説明

プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な組成物

本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターとして有用な式(I)


の化合物に関する。本発明はまた、上記化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物および種々の疾患、状態、または障害、特に癌の処置においてこの組成物を使用する方法を提供する。本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70プロテインキナーゼの阻害剤として有効であることが現在見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法第35条のもとで、2003年4月3日に出願された米国仮出願第60/460,042号、発明の名称:「プロテインキナーゼの阻害剤として有用な組成物」(その全内容は、参考として本明細書中に援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的に受容可能な組成物、およびこの組成物を種々の障害の処置において使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
最近の数年間では、新規の治療用薬剤の探索は、疾患に関連する、酵素および他の生体分子の構造をよりよく理解することにより、非常に促進されている。拡張的研究の主題である酵素の一つの重要な部類は、プロテインキナーゼである。
【0004】
プロテインキナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御の原因である、構造的に類似した酵素の大きなファミリーを構成している(Hardie,G.およびHanks,S.、The Protein Kinase Facts Book、I and II、Academic Press、San Diego、CA:1995を参照のこと)。プロテインキナーゼは、その構造および触媒機能の保存のために、共通の祖先遺伝子から進化したと考えられている。ほとんど全てのキナーゼは、類似の250〜300アミノ酸触媒ドメインを保持する。キナーゼは、これらがリン酸化する基質により、ファミリーに分類され得る(例えば、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質など)。一般的にこれらのキナーゼファミリーの各々に対応する配列モチーフが、同定されている(例えば、Hanks,S.K.、Hunter,T、FASEB J.1995、9、576〜596;Knightonら、Science 1991、253、407〜414;Hilesら、Cell 1992、70、419〜429;Kunzら、Cell 1993、73、585〜596;Garcia−Bustosら、EMBO J.1994、13、2352〜2361を参照のこと)。
【0005】
一般に、プロテインキナーゼは、ホスホリルを、ヌクレオシド三リン酸からシグナル伝達経路に関与するタンパク質受容体への転移を達成することにより、細胞内シグナル伝達を媒介する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調節または調整し得る分子オン/オフスイッチとして作用する。これらのリン酸化事象は、最終的には、種々の細胞外刺激および他の刺激に反応して誘発される。このような刺激の例としては、環境ストレスシグナルおよび化学ストレスシグナル(例えば、浸透圧性ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌のエンドトキシン、およびH)、サイトカイン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子α(TNF−α)、ならびに増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および線維芽細胞増殖因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞増殖、細胞移動、細胞分化、ホルモンの分泌、転写因子の活性化、筋肉の収縮、グルコース代謝、タンパク質合成の制御、および細胞周期の制御に関連する一つ以上の細胞応答に影響し得る。
【0006】
多くの疾患は、上記のようなプロテインキナーゼ媒介性の事象を誘発する異常な細胞応答に関連する。これらの疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経学的疾患および神経変性疾患、癌、心臓血管の疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、ならびにホルモン関連の疾患が挙げられる。従って、薬化学において、治療薬剤として有効なプロテインキナーゼ阻害剤を発見するという実質的な努力が存在する。
【0007】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、βシートに富むアミノ末端葉および主としてαヘリカルであるより大きなカルボキシ末端葉からなるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。このCDKは、全てのタンパク質キナーゼにより共有される11個のサブドメインを示し、そして33kD〜44kDの分子量の範囲である。キナーゼのこのファミリー(CDK1、CKD2、CDK4、およびCDK6が挙げられる)は、完全に活性にするためには、CDK2のThr160に対応する残基でのリン酸化を必要とする(Meijer,L.、Drug Resistance Updates 2000、3、83〜88)。
【0008】
各々のCDK複合体は、調節サイクリンサブユニット(例えば、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンB2、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、およびサイクリンE)ならびに触媒キナーゼサブユニット(例えば、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、およびCDK6)から形成される。異なるキナーゼ/サイクリンの各々のペアは、細胞周期の別個でかつ特定の段階(G期、S期、G2期およびM期として知られている)の細胞周期を調節するために機能する(Nigg,E.、Nature Reviews 2001、2、21〜32;Flatt,P.、Pietenpol,J.Drug Metabolism Reviews 2000、32、283〜305)。
