マーカーは、プロテアソーム阻害療法に応答性であるであろう患者の同定においてさらなる因子として機能するであろう。
【0055】
表3は、44種の骨髄腫試料からの遺伝子に適用された統計解析を用いて同定されたマーカーをリストしている。表2における予測マーカーは、その疾患がプロテアソーム阻害剤のボルテゾミブでの処置に難治性である骨髄腫患者からの試料において有意に現れる。これらの予測マーカーは、さらに、難治性の患者を、処置に安定または応答性のいずれかであろうものと区別するように機能するであろう。
【0056】
また、本発明は、プロテアソーム阻害療法で、癌患者(例えば、明細書にさらに詳細に記載された液性腫瘍または固形腫瘍を持つ患者)を診断、病期分類、予測、モニタリングおよび治療するための種々の試薬ならびにキットに関連する。
【0057】
本発明により、マーカーは本発明方法のポジティブな予測値が少なくとも約10%、好ましくは約25%、より好ましくは約50%、および最も好ましくは約90%であるように選択される。また、通常の細胞に比較して、以下のいずれかの条件:応答性の患者(例えば、完全な応答、部分的な応答、最小の応答);および非応答性の患者(例えば、変化なし、応答からの退歩(relapse))の少なくとも約20%、より好ましくは約50%、および最も好ましくは約75%において、少なくとも2倍異なって発現されるマーカーが、本発明方法に用いるのに好ましい。
【0058】
応答性および非予測のマーカーの同定
本発明は、プロテアソーム阻害療法に応答性である腫瘍において発現され、それらの発現がその治療剤に対する応答性と関係するマーカーを提供する。また、本発明は、プロテアソーム阻害療法に非応答性である腫瘍において発現され、それらの発現がかかる治療に対する非応答性と関係するマーカーを提供する。結果的に、1以上のマーカーを用いて、プロテアソーム阻害療法によりうまく処置できる癌を同定できる。1つの具体例において、本発明の1以上のマーカーを使用して、プロテアソーム阻害療法を用いてうまく治療できる患者を同定することができる。加えて、本発明のマーカーを用いて、プロテアソーム阻害療法で治療に抵抗性となるか、そのリスクを持つ患者を同定できる。また、本発明は、プロテアソーム阻害療法に応答するか、または応答しないようである患者を予測できる「マーカーセット」として本明細書に参照されたマーカーの組合せを要旨とする。
【0059】
表1は、その発現がプロテアソーム阻害剤に対する応答性と関連するマーカーを記載する。記載された予測マーカーのセットを含めた、少なくとも1、2またはそれを超える記載された予測マーカー、または3以上の記載された予測マーカーの発現を決定することが好ましい。かくして、セットまたはパネルの予測マーカーの発現、すなわち、予測マーカーセットの発現プロフィールの発現プロフィールを評価することが好ましい。
【0060】
薬剤に対する応答性および非応答性の決定
同定された応答性および非予測マーカーの(蛋白質レベルを含めた)発現レベルは以下に用いることができる:
1)患者が薬剤または薬剤の組合せによって治療できるかを決定する;
2)患者が薬剤または薬剤の組合せでの処置に応答しているかを決定する;
3)患者を治療するのに適当な薬剤または薬剤の組合せを選択する;
4)進行中の処置の有効性をモニタリングする;
5)新しいプロテアソーム阻害療法処置(単一の薬剤プロテアソーム阻害薬剤、または代替的にもしくはプロテアソーム阻害剤と組み合わせて用いることができる補助的な薬剤のいずれか)を同定する;
6)癌の遅発−対−初期の再発を区別する;および
7)癌の初期および遅発の再発の治療において、適当な薬剤または薬剤の組合せを選択する。特に、同定された応答性および非予測マーカーを利用して、適当な療法を決定し、効能につきテストされるべき薬物の臨床的療法およびヒト試験をモニターし、新しい薬剤および治療の組合せを開発し得る。
【0061】
発明の1つの具体例において、癌は、表1、表2および表3に記載された対応する1以上の予測マーカーが、有意に発現されるならば、薬剤に応答する素因があり得る。本発明のもう一つの具体例において、薬剤に応答性であるべき癌の素因は、表4,表5または表6に記載されたマーカーセットの個々の予測マーカーの有意な発現が評価される本発明方法により決定される。同様に、薬剤に応答性であるべき患者の素因は、マーカーセットを含むマーカーが表1、表2および/または表3に記載された予測マーカーを含み、マーカーセットの発現が評価される本明細書に記載の方法を用いてマーカーセットが生成される本発明方法によって決定される。
【0062】
本発明のもう一つの具体例において、癌は、1以上の対応する非予測マーカーが有意に発現されるならば、薬剤に対する非応答性の素因があり得る。本発明のもう一つの具体例において、表1、表2および表3に記載された1以上の対応する予測マーカーが、有意に発現されるならば、癌は薬剤に対して非応答性の素因があり得る。本発明のもう一つの具体例において、薬剤に非応答性である癌の素因は、表4、表5または表6に記載されたマーカーセットの個々の予測マーカーの有意な発現が評価される本発明方法により決定される。同様に、薬剤に非応答性である患者の素因は、マーカーセットが、マーカーセットを含むマーカーが表1、表2および/または表3に記載された予測マーカーを含む本明細書に記載された方法を用いて生成され、そのマーカーセットの発現が評価される本発明方法によって決定される。
【0063】
本発明は、プロテアソーム阻害療法、例えば、プロテアソーム阻害剤を用いて、腫瘍の増殖速度を低下させることができるかを決定する方法を提供し、
(a)腫瘍試料における少なくとも1つの個々の予測マーカーの発現を評価し;次いで
(b)プロテアソーム阻害療法が、その評価に基づいて腫瘍の増殖速度を低下させるのに適当であるか否かを同定する工程を含む。
【0064】
もう一つの具体例において、本発明は、プロテアソーム阻害療法(例えば、プロテアソーム阻害薬剤(例えば、ボルテゾミブ)単独でまたはもう一つの化学療法剤とを組み合わせて)を用いて、腫瘍の増殖速度を低下できるかを決定する方法を供し、該方法は、
(a)予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現プロフィールを決定し;次いで
(b)プロテアソーム阻害療法が、その発現プロフィールに基づいて骨髄腫細胞の増殖速度を低下させるのに適当であるか否かを同定する工程を含む。
【0065】
1つの態様において、評価された(複数の)予測マーカーは、表1に記載されたものから選択される。さらにもう一つの態様において、評価された(複数の)予測マーカーは、表2に記載されたものから選択される。さらにもう一つの態様において、評価された(複数の)予測マーカーは、表3に記載されたものから選択される。依然としてさらなる態様は、表1単独でまたは表2および/または表3に記載のマーカーとを組み合わせてのいずれかで記載されたマーカーセット、あるいは表2単独でまたは表1および/または表3に記載のマーカーとを組み合わせたそれらのマーカーを含む。
【0066】
もう一つの具体例において、本発明は、プロテアソーム阻害剤療法を用いて、腫瘍の増殖を低下できるかを決定する方法を提供し、該方法は、
(a)腫瘍細胞の試料を得;
(b)薬剤に曝露された腫瘍細胞およびプロテアソーム阻害療法に曝露されなかった腫瘍細胞の双方におけるマーカーセットの1以上の個々のマーカーの発現を評価し;次いで
(c)薬剤がその評価に基づいた腫瘍を処置するのに適当であるか否かを同定する
工程を含む。
【0067】
かかる方法において、プロテアソーム阻害療法は、マーカーセットの発現プロフィールが、薬剤の存在下で予測マーカーの発現プロフィールに応じて応答性を増加または非応答性を低下させることを示す場合に、腫瘍を処置するのに適当であると決定される。
【0068】
好ましい具体例において、予測マーカーは、表1、表2または表3に記載されたものから選択される。
【0069】
もう一つの具体例において、本発明は、抗癌剤での処置が多発性骨髄腫患者において継続されるべきかを決定する方法を提供し、該方法は、
(a)プロテアソーム阻害療法処置の経過の間の異なった時点に患者から腫瘍細胞の2以上の試料を得;
(b)2以上の試料において、マーカーセットの個々のマーカーの発現を評価し;次いで
(c)評価に基づいた治療を継続するか中止する
工程を含む。
【0070】
好ましい具体例において、マーカーセットは、表1または表2あるいは表3に記載されたものから選択される。該方法により、プロテアソーム阻害療法は、発現プロフィールが本明細書に記載された評価方法を用いて継続的な応答性、または低下した非応答性を示す場合に継続されるであろう。
【0071】
もう一つの具体例において、本発明は、プロテアソーム阻害療法での処置が骨髄腫の患者において継続されるべきであるかを決定する方法を提供し、該方法は、
(a)抗癌剤治療の経過の間の異なった時点に患者から骨髄細胞の2以上の試料を得;
(b)2以上の試料において、予測マーカーセットの発現プロフィールを決定し;次いで
(c)予測マーカーセットの発現プロフィールが、処置の経過の間に応答性の低下を示さず、および/または非応答性の増加を示さない場合に処置を継続する
工程を含む。
【0072】
別法として、工程(c)において、その処置は、処置の経過の間に、マーカーセットの発現プロフィールが応答性の低下および/または非応答性の増加を示す場合に中止される。好ましい具体例において、マーカーセットは、表1、表2または表3に記載されたものから選択される。
【0073】
本発明は、さらに、薬剤、例えば、化学療法剤を用いて、多発性骨髄腫の増殖速度を低下できるかを決定する方法を提供し、該方法は、
(a)癌細胞の試料を得る;
工程を含む。
【0074】
もう一つの具体例において、本発明は、抗癌剤での処置が多発性骨髄腫患者において継続されるべきかを決定する方法を提供し、以下の工程を含む:
抗癌剤治療の経過の間の異なった時点に患者から骨髄細胞の2以上の試料を得;
2以上の試料中の表1、表2または表3のいずれかに記載されたマーカーに対応する1以上の遺伝子の骨髄細胞中での発現レベルを決定し;次いで
【0075】
表1、表2および表3のいずれかに記載された予測マーカーの発現プロフィールが、治療の経過の間に応答性の患者を示す場合に処置を継続する。
【0076】
別法として、工程(c)において、表1、表2および表3のいずれかに記載された予測マーカーの発現プロフィールが、治療の経過の間に非応答性の患者を示す場合、治療は中止される。
【0077】
もう一つの具体例において、本発明は、ボルテゾミブでの処置が多発性骨髄腫患者において継続されるかを決定する方法を提供し、該方法は、
ボルテゾミブでの処置の経過の間の異なった時点に患者から骨髄細胞の2以上の試料を得;
2以上の試料中の表1、表2または表3に記載されたマーカーに対応する1以上の遺伝子の骨髄細胞における発現プロフィールを決定し;次いで
表1、表2または表3に記載された予測マーカーが応答性の患者を示す場合に処置を継続する工程を含む。別法として、該処置は、処置の経過の間に、表1、表2および/または表3に記載された予測マーカーの発現プロフィールが、非応答性の患者を示す場合に治療を中止する。
【0078】
本発明のマーカーおよびマーカーセットは、一般的に、プロテアソーム阻害療法を予測できる。プロテアソーム阻害療法は、一般的に、細胞中でプロテアソーム活性を阻害する薬剤を少なくとも含み、さらなる治療剤を含むことができる薬剤を含む。本発明の1つの具体例において、本発明方法に用いる薬剤はプロテアソーム阻害剤である。ある種の態様において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、あるいは本明細書にさらに詳細に記載される他の関連するプロテアソーム阻害薬剤である。依然として他の態様として、プロテアソーム阻害療法は、化学療法剤と連結したプロテアソーム阻害薬剤を含む。化学療法剤は当該技術分野において知られ、本明細書にさらに詳細に記載されている。
【0079】
本発明のもう一つの具体例において、表1、表2および表3に記載された、(複数の)予測マーカーの発現は、予測マーカーに対応するmRNAを測定することにより検出される。本発明のさらにもう一つの具体例において、表1、表2および表3に記載されたマーカーまたはマーカーセットに対応するマーカーの発現は、マーカーに対応する蛋白質を測定することにより検出される。
【0080】
もう一つの具体例において、本発明は、本明細書に記載された発明方法により癌に対して有効であると同定された化合物を患者に投与することにより、癌を持つ患者を治療する方法を提供する。
【0081】
該方法に用いた癌細胞のソースは、本発明方法が用いられている方法に基づくであろう。例えば、該方法を用いて患者の癌が薬剤、または薬剤の組合せで治療できるかを決定するならば、癌細胞の好ましいソースは、患者からの腫瘍、例えば、(固体または液性腫瘍を含めた)腫瘍生検、血液試料から得られた癌細胞であろう。別法として、処理されるべき癌のタイプに類似する癌細胞系をアッセイできる。例えば、多発性骨髄腫が治療されているならば、骨髄細胞系を用いることができる。該方法を用いて治療のプロトコールの有効性を予測またはモニターするならば、治療されるべき患者からの組織または血液試料は好ましいソースである。該方法を用いて、新しい治療剤または組合せを同定するならば、いずれの癌細胞(例えば、癌細胞系の細胞)も用いることができる。
【0082】
当業者ならば、該方法に用いられる適当な癌細胞を容易に選択し得ることができる。
癌細胞系については、米国国立癌研究所のごとき源は、NCI-60細胞について好ましい。患者から得られた癌細胞については、針生検のごとき標準生検方法を使用できる。
【0083】
骨髄腫試料を用いて、本発明のマーカーを同定した。さらに、マーカーの発現レベルは、例えば、ワルデンストレーム-マクログロブリン血症、骨髄異形成症候群、およびリンパ腫、白血病を含めた他の血液学的な癌、ならびに種々の固形組織の腫瘍を含めた関連する血液学的な細胞タイプの障害を含む他の組織タイプにおいても評価できる。かくして、例えば、B細胞性リンパ腫、非ホジキン・リンパ腫、ワルデンストローム症候群または他の白血病を含めた他の血液学的悪性腫瘍からの細胞が、本発明方法に有用となることを認識するであろう。また、依然としてさらに、固形腫瘍(例えば、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓)におけるプロテアソーム阻害療法剤に対する疾患攻撃性ならびに応答性および非応答性を予測する予測マーカーは、本発明方法に有用であり得る。
【0084】
本発明方法において、表1、表2および表3に記載されたマーカーよりなる群から選択される1以上の予測マーカーの発現レベルは決定される。本明細書に用いた、発現のレベルまたは量とは、マーカーによってコードされたmRNAの発現の絶対的なレベル、あるいはマーカーによってコードされた蛋白質の発現の絶対的なレベル(すなわち、発現が癌細胞において発生するか否か)をいう。
【0085】
一般的に、表1、表2および表3に記載された予測マーカーから選択された、2以上の同定された応答または非予測マーカー、あるいは3以上の同定された応答または非予測マーカー、依然としてさらに、より多数のセットの同定された応答性および/または非予測性のマーカーの発現を決定することが好ましい。例えば、表4、表5および表6は、本明細書に記載された方法を用いて同定されたマーカーセットを記載し、本発明方法に用いることができる。依然としてさらに、本明細書に記載された予測マーカーを含むさらなるおよび/または別法のマーカーセットは、提供された方法および予測マーカーを用いて生成できる。かくして、本明細書に提供された方法および組成物を用いて、応答性および非予測マーカーのパネルの発現を評価することが可能である。
【0086】
選択されたマーカーの絶対的な発現レベルに基づいた決定を行うための別法としての決定は、標準化された発現レベルに基づいていてもよい。発現レベルは、その発現と、応答性または非予測マーカーでない対照マーカー、例えば、構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子とを比較することにより、応答性または非予測マーカーの絶対的な発現レベルを修正することにより標準化される。標準化に適当なマーカーは、アクチン遺伝子のごときハウスキーピング遺伝子を含む。構成的に発現された遺伝子は、当該技術分野において知られており、患者の当該組織および/または状況ならびに分析方法に従って同定および選択できる。かかる標準化は、1つの試料、例えば、腫瘍試料における発現レベルをもう一つの試料、例えば、非腫瘍試料と、あるいは異なるソースからの試料間の発現レベルを比較することを可能とする。
【0087】
さらに、発現レベルは相対的な発現レベルとして提供できる。マーカーまたはマーカーセットの相対的な発現レベルを決定するために、予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルを、当該試料についての発現レベルの決定に先立って、ベースラインを確立するために10以上の個々の試料、好ましくは50以上の個々の試料について決定される。ベースライン測定を確立するために、(複数の)各予測マーカーまたはマーカーセットの平均発現レベルを多数の試料においてアッセイし、これを当該予測マーカーまたはマーカーセットについてのベースライン発現レベルとして用いる。次いで、テスト試料について決定されたマーカーまたはマーカーの発現レベル(絶対的な発現レベル)を、そのマーカーまたはマーカーセットについて得られた平均発現レベルで割る。これは、相対的な発現レベルを提供し、応答性または非応答性の極端なケースの同定における助けとなる。
【0088】
好ましくは、用いる試料は、当該腫瘍と同一の組織起源の同様の腫瘍または非癌細胞からのものであろう。細胞源の選定は、相対的な発現レベルデータの使用に依存する。例えば、平均的な発現スコアを得るために同様のタイプの腫瘍を用いることは、応答性または非応答性の極端なケースの同定を可能とする。平均的な発現スコアとしての正常な組織において判明した発現の使用は、アッセイされた応答性/非予測マーカーもしくはマーカーセットが(正常細胞に対して)腫瘍特異的であるかを確認するのを助ける。かかる後者の使用は、応答性または非予測マーカーもしくはマーカーセットが標的マーカーまたはマーカーセットとして機能できるかを同定するのに特に重要である。加えて、より多くのデータが蓄積されると、平均発現値は修正でき、蓄積されたデーターに基づいて改良された相対的な発現値を提供できる。
【0089】
依然としてさらに、上記に概説されるごとく、遺伝子配列/チップ技術、RT-PCR、インサイチューハイブリダイゼーション、免疫組織化学的検査、免疫ブロット法、FISH(フルオレッセンスインサイチューハイブリダイゼーション)、FACS分析、ノーザンブロット、サザンブロットまたは細胞遺伝学的分析を含めたマーカーの発現を評価できる種々の方法が存在する。当業者は、(複数の)当該マーカー、組織試料および疾患の性質に基づいてこれらのまたは他の適当で利用可能な方法から選択できる。異なった方法または方法の組合せは、異なるケース、例えば、異なる固形もしくは血液学的腫瘍タイプにおいて適当であり得る。
【0090】
検出アッセイ
生物学的試料における本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在または不存在を検出する例示的な方法は、テスト対象から生物学的試料(例えば、腫瘍試料)を得て、次いで、該生物学的試料をポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNAまたはcDNA)を検出できる化合物または薬剤とを接触させることを含む。かくして、本発明の検出方法を用いて、例えば、in vitroならびにin vivoにて生物学的試料中のmRNA、蛋白質、cDNAまたはゲノムDNAを検出できる。例えば、mRNAの検出についてのin vitro技術は、GLPで承認された実験条件下のノーザンハイブリダイゼーション、インサイチューハイブリダイゼーションおよびTaqManアッセイ(Applied Biosystems)を含む。本発明のマーカーに対応するポリペプチドの検出用のin vitro技術は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈殿法および免疫蛍光法を含む。ゲノムDNAの検出用のin vitro技術はサザンハイブリダイゼイションを含む。さらに、発明のマーカーに対応するポリペプチドの検出用のin vivo技術は、対象にポリペプチドに指向された標識抗体を導入することを含む。例えば、抗体は、対象における存在および位置を標準的な画像技術によって検出できる放射性マーカーで標識できる。
【0091】
かかる診断および予後のアッセイの一般的な原理は、適当な条件下で、マーカーおよびプローブを含有し得る試料または反応混合物を調製し、マーカーおよびプローブが相互作用および結合するのみ十分な時間に反応混合物内で除去および/または検出できる複合体を形成することを含む。これらのアッセイは種々の方法で行うことができる。
【0092】
例えば、かかるアッセイを行う1つの方法は、マーカーまたはプローブを基質ともいわれる固相支持体上に固着させ、次いで、反応の終わりに固相上に固着された標的マーカー/プローブ複合体を検出することを含む。かかる方法の1つの具体例において、マーカーの存在および/または濃度についてアッセイされるべき対象からの試料を、担体または固相の支持体上に固着できる。もう一つの具体例において、逆の状況が可能であり、ここに、そのプローブは固相に固着でき、対象からの試料はアッセイの固着されていない成分として反応するのを可能とできる。かかる具体例の1例は、試料の発現分析のために固着させた予測マーカーまたはマーカーセットを含むアレイまたはチップの使用を含む。
【0093】
固相にアッセイ成分を固着させる多数の確立した方法が存在する。これらは、限定なくして、ビオチンとストレプトアビジンとの結合により固定化されたマーカーまたはプローブの分子を含む。かかるビオチン化されたアッセイ成分は、当該技術分野において知られた技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を用いて、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)を用いて調製でき、ストレプトアビジンをコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固着される。ある種の具体例において、固着したアッセイ成分を持つ表面は、事前に調製し貯蔵できる。
【0094】
かかるアッセイについての他の適当な担体または固相は、そのマーカーまたはプローブが属するクラスの分子を結合できるいずれの物資も含む。よく知られた支持体または担体は、限定されるものではないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩(gabbros)および磁鉄鉱(magnetite)を含む。
【0095】
前記のアプローチでアッセイを行うために、非固定化成分を第2の成分を固着させた固相に加える。反応が完了した後、結合していない成分を、形成されたいずれの複合体も固相に固定化したままであるような条件下で(例えば、洗浄により)除去し得る。固相に固着したマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に概説された多数の方法において達成できる。
【0096】
好ましい具体例において、プローブは、それが固着していないアッセイ成分である場合に、検出の目的およびアッセイの読取りのために、本明細書に言及されたおよび当業者によく知られた検出可能な標識で直接的または間接的のいずれかで標識できる。
【0097】
また、例えば、蛍光エネルギー伝達の技術(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号参照)を利用して、いずれかの成分(マーカーまたはプローブ)のさらなる操作または標識付けなくしてマーカー/プローブ複合体形成を直接的に検出できる。第一のフルオロフォアラベル、「供与体」分子は、適当な波長の入射光での励起に際して、その発光された蛍光エネルギーが第2の「受容体」分子の蛍光標識により吸収され、今度は、吸収されたエネルギーのために蛍光を発光できるであろうように選択される。別法として、該「供与体」蛋白質分子は、単にトリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを利用し得る。光の異なった波長を発するラベルが、「受容体」分子ラベルが「供与体」のそれと区別し得るように選択される。ラベル間のエネルギー伝達の効率が分子を単離する距離と関連するので、分子間の空間的な関連性を評価できる。分子間で結合が生じる状況下で、アッセイにおける「供与体」分子標識の蛍光発光は最大であろう。FET結合事象は、当該技術分野においてよく知られた標準的な蛍光測定検出手段を介して(例えば、蛍光計を用いて)都合よく測定できる。
【0098】
もう一つの具体例において、マーカーを認識するプローブの能力の決定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(Biomolecular Interaction Analysis:BIA)のごとき技術を利用していずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識することなく達成できる(例えば、 Sjolander, S. およびUrbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63: 2338-2345 ならびに Szaboら, 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5: 699-705参照)。本明細書に用いた「BIA」または「表面プラスモン共鳴」は、いずれの反応体(interactant)(例えば、BIAcore)も標識することなく、リアル・タイムで生物特異的な(biospecific)相互作用を研究するための技術である。(結合事象を示す)結合表面で質量(mass)の変化の結果、その表面付近の光の屈折率を変更し(表面プラスモン共鳴(SPR)の光学的現象)、その結果、生物学的分子間のリアルタイム反応の指標として用いることができる検出可能なシグナルを検出できる。
【0099】
