説明

プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)のアンタゴニスト

本発明は、ヒトPAR1受容体を特異的に認識してアンタゴナイズする抗体または抗原結合分子を提供する。また、本発明は、かかる分子をコード化するポリヌクレオチドおよびベクター、ならびに該ポリヌクレオチドまたはベクターを担持する宿主細胞を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年7月18日出願の米国仮特許出願第60/831,800号、および2007年7月17日出願の米国特許出願第11/778,924号に基づく優先権の利益を主張し、それらの全開示内容は、参照により全ての目的に関して本明細書に包含される。
【0002】
発明の分野
本発明は、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)のアンタゴニストである抗体および抗原結合分子に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)クラスに属するトロンビン受容体である。PAR1は、種々の組織、例えば内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、ニューロンおよびヒト血小板中で発現される。それは、恒常性、増殖および組織傷害と関係する細胞応答に関与する。PAR1を介する血小板凝集のトロンビンにより仲介される刺激は、血栓形成および血管の創傷治癒における重要な過程である。トロンビンは、PAR1の細胞外N末端ドメインの一部のタンパク質分解除去、および新規のPAR1 N末端の暴露によりPAR1を活性化する。故に、新規のPAR1 N末端の最初の数アミノ酸(SFLLRN;配列番号37)は、受容体の別の部分に結合して、関連するGタンパク質によるシグナル伝達を開始する係留(tethered)リガンドとして働く。PAR1は、血液凝固に関与する他のセリンプロテアーゼによっても活性化され得る。
【0004】
PAR1仲介シグナル伝達活性の調節は、いくつかの治療適用を有する。PAR1の阻害は、血栓症および血管増殖障害の処置、ならびに癌の進行の阻止に有用である。例えば、Darmoul, et al., Mol Cancer Res (2004) 2(9):514−22、およびSalah, et al, Mol Cancer Res (2007) 5(3):229−40を参照。アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤は、PAR1細胞内シグナル伝達により仲介される多数の疾患状態の処置に効果を有する。例えば、アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤は、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および潰瘍性大腸炎を含む慢性炎症性腸疾患;ならびに、肝臓線維症および肺線維症を含む線維性障害の予防または阻止における使用を見出される。例えば、Vergnolle, et al., J Clin Invest (2004) 114(10):1444; Yoshida, et al, Aliment Pharmacol Ther (2006) 24(Suppl 4):249; Mercer, et al., Ann NY Acad Sci (2007) 1096:86−88; Sokolova and Reiser, Pharmacol Ther (2007) PMID:17532472を参照。アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を含むPAR1阻害剤はまた、心筋、腎臓、脳および腸の虚血再かん流傷害を含む虚血再かん流傷害の予防または阻止における使用も見出される。例えば、Strande, et al., Basic Res. Cardiol (2007) 102(4):350−8; Sevastos, et al., Blood (2007) 109(2):577−583; Junge, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100(22):13019−24、およびTsuboi, et al., Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol (2007) 292(2):G678−83を参照。PAR1細胞内シグナル伝達の阻止はまた、細胞のヘルペス単純ウイルス(HSV1およびHSV2)感染の阻止にも用いられ得る。Sutherland, et al., J Thromb Haemost (2007) 5(5):1055−61を参照。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な説明
一局面において、本発明は、ヒトプロテアーゼ活性化受容体−1(hPAR1)に対するモノクローナル・アンタゴニスト抗体または抗原結合分子を提供する。該抗体または抗原結合分子は、第二の抗体と同じ結合特異性でヒトPAR1に結合する。該第二の抗体は、(i)配列番号5の重鎖可変領域配列および配列番号6の軽鎖可変領域配列、または(ii)配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を有する。
【0006】
ある態様において、該抗体は、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)、またはその断片、例えば少なくとも8、9、10、11、12、13、14または15個の隣接アミノ酸の断片を含む、hPAR1のエピトープに特異的に結合する。ある態様において、該抗体は、別の種由来のPAR1(例えば、マウスPAR1(mPAR1))またはPAR1以外のPARサブタイプ、例えばプロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)にはほとんど結合しない(すなわち、交差反応しない)。
【0007】
該抗体または抗原結合分子のいくつかは、配列番号21、配列番号22もしくは配列番号23の重鎖相補性決定領域(CDR)配列;または、配列番号24、配列番号25もしくは配列番号26の軽鎖CDR配列を有する。これらの分子のいくつかは、それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を有する。
【0008】
該抗体または抗原結合分子のいくつかは、配列番号27、配列番号28もしくは配列番号29の重鎖相補性決定領域(CDR)配列;または、配列番号30、配列番号31もしくは配列番号32の軽鎖CDR配列を有する。これらの分子のいくつかは、それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を有する。
【0009】
該抗体または抗原結合分子のいくつかは、配列番号5と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、ならびに配列番号6と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する。他のいくつかは、配列番号7と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、ならびに配列番号8と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する。該分子のいくつかは、配列番号5の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号6の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する。他のいくつかは、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する。
【0010】
該抗体または抗原結合分子のいくつかは、配列番号5または配列番号7と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列を有する。該抗体または抗原結合分子のいくつかは、配列番号6または配列番号8と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列を有する。
【0011】
本発明の抗hPAR1抗体または抗原結合分子のいくつかは、マウス抗体である。他のいくつかはキメラ抗体である。抗hPAR1分子のいくつかはヒト化抗体である。他のいくつかはヒト抗体である。さらに他のいくつかは、一本鎖抗体、Fab断片、またはヒトフィブロネクチン・タイプIIIドメイン由来の骨格を有するミニボディ(monobody)である。
【0012】
別の局面において、本発明は、抗hPAR1抗体または抗原結合分子の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコード化する、単離または組換えポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドのいくつかは、ヒト抗体の可変領域を含むポリペプチドをコード化する。該ポリペプチドは、それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み得る。該ポリペプチドはまた、それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列も含み得る。
【0013】
該ポリヌクレオチドのいくつかは、配列番号5の成熟領域(mature region)と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および/または配列番号6の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化する。他のいくつかは、配列番号7と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域アミノ酸配列、および/または配列番号8と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域アミノ酸配列をコード化する。該ポリヌクレオチドのいくつかは、配列番号5の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および/または配列番号6の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化する。他のいくつかは、配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および/または配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列をコード化する。
【0014】
別の局面において、本発明は、(1)本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子の重鎖をコード化する組換えDNA断片;および、(2)該抗体または抗原結合分子の軽鎖をコード化する第二の組換えDNA断片、を担持する単離された宿主細胞を提供する。該宿主細胞のいくつかにおいて、DNA断片は、プロモーターに作動可能に連結され、宿主細胞中で発現され得る。宿主細胞のいくつかは、ヒト起源の抗PAR1抗体または抗原結合分子を発現し得る。該宿主細胞のいくつかは、それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗hPAR1抗体または抗原結合分子を発現し得る。他のいくつかは、それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗hPAR1抗体または抗原結合分子を発現する。
【0015】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物であって、該エピトープは、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)、またはその断片を含み、該抗体または抗原結合分子は、PAR1アンタゴニストである。該組成物に用いられる抗体および抗体結合分子の態様は、本明細書中に記載される。
【0016】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、PAR1を介する細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態の病理の改善方法であって、該エピトープは、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)またはその断片を含み、該抗体または抗原結合分子はPAR1アンタゴニストである。該方法に用いられる抗体および抗体結合分子の態様は、本明細書中に記載される。
【0017】
いくつかの態様において、該疾患状態は、PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される。いくつかの態様において、該疾患状態は、血栓性または血管増殖性障害である。いくつかの態様において、該疾患状態は、PAR1を異常に発現する癌、例えば皮膚癌種(黒色腫を含む)、消化器癌種(直腸癌を含む)、肺癌および乳癌(乳癌および乳管癌を含む)、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、腺癌などを含む、例えば癌腫または上皮性癌である。いくつかの態様において、該疾患状態は、慢性炎症性腸疾患、例えば炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および潰瘍性大腸炎である。いくつかの態様において、該疾患状態は、線維性障害、例えば肝臓線維症および肺線維症である。
【0018】
いくつかの態様において、該疾患状態は、異常かまたは異常ではないPAR1を介する細胞内シグナル伝達により仲介される。いくつかの態様において、該方法は、心筋、腎臓、脳および腸の虚血再かん流傷害を含む虚血再かん流傷害の阻止または予防を対象とする。いくつかの態様において、該方法は、細胞のヘルペス単純ウイルス(HSV1およびHSV2)感染の阻止または予防を対象とする。
【0019】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および特許請求の範囲を参照することにより明らかになり得る。
【0020】
定義
他に特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術および化学用語は、本発明が関係する分野の当業者により通常理解されるのと同様の意味を有する。以下の文献は、本発明で用いられる多くの用語の一般的定義を当業者に提供する: Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Smith et al. (eds.), Oxford University Press (revised ed., 2000); Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, Singleton et al. (Eds.), John Wiley & Sons (3PrdP ed., 2002);および、A Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference), Martin and Hine (Eds.), Oxford University Press (4PthP ed., 2000)。さらに、以下の定義は、本発明の実施において読者を支援するために提供される。
【0021】
用語“抗体”および“抗原結合分子”は、所定のエピトープまたは複数のエピトープに対して強力な一価、二価または多価結合を示すポリペプチド鎖(複数可)を示すために用いられる。他に特記されない限り、本発明の抗体または抗原結合分子は、脊椎動物、哺乳動物、ラクダ科の動物、鳥類または魚類の何れかに由来する配列を有し得る。それらは、何らかの適当な技術、例えばハイブリドーマ技術、リボソーム提示、ファージ提示、遺伝子シフトライブラリー、半合成もしくは全合成ライブラリー、またはそれらの組合せを用いて製造され得る。本明細書に詳述するとおり、本発明の抗体または抗原結合分子は、無傷(intact)の抗体、抗原結合ポリペプチド鎖、および他のデザイナー抗体を含む(例えば、Serafini, J Nucl Med. 34:533−6, 1993を参照)。
【0022】
無傷の“抗体”は典型的に、ジスルフィド結合により内的に結合された少なくとも2個の重(H)鎖(約50−70kD)および2個の軽(L)鎖(約25kD)を含む。抗体鎖をコード化する認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびmu定常領域遺伝子、ならびに夥しい免疫グロブリン可変領域遺伝子類を含む。軽鎖は、カッパまたはラムダに分類される。重鎖は、ガンマ、mu、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それらは順に、それぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEと定義される。
【0023】
抗体の各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中、HCVRまたはVHと略す)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中、LCVRまたはVLと略す)および軽鎖定常領域からなる。該軽鎖定常領域は、1個のドメインであるCLからなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と結合する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織、または免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。
