説明

プロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)のアンタゴニスト抗体

本発明は、PAR1受容体を特異的に認識し、該受容体と拮抗する抗体または抗原結合分子を提供する。また本発明において、かかる分子をコードするポリヌクレオチドおよびベクター、ならびに該ポリヌクレオチドまたは該ベクターを包含する宿主細胞を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2007年7月17日に出願した米国仮出願第60/950,290号についての優先権の利益を主張する。この出願の全開示は、その全体において、あらゆる目的のために、参照により本明細書に包含される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明はプロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)のアンタゴニストである、抗体および抗原結合分子に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)は、Gタンパク質共役受容体(GCPR)群に属するトロンビン受容体である。PAR1は多様な組織、例えば内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、ニューロンおよびヒト血小板において発現される。これは止血、増殖および組織損傷に関連した細胞応答に関与している。PAR1を介する血小板凝集のトロンビン介在性刺激は、血管における血餅形成および創傷治癒の重要な段階である。トロンビンは、PAR1の細胞外N末端ドメインの一部をタンパク質分解的に除去して新たなPAR1のN末端を露出させることによって、PAR1を活性化する。次いで、新たなPAR1のN末端の最初の数個のアミノ酸(SFLLRN;配列番号68)は、受容体の別の部分と結合して関連Gタンパク質によるシグナル伝達を開始するテザーリガンドとして作用する。PAR1は凝血に関連する他のセリンプロテアーゼによって活性化されることもある。
【0004】
PAR1介在性シグナル伝達活性の調節は多様な治療適用を有する。PAR1の阻害は血栓症および血管増殖性障害の処置ならびにがんの進行の阻害に有用である。例えば、Darmoul, et al., Mol Cancer Res (2004) 2(9):514-22 および Salah, et al, Mol Cancer Res (2007) 5(3):229-40を参照されたい。アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤は、PAR1細胞内シグナル伝達によって介在される多くの疾患状態の処置に有用である。例えば、アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤は、慢性腸炎、例えば炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および潰瘍性大腸炎;ならびに線維症、例えば肝線維症および肺線維症の予防または阻止に有用である。例えば、Vergnolle, et al., J Clin Invest (2004) 114(10):1444; Yoshida, et al, Aliment Pharmacol Ther (2006) 24(Suppl 4):249; Mercer, et al., Ann NY Acad Sci (2007) 1096:86-88; Sokolova and Reiser, Pharmacol Ther (2007) PMID:17532472を参照されたい。アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤は、虚血−再灌流障害、例えば心筋、腎臓、脳および腸の虚血−再灌流障害の予防または阻止にも有用である。例えば、Strande, et al., Basic Res. Cardiol (2007) 102(4):350-8; Sevastos, et al., Blood (2007) 109(2):577-583; Junge, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100(22):13019-24 および Tsuboi, et al., Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol (2007) 292(2):G678-83を参照されたい。PAR1細胞内シグナル伝達の阻害は、細胞の単純ヘルペスウイルス(HSV1およびHSV2)感染の阻害にも用いることができる。Sutherland, et al., J Thromb Haemost (2007) 5(5):1055-61を参照されたい。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、プロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)に対する改善されたアンタゴニスト抗体およびその使用方法を提供する。
【0006】
したがって、1つの局面において、本発明はプロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)と結合する抗体を提供する。ある態様において、本抗体は:
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(RF4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域を含み、ここで
i)前記重鎖CDR3がアミノ酸配列DDXSXWXFDV(配列中、XはGまたはIであり、XはPまたはYであり、XはH、L、P、M、E、W、T、S、QまたはAであり、XはYまたはFである)(配列番号10)を含み;
ii)前記軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列FQGXVPFT(配列中、XはS、D、AまたはVであり、XはH、R、T、SまたはKである)(配列番号20)を含む;
PAR1アンタゴニストである抗体を含む。
【0007】
関連した局面において、本発明は、PAR1と特異的に結合する抗体を提供する。ある態様において、本抗体は重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および該軽鎖可変領域がそれぞれ下記3個の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み;
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号3、配列番号4および配列番号5から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号7、配列番号8および配列番号9から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号11、配列番号12および配列番号13から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号15および配列番号16から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号18および配列番号19から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号22および配列番号23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、本抗体はPAR1アンタゴニストである。
【0008】
1つの態様において、重鎖Vセグメントは配列番号41と少なくとも90%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは配列番号46と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0009】
1つの態様において、重鎖Vセグメントは配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントは配列番号47、配列番号48、配列番号49および配列番号50から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0010】
本抗体の1つの態様において:
i)重鎖CDR3は配列番号11、配列番号12および配列番号13から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
ii)軽鎖CDR3は配列番号22および配列番号23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
ある態様において、重鎖FR4はヒト生殖細胞系FR4である。ある態様において、重鎖FR4はヒト生殖細胞系JH6(WGQGTTVTVSS;配列番号32)である。ある態様において、重鎖Jセグメントはヒト生殖細胞系JH6部分配列DVWGQGTTVTVSS(配列番号66)を含む。
【0012】
ある態様において、軽鎖FR4はヒト生殖細胞系FR4である。ある態様において、軽鎖FR4はヒト生殖細胞系Jk2(FGQGTKLEIK;配列番号40)である。ある態様において、軽鎖Jセグメントはヒト生殖細胞系Jk2部分配列TFGQGTKLEIK(配列番号67)を含む。
【0013】
ある態様において、重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントはそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み;
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号2のアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号6のアミノ酸配列を含み;
iii)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号14のアミノ酸配列を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0014】
ある抗体の態様において:
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号4を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号8を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号11を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3は配列番号22を含む。
【0015】
ある抗体の態様において:
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号4を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号8を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号12を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3は配列番号23を含む。
【0016】
ある抗体の態様において:
i)重鎖VセグメントのCDR1は配列番号5を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2は配列番号9を含み;
iii)重鎖CDR3は配列番号13を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1は配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2は配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3は配列番号23を含む。
【0017】
ある態様において、重鎖可変領域は配列番号51の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域は配列番号55の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0018】
ある態様において、重鎖可変領域は配列番号52、配列番号53および配列番号54から成る群から選択される可変領域と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域は配列番号57、配列番号58および配列番号59から成る群から選択される可変領域と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0019】
ある態様において、重鎖可変領域は配列番号52、配列番号53および配列番号54から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号57、配列番号58および配列番号59から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
ある態様において、本抗体は1×10−8M未満の平衡解離定数(KD)でPAR1と結合する。
【0021】
ある態様において、本抗体はFAb’フラグメントである。ある態様において、本抗体はIgGである。ある態様において、本抗体は一本鎖抗体(scFv)である。ある態様において、本抗体はヒト定常領域を含む。
【0022】
ある態様において、本抗体は配列番号52を含む重鎖と、配列番号57を含む軽鎖を含んでなる。
【0023】
ある態様において、本抗体は配列番号53を含む重鎖と、配列番号58を含む軽鎖を含んでなる。
【0024】
ある態様において、本抗体は配列番号54を含む重鎖と、配列番号59を含む軽鎖を含んでなる。
【0025】
さらなる局面において、本発明は本発明の抗体を含む薬学的に許容される組成物を提供する。該態様は本明細書に記載されている通りである。
【0026】
別の局面において、本発明は、PAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態の症状を改善する方法であって、それを必要とする対象に本発明のアンタゴニスト抗体を投与することを含む方法を提供する。該抗体の態様は本明細書に記載されている通りである。
【0027】
ある方法の態様において、異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態は慢性腸炎である。
【0028】
ある方法の態様において、異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態は線維症である。
【0029】
ある方法の態様において、異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態はPAR1を過剰発現するがんである。
【0030】
ある方法の態様において、異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態は虚血−再灌流障害である。
【0031】
定義
「抗体」は、対応する抗原と非共有的に、可逆的に、そして特異的様式で結合することができる、免疫グロブリンファミリーのポリペプチドまたは免疫グロブリンのフラグメントを含むポリペプチドを意味する。例示的な抗体構造単位はテトラマーを含む。テトラマーはそれぞれ2つの同一のポリペプチド鎖対から成り、それぞれの対は1個の「軽鎖」(約25kD)と1個の重鎖(約50〜70kD)を有し、ジスルフィド結合で結合している。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はκまたはλの何れかとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらはそれぞれ順に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。各鎖のN末端は抗原認識に主として関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。用語可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)は、それぞれ軽鎖および重鎖のこれらの領域を意味する。本明細書において使用するとき、「抗体」は、例えばPAR1に対する、特定の結合特異性を有するあらゆる種類の抗体およびそのフラグメントを含む。したがって、全長抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体(ScFv)、Fab、Fab’および同じ結合特異性を有するこれらのフラグメントの多量体型(例えばF(ab’))がこの概念中に含まれる。
【0032】
