説明

プロテインキナーゼのインヒビターとして有用なイミダゾール組成物

本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用なイミダゾール化合物に関する。これらの化合物は、c−Metプロテインキナーゼ、JAKプロテインキナーゼ、およびKDRプロテインキナーゼの、インヒビターとして、単独でまたは組み合わせにおいていずれでも有効である。本発明はまた、本発明の化合物の調製のためのプロセス、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、および種々の障害の処置における組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物の調製のためのプロセス、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、および種々の障害の処置における組成物の使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
疾患に関連した酵素および他の生体分子の構造についてのより良い理解によって、近年、新規の治療因子に対する探索が大いに支援されている。広範な研究の主題である酵素の重要な部類のうちの一つは、プロテインキナーゼである。
【0003】
プロテンキナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う、構造的に関連した酵素の大きなファミリーを構成する。(非特許文献1を参照のこと)。プロテインキナーゼは、それらの構造および触媒機能の保存に起因して、共通の先祖遺伝子から進化していると考えられている。殆ど全てのキナーゼは、類似の250〜300個のアミノ酸の触媒ドメインを含む。これらのキナーゼは、それらがリン酸化する基質によってファミリーに分類され得る(例えば、プロテイン−チロシン、プロテイン−セリン/トレオニン、脂質など)。配列モチーフは、一般にこれら各々のキナーゼファミリーに対応することが同定されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6を参照のこと)。
【0004】
一般的に、プロテンキナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から、シグナル伝達経路に関与するタンパク質受容体へのホスホリル転移をもたらすことによって、細胞内シグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化事象は、標的のタンパク質の生物学的機能を調節または制御し得る分子のon/offスイッチとして作用する。これらのリン酸化事象は最終的に、種々の細胞外の刺激および他の刺激に応答して誘発される。そのような刺激の例として、環境ストレスシグナルおよび化学ストレスシグナル(例えば、浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌性内毒素、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α))、および増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージ−コロニー−刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF))、が挙げられる。細胞外刺激は、細胞増殖、移動、分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋収縮、解糖、タンパク質合成の制御、および細胞周期の制御に関連した一つもしくはそれより多い細胞応答に作用し得る。
【0005】
多くの疾患は、上記のプロテインキナーゼによって媒介された事象によって誘発される異常な細胞応答と関連する。これらの疾患としては、癌および他の増殖性の障害が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、医薬品化学において有効な治療因子として有効性のあるプロテインキナーゼのインヒビターを見つけるために相当な努力がなされてきている。
【0006】
このc−Metプロトオンコジーンは、c−Met受容体チロシンキナーゼをコードする。このc−Met受容体は、145kDaのβ鎖にジスルフィド結合した50kDaのα鎖から構成され、190kDaのグリコシル化された二量体の複合体である。このα鎖は細胞外に見出され、他方、このβ鎖は、細胞外膜貫通ドメインおよび細胞質ゾルドメインを含む。c−Metは前駆体として合成され、タンパク分解により切断され完熟したαサブユニットおよび完熟したβサブユニットが得られる。それは、細胞−細胞間の相互作用に関与するリガンド−受容体のファミリーであるセマホリン(semaphorin)およびプレキシン(plexin)に対して構造的な類似性を示す。c−Metに対するリガンドは、スキャター因子ファミリーの一員である肝細胞増殖因子(HGF)であり、そしてこのリガンドは、プラスミノーゲンにいくつかの相同性を有する[非特許文献7;非特許文献8]。
【0007】
c−Metは、腫瘍形成および腫瘍転移において機能を果たす。破骨細胞株において、Tpr−met融合を形成する染色体の再配列は、恒常的に活性なc−Met受容体および形質転換を生じた(非特許文献9)。増強されたキナーゼ活性を示すc−Metの変異体は、乳頭状腎癌の遺伝の形態および乳頭状腎癌の散発性の形態の両方において同定されている(非特許文献10;非特許文献11)。c−MetのそのリガンドであるHGFを伴う発現は、形質転換、腫瘍形成、および転移性である(非特許文献12;非特許文献13)。HGF/Metは、頭部および頚部の扁平上皮細胞の癌細胞における、懸濁誘導性のプログラムされた細胞死(アポトーシス)であるアノイキス(anoikis)を阻害することが示した。アノイキス耐性または足場非依存性生存は、上皮細胞の発癌性の形質転換の特徴である(非特許文献14)。
【0008】
c−Metは、かなりの割合のヒト癌において過剰発現し、そして原発腫瘍と転移との間の移行時期に増幅される。この癌遺伝子が、転移の表現型の獲得を直接担うかどうかを調べるために、Giordanoらは、インビトロおよびヌードマウスの両方で浸潤性質および転移性質を非腫瘍形成性の細胞に、与え得るおよび形質転換し得る、c−Metのシングルヒット発癌型を利用した。彼らは、癌遺伝子の形質転換能を増大したc−Metのシグナル変換器のドッキング部分おいて、点変異を見出した。しかしこの点変異は、その転移の可能性を消去していた。c−Met癌遺伝子の転移可能性は、その多機能性のドッキングサイトの物性に依存することと、シグナル変換に影響する点変異が、転移から腫瘍性の形質転換を分離し得ると、彼らは結論付けた。非特許文献15。
【0009】
c−Metは、種々の癌に関係する。c−Metの関係するある癌の種類は、胃の腺癌である。米国癌協会(The Americen Cancer Society)の推定によると、米国において、2004年に22,710人が胃癌と診断され、11,780人がこの疾患により死亡する。胃に近接した範囲を含む末期疾患を示す患者に対する5年間の生存率は、ほんの10〜15%にすぎない。非特許文献16。c−Metは、19〜39%の胃の腺癌において増幅され、最も高い増幅率が拡散型の胃の腺癌において見られる。非特許文献17。c−Metはまた、約70%の胃の腺癌において過剰に発現すると、腫瘍の病期についての過剰発現に関する免疫組織学によって調べられた。非特許文献18;非特許文献19。c−Metのオートクライン活性に対する可能性は、約50%の患者に存在し、それらの腫瘍はまた、HGFを発現する
【0010】
c−Metはまた、腎臓癌に関係する。c−Metプロトオンコジーンの産物のβサブユニットは、肝細胞増殖因子に対する細胞表面受容体であることが、見出された。肝細胞増殖因子受容体はまた、c−Metプロトオンコジーンの産物であると、同定された。非特許文献20。
【0011】
c−Metはまた、小細胞肺癌に関係する。小細胞肺癌は、5〜10%の5年間の生存率を有する、悪性の疾患である(大部分は限定された疾患の患者である)。2004年における、小細胞型および非小細胞型の両方を含む新規の肺癌の症例数は、173,770件であり、その疾患によって160,440件の患者が亡くなりつつある。非特許文献21。2003年における、小細胞肺癌は、全ての肺癌症例の約16%に達した。非特許文献22;非特許文献23。c−Metおよびc−Kitの両方は、大多数の小細胞癌細胞株および大多数の小細胞腫瘍において共に発現され、そして試験した30%の細胞株がc−Metにおいて変異を有する。非特許文献24。HGFは、少数の腫瘍において共に発現する。
【0012】
c−Metおよび結腸直腸癌の両者の関連もまた、証明されている。結腸直腸癌の進行の間のc−Metの表現の分析において、分析された癌標本のうち50%は、近接の正常な結腸粘膜に比較してc−Metのm−RNA転写物およびc−Metタンパク質が、5〜50倍高水準を発現したことを示す。さらに、原発癌について比較した場合、70%の結腸直腸癌の肝臓転移は、c−Metの過剰発現を示した。非特許文献25:非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28;非特許文献29;非特許文献30;および非特許文献31を参照のこと。
【0013】
c−Met受容体チロシンキナーゼ(「RTK」)もまた、神経膠芽腫に関係する。重度の悪性神経膠腫は、最も一般的な中枢神経系の癌である。外科的な切除、放射線療法、および化学療法を用いた処置でも、平均の全体の生存は、1.5年未満であり、3年より長く生存する患者は殆どいない。処置の失敗に対する共通の理由は、放射線および化学療法に対する患者の生得性の抵抗力にある。
【0014】
多形神経膠芽腫は、最も一般的かつ最も悪性の膠細胞の腫瘍である。非常に攻撃的な処置でも、これらの悪性神経膠腫は、ほんの9ヶ月の平均余命と関連付けられる。ヒト神経膠腫の形成および悪化の進行は、複雑なプロセスであり、そしてこれらの例として、遺伝子変異、染色体上の倍数性(multiploidy)、ならびに多発性の分裂促進因子および脈管形成因子の、異常な後成的な影響が挙げられる。
【0015】
ヒト悪性神経膠腫は、生物学的に重要であるオートクラインループを確立し得る、HGFおよびc−Metの両方を、頻繁に発現する。神経膠腫c−Met発現は、神経膠腫の程度と関係し、そしてヒト腫瘍標体の分析において、悪性神経膠腫は、軽度の神経膠腫と比較して7倍多いHGF含有量を有することが示された。
【0016】
原発性の中枢神経系の悪性疾患の最も共通の形態を示すのに加えて、神経膠腫はまた、腫瘍のうちで、HGF−cMetシグナル伝達の異常と最も密接に関係する。複数の研究が実証しているように、ヒト神経膠腫は頻繁に、HGFおよびc−Metを共に発現し、そして高水準の発現は、悪性疾患の進行に関係している。HGF遺伝子の神経膠腫細胞株への転移は、腫瘍形成、腫瘍増殖、および腫瘍に関連した血管新生を増加させる。インビボにおいて、HGF−cMetシグナル伝達を遮断することは、これらの表現型を逆転することもまた示された。インビトロおよびインビボの両方において、HGF−cMetが、Aktを活性化し得、そして神経膠腫細胞株をアポトーシスの死から保護し得ることも、さらに示された。非特許文献32、非特許文献33;非特許文献34;非特許文献35;非特許文献36;非特許文献37,非特許文献38,非特許文献39,非特許文献40を参照のこと。
【0017】
ヒト胸部癌のHGFで促進された増殖に対するNK4(HGF拮抗剤)の効果により、腫瘍の浸潤性および運動性、腫瘍の重量および体積の減少を生じたことが示された。さらに、インビトロにおける浸潤性アッセイおよび転移アッセイにおいて、生理活性のHGFを分泌するHGFおよびヒト繊維芽細胞の双方は、胸部癌細胞(MDA MB 231)の浸潤性および転移性を増加した。非特許文献41を参照のこと。さらに、変異的に活性化されたc−Metを有するトランスジェニックマウスは、転移性の乳癌を発生させた。これらの同じ活性化している変異体は、ヌードマウスNIH3T3の異種移植片中で腫瘍を形成し得た(非特許文献42)。
【0018】
肝細胞中でc−Metを過剰発現したトランスジェニックマウスは、以前からc−Metに関するとされるヒト腫瘍のうちの一つである肝細胞(heptocellular)癌(HCC)を発生させた。導入遺伝子の不活性化は、非常に進行した腫瘍でさえ退行を生じ、そしてこの不活性化は、見かけ上アポトーシス、および細胞増殖の休止によって介在されていた。c−Metによって誘発された肝臓腫瘍において、多数の細胞は、増殖していた。トランスジェニックhMetからの刺激物の除去は、進行した悪性腫瘍の細胞中でさえ、細胞増殖の敏速な休止を生じた(非特許文献43)。
【0019】
正常細胞において、HGF/Metシグナル伝達は、細胞融合および運動に関与し、そしてこのシグナル伝達は、殆どの組織(例えば、軟骨、骨、血管、および神経が挙げられる)において見られる浸潤性の増殖において主要な役割を果たす(非特許文献44において総説される)。機能障害の活性化またはc−Metの数の増加は、腫瘍転移の特性である、転移、増殖、および細胞の生存を生じる異常な細胞−細胞相互作用に寄与するようである。c−Metの活性化は、種々の腫瘍を誘発しかつ維持する[非特許文献45;非特許文献46;非特許文献47]。他方、c−Metの損失は、腫瘍細胞の増殖および浸潤性を阻害する[非特許文献48;非特許文献49]。Met/HGFの増加した発現は、結腸癌(非特許文献50)、胸部癌(非特許文献51)、前立腺癌(非特許文献52)、肺癌(非特許文献53)、および胃癌(非特許文献54)を含む多くの転移性の腫瘍において見出される。
【0020】
さらに転移においてc−Metの果たす役割についての実証は、上皮細胞における浸潤性の増殖の間、セマホリン4D(SEMA4D;601866)受容体と、プレキシンB1(PLXNB1;601053)と、c−Metとの間でクロストークに対する証拠を提示した、Giordanoら(2002)によって示された。SEMA4DのPLXNB1への結合は、METのチロシンキナーゼ活性を刺激し、両方の受容体のチロシンのリン酸基化を生じた。この効果は、c−Metの発現が欠損している細胞においては見出されなかった。非特許文献55。
【0021】
HGF−c−Metシグナル伝達もまた、増加したアテローム硬化症の危険度と関連付けられ(非特許文献56;非特許文献57)、そしてこのシグナル伝達は、肺の繊維症を増加させてきた(非特許文献58)。
【0022】
ヤーヌスキナーゼ(The Janus Kinase:JAK)は、チロシンキナーゼのファミリーでJAK1、JAK2、JAK3、およびTYK2から構成される。JAKは、サイトカインシグナル伝達に重要な役割を果たす。キナーゼのJAKファミリーの下方制御基質は、シグナル変換器および転写(STAT)タンパク質の活性化剤を含む。
JAK/STATシグナル伝達は、アレルギー、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶、慢性関節リウマチ、筋萎縮側索硬化症、および複数の硬化症)のような多くの異常な免疫応答の介在、のみならず固形の悪性疾患および血液学的な悪性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫)にも関係している。JAK/STAT経路における医薬の介入は、総説にされている[非特許文献59および非特許文献60]。
【0023】
JAK1、JAK2、およびTYK2は、普遍的に発現される。他方、JAK3は、造血細胞中で主に発現される。JAK3は、共通のサイトカイン受容体のガンマ鎖(gc)に排他的に結合し、そしてJAK3は、IL−2、IL−4、IL−7、IL−9、およびIL−15によって活性化される。実際に、IL−4およびIL−9によって誘発されるマウスの肥満細胞の増殖および生存は、JAK3−シグナル伝達およびgc−シグナル伝達に依存すると示されている[非特許文献61]。
【0024】
感作された肥満細胞物質の高親和の免疫グロブリン(Ig)E受容体の架橋は、炎症誘発性伝達物質の遊離を生じ、例えばこの伝達物質としては、急性アレルギー反応または即時型過敏(I型)反応を生じる、多数の血管作用性のサイトカインが挙げられる[非特許文献62および非特許文献63]。インビトロおよびインビボにおいて、IgE受容体によって介在された肥満細胞の応答におけるJAK3に対する重要な役割は、確立されている[非特許文献64]。さらに、JAK3の阻害を通じた肥満細胞の活性化によって介在されるI型の過敏反応(例えば、アナフィラキシ−が挙げられる)の防止もまた、報告されている[非特許文献65]。JAK3インヒビターを用いた肥満細胞の標的化は、インビトロにおいて肥満細胞の脱顆粒を調節し、そしてこの標的化は、インビボにおいて、IgE受容体/抗原によって介在されたアナフィラキシー反応を妨げる。
【0025】
近年の研究は、免疫抑制および同種移植片の許容性に対して成功したJAK3の標的化を、記載した。この研究において、JAK3のインヒビターを投与されている、ウィスターファース(Wistar Furth)被験体において、バッファローの心臓の同種移植片の用量依存の生存が、移植片対宿主病に比較して、移植片中で望ましくない免疫応答の調節の可能性を示すことが実証された[非特許文献66]。
【0026】
IL−4によって介在されたSTAT−リン酸化は、初期および後期の慢性関節リウマチ(RA)に関与する機構と関係している。RAの滑膜および滑液における炎症性(proinflammatory)のサイトカインの上方制御は、この疾患の特徴である。IL−4によって介在されたIL−4/STATの活性化の経路は、ヤヌスキナーゼ(JAK1およびJAK3)を通じて介在され、そしてIL−4の関連したJAKキナーゼは、RA滑膜中で発現された[非特許文献67]。
【0027】
家族性の筋萎縮性側索硬化症(FALS)は、ALSの患者のうち約10%が発症する致命的な神経退行性の障害である。FALSマウスのこの生存率は、特異なインヒビターであるJAK3を用いた処置によって増加した。これにより、JAK3が、FALSに役割を果たすことを確証された[非特許文献68]。
【0028】
転写タンパク質のシグナルトランスデューサーかつアクチベータ(STAT)は、特にJAKファミリーのキナーゼによって活性化される。近年の研究結果は、白血病の処置のための特定なインヒビターを用いて、JAKファミリーのキナーゼを標的化することにより、JAK/STATのシグナル伝達経路における介入の可能性を示唆した[非特許文献69]。特異な化合物であるJAK3は、JAK3の発現した細胞株(DAUDI、RAMOS、LC1;19、NALM−6、MOLT−3およびHL−60)のクローン化増殖を阻害することを示した。
【0029】
動物モデルにおいて、TEL/JAK2の融合タンパク質は、骨髄増殖性の障害を誘発していた。そして造血性細胞株において、TEL/JAK2の導入は、STAT1、STAT3、STA5、およびサイトカイン依存性の増殖における活性化を生じた[非特許文献70]。