【0024】
抗体のVHおよびVL領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)が点在する相補性決定領域(CDR)とも称される、超可変性の領域にさらに下位分類される。各VHおよびVLは、3個のCDRおよび4個のFRからなり、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下の順で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。CDRおよびFR領域の位置ならびに番号付けは、例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Office (1987および1991)に定義されている。
【0025】
免疫グロブリンの成熟重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸は、それぞれHxおよびLxで示され、ここでxは、上記のKabatらの方法によるアミノ酸の位置の番号表示である。Kabatらは、各サブグループの抗体の多くのアミノ酸配列を列記し、そのサブグループ内の各残基位置に最も普遍的なアミノ酸を列記してコンセンサス配列を作製する。Kabatらは、列記した配列の各アミノ酸に残基ナンバーを付す方法を用い、この残基ナンバーを付す方法は、当該分野で標準となっている。Kabatの方法は、目的の抗体を保存されたアミノ酸を参照することによりKabatらのコンセンサス配列の1つとアライメントすることにより、彼の一覧に包含されない他の抗体に拡張され得る。Kabatの番号付けシステムの使用により、異なる抗体における等しい位置でのアミノ酸の同定が容易になる。例えば、ヒト抗体のL50位のアミノ酸は、マウス抗体のL50位のアミノ酸と等しい位置を占める。同様に、抗体鎖をコード化する核酸は、それぞれの核酸によりコード化されるアミノ酸配列が、Kabat番号付け方法によりアライメントされるとき、アライメントされる。
【0026】
抗体または抗原結合分子にはまた、同種抗原に結合する能力を有する無傷の抗体の抗原結合部分を含む抗体断片が含まれる。かかる抗体断片の例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の片側(single arm)のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al., Nature 341:544−546, 1989);および、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2個のドメインであるVLおよびVHは、別個の遺伝子によりコード化され、それらは、組換え方法を用いて、それらをVLおよびVH領域が一対となり一価の分子(一本鎖Fv(scFv)としても公知)を形成する一本鎖タンパク質鎖にし得る合成リンカーにより結合され得る;例えば、Bird et al., Science 242:423−426, 1988; および、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883, 1988を参照。
【0027】
本発明の抗体または抗原結合分子にはさらに、化学的に結合されているか、または他のタンパク質との融合タンパク質として発現される、1個以上の免疫グロブリン鎖が包含される。それは、二重特異性抗体も含む。二重特異性または二官能性抗体は、2個の異なる重鎖/軽鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。本発明の他の抗原結合断片または抗体部分には、二価のscFv(二重特異性抗体)、抗体分子が2個の異なるエピトープを認識する二重特異性scFv抗体、単一の結合ドメイン(dAb)、およびミニボディが含まれる。
【0028】
本明細書に記載の種々の抗体または抗原結合断片は、無傷の抗体の酵素的または化学的修飾により製造され得るか、または組換えDNA法(例えば、一本鎖Fv)を用いてデノボで合成され得るか、またはファージ提示ライブラリーを用いて同定され得る(例えば、McCafferty et al., Nature 348:552−554, 1990を参照)。例えば、ミニボディは、当技術分野で既報の方法、例えばVaughan and Sollazzo, Comb Chem High Throughput Screen. 4:417−30 2001を用いて製造され得る。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合を含む種々の方法により製造され得る。例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp. Immunol. 79:315−321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148, 1547−1553 (1992)を参照。一本鎖抗体は、ファージ提示ライブラリーまたはリボソーム提示ライブラリー、遺伝子シャッフルされたライブラリーを用いて同定され得る。かかるライブラリーは、合成、半合成または天然の、免疫担当(immnocompetent)供給源から構成され得る。
【0029】
“キメラ抗体”は、(a)定常領域またはその一部が、抗原結合部位(可変領域)が、異なるか、または改変されたクラスの、エフェクター機能および/もしくは種、またはキメラ抗体、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬剤などに新しい特性を与える全く異なる分子、の定常領域と結合するように、改変、置換または交換されるか;または、(b)可変領域またはその部分が、異なるか、または改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置換または交換される、抗体分子である。例えば、以下の実施例に記載の通り、マウス抗hPAR1抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリン由来の定常領域で置換して修飾され得る。ヒト定常領域での置換により、キメラ抗体は、ヒトPAR1を認識するその特異性を保持し、ヒトにおいて元のマウス抗体と比較して減少した抗原性を有し得る。
【0030】
“ヒト化”抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持するが、ヒトにおける免疫原性が少ない抗体である。このことは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分をそのヒト対応物(すなわち、定常領域ならびに可変領域のフレームワーク部分)で置換することにより達成され得る。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851−6855, 1984; Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65−92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239:1534−1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489−498, 1991;および、Padlan, Molec. Immun., 31:169−217, 1994を参照。
【0031】
用語“抗体結合分子”または“非抗体リガンド”は、非免疫グロブリンタンパク質骨格を用いる抗体模倣体を意味し、アドネクチン、アビマー(avimer)、一本鎖ポリペプチド結合分子、および抗体様結合ペプチド模倣体を含む。
【0032】
本明細書で用いる用語“アンタゴニスト”は、受容体に特異的に結合し、受容体を介するシグナル伝達を阻害して、受容体により仲介される応答を完全に阻止または検出可能に阻害する可能性のある薬剤を意味する。例えば、PAR1のアンタゴニストは受容体に特異的に結合し、PAR1仲介シグナル伝達を完全にまたは部分的に阻害する。いくつかの場合に、PAR1アンタゴニストは、PAR1に結合し、PAR1からの細胞内シグナル伝達後のトロンビンにより誘導されるカルシウム流動またはトロンビンにより誘導されるIL−8産生を阻止するその能力により同定され得る(例えば、FlipRアッセイまたはELISAにより測定される)。さらなるアッセイは、Kawabata, et al., J Pharmacol Exp Ther. (1999) 288(1):358−70に記載される。阻害は、例えばカルシウム流動またはIL−8産生により測定される通り、本発明のアンタゴニストに暴露されたPAR1からのPAR1細胞内シグナル伝達が、アンタゴニストに暴露されていない対照PAR1からの細胞内シグナル伝達と比較して、少なくとも約10%未満、例えば少なくとも約25%、50%、75%未満、または完全に阻害されるときに起こる。対照PAR1は、抗体もしくは抗原結合分子、別の抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合分子、またはアンタゴニストとして機能しないことが公知の抗PAR1抗体もしくは抗原結合分子に暴露され得ない。“抗体アンタゴニスト”は、アンタゴニストが阻害抗体である状況を意味する。
【0033】
用語“プロテアーゼ活性化受容体−1”、“プロテイナーゼ活性化受容体−1”または“PAR1”は、互換的に、トロンビン切断により、N末端係留リガンドを露呈することにより活性化されるGタンパク質共役受容体を意味する。PAR1はまた、“トロンビン受容体”および“凝固因子II受容体前駆体”としても公知である。例えば、Vu, et al., Cell (1991) 64(6):1057−68; Coughlin, et al, J Clin Invest (1992) 89(2):351−55;および、GenBank受託番号NM_001992を参照。係留リガンドとPAR1の細胞外ドメインの分子内結合は、細胞内シグナル伝達およびカルシウム流動をもたらす。例えば、Traynelis and Trejo, Curr Opin Hematol (2007) 14(3):230−5;および、Hollenberg, et al, Can J Physiol Pharmacol. (1997) 75(7):832−41を参照。PAR1のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。例えば、Vu, et al., Cell (1991) 64(6):1057−68; Coughlin, et al, J Clin Invest (1992) 89(2):351−55;および、GenBank受託番号NM_001992を参照。ヒトPAR1の核酸配列は、GenBank受託番号NM_001992(また、M62424.1およびgi4503636も参照)として公表される。ヒトPAR1のアミノ酸配列は、NP_001983およびAAA36743として公表される。本明細書で用いる通り、PAR1ポリペプチドは、トロンビンにより活性化される機能的Gタンパク質共役受容体であり、N末端係留リガンドの結合により細胞内シグナル伝達およびカルシウム流動をもたらす。構造的には、PAR1アミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_001983、AAA36743またはM62424.1のアミノ酸と、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。構造的には、PAR1ヌクレオチド酸配列は、GenBank受託番号NM_001992またはM62424.1のアミノ酸と、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する。
【0034】
抗体または抗原結合分子の結合特異性は、個々の抗体または抗原結合分子の結合部位の、唯一の抗原決定基と反応する能力を意味する。典型的な抗体の結合部位は、該分子のFab部分に位置し、重鎖および軽鎖の超可変領域で構成される。いくつかの態様において、結合特異性は、本発明の抗体により特異的に結合される、PAR1ポリペプチド内の特定のエピトープ(例えば、SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE、またはその断片)を意味する。特定のエピトープに対する結合特異性を共有する抗体は、そのエピトープと競合的に結合し得る。共通するエピトープに競合的に結合する抗体は、固相ラジオイムノアッセイ(SPRIA)を用いて測定される通り、共通するエピトープへの結合から互いに離され得る。結合特異性を共有する競合的抗体は、同一のエピトープに結合する必要はないが、結合アッセイにおいて競合的な置換を可能にする重複エピトープに結合し得る。いくつかの態様において、結合特異性は、本発明の抗体により選択的に結合されるPARサブタイプ(例えば、PAR1に対してPAR2または別のPARサブタイプ、例えばPAR3またはPAR4)を意味する。
【0035】
結合親和性は、抗体または抗原結合分子上の、単一の抗原決定基と単一の結合部位の反応強度である。それは、抗原決定基と結合部位の間に作用する引力および斥力の和である。親和性は、抗原−抗体反応を説明する平衡定数である。
【0036】
語句“特異的(または選択的)に結合する”は、抗体または抗原結合分子(例えば、抗hPAR1抗体)とタンパク質および他の生体分子(biologics)の不均一集団中の同種抗原(例えば、ヒトPAR1ポリペプチド)との特異的結合反応を意味する。語句“抗原を認識する抗体”および“抗原に特異的な抗体”は、本明細書中、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と互換的に用いられる。ある程度の非特異的相互作用が、抗体と非標的エピトープの間に起こり得ることが認められる。それにもかかわらず、特異的結合は、標的エピトープの特異的認識を介するため区別され得る。典型的な特異的結合は、結合した抗体と標的エピトープを欠く要素(例えば、アッセイウェルまたは細胞)間よりも、送達された分子と標的エピトープを担持する要素(例えば、アッセイウェルまたは細胞)間でのより強力な結合をもたらす。特異的結合は典型的に、標的エピトープを欠失する細胞または組織と比較して、標的エピトープを有する細胞または組織と結合する抗PAR1抗体の量(単位時間当たり)の約10倍以上、最も好ましくは100倍以上の増大をもたらす。2個の構成要素間の特異的結合は、一般的に、少なくとも10−1の親和性を意味する。10−1以上の親和性が好ましい。特異的結合は、ウェスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、免疫組織化学を含む、当技術分野で公知の何らかの抗体結合アッセイを用いて決定され得る。
【0037】
用語“エピトープ”は、抗体と特異的に結合し得るタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的な荷電特性を有する。立体配座および非立体配座エピトープ類は、変性溶媒の存在下で失われる、立体配座エピトープに結合するが非立体配座エピトープに結合しないことで区別される。
【0038】
本明細書で用いる用語“核酸”は、用語“ポリヌクレオチド”と互換性であり、一本鎖または二本鎖形のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーを意味する。該用語は、公知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは結合を含む核酸を包含し、それらは合成、天然、および非天然であり、参照核酸と同様の結合特性を有し、そして参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。かかる類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、ホスホン酸メチル、キラル−ホスホン酸メチル、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
他に特記しない限り、特定の核酸配列はまた、暗黙に、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換体)および相補的配列、ならびに明示された配列を包含する。具体的には、下記に詳述の通り、縮重コドン置換体は、1個以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が、混合基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を製造することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605−2608, 1985;および、Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91−98, 1994)。
【0040】
用語“アミノ酸”は、天然に生じるアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に生じるアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然に生じるアミノ酸は、遺伝子コードによりコード化されるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸類、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に生じるアミノ酸と同じ塩基性化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムと結合するアルファ炭素を有する化合物を意味する。かかる類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に生じるアミノ酸と同じ塩基性化学構造を有する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有するが、天然に生じるアミノ酸と同様に機能する化合物を意味する。