別法として、もう一つの具体例において、類似する診断および予後のアッセイを液相中の溶質としてのマーカーおよびプローブを用いて行うことができる。かかるアッセイにおいて、複合体化されたマーカーおよびプローブは、限定されるものではないが、以下の技術:分画遠心法、クロマトグラフィー、電気泳動および免疫沈殿を含めたいずれかの多数の標準的な技術により複合体化されていない成分から分離される。分画遠心法において、マーカー/プローブ複合体は、それらの異なったサイズおよび密度に基づいて複合体の異なった沈降平衡により、一連の遠心工程を介して結合していないアッセイ成分から分離し得る(例えば、Rivas, G., およびMinton, A.P., 1993, Trends Biochem Sci. 18(8): 284-7参照)。また、標準的なクロマトグラフ法を利用して、複合体化していないものから複合体化した分子を分離し得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、サイズに基づいて、およびカラム形式での適当なゲル濾過樹脂の利用を介して分子を分離し、例えば、比較的に大きな複合体は、比較的小さな複合体化していない成分から分離し得る。同様に、複合体化されていない成分に比較してマーカー/プローブ複合体の比較的異なった電荷特性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂の利用を介して複合体と複合体化されていない成分とを区別するために利用し得る。かかる樹脂およびクロマトグラフ技術は、当業者によく知られている (例えば、Heegaard, N.H., 1998, J. Mol. Recognit. Winter 11(1-6): 141-8; Hage, D.S., およびTweed, S.A. J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(1-2): 499-525参照)。また、ゲル電気泳動を使用して、複合体化合物したアッセイ成分を結合していない成分から分離し得る(例えば、Ausubelら編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987-1999参照)。この技術において、蛋白質または核酸の複合体は、例えば、サイズまたは電荷に基づいて分離される。電気泳動プロセスの間に結合相互作用を維持するために、還元剤の非存在下で非変性のゲルマトリックス物質および条件が典型的に好ましい。特定のアッセイおよびその成分に対する適当な条件は、当業者によく知られているであろう。
【0100】
特定の具体例において、該マーカーに対応するmRNAのレベルは、当該技術分野において知られた方法を用いて生物学的試料中で、in situおよびin vitroの双方により決定できる。「生物学的試料」なる用語は、対象から単離された組織、細胞、体液およびその単離体、ならびに、対象内に存在する組織、細胞および液体を含むことを意図する。多数の発現検出方法は、単離されたRNAを用いる。in vitroの方法については、mRNAの単離に対して選択しないいずれのRNA単離技術も、腫瘍細胞からRNAの精製のために利用できる(例えば、Ausubelら編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987-1999参照)。加えて、多数の組織試料は、例えば、Chomczynski(1989年,米国特許第4,843,155号)の単工程RNA単離プロセスのごとき当業者によく知られた技術を用いて容易に処理できる。
【0101】
単離されたmRNAは、限定されるものではないが、サザンおよびノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応、およびTaqMan分析およびプローブアレイ(probe array)を含むハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイに用いることができる。mRNAレベルの検出のための一つの好ましい診断法は、単離されたmRNAを、検出されるべき遺伝子によってコードされたmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのごとき全長cDNAまたはその一部分であり、かつ本発明のマ―カーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに対してストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分であり得る。本発明の診断アッセイに用いる他の適当なプローブを本明細書に記載する。プローブとのmRNAのハイブリダイゼーションは、当該マーカーが発現されていることを示す。
【0102】
1つの形式において、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、そのゲルからニトロセルロースのごとき膜へmRNAを移すことにより固体表面上に固定し、プローブと接触させる。別法の様式において、(複数の)プローブを固体表面上に固定し、mRNAを、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイ中で、(複数の)プローブと接触させる。当業者は、本発明のマーカーによりコードされたmRNAのレベルの検出に用いるための公知のmRNA検出方法を容易に適合できる。
【0103】
試料中の本発明のマーカーに対応するmRNAのレベルを決定する別法の方法は、例えば、rtPCR(Mullis、1987年、米国特許番号に記載された実験の具体例)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 189-193)、自己保持配列複製(self sustained sequence replication) (Guatelliら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874-1878), 転写増幅システム(Kwohら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173-1177), Qベータリプリカーゼ(Q-Beta Replicase) (Lizardiら, 1988, Bio/Technology 6: 1197), ローリングサークル複製(rolling circle replication)(Lizardiら, 米国特許5,854,033号)またはいずれかの他の増幅方法に続いて、当業者によく知られた技術を用いてその増幅された分子の検出を含む。かかる分子が非常に少数で存在するならば、これらの検出スキームは、核酸分子の検出に特に有用である。本明細書に用いた増幅プライマーは、5'または3'領域の遺伝子(各々、プラスおよびマイナス、またはその逆)鎖にアニーリングでき、中間に短い領域を含む一対の核酸分子であると規定される。一般的に、増幅プライマーは長さが約10〜30ヌクレオチドであって、長さが約50〜200ヌクレオチドの領域に隣接する。適当な条件下および適当な試薬を用いて、かかるプライマーは、プライマーによって隣接して挟まれるヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
【0104】
in situ法については、検出に先立って癌細胞からmRNAを単離する必要はない。かかる方法では、細胞または組織試料は、公知の組織学的方法を用いて調製/処理される。次いで、試料は支持体、典型的にはスライドガラス上に固定され、次いで、マーカーをコードするmRNAにハイブリダイズできるプローブと接触させる。
【0105】
マーカーの絶対的な発現レベルに基づいて決定する別法としての決定は、マーカーの通常の発現レベルに基づいていてもよい。発現レベルは、その発現をマーカーではない対照遺伝子、例えば、構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより絶対的な発現レベルを補正することにより標準化される。標準化に適当な遺伝子は、アクチン遺伝子のごときハウスキーピング遺伝子、または皮細胞に特異的な遺伝子を含む。この標準化は、ある試料、例えば、患者試料中の発現レベルを他の試料、例えば、非癌試料と比較する、または異なるソースからの試料間での比較を可能とする。
【0106】
別法として、発現レベルは相対的な発現レベルとして提供できる。マーカーの相対的な発現レベルを決定するために、マーカーの発現レベルは、当該試料についての発現レベルの決定に先立ち、10以上の試料、好ましくは50以上の試料について決定される。多数の試料中でアッセイされた各マーカーおよびマーカーセットの平均発現レベルを決定し、これをマーカーについてのベースライン発現レベルとして用いる。次いで、テスト試料について決定されたマーカーの発現レベル(絶対的な発現レベル)をそのマーカーについて得られた平均発現値で割る。これは相対的発現レベルを提供する。
【0107】
本発明のもう一つの具体例において、マーカーに対応するポリペプチドが検出される。本発明のポリペプチドを検出するための好ましい薬剤は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合できる抗体、好ましくは検出可能な標識を持つ抗体である。抗体はポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルである得る。無傷の抗体またはそのフラグメント(例えば、FabまたはF(ab')2)を用いることができる。プローブまたは抗体に関する「標識された」なる用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合させる(すなわち、物理的に連結する)ことによりプローブまたは抗体の直接的な標識付け、ならびに直接的に標識したもう一つの試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識を含むことを意図する。間接的な標識の例は、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようなDNAプローブのビオチンの末端標識を含む。
【0108】
種々の様式は、試料が所与の抗体に結合する蛋白質を含むかを決定するために使用できる。かかる様式の例は、限定されるものではないが、酵素免疫定量法(EIA)、標識免疫検定法(RIA)、ウエスタンブロット分析および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む。当業者は、癌細胞が本発明のマーカーを発現するかを決定するのに用いる公知の蛋白質/抗体検出方法を容易に適合できる。
【0109】
1つの様式において、抗体または抗体フラグメントを、発現された蛋白質を検出するために、ウェスタンブロットまたは免疫蛍光法のごとき方法において用いることができる。
かかる使用において、固体支持体上の抗体または蛋白質のいずれかを固定することが一般的に好ましい。適当な固相支持体または担体は、抗原または抗体を結合できるいずれの支持体も含む。よく知られた支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱を含む。
【0110】
当業者は、抗体または抗原を結合させるための多数の他の適当な担体を知っており、本発明での使用にかかる支持体を適合できるであろう。例えば、腫瘍細胞から単離された蛋白質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法上で泳動し、ニトロセルロースのごとき固相支持体上で固定できる。次いで、支持体を適当な緩衝液で洗浄し、検出可能に標識した抗体で処理することができる。次いで、固相支持体をしばらく緩衝液で洗浄して、未結合抗体を除去できる。次いで、固体支持体上の結合した標識の量を通常の手段により検出できる。
【0111】
また、本発明は、生物学的試料(例えば、尿試料のごとき卵巣に関連する体液)中の本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。かかるキットを用いて、対象が、癌に罹患しているか、または癌が進行するリスクが増大しているかを決定できる。例えば、該キットは、生物学的試料中の本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出できる標識された化合物または薬剤、ならびに、その試料中のポリペプチドまたはmRNAの量を決定する手段(例えば、該ポリペプチド、またはそのポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブに結合する抗体)を含むことできる。また、キットは、該キットを用いて得られた結果を解釈するための説明書を含むことができる。
【0112】
抗体ベースのキットについては、例えば:
(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する(例えば、固体支持体に付着した)第1の抗体;および、所望により、
(2)ポリペプチドまたは第一の抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートする第2の異なる抗体
を含むことができる。
【0113】
オリゴヌクレオチドベースのキットについては、該キットは、例えば:
(1) 本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド;
(2) 本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するのに有用な1対のプライマー;または
(3)本発明のポリペプチド予測マーカーをコードする少なくとも2つの核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマーカーセット
を含むことができる。また、該キットは、例えば、緩衝剤、保存剤または蛋白質安定化剤を含むことができる。さらに、該キットは、検出可能な標識(例えば、酵素または基質)を検出するために必要な成分を含むことができる。マーカーセットについては、該キットは、予測マーカーを検出するのに用いるマーカーセットのアレイまたはチップを含むことができる。また、該キットは、アッセイでき、テスト試料と比較できる対照試料または一連の対照試料を含むことができる。キットの各成分は個々の容器内に入れることができ、キットを用いて行ったアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、全ての種々の容器が単一包装内に存在し得る。
【0114】
抗癌剤の有効性のモニタリング
前記のごとく同定された応答性および非予測のマーカーは、腫瘍が、進行中の処置(例えば、プロテアソーム阻害療法)に抵抗性になったかを評価するために薬力学的マーカーとして用いることができる。癌が処置に応答していない場合、腫瘍細胞の発現プロフィールは、発現プロフィールが非応答性の患者を示すように、1以上の予測マーカー(例えば、表1、表2、表3に記載された予測マーカー)のレベルまたは相対的な発現を変化させるであろう。
【0115】
一つのかかる使用において、本発明は、プロテアソーム阻害治療が癌患者において継続されるべきかを決定する方法を提供し、該方法は、
プロテアソーム阻害療法にさらされた患者の腫瘍試料中でマーカーセットの少なくとも1つの予測マーカーの発現を決定し、ここに、該マーカーは、表1、表2または表3のいずれかに記載されたものから選択され;次いで
マーカーまたはマーカーセットの発現プロフィールが用いられるべき薬剤に対して応答性を示す場合に処置を継続する
工程を含む。
【0116】
もう一つのかかる使用において、本発明は、プロテアソーム阻害療法が癌患者において中止されるべきかを決定する方法を提供し、該方法は、
プロテアソーム阻害療法にさらされた患者の腫瘍試料中でマーカーセットの少なくとも1つの予測マーカーの発現を決定し、ここに、該マーカーは、表1、表2または表3のいずれかに記載されたものから選択され;次いで
表1、表2または表3のいずれかに記載されたマーカーの発現プロフィールが用いられるべき薬剤に対して非応答性を示す場合に処置を中止または変更する
工程を含む。
【0117】
本明細書に用いた患者とは、癌治療のためのプロテアソーム阻害療法を受けるいずれかの対象をいう。1つの具体例において、対象は、単独のプロテアソーム阻害薬剤(例えば、ボルテゾミブまたは他の関連する薬剤)を用いて、プロテアソーム阻害を受けるヒト患者であろう。もう一つの具体例において、対象は、もう一つの薬剤(例えば、化学療法治療)と共にプロテアソーム阻害薬剤を用いて、プロテアソーム阻害を受けるヒト患者である。また、本発明のこの具体例は、プロテアソーム阻害療法を含めた抗癌治療を受けている患者から得られた2以上の試料を比較することを含むことができる。一般的には、治療開始に先立ち患者から第一の試料および治療の間に1以上の試料を得ることが考えられる。かかる使用において、療法に先立ち発現のベースラインが決定され、次いで、発現のベースライン状態における変化が治療経過の間にモニタリングされる。別法として、処置の間に得られた2以上の連続する試料は、前処置ベースライン試料の必要なくして用いることができる。かかる使用において、対象から得られた第1の試料は、特定のマーカーまたはマーカーセットの発現が増加しているか、または減少しているかを決定するためのベースラインとして用いられる。
【0118】
一般的には、治療処置の有効性をモニタリングする場合、患者からの2以上の試料を検査する。もう一つの態様において、少なくとも1つの前処置試料を含めた3以上の連続的に得られた試料を用いる。
【0119】
電子装置読取可能なアレイ
また、本発明の少なくとも1の予測マーカーを含む電子装置読取可能なアレイを提供する。本明細書に用いた「電子装置読取可能な媒体」とは、電子装置によって直接的に読まれアクセスできるデータまたは情報を収納するか、保持するか、あるいは含むためのいずれかの適当な媒体をいう。本明細書に用いた「電子装置」なる用語とは、データまたは情報を収納するために配置または適合されたいずれかの適当な計算装置または処理装置あるいは他の装置を含むことを意図する。本発明での使用に適当な電子装置の例は、独立型コンピューター装置;ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、イントラネットおよびエキストラネット(Extranet)を含めたネットワーク;携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ポケットベル等のごとき電子機器;およびローカル処理および分散型処理システムを含む。本明細書に用いた「記録された」とは、電子装置読取可能な媒体上に情報を保存または符号化するプロセスをいう。当業者は、容易に本発明のマーカーを含む製造物を生成するために公知の媒体に情報を記録するいずれかの現在知られている方法を採用できる。
【0120】
アレイは、アレイ中の1以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現をアッセイするために用いることができる。1つの具体例において、アレイはアレイ中の組織特異性を確認するために組織中で予測マーカーまたはマーカーセット発現をアッセイするために用いることができる。このように、約44,000までのマーカーは、発現のために同時にアッセイできる。これは、1以上の組織において特異的に発現された一連のマーカーを示してプロフィールが発生されることを可能にする。
【0121】
また、アレイは、通常および異常な(例えば、腫瘍)細胞における1以上のマーカーの異なる発現パターンを確認するのに有用である。これは、応答性および非応答性の患者の同定の容易さのためのツールとして機能できる一連の予測マーカーを提供する。
【0122】
かかる定性的な決定に加えて、本発明は、マーカー発現の定量を可能とする。かくして、予測マーカーは、試料中の発現レベルによりマーカーセット、または応答性および非応答性指標に基づいてグループ化できる。これは、例えば、本明細書に提供される方法により、発現レベルをスコアリングすることによる試料の応答性または非応答性の指標を確認するのに有用である。
【0123】
もう一つの具体例において、アレイは、アレイ中の1以上の予測マーカーの発現の時間的経過をモニタリングするために用いることができる。
【0124】
また、アレイは、同一細胞、または異なる細胞におけるもう一つの予測マーカーの発現に対するマーカーの発現の効果を確認するのに有用である。これは、プロテアソーム阻害療法が非応答性であるならば、例えば、治療の介在についての代替的な分子標的の選択を提供する。
【0125】
治療剤
本発明のマーカーにより、プロテアソーム阻害療法に応答性か、または非応答性である(感受性または抵抗性である)患者を予測することを示す。プロテアソーム阻害療法は、単独または化学療法剤のごときさらなる薬剤と組み合わせたプロテアソーム阻害薬剤での癌患者の治療を含み得る。
【0126】
本明細書に記載された例は、プロテアソーム阻害剤N-ピラジンカルボニル-L-フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、ボルテゾミブ(VELCADETM;以前はMLN341またはPS-341として知られていた)の使用を伴う。「プロテアソーム阻害剤」なる言語は、ボルテゾミブ、ボルテゾミブに構造上類似する化合物および/またはボルテゾミブのアナログを含むことを意図する。また、「プロテアソーム阻害剤」なる言語は、「ミミックス」を含むことができる。「ミミックス」は、ボルテゾミブに構造上類似しないが、ボルテゾミブまたは構造上類似する化合物の治療活性をin vivoにて模倣する化合物を含むことを意図する。本発明のプロテアソーム阻害化合物は、患者における腫瘍増殖(例えば、本明細書に記載された多発性骨髄腫腫瘍増殖、他の血液学的または固形腫瘍)を阻害するのに有用な化合物である。また、プロテアソーム阻害剤は、化合物の医薬上許容される塩を含むことを意図する。
【0127】
本発明の実施に用いるプロテアソーム阻害剤は、Adamsら,米国特許第5,780,454号(1998)、米国特許第6,066,730号(2000)、米国特許第6,083,903号(2000)、米国特許第6,548,668号(2003)およびSimanら, WO 91/13904(ここに、本明細書に開示された全ての化合物および式を含めたその全体を出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたもののごときさらなるペプチドボロン酸を含む。好ましくは、本発明で用いたボロン酸化合物は、N-(4-モルホリン)カルボニル-.ベータ.-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシン ボロン酸; N-(8-キノリン)スルホニル-.ベータ.-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-アラニン-L-ロイシン ボロン酸; N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸, およびN-(4-モルホリン)カルボニル-[O-(2-ピリジルメチル)]-L-チロシン-L-ロイシン ボロン酸よりなる群から選択される。
【0128】
さらに、プロテアソーム阻害剤は、Steinら米国特許第5,693,617号(1997),および1995年9月21日に公開された国際特許出願WO 95/24914および1991年9月19日に公開されたSimanらのWO 91/13904 published Sep. 19, 1991; Iqbalら J. Med. Chem. 38: 2276-2277 (1995),ならびにBougetら Bioorg Med Chem 17: 4881-4889 (2003) (ここに、本明細書に開示された全ての化合物および式を含めたその全体を出典明示して本明細書の一部とみなす)に開示されたもののごときペプチドアルデヒドプロテアソーム阻害剤を含む。
【0129】
さらに、プロテアソーム阻害剤は、Fentanyら、米国特許第5,756,764号(1998)および米国特許第6,147,223号(2000)、Schreiberら、米国特許第6,645,999号(2003)、およびFenteanyらProc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91: 3358(ここに、本明細書に開示された全ての化合物および式を含めたその全体を出典明示して本明細書の一部とみなす)に示されたラクタシスチンおよびラクタシスチンアナログを含む。
【0130】
さらに、合成ペプチドビニルスルホン・プロテアソーム阻害剤およびエポキシケトンプロテアソーム阻害剤が開示され、本発明方法に有用である。例えば、Bogyoら, Proc. Natl. Acad. Sci. 94: 6629 (1997); Spaltensteinet al. Tetrahedron Lett. 37: 1343 (1996); Meng L, Proc. Natl. Acad Sci 96: 10403 (1999);およびMeng LH, Cancer Res 59: 2798 (1999)(その全てをここに出典明示して本明細書の一部とみなす)参照。
【0131】
依然としてさらに、天然化合物が、最近プロテアソーム阻害活性を持つことが示され、該方法において用いることができる。例えば、緑茶中で見出された環状ペプチドTMC-95A、またはグリオトキシンの、双方の真菌の代謝産物またはポリフェノール化合物は、プロテアソーム阻害剤として同定された。例えば、Koguchi Y、Antibiot(Tokyo)53: 105(2000);Kroll M、Chem Biol 6: 689(1999);およびNam S(J.Biol Chem 276: 13322(2001) (その全てをここに出典明示して本明細書の一部とみなす)参照。
【0132】
また、前記に加えて、プロテアソーム阻害療法なる言語は、化学療法剤を含めたプロテアソーム阻害薬剤に加えてさらなる薬剤を含むことができる。「化学療法剤」は、かかる細胞または組織の増殖が望ましくない増殖細胞または組織の増殖を阻害する化学試薬を含むことを意図する。抗代謝剤、例えば、Ara AC、 5-FUおよびメトトレキセートのごとき化学療法剤、細胞分裂抑制剤、例えば、タキサン(taxane)、ビンブラスチンおよびビンクリスチン、アルキル化薬、例えば、メルファンラン(melphanlan)、BCNUおよびナイトロジェンマスタード、トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、VW-26、トポテカン(topotecan)およびブレオマイシン、鎖崩壊(strand-breaking)剤、例えば、アドリアマイシンおよびDHAD、架橋剤、例えば、シスプラチンおよびCBDCA、放射線および紫外線光。好ましい具体例において、薬剤はプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたは他の関連化合物)が当該技術分野においてよく知られ (例えば、Gilman A.G.ら、Gilman A.G.,ら, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Sec 12: 1202-1263 (1990)参照)、腫瘍疾患を治療するために典型的に用いられる。化学療法に一般的に使用される化学療法剤は、以下の表Aにリストされる。
【0133】
【表A−1】