【0030】
JAK3およびTYK2の阻害は、STAT3のチロシンのリン酸化を抑止し、そしてこの阻害は、皮膚のT細胞のリンパ腫の形態である、菌状息肉腫の細胞増殖を阻害した。これらの結果は、JAKのファミリーキナーゼが、菌状息肉腫において存在する恒常的に活性化されたJAK/STATの経路に関与することを示した[非特許文献71]。同様に、過剰に発現されたLCKによって特徴づけられるマウスのT細胞のリンパ腫中で、STAT3、STA5、JAK1およびJAK2は、恒常的に活性化されると実証された。従ってさらに、STAT3、STA5、JAK1およびJAK2は、異常な細胞増殖におけるJAK/STATの経路に関連している[非特許文献72]。さらに、IL−6によって介在されたSTAT3の活性化は、JAKのインヒビターによって遮断され、骨髄種細胞の感化をアポトーシスに導いた[非特許文献73]。
【0031】
チロシンキナーゼは、細胞内のシグナル伝達経路を仲介する酵素のクラスである。これらのチロシンキナーゼの異常な活性は、細胞増殖、発癌および細胞の化学分化に寄与することを示していた。したがって、チロシンキナーゼの活性を調節する因子は、これらの酵素に関係した増殖性の疾患を防止および処置するために有用である。
【0032】
KDRは、VEGF(脈管内皮の増殖因子)をまた結合するチロシンキナーゼ受容体である。非特許文献74。VEGFのKDR受容体への結合は、既存の血管から毛細血管を噴出する、脈管形成を生じる。高水準のVEGFは、腫瘍の脈管形成を引き起こし、そして癌細胞の急速な増殖を可能にする、種々の癌において見出される。したがって、VEGFの活性を抑制することは、腫瘍の増殖を阻害する方法であり、そしてそれは、KDR受容体チロシンキナーゼを阻害することによって獲得し得ると示されている。例えば、SU5416は、チロシンキナーゼの選択的なインヒビターであり、そして腫瘍の脈管形成および複数の腫瘍の増殖もまた抑制すると報告された。非特許文献75。癌の処置のためのKDRチロシンキナーゼの他のインヒビターもまた、報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0033】
そのようなインヒビターによって処置され得る癌の例として、脳腫瘍、尿生殖路の癌、リンパ系の癌、胃癌、咽頭癌、肺癌、膵臓癌、胸部癌、カポジ肉腫、および白血病が挙げられる。異常なチロシンキナーゼ活性に関係する他の疾患および状態の例として、血管の疾患、自己免疫疾患、眼球の状態、および炎症性の疾患が挙げられる。
【0034】
プロテインキナーゼの生物学的な重要性の結果として、治療上効果のあるプロテインキナーゼのインヒビターに目下の関心がある。したがって、プロテインキナーゼの活性化に関連した種々の疾患または状態の処置において有用である、プロテインキナーゼのインヒビターを大いに開発する必要性が、依然としてある。とりわけ、c−Met、JAK、およびKDRの活性に関係した大部分の障害に対して、現在利用できる不適当な処置を与えられるそれらのインヒビターとして有用である化合物を、開発することが望ましい。
【特許文献1】国際公開第98/54093号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/16755号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/12089号パンフレット
【非特許文献1】Hardie,G.and Hanks,S.,The Protein Kinase Facts Book,Academic Press,San Diego,CA:1995:I and II
【非特許文献2】Hanks,S.K.,Hunter,T.,FASEB J.1995,9,576〜596
【非特許文献3】Knighton.et al.,Science 1991,253,407〜414
【非特許文献4】Hiles.et al.,Cell 1992,70,419〜429
【非特許文献5】Kunz.et al.,Cell 1993,73,585〜596
【非特許文献6】Garcia−Bustos.et al.,EMBO J.1994,13,2352〜2361
【非特許文献7】Longati,P.et al.,Curr.Drug Targets 2001,2,41〜55
【非特許文献8】Trusolino,L.and Comoglio,P.Nature Rev.Cancer 2002,2,289〜300
【非特許文献9】Cooper,C.S. et al.,Natute 1984,311,29〜33
【非特許文献10】Schmidt,L.et al.,Nat.Genet.1997,16,68〜73
【非特許文献11】Jeffers,M.et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.1997,94,11445〜11500
【非特許文献12】Jeffers,M.et al.,Oncogene 1996,13,853〜856
【非特許文献13】Michieli,P.et al.,Oncogene 1999,18,5221〜5231
【非特許文献14】Zeng,Q.et al.,J.Biol.Chem.2002,277,25203〜25208
【非特許文献15】Giordano,S.et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.1997,94,13868〜13872
【非特許文献16】http://cancer.gov/cancerinfo/pdq/treatment/gastric/healthprofessional/
【非特許文献17】Tahara,E.(2004)Genetic Pathways of Two Toes of Gastric Cancer.IARC Sci Publ.2004,157,327〜49
【非特許文献18】Heideman D.A.et al.,Absence of tpr−met and expression of c−Met expression of c−Met in human gastric mucosa and carcnoma.J Pathol.2001,194.428〜435
【非特許文献19】Ameriya,H.et al.,c−Met Expression in Gastric Cancer with Liver Matastasis.Oncology 2002,63,286〜296
【非特許文献20】Bottaro,D.P.,et al.,Science 1991,251,802〜804
【非特許文献21】http://www.nci.nih.gov/cancertopics/pdq/treatment/small−cell−lung/healthprofessional
【非特許文献22】Jemal et al.,Cancer statistics,2003.CA Cancer J.Clin.2003,53,5〜26
【非特許文献23】Ma P.C.,et al.,c−MET mutational analysis in small cell lung cancer:novel juxtamembrem domain mutations regulating cytoskeletal functions.Cancer Res.2003,63,6272〜81
【非特許文献24】Rygaard,K.et al.,Expression of the proto−oncogenes c−Met and c−Kit and their ligands,hepatocyte growth factor/scatter factor and stem cell factor,in SCLC cell lines and xenografts. Br J Cancer.1993,67,1,37〜46
【非特許文献25】Long et al.,Met Receptor Overexpression and Oncogenic Ki−ras Mutation Cooperate to Enhance Tumorigeniciy of Colon Cancer in Vivo.Mol Cancer Res.Mar.2003,1,5,393〜401
【非特許文献26】Fujisaki et al.,CD44 stimulation induces integrin−mediated adhesion of colon cancer cell lines to endothelial cells by up−regulation of integrins and c−Met and activation of integrins.Cancer Res.Sep 1,1999,59,17,4427〜34
【非特許文献27】Hiscox et al.,Association of the HGF/SF receptor,c−Met,with the cell−surface adhesion molecule,E−cadherin,and catenins in human tumor cells,Biochem Biophys Res Commmun.Aug 2,1999,261,2,406〜11
【非特許文献28】Herynk et al.,Activation of c−Met in colorectal carcinoma cells leads to constitutive association of tyrosine−phosphorylated beta−catenin.Clin Exp Metastasis.2003,20,4,291〜300
【非特許文献29】Wielenga et al.,Expression of c−Met and heparan−sulfate proteoglycan forms of CD44 in colorectal cancer.Am J Pathol.Nov.2000,157,5,1563〜73
【非特許文献30】Di Renzo et al.,Overexpression and amplification of the Met/HGF receptor gene during the progression of colorectal cancer.Clin.Cancer Res.1995,1,147〜154
【非特許文献31】Mao,et al.,Activation of c−Src by receptor tyrosine kinase in human colon cancer cells with high metastatic potential.Oncogene 1997,15,3083〜3090
【非特許文献32】Hirose et al.,Clinical importance of c−Met protein expression in high−grade astrocytic tumors.Neurol.Med.−Chir.1998,38,851〜859
【非特許文献33】Hirose et al.,Immunohistochemical examination of cMet protein expression inastrocytic tumors.Acta Neuropathol.1998,95,345〜351
【非特許文献34】Koochekpour et al.,Met and hepatocyte growth factor expression in human gliomas.Cancer Res.57,5391〜5398
【非特許文献35】Laterra et al.,HGF expression enhances human glioblastoma tumorigenicity and growth.Biochem.Biophys.Res.Commun.235,743〜747
【非特許文献36】Moriyama et al.,Concomitant expression of hepatocyte growth factor,HGF activator and cMet genes in human glioma cells in vitro.FEBs Lett.1995,372,78〜82
【非特許文献37】Nabeshima et al.,Expression of cMet correlates with grade of malignancy in human astrocytic tumors:an immunohistochemical study.Histopathology 1997,31,436〜443
【非特許文献38】Shiota et al.,Coexpression of heptacyte growth factor and its receptor(cMet)in HGL4 glioblastoma cells.Lab.Investig.1996,53,511〜516
【非特許文献39】Welch et al.,Hapatocyte growth factor and receptor(cMet)in normal and malignant astrocytic cells,Anticancer Res.1999,19,1635〜1640
【非特許文献40】Bowers et al.,HGF protects against cytoxic death in human glioblastoma via PI3−K and Akt−dependent pathways.Cancer Res.2000,60,4277〜4283
【非特許文献41】Growth and angiogenesis of human breast cancer in a nude mouse tumor model is reduced by NK4,the HGF antagonist.Carcinogenesis,May 9,2003
【非特許文献42】PNAS,Nov.1998,Vol95,p.14417〜14422
【非特許文献43】The Journal of Cell Biology 2001,Vol.153,p.1023〜1033
【非特許文献44】Comoglio,P.M.and Trusolino,L.J.Clin.Invest.2002,109,857〜862
【非特許文献45】Wang,R.et al.,J.Cell.Biol.2001,153,1023〜1034
【非特許文献46】Liang,T.J.et al.,J.Clin.Invest.1996,97,2872〜2877
【非特許文献47】Jeffers,M.et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.1998,95,14417〜14422
【非特許文献48】Jiang,W.G.et al.,Clin.Cancer Res.2001,7,2555〜2562
【非特許文献49】Abounader,R.et al.,FASEB J.2002 16,108〜110
【非特許文献50】Fazekas,K.et al.,Clin.Exp.Metastasis 2000,18,639〜649
【非特許文献51】Elliott,B.E.et al.,Can.J.Physiol.Pharmacol.2002,80,91〜102
【非特許文献52】Knudsen,B.S.et al.,Urology 2002,60,1113〜1117
【非特許文献53】Siegfried,J.M.et al.Ann.Thorac.Surg.1998,66,1915〜1918
【非特許文献54】Amemiya,H.et al.,Oncology 2002,63,286〜296
【非特許文献55】Giordano,S.,et al.,The Semaphorin 4D receptor controls invasive growth by coupling with Met.Nature Cell Biol.2002,4,720〜724
【非特許文献56】Yamamoto,Y.et al.,J.Hypertens.2001,19,1975〜1979
【非特許文献57】Morishita,R.et al.,Endocr.J.2002,49,273〜284
【非特許文献58】Crestani,B.et al.,Lab.Invest.2002,82,1015〜1022
【非特許文献59】Frank Mol.Med.1999,5,432〜456
【非特許文献60】Seidel,et al.,Oncogene 2000,19,2645〜2656
【非特許文献61】Suzuki et al.,Blood 2000,96,2172〜2180
【非特許文献62】Gordon et al.,Nature 1990,346,274〜276
【非特許文献63】Galli,N.Engl.J.Med.1993,328,257〜265
【非特許文献64】Malaviya,et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.1999,257,807〜813
【非特許文献65】Malaviya et al.,J.Biol.Chem.1999,274,27028〜27038
【非特許文献66】Kirken,transpl.proc.2001,33,3268〜3270
【非特許文献67】Muller−Ladner et al.,J.Immunol.2000,164,3894〜3901
【非特許文献68】Trieu,et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.2000,267,22〜25
【非特許文献69】Sudbeck,et al,1999,Clin.Cancer Res.5:1569〜1582
【非特許文献70】Schwaller,et al,EMBO J.1998,17,5321〜5333
【非特許文献71】Nielsen et al.,Proc Nat.Acad.Sci.USA.1997.94,6764〜6769
【非特許文献72】Yu,et al,J.Immunol.1997,159,5206〜5210
【非特許文献73】Catlett−Falcone,et al.Immunity.1999,10,105〜115
【非特許文献74】Neufeld et al.,FASEB J.1999,13,9
【非特許文献75】Fong et al.,Cancer Res.1999,59,99
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0035】
(本発明の要旨)
本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有効であることが、このたび見出された。ある実施形態において、これらの化合物は、c−Metプロテインキナーゼ、JAKプロテインキナーゼ、およびKDRプロテインキナーゼの、インヒビターとして、単独でまたは組み合わせにおいていずれでも、有効である。これらの化合物は、一般の式I:
【0036】
【化009】

