プロテアーゼ活性阻害剤の同定とプロテアーゼ活性の存在を測定するための方法
本発明は、プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を同定するためのシステムを提供する。本システムは、少なくとも2つの構成要素を有する。第1の構成要素は、少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を含むレポーターコンストラクトであり、これらはすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している。第2の構成要素は、核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤である。本システムは、プロテアーゼ基質ドメインに対するプロテアーゼ活性に影響を及ぼす薬剤の検出と評価を可能にする。また、本システムは、環境試料中におけるプロテアーゼの存在の検出を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、プロテアーゼ阻害剤同定検定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは生物学的プロセスに重要な役割を果たす。しかしながら、プロテアーゼはまた生物学的システム、特にウィルス、毒素、及び、病原微生物により配達されたシステムに重大な害を及ぼす。プロテアーゼ阻害剤を開発し、特に細胞でのプロテアーゼ活性を検定する方法はバイオテクノロジーの重要な分野である。例えば、ボツリヌス神経毒素(BoNTs)は最も効力がある既知の毒素である(S.S. Arnon, R. Schechter, et al. Jama 285:1059-70. (2001)、及び、B.M. Paddle. J Appl Toxicol 23:139-70. (2003))。ボツリヌス中毒症は、細菌クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)で汚染された食物の摂取、開放創での該細菌のコロニー形成、又は、該毒素の摂取、若しくは、呼吸が原因となって引き起こされうる。これらの毒素は軍人、及び、文民の両方の集団に対する深刻な脅威である(S.C. Clarke. Br J Biomed Sci 62:40-6 (2005)、R.P. Hicks, M.G. Hartell, et al. Curr Med Chem 12:667-90 (2005)、D. Josko. Clin Lab Sci 17:30-4 (2004))。ヒトにおけるボツリヌス毒素の致死量は体重1kg当たり1ng以下である(J.C. Burnett, E.A. Henchal, et al. Nat Rev Drug Discov 4:281-97 (2005)、J.C. Burnett, J. J. Schmidt, et al. Bioorg Med Chem 13:333-41 (2005)、B.M. Paddle J Appl Toxicol 23:139-70 (2003))。疾病管理防止センター(The Centers fo Disease Control and Prevention)はこれらの毒素をA分類(最優先)のバイオ脅威剤(bio−threat agents)として記載してきた。BoNTsは危険ではあるが、有益な医療化合物として認識されてきた。BoNTsは、今では、ある範囲の病気、及び、美容で用いられる確立したバイオ治療薬であり、国内、及び、海外でますます大量に生産されている(R. Bhidayasiri, and D.D. Truong, J Neurol. Sci.235:1-9 (2005)、C.L. Comellaand and S.L. Pullman. Muscle Nerve 29:628-44 (2004)、K.A. Foster. Drug Discov Today 10:563-9 (2005)、R.G. Glogau. Clin J Pain 18:S191-7 (2002)、J.D. Marks. Anesthesiol Clin North America 22:509-32, vii. (2004)、C. Montecucco and J. Molgo. Curr Opin Pharmacol 5:274-9 (2005))。それらの有益性の良くないの結果は、該神経毒が悪用の為にますます入手しやすくなったことである。同様に、使用の増加は、治療中の意図せぬ有害作用発生の可能性を上昇させる(T.R. Cote, A.K. Mohan, et al. J Am Acad Dermatol 53:407-15 (2005))。
【0003】
いったん、肺に吸入されると、又は、胃腸管に摂取されると、BoNTsは呼吸上皮、又は、粘膜を越えて血流に経細胞輸送され、それらは、末梢コリン茶道性シナプス前神経終末に結合して入り込む前に、細胞間隙に入り込むことができる。いったん、神経細胞が冒され横隔膜の筋肉が機能を停止すると、救命医療機械的人工呼吸が、現在のところ、唯一の治療上の選択肢である。しかしながら、内部移行したBoNTsの効果は数カ月にわたることができる(R. Eleopra, V. Tugnoli, et al. Neurosci Lett 256:135-8 (1998)、F.A. Meunier, G. Lisk, et al. Mol Cell Neurosci 22:454-66 (2003))。それ故、限られた数の個体が同時に冒されても、長期にわたる人工呼吸は非現実的であろう。
【0004】
異なる三次構造とかなりの配列の相違を所有する七種のBoNT血清型(A−G)が存在する。構造的に、各血清型は100KDaの重鎖(HC)と50KDaの軽鎖(LC)から成る。それらは、最初、一本のポリペプチド鎖として合成され、それは、細菌の、又は、宿主のプロテアーゼによって切断される。前記のポリペプチド鎖は、神経標的細胞の還元的な細胞質環境に到達するまで、ジスルフィド結合によって連結されたままである(D.B. Lacy, W. Tepp, et al. Nat Struct Biol 5:898-902 (1998). L.L. Simpson. Annu Rev Pharmacol Toxicol 44:167-93 (2004))。軽鎖は亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。
【0005】
いったん、肺に吸入されると、又は、胃腸管に摂取されると、BoNTsは呼吸上皮、又は、粘膜を越えて血流に経細胞輸送され、それらは、末梢コリン茶道性シナプス前神経終末に結合して入り込む前に、細胞間隙に入り込むことができる。重鎖は、神経細胞に結合し、軽鎖を重鎖のカルボキシ末端半分(HCC)を介して細胞質へ輸送し、重鎖のアミノ末端半分(HCN)により形成された孔を通ってエンドソームから細胞質へ軽鎖を輸送することによるタンパク質分解性軽鎖の輸送システムとして働く。各BoNT血清型は、神経筋接合部でのアセチルコリン含有小胞の融合と放出に責任があるSNAREタンパク質の構成要素を切断するプロテアーゼである(B.R. Singh. Nat Struct Biol 7:617-9 (2000)、K.J. Turton, A. Chaddock, and K.R. Acharya, Trends Biochem. Sci. 27:552-8 (2002))。BoNT血清型A及びBoNT血清型EはSNAP−25(シナプトソーム結合タンパク質(25KDa))を切断する(T. Binz, J. Blasi, et al. J Biol Chem 269:1617-20 (1994))。血清型B、D、F、及び、GはVAMP(小胞結合膜タンパク質、シナプトブレビンおよびVAMP‐2とも称される)を切断する(G. Schiavo, F. Benfenati, et al. Nature 359:832-5 (1992)、G. Schiavo, C. Malizio, et al. J. Biol. Chem. 269:20213-6 (1994)、G. Schiavo, O. Rossetto, et al. J Biol Chem 268:23784-7 (1993)、G. Schiavo, C. C. Shone, et al. J Biol Chem 268:11516-9 (1993)、J.J. Schmidt, and R. G. Stafford. Biochemistry 44:4067-73 (2005))。血清型CはSNAP−25とシンタキシン1Aの両方を切断する(J. Blasi, E.R. Chapman, et al. Embo J 12:4821-8 (1993))。SNAREのBoNT介在性切断は、運動ニューロンが神経筋接合部でのアセチルコリンを放出するのを妨害すること、および、同様にアセチルコリン放出の抑制を介して自律神経の機能をさえぎることによる弛緩麻痺という結果になる。いったん、横隔膜の筋肉が冒されると、呼吸が損なわれ、究極的には窒息することになる。
【0006】
7種類のBoNT血清型のアミノ酸配列はかなり異なる。しかしながら、前記の異なる血清型は全体的に類似した折り畳み方をとり、触媒中心の局面は保存されている(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Trends Mol Med 11:377-81 (2005))。BoNT/A及びBoNT/B のX線結晶構造は、これら二種類の血清型の亜鉛結合部位の8オングストローム内の領域は、22残基の内17残基同一であるほど高度に相同である(S. Swaminathan & S. Eswaramoorthy, Nature Structural Biology 7:693-699 (2000))。しかしながら、BoNT/BよりもBoNT/Aでよりかなり深く埋め込まれている亜鉛結合ポケットを含む15オングストローム内ではかなりの変化が観察される。それ故、広範囲の潜在的阻害剤ではありえないほど、前記の血清型の間で活性部位は十分に異なる。さらに、結合すると、基質は、BoNT軽鎖の外周を包み込み、異常に大きい基質酵素境界面を作り出す(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Nature 432:925-9 (2004))。BoNTの基質特異性はまた、「非活性部位」結合と呼ばれる、活性サイト遠位部位を渡る長い基質/軽鎖プロテアーゼ境界面上のBoNTの基質との結合によって決定される(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Trends Mol Med 11:377-81 (2005))。
【0007】
ワクチン法がBoNTに対する生物テロ防御で役割を果たすであろう(M.P. Byrne and L.A. Smith. Biochimie 82:955-66 (2000)、J.B. Park and L.L. Simpson. Expert Rev Vaccines 3:477-87 (2004))。しかしながら、BoNTへの曝露の前に、BoNTの同定と危険にさらされている大集団の人間へのワクチン接種は問題である。有効な曝露後処置である治療法の開発が必須である。低分子量非ペプチド阻害剤は、曝露後治療薬の開発にとり最善の機会を提供する。前記の経路の後の段階、及び、特定のタンパク質分解段階をさえぎることは曝露後の治療にとり望ましい。そのような化合物は中毒になっているニューロンの細胞質に入り込むことができねばならないであろうし、特異的に作用しなくてはならないであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を同定するためのシステムを提供する。本システムは、少なくとも2つの成分を有する。第1の成分は、少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を有するレポーターコンストラクトであり、これらはすべて、転写活性化剤と機能的に連携してレポーター遺伝子を発現するために、機能的に連結している。第2の成分は、核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤である。本システムは、プロテアーゼ基質ドメインに対するプロテアーゼ活性に作用する作用物質の発見と評価を行うことができる。また、本システムは、転写活性化剤のプロテアーゼ基質ドメインを特異的に切断する少なくとも1つのプロテアーゼ又はプロテアーゼ候補を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の別の好適な実施形態は、上述のシステムを用いてプロテアーゼ阻害剤を同定する方法である。本発明のさらに別の実施形態では、上述のシステムを用いて環境サンプル中のプロテアーゼの存在を確認する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の多くの利点は、下記図面を参照することで、当業者にとってより理解しやすいものとなる:
【図1】図1A及び1Bは、本発明の1つの実施形態に従って作製された3つのコンストラクトと、それらの他の分子との相互作用を示す模式図であり、プロテアーゼ存在下でのレポーターの転写シグナルの変化を評価するためのものである。1つのコンストラクトは、転写活性化剤(「TA」)を提供する。TA剤は、結合ドメイン(「BD」)、プロテアーゼ基質(「PS」)ドメイン、及び転写活性化ドメイン(「AD」)を含む。第2のコンストラクトは、プロテアーゼコンストラクト(「PC」)である。PCは、プロモーター、TetOなどのレギュレーター配列、及び、TAのPCをタンパク質分解活性で切断するプロテアーゼの配列を含む。第3のコンストラクトは、レポーターコンストラクト(「RC」)である。1つの好適な実施形態のRCは、転写プロモーター領域とレポーター遺伝子を含む。転写プロモーター領域は、少なくとも2つの構成要素を含む:TA剤のBDドメインに機能的に対応する少なくとも1つの結合部位(「BS」)配列、及び、少なくとも1つのTATAボックス配列を有する最小プロモーター領域。この図に示すシステムは、PCのプロテアーゼがPSを切断した場合、転写が停止し、シグナルが減少することから、「切断オフ」システムと呼ばれる。
【図2】図2A及び2Bは、図1A及び1Bで概略を説明した3つのコンストラクトの概略図であり、説明/典型例として、TA剤の一部として示されているドメインは:Gal4オペロンの転写因子に由来するBD、PSはVAMP2(アミノ酸25〜94)又はSNAP25(アミノ酸104〜206)のいずれか、そして、ADは核内因子κB(「NFκB/AD」)である。図1BにおいてRCの一部として示されている構成要素は:TA剤のGal4 BDに対応する少なくとも1つのBSからなるプロモーター、及び、TATAボックスを含む最小アデノウイルスプロモーター領域である(E.D. Lewis, J.L. Manley, Mol.Cell Biol. 5: 2433-2442 (1985))。PCは、発現を調節するためのTetO配列を有するCMVプロモーターと、BoNT/Aの軽鎖を発現するためのSBP−CFP−BoNT/LC−A配列とを含む。他のコンストラクトは、任意のボツリヌス毒素の軽鎖、又はTA剤のPSを切断するプロテアーゼを含んでいてもよい。
【図3】図3A及び3Bは、TA剤のBD及びADがPSの末端に結合している、本発明の1つの実施形態によるシステムの概略図である。PSは、膜に局在しているか、又は細胞の核の外側にとどまる。このシステムにプロテアーゼが加えられると、PSを切断し、BD−AD対が遊離され、レポーター遺伝子(「RG」)の転写が促進される。このシステムは、「切断オン」システムと呼ばれる。
【図4a】図4aは、PSがVAMP−2である「切断オン」システムの概略図である。
【図4b】図4bは、PSがSNAP−25である「切断オン」システムの概略図である。
【図5】図5は、最小プロモーターの漏出を制御する追加構成要素を有する、TA剤及びRCの概略図である。追加構成要素は、転写調節因子の少なくとも1つのコピーであり、好適な実施形態の1つでは、転写調節因子はTetOプロモーター領域(5’−tccctatcagtgatagagatc−3’)である。具体的には、図示する実施形態では、コンストラクトはTetOプロモーター配列の4つのコピーを使用している。
【図6】図6は、安定に組み込まれたRCについて、テトラサイクリンの存在及び非存在での生物発光率を示す実験結果の棒グラフである。図中のクローンは、TA剤コンストラクトを含まない。
【図7】図7は、TA剤の存在下における安定なレポーターについて、テトラサイクリンの存在及び非存在での生物発光率を示す実験結果の棒グラフである。
【図8】図8は、テトラサイクリンの存在及び非存在における、レポーターコンストラクト及び記載するBD−VAMP−NFκB TA剤を含む細胞のマイクロプレート細胞機能性試験の結果を示す。
【図9】図9は、本発明の1つの好適な実施形態による生物発光分析であり、記載するTA剤のYFP(Venus)及びGLucの発現に対する効果を示す。
【図10】図10は、安定なBoNT/LC−B指標細胞株の評価を示す実験結果の棒グラフである。
【図11】図11は、TA剤コンストラクトの機能性試験における生物発光分析の結果を示す棒グラフと画像である。
【図12】図12は、切断オフ指標システムの検証を示す棒グラフである。
【図13】図13は、安定な細胞株における切断オンシステムの検証を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記のように要約される本発明は、以下の説明を参照することでより良く理解でき、また、付属する特許請求の範囲及び図面も合わせて読まれるものとする。当業者が本発明を作製、使用できるように以下に記載した実施形態の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明の個別の例である。当業者においては、本発明を実施するための代替のもの、要素、方法、及びシステムを改変又は設計する基礎として、開示された概念や具体的な実施形態を容易に利用することができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態は、プロテアーゼ阻害剤の同定及びプロテアーゼ活性の評価のための、新規の細胞ベースのシステムを提供する。システムの構成要素には、複数のコンストラクトが含まれる。図1〜5に示すように、3つのコンストラクトがシステムの一部を形成している:転写活性化剤(「TA」、本明細書において「トランス活性化因子」コンストラクトと呼ばれる場合もある)、レポーターコンストラクト(「RC」)、及びプロテアーゼコンストラクト(「PC」)。3つのコンストラクトは、2種類のプロテアーゼ評価システムに利用することができる。図1及び2に示す「切断オフ」システムでは、PCの産物がTAを不活性化し、その結果、RCの産物の転写が減少する。図3及び4に示す「切断オン」システムでは、PCの産物がTA剤の活性部分を遊離させ、転写が活性化され、RCのレポーターからのシグナルが増強される。
【0013】
TA剤は、以下の3つの要素を含むキメラタンパク質分子を発現するように作られている:DNA結合ドメイン(「BD」)、少なくとも1つのプロテアーゼのための切断部位を含むプロテアーゼ基質ドメイン(「PS」)、及び転写活性化ドメイン(「AD」)。本発明の1つの好適な実施形態では、図1及び2に示すように、TA剤は、BDと転写活性化ドメインADがPSのそれぞれ反対側に位置するように設計されている。本発明のその他の実施形態では、図3及び4に示すように、PSは、TA剤のBD−ADエレメントの一端に位置する。システムが「切断オン」システムであるか又は「切断オフ」システムであるかは、TA剤におけるPSの位置によって決定される。
【0014】
1つの好適な実施形態によるTA剤は、SNAP−25又はVAMP−2などのボツリヌス毒基質を用いる。これらのコンストラクトにおけるSNAP−25及びVAMP−2の選択されたドメインは、切断活性の発現に十分である。したがって、通常それぞれの基質を切断するBoNTプロテアーゼに関して、任意のタンパク質のプロテアーゼ基質ドメインを包含するのに十分なドメインを提供する。より好ましくは、提供するPSドメインは、少なくともさらに外毒素PS部位を包含するのに十分な大きさを有する。M.A. Breidenbach and A.T.B. TRENDS in Molecular Medicine 11: 376-381(2005)。VAMP−2に関しては、PSドメインはVAMP−2のアミノ酸25〜94を含むと考えられる。Cornille F, Martin L, et al. J Biol Chem. 272:3459-64 (1997);Sikorra S, Henke T, et al. J Biol Chem. 283:21145-52 (2008)。SNAP−25に関しては、該ドメインはSNAP−25のアミノ酸104〜206を含むと考えられる。S. Chen and J.T. Barbieri, Journal of Biological Chemistry 281: 10906-10911 (2006)。1つの好適な実施形態では、ADコンストラクトの配列は、BD−SNAP−25−NFκB又はBD−VAMP−NFκBである。用いられるSNAP−25及びVAMP−2フラグメントは、パルミトイル化残基が欠失しており、そのため、それぞれ細胞膜又は細胞内小胞へのTA剤の局在化を妨げる。
【0015】
PCは、TA剤中のプロテアーゼ基質(「PS」)を認識するプロテアーゼを含む。PCは、プロテアーゼを発現し、またTA及びRCを含む宿主細胞中で発現することができるベクターであってもよい(図1〜5)。本発明の1つの実施形態では、下記例3に示すように、プロテアーゼはベクター中に発現する。別の実施形態では、PCは、TA及びRCを発現する細胞に導入されたプロテアーゼ又はプロテアーゼ様分子であり得る。PCのプロテアーゼは、TA剤のPSドメインを切断する。1つの実施形態によると、TA剤のADは、BDによってRC上のプロモーターに近接し、RCのBSから転写下流に位置するレポーターの転写を促進する(図1及び2)。PCが活性化される又は宿主系に存在すると、プロテアーゼのタンパク質分解活性が作用し、ADからBDを分離することで、TA剤を不活性化し、転写促進因子として作用できなくする(図1B及び2B)。ある好適な実施形態では、プロテアーゼはBoNT A、C、及びEから選択され、PSはSNAP−25である。別の好適な実施形態では、プロテアーゼはBoNT B、D、F、及びGから選択され、PSはVAMP−2である。さらに別の好適な実施形態では、BoNTはセロタイプCであり、PSはシンタキシン1a(GenBank:AAK54507.2)である。1つの実施形態では、TAは、C末端膜貫通ドメインが欠失したシンタキシン1aのドメインを含む場合がある(BD−シンタキシン1a(1〜265)−AD)。プロテアーゼ基質は、任意の既知のプロテアーゼ基質であってよい。同様に、様々なプロテアーゼが使用できると考えられる。例としては、炭疽菌プロテアーゼ、カスパーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ、HIVプロセシングプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロセシングプロテアーゼ、ユビキチンプロセシングプロテアーゼ、ISG15プロセシングプロテアーゼ、自食作用関連ATG4様プロセシングプロテアーゼ、及び、C型肝炎プロセシングプロテアーゼなどが挙げられる。
【0016】
その他の実施形態によると、PSドメインの切断は、レポーター遺伝子発現の促進(「切断オン」効果)をもたらす(図3B及び4B)。切断によって、機能的に連結したBD及びADエレメントの双方を含むユニットが遊離されれば、転写は促進される。図3B及び4Bに示すように、BD及びADからなるTA剤は、プロテアーゼ基質(PS)ドメイン上のパルミトイル化残基によって、細胞核の外部にとどめることができる。さらなる実施形態では、BD−AD対は、PCからのプロテアーゼによってBD−ADコンストラクトが遊離されるまでBD−ADコンストラクトを細胞核の外部にとどめるような他の分子に結合されていてもよく、遊離したBD−ADコンストラクトは核の内部に輸送され、その後レポーター遺伝子の転写を促進する。このような機構では、プロテアーゼ基質ドメインは、細胞内で、細胞膜や他の小胞膜と結合していてもよい。プロテアーゼの切断部位は、BD−ADからなるTAと、PSの核外アンカー部位との間に位置する。そのため、PSがプロテアーゼによって切断されると、BD−ADが遊離して核に入り、指標物質の転写を促進することで、プロテアーゼの存在を示す。本発明の1つの実施形態では、PCにおけるプロテアーゼの発現が調節されている。例えば、TetO制御エレメントがプロテアーゼ遺伝子の上流に含まれる場合があり、適切な条件が存在しない限り、プロテアーゼの発現を妨げる。1つの好適な実施形態では、テトラサイクリンが存在しない場合にプロテアーゼの発現を妨げるTetOオペレーターが用いられている。当業者に知られている他の制御機構も、宿主細胞中のプロテアーゼ発現の制御に対して妥当であると考えられる。
【0017】