【0041】
本明細書中互換的に用いられる用語“ポリペプチド”および“タンパク質”は、アミノ酸残基のポリマーを意味する。該用語は、1個以上のアミノ酸残基が、対応する天然に生じるアミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に生じるアミノ酸ポリマーおよび天然に生じないアミノ酸ポリマーである、アミノ酸ポリマーに用いる。他に特記しない限り、特定のポリペプチド配列はまた、暗黙的に、その保存的修飾変異体を包含する。
【0042】
用語“保存的修飾変異体”は、アミノ酸および核酸配列の両方に用いられる。特定の核酸配列に関して、保存的修飾変異体は、同一または実質的に同一のアミノ酸配列をコード化する核酸、または該核酸がアミノ酸配列をコード化しないとき、実質的に同一の配列を意味する。遺伝子コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸は、所定のタンパク質をコード化する。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸であるアラニンをコード化する。故に、アラニンがコドンにより指定される各位置で、該コドンは、コード化されたポリペプチドの変化のない記載された対応するコドンの何れかに変更され得る。かかる核酸変異体は、保存的修飾変異体の一種である“サイレント変異体”である。ポリペプチドをコード化する本明細書に記載の各核酸配列は、可能性のある全ての核酸のサイレント変異体も記載する。当業者は、核酸における各コドン(通常、メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を得るために修飾され得ることを理解し得る。従って、ポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変異体は、それぞれ記載の配列に黙示的に包含される。
【0043】
ポリペプチド配列について、“保存的に修飾された変異体”は、ポリペプチド配列への個々の置換、欠失または付加を含み、その結果、アミノ酸の化学的に同一のアミノ酸での置換がもたらされる。保存的置換は、機能的に同一のアミノ酸が当技術分野で公知であるとき記載される。かかる保存的修飾変異体は、さらに多型変異体、種間相同体、および本発明のアレルを含み、これらは除かれない。下記の8個の群は、互いに保存的置換体であるアミノ酸である:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);および、8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照)。
【0044】
2個以上の核酸またはポリペプチド配列において、用語“同一”または“同一性”割合は、同一である2個以上の配列または部分配列を意味する。2個の配列は、2個の配列が、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いてか、または手動アライメントおよび目視検査により測定される通り、比較ウインドウまたは指定した領域上で最大一致するように比較および配列されたとき、特定の割合の、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する(すなわち、特定の領域中、または特に記載されないとき、全配列において、60%同一性、所望により65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%同一性である)とき“実質的に同一”である。所望により、同一性は、少なくとも約50個のヌクレオチド長(または、10個のアミノ酸)である領域、またはより好ましくは100ないし500または1000以上のヌクレオチド長(または、20、50、200以上のアミノ酸)である領域で存在する。
【0045】
配列比較のため、典型的に1個の配列は参照配列として機能し、それと供試配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いるとき、供試および参照配列は、コンピュータに入力され、次いで座標が示され、必要なとき、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが示される。デフォルトプログラムパラメーターが用いられ得るか、または別のパラメーターが示され得る。その後、該配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターを基に、参照配列と比較して供試配列の配列同一性割合を計算する。
【0046】
本明細書で用いる“比較ウインドウ”は、20ないし600、通常約50ないし約200、より通常約100ないし約150からなる基から選択される隣接位置数のうち1区分を参照することを含み、ここで配列は、2個の配列が最適にアライメントされた後、同数の隣接位置の参照配列と比較され得る。比較のための配列のアライメント法は、当技術分野で公知である。比較のための配列の最適アライメントは、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482c, 1970の局所相同性アルゴリズムによるか;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443, 1970の相同性アライメント・アルゴリズムによるか;Pearson and Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988の方法と同様に探索することによるか;これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によるか;または、手動アライメントおよび目視検査(例えば、Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003)を参照)により実行可能である。
【0047】
配列同一性および配列類似性を決定するのに適する2例のアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0 アルゴリズムであり、それらは、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389−3402, 1977;および、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410, 1990にそれぞれ記載される。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、National Center for Biotechnology Informationから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中で同じ長さのワードでアライメントしたとき、いくつかの陽性値閾値スコアTに一致するか、または条件を満たす、検索配列中の長さWの短いワード(word)を同定することによりハイスコア配列ペア(high scoring sequence pairs (HSP))を第一に同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と称される(上記のAltschul et al.,)。これらの最初の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索開始のためのシード(seed)として機能する。該ワードヒットを、累積アライメントスコアが増大し得る限り、各配列に沿って両方向に伸張させる。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関して、パラメーターM(一致残基のペアに関するリワードスコア;常時>0)、およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常時<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関して、スコアマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの伸張は、以下のとき停止する:累積アライメントスコアが、その最大値よりX量低下したとき;1つ異常の陰性スコア残基アライメントの蓄積により、累積スコアがゼロもしくはそれ未満になったとき;または、いずれかの配列の末端に至ったとき。BLASTアルゴリズムパラメーターW、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLAST Nプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列について、BLAST Pプログラムは、デフォルトとして、ワード長3、および期待値(E)10を使用し、BLOSUM62スコアマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989を参照)アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を用いる。
【0048】
BLASTアルゴリズムはまた、2個の配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873−5787, 1993を参照)。BLASTアルゴリズムにより供される類似性の一測定法は、最小和確率(P(N))であり、それは、それにより2個のヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、参照核酸に対する供試核酸の比較における最小和確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるとき、参照配列と類似であると見なされる。
【0049】
上記の配列同一性パーセント以外に、2個の核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一である別の指標は、第一の核酸によりコード化されるポリペプチドが、下記のように、第二の核酸によりコード化されるポリペプチドに対して作製された抗体と免疫学的に交差反応することである。故に、ポリペプチドは、典型的に、例えば2個のペプチドが保存的置換によってのみ異なるとき、第二のポリペプチドと実質的に同一である。2個の核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2個の分子またはその相補体が、下記のように、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。2個の核酸配列が実質的に同一であるさらに別の指標は、同じプライマーが配列の増幅に用いられ得ることである。
【0050】
用語“作動可能に連結される”は、2個以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)断片間の機能的関係を意味する。典型的に、それは、転写制御配列と転写配列の機能的関係を意味する。例えば、プロモーターまたはエンハンサー配列は、それが適当な宿主細胞または他の発現系におけるコーディング配列の転写を刺激または調節するとき、コーディング配列と作動可能に連結される。一般的に、転写配列と作動可能に連結されるプロモーター転写制御配列は、転写配列と物理的に隣接しており、すなわちそれらは、シスに作用する。しかしながら、エンハンサーのようないくつかの転写制御配列は、その転写を増大させるコーディング配列と物理的に隣接する必要がないか、またはその近接域に位置する必要がない。
【0051】
用語“ベクター”は、ベクターが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送可能なポリヌクレオチド分子を意味することが意図される。あるタイプのベクターは、“プラスミド”であり、それは、その中にさらなるDNA断片がライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを意味する。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでさらなるDNA断片がウイルスゲノム中にライゲーションされ得る。あるベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されるとき、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、当該ベクターが作動可能に連結される遺伝子の発現を導くことができる。かかるベクターは、本明細書中、“組換え発現ベクター”(または、単に“発現ベクター”)と称される。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。本明細書中、“プラスミド”および“ベクター”は、プラスミドがベクターの形態で最も一般的に使用されるため、互換的に用いられ得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)のような、かかる発現ベクターの他の形態を包含することを意図する。
【0052】
用語“組換え宿主細胞”(または、単に“宿主細胞”)は、組換え発現ベクターが組み込まれている細胞を意味する。かかる用語は、特定の対象細胞のみでなく、かかる細胞の後代(progeny)についても意味することが意図されることが理解されるべきである。突然変異または環境の影響により後世において何らかの修飾が起こり得るため、実際には、かかる後代は親細胞と同一でないかもしれないが、本明細書で用いる用語“宿主細胞”の範囲内に包含される。
【0053】
用語“対象”は、ヒトおよび非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えば非ヒト霊長動物、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生動物およびは虫類を含む。他に記載するとき以外、用語“患者”または“対象”は、本明細書中、互換的に用いられる。
【0054】
用語“処置”は、疾患(例えば、腫瘍)の症状、合併症または生化学的兆候の発現の予防または遅延、症状の軽減または疾患、状態または障害のさらなる進行の停止もしくは阻止のための、化合物または薬剤の投与を含む。処置は、予防的(疾患の発現の予防または遅延のため、またはその臨床的または亜臨床的症状の兆候の予防のため)もしくは治療的抑制または疾患の兆候後の症状の軽減であり得る。
【0055】
語句“シグナル伝達経路”または“シグナリング経路”(例えば、PAR1シグナル伝達経路)は、少なくとも1個の生化学反応を意味するが、より一般的には、細胞と刺激性化合物または薬剤の相互作用の結果である一連の生化学反応を意味する。故に、刺激性化合物(例えば、トロンビン)と細胞の相互作用は、シグナル伝達経路を介して伝達され、最終的に細胞応答をもたらす“シグナル”を生じる。
【0056】
詳細な説明
1.序
本発明は、一部分において、本発明者らによるヒトPAR1に対するアンタゴニスト抗体または抗原結合分子の開発を意図する。マウスで製造された抗hPAR1抗体またはインビトロで製造されたキメラ抗hPAR1抗体は、PAR1ポリペプチドに特異的に結合することができた。加えて、該抗体は、PAR1シグナル伝達により仲介される活性、例えばトロンビンにより仲介されるインターロイキン分泌、を阻害し得ることが見出された。故に、これらの抗体は、PAR1シグナル伝達活性により仲介されるか、またはそれと関係する多くの疾患または障害、例えば過敏性腸症候群または肝臓線維症の治療剤または予防剤として有用である。以下の節は、本発明の組成物の製造および使用のための指針を提供する。
【0057】
2.ヒトPAR1のアンタゴニスト抗体または抗原結合分子
a.概説
本発明は、ヒトPAR1に特異的に結合する抗体または抗原結合分子を提供する。これらの抗hPAR1剤は、PAR1仲介シグナル伝達活性、例えば下記の実施例に記載のPAR仲介インターロイキン分泌をアンタゴナイズし得る。モノクローナルまたはポリクローナル抗体の一般的製造方法は、当技術分野で公知である。例えば、Harlow & Lane, Using Antibody, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1998; Kohler & Milstein, Nature 256:495−497, 1975; Kozbor et al., Immunology Today 4:72, 1983;および、Cole et al., pp. 77−96 in Monoclonal Antibody and Cancer Therapy, 1985を参照のこと。
【0058】
好ましくは、本発明の抗hPAR1抗体は、下記の実施例に記載の抗hPAR1 抗体クローン4E7.J14.L16またはクローン6E11.H6.A9のようなモノクローナル抗体である。これらの2例の抗hPAR1モノクローナル抗体の可変領域のポリヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ図1および2に示す。モノクローナル抗体とは、単一クローン由来の抗体を意味する。モノクローナル抗体を製造するための何らかの技術、例えばBリンパ球のウイルス性または発癌性形質転換を、本発明の抗hPAR1抗体を製造するために用い得る。ハイブリドーマを製造するためのある動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ製造は、非常によく確立された方法である。以下の実施例に記載の通り、抗hPAR1モノクローナル抗体は、非ヒト動物(例えば、マウス)をhPAR1ポリペプチドまたはその断片、融合タンパク質もしくは変異体で免疫化することにより製造され得る。その後、該動物から単離されたB細胞は、抗体製造ハイブリドーマを製造するために骨髄腫細胞に融合される。マウス抗hPAR1モノクローナル抗体は、ELISAアッセイにおいてhPAR1ポリペプチドまたは融合タンパク質を用いてハイブリドーマをスクリーニングすることにより得られ得る。免疫化プロトコールおよび融合のための免疫化脾臓細胞の単離のための技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合方法もまた、当技術分野で公知であり、例えば上記のHarlow & Laneを参照のこと。