「相補性決定ドメイン」または「相補性決定領域」(「CDR」)は相互交換可能なように、VおよびVの超可変領域を意味する。CDRは標的タンパク質に対する特異性を有する抗体鎖の標的タンパク質結合部位である。ヒトVまたはVのそれぞれには3つのCDR(CDR1〜3、N末端から順に番号を付す)が存在し、可変ドメインの約15〜20%を構成する。CDRは標的タンパク質のエピトープと構造的に相補的であり、したがって結合特異性と直接的に関係する。VまたはVの残りの部分、いわゆるフレームワーク領域は、アミノ酸配列の変化をほとんど示さない(Kuby, Immunology, 4th ed., Chapter 4. W.H. Freeman & Co., New York, 2000)。
【0033】
CDRおよびフレームワーク領域の位置は多様な当該技術分野において周知の定義、例えばKabat、Chothia、国際 ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブ上のimgt.cines.fr/)およびAbM(例えばJohnson et al., Nucleic Acids Res., 29:205-206 (2001); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 (1987); Chothia et al., Nature, 342:877-883 (1989); Chothia et al., J. Mol. Biol., 227:799-817 (1992); Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol., 273:927-748 (1997)を参照されたい)を用いて決定される。抗原結合部位の定義は次のものにも記載されている:Ruiz et al., Nucleic Acids Res., 28:219-221 (2000); and Lefranc, M.P., Nucleic Acids Res., 29:207-209 (2001); MacCallum et al., J. Mol. Biol., 262:732-745 (1996); and Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9268-9272 (1989); Martin et al., Methods Enzymol., 203:121-153 (1991); および Rees et al., In SternbergM.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction, Oxford University Press, Oxford, 141-172 (1996)。
【0034】
用語「結合特異性決定因子」または「BSD」は、相互交換可能なように、抗体の結合特異性を決定するために必要な相補性決定領域内の最少の連続または非連続アミノ酸配列を意味する。最少結合特異性決定因子は1個以上のCDR配列内に存在していてよい。ある態様において、最少結合特異性決定因子は、抗体の重鎖および軽鎖のCDR3配列の一部または全長内に存在する(すなわち、それのみによって決定される)。
【0035】
「抗体軽鎖」または「抗体重鎖」は、本明細書において使用するとき、それぞれVまたはVを含むポリペプチドを意味する。内因性Vは遺伝子セグメントV(可変性)およびJ(結合)によってコードされ、内因性VはV、D(多様性)およびJによってコードされる。VまたはVはそれぞれCDRとフレームワーク領域を含む。本明細書において、抗体軽鎖および/または抗体重鎖は時に「抗体鎖」と集合的に呼ぶこともある。これらの用語は、当業者が容易に理解するとおり、VまたはVの基本的構造を破壊しない変異を含む抗体鎖を包含する。
【0036】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、あるいは多様なペプチダーゼによる消化によって産生された、多数の十分に特徴付けられたフラグメントとして存在する。したがって、例えばペプシンは抗体をヒンジ領域のジスルフィド結合の下で消化して、それ自体がジスルフィド結合によってV−C1と結合した軽鎖であるFab’の2量体、F(ab)’を産生する。F(ab)’は緩やかな条件下で還元されてヒンジ領域のジスルフィド結合が壊れて、それによってF(ab)’2量体がFab’1量体に変換され得る。Fab’1量体は、基本的にヒンジ領域の一部を有するFabである。Paul, Fundamental Immunology 3d ed. (1993)。インタクトな抗体の消化の観点から多様な抗体フラグメントが定義されているが、当業者はかかるフラグメントが化学的にまたは組換えDNA技術を用いてデノボ合成することができることを理解している。したがって、用語「抗体」はまた、本明細書において使用するとき、完全な抗体の修飾によって作成した抗体フラグメントまたは組換えDNA技術を用いて新たに合成したもの(例えば一本鎖Fv)またはファージディスプレーライブラリーを用いて同定したもの(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)参照)を含む。
【0037】
モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の製造のために、当該技術分野において既知の何れかの技術を用いることができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983); Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp. 77-96. Alan R. Liss, Inc. 1985参照)。一本鎖抗体の作成のための技術(米国特許第4,946,778号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体の生産に採用することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳類のような他の生物を用いて、ヒト化抗体を発現してもよい。あるいは、ファージディスプレー技術を用いて、選択した抗原と特異的に結合する抗体および異種Fabフラグメントを同定することができる(例えば、McCafferty et al., supra; Marks et al., Biotechnology, 10:779-783, (1992))。
【0038】
非ヒト抗体をヒト化または霊長類化する方法は当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、それに導入された1個以上の非ヒト源由来アミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は輸入残基と称されることもあり、これは典型的には輸入可変ドメインから取られる。ヒト化は基本的に、Winterら(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988) および Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照)の方法に従って、げっ歯類の複数のCDRまたはCDR配列を対応するヒト抗体の配列に置換して実施することができる。したがって、かかるヒト化抗体は、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかの相補性決定領域(「CDR」)残基および場合によりいくつかのフレームワーク(「FR」)残基がげっ歯類抗体の同様の部分に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0039】
「キメラ抗体」は、抗原結合部位(可変領域)が異なるまたは変化したクラス、エフェクター機能および/または種の他の定常領域、あるいはキメラ抗体に新たな特徴を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子および薬物と結合するように定常領域またはその一部が変化、置換または交換されているか;あるいは(b)可変領域またはその一部が異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化、置換または交換されている抗体分子である。
【0040】
用語「可変領域」または「V領域」は、相互交換可能なように、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含む重鎖または軽鎖を意味する。図1を参照されたい。内因性可変領域は免疫グロブリンの重鎖V−D−J遺伝子または軽鎖V−J遺伝子によってコードされる。V領域は天然、組換えまたは合成的に生じるものであってよい。
【0041】
本明細書において使用するとき、用語「可変セグメント」または「Vセグメント」は、相互交換可能なように、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3を含む可変領域の部分配列を意味する。図1を参照されたい。内因性Vセグメントは免疫グロブリンV遺伝子によってコードされる。Vセグメントは天然、組換えまたは合成的に生じるものであってよい。
【0042】
本明細書において使用するとき、用語「Jセグメント」はCDR3のC末端部分とFR4を含む可変領域の部分配列を意味する。内因性Jセグメントは免疫グロブリンJ遺伝子によってコードされる。図1を参照されたい。Jセグメントは天然、組換えまたは合成的に生じるものであってよい。
【0043】
「ヒト化」抗体は非ヒト抗体の反応性を有するがヒトにおける免疫原生が低い抗体である。これは例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をヒトの対応する部分で置換して得ることができる。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984); Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)参照。
【0044】
用語「対応するヒト生殖細胞系配列」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン可変領域配列によってコードされる他の全ての評価した可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列と最も高いアミノ酸配列同一性を有するヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列をコードする核酸配列を意味する。対応するヒト生殖細胞系配列はまた、他の全ての評価した可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領域アミノ酸配列または部分配列と最も高いアミノ酸配列同一性を有するヒト可変領域アミノ酸配列または部分配列を意味する。対応するヒト生殖細胞系配列はフレームワーク領域のみ、相補性決定領域のみ、フレームワークと相補性決定領域、可変セグメント(上記定義の通り)または可変領域を含む配列もしくは部分配列の他の組合せであってもよい。配列同一性は本明細書に記載の方法を用いて、例えばBLAST、ALIGNまたは他の当該技術分野において既知の整列アルゴリズムを用いて2つの配列を整列させて決定することができる。対応するヒト生殖細胞系核酸またはアミノ酸配列は、参照可変領域核酸またはアミノ酸配列と少なくとも約90%、92%、94%、96%、98%、99%の配列同一性を有し得る。対応するヒト生殖細胞系配列は例えば公に利用可能な国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)(ワールドワイドウェブ上のimgt.cines.fr/)およびV−base(ワールドワイドウェブ上のvbase.mrc-cpe.cam.ac.uk)によって決定することができる。
【0045】
用語「特異的(または選択的)に結合」は、抗原、例えばタンパク質と抗体または抗体由来結合剤との間の相互作用を説明する文脈で用いるとき、タンパク質または他の生物製剤の異種集団中の抗原の存在の決定要因である結合反応を意味する。したがって、指定したイムノアッセイ条件下で、特定の結合特異性を有する抗体または結合剤はバックグラウンドの少なくとも2倍特定の抗原と結合し、該サンプル中に存在する他の抗原と顕著な量で実質的に結合しない。かかる条件下での抗体または結合剤との特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性によって選択された抗体または抗原を必要とすることがある。この選択は、例えば他の種(例えばマウス)由来のPAR1分子または他のPARサブタイプ(例えばPAR2、PAR3、PAR4)と交叉反応する抗体を差し引いて得ることができる。多様なイムノアッセイフォーマットを用いて特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択することができる。例えば、あるタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために固相ELISAイムノアッセイが日常的に使用される(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイフォーマットおよび条件の説明について、Harlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual (1998)参照)。典型的に、特異的または選択的結合反応はバックグラウンドシグナルの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの少なくとも10〜100倍のシグナルを生じる。
【0046】
用語「平衡解離定数(K、M)」は、会合速度定数(k、時間−1、M−1)で割った解離速度定数(k、時間−1)を意味する。平衡解離定数は当該技術分野において既知の何れかの方法を用いて測定することができる。一般に本発明の抗体は約10−8M未満、例えば約10−9Mまたは10−10M未満、ある態様において約10−11M、10−12Mまたは10−13M未満の平衡解離定数を有する。
【0047】
本明細書において使用するとき、用語「抗原結合領域」は本発明のPAR1結合分子のドメインであって、該分子とPAR1との間の特異的結合に関与するドメインを意味する。抗原結合領域は少なくとも1個の抗体重鎖可変領域と少なくとも1個の抗体軽鎖可変領域を含む。本発明のPAR1結合分子にはそれぞれ少なくとも1個のかかる抗原結合領域が存在し、該抗原結合領域はそれぞれ他のものと同一であるか、あるいは異なっていてもよい。ある態様において、本発明のPAR1結合分子の少なくとも1個の抗原結合領域がPAR1のアンタゴニストとして作用する。
【0048】
用語「アンタゴニスト」は、本明細書において使用するとき、特異的に結合することができ、受容体を介するシグナル伝達を阻害して該受容体によって介在される応答を完全に阻止するか、あるいは検出可能なように阻害することができる物質を意味する。例えばPAR1のアンタゴニストは、該受容体と特異的に結合し、PAR1介在性シグナル伝達を完全にまたは部分的に阻害する。ある場合において、PAR1アンタゴニストはPAR1と結合し、PAR1からの細胞内シグナル伝達へと続くトロンビン誘導性カルシウム流動またはトロンビン誘導性IL−8生産を阻害する能力によって同定することができる(例えばFlipRアッセイまたはELISAによって測定する)。さらなるアッセイはKawabata, et al., J Pharmacol Exp Ther. (1999) 288(1):358-70に記載されている。例えばカルシウム流動またはIL−8生産によって測定して、本発明のアンタゴニストに曝露されたPAR1からのPAR1細胞内シグナル伝達が、アンタゴニストに曝露していない対照PAR1からの細胞内シグナル伝達と比較して、少なくとも約10%未満、例えば少なくとも約25%、50%、75%未満または完全に阻害されているとき、阻害が生じている。対照PAR1は無抗体もしくは抗原結合分子、他の抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合分子またはアンタゴニストとして機能しないことが知られている抗PAR1抗体もしくは抗原結合分子に曝露することができる。「抗体アンタゴニスト」は該アンタゴニストが阻害抗体である場合を意味する。
【0049】