【0134】
【表A−2】

【0135】
該方法においてテストされた薬剤は、単一薬剤または薬剤の組合せとなり得る。例えば、該方法はメトトレキセートのごとき単一の化学療法剤が癌を治療するために用いることができるか、あるいはプロテアソーム阻害剤と組み合わせて2以上の薬剤の組合せが用いることができるかを決定するために用いることができる。好ましい組合せは、アルキル化剤およびプロテアソーム阻害剤と組み合わせた異なる作用機序(例えば、細胞分裂抑制剤の使用)を有する薬剤を含むであろう。
【0136】
本明細書に開示された薬剤は、皮内、皮下、経口、動脈内または静脈内を含めたいずれかの経路によって投与し得る。好ましくは、投与は、静脈内経路によるであろう。好ましくは、非経口投与は、ボーラスまたは注入により提供し得る。
【0137】
医薬上許容される混合物中の開示された化合物の濃度は、投与されるべき化合物の用量、使用された(複数の)化合物の薬物動力学的特性および投与経路を含めた種々の因子に依存して変化するであろう。虚血または再潅流傷害を処置するための薬剤の有効量は、受容者の哺乳動物の体重の1kg当たり、約10μg〜約50mgの間の広範囲に及ぶであろう。薬剤は、単回用量または反復用量にて投与し得る。処置は、患者の総合的な健康ならびに選択された化合物の製剤および投与経路を含めた多数の因子に依存して毎日またはより頻繁に投与し得る。
【0138】
単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞
本発明の1つの態様は、本発明の予測マーカーまたはかかるポリペプチドの一部分に対応するポリペプチドをコードする核酸を含めた本発明の予測マーカーに対応する単離された核酸分子に関する。また、本発明の単離された核酸は、本発明の予測マーカーおよび本発明のかかる核酸分子のフラグメントに対応したポリペプチドをコードする核酸、核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとして用いるのに適当なものを含めた、本発明の予測マーカーに対応する核酸分子を同定するハイブリダイゼーションプローブとして用いるのに十分な核酸分子を含む。本明細書に用いた「核酸分子」なる用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチドアナログを用いて生成されたDNAまたはRNAのアナログを含むことを意図する。核酸分子は一本鎖または二本鎖である得るが、好ましくは、二本鎖DNAである。
【0139】
本発明の核酸分子、例えば、表1、表2および/または表3のいずれかにリストされたマーカーに対応する蛋白質をコードする核酸は、本明細書に記載されたデータベース記録において標準的な分子生物学技術および配列情報を用いて、単離および操作できる(例えば、Sambrookら編, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている)。
【0140】
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列の一部分だけを含むことができ、ここに、全長の核酸配列が本発明の予測マーカーを含むか、または本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする一部分の核酸配列だけを含むことができる。かかる核酸は、例えば、プローブまたはプライマーとして用いることができる。プローブ/プライマーは、典型的には、1以上の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして用いられる。該オリゴヌクレオチドは、典型的には、本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350もしくは400の連続的なヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0141】
本発明の核酸分子の配列に基づいたプローブは、本発明の1以上の予測マーカーに対応する転写体またはゲノム配列を検出するために用いることができる。プローブは、それに付着した標識群、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、酵素コファクターを含む。かかるプローブは、対象からの細胞の試料中の蛋白質をコードする核酸分子のレベルの測定によってのごとく、蛋白質を発現する細胞または組織を同定する、例えば、mRNAを検出するか、または蛋白質をコードする遺伝子が突然変異または欠失されているかを決定する診断テストキットの一部分として用いることができる。
【0142】
本明細書に記載されたデータベース記録に記載されたヌクレオチド配列に加えて、アミノ酸配列の変化に導くDNA塩基配列多形性が、集団(例えば、ヒト集団)内に存在できることは当業者には十分に理解されるであろう。かかる遺伝的多形は、天然の対立形質の変異により集団内の個体の間で存在できる。対立遺伝子は、所与の遺伝子座に代替的に発生する一群の遺伝子の1つである。加えて、RNA発現レベルに影響するDNA多型も存在でき、(例えば、調節または分解を影響することにより)全体としてその遺伝子レベルに影響できることは認識されるであろう。
【0143】
本明細書に用いた「遺伝子」および「組換え遺伝子」なる用語とは、例えば、遺伝子コードの縮重により、本発明のマーカーに対応する蛋白質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なり、かくして同一蛋白質をコードする配列を含めた本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードするオープン・リーティング・フレームを含む核酸分子をいう。
【0144】
本明細書に用いた、「対立形質変異体(allelic variant)」は、所与の位置にて発生するヌクレオチド配列、または該ヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチドをいう。かかる天然の対立形質変異体は、所与の遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変動を典型的に生じ得る。代替的な対立遺伝子は、多数の異なった個体において注目する遺伝子を配列決定することにより同定できる。これは、様々な個体における同一の遺伝子座を同定するためにハイブリダイゼーションプローブを用いることにより、容易に行うことができる。天然の対立形質変異の結果であり、機能的な活性を変更しないいずれかおよび全てのかかるヌクレオチド変異体および得られたアミノ酸多形または変異体は、本発明の範囲内にあることを意図する。
【0145】
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、本発明のセンス核酸に相補的である、例えば、本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的か、または本発明のマーカーに対応するmRNA配列に相補的である分子を包含する。従って、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸に水素結合できる(すなわち、それとアニーリングできる)。アンチセンス核酸は、全てのコード鎖またはその一部分にだけ、例えば、蛋白質コード領域(またはオープン・リーティング・フレーム)の全てまたは一部分に相補的であり得る。また、アンチセンス核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域のすべてまたは一部分にアンチセンスであり得る。非コード領域(「5'および3'未翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、アミノ酸に翻訳されない5'および3'配列である。
【0146】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、例えば、長さが5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50、またはそれを超えるヌクレオチドであり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野において知られた手法を用い、化学合成および酵素的結合反応を用いて構築できる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンス・オリゴヌクレオチド)は、分子の生物学的安定性を増加させるか、またはアンチセンスおよびセンス核酸間に形成された天然に発生しているヌクレオチドあるいは二本鎖の物理的安定性を増加させるように設計された種々の修飾されたヌクレオチドを用いて、化学的に合成でき、例えば、ホスホロチオアート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いることができる。アンチセンス核酸を生成するのに用いることができる修飾されたヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル) ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2- メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸 (v)、ウィブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸 メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸 (v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル) ウラシル、(acp 3)wおよび2,6-ジアミノプリンを含む。別法として、アンチセンス核酸は、アンチセンス配向で核酸がサブクローニングされる発現ベクターを用いて生物学的に生成できる(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、注目する標的核酸に対してアンチセンス配向であろう、以下のサブセクションにさらに記載される)。
【0147】
種々の具体例において、本発明の核酸分子は塩基部分、糖部分またはリン酸塩骨格で修飾して、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解性を改善できる。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸塩骨格を修飾してペプチド核酸を生成できる(Hyrupら, 1996, Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1): 5-23参照)。本明細書に用いた「ペプチド核酸」、「PNA」なる用語とは、核酸ミミックス、例えば、DNAミミックスをいい、ここに、そのデオキシリボースリン酸塩骨格は偽ペプチド骨格により置換され、4つの天然の核酸塩基だけが保持される。PNAの中性の骨格は、低イオン強度の条件下、DNAおよびRNAに対する特異的なハイブリダイゼーションを可能とすることが示された。PNAオリゴマーの合成は、Hyrupら (1996), 前記; Perry-O'Keefeら (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 14670-675に記載された標準的な固相ペプチド合成プロトコールを用いて行なうことができる。
【0148】
PNAは、治療および診断の適用に用いることができる。例えば、PNAは、他の酵素、例えば、S1ヌクレアーゼと組み合わせて用いる場合、人工的な制限酵素(Hyrup (1996), 前記)として;またはDNA配列およびハイブリダイゼーションのためのプローブまたはプライマー(Perry-O'Keefeら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 14670-675)として;例えば、PNA指向PCRクランピング(PNA directed PCR clamping)により、例えば、遺伝子における単独の塩基対突然変異の分析に用いることができる。
【0149】
もう一つの態様において、PNAを修飾して、例えば、親油性または他のヘルパー群をPNAに付着させることにより、または当該技術分野において知られている薬物送達のリポソームもしくは他の技術の使用により、それらの安定性または細胞取込みを増強できる。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を組み合わせ得たPNA−DNAキメラを生成できる。かかるキメラは、PNA部分が高い結合能および特異性を供する間に、DNA認識酵素、例えば、RNASE HおよびDNAポリメラーゼが、DNA部分と相互作用するのを可能とする。PNA−DNAキメラは、塩基スタッキング(base stacking)、核酸塩基間の結合数および配向に関して、適当な長さのリンカーを用いて結合できる(Hyrup, 1996, 前記)。PNA−DNAキメラの合成は、Hyrup(1996), 前記およびFinnら (1996) Nucleic Acids Res. 24(17): 3357-63に記載されたごとく行なうことができる。例えば、DNA鎖は標準的なホスホラミダイトカップリング(phosphoramidite coupling)化学および修飾されたヌクレオシド・アナログを用いて、固体支持体上で合成できる。5'-(4-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-チミジンホスホラミダイトのごとき化合物をPNAおよびDNAの5'末端の間の結合として用いることができる(Magら, 1989, Nucleic Acids Res. 17: 5973-88)。次いで、PNAモノマーを段階的にカップリングさせて、5'PNAセグメントおよび3'DNAセグメントでキメラ分子を生成する(Finnら, 1996, Nucleic Acids Res. 24(17): 3357-63)。別法として、キメラ分子を5'DNAセグメントおよび3'PNAセグメントで合成できる(Peterserら, 1975, Bioorganic Med. Chem. Lett. 5: 1119-11124)。
【0150】
もう一つの具体例において、オリゴヌクレオチドは、(例えば、in vivoの宿主細胞受容体を標的にするための)ペプチドのごとき他の付加された基、または細胞膜(例えば、Letsingerら, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 6553-6556; Lemaitreら, 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 648-652; PCT公開番号WO 88/09810参照)、または脳血液関門(例えば、PCT公開番号WO 89/10134参照)を横切って輸送を促進する薬剤を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションを起こす切断剤(cleavage agent)(例えば、Krolら, 1988, Bio/Techniques 6: 958-976参照)または挿入剤(intercalating agent)(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5: 539-549参照)で修飾できる。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、もう一つの分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションを起こす架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーションを起こす切断剤等)にコンジュゲートできる。
【0151】
また、本発明は、分子ビーコンが、試料中の本発明の予測マーカーの存在を定性的に計るのに有用であるような、本発明のマーカーに相補的である少なくとも1つの領域を有する分子ビーコン(beacon)核酸を含む。「分子ビーコン」核酸は、1対の相補的な領域を含み、それと関連したフルオロフォアおよび蛍光性クエンチャー(fluorescent quencher)を有する核酸である。該フルオロフォアおよびクエンチャーは、相補的な領域が互いにアニーリングされる場合に、フルオロフォアの蛍光がクエンチャーによって消されるかかる配向で核酸の異なる部分と会合している。核酸の相補的な領域が互いにアニーリングされない場合に、フルオロフォアの蛍光はより少ない程度に消される。分子ビーコン核酸は、例えば、米国特許第5,876,930号に記載されている。
【0152】
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドをコード化する核酸を含むベクター、好ましくは、発現ベクターは、本発明の予測マーカーに対応する核酸および蛋白質の生成;ならびに予測マーカーに関連する組成物の生成に用いることができる。有用なベクターは、注目する予測マーカーに対応する核酸および/または蛋白質の発現に有効なプロモーターおよび/または調節配列をさらに含む。ある例において、プロモーターは、必要ならば、注目する予測マーカーに対応する、構成プロモーター/調節配列、誘導可能なプロモーター/調節配列、組織特異的なプロモーター/調節配列、または天然の内因性のプロモーター/調節配列を含むことができる。種々の発現ベクターが当該技術分野においてよく知られ、発現用の特定のシステムに適するように適合できる。例えば、本発明の組換え発現ベクターは、原核生物(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、{バキュロウイルス発現ベクターを用いた}昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞)における本発明のマーカーに対応するポリペプチドの発現のために設計できる。適当な宿主細胞は、Goeddel, 前記に言及されている。別法として、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、in vitroで転写および翻訳できる。
【0153】
本明細書に用いた「プロモーター/調節配列」なる用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結した遺伝子産物の発現に必要である核酸配列を意味する。また、いくつかの例において、この配列はコアプロモーター配列であり得、他の例において、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の調節エレメントを含み得る。該プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に、遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0154】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合に、細胞の大部分またはすべての生理学的条件下で生存するヒト細胞において遺伝子産物を生成させるヌクレオチド配列である。
【0155】
「誘導可能な」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結する場合に、プロモーターに対応する誘導物質が細胞中に存在する場合にだけ、生存するヒト細胞中で遺伝子産物を実質的に生成させるヌクレオチド配列である。
【0156】
「組織特異的な」プロモーターは、遺伝子産物をコードするか、または特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結した場合に、細胞がプロモーターに対応する組織タイプの細胞である場合にだけ、生存しているヒト細胞中で遺伝子産物を実質的に産生するヌクレオチド配列である。
【0157】
本発明のもう一つの態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられる。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなくかかる細胞の子孫または潜在的な子孫もいうと理解される。ある修飾が突然変異または環境的な影響のいずれかにより次の世代に発生し得るために、かかる子孫は、実際上、親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書に用いた用語の範囲内に依然として含まれる。宿主細胞は、いずれかの原核生物(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、昆虫細胞、イスートまたは哺乳動物細胞)であり得る。
【0158】
ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション技術を介して、原核生物または真核細胞に導入できる。本明細書に用いた「形質転換」および「トランスフェクション」なる用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含めた宿主細胞に外来性核酸を導入するための種々の当該技術分野で認識された(art-recognized)技術をいうことを意図する。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適当な方法は、Sambrookら(前記)および他の実験マニュアルに見出される。
【0159】
培養における原核生物または真核生物の宿主細胞のごとき本発明の宿主細胞は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドを生成するために用いることができる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を用いて、本発明のマーカーに対応するポリペプチドを生成する方法をさらに提供する。1つの具体例において、マーカーが生成されるように、適当な媒体中で(ここに、本発明のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターを導入した)本発明の宿主細胞を培養することを含む。もう一つの具体例において、さらに、当該方法は媒体または宿主細胞からマーカー・ポリペプチドを単離することを含む。
【0160】
単離された蛋白質および抗体
本発明の1つの態様は、本発明の予測マーカーに対応する単離された蛋白質、その生物学的に活性な部分、ならびに本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに指向された抗体を上昇させる免疫原としての使用に適当であるポリペプチドフラグメントに関する。本発明に用いるポリペプチドは、当該技術分野においてよく知られているルーチン的な分子生物学、蛋白質精製および組換DNA技術と組み合わせて本明細書に提供された遺伝子同定情報を用いて単離、精製または生成できる。
【0161】
本発明のマーカーに対応するポリペプチドの生物学的に活性な部分は、予測マーカーに対応する蛋白質のアミノ酸配列に十分に同一であるか、またはそれから由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、それらは全長蛋白質より小さなアミノ酸を含み、対応する全長蛋白質の少なくとも一つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分は、対応する蛋白質の少なくとも1つの活性を持つ領域またはモチーフを含む。本発明の蛋白質の生物学的に活性な部分は、例えば、長さが10、25、50、100またはそれを超えるアミノ酸であるポリペプチドになり得る。さらに、蛋白質の他の領域は欠失される他の生物学的に活性な部分は、組換え技術により調製し、本発明のポリペプチドの天然の形態の1以上の機能的な活性について評価できる。
【0162】
好ましいポリペプチドは、本明細書に記載されたGenBankおよびNUCのデータベース記録の1つにリストされるアミノ酸配列を有する。他の有用な蛋白質は、これらの配列の1つと実質的に同一であり(例えば、少なくとも約50%、好ましくは70%、80%、90%、95%または99%)、天然の対立形質変異体または突然変異誘発によりアミノ酸配列において異なる自然発生の蛋白質の蛋白質の機能的な活性をまだ保持する。
【0163】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、2つの配列間に共有される同一の位置数を決定する数学的アルゴリズムを用いて達成できる。決定は、同一性および類似性の比較のために当該技術分野においていずれかの公知の方法を用いて行うことができる。使用した方法の例は、例えば、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877において修飾した、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268のアルゴリズムである2つの配列の比較のために利用された数学的なアルゴリズムを含み得る。かかるアルゴリズムは、Altschul,ら (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行い、本発明の核酸分子に相同性であるヌクレオチド配列を得ることができる。BLAST蛋白質検索は、XBLAST、スコア=50、ワード長=3で行い、本発明の蛋白質分子に相同性であるアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップを作成した(gapped)配列を得るため、Altschulら (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されたギャップド(Gapped)BLASTを利用できる。別法として、PSI-BLASTを用いて、分子間の離れた関係を検出する反復検索を行うことができる。BLASTおよびPSI-Blastプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)を利用する場合に、各プログラムの不履行パラメーター(default parameter)を用いることができる。http: //www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたし。配列の比較のために利用された数学的なアルゴリズムのもう一つの例は、Myers and Miller, (1988) CABIOS 4: 11-17のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェア・パッケージの一部分であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNを利用する場合に、PAM120ウェイト残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを用いることができる。ローカルな配列類似性の領域および整列化を同定するさらにもう一つの有用なアルゴリズムは、PearsonおよびLipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444-2448に記載されたFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の比較のためにFASTAアルゴリズムを用いる場合に、PAM120ウェイト残基表は、例えば、2のk-タプル(k-tuple)値で用いることができる。2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップを可能にするかまたはせずに、前記に記載されたものと類似する技術を用いて決定できる。また、パーセント同一性の計算において、完全対合だけがカウントされる。
【0164】
また、本発明は、本発明のマーカーに対応するキメラまたは融合蛋白質を提供する。本明細書に用いた「キメラ蛋白質」または「融合蛋白質」は、異種のポリペプチド(すなわち、マーカーに対応するポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結した本発明のマーカーに対応するポリペプチドのすべてまたは一部分(好ましくは、生物学的に活性な一部分)を含む。融合蛋白質内において、「作動可能に連結した」なる用語は、本発明のポリペプチドおよび異種のポリペプチドが相互にインフレームで融合されることを示すことを意図する。異種のポリペプチドは、本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合できる。有用な融合蛋白質は、融合蛋白質製造に用いる、GST、c-myc、FLAG、HAおよび他のよく知られた異種のタグを含み得る。かかる融合蛋白質は、本発明の組換えのポリペプチドの精製を促すことができる。
【0165】
加えて、融合蛋白質は、gp67、メリチン、ヒト胎盤アルカリホスファターゼおよびphoAのごときもう一つの蛋白質からのシグナル配列を含み得る。さらにもう一つの態様において、融合蛋白質は、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドのすべてまたは一部分が免疫グロブリン蛋白質ファミリーのメンバーから由来する配列に融合される免疫グロブリン融合蛋白質である。本発明の免疫グロブリン融合蛋白質は、対象における本発明のポリペプチドに対して指向された抗体を生成するための免疫原として、リガンドを精製するために、および受容体とリガンドとの相互作用を阻害する分子を同定するためのスクリーニングアッセイにおいて用いることができる。
【0166】
本発明の予測マーカーに対応する単離されたポリペプチド、またはそのフラグメントは、免疫源として用いて、ポリクローナルおよびモノクローナルの抗体調製のための標準的な技術を用いて抗体を生成できる。例えば、免疫原は、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物もしくは脊椎動物のごとき適当な(すなわち、免疫適格性の)対象を免疫にすることにより、抗体を調製するために典型的に用いられる。適当な免疫原の調製は、例えば、組換え発現したか、化学合成したポリペプチドを含むことができる。その調製は、さらにフロイントの完全または不完全アジュバントのごときアジュバントまたは同様の免疫活性化剤を含むことができる。
【0167】
従って、本発明のもう一つの態様は、本発明のポリペプチドに対して指向された抗体に関する。本明細書に交換可能に用いた「抗体」および「抗体物質」なる用語は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、本発明のポリペプチドのごとき抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子、例えば、本発明のポリペプチドのエピトープをいう。本発明の所与のポリペプチドに特異的に結合する分子は、ポリペプチドを天然に含有する試料、例えば、生物学的試料中のポリペプチドに結合するが、実質的に他の分子に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、ペプシンのごとき酵素で抗体を処理することにより生成できるF(ab)およびF(ab')フラグメントを含む。本発明はポリクローナルとモノクローナルの抗体を提供する。
【0168】
ポリクローナル抗体は、免疫原として本発明のポリペプチドで適当な対象を免疫にすることにより前記のように調製できる。好ましいポリクローナル抗体組成物は、本発明の(複数の)予測マーカーに対して指向された抗体について選択されたものである。免疫された対象における抗体力価は、固定されたポリペプチドを用いて、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)でのごとき標準的技術によって経時的にモニターできる。所望ならば、抗体分子は、対象から採取または単離でき、さらに蛋白質Aクロマトグラフィーのごときよく知られた技術により精製して、IgG画分を得ることができる。
【0169】
別法として、本発明の蛋白質またはポリペプチドに特異的な抗体は選択できるか、あるいは、例えば、部分的に精製されたかまたは精製された抗体を実質的に得るためのアフィニティークロマトグラフィーにより、(例えば、部分的に精製できる)か、精製できる。実質的に精製された抗体組成物により、この文脈内において、抗体試料が、本発明の所望の蛋白質またはポリペプチドのもの以外のエピトープに対して指向された汚染している抗体の高々30(乾燥重量)%が含有され、試料の好ましくは高々20(乾燥重量)%、さらにより好ましくは高々10(乾燥重量)%、および最も好ましくは高々5(乾燥重量)%が汚染している抗体であることを意味する。精製された抗体組成物は、組成物における少なくとも99%の抗体が本発明の所望の蛋白質またはポリペプチドに対して指向されることを意味する。
【0170】
さらに、予測マーカーに指向されたモノクローナル抗体は、本発明方法に用いるために調製できる。モノクローナル抗体の生成方法は、当該技術分野においてよく知られ、いずれの方法を用いても生成できる。例えば、免疫後の適当な時間、例えば、特異的な抗体力価が最高である場合に、抗体産生細胞を対象から得、それを用いてKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495-497にオリジナルに記載されたハイブリブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリブリドーマ技術(Kozborら, 1983, Immunol. Today 4: 72参照)、EBV−ハイブリブリドーマ技術(Coleら, pp. 77-96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 1985参考)またはトリオーマ技術のごとき標準的な技術を用いてモノクローナル抗体を調製できる。ハイブリドーマを生成するための技術はよく知られている(一般的には、Current Protocols in Immunology, Coliganら編, John Wiley & Sons, New York, 1994参照)。本発明のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準的なELISAアッセイを用いて、注目するポリペプチドを結合する抗体についてハイブリドーマ培養液上清をスクリーニングすることにより検出される。
【0171】