またはその薬学的に受容可能な塩を有し、ここで環A、R、R、R、およびQは、以下に定義されているものと同様である。
【0037】
これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、癌および他の増殖性の障害を含むが、これらに限定されない、種々の疾患、障害または状態を、処置または防止するために有用である。
【0038】
本発明によって提供される化合物はまた、生物学的事象および病理学的事象における、キナーゼの研究、そのようなキナーゼによって仲介される細胞内のシグナル伝達経路の研究、および新規のキナーゼインヒビターの比較な評価に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
(I.本発明の化合物の一般的な説明)
本発明は式Iの化合物:
【0040】
【化010】

またはその薬学的に受容可能な塩に関する。ここで:
Qは、C1−6アルキリデン鎖であり、該Qのうちの一つのメチレン単位が、−C(O)N(R)−、−C(O)−、−C(O)O−、−N(R)−、−O−、−S−、−SO−、または−SON(R)−によって置換され;
該Rの各々は、独立して、水素、または、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基であり、ここで:
同一の窒素原子上の2つのR基は、必要に応じて該窒素原子といっしょになって、必要に応じて置換された、飽和したか、部分的に不飽和の、または完全に不飽和の、3〜7員環を形成し、該環は窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択された1〜3個のへテロ原子を有し;
は、H、−N(R)、または、必要に応じて置換された環であり、該環は、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、飽和したか、または部分的に不飽和の、3〜7員環;窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、5〜6員アリール環;あるいは、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、部分的に不飽和のまたはアリールの、8〜10員の二環;
からなる群より選択され;
は、必要に応じて置換された0〜3個の窒素を有する6員アリール環であり;
は、R、CN、NO、ハロゲン、N(R)、OR、またはSRであり;そして、環Aは、必要に応じて置換された環であり、該環は、以下からなる群より選択される:
【0041】
【化011】