RCは、核酸ベースのコンストラクトである。好ましくは、TA剤及び/又はPCも、それぞれトランス活性化因子分子及びプロテアーゼを発現する核酸ベースのコンストラクトである。しかし、当業者においては、TA及び/又はPCは、あらかじめ作られたタンパク質として、哺乳類の機能細胞に与えられる場合があることも理解される。同様に、当業者においては、この3つのコンストラクトのシステムによる他の環境への適用も理解でき、それは例えば、TA剤とPCのいずれか又は両方が核酸又はタンパク質で提供され、3つのコンストラクトが膜上に固定されているものなどの無細胞系が挙げられる。以下の説明では、コンストラクトのそれぞれが遺伝子導入による遺伝子コンストラクトとして哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞に導入された、好適な実施形態に焦点を当てる。
【0018】
RCは、TA剤のBDによって認識される1つ以上のBSを有し、好ましくはプロモーター配列がTATAボックス及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を含む(図1〜4)。TA剤のBDエレメントは、該1つ以上のBSエレメントに結合する。本発明の1つの実施形態では、TA剤にGal4 BDが用いられ、対応するGal4 BSがRCに用いられる。別の好適な実施形態では、LexA BDと対応するBS配列が用いられる。同様に、B42酸性小球ドメイン、VP16酸性活性、及びp53酸性活性化ドメインなど、トランス活性化因子からもたらされるその他の活性化ドメインも用いることができる。J Estojak, R. Brent, E.A. Golemis Molecular and Cellular Biology 15:5820-5829 (1995);及び、H. Lee, K Hun Mok et al. JBC 275: 29426-29423 (2000)。1つの好適な実施形態では、IPRは、1〜148番目のアミノ酸の位置に、Gal4同系DNA結合配列の5つのコピーを有する。その他の結合ドメイン認識配列の複数のコピーも用いることができると考えられる。例えば、LexAに対する結合ドメイン配列(BD)などが挙げられる。結合部位は、通常、TATAボックスの10〜500bp上流に位置している。
【0019】
1つの好適な実施形態では、BS及びプロモーター配列は、本質的に2つの部分からなるコンストラクトである誘導性プロモーター領域(「IPR」)を構成する。第1の構成要素は最小プロモーターTATAボックスであり、これは最小限では単独で、最小プロモーターの上流で機能する。第2の構成要素は少なくとも1つのBSであり、該BSに結合した無損傷のTA剤の存在下で、2つの部分からなるプロモーターからの転写を顕著に増加させる。1つの好適な実施形態では、IPRは最小アデノウイルスプロモーター領域を有する(E.D. Lewis, J.L. Manley, Mol Cell Biol 5: 2433-2442 (1985))。TA剤のBDによって認識されるBSの数個のコピーを用いることで、TA剤のRCへの結合をより強くすることができる。用いるBSの数は1つから8つ程度で、好ましくは5つである。上述の好ましいBDエレメントによると、対応するBSは、BDによって認識されるDNA配列である。K.H. Young, Biol. Reprod. 58: 302-311 (1998)。この構成においては、最小TATAボックスプロモーター領域は、追加の転写活性化因子(この場合ではBD−ADキメラタンパク質によってもたらされる)によるBD領域への結合がない状態では、ごく最小限の転写のみを促進することができる。
【0020】
場合によっては、TATAボックスなどの最小プロモーターからなる2部分の転写調節領域の第1の構成要素は、BD−ADを含む転写活性化因子によるBS配列への結合がない状態では、好ましくない高いレベルの転写活性をもたらす可能性がある。転写活性化因子によるBSへの結合がない状態での最小プロモーターTATAボックスからの転写を抑制することによる調節のレベルを高めるには、さらにテトラサイクリン制御型リプレッサー、又は好ましくはテトラサイクリン制御型サプレッサーエレメントを、最小プロモーターの下流に配置する(図5)。TetOと呼ばれるこのDNA配列エレメントは、テトラサイクリンの非存在下で、テトラサイクリン・リプレッサータンパク質、又はテトラサイクリン・サプレッサータンパク質に結合する(図5)。テトラサイクリンの存在下では、テトラサイクリン応答型リプレッサー又はサプレッサータンパク質は、TetOエレメントから遊離され、BS及び最小TATA領域を含む2部分の転写調節領域からの転写の抑制を解放する。その他の調節エレメントも用いることができると考えられる。
【0021】
1つの例示的実施形態では、転写調節領域は、BS及びプロモーター領域の下流に位置する(プロモーター領域はTATAボックスを含んでもよい)。好適な実施形態によると、レポーターコンストラクト上のプロモーター領域の下流にあるエレメントは、21個のヌクレオチドからなるTetOプロモーター領域の少なくとも1つのコピーである。N.F.J. van Poppel, J. Welagen, et al. International Journal for Parasitology 36: 443-452 (2006)。好ましくは、RCは、少なくとも1つからおよそ6つのTetOプロモーターの反復、より好ましくは、およそ4つのTetOプロモーターの反復を含む。RCが、tTS遺伝子産物を含むTetS細胞中にある場合、TetOプロモーター領域を介した転写はブロックされる。好ましいこのようなTetS/tTS細胞株は、HeLa細胞株の派生株で、例えば、Clontech社のHEK293tTS、Catalog#631146;又はHeLa293tTS、Catalog#631147などの細胞株がある。テトラサイクリンを加えると、TetOプロモーターはtTSに結合されない。本発明の1つの好適な実施形態では、レポーターコンストラクトは、プロテアーゼ活性の評価方法の効率を高める付加的な構成要素を含む。そのような構成要素の1つは、適切な条件が存在しない限りレポーター産物の転写を妨げるために用いられる、転写サイレンシング又は阻害配列からなる。例えば、図5に示すように、Tetオペロン(TetO)のいくつかのコピーを、プロモーターの下流に配置してもよい。N.F.J. van Poppel, J. Welagen, et al. International Journal for Parasitology. 36:443-452 (2006)。RCが、転写サイレンサーtTSを発現する細胞株に導入された場合、レポーターの転写が抑制される。テトラサイクリンを加えることで、tTSがTetOへの結合から取り除かれ、プロモーターが高度に活性化される。当業者においては、その他の類似の転写阻害剤も利用できることが理解されよう。また、TetOのコピーの数の増加がレポーターの転写レベルに直接関係し、阻害剤のコピーが多いほど、該領域への結合が強くなることがわかる。
【0022】
TA剤のADエレメント(上述の好適な実施形態によると、ADはNFκBである)は、その後遊離して、転写を促進する。このさらなる調節レベルは、システムの厳密な調節を可能にする。例えば、テトラサイクリンが存在しない場合、レポーター遺伝子産物は存在せず、発現が特に「漏れやすい」ことはない。TAの発現又はBD−NFκBキメラの遊離がない場合のバックグラウンドの転写レベルは、測定することができる。
【0023】
上記のエレメントを含むIPRは、1つ以上のレポーター遺伝子の上流にあり、転写を調節する。本発明のある好適な実施形態では、プロテアーゼ活性の評価に2つ以上のレポーターを用いることができる。例えば、2つの異なる蛍光分子配列が含まれる。その他のレポーター対、例えば蛍光レポーター及び抗生物質耐性配列なども用いることができる。2つの配列は、別々の分子として翻訳されてもよく、又はキメラ産物を生産してもよい。1つの好適な実施形態では、2つのレポーターは、単一の翻訳産物の一部である。さらに好適なある実施形態では、2つのレポーター分子は、切断可能なリンカーによって分離されている。ある例では、図2及び4に示すように、Venus遺伝子産物がGaussiaルシフェラーゼ(GLuc)遺伝子産物に融合し、2つのレポータータンパク質は口蹄疫ウイルス(FMDV)の「自己切断」ペプチド2A配列によって連結されている。M.D. Ryan and J. Drew, Foot-and-mouth disease virus 2A oligopeptide mediated cleavage of an artificial polyprotein, The EMBO Journal 13:928-933 (1994)。当業者においては、他の自己切断ペプチドを2つのレポーターの連結に用いることができること、又は、2つのレポーターは融合タンパク質産物の一部として活性があり、2つのタンパク質産物に分離する必要がないことが理解されよう。2A切断部位により、培養液に分泌されたGLucの活性、及びVenus発現による細胞蛍光が生じる。両方のレポーター遺伝子を包含することで、細胞のVenus YFPの生産を顕微鏡で即座に調べることができ、同様に、プレートリーダーで生物発光を検出することができる。GLuc産物は細胞の増殖が行われている培養液中に放出されるため、GLucレポーターの過剰発現は、当業者において既知の方法により、容易に測定することができる。1つの転写(1つのプロモーターから発現された1つのRNA)から2つのタンパク質を発現する別の方法としては、内部リボソーム進入部位(IRES)を2つの遺伝子の間に挿入する方法がある。Yury A. Bochkov and Ann C. Palmenberg BioTechniques 41:283-292 (2006)。
【0024】
本システムは、インビボでTA剤のPSを特異的に認識するプロテアーゼの活性の評価に用いることができる。例えば、RCを含む細胞内でコンストラクトが発現された場合、レポーター産物の発現レベルは、同細胞内でのプロテアーゼの活性の作用の1つであるキメラBD−AD産物の存在を示す。
【0025】
プロテアーゼ基質が膜貫通成分を含む場合、BD−AD成分の作用は無効化される。例えば、天然型のボツリヌス神経毒素プロテアーゼ基質は、タンパク質を小胞膜に局在化させるパルミトイル化残基を含む。Lane, S. R. and Y. C. Liu. Journal of Neurochemistry 69: 1864-1869 (1997)。その結果、上述のBD−PS−ADコンストラクトに用いられるPSには、基質のパルミトイル化残基は除外される。細胞膜への局在化は、単純に、パルミトイル化残基をコンストラクトから除去することで回避することができる。当業者においては、実施形態の一部では、パルミトイル化残基をコンストラクトから除外する代わりに、これらの残基のパルミトイル化を防ぎ、コンストラクトの小胞膜への局在化を阻害するようにコンストラクトを設計することが可能であることも理解されよう。
【0026】
一方で、パルミトイル化とそれによる細胞膜への局在化は、本発明の別の好適な実施形態で利用することもできる。そのような実施形態では、パルミトイル化プロテアーゼ基質は転写エンハンサードメインに結合される(図3及び4)。この構成は、以下にBD−AD−PS又はAD−BD−PSとして記載されており、BD−ADとAD−BDの順番は置き換え可能である。あるいは、プロテアーゼ基質が転写エンハンサーエレメントに結合し、PS−BD−ADの構成となってもよい。これらの好適な実施形態の例においては、ボツリヌス神経毒素基質は、図4a(BD−NFκB−VAMP)及び図4b(SNAP−25−BD−NFκB)に示すように提供され、この好適な実施形態におけるBDは、Gal4結合ドメインである。別の好適な実施形態では、BD−ADドメインを有する全長シンタキシン1aは、シンタキシン1aのN末端に融合している。シンタキシン1aのC末端膜貫通ドメインは、BD−AD−シンタキシン1aの全長分子を、シナプス前終末の膜に固定している。
【0027】
本発明の別の実施形態を表す1つの可能性のある解決法である切断オンBoNT/A切断試験の潜在的限界のため、BD−ADドメインは、プロテアーゼ基質PS、この場合ではSNAP25のアミノ酸104〜206(SNAP25に存在するパルミトイル化システイン残基、アミノ酸95〜103は欠如する)と融合されてもよく、これはさらに、任意のシンタキシン1a全長分子と融合し、融合分子全体BD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜288)を固定する。この配列は、BoNT/Aに対するSNAP25全長(1〜206)−BD−AD切断オンシステムの潜在的限界に対応するだけでなく、BD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜288)は、SNAP−25及びシンタキシン1a分子の両方の切断によりBoNT/C1の切断オン指標として機能し、また、SNAP25においてBoNT/Eの切断オン指標として機能する。シンタキシン1aを用いてBD−AD−SNAP25分子をシナプス前膜に固定することには、潜在的利点がある。原則的な利点としては、SNAP25の場合と本質的に同一であるシンタキシン1aの標的化及びシナプス前膜への局在化は、SNAP25基質を正しく局在化することができる。また、BoNT/A LCは、シンタキシン1aの輸送と同じように、シナプス前膜に輸送され、プロテアーゼ基質及びBD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜328)の局在化が可能となる。本発明の別の実施形態では、TA剤はBD−AD−SNAP25(104〜206)−VAMP−2コンストラクトである。BD−AD−SNAP25(104〜206)−VAMP−2コンストラクトは、本質的にすべてのBoNTセロタイプの試験に用いることができる広範囲なボツリヌスプロテアーゼシステムである(BoNT/A、C1、及びEはSNAP−25を切断し、BoNT/B、D、F、及びGはVAMP−2を切断する)。
【0028】
RCのレポーター配列は、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、又は、遺伝子の発現によるシグナルの定量化が可能なその他のタンパク質の配列と対応させることができる。黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP);青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、及びこれらの蛍光変異体も用いることができると考えられる。Gaussiaルシフェラーゼ、renillaルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、及びホタルルシフェラーゼなどの生物発光タンパク質も、レポーターベクターの活性の定量化に用いることができる。1つの好適な実施形態では、レポーター配列は、Venus黄色蛍光タンパク質からなり得る。Nagai T., Ibata K., Park E.S., et al. Nature Biotechnol 20: 87-90 (2002)。
【0029】
本システムは、上述のコンストラクトの1つ以上を含む遺伝子組み換え細胞株の作製に用いることができる。コンストラクトは、特定のタイプの細胞における発現のために、1つ以上のベクターに組み入れることができる。コンストラクトは、細胞内に安定に組み込まれるか、又は形質転換ベクター上に存在してもよい。その方法とベクターは、当技術分野において公知である。細胞への形質移入及び形質導入に用いる方法論は、当技術分野において公知である。Laura Bonetta, The Inside Scoop−Evaluating Gene Delivery Methods, Nature Methods 2:875-883 (2005)。ある好適な実施形態では、コンストラクトの1つ以上は、レンチウイルスベクターを介して組み込まれる。さらに好適なある実施形態では、レンチウイルスベクターは、自己不活性化(「SIN」)レンチウイルスベクターである。当業者においては、コンストラクトを含む細胞と含まない細胞を区別するために、ベクターに抗生物質耐性マーカーなどのその他の選択マーカーを含ませ得ることが理解されよう。
【0030】
本発明の別の好適な実施形態は、遺伝子組み換え細胞株の作製方法を提供する。該方法の第1の工程では、293−tTS細胞などの真核細胞に、Gal4 BSの5つのコピーによって制御される最小プロモーターから発現される調節レポーター遺伝子を含むRCを含有するベクターを用いて、形質導入を行う。他の好適な実施形態では、上述のように、合成テトラサイクリンオペレーターの4つのコピーがさらに含まれる(「G5TO4プロモーター」)。
【0031】
本システムは、ボツリヌス神経毒素などの特定のプロテアーゼの活性の評価に用いることができる。第1の工程として、Gal5/TO4プロモーター及びVenus遺伝子、GLuc遺伝子を有するRCを含むレンチウイルスベクターを哺乳類293−Ts細胞にトランスフェクトする。その後、細胞は、BD−SNAP−25−ADコンストラクト又はBD−VAMP−2−ADコンストラクトのいずれかを含むレンチウイルスベクターでトランスフェクトする。コンストラクトは、安定に導入される。細胞株は、BoNT/LC−Bをコードする遺伝子コンストラクトをさらに含むよう操作され、種々のボツリヌス神経毒素プロテアーゼの活性を評価するための最終的なレポーター細胞株を作り出す。これらの最終的な細胞株では、BoNT/LCの発現がSNAP−25又はVAMPベースのトランス活性化因子融合タンパク質を切断し、DNA結合ドメインを活性化ドメインから分離し、その結果、細胞はVenus及びルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現できない。あるいは、プロテアーゼが細胞内に形質導入される。上述のように、同様の方法が、他のプロテアーゼ−基質又は結合ドメイン−結合部位の対の活性を確認するために用いることができる。
【0032】
RC、TA剤、及びPCを含むレポーター細胞株は、プロテアーゼ阻害剤の同定に用いられる。1つの好適な実施形態では、細胞株は、ボツリヌス神経毒素阻害剤などのプロテアーゼ阻害剤のハイスループットスクリーニングに用いられる。キメラ転写因子は、無損傷の場合、G5又はG5TO4プロモーターを活性化し、その結果、Venus及びGLucレポーター遺伝子の発現につながるが、ボツリヌス神経毒素の軽鎖によって切断されると、レポーター遺伝子の発現が停止する。前述のように、このシステムは、「切断オフ」システムと呼ばれ、低分子BoNT/LC阻害剤のスクリーニングに適しているが、これは、BoNTの阻害がレポーターシグナルの増加を引き起こし(「シグナル増大」試験)、偽陽性の検出頻度が低下するためである。BoNT/LC阻害剤の存在下では、転写因子は切断されず、その結果、Venus及びGLuc指標物質の発現が回復する。
【0033】
細胞株は、システムが潜在的な阻害剤にさらされるハイスループットスクリーニング試験に用いられる。本発明の1つの実施形態では、システムは、利用可能な化合物ライブラリーに存在する阻害剤の同定、又は所望の特定の分子の試験に用いることができる。ライブラリーを用いたそのような方法の1つは、例4〜6に記載されている。
【0034】
本発明の1つの実施形態は、細胞によるシグナル増大型の生物発光レポータースクリーニングを提供する。ある好適な実施形態では、本発明は、BoNT/A LCやBoNT/B LCなどの神経毒のエンドペプチダーゼ阻害剤を、細胞ベースのレポーターHTSによって同定する。これらのエンドペプチダーゼ阻害剤は小分子で、BoNT/AやBoNT/Bなどの神経毒を阻害する。1つの好適な実施形態によって用いられた遺伝子組み換え細胞株は、低基底レポーターシグナルを有するが、小分子がBoNT/LCのペプチダーゼ活性を阻害すると、非常に高く増幅された光シグナル(>10X)を生み出す。この手法により、SNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1a、及び他の神経毒と相互作用するBoNT/LCに対して細胞内で活性な阻害剤の同定手段が提供される。細胞ベースのBoNT/LC又はHTSスクリーニング試験は、それぞれ、他の試験に対する簡便なカウンタースクリーニングを提供する。同様に、切断オン及び切断オフ試験を連続して用いることで、カウンタースクリーニング試験となり得る。これらのカウンタースクリーニング試験の目的は、例えば、他の一般的な毒性現象ではなく本発明による作用機序などを確認することである。本システムのそのような試験には、切断された転写活性化分子の細胞毒性の分析又は判定が含まれ、迅速に偽陽性を排除し、最も選択性が高く毒性のない神経毒阻害剤を素早く同定する。偽陽性のスクリーニングの方法の1つとしては、レポーター分子の発現に影響を及ぼしていると考えられるシステム内の転写活性化分子の分析がある。偽陽性(例えば、TA分子の遊離又は分解に関係のない何らかの機構によって働く阻害剤)のスクリーニングは、例えば、分離カラムによるTA分子の大きさの分析や、TA分子を認識する抗体などを利用する。したがって、本発明の1つの実施形態は、細胞ベースのHTSにより、神経細胞内のSNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1aなどの基質の神経毒切断を阻害する「薬剤様」小分子を同定する方法を提供する。
【0035】
本明細書に記載する細胞ベースのスクリーニング手法は、あらゆるインビトロの酵素的スクリーニングに対して顕著な利点があるが、それは、化合物が細胞内環境にたどり着き、細胞質ゾル中ののBoNT/A又はBoNT/Bなどの神経毒による、SNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1aなどのそれらの基質の切断を阻害する必要があるためである。そのため、毒素及びその基質の両方が、臨床的なインビボ環境にある。毒素の作用は、無細胞での酵素活性とは対照的に、細胞内では異なる可能性が高い。70〜100アミノ酸残基の大きな基質フラグメントを用いることが、これらの細胞ベースの試験の主要な優位点の一つである。活性部位がエキソサイトよりも大きいタンパク質を包含できることから、通常エキソサイトと考えられていない部位での切断が検出可能である。
【0036】
本明細書に開示する方法及びシステムは、ボツリヌス神経毒素A及びBなどの種々の神経毒の阻害剤を治療法として最適化するために、同定及び優先順位の決定に用いることができる。該方法は、さらに、多様な化合物のライブラリーに対して、BoNT/A及びBoNT/Bなどの神経毒の阻害剤のための哺乳類細胞ベースの主要レポータースクリーニングの構築、検証、及び適用に用いることができる。スクリーニングのヒットは、三重の再分析で確認することができ、偽陽性は、複数のBoNTベースの試験又は非毒素試験を互いのカウンター試験として用い、また上述の他の方法を用いることで、排除することができる。本出願に開示する方法は、さらに、細胞によるシグナル増大型のレポータースクリーニングを提供する。これらのスクリーニングは、化合物ライブラリーに適用され、潜在的な阻害剤を同定するために、二次検証として生化学的試験による追加検討を行う。検証されたヒットは、その特徴を完全に調べ、インビトロ及び神経細胞モデル系の両方でボツリヌス神経毒素に対して特異的に作用するか、そして細胞毒性が最小限であるかを確認する。
【0037】
1つの実施形態では、本明細書に記載するシステム及び方法は、BoNTが引き起こす中毒の治療のための極めて強力な小分子阻害剤の同定及び開発を提供する。小分子BoNT LC阻害剤は、神経細胞に侵入し、毒素への前暴露及び後暴露の両方に対する防護をもたらすことができる。その他の実施形態では、本明細書に記載するシステム及び方法は、発病において重要となりうる他のプロテアーゼ基質対に対する小分子阻害剤の同定に用いることができる。そのようなプロテアーゼ基質対としては、炭疽菌致死因子、カスパーゼ、ユビキチンプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロテアーゼ、ユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、ATG4などの自食作用関連プロセシングプロテアーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ及びHIVプロテアーゼなどのウイルスにコードされたプロテアーゼなどがある。
【0038】