【0059】
下記の実施例に記載の例示的マウス抗PAR1抗体(クローン4E7.J14.L16および6E11.H6.A9)の重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:5−8に示される。クローン4E7.J14.L16の重鎖可変領域のCDR配列は、DYYMN(CDR1;配列番号21)、VIDPHNGRSRYNQMFKG(CDR2;配列番号22)、およびDDGPSHWYFDV(CDR3;配列番号23)である。その軽鎖可変領域のCDR配列は、RSSQNIVHSNGNTYLE(CDR1;配列番号24)、KVSNRFS(CDR2;配列番号25)、およびFQGSHVPFT(CDR3;配列番号26)である。クローン6E11.H6.A9の重鎖可変領域のCDR配列は、DHTFH(CDR1;配列番号27)、YIFPRDGSTKYNEKFKG(CDR2;配列番号28)、およびHYYGSFEY(CDR3;配列番号29)である。その軽鎖可変領域のCDR配列は、RSSQSLVHSNGNTYLH(CDR1;配列番号30)、KVSNRFS(CDR2;配列番号31)、およびSQSTHLPLT(CDR3;配列番号32)である。
【0060】
典型的な無傷の抗体は、6個の重鎖および軽鎖相補性領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を主に介して標的抗原と相互作用する。典型的に、本発明の抗hPAR1抗体は、抗PAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A9の対応するCDR配列と同一の、少なくとも1個の重鎖CDR配列または軽鎖CDR配列を有する。本発明のこれらの抗hPAR1抗体のいくつかは、同一の結合特異性を有し、故に、例えば、上記のアミノ酸配列内のアミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)またはその断片、例えば8、9、10、11、12、13、14、または15個の隣接アミノ酸内の、PAR1 N末端係留リガンド内のエピトープに対して参照抗体と競合する。本発明のいくつかの抗hPAR1抗体は、抗PAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A9の対応するCDR配列とそれぞれ同一の、重鎖および軽鎖それらの可変領域中の全てのCDR配列を有する。故に、これらの抗hPAR1抗体は、配列番号21、配列番号22および配列番号23とそれぞれ同一である3個の重鎖CDR配列、ならびに配列番号24、配列番号25および配列番号26とそれぞれ同一である3個の軽鎖CDR配列を有し得る。それらはまた、配列番号27、配列番号28および配列番号29とそれぞれ同一である3個の重鎖CDR配列、ならびに配列番号30、配列番号31および配列番号32とそれぞれ同一である3個の軽鎖CDR配列も有し得る。
【0061】
本発明の抗hPAR1抗体のいくつかは、マウス抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A9の対応する可変領域配列とそれぞれ同一の、それらの完全な重鎖および軽鎖可変領域配列を有する。いくつかの他の態様において、該抗体は、同一のCDR配列以外に、マウス抗PAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A9(例えば、以下に記載のヒト化抗hPAR1抗体のいくつか)の対応するアミノ酸残基とは異なる可変領域のフレームワーク領域中のアミノ酸残基を含む。それにもかかわらず、これらの抗体は典型的に、マウス抗PAR1抗体クローン4E7.J14.L16またはクローン6E11.H6.Aの対応する可変領域配列と実質的に同一(例えば、75%、85%、90%、95%または99%)である、それらの完全な可変領域配列を有する。
【0062】
本発明の抗hPAR1抗体は、2個の重鎖および2個の軽鎖を含む無傷の抗体であり得る。それらは、無傷の抗体または一本鎖抗体の抗原結合分子であってもよい。本発明の抗hPAR1抗体は、非ヒト動物において製造される抗体(例えば、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A)を含む。それらはまた、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.Aの修飾形態である修飾抗体を含む。しばしば、該修飾抗体は、例示のマウス抗体の特性と比較して同様のまたは改善された特性を有する組換え抗体である。例えば、以下の実施例に例示のマウス抗hPAR1抗体は、定常領域を欠失して、抗体の増大した半減期、例えば抗体の血清半減期、安定性または親和性をもたらし得る、異なる定常領域で置換され得る。該修飾抗体は、例えば、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列上に挿入されたマウス抗体由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、製造可能である(Jones et al. 1986, Nature 321, 522−525)。かかるフレームワーク配列は、公開されたDNAデータベース(例えば、www.kabatdatabase.com)から得られ得る。
【0063】
該修飾抗体のいくつかは、一部のヒト免疫グロブリン配列(例えば、定常領域)および一部非ヒト免疫グロブリン配列(例えば、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.Aのマウス抗hPAR1抗体可変領域配列)を含むキメラ抗体である。いくつかの他の修飾抗体は、ヒト化抗体である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源由来の抗体中に挿入された1個以上のアミノ酸残基を有する。非ヒト抗体のヒト化法は、当技術分野で公知であり、例えば米国特許番号第5,585,089および5,693,762; Jones et al., Nature 321: 522−25, 1986; Riechmann et al., Nature 332: 323−27, 1988;ならびに、Verhoeyen et al., Science 239: 1534−36, 1988を参照。これらの方法は、非ヒト抗hPAR1抗体由来のCDR少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域で置換することにより、本発明のヒト化抗hPAR1抗体を製造するために容易に用いられ得る。いくつかの態様において、本発明のヒト化抗hPAR1抗体は、対応するヒトフレームワーク領域中に挿入されたマウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A5由来の各免疫グロブリン鎖中に全ての3個のCDRを有する。
【0064】
上記の抗hPAR1抗体は、結合特異性もしくはエフェクター機能の欠失のない、または結合親和性の容認できない減少のない、可変および定常領域の両方の、重要でないアミノ酸置換、付加または欠失を受け得る。通常、かかる変異を組み込んだ抗体は、それらが由来する参照抗体(例えば、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A)と実質的な配列同一性を示す。例えば、本発明の抗hPAR1抗体のいくつかの成熟軽鎖可変領域は、例示のマウス抗hPAR1抗体の成熟軽鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%の配列同一性を有する。同様に、抗体の成熟重鎖可変領域は、典型的に、例示の抗hPAR1抗体の成熟重鎖可変領域の配列と少なくとも75%または少なくとも85%の配列同一性を示す。修飾抗hPAR1抗体のいくつかは、例示のマウス抗hPAR1抗体と比較して同程度の特異性および増加した親和性を有する。通常、該修飾抗hPAR1抗体の親和性は、参照マウス抗hPAR1抗体の2、5、10または50倍以内である。
【0065】
b.キメラ抗体およびヒト化抗hPAR1抗体
本発明の抗hPAR1抗体のいくつかは、ヒト抗体の領域と共に、非ヒト抗hPAR1抗体アンタゴニスト由来の領域からなる、キメラ(例えば、マウス/ヒト)抗体である。例えば、キメラ重鎖は、少なくとも一部のヒト重鎖定常領域と結合した本明細書に例示のマウス抗PAR1抗体の重鎖可変領域(例えば、配列番号5または7)の抗原結合領域を含み得る。このキメラ重鎖は、少なくとも一部のヒト軽鎖定常領域と結合した例示のマウス抗hPAR1抗体の軽鎖可変領域(例えば、配列番号6または8)の抗原結合領域を含む、キメラ軽鎖と結合され得る。
【0066】
本発明のキメラ抗hPAR1抗体は、以下の実施例に記載の方法、ならびに当技術分野で公知の方法に従い製造可能である。例えば、マウス抗hPAR1抗体または抗原結合分子の重鎖または軽鎖をコード化する遺伝子は、制限酵素で消化してマウスFc領域を除去し、ヒトFc定常領域をコード化する遺伝子の等価な部分で置換され得る。組換え抗体およびヒト化抗体の発現に適する発現ベクターおよび宿主細胞は、特に、当技術分野でよく知られている。抗hPAR1免疫グロブリン鎖をコードするキメラ遺伝子を発現するベクターは、標準組換え技術を用いて構築することができ、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (3rd ed., 2001);および、Brent et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (ringbou ed., 2003)を参照。ヒト定常領域配列は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Office, 1991に列記されるものを含むが、これらに限定されない、種々の参照供給源から選択され得る。DNA組換え技術によるキメラ抗体のより具体的な製造技術はまた、当技術分野で、例えばRobinson et al., 国際特許出願PCT/US86/02269; Akira, et al., 欧州特許出願第184,187号; Taniguchi, M., 欧州特許出願第171,496号; Morrison et al., 欧州特許出願第173,494号; Neuberger et al., 国際特許出願 WO 86/01533; Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号; Cabilly et al., 欧州特許出願第125,023号; Better et al., Science 240:1041−1043, 1988; Liu et al., PNAS 84:3439−3443, 1987; Liu et al., J. Immunol. 139:3521−3526, 1987; Sun et al., PNAS 84:214−218, 1987; Nishimura et al., Canc. Res. 47:999−1005, 1987; Wood et al., Nature 314:446−449, 1985; Shaw et al., J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559, 1988でも教示されている。
【0067】
非ヒト抗体由来の全可変領域を有するキメラ抗体は、ヒトにおいて該抗体の抗原性を低減するためにさらにヒト化され得る。これは、典型的に、Fv可変領域(フレームワーク領域または非CDR領域)中のある配列またはアミノ酸残基を、ヒトFv可変領域由来の等価な配列またはアミノ酸残基で置換することにより達成される。これらのさらなる置換配列またはアミノ酸残基は、通常、抗原結合に直接関与しない。しばしば、非ヒト抗体のヒト化は、非ヒト抗体(例えば、本明細書で例示のマウス抗PAR1抗体)のCDRのみを、ヒト抗体のCDRで置換することにより行われる。いくつかの場合に、これは、次いで、ヒトフレームワーク領域中のいくつかのさらなる残基を非ヒト供与抗体由来の対応する残基で置換される。かかるさらなる導入(grafting)は、しばしば、抗原への結合を改善するために必要である。このことは、非ヒト抗体から導入されたCDRのみを有するヒト化抗体が、非ヒト供与抗体の結合活性と比較して完全でない結合活性を有し得るためである。故に、CDRに加えて、本発明のヒト化抗hPAR1抗体はしばしば、非ヒト供与抗体(例えば、本明細書で例示のマウス抗体)由来の対応する残基で置換されたヒトフレームワーク領域中のいくつかのアミノ酸残基を有し得る。置換のためのフレームワーク残基を選択する基準を含む、CDR置換によりヒト化抗体を製造する方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、キメラ抗体の作製方法と関係する上記の方法に加えて、ヒト化抗体を作製するためのさらなる技術が、例えばWinter et al., 英国特許出願 GB 2188638A (1987), 米国特許第5,225,539号; Jones et al., Nature 321:552−525, 1986; Verhoeyan et al., Science 239:1534, 1988;および、Beidler et al., J. Immunol. 141:4053−4060, 1988により提供される。CDR置換はまた、例えば、表題“ヒト単核食細胞上の免疫グロブリンGのためのFc受容体に対するヒト化抗体”のWO94/10332に記載の通り、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異を用いて行われ得る。
【0068】
本発明のキメラ抗体またはヒト化抗hPAR1抗体は、一価、二価、または多価の免疫グロブリンであり得る。例えば、一価のキメラ抗体は、上記の通り、キメラL鎖とジスルフィド架橋を介して結合したキメラH鎖により形成される二量体(HL)である。二価のキメラ抗体は、少なくとも1個のジスルフィド架橋を介して結合した2個のHL二量体により形成される四量体(H2L2)である。多価のキメラ抗体は、鎖の凝集に基づく。
【0069】
c.ヒト抗hPAR1抗体
キメラまたはヒト化抗hPAR1抗体に加えて、同じ結合特異性および同程度のまたはより良好な結合親和性を示す完全ヒト抗体も本発明に包含される。例えば、ヒト抗hPAR1抗体は、参照非ヒト抗PAR1抗体、例えばマウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.Aと比較して、同程度のまたはより良好な結合特性(例えば、結合特異性および/または結合親和性)を有し得る。該参照非ヒト抗体は、配列番号5の重鎖可変領域配列および配列番号6の軽鎖可変領域配列を含むマウス抗PAR1抗体であり得る。それはまた、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号8の軽鎖可変領域配列を含むマウス抗PAR1抗体でもあり得る。キメラまたはヒト化抗体と比較して、本発明のヒト抗hPAR1抗体は、ヒト対象に投与されるとき、さらに低減された抗原性を有する。
【0070】
該ヒト抗hPAR1抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて製造され得る。例えば、非ヒト抗体と比較して同程度のまたはより良好な結合特性を維持したままで、抗体の非ヒト抗体可変領域をヒト可変領域で置換するインビボ方法は、米国特許出願第10/778,726号(公開番号第20050008625号)に開示されている。該方法は、非ヒト参照抗体の可変領域の完全ヒト抗体での置換を導くエピトープに対応する。得られるヒト抗体は、一般的に、参照非ヒト抗体と構造的に関係しないが、参照抗体と同様に抗原上の同じエピトープと結合する。簡単には、一連のエピトープにより導かれる相補的置換方法は、供試抗体の抗原への結合に応答するレポーターシステムの存在下で、限定量の抗原への結合に関して、細胞内での“競合体(competitor)”と参照抗体(“試験抗体”)の種々のハイブリッドのライブラリーとの競合を引き起こすことにより可能である。該競合体は、参照抗体または一本鎖Fv断片のようなその誘導体であり得る。該競合体は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗原の天然または人工リガンドでもあり得る。競合体に必要な唯一の条件は、参照抗体と同じエピトープに結合すること、および抗原結合について参照抗体と競合することである。該供試抗体は、非ヒト参照抗体由来の共通する1個の抗原結合V領域、およびヒト抗体のレパートリーライブラリーのような種々の供給源から無作為に選択される他のV領域を有する。参照抗体由来の共通するV領域は、選択が参照抗体への最も高い抗原結合忠実性(fidelity)に対して偏るため、抗原上の同じエピトープ上に供試抗体を同じ配向で配置するガイドとして働く。
【0071】
多くのタイプのレポーターシステムは、供試抗体と抗原の間の所望の相互作用を検出するために用いられ得る。例えば、相補的レポーター断片は、断片相補性によるレポーター活性が、供試抗体が抗原に結合するときのみ生じるため、抗原および供試抗体それぞれに結合し得る。該供試抗体−および抗原−レポーター断片融合体が競合体と供発現されるとき、レポーター活性は、抗原に対する供試抗体の親和性に比例する、競合体と競合する供試抗体の能力に依存するようになる。他の用いられ得るレポーターシステムには、米国特許出願番号第10/208,730号(公開番号第20030198971号)に記載の自己阻害型レポーター再活性化システム(RAIR)、または米国特許出願第10/076,845号(公開番号第20030157579号)に記載の競合活性化システムの再活性化が含まれる。
【0072】