用語「プロテアーゼ活性化受容体−1」、「プロテイナーゼ活性化受容体−1」または「PAR1」は、相互交換可能なように、トロンビン切断によってN末端テザーリガンドが露出して活性化される、Gタンパク質共役受容体を意味する。PAR1は「トロンビン受容体」および「凝固因子II受容体前駆体」とも知られる。例えば、Vu, et al., Cell (1991) 64(6):1057-68; Coughlin, et al, J Clin Invest (1992) 89(2):351-55; および GenBank 受託番号 NM_001992を参照されたい。PAR1のテザーリガンドと細胞外ドメインの分子内結合は細胞内シグナル伝達およびカルシウム流動を導く。例えば、Traynelis and Trejo, Curr Opin Hematol (2007) 14(3):230-5; および Hollenberg, et al, Can J Physiol Pharmacol. (1997) 75(7):832-41を参照されたい。PAR1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は当該技術分野において既知である。例えば、Vu, et al., Cell (1991) 64(6):1057-68; Coughlin, et al, J Clin Invest (1992) 89(2):351-55; および GenBank 受託番号 NM_001992を参照されたい。ヒトPAR1の核酸配列はGenBank 受託番号 NM_001992として公開されている(M62424.1 および gi4503636も参照されたい)。ヒトPAR1のアミノ酸配列はNP_001983およびAAA36743として公開されている。本明細書において使用するとき、PAR1ポリペプチドは機能的には、トロンビンによって活性化され、N末端テザーリガンドの結合によって細胞内シグナル伝達とカルシウム流動を導くGタンパク質共役受容体である。構造的には、PAR1アミノ酸配列はGenBank 受託番号 NP_001983、AAA36743またはM62424.1のアミノ酸と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。構造的には、PAR1ヌクレオチド酸配列はGenBank 受託番号 NM_001992またはM62424.1のアミノ酸と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0050】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびそれらのポリマーを意味する。特に限定しないが、当該用語は参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に生じるヌクレオチドと同様に代謝される天然ヌクレオチドの既知のアナログを含む核酸を含む。特に定めのない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的修飾変異(例えば縮重コドン置換)、アレル、オーソログ、SNPならびに相補配列および明示的に示されている配列を、暗黙に含む。特に、縮重コドン置換は、1個以上の選択した(または全ての)コドンの第3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製して得ることができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); および Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0051】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書において相互交換可能なように使用され、アミノ酸残基のポリマーを意味する。該用語は1個以上のアミノ酸残基が対応する天然に生じるアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーならびに天然に生じるアミノ酸ポリマーおよび天然に生じないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0052】
用語「アミノ酸」は、天然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に生じるアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を意味する。天然に生じるアミノ酸は、遺伝子コードによってコード化されるもの、ならびに後に修飾されるこれらのアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合しているα−炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。かかるアナログは修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に生じるアミノ酸と同じ基本的化学構造を有する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に生じるアミノ酸と同様に機能する化合物を意味する。
【0053】
「保存的修飾変異」は、アミノ酸配列と核酸配列のいずれにも適用される。特定の核酸配列について、保存的修飾変異は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコード化する核酸、あるいは核酸がアミノ酸配列をコード化しないとき、本質的に同一の配列を意味する。遺伝子コードの重複のため、多数の機能的に同一の核酸が所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定されているあらゆる位置で、該コドンはコードするポリペプチドを変化させることなく、記載のコドンに対応する何れかに変化してもよい。かかる核酸変異は、保存的修飾変異の一種である静かな変異である。ポリペプチドをコード化する本明細書の全ての核酸配列はまた、当該核酸のあらゆる可能な静かな変異についても記載している。当業者は、核酸のコドン(メチオニンについての通常唯一のコドンであるAUGと、トリプトファンについての通常唯一のコドンであるTGGを除く)が修飾されて機能的に同一の分子が得られることを認識する。したがって、ポリペプチドをコード化する核酸の静かな変異はそれぞれ、記載の各配列に含まれる。
【0054】
アミノ酸配列に関して、コード化配列における1アミノ酸または数%のアミノ酸を変化、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への置換、欠失または付加が「保存的修飾変異」であり、該変異があるアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸で置換されて生じることを当業者は認識する。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野において周知である。かかる保存的修飾変異は、さらに、本発明の多形変異、種間ホモログおよびアレルであり、これらを除外しない。
【0055】
次の8個のグループはそれぞれ互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);
8)システイン(C)、メチオニン(M) (例えばCreighton, Proteins (1984)参照)。
【0056】
「配列同一性の割合」は2つの最適に整列させた配列を比較窓にわたって比較して決定され、ここで比較窓におけるポリヌクレオチド配列の一部が2つの配列の最適な整列のために、付加または欠失を含まない参照配列(例えば本発明のポリペプチド)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでいてもよい。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に現れる場所の数を決定してマッチ位置数を得て、該マッチ位置数を比較窓の合計位置数で割って、その結果に100を掛けて、配列同一性の割合を計算して得る。
【0057】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」または「同一性」率は、同じ配列である2つ以上の配列または部分配列を意味する。下記配列比較アルゴリズムまたは手整列と視覚的観察を用いて測定したとき、比較窓または指定領域にわたって最大の対応について比較および整列したとき、特定の割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドが同一であれば(すなわち特定された領域にわたってあるいは特定されていないとき、参照配列の全配列にわたって、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性)、2つの配列は「実質的に同一」である。本発明は本明細書に例示されているポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば配列番号2〜23のいずれかで例示されるCDR)とそれぞれ実質的に同一であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを提供する。所望により、同一性は少なくとも約15、25または50ヌクレオチド長である領域にわたって、あるいはより好ましくは100〜500または1000またはそれ以上のヌクレオチド長である領域にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在する。アミノ酸配列に関して、同一性または実質的同一性は、少なくとも5、10、15または20アミノ酸長、所望により少なくとも約25、30、35、40、50、75または100アミノ酸長、所望により少なくとも約150、200または250アミノ酸長である領域にわたって、あるいは参照配列の全長にわたって存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば20個以下のアミノ酸のアミノ酸配列に関して、本明細書に定義の保存的置換に従って1または2個のアミノ酸残基が保存的に置換されているとき、実質的同一性が存在する。
【0058】
配列比較のため、典型的には1つの配列がそれと試験配列を比較する参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを用いるとき、試験配列と参照配列をコンピューターに入力し、所望により部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを用いることができ、あるいは別のパラメーターを指定することができる。次いで配列比較アルゴリズムがプログラムパラメーターに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性の割合を計算する。
【0059】
「比較窓」は、本明細書において使用するとき、20〜600、通例では約50〜約200、さらには約100〜約150個からなる群から選択される連続部分数の何れか一つの断片についての記載を含み、ここで配列は2つの配列を最適に整列させた後同じ数の連続位置の参照配列と比較してもよい。比較のための配列の整列方法は当該技術分野において周知である。比較のための最適な配列整列は、例えば、Smith and Waterman (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443のホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性探査方法、これらのアルゴリズムのコンピューター利用ソフト(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)または手整列および視覚的観察(例えばAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)参照)によって実施することができる。
【0060】
配列同一性および配列類似性の割合を測定するために好適な2つのアルゴリズムの例は、Altschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 および Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410にそれぞれ記載されているBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアはNational Center for Biotechnology Informationを通じて一般に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列の同じ長さのワードと整列させたとき、マッチするか、あるいはポジティブな値のスコア閾値Tを満足するクエリーの短いワード長Wを同定して、高いスコアの配列対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接ワードスコア閾値を意味する(Altschul et al., supra)。これらの初期隣接ワードヒットが、それらを含むより長いHSPを見つけるための調査を開始する種となる。累積アラインメントスコアが増加し得る限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアはヌクレオチド配列についてはパラメーターM(マッチング残基の対について加算スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についての減算スコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列については、スコアリング・マトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は次の場合に停止する:最大の得られた値よりも累積アラインメントスコアが量Xによって減少する;1個以上の負のスコアを有する残基アラインメントの累積のため、累積スコアが0以下となる;あるいは配列が終了する。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、TおよびXはアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)はワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両ストランドの比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列のためのBLASTPプログラムは、ワード長3、期待値(E)10およびBLOSUM62スコアリング・マトリックス(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両ストランドの比較をデフォルトとして用いる。
【0061】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を実施する(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の一つの基準は最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、参照核酸と試験核酸の比較において最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるとき、核酸は参照配列と類似すると考えられる。
【0062】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標は、下記の通り第1の核酸によってコードされるポリペプチドが第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交叉反応性であるということである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なるとき、ポリペプチドは典型的には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、下記の通りストリンジェントな条件下で2つの分子またはそれらの相補物が互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらに別の指標は、同じプライマーを用いて配列を増幅することができることである。
【0063】
どのように抗原結合領域が本発明のPAR1結合分子内で結合しているかという文脈で用いるとき、用語「結合」は該領域を物理的に連結するためのあらゆる可能な手段を含む。多数の抗原結合領域が、直接的結合(すなわち2つの抗原結合領域間のリンカーなし)または間接的結合(すなわち2つ以上の抗原結合領域間の少なくとも1個のリンカーによって)であり得る共有結合(例えばペプチド結合またはジスルフィド結合)または非共有結合のような化学的結合によってしばしば連結される。
【0064】
用語「治療上許容される量」は、所望の結果(すなわち標的細胞のアポトーシス)を得るために十分な量を意味する。好ましくは、治療上許容される量は、望ましくない副作用を生じない。治療上許容される量はまず低用量を投与し、次いで所望の効果が達成されるまで用量を漸増して決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】抗体のV領域を含む構造単位の概略図を示す。重鎖が3個の遺伝子ファミリー(重鎖V、DおよびJ)によってコードされ、軽鎖が2個の遺伝子ファミリー(カッパまたはラムダVおよびJ)によってコードされる。これらの遺伝子の組み換えは、インタクトなV領域をもたらす。CDR3配列は、重鎖の場合重鎖V、DおよびJ遺伝子の組み換え領域に存在し、軽鎖の場合カッパまたはラムダVおよびJ遺伝子に存在する。