【0042】
【化012】


【0043】
(2.化合物および定義)
本発明の化合物は、一般的に上記に記載されたものを含み、そしてこれらの化合物は、本明細書において開示されたクラス、サブクラス、および種によってさらに例証される。本明細書において用いられるように、以下の定義は、そうではないと示されない限り、適用される。本発明の目的のために、元素は、The Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。さらに、有機化学の一般的原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載され、これら全体が、本明細書により参考として援用される。
【0044】
本明細書において記載されるように、範囲として規定された多数の原子は、それに関する任意の整数を含む。例えば、1〜4個の原子を有する基は、1、2、3または4個の原子を有し得る。
【0045】
本明細書において記載されるように、本発明の化合物は、一つまたはそれより多い置換基で、必要に応じて置換され得、上記で一般的に例証されるような、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示されるようなものである。当然のことながら、「必要に応じて置換された」の句は、「置換されたまたは置換されていない」の句と互いに交換可能に用いられる。一般的に、「必要に応じて」の用語を前に置こうとそうでなかろうとも、「置換された」との用語は、所定構造における水素ラジカルの、特定の置換基のラジカルでの置換を示す。そうではないと示されない限り、必要に応じて置換された基は、各々に置換可能な基の位置で、置換基を有し得る。そして、任意の所定の構造における一つより多くの位置は、特定の基からなる群より選択される一つより多くの置換基で置換され得る場合、この置換基は、位置毎に、同一であってもよく異なってもよい。好ましくは、本発明によって想定される置換基の組み合わせは、安定な化合物または化学的に実施可能な化合物の形成を生じるものである。本明細書において用いられるように、「安定な」との用語は、それらの生産、検出および好ましくはそれらの回収、精製、または、本明細書に開示される目的のうち一つもしくはそれより多くの使用可能と条件に供する場合、実質的に変化しない化合物をいう。いくつかの実施形態において、安定な化合物または化学的に実施可能な化合物は、湿気または他の化学的に反応性の条件の不存在下、少なくとも1週間、40℃またはそれより低い温度で保たれた場合に、実質的に変化しない化合物である。
【0046】
本明細書において用いられる、「脂肪族」または「脂肪族基」との用語は、直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝した、完全に飽和したまたは一つもしくはそれより多く不飽和の単位を含む炭化水素鎖、あるいは、完全に飽和した、または一つもしくはそれより多く不飽和の単位を含むが、芳香族でなく(本明細書において,「炭素環式」、「脂環式」または「シクロアルキル」とも称する)、その分子の残りに対して単点の結合を有する、単環式の炭化水素あるいは二環式の炭化水素を意味する。そうではないと特定されない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の脂肪族の炭素原子を含む。他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の脂肪族の炭素原子を含む。さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族の炭素原子を含み、そしてその上、他の実施形態において、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、「脂環式」(または「炭素環式」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和したか、または、一つもしくはそれより多く不飽和の単位を含み、芳香族でなく、その分子の残りに対して単点の結合を有する、単環式のC〜Cの炭化水素または二環式のC〜C12の炭化水素を示す。ここで前記の二環式の環系において、いかなる個々の環も、3〜7員を有する。脂肪族基の例としては、直鎖または分枝の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、およびそれらのハイブリッド(例えば)(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書において用いられる、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」、または「複素環式」は、一つまたはそれより多くの環員が、ヘテロ原子から独立して選択される、非芳香族環系、単環系、二環系、または三環系を意味する。いくつかの実施形態において、「複素環」基、「ヘテロシクリル」基、「ヘテロ脂環式」基、または「複素環式」基は、一つまたはそれより多くの環員が、酸素、硫黄、窒素、またはリンからなる群より独立して選択される、3〜14環員を有する。そしてこの系において各々の環は、3〜7環員を含む。複素環の例としては、3−1H−ベンゾイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)ベンゾイミダゾール−2−オン、2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアン、および1、3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
「ヘテロ原子」との用語は、一つまたはそれより多くの酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素(例えば、任意の窒素の酸化体、硫黄の酸化体、リンの酸化体、またはケイ素の酸化体;任意の塩基性窒素の第四級形または;複素環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)、またはNR(N−置換したピロリジニルにおけるような)が挙げられる。)を意味する。
【0049】
本明細書において用いられる、「不飽和」との用語は、一つまたはそれより多くの不飽和の単位を有することを意味する。
【0050】
本明細書において用いられる、「アルコキシ」、または「チオアルキル」との用語は、酸素原子(「アルコキシ」)または硫黄原子(「チオアルキル」)を通じて、主炭素鎖に結合した、以前に定義されているアルキル基をいう。
【0051】
本明細書において用いられる、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」との用語は、場合に応じて、一つまたはそれより多くのハロゲン原子で置換された、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。「ハロゲン」との用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0052】
「アリール」との用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」におけるより大きな部分の一部として用いられ、全部で5から14環員を有する、単環系、二環系、および三環系を示す。ここで、この系において、少なくとも一つの環は、芳香族であり、そしてこの系における各々の環は、3から7環員を含む。「アリール」との用語は、「アリール環」との用語と互いに交換可能に用いられ得る。「アリール」との用語はまた、本明細書において下記で定義されるように、ヘテロアリール環系を示す。アリール化合物の例としては、フェニル基、ナフチル基、および下記に記された任意のヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
「ヘテロアリール」との用語は、単独で、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるようにより大きな部分の一部として用いられ、全部で5〜14環員を有する、単環系、二環系、および三環系をいう。ここでこの系において、少なくとも一つの環は、芳香族であり、そしてこの系において、各々の環は、3環員〜7環員を含む。「ヘテロアリール」との用語は、「ヘテロアリール環」との用語または「ヘテロ芳香族」との用語と互いに交換可能に用いられ得る。ヘテロアリール基の例としては、2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、プリニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、イソキノリニル、または4−イソキノリニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルおよび同様のものを、含む)基または、ヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシならびに同様のものを、含む)基は、一つまたはそれより多くの置換基を含み得る。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子における適切な置換基は、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−ジメチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで必要に応じて置換されたフェニル(Ph);Rで必要に応じて置換された−O(Ph);Rで必要に応じて置換された−(CH1−2(Ph);Rで必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;または−(CH0−2NHC(O)Rからなる群より選択される。ここで、独立した存在である各々のRは、水素、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリール環もしくは複素環、フェニル基、−O(Ph)またはCH(Ph)からなる群より選択される。あるいは、上記の定義にもかかわらず、各R基の結合した原子と共に占められた、同一の置換基または異なる置換基において、独立した存在である二つのRは、窒素、酸素または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環または3〜8員のシクロアルキル環を形成する。Rの脂肪族基に結合した任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH,O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族からなる群より選択され、ここでRのC1−4脂肪族基の各々は、置換されていない。
【0055】
脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環は、一つまたはそれより多くの置換基を含み得る。脂肪族基もしくはヘテロ脂肪族基の飽和炭素、または非芳香族複素環の飽和炭素における適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙されたものからなる群より選択され、そしてさらに、これらの置換基は、以下を含む:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、または=NR、そして各Rが、水素、もしくは必要に応じて置換されたC1−6脂肪族からなる群より独立して選択される。Rの脂肪族基に結合した任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH,O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロ(C1−4脂肪族)からなる群より選択され、ここで、前述のRのC1−4脂肪族基の各々は、置換されていない。
【0056】
非芳香族複素環の窒素における任意の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRSOからなる群より選択され;ここでRは、水素、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換された−CH(Ph)、必要に応じて置換された−(CH1−2(Ph);必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);または、酸素、窒素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される1から4個のヘテロ原子を有する、置換されていない5〜6員のヘテロアリール環もしくは複素環である。あるいは、上記の定義にかかわらず、各々のR基が結合した原子と共に占められた、同一の置換基または異なる置換基上で、独立した存在である二つのRは、窒素、酸素または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環または3〜8員のシクロアルキル環を形成する。脂肪族基もしくはRのフェニル環における任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH,O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロ(C1−4脂肪族)からなる群より選択され、ここで、RのC1−4脂肪族基の各々は、置換されていない。
【0057】
「アルキリデン鎖」との用語は、完全に飽和であり得るまたは一つもしくはそれより多くの不飽和の単位を有し、そして二つの結合点をその分子の残りに対して有する、直鎖または分枝の炭素鎖をいう。従って、アルキリデンは、その分子の残りに対して二つの結合点を有する、脂肪族基(アルキル、アルケニル、またはアルキニル)を含む。
【0058】
上記で詳しく述べられたように、いくつかの実施形態において、独立した存在である二つのR(またはR、もしくは本明細書において同様に定義された任意の他の可変部分)は、窒素、酸素または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、5〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環または3〜8員のシクロアルキル環を形成するために、各可変部分が結合した原子と共に占められる。独立した存在である二つのR(またはR、もしくは本明細書において同様に定義された任意の他の可変部分)は、各可変部分が結合した原子と共に占められた場合、形成される例示的な環は、限定するためでなく、以下を含み:a)同一の原子に結合し、そして、環を形成するためにその原子と共に占められる、独立した存在である二つのR(またはR、もしくは本明細書において同様に定義された任意の他の可変部分)、例えば、両R存在が、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、またはモルホリン−4−イル基を形成するために窒素原子と共に占められる、N(R;およびb)異種原子に結合し、そして環を形成するためにそれらの両原子と共に占められる、独立した存在である二つのR(またはR、もしくは本明細書において同様に定義された任意の他の可変部分)、例えば、フェニル基は、二つのOR
【0059】
【化013】