該一連のエピトープにより導かれる相補的置換システムを用いて、競合体、抗原およびレポーター構成成分と共に、単一の供試抗体を発現する細胞を同定するために、選択を行う。これらの細胞において、各供試抗体は、限定量の抗原への結合に関して競合体と1対1で競合する。レポーターの活性は、供試抗体に結合する抗原の量に比例し、言い換えると、抗原に対する供試抗体の親和性および供試抗体の安定性に比例する。供試抗体は、初めに、供試抗体として発現したとき、参照抗体の活性と比較してその活性に基づき選択される。該第一の選択の結果は、それらは各々が参照抗体由来の同じ非ヒトV領域とライブラリー由来のヒトV領域からなり、かつ各々が参照抗体として抗原上の同じエピトープに結合する、一連の“ハイブリッド”抗体である。該第一工程で選択されたハイブリッド抗体の1個以上は、参照抗体と同程度のまたはそれより高い抗原の親和性を有し得る。
【0073】
第二のV領域置換工程において、第一工程で選択されたヒトV領域は、残りの非ヒト参照抗体V領域を、同族のヒトV領域の種々のライブラリーで置換するヒト置換体の選択のためのガイドとして用いられる。第一工程で選択されたハイブリッド抗体はまた、第二の選択に競合体としても用いられ得る。第二の選択の結果は、参照抗体とは構造的に異なるが、同じ抗原への結合に関して参照抗体と競合する、一連の完全ヒト抗体である。選択されたヒト抗体のいくつかは、参照抗体として同じ抗原上の同じエピトープに結合する。これらの選択されたヒト抗体のうち1個以上が、参照抗体と同程度のまたはそれより高い親和性で同じエピトープに結合する。
【0074】
上記のマウスまたはキメラ抗hPAR1抗体の1個を参照抗体として用いて、本方法を、同じ結合特異性および同程度もしくはより良好な結合親和性を有するヒトPAR1に結合するヒト抗体を作製するために容易に用い得る。加えて、かかるヒト抗hPAR1抗体はまた、ヒト抗体を慣習的に製造する会社、例えばKaloBios, Inc.(Mountain View, CA)から入手可能である。特定のエピトープに対して出発非ヒト抗体(例えば、マウス抗PAR1抗体)と同程度またはより良好な親和性を有するヒト抗体を得るため、KaloBios, Inc.の技術は、ヒト“アクセプター”抗体ライブラリーを用いる。その後、非ヒト抗体として同一のエピトープに結合するが、変化した親和性を有する、指向性またはエピトープを中心とした(focusd)ヒト抗体のライブラリーを製造する。次いで、エピトープを中心としたライブラリー中の抗体を、出発非ヒト抗体と同程度またはより高い親和性について選択する。同定されたヒト抗体は、その後、親和性および配列同一性についてさらに分析される。
【0075】
d.他のタイプの抗hPAR1抗体
本発明の抗hPAR1抗体または抗原結合分子には、一本鎖抗体、二重特異性抗体および多重特異性抗体も含まれる。いくつかの態様において、本発明の抗体は、一本鎖抗体である。一本鎖抗体は、一本の安定に折りたたまれたポリペプチド鎖中に重鎖および軽鎖の両方由来の抗原結合領域を含む。そのようなものとして、一本鎖抗体は典型的に、モノクローナル抗体の結合特異性および親和性を保持するが、古典的免疫グロブリンよりもかなり小さいサイズである。任意の適用について、本発明の一本鎖の抗hPAR1抗体は、無傷の抗hPAR1抗体と比較して多くの有利な特性を提供し得る。これらには、例えば、マウスベースの抗体と比較したとき、体内からのより迅速な排出、診断的画像および治療の両方により優れた組織透過性、および免疫原性の顕著な減少が含まれる。一本鎖抗体の使用の他の可能性のある利点には、高スループットスクリーニング法の増大したスクリーニング能および非経腸適用の可能性が含まれる。
【0076】
本発明の一本鎖抗hPAR1抗体は、当技術分野で既報の方法を用いて製造され得る。かかる技術の例には、米国特許番号第4,946,778号および同第5,258,498号; Huston et al., Methods in Enzymology 203:46−88, 1991; Shu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995−7999, 1993;および、Skerra et al., Science 240:1038−1040, 1988に記載のものが包含される。
【0077】
いくつかの態様において、本発明は、複数の結合部位または標的エピトープに結合する二重特異性または多重特異性分子を製造するために、別の機能的分子に誘導体化または結合される抗hPAR1抗体を提供する。該機能的分子には、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、上記の、サイトカイン、細胞毒性剤、免疫刺激剤または阻害剤、Fab’断片または他の抗体結合断片)が含まれる。例えば、抗hPAR1抗体またはその抗原結合部分は、1個以上の、別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣体のような他の結合分子に(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合またはその他により)機能的に結合され得る。故に、本発明の二重特異性および多重特異性抗hPAR1抗体には、ヒトPAR1に対する第一の結合特異性、および第二の標的エピトープに対する第二の結合特異性を有する、少なくとも1個のモノクローナル抗hPAR1抗体またはその抗原結合断片が含まれる。第二の標的エピトープは、Fc受容体、例えばヒトFcγRIまたはヒトFcγ受容体であり得る。故に、本発明は、FcγR1、FcγRまたはFcεRを発現するエフェクター細胞(例えば、単球、マクロファージまたは多核白血球細胞(PMN))、およびヒトPAR1を発現する標的細胞(例えば、癌細胞)の両方に結合し得る二重特異性および多重特異性分子を含む。これらの多重特異性(例えば、二重特異性または多重特異性)分子は、エフェクター細胞に対してヒトPAR1を発現する細胞を標的とさせ、ヒトPAR1を発現する細胞の食作用、抗体依存性細胞により仲介される細胞毒性(ADCC)、サイトカイン放出、またはスーパーオキシドアニオンの生成のような、Fc受容体により仲介されるエフェクター細胞活性を誘導する。
【0078】
本発明の二重特異性および多重特異性抗hPAR1分子は、当技術分野で既報の方法により製造され得る。これらには、化学技術(例えば、Kranz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5807, 1981を参照)、ポリドーマ(polydoma)技術(例えば、米国特許番号第4,474,893号)、または組換えDNA技術が含まれる。本発明の二重特異性および多重特異性分子はまた、例えば、当技術分野で公知の方法および本明細書に記載の方法を用いて、構成要素結合特異性、例えば抗FcRおよび抗hPAR1結合特異性を結合することにより調製され得る。例えば、二重特異性および多重特異性分子のそれぞれの結合特異性は、別個に製造されてよく、次いで、互いに結合され得る。結合特異性がタンパク質またはペプチドであるとき、種々のカップリング剤または架橋剤が、共有結合のために使用される。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が含まれる。結合特異性が抗体(例えば、2個のヒト化抗体)であるとき、それらは、2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合され得る。該ヒンジ領域は、複合体化の前に、奇数個、例えば1個のスルフヒドリル残基を含むため改変され得る。
【0079】
二重特異性および多重特異性分子のその特定の標的への結合は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイにより確認され得る。これらのアッセイはそれぞれ、一般的に、特定の目的のタンパク質−抗体複合体の存在を、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば、抗体)を用いて検出する。例えば、FcR−抗体複合体は、例えば酵素結合抗体または抗体−FcR複合体を認識して特異的に結合する抗体断片を用いて検出され得る。あるいは、この複合体は、種々の他の免疫アッセイのいずれかを用いて検出され得る。例えば、抗体は、放射活性物質で標識され、ラジオイムノアッセイ(RIA)に使用され得る(例えば、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986を参照)。放射性同位体は、γカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段により、またはオートラジオグラフィーによって検出され得る。
【0080】
本発明の抗hPAR1抗体または抗原結合分子にはまた、ラクダ骨格を有する単一ドメイン抗原結合単位が含まれる。ラクダ科の動物には、ラクダ、ラマおよびアルパカが含まれる。ラクダは、軽鎖を欠く機能的抗体を産生する。重鎖可変(VH)ドメインは、自立的に折りたたまれ、抗原結合単位として独立して機能する。その結合表面は、古典的抗原結合分子(Fab)または一本鎖可変断片(scFv)中の6個のCDRと比較して3個のCDRのみを有する。ラクダ化抗体は、従来の抗体と比較して高い結合親和性を有し得る。本明細書に例示のマウス抗PAR1抗体の結合特異性を有するラクダ骨格ベースの抗PAR1分子は、当技術分野で公知の方法、例えば、Dumoulin et al., Nature Struct. Biol. 11:500−515, 2002; Ghahroudi et al., FEBS Letters 414:521−526, 1997;および、Bond et al., J Mol Biol. 332:643−55, 2003を用いて製造可能である。
【0081】
e.hPAR1に特異的に結合する非抗体リガンド
本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子にはまた、フィブロネクチン・タイプIIIドメイン(FN3)の骨格を用いる小さい抗体模倣体であるミニボディ(monobody)が含まれる。フィブロネクチンは、細胞外マトリクスの形成および細胞−細胞相互作用において重要な役割を果たす大きなタンパク質である。それは、小ドメインの3個の型(I、IIおよびIII)の多数の繰り返しから構成される。FN3はそれ自体、免疫グロブリンスーパーファミリーの大きなサブファミリー(FN3ファミリーまたはs型免疫グロブリンファミリー)の系列である。FN3ファミリーは、細胞接着分子、細胞表面ホルモンおよびサイトカイン受容体、シャペロニン、および炭水化物結合ドメインを含む。FN3骨格は、特異性を構築する機能のためのループが移植され得る有効なフレームワークとして働く。ヒトフィブロネクチン中のFN3には、15回の繰り返し単位が存在する。典型的に、本発明のかかる抗原結合分子は、ヒトフィブロネクチンの10番目のFN3単位を骨格として利用する。それは、小さく、単量体であり、そしてジスルフィド結合を有しない。本明細書に例示のマウス抗PAR1抗体と同程度の結合特異性を示すFN3ベースの抗原結合分子は、当技術分野で既報の方法を用いて製造可能であり、例えばKoide et al., J. Mol. Biol. 284: 1141−1151, 1998; Koide et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 99:1253−1258, 2002;および、Batori et al., Protein Eng. 15:1015−20, 2002、また米国特許番号第6,818,418号および同第7,115,396号を参照。
【0082】
本発明のいくつかの他の抗原結合分子は、Aドメイン由来の骨格を用いる。Aドメインは、いくつかの細胞表面受容体中に複数ドメインの鎖として生じる。このファミリーのドメインは、小分子、タンパク質およびウイルスを含む、多くの公知の標的を結合する。切断分析は、標的が典型的に、ユニークエピトープに独立して結合する各ドメインを含む複数のAドメインにより結合することを示す。複数の結合ドメインを結合することにより生じる結合活性(avidity)は、親和性および特異性の増大のために強力な方法である。本明細書に例示のマウス抗PAR1抗体の結合特異性を有するPAR1に結合するかかる抗原結合分子は、既報の方法、例えばGliemann et al., Biol. Chem. 379:951−964, 1998; Koduri et al., Biochemistry 40:12801-12807, 2001およびSilverman et al., Nat Biotechnol. 23:1556−61, 2005を用いて製造され得る。
【0083】
他の化合物は、抗体と同様の方法で標的を標的化し、それに結合するように開発されている。任意のこれらの“抗体模倣体”は、抗体の可変領域とは別のタンパク質フレームワークとして非免疫グロブリンタンパク質骨格を用いる。
【0084】
例えば、Ladnerら(米国特許第5,260,203号)は、凝集状であるが、分子的には別個の、抗体の軽鎖および重鎖可変領域と同程度の結合特異性を有する単一のポリペプチド鎖結合分子を記載する。一本鎖結合分子は、ペプチドリンカーにより結合された抗体の重鎖および軽鎖可変領域の両方の結合部位を含み、2個のペプチド抗体と同様の構造に折りたたまれ得る。該一本鎖結合分子は、より小さいサイズ、より良好な安定性、ならびにより容易に修飾されることを含む、いくつかの常套の抗体よりも利点を示す。
【0085】
Kuら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(14):6552−6556 (1995))は、シトクロムb562に基づく抗体の代替物を開示する。Ku et al. (1995)は、シトクロムb562の2個のループが、ウシ血清アルブミンに対する結合に関して無作為に選択されたライブラリーを作成した。個々の変異体は、抗BSA抗体と同様にBSAと選択的に結合することが見出された。
【0086】
Besteら (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96(5):1898−1903 (1999))は、リポカリン骨格に基づく抗体模倣体(アンチカリン(登録商標))を開示する。リポカリンは、該タンパク質の末端の4個の超可変ループを有するβ−バレルを包含する。Beste (1999)は、該ループに無作為変異導入を行い、例えばフルオレセインとの結合について選択した。3個の変異体が、フルオレセインと特異的結合を示し、1個の変異体が、抗フルオレセイン抗体と同様の結合を示す。さらなる分析により、アンチカリン(登録商標)が、抗体の代替物として使用されるのに適し得ることを示す、無作為化位置の全てが可変であることが明らかにされた。
【0087】
アンチカリン(登録商標)は、小さい、一本鎖ペプチドであり、典型的に160ないし180残基であり、減少した製造コスト、貯蔵における増大した安定性、ならびに減少した免疫学的反応を含む、抗体よりもいくつかの利点を提供する。
【0088】
Hamiltonら(米国特許第5,770,380号)は、結合部位として用いられる複数の可変ペプチドループで結合した、カリックスアレーンの硬い、非ペプチド性有機骨格を用いる合成抗体模倣体を開示する。該ペプチドループは全て、互いにカリックスアレーンと幾何学的に同じ側から提示される。この幾何構造のため、全てのループは、リガンドに対する増大した結合親和性で結合に利用される。しかしながら、他の抗体模倣体と比較して、カリックスアレーンベースの抗体模倣体は、ほとんどペプチドを包含せず、故に、プロテアーゼ酵素による攻撃に強い。純粋にペプチド、DNAまたはRNAからなる骨格でないことは、本抗体模倣体が極限環境条件で比較的安定であり、長期貯蔵性であることを意味する。さらに、カリックスアレーンベースの抗体模倣体は比較的小さいため、免疫応答を生じる可能性が低い。
【0089】
Muraliら(Cell. Mol. Biol. 49(2):209−216 (2003))は、抗体の代替物として有用でもあり得るより小さいペプチド模倣体である、用語“抗体様結合ペプチド模倣体”(ABiP)に、抗体を縮小する方法を開示する。
【0090】
3.抗hPAR1抗体を製造するためのポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、上記の抗hPAR1抗体鎖または抗原結合分子の断片またはドメインを含むポリペプチドをコード化する実質的に精製したポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を提供する。本発明のポリヌクレオチドのいくつかは、配列番号1または3に示される重鎖可変領域のヌクレオチド配列および/または配列番号2または4に示される軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含む。本発明のいくつかの他のポリヌクレオチドは、配列番号1−4に示されるヌクレオチド配列のうち1個と実質的に(例えば、少なくとも65%、80%、95%または99%)同一であるヌクレオチド配列を含む。適当な発現ベクターから発現されるとき、これらのポリヌクレオチドによりコード化されるポリペプチドは、抗原結合能力を示す可能性がある。
【0091】
本発明はまた、少なくとも1個のCDR領域、および通常、以下の実施例に記載のマウス抗hPAR1抗体の重鎖または軽鎖からの3個全てのCDR領域をコード化するポリヌクレオチドを提供する。いくつかの他のポリヌクレオチドは、マウス抗hPAR1抗体の重鎖および/または軽鎖の、全てまたは実質的に全ての可変領域配列をコード化する。例えば、これらのポリヌクレオチドのいくつかは、配列番号5または7に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列および/または配列番号6または8に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコード化する。コードの縮重のため、種々の核酸配列が免疫グロブリンアミノ酸配列のそれぞれにコード化され得る。
【0092】