しかしながら、BoNTは、プロテアーゼ阻害剤を同定するシステムを利用可能な多くの方法の一例である。当業者においては、本明細書に記載するコンストラクト及び方法は、他のプロテアーゼ、及びそれらの活性や阻害剤の評価に利用できることが理解されよう。可能性の範囲には、ほぼすべての基質とプロテアーゼの組み合わせが含まれるが、いくつかの具体的な例としては、炭疽菌致死因子亜鉛金属プロテアーゼ(LF)とその関連する基質MAPKK、アルファウイルスのNSP2プロテアーゼなどのウイルスプロセシングプロテアーゼとその関連する基質NSP1−4、ユビキチン及びユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、カスパーゼ、ユビキチンプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修potency飾因子プロテアーゼ、ユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、ATG4などの自食作用関連プロセシングプロテアーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ及びHIVプロテアーゼなどのウイルスにコードされたプロテアーゼなどがある。小分子阻害剤のスクリーニングにおいて、小分子阻害剤の高速でハイスループットのスクリーニングには、細胞内でプロテアーゼが活性化されているときはシグナルが抑えられ、細胞内で小分子によってプロテアーゼが阻害されているときはシグナルが増加するような細胞ベースのシステムが好ましい。これは、ハイスループットスクリーニング(HTS)では、一般的に、「陽性のヒット」が存在している、すなわち、活性なプロテアーゼ阻害化合物が存在している場合にシグナルが増加する方が、より効率的なためである。
【0039】
細胞内のプロテアーゼ活性の存在を検出する手段は重要となり得る。例えば、BoNTへの集団暴露が起きた場合、限られたリソースで直ちに治療を必要とする人と、実際には暴露していない可能性もあるが体調の悪い人(いわゆる歩ける人(walking well))とを、素早く分別する必要が生じる場合がある。同様に、BoNT薬剤の効果と効能を試験する手段の現在のゴールドスタンダード、すなわち主要なものは、毒素をマウスに注射し、マウスのLD50の基準を定める方法を用いている。この方法では、生きた動物を致死検定に大量に使用する必要がある。そのような生きた動物での検定は、制限又は排除することが望ましい。BoNTの活性の存在を確実に検出し、定量化することができるような、細胞ベースの試験法が必要である。BoNT LCプロテアーゼなど、細胞内のプロテアーゼの存在を検出する細胞ベースの試験法は、細胞内にプロテアーゼが存在することで1つまたは複数の指標シグナルが活性化されるシステムによって構成するのが最適である。本発明の1つの実施形態では、「切断オン」の構成(BD−AD−PS)においてTA剤とRCを発現する細胞が、試料中の既知のプロテアーゼの存在を確認するために用いられている。そのような実施形態では、環境試料はTA及びRCコンストラクトを含む細胞に提示される。もし標的プロテアーゼ、例えばBoNT/LC Aが存在すれば、それが細胞内に入り、TAをPSで切断し、AD−BDフラグメントを遊離させ、次にそれがRC内のレポーター遺伝子の転写を促進する。
【実施例】
【0040】
実施例1
哺乳動物細胞におけるpBD−NFκBの発現
合成プロモーターG5/TO4を含む、本発明の一実施形態にしたがったレポーターコンストラクト(RC)はレンチウィルスベクターにより細胞に形質移入された。前記レポーターコンストラクトは、NFκB転写活性化因子に連結したGal4結合ドメイン融合体(転写活性化剤)を発現するプラスミド(pBD−NFκB)とともにHeLa−tTS細胞へ共形質移入された。前記の形質移入された細胞はテトラサイクリン転写サイレンサーtTS(Clontech)を恒常的に発現する。前記の細胞は6穴プレートで、約80%の集密(コンフルエンス)になるまで培養された。形質移入の6時間後、1μg/mlのテトラサイクリンが、前記の試験細胞の培地に加えられた。テトラサイクリンは対照として用いられる試験細胞の培地には加えられなかった。コペポーダ(Gaussia princeps)ルシフェラーゼ(GLuc)アッセイ(Monique Verhaegen and Theodore K. Christopoulos Anal. Chem., 74:4378-4385 (2002))のため、形質移入の2日後に、培養液が回収された。1μg/mlの濃度でテトラサイクリンを含む培地で培養された前記の細胞の相対的光単位(RLU)はテトラサイクリンを含まない培地で培養された細胞よりもルミノメーターで測定すると16倍高い。さらに、テトラサイクリンを含む培地で培養された細胞ではビーナスの発現があり、テトラサイクリンを含まない培地で培養された細胞ではビーナスの発現が無い。したがって、(1)合成プロモーターG5/TO4は機能的である。それは、Gal4結合部位に結合するBD−NFκBのような転写活性化因子により大いに活性化されうる。テトラサイクリンの存在下でGLucとYFPの両方の発現が大いに活性化される。(2)GLuc遺伝子は大変敏感で便利なレポーターである。これらの実験で、コペポーダルシフェラーゼの95%が培養液中に分泌される。したがって、GLuc活性は培養液より直接、ルミノメーターによって測定されうる。この制御されたレポーター遺伝子発現、レポーター遺伝子発現の低くて測定可能なバックグラウンド、及び、簡便な使用に照らし、この応用例で述べられるプロモーターレポーターシステムはハイスループットスクリーニングに有効である。
【0041】
前記の新規レポーターコンストラクトはレンチウィルスベクターにより293−tTS細胞へ形質導入された。前記のレポーターコンストラクトを持つレンチウィルスベクター粒子は7.1μgのHIV−1 gag−polヘルパーコンストラクト(Synaptic Research)、及び、2.8μgのVSV−G発現プラスミド(Synaptic Research)との3.5μgの形質導入プラスミドの100 mmプレートに培養された80%から90%の集密の293FT細胞(Invitrogen)への共形質移入により作成された。発芽したウィルスベクターを含む培養液から形質移入の48時間後に回収され、4℃、2,000 rpmで10分間の遠心分離(Sorvall RT 600D)により細胞破砕物が取り除かれた。破砕物を取り除かれたウィルス上清はさらに、4℃、25,000 rpmで90分間の超遠心分離(Beckman Coulter OptimaTM XL100K)により濃縮された。最後に、ウィルスベクターペレットは50μl(元の容積の1/200)の培養液に一晩浸され、再懸濁され、そして、形質導入で必要になるまで−85℃で保存された。結果、生じたウィルスベクター粒子は、恒常的にテトラサイクリン転写サイレンサーtTSを発現する293−tTS細胞(Clonetech)を形質導入するために使用された。クローニング用リングにより、単細胞コロニーがクローン化され、増幅した細胞をBD−NFκBキメラ転写活性化因子を発現するpBD−NFκBで一時的に形質移入することにより機能性について試験された。1μg/mlのテトラサイクリンの存在下、及び、非存在下、前記の形質移入された細胞が培養された。テトラサイクリンによる誘導の2日後、YFP蛍光(ビーナス遺伝子発現)が蛍光顕微鏡で観察され、コペポーダルシフェラーゼ遺伝子発現はルミノメーターにより測定された。
【0042】
我々は25クローンを解析した。6クローンの結果を図6で示される。我々は、大変低い基礎活性を示し、テトラサイクリンの添加により14倍に活性化されうるクローン17番を選択した。これにより、前記のレポーター分子は活性化剤によって誘導された。そして、前記のシステムはハイスループットスクリーニングに必要な属性を持つ。
【0043】
実施例2
レポーターコンストラクトと転写活性化剤を含むtTS細胞
制御要素の遺伝子、すなわち、Gal4 DNA結合ドメイン(アミノ酸1からアミノ酸148まで)(Gal4/BD、又は、BD)とNFκB転写活性化ドメイン(NFκB/AD、又は、AD)の間に挟み込まれた適切なBoNT基質(BoNT/AにはSNAP−25、及び、BoNT/BにはVAMP−2)から成る転写活性化因子キメラ融合タンパク質は実施例1で述べられる新規レポーターコンストラクトを持つ細胞に導入された。
【0044】
実施例2A
タンパク質性基質がパルミトイル化された残基を含まないBD−PS−ADコンストラクトは合成で構築され、前記のレポーターコンストラクトを含む細胞に導入された。Gal4 DNA結合ドメインとNFκB転写活性化ドメインの間に融合されたSNAP−25の切断部位の周囲103アミノ酸残基(残基104から残基206まで)、あるいは、VAMP−2の切断部位の周囲70アミノ酸残基(残基25から残基94まで)のどちらかをコードする転写活性化剤が使用された。実施例1由来のレポーター細胞系列クローン17番はさらに、BD−VAMP−NFκB遺伝子コンストラクトを持つレンチウィルスベクターで形質導入された。6個の単細胞クローンが選択され、テトラサイクリンの存在下、及び、非存在下で生物発光の割合について解析された。図7を参照のこと。形質導入された細胞は適切な選択(G418、ブラストサイジン、ピューロマイシン)にかけられ、および、レポーターとVAMP−2転写活性化因子融合体の両方を安定した挿入で保持する単細胞クローンが得られた。1μg/mlのテトラサイクリンが培地に添加されると、クローン32番レポーター遺伝子は常に/反復的に200倍以上活性化された。
【0045】
同様の過程はその他のキメラ転写活性化因子コンストラクトを含む細胞系列を創出するために用いられる。例えば、前記のレポーターベクターを含む細胞系列はさらに、BD−SNAP25−NFκB遺伝子コンストラクト、又は、BD−シンタキシン1a−NFκB遺伝子コンストラクトで形質移入される。または、各々別のBoNT基質を含む一つ以上の転写活性化因子コンストラクトが作成される。さらに、結合ドメイン(BD)及び転写活性化ドメイン(NFκB)は、前記のレポーターコンストラクトの結合サイトが対応して変更される限り、どんなDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインによって置換されうる。前記のレポーターコンストラクトと転写活性化剤を持つ単細胞クローンは、クローン32番で述べたように評価される。
【0046】
クローン32番の機能性は、シグナル強度とシグナルバックグラウンドの割合がハイスループットスクリーニングでの使用に充分であることを示すために、96穴マイクロプレートで解析された。低密度の細胞(グループ1)、中密度の細胞(グループ2)、及び、高密度の細胞(グループ)の3グループについて3穴ずつの複製がなされた。1μg/mlのテトラサイクリンの存在下、及び、非存在下での細胞培養の1日後、5倍に希釈された培養液の5μlが第二のプレートに移され、生物発光がプレートリーダーで測定された。テトラサイクリンで処理した細胞の培養液のルシフェラーゼ活性はテトラサイクリンで処理されなかった細胞の培養液で観察されたそれの200倍高かった。図8を参照のこと。その結果は前記の3つのグループそれぞれの各メンバーについて一貫していた。さらに、テトラサイクリンで処理されなかった細胞での基礎活性は極めて低かった。生物発光が測定された。生物発光はテトラサイクリンと完全なDB−PS−TAコンストラクトの存在下、テイン者活性化により200倍に増加した。図8を参照のこと。
【0047】
実施例2B
「切断オン」法は、図3、及び、図4で示されるように、それぞれキメラ転写活性化因子BD−NFκB/ADの上流、又は、下流に融合したSNAP−25の切断部位の周辺103アミノ酸残基(残基104から206まで)、あるいは、VAMP−2の切断部位の周辺70アミノ酸残基(残基25から94まで)のどちらかをコードする転写活性化因子コンストラクトによって評価された。ボツリヌスの基質のパルミトイル化の結果、SNAP25とVAMP−2の部分が、BD−NFκB/ADを繋ぎとめる細胞性シナプス前原形質膜上に発現する。図9は両方の構成を用いて行われた実験の結果の例を示す。
【0048】
実施例3
安定な細胞系列でのコンストラクトの更なる検証
VAMP2ベースの転写活性化因子コンストラクトとプロテアーゼコンストラクトとしてBoNT/B軽鎖、及び、TetO含有レポーターコンストラクトを利用する「切断オフ」システムの検証が安定的細胞系列で果たされた。前記レポーターと前記VAMP2転写活性化因子の両方の安定的組み込むクローン32番は、BoNT/B軽鎖プロテアーゼコンストラクトのレンチウィルスを用いた形質導入による最終的な誘導可能指標細胞系列の創出のために使用された。この完成した細胞系列(クローン12番)に安定的に組み込まれた指標システムの三つの構成要素(レポーターコンストラクト、転写活性化因子、及び、プロテアーゼコンストラクト)のすべてを用い、テトラサイクリンでの誘導から直ぐに48時間にわたりGLuc発現を評価することにより、前記のシステムが試験された。24時間ごとに前の培地を新しい培地で置換する前にGLucアッセイが行われた。RLUで表現されるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、テトラサイクリン制御プロテアーゼコンストラクトからのBoNT/B軽鎖の誘導48時間後では約15倍のGLucシグナルの低下を示した(図10)。この結果は、レポーターコンストラクト、切断オフ転写活性化因子、及び、プロテアーゼコンストラクトで完全に組み立てられたシステムはBoNT/B軽鎖阻害剤のハイスループットスクリーニングに適しているということを示す。この構成のシステムは軽鎖プロテアーゼの阻害によりシグナルの増強を示すであろう。
【0049】
VAMP2ベースの転写活性化因子コンストラクトとプロテアーゼコンストラクトとしてBoNT/B軽鎖、及び、TetO含有レポーターコンストラクトを利用する切断オンシステムの検証も又、上述したのと同じ方法を用いて果たされた。結果は、48時間後にGLucシグナルの40倍近い増強を示す(図10)。この構成のシステムは、BoNT/B軽鎖プロテアーゼの存在を検出するのにより適していないとしたら、軽鎖プロテアーゼの阻害によりシグナルの減少を示すであろう。
【0050】
実施例4
切断オフシステムは遺伝子発現を低下させる。
SNAP−25、及び、VAMP−2キメラ転写活性化因子の機能性を示すために、それらは自己不活性化(SIN)レンチウィルスベクターにクローン化され、様々なBoNT/軽鎖遺伝子コンストラクト(野生型A軽鎖、変異型A軽鎖、及び、野生型B軽鎖)と共に前記のレポーターコンストラクトと293TtTS細胞に共形質移入された。細胞は1μg/mlのテトラサイクリンで処理された。コペポーダルシフェラーゼ(GLuc)活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスYFP発現は蛍光顕微鏡によって観察された。結果は図9に示される。前記の結果は、レポーターは転写活性化因子の切断によってオフにされることを確証した。変異型BoNT/A軽鎖(mLC−A)とGal4/BD−SNAP25−NFκB/ADで共形質移入されると、それらが使用されると有効なBoNT/A軽鎖阻害剤が存在するのと同様になるのだが、キメラBD−SNAP25−NFκB転写活性化因子はG5TO4プロモーターを大いに活性化するが、野生型BoNT/A軽鎖(LC−A)とGal4/BD−SNAP25−NFκB/ADで共形質移入されると、BD−SNAP25−NFκB転写活性化因子はG5TO4プロモーターをあまり活性化しない。キメラGal4/BD−VAMP−NFκB転写活性化因子/ADは、BoNT/A軽鎖発現プラスミドで形質移入されると、BoNT/A軽鎖によって切断されないので、G5TO4プロモーターを活性化する。キメラ転写活性化因子コンストラクトGal4/BD−VAMP−NFκB/ADは、野生型BoNT/B軽鎖(LC−B)とGal4/BD−VAMP−NFκB/ADで共形質移入されると、前記転写因子が切断されるので、前記レポーターを活性化しない。RLU値で表現されるコペポーダルシフェラーゼ活性は可視化されたYFP蛍光の結果と一致しており、そして、該レポーター反応の定量測定を提供する。切断されない転写活性化因子対切断される転写活性化因子で、SNAP−25転写活性化システム、及び、VAMP転写活性化でそれぞれ20倍と23倍である。
【0051】
ストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)、サイアン蛍光タンパク質(CFP)、及び、BoNT/A軽鎖、又はBoNT/B軽鎖がフレームを揃えて順番に融合した、これらのタンパク質から成る二つのBoNTコンストラクトがある。これらの二つのコンストラクト、SBP−CFP−BoNT/A−LC及びSBP−CFP−BoNT/B−LC、はレンチウィルスベクターpLenti4/TO/V5−DEST(Invitrogen, Inc.,Catalog No. K4965−00)にクローンされた。前記融合遺伝子はTATAボックスの直ぐ上流に挿入された2コピーのTetオペレーターを持つ改変サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターから発現される。Tet反応性リプレッサー(TRex,Invitrogen)又は転写サイレンサーtTS(Clontech)が前記プロモーターの機能を停止させる。しかしながら、テトラサイクリンの存在下では、TRex、又は、tTSはTetオペレーターへの結合に失敗し、CMVプロモーターは充分に活性的である。前記コンストラクトは6穴プレートに蒔かれた293−tTS細胞に形質移入された。
【0052】
BoNT/LCの発現は蛍光顕微鏡法によるCFP発現の観察によって検出された。これらのBoNT/A−LC、及び、BoNT/B−LCのレンチウィルコンストラクトはレポーター細胞系列の構築を完成させるために使用されることができる。
【0053】
実施例5
転写活性化因子及びプロテアーゼコンストラクトを有する相補的安定レポーター細胞系列
A)VAMP切断オフ
TetOのない前記レポーターコンストラクトの生物学的機能性を評価する為に、このレポーターコンストラクトは前述したようにレンチウィルベクターを用いてHEK293細胞に安定的に組み入れられた。この安定的レポーター細胞系列を構築基盤として使用して、VAMP切断オフシステムが、一時的形質移入を用いる対応するプロテアーゼコンストラクト(BoNT/LC−B)及び転写活性化因子(BD−VAMP2−AD)での相補により試験された。形質移入後すぐに前記レポーターコンストラクトからのビーナス(YFP)とGLucの両方の経時的発現がアッセイされた。具体的には、レポーター細胞は、2mlの完全成長培地中、6穴滅菌ポリリシンコートプレートに約70%の集密になるまで培養された。転写活性化因子BD−VAMP2(25−94)−NFκBプラスミド単独での形質移入の為に、4μgのプラスミドDNAがCalPhos Kit (Clontech Laboratories Inc.)を用いて形質移入された。BD−VAMP2−ADとBoNT/LC−Bで共形質移入される細胞には、1対3の転写活性化因子:プロテアーゼコンストラクトプラスミドDNAの比率が用いられた。プレートは二酸化炭素恒温器に一晩37℃で保温された。12時間後、培地は2mlの新しい完全成長培地と置換され、5μg/mlのテトラサイクリンがBoNT−LC−Bの発現を開始する為に培地に加えられた。BoNT−LC−Bのみで形質移入された細胞はLC−B発現のポジティブ対照として用いられた。BD−VAMP2−AD単独で形質移入された細胞の培地にテトラサイクリンは添加されず、対照として用いられた。培地のアリコットが、24時間ごとに新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスYFPの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。24時間、48時間、及び、72時間の間隔で異なる穴のプレート表面からかき集められた細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄され、4℃、10,000 rpmで10分間遠心分離され、ゲル添加液で融解された。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、それから、ウサギ抗GFP抗体(Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として、及び、アルカリフォスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を二次抗体として用いるウェスタンブロットのためPVDF膜に転写された(図11)。TetOを欠くレポーターコンストラクト、切断オフVAMP転写活性化因子、及び、BoNT/B軽鎖プロテアーゼコンストラクトを含む細胞システムのBoNT/B軽鎖によるVAMP転写活性化因子の切断によるシグナルの減少を示すことに成功したことは、このシステムはまたBoNT/B軽鎖阻害剤のハイスループットスクリーニングに適していることを示す。
【0054】
B)SNAP25切断オフ
前述の同じ安定的なレポーター細胞系列を用い、一時的形質移入を用いる対応するプロテアーゼコンストラクト及び転写活性化因子での相補によりSNAP25切断オフシステムが試験された。再述すると、形質移入後すぐに前記レポーターコンストラクトからのビーナス(YFP)とGLucの両方の経時的発現がアッセイされた。具体的には、レポーター細胞は、2mlの抗生物質を欠き血清を含む完全成長培地中、6穴滅菌ポリリシンコートプレートに約70%の集密になるまで培養される。転写活性化因子BD−SNAP25(104−206)−NFκBプラスミド単独での形質移入の為に、4μgのプラスミドDNAがリポフェクタミンTM2000(Invitrogen)を用いて形質移入された。BD−SNAP25NFκBとBoNT/LcAで共形質移入される細胞には、4μgずつのプラスミドDNAが1穴ごとに用いられる。形質移入の6時間後、5μg/mlのテトラサイクリンがBoNT−LC−Aの発現を開始する為に培地に加えられた。BoNT−LC−Aのみで形質移入された細胞はLC−B発現のポジティブ対照として用いられた。BD−SNAP25−NFκB単独で形質移入された細胞の培地にテトラサイクリンは添加されず、対照として用いられた。培地のアリコットが、24時間ごとに新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。24時間、48時間、及び、72時間の間隔で異なる穴のプレート表面からかき集められた細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄され、4℃、10,000 rpmで10分間遠心分離され、ゲル添加液で融解された。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、それから、ウサギ抗GFP抗体(Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として、及び、アルカリフォスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を二次抗体として用いるウェスタンブロットのためPVDF膜に転写された(図11)。
【0055】
C)(テトラサイクリン制御)レポーターコンストラクトを有するSNAP25切断オフ安定細胞系列
TetOにより制御される安定なレポーター細胞系列(クローン17番)を検証するために同様の実験法がとられた。この場合、クローン17番は、BD−SNAP25−ADを有するレンチウィルスにより形質導入され、引き続いて一時的形質移入によるBoNT/LC−Aテトラサイクリン誘導プロテアーゼコンストラクトで相補された。テトラサイクリンへ曝露され、GLucシグナルは最初の48時間の間に劇的に減少した。BoNT/LC−Aの誘導に伴うこの大幅なシグナルの減少は、前記システムが前記薬剤スクリーニング法とBoNT/LC−Aの衰微のアッセイに機能するであろうことを示す。
【0056】
実施例6
テトラサイクリン有、又は、テトラサイクリン無の発現
TetOを欠くレポーターコンストラクト、転写活性化剤としてのSNAP25 (1206)−BD−AD、プロテアーゼコンストラクトとしてのBoNT/E軽鎖の一時的な形質移入、及び、安定的形質導入において、ルシフェラーゼシグナルは、図13で示されるように、高い基礎シグナルレベルにかかわらず、BoNT/E軽鎖によるSNAP25(1−206)−BD−ADの切断後、少なくとも2倍に増加する。BoNT/E軽鎖による切断の後、カルボキシ末端SNAP25切断産物は安定である。したがって、BoNT/A切断であるようには、切断後のBD−ADの分解はない。SNAP25(1−206)−BD−ADの高い基礎シグナル、及び、C末端SNAP25(1−206)−BD−ADの急速な分解のため、異なるSNAP23切断オンシステムが使用される。このシステムは、BD−AD−SNAP25(104−206)−VAMP全長、又は、BD−AD−SNAP25(104−206)−シンタキシン1a全長から成る。
【0057】
実施例7
SNAP25切断オンアッセイを行うための別の指標システム
短縮型のSNAP25(104−206)を含むどんな転写活性化因子コンストラクトもパルミトイル化を欠き、結果として、膜局在が本質的にできない。この転写活性化因子のVAMP2、又は、シンタキシン1aのような膜アンカーへの融合により、切断オン調査を行うための別の方法が可能になる。ありうる転写活性化因子の構成は、BD−AD−SNAP25(104−206)−VAMP2、又は、BD−AD−SNAP25(104−206)−シンタキシン1aである。
【0058】