【0009】
このCDKは、細胞増殖障害、特に癌に関与している。細胞の増殖は、細胞分裂周期の直接的または間接的な調節解除の結果であり、そしてこのCDKは、この周期の種々の段階の調節に重要な役割を果たしている。例えば、サイクリンD1の過剰発現は、一般に、多くのヒトの癌(乳癌、結腸癌、幹細胞癌、および神経膠腫に関連している(Flatt,P.、Pietenpol,J.、Drug Metabolism Reviews 2000、32、283〜305)。このCDK2/サイクリンE複合体は、細胞周期のG初期からS期への進行において主要な役割を果たし、そしてサイクリンEの過剰発現は、種々の固形腫瘍と関連付けられている。従って、サイクリンD1、サイクリンE、またはこれらに結合したCDKの阻害剤は、癌の治療法の有用な標的である[Kaubisch,A.、Schwartz,G.、The Cancer Journal 2000、6、192〜212]。
【0010】
CDK、特にCDK2はまた、アポトーシスおよびT細胞の成長に役割を果たす。CDK2は、胸腺細胞のアポトーシスの主要なレギュレーターとして同定されている[Williams,O.ら、European Journal of Immunology 2000、709〜713]。CDK2キナーゼ活性の刺激は、特定の刺激に応答する胸腺細胞におけるアポトーシスの進行と関連付けられている。CDK2キナーゼ活性の阻害は、胸腺細胞の保護を生じるこのアポトーシスを妨害する。
【0011】
細胞周期およびアポトーシスを調節することに加え、CDKは、直接的に転写のプロセスに関与する。多くのウイルスは、自らの複製プロセスのためにCDKを必要とする。CDK阻害剤がウイルス複製を制限する例としては、ヒトサイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、および水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられる[Meijer,L.Drug Resistance Updates 2000、3、83〜88]。
【0012】
CDKの阻害はまた、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)の処置に対しても有用である。アルツハイマー病に関連する、捻れをもった線維(PHF)の出現は、CDK5/p25によるTauタンパク質の超リン酸化により引き起こされる[Meijer,L.、Drug Resistance Updates 2000、3、83〜88)。
【0013】
リボソームのプロテインキナーゼp70S6K−1およびp70S6K−2は、とりわけ、PKBおよびMSKからなるプロテインキナーゼのAGCサブファミリーの要素である。このp70S6キナーゼは、リン酸化およびそれに続くリボソームタンパク質S6の活性化を触媒し、このリボソームタンパク質S6の活性化は、タンパク質合成装置の構成要素をコードするmRNAの転写上方制御に関与している。
【0014】
これらのmRNAは、5’転写開始部位(5’TOPと呼ばれる)にて、オリゴピリミジン区域を含み、これは、転写レベルでの調節に必要不可欠であることが示されている(Volarevic,S.ら、Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.2001、65、101〜186)。S6リン酸化に依存的なp70S6Kは、主としてPI3K経路を介して、種々のホルモンおよび増殖因子に応答して刺激される(Coffer,P.J.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.1994、198、780〜786)。これは、mTORの調節下であり得る。なぜなら、ラパマイシンは、p70S6K活性を阻害し、そして特にこれらのmRNAのコードするリボソームタンパク質の転写の下方制御の結果として、タンパク質合成を阻害するために作用するからである(Kuo,C.J.ら、Nature 1992、358、70〜73)。
【0015】
インビトロのPDK1は、p70触媒ドメインのループの活性化において、Thr252のリン酸化を触媒し、そしてこのThr252のリン酸化は、p70の活性にとって不可欠である(Alessi,D.R.、Curr.Biol.、1998、8、69〜81)。ラパマイシンの使用ならびにDrosophilaからのdp70S6Kの遺伝子欠失研究およびマウスからのp70S6K1遺伝子欠失研究は、p70が、細胞増殖および増殖シグナル伝達の両方において中心的な役割を果たすことを証明した。
【0016】
III型レセプターチロシンキナーゼ(Flt3、c−Kit、PDGFレセプター、およびc−Fmsが挙げられる)のファミリーは、造血細胞および非造血細胞の、維持、増殖および成長において重要な役割を果たす[Scheijen,B.、Griffin J.D.、Oncogene、2002、21、3314〜3333およびReilly,J.T.、British Journal of Haematology、2002、116、744〜757]。FLT−3およびc−Kitは、幹細胞/初期前駆細胞のプールの維持、ならびに成熟リンパ球細胞および骨髄細胞の成長を調節する[Lyman,S.、Jacobsen,S.、Blood、1998、91、1101〜1134]。両レセプターは、レセプターのリガンド媒介性の二量体化の際に活性化される固有のキナーゼドメインを保有する。活性化の際に、このキナーゼドメインは、レセプターの自己リン酸化、ならびに、増殖、分化および生存につながる活性化シグナルを伝播させるのを助ける種々の細胞質タンパク質のリン酸化を誘導する。FLT−3およびc−Kitレセプターのシグナル伝達のいくつかの下流レギュレーターとしては、PLCγ、PI3キナーゼ、Grb−2、SHIP、およびSrc関連キナーゼが挙げられる[Scheijen,B.、Griffin J.D.、Oncogene、2002、21、3314〜3333]。両レセプターチロシンキナーゼは、種々の造血細胞および非造血細胞の悪性腫瘍において役割を果たすことが示されている。FLT−3およびc−Kitのリガンド非依存的活性化を誘導する変異は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、肥満細胞症および消化管間質腫瘍(GIST)に関与している。これらの変異としては、キナーゼドメインにおける単一アミノ酸の変更もしくはタンデムな重複、このレセプターの膜近傍領域の点変異またはインフレームの欠失が挙げられる。変異を活性化することに加え、過剰発現させた野生型のFLT−3またはc−Kitのリガンド依存性(オートクリンもしくはパラクリン)刺激は、悪性の表現系に寄与し得る[Scheijen,B.、Griffin J.D.、Oncogene、2002、21、3314〜3333]。