【図2】ヒトアミノ酸配列による参照抗体アミノ酸配列の置換の図を示す。
【図3】対応するヒト生殖細胞系可変領域(例えばVh1−46(配列番号42および32);VKII A3(配列番号56))との比較における本発明の改善された可変領域アミノ酸配列(重鎖V領域、配列番号52、53および54;軽鎖V領域、配列番号57、58および59)の整列を示す。相補性決定領域(CDR)は下線を付している。太字体の残基はヒト生殖細胞系と異なることを示し、斜字体の残基はCDR3における変形を示す。
【図4】ELISAアッセイにおける本発明の改善された抗体の高い結合特異性を示す。改善された抗PAR1抗体はPAR1と結合するが、密接に関連しているタンパク質であるヒトPAR2またはマウスPAR1もしくはマウスPAR2とは結合しない。記載の抗体クローンは1μg/mlの濃度で加えた。
【図5】改善された抗体はカニクイザル(Cynomolgus)PAR1と反応性であることを示している。Cynoおよびヒト抗体結合エピトープは同一である(SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE;配列番号1)。
【図6A】図6Aは、改善された抗PAR1抗体が用量依存的にPAR1のトロンビン介在性活性化を阻害することを示す。
【図6B】図6Bは、改善された抗PAR1抗体が用量依存的にPAR1のトロンビン介在性活性化を阻害することを示す。
【図6C】図6Cは、改善された抗PAR1抗体が用量依存的にPAR1のトロンビン介在性活性化を阻害することを示す。
【図7】3個の本発明の改善されたアンタゴニストPAR1抗体の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
詳細な説明
一般
本発明の抗体はプロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)と特異的に結合する。そうすることで、該抗体は天然リガンド(例えばトロンビン)の結合を阻止し、アンタゴニストとして作用し、あるいはアゴニストとして作用する。ある態様において、本発明の抗PAR1抗体はPAR1受容体のアンタゴニストとして作用する。PAR1抗体アンタゴニストはPAR1と特異的に結合し、PAR1介在性細胞内シグナル伝達を阻害または減少する抗体である。本抗PAR1抗体は所望により、多量体化されていてよく、本発明の方法に従って用いることができる。本抗PAR1抗体は全長テトラマー抗体(すなわち2個の軽鎖と2個の重鎖を有する)、一本鎖抗体(例えばScFv)または1個以上の抗原結合部位を形成し、PAR1結合特異性を与える抗体フラグメント(例えば、Fab’または他の同様のフラグメント)、例えば重鎖および軽鎖可変領域を含む分子であってよい。
【0067】
抗PAR1抗体フラグメントは、組換え発現、化学合成および抗体テトラマーの酵素的消化を含むがこれらに限定されない当該技術分野において既知の何れかの方法で製造することができ、全長モノクローナル抗体は例えばハイブリドーマまたは組換え生産によって得ることができる。当該技術分野において既知の何れかの適切な宿主細胞、例えば哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞等から組換え発現を実施することができる。抗PAR1抗体の定常領域が存在するとき、これは適切であるとき、あらゆるタイプまたはサブタイプであってよく、本方法によって処置する対象の種(例えば、ヒト、非ヒト霊長類または他の哺乳類、例えば農事哺乳類(例えばウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、家畜哺乳類(例えばイヌ、ネコ)またはげっ歯類(例えばラット、マウス、ハムスター、ウサギ))由来であるように選択することができる。
【0068】
本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子はまた、ラクダスキャフォールドを有する1個のドメイン抗原結合単位を含む。ラクダ科の動物は、ラクダ、ラマおよびアルパカを含む。ラクダは軽鎖のない機能的抗体を生産する。重鎖可変(VH)ドメインが自己で折りたたまれており、抗原結合単位として独立して機能する。その結合表面は、通常の抗原結合分子(Fab)または一本鎖可変フラグメント(scFv)における6個のCDRと比較して、3個のみのCDRを含む。ラクダ抗体は常套の抗体のものと同等の結合親和性を発揮し得る。本明細書に例示されている抗PAR1抗体の結合特異性を有するラクダスキャフォールドベースの抗PAR1分子は、当該技術分野において周知の方法、例えばDumoulin et al., Nature Struct. Biol. 11:500-515, 2002; Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521-526, 1997; および Bond et al., J Mol Biol. 332:643-55, 2003を用いて製造することができる。
【0069】
a. 抗PAR1抗体可変領域
本発明の抗PAR1抗体の可変領域は、高い親和性でPAR1と結合することが知られている参照モノクローナル抗体に由来し、アンタゴニストとして作用する。該抗体は非ヒト種(例えばマウス)に対応するアミノ酸配列セグメントを減少し、ヒト生殖細胞系アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列セグメントを増加して、改善または最適化する。このようにして、抗PAR1抗体に対するヒト宿主における免疫応答を強力に誘導し得る配列が減少し、最小化され、削除される。ヒト抗体を操作する方法は記載されている。例えば米国特許公開番号第2005/0255552号および米国特許公開番号第2006/0134098号参照、両開示をそれらの全体について、あらゆる目的のために参照により本明細書に引用する。
【0070】
本発明の改善された抗PAR1抗体は、ヒト生殖細胞系V領域配列と実質的同一のアミノ酸配列を有するV領域配列で変形されているが、参照抗体の特異性および親和性を保持しているヒト抗体である。米国特許公開番号第2005/0255552号および米国特許公開番号第2006/0134098号参照。改良方法は、参照抗体の可変領域から抗原結合特異性を決定するために必要な最小配列情報を同定し、この情報をヒト部分V領域遺伝子配列のライブラリーに移してヒト抗体V領域のエピトープに焦点を絞ったライブラリーを作製する。微生物ベースの分泌系を用いて、抗体Fab’フラグメントとしてライブラリーのメンバーを発現し、コロニーリフト結合アッセイを用いて該ライブラリーを抗原決定Fab’についてスクリーニングすることができる。例えば、米国特許公開番号第2007/0020685号参照。ポジティブクローンはさらに特徴付けて、最も高い親和性を有するものを同定することができる。得られた変形ヒトFab’は、親の参照抗PAR1抗体の結合特異性を保持し、典型的には親抗体と比較して同等乃至より高い親和性を有し、ヒト生殖細胞系抗体V領域と比較して高度な配列同一性を有するV領域を有する。
【0071】
エピトープに焦点を絞ったライブラリーを作製するために必要な最小の結合特異性決定因子(BSD)は、典型的には重鎖CDR3(CDRH3)内の配列および軽鎖CDR3(CDRL3)内の配列によって示される。BSDはCDR3の一部または全長を含む。BSDは連続または非連続アミノ酸残基を含んでいてもよい。ある場合において、エピトープに焦点を絞ったライブラリーは、BSDとヒト生殖細胞系Jセグメント配列を含む参照抗体由来の、ユニークなCDR3−FR4領域と結合したヒトVセグメント配列から構成される(図1および米国特許公開番号第2005/0255552号参照)。あるいは、ヒトVセグメントライブラリーは、当初は参照抗体Vセグメントの一部のみがヒト配列のライブラリーによって置換されている配列カセット置換によって作製してもよい。残留参照抗体アミノ酸配列の文脈において、結合を支持する同定されたヒト「カセット」は、次いで2次カセットライブラリースクリーニングに組み込まれて、完全にヒトVセグメントを生じる(米国特許公開番号第2006/0134098号参照)。
【0072】
それぞれの場合において、参照抗体由来の特異性決定因子を含む対の重鎖と軽鎖CDR3セグメント、CDR3−FR4セグメントまたはJセグメントは、ライブラリーから得た抗原バインダーが参照抗体のエピトープ特異性を保持するように、抗原特異性を規律するために使用される。最適な結合動力学を有する抗体を同定するために、ライブラリー構成中にそれぞれの鎖のCDR3領域においてさらなる成熟変化が導入されてもよい。得られた変形ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系ライブラリー由来のVセグメント配列を有し、CDR3領域内由来の短いBSDを保持し、ヒト生殖細胞系フレームワーク4(FR4)領域を有する。
【0073】
したがってある態様において、本抗PAR1抗体は、起源モノクローナル抗体由来の重鎖および軽鎖のCDR3内に最小結合配列決定因子(BSD)を含む。重鎖および軽鎖可変領域(CDRおよびFR)の残りの配列、例えばVセグメントおよびJセグメントは、対応するヒト生殖細胞系アミノ酸配列由来である。VセグメントはヒトVセグメントライブラリーから選択されてもよい。さらなる配列改良は、親和性成熟によって実施することができる。
【0074】
他の態様において、抗PAR1抗体の重鎖および軽鎖は、対応するヒト生殖細胞系配列(FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3)由来の、例えばヒトVセグメントライブラリーから選択されるヒトVセグメントと、起源モノクローナル抗体由来のCDR3−FR4配列セグメントを含む。CDR3−FR4配列セグメントは、配列セグメントを対応するヒト生殖細胞系配列と置換して、そして/または親和性成熟によってさらに改良することができる。例えば、BSDを取り囲むFR4および/またはCDR3配列は対応するヒト生殖細胞系配列で置換することができるが、起源モノクローナル抗体のCDR3由来のBSDは保持される。
【0075】
ある態様において、重鎖Vセグメントの対応するヒト生殖細胞系配列はVh1−46である。ある態様において、重鎖Jセグメントの対応するヒト生殖細胞系配列はJH6である。ある態様において、重鎖Jセグメントはヒト生殖細胞系JH6部分配列DVWGQGTTVTVSS(配列番号66)を含む。ヒト生殖細胞系JH6由来の全長JセグメントはYYYYYGMDVWGQGTTVTVSSである。可変領域遺伝子は免疫グロブリン可変領域遺伝子の標準的命名法に従って称する。現在の免疫グロブリン遺伝子情報はワールドワイドウェブを通じて、例えばImMunoGeneTics(IMGT)、V−baseおよびPubMedデータベースで入手可能である。Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(2):100-16; Lefranc, Exp Clin Immunogenet. 2001;18(3):161-74; Exp Clin Immunogenet. 2001;18(4):242-54; および Giudicelli, et al., Nucleic Acids Res. 2005 Jan 1;33(Database issue):D256-61も参照されたい。
【0076】
ある態様において、軽鎖Vセグメントの対応するヒト生殖細胞系配列はVKII A3である。ある態様において、軽鎖Jセグメントの対応するヒト生殖細胞系配列はJk2である。ある態様において、軽鎖Jセグメントはヒト生殖細胞系Jk2部分配列TFGQGTKLEIKを含む。生殖細胞系Jk2由来の全長JセグメントはYTFGQGTKLEIKである。
【0077】
ある態様において、重鎖Vセグメントは、アミノ酸配列
(Q/E)VQLVQSGAEVKKPG(A/S)SVKVSCK(A/V)SG(Y/G)TF(N/S)(N/S)Y(Y/V)(M/F)(N/H)WVRQAPGQGLEWMG(V/I)I(N/D)P(S/H)GG(R/S)T(R/S)Y(A/N)QKFKGRVTMT(T/R)DTSTST(V/A)YMELSSL(R/T)S(D/E)DTAVYYCAR(配列番号41)
と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。ある態様において、軽鎖Vセグメントは、アミノ酸配列
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLH(R/S)NG(Y/N)NYL(D/E)WYLQKPGQSPQLLIY(K/L)(G/I)SNR(A/F)SGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号46)
と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0078】
ある態様において、重鎖Vセグメントは、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFNSYYMHWVRQAPGQGLEWMGIINPSGGSTSYAQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号42)、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFNSYYMNWVRQAPGQGLEWMGVIDPHGGRTRYNQKFKGRVTMTTDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号43)、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFNSYYMNWVRQAPGQGLEWMGVIDPHGGRTRYNQKFKGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLTSDDTAVYYCAR(配列番号44)および
EVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKVSGGTFSNYVFNWVRQAPGQGLEWMGVINPHSGRTRYNQKFKGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLTSDDTAVYYCAR(配列番号45)
から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0079】
ある態様において、軽鎖Vセグメントは、DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHSNGYNYLDWYLQKPGQSPQLLIYLGSNRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号47)、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHRNGNNYLEWYLQKPGQSPRLLIYKISNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号48)、
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHRNGNNYLEWYLQKPGQSPRLLIYKISNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号49)および
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHRNGNNYLEWYLQKPGQSPRLLIYKISNRFSGVPDRFSGSGAGTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号50)
から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0080】
ある態様において:
i)重鎖CDR3はアミノ酸配列モチーフDDXSXWXFDV(配列中、XはGまたはIであり、XはPまたはYであり、XはH、L、P、M、E、W、T、S、QまたはAであり、XはYまたはFである)(配列番号10)を含み、
ii)軽鎖CDR3はアミノ酸配列モチーフFQGXVPFT(配列中、XはS、D、AまたはVであり、XはH、R、T、SまたはKである)(配列番号20)を含む。
【0081】
ある態様において:
i)重鎖CDR3はDDGPSMWYFDV(配列番号11)、DDGPSLWYFDV(配列番号12)およびDDGPSHWYFDV(配列番号13)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
ii)軽鎖CDR3はMQALQTP(配列番号21)、FQGSSVPFT(配列番号22)およびFQGSHVPFT(配列番号23)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0082】