さらに、標準的な組換DNA技術を用いて作成できるヒトおよび非ヒト部分の双方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体のごとき組換え抗体は、本発明の範囲内である。キメラ抗体は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリン定常領域から由来する可変領域を有するもののごとき異なった動物種からの異なった部分が由来する分子である。(例えば、Cabillyら, 米国特許第4,816,567号;およびBossら、米国特許第4,816,397号(ここに出典明示してその内容を本明細書の一部とみなす)参照。)ヒト化された抗体は、非ヒトの種からの1以上の相補的に決定する領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒトの種からの抗体分子である。(例えば、Queen,米国特許第5,585,089号ここに出典明示してその内容を本明細書の一部とみなす)参照。)かかるキメラおよびヒト化されたモノクローナル抗体は、例えば、PCT公開番号WO 87/02671;欧州特許出願第184,187; 欧州特許出願第171,496号; 欧州特許出願第173,494号; PCT公開番号WO 86/01533; 米国特許第4,816,567号; 欧州特許出願第125,023号; Betterら (1988) Science 240: 1041-1043; Liuら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443; Liuら (1987) J. Immunol. 139: 3521- 3526; Sunら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 214-218; Nishimuraら (1987) Cancer Res. 47: 999-1005; Woodら (1985) Nature 314: 446-449; and Shawら (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559); Morrison (1985) Science 229: 1202-1207; Oiら (1986) Bio/Techniques 4: 214; 米国特許第5,225,539号; Jonesら (1986) Nature 321: 552-525; Verhoeyanら (1988) Science 239: 1534;およびBeidlerら (1988) J. Immunol. 141: 4053-4060に記載された方法を用いて当該技術分野において知られた組換DNA技術によって生成できる。
【0172】
ヒト化抗体は、内因性の重鎖および軽鎖の遺伝子を発現できないが、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生成できる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば、本発明のマーカーに対応するポリペプチドの全てまたは一部分で通常の様式にて免疫される。抗原に対して指向されたモノクローナル抗体は、通常のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスにより宿されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配置され、クラススイッチおよび体細胞突然変異を実質的に受ける。かくして、かかる技術を用いて、治療上有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を生成することが可能である。ヒト化抗体を生成するためのこの技術の概観については、LonbergおよびHuszar (1995) Int. Rev. Immunol. 13: 65-93を参照されたし。かかる抗体の生成するためのヒト化抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術の詳細な説明、およびかかる抗体を生成するためのプロトコールについては、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;および米国特許第5,545,806号を参照されたし。加えて、Abgenix社(Freemont、CA)のごとき会社は、前記のものと同様の技術を用いて選択された抗原に指向されるヒト抗体を提供することに関与できる。
【0173】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト化抗体は、「ガイドされた選定(guided selection)」といわれる技術を用いて生成できる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウスの抗体を用いて、同一エピトープを認識する完全なヒト抗体の選定をガイドする(Jespersら, 1994, Bio/technology 12: 899-903)。
【0174】
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに指向された抗体(例えば、モノクローナル抗体)を用いて、予測マーカーの発現のレベルおよびパターンを評価するために(例えば、細胞試料中の)予測マーカーを検出できる。また、抗体を診断的に用いて、臨床試験手順の一部として、例えば、所与の治療法の効果を決定するために、(例えば、腫瘍試料中の)組織または体液において蛋白質レベルをモニターできる。検出は、検出可能な物質に抗体を連結することにより促すことができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子族団、蛍光体、発光物質、生物発光の物質および放射性物質を含む。適当な酵素の例は、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な補欠分子族団複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適当な蛍光体の例は、ウンベリフェロン、フルオレスセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレスセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;
発光物質の一例はルミノールを含み;生物発光の物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み、適当な放射性物質の例は、125I、131I、35SまたはHを含む。
【0175】
さらに、抗体(あるいはそのフラグメント)は、細胞毒素、治療剤または放射性金属イオンのごとき治療の部分にコンジュゲートできる。細胞毒素または細胞毒性の薬剤は、細胞に有害なあらゆる薬剤を含む。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシ アントラシン ジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびプロマイシンならびにそのアナログまたはホモログが含まれる。治療剤は、限定されるものではないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン(decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロールエサミン、チオエパ(thioepa)クロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスフアミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトチン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジエチル白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(従前はダウノマイシン)ドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(従前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含む。
【0176】
かかる治療の部分を抗体にコンジュゲートするための技術はよく知られている。例えば、Arnonら, 「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstromら,「Antibodies For Drug Delivery」, Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら(編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」, Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら (eds.), pp. 475-506 (1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編), pp. 303-16 (Academic Press 1985),およびThorpeら, 「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」, Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)参照。
【0177】
別法として、抗体は、米国特許第4,676,980号においてSegalによって記載されたように、第2の抗体にコンジュゲートして、抗体のヘテロコンジュゲートを形成できる。
【0178】
従って、1つの態様において、本発明はその実質的に精製された抗体またはフラグメント、および非ヒト化抗体またはそのフラグメントを提供し、抗体またはフラグメントは、本明細書に記載された予測マーカーによりコードされたアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。種々の具体例において、本発明の実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、ヒト、非ヒト、キメラおよび/またはヒト化の抗体となり得る。
【0179】
もう一つの態様において、本発明は非ヒト化抗体またはそのフラグメントを提供し、抗体またはフラグメントは、本発明の予測マーカーの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。かかる非ヒト化抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、トリ、ウサギまたはラット抗体になり得る。あるいは、本発明の非ヒト化抗体はキメラ抗体および/またはヒト化された抗体になり得る。加えて、本発明の非ヒト化抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体になり得る。
【0180】
依然としてさらなる態様において、本発明はモノクローナル抗体またはそのフラグメントを提供し、抗体またはフラグメントは、本発明のアミノ酸配列、本発明のcDNAによってコードされたアミノ酸配列、本発明のアミノ酸配列の少なくとも15アミノ酸残基のフラグメント、本発明のアミノ酸配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列(ここに、パーセント同一性はPAM120ウェイト残基表、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーでGCGソフトウェア・パッケージのALIGNプログラムを用いて決定される)、および45℃にて6XSSCのハイブリダイゼーションおよび0.1% 0.2XSSC中で65℃にて洗浄する条件下で、本発明の核酸分子よりなる核酸分子にハイブリダイズする核酸分子によりコードされたアミノ酸配列よりなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。モノクローナル抗体は、ヒト、ヒト化、キメラおよび/または非ヒト化の抗体であり得る。
【0181】
実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、本発明のポリペプチドのシグナル・ペプチド、分泌された配列、細胞外の領域、膜貫通または細胞質ドメインもしくは細胞膜に特異的に結合し得る。特に好ましい具体例において、本発明のその実質的に精製された抗体またはそのフラグメント、非ヒト化抗体またはそのフラグメントおよび/またはモノクローナル抗体またはそのフラグメントは、本発明のアミノ酸配列の分泌された配列または細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0182】
また、本発明は、検出可能な物質にコンジュゲートした本発明の抗体、使用のための説明書を含むキットを提供する。依然として本発明のもう一つの態様は、本発明の抗体を含む診断用組成物および医薬上許容される担体である。好ましい具体例において、診断用組成物は、本発明の抗体、検出可能な部位および医薬上許容される担体の抗体を含む。
【0183】
スクリーニングアッセイ
また、本発明は、(a)マーカーに結合する、または(b)マーカーの活性に対する調節(例えば、刺激または阻害)効果を有するか、または、より詳細には、(c)マーカーの1以上のその天然の基質(例えば、ペプチド、蛋白質、ホルモン、コファクターまたは核酸)との相互作用に対する調節効果を有する、あるいは(d)マーカーの発現に対する結モジュレーター効果を有するモジュレーター、すなわち、候補もしくはテスト化合物または剤(例えば、ペプチド、プチドミミック、ペプトイド(peptoid)、小分子または他の薬物)を同定するための方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」ともいう)を提供する。かかるアッセイは、典型的にはマーカーと1以上のアッセイ成分との間の反応を含む。他の成分は、テスト化合物自体、またはテスト化合物およびマーカーの天然の結合パートナーの組合せのいずれでもよい。
【0184】
本発明のテスト化合物は、天然および/または合成化合物の系統的なライブラリーを含めたいずれの利用可能なソースからも得ることができる。また、テスト化合物は、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有する分子のライブラリー、酵素分解に抵抗性であるが、生物活性を残存する新規の非ペプチド骨格を持つ;例えば、Zuckermannら, 1994, J. Med. Chem. 37: 2678-85参照);空間的にアドレス可能な並列の固相または溶液相ライブラリー;ディコンボリューションを必要とする合成ライブラリー方法;「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー方法;およびアフィニティークロマトグラフィー選定を用いる合成ライブラリー方法を含めた当該技術分野において知られたコンビナトリアルライブラリー方法における多数のアプローチのいずれによっても得ることができる。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12: 145)。
【0185】
分子のライブラリーの合成のための方法の例は、当該技術分野、例えば、DeWittら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909; Erbら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermannら (1994). J. Med. Chem. 37: 2678; Choら (1993) Science 261: 1303; Carrellら (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carellら (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061;および Gallopら (1994) J. Med. Chem. 37: 1233に見出すことができる。
【0186】
化合物のライブラリーは、溶液中に(例えば、Houghten, 1992, Biotechniques 13: 412-421)、またはビーズ上(Lam, 1991, Nature 354: 82-84))に、チップ(Fodor, 1993, Nature 364: 555-556)、細菌および/または芽胞(spore)(Ladner、米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら, 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89: 1865-1869)、もしくはファージ上(ScottおよびSmith, 1990, Science 249: 386-390; Devlin, 1990, Science 249: 404-406; Cwirlaら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 6378-6382; Felici, 1991, J. Mol. Biol. 222: 301-310; Ladner, 前記)に存在し得る。
【0187】
1つの具体例において、本発明は、マーカーまたはその生物学的に活性な部分の基質である候補またはテスト化合物をスクリーニングするためのアッセイ方法を提供する。もう一つの具体例において、本発明は、マーカーまたはその生物学的に活性な部分に結合する候補またはテスト化合物をスクリーニングするためのアッセイ方法を提供する。テスト化合物のマーカーに直接的に結合する能力の決定は、マーカーへの化合物の結合が複合体において標識されたマーカー化合物を検出することにより決定できるように放射性同位元素または酵素の標識と化合物をカップリングすることにより達成できる。例えば、化合物(例えば、マーカー基質)は、直接的または間接的に125I、35S、14CまたはHで標識でき、放射性同位元素は、電波放出の直接的なカウント、またはシンチレーション計数により検出できる。別法として、アッセイ成分は、例えば、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼで酵素的に標識でき、酵素標識は、適当な基質の変換の生成物への決定によって検出できる。
【0188】
もう一つの具体例において、本発明は、マーカーまたはその生物学的に活性な部分の活性を調節する候補またはテスト化合物をスクリーニングするためのアッセイ方法を提供する。おそらく、マーカーは、限定されるものではないが、ペプチド、蛋白質、ホルモン、コファクターおよび核酸のごとき1以上の分子とin vivoにて相互作用できる。この説明の目的のために、かかる細胞および細胞外の分子は、「結合パートナー」またはマーカー「基質」と言われる。かかるスクリーニングを促すための本発明の必要な1つの具体例は、その天然のin vivo結合パートナーを同定するためのマーカーの使用である。同定された予測マーカーの多数の公知の結合パートナーまたは基質は、当該技術分野において知られているか、または当該技術分野において知られている標準的な方法(例えば、二ハイブリッドスクリーニング等)を用いて同定できる。
【0189】
さらなる具体例において、アッセイ方法は、マーカーおよびその基質および/または結合パートナーとの相互作用を調節する(例えば、ポジティブまたはネガティブに影響する)化合物を同定する目的のために本発明の使用を通して工夫され得る。かかる化合物は、限定されるものではないが、抗体、ペプチド、ホルモン、オリゴヌクレオチド、核酸、およびそのアナログのごとき分子を含み得る。また、かかる化合物は、天然および/または合成の化合物の系統的なライブラリーを含めたいずれかの利用可能なソースから得られてもよい。この具体例に用いた好ましいアッセイ化合物は、本明細書に記載の予測マーカー、公知の結合パートナーおよび/またはその基質、ならびにテスト化合物である。テスト化合物はいずれかのソースから供給できる。
【0190】
マーカーとその結合パートナーとの間の相互作用に干渉する化合物を同定するために用いたアッセイ系の基本原理は、2つの生成物が相互作用および結合し、かくして複合体を形成するのを可能とするのに十分な条件下および時間においてマーカーおよびその結合パートナーを含む反応混合物を調製することを含む。阻害活性につき薬剤をテストするために、反応混合物をテスト化合物の存在および不存在下で調製する。テスト化合物は、最初に反応混合物中に含み得るか、またはマーカーおよびその結合パートナーの添加後に引き続いて添加できる。対照反応混合物は、テスト化合物なくして、またはプラセボとインキュベートされる。次いで、マーカーおよびその結合パートナー間のいずれかの複合体の形成が検出される。テスト化合物を含む反応混合物におけるかかる形成が小さいかまたはない対照反応における複合体の形成は、化合物がマーカーおよびその結合パートナーの相互作用に干渉することを示す。逆に、対照反応よりも化合物の存在下での多数の複合体の形成は、化合物がマーカーおよびその結合パートナーの相互作用を増強し得ることを示す。
【0191】
マーカーとその結合パートナーとの相互作用に干渉する化合物についてのアッセイは、異種または同種の形式にて行い得る。異種アッセイは、マーカーまたはその結合パートナーのいずれかを固相上に固着させ、反応の終わりにて固相に固着した複合体を検出することを含む。同種のアッセイにおいて、全反応は液相中で行なわれる。いずれのアプローチにおいても、反応体の添加の順序を変更して、テストされるべき化合物について異なる情報を得ることができる。例えば、マーカーと結合パートナーとの間の相互作用(例えば、競合による)に干渉するテスト化合物は、マーカーおよびその相互作用的な結合パートナーに先立ちまたは同時にテスト物質を反応混合物に添加することによりテスト物質の存在下で反応を行うことができる。別法として、事前に形成した複合体を崩壊させるテスト化合物、例えば、複合体からの成分のうちの一つを置換する高い結合定数を持つ化合物は、複合体が形成された後、テスト化合物を反応混合物に添加することによりテストできる。種々の様式は簡潔に下記に記載される。
【0192】
異種アッセイ系において、マーカーまたはその結合パートナーのいずれも、固相表面またはマトリックスに固着させるが、他の対応する固着しない成分を直接的または間接的に標識し得る。実際上、マイクロタイタープレートは、このアプローチのためにしばしば利用される。固着した種は、当業者に典型的によく知られた非共有結合または共有結合の多数の方法により固定できる。非共有結合は、マーカーまたはその結合パートナーの溶液で固相表面をコーティングし、乾燥させることにより簡単に達成できる。別法として、アッセイ成分に特異的に固着した抗体をこの目的に用いることができる。かかる表面はしばしば事前に調製および貯蔵できる。
【0193】
関連する具体例において、マトリックスに固着すべきアッセイ成分の一方または双方を可能とするドメインを加えた融合蛋白質が提供できる。例えば、グルタチオン-S-転移酵素/マーカー融合蛋白質またはグルタチオン-S-転移酵素/結合パートナーは、グルタチオン・セファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレート上に吸着でき、次いで、テスト化合物またはテスト化合物および非吸着マーカーもしくはその結合パートナーのいずれかと組み合わせ、複合体形成に役立つ条件(例えば、生理学的条件)下で混合物をインキュベートする。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートを洗浄して、いずれの未結合のアッセイ成分も除去し、固定した複合体を例えば、前記のごとく直接的または間接的のいずれかで評価する。別法として、複合体は、マトリックスから分離でき、マーカー結合または活性のレベルを標準的な技術を用いて決定できる。
【0194】
また、マトリックス上で蛋白質を固定する他の技術は、本発明のスクリーニングアッセイに用いることができる。例えば、マーカーまたはマーカー結合パートナーのいずれもビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲーションを利用して固定できる。ビオチン化されたマーカー蛋白質または標的分子は、当該技術分野において知られている技術(例えば、ビオチン化キット, Pierce Chemicals, Rockford, IL)を用いてビオチン-NHS(N-ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製でき、ストレプトアビジンをコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中で固定できる。ある具体例において、蛋白質を固定した表面は、事前に調製でき、貯蔵できる。
【0195】
アッセイを行うために、固定されたアッセイ成分の対応するパートナーを、テスト化合物でコートされたか、または化合物なくしてコートされた表面に曝露する。反応が完了した後、未反応のアッセイ成分を(例えば、洗浄により)除去し、形成されたいずれの複合体も固体表面に固定されたままであろう。固体表面上に固着させた複合体の検出は、多数の方法で行うことができる。非固定の成分を事前に標識しない場合、最初に非固定された種に特異的な標識された抗体を用いて間接的な標識を用いて、表面上に固定された標識を検出できる(今度は、抗体は、例えば、標識された抗Ig抗体で直接的に標識できるか、またはその抗体で間接的に標識できる)。反応成分の添加の順序に依存して、複合体形成を調節(阻害または増強)する、あるいは形成された複合体を崩壊させるテスト化合物を検出できる。
【0196】
本発明の別法の具体例において、同種のアッセイ方法を用い得る。これは、典型的には、前記のものみ類似する反応であり、テスト化合物の存在または不存在下で液相中で行われる。次いで、形成された複合体を未反応成分と分離し、形成された複合体の量を決定する。異種アッセイ系に記載されるように、反応物の液相への添加の順序は、テスト化合物が複合体形成を調節(阻害または増強)するおよび事前に形成された複合体を崩壊させることについての情報を与えることができる。
【0197】
かかる同種のアッセイ方法において、反応生成物は、限定されるものではないが、分画遠心法、クロマトグラフィー、電気泳動および免疫沈殿を含めた多数の標準的な技術のいずれかにより未反応のアッセイ成分と分離し得る。分画遠心法において、分子の複合体は、それらの異なったサイズおよび密度に基づいて複合体の異なった沈降平衡により、一連の遠心工程を通じて、複合体形成されていない分子から分離し得る(例えば、Rivas, G., およびMinton, A.P., Trends Biochem Sci 1993 Aug;18(8): 284-7参照)。また、標準的クロマトグラフ法を利用して、複合体形成されていないものから複合体形成された分子を分離し得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、サイズに基づいて、カラム形式における適当なゲル濾過の利用を介して分子を分離し、例えば、比較的大きな複合体が、比較的小さな複合体形成していない成分から分離し得る。同様に、複合体形成されていない分子に比較して相対的に異なる電荷特性を利用て、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂の使用を通じて、残存する個々の反応体から複合体を差次的(differentially)に分離し得る。かかる樹脂およびクロマトグラフ法は当業者によく知られている(例えば、Heegaard, 1998, J Mol. Recognit. 11: 141-148; HageおよびTweed, 1997, J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. Appl., 699: 499-525参照)。また、ゲル電気泳動を使用して、未結合の種から複合体形成した分子を分離し得る(例えば、Ausubel ら(編), Current Protocols in Molecular Biology, J. Wiley & Sons, New York. 1999参照)。この技術において、蛋白質または核酸の複合体は、例えば、サイズまたは電荷に基づいて分離される。電気泳動プロセスの間に結合相互作用を維持するために、還元剤の非存在下での非変性ゲルが典型的に好ましいが、特定の相互作用物に対して適当な条件は当業者によく知られているであろう。免疫沈殿は、溶液からの蛋白質−蛋白質複合体の単離について利用したもう一つの共通した技術である(例えば、Ausubelら(編), Current Protocols in Molecular Biology, J. Wiley & Sons, New York. 1999参照)。この技術において、結合している分子の1つに特異的な抗体に結合する全ての蛋白質は、遠心により容易に採取できるポリマービーズに対して抗体をコンジュゲートすることにより溶液から沈殿される。結合アッセイ成分は、(複合体における蛋白質−蛋白質相互作用を妨害しない当業者によく知られた特異的な蛋白質分解事象または他の技術を介して)ビーズから放出され、次いで、第2の免疫沈殿工程を行い、今度は、同様に異なって相互作用するアッセイ成分に特異的な抗体を利用する。このように、形成された複合体だけが、ビーズに付着したままであるべきである。テスト化合物の存在および非存在下の双方にて複合体形成における変化を比較し、かくして、マーカーおよびその結合マーカー間の相互作用を変調する化合物の能力についての情報を提供する。
【0198】
また、さらなる試料操作なくして同種または異種のアッセイ系におけるマーカーおよびその天然の結合パートナーおよび/またはテスト化合物間の相互作用の直接的な検出についての方法は、本発明の範囲内にある。例えば、蛍光エネルギー伝達の技術は利用し得る。(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号参照。) 一般的には、この技術は、その発光した蛍光性エネルギーが第2の「受容体」分子上の蛍光性標識により吸収され、今度は、吸収されたエネルギーのために蛍光発光できるように、第1の「供与体」分子(例えば、マーカーまたはテスト化合物)上のフルオロフォア標識の付加を含む。別法として、「供与体」蛋白質分子は、単にトリプトファン残基の天然の蛍光性エネルギーを利用し得る。「受容体」分子標識が「供与体」のそれを区別し得るように、異なった波長の光を放出する標識を選定する。標識間のエネルギー伝達の効率が分子を分離する距離と関連するので、分子間の空間的関係を評価できる。結合が分子間に生じる状況下で、アッセイ方法における「受容体」分子標識の蛍光性の発光は最大となるであろう。FET結合事象は、当該技術分野において知られた標準的な蛍光測定器検出手段を通して(例えば、蛍光計を用いて)都合よく測定できる。事前に形成された複合体における種の1つの関与を増強または妨害するテスト物質の結果、バックグラウンドのそれに異なるシグナルを形成するであろう。このように、マーカーおよびその結合パートナー間の相互作用を調節するテスト物質は、制御されたアッセイにおいて同定できる。
【0199】
もう一つの具体例において、マーカー発現のモジュレーターは、細胞が候補化合物と接触する方法において同定され、細胞中のマーカーに対応するmRNAまたは蛋白質の発現を決定する。候補化合物の存在下でのmRNAまたは蛋白質の発現レベルは、候補化合物の不存在下のmRNAまたは蛋白質の発現レベルと比較される。次いで、候補化合物は、この比較に基づいてマーカー発現のモジュレーターと確認できる。例えば、マーカーmRNAまたは蛋白質の発現が候補化合物の不存在下よりも存在下でより大きい(統計的に有意に大きい)場合、候補化合物はマーカーmRNAまたは蛋白質発現の刺激物質と同定される。逆に、マーカーmRNAまたは蛋白質の発現が候補化合物の不存在下よりも存在下でより小さい(統計的に有意に小さい)場合、候補化合物はマーカーmRNAまたは蛋白質発現の阻害物質と同定される。細胞中のマーカーmRNAまたは蛋白質発現レベルは、マーカーmRNAまたは蛋白質の検出のために本明細書に記載された方法によって測定できる。
【0200】
依然としてさらに、細胞ベースのアッセイ方法において、注目する予測マーカーを発現する細胞が治療の候補剤をスクリーニングするのに用いる場合、細胞の活性または生存度は、(複数の)予測マーカーの活性を変更するテスト化合物の能力を決定するためにモニターされる。かかるアッセイは、テスト化合物の作用の特異性を決定するために、注目する(複数の)予測マーカーを発現しない同様のまたは同一の細胞系を利用して対照アッセイと並行して行う。
【0201】
もう一つの態様において、本発明は、本明細書に記載されたアッセイの2以上の組合せに関する。例えば、変調剤は、細胞ベースまたは無細胞アッセイを用いて同定でき、マーカー蛋白質の活性を変調する薬剤の能力は、in vivoにて、例えば、細胞形質転換および/または腫瘍形成についての全体の動物モデルにおいて確認できる。
【0202】
本発明は、上記のスクリーニングアッセイ方法により同定された新規な薬剤に関する。従って、適当な動物モデルにおいて本明細書に記載された同定された薬剤をさらに用いることは本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載された同定された薬剤(例えば、マーカー変調剤、アンチセンスマーカー核酸分子、マーカー特異的抗体またはマーカー結合パートナー)を動物モデルに用いて、かかる薬剤での治療の効力、毒性または副作用を決定できる。別法として、本明細書に記載されたように同定された薬剤は、動物モデルに用いて、かかる薬剤の作用機序を決定できる。
【0203】
具体的な実施例
治療用量および投与
薬物供給および貯蔵
再構成用の凍結乾燥された無菌粉末の注射用ボルテゾミブ(VELCADETM Millennium Pharmaceuticals, Inc., Cambridge, MA)を、2.5mgのボルテゾミブおよび25mgのマンニトールUSPを含有するガラスバイアルに供給した。各バイアルは、再構成された溶液が1mg/mLの濃度にてボルテゾミブを含有するように、2.5mlの通常(0.9%)生理食塩水、塩化ナトリウム注射USPで再構成した。再構成した溶液は無色透明で、最終的なpHは5〜6の間にあった。注射用の凍結乾燥されたボルテゾミブを含有するガラスバイアルを2〜8℃にて冷却し貯蔵した。
【0204】
【表B】