【0017】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)は、別個の遺伝子により各々コードされるαおよびβのイソ型からなるセリン/スレオニンプロテインキナーゼである[Coghlanら、Chemistry&Biology、2000 7、793〜803;KimおよびKimmel、Curr.Opinion Genetics Dev.、2000、10、508〜514]。GSK−3は、種々の疾患(糖尿病、アルツハイマー病、CNS障害(例えば、双極性障害および神経変性疾患、ならびに心筋細胞肥大が挙げられる)に関与している[例えば、WO 99/65897;WO 00/38675;KaytorおよびOrr、Curr.Opin.Neurobiol.、2000、12.275〜8;Haqら、J.Cell Biol.、2000、151、117〜30;Eldar−Finkelman、Trends Mol.Med.、2000、8、126〜32を参照のこと]。これらの疾患は、GSK−3が役割を果たす特定の細胞シグナル伝達経路の異常な作用に関連する。
【0018】
GSK−3は、多くの調節タンパク質をリン酸化し、そしてその活性を調節することが見出されている。これらとしては、グリコーゲンの合成のために必要とされる、律速の酵素であるグリコーゲン合成酵素、微小管結合タンパク質Tau、遺伝子転写因子βカテニン、翻訳開始因子e1F−2B、ならびにATPクエン酸リアーゼ、アクシン、熱ショック因子−1、c−Jun、c−myc、c−myb、CREB、およびCEPBαが挙げられる。これらの多様な標的は、細胞の代謝、増殖、分化、および発生の多くの局面において、GSK−3と関係している。
【0019】
II型糖尿病の処置に関連するGSK−3媒介性経路では、インスリン誘導シグナル伝達は、細胞のグルコース取り込みおよびグリコーゲン合成につながる。GSK−3は、この経路におけるインスリン誘導性シグナルのネガティブレギュレーターである。通常、インスリンの存在は、GSK−3媒介性のリン酸化の阻害およびグリコーゲン合成酵素の失活を引き起こす。GSK−3の阻害は、グリコーゲン合成およびグルコースの取り込みを増加させる[Kleinら、PNAS、1996、93、8455〜9;Crossら、Biochem.J.、1994、303、21〜26;Cohen、Biochem.Soc.Trans.、1993、21、555〜567;およびMassillonら、Biochem.J.1994、299、123〜128;CohenおよびFrame、Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.、2001、2、769〜76]。しかし、インスリンの応答が糖尿病患者において弱められると、グリコーゲンの合成およびグルコースの取り込みは、インスリンの比較的高い血液レベルの存在にも関わらず、増加しなくなる。これは、グルコースの異常に高い血液レベルにつながり、究極的には心臓血管の疾患、腎不全、および失明をもたらし得る急性および慢性の効果につながる。このような患者においては、正常なインスリン誘導型のGSK−3の阻害は生じない。GSK−3は、II型糖尿病を有する患者において、過剰発現されていることもまた報告されている(WO 00/38675)。GSK−3の治療上のインヒビターは、従って、インスリンに対する障害性の応答に苦しむ糖尿病患者を処置するために有用である。
【0020】
アポトーシスは、虚血性脳損傷の病態生理学に関係している(Liら、1997;Choiら、1996;Charriaut−Marlangueら、1998;GrahmおよびChen、2001;Murphyら、1999;Nicoteraら、1999)。最近の刊行物は、GSK−3βの活性化が、アポトーシスの機序に関与し得ることを示している(KaytorおよびOrr、2002;Culbertら、2001)。中大脳動脈閉塞(MCAO)により誘発される虚血発作のラットモデルにおける研究は、GSK−3β発現の増加が、虚血後であることを示した(Wangら、Brain Res.,2000,859,381〜5;Sasakiら、Neurol Res.,2001,23,588〜92)。ラットにおける永続性中大脳動脈閉塞(MCO)の後、線維芽細胞増殖因子(FGF)は、虚血性脳損傷を減少させた(Fisherら、1995;Songら、2002)。実際に、ラットにおける虚血モデルにおいて実証されたFGFの神経保護効果は、PI−3キナーゼ/AKT−依存性のGSK−3βの不活性化により媒介され得る(Hashimotoら、2002)。従って、大脳の虚血事象後のGSK−3βの阻害は、虚血性脳損傷を改善し得る。
【0021】
GSK−3はまた、心筋梗塞にもまた関与している。Jonassenら、Circ.Res.、2001、89、1191(再灌流でのインスリン投与による心筋梗塞における減少は、Akt依存性シグナル伝達経路を介して媒介される);Matsuiら、Circulation、2001,104、330(Aktの活性化は、インビボでの一時的な心臓の虚血の後、心臓の機能を保ち、そして心筋細胞の損傷を予防する);Miaoら、J.Mol.Cell.Cardiol.,2000,32,2397(心臓内における冠状内のアデノウイルス媒介性Akt遺伝子送達は、インビボでの虚血再灌流損傷に続く総梗塞規模を減少させた)およびFujioら、Circulation,2000、101,660(Aktシグナル伝達は、インビトロで心筋細胞のアポトーシスを阻害し、そしてマウスの心臓において虚血再灌流損傷に対して保護する)を参照のこと。
【0022】
GSK−3活性は、頭部外傷において役割を果たす。Noshitaら、Neurobiol.Dis.2002,9,294(Akt/PI3−キナーゼ経路のアップレギュレーションは、外傷性脳損傷後の細胞の生存にとってきわめて重大である)およびDietrichら、J.Neurotrauma,1996,13,309(外傷後のbFGFの投与は、外損性脳損傷のラットモデルにおける皮質ニューロンおよび総挫傷容積を著しく減少させた)を参照のこと。