これらの融合コンストラクトは前述したのと同様に、(TetOを欠く)安定レポーター細胞系列の前記融合転写活性化因子、及び、BoNT/LC−A、あるいは、BoNT/LC−Bのどちらかとの両方での一時的形質移入により、試験される。全ての切断オンシステムを使用した場合と同様に、前記レポーターのシグナルはテトラサイクリンがないと基線で低く、転写活性化因子のタンパク質分解性切断でシグナルが増加するであろう。テトラサイクリン添加後、培地のアリコットが新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。これらの融合転写活性化因子コンストラクトの主要な利点は、それらが多数のBoNT/LC血清型の普遍的な検出器として作用する能力である。従って、単一の指標細胞系列がどの軽鎖でもその存在を検出する能力が認識される。もし、前記システムがBoNT毒素のレセプターを持ち、前記毒素を効率よく内部に取り入れることができる細胞で創出されるなら、この細胞系列は、完全に活性のあるBoNTの存在に対する高親和性敏感細胞ベースのバイオ検出器として機能することができる。もし、前記毒素を鋭敏に検出するために環境中から毒素を取り込む十分な能力を持つ適切な細胞系列を見つけることができないのなら、前記細胞系列の毒素に対する親和性と感受性は、必要なタンパク質レセプターとBoNT毒素細胞性レセプターのガングリオシド成分を過剰発現する安定な細胞系列を創ることで高められうる。
【0059】
実施例8
炭疽菌プロテアーゼ阻害剤を検出する指標システム
ある実施例において、転写活性化因子は、プロテアーゼ基質ドメインがBS−MEK1−ADの形状の中のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK1)全長(NCBI基準配列:NP_002746)であるように構築される(A.P. Chopra, S.A. Boone, et al. JBC 278:9402-9406 (2003))。この転写活性化因子コンストラクトは、非テトラサイクリン制御レポーターコンストラクトを有する安定な細胞系列の実施例で用いられたように、同様にTetOを欠く安定なレポーター細胞系列に移入される。したがって、この場合、Tet誘導性プロテアーゼコンストラクトは、MEK1を切断する炭疽菌致死因子(LF)プロテアーゼ(NCBI基準配列: AAY15237)である。レポーター細胞に存在する全てのコンストラクトを用い、炭疽菌致死因子プロテアーゼの阻害剤が、ビーナスとGLucからのレポーターシグナルの増加に基づいて選択される。
【0060】
実施例9
ユビキチン関連プロテアーゼ阻害剤を検出するための指標システム
別の実施例において、転写活性化因子は、プロテアーゼ基質ドメインがカルボキシ末端5−AAを有するヒトsmall ubiquitinrelated modifier1 (SUMO1)タンパク質(NCBI基準配列:ABM87155)であるように構築される。5−AAカルボキシ末端ペプチドは(ユビキチン様)特異的プロテアーゼ(ULP1)により切断され、したがって、プロテアーゼコンストラクトはプロテアーゼとしてのULP1(NCBI基準配列:AAG33252)で構築される。プロテアーゼコンストラクトと転写活性化因子コンストラクトの両方が一時的形質移入によりTetOを欠く安定な細胞系列に同様に移入される。全ての3要素、レポーターコンストラクト、転写活性化因子切断オフSumoコンストラクト、及び、ULP1プロテアーゼコンストラクトが発現されると、ルシフェラーゼシグナルが消える。このシステムはSUMOプロテアーゼ阻害剤のハイスループットスクリーニングに適当である。
【0061】
実施例10
プロテアーゼ阻害剤のスクリーニング
前記の最終的なレポーター細胞系列はsiRNAノックダウンという小分子阻害剤によって機能解析される。BoNT/A−LCスクリーニングアッセイで、確立された阻害剤(例えば、ヒドロキサム酸化合物のどれか)が使用される。BoNT/B−LCには既知の小分子阻害剤がないので、BoNT/B−LCを標的とするDahrmacon/Thermo−Fisher社由来のsiRNAが使用される。本発明のある実施形態において、標的につき3種のsiRNAが開発されうる。さらに、ノックダウンは本当で、特異的であり、そして、非特異的な効果がないことを確認する対照として、ごちゃ混ぜの(スクランブル)siRNAが使用される。293T細胞は前記siRNAとBoNT/A軽鎖プラスミド、又は、BoNT/B軽鎖プラスミドで共形質移入され、最終的なレポーター細胞系列の確認のため、最も有効なsiRNAを選択するのに使用される。次に、前記有効なsiRNAとスクランブルsiRNAの両方が前記最終的レポーター細胞を形質移入するために使用される。BoNT/LCの発現を形質移入直後に開始するため、1μg/mlのテトラサイクリンが培地に添加される。ルシフェラーゼアッセイのため、1日目から4日目まで培地のアリコットが回収される。ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされうる。前記レポーター(ルシフェラーゼとビーナス蛍光の両方)の最終的レポーター細胞での発現は有効なsiRNAにより回復される。
【0062】
レポータースクリーニングは半陽性(BoNT/A軽鎖阻害剤、又は、BoNT/B 軽鎖のsiRNA)、及び、半陰性(DMSOのみ)対照でマイクロプレートを運用し、Z値を測定することにより適正化される。各レポーター株の効率性を決定するために用いられる条件はマイクロプレート(96穴、又は、384穴)の密度、試験される化合物の濃度、DMSO濃度への寛容性、温度、試験化合物の添加前のレポーター株の集密の程度、生物発光を読みとる前のマイクロプレートの保温時間、及び、ルシフェラーゼアッセイのため分取される培地の量を含む。適切な0.5より大きいZ因子を達成するために実験ごとに条件は変更されうる(J.H. Zhang, T. D. Chung, and K. R. Oldenburg, J Biomol. Screen 4:67-73 (1999))。本発明のより好ましい実施形態において、スクリーニングは384穴ディッシュでなされる。十分なZ因子を維持するために必要ならば、96穴ディッシュが使用されてよい。
【0063】
レポーター株は培養され、96穴、又は、384穴乳白色スクリーニングプレートへ滅菌Wellmateマイクロプレート試薬分注器(ThermoFisher, Inc.)を用いて蒔かれる。阻害剤のスクリーニングのために、化合物のマスタープレートがスクリーニングの日に室温で溶かされ、予め決定されていた量の化合物がSciclone ALH 3000液体操作ロボット(Caliper, Inc.)とTwister IIマイクロプレート操作器Caliper, Inc.)を用いて加えられる。プレートはそれから確定された適切な時間と温度の条件で保温される。それから、予め決定されていた量の細胞培養液がScicloneロボットで適切に希釈するように新しいマイクロプレートに移される。Wellmate試薬分注器を用いてルシフェラーゼの基質が加えられ、Envision Multilabelマイクロプレートリーダー(PerkinElmer)で生物発光が測定される。
【0064】
実施例11
阻害剤の最適化されたスクリーニング
阻害剤をスクリーニングするために用いられる該方法が、スクリーニング条件を査定するために試験的スクリーニングにかけられる。最適化されたアッセイの構成が2、3の異なる濃度での約2,000化合物の試験的スクリーニングにおいて試験される。各プレートに対照、8穴について0%阻害(DMSOのみ)、そして、8穴についてほぼ完全な阻害(BoNT/A軽鎖阻害剤、又は、BoNT/B軽鎖のsiRNA)、が含まれる。上述した方法にしたがい、アッセイプレートは適切なレポーター細胞と試験される化合物を受ける。このスクリーニングから得られるデータは変動(%変動係数)、様々なZスコアカットオフ値でのヒット率を決定するのに使用され、ハイスループットスクリーニングが始まる前に解決が必要なアッセイに関するどんな問題をも同定することができる。前記試験スクリーニングからのデータはそれから、0.1%から1%のヒット率を確定するためにスクリーニングでの化合物の濃度(おそらく、25μMから40μMまでの範囲)を決定するために使用される。ある化合物をヒットであると示す判定基準は前記試験スクリーニングで決定される。しかしながら、3より大きい、又は、5より大きいZスコアが適切であるようである。各試料についてのZスコアは、負の対照の平均相対光単位から試料の相対光単位を引き算し、その差を負の対象の標準偏差で割り算することによって得られる。
【0065】
実施例12
阻害剤のスクリーニング
本発明のある実施形態にしたがう方法はまた10μM以下の50%阻害濃度(IC50)を有するプロテアーゼ阻害剤を同定し、確認するために様々な化合物ライブラリーを選別するのに使用される。
【0066】
上述したハイスループット細胞性BoNT/A軽鎖、及び、BoNT/B軽鎖スクリーニングが、これらのボツリヌス神経毒素のどちらかに対して効力がある阻害活性を持つ化合物を同定するために独立した小分子と自然産物のライブラリーに適用される。前記スクリーニングからのヒットは再アッセイにより、それらはBoNT/B軽鎖、又は、BoNT/A軽鎖のどちらかを阻害するが両方を阻害することはないことを確認され、及び、濃度依存的阻害調査(IC50)におけるそれらの効力を示すことにより確認される。
【0067】
A.化合物ライブラリーと試料操作
NERCEライブラリー。ハーバード大学医学部ニューイングランド地方生物防御、及び、新興感染症総合教育拠点(NERCE/BEID)の国立スクリーニング研究室(NSRB)の化合物コレクションが切断オフ細胞ベースBoNTスクリーニングシステムにおいて選別される小分子ライブラリーの一例として使用される。このライブラリーは、難溶性、潜在的な界面活性剤様の活性、水性溶液での安定性の欠如、及び、化学反応性のような望ましくない性質を有する化合物を選別したNERCEの化学顧問達のグループによって集められてきた。現在のところ、我々の自家製のコレクションと重複しているものを含むが、約165,000種の化合物が利用可能である。その二つのライブラリーの重複は10%未満である。それ故、組み合わせたライブラリーの資源は約300,000の個別の化合物に相当する。
【0068】
B.一次BoNT/A軽鎖スクリーニングおよび一次BoNT/B軽鎖スクリーニングの応用
候補化学物質ライブラリーの化合物が96穴フォーマット、又は、384穴フォーマットで、上述した細胞ベースBoNT/A軽鎖ハイスループットスクリーニング、及び、BoNT/B軽鎖細胞ベースハイスループットスクリーニングに対して検討される。スクリーニングライブラリーの化合物は96穴のマスタープレート中に100%DMSO中に2.5mMの濃度で−20℃で保存される。マスタープレートが溶かされ、上述した試験スクリーニングで決定された量の化合物がSciclone ALH 3000液体操作ロボット(Caliper, Inc.)とTwister IIマイクロプレート操作器Caliper, Inc.)を用いて、一度に4枚の96穴元プレートを一枚の384穴プレートに組み合わせて加えられる。前記スクリーニングプレートは、上述した試験スクリーニングで述べたように最初と最後の列に正の対照と負の対照を含む。
【0069】
プレートリーダーによって作られた生データは次のように加工される。相対的発光単位(RLU)データが取得され、プレートのシリアル番号をデータベースエントリーに関連付けることで、半自動的方法で解析される。各化合物のエントリに数値の情報を関連付け、%阻害とZスコアを計算する。さらに、Z因子計算は正の対照と負の対照に基づきプレートごとに行われ、0.6より大きいZ値は十分であるとみなされ、そのプレート中の化合物からのデータがデータベースに受け入れられる。%阻害、Zスコア、及び、50%阻害濃度(IC50)及び逆スクリーニングの結果のような確認/査定データを含む全てのスクリーニングデータが一つの中央データベース(CambridgeSoftのChemBioOffice)に保存される。調査された一連の化学物質の構造と活性の関係が短時間で解析される。さらに、商業上のデータベースから類似化合物が短時間で同定され、取得され、データベースに登録され、生物学的試験のために提出される。
【0070】
C.ヒット確認と立証
一次ヒットとして示すための判定基準を満たす化合物は、前述した3段階からなる確認プロセスを受ける。第一に、一次ヒットはストックプレートから確認ストックプレートへ選択され、4枚の確認アッセイプレートのセットを作成するために複製される。その4枚の確認アッセイプレートは、各化合物について4つの新しいデータポイントを作成するための一次スクリーニングアッセイで使用される。4回反復されたアッセイで少なくとも3回、50%より大きい阻害と3より大きいZスコアを示すものが確認されたヒットである。第二に、その他のボツリヌス神経毒素の阻害について複製物において逆スクリーニングされるものが確認されたヒットである。第三に、確認されたヒットは、BoNT/A軽鎖、及び、BoNT/B軽鎖の阻害についてのFRETアッセイで濃度依存的活性について検討されうる。IC50はそれぞれの効力を位置づけるために決定される。
【0071】
シグナル増大細胞ベースアッセイの信頼性のため、スクリーニングプロセスを通してZスコアが0.5よりも大きければ、スクリーニングにおいて偽陽性に出会うことはほとんどない。ボツリヌス神経毒素と生物発光の誘発に必要なプロセスの両方を阻害することによって偽陰性が生じうる。しかしながら、これらのヒットは検出可能であっても、追求するには偶然でで十分な質をもたないであろう。別のボツリヌス神経毒素での逆スクリーニングを通り抜けたヒットは乱雑ではないようであろう。一次ヒットを査定し、順位をつけるために、いくつかの二次アッセイが以下に述べるように適用され、前記スクリーニングからのヒットをさらに限定する。もし、先に確定した判定基準でヒット率が0.1%の下であれば、そのスクリーニングプレートのZ値が約0.6よりも上である限り、ヒットについてより低い阻害レベルを許容することにより、そのヒット率が上昇しうる。それは、負の対照と正の対照の間に広い分離帯をしめし、各ヒットは完全に活性のある対照より少なくとも3標準偏差分下である。
【0072】
本発明のある実施形態にしたがう方法の次の段階で、同定された各阻害剤が査定され、多数のヒットに効力と選択性で順位が付けられる。BoNT/A、及び、BoNT/Bの評価された阻害剤は10μM以下のIC50を持つことができ、10以上の選択性インデックスCC50/IC50を持つことができ、重大な細胞毒性をもたないことがありえ、そして、一次神経細胞モデルにおいて確認された活性をもつことができる。
【0073】
本発明のある実施におけるこの段階は、上述したハイスループットスクリーニングにおいて発見されたスクリーニングヒット、又は、化学型に順位をつけるために必要な効力と特異性についての情報を引き出す。ある望ましい実施形態において、4種の活性が査定されうる。(a)インビトロ効力(BoNT/Aエンドペプチダーゼ、及び、BoNT/Bエンドペプチダーゼのインビトロでの阻害に対するIC50)、(b)特異性(その他のエンドペプチダーゼ、BoNT/F、炭疽菌致死因子(AT−LF)、及び、一連のヒトマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)のインビトロでの阻害効力に対するIC50、及び、キレート化性質の試験)(c)細胞毒性(すなわち、前記化合物の培養哺乳類細胞でのCC50)、及び、(d)インビボ効力(すなわち、一次ラットニューロンでのBoNT/A SNAP−25切断の阻害、又は、VAMP切断活性のBoNT/B阻害に対するIC50,および、神経軸索の成長阻害の救助)。合格した化合物は細胞毒性、及び、その他の非関連エンドペプチダーゼに対する活性をほとんど、又は、まったく示さないが、インビトロで、及び、単離されたニューロンでBoNT/A、及び/又は、BoNT/B作用の強力で特異的な救出をもたらす。
【0074】
ラットニューロン細胞SNAP−25切断アッセイ
前述したように、細胞が7日から8日齢のラット小脳から回収され、洗浄され、6穴プレートで培養され、培地交換をしながら一週間培養される。いったん、前記の細胞が中立的にネットワーク状になると、それらは化合物、又は、希釈剤(DMSO)と15分間、前保温される。細胞はそれからBoNT/Aで接種され、採取前に37℃、5%二酸化炭素で3時間保温される。細胞は1M水酸化ナトリウム溶液でBoNTを不活性化するために処理され、遠心分離前にプレート表面からこそぎ落とされ、ゲル添加液で溶解される。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、ウサギ抗SNAP−25抗体とHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いる免疫ブロットのために膜に転写される。走査デンシトメトリーでバンドの強度が読まれ、補正される。
【0075】
本発明は望ましい実施形態に関して述べられてきた。特定の値、関係、物質、及び、工程が本発明の構想を述べることを目的として表明されてきたが、一方、様々な改変、及び/又は、修飾が、広く述べられた本発明の基本的な構想、及び、動作原理の精神、又は、範囲から離れることなく、具体的な実施形態でしめされた本発明に対してなされうることが当業者によって理解されるであろう。上の教示の観点から、当業者は、本明細書で教示された発明から離れることなくそれらの細目を修飾することができると認識されるであろう。本発明の基礎となる構想の望ましい実施形態、および、ある修飾を十分に明らかにしたので、当業者がその基礎となる構想に精通すると、さまざまなその他の実施形態、並びに、本明細書で示し、述べた実施形態のある改変、及び、修飾は明らかに彼らによって起こされるであろう。そのような修飾、変法、及び、その他の実施形態が添付される請求項、又は、その同等物の範囲にある限り、それらすべてを含むことが意図される。それ故、本発明は、本明細書で具体的に明らかにされた以外の態様で実行されうることが理解されるべきであろう。結果として、本実施形態は、例示的なものであり制限的ではないとあらゆる点でみなされうる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、プロテアーゼ阻害剤同定検定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼは生物学的プロセスに重要な役割を果たす。しかしながら、プロテアーゼはまた生物学的システム、特にウィルス、毒素、及び、病原微生物により配達されたシステムに重大な害を及ぼす。プロテアーゼ阻害剤を開発し、特に細胞でのプロテアーゼ活性を検定する方法はバイオテクノロジーの重要な分野である。例えば、ボツリヌス神経毒素(BoNTs)は最も効力がある既知の毒素である(S.S. Arnon, R. Schechter, et al. Jama 285:1059-70. (2001)、及び、B.M. Paddle. J Appl Toxicol 23:139-70. (2003))。ボツリヌス中毒症は、細菌クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)で汚染された食物の摂取、開放創での該細菌のコロニー形成、又は、該毒素の摂取、若しくは、呼吸が原因となって引き起こされうる。これらの毒素は軍人、及び、文民の両方の集団に対する深刻な脅威である(S.C. Clarke. Br J Biomed Sci 62:40-6 (2005)、R.P. Hicks, M.G. Hartell, et al. Curr Med Chem 12:667-90 (2005)、D. Josko. Clin Lab Sci 17:30-4 (2004))。ヒトにおけるボツリヌス毒素の致死量は体重1kg当たり1ng以下である(J.C. Burnett, E.A. Henchal, et al. Nat Rev Drug Discov 4:281-97 (2005)、J.C. Burnett, J. J. Schmidt, et al. Bioorg Med Chem 13:333-41 (2005)、B.M. Paddle J Appl Toxicol 23:139-70 (2003))。疾病管理防止センター(The Centers fo Disease Control and Prevention)はこれらの毒素をA分類(最優先)のバイオ脅威剤(bio−threat agents)として記載してきた。BoNTsは危険ではあるが、有益な医療化合物として認識されてきた。BoNTsは、今では、ある範囲の病気、及び、美容で用いられる確立したバイオ治療薬であり、国内、及び、海外でますます大量に生産されている(R. Bhidayasiri, and D.D. Truong, J Neurol. Sci.235:1-9 (2005)、C.L. Comellaand and S.L. Pullman. Muscle Nerve 29:628-44 (2004)、K.A. Foster. Drug Discov Today 10:563-9 (2005)、R.G. Glogau. Clin J Pain 18:S191-7 (2002)、J.D. Marks. Anesthesiol Clin North America 22:509-32, vii. (2004)、C. Montecucco and J. Molgo. Curr Opin Pharmacol 5:274-9 (2005))。それらの有益性の良くないの結果は、該神経毒が悪用の為にますます入手しやすくなったことである。同様に、使用の増加は、治療中の意図せぬ有害作用発生の可能性を上昇させる(T.R. Cote, A.K. Mohan, et al. J Am Acad Dermatol 53:407-15 (2005))。
【0003】
いったん、肺に吸入されると、又は、胃腸管に摂取されると、BoNTsは呼吸上皮、又は、粘膜を越えて血流に経細胞輸送され、それらは、末梢コリン茶道性シナプス前神経終末に結合して入り込む前に、細胞間隙に入り込むことができる。いったん、神経細胞が冒され横隔膜の筋肉が機能を停止すると、救命医療機械的人工呼吸が、現在のところ、唯一の治療上の選択肢である。しかしながら、内部移行したBoNTsの効果は数カ月にわたることができる(R. Eleopra, V. Tugnoli, et al. Neurosci Lett 256:135-8 (1998)、F.A. Meunier, G. Lisk, et al. Mol Cell Neurosci 22:454-66 (2003))。それ故、限られた数の個体が同時に冒されても、長期にわたる人工呼吸は非現実的であろう。
【0004】
異なる三次構造とかなりの配列の相違を所有する七種のBoNT血清型(A−G)が存在する。構造的に、各血清型は100KDaの重鎖(HC)と50KDaの軽鎖(LC)から成る。それらは、最初、一本のポリペプチド鎖として合成され、それは、細菌の、又は、宿主のプロテアーゼによって切断される。前記のポリペプチド鎖は、神経標的細胞の還元的な細胞質環境に到達するまで、ジスルフィド結合によって連結されたままである(D.B. Lacy, W. Tepp, et al. Nat Struct Biol 5:898-902 (1998). L.L. Simpson. Annu Rev Pharmacol Toxicol 44:167-93 (2004))。軽鎖は亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。
【0005】
いったん、肺に吸入されると、又は、胃腸管に摂取されると、BoNTsは呼吸上皮、又は、粘膜を越えて血流に経細胞輸送され、それらは、末梢コリン茶道性シナプス前神経終末に結合して入り込む前に、細胞間隙に入り込むことができる。重鎖は、神経細胞に結合し、軽鎖を重鎖のカルボキシ末端半分(HCC)を介して細胞質へ輸送し、重鎖のアミノ末端半分(HCN)により形成された孔を通ってエンドソームから細胞質へ軽鎖を輸送することによるタンパク質分解性軽鎖の輸送システムとして働く。各BoNT血清型は、神経筋接合部でのアセチルコリン含有小胞の融合と放出に責任があるSNAREタンパク質の構成要素を切断するプロテアーゼである(B.R. Singh. Nat Struct Biol 7:617-9 (2000)、K.J. Turton, A. Chaddock, and K.R. Acharya, Trends Biochem. Sci. 27:552-8 (2002))。BoNT血清型A及びBoNT血清型EはSNAP−25(シナプトソーム結合タンパク質(25KDa))を切断する(T. Binz, J. Blasi, et al. J Biol Chem 269:1617-20 (1994))。血清型B、D、F、及び、GはVAMP(小胞結合膜タンパク質、シナプトブレビンおよびVAMP‐2とも称される)を切断する(G. Schiavo, F. Benfenati, et al. Nature 359:832-5 (1992)、G. Schiavo, C. Malizio, et al. J. Biol. Chem. 269:20213-6 (1994)、G. Schiavo, O. Rossetto, et al. J Biol Chem 268:23784-7 (1993)、G. Schiavo, C. C. Shone, et al. J Biol Chem 268:11516-9 (1993)、J.J. Schmidt, and R. G. Stafford. Biochemistry 44:4067-73 (2005))。血清型CはSNAP−25とシンタキシン1Aの両方を切断する(J. Blasi, E.R. Chapman, et al. Embo J 12:4821-8 (1993))。SNAREのBoNT介在性切断は、運動ニューロンが神経筋接合部でのアセチルコリンを放出するのを妨害すること、および、同様にアセチルコリン放出の抑制を介して自律神経の機能をさえぎることによる弛緩麻痺という結果になる。いったん、横隔膜の筋肉が冒されると、呼吸が損なわれ、究極的には窒息することになる。