【0205】
最先端の治療後に再発し、直近の治療に対して不応性(refractory)である骨髄腫を持つ患者におけるボルテゾミブの非盲検第II相試験
収集された薬物動力学的/薬理ゲノミクス/薬物動態学的なデータ
【0206】
多施設共同非盲検の非無作為化の第2相試験を行い、ここに、治療に不応性であった再発した骨髄腫を持つ患者を登録した。患者を、2週間週2回、体表面積の平方メートル当たりり1.3mgのボルテゾミブで処置し、続いて1週間処置をせず、これを8サイクル(24週間)処置した。
【0207】
以下の評価は、ボルテゾミブの薬動力学および薬理ゲノミクスを評価するために行った:
【0208】
プロテアソーム阻害アッセイ (このex vivoアッセイ用血液を、サイクル1、7の第1日および第11日、ならびに適切な場合、デキサメタゾンを開始したサイクルでの投与前および投与後1時間、および第8サイクルの第11日にて投薬後1時間にて採取した)。いくらかの患者から、第1サイクルの第1日にて投薬の24時間後にプロテアソーム阻害アッセイのためにさらなる試料を採取した。
【0209】
薬理ゲノミクスデータ(全体的なmRNAレベルの発現の評価のための血液および骨髄、これらの手順を、個別の同意フォームを介して参加するのに同意した患者だけに行った)。
【0210】
集団の薬物動力学(この集団の薬物動力学の決定用の血液を、サイクル1の第1日での試験薬物投与前および投与1〜6時間後、ならびにサイクル1、2、7および8、適切な場合にはデキサメタゾンを開始したサイクルの第11日での試験薬物投与前および投与1〜6時間後に全ての患者から採取した)。投与前の血液試料は、臨床検査評価用のものと同一の時点にて採取した。
【0211】
個人の薬物動力学:血漿中ボルテゾミブレベル測定用の血液を、サイクル1、第1日でのボルテゾミブ投与直前ならびに投与後、2、5、10、15、30、60および120分ならびに24時間に採取した。
【0212】
統計的処理
統計解析は、2つの用量レベル1.0または1.3mg/m/投与のいずれが、単独またはデキサメタゾンと組み合わせて、さらなる臨床試験を保証するために十分に効果的であるかを決定するために、正確さの指定限界内の反応率を見積もる必要性に焦点を合わせた。この試験は、現実的には非比較的であった;従って、2つの用量のボルテゾミブ間の効力比較は行わなかった。加えて、この試験は、8つのサイクルの治療まで2つの評価された用量レベルにて治療の潜在的な毒性を特徴付けるのを助ける安全性データを提供した。
【0213】
連続変数の観察数、平均、標準偏差、中央、最小、および最大、ならびにカテゴリーデータについてのカテゴリー当たりの数およびパーセントを示した簡略な作表を示した。要約のためのカテゴリーは、2つの指定された用量群であった。
【0214】
公式の統計解析計画は、データベースロックに先立ち開発および完成した。第一の効能解析は、治療意図(ITT)集団で行なった。第一の効能解析を応答者の割合で行い、応答者は、表Cに予期して確立された判定基準を用いてCR、PRまたはMRと規定した。各用量群における応答者の割合に関する両側の90%信頼限界を、95%の片側の下限値に対応して確立した。
【0215】
【表C−1】