本発明のポリヌクレオチドは、抗hPAR1抗体の可変領域配列のみをコード化し得る。それらはまた、抗体の可変領域および定常領域の両方をコード化し得る。本発明の核酸のいくつかのポリヌクレオチド配列は、配列番号5または7に示される成熟重鎖可変領域配列と実質的に(例えば、少なくとも80%、90%または99%)同一である、成熟重鎖可変領域配列をコードする。いくつかの他のポリヌクレオチド配列は、配列番号6または8に示される成熟軽鎖可変領域配列と実質的に同一である、成熟軽鎖可変領域配列をコード化する。ポリヌクレオチド配列のいくつかは、例示したマウス抗PAR1抗体の1個の重鎖および軽鎖の両方の可変領域を含むポリペプチドをコード化する。いくつかの他のポリヌクレオチドは、マウス抗体の1個の重鎖および軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一である、2個のポリペプチド断片をコード化する。
【0093】
ポリヌクレオチド配列は、抗hPAR1抗体またはその結合断片をコード化する既存の配列(例えば、以下の実施例に記載の配列)の、デノボ固体相DNA合成によるか、またはPCR突然変異導入により製造され得る。核酸の直接的化学合成法は、Narang et al., Meth. Enzymol. 68:90, 1979; the phosphodiester method of Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979; the diethylphosphoramidite method of Beaucage et al., Tetra. Lett., 22:1859, 1981のホスホトリエステル法;および、米国特許番号第4,458,066号の固体支持法のような、当技術分野で公知の方法により達成され得る。PCRによるポリヌクレオチド配列への変異導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNAAmplications, H.A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, NY, 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, CA, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;および、 Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載の通りに行われ得る。
【0094】
本発明はまた、上記の抗hPAR1抗体を製造するための発現ベクターおよび宿主細胞を提供する。種々の発現ベクターが、抗PAR1抗体鎖または結合断片をコードするポリヌクレオチドを発現するために用いられ得る。ウイルスベースおよび非ウイルスベースの発現ベクターの両方が、哺乳動物宿主細胞において抗体を生成するために用いられ得る。非ウイルス性ベクターおよび系には、典型的に、タンパク質またはRNA、およびヒト人工染色体を発現するための発現カセットを含む、プラスミド、エピソーム性ベクターが含まれる(例えば、Harrington et al., Nat Genet 15:345, 1997を参照)。例えば、pthioHis A, B & C, pcDNA3.1/His, pEBVHis A, B & C (Invitrogen, San Diego, CA)、MPSVベクター、および他のタンパク質を発現することが当技術分野で公知の多数の他のベクターを含む非ウイルス性ベクターは、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞において抗hPAR1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に有用である。有用なウイルスベクターには、レトロウイルスに基づくベクター、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクターおよびセムリキ森林熱ウイルス(SFV)が含まれる。Brent et al., supra; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995;および、Rosenfeld et al., Cell 68:143, 1992を参照。
【0095】
発現ベクターの選択は、該ベクターが発現されることを意図される宿主細胞によって変わる。典型的に、発現ベクターは、抗hPAR1抗体鎖または断片をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーターおよび他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含む。いくつかの態様において、誘導プロモーターは、誘導条件下以外での挿入配列の発現を阻止するために用いられる。誘導プロモーターには、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーターまたは熱ショックプロモーターが含まれる。形質転換された生物の培養物は、その発現産物が宿主細胞により耐容性であるコーディング配列の量に捕らわれることなく、非誘導条件下で増大し得る。プロモーターに加えて、他の調節要素もまた、抗hPAR1抗体鎖または断片の効率的な発現に必要なまたは所望であり得る。これらの要素は、典型的に、ATG開始コドンおよび隣接するリボソーム結合部位または他の配列を含む。さらに、発現効率は、使用される細胞系に適するエンハンサーの包含により増大され得る(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20:125, 1994; and Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーは、哺乳動物宿主細胞における発現を増大するために用いられ得る。
【0096】
発現ベクターはまた、挿入された抗hPAR1抗体配列によりコード化されるポリペプチドを含む融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列も提供され得る。多くの場合、該挿入された抗hPAR1抗体配列は、ベクター中に包含される前にシグナル配列と結合される。抗hPAR1抗体の軽鎖および重鎖可変ドメインをコード化する配列を受容するために用いられるべきベクターは、しばしば、定常領域またはその一部分もコードする。かかるベクターは、定常領域との融合タンパク質としての可変領域の発現を可能にし、故に無傷の抗体またはその断片の製造に至る。典型的に、かかる定常領域はヒトである。
【0097】
抗hPAR1抗体鎖を保有し発現するための宿主細胞は、原核または真核細胞であり得る。大腸菌は、本発明のポリヌクレオチドをクローニングおよび発現するのに有用な1種の原核宿主である。使用に適当な他の微生物宿主には、枯草菌のような桿菌、ならびにサルモネラ菌、セラチア菌、および種々の緑膿菌類のような他の腸内細菌が含まれる。これらの原核宿主において、それらは発現ベクターも製造することができ、それらは典型的に、宿主細胞と適合する発現制御配列(例えば、複製起点)を含む。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、またはラムダファージ由来のプロモーター系のような多くの種々の公知のプロモーターが存在し得る。該プロモーターは典型的に、所望によりオペレーター配列と共に発現を制御し、転写および翻訳の開始および完了のためのリボソーム結合部位配列などを有する。酵母のような他の微生物もまた、本発明の抗hPAR1ポリペプチドを発現するために用いられ得る。バキュロウイルスベクターを包含する昆虫細胞もまた、使用され得る。
【0098】
いくつかの好ましい態様において、哺乳動物宿主細胞は、本発明の抗hPAR1ポリペプチドを発現および製造するために用いられる。例えば、それらは、内生の免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株(例えば、実施例に記載の骨髄腫ハイブリドーマクローン)または外生発現ベクターを包含する哺乳動物細胞株(例えば、以下に例示のSP2/0骨髄腫細胞)のいずれかであり得る。これらには、正常に致死性のまたは正常もしくは異常に不死性の動物またはヒト細胞が包含される。例えば、CHO細胞株、種々のCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換したB細胞およびハイブリドーマを含む、無傷の免疫グロブリンを分泌し得る多数の好適な宿主細胞株が、開発されている。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養物の使用は、例えば、Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987に一般的に記載される。哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサー(例えば、Queen et al., Immunol. Rev. 89:49−68, 1986を参照)のような発現調節配列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終了配列のような必須のプロセシング情報部位を含み得る。これらの発現ベクターは通常、哺乳動物遺伝子または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターを含む。適当なプロモーターは、構成的、細胞系特異的、過程特異的、および/または調節もしくは制御可能であり得る。有用なプロモーターには、当技術分野で公知の、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主後期プロモーター、デキサメサゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えば、ヒト前初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーター、およびプロモーター−エンハンサー複合体が含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、宿主細胞タイプによって変わる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは通常、原核細胞に利用され、一方、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションは、他の宿主に用いられ得る(一般的に、上記のSambrook et al.,を参照)。他の方法には、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理、リポソームを介する形質転換、インジェクションおよびマイクロインジェクション、バリスティック法、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸複合体、裸の(naked)DNA、人工ウイルス粒子、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22との融合体(Elliot and O’Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの取り込みを増大する薬剤、およびエクスビボ形質導入が含まれる。長期間、高収率の組換えタンパク質を産生するために、しばしば安定な発現が必要とされ得る。例えば、抗hPAR1抗体鎖または結合断片を安定に発現する細胞株は、ウイルス起源の複製または内生発現要素および選択マーカー遺伝子を含む、本発明の発現ベクターを用いて製造され得る。ベクターの導入後、細胞を富栄養培地中で1−2日間増殖させておき、その後、それらを選択培地に交換する。選択マーカーの目的は、選択に耐性を与えることであり、その存在は、選択培地中で導入配列を成功裏に発現する細胞の増殖を可能にする。耐性の、安定にトランスフェクションされた細胞は、細胞型に適当な組織培養技術を用いて増殖され得る。
【0100】
4.抗hPAR1抗体または抗原結合分子の特性
上記の抗hPAR1抗体または抗原結合分子は、合成され、かつ宿主細胞中の発現ベクターから、またはハイブリドーマ中で内因性に、発現されると、例えば、培養培地および宿主細胞から容易に精製され得る。通常、抗体鎖はシグナル配列と共に発現され、こうして培養培地から放出される。しかしながら、抗体鎖が宿主細胞により自然に分泌されないとき、該抗体鎖は、中性の界面活性剤で処理することにより放出され得る。故に、抗体鎖は、硫酸アンモニウム沈殿法、固定化した標的に対する親和性クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法などを含む常套方法により精製され得る。これらの方法は、全て公知であり、当技術分野で常套的に行われており、例えば、上記のScopes, Protein Purification, Springer−Verlag, NY, 1982;および、Harlow & Laneを参照。
【0101】
一例として、本発明の抗hPAR1抗体を発現する選択されたハイブリドーマは、モノクローナル抗体精製のためにスピナーフラスコ中で増殖され得る。上清は、プロテインA−セファロースまたはプロテインG−セファロースカラムを用いる親和性クロマトグラフィーにより濾過および濃縮され得る。IgG分子は、カラムからの溶出物は、純度を確認するためにゲル電気泳動法および高速液体クロマトグラフィーにより試験され得る。緩衝溶液はPBSに交換され、濃度はOD280リーディングにより決定され得る。モノクローナル抗体は、アリコートに分割され、−80℃で貯蔵され得る。
【0102】
それらの製造方法に関係なく、本発明の抗hPAR1抗体または抗原結合分子は、hPAR1またはその抗原生断片に特異的に結合する。hPAR1またはその抗原性断片への抗体結合の解離定数が、≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦1nMであるとき、特異的結合が存在する。hPAR1に結合する抗体の能力は、目的の抗体を直接標識することにより検出可能であるか、または抗体は標識されずに、結合は種々のサンドイッチアッセイ形式を用いて間接的に検出され得る。例えば、上記のHarlow & Laneを参照。かかる結合特異性を有する抗体は、以下の実施例に記載のマウスまたはキメラ抗hPAR1抗体により示される有利な特性を共有する可能性がある。典型的に、本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子は、少なくとも1×10−1、10−1、10−1、または1010−1の平衡結合定数(K)でPAR1ポリペプチドまたは抗原性断片と結合する。加えて、それらはまた、約1×10−3−1、1×10−4−1、1×10−5−1またはそれ以下の解離反応定数(k)を有し、非特異的抗原(例えば、BSA)への結合に対するその親和性の少なくとも2倍以上の親和性でヒトPAR1に結合する。
【0103】
いくつかの態様において、本発明の抗hPAR1抗体または抗原結合分子は、hPAR1ポリペプチドに対する参照抗hPAR1抗体の結合を阻止するか、またはそれと競合する。該参照抗hPAR1抗体、例えば以下の実施例に記載のマウス抗PAR1抗体またはそのキメラ抗体は、配列番号:5および6または配列番号:7および8に示される重鎖および軽鎖可変領域配列を有し得る。これらは、上記の完全ヒト抗hPAR1抗体であり得る。それらはまた、参照抗体と同じエピトープに結合する、他のマウス、キメラまたはヒト化抗hPAR1抗体であり得る。hPAR1に結合する参照抗体を阻止またはそれと競合する能力は、抗hPAR1抗体または抗原結合分子が、試験下で、参照抗体により定義される同じもしくは同様のエピトープ、または参照抗hPAR1抗体により結合されるエピトープに十分に近位であるエピトープ、に結合することを示す。かかる抗体は、とりわけ参照抗体について同定された有利な特性を共有する可能性がある。参照抗体を阻止またはそれと競合する能力は、例えば、競合結合アッセイにより決定され得る。競合結合アッセイについて、抗体は、試験下で、共通の抗原(例えば、PAR1ポリペプチド)または抗原上のエピトープに対する参照抗体の特異的結合を阻止する能力について試験される。供試抗体は、過剰量の供試抗体が参照抗体の結合を実質的に阻止するとき、抗原またはエピトープに特異的に結合するため参照抗体と競合する。実質的阻害は、供試抗体が、参照抗体の特異的結合を通常、少なくとも10%、25%、50%、75%または90%減少することを意味する。
【0104】
ヒトPAR1との結合に関して、供試抗hPAR1抗体または抗原結合分子と参照抗hPAR1抗体との競合を評価するために用いられ得る、多くの公知の競合結合アッセイが存在する。これらには、例えば、固相直接的または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接的または間接的酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242−253, 1983を参照);固相直接的ビオチン−アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614−3619, 1986を参照);固相直接的標識アッセイ、固相直接的標識サンドイッチアッセイ(上記のHarlow & Laneを参照);I−125標識を用いる固相直接的標識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25:7−15, 1988を参照);固相直接的ビオチン−アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546−552, 1990);および、直接的標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77−82, 1990)が含まれる。典型的に、かかるアッセイは、固体表面に結合される純粋な抗原または抗原を担持する細胞、標識していない供試抗hPAR1抗体および標識参照抗体の使用を含む。競合的阻害は、供試抗体の存在下で、固体表面または細胞に結合される標識の量を決定することにより測定される。通常、供試抗体は、過剰に存在する。競合アッセイ(競合抗体)により同定される抗体には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および立体障害が起こるため参照抗体により結合されるエピトープに十分近位の隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。