【0023】
GSK−3はまた、精神医学的障害において役割を果たすことも知られている。Eldar−Finkelman,Trends Mol.Med.,2002,8,126;Liら、Bipolar Disord.,2002,4,137(LiClおよびバルプロ酸、後精神病薬剤、躁うつ病薬は、GSK−3活性を減少させ、そしてβカテニンを増加させる)ならびにLijamら、Cell,1997,90,895(乱雑なKOマウスは、異常な社会的行動および障害のある感覚運動ゲーティングを示した。乱雑な、WNT経路に関与する細胞質タンパク質は、GSK−3β活性を阻害する)を参照のこと。
【0024】
リチウムおよびバルプロ酸によるGSK−3阻害は、軸索のリモデリングおよびシナプス接続の変化を誘導することが示されている。Kaytor & Orr,Curr.Opin.Neurobiol.,2002,12,275(GSK−3のダウンレギュレーションは、微小管結合タンパク質:tau、MAP1&2に変化をもたらす)およびHallら、Mol.Cell.Neurosci.,2002,20,257(リチウムおよびバルプロ酸は、軸索に沿った円錐様構造の増殖の形成を誘導する)を参照のこと。
【0025】
GSK−3活性はまた、アルツハイマー病とも関連している。この疾患は、周知のβ−アミロイドペプチドの存在および細胞内神経細線維もつれの形成により特徴付けられる。神経細線維もつれは、過剰リン酸化されたTauタンパク質を含み、神経細線維もつれの中で、Tauは、異常な部位上でリン酸化される。GSK−3は、細胞内および動物モデル内のこれらの異常な部位をリン酸化することが示されている。さらに、GSK−3の阻害は、細胞内でのTauの過剰リン酸化を抑制することが示されている[Lovestoneら、Curr.Biol.,1994,4,1077〜86;およびBrownleesら、Neuroreport,1997,8,3251〜55;KaytorおよびOrr,Curr.Opin Neurobiol.,2000,12,275〜8]。GSK−3を過剰発現しているトランスジェニックマウスでは、Tau過剰リン酸化、およびニューロンの異常な形態の著しい増加が観察された[Lucasら、EMBO J.,2001,20,27〜39]。活性なGSK−3は、前もってもつれたニューロンの細胞質中に蓄積し、これが、ADを有する患者の脳内の神経細線維もつれをもたらし得る[Peiら、J.Neuropathol.Exp.Neurol.1999,58,1010〜19]。従って、GSK−3のインヒビターは、神経細線維もつれの生成を遅らせるかまたは停止させ、従って、アルツハイマー病を処置し得るか、またはこの重篤度を減少させ得る。
【0026】
GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割についての証拠は、インビトロで示されている。Aplinら、J.Neurochem.1996,67,699;Sunら、Neurosci,Lett.2002,321,61(GSK−3bは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞質ドメインをリン酸化し、そしてGSK−3bの阻害は、APPでトランスフェクションされた細胞におけるAb40およびAb42の分泌を減少させる);Takashimaら、PNAS,1998,95,9637(1998);Kirschenbaumら、J.Biol.Chem.,2001,276,7366(GSK−3bは、プレセニリン−1と複合体を形成し、そしてプレセニリン−1をリン酸化し、これは、APPからのAβの合成におけるγ−セクレターゼ活性に関係している);Takashimaら、Neurosci.Res.1998,31,317(Ab(25〜35)によるGSK−3bの活性化は、海馬のニューロンにおけるtauのリン酸化を高める)を参照のこと。この知見は、Aβと、過剰リン酸化されたtau、ADの別の病理学的特徴を構成する神経細線維もつれとのつながりを提供する;Takashimaら、PNAS,1993,90,7789(GSK−3bの発現または活性の遮断は、皮質および海馬の一次培養物のAb誘導神経変性を予防する);Suharaら、Neurobiol.Aging,2003,24,437(細胞内のAb42は、Akt/GSK−3bシグナル伝達依存性機序の活性化に緩衝することにより、内皮細胞にとって有毒である);De Ferrariら、Mol.Psychiatry,2003,8,195(リチウムは、N2A細胞および原発性海馬ニューロン(primary hippocampal neuron)をAβ原線維誘導型細胞毒性から保護し、そしてb−カテニンの核のトランスロケーション/不安定化を減少させる);およびPiginoら、J.Neurosci,2003,23,4499(アルツハイマーのプレセニリン1の変異は、GSK−3の活性を脱調節および増加させ得、これが今度は、ニューロン中の軸索輸送を弱める。影響を受けたニューロンにおいて、結果として生じる軸索輸送の減少は、最終的に神経変性をもたらし得る)。
【0027】
GSK−3が、アルツハイマー病において果たす役割についての証拠は、インビボで示されている。Yamaguchiら、Acta Neuropathol.,1996,92,232;Peiら、J.Neuropath.Exp.Neurol.,1999,58,1010(GSK−3b免疫反応性は、AD脳の感受性領域において高められる);Hernandezら、J.Neurochem.,2002,83,1529(条件付きのGSK−3bの過剰発現を有するトランスジェニックマウスは、ADのトランスジェニックAPPマウスモデルにおける認識の欠損と類似の認識の欠損を示す);De Ferrariら、Mol.Phychiatry,2003,8,195(長期にわたるリチウム処置が、Aβ原線維の海馬内注入により引き起こされる神経変性および行動障害(Morris水迷路)を救出した);McLaurinら、Nature Med.,2002,8,1263(ADのトランスジェニックモデルおけるAβを用いた免疫処置は、AD様神経病理学と空間記憶障害の両方を低減させる);およびPhielら、Nature,2003,423,435(GSK−3は、AD tgマウスにおいてγセクレターゼの直接的な阻害を介して、アミロイド−βペプチドの産生を調節する)を参照のこと。
【0028】