【0216】
【表C−2】

【0217】
Krautら, J. Clin. Oncol. 16(2): 589-592 (1998)およびBladeら, Br. J. Haematol. 102(5): 1115-1123 (1998)によって報告された判定基準に基づいた。CRを持つ患者において、骨髄は分子レベルにてCRの立証のためにPCRを用いて分析した。PRについての全ての判定基準に合うが、6週間離れた少なくとも2つの決定についての血清中のモノクロナール蛋白質のレベルにおいて、≧75%低下を示す患者は、「緩解」(R)と称した。
【0218】
生活の質の評価は、療法に対する応答が生活の質において測定可能な改善を伴ったかを決定するために分析した。分析は、データベースロックに先立ち開発された公式な統計解析計画において概説された具体的な解析手法を用いて、要約スコアならびに個々の項目について行なった。
【0219】
薬力学のデータ(20Sプロテアソーム)は、プロテアソーム阻害の程度を特徴付け、および阻害および治療の応答の度合および毒性の間のいずれかの相関性を調べるために記述して分析した。
【0220】
試験の薬理ゲノミクス部分に参加したそれらの患者では、RNA発現レベルおよび治療に対する応答間の相関性を記述して評価した。加えて、応答の期間、疾患進行への時間および全体的な患者生存を因子としてのRNA発現を用いて分析し得る。
【0221】
合計202名の患者を試験に登録した。PS−341単独に対するその全体の応答率は、いずれかの患者が非最適な応答のために添加したデキサメタゾンを受けるのに先立って35%(27%のCR+PR割合)であった。これらの患者はすべて、それらの疾患用の少なくとも2つの従前の治療法を受け、それらの疾患は直近の療法で進行した。この患者集団は、非常に貧弱な予後を有し、利用可能な標準的な治療を有さない。カルノフスキーパフォーマンス状況(Karnofsky Performance Status;KPS)は25%の患者において、≦70であり、デユウリ−サーモン(Durie-Salmon)ステージは、79%の患者においてIIAまたはIIIBと報告された。約39%の患者が、ベースラインにて≧4mg/Lのβ2ミクログロブリンを有し、22%の患者は、疾患重篤度の指標≧6mg/Lを有した。大多数の患者は、全ての通常の高用量および新規の治療後再発し、サリドマイドでの先の処置にもかかわらず74%で進行した。
【0222】
2週間に週2回の1.3mg/mの用量に続いての10日間の休止は、良好に寛容された。78名の80%を超える患者は2以上のサイクルの処置を、62%は4以上のサイクルを、27%が8サイクルを完了した。
【0223】
ボルテゾミブ単独での処置にして確認された応答の独立評価委員会(Independent Review Committee;IRC)は、表Dに供され;さらに、部分的な緩解を経験したそれらの患者についての応答の分類を表Eに供した。3名の医学腫瘍医のこの独立したパネルは、試験における193名の検討可能な患者についての全データを調査し、ブレード(Blade)判定基準(表C)を用いて応答を指定した。IRCは、再発/不応答性の複数の骨髄腫を持つこれらの193名の患者の35%が、ボルテゾミブ単独での処置(CR+PR+MR)に対する応答を有し、193名の患者の53名(27%)が、処置に対する完全または部分的な寛解を経験し、さらに、14名の患者が最小の応答であったと決定した。患者のさらなる46名(24%)は、ボルテゾミブ単独に応答して、安定な疾患の証拠(NC,未変化)を有し、それらは、試験参加の時点にて進行していたこれらの患者についての状態において改良を反映する。IRC評価に基づき、193名のうち38名(20%)は、進行性疾患を有し、さらなる42名(22%)の患者は、IRCによる応答について評価可能ではないと考えられた。これらのデータは公開された。Richardson PG,ら, New Eng. J. Med.; 348: 2609-17 (2003)参照。
【0224】
全ての薬理ゲノミクス分析は、独立評価委員会の応答カテゴリーの判定に依拠した。
【0225】
【表D】

【0226】
応答および非予測マーカーの同定
44名の多発性骨髄腫患者は、高品質の遺伝子発現データを有した。
【0227】
プロテアソーム阻害(例えば、ボルテゾミブ)療法に対する多発性骨髄腫患者の結果と関連した候補マーカーは、マーカーランキングアルゴリズム(marker ranking algorithms)の組合せを用いて選択した。次いで、教師付き学習(supervised learning)および特徴選択アルゴリズムを用いて本発明のマーカーを同定した。
【0228】
データ分析
44名の発見試料よりなるデータセットをIRCの指定に基づいて、応答者(NR=17)、安定な疾患(NS = 12)、または進行性疾患(NP = 15)に分類した。マーカー同定では、3つの応答クラスを、さらに、応答者(NR=17)−対−非応答者(NNR = 27)、または不応答性の/進行性の疾患(NP = 15)−対−他のもの(N = 29)にグループ化した。各試料について、44,928個の遺伝子転写体(Affymetrixプローブセット)を製造者の指示により2つのAffymetrix U133マイクロアレイ上で精製した。全体のRNAは、製造者の薦めに従いTriazolTM (Life Technologies, Inc.)によりホモジナイズした組織から単離した。RNAは、ピロ炭酸ジエチルで処理した脱イオン水中で80℃にて貯蔵した。試料に標識を付け、引き続いてアレイにハイブリダイズする詳細な方法は、Affymetrix (Santa Clara, CA)から入手可能である。略言すると、5.0μgの合計RNAは、T7ポリメラーゼ・プロモーターを含むT7-(dT)24プライマー(Affymetrix Inc.)で第一の鎖合成をプライミングして、二本鎖cDNA(Superscript; Life Technologies, Inc.)に変換した。全ての二本鎖cDNAをテンプレートとして引き続いて用い、in vitroの転写システム(Megascript kit; AmbionおよびBio-11-CTPおよび Bio-16-UTP; Enzo) において組み込まれたT7プロモーター配列を用いてビオチン化cRNAを生成した。対照オリゴヌクレオチドおよびスパイクを10μgのcRNAまで添加し、次いで、それを一定回転で45℃にて16時間U133オリゴヌクレオチドアレイにハイブリダイズした。次いで、アレイをEUKGE-WS1プロトコールを用いて、Affymetrix流体工学ステーション(fluidics station)上で洗浄および染色して、Affymetrix GeneArrayスキャナ上でスキャンした。
【0229】
標準化および対数変換
各マイクロアレイ上の全マーカーに対する発現値は、150の調整平均値(trimmed mean)に標準化した。発現値は、MAS5遺伝子発現分析データ処理ソフトウェア(Affymetrix, Santa Clara, CA)を用いて決定した。これらの値は、このセクションの残りにおいて、「標準化された発現」という。さらなるプロセシング工程において、標準化された各発現値を150で割り、1に加えた。得られた数の自然対数を取り、この値をこのセクションの残りにおいて「対数発現」という。
【0230】
単一マーカー選択
試料のクラスと関連するようである単一遺伝子転写体は、以下の特徴ランキングおよびフィルタリング方法を用いて同定できる。本明細書に記載した方法を用いる予測マーカーの単一マーカー同定は、表1、表2および表3に記載されている。
【0231】
モデル選択
試料を感受性および不応性の群(または感受性および非応答性)に一緒に分類するあるセットの1以上の遺伝子転写体は、特定のクラシファイヤーアルゴリズム(classifier algorithm)の文脈において、「モデル」という。遺伝子転写体は、「特徴」という。(複数の)遺伝子転写体のいずれの組合せが、最良に試料を感受性および抵抗性の群に分類するかを決定することは、「モデル選択」という。以下のセクションは、本発明のモデルがどのように同定されたかのプロセスを記載する。例示的なモデルは、表4、表5および表6に記載する。単一マーカー同定または予測マーカーと共に本明細書に提供された方法を用いて、本発明のマーカーを含むさらなるモデルを同定できる。
【0232】
表に提供されたデータの概要
以下の用語が表の全体にわたって用いられる:
「番号」は、マーカーの識別番号に対応する。
「ブローブセットID」は、用いたヒトゲノムU133セットオリゴヌクレオチド配列からのAffymetrix(Santa Clara、CA)識別子(identifier)に対応する;
「から由来する配列」または「Genbank」もしくは「RefSeq」は、マーカーについての公のデータベース受付情報に対応する。
「RefSeq」は、参照配列核受付番号(Reference Sequence Nucleic Accession Number)に対応する;
「Genbank」は、特定の配列に指定されたGenBank受入番号に対応する。全ての引用されたGenBank配列は、ここに出典明示して明確に本明細書の一部とみなす;
「タイトル」は、利用可能な場合には、一般的な記載に対応する;
「遺伝子記号」は、該遺伝子が一般に知られている記号に対応する;
「ユニジーン(Unigene)」は、単一の遺伝子識別子に対応する;
「Rank____」は、個々のマーカーが、例えば、応答性(R)または非応答性(NR)としての試料のグループ化または分類のために組み合わせて用いる得るかを決定するプロセスに対応する。種々のランキングのために用いたランクおよび相対的なスコアリグ方法は、各予測マーカーについてのすべての方法の中で最低のランクスコアであるとして示される。4つの異なる特徴選択方法は、最良の識別子:(1) 信号対雑音比(「SNR」)、(2)クラスベースの閾値(「CBT」)、 (3) プールされた倍数変化 (「PFC」)および(4)ウィルコクソンの順位和検定を決定するために利用された。
【0233】
さらなるタイトルは、「ハザード(Hazard)」、「決定境界」、「重み付け」、「票の重み付け(Vote Weight)」、「票」、「信頼」、「発現」、「遺伝子発現」、「対数遺伝子発現」、「標準化された発現」および「標準化因子」を含めた、以下の増幅において記載された各方法において用いたスコアおよびパラメーターに対応する。「補足的アノテーション」および「生物学的カテゴリー」は、タイトルに記載されないさらなる特性および分類に対応する;
表8では、細胞系は、感受性「S」または抵抗性「R」と指定され;および
「感受性/抵抗性の比」は、示されたマーカーの相対的な発現を示す。
【0234】
特徴のランキングおよびフィルタリング
モデル選択の第一の工程は、試料分類との対応を示す少数にまで44,928個の特徴を低下させてフィルタリングすることである。フィルタリングは、スコアリング方法により特徴をまずランキングし、次いで、さらなる分析のために最高のランキング特徴だけを取る。本発明に用いたフィルタリングアルゴリズムは、(1) 信号対雑音比(「SNR」)、(2)クラスベースの閾値(「CBT」)、(3) プールされた倍数変化(「PFC」)および(4)ウィルコクソンの順位和検定であった。好ましい具体例において、SNRを用いて、レベルにおいて小さいが不変の変化を示す遺伝子を示し、CBTを用いて、一つのクラスにおいて「オフ」であったが、他のクラスのフラクションにおいて「オン」であった遺伝子を示した。
【0235】
SNRは、クラス標準偏差の合計で割られたクラス平均における差の絶対値としての対数発現値から計算し、それを用いて先に発現データを分析した;例えば、「Molecular Classification of Cancer: Class discovery and class prediction by marker expression monitoring」, Science, 286: 531-537 (1999)(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)におけるP(g,c)の定義、遺伝子gおよびクラスベクターcの発現の間の相関性の測定を参照。フィルタリングについてSNRを用いるために、上位の100のSNRスコアを持つ特徴を保持し、その残りを考慮から除外した。
【0236】
CBTは、標準化された発現値から計算され、1つのクラス(「クラスA」)を「オフ」クラスとして、他のクラス(「クラスB」)を「オン」として定義する。当該試験において、「オフ」クラス、クラスAは応答者であって、「オン」クラス、クラスBは非応答者である。そのCBTスコアは、以下の2つの方法のうち一方で計算し得る:(1)閾値 その特徴についての平均のクラスA発現値に対する各クラスB値。CBTは、クラスAの標準偏差により割られた平均閾値とされたクラスB発現およびその平均クラスA発現間の差であり、
【0237】
【数1】