ある態様において、本発明の抗体は、アミノ酸配列(S/N)Y(Y/V)(M/F)(N/H)(配列番号2)を含むCDR1;アミノ酸配列(I/V)I(N/D)P(S/H)(S/G)G(R/S)T(R/S)Y(A/N)QKF(K/Q)G(配列番号6)を含むCDR2;およびアミノ酸配列DDXSXWXFDV(配列中、XはGまたはIであり、XはPまたはYであり、XはH、L、P、M、E、W、T、S、QまたはAであり、XはYまたはFである)(配列番号10)を含むCDR3を含んでなる重鎖可変領域を含む。
【0083】
ある態様において、本発明の抗体は、アミノ酸配列RSSQSLLH(R/S)NG(Y/N)NYL(D/E)(配列番号14)を含むCDR1;アミノ酸配列(L/K)(G/I)SNR(A/F)S(配列番号17)を含むCDR2;およびアミノ酸配列FQGXVPFT(配列中、XはS、D、AまたはVであり、XはH、R、T、SまたはKである)(配列番号20)を含むCDR3を含んで成る軽鎖可変領域を含む。
【0084】
ある態様において、重鎖可変領域はアミノ酸配列(E/Q)VQLVQSGAEVKKPG(S/A)SVKVSCK(V/A)SG(G/Y)TF(S/N)(配列番号24)を含むFR1;アミノ酸配列WVRQAPGQGLEWMG(配列番号27)を含むFR2;アミノ酸配列RVTMT(R/T)DTSTST(V/A)YMEL(S/R)SL(R/T)S(E/D)DTAVYYCAR(配列番号28)を含むFR3;およびアミノ酸配列WGQGTTVTVSS(配列番号32)を含むFR4を含んでなる。同定したアミノ酸配列は1個以上の置換アミノ酸(例えば親和性成熟から)または1個もしくは2個の保存的置換アミノ酸を有していてもよい。
【0085】
ある態様において、軽鎖可変領域はアミノ酸配列DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISC(配列番号33)を含むFR1;アミノ酸配列WYLQKPGQSP(Q/R)LLIY(配列番号34)を含むFR2;アミノ酸配列GVPDRFSGSG(S/A)GTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号37)を含むFR3;およびアミノ酸配列FGQGTKLEIK(配列番号40)を含むFR4を含んでなる。同定したアミノ酸配列は1個以上の置換アミノ酸(例えば親和性成熟から)または1個もしくは2個の保存的置換アミノ酸を有していてもよい。
【0086】
全長にわたって、本発明の抗PAR1抗体の可変領域は一般に、対応するヒト生殖細胞系可変領域アミノ酸配列と少なくとも約90%、例えば少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の全可変領域(例えばFR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4)アミノ酸配列同一性を有する。例えば、抗PAR1抗体の重鎖はヒト生殖細胞系可変領域Vh1 46/JH6と少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有し得る。抗PAR1抗体の軽鎖はヒト生殖細胞系可変領域VKII A3/Jk2と少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0087】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体は、配列番号51の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号55の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0088】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体は、配列番号52、53および54から成る群から選択される重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号56、57、58および59から成る群から選択される軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0089】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体は、配列番号52の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号57の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローンLDW653)。
【0090】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体は、配列番号53の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号58の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローンLDS 900)。
【0091】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体は、配列番号54の重鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号59の軽鎖可変領域と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む(すなわち、クローンLDS896)。
【0092】
20アミノ酸長未満の同定したアミノ酸配列について、なおも所望の特異的結合および/またはアンタゴニスト活性を保持する、1または2個の保存的アミノ酸残基置換が許容され得る。
【0093】
本発明の抗PAR1抗体は一般に、約10−8Mまたは10−9M未満、例えば約10−10Mまたは10−11M未満、ある態様において約10−12Mまたは10−13M未満の平衡解離定数(K)でPAR1と結合する。
【0094】
b.PAR1抗体アンタゴニストおよびスクリーニング方法
あらゆるタイプの抗PAR1抗体アンタゴニストが本発明の方法において使用され得る。しばしば使用される抗体は、当該技術分野において既知の方法(例えば、ハイブリドーマおよび組換え発現)の何れかによって作製することができるモノクローナル抗体である。ある態様において、全長抗体よりもむしろ、重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体フラグメントが、本発明のPAR1結合分子を構成するために使用される。
【0095】
ある態様において、PAR1結合分子の抗原結合領域は一本鎖抗体(ScFv)である。ScFvを作製するために有用な技術および抗体は当該技術分野において既知であり、例えば米国特許第4,946,778号および第5,258,498号; Huston et al., Methods in Enzymology 203:46-88 (1991); Shu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995-7999 (1993); および Skerra et al., Science 240:1038-1040 (1988)に記載されている。
【0096】
PAR1と特異的に結合する抗PAR1抗体は、当該技術分野において周知の技術、例えばELISA、表面プラズモン共鳴、干渉分光法(例えばForteBio Octetバイオセンサーシステムを使用する)を用いて同定することができる。PAR1抗体アンタゴニストは、PAR1介在性事象、例えばPAR1発現細胞におけるカルシウム流動の阻害または減少、トロンビン誘導性IL−8分泌の阻害等の抗体の能力を試験して同定することができる。当該技術分野において既知の多様なアッセイを用いてPAR1介在性事象の存在および阻害の指標を検出することができる。
【0097】
PAR1依存カルシウム流動アッセイは、機能的PAR1アンタゴニスト抗体をスクリーニングするために用いることができる。トロンビンはPAR1のN末端ドメインを切断し、約15アミノ酸を除去することが知られている。テザーリガンドと称する残りのN末端ドメインは、PAR1介在性シグナル伝達の開始に関与する。トロンビンによるPAR1の切断は、商業的に入手可能な反応剤(例えばMolecular Devicesから商業的に入手可能である)を用いて測定することができる、速やかな一過性の細胞内のカルシウム流動をもたらす。特に、抗体はPAR1発現細胞、例えばHT−29、HCT−116またはDU145細胞を用いて、トロンビン処理後のそのカルシウム流動阻害能について評価することができる。カルシウム流動は当該技術分野において既知の何れかの方法を用いて測定することができる。一つの例において、FlipR染色(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で細胞を抗体とプレインキュベートし(例えば約1時間)、Ca2+流動を多様な濃度のトロンビンで誘導する。PAR1アンタゴニスト活性について試験する前に、抗体は当該技術分野において既知の何れかの方法を用いて精製することができる。対照細胞は抗体と共にプレインキュベートしないか、あるいはPAR1以外の抗原に特異的な抗体と共にプレインキュベートするか、あるいはアンタゴニストとして機能しないことが知られている抗PAR1抗体と共にプレインキュベートする。本発明のPAR1アンタゴニスト抗体と共にプレインキュベートした細胞におけるトロンビン誘導性カルシウム流動は、対照細胞におけるトロンビン誘導性カルシウム流動と比較して検出可能に阻害または減少される。例えば、対照細胞と比較して、PAR1アンタゴニスト抗体に曝露した細胞におけるトロンビン誘導性カルシウム流動は、少なくとも約10%、例えば少なくとも30%、50%もしくは80%減少し、あるいは完全に阻害される。
【0098】
抗体のPAR1アンタゴニスト活性はまた、適切な標的細胞、例えばHUVECからのトロンビン介在性IL−8分泌の、候補抗PAR1アンタゴニスト抗体による阻害を測定することもできる。標的細胞からのトロンビン介在性IL−8分泌は、当該技術分野において既知の何れかの方法を用いて測定することができる。一つの例において、細胞をトロンビンに一夜曝露し、培地中に分泌されるIL−8の上昇を引き起こす。試験サンプルでは、トロンビン処理の約1時間前に抗体を加える。培地中のIL−8はELISAで測定することができる。抗PAR1アンタゴニスト抗体は、対照細胞と比較して、トロンビンで処理した標的細胞からのIL−8分泌の増加を阻害する。対照細胞は抗体と共にプレインキュベートしないか、あるいはPAR1以外の抗原に特異的な抗体と共にプレインキュベートするか、あるいはアンタゴニストとして機能しないことが知られている抗PAR1抗体と共にプレインキュベートする。本発明のPAR1アンタゴニスト抗体と共にプレインキュベートした細胞におけるトロンビン誘導性IL−8分泌は、対照細胞におけるトロンビン誘導性IL−8分泌と比較して検出可能に阻害または減少される。例えば、対照細胞と比較して、PAR1アンタゴニスト抗体に曝露した細胞におけるトロンビン誘導性IL−8分泌は、少なくとも約10%、例えば少なくとも30%、50%もしくは80%減少し、あるいは完全に阻害される。
【0099】
c.抗PAR1抗体を作製するためのポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、上記抗PAR1抗体鎖または抗原結合分子のセグメントまたはドメインを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を提供する。ある態様において、該ポリヌクレオチドは実質的に精製または単離されている。ある本発明のポリヌクレオチドは配列番号51、52、53および54から成る群から選択される重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド配列と、配列番号55、56、57、58および59から成る群から選択される軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド配列を含む。ある本発明のポリヌクレオチドは、配列番号60、61および62から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列をコードする重鎖可変領域のヌクレオチド配列と、配列番号63、64および65から成る群から選択されるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含む。他の本発明のポリヌクレオチドは、配列番号60〜65に示すヌクレオチド配列の一つと実質的同一(例えば少なくとも70%、80%、95%、96%、97%、98%または99%)であるヌクレオチド配列を含む。適切な発現ベクターから発現するとき、これらのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは抗原結合能を示すことができる。
【0100】
また本発明において、下記実施例に記載のマウス抗PAR1抗体の重鎖または軽鎖由来の少なくとも1個のCDR領域、通常3個全てのCDR領域をコードするポリヌクレオチドも提供する。他のポリヌクレオチドのいくつかは、マウス抗PAR1抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域の全てまたは実質的に全てをコードする。例えば、これらのポリヌクレオチドのいくつかは、配列番号51、52、53または54に示す重鎖可変領域と少なくとも約90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列および/または配列番号55、56、57、58および59に示す軽鎖可変領域と少なくとも約90%、93%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする。コードの重複のため、多様な核酸配列がそれぞれの免疫グロブリンアミノ酸配列をコードする。
【0101】
本発明のポリヌクレオチドは抗PAR1抗体の可変領域配列のみをコードしてもよい。これはまた、抗体の可変領域と定常領域の両方をコードしてもよい。ある本発明の核酸のポリヌクレオチド配列は、配列番号5または7に示す成熟重鎖可変領域配列と実質的に同一(例えば少なくとも80%、90%または99%)である成熟重鎖可変領域配列をコードする。ある別の本発明の核酸のポリヌクレオチド配列は、配列番号6または8に示す成熟重鎖可変領域配列と実質的に同一である成熟重鎖可変領域配列をコードする。あるポリヌクレオチド配列は、例示したマウス抗PAR1抗体の重鎖と軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコードする。ある別のポリヌクレオチドは、該マウス抗体の一つの重鎖および軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一である2個のポリペプチドセグメントをコードする。
【0102】
ポリヌクレオチド配列は、デノボ固相DNA合成または抗PAR1抗体をコードする既存の配列(例えば下記実施例に記載の配列)もしくはそのフラグメントのPCR突然変異誘発によって作製することができる。核酸の直接化学合成は、Narang et al., Meth. Enzymol. 68:90, 1979のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979のホスホジエステル法; Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のジエチルホスホラミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固体支持法のような当該技術分野において既知の方法によって実施することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異の導入は、例えばPCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; および Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載のとおりに実施することができる。
【0103】