プレセニリン−1およびキネシン−1はまた、最近、Pigino,G.ら、Journal of Neuroscience,2003,23,4499により記載されたように、GSK−3のための基質であり、そして、GSK−3がアルツハイマー病において果たす役割に関する別の機序に関連する。GSK−3βは、キネシン−I軽鎖をリン酸化し、このリン酸化は、膜結合オルガネラからのキネシン−1の放出を引き起こし、速い前向性軸索輸送の減少をもたらす(Morfiniら、2002)。著者らは、PS1における変異が、GSK−3を脱調節し、そしてGSK−3の活性を増加させること、そして今度は、ニューロンにおける軸索輸送を弱化し得ることを示唆している。影響を受けたニューロンにおける軸索輸送の結果として生じた減少は、最終的に神経変性をもたらす。
【0029】
GSK−3はまた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と関連する。WilliamsonおよびCleveland、1999(mSOD1マウスにおいて、軸索輸送は、ALSの非常に早い段階で抑制される);Morfiniら、2002(GSK3は、キネシン軽鎖をリン酸化し、そして前向性軸索輸送(anterograde axonal transport)を阻害する);Waritaら、Apoptosis,2001,6,345(2001)(ALSのこのSOD1 tg動物モデルでは、脊髄運動ニューロンの大部分は、ニューロンの著しい損失に先行する初期段階および発症前段階において、PI3−KおよびAktの両方について免疫反応性を失った);およびSanchezら、2001(PI−3Kの阻害は、GSK−3の活性化により媒介される軸索退縮を誘導する)を参照のこと。
【0030】
GSK−3活性はまた、脊髄および末梢神経の損傷と関連している。リチウムおよびバルプロ酸によるGSK−3の阻害は、軸索リモデリングを誘導し、そしてシナプスの結合性を変化させ得ることが示されている。KaytorおよびOrr,Curr.Opin.Neurobiol.,2002,12,275(GSK−3のダウンレギュレーションは、微小管結合タンパク質:tau、MAP1およびMAP2に変化をもたらす)ならびにHallら、Mol.Cell.Neurosci.,2002,20,257(リチウムおよびバルプロ酸は、軸索に沿った成長円錐様構造(growth cone−like structure)の形成を誘導する)を参照のこと。また、Grotheら、Brain Res.,2000,885,172(FGF−2は、シュワン細胞の増殖を刺激し、そして軸索成長の間のミエリン化を阻害する);GrotheおよびNikkhah,2001(FGF−2は、神経坐滅(nerve crush)後の5時間以内に近位神経断端および遠位神経断端においてアップレギュレートされる);ならびにSanchezら、2001(PI−3Kの阻害は、GSK−3活性化により媒介される軸索退縮を誘導する)も参照のこと。
【0031】
GSK−3の別の基質は、β−カテニンであり、このβ−カテニンは、GSK−3によるリン酸化の後に分解される。β−カテニンの低下したレベルは、分裂病患者において報告されており、そしてまた、神経細胞死の増加に関係する他の疾患と関連している[Zhongら、Nature,1998,395,698〜702;Takashimaら、PNAS,1993,90,7789〜93;Peiら、J.Neuropathol.Exp.,1997,56,70〜78;およびSmithら、Bioorg.Med.Chem.2001,11,635〜639]。さらに、β−カテニンおよびTcf−4は、血管平滑筋細胞のアポトーシスを阻害することおよび増殖を促進することによって血管のリモデリングに二重の役割を果たす(Wangら、Circ.Res.,2002,90,340)。従って、GSK−3は、脈管形成障害に関連している。また、Liuら、FASEB J.2002,16,950(GSK−3の活性化は、肝細胞増殖因子を減少させ、これは、内皮細胞のバリア機能の変化および血管の完全性の減少をもたらす)、ならびにKimら、J.Biol.Chem.,2002,277,41888(GSK−3βの活性化は、マトリゲルプラグアッセイを用いて、インビボでの新脈管形成を阻害する:GSK−3βのシグナル伝達の阻害は、毛細血管形成を促進する)も参照のこと。
【0032】
GSK−3とハンチントン病との間の関連が示されている。Carmichaelら、J.Bioi.Chem.,2002,277,33791(GSK−3βの阻害は、b−カテニンの増加およびその関連する転写経路を介して、ポリグルタミン誘導性の神経細胞死およびポリグルタミン誘導性の非神経細胞死から細胞を保護する)を参照のこと。GSK−3の過剰発現は、熱ショック転写因子−1および熱ショックタンパク質HSP70((Bijurら、J.Biol.Chem.,2000,275,7583)これらは、インビトロのHDモデルにおいてポリ−(Q)凝集体および細胞死の両方を減少させることが示されている(Wyttenbachら、Hum.Mol.Genet.,2002,11,1137))。
【0033】
GSK−3は、ラット脳を再ミエリン化することにおいて脳凝集培養物の再ミエリン化の間に増加されるFGF−2およびそれらのレセプターのレベルに影響する。Copelmanら、2000,Messersmithら、2000;ならびにHinksおよびFranklin,2000を参照のこと。FGF−2は、稀突起神経膠細胞による突起の過剰増殖(outgrowth)を誘導し、この突起の過剰増殖は、再ミエリン化におけるFGFの関与と関係するすること(OhおよびYong,1996;Gogateら、1994)、ならびにFGF−2遺伝子治療は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)マウスの回復を改善することを示すこと(Ruffiniら、2001)もまた見出された。
【0034】
GSK−3はまた、髪の成長とも関連している。なぜなら、Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、髪小胞の形態発生および分化において主要な役割を果たすことが示されているからである(Kishimototら、Genes Dev.,2000,14,1181;Millar,J.Invest.Dermatol.,2002,118,216)。皮膚におけるWntシグナル伝達の阻害剤が構成的に過剰発現された状態のマウスは、髪の小胞を発生させないことが見出された。Wntシグナルは、髪小胞の最初の発生にとって必要であり、そしてGSK−3は、β−カテニンを阻害することにより、構成的にWnt経路を制御する(Andlら、Dev.Cell,2002,2,643)。一過性のWntシグナルは、上皮の髪小胞前駆体中のβ−カテニンおよびTCF調節遺伝子転写を活性化することにより、新規の髪成長周期の開始のための重大な初期刺激を提供する(Van Materら、Genes Dev.,2003,17,1219)。