【0238】
[式中、μは平均クラスA発現値、σはクラスA発現値の標準偏差であって、xは、N個々のクラスの発現値を表す]。(2)CBTは、クラスAにおける固定された複数の最大(または他のパーセンタイル値)の発現値を超えるクラスB試料のパーセンテージである。いずれの方法においても、一定の値をクラスA閾値に加えて、ノイズについて補正し得る。好ましい具体例において、方法Aを利用し、その上位100の特徴を選択した。
【0239】
プールされた倍数変化(「PFC」)方法は、「対照」および「テスター(tester)」と任意に指定される試料の2群間の異なる発現の尺度である。PFCは、対照試料よりもテスターにおいて高発現を持つ遺伝子を見出す。該分析は、「テスター」(PFC-R)としての応答者および「テスター」(PFC-NR)として非応答者の双方を観察して行った。より高発現を有するとみなすために、テスター試料は、k番目のパーセンタイル対照試料をおよび超えなければならない。テスター試料の倍数変化値は、倍数の変化の適度のレベルを区別するが、非常に大きな倍数変化間の区別をしないために、ユーザー指定の漸近線まで上昇した非線形の変形に付される。過剰発現されたテスター試料の押しつぶされた(squashed)倍数変化値は、POOFスコアを得るために平均化される。特に、遺伝子gについてのPFCは、圧縮したテスター: 対照比R(s,g)のテスター試料を横切った平均として計算される。所与のテスター試料sおよび遺伝子gについては、R(s,g)=C(xgs/(k+x)) [式中、C(x)は圧縮関数 z≧TについてC(z) = A(1-e-z/A)であって、z<TについてC(z)=0であり、ここに、Tは1.0以上の閾値であり
Aは、倍数変化値に対する上部漸近線であり(発明者らは5を用いた)
kは、データ内での付加的雑音を反映させるための定数、すなわち、反復測定における変動の固定成分である。発明者らは、補正実験からのこのパラメーターについて30の値を誘導した。
gsは、試料sにおける遺伝子gの発現値であり、
は、対照試料の発現値のQ番目のパーセンタイルである。]
【0240】
また、テスター試料の最小のフラクションfは0を超えるR(s,g)でなければならず、これが該当しない場合、R(s,g)の値は0にセットされる。
【0241】
発明者らはアルゴリズムの2つの試行のおいて以下のパラメーターを用いた:

パラメーター 試行1における値 試行2における値
Q 1.0 0.8
f 0.2 0.4
T 1.25 1.25
【0242】
ウィルコクソンの順位和検定は標準統計的手法である。例えば、Conover, W. J. 1980. Practical Nonparametric Statistics. 第2版. New York: John Wiley & Sons(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)参照。また、このテストは、マン・ホイットニーU検定として知られている。その目的は、2つの無作為標本に対応する集団分布が、それらが異なる別法の仮説に対して同一であるという帰無仮説をテストすることである。試料の発現値のランクだけが検討され、その値自体は評価されなかった。
【0243】
44,928個のプローブセットを用いるマーカーを、前記の方法を用いて44名の患者の試料を横切る異なる発現について分析した。特に、発明者らは、前記のPFC(試行1)、PFC(試行2)、SNR、ウィルコクソンの順位和検定およびクラスベースの閾値を適用した。最初の3つの方法は、各方向において試行して、応答者において上がり、次いで非応答者において上がる遺伝子を探索した。ウィルコクソンの順位和検定は双方向であり、応答者または非応答者のいずれかにおいて遺伝子を同定した。かくして、その方法の7試行が存在した。各ケースにおいて、プローブセットをそれらのスコアに基づいて並べ、ランキングした。各方法からの上位の100個のランキングされたプローブセットを表1について選択した。該表における最後のカラムは、その方法を横切る最小のランクを確認する。
【0244】
【表1−1】

【0245】
【表1−2】

【0246】
【表1−3】

【0247】
【表1−4】

【0248】
【表1−5】

【0249】
【表1−6】

【0250】
【表1−7】

【0251】
【表1−8】

【0252】
【表1−9】

【0253】
【表1−10】

【0254】
【表1−11】

【0255】
【表1−12】

【0256】
【表1−13】

【0257】
【表1−14】

【0258】
【表1−15】

【0259】
【表1−16】

【0260】
【表1−17】

【0261】
【表1−18】

【0262】
【表1−19】

【0263】
【表1−20】

【0264】
【表1−21】

【0265】
【表1−22】

【0266】
【表1−23】

【0267】
【表1−24】

【0268】
【表1−25】

【0269】
【表1−26】

【0270】
【表1−27】

【0271】
【表1−28】

【0272】
【表1−29】

【0273】
【表1−30】

【0274】
【表1−31】

【0275】
【表1−32】

【0276】
コックスの比例ハザード分析(Cox proportional hazard analysis)を行い、ボルテゾミブでの処置後に再発した不応答性多発性骨髄腫を持つ患者における疾患進行(TTP)までの時間予測を決定した。この方法は、データのうちのいくつかが検閲し得る事象データまでの時間を分析するように設計される(E.T. Lee, Statistical Methods for Survival Data Analysis, 第2版. 1992, John Wiley& Sons, Inc.参照)。統計パーケージSASを用いて分析を行った。発明者らは最初に臨床的および予後因子を評価して、因子のどの組合せがTTPとの最も大きな関連を示したかを確認した。これは最良のサブセット選択のためのスコアー法の使用によって達成した。この方法は、考慮中の説明的な変数の1つの予測から総数までランキングする全ての可能なモデルサイズについてスコアのカイ2乗統計を提供する。かくして、その方法は、最高のカイ2乗統計の順に、最初に最良の単一の予測を提供する。有意な単一の予測モデル(p<0.05)が存在すれば、手順は、すべての2つの予測モデルを見積もり、次いで最高のカイ2乗統計によりそれらをランキングする次の工程に進む。
【0277】
2つの予測モデルが単一の予測モデルより良好にフィットするかを評価するために、カイ2乗統計における差が計算される。これは1つの自由度カイ二乗検定であり、統計的有意差について評価できる。その差がp<0.05にて有意であると分かれば、発明者らは2つの予測モデルがよりよいフィットであり、第2の変数が、第1の変数を考慮後にTTPと有意に関連し、そのプロセスは、全ての3つの予測モデルを見積ることにより継続すると結論する。その3つの予測モデルは、2つの予測モデルが単一予測モデルに対して評価されたような同一の方法で2つの予測モデルと比較される。このプロセスは、異なるカイ二乗テストが機能しなくなる、すなわち、さらなる変数においてそのモデルへの追加についてp>0.05となるまで継続する。このプロセスを用いて、発明者らは、最良のモデルが、3つの有意な予後または臨床的な因子、異常な細胞発生(cytogentic)、β2−マイクロクロブリン、およびc−反応蛋白質を含むことを見出した。発明者らはこれを最良の予後の可変モデルとして定義した。
【0278】
次の工程は、予後因子を考慮後にTTPと有意に関係したいずれかのゲノムマーカーが存在したかを決定することであった。発明者らは、まず、Affymetrics U133AおよびU133Bのヒトの配列チップからの約44,000の転写体について作成されたゲノムのデータセットを、転写体が容易に検出するか否かを決定するためのAffymetrix検出系を用いて少なくとも1つの存在するコールを有するそれらの遺伝子までフィルタリングした。これは、13,529個の転写体を分析のために残した。次いで、発明者らは、さらに各モデルが前記の3つの予後因子を含む13,529個の転写体についてコックス比例ハザードモデルを見積もった。すなわち、各モデルが1つの転写体および3つの予後因子を含む13,529個のモデルを見積った。各モデルから、発明者らは、TTPへの各転写体の関連性について相対的なリスク、95%信頼区間およびp値の見積を得た。その13,529個のモデルから、発明者らは、0.05未満のp値を有する834個の転写体を見出した。すなわち、発明者らは、予後因子からTTPに有意にかつ独立して関連した834個の転写体を見出した。これらを表2にリストする。
【0279】
【表2−1】

【0280】
【表2−2】

【0281】
【表2−3】

【0282】
【表2−4】

【0283】
【表2−5】

【0284】
【表2−6】

【0285】
【表2−7】

【0286】
【表2−8】

【0287】
【表2−9】

【0288】
【表2−10】

【0289】
【表2−11】

【0290】
【表2−12】

【0291】
【表2−13】

【0292】
【表2−14】

【0293】
【表2−15】

【0294】
【表2−16】

【0295】
【表2−17】

【0296】
【表2−18】

【0297】
【表2−19】

【0298】
【表2−20】

【0299】
【表2−21】

【0300】
【表2−22】

【0301】
【表2−23】

【0302】
【表2−24】

【0303】
【表2−25】

【0304】
【表2−26】

【0305】
【表2−27】

【0306】
【表2−28】

【0307】
【表2−29】

【0308】
【表2−30】

【0309】
【表2−31】

【0310】
【表2−32】

【0311】
依然としてさらに、表3は、疾患がボルテゾミブでの処置に対して抵抗性(すなわち、進行性疾患)である非応答性の患者からの骨髄腫試料において有意に発現したマーカーを示す。表3に記載されたマーカーは、表1について前記した方法と同様に記載した。これらのマーカーは、処置に安定または応答性のいずれかであるものから抵抗性の患者を区別するために機能するであろう。
【0312】
【表3−1】

【0313】
【表3−2】

【0314】
分類指標Classifier
所与のセットの特徴を用いて患者試料を先に定義された群に分類するために用いる種々のアリゴリズムが現在利用可能である。従って、特徴選択過程を通じて選択されたマーカーの組合せは、患者試料が感受性または抵抗性であるかに関しての予測式を導き出すために以下の分類用アルゴリズムのうちの1つに用い得る。本発明に用いた分類指標は:1)重み付けした票(Weighted Voting; 「WV」);および2)閾値とした特徴の組合せ(Combination of Thresholded Features;「CTF」)であった。
【0315】
重み付けした票の分類指標は、Golubら, 「Molecular Classification of Cancer: Class discovery and class prediction by marker expression monitoring.」 Science, 286: 531-537 (1999)(ここに出典明示して本明細書の一部とみなす)に記載されたように行った。重み付けした票では、各特徴についての分類基準は、特徴jの重み付けした票についての次の式を用いた:
【0316】
【数2】

【0317】
[式中、Zは、そのセットにおけるj番目の特徴についての対数発現値を示す。その添字により示されたクラスについて、
【数3】

はj番目の特徴の平均の対数発現値を示し、Sは標準偏差を表わす。]
式の右手側での第一の項は、信号対雑音比(重み付けした票におけるこの特徴を与えた重み)であり、一方、引き算された項は決定境界(decision boundary)と呼ばれる。クラス予測を決定するために、該セットにおける全ての特徴についての重み付けした票を合計する。その結果が0を超えるならば、予測はクラスRであり;そうでなければ、予測はクラスSである。また、各予測について、信頼性を計算する。その信頼性を計算するために、そのセットにおける各特徴をクラス予測と一致または不一致であると標識する。νをクラス予測と一致する特徴の票の絶対値の合計とし、νをクラス予測と一致しない票の絶対値の合計とする。次いで、予測は以下と定義する:
【0318】
【数4】

【0319】
CTF分類指標は、各特徴についての標準化された発現値に対する閾値を最初に選定する。該CTF閾値は、CBT特徴フィルタリングスコアにより割り算されたCBT閾値であり、その各々は前記されている。次いで、発現値はこの閾値により割り算する結果、「閾値標準化発現値」となる。次いで、マーカーセットまたはモデルにおける特徴の該閾値標準化発現値は、これらの方法:(1)平均、(2)最大値のうちの1つを用いて「組み合せた値」に組み合わせる。好ましい具体例において、第1のアプローチの平均を用いる。最終的に、組み合せた値に関する閾値は、クラスAにおける組み合せた値の平均値+クラスAにおいていくらかの数の組み合せた値の標準偏差と決定される。好ましい具体例において、標準偏差の数は2である。CBT特徴フィルタリング方法の記載において導入された用語を用いて、この閾値より下の組み合せた値を持つ試料はクラスAに分類し、この閾値を超える組み合せた値を持つ試料はクラスBに分類する。
【0320】
特徴選択
特徴選択は、マーカーセットまたはモデルを形成する特徴の組合せにおいて生じたデータセットにおける、44,928個の利用可能な特徴の最良のサブセットを決定し、患者を感受性でかつ抵抗性の群に分類する工程である。第1工程は、前記のごとく、上位100個のマーカーに対するフィルタリングである。次に、重み付けした票(WV)マーカーセットについては、標準的特徴選択方法、シーケンシャルフォワード(sequential forward)特徴選択を用いる(DashおよびLiu, 「Feature Selection for Classification」, Intelligent Data Analysis 1: 131-156, 1997)。CTFマーカーセットを確立するために、2つの方法:上位NのCBTスコアマーカー(N≦100)の選択、および全ての1および2の特徴モデルの徹底的な検索を利用した。発明者らは、特徴を選択するためにデータセットにこれらの各々がどのように適用されるかを今や記載する。
【0321】
WVモデルについて、上位100のSNRマーカーを決定した。シーケンシャルフォワード選択は、該セットにおけるマーカーなくして開始する。
【0322】
各反復において、新しい特徴セットは、評価関数により選択された特徴を加えることにより形成される。反復は、評価関数を改善する特徴が加えることができない場合に終了する。評価関数は2つの部分を有する。第1の部分は、(1)全試料に関して確立されたモデルにより、または(2)リーブ−ワン−アウトクロスバリデーション(leave-one-out cross-validation) (Dash and Liu, 1997)においてのいずかにより正確に予測された試料数である。評価関数の第1の部分における結束は、不正確な予測の信頼性の合計より少ない正確な予測の信頼性の合計に等しい値によって割られる。評価関数の第2の部分は、より高い信頼性およびより正確な予測を有するセットを支持する。
【0323】
各プローブセットを単一マーカーモデルとして用いて、ボルテゾミブ応答性を予測する。複数のマーカーセットを、既に選択された特徴を除去した各時点で、特徴選択のラウンドの反復により生成した。各モデルのスコアを決定した。最高のスコアリングモデルを含むプローブセットを選択した。
【0324】
残りのプローブセットは、既に選択された(複数の)プローブセットを伴うモデルにおける時点にて各々用いたものであった。これらの各モデルにスコアを与えた。新しいモデルのスコアが既に選択されたマーカーのスコア以下であるならば、マーカー選択を停止し、アルゴリズムは、除外し、さらなる(複数の)セットの選択を続けることにより最終選択を続ける(以下参照)。他方、高スコアを持つモデルを得るために既に選択されたマーカーに加えたプローブセットを、選択されたマーカーのリストに加え、そのアルゴリズムをスコアを改善するためにさらなるマーカーの選択に戻した。
【0325】
スコアを改善するさらなるマーカーがない最終選択に際して、選択されたマーカーを除外する。次いで、マーカー選択を前記のごとく開始する。このプロセスは、5セットの選択されたマーカーが存在するまで繰り返す。これらを一つの完全な予測マーカーセットに結合する。
【0326】
CTFマーカーセットの確立について、上位100のCBT特徴をセットにおける使用のために考慮し、全ての1−および2−特徴セットを徹底的に評価する。所与のセットについてのスコアは、そのセットについての(前記の)CTF閾値を超えるクラスBの試料数である。CTFマーカーセット間の結束は、あるセットにおけるいずれかの構成マーカー(constituent marker)の(前記の)最良のCBTスコアにより割られる。
【0327】
WVおよびSNRでスコアされたマーカーを用いて同定された重み付けした票を行う予測マーカーセットの例を表4に示す。この手順は、本明細書に記載された多数のものならびに当該技術分野において知られた他のものの一つであり、その手順を用いて、癌患者におけるプロテアソーム阻害応答を予測するセットについてマーカーを同定および選択できる。この手順は、その方法の予測精度を決定するためにクロス確認に用いた手順と同一である。(以下の分類精度を参照:
【0328】
【表4−1】