【0006】
7種類のBoNT血清型のアミノ酸配列はかなり異なる。しかしながら、前記の異なる血清型は全体的に類似した折り畳み方をとり、触媒中心の局面は保存されている(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Trends Mol Med 11:377-81 (2005))。BoNT/A及びBoNT/B のX線結晶構造は、これら二種類の血清型の亜鉛結合部位の8オングストローム内の領域は、22残基の内17残基同一であるほど高度に相同である(S. Swaminathan & S. Eswaramoorthy, Nature Structural Biology 7:693-699 (2000))。しかしながら、BoNT/BよりもBoNT/Aでよりかなり深く埋め込まれている亜鉛結合ポケットを含む15オングストローム内ではかなりの変化が観察される。それ故、広範囲の潜在的阻害剤ではありえないほど、前記の血清型の間で活性部位は十分に異なる。さらに、結合すると、基質は、BoNT軽鎖の外周を包み込み、異常に大きい基質酵素境界面を作り出す(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Nature 432:925-9 (2004))。BoNTの基質特異性はまた、「非活性部位」結合と呼ばれる、活性サイト遠位部位を渡る長い基質/軽鎖プロテアーゼ境界面上のBoNTの基質との結合によって決定される(M.A. Breidenbachand A.T. Brunger. Trends Mol Med 11:377-81 (2005))。
【0007】
ワクチン法がBoNTに対する生物テロ防御で役割を果たすであろう(M.P. Byrne and L.A. Smith. Biochimie 82:955-66 (2000)、J.B. Park and L.L. Simpson. Expert Rev Vaccines 3:477-87 (2004))。しかしながら、BoNTへの曝露の前に、BoNTの同定と危険にさらされている大集団の人間へのワクチン接種は問題である。有効な曝露後処置である治療法の開発が必須である。低分子量非ペプチド阻害剤は、曝露後治療薬の開発にとり最善の機会を提供する。前記の経路の後の段階、及び、特定のタンパク質分解段階をさえぎることは曝露後の治療にとり望ましい。そのような化合物は中毒になっているニューロンの細胞質に入り込むことができねばならないであろうし、特異的に作用しなくてはならないであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を同定するためのシステムを提供する。本システムは、少なくとも2つの成分を有する。第1の成分は、少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を有するレポーターコンストラクトであり、これらはすべて、転写活性化剤と機能的に連携してレポーター遺伝子を発現するために、機能的に連結している。第2の成分は、核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤である。本システムは、プロテアーゼ基質ドメインに対するプロテアーゼ活性に作用する作用物質の発見と評価を行うことができる。また、本システムは、転写活性化剤のプロテアーゼ基質ドメインを特異的に切断する少なくとも1つのプロテアーゼ又はプロテアーゼ候補を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の別の好適な実施形態は、上述のシステムを用いてプロテアーゼ阻害剤を同定する方法である。本発明のさらに別の実施形態では、上述のシステムを用いて環境サンプル中のプロテアーゼの存在を確認する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の多くの利点は、下記図面を参照することで、当業者にとってより理解しやすいものとなる:
【図1】図1A及び1Bは、本発明の1つの実施形態に従って作製された3つのコンストラクトと、それらの他の分子との相互作用を示す模式図であり、プロテアーゼ存在下でのレポーターの転写シグナルの変化を評価するためのものである。1つのコンストラクトは、転写活性化剤(「TA」)を提供する。TA剤は、結合ドメイン(「BD」)、プロテアーゼ基質(「PS」)ドメイン、及び転写活性化ドメイン(「AD」)を含む。第2のコンストラクトは、プロテアーゼコンストラクト(「PC」)である。PCは、プロモーター、TetOなどのレギュレーター配列、及び、TAのPCをタンパク質分解活性で切断するプロテアーゼの配列を含む。第3のコンストラクトは、レポーターコンストラクト(「RC」)である。1つの好適な実施形態のRCは、転写プロモーター領域とレポーター遺伝子を含む。転写プロモーター領域は、少なくとも2つの構成要素を含む:TA剤のBDドメインに機能的に対応する少なくとも1つの結合部位(「BS」)配列、及び、少なくとも1つのTATAボックス配列を有する最小プロモーター領域。この図に示すシステムは、PCのプロテアーゼがPSを切断した場合、転写が停止し、シグナルが減少することから、「切断オフ」システムと呼ばれる。
【図2】図2A及び2Bは、図1A及び1Bで概略を説明した3つのコンストラクトの概略図であり、説明/典型例として、TA剤の一部として示されているドメインは:Gal4オペロンの転写因子に由来するBD、PSはVAMP2(アミノ酸25〜94)又はSNAP25(アミノ酸104〜206)のいずれか、そして、ADは核内因子κB(「NFκB/AD」)である。図1BにおいてRCの一部として示されている構成要素は:TA剤のGal4 BDに対応する少なくとも1つのBSからなるプロモーター、及び、TATAボックスを含む最小アデノウイルスプロモーター領域である(E.D. Lewis, J.L. Manley, Mol.Cell Biol. 5: 2433-2442 (1985))。PCは、発現を調節するためのTetO配列を有するCMVプロモーターと、BoNT/Aの軽鎖を発現するためのSBP−CFP−BoNT/LC−A配列とを含む。他のコンストラクトは、任意のボツリヌス毒素の軽鎖、又はTA剤のPSを切断するプロテアーゼを含んでいてもよい。
【図3】図3A及び3Bは、TA剤のBD及びADがPSの末端に結合している、本発明の1つの実施形態によるシステムの概略図である。PSは、膜に局在しているか、又は細胞の核の外側にとどまる。このシステムにプロテアーゼが加えられると、PSを切断し、BD−AD対が遊離され、レポーター遺伝子(「RG」)の転写が促進される。このシステムは、「切断オン」システムと呼ばれる。
【図4a】図4aは、PSがVAMP−2である「切断オン」システムの概略図である。
【図4b】図4bは、PSがSNAP−25である「切断オン」システムの概略図である。
【図5】図5は、最小プロモーターの漏出を制御する追加構成要素を有する、TA剤及びRCの概略図である。追加構成要素は、転写調節因子の少なくとも1つのコピーであり、好適な実施形態の1つでは、転写調節因子はTetOプロモーター領域(5’−tccctatcagtgatagagatc−3’)である。具体的には、図示する実施形態では、コンストラクトはTetOプロモーター配列の4つのコピーを使用している。
【図6】図6は、安定に組み込まれたRCについて、テトラサイクリンの存在及び非存在での生物発光率を示す実験結果の棒グラフである。図中のクローンは、TA剤コンストラクトを含まない。
【図7】図7は、TA剤の存在下における安定なレポーターについて、テトラサイクリンの存在及び非存在での生物発光率を示す実験結果の棒グラフである。
【図8】図8は、テトラサイクリンの存在及び非存在における、レポーターコンストラクト及び記載するBD−VAMP−NFκB TA剤を含む細胞のマイクロプレート細胞機能性試験の結果を示す。
【図9】図9は、本発明の1つの好適な実施形態による生物発光分析であり、記載するTA剤のYFP(Venus)及びGLucの発現に対する効果を示す。
【図10】図10は、安定なBoNT/LC−B指標細胞株の評価を示す実験結果の棒グラフである。
【図11】図11は、TA剤コンストラクトの機能性試験における生物発光分析の結果を示す棒グラフと画像である。
【図12】図12は、切断オフ指標システムの検証を示す棒グラフである。
【図13】図13は、安定な細胞株における切断オンシステムの検証を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記のように要約される本発明は、以下の説明を参照することでより良く理解でき、また、付属する特許請求の範囲及び図面も合わせて読まれるものとする。当業者が本発明を作製、使用できるように以下に記載した実施形態の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明の個別の例である。当業者においては、本発明を実施するための代替のもの、要素、方法、及びシステムを改変又は設計する基礎として、開示された概念や具体的な実施形態を容易に利用することができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態は、プロテアーゼ阻害剤の同定及びプロテアーゼ活性の評価のための、新規の細胞ベースのシステムを提供する。システムの構成要素には、複数のコンストラクトが含まれる。図1〜5に示すように、3つのコンストラクトがシステムの一部を形成している:転写活性化剤(「TA」、本明細書において「トランス活性化因子」コンストラクトと呼ばれる場合もある)、レポーターコンストラクト(「RC」)、及びプロテアーゼコンストラクト(「PC」)。3つのコンストラクトは、2種類のプロテアーゼ評価システムに利用することができる。図1及び2に示す「切断オフ」システムでは、PCの産物がTAを不活性化し、その結果、RCの産物の転写が減少する。図3及び4に示す「切断オン」システムでは、PCの産物がTA剤の活性部分を遊離させ、転写が活性化され、RCのレポーターからのシグナルが増強される。
【0013】
TA剤は、以下の3つの要素を含むキメラタンパク質分子を発現するように作られている:DNA結合ドメイン(「BD」)、少なくとも1つのプロテアーゼのための切断部位を含むプロテアーゼ基質ドメイン(「PS」)、及び転写活性化ドメイン(「AD」)。本発明の1つの好適な実施形態では、図1及び2に示すように、TA剤は、BDと転写活性化ドメインADがPSのそれぞれ反対側に位置するように設計されている。本発明のその他の実施形態では、図3及び4に示すように、PSは、TA剤のBD−ADエレメントの一端に位置する。システムが「切断オン」システムであるか又は「切断オフ」システムであるかは、TA剤におけるPSの位置によって決定される。
【0014】
1つの好適な実施形態によるTA剤は、SNAP−25又はVAMP−2などのボツリヌス毒基質を用いる。これらのコンストラクトにおけるSNAP−25及びVAMP−2の選択されたドメインは、切断活性の発現に十分である。したがって、通常それぞれの基質を切断するBoNTプロテアーゼに関して、任意のタンパク質のプロテアーゼ基質ドメインを包含するのに十分なドメインを提供する。より好ましくは、提供するPSドメインは、少なくともさらに外毒素PS部位を包含するのに十分な大きさを有する。M.A. Breidenbach and A.T.B. TRENDS in Molecular Medicine 11: 376-381(2005)。VAMP−2に関しては、PSドメインはVAMP−2のアミノ酸25〜94を含むと考えられる。Cornille F, Martin L, et al. J Biol Chem. 272:3459-64 (1997);Sikorra S, Henke T, et al. J Biol Chem. 283:21145-52 (2008)。SNAP−25に関しては、該ドメインはSNAP−25のアミノ酸104〜206を含むと考えられる。S. Chen and J.T. Barbieri, Journal of Biological Chemistry 281: 10906-10911 (2006)。1つの好適な実施形態では、ADコンストラクトの配列は、BD−SNAP−25−NFκB又はBD−VAMP−NFκBである。用いられるSNAP−25及びVAMP−2フラグメントは、パルミトイル化残基が欠失しており、そのため、それぞれ細胞膜又は細胞内小胞へのTA剤の局在化を妨げる。
【0015】
PCは、TA剤中のプロテアーゼ基質(「PS」)を認識するプロテアーゼを含む。PCは、プロテアーゼを発現し、またTA及びRCを含む宿主細胞中で発現することができるベクターであってもよい(図1〜5)。本発明の1つの実施形態では、下記例3に示すように、プロテアーゼはベクター中に発現する。別の実施形態では、PCは、TA及びRCを発現する細胞に導入されたプロテアーゼ又はプロテアーゼ様分子であり得る。PCのプロテアーゼは、TA剤のPSドメインを切断する。1つの実施形態によると、TA剤のADは、BDによってRC上のプロモーターに近接し、RCのBSから転写下流に位置するレポーターの転写を促進する(図1及び2)。PCが活性化される又は宿主系に存在すると、プロテアーゼのタンパク質分解活性が作用し、ADからBDを分離することで、TA剤を不活性化し、転写促進因子として作用できなくする(図1B及び2B)。ある好適な実施形態では、プロテアーゼはBoNT A、C、及びEから選択され、PSはSNAP−25である。別の好適な実施形態では、プロテアーゼはBoNT B、D、F、及びGから選択され、PSはVAMP−2である。さらに別の好適な実施形態では、BoNTはセロタイプCであり、PSはシンタキシン1a(GenBank:AAK54507.2)である。1つの実施形態では、TAは、C末端膜貫通ドメインが欠失したシンタキシン1aのドメインを含む場合がある(BD−シンタキシン1a(1〜265)−AD)。プロテアーゼ基質は、任意の既知のプロテアーゼ基質であってよい。同様に、様々なプロテアーゼが使用できると考えられる。例としては、炭疽菌プロテアーゼ、カスパーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ、HIVプロセシングプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロセシングプロテアーゼ、ユビキチンプロセシングプロテアーゼ、ISG15プロセシングプロテアーゼ、自食作用関連ATG4様プロセシングプロテアーゼ、及び、C型肝炎プロセシングプロテアーゼなどが挙げられる。
【0016】
その他の実施形態によると、PSドメインの切断は、レポーター遺伝子発現の促進(「切断オン」効果)をもたらす(図3B及び4B)。切断によって、機能的に連結したBD及びADエレメントの双方を含むユニットが遊離されれば、転写は促進される。図3B及び4Bに示すように、BD及びADからなるTA剤は、プロテアーゼ基質(PS)ドメイン上のパルミトイル化残基によって、細胞核の外部にとどめることができる。さらなる実施形態では、BD−AD対は、PCからのプロテアーゼによってBD−ADコンストラクトが遊離されるまでBD−ADコンストラクトを細胞核の外部にとどめるような他の分子に結合されていてもよく、遊離したBD−ADコンストラクトは核の内部に輸送され、その後レポーター遺伝子の転写を促進する。このような機構では、プロテアーゼ基質ドメインは、細胞内で、細胞膜や他の小胞膜と結合していてもよい。プロテアーゼの切断部位は、BD−ADからなるTAと、PSの核外アンカー部位との間に位置する。そのため、PSがプロテアーゼによって切断されると、BD−ADが遊離して核に入り、指標物質の転写を促進することで、プロテアーゼの存在を示す。本発明の1つの実施形態では、PCにおけるプロテアーゼの発現が調節されている。例えば、TetO制御エレメントがプロテアーゼ遺伝子の上流に含まれる場合があり、適切な条件が存在しない限り、プロテアーゼの発現を妨げる。1つの好適な実施形態では、テトラサイクリンが存在しない場合にプロテアーゼの発現を妨げるTetOオペレーターが用いられている。当業者に知られている他の制御機構も、宿主細胞中のプロテアーゼ発現の制御に対して妥当であると考えられる。
【0017】
RCは、核酸ベースのコンストラクトである。好ましくは、TA剤及び/又はPCも、それぞれトランス活性化因子分子及びプロテアーゼを発現する核酸ベースのコンストラクトである。しかし、当業者においては、TA及び/又はPCは、あらかじめ作られたタンパク質として、哺乳類の機能細胞に与えられる場合があることも理解される。同様に、当業者においては、この3つのコンストラクトのシステムによる他の環境への適用も理解でき、それは例えば、TA剤とPCのいずれか又は両方が核酸又はタンパク質で提供され、3つのコンストラクトが膜上に固定されているものなどの無細胞系が挙げられる。以下の説明では、コンストラクトのそれぞれが遺伝子導入による遺伝子コンストラクトとして哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞に導入された、好適な実施形態に焦点を当てる。
【0018】
RCは、TA剤のBDによって認識される1つ以上のBSを有し、好ましくはプロモーター配列がTATAボックス及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を含む(図1〜4)。TA剤のBDエレメントは、該1つ以上のBSエレメントに結合する。本発明の1つの実施形態では、TA剤にGal4 BDが用いられ、対応するGal4 BSがRCに用いられる。別の好適な実施形態では、LexA BDと対応するBS配列が用いられる。同様に、B42酸性小球ドメイン、VP16酸性活性、及びp53酸性活性化ドメインなど、トランス活性化因子からもたらされるその他の活性化ドメインも用いることができる。J Estojak, R. Brent, E.A. Golemis Molecular and Cellular Biology 15:5820-5829 (1995);及び、H. Lee, K Hun Mok et al. JBC 275: 29426-29423 (2000)。1つの好適な実施形態では、IPRは、1〜148番目のアミノ酸の位置に、Gal4同系DNA結合配列の5つのコピーを有する。その他の結合ドメイン認識配列の複数のコピーも用いることができると考えられる。例えば、LexAに対する結合ドメイン配列(BD)などが挙げられる。結合部位は、通常、TATAボックスの10〜500bp上流に位置している。
【0019】
1つの好適な実施形態では、BS及びプロモーター配列は、本質的に2つの部分からなるコンストラクトである誘導性プロモーター領域(「IPR」)を構成する。第1の構成要素は最小プロモーターTATAボックスであり、これは最小限では単独で、最小プロモーターの上流で機能する。第2の構成要素は少なくとも1つのBSであり、該BSに結合した無損傷のTA剤の存在下で、2つの部分からなるプロモーターからの転写を顕著に増加させる。1つの好適な実施形態では、IPRは最小アデノウイルスプロモーター領域を有する(E.D. Lewis, J.L. Manley, Mol Cell Biol 5: 2433-2442 (1985))。TA剤のBDによって認識されるBSの数個のコピーを用いることで、TA剤のRCへの結合をより強くすることができる。用いるBSの数は1つから8つ程度で、好ましくは5つである。上述の好ましいBDエレメントによると、対応するBSは、BDによって認識されるDNA配列である。K.H. Young, Biol. Reprod. 58: 302-311 (1998)。この構成においては、最小TATAボックスプロモーター領域は、追加の転写活性化因子(この場合ではBD−ADキメラタンパク質によってもたらされる)によるBD領域への結合がない状態では、ごく最小限の転写のみを促進することができる。
【0020】
場合によっては、TATAボックスなどの最小プロモーターからなる2部分の転写調節領域の第1の構成要素は、BD−ADを含む転写活性化因子によるBS配列への結合がない状態では、好ましくない高いレベルの転写活性をもたらす可能性がある。転写活性化因子によるBSへの結合がない状態での最小プロモーターTATAボックスからの転写を抑制することによる調節のレベルを高めるには、さらにテトラサイクリン制御型リプレッサー、又は好ましくはテトラサイクリン制御型サプレッサーエレメントを、最小プロモーターの下流に配置する(図5)。TetOと呼ばれるこのDNA配列エレメントは、テトラサイクリンの非存在下で、テトラサイクリン・リプレッサータンパク質、又はテトラサイクリン・サプレッサータンパク質に結合する(図5)。テトラサイクリンの存在下では、テトラサイクリン応答型リプレッサー又はサプレッサータンパク質は、TetOエレメントから遊離され、BS及び最小TATA領域を含む2部分の転写調節領域からの転写の抑制を解放する。その他の調節エレメントも用いることができると考えられる。
【0021】
1つの例示的実施形態では、転写調節領域は、BS及びプロモーター領域の下流に位置する(プロモーター領域はTATAボックスを含んでもよい)。好適な実施形態によると、レポーターコンストラクト上のプロモーター領域の下流にあるエレメントは、21個のヌクレオチドからなるTetOプロモーター領域の少なくとも1つのコピーである。N.F.J. van Poppel, J. Welagen, et al. International Journal for Parasitology 36: 443-452 (2006)。好ましくは、RCは、少なくとも1つからおよそ6つのTetOプロモーターの反復、より好ましくは、およそ4つのTetOプロモーターの反復を含む。RCが、tTS遺伝子産物を含むTetS細胞中にある場合、TetOプロモーター領域を介した転写はブロックされる。好ましいこのようなTetS/tTS細胞株は、HeLa細胞株の派生株で、例えば、Clontech社のHEK293tTS、Catalog#631146;又はHeLa293tTS、Catalog#631147などの細胞株がある。テトラサイクリンを加えると、TetOプロモーターはtTSに結合されない。本発明の1つの好適な実施形態では、レポーターコンストラクトは、プロテアーゼ活性の評価方法の効率を高める付加的な構成要素を含む。そのような構成要素の1つは、適切な条件が存在しない限りレポーター産物の転写を妨げるために用いられる、転写サイレンシング又は阻害配列からなる。例えば、図5に示すように、Tetオペロン(TetO)のいくつかのコピーを、プロモーターの下流に配置してもよい。N.F.J. van Poppel, J. Welagen, et al. International Journal for Parasitology. 36:443-452 (2006)。RCが、転写サイレンサーtTSを発現する細胞株に導入された場合、レポーターの転写が抑制される。テトラサイクリンを加えることで、tTSがTetOへの結合から取り除かれ、プロモーターが高度に活性化される。当業者においては、その他の類似の転写阻害剤も利用できることが理解されよう。また、TetOのコピーの数の増加がレポーターの転写レベルに直接関係し、阻害剤のコピーが多いほど、該領域への結合が強くなることがわかる。
【0022】
TA剤のADエレメント(上述の好適な実施形態によると、ADはNFκBである)は、その後遊離して、転写を促進する。このさらなる調節レベルは、システムの厳密な調節を可能にする。例えば、テトラサイクリンが存在しない場合、レポーター遺伝子産物は存在せず、発現が特に「漏れやすい」ことはない。TAの発現又はBD−NFκBキメラの遊離がない場合のバックグラウンドの転写レベルは、測定することができる。
【0023】