また本発明において、上記抗PAR1抗体を産生する発現ベクターおよび宿主細胞も提供する。多様な発現ベクターを用いて、抗PAR1抗体鎖または結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを発現することができる。ウイルスベースの発現ベクターおよび非ウイルス性発現ベクターの両方が哺乳類宿主細胞において抗体を産生するために使用され得る。非ウイルス性ベクターおよび系は、プラスミド、典型的にはタンパク質またはRNAを発現するための発現カセットを含むエピソームベクターおよびヒト人工染色体を含む(例えばHarrington et al., Nat Genet 15:345, 1997参照)。例えば、哺乳類(例えばヒト)細胞における抗PAR1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用な非ウイルス性ベクターは、pThioHis A、B&C、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B&C(Invitrogen, San Diego, CA)、MPSVベクターおよび他のタンパク質を発現するための当該技術分野において既知の多様な他のベクターを含む。有用なウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40を利用したベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタイン・バーウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)を含む。Brent et al., supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995; および Rosenfeld et al., Cell 68:143, 1992参照。
【0104】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される意図した宿主細胞に基づく。典型的に、発現ベクターは、抗PAR1抗体鎖またはフラグメントをコードするポリヌクレオチドと作動可能なように結合しているプロモーターおよび他の制御配列(例えばエンハンサー)を含む。ある態様において、誘導プロモーターを用いて、誘導条件下を除き、挿入配列の発現を防止する。誘導プロモーターは、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターを含む。形質転換生物の培養は、非誘導性条件下で、その発現生成物に宿主細胞が耐容性であるコーディング配列群にバイアスをかけることなく拡大し得る。プロモーターに加え、抗PAR1抗体またはフラグメントの効率的な発現のために他の制御因子も必要または望まれ得る。これらの因子は典型的には、ATG開始コドンおよび隣接リボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現の効率は使用する細胞系に適切なエンハンサーを含めることによって向上させることができる(例えばScharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994; および Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを用いて、哺乳類主屈細胞における発現を増加させることができる。
【0105】
発現ベクターはまた、挿入した抗PAR1抗体配列によってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成する、分泌シグナル配列部分を提供してもよい。より一般に、挿入した抗PAR1抗体配列はベクターに組み込む前にシグナル配列と結合する。抗PAR1抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをコードする配列を組み込むために使用されるベクターは、定量領域またはその一部をコードしていてもよい。かかるベクターは定常領域との融合タンパク質のように可変領域の発現を許容し、それによってインタクトな抗体またはそのフラグメントの生産を導く。典型的に、かかる定常領域はヒトである。
【0106】
抗PAR1抗体鎖を包含し、発現する宿主細胞は、原核または真核のいずれかであってよい。大腸菌は本発明のポリヌクレオチドのクローニングと発現に有用な原核宿主の一つである。使用に適した他の微生物宿主は、細菌類、例えば枯草菌および他の腸内細菌類、例えばサルモネラ菌、セラチア菌および多様なシュードモナス属種を含む。これらの原核宿主において、典型的には宿主細胞に適合する発現制御配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターを作製することができる。さらに、任意の数の多様な周知のプロモーター、例えばラクトースプロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、ベータ−ラクタマーゼプロモーターシステムまたはファージラムダ由来のプロモーターシステムが存在する。該プロモーターは典型的には、所望によりオペレーター配列によって発現を制御し、転写および翻訳を開始し、完了するためのリボソーム結合部位配列等を有する。他の微生物、例えば酵母を用いて本発明の抗PAR1ポリペプチドを発現することもできる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞を使用してもよい。
【0107】
ある好ましい態様において、哺乳類宿主細胞を用いて本発明の抗PAR1ポリペプチドを発現し、生産する。それは例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞系(例えば実施例に記載の骨髄腫ハイブリドーマクローン)または異種発現ベクターを含む哺乳類細胞系(例えば次に例示するSP2/0骨髄腫細胞)であり得る。これらは通常の非不死化または通常もしくは以上不死化動物またはヒト細胞の何れかを含む。例えば、インタクトな免疫グロブリンを分泌することができる多数の好適な宿主細胞系、例えばCHO細胞系、多様なCos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、形質転換B細胞およびハイブリドーマが開発されている。ポリペプチドを発現するための哺乳類組織細胞培養の使用は、一般に、例えばWinnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987に記載されている。哺乳類宿主細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーターおよびエンハンサーのような発現制御配列(例えばQueen et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986参照)ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位および転写終了配列のような必要なプロセッシング情報を含んでいてもよい。これらの発現ベクターは通常、哺乳類遺伝子由来または哺乳類ウイルス由来のプロモーターを含む。好適なプロモーターは構成的、細胞タイプ特異的、段階特異的および/または調節可能もしくは制御可能であり得る。有用なプロモーターは、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えばヒト最初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーターおよび当該技術分野において既知のプロモーター−エンハンサーの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0108】
興味のあるポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主のタイプに基づいて変化する。例えば、原核細胞には塩化カルシウムトランスフェクションが一般に利用されるが、他の細胞宿主にはリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションを用いることができる(一般に、Sambrook et al.上記参照)。他の方法は、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソーム介在性形質転換、インジェクションおよびマイクロインジェクション、弾道(ballistic)法、ビロソーム、イムノリポソーム、ポリケーション:核酸複合体、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペス構造タンパク質VP22との融合(Elliot and O’Hare, Cell 88:223, 1997)、薬剤で向上したDNAの取り込みおよびエクスビボ形質導入を含む。組換えタンパク質の長期間高収率での生産のために、安定的発現がしばしば望まれる。例えば、抗PAR1抗体鎖または結合フラグメントを安定的に発現する細胞系は、ウイルス性複製起点または内因性発現因子および選択マーカー遺伝子を含む本発明の発現ベクターを用いて作製することができる。ベクターを導入した後、選択培地に移す前に、細胞を1〜2日間富化培地で増殖させることができる。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与え、その存在が選択培地中で導入された配列をうまく発現する細胞を増殖させる。耐性な、安定的にトランスフェクトされた細胞は、細胞タイプに適した組織培養技術を用いて増殖することができる。
【0109】
抗PAR1抗体または抗原結合分子の特性
上記抗PAR1抗体または抗原結合分子が合成されるかまたは宿主細胞もしくは内因的にハイブリドーマの発現ベクターから発現されると、それは例えば培養培地および宿主細胞から容易に精製することができる。通常、抗体鎖はシグナルシーケンスで発現され、したがって培養培地に放出される。しかし、抗体鎖が天然には宿主細胞によって分泌されないとき、該抗体鎖はマイルドな界面活性剤で処理することによって放出され得る。抗体鎖は、次いで、硫酸アンモニウム沈殿、標的を不動化するアフィニティークロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む常套の方法によって精製することができる。これらの方法は全て当該技術分野において周知であり、日常的に実施されている。例えばScopes, Protein Purification, Springer-Verlag, NY, 1982; および Harlow & Lane, supra。
【0110】
例えば、本発明の抗PAR1抗体を発現する選択したハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のためのスピナーフラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過し、タンパク質Aセファロースまたはタンパク質Gセファロースによるアフィニティークロマトグラフィーによって濃縮することができる。該カラムから溶出したIgG分子はゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーで試験して、純度を確認することができる。バッファー溶液をPBSに交換し、OD280を読み取って濃度を測定してもよい。該モノクローナル抗体は等分して−80℃で保存することができる。
【0111】
製造方法にかかわりなく、本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子は、PAR1またはその抗原性フラグメントに特異的に結合する。PAR1またはその抗原性フラグメントと結合する抗体の解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦1nMであるとき、特異的結合が存在する。抗体のPAR1結合能は興味のある抗体を直接標識化して検出することができ、あるいは該抗体は標識化せず、多様なサンドイッチアッセイフォーマットを用いて結合を間接的に検出することができる。例えば、Harlow & Lane, supra参照。かかる結合特異性を有する抗体は、下記実施例に記載のマウスまたはキメラ抗PAR1抗体によって示される有利な特性を有する可能性が高い。典型的には、本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子は、少なくとも1×10−1、10−1、10−1または1010−1の平衡結合定数(association constant)(K)でPAR1ポリペプチドまたは抗原性フラグメントと結合する。さらに、それらはまた、約1×10−3−1、1×10−4−1、1×10−5−1またはそれ未満の酵素解離定数(k)を有し、非特異的抗原(例えばBSA)との結合の親和性よりも少なくとも2倍大きな親和性でヒトPAR1(hPAR1)と結合する。
【0112】
ある態様において、本発明の抗体は、他の哺乳類種由来のPAR1、例えばマウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含むげっ歯類種由来のPAR1よりも、ヒトPAR1と優先的に結合する。ある態様において、本発明の抗体は、他のPARサブタイプ、例えばPAR2、PAR3またはPAR4よりも、PAR1と優先的に結合する。
【0113】
ある態様において、本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子は参照抗PAR1抗体とPAR1ポリペプチドの結合を阻止し、またはそれと競合する。参照抗PAR1抗体はSFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号1)を含むアミノ酸配列またはそのフラグメント、例えば少なくとも8、9、10、11、12、13、14または15個の連続アミノ酸のフラグメントを有するPAR1のエピトープと特異的に結合することができる。これらは完全に上記ヒト抗PAR1抗体であり得る。それらはまた、参照抗体と同じエピトープと結合する他のマウス、キメラまたはヒト化抗PAR1抗体であってもよい。PAR1と結合する参照抗体を阻止しまたは競合する能力は、試験抗PAR1抗体または抗原結合分子が、参照抗体によって定義されるものと同じまたは類似のエピトープと、あるいは参照抗PAR1抗体によって結合されるエピトープと十分に近い(proximal)エピトープと結合することを示している。かかる抗体は、特に参照抗体について同定した有利な特性を有する可能性がある。参照抗体を阻止しまたは競合する能力は、例えば競合結合アッセイによって測定することができる。競合結合アッセイにおいて、試験抗体は、共通抗原(例えばPAR1ポリペプチド)または抗原におけるエピトープと参照抗体の特異的結合を阻害する能力について試験される。過剰の試験抗体が実質的に参照抗体の結合を阻害しているとき、試験抗体は抗原またはエピトープの特異的結合について参照抗体と競合する。実質的な阻害は、試験抗体が通常少なくとも10%、25%、50%、75%または90%で参照抗体の特異的結合を低下させることを意味する。
【0114】
ヒトPAR1(hPAR1)との結合に関する試験抗PAR1抗体または抗原結合分子と参照抗PAR1抗体の競合を評価するために使用することができる既知の競合結合アッセイは多数存在する。例えば、固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242-253, 1983参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614-3619, 1986参照);固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ(Harlow & Lane, supra参照);I−125ラベルを用いた固相直接ラベルRIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25:7-15, 1988参照);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546-552, 1990);および直接標識化RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82, 1990)がこれらに含まれる。典型的には、かかるアッセイは固体表面に結合した精製抗原または該抗原を含む細胞、非標識化試験抗PAR1抗体および標識化参照抗体の使用を含む。競合的阻害は、試験抗体の存在下での固体表面または細胞と結合した標識の量を測定して測定される。通常、試験抗体は過剰に存在する。競合的アッセイによって同定された抗体(競合抗体)は、参照抗体および立体障害が生じるために参照抗体によって結合されるエピトープと十分に近い隣接エピトープと結合する抗体と同じエピトープと結合する抗体を含む。
【0115】
試験抗PAR1抗体または抗原結合分子と参照抗PAR1抗体がユニークなエピトープと結合するか決定するため、商業的に入手可能な反応剤(例えばPierce, Rockford, ILの反応剤)を用いて、それぞれの抗体をビオチニル化することができる。非標識化モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を用いた競合試験は、PAR1ポリペプチド被覆ELISAプレートを使用して実施することができる。ビオチニル化MAb結合は、ストレプ−アビジン−アルカリホスファターゼプローブで検出することができる。精製した抗PAR1抗体のアイソタイプを決定するため、アイソタイプELISAが実施され得る。例えば、マイクロタイタープレートのウェルは、1μg/mlの抗ヒトIgGで4℃で一夜被覆することができる。1%のBSAでブロッキングした後、該プレートは1μg/ml以下のモノクローナル抗PAR1抗体または精製したアイソタイプ対照と、周囲温度で1〜2時間反応させる。次いで、ウェルをヒトIgG1またはヒトIgM−特異的アルカリホスファターゼ結合プローブと反応させることができる。次いでプレートを展開し、分析して精製抗体のアイソタイプを決定することができる。