の存在で置換され、これらの二つのRの存在は、酸素含有の縮合6員環:
【0060】
【化014】

を形成するために結合した酸素原子で共に占められる。当然のことながら、独立した存在である二つのR(またはR、もしくは本明細書において同様に定義された任意の他の可変部分)は、各可変部分が結合する原子と共に結合する場合、種々の他の環が、形成され得る。そして当然のことながら、上記で詳細に記載された例は、限定することを意図していない。
【0061】
そうでないと言明されない限り、本明細書において示された、構造もまた、全ての構造異性体(例えば、この構造の鏡像形、この構造のジアステレオマー形、およびこの構造の幾何学的形(または配座形));例えば、各不斉中心に対するR配置またはS配置、(Z)および(E)の二重結合の異性体、ならびに(Z)および(E)の配座異性体を意味する。従って、単一の立体化学的異性体と同様に、本発明の化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー異性体、および幾何(または配座)異性体の混合物も、本発明の範囲内である。そうでないと言明されない限り、全ての本発明の化合物の互変異性体は、本発明の範囲内である。さらに、そうでないと言明されない限り、本明細書において示された構造もまた、一つまたはそれより多くの添加された同位体原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13C−もしくは14C−の添加された炭素による炭素の置換を除いた、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。例えば、そのような化合物は、生物学的アッセイにおいて、分析手段または分析プローブとして有用である。
【0062】
(3.例示的な化合物の説明)
一つの実施形態によると、本発明は、Qが、C1−6アルキリデン鎖であり、Qのうちの一つのメチレン単位が、−C(O)−または−C(O)N(R)−によって置換される、式Iの化合物に関する。
【0063】
別の実施形態によると、Qは、イミダゾールのコアに結合したメチレン単位が、−C(O)−または−C(O)N(R)−によって置換される、C1−6アルキリデン鎖である。
【0064】
別の実施形態によると、Qは、メチレン単位が、−C(O)、(すなわち、Qが、C(O))によって置換される、Cアルキリデン鎖である。
【0065】
別の実施形態によると、Qは、メチレン単位が、−C(O)N(R)−(すなわち、Qが、−C(O)N(R)−)で置換される、Cアルキリデン鎖である。
【0066】
本発明の別の局面は、Rが、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和または部分的に不飽和の3〜7員環、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される、0〜4個のヘテロ原子を有する、5〜6員のアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される、0〜4個のヘテロ原子を有する、部分的に不飽和のもしくはアリールの、8〜10員の二環からなる群より選択される、必要に応じて置換された環である、式Iの化合物に関する。
【0067】
別の実施形態によると、Rは、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有する、不飽和の4〜6員環である。そのような環としては、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0068】
別の実施形態によると、Rは、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される、0〜3個のヘテロ原子を有する、飽和の4〜6員環である。そのような環としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル、ピロリジン−1−イル、モルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イルおよびアゼチジン−1−イルが挙げられる。
【0069】
別の実施形態によると、Rは、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される、0〜4個のヘテロ原子を有する、5〜6員アリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される、0〜4個のヘテロ原子を有する、部分的に不飽和のもしくはアリールの、8〜10員の二環である。
【0070】
さらに本発明の別の実施形態の局面は、Rが、0〜3個の窒素を有する、必要に応じて置換された6員アリール環である、式Iの化合物に関する。
【0071】
別の実施形態によると、Rは、必要に応じて置換されたフェニル環である。Rのフェニル環における置換基の例としては、存在する場合、クロロおよびフルオロが挙げられる。
【0072】
別の実施形態によると、Rは、必要に応じて置換されたヘテロアリール環である。そのような環として、ピリジル環およびピリミジニル環が挙げられる。
【0073】
本発明の別の実施形態は、環Aが、イソオキサゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、またはテトラアゾリルからなる群より選択される、必要に応じて置換された環である、式Iの化合物に関する。
【0074】
さらに別の実施形態は、式Iの化合物に関し、ここで環Aは、以下の環からなる群より選択される:
【0075】
【化015】


【0076】
他の実施形態によると、環Aは、イソオキサゾリルである。
【0077】
さらに他の実施形態によると、環Aは、以下からなる群より選択される:
【0078】
【化016】


【0079】
一つの実施形態によると、本発明は、環Aが、置換されていない、式Iの化合物に関する。
【0080】
別の実施形態によると、本発明は、環Aが、オキソ、−OH、−NH、または−CHで必要に応じて置換された、式Iの化合物に関する。
【0081】
本発明における任意の実施形態は、任意の他の実施形態と結び付けられ得る、と理解されるべきである。ある実施形態において、R、R、R、QおよびAは、例I−1からI−40において示されたものと同様である。式Iの例示的な構造は、下記の表1に示されている。
表1.式Iの化合物の例:
【0082】
【化017】

【0083】
【化018】

(4.一般的な合成方法論)
一般的に、本発明の化合物は、下記の一般的な手順、およびそれに続く調製例によって例証されるような、当業者に知られてる類似の化合物に関する方法によって、調製され得る。
【0084】
【化019】

試薬および条件:(i).NaH、BnCl、THF、室温;(ii).a.LiN(TMS)、THF、−78℃〜0℃;b.RCOMe;c.2N HCl;(iii).ClCOCCl、AlCl、DCM;(iv).RNH、CHCN、室温;(v).Pd/C、MeOH、HCOOH;vi:a.Bredreck試薬、THF、60℃;b.HNOH HCl、EtOH、還流。
【0085】
上記の手順Iは、環Aが、イソオキサゾリルである場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。
【0086】
【化020】

試薬および条件:(a).KMnO;(b).MeOH、HCl;(c)i、NaH、BnCl、THF;ii、Fe、HCl;(d).TsOH、ベンゼン、RC(O)H;(e).Tos−MIC、KCO、MeOH、DME;(f).i.Pd/C、HCOOH、MEOH;ii.LiOH、THF、水;(g).RNH、CDI、DMAc。
【0087】
上記の手順IIは、環Aが、gのイミダゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。
【0088】
【化021】

試薬および条件:(a).NHOH、DCM;(b).EtOCOCCH、キシレン、EtN;(c).i、H、Pd/C、MeOH;ii、RNH、CDI、DMAc;iii)DIBAL−H、CHCl、−78℃;(d)TsOH、ベンゼン、RNH;(e).Tos−MIC、KCO、MeOH、DME。
【0089】
上記の手順IIIは、環Aが、aのイミダゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。
【0090】
【化022】

試薬および条件:(a).NHOH、DCM;(b).t−BuOCOCCH、キシレン、EtN;(c).i、TFA、CHCl;ii、RNH、CDI、DMAc;(d)Lawesson試薬、PhMe、還流;(e).NHNH、EtOH/CHCl;f)CH(OEt)、HCOOH。
【0091】
上記の手順IVは、環Aが、bのトリアゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。それから、化合物28は、上記に記載された方法によって、カルボン酸塩に鹸化される。この結果のカルボン酸塩は、この分野における当業者に知られている方法を用いて、種々の基と結合され、本発明の種々の化合物を形成する。
【0092】
【化023】

試薬および条件:(a).RCOCl、CHCl;(b)Lawesson試薬、PhMe、還流;(c).NHNH、EtOH/CHCl;(d)CH(OEt)、HCOOH;(e)i、Pd/C、HCOOH;ii、LiOH、THF、水。
【0093】
上記の手順Vは、環Aが、bのトリアゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための代わりの経路を示す。この34のカルボン酸塩は、この分野における当業者に知られている方法を用いて、種々の基と結合され、本発明の種々の化合物を形成する。
【0094】
【化024】

試薬および条件:a)i.EtOCOCl、EtN、CHCl、室温;ii.MeONa、MeOH、室温;b)6N NaOH。
【0095】
上記の手順VIは、環Aが、オキソで置換された、bのトリアゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。この36のカルボン酸塩は、この分野における当業者に知られている方法を用いて、種々の基と結合され、本発明の種々の化合物を形成する。
【0096】
【化025】

試薬および条件:a)BrCN、MeOH、室温;b)6N NaOH。
【0097】
上記の手順VIIは、環Aが、−NHで置換された、bのトリアゾリル環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。この38のカルボン酸塩は、この分野における当業者に知られている方法を用いて、種々の基と結合され、本発明の種々の化合物を形成する。
【0098】
【化026】