上記のエレメントを含むIPRは、1つ以上のレポーター遺伝子の上流にあり、転写を調節する。本発明のある好適な実施形態では、プロテアーゼ活性の評価に2つ以上のレポーターを用いることができる。例えば、2つの異なる蛍光分子配列が含まれる。その他のレポーター対、例えば蛍光レポーター及び抗生物質耐性配列なども用いることができる。2つの配列は、別々の分子として翻訳されてもよく、又はキメラ産物を生産してもよい。1つの好適な実施形態では、2つのレポーターは、単一の翻訳産物の一部である。さらに好適なある実施形態では、2つのレポーター分子は、切断可能なリンカーによって分離されている。ある例では、図2及び4に示すように、Venus遺伝子産物がGaussiaルシフェラーゼ(GLuc)遺伝子産物に融合し、2つのレポータータンパク質は口蹄疫ウイルス(FMDV)の「自己切断」ペプチド2A配列によって連結されている。M.D. Ryan and J. Drew, Foot-and-mouth disease virus 2A oligopeptide mediated cleavage of an artificial polyprotein, The EMBO Journal 13:928-933 (1994)。当業者においては、他の自己切断ペプチドを2つのレポーターの連結に用いることができること、又は、2つのレポーターは融合タンパク質産物の一部として活性があり、2つのタンパク質産物に分離する必要がないことが理解されよう。2A切断部位により、培養液に分泌されたGLucの活性、及びVenus発現による細胞蛍光が生じる。両方のレポーター遺伝子を包含することで、細胞のVenus YFPの生産を顕微鏡で即座に調べることができ、同様に、プレートリーダーで生物発光を検出することができる。GLuc産物は細胞の増殖が行われている培養液中に放出されるため、GLucレポーターの過剰発現は、当業者において既知の方法により、容易に測定することができる。1つの転写(1つのプロモーターから発現された1つのRNA)から2つのタンパク質を発現する別の方法としては、内部リボソーム進入部位(IRES)を2つの遺伝子の間に挿入する方法がある。Yury A. Bochkov and Ann C. Palmenberg BioTechniques 41:283-292 (2006)。
【0024】
本システムは、インビボでTA剤のPSを特異的に認識するプロテアーゼの活性の評価に用いることができる。例えば、RCを含む細胞内でコンストラクトが発現された場合、レポーター産物の発現レベルは、同細胞内でのプロテアーゼの活性の作用の1つであるキメラBD−AD産物の存在を示す。
【0025】
プロテアーゼ基質が膜貫通成分を含む場合、BD−AD成分の作用は無効化される。例えば、天然型のボツリヌス神経毒素プロテアーゼ基質は、タンパク質を小胞膜に局在化させるパルミトイル化残基を含む。Lane, S. R. and Y. C. Liu. Journal of Neurochemistry 69: 1864-1869 (1997)。その結果、上述のBD−PS−ADコンストラクトに用いられるPSには、基質のパルミトイル化残基は除外される。細胞膜への局在化は、単純に、パルミトイル化残基をコンストラクトから除去することで回避することができる。当業者においては、実施形態の一部では、パルミトイル化残基をコンストラクトから除外する代わりに、これらの残基のパルミトイル化を防ぎ、コンストラクトの小胞膜への局在化を阻害するようにコンストラクトを設計することが可能であることも理解されよう。
【0026】
一方で、パルミトイル化とそれによる細胞膜への局在化は、本発明の別の好適な実施形態で利用することもできる。そのような実施形態では、パルミトイル化プロテアーゼ基質は転写エンハンサードメインに結合される(図3及び4)。この構成は、以下にBD−AD−PS又はAD−BD−PSとして記載されており、BD−ADとAD−BDの順番は置き換え可能である。あるいは、プロテアーゼ基質が転写エンハンサーエレメントに結合し、PS−BD−ADの構成となってもよい。これらの好適な実施形態の例においては、ボツリヌス神経毒素基質は、図4a(BD−NFκB−VAMP)及び図4b(SNAP−25−BD−NFκB)に示すように提供され、この好適な実施形態におけるBDは、Gal4結合ドメインである。別の好適な実施形態では、BD−ADドメインを有する全長シンタキシン1aは、シンタキシン1aのN末端に融合している。シンタキシン1aのC末端膜貫通ドメインは、BD−AD−シンタキシン1aの全長分子を、シナプス前終末の膜に固定している。
【0027】
本発明の別の実施形態を表す1つの可能性のある解決法である切断オンBoNT/A切断試験の潜在的限界のため、BD−ADドメインは、プロテアーゼ基質PS、この場合ではSNAP25のアミノ酸104〜206(SNAP25に存在するパルミトイル化システイン残基、アミノ酸95〜103は欠如する)と融合されてもよく、これはさらに、任意のシンタキシン1a全長分子と融合し、融合分子全体BD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜288)を固定する。この配列は、BoNT/Aに対するSNAP25全長(1〜206)−BD−AD切断オンシステムの潜在的限界に対応するだけでなく、BD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜288)は、SNAP−25及びシンタキシン1a分子の両方の切断によりBoNT/C1の切断オン指標として機能し、また、SNAP25においてBoNT/Eの切断オン指標として機能する。シンタキシン1aを用いてBD−AD−SNAP25分子をシナプス前膜に固定することには、潜在的利点がある。原則的な利点としては、SNAP25の場合と本質的に同一であるシンタキシン1aの標的化及びシナプス前膜への局在化は、SNAP25基質を正しく局在化することができる。また、BoNT/A LCは、シンタキシン1aの輸送と同じように、シナプス前膜に輸送され、プロテアーゼ基質及びBD−AD−SNAP25(104〜206)−シンタキシン1a全長(1〜328)の局在化が可能となる。本発明の別の実施形態では、TA剤はBD−AD−SNAP25(104〜206)−VAMP−2コンストラクトである。BD−AD−SNAP25(104〜206)−VAMP−2コンストラクトは、本質的にすべてのBoNTセロタイプの試験に用いることができる広範囲なボツリヌスプロテアーゼシステムである(BoNT/A、C1、及びEはSNAP−25を切断し、BoNT/B、D、F、及びGはVAMP−2を切断する)。
【0028】
RCのレポーター配列は、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、又は、遺伝子の発現によるシグナルの定量化が可能なその他のタンパク質の配列と対応させることができる。黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP);青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、及びこれらの蛍光変異体も用いることができると考えられる。Gaussiaルシフェラーゼ、renillaルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、及びホタルルシフェラーゼなどの生物発光タンパク質も、レポーターベクターの活性の定量化に用いることができる。1つの好適な実施形態では、レポーター配列は、Venus黄色蛍光タンパク質からなり得る。Nagai T., Ibata K., Park E.S., et al. Nature Biotechnol 20: 87-90 (2002)。
【0029】
本システムは、上述のコンストラクトの1つ以上を含む遺伝子組み換え細胞株の作製に用いることができる。コンストラクトは、特定のタイプの細胞における発現のために、1つ以上のベクターに組み入れることができる。コンストラクトは、細胞内に安定に組み込まれるか、又は形質転換ベクター上に存在してもよい。その方法とベクターは、当技術分野において公知である。細胞への形質移入及び形質導入に用いる方法論は、当技術分野において公知である。Laura Bonetta, The Inside Scoop−Evaluating Gene Delivery Methods, Nature Methods 2:875-883 (2005)。ある好適な実施形態では、コンストラクトの1つ以上は、レンチウイルスベクターを介して組み込まれる。さらに好適なある実施形態では、レンチウイルスベクターは、自己不活性化(「SIN」)レンチウイルスベクターである。当業者においては、コンストラクトを含む細胞と含まない細胞を区別するために、ベクターに抗生物質耐性マーカーなどのその他の選択マーカーを含ませ得ることが理解されよう。
【0030】
本発明の別の好適な実施形態は、遺伝子組み換え細胞株の作製方法を提供する。該方法の第1の工程では、293−tTS細胞などの真核細胞に、Gal4 BSの5つのコピーによって制御される最小プロモーターから発現される調節レポーター遺伝子を含むRCを含有するベクターを用いて、形質導入を行う。他の好適な実施形態では、上述のように、合成テトラサイクリンオペレーターの4つのコピーがさらに含まれる(「G5TO4プロモーター」)。
【0031】
本システムは、ボツリヌス神経毒素などの特定のプロテアーゼの活性の評価に用いることができる。第1の工程として、Gal5/TO4プロモーター及びVenus遺伝子、GLuc遺伝子を有するRCを含むレンチウイルスベクターを哺乳類293−Ts細胞にトランスフェクトする。その後、細胞は、BD−SNAP−25−ADコンストラクト又はBD−VAMP−2−ADコンストラクトのいずれかを含むレンチウイルスベクターでトランスフェクトする。コンストラクトは、安定に導入される。細胞株は、BoNT/LC−Bをコードする遺伝子コンストラクトをさらに含むよう操作され、種々のボツリヌス神経毒素プロテアーゼの活性を評価するための最終的なレポーター細胞株を作り出す。これらの最終的な細胞株では、BoNT/LCの発現がSNAP−25又はVAMPベースのトランス活性化因子融合タンパク質を切断し、DNA結合ドメインを活性化ドメインから分離し、その結果、細胞はVenus及びルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現できない。あるいは、プロテアーゼが細胞内に形質導入される。上述のように、同様の方法が、他のプロテアーゼ−基質又は結合ドメイン−結合部位の対の活性を確認するために用いることができる。
【0032】
RC、TA剤、及びPCを含むレポーター細胞株は、プロテアーゼ阻害剤の同定に用いられる。1つの好適な実施形態では、細胞株は、ボツリヌス神経毒素阻害剤などのプロテアーゼ阻害剤のハイスループットスクリーニングに用いられる。キメラ転写因子は、無損傷の場合、G5又はG5TO4プロモーターを活性化し、その結果、Venus及びGLucレポーター遺伝子の発現につながるが、ボツリヌス神経毒素の軽鎖によって切断されると、レポーター遺伝子の発現が停止する。前述のように、このシステムは、「切断オフ」システムと呼ばれ、低分子BoNT/LC阻害剤のスクリーニングに適しているが、これは、BoNTの阻害がレポーターシグナルの増加を引き起こし(「シグナル増大」試験)、偽陽性の検出頻度が低下するためである。BoNT/LC阻害剤の存在下では、転写因子は切断されず、その結果、Venus及びGLuc指標物質の発現が回復する。
【0033】
細胞株は、システムが潜在的な阻害剤にさらされるハイスループットスクリーニング試験に用いられる。本発明の1つの実施形態では、システムは、利用可能な化合物ライブラリーに存在する阻害剤の同定、又は所望の特定の分子の試験に用いることができる。ライブラリーを用いたそのような方法の1つは、例4〜6に記載されている。
【0034】
本発明の1つの実施形態は、細胞によるシグナル増大型の生物発光レポータースクリーニングを提供する。ある好適な実施形態では、本発明は、BoNT/A LCやBoNT/B LCなどの神経毒のエンドペプチダーゼ阻害剤を、細胞ベースのレポーターHTSによって同定する。これらのエンドペプチダーゼ阻害剤は小分子で、BoNT/AやBoNT/Bなどの神経毒を阻害する。1つの好適な実施形態によって用いられた遺伝子組み換え細胞株は、低基底レポーターシグナルを有するが、小分子がBoNT/LCのペプチダーゼ活性を阻害すると、非常に高く増幅された光シグナル(>10X)を生み出す。この手法により、SNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1a、及び他の神経毒と相互作用するBoNT/LCに対して細胞内で活性な阻害剤の同定手段が提供される。細胞ベースのBoNT/LC又はHTSスクリーニング試験は、それぞれ、他の試験に対する簡便なカウンタースクリーニングを提供する。同様に、切断オン及び切断オフ試験を連続して用いることで、カウンタースクリーニング試験となり得る。これらのカウンタースクリーニング試験の目的は、例えば、他の一般的な毒性現象ではなく本発明による作用機序などを確認することである。本システムのそのような試験には、切断された転写活性化分子の細胞毒性の分析又は判定が含まれ、迅速に偽陽性を排除し、最も選択性が高く毒性のない神経毒阻害剤を素早く同定する。偽陽性のスクリーニングの方法の1つとしては、レポーター分子の発現に影響を及ぼしていると考えられるシステム内の転写活性化分子の分析がある。偽陽性(例えば、TA分子の遊離又は分解に関係のない何らかの機構によって働く阻害剤)のスクリーニングは、例えば、分離カラムによるTA分子の大きさの分析や、TA分子を認識する抗体などを利用する。したがって、本発明の1つの実施形態は、細胞ベースのHTSにより、神経細胞内のSNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1aなどの基質の神経毒切断を阻害する「薬剤様」小分子を同定する方法を提供する。
【0035】
本明細書に記載する細胞ベースのスクリーニング手法は、あらゆるインビトロの酵素的スクリーニングに対して顕著な利点があるが、それは、化合物が細胞内環境にたどり着き、細胞質ゾル中ののBoNT/A又はBoNT/Bなどの神経毒による、SNAP−25、VAMP−2、シンタキシン1aなどのそれらの基質の切断を阻害する必要があるためである。そのため、毒素及びその基質の両方が、臨床的なインビボ環境にある。毒素の作用は、無細胞での酵素活性とは対照的に、細胞内では異なる可能性が高い。70〜100アミノ酸残基の大きな基質フラグメントを用いることが、これらの細胞ベースの試験の主要な優位点の一つである。活性部位がエキソサイトよりも大きいタンパク質を包含できることから、通常エキソサイトと考えられていない部位での切断が検出可能である。
【0036】
本明細書に開示する方法及びシステムは、ボツリヌス神経毒素A及びBなどの種々の神経毒の阻害剤を治療法として最適化するために、同定及び優先順位の決定に用いることができる。該方法は、さらに、多様な化合物のライブラリーに対して、BoNT/A及びBoNT/Bなどの神経毒の阻害剤のための哺乳類細胞ベースの主要レポータースクリーニングの構築、検証、及び適用に用いることができる。スクリーニングのヒットは、三重の再分析で確認することができ、偽陽性は、複数のBoNTベースの試験又は非毒素試験を互いのカウンター試験として用い、また上述の他の方法を用いることで、排除することができる。本出願に開示する方法は、さらに、細胞によるシグナル増大型のレポータースクリーニングを提供する。これらのスクリーニングは、化合物ライブラリーに適用され、潜在的な阻害剤を同定するために、二次検証として生化学的試験による追加検討を行う。検証されたヒットは、その特徴を完全に調べ、インビトロ及び神経細胞モデル系の両方でボツリヌス神経毒素に対して特異的に作用するか、そして細胞毒性が最小限であるかを確認する。
【0037】
1つの実施形態では、本明細書に記載するシステム及び方法は、BoNTが引き起こす中毒の治療のための極めて強力な小分子阻害剤の同定及び開発を提供する。小分子BoNT LC阻害剤は、神経細胞に侵入し、毒素への前暴露及び後暴露の両方に対する防護をもたらすことができる。その他の実施形態では、本明細書に記載するシステム及び方法は、発病において重要となりうる他のプロテアーゼ基質対に対する小分子阻害剤の同定に用いることができる。そのようなプロテアーゼ基質対としては、炭疽菌致死因子、カスパーゼ、ユビキチンプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロテアーゼ、ユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、ATG4などの自食作用関連プロセシングプロテアーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ及びHIVプロテアーゼなどのウイルスにコードされたプロテアーゼなどがある。
【0038】
しかしながら、BoNTは、プロテアーゼ阻害剤を同定するシステムを利用可能な多くの方法の一例である。当業者においては、本明細書に記載するコンストラクト及び方法は、他のプロテアーゼ、及びそれらの活性や阻害剤の評価に利用できることが理解されよう。可能性の範囲には、ほぼすべての基質とプロテアーゼの組み合わせが含まれるが、いくつかの具体的な例としては、炭疽菌致死因子亜鉛金属プロテアーゼ(LF)とその関連する基質MAPKK、アルファウイルスのNSP2プロテアーゼなどのウイルスプロセシングプロテアーゼとその関連する基質NSP1−4、ユビキチン及びユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、カスパーゼ、ユビキチンプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修potency飾因子プロテアーゼ、ユビキチン様分子プロセシングプロテアーゼ、ATG4などの自食作用関連プロセシングプロテアーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ及びHIVプロテアーゼなどのウイルスにコードされたプロテアーゼなどがある。小分子阻害剤のスクリーニングにおいて、小分子阻害剤の高速でハイスループットのスクリーニングには、細胞内でプロテアーゼが活性化されているときはシグナルが抑えられ、細胞内で小分子によってプロテアーゼが阻害されているときはシグナルが増加するような細胞ベースのシステムが好ましい。これは、ハイスループットスクリーニング(HTS)では、一般的に、「陽性のヒット」が存在している、すなわち、活性なプロテアーゼ阻害化合物が存在している場合にシグナルが増加する方が、より効率的なためである。
【0039】
細胞内のプロテアーゼ活性の存在を検出する手段は重要となり得る。例えば、BoNTへの集団暴露が起きた場合、限られたリソースで直ちに治療を必要とする人と、実際には暴露していない可能性もあるが体調の悪い人(いわゆる歩ける人(walking well))とを、素早く分別する必要が生じる場合がある。同様に、BoNT薬剤の効果と効能を試験する手段の現在のゴールドスタンダード、すなわち主要なものは、毒素をマウスに注射し、マウスのLD50の基準を定める方法を用いている。この方法では、生きた動物を致死検定に大量に使用する必要がある。そのような生きた動物での検定は、制限又は排除することが望ましい。BoNTの活性の存在を確実に検出し、定量化することができるような、細胞ベースの試験法が必要である。BoNT LCプロテアーゼなど、細胞内のプロテアーゼの存在を検出する細胞ベースの試験法は、細胞内にプロテアーゼが存在することで1つまたは複数の指標シグナルが活性化されるシステムによって構成するのが最適である。本発明の1つの実施形態では、「切断オン」の構成(BD−AD−PS)においてTA剤とRCを発現する細胞が、試料中の既知のプロテアーゼの存在を確認するために用いられている。そのような実施形態では、環境試料はTA及びRCコンストラクトを含む細胞に提示される。もし標的プロテアーゼ、例えばBoNT/LC Aが存在すれば、それが細胞内に入り、TAをPSで切断し、AD−BDフラグメントを遊離させ、次にそれがRC内のレポーター遺伝子の転写を促進する。
【実施例】
【0040】
実施例1
哺乳動物細胞におけるpBD−NFκBの発現
合成プロモーターG5/TO4を含む、本発明の一実施形態にしたがったレポーターコンストラクト(RC)はレンチウィルスベクターにより細胞に形質移入された。前記レポーターコンストラクトは、NFκB転写活性化因子に連結したGal4結合ドメイン融合体(転写活性化剤)を発現するプラスミド(pBD−NFκB)とともにHeLa−tTS細胞へ共形質移入された。前記の形質移入された細胞はテトラサイクリン転写サイレンサーtTS(Clontech)を恒常的に発現する。前記の細胞は6穴プレートで、約80%の集密(コンフルエンス)になるまで培養された。形質移入の6時間後、1μg/mlのテトラサイクリンが、前記の試験細胞の培地に加えられた。テトラサイクリンは対照として用いられる試験細胞の培地には加えられなかった。コペポーダ(Gaussia princeps)ルシフェラーゼ(GLuc)アッセイ(Monique Verhaegen and Theodore K. Christopoulos Anal. Chem., 74:4378-4385 (2002))のため、形質移入の2日後に、培養液が回収された。1μg/mlの濃度でテトラサイクリンを含む培地で培養された前記の細胞の相対的光単位(RLU)はテトラサイクリンを含まない培地で培養された細胞よりもルミノメーターで測定すると16倍高い。さらに、テトラサイクリンを含む培地で培養された細胞ではビーナスの発現があり、テトラサイクリンを含まない培地で培養された細胞ではビーナスの発現が無い。したがって、(1)合成プロモーターG5/TO4は機能的である。それは、Gal4結合部位に結合するBD−NFκBのような転写活性化因子により大いに活性化されうる。テトラサイクリンの存在下でGLucとYFPの両方の発現が大いに活性化される。(2)GLuc遺伝子は大変敏感で便利なレポーターである。これらの実験で、コペポーダルシフェラーゼの95%が培養液中に分泌される。したがって、GLuc活性は培養液より直接、ルミノメーターによって測定されうる。この制御されたレポーター遺伝子発現、レポーター遺伝子発現の低くて測定可能なバックグラウンド、及び、簡便な使用に照らし、この応用例で述べられるプロモーターレポーターシステムはハイスループットスクリーニングに有効である。
【0041】
前記の新規レポーターコンストラクトはレンチウィルスベクターにより293−tTS細胞へ形質導入された。前記のレポーターコンストラクトを持つレンチウィルスベクター粒子は7.1μgのHIV−1 gag−polヘルパーコンストラクト(Synaptic Research)、及び、2.8μgのVSV−G発現プラスミド(Synaptic Research)との3.5μgの形質導入プラスミドの100 mmプレートに培養された80%から90%の集密の293FT細胞(Invitrogen)への共形質移入により作成された。発芽したウィルスベクターを含む培養液から形質移入の48時間後に回収され、4℃、2,000 rpmで10分間の遠心分離(Sorvall RT 600D)により細胞破砕物が取り除かれた。破砕物を取り除かれたウィルス上清はさらに、4℃、25,000 rpmで90分間の超遠心分離(Beckman Coulter OptimaTM XL100K)により濃縮された。最後に、ウィルスベクターペレットは50μl(元の容積の1/200)の培養液に一晩浸され、再懸濁され、そして、形質導入で必要になるまで−85℃で保存された。結果、生じたウィルスベクター粒子は、恒常的にテトラサイクリン転写サイレンサーtTSを発現する293−tTS細胞(Clonetech)を形質導入するために使用された。クローニング用リングにより、単細胞コロニーがクローン化され、増幅した細胞をBD−NFκBキメラ転写活性化因子を発現するpBD−NFκBで一時的に形質移入することにより機能性について試験された。1μg/mlのテトラサイクリンの存在下、及び、非存在下、前記の形質移入された細胞が培養された。テトラサイクリンによる誘導の2日後、YFP蛍光(ビーナス遺伝子発現)が蛍光顕微鏡で観察され、コペポーダルシフェラーゼ遺伝子発現はルミノメーターにより測定された。
【0042】
我々は25クローンを解析した。6クローンの結果を図6で示される。我々は、大変低い基礎活性を示し、テトラサイクリンの添加により14倍に活性化されうるクローン17番を選択した。これにより、前記のレポーター分子は活性化剤によって誘導された。そして、前記のシステムはハイスループットスクリーニングに必要な属性を持つ。
【0043】
実施例2
レポーターコンストラクトと転写活性化剤を含むtTS細胞
制御要素の遺伝子、すなわち、Gal4 DNA結合ドメイン(アミノ酸1からアミノ酸148まで)(Gal4/BD、又は、BD)とNFκB転写活性化ドメイン(NFκB/AD、又は、AD)の間に挟み込まれた適切なBoNT基質(BoNT/AにはSNAP−25、及び、BoNT/BにはVAMP−2)から成る転写活性化因子キメラ融合タンパク質は実施例1で述べられる新規レポーターコンストラクトを持つ細胞に導入された。
【0044】
実施例2A
タンパク質性基質がパルミトイル化された残基を含まないBD−PS−ADコンストラクトは合成で構築され、前記のレポーターコンストラクトを含む細胞に導入された。Gal4 DNA結合ドメインとNFκB転写活性化ドメインの間に融合されたSNAP−25の切断部位の周囲103アミノ酸残基(残基104から残基206まで)、あるいは、VAMP−2の切断部位の周囲70アミノ酸残基(残基25から残基94まで)のどちらかをコードする転写活性化剤が使用された。実施例1由来のレポーター細胞系列クローン17番はさらに、BD−VAMP−NFκB遺伝子コンストラクトを持つレンチウィルスベクターで形質導入された。6個の単細胞クローンが選択され、テトラサイクリンの存在下、及び、非存在下で生物発光の割合について解析された。図7を参照のこと。形質導入された細胞は適切な選択(G418、ブラストサイジン、ピューロマイシン)にかけられ、および、レポーターとVAMP−2転写活性化因子融合体の両方を安定した挿入で保持する単細胞クローンが得られた。1μg/mlのテトラサイクリンが培地に添加されると、クローン32番レポーター遺伝子は常に/反復的に200倍以上活性化された。