【0116】
PAR1ポリペプチドを発現する生存細胞とのモノクローナル抗PAR1抗体または抗原結合分子の結合を測定するため、フローサイトメトリーを用いることができる。簡単には、0.1%のBSAおよび10%の胎児ウシ血清を含むPBS中の多様な濃度の抗PAR1抗体とPAR1を発現する細胞系(標準増殖条件下で増殖)を混合し、37℃で1時間インキュベートすることができる。洗浄後、1次抗体と同じ条件下で該細胞を蛍光標識化抗ヒトIgG抗体と反応させる。1個の細胞で開閉する光および横散乱特性を用いたFACScan装置で分析することができる。蛍光顕微鏡を用いた別のアッセイは、(追加的にまたは置換的に)フローサイトメトリーアッセイを使用することができる。上記の通り細胞を染色し、蛍光顕微鏡で試験することができる。
【0117】
本発明の抗PAR1抗体はさらに、イムノブロッティングによってPAR1ポリペプチドまたは抗原フラグメントとの反応性について試験することができる。簡単には、精製したPAR1ポリペプチドもしくは融合タンパク質、またはPAR1を発現する細胞の細胞抽出物を製造し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離した抗原はニトロセルロース膜に移し、10%の胎児ウシ血清でブロッキングし、試験するモノクローナル抗体で精査する。ヒトIgG結合は抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出して、BCIP/NBT基質錠(Sigma Chem. Co., St. Louis, MO)で展開することができる。
【0118】
治療適用および医薬組成物
本明細書に記載の抗hPAR1抗体または抗原結合分子は、PAR1シグナル伝達活動を阻害することによって、多くの治療的または予防的適用に使用することができる。治療的適用において、抗hPAR1アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含む組成物が、PAR1シグナル伝達によって介在され、それによって引き起こされまたはそれに関連している疾患または状態に既に罹患している対象に投与される。本組成物は該状態およびその合併症の阻害、部分的停止または検出可能な遅延に十分な量の抗体または抗原結合分子を含む。
【0119】
予防的適用において、抗hPAR1アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含む組成物は、PAR1−シグナル伝達関連障害を有さない患者に投与される。むしろ、それはかかる障害を発症するリスクを有し、または発症する素因を有する対象に指向する。かかる適用は、患者の抵抗性を向上し、PAR1シグナル伝達によって介在される障害の進行を遅延させることができる。
【0120】
多数の疾患状態が異常なまたは異常に高いPAR1介在性細胞内シグナル伝達によって介在される。異常に高いPAR1介在性細胞内シグナル伝達は、例えば、異常に高い濃度の活性化プロテアーゼ(例えばトロンビン)または異常に高いPAR1の細胞表面発現レベルに該受容体が曝露することによって引き起こされ得る。PAR1の阻害は血栓症および血管増殖性障害の処置、ならびにがん、例えば癌腫または上皮がん、例えば、皮膚がん(黒色腫を含む)、消化器がん(結腸がんを含む)、肺がんおよび乳がん(乳がんおよび腺管がんを含む)、前立腺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、腺がん等の進行の阻害に役立つ。例えば、Darmoul, et al., Mol Cancer Res (2004) 2(9):514-22 および Salah, et al, Mol Cancer Res (2007) 5(3):229-40を参照されたい。PAR1阻害はまた、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および潰瘍性大腸炎を含む慢性腸炎;ならびに肝線維症および肺線維症を含む線維症の予防または阻害における使用を見出す。例えば、Vergnolle, et al., J Clin Invest (2004) 114(10):1444; Yoshida, et al, Aliment Pharmacol Ther (2006) 24(Suppl 4):249; Mercer, et al., Ann NY Acad Sci (2007) 1096:86-88; Sokolova and Reiser, Pharmacol Ther (2007) PMID:17532472を参照されたい。
【0121】
本発明の抗PAR1抗体によって阻害または予防することができるがんは、上皮がん、例えば癌腫;神経膠腫、中皮腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、腺がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、神経膠芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺がんおよびバーキットリンパ腫、頭頸部がん、結腸がん、結直腸がん、非小細胞性肺がん、小細胞肺がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、肝胆道がん、胆嚢がん、小腸がん、直腸がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、陰茎がん、尿道がん、精巣がん、子宮頸がん、膣がん、子宮がん、卵巣がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、膵臓内分泌系がん、カルチノイドがん、骨がん、皮膚がん、網膜芽細胞腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むが、これらに限定されない(さらなるがんについては、CANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V.T. et al. eds 1997) 参照)。
【0122】
PAR1の阻害はまた、異常なまたは異常に高いPAR1発現または細胞内シグナル伝達によって介在され得るかあるいは介在されない疾患状態の予防または阻害における使用を見出す。例えば、PAR1の阻害は、心筋、腎臓、脳および腸の虚血−再灌流障害を含む虚血−再灌流障害の予防または阻害に有用である。例えばStrande, et al., Basic Res. Cardiol (2007) 102(4):350-8; Sevastos, et al., Blood (2007) 109(2):577-583; Junge, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100(22):13019-24 および Tsuboi, et al., Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol (2007) 292(2):G678-83を参照されたい。PAR1細胞内シグナル伝達の阻害はまた、細胞の単純ヘルペスウイルス(HSV1およびHSV2)感染の阻害に使用することができる。Sutherland, et al., J Thromb Haemost (2007) 5(5):1055-61参照。
【0123】
本発明は、薬学的に許容される担体と共に製剤された、抗hPAR1抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。該組成物はさらに、所定の障害の処置または予防に有用な他の治療剤を含んでいてもよい。薬学的担体は組成物を改善または安定化し、あるいは組成物の製造を容易にする。薬学的に許容される担体は、溶媒、分散剤、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤等の生理的に適合するものを含む。
【0124】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において既知の多様な方法によって投与することができる。経路および/または投与形態は、望まれる結果に基づいて変化する。投与は静脈内、筋肉内、腹腔内であるかまたは標的部位の近くに投与するのが好ましい。薬学的に許容される担体は静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば注射または輸液による)に好適であるべきである。投与経路に依存して、活性化合物、すなわち抗体、二重特異的および多重特異的分子は、当該化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件から当該化合物を保護するための物質でコーティングされていてもよい。
【0125】
ある態様において、組成物は滅菌液体である。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒度を維持することによって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖、マンニトールまたはソルビトールのようなポリアルコールおよび塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
【0126】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知の、日常的に実施される方法に従って製造することができる。例えば, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000; および Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。医薬組成物は好ましくは、GMP条件下で製造する。典型的には、抗hPAR1抗体の治療上有効量または有効用量が本発明の医薬組成物において使用される。抗hPAR1抗体は当業者に既知の常套の方法によって薬学的に許容される投与形態に製剤する。投与レジメンは最適な望まれる応答(例えば治療的応答)が得られるように調節する。例えば、1回ボーラスを投与でき、時間をかけて複数回分割用量を投与でき、あるいは治療状況の緊急性によって示される通りに用量を比例的に減少または増加することができる。投与の簡便さおよび投与量の均一性のために、単位投与形態の非経腸組成物を製剤することが特に有利である。本明細書において使用するとき、単位投与形態は、処置する対象に単位投与量として好適な物理的に分離した単位を意味し;単位はそれぞれ、所望の薬学的担体と共に望まれる治療効果を発揮するように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0127】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量濃度は、患者に毒性がないように、特定の患者、組成物および投与形態について望まれる治療応答を得るために有効な有効成分の量が得られるように変化してよい。選択される投与量濃度は、使用する本発明の特定の組成物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排出速度、処置の期間、使用する特定の組成物との組合せで使用される他の薬剤、化合物および/または物質、年齢、性別、体重、状態、一般的な健康および処置する患者の薬歴等の要因を含む多様な薬物動態学的因子に基づく。
【0128】
医師または獣医は、医薬組成物において用いる本発明の抗体の用量を、望まれる治療効果を得るために必要なものよりも低い濃度で開始して、望まれる効果が得られるまで投与量を漸増することができる。一般に、本発明の組成物の有効用量は、処置する具体的な疾患または状態、投与方法、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトまたは動物のいずれであるか、投与する他の医薬および処置が予防または治療のいずれであるかを含む、多様な要因に基づいて変化する。安全性および有効性を最適化するために、処置投与量は用量設定される必要がある。抗体の投与について、投与量は約0.0001〜100mg/kg宿主体重、より一般に0.01〜5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、投与量は1mg/kg体重または10mg/kg体重、あるいは1〜10mg/kgの範囲である。例示的な処置レジメンは、2週間に1回、1ヶ月に1回または3〜6ヶ月に1回の投与を必要とする。
【0129】
薬剤が核酸である態様において、典型的な投与量は、約0.1mg/kg体重〜約100mg/kg体重、好ましくは約1mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲であり得る。より好ましくは、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50mg/kg体重である。
【0130】
抗体は通常、複数回で投与される。1回の投与毎の間隔は、週間、月刊または年間であり得る。間隔はまた、本発明の抗hPAR1抗体の血中濃度を測定して示されるとおり、不規則であってもよい。いくつかの方法において、血漿抗体濃度1〜1000μg/ml、いくつかの方法において25〜300μg/mlが得られるように投与量を調節する。あるいは、抗体は徐放製剤として投与することができ、その場合にはより少ない頻度での投与が必要とされる。投与量および頻度は、本発明の抗体の半減期に基づいて変化する。一般に、ヒト化抗体はキメラ抗体および非ヒト化抗体のものよりもより長い半減期を示す。投与量および投与の頻度は、処置が予防的または治療的のいずれであるかに基づいて変化し得る。予防的適用において、相対的に低い投与量が相対的に低い頻度間隔で、長い期間にわたって投与される。残りの人生の間処置を受け続ける患者も存在する。治療的適用において、相対的に高い投与量が相対的に短い間隔で、疾患の進行が低下または停止するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的または完全な寛解を示すまで、必要であることがある。その後、患者は予防的レジメンで投与されてもよい。
【実施例1】
【0131】
下記実施例が説明のために提供されるが、特許請求の範囲に記載の発明を限定しない。
実施例1: 下記実施例はヒトにおける免疫源性を最低限にした抗Par1抗体の構成およびスクリーニングを提供する。
【0132】
方法
マウスV領域のサブクローニング
マウスV領域はマウスモノクローナル4E7.J14からサブクローニングした。PCRを用いてV重鎖およびVカッパ領域のV遺伝子を増幅して、クローニングに好適な制限酵素部位を発現ベクターに組み込んだ。V領域はpBR322ベクター系中で、ヒトIgG1定常領域と共にFab’フラグメントとしてクローニングした。Fab’は大腸菌のpTACプロモーターから発現した。精製したFab’タンパク質(Clone PR15−5)は、ELISAアッセイにおいてPar1抗原との結合を示した。
【0133】
Fab’およびFab精製
Fab’およびFabフラグメントは、発現ベクターを用いて大腸菌由来の分泌物によって発現した。波長600nm(OD600)で測定した吸光度0.6まで細胞を2xYT培地で増殖した。イソプロピル−ベータ−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて3時間、33℃で発現を誘導した。外質(periplasmic)分画から集合Fab’またはFabを得て、Streptococcal Protein G (HiTrap Protein G HP columns; GE Healthcare)を用いて標準的な方法に従うアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。Fab’およびFabはpH2.0のバッファーで溶出し、速やかにpH7.0に調節し、pH7.4のPBS(PBSはカルシウムおよびマグネシウムを含まない)で透析した。
【0134】
ELISA
典型的に、4℃で一夜インキュベーションして、50ng/ウェルのPar1抗原を96ウェルマイクロタイタープレートと結合させた。0.1%のTween20を含むリン酸緩衝化食塩水(“PBST”)中5%のミルクの溶液で、33℃で1時間ブロッキングした。Fabまたは参照Fab’(PR15−5)をPBSで希釈し、各ウェルに50μlを加えた。33℃で1時間インキュベーションした後、該プレートをPBSTで3回濯いだ。50μlの抗ヒトカッパ鎖ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)複合体(Sigma;PBSTで0.1ng/mlに希釈した)を各ウェルに加え、プレートを33℃で40分間インキュベーションした。該プレートをPBSTで3回、PBSで1回濯いだ。100μlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を各ウェルに加え、プレートを室温で〜5分間インキュベーションした。反応を停止させるために100μlの0.2NのHSOを各ウェルに加えた。該プレートを分光光度計で450nmで読み取った。