【0035】
GSK−3の活性は、精子の運動性と関連するため、GSK−3の阻害は、男性避妊薬として有用である。精子のGSK−3の活性の減少は、ウシおよびサルの精巣における精子の運動性の発達と関連していることが示された(Vijayaraghavanら、Biol.Reprod.,1996,54,709;Smithら、J.Androl.1999,20.47)。さらに、GSK−3のチロシンおよびセリン/スレオニンリン酸化は、牡牛における不動性精子と比較して、運動性が高い(Vijayaraghavanら、Biol.Reprod.,2000,62,1647)。この効果は、ヒトの精子に関してもまた立証された(Luconiら、Human Reprod.2001,16,1931)。
【0036】
インターロイキン−1レセプター関連キナーゼ−4(IRAK−4)は、セリン−スレオニンキナーゼのIRAKファミリーの53kDaのメンバーである。そのファミリーの中では、IRAK−4およびIRAK−1は、機能的キナーゼドメインを有するが、IRAK−2およびIRAK−mは、機能的ドメインを有さないようである(Janssens S,Beyaert R.,Mol.Cell.2003 11,293〜302)。
【0037】
IRAK−4は、先天的免疫応答および適応的免疫応答のために重要である。これは、免疫系モジュレーターに対する、細胞内応答において主要な役割を果たし、インターロイキン−1レセプター/Toll様レセプター(IL−1R/TLR)スーパーファミリーの活性化メンバーからのシグナル伝達に機能する(Li,S.ら、Proc Natl.Acad.Sci.USA.2002 99,5567〜5572;Suzuki,N.ら、J.Immunol.2003 170、4031〜4035)。IRAK−4はまた、免疫系の以外にも効果を有する(例えば、ニューロトロフィンが主導の神経生存に影響を及ぼす)(Mamidipudi,Vら、J.Biol.Chem.2002 277,28010〜28018)。炎症誘発性サイトカインIL−1およびIL−18または病原体関連分子パターン(PAMP)リガンド(例えば、LPS、ウイルスRNA、リポタンパク質/ペプチドグリカンなど)に結合する際に、これらの同族レセプター(それぞれ、IL−1Rレセプターファミリー、IL−18Rレセプターファミリー、およびTLRレセプターファミリー)は、一連のアダプターを誘導する。IRAK−4は、結果として生じる複合体と相互作用し、そして一連のさらなるタンパク質を通して、活性化シグナルを伝え、最終的にIκBキナーゼ(IKK)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、JNK、ならびにp38を刺激する。これらのキナーゼは、NFκB依存性転写、およびAP−1依存性転写を刺激し、これらの産物は、プロセス(例えば、細胞生存および炎症誘導性サイトカインの産生)を制御するために重要である(Yamamoto,Y.およびGaynor,R.B.ら、J.Clin.Invest.2001 107,135〜142;Dunne,A.およびO’Neill,LAJ.,Sci.STKE Feb25;2003(171):re3)。IRAK−4欠失マウスは、種々のTLRを刺激するIL−1およびリガンドに応答せず、そして特定の免疫学的チャレンジに耐性である(Suzuki,Nら、Nature 2002,416,750〜756)。
【0038】
IL−1R/TLRファミリーのアクチベーターは、種々の疾患(炎症および癌が挙げられる)に寄与する(O’Neill LA,Sci STKE.Aug 8;2000(44):RE1;Apte,RN.およびVoronov,E.Semin,Cancer Biol.2002 12,277〜290;Apte,RN.ら、Adv.Exp.Med.Biol.2000 479,277〜88)。IL−1およびIL−18は、炎症性疾患(慢性関節リウマチ(Dayer,JM.Rheumatology(Oxford),2003 42,補遺2:ii3〜10;Dai;SM.ら、Arthritis Rheum.2004 50,432〜443)および炎症性腸疾患(Lochner,M.およびForster,I.Pathobiology,2002〜2003 70,164〜169)を含む)の重要なメディエーターである(Dinarello CA,Clin.Exp.Rheumatol.2002:20(5 補遺27):S1−13)。TLR4リガンド(例えば、LPS(O’Neill,LAJ,Curr.Opin.Pharmacol.2003 3,396〜403)、hsp60(Ohashi,K.ら、J.Immunol.2000 164,558〜561)およびフィブロネクチンフラグメント(Okamura,Y.ら、J.Biol.Chem.2001 276,10229〜10233)は、炎症性応答と関連するプロセスを促進する。TLRファミリーにより影響を受けるその他の疾患としては、自己免疫(Eriksson,U.ら、Nat.Med.2003 9,1484〜1490)、ウイルス感染(Vaidya,S.A.およびCheng,G.,Curr.Opin.Immunol.2003 15,402〜407;Tabeta K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004 101,3516〜3521;Diebold,S.S.ら、Science,2004 303,1529〜1531)ならびに敗血症(Cristofaro,P.およびOpal,S.M.Expert Opin.Ther.Targets,2003 7,603〜612)が挙げられ得る。
【0039】