【0045】
同様の過程はその他のキメラ転写活性化因子コンストラクトを含む細胞系列を創出するために用いられる。例えば、前記のレポーターベクターを含む細胞系列はさらに、BD−SNAP25−NFκB遺伝子コンストラクト、又は、BD−シンタキシン1a−NFκB遺伝子コンストラクトで形質移入される。または、各々別のBoNT基質を含む一つ以上の転写活性化因子コンストラクトが作成される。さらに、結合ドメイン(BD)及び転写活性化ドメイン(NFκB)は、前記のレポーターコンストラクトの結合サイトが対応して変更される限り、どんなDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインによって置換されうる。前記のレポーターコンストラクトと転写活性化剤を持つ単細胞クローンは、クローン32番で述べたように評価される。
【0046】
クローン32番の機能性は、シグナル強度とシグナルバックグラウンドの割合がハイスループットスクリーニングでの使用に充分であることを示すために、96穴マイクロプレートで解析された。低密度の細胞(グループ1)、中密度の細胞(グループ2)、及び、高密度の細胞(グループ)の3グループについて3穴ずつの複製がなされた。1μg/mlのテトラサイクリンの存在下、及び、非存在下での細胞培養の1日後、5倍に希釈された培養液の5μlが第二のプレートに移され、生物発光がプレートリーダーで測定された。テトラサイクリンで処理した細胞の培養液のルシフェラーゼ活性はテトラサイクリンで処理されなかった細胞の培養液で観察されたそれの200倍高かった。図8を参照のこと。その結果は前記の3つのグループそれぞれの各メンバーについて一貫していた。さらに、テトラサイクリンで処理されなかった細胞での基礎活性は極めて低かった。生物発光が測定された。生物発光はテトラサイクリンと完全なDB−PS−TAコンストラクトの存在下、テイン者活性化により200倍に増加した。図8を参照のこと。
【0047】
実施例2B
「切断オン」法は、図3、及び、図4で示されるように、それぞれキメラ転写活性化因子BD−NFκB/ADの上流、又は、下流に融合したSNAP−25の切断部位の周辺103アミノ酸残基(残基104から206まで)、あるいは、VAMP−2の切断部位の周辺70アミノ酸残基(残基25から94まで)のどちらかをコードする転写活性化因子コンストラクトによって評価された。ボツリヌスの基質のパルミトイル化の結果、SNAP25とVAMP−2の部分が、BD−NFκB/ADを繋ぎとめる細胞性シナプス前原形質膜上に発現する。図9は両方の構成を用いて行われた実験の結果の例を示す。
【0048】
実施例3
安定な細胞系列でのコンストラクトの更なる検証
VAMP2ベースの転写活性化因子コンストラクトとプロテアーゼコンストラクトとしてBoNT/B軽鎖、及び、TetO含有レポーターコンストラクトを利用する「切断オフ」システムの検証が安定的細胞系列で果たされた。前記レポーターと前記VAMP2転写活性化因子の両方の安定的組み込むクローン32番は、BoNT/B軽鎖プロテアーゼコンストラクトのレンチウィルスを用いた形質導入による最終的な誘導可能指標細胞系列の創出のために使用された。この完成した細胞系列(クローン12番)に安定的に組み込まれた指標システムの三つの構成要素(レポーターコンストラクト、転写活性化因子、及び、プロテアーゼコンストラクト)のすべてを用い、テトラサイクリンでの誘導から直ぐに48時間にわたりGLuc発現を評価することにより、前記のシステムが試験された。24時間ごとに前の培地を新しい培地で置換する前にGLucアッセイが行われた。RLUで表現されるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、テトラサイクリン制御プロテアーゼコンストラクトからのBoNT/B軽鎖の誘導48時間後では約15倍のGLucシグナルの低下を示した(図10)。この結果は、レポーターコンストラクト、切断オフ転写活性化因子、及び、プロテアーゼコンストラクトで完全に組み立てられたシステムはBoNT/B軽鎖阻害剤のハイスループットスクリーニングに適しているということを示す。この構成のシステムは軽鎖プロテアーゼの阻害によりシグナルの増強を示すであろう。
【0049】
VAMP2ベースの転写活性化因子コンストラクトとプロテアーゼコンストラクトとしてBoNT/B軽鎖、及び、TetO含有レポーターコンストラクトを利用する切断オンシステムの検証も又、上述したのと同じ方法を用いて果たされた。結果は、48時間後にGLucシグナルの40倍近い増強を示す(図10)。この構成のシステムは、BoNT/B軽鎖プロテアーゼの存在を検出するのにより適していないとしたら、軽鎖プロテアーゼの阻害によりシグナルの減少を示すであろう。
【0050】
実施例4
切断オフシステムは遺伝子発現を低下させる。
SNAP−25、及び、VAMP−2キメラ転写活性化因子の機能性を示すために、それらは自己不活性化(SIN)レンチウィルスベクターにクローン化され、様々なBoNT/軽鎖遺伝子コンストラクト(野生型A軽鎖、変異型A軽鎖、及び、野生型B軽鎖)と共に前記のレポーターコンストラクトと293TtTS細胞に共形質移入された。細胞は1μg/mlのテトラサイクリンで処理された。コペポーダルシフェラーゼ(GLuc)活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスYFP発現は蛍光顕微鏡によって観察された。結果は図9に示される。前記の結果は、レポーターは転写活性化因子の切断によってオフにされることを確証した。変異型BoNT/A軽鎖(mLC−A)とGal4/BD−SNAP25−NFκB/ADで共形質移入されると、それらが使用されると有効なBoNT/A軽鎖阻害剤が存在するのと同様になるのだが、キメラBD−SNAP25−NFκB転写活性化因子はG5TO4プロモーターを大いに活性化するが、野生型BoNT/A軽鎖(LC−A)とGal4/BD−SNAP25−NFκB/ADで共形質移入されると、BD−SNAP25−NFκB転写活性化因子はG5TO4プロモーターをあまり活性化しない。キメラGal4/BD−VAMP−NFκB転写活性化因子/ADは、BoNT/A軽鎖発現プラスミドで形質移入されると、BoNT/A軽鎖によって切断されないので、G5TO4プロモーターを活性化する。キメラ転写活性化因子コンストラクトGal4/BD−VAMP−NFκB/ADは、野生型BoNT/B軽鎖(LC−B)とGal4/BD−VAMP−NFκB/ADで共形質移入されると、前記転写因子が切断されるので、前記レポーターを活性化しない。RLU値で表現されるコペポーダルシフェラーゼ活性は可視化されたYFP蛍光の結果と一致しており、そして、該レポーター反応の定量測定を提供する。切断されない転写活性化因子対切断される転写活性化因子で、SNAP−25転写活性化システム、及び、VAMP転写活性化でそれぞれ20倍と23倍である。
【0051】
ストレプトアビジン結合タンパク質(SBP)、サイアン蛍光タンパク質(CFP)、及び、BoNT/A軽鎖、又はBoNT/B軽鎖がフレームを揃えて順番に融合した、これらのタンパク質から成る二つのBoNTコンストラクトがある。これらの二つのコンストラクト、SBP−CFP−BoNT/A−LC及びSBP−CFP−BoNT/B−LC、はレンチウィルスベクターpLenti4/TO/V5−DEST(Invitrogen, Inc.,Catalog No. K4965−00)にクローンされた。前記融合遺伝子はTATAボックスの直ぐ上流に挿入された2コピーのTetオペレーターを持つ改変サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターから発現される。Tet反応性リプレッサー(TRex,Invitrogen)又は転写サイレンサーtTS(Clontech)が前記プロモーターの機能を停止させる。しかしながら、テトラサイクリンの存在下では、TRex、又は、tTSはTetオペレーターへの結合に失敗し、CMVプロモーターは充分に活性的である。前記コンストラクトは6穴プレートに蒔かれた293−tTS細胞に形質移入された。
【0052】
BoNT/LCの発現は蛍光顕微鏡法によるCFP発現の観察によって検出された。これらのBoNT/A−LC、及び、BoNT/B−LCのレンチウィルコンストラクトはレポーター細胞系列の構築を完成させるために使用されることができる。
【0053】
実施例5
転写活性化因子及びプロテアーゼコンストラクトを有する相補的安定レポーター細胞系列
A)VAMP切断オフ
TetOのない前記レポーターコンストラクトの生物学的機能性を評価する為に、このレポーターコンストラクトは前述したようにレンチウィルベクターを用いてHEK293細胞に安定的に組み入れられた。この安定的レポーター細胞系列を構築基盤として使用して、VAMP切断オフシステムが、一時的形質移入を用いる対応するプロテアーゼコンストラクト(BoNT/LC−B)及び転写活性化因子(BD−VAMP2−AD)での相補により試験された。形質移入後すぐに前記レポーターコンストラクトからのビーナス(YFP)とGLucの両方の経時的発現がアッセイされた。具体的には、レポーター細胞は、2mlの完全成長培地中、6穴滅菌ポリリシンコートプレートに約70%の集密になるまで培養された。転写活性化因子BD−VAMP2(25−94)−NFκBプラスミド単独での形質移入の為に、4μgのプラスミドDNAがCalPhos Kit (Clontech Laboratories Inc.)を用いて形質移入された。BD−VAMP2−ADとBoNT/LC−Bで共形質移入される細胞には、1対3の転写活性化因子:プロテアーゼコンストラクトプラスミドDNAの比率が用いられた。プレートは二酸化炭素恒温器に一晩37℃で保温された。12時間後、培地は2mlの新しい完全成長培地と置換され、5μg/mlのテトラサイクリンがBoNT−LC−Bの発現を開始する為に培地に加えられた。BoNT−LC−Bのみで形質移入された細胞はLC−B発現のポジティブ対照として用いられた。BD−VAMP2−AD単独で形質移入された細胞の培地にテトラサイクリンは添加されず、対照として用いられた。培地のアリコットが、24時間ごとに新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスYFPの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。24時間、48時間、及び、72時間の間隔で異なる穴のプレート表面からかき集められた細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄され、4℃、10,000 rpmで10分間遠心分離され、ゲル添加液で融解された。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、それから、ウサギ抗GFP抗体(Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として、及び、アルカリフォスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を二次抗体として用いるウェスタンブロットのためPVDF膜に転写された(図11)。TetOを欠くレポーターコンストラクト、切断オフVAMP転写活性化因子、及び、BoNT/B軽鎖プロテアーゼコンストラクトを含む細胞システムのBoNT/B軽鎖によるVAMP転写活性化因子の切断によるシグナルの減少を示すことに成功したことは、このシステムはまたBoNT/B軽鎖阻害剤のハイスループットスクリーニングに適していることを示す。
【0054】
B)SNAP25切断オフ
前述の同じ安定的なレポーター細胞系列を用い、一時的形質移入を用いる対応するプロテアーゼコンストラクト及び転写活性化因子での相補によりSNAP25切断オフシステムが試験された。再述すると、形質移入後すぐに前記レポーターコンストラクトからのビーナス(YFP)とGLucの両方の経時的発現がアッセイされた。具体的には、レポーター細胞は、2mlの抗生物質を欠き血清を含む完全成長培地中、6穴滅菌ポリリシンコートプレートに約70%の集密になるまで培養される。転写活性化因子BD−SNAP25(104−206)−NFκBプラスミド単独での形質移入の為に、4μgのプラスミドDNAがリポフェクタミンTM2000(Invitrogen)を用いて形質移入された。BD−SNAP25NFκBとBoNT/LcAで共形質移入される細胞には、4μgずつのプラスミドDNAが1穴ごとに用いられる。形質移入の6時間後、5μg/mlのテトラサイクリンがBoNT−LC−Aの発現を開始する為に培地に加えられた。BoNT−LC−Aのみで形質移入された細胞はLC−B発現のポジティブ対照として用いられた。BD−SNAP25−NFκB単独で形質移入された細胞の培地にテトラサイクリンは添加されず、対照として用いられた。培地のアリコットが、24時間ごとに新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。24時間、48時間、及び、72時間の間隔で異なる穴のプレート表面からかき集められた細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄され、4℃、10,000 rpmで10分間遠心分離され、ゲル添加液で融解された。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、それから、ウサギ抗GFP抗体(Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として、及び、アルカリフォスファターゼ結合抗ウサギIgG抗体を二次抗体として用いるウェスタンブロットのためPVDF膜に転写された(図11)。
【0055】
C)(テトラサイクリン制御)レポーターコンストラクトを有するSNAP25切断オフ安定細胞系列
TetOにより制御される安定なレポーター細胞系列(クローン17番)を検証するために同様の実験法がとられた。この場合、クローン17番は、BD−SNAP25−ADを有するレンチウィルスにより形質導入され、引き続いて一時的形質移入によるBoNT/LC−Aテトラサイクリン誘導プロテアーゼコンストラクトで相補された。テトラサイクリンへ曝露され、GLucシグナルは最初の48時間の間に劇的に減少した。BoNT/LC−Aの誘導に伴うこの大幅なシグナルの減少は、前記システムが前記薬剤スクリーニング法とBoNT/LC−Aの衰微のアッセイに機能するであろうことを示す。
【0056】
実施例6
テトラサイクリン有、又は、テトラサイクリン無の発現
TetOを欠くレポーターコンストラクト、転写活性化剤としてのSNAP25 (1206)−BD−AD、プロテアーゼコンストラクトとしてのBoNT/E軽鎖の一時的な形質移入、及び、安定的形質導入において、ルシフェラーゼシグナルは、図13で示されるように、高い基礎シグナルレベルにかかわらず、BoNT/E軽鎖によるSNAP25(1−206)−BD−ADの切断後、少なくとも2倍に増加する。BoNT/E軽鎖による切断の後、カルボキシ末端SNAP25切断産物は安定である。したがって、BoNT/A切断であるようには、切断後のBD−ADの分解はない。SNAP25(1−206)−BD−ADの高い基礎シグナル、及び、C末端SNAP25(1−206)−BD−ADの急速な分解のため、異なるSNAP23切断オンシステムが使用される。このシステムは、BD−AD−SNAP25(104−206)−VAMP全長、又は、BD−AD−SNAP25(104−206)−シンタキシン1a全長から成る。
【0057】
実施例7
SNAP25切断オンアッセイを行うための別の指標システム
短縮型のSNAP25(104−206)を含むどんな転写活性化因子コンストラクトもパルミトイル化を欠き、結果として、膜局在が本質的にできない。この転写活性化因子のVAMP2、又は、シンタキシン1aのような膜アンカーへの融合により、切断オン調査を行うための別の方法が可能になる。ありうる転写活性化因子の構成は、BD−AD−SNAP25(104−206)−VAMP2、又は、BD−AD−SNAP25(104−206)−シンタキシン1aである。
【0058】
これらの融合コンストラクトは前述したのと同様に、(TetOを欠く)安定レポーター細胞系列の前記融合転写活性化因子、及び、BoNT/LC−A、あるいは、BoNT/LC−Bのどちらかとの両方での一時的形質移入により、試験される。全ての切断オンシステムを使用した場合と同様に、前記レポーターのシグナルはテトラサイクリンがないと基線で低く、転写活性化因子のタンパク質分解性切断でシグナルが増加するであろう。テトラサイクリン添加後、培地のアリコットが新しい培地と置換される前にコペポーダルシフェラーゼ(GLuc)アッセイのため、24時間、48時間、及び、72時間で回収された。RLUで表わされるGLuc活性はルミノメーターを用いて測定され、ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされた。これらの融合転写活性化因子コンストラクトの主要な利点は、それらが多数のBoNT/LC血清型の普遍的な検出器として作用する能力である。従って、単一の指標細胞系列がどの軽鎖でもその存在を検出する能力が認識される。もし、前記システムがBoNT毒素のレセプターを持ち、前記毒素を効率よく内部に取り入れることができる細胞で創出されるなら、この細胞系列は、完全に活性のあるBoNTの存在に対する高親和性敏感細胞ベースのバイオ検出器として機能することができる。もし、前記毒素を鋭敏に検出するために環境中から毒素を取り込む十分な能力を持つ適切な細胞系列を見つけることができないのなら、前記細胞系列の毒素に対する親和性と感受性は、必要なタンパク質レセプターとBoNT毒素細胞性レセプターのガングリオシド成分を過剰発現する安定な細胞系列を創ることで高められうる。
【0059】
実施例8
炭疽菌プロテアーゼ阻害剤を検出する指標システム
ある実施例において、転写活性化因子は、プロテアーゼ基質ドメインがBS−MEK1−ADの形状の中のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK1)全長(NCBI基準配列:NP_002746)であるように構築される(A.P. Chopra, S.A. Boone, et al. JBC 278:9402-9406 (2003))。この転写活性化因子コンストラクトは、非テトラサイクリン制御レポーターコンストラクトを有する安定な細胞系列の実施例で用いられたように、同様にTetOを欠く安定なレポーター細胞系列に移入される。したがって、この場合、Tet誘導性プロテアーゼコンストラクトは、MEK1を切断する炭疽菌致死因子(LF)プロテアーゼ(NCBI基準配列: AAY15237)である。レポーター細胞に存在する全てのコンストラクトを用い、炭疽菌致死因子プロテアーゼの阻害剤が、ビーナスとGLucからのレポーターシグナルの増加に基づいて選択される。
【0060】
実施例9
ユビキチン関連プロテアーゼ阻害剤を検出するための指標システム
別の実施例において、転写活性化因子は、プロテアーゼ基質ドメインがカルボキシ末端5−AAを有するヒトsmall ubiquitinrelated modifier1 (SUMO1)タンパク質(NCBI基準配列:ABM87155)であるように構築される。5−AAカルボキシ末端ペプチドは(ユビキチン様)特異的プロテアーゼ(ULP1)により切断され、したがって、プロテアーゼコンストラクトはプロテアーゼとしてのULP1(NCBI基準配列:AAG33252)で構築される。プロテアーゼコンストラクトと転写活性化因子コンストラクトの両方が一時的形質移入によりTetOを欠く安定な細胞系列に同様に移入される。全ての3要素、レポーターコンストラクト、転写活性化因子切断オフSumoコンストラクト、及び、ULP1プロテアーゼコンストラクトが発現されると、ルシフェラーゼシグナルが消える。このシステムはSUMOプロテアーゼ阻害剤のハイスループットスクリーニングに適当である。
【0061】
実施例10
プロテアーゼ阻害剤のスクリーニング
前記の最終的なレポーター細胞系列はsiRNAノックダウンという小分子阻害剤によって機能解析される。BoNT/A−LCスクリーニングアッセイで、確立された阻害剤(例えば、ヒドロキサム酸化合物のどれか)が使用される。BoNT/B−LCには既知の小分子阻害剤がないので、BoNT/B−LCを標的とするDahrmacon/Thermo−Fisher社由来のsiRNAが使用される。本発明のある実施形態において、標的につき3種のsiRNAが開発されうる。さらに、ノックダウンは本当で、特異的であり、そして、非特異的な効果がないことを確認する対照として、ごちゃ混ぜの(スクランブル)siRNAが使用される。293T細胞は前記siRNAとBoNT/A軽鎖プラスミド、又は、BoNT/B軽鎖プラスミドで共形質移入され、最終的なレポーター細胞系列の確認のため、最も有効なsiRNAを選択するのに使用される。次に、前記有効なsiRNAとスクランブルsiRNAの両方が前記最終的レポーター細胞を形質移入するために使用される。BoNT/LCの発現を形質移入直後に開始するため、1μg/mlのテトラサイクリンが培地に添加される。ルシフェラーゼアッセイのため、1日目から4日目まで培地のアリコットが回収される。ビーナスの蛍光は蛍光顕微鏡でモニターされうる。前記レポーター(ルシフェラーゼとビーナス蛍光の両方)の最終的レポーター細胞での発現は有効なsiRNAにより回復される。
【0062】
レポータースクリーニングは半陽性(BoNT/A軽鎖阻害剤、又は、BoNT/B 軽鎖のsiRNA)、及び、半陰性(DMSOのみ)対照でマイクロプレートを運用し、Z値を測定することにより適正化される。各レポーター株の効率性を決定するために用いられる条件はマイクロプレート(96穴、又は、384穴)の密度、試験される化合物の濃度、DMSO濃度への寛容性、温度、試験化合物の添加前のレポーター株の集密の程度、生物発光を読みとる前のマイクロプレートの保温時間、及び、ルシフェラーゼアッセイのため分取される培地の量を含む。適切な0.5より大きいZ因子を達成するために実験ごとに条件は変更されうる(J.H. Zhang, T. D. Chung, and K. R. Oldenburg, J Biomol. Screen 4:67-73 (1999))。本発明のより好ましい実施形態において、スクリーニングは384穴ディッシュでなされる。十分なZ因子を維持するために必要ならば、96穴ディッシュが使用されてよい。
【0063】
レポーター株は培養され、96穴、又は、384穴乳白色スクリーニングプレートへ滅菌Wellmateマイクロプレート試薬分注器(ThermoFisher, Inc.)を用いて蒔かれる。阻害剤のスクリーニングのために、化合物のマスタープレートがスクリーニングの日に室温で溶かされ、予め決定されていた量の化合物がSciclone ALH 3000液体操作ロボット(Caliper, Inc.)とTwister IIマイクロプレート操作器Caliper, Inc.)を用いて加えられる。プレートはそれから確定された適切な時間と温度の条件で保温される。それから、予め決定されていた量の細胞培養液がScicloneロボットで適切に希釈するように新しいマイクロプレートに移される。Wellmate試薬分注器を用いてルシフェラーゼの基質が加えられ、Envision Multilabelマイクロプレートリーダー(PerkinElmer)で生物発光が測定される。
【0064】
実施例11
阻害剤の最適化されたスクリーニング
阻害剤をスクリーニングするために用いられる該方法が、スクリーニング条件を査定するために試験的スクリーニングにかけられる。最適化されたアッセイの構成が2、3の異なる濃度での約2,000化合物の試験的スクリーニングにおいて試験される。各プレートに対照、8穴について0%阻害(DMSOのみ)、そして、8穴についてほぼ完全な阻害(BoNT/A軽鎖阻害剤、又は、BoNT/B軽鎖のsiRNA)、が含まれる。上述した方法にしたがい、アッセイプレートは適切なレポーター細胞と試験される化合物を受ける。このスクリーニングから得られるデータは変動(%変動係数)、様々なZスコアカットオフ値でのヒット率を決定するのに使用され、ハイスループットスクリーニングが始まる前に解決が必要なアッセイに関するどんな問題をも同定することができる。前記試験スクリーニングからのデータはそれから、0.1%から1%のヒット率を確定するためにスクリーニングでの化合物の濃度(おそらく、25μMから40μMまでの範囲)を決定するために使用される。ある化合物をヒットであると示す判定基準は前記試験スクリーニングで決定される。しかしながら、3より大きい、又は、5より大きいZスコアが適切であるようである。各試料についてのZスコアは、負の対照の平均相対光単位から試料の相対光単位を引き算し、その差を負の対象の標準偏差で割り算することによって得られる。
【0065】
実施例12
阻害剤のスクリーニング