【0105】
供試抗PAR1抗体または抗原結合分子および参照抗PAR1抗体が、ユニークエピトープに結合するか否かを決定するため、各抗体は、市販の試薬(例えば、Pierce, Rockford, ILの試薬)を用いてビオチニル化され得る。非標識モノクローナル抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を用いる競合試験は、PAR1ポリペプチドコートしたELISAプレートを用いて行われ得る。ビオチニル化MAb結合は、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼプローブで検出され得る。精製抗PAR1抗体のイソ型を決定するために、イソ型ELISAが行われ得る。例えば、マイクロタイタープレートのウェルは、1μg/mlの抗ヒトIgGを4℃で一晩用いてコートされ得る。1%BSAでブロッキング後、プレートを、環境温度で1ないし2時間、1μg/ml未満のモノクローナル抗hPAR1抗体または純粋なイソ型対照と反応させる。その後、ウェルを、ヒトIgG1またはヒトIgMのいずれかに特異的なアルカリホスファターゼ結合プローブと反応させ得る。その後、プレートを、精製抗体のイソ型が検出され得るように、処理および分析する。
【0106】
hPAR1ポリペプチドを発現する生存細胞に対するモノクローナル抗hPAR1抗体または抗原結合分子の結合を決定するため、フローサイトメトリーを用い得る。簡単には、hPAR1を発現する細胞株(標準的増殖条件下で増殖させる)を、0.1%BSAおよび10%ウシ胎仔血清を含むPBS中、種々の濃度の抗hPAR1抗体と混合し、37℃で1時間インキュベートし得る。洗浄後、該細胞を、一次抗体染色と同条件下で、フルオレセイン標識抗ヒトIgG抗体と反応させる。該サンプルを、単一細胞に対して関門をなす光散乱および側方散乱特性を用いるFACScan装置により分析し得る。蛍光顕微鏡を用いる別のアッセイを、フローサイトメトリーアッセイ(に加えて、またはそれに代えて)用い得る。細胞を上記の取り染色し、蛍光顕微鏡により試験することができる。
【0107】
本発明の抗hPAR1抗体は、免疫ブロッティングによりhPAR1ポリペプチドまたは抗原性断片との反応性をさらに試験され得る。簡単には、精製hPAR1ポリペプチドもしくは融合タンパク質、またはPAR1を発現する細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い得る。電気泳動後、該単離した抗原を、10%ウシ胎仔血清でブロッキングされたニトロセルロース膜に転写し、試験すべきモノクローナル抗体でプローブする。ヒトIgG結合は抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出され、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem. Co., St. Louis, MO)を開発し得る。
【0108】
5.治療適用および医薬組成物
本明細書に記載の抗hPAR1抗体または抗原結合分子は、PAR1シグナル伝達活性を阻害することにより多くの治療または予防適用に用いられ得る。治療適用において、抗hPAR1アンタゴニスト抗体または抗原結合分子(例えば、ヒト化抗hPAR1抗体)を含む組成物は、PAR1シグナル伝達により仲介される、それにより引き起こされる、またはそれと関係する疾患または状態を既に有する対象に投与される。該組成物は、該状態およびその合併症の進行を阻止、部分的に停止、または検出可能に遅延するのに十分量の抗体または抗原結合分子を含む。
【0109】
予防適用において、抗hPAR1抗体または抗原結合分子を含む組成物は、PAR1−シグナル伝達関連障害をまだ有さない患者に投与される。むしろ、それらは、かかる障害を発症する危険がある、または発症しやすい対照を対象とする。かかる適用は、耐用に、患者の耐容性の増大またはPAR1シグナル伝達により仲介される障害の進行の遅延を可能にする。
【0110】
多数の疾患状態が、異常な、または異常に高いPAR1仲介細胞内シグナル伝達により仲介される。異常に高いPAR1仲介細胞内シグナル伝達は、例えば、異常に高濃度の活性化プロテアーゼ(例えば、トロンビン)または異常に高いPAR1の細胞表面発現レベルへの受容体の暴露により、引き起こされ得る。PAR1の阻害は、血栓性または血管増殖性障害の処置、ならびに癌の進行阻止に有用である。例えば、Darmoul, et al., Mol Cancer Res (2004) 2(9):514-22、およびSalah, et al, Mol Cancer Res (2007) 5(3):229-40を参照。PAR1の阻害はまた、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)および潰瘍性大腸炎を含む慢性腸炎疾患;ならびに、肝臓線維症および肺線維症を含む線維性障害の予防または阻止における使用を見出される。例えば、 Vergnolle, et al., J Clin Invest (2004) 114(10):1444; Yoshida, et al, Aliment Pharmacol Ther (2006) 24(Suppl 4):249; Mercer, et al., Ann NY Acad Sci (2007) 1096:86−88; Sokolova and Reiser, Pharmacol Ther (2007) PMID:17532472を参照。
【0111】
本発明の抗PAR1抗体または抗原結合分子により阻止または予防され得る癌には、癌腫を含む上皮性癌;神経膠腫、中皮腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、頚部癌、グリア芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、およびバーキット・リンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞性肺癌、小細胞肺癌、食道の癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢の癌、小腸の癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、頚部癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌癌、カルチノイド癌、骨癌、皮膚癌、網膜芽腫、多発性骨髄腫、ホジキン・リンパ腫、および非ホジキン・リンパ腫(さらなる癌種については、CANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE (DeVita, V.T. et al. eds 1997)を参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
PAR1の阻害はまた、異常な、または異常に高いPAR1発現または細胞内シグナル伝達により仲介され得るか、または仲介され得ない疾患状態の予防または阻止における使用も見出される。例えば、PAR1の阻止は、心筋、腎臓、脳および腸虚血再かん流傷害を含む、虚血再かん流傷害を予防または阻止するのに有用である。例えば、Strande, et al., Basic Res. Cardiol (2007) 102(4):350−8; Sevastos, et al., Blood (2007) 109(2):577−583; Junge, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) 100(22):13019−24 and Tsuboi, et al., Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol (2007) 292(2):G678−83を参照。PAR1細胞内シグナル伝達の阻止はまた、細胞のヘルペス単純ウイルス(HSV1およびHSV2)感染を阻止するためにも用いられ得る。Sutherland, et al., J Thromb Haemost (2007) 5(5):1055−61を参照。
【0113】
本発明は、薬学的に許容される担体と共に剤形された抗hPAR1抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。該組成物は、所定の障害を処置または予防するのに適する他の治療剤をさらに含み得る。薬学的な担体は該組成物を増強するか、安定化するか、または該組成物の製造を容易にする。薬学的に許容される担体には、生理的に適合性の、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などが含まれる。
【0114】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の種々の方法により投与され得る。投与の経路および/または投与方法は、所望の結果によって変わる。静脈内、筋肉内、腹腔内もしくは皮下投与、または標的部位の近位に投与されることが好ましい。薬学的に許容される担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または注入による)に適するべきである。投与経路によって、活性化合物、すなわち二重特異性かつ多重特異性分子である抗体は、化合物を不活性化し得る酸および他の自然条件の作用から該化合物を保護するための物質でコーティングされ得る。
【0115】
いくつかの態様において、該組成物は、滅菌液体である。適当な流動性が、例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散体の場合に必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持され得る。多くの場合に、該組成物中に、等張剤、例えば糖類、マンニトールまたはソルビトールのようなポリアルコール類、ならびに塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期間吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に包含することによりもたらされ得る。
【0116】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知かつ常用の方法により製造され得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000; および、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的に、抗hPAR1抗体の治療的有効用量または効果用量が本発明の医薬組成物に用いられる。抗hPAR1抗体は、当業者に公知の常套方法により薬学的に許容される投与量形態に剤形される。投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラス投与が可能であり、いくつかの分割用量は長期間投与され得るか、または該用量は、急迫した治療状況で示されるように比例的に減少または増加され得る。それは、とりわけ投与の簡易性および投与量の均一性のため単位投与量形態に非経腸組成物を剤形化するのに有利である。本発明で用いる単位投与量形態は、処置されるべき対象に対して単一投与量として適する物理的に不連続な単位を意味する;各単位は、必要な薬学的担体と共に所望の治療的効果を生じることが計算された、予め決定した量の活性化合物を含む。
【0117】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法について、患者に毒性を示すことなく所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変えられ得る。選択した投与量レベルは、用いる本発明の特定の組成物、そのエステル、塩またはアミドの活性を含む種々の薬物動態学的因子、投与経路、投与時間、用いられるべき特定の化合物の排出速度、処置期間、用いられる特定の組成物と併用される他の薬剤、化合物および/もしくは物質、処置されるべき患者の年齢、性別、体重、状態、全身的健康および既往歴などの因子により変わる。
【0118】
医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するのに要されるより少ないレベルの医薬組成物を用いて本発明の抗体の投与を開始することができ、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加し得る。一般的に、本発明の組成物の有効用量は、処置されるべき特定の疾患または状態、投与手段、標的部位、患者(ここで、患者はヒトまたは動物である。)の生理的状態、投与される他の薬剤を含む、多くの異なる因子により変わる(ここで、処置は、予防的または治療的である。)。処置剤投与量は、最適な安全性および効果まで漸増される必要がある。抗体の投与について、投与量は、宿主体重1kgあたり、約0.0001ないし100mg、より通常、0.01ないし5mgの範囲である。例えば、投与量は、体重1kgあたり、1mgもしくは10mg、または1−10mgの範囲内であり得る。例示的処置レジメンは、2週毎に1回または1月に1回または3ないし6月毎に1回の投与を含む。
【0119】
抗体は通常、複数回投与される。1回投与間の間隔は、週、月または年単位であり得る。間隔はまた、患者の抗hPAR1抗体の血中レベルを測定することにより示される通り不規則であり得る。いくつかの方法において、投与量は、1−1000μg/ml、いくつかの方法において25−300μg/mlの血漿中抗体濃度を達成するために調整される。あるいは、抗体は、持続放出製剤として投与されることができ、その場合、投与頻度を少なくする必要がある。投与量および回数は、患者における抗体の半減期により変わる。一般的に、ヒト化抗体は、キメラ抗体および非ヒト抗体の半減期よりも長い半減期を示す。投与量および投与回数は、処置が予防的かまたは治療的かどうかによって変わり得る。予防的適用のとき、比較的低い投与量が、比較的低頻度の長期間の間隔で投与される。数名の患者は、彼らの余生の間、処置を受け続ける。治療的適用のとき、比較的短い間隔での比較的高い投与量は、疾患の進行が縮小されるか、または終了されるまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、数回必要とされる。それ以降、該患者は、予防レジメンで投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16および6E11.H6.A9の可変領域のヌクレオチド配列を示す(配列番号1−4)。CDR領域は、下線の残基により示される。フレームワーク領域は、他の残基により示される。
【図2】図2は、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16および6E11.H6.A9の可変領域のアミノ酸配列を示す(配列番号5−8)。下線の配列はCDR領域を示し、他の配列部分はフレームワーク領域を示す。
【図3】図3は、HUVEC細胞によるIL−8のトロンビン刺激された分泌が、マウス抗hPAR1抗体クローン4E7.J14.L16または6E11.H6.A9により阻害されることを示す。
【図4】図4は、カルシウム流動(FlipR)アッセイにおいて測定された、クローン4E7.J14の強力なアンタゴニスト活性を説明する。
【図5】図5は、カルシウム流動(FlipR)アッセイにおいて測定された、クローン6E11.H6の強力なアンタゴニスト活性を説明する。
【実施例】
【0121】
実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の他の変形は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲により包含される。
【0122】
実施例1 マウス抗hPAR1アンタゴニスト抗体の作製
本実施例は、マウス抗hPAR1アンタゴニスト抗体の作製を記載する。Bcl2 Wehi22マウスは、ヒトPAR1(AA#27−102)/チオレドキシン融合タンパク質で免疫された。該免疫化は、18日間に8回行われた。B細胞を末梢リンパ節から単離し、F0骨髄腫細胞(ATCC、Manassas, VA)と融合させた。抗体産生は、hPAR1/チオレドキシン融合タンパク質に対するELISAによりスクリーニングされた。hPAR1を特異的に認識する抗体を産生する全10クローンが得られた。hPAR1抗体の細胞表面のPAR1への結合は、HT29細胞(PAR1陽性)およびcolo205細胞(PAR1陰性)での細胞ELISAを用いて分析された。簡単には、細胞をハイブリドーマ培養上清と共にインキュベートし、次いでHRP結合抗マウスIgGと共にインキュベートした。TMB基質(KPL、Gaithersburg, MD)を添加し、20分後に、ウェルを硫酸(2N)を用いて酸性化し、色を450nmで測定した。10クローンのうち5個のハイブリドーマクローンが、細胞表面受容体に結合可能であったという結果が示された。
【0123】
細胞結合陽性クローンの各々からモノクローナル抗体(mAb)を精製した。簡単には、血清不含有成らし培地を、タンパク質G樹脂(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)で精製した。加えて、10個の抗体産生クローンを限界希釈によりサブクローニングして、得られたクローンを、ELISAおよび細胞ELISAによりPAR1結合について評価した。機能的サブクローンを、下記の通り、機能性についてさらに評価した。