Janusキナーゼ(JAK)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2からなるチロシンキナーゼのファミリーである。このJAKは、サイトカインのシグナル伝達に重要な役割を果たす。このJAKファミリーのキナーゼの下流の基質としては、転写のシグナルトランスデューサーかつアクチベーター(STAT)のタンパク質が挙げられる。JAK/STATシグナル伝達は、多くの異常な免疫応答(例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症)の媒介ならびに固形腫瘍および血液悪性腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫))に関与している。JAK/STAT経路におけるこの薬学的介入が、概説されている[Frank,Mol.Med.1999,5,432〜456およびSeidelら、Oncogene 2000,19,2645〜2656]。
【0040】
JAK1、JAK2、およびTYK2は、遍在的に発現され、その一方、JAK3は、主に造血細胞において発現される。JAK3は、共通のサイトカインレセプターγ鎖(γ)に排他的に結合し、そしてIL−2、IL−4、IL−7、IL−9およびIL−15により活性化される。IL−4およびIL−9により誘導されるマウス肥満細胞のこの増殖および生存は、実際、JAK3−シグナル伝達およびγシグナル伝達に依存することが示されている[Suzukiら、Blood 2000,96,2172〜2180]。
【0041】
感作マスト細胞の高親和性免疫グロブリン(Ig)Eレセプターの架橋は、炎症誘導性メディエーター(急性アレルギー反応または即時型(I型)過敏症反応をもたらす多くの血管作用性サイトカインが挙げられる)の放出につながる[Gordonら、Nature 1990,346,274〜276およびGalli,N.Engl.J.Med.1993,328,257〜265]。インビトロおよびインビボでの、IgEレセプター媒介性マスト細胞応答におけるJAK3の重大な役割が、確立されている[Malaviyaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.1999,257,807〜813]。さらに、JAK3の阻害を通してのマスト細胞活性化により媒介されるI型過敏症反応の予防(アナフィラキシーを含む)もまた報告されている[Malaviyaら、J.Biol.Chem.1999、274,27028〜27038]。JAK3阻害剤によるマスト細胞の標的化は、in vitroでのマスト細胞脱顆粒化を調節し、そしてインビボでのIgEレセプター/抗原媒介性アナフィラキシー反応を妨害した。
【0042】
最近の研究で、免疫抑制および同種移植片の受容のためのJAK3の標的化の成功が記載された。この研究は、JAK3の阻害剤の投与の際の、Wistar Furthレシピエントにおける水牛の心臓移植片に関する用量依存性の生存を実証し、これは移植片対宿主の疾患における不必要な免疫応答を調節する可能性を示唆する[Kirken,Transpl.Proc.2001,33,3268〜3270]。
【0043】
IL−4媒介性STATリン酸化は、慢性関節リウマチ(RA)の初期および末期に関与する機序として関連している。RA滑膜および滑液中の炎症誘導性サイトカインのアップレギュレーションは、疾患の特徴である。IL−4/STAT経路のIL−4媒介性活性化は、Janusキナーゼ(JAK1および3)を通して媒介されること、そしてIL−4関連JAKキナーゼは、RA滑膜中に発現されることが示されている[Muller−Ladnerら、J.Immunol.2000,164,3894〜3901]。
【0044】
家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)は、ALS患者の約10%に影響を及ぼす致命的な神経変性障害である。FALSマウスの生存率は、JAK3特異的阻害剤を用いる処置の際に増加した。これは、JAK3がFALSにおいて役割を果たすことを示唆した[Trieuら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2000、267,22〜25]。
【0045】
転写のシグナルトランスデューサーかつアクチベーター(STAT)タンパク質は、特に、JAKファミリーキナーゼにより活性化される。最近の研究からの結果は、白血病の処置に対する特異的阻害剤を用いて、JAKファミリーキナーゼを標的化することにより、JAK/STATシグナル伝達経路における介入の可能性を示唆した[Sudbeckら、Clin Cancer Res.1999,5,1569〜1582]。JAK3特異的化合物は、JAK3を発現する細胞株DAUDI、RAMOS、LC1−19、NALM−6、MOLT−3、およびHL−60のクローン原性増殖を阻害することが示された。
【0046】
動物モデルでは、TEL/JAK2融合タンパク質は、骨髄増殖性障害を誘導し、そして、造血細胞株では、TEL/JAK2の導入は、STAT1、STAT3、STAT5の活性化をもたらし、そしてサイトカイン非依存性の増殖をもたらす[Schwallerら、EMBO J.1998,17,5321〜5333]。
【0047】
JAK3およびTYK2の阻害は、STAT3のチロシンリン酸化を無効にし、そして皮膚のT細胞リンパ腫の一形態である菌状息肉腫の細胞増殖を阻害した。これらの結果は、菌状息肉腫に存在する構成的に活性化されたJAK/STAT経路においてJAKファミリーキナーゼに関連した[Nielsenら、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.1997,94,6764〜6769]。同様に、STAT3、STAT5、JAK1およびJAK2は、LCK過剰発現により最初に特徴付けられたマウスT細胞リンパ球において構成的に活性化され、従って、異常な細胞増殖におけるJAK/STAT経路にさらに関与することが示された[Yuら、J.Immunol.1997,159,5206〜5210]。さらに、IL−6媒介性のSTAT3の活性化は、JAKの阻害剤により阻害され、これがアポトーシスへの骨髄腫細胞の感作につながる[Catlett−Falconeら、Immunity 1999,10,105〜115]。
【0048】
c−met癌原遺伝子は、Metレセプターチロシンキナーゼをコードする。このMetレセプターは、145kDaのβ鎖にジスルフィド結合された50kDaのα鎖から構成される190kDaのグリコシル化二量体複合体である。このα鎖は、細胞外に見出され、その一方で、β鎖は、膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインを含む。Metは、前駆体として合成され、そしてタンパク分解性に切断され、成熟したαサブユニットおよびβサブユニットを生じる。これは、細胞−細胞相互作用に関与しているリガンドレセプターファミリーである、セマフォリンおよびプレキシンに対する構造的類似を示す。Metに対するリガンドは、散乱因子のメンバーである肝細胞増殖因子(HGF)であり、プラミノーゲンに対していくらかのホモロジーを有する。[Longati,Pら、Curr.Drug Targets 2001,2,41〜55);Trusolino,L.およびComoglio,P.Nature Rev.Cancer 2002,2,289〜300]。