【0329】
【表4−2】

【0330】
分類精度
独立した群の腫瘍における感受性または抵抗性を予測するために選択されたモデルの能力を決定するために、5倍のクロス確認を適用した。クロス確認についての詳細は、KohaviおよびJohn, 「Wrappers for Feature Subset Selection」, Artificial Intelligence 97 (1-2) (1997) pp. 273-324参照。クロス確認は、トレーニングおよびテストセットへのデータセットの反復した分割を供し、トレーニングセットだけを用いて各時点でモデルを確立し、次いで、保留されたテストセットに関するその正確さを評価する。5倍のクロス確認は、トレーニングセットが元来のデータセットの80%を含み、テストセットが元来のデータセットの20%を含むことを意味する。そのフィルタリングの特徴選択およびモデル確立操作は、トレーニングセットに関してだけ行われ、次いで得られたモデルはテストセットに適用する。分類精度は、クロス確認の複数の試行を横切るテストセットに関してだけ測定する。
【0331】
大部分の高度に予測可能なモデルが偶然だけにより得ることができるかを決定するために、置換テストを行った。その標識を44個の発見試料において10回置換し、その全てのマーカー選択手順を反復した。応答者−対−他の比較における重み付けした票を用いると、例えば、置換されたモデルについての全体の誤差率は、観察された標識についての29%と比較して、50%であった。これらの結果は、それらのモデルが、偶然だけにより同定できることは起こりそうもないことを示した。不応答性−対−他の比較において、発明者らは、置換された試料標識に比較する場合の予測精度の明確な改善は分からなかった。しかしながら、発明者らは、比較的高い単一マーカーのSNRまたはCBTスコアを有する個々のマーカーをここで報告する。
【0332】
さらなるマーカーセットが、モデルを同定するために本明細書に記載された方法を使用してかくして得ることができるということを認識するであろう。モデルにおいて相互に置換できる多数の高度に関連した特徴が存在し、必ずしもすべてはリストされない。
【0333】
クラス予測の特定の適用
重み付けした票(WV)
ここで、発明者らは、本明細書に記載されたアルゴリズムを用いて、所与の患者についての応答性または非応答性の予測を得るために重み付けした投票モデルを適用する方法を例示する。応答性または非応答性の群に分類された44名の患者を用いた以下の表は、そのデータセットから確立された重み付けした票の予測セットにおける各マーカーについてのSNRスコアおよび決定境界を示す。また、そのマーカーが、応答性(R)または非応答性(NR)の患者のいずれにおいてより高度に発現されるかを示す。データセットにおける一つの例示的な非応答性の患者について、各マーカーにより導かれる票を表5に示す。その票の重み付けの合計は、0未満であり、それは非応答性の予測を示す。その予測されたクラス(非応答性)における信頼性は、0.8431である。
【0334】
【表5】

【0335】
同様の方法が本発明のマーカーセットを利用して使用できると認識されるであろう。
【0336】
閾値特徴の組合せ(CTF)
応答性または非応答性の群に分類された44名の患者を用いて、CTF予測セットにおける各アップ−イン−非応答性マーカーについての標準化閾値を発明者らのデータセットから確立した。患者発現についての各マーカー値を、そのマーカーについてのCBTスコアにより割った応答クラスの平均である因子により割ることにより計測する。標準化された発現値を合計して、その患者についての組み合わせた予測値を決定する。患者が非応答性であると予測された前記の閾値は、前記のCTF方法により59.15であると決定した。この患者についての平均の計測された発現値が、59.15未満である46.81であるために、その患者は、応答性であると予測される。表6を参照。
【0337】
同様の方法が、同様の予測マーカーセットを生成するために本発明の同定されたマーカーセットからの1以上のマーカーを利用して使用できると認識されるであろう。
【0338】
【表6】

【0339】
予測マーカーの生物学的アノテーション
表1および表2に記載された応答遺伝子の中には、骨髄腫を含めた癌の治療のためのプロテアソーム阻害剤の使用に特に関連する(複数の)機能を含めた、その推定上の生物学的な機能または機能群が特に注目される遺伝子のサブセットが存在する。遺伝子のうちのいくつかは骨髄腫の開始または進行、リンパ球細胞の増殖、生存またはシグナリング、薬物代謝もしくはアポトーシス経路の調節またはプロテアソーム阻害剤によって直接的にターゲットとされるユビキチン/プロテアソーム経路の成分のコード化に関与することが知られている。例えば、この分析は、細胞接着(番号1〜5)、アポトーシスシグナリング(6〜13)、癌抗原(14〜27)、細胞周期(28〜33)、薬物代謝(34〜35)、薬物耐性(36〜37)、成長制御、造血(hematopoesis)(38〜44)、細胞分裂促進性(mitogenic)シグナリング(45〜53)、骨髄腫シグナリング(53〜61)、骨髄腫転座(translocation)(62〜73)、NFkB経路(74〜77)、発癌遺伝子(78〜82)、腫瘍形成性のシグナリング(83〜93)、蛋白質の恒常性(94〜118)、腫瘍サプレッサー経路(119〜128)およびユビキチン/プロテアソーム経路(129〜136)と関連する表1における遺伝子を同定した。また、加えて、この実行において同定された遺伝子は、表2における進行性疾患と関連した予測マーカーにも対応する遺伝子に対応する。表7参照。
【0340】
かかる遺伝子の同定は、これらの方法で同定された遺伝子が、実際に癌生物学およびプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)の癌治療作用に対する血液学的腫瘍の潜在的な感受性に関連するという仮説を強化する。さらに、応答性のマーカーのごときかかる機能性分子の記載は、診断的ツールにおける含有物(inclusion)についての最も適当なマーカーの選択を促すことができた。2つの区別されるプローブセットが等しい予測情報を提供する場合に、これらのマーカーまたは生物学的に関連することが知られている他のマーカーの含有物は、診断方法の取り込みおよび実施を促進できる。最終的に、これらの機能的な分子および経路の特徴付けは、同一または同様の生物学的経路において作用する新しく、かつおそらく改良されたマーカーの同定を可能にできる。
【0341】
さらに、この分析は、応答性のさらなるゲノムマーカーがこれらの生物学的経路において見出すことができることを示す。例えば、「腫瘍形成性のシグナリング」カテゴリーは、Wntシグナリング経路のいくつかの成分を含む。かくして、Wnt経路において機能する他の遺伝子または蛋白質は、応答性マーカーとしても使用できる。また、これらの同定された経路におけるさらなるマーカーは、単独でまたは表1および表2に示すマーカーと組み合わせて機能して、ボルテゾミブでの処置に対する応答性を効果的に予測できる。
【0342】
【表7−1】

【0343】
【表7−2】

【0344】
【表7−3】

【0345】
【表7−4】

【0346】
【表7−5】

【0347】
【表7−6】

【0348】
【表7−7】

【0349】
【表7−8】

【0350】
【表7−9】

【0351】
【表7−10】

【0352】
【表7−11】

【0353】
【表7−12】

【0354】
【表7−13】

【0355】
【表7−14】

【0356】
【表7−15】

【0357】
【表7−16】

【0358】
プロテアソーム阻害抵抗性細胞系
プロテアソーム阻害剤がそれらのアポトーシス効果を発揮する具体的な機序をより良好に理解する、ならびにそれらの効果を覆し得る機序を解明するために、ボルテゾミブ抵抗性腫瘍細胞系を生成した。腫瘍細胞系を非常に低用量のボルテゾミブ(約1/20のLD50−50%の細胞を死滅させる用量)で24時間処置した。次いで、薬物を除去し、生存細胞を24〜72時間回復させた。次いで、このプロセスを各時点にて2倍にしたボルテゾミブ用量で複数ラウンドにて繰り返した。LD50の3〜5倍で細胞に投与した後、いくらかの個々の細胞系を単一細胞コロニーからサブクローニングした。引き続いての分析は、これらの系が、ボルテゾミブに対して5〜10倍の抵抗性を示し、この特性は、何ヶ月もの間安定であり、複数の薬物抵抗性ポンプの阻害剤により影響されないことを示した。この戦略を卵巣腫瘍細胞系(OVCAR-3)および骨髄腫腫瘍細胞系(RPMI8226)の双方に適用し、複数のサブクローンを特徴付けした。次いで、その抵抗性細胞系をAffymetrix U133マイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファイリング(profiling)に付した。感受性の親(S)−対−抵抗性のサブクローン(R)で異なって表現された遺伝子の比較は、感受性および抵抗性の骨髄腫生検の分析においても同定されたいくつかの遺伝子を強調した。表8を参照。表8に記載された番号は、表1におけるマーカー識別番号に対応する。かかる結果は、これらの遺伝子の発現およびボルテゾミブ感受性の間の潜在的な関係を強調するだけではなく、臨床試料中の応答遺伝子を定義するのに用いた方法の妥当性を支持する。
【0359】
【表8−1】

【0360】
【表8−2】

【0361】
感受性アッセイ
癌細胞の試料を患者から得る。発現レベルは、表1、表2および/または表3に記載された予測マーカーの少なくとも1つに対応するマーカーについて試料中で測定する。好ましくは、表1、表2および/または表3に記載され、本明細書に記載された方法を用いてマーカーセットにおいてまとめたマーカーを含むマーカーセットを利用する。例えば、マーカーセットは、表4、表5および/または表6に記載されたマーカーセット、または同様の方法によって調製されたいずれかのマーカーセットを含むことができる。かかる分析を用いて、患者における腫瘍の発現プロフィールを得る。次いで、その発現プロフィールの評価を用いて、患者が応答性の患者であって、プロテアソーム阻害療法(例えば、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)単独またはさらなる剤と組み合わせて)から利益を受けるかを決定する。評価は、提供されたいずれかの方法または当該技術分野において知られた他の同様のスコアリング方法(例えば、重み付けした票、CTF)を用いて調製した一つのマーカーセットの使用を含むことができる。依然としてさらに、評価は1を超える調製されたマーカーセットの使用を含むことができる。プロテアソーム阻害療法は、その剤に存在下で、その評価の結果が非応答性の低下または応答性の増大を示す場合に、癌を治療するのに適当であると同定されるであろう。
【0362】
また、プロテアソーム阻害治療の経過の間に患者から採取された腫瘍試料中の1以上の同定されたマーカーまたはマーカーセットの発現を評価すると、その治療剤が作用し続けるか、または癌が治療プロトコールに対して非応答性(不応性)となるかを決定することができる。例えば、ボルテゾミブの治療を受けている患者は、腫瘍細胞を採取され、マーカーまたはマーカーセットの発現についてモニターされるであろう。表1、表2および/または表3に記載された1以上のマーカーセットの発現プロフィールがその剤の存在下で応答性の増大を示すならば、プロテアソーム阻害剤での処置は継続するであろう。しかしながら、表1、表2または表3に記載された1以上のマーカーセットの発現プロフィールが、薬剤の存在下の非応答性の増大を示すならば、癌は、プロテアソーム阻害療法に対して抵抗性となり、もう一つの処置プロトコールを患者を治療するために開始すべきである。
【0363】
重要なことには、これらの決定は、患者間ベースまたは薬剤間(または剤の組合せ)で行うことができる。かくして、特定のプロテアソーム阻害療法が特定の患者または特定の群/クラスの患者に利益を与えるようであるか否か、あるいは特定の治療を継続すべきかを決定することができる。
【0364】
他の具体例
本発明は、本発明の態様の単一の例示として意図され記載された特定の具体例により範囲を制限されるものではない。機能的に等価な方法および構成要素は、本明細書に示され記載されるものに加えて本発明の範囲内にあり、リーチン的な実験に過ぎないものを用いて前記の記載から当業者には明らかとなるであろう。かかる等価物は、前記の特許請求の範囲により含まれることを意図する。
【0365】
論文、特許およびデータベースを含めた本明細書に記載された全ての参考文献をここに出典明示して明確に本明細書の一部とみなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し;次いで、
b)予測マーカーの発現に基づいて腫瘍を治療するためにプロテアソーム阻害ベースの療法を決定し、ここに、有意な発現レベルは、患者が応答性の患者または非応答性の患者のいずれかであることを示す
ことを特徴とする、患者における腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害療法を決定する方法。
【請求項2】
予測マーカーの発現レベルがmRNAの検出によって測定される請求項1記載の方法。
【請求項3】
予測マーカーの発現レベルが蛋白質の検出によって測定される請求項1記載の方法。
【請求項4】
予測マーカーが、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7のいずれかに記載された少なくとも1つのマーカーから選択された請求項1記載の方法。
【請求項5】
有意な発現レベルの測定が、対照マーカーとの比較または事前決定された標準に対する比較によって決定される請求項1記載の方法。
【請求項6】
腫瘍が液性および固形の腫瘍から選択された請求項1記載の方法。
【請求項7】
液性腫瘍が、骨髄腫、多発性骨髄腫、非ホジキン・リンパ腫、B細胞性リンパ腫、ワルデンストローム症候群、慢性リンパ性白血病および他の白血病よりなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
有意な発現レベルが、2以上の予測マーカーを含む予測マーカーセットによって測定される請求項1記載の方法。
【請求項9】
腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害ベースの療法が、ボルテゾミブでの治療を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
腫瘍治療に先立って、腫瘍治療と同時に、または腫瘍治療後にのいずれかの時点に、腫瘍細胞を含む患者試料が対象から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
a)患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルを測定し;次いで
b)予測マーカーの発現に基づいたプロテアソーム阻害剤を含むプロテアソーム阻害療法で患者を治療し、ここに、有意な発現レベルは、患者が応答性の患者であることを示すことを特徴とする、プロテアソーム阻害療法で患者における腫瘍を処置する方法。
【請求項12】
予測マーカーの発現レベルが、mRNAの検出によって測定される請求項11記載の方法。
【請求項13】
予測マーカーの発現レベルが、蛋白質の検出によって測定される請求項11記載の方法。
【請求項14】
予測マーカーが、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7のいずれかに記載された少なくとも1つのマ―カーから選択される請求項11記載の方法。
【請求項15】
有意な発現レベルの測定が、対照マーカーとの比較または事前決定された標準に対する比較によって決定される請求項11記載の方法。
【請求項16】
腫瘍が液性および固形の腫瘍から選択された請求項11記載の方法。
【請求項17】
液性腫瘍が、骨髄腫、多発性骨髄腫、非ホジキン・リンパ腫、B細胞性リンパ腫、ワルデンストローム症候群、慢性リンパ性白血病および他の白血病よりなる群から選択される請求項11記載の方法。
【請求項18】
有意な発現レベルが、2以上の予測マーカーを含む予測マーカーセットによって測定される請求項11記載の方法。
【請求項19】
腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害ベースの療法が、ペプチジルアルデヒド、ペプチドボロン酸、ペプチドホウ酸エステル、ビニルスルホン、エポキシケトンおよびラクタシスチンアナログよりなる群から選択される請求項11記載の方法。
【請求項20】
腫瘍治療に先立って、腫瘍治療と同時に、または腫瘍治療後にのいずれかの時点に、腫瘍細胞を含む患者試料が対象から得られることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項21】
表1、表2および表3から選択された少なくとも2つの単離された核酸分子を含む請求項1記載の方法に用いるマーカーセット。
【請求項22】
表1、表2および表3から選択された少なくとも2つの単離された核酸分子を含む請求項11記載の方法に用いるマーカーセット。
【請求項23】
重み付き投票方法(weighted voting method)を用いて構築されたマーカーセットを含む請求項21記載のマーカーセット。
【請求項24】
閾値の特徴モデルの組合せを用いて構築されたマーカーセットを含む請求項22記載のマーカーセット。
【請求項25】
少なくとも1つの予測マーカーの発現を評価するための試薬および使用説明書を含む、患者における腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害療法を決定するためのキット。
【請求項26】
試薬が、1または複数の核酸プローブを含み、ここに、該プローブは、少なくとも1つの予測マーカーに特異的に結合する請求項25記載のキット。
【請求項27】
試薬が、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、およびペプチドプローブよりなる群から選択された少なくとも1つの検出用試薬を含み、ここに、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメントおよびペプチドプローブは、少なくとも1つの予測マーカーに対応する蛋白質に特異的に結合する請求項25記載のキット。
【請求項28】
a)一つの予測マーカーのポリペプチドを含む組成物とテスト化合物とを組み合せ;
b)テスト化合物が予測マーカーポリペプチドに結合するかを決定し;次いで
c)予測マーカーポリペプチドを結合する化合物を癌の処置用の候補化合物として同定することを特徴とする、
癌の処置用の候補化合物を同定する方法。

【公開番号】特開2010−207230(P2010−207230A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92346(P2010−92346)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【分割の表示】特願2004−559278(P2004−559278)の分割
【原出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】