試薬および条件:a)NaNO、HCl、室温;b)6N NaOH。
【0099】
上記の手順VIIIは、環Aが、dのテトラゾール環である場合、本発明の化合物の調製のための一般的な合成経路を示す。この40のカルボン酸塩は、この分野における当業者に知られている方法を用いて、種々の基と結合し、本発明の種々の基を形成する。
【0100】
ある例示的な実施形態は、上記および本明細書において、示されそして記載されているが、当然のことながら、本発明の化合物は、適切な原料を用いる一般的に上記に記載された方法に従い、この分野における当業者に一般的に利用できる方法によって、調製され得る。したがって、本発明の他の実施形態は、実際に上記に記載されたような式の化合物の調製プロセスを提供する。これらのプロセスは、手順Iから手順VIIIにおいて、明確に示されたものと違った、他の方法および他の試薬を、使用され得ると、理解されるべきである。例えば、手順VIII(b)において、このカルボン酸は、この分野における当業者に知られている適切な条件の下で、エステルの加水分解によって得られ得る。手順VIIIは、塩基性条件の下で、加水分解を示しているが、他の条件もまた、本発明と関係付けられ得る。そのような条件としては、この分野における当業者に知られている、酸性条件(HCl、HSO)、塩基性条件(NaOH、KOH)、または他の条件が挙げられる。
【0101】
(5.使用、処方および投与)
本明細書において記載されるように、一般的に、化合物および組成物は、プロテインキナーゼの、一つまたはそれより多くの酵素の活性の阻害に対して有用である。疾患または疾患の症状において、キナーゼの構造、キナーゼの機能およびこれらの役割に関した、さらなる情報は、Protein Kinase Resourceのウェブサイト(http://kinases.sdsc.edu/html/index.shtml)で入手できる。
【0102】
本明細書において記載される、化合物および組成物によって阻害されるキナーゼの例、および本明細書において記載される、有用な方法に対するキナーゼの例としては、c−Met、JAK、およびKDR、ならびにこれら全てのキナーゼのサブタイプが挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明の化合物および組成物もまた、一つまたはそれより多くの前述のキナーゼに関する、疾患の処置および疾患の症状の処置に対して、とりわけ適している。
【0103】
c−Metのインヒビター、JAKのインヒビター、および/またはKDRのインヒビターような、本発明において利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞株中で分析され得る。インビトロのアッセイとしては、活性化された、c−Met、JAK、および/またはKDRの、リン酸化活性またはATPase活性のいずれか一方の阻害を定量するアッセイが挙げられる。代わりのインビトロのアッセイは、c−Met、JAK、およびKDRに結合するインヒビターの活性を定量する。インヒビターの結合は、インヒビター/c−Metの複合体、インヒビター/JAKの複合体、インヒビター/KDRの複合体を結合させ、単離する前に、インヒビターを放射能標識し、そして結合した放射能標識の量を定量することによって測定され得る。その代わりに、インヒビターの結合は、新規のインヒビターが、既知の放射性リガンドに結合した、c−Met、JAK、および/またはKDRでインキュベートされる、競合実験を行うことによって定量され得る。c−Metキナーゼ、JAKキナーゼ、およびKDRキナーゼのインヒビターとして、本発明において利用される、化合物のアッセイに関する詳細な条件は、下記の例において示されている。
【0104】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の化合物を含む組成物またはその薬学的に受容可能な誘導体および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、もしくは賦形剤を含む組成物を提供する。本発明の組成物における化合物の量は、生物学的試料または患者において、プロテインキナーゼ(特に、c−Metキナーゼ、JAKキナーゼ、およびKDRキナーゼ)を検出可能な程度に阻害することに有効であるような量である。好ましくは、本発明の組成物は、そのような組成物を必要とする患者への投与のために処方される。最も好ましくは、本発明の組成物は、患者への経口投与のために処方される。
【0105】
本明細書で用いられるように、「患者」との用語は、動物、好ましくは哺乳類、および最も好ましくはヒトを意味する。
【0106】
「薬学的に受容可能な、キャリア、アジュバント、または賦形剤」との用語は、処方された化合物の薬理学的活性を破壊しない、非中毒性の、キャリア、アジュバント、または賦形剤を示す。本発明の組成物において用いられ得る、薬学的に受容可能な、キャリア、アジュバント、または賦形剤としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムのような)緩衝基質、部分的に飽和の植物脂肪酸のグリセリド混合物、水、(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウムのような)塩または電解質、ポリビニルピロリドン、セルロースを素地とした基質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書で用いられるように、「検出可能な程度に阻害する」との用語は、前記組成物ならびにc−Metキナーゼ、JAKキナーゼ、およびKDRキナーゼを含む試料と、前記組成物を含まず、c−Metキナーゼ、JAKキナーゼ、および/またはKDRキナーゼを含む同等の試料の間で、c−Met活性、JAK活性、および/またはKDR活性における、測定可能な変化を意味する。
【0108】
本明細書で用いられるように、「JAK」との用語は、「JAKキナーゼ」および「JAKファミリーキナーゼ」との用語と交換可能に用いられる。
【0109】
本明細書で用いられるように、「c−Met」との用語は、「cMet」、「MET」、「Met」、またはこの分野における当業者に知られた他の名称をいう。
【0110】
「薬学的に受容可能な誘導体」は、患者へ投与すると、本発明の化合物または阻害的に活性な代謝生成物もしくはその残留物を、直接にまたは間接にのいずれか一方で提供し得る、本発明の化合物の任意の、非中毒性の塩、エステル、エステルの塩、または、他の誘導体を意味する。
【0111】
本明細書で用いられるように、「阻害的に活性な代謝物およびその残留物」との用語は、代謝生成物およびその残留物もまた、c−Metキナーゼのインヒビター、JAKキナーゼのインヒビター、および/またはKDRキナーゼのインヒビターであることを意味する。
【0112】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機および有機の、酸および塩基に由来するものが挙げられる。適切な酸の塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、へキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタン硫酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタン硫酸塩、2−ナフタレン硫酸塩、ニコチン酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸硫酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸のような他の酸でも、それ自体は薬学的に受容可能でないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得る、中間体として有用な塩の調製において利用され得る。
【0113】
適切な塩基から得られる塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN+(Cl−4アルキル)4塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書において開示される、塩基性の窒素を含有する任意の化合物の基の第四級化をも意図する。水または油に、可溶なもしくは分散可能な生成物は、そのような第四級化によって得られ得る。
【0114】
本発明の組成物は、経口投与、吸入スプレーによる非経口投与、局所投与、直腸内投与、鼻腔内投与、頬側投与、膣内投与、またはインプラントの貯蔵所によって投与され得る。本明細書において使用される「非経口」との用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病変内、および頭蓋内の、注射技術または注入技術を包含する。好ましくは、この組成物は、経口投与、腹腔内投与または静脈投与される。本発明の無菌の注射可能な組成物の形態は、水溶性懸濁または油性懸濁であり得る。これらの懸濁は、適切な、分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いる、この分野において知られる技術に従い、処方され得る。この無菌の注射剤の調製もまた、非経口で許容可能な非中毒性の、希釈剤または溶媒中において、無菌で注射可能な、溶液または懸濁であり得る。利用され得る許容可能な、賦形剤および溶液として、水とりわけ、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油は、従来、溶媒または懸濁媒体として利用される。
【0115】
この目的のために、利用され得る任意の無菌の不揮発性油としては、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが挙げられる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような、脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル塩型における、薬学的に受容可能な自然の油(例えば、オリーブ油またはひまし油)のような、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液または懸濁もまた、カルボキシメチルセルロースまたは、薬学的に受容可能な投薬形態(例えば、エマルジョンおよび懸濁)の処方において一般に使用される、類似の分散剤のような、高級アルコールの、希釈剤または分散剤を含み得る。Tween類、Span類および他の乳化剤または、薬学的に受容可能な、固体、液体または他の投薬形態の製造に一般的に用いられる、バイオアベイラビリティーエンハンサーのような、一般に用いられる他の界面活性剤もまた、処方目的のために用いられ得る。
【0116】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、任意の経口可能な投薬形態として、経口投与され得、そしてこの経口の投薬形態としては、カプセル、錠剤、水性懸濁または水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、一般的に添加される。カプセル形態の経口投与に関して、便利な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁が、経口使用のために必要な場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と合わされる。望まれるならば、特定の甘味剤、香味剤、または着色剤もまた、添加され得る。
【0117】
あるいは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、直腸内投与に適した坐剤の投与形態であり得る。これらは、この因子を混合することによって、室温で固体であり、直腸内温度で液体であるが、そしてそれゆえに直腸内において、この薬を放出するために溶解する適切な非刺激性の賦形剤を用いて、調製され得る。そのような材料としては、カカオ脂、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0118】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、処置の標的が、目の疾患、皮膚の疾患、またはより低い腸管の疾患を含む、局所塗布によって容易に利用できる領域または臓器を包含する場合は特に、局所投与され得る。適切な局所処方物は、それらの領域または臓器の各々について、容易に調製される。
【0119】
このより低い腸管に対する局所塗布は、直腸の坐剤処方(上記を参照すること)または適切な浣腸処方において、効果が得られ得る。局所の経皮性のパッチもまた、使用され得る。
【0120】
局所塗布として、薬学的に受容可能なこの組成物もまた、一つまたはそれより多くのキャリア中に、懸濁または溶解されるこの活性な組成物を含有する適切な軟膏として、処方され得る。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール化合物、ポリオキシエチレン化合物、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的に受容可能なこの組成物は、一つまたはそれより多くの薬学的に受容可能なキャリア中に、懸濁または分散されたこの活性な成分を含有する、適切な、ローション剤またはクリームとして、処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、ソルビタンモノステアリン酸塩、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
目への使用のために、薬学的に受容可能なこの組成物は、pHの調整された等張の無菌の食塩水中に微細化された懸濁剤、または、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムのような防腐剤を、伴なうか、もしくは伴なわないかのいずれか一方で、pHの調整された等張の無菌の食塩水中の溶液として、処方され得る。あるいは、目への使用のために、薬学的に受容可能なこの組成物は、ワセリンのような軟膏として、処方され得る。
【0122】
本発明の薬学的に受容可能な組成物もまた、鼻エアロゾルまたは鼻吸入によって、投与され得る。そのような組成物は、薬学的な処方の分野において良く知られる技術に従って調製され、そして、この組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、生物学的利用性を増加させるための吸収促進剤類、フルオロカーボン類、および/または他の従来の、可溶化剤類または分散剤類を利用する、食塩水中の溶液類として、調製され得る。
【0123】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与のために処方される。
【0124】
単一の投薬量形態における組成物を生じるために、キャリア材料と合わされ得る、本発明の化合物の量は、処置される宿主、特定の投与方法に依存し、異なる。好ましくは、これらの組成物は、0.01〜100mg/kg 体重/1日の間のインヒビターの投薬量が、これらの組成物を受ける患者に投与され得るように、処置されるべきである。
【0125】
任意の特定の患者に対する、特別な投薬量レジメンおよび処置レジメンは、利用されるこの特別な化合物の活性、患者の年齢、患者の体重、患者の健康全般、患者の性別、患者の食事、患者への投与時間、患者の排泄の割合、患者への薬の組み合わせ、および医師の処置判断、もしくは処置中の特定疾患の重篤度を包含する、種々の要因に依存するともまた、理解されるべきである。本発明の組成物における化合物の量もまた、この組成物中の特定の化合物に依存する。
【0126】
一つの実施形態によると、本発明は、上記の生物学的試料を、本発明の化合物と上記の生物学的試料とを接触させる工程を包含する、生物学的試料中におけるプロテインキナーゼの活性を阻害する方法、または上記の化合物を含む組成物に関する。
【0127】
別の実施形態によると、本発明は、本発明の化合物と上記の生物学的試料とを接触させる工程を包含する、c−Metキナーゼ活性、JAKキナーゼ活性、および/またはKDRキナーゼ活性を阻害する方法、または、上記の化合物を含む組成物に関する。
【0128】
本明細書において用いられる「生物学的試料」との用語は、細胞株またはその抽出物;哺乳類またはその抽出物から得られる生体組成検査材料;および血液、唾液、尿、便、精液、涙、または身体からの他の流体もしくはその抽出物を包含するが、これらに限定されない。
【0129】
生物学的試料における、プロテインキナーゼ活性の阻害、または、c−Metキナーゼ、JAKキナーゼ、および/またはKDRキナーゼからなる群より選択される、プロテインキナーゼ活性の阻害は、この分野における当業者に知られる種々の目的に有用である。そのような目的の例としては、輸血、臓器移植、生物学的標本貯蔵、および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の別の実施形態は、上記患者に本発明の化合物を投与する工程を包含する、患者におけるプロテインキナーゼ活性を阻害する方法、または上記化合物を含む組成物に関する。
【0131】
別の実施形態によると、本発明は、上記患者に本発明の化合物を投与する工程を包含する、患者における、c−Metキナーゼ活性、JAKキナーゼ活性、および/またはKDRキナーゼ活性を、阻害する方法、または上記の化合物を含む組成物に関する。
【0132】
本明細書において用いられる「c−METによって媒介された疾患」または「c−METによって媒介された状態」との用語は、c−METが役割を果たすと知られている、任意の疾患状態または他の有害な状態を意味する。「c−METによって媒介された疾患」または「c−METによって媒介された状態」との用語もまた、それらの疾患またはc−METインヒビターで処置されることにより緩和する、それらの疾患または状態を意味する。そのような状態としては、腎臓癌、胃癌、結腸癌、脳腫瘍、胸部癌、前立腺癌、および肺癌、アテローム性動脈硬化ならびに肺腺維症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
一つの実施形態によると、本発明は、その必要がある患者において、腎臓癌、結腸癌、胸部癌、前立腺癌、または肺癌、アテローム性動脈硬化ならびに肺腺維症の、重篤度を、処置または軽減する方法に関し、そしてこの方法は、この患者に本発明の組成物またはその化合物を投与する工程を包含する。
【0134】
別の方法において、本発明は、その必要がある患者において、胃癌または脳腫瘍の、重篤度を、処置または軽減する方法に関し、そしてこの方法は、この患者に本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0135】
別の実施形態において、本発明は、その必要がある患者において、腎臓癌の重篤度を、処置または軽減する方法に関し、そしてこの方法は、この患者に、本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0136】
さらに別の実施形態において、本発明は、その必要がある患者において、胃癌の重篤度を、処置または軽減する方法に関し、そしてこの方法は、この患者に、本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0137】