【0135】
スクリーニング
Fabフラグメントのライブラリーのスクリーニングを米国特許公開番号第2005/0255552号および第2006/0134098号に記載のとおり、組換えPar1抗原被覆ニトロセルロースフィルターを用いて実施した。両方の特許公報の開示をその全体において、あらゆる目的のために参照により本明細書に引用する。
【0136】
親和性測定
ForteBio Octetバイオセンサーを用いてFab’およびFabフラグメントの会合速度を分析した。EZ−リンクビオチニル化キット(Pierce)を用いて製造業者の方法に従って、組換え抗原をビオチニル化した。次いで抗原をニュートラアビジン被覆センサー(ForteBio)と結合させた。バイオレイヤー・インターフェロメトリー分析および製造業者から提供されたソフトウェアを用いて、Fab’およびFab結合を実時間でモニターした。測定した結合定数および解離定数から親和性を計算した。
【0137】
結果
V領域のクローニングおよび発現
サブクローニングしたV領域についてのPar1抗原結合活性を確認するForteBio Octet試験。
マウスV領域をクローニングし、配列決定し、発現させた。V領域をヒトIgG1定常領域と共にFab’フラグメントとしてクローニングし、大腸菌中で発現させた。Par1抗原結合のForteBio Octet試験において、クローン化したFab’ PR15−5は、抗体濃度に依存した結合曲線を作製した。表1参照。
【表1】

【0138】
ライブラリー構成およびV領域カセット
エピトープに焦点を絞ったライブラリーは、PR15−5のユニークCDR3領域と結合したヒトVセグメント配列のライブラリーから構成した;FR4領域は、重鎖および軽鎖についてそれぞれヒト生殖細胞系JH6およびJk2であった。これらの「全長」ライブラリーは、マウスVセグメントの一部のみが最初にヒト配列のライブラリーで置換されている「カセット」ライブラリーの構成のための基礎として使用した。V重鎖およびVカッパ鎖の両方のカセットは、PCRとフレームワーク2(FR2)領域内の重複共通配列とをブリッジングして作製した。このようにして、「先端部」および「中央部」ヒトカセットライブラリーはヒトV重1およびヒトカッパIIサブクラスについて構成された。Par1抗原との結合を支持するヒトカセットをコロニーリフト結合アッセイで同定し、ELISAおよびForteBio Octetバイオセンサー分析における親和性に従ってランクを付けた。次いで最も高い親和性カセットのプールを2次ライブラリースクリーニングに組み合わせて、完全にヒトVセグメントを作製した。このように完了したカセットスクリーニングによって、Par1抗原結合活性を有する複数のヒトV軽鎖およびヒトV重「先端」カセットを同定した。
【0139】
別のアプローチにおいて、このCDR2内の各残基をマウス配列または1個のヒト生殖細胞系配列からの対応する残基に変異させた変異原性ライブラリーを構成した(VH1−46は同定した「先端」カセットに最も近いヒト生殖細胞系配列であった)(図3参照)。抗原結合を支持することが示された選択した「先端」およびヒトフレームワーク3(FR3)配列とこの変異原性ライブラリーを組み合わせた。このライブラリーの全メンバーは共通したPR15−5参照Fab’のCDR3配列と、ヒト生殖細胞系FR4配列を有していた。したがって、変形したヒト「中央」カセットライブラリーを構築し、コロニーリフト結合アッセイによってスクリーニングし、抗原結合クローンを選択し、さらにELISAおよびForteBio Octetで分析した。このようにして、ヒト生殖細胞系アミノ酸配列と近い、Par1抗原結合性を支持する複数のCDR配列が同定された(図3参照)。
【0140】
ヒト生殖細胞系配列に近い、高い親和性のFabのプールを同定した後、親和性成熟ライブラリーを構築した。縮重PCRプライマーを用いて最適化したFabクローン群の共通CDR3配列を変異させて、ライブラリーを作製した。コロニーリフト結合アッセイを用いて、これらの変異原性ライブラリーをスクリーニングした。ELISAおよびForteBio分析による親和性について、選択したFabをランク付けした。PR15−5参照Fab’と比較したとき、等しいまたは改善された抗原親和性を支持する変異を同定した。表2参照。
【0141】
Forte Octet分析を用いたヒトPar1抗原についてのFab’およびFabの親和性
コロニーリフト結合アッセイおよびELISAでカセットおよび変異原性ライブラリースクリーニングから単離した十分に最適化したFabを、参照Fab’ PR15−5との動力学的比較によってさらに特徴付けた。実時間標識なし、タンパク質−タンパク質相互作用のモニタリングのためのForteBio Octetシステムを用いて、会合速度を分析した。計算した結合定数と解離定数および全体の親和定数を表2に示す。
【表2】

【0142】
表2はForteBio Octetバイオセンサー技術を用いたバイオレイヤー・インターフェロメトリーによる組換えPar1抗原とFab’およびFabの結合の分析を示し、会合速度定数(k)、解離速度定数(k)および計算した親和性(K)を示す。改善されたFabクローンLDS−896、LDS900およびLDW653ならびに参照Fab’クローンPR15−5の速度論的分析は、全てPar1抗原についての高い親和性を有することを示した。
【0143】
図3はヒト生殖細胞系配列と比較した最適化したFab LDS−896、LDS900およびLDW653のV領域配列のアミノ酸配列アラインメントを示す。対応するヒト生殖細胞系アミノ酸配列との参照および最適化V領域配列のアミノ酸配列同一性の割合は表3に示す。
【表3】

【0144】
表3の全ての配列同一性割合は、V領域にわたる1個のヒト生殖細胞系配列との同一性を示し、CDR3 BSD配列を除く。3つ全ての改善されたFabのV領域のほとんどが、約90%のアミノ酸配列同一性割合で対応するヒト生殖細胞系配列と極めて近いことが示され得る。
【0145】
上記発明は理解を明確にする目的で説明および例示のために詳細に記載しているが、本発明の教示に基づき当業者は、特許請求の範囲の精神および範囲から離れることなくある変化および変形を行うことができることが理解される。
【0146】
本明細書において言及した全ての文献、データベース、GenBank配列、特許および特許出願は、それぞれが具体的に、個別に示されているように、参照により本明細書に引用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ活性化受容体−1(PAR1)と結合し、PAR1アンタゴニストである抗体であって、
(a)ヒト重鎖Vセグメント、重鎖相補性決定領域3(CDR3)および重鎖フレームワーク領域4(RF4)を含む重鎖可変領域と、
(b)ヒト軽鎖Vセグメント、軽鎖CDR3および軽鎖FR4を含む軽鎖可変領域を含み、ここで
i)前記重鎖CDR3がアミノ酸配列DDXSXWXFDV(配列中、XはGまたはIであり、XはPまたはYであり、XはH、L、P、M、E、W、T、S、QまたはAであり、XはYまたはFである)(配列番号10)を含み;
ii)前記軽鎖CDR3可変領域がアミノ酸配列FQGXVPFT(配列中、XはS、D、AまたはVであり、XはH、R、T、SまたはKである)(配列番号20)を含む;
抗体。
【請求項2】
重鎖Vセグメントが配列番号41と少なくとも90%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号46と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1の抗体。
【請求項3】
重鎖Vセグメントが配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45から成る群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を有し、軽鎖Vセグメントが配列番号47、配列番号48、配列番号49および配列番号50から成る群から選択されるアミノ酸と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1の抗体。
【請求項4】
i)重鎖CDR3が配列番号11、配列番号12および配列番号13から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
ii)軽鎖CDR3が配列番号22および配列番号23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1の抗体。
【請求項5】
重鎖FR4がヒト生殖細胞系FR4である、請求項1の抗体。
【請求項6】
重鎖FR4がヒト生殖細胞系JH6(WGQGTTVTVSS;配列番号32)である、請求項5の抗体。
【請求項7】
重鎖Jセグメントがヒト生殖細胞系JH6部分配列DVWGQGTTVTVSS(配列番号66)を含む、請求項5の抗体。
【請求項8】
軽鎖FR4がヒト生殖細胞系FR4である、請求項1の抗体。
【請求項9】
軽鎖FR4がヒト生殖細胞系Jk2(FGQGTKLEIK;配列番号40)である、請求項8の抗体。
【請求項10】
軽鎖Jセグメントがヒト生殖細胞系Jk2部分配列TFGQGTKLEIK(配列番号67)を含む、請求項8の抗体。
【請求項11】
重鎖Vセグメントおよび軽鎖Vセグメントがそれぞれ相補性決定領域1(CDR1)および相補性決定領域2(CDR2)を含み;ここで:
i)該重鎖VセグメントのCDR1が配列番号2のアミノ酸配列を含み;
ii)該重鎖VセグメントのCDR2が配列番号6のアミノ酸配列を含み;
iii)該軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号14のアミノ酸配列を含み;
iv)該軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含む、
請求項1の抗体。
【請求項12】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号4を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号8を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号11を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3が配列番号22を含む
請求項11の抗体。
【請求項13】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号4を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号8を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号12を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3が配列番号23を含む、
請求項11の抗体。
【請求項14】
i)重鎖VセグメントのCDR1が配列番号5を含み;
ii)重鎖VセグメントのCDR2が配列番号9を含み;
iii)重鎖CDR3が配列番号13を含み;
iv)軽鎖VセグメントのCDR1が配列番号16を含み;
v)軽鎖VセグメントのCDR2が配列番号19を含み;
vi)軽鎖CDR3が配列番号23を含む、
請求項11の抗体。
【請求項15】
重鎖可変領域が配列番号51の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号55の可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1の抗体。
【請求項16】
重鎖可変領域が配列番号52、配列番号53および配列番号54から成る群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号57、配列番号58および配列番号59から成る群から選択される可変領域と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1の抗体。
【請求項17】
重鎖可変領域が配列番号52、配列番号53および配列番号54から成る群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、軽鎖可変領域が配列番号57、配列番号58および配列番号59から成る群から選択される可変領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1の抗体。
【請求項18】
重鎖可変領域が配列番号52、配列番号53および配列番号54から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号57、配列番号58および配列番号59から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、請求項1の抗体。
【請求項19】
1×10−8M未満の平衡解離定数(K)でPAR1と結合する、請求項1の抗体。
【請求項20】
FAb’フラグメントである、請求項1の抗体。
【請求項21】
IgGである、請求項1の抗体。
【請求項22】
一本鎖抗体(scFv)である、請求項1の抗体。
【請求項23】
ヒト定常領域を含む、請求項1の抗体。
【請求項24】
配列番号52を含む重鎖と、配列番号57を含む軽鎖を含んでなる、請求項1の抗体。
【請求項25】
配列番号53を含む重鎖と、配列番号58を含む軽鎖を含んでなる、請求項1の抗体。
【請求項26】
配列番号54を含む重鎖と、配列番号59を含む軽鎖を含んでなる、請求項1の抗体。
【請求項27】
請求項1〜26の何れかの抗体と生理的に適合する賦形剤を含む、薬学的に許容される組成物。
【請求項28】
PAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態の症状を改善する方法であって、それを必要とする対象に、PAR1のアンタゴニストである請求項1〜26の何れかの抗体を投与することを含む方法。
【請求項29】
異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態が慢性腸炎である、請求項28の方法。
【請求項30】
異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態が線維症である、請求項28の方法。
【請求項31】
異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態がPAR1を過剰発現するがんである、請求項28の方法。
【請求項32】
異常なPAR1を介する細胞内シグナル伝達によって介在される疾患状態が虚血−再灌流障害である、請求項28の方法。
【請求項33】
PAR1と特異的に結合する抗体であって、重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域がそれぞれ下記3個の相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2およびCDR3を含み;
i)重鎖可変領域のCDR1が配列番号3、配列番号4および配列番号5から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
ii)重鎖可変領域のCDR2が配列番号7、配列番号8および配列番号9から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iii)重鎖可変領域のCDR3が配列番号11、配列番号12および配列番号13から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
iv)軽鎖可変領域のCDR1が配列番号15および配列番号16から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
v)軽鎖可変領域のCDR2が配列番号18および配列番号19から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み;
vi)軽鎖可変領域のCDR3が配列番号22および配列番号23から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−533732(P2010−533732A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517164(P2010−517164)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/070357
【国際公開番号】WO2009/012401
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】