本発明のある実施形態にしたがう方法はまた10μM以下の50%阻害濃度(IC50)を有するプロテアーゼ阻害剤を同定し、確認するために様々な化合物ライブラリーを選別するのに使用される。
【0066】
上述したハイスループット細胞性BoNT/A軽鎖、及び、BoNT/B軽鎖スクリーニングが、これらのボツリヌス神経毒素のどちらかに対して効力がある阻害活性を持つ化合物を同定するために独立した小分子と自然産物のライブラリーに適用される。前記スクリーニングからのヒットは再アッセイにより、それらはBoNT/B軽鎖、又は、BoNT/A軽鎖のどちらかを阻害するが両方を阻害することはないことを確認され、及び、濃度依存的阻害調査(IC50)におけるそれらの効力を示すことにより確認される。
【0067】
A.化合物ライブラリーと試料操作
NERCEライブラリー。ハーバード大学医学部ニューイングランド地方生物防御、及び、新興感染症総合教育拠点(NERCE/BEID)の国立スクリーニング研究室(NSRB)の化合物コレクションが切断オフ細胞ベースBoNTスクリーニングシステムにおいて選別される小分子ライブラリーの一例として使用される。このライブラリーは、難溶性、潜在的な界面活性剤様の活性、水性溶液での安定性の欠如、及び、化学反応性のような望ましくない性質を有する化合物を選別したNERCEの化学顧問達のグループによって集められてきた。現在のところ、我々の自家製のコレクションと重複しているものを含むが、約165,000種の化合物が利用可能である。その二つのライブラリーの重複は10%未満である。それ故、組み合わせたライブラリーの資源は約300,000の個別の化合物に相当する。
【0068】
B.一次BoNT/A軽鎖スクリーニングおよび一次BoNT/B軽鎖スクリーニングの応用
候補化学物質ライブラリーの化合物が96穴フォーマット、又は、384穴フォーマットで、上述した細胞ベースBoNT/A軽鎖ハイスループットスクリーニング、及び、BoNT/B軽鎖細胞ベースハイスループットスクリーニングに対して検討される。スクリーニングライブラリーの化合物は96穴のマスタープレート中に100%DMSO中に2.5mMの濃度で−20℃で保存される。マスタープレートが溶かされ、上述した試験スクリーニングで決定された量の化合物がSciclone ALH 3000液体操作ロボット(Caliper, Inc.)とTwister IIマイクロプレート操作器Caliper, Inc.)を用いて、一度に4枚の96穴元プレートを一枚の384穴プレートに組み合わせて加えられる。前記スクリーニングプレートは、上述した試験スクリーニングで述べたように最初と最後の列に正の対照と負の対照を含む。
【0069】
プレートリーダーによって作られた生データは次のように加工される。相対的発光単位(RLU)データが取得され、プレートのシリアル番号をデータベースエントリーに関連付けることで、半自動的方法で解析される。各化合物のエントリに数値の情報を関連付け、%阻害とZスコアを計算する。さらに、Z因子計算は正の対照と負の対照に基づきプレートごとに行われ、0.6より大きいZ値は十分であるとみなされ、そのプレート中の化合物からのデータがデータベースに受け入れられる。%阻害、Zスコア、及び、50%阻害濃度(IC50)及び逆スクリーニングの結果のような確認/査定データを含む全てのスクリーニングデータが一つの中央データベース(CambridgeSoftのChemBioOffice)に保存される。調査された一連の化学物質の構造と活性の関係が短時間で解析される。さらに、商業上のデータベースから類似化合物が短時間で同定され、取得され、データベースに登録され、生物学的試験のために提出される。
【0070】
C.ヒット確認と立証
一次ヒットとして示すための判定基準を満たす化合物は、前述した3段階からなる確認プロセスを受ける。第一に、一次ヒットはストックプレートから確認ストックプレートへ選択され、4枚の確認アッセイプレートのセットを作成するために複製される。その4枚の確認アッセイプレートは、各化合物について4つの新しいデータポイントを作成するための一次スクリーニングアッセイで使用される。4回反復されたアッセイで少なくとも3回、50%より大きい阻害と3より大きいZスコアを示すものが確認されたヒットである。第二に、その他のボツリヌス神経毒素の阻害について複製物において逆スクリーニングされるものが確認されたヒットである。第三に、確認されたヒットは、BoNT/A軽鎖、及び、BoNT/B軽鎖の阻害についてのFRETアッセイで濃度依存的活性について検討されうる。IC50はそれぞれの効力を位置づけるために決定される。
【0071】
シグナル増大細胞ベースアッセイの信頼性のため、スクリーニングプロセスを通してZスコアが0.5よりも大きければ、スクリーニングにおいて偽陽性に出会うことはほとんどない。ボツリヌス神経毒素と生物発光の誘発に必要なプロセスの両方を阻害することによって偽陰性が生じうる。しかしながら、これらのヒットは検出可能であっても、追求するには偶然でで十分な質をもたないであろう。別のボツリヌス神経毒素での逆スクリーニングを通り抜けたヒットは乱雑ではないようであろう。一次ヒットを査定し、順位をつけるために、いくつかの二次アッセイが以下に述べるように適用され、前記スクリーニングからのヒットをさらに限定する。もし、先に確定した判定基準でヒット率が0.1%の下であれば、そのスクリーニングプレートのZ値が約0.6よりも上である限り、ヒットについてより低い阻害レベルを許容することにより、そのヒット率が上昇しうる。それは、負の対照と正の対照の間に広い分離帯をしめし、各ヒットは完全に活性のある対照より少なくとも3標準偏差分下である。
【0072】
本発明のある実施形態にしたがう方法の次の段階で、同定された各阻害剤が査定され、多数のヒットに効力と選択性で順位が付けられる。BoNT/A、及び、BoNT/Bの評価された阻害剤は10μM以下のIC50を持つことができ、10以上の選択性インデックスCC50/IC50を持つことができ、重大な細胞毒性をもたないことがありえ、そして、一次神経細胞モデルにおいて確認された活性をもつことができる。
【0073】
本発明のある実施におけるこの段階は、上述したハイスループットスクリーニングにおいて発見されたスクリーニングヒット、又は、化学型に順位をつけるために必要な効力と特異性についての情報を引き出す。ある望ましい実施形態において、4種の活性が査定されうる。(a)インビトロ効力(BoNT/Aエンドペプチダーゼ、及び、BoNT/Bエンドペプチダーゼのインビトロでの阻害に対するIC50)、(b)特異性(その他のエンドペプチダーゼ、BoNT/F、炭疽菌致死因子(AT−LF)、及び、一連のヒトマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)のインビトロでの阻害効力に対するIC50、及び、キレート化性質の試験)(c)細胞毒性(すなわち、前記化合物の培養哺乳類細胞でのCC50)、及び、(d)インビボ効力(すなわち、一次ラットニューロンでのBoNT/A SNAP−25切断の阻害、又は、VAMP切断活性のBoNT/B阻害に対するIC50,および、神経軸索の成長阻害の救助)。合格した化合物は細胞毒性、及び、その他の非関連エンドペプチダーゼに対する活性をほとんど、又は、まったく示さないが、インビトロで、及び、単離されたニューロンでBoNT/A、及び/又は、BoNT/B作用の強力で特異的な救出をもたらす。
【0074】
ラットニューロン細胞SNAP−25切断アッセイ
前述したように、細胞が7日から8日齢のラット小脳から回収され、洗浄され、6穴プレートで培養され、培地交換をしながら一週間培養される。いったん、前記の細胞が中立的にネットワーク状になると、それらは化合物、又は、希釈剤(DMSO)と15分間、前保温される。細胞はそれからBoNT/Aで接種され、採取前に37℃、5%二酸化炭素で3時間保温される。細胞は1M水酸化ナトリウム溶液でBoNTを不活性化するために処理され、遠心分離前にプレート表面からこそぎ落とされ、ゲル添加液で溶解される。試料はSDS−PAGEゲルで泳動され、ウサギ抗SNAP−25抗体とHRP結合ヤギ抗ウサギIgG抗体を用いる免疫ブロットのために膜に転写される。走査デンシトメトリーでバンドの強度が読まれ、補正される。
【0075】
本発明は望ましい実施形態に関して述べられてきた。特定の値、関係、物質、及び、工程が本発明の構想を述べることを目的として表明されてきたが、一方、様々な改変、及び/又は、修飾が、広く述べられた本発明の基本的な構想、及び、動作原理の精神、又は、範囲から離れることなく、具体的な実施形態でしめされた本発明に対してなされうることが当業者によって理解されるであろう。上の教示の観点から、当業者は、本明細書で教示された発明から離れることなくそれらの細目を修飾することができると認識されるであろう。本発明の基礎となる構想の望ましい実施形態、および、ある修飾を十分に明らかにしたので、当業者がその基礎となる構想に精通すると、さまざまなその他の実施形態、並びに、本明細書で示し、述べた実施形態のある改変、及び、修飾は明らかに彼らによって起こされるであろう。そのような修飾、変法、及び、その他の実施形態が添付される請求項、又は、その同等物の範囲にある限り、それらすべてを含むことが意図される。それ故、本発明は、本明細書で具体的に明らかにされた以外の態様で実行されうることが理解されるべきであろう。結果として、本実施形態は、例示的なものであり制限的ではないとあらゆる点でみなされうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を同定するためのシステムであって:
少なくとも1つの結合部位、誘導性プロモーター領域、及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を含み、これらがすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している、レポーターコンストラクト;
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む、転写活性化剤
を含むシステム。
【請求項2】
さらに少なくとも1つのプロテアーゼ又はプロテアーゼ候補を含み、該プロテアーゼ又はプロテアーゼ候補が、プロテアーゼ基質ドメインを特異的に標的とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
転写活性化剤又はプロテアーゼ/プロテアーゼ候補の少なくとも1つが、核酸コンストラクトの産物としてシステムに提供される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
転写活性化剤又はプロテアーゼ/プロテアーゼ候補の少なくとも1つが、タンパク質としてシステムに提供される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
さらに以下からなる群より選択される少なくとも1つのレポーター遺伝子を含む、請求項1に記載のシステム:
Venus黄色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP);青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、これらの蛍光変異体、生物発光タンパク質、Gaussiaルシフェラーゼ、renillaルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、及びホタルルシフェラーゼ、これらもレポーターベクターの活性の定量化に用いることができる。
【請求項6】
1つの誘導性プロモーターから転写された少なくとも2つのレポーター遺伝子を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
レポーター遺伝子コンストラクトが1〜8個の結合部位配列の反復を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
レポーター遺伝子コンストラクトが5個の結合部位配列の反復を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
結合部位が、Gal4及びLexAからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
誘導性レポーター領域が、TATAプロモーター領域を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
プロテアーゼ基質が、BoNTプロテアーゼ基質、炭疽菌プロテアーゼ、カスパーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ、HIVプロセシングプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロセシングプロテアーゼ、ユビキチンプロセシングプロテアーゼ、ISG15プロセシングプロテアーゼ、自食作用関連ATG4様プロセシングプロテアーゼ、及び、肝炎ウイルスプロセシングプロテアーゼ、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
プロテアーゼ基質が、SNAP−25、VAMP−2、及びシンタキシン1a、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
プロテアーゼ基質が、SNAP−25及びVAMP−2プロテアーゼ基質ドメインを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
プロテアーゼがBoNTプロテアーゼである、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
プロテアーゼ基質が、結合ドメインと転写活性化ドメインの間の転写活性化剤上に位置し、転写活性化剤が、転写が起こる細胞内区画にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
プロテアーゼ基質ドメインが分子の一端にあり、結合ドメインと転写活性化ドメインが互いに機能的に近接して、かつプロテアーゼ基質ドメインから逆となる転写活性化剤の末端に位置し、プロテアーゼ基質ドメインの切断によって結合ドメインと転写活性化因子が遊離し、機能性転写活性化剤フラグメントを与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
転写活性化剤が細胞核の外に隔離されるが、プロテアーゼによる切断が、結合ドメイン及び転写活性化ドメインを含み、転写活性が起きている細胞内区画に到達することができる機能的に活性な転写活性化剤を遊離するように設計された、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
tTS細胞における、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
以下を含むシステムに、少なくとも1つの試験分子又は化合物を導入すること:
少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び、少なくとも1つのレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子コンストラクトであって、これらはすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している;
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤;及び
該プロテアーゼ基質ドメインに特異的なプロテアーゼ;
並びに、レポーター分子の発現レベルへの影響を測定すること
を含む、プロテアーゼ阻害剤を同定する方法。
【請求項20】
以下を含むシステムに、少なくとも1つの試験分子又は化合物を導入すること:
少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び、少なくとも1つのレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子コンストラクトであって、これらはすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している;及び
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤;
並びに、レポーター分子の発現レベルへの影響を測定すること
を含む、プロテアーゼを同定する方法。
【請求項1】
プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を同定するためのシステムであって:
少なくとも1つの結合部位、誘導性プロモーター領域、及び少なくとも1つのレポーター遺伝子を含み、これらがすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している、レポーターコンストラクト;
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む、転写活性化剤
を含むシステム。
【請求項2】
さらに少なくとも1つのプロテアーゼ又はプロテアーゼ候補を含み、該プロテアーゼ又はプロテアーゼ候補が、プロテアーゼ基質ドメインを特異的に標的とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
転写活性化剤又はプロテアーゼ/プロテアーゼ候補の少なくとも1つが、核酸コンストラクトの産物としてシステムに提供される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
転写活性化剤又はプロテアーゼ/プロテアーゼ候補の少なくとも1つが、タンパク質としてシステムに提供される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
さらに以下からなる群より選択される少なくとも1つのレポーター遺伝子を含む、請求項1に記載のシステム:
Venus黄色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP);青色蛍光タンパク質(BFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、これらの蛍光変異体、生物発光タンパク質、Gaussiaルシフェラーゼ、renillaルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、及びホタルルシフェラーゼ、これらもレポーターベクターの活性の定量化に用いることができる。
【請求項6】
1つの誘導性プロモーターから転写された少なくとも2つのレポーター遺伝子を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
レポーター遺伝子コンストラクトが1〜8個の結合部位配列の反復を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
レポーター遺伝子コンストラクトが5個の結合部位配列の反復を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
結合部位が、Gal4及びLexAからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
誘導性レポーター領域が、TATAプロモーター領域を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
プロテアーゼ基質が、BoNTプロテアーゼ基質、炭疽菌プロテアーゼ、カスパーゼ、アルファウイルスNSP2プロテアーゼ、HIVプロセシングプロテアーゼ、低分子ユビキチン様修飾因子プロセシングプロテアーゼ、ユビキチンプロセシングプロテアーゼ、ISG15プロセシングプロテアーゼ、自食作用関連ATG4様プロセシングプロテアーゼ、及び、肝炎ウイルスプロセシングプロテアーゼ、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
プロテアーゼ基質が、SNAP−25、VAMP−2、及びシンタキシン1a、又はこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
プロテアーゼ基質が、SNAP−25及びVAMP−2プロテアーゼ基質ドメインを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
プロテアーゼがBoNTプロテアーゼである、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
プロテアーゼ基質が、結合ドメインと転写活性化ドメインの間の転写活性化剤上に位置し、転写活性化剤が、転写が起こる細胞内区画にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
プロテアーゼ基質ドメインが分子の一端にあり、結合ドメインと転写活性化ドメインが互いに機能的に近接して、かつプロテアーゼ基質ドメインから逆となる転写活性化剤の末端に位置し、プロテアーゼ基質ドメインの切断によって結合ドメインと転写活性化因子が遊離し、機能性転写活性化剤フラグメントを与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
転写活性化剤が細胞核の外に隔離されるが、プロテアーゼによる切断が、結合ドメイン及び転写活性化ドメインを含み、転写活性が起きている細胞内区画に到達することができる機能的に活性な転写活性化剤を遊離するように設計された、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
tTS細胞における、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
以下を含むシステムに、少なくとも1つの試験分子又は化合物を導入すること:
少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び、少なくとも1つのレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子コンストラクトであって、これらはすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している;
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤;及び
該プロテアーゼ基質ドメインに特異的なプロテアーゼ;
並びに、レポーター分子の発現レベルへの影響を測定すること
を含む、プロテアーゼ阻害剤を同定する方法。
【請求項20】
以下を含むシステムに、少なくとも1つの試験分子又は化合物を導入すること:
少なくとも1つの結合部位、転写プロモーター、誘導性プロモーター領域、及び、少なくとも1つのレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子コンストラクトであって、これらはすべて該レポーター遺伝子の発現のために機能的に連結し、転写活性化剤と機能的に連携している;及び
核酸結合ドメイン、少なくとも1つのプロテアーゼ基質ドメイン、及び、誘導性プロモーターのための少なくとも1つの転写活性化ドメインを含む転写活性化剤;
並びに、レポーター分子の発現レベルへの影響を測定すること
を含む、プロテアーゼを同定する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【図11】
【公表番号】特表2013−512692(P2013−512692A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543216(P2012−543216)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059341
【国際公開番号】WO2011/071956
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512048767)シナプティック リサーチ,リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】SYNAPTIC RESEARCH,LLC
【住所又は居所原語表記】1448 South Rolling Road,Baltimore,Maryland 21227
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059341
【国際公開番号】WO2011/071956
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512048767)シナプティック リサーチ,リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】SYNAPTIC RESEARCH,LLC
【住所又は居所原語表記】1448 South Rolling Road,Baltimore,Maryland 21227
【Fターム(参考)】
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