本発明の別の局面は、その必要がある患者において、癌転移を阻害する方法に関し、そしてこの方法は、この患者に、本発明の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する。
【0138】
別の実施形態によると、本発明は、患者における、JAKによって媒介された、疾患または状態の重篤度を、処置または軽減する方法を提供し、そしてこの方法は、この患者に、本発明に従った組成物を投与する工程を包含する。
【0139】
本明細書において用いられるように、「JAKによって媒介された疾患」との用語は、JAKファミリーキナーゼが役割を果たすと知られている、任意の疾患または他の有害な状況を意味する。従って、本発明の別の実施形態は、JAKが役割を果たすと知られている、一つまたはそれより多くの疾患の重篤度を、処置または軽減することに関する。本発明は特に、免疫応答(例えば、アレルギー性反応またはI型の過敏性反応のような)、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶のような)、移植片対宿主病、慢性関節リュウマチ、筋萎縮性側索硬化症、および多発硬化症、神経退行性の疾患(例えば、家族性の筋萎縮性側索硬化症(FALS)のような)、と同様に、固形の悪性疾患および血液学的な悪性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫のような)からなる郡より選択される疾患または状態の、重篤度を、処置または軽減する方法に関する。ここでこの方法は、その必要がある患者において、本発明に従った組成物を投与する工程を包含する。
【0140】
別の実施形態によると、本発明は、患者における、KDRによって媒介された、疾患または状態の、重篤度を、処置または軽減する方法を提供し、そしてこの方法は、本発明に従った組成物を、この患者に投与する工程を包含する。
【0141】
本明細書において用いられるように、「KDRによって媒介された疾患」との用語は、KDRファミリーキナーゼが役割を果たすと知られている、任意の疾患または他の有害な状態を意味する。したがって、本発明の別の実施形態は、KDRが、役割を果たすと知られている、一つまたはそれより多くの疾患の重篤性を、処置または軽減することに関する。本発明は特に、脳腫瘍、尿生殖路の癌、リンパ系の癌、胃癌、咽頭癌、肺癌、膵臓癌、胸部癌、カポジ肉腫、および白血病;子宮内膜症、前立腺癌;良性の前立腺肥大症;血液疾患(例えば、再狭窄およびアテローム硬化症のような);自己免疫疾患(例えば、リウマチ関節症および乾癬のような):眼球状態(例えば、増殖性または脈管形成の、網膜症および黄斑変性のような);および炎症性の疾患(例えば、接触皮膚炎、喘息、および遅延過敏性反応のような)からなる群より選択される、疾患または状態の、重篤度の処置または軽減に関する。
【0142】
処置される、特定の、状態または疾患に依存して、通常その状態を処置するために投与される、さらなる治療因子はまた、本発明の組成物中に存在し得る。本明細書において用いられるように、特定の、疾患または状態を処置するために通常投与される、さらなる治療因子は、「処置される疾患または状態に対して適切である」として知られる。
【0143】
例えば、化学療法因子または他の増殖抑制因子はまた、増殖性の、疾患または癌を処置するために、本発明の化合物と合わされ得る。例えば、既知の化学療法的因子としては、GleevecTM、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソール、インターフェロン類、およびプラチナ誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明のインヒビターがまた、合わされ得る、他の因子の例としては、アルツハイマー病の処置(例えば、Aricept(登録商標)およびExcelon(登録商標)のような);パーキンソン病の処置(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロル、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、およびアマンタジン);βインターフェロンのような多発性硬化症(MS)の処置因子(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロン;喘息の処置(例えば、アルブテロールおよびSingulair(登録商標)のような);精神分裂病の処置因子(例えば、ジプレキサ、リスペルダル、セロクエル、およびハロペリドールのような);抗炎症因子(例えば、コルチコステロイド類、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミドおよびスルファサラジンのような);免疫調節因子および免疫抑制因子(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパミシン、ミコフェノレートモフェチル、インターフェロン類、コルチコステロイド類、シクロフォファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジンのような);神経栄養因子(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAOインヒビター、インターフェロン類、痙攣薬、イオンチャネル遮断薬、リルゾール、および抗パーキンソン病薬);心臓血管疾患の処置因子(例えば、β遮断薬、ACEインヒビター、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、およびスタチン類);肝臓疾患の処置因子(例えば、コルチコステロイド類、コレスチラミン、インターフェロン類、および抗ウイルス剤のような);血液疾患の処置因子(例えば、コルチコステロイド類、抗白血病薬、および増殖抑制因子のような);および免疫欠損疾患の処置剤(例えば、γグロブリンのような)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
さらなるそれらの因子は、多数回投薬量のレジメンの一部として、化合物含有の組成物から別個に投与され得る。あるいは、それらの因子は、単一組成物を使った本発明の化合物と共に混合される、単回の投薬量形態の一部であり得る。多数回投薬量のレジメンの一部として投与される場合、これらの2つの活性因子は、同時に、引き続き、または、通常お互いから離れた5時間以内の、お互いから離れたある時間以内に、投与され得る。
【0146】
キャリア物質と合わせて単回の投薬量形態を生産し得る、(上記で記載されたような、さらなる治療因子を含有する組成物中における)、化合物およびそのさらなる治療因子の両方の量は、処置される宿主および特定の投与様式に、依存して異なる。好ましくは、本発明の組成物は、0.01〜100mg/kg 体重/日の間の投薬量の式Iの化合物が、投与され得るように、処方されるべきである。
【0147】
さらなる治療因子を含有する組成物中において、そのさらなる治療因子および本発明の化合物は、相乗作用的に働き得る。したがって、そのような組成物中における、さらなる治療因子の量は、治療因子のみを利用する、単一の治療因子で必要とされる量より少ない。そのような組成物を用いて、0.01〜100mg/kg 体重/日の間の、さらなる治療因子の投薬量が、投与され得る。
【0148】
本発明の組成物中に存在する、さらなる治療因子の量は、唯一の活性因子として治療因子を含有する組成物を用いて、通常投与される量より少ない。好ましくは、現在開示される組成物における、さらなる治療因子の量は、唯一の治療な活性因子として、その因子を含有する組成物中に存在する通常量の、約50%〜100%の範囲におよぶ。
【0149】
本発明の化合物またはその薬学的な化合物はまた、移植され得る医療装置(例えば、プロテーゼ、人工弁、脈管弁、ステントおよびカテーテルのような)を被覆するための組成物と、併用され得る。例えば、脈管ステントは、再狭窄(損傷後、脈管壁が再び狭くなること)を克服するために用いられている。しかし、ステントまたは他の移植可能な装置を使用している患者は、凝固形成または血小板の活性の危険にさらされる。これらの望ましくない結果は、キナーゼインヒビターを含有する、薬学的に受容可能な組成物を用いて、前もって被覆された装置によって、防止または緩和され得る。適切な被覆および一般的な被覆された移植可能な装置の調製は、米国特許第6,099,562号明細書、米国特許第5,886,026号明細書および米国特許第5,304,121号明細書において記載される。一般的に、この被覆物は、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニル酢酸塩、およびそれらの混合物のような、生体適合性の高分子材料である。この被覆は、この組成物における、制御された放出の特徴を与えるために、フルオロシリコン、ポリサッカライド類、ポリエチレングリコール、リン脂質類またはそれらの組み合わせで作られた適切な最外の表面によって、必要に応じてさらに被覆され得る。本発明の化合物で被覆された、移植可能な装置は、本発明の別の実施形態である。
【0150】
本明細書において記載される発明が、より深く理解され得る目的のために、次に続く実施例が、示されている。これらの実施例は、ただ例示的な目的のためであって、いかなる方法においても、本発明を限定するように、説明されていないと、理解されるべきである。
【実施例】
【0151】
(合成例)
本明細書において用いられるように、「R(分)」との用語は、化合物に関するHPLCの分での保持時間を示す。そうでないと示されない限り、報告される保持時間を得るために利用される、HPLCの方法は、以下のとおりである:
カラム:Zorbax SB C18カラム、3.0×150mm
勾配:10〜90%アセトニトリル+水(0.1%TFA)
流速:1.0mL/分
検出:254nmおよび214nm。
【0152】
(実施例1)
2−(2,5−ジヒドロ−ピロール−1−カルボニル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチルエステル:1H−イミダゾール−2,4−ジカルボン酸2−ベンジルエステル4−エチルエステルを、Branco,P.S.;Prabhakar,S.;Lobo,A.M.;Williams,D.Tetrahedron,1992,48,6335によって記載された類似の方法で、実際に調製した。EtOH(10mL)中の、1H−イミダゾール−2,4−ジカルボン酸2−ベンジルエステル4−エチルエステル(380mg、1.4mmol)に、窒素雰囲気下、Pd/C(10%)(40mg)を加えた。それから、この懸濁液を、50psiの水素で、3時間処理した。この触媒を、Celite(登録商標)を通し、濾過によって取り除き、そしてこの濾過液を、エバポレートさせた。DMA(2mL)中の、未精製の酸の溶液(140mg、0.76mmol)に、CDI(140mg、0.86mmol)を加えた。この混合物を、室温で一時間、攪拌し、それから、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール(110mg、1.59mmol)を加えた。室温で2時間攪拌した後、この反応混合物を、水(5mL)に注ぎ入れた。この水溶液を、EtOAc(2×10mL)で抽出し、そしてこの混合の有機相を、MgSOによって乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートさせた。未精製の反応生成物を、50%EtOHのヘキサン溶液を用いて溶出する、フラッシュカラムによって精製した。そして、白色の固体(110mg、61%)の、標記化合物を得た。MS(ES+):m/e=236.2(M+H);R=2.04分。
【0153】
(実施例2)
2−(2,3−ジフルオロ−フェニル)−1−[2−(2,5−ジヒドロ−ピロール−1−カルボニル)−1H−イミダゾール−4−イル]−エタノン:無水THF(5mL)中の、2−(2,5−ジヒドロ−ピロール−1−カルボニル)−1H−イミダゾール−4−カルボン酸エチルエステル(100mg、0.43mmol)および(2,3−ジフルオロ−フェニル)−酢酸(75mg、0.44mmol)に、−78℃で、LDMS(THF中において1.0M、1.5mL、1.5mmol)を加えた。LDMS添加後、ドライアイス浴を取り除き、そしてこの反応物を、室温で6時間攪拌した。この反応混合物に、1mLの飽和NHCl溶液およびEtOAcを加え、そしてそれからこの有機相を分離し、MgSOによって乾燥した。溶液を除去後、この残留物を、水を用いて洗浄し、そして、黄色の固体として、標記化合物を得た。この未精製の反応生成物を、さらに精製することなしに、直接、次の反応工程に用いた。MS(ES+):m/e=318.2(M+H);R=3.21分。
【0154】
(実施例3)
{4−[4−(2,3−ジフルオロ−フェニル)−イソオキサゾール−5−イル]−1H−イミダゾール−2−イル}−(2,5−ジヒドロピロ−ル−1−イル)−メタノン(I−38):HNMR(500MHz、DMSO−d6)δ13.55(s,1H)、8.86(s,1H)、7.89(s,1H)、7.48(m,2H)、7.30(q,1H)、5.92(d,1H)、5.86(d,1H)、4.37(s,2H)、4.25(s,2H)。M+343.1、M−341.2。R=3.43分。
【0155】
(実施例4)
(c−Metの阻害に関する、Kの測定)
化合物を、標準的な結合酵素系(standard coupled enzyme system)(Fox et al.,Protein Sci.1998、7、2249)を用いて、c−Metキナーゼ活性の阻害能について、スクリーニングした。100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTT、および1.5%DMSOを含有する溶液中において、反応を行った。このアッセイにおける、最終の基質濃度は、200μM ATP(Sigma Chemicals,St Louis,MO)および10μM ポリGluTyr(Sigma Chemical,St Louis)であった。反応を、30℃および80nM c−Metで、行った。結合酵素系の構成成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルベート、300μM NADH、30μg/mlピルベートキナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0156】
アッセイ用のストック緩衝溶液を、ATPおよび本発明の試験化合物を除いて上記の全ての試薬を含有させて、調製した。このアッセイ用のストック緩衝溶液(175μl)を、96ウェルプレートにおいて、0.006μM〜12.5μMの最終濃度の範囲の、5μlの本発明の試験化合物を用いて、30℃で、10分間インキュベートした。一般的に、12点滴定(12−point titration)を、娘プレートにおいて、本発明の試験化合物のDMSO溶液を用いる、系列希釈(10mMの化合物のストック溶液より)の調製によって行った。反応を、20μlのATP(200μMの最終濃度)の添加によって、開始した。反応速度を、30℃で10分間にわたり、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale、CA)を用いることで得た。K値を、この速度データーから、インヒビター濃度の効果として測定した。
【0157】
本発明の化合物は、c−Metのインヒビターであることが見出された。化合物I−38は、K値<1μMで、c−Metを阻害すると見出された。
【0158】
(実施例5)
(JAKの阻害に関するアッセイ)
JAK3のアッセイの成分:
キナーゼ緩衝溶液:(100mM HEPES pH7.4;1mM DTT;10mM MgCl;25mM NaCl;および0.01%BSA)
1nM JAK3(酵素)
1μM ポリ(Glu)Tyr(基質)
5μM ATP(基質、200μCi/μmole ATP)
(手順)
各々の96ウェルポリカーボネートプレートのウェルに、1.5μlのJAK3インヒビターである可能性の化合物と共に、2μM ポリ(Glu)Tyrおよび10μM ATPを含有する、50μlのキナーゼ緩衝溶液を加える。それから、これを、混合し、そして、2nM JAK3酵素を含有する、50μlのキナーゼ緩衝溶液を加えることで、反応を開始した。室温(25℃)で20分の反応後に、この反応を、0.4mM ATPをまた含有する、50μlの20%トリクロロ酢酸(TCA)を用いて、停止する。洗浄後、60μlのシンチレーション溶液を加え、そして、Perkin Elmer TopCountによって、33Pの取り込みを検出した。
【0159】
本発明の化合物が、JAK3のインヒビターであることが見出された。化合物I−38が、K値<1μMで、JAK3を阻害すると見出された。
【0160】
(JAK2のアッセイ)
ポリ(Glu)Tyrの最終濃度が15μMであること、およびATPの最終濃度が12μMであることを、除き、上記と同様。
【0161】
(実施例6)
(KDR酵素に関するアッセイ)
化合物を、標準的な結合酵素アッセイ(Fox et al.,Protein Sci.,(1998)7,2249)を用いて、KDRに関する阻害能についてスクリーニングした。このアッセイを、200mM HEPES 7.5、10mM MgCl、25mM NaCl,1mM DTT、および1.5%DMSOの混合物中で行った。このアッセイにおける最終濃度は、300μM ATP(Sigma Chemicals)および10μM ポリE4Y(Sigma)であった。アッセイを、37℃および30nM KDRで、行った。結合酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMホスホエノールピルベート、200μM NADH、30μg/MLピルベートキナーゼおよび10μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0162】
アッセイのストック緩衝溶液を、ATPおよび重要な試験化合物を除いた状態で、上記に列挙された全ての試薬を含有するように調製した。177μlのストック溶液を、96ウェルプレートに置き、そして引き続き、試験化合物(30μMの化合物の最終濃度)を含有する、3μlの2mM DMSOのストック溶液を添加した。このプレートを、37℃で約10分間、プレインキュベートし、そして20μlのATP(300μMの最終濃度)を加えることにより、反応を開始した。反応速度を、Molecular Devices プレートリーダー(Sunnyvale、CA)を用いて、37℃で5分間の読取り時間によって得た。試験化合物を含有しない、DMSOおよびアッセイの混合物を含有する標準ウェルと比べて、50%より多い阻害を示す化合物を、IC50の測定値を決定するために滴定した。
【0163】
本発明の化合物は、KDRのインヒビターであることが見出された。化合物I−38は、K値<5μMで、KDRを阻害すると見出された。
【0164】
本明細書中に引用される、全ての刊行物は、参考として、援用される。多くの本発明の実施形態を記載しているが、発明者らの基礎の実施例を変更して、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供し得ることは明白である。従って、本発明の範囲は、例示として代表される、特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化001】

またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Qは、C1−6アルキリデン鎖であり、該Qのうちの一つのメチレン単位が、−C(O)N(R)−、−C(O)−、−C(O)O−、−N(R)−、−O−、−S−、−SO−、または−SON(R)−によって置換され;
該Rの各々は、独立して、水素、または、必要に応じて置換されたC1−6脂肪族基であり、ここで:
同一の窒素原子上の2つのR基は、必要に応じて該窒素原子といっしょになって、必要に応じて置換された、飽和したか、部分的に不飽和の、または完全に不飽和の、3〜7員環を形成し、該環は窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択された1〜3個のへテロ原子を有し;
は、H、−N(R)、または、必要に応じて置換された環であり、該環は、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、飽和したか、または部分的に不飽和の、3〜7員環;窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、5〜6員アリール環;あるいは、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、部分的に不飽和のまたはアリールの、8〜10員の二環;
からなる群より選択され;
は、必要に応じて置換された0〜3個の窒素を有する6員アリール環であり;
は、R、CN、NO、ハロゲン、N(R)、OR、またはSRであり;そして、該環Aは、必要に応じて置換された環であり、該環は、以下からなる群より選択される:
【化002】

【化003】

、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、前記Qは、C1−6アルキリデン鎖であり、該Qのうち一つのメチレン単位が、−C(O)−、または−C(O)N(R)−によって置換される、化合物。
【請求項3】
請求項1〜2のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Qは、Cアルキリデン鎖であり、前記メチレン単位が、−C(O)−によって置換される、化合物。
【請求項4】
請求項1〜2のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Qは、Cアルキリデン鎖であり、前記メチレン単位が、−C(O)N(R)−によって置換される、化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rは、必要に応じて置換された環であり、該環は、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、飽和したか、もしくは部分的に不飽和の、3〜7員環;窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、5〜6員アリール環;あるいは、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、部分的に不飽和のまたはアリールの、8〜10員の二環、からなる群より選択される、化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、飽和の4〜6員環である、化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル、ピロリジン−1−イル、モルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、またはアゼチジン−1−イルである、化合物。
【請求項8】
請求項1〜5のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、窒素、酸素、または硫黄からなる群より独立して選択される0〜3個のへテロ原子を有する、不飽和の4〜6員環である、化合物。
【請求項9】
請求項1〜5および8のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、シクロペンテニルである、化合物。
【請求項10】
請求項1〜5のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rは、窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、5〜6員アリール環であるか、または窒素、酸素、もしくは硫黄からなる群より独立して選択される0〜4個のへテロ原子を有する、部分的に不飽和のまたはアリールの、8〜10員の二環である、化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、必要に応じて置換されたフェニル環である、化合物。
【請求項12】
請求項1〜10のうちいずれかに記載の化合物であって、前記Rが、必要に応じて置換されたピリジル環またはピリミジニル環である、化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれかに記載の化合物であって、前記環Aは、必要に応じて置換された環であり、該環が、イソオキサゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、またはテトラゾリルからなる群より選択される、化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のうちいずれかに記載の化合物であって、前記環Aが、以下の環からなる群より選択される:
【化004】

、化合物。
【請求項15】
請求項1〜14のうちいずれかに記載の化合物であって、前記環Aが、以下より選択される:
【化005】

、化合物。
【請求項16】
以下の基からなる群より選択される化合物:
【化006】

【化007】

【化008】


【請求項17】
有効量の、請求項1に記載の化合物、および薬学的に受容可能な、キャリア、アジュバント、または賦形剤を含む、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物であって、前記化合物が、c−Metプロテインキナーゼ活性、JAKプロテインキナーゼ活性、またはKDRプロテインキナーゼ活性を検出可能な程度に阻害するのに十分な量で存在する、組成物。
【請求項19】
請求項17〜18のうちいずれかに記載の組成物であって、さらに治療因子を含み、該治療因子が、化学療法因子、増殖抑制因子、抗炎症因子、免疫調節因子、免疫抑制因子、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための因子、骨破壊性疾患を処置するための因子、肝疾患を処置するための因子、抗ウイルス因子、血液障害を処置するための因子、糖尿病を処置するための因子、または免疫不全障害を処置するための因子、からなる群より選択される、組成物。
【請求項20】
患者または生物学的試料において、c−Metプロテインキナーゼ活性、JAKプロテインキナーゼ活性、またはKDRプロテインキナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法は、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を、該患者に投与する工程、または該生物学的試料と接触させる工程を、包含する、方法。
【請求項21】
その必要性がある患者において、癌の重篤度または増殖性の障害の重篤度を治療または軽減する方法であって、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項20〜21のうちいずれかに記載の方法であって、化学療法因子または増殖抑制因子からなる群より選択されるさらなる治療因子を前記患者に投与するさらなる工程を包含し、該さらなる治療因子が、前記組成物と共に単回の投薬量形態として投与されるか、または多数回投薬量形態の一部分として前記組成物とは別個に投与される、方法。
【請求項23】
その必要性がある患者において、腎臓癌の重篤度を治療または軽減する方法であって、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を、該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
その必要がある患者において疾患の重篤性または状態の重篤性を治療または軽減する方法であって、該疾患または該状態が、神経膠芽種、胃癌または癌からなる群より選択され、該癌は、結腸癌、胸部癌、前立腺癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、または肺癌からなる群より選択され、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項25】
請求項20〜21のうちいずれかに記載の方法であって、前記疾患または状態が胃癌である、方法。
【請求項26】
請求項20〜21のうちいずれかに記載の方法であって、前記疾患または状態が、神経膠芽種、または胸部癌、結腸癌、もしくは肝臓癌からなる群より選択される癌である、方法。
【請求項27】
患者における癌転移を阻害する方法であって、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
その必要性がある患者において喘息を処置する方法であって、請求項17〜19のうちいずれかに記載の組成物または請求項1〜16のうちいずれかに記載の化合物を該患者に投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−506763(P2007−506763A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528223(P2006−528223)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031401
【国際公開番号】WO2005/040345
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】