【0124】
hPAR1依存性カルシウム流動アッセイは、機能的hPAR1アンタゴニスト抗体についてスクリーニングするために用いられた。トロンビンは、PAR1のN末端ドメインを切断し、適当な15アミノ酸を除去することが知られている。係留リガンドを意味する残りのN末端ドメインは、PAR1仲介シグナル伝達の開始に関与する。細胞において迅速かつ一時的なカルシウム流動もたらすトロンビンによるPAR−1のこの切断は、市販試薬(Molecular Devices)を用いて測定され得る。具体的には、精製抗体は、HT−29、HCT−116およびDU145細胞で、トロンビン処理後のカルシウム流動を阻害するそれらの能力について評価された。FlipR色素(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)中細胞を、タンパク質G精製抗体と共に予め1時間インキュベートし、Ca2+流動を種々の濃度のトロンビンで誘導した。結果は、2個のクローン(4E7.J14および6E11.H6)それぞれ由来のサブクローンが強力なアンタゴニスト活性を示したことを示す。FlipRアッセイはまた、DU145およびHCT116細胞の両方を用いて機能的クローンでも行われた。両細胞株は、機能的抗体アンタゴニストの活性が認められた。
【0125】
アンタゴニストの機序を評価するため、抗体は、トロンビンによる切断後にPAR1受容体に結合するそれらの能力についても試験された。PAR1/チオレドキシンは、トロンビンで完了まで切断された。トロンビンを中和後、等量の完全長PAR1/チオレドキシンタンパク質を添加した。抗体をタンパク質Gに結合させ、免疫化抗体を用いて、切断した/完全長PAR1融合タンパク質混合物を免疫沈殿させた。該樹脂を単離し、洗浄し、捕捉したタンパク質をSDS−PAGEにより同定した。評価されたクローンのうち3個は、2個の機能的クローン4E7および6E11を含む、チオレドキシン融合タンパク質に隣接したPAR1部分に結合可能であった。PAR1のこのドメインは、トロンビン切断後に細胞表面に残る代表的な係留リガンドである。結果はまた、PAR1のトロンビン切断を阻止するが、係留リガンドへの結合に失敗した抗体が、FlipRアッセイにおいてより弱い能力であったことを示す。故に、機能的活性に十分ではないが、係留リガンドへの結合は必要であることが明らかである。
【0126】
2個の機能的抗体領域である重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、RT−PCRによりクローン化された。両クローン(4E7.J14.L16および6E11.H6.A9)の重鎖および軽鎖の可変領域の同定に用いたプライマーの配列は、同一であり、下記の通りである。VHのためのプライマーは、(1)HV1:GGGTCTAGACACCATGGRATGSAGCTGKGTMATSCTCTT(配列番号33)および(2)H−定常:GCGTCTAGAAYCTCCACACACAGGRRCCAGTGGATAGAC(配列番号34)である。VLのためのプライマーは、(1)LV5:GGGTCTAGACACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGDNA(配列番号35)および(2)L−定常:GCGTCTAGAACTGGATGGTGGGAAGATGG(配列番号36)である。
【0127】
簡単には、全RNAを単離した。RT−PCRを、重鎖または軽鎖可変領域の何れかのシグナル配列に対するフォワードプライマー、ならびに重鎖CH1領域または軽鎖カッパ定常領域に対するリバースプライマーを用いて行った。PCR産物を、シークエンシングのためにpCRIIまたはpcDNA3.1/V5−His−TPOP−TAベクター中にクローニングした。その後、これらの抗体クローンの重鎖および軽鎖可変領域配列のポリヌクレオチド配列を、決定した(図1)。可変領域の対応するアミノ酸配列を図2に示した。また、上記のKabatらの番号付けシステムにより推定されたCDR領域およびフレームワーク領域も、図2に示した。
【0128】
実施例2 キメラ抗hPAR1抗体の作製
本実施例は、キメラ抗hPAR1抗体の作製および特性化を記載する。該キメラ抗体には、上記のウス抗hPAR1抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン由来の定常領域が含まれる。
【0129】
キメラ抗体の作製のため、ヒトPAR1クローンに対するマウス抗体の可変領域を、カセットベクター中にクローニングするために設計されたプライマーを用いて再PCRした。その後、それらを、ヒト免疫グロブリンリーダー配列、J−断片およびスペーサー−ドナーシグナルをインフレームで融合して含むカセットベクター中にそれぞれクローン化した。その後、該配列を、ヒト免疫グロブリン定常領域、重鎖上のネオマイシン選択、軽鎖上のdhfr選択、およびメトトレキサートを用いる遺伝子増幅を含む哺乳動物発現ベクター中に移した。
【0130】
キメラIgG1重鎖およびカッパ軽鎖のDNAプラスミドを、SP2/0骨髄腫細胞中に共にエレクトロポレーションした。該細胞をジェネテシンで選択し、ジェネテシンおよびメトトレキサートを含む増殖培地中で培養および増幅させた。細胞を抗体精製のために血清不含有培地中に入れた。トランスフェクトしたSP2/0細胞から分泌されたキメラIgG1抗体を精製した。精製したキメラIgG1抗体のアンタゴニスト活性を、マウス抗hPAR1抗体のFlipRアッセイと同様に試験し得た。該試験は、キメラ抗hPAR1抗体が、マウスIgG1抗体のアンタゴニスト活性と同様のアンタゴニスト活性を示すことを明らかにし得る。
【0131】
実施例3 抗hPAR1抗体は、トロンビンにより仲介されるIL−8分泌を阻害する
本実施例は、抗hPAR1アンタゴニスト抗体による、HUVECからのトロンビン仲介IL−8分泌の阻害を記載する。細胞をトロンビンに一晩暴露し、その結果、培地に分泌されたIL−8の上昇がもたらされた。抗体は、トロンビン処置の1時間前に添加された。ELISAにより測定された結果を図3に示す。図に示す通り、2個のマウス抗hPAR1抗体が、トロンビンで処理されたHUVECからのIL−8分泌における増加を全て阻害し得た。
【0132】
本明細書に記載の実施例および態様は例示の目的のみのものであり、それらに照らして種々の修飾または変形が当業者に示唆されており、これが本出願および添付の特許請求の範囲内に包含されることが理解される。本明細書に引用する文献、特許および特許出願は全て、全ての目的に関して引用により本明細書中に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子であって、該エピトープが、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)を含み、該抗体または抗原結合分子がPAR1アンタゴニストである、抗体または抗原結合分子。
【請求項2】
配列番号21、配列番号22もしくは配列番号23の重鎖相補性決定領域(CDR)配列;または、配列番号24、配列番号25もしくは配列番号26の軽鎖CDR配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項3】
それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項4】
配列番号27、配列番号28もしくは配列番号29の重鎖相補性決定領域(CDR)配列;または、配列番号30、配列番号31もしくは配列番号32の軽鎖CDR配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項5】
それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項6】
(i)配列番号5と少なくとも85%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号6と少なくとも85%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列、または(ii)配列番号7と少なくとも85%同一である重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号8と少なくとも85%同一である軽鎖可変領域アミノ酸配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項7】
(i)配列番号5の重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号6の軽鎖可変領域アミノ酸配列、または(ii)配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列、を含む、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項8】
マウス抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項9】
モノクローナル抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項10】
キメラ抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項11】
ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域を含む、請求項10記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項13】
ヒト抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項14】
一本鎖抗体である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項15】
Fab断片である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項16】
ヒトフィブロネクチン・タイプIIIドメイン由来の骨格を含むミニボディ(monobody)である、請求項1記載の抗体または抗原結合分子。
【請求項17】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子をコード化する単離または組換えポリヌクレオチドであって、該エピトープが、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)を含み、該抗体または抗原結合分子がPAR1アンタゴニストである、ポリヌクレオチド。
【請求項18】
該抗体または抗原結合分子がヒト抗体である、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
該抗体または抗原結合分子が、(i)それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;または、(ii)それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
該抗体または抗原結合分子が、(i)配列番号5の成熟領域(mature region)と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号6の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列;または、(ii)配列番号7と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号8と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域アミノ酸配列、を含む、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
該抗体または抗原結合分子が、(i)配列番号5の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号6の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列;または、(ii)配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列、を含む、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
DNAである、請求項17記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
(1)請求項1記載の抗体または抗原結合分子の重鎖をコード化する第一の組換えDNA断片、および(2)該抗体または抗原結合分子の軽鎖をコード化する第二の組換えDNA断片を含む、単離宿主細胞であって、該DNA断片が、第一および第二プロモーターにそれぞれ作動可能に結合され、該宿主細胞中で発現され得る、宿主細胞。
【請求項24】
該抗体または抗原結合分子が、ヒトモノクローナル抗体である、請求項23記載の宿主細胞。
【請求項25】
該抗体または抗原結合分子が、(i)それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;または、(ii)それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む、請求項23記載の宿主細胞。
【請求項26】
該抗体または抗原結合分子が、(i)配列番号5の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号6の成熟領域と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域配列;または、(ii)配列番号7と少なくとも90%同一である成熟重鎖可変領域アミノ酸配列、および配列番号8と少なくとも90%同一である成熟軽鎖可変領域アミノ酸配列、を含む、請求項23記載の宿主細胞。
【請求項27】
該抗体または抗原結合分子が、(i)配列番号5の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号6の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列;または、(ii)配列番号7の成熟領域と同一である成熟重鎖可変領域配列、および配列番号8の成熟領域と同一である成熟軽鎖可変領域配列、を含む、請求項23記載の宿主細胞。
【請求項28】
非ヒト哺乳動物細胞株である、請求項23記載の宿主細胞。
【請求項29】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子を含む医薬組成物であって、該エピトープが、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)を含み、該抗体または抗原結合分子がPAR1アンタゴニストである、医薬組成物。
【請求項30】
それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗体を含む、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗体を含む、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項32】
ヒトPAR1のエピトープに特異的に結合する抗体または抗原結合分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態の症状を改善する方法であって、該エピトープが、アミノ酸配列SFLLRNPNDKYEPFWEDEEKNESGLTE(配列番号38)を含み、該抗体または抗原結合分子がPAR1アンタゴニストである、方法。
【請求項33】
それぞれ配列番号21、配列番号22および配列番号23である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号24、配列番号25および配列番号26である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗体を投与することを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
それぞれ配列番号27、配列番号28および配列番号29である、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列;ならびに、それぞれ配列番号30、配列番号31および配列番号32である、軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列、を含む抗体を投与することを含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態が、慢性炎症性腸疾患である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態が、線維性障害である、請求項32記載の方法。
【請求項37】
PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態が、PAR1を過剰発現する癌である、請求項32記載の方法。
【請求項38】
PAR1を介する異常な細胞内シグナル伝達により仲介される疾患状態が、虚血再かん流傷害である、請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−503381(P2010−503381A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520838(P2009−520838)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/016380
【国際公開番号】WO2008/011107
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】