【0049】
Metは、腫瘍形成および腫瘍の転移において機能しているようである。破骨細胞細胞系統においてTpr−met融合を形成する染色体再配列形成は、構成的に活性なMetレセプターおよびトランスフォーメーションをもたらす(Cooper,C.S.ら、Nature 1984,311,29〜33)。高められたキナーゼ活性を示すMet変異体は、乳頭状腎臓癌の、遺伝性形態および散在性形態の両方において同定されている(Schmidt,L.ら、Nat.Genet.1997,16,68〜73;Jeffers,M.ら、Proc.,Nat.Acad.Sci.1997,94,11445〜11500)。Metが、それのリガンドのHGFと一緒に発現することは、形質転換であり、腫瘍形成性、転移性である(Jeffers,M.ら、Oncogene 1996,13,853〜856;Michieli,Pら、Oncogene 1999,18,5221〜5231)。HGF/Metは、アノイキス、懸濁誘導性のプログラム化細胞死(アポトーシス)を、頭部および頚部扁平上皮細胞の癌細胞において阻害することが示されている。アノイキス耐性または足場非依存性生存は、上皮細胞の腫瘍形成形質転換の特徴である(Zeng,Qら、J.Biol.Chem.2002,277,25203〜25208)。
【0050】
HGF/Metシグナル伝達は、正常細胞における細胞接着および細胞運動性に関与し、そしてほとんどの組織(軟骨、骨、血管、およびニューロンが挙げられる)において見出される浸潤性増殖において主要な役割を果たす(Comoglio,P.M.およびTrusolino,L.J.Clin.Invest.2002,109,857〜862に概説されている)。Metの機能障害の活性化または増加した数のMetは、腫瘍の転移に特徴的な細胞移動、細胞増殖、および細胞生存をもたらす異常な細胞−細胞相互作用に寄与し得る。Metの活性化は、種々の腫瘍を誘導し、そして維持する[Wang,Rら、J.Cell.Biol.2001,153,1023〜1034;Liang,T.J.ら、J.Clin.Invest.1996,97,2872〜2877;Jeffers,Mら、Proc.Nat.Acad.Sci.1998,95,14417〜14422]一方、Metの損失は、腫瘍細胞の増殖および浸潤を阻害する[Jiang,W.G.ら、Clin.Cancer Res.2001,7,2555〜2562;Abounader,R.ら、FASEB J.2002 16,108〜110]。Met/HGFの発現の増加は、結腸癌(Fazekas,Kら、Clin.Exp.Metastasis 2000,18,639〜649)、乳癌(Elliott,B.E.ら、2002、Can.J.Physiol.Pharmacol.80,91〜102)、前立腺癌(Knudsen,B.S.ら、Urology 2002,60,1113〜1117)、肺癌(Siegfried,J.M.ら、Ann.Thorac.Surg.1998,66,1915〜1918)および胃腸癌(Amemiya,H.ら、Oncology 2002,63,286〜296)を含む多くの転移性腫瘍において見られる。
【0051】
HGF−Metシグナル伝達はまた、アテローム性動脈硬化症のリスクの増加(Yamamoto,Y.ら、J.Hypertens.2001,19,1975〜1979;Morishita,Rら、Endocr.J.2002,49,273〜284)および肺の繊維症の増加(Crestani,B.ら、Lab.Invest.2002,82,1015〜1022)に関係している。
【0052】
Sykは、FcεRI媒介性マスト細胞脱顆粒および好酸球活性化に重要な役割を果たすチロシンキナーゼである。従って、Sykキナーゼは、種々のアレルギー障害、特に喘息に関与している。Sykが、N末端のSH2ドメインを介して、FcεRIレセプターのリン酸化されたγ鎖に結合し、そして下流のシグナル伝達に必要不可欠であることが示されている[Taylorら、Mol.Cell.Biol.1995,15,4149]。
【0053】
好酸球のアポトーシスの抑制は、喘息における血中好酸球および組織好酸球の発達に関する主要な機序として提案されている。IL−5およびGM−CSFは、喘息においてアップレギュレートされ、そして好酸球のアポトーシスを阻害することにより、血中好酸球および組織好酸球を引き起こすと提案されている。好酸球のアポトーシスの抑制は、喘息における血液好酸球および組織好酸球の発達のための主要な機序として提案されている。Sykキナーゼが、(アンチセンスを用いた)サイトカインによる好酸球アポトーシスの防止に必要とされていることが報告されている(Yousefiら、J.Exp.Med.1996,183,1407]。
【0054】
マクロファージ由来の骨髄中のFcγR依存性応答およびFcγR非依存性応答におけるSykの役割は、Syk−/−胚由来の胎児の肝細胞で再構成される照射されたキメラマウスを用いて決定されている。Syk欠損マクロファージは、FcγRにより誘導される貪食作用を欠く、補体に対して正常な貪食作用を示した[Kieferら、Mol.Cell.Biol.1998,18,4209]。エアロゾル化されたSykアンチセンスが、Sykの発現およびマクロファージからのメディエータ−の放出を抑制することもまた報告されている[Stentonら、J.Immunology 2000,164,3790]。
【0055】
ZAP−70は、T細胞レセプターシグナル伝達にとって必要不可欠である。このチロシンキナーゼの発現は、T細胞およびナチュラルキラー細胞に限定されている。T細胞の機能におけるZAP−70の重要性は、ヒトの患者、ヒトのT細胞株およびマウスにおいて示されている。希少な形態の重症複合不全症(SCID)を患っているヒトの患者は、ZAP−70においてホモ接合変異を有する(Elder J.of Pedriatric Hematology/Oncology 1997,19(6),546〜550に概説されている)。これらの患者は、深刻な免疫不全を有しており、CD8+のT細胞を欠損し、そしてT細胞レセプター(TCR)媒介性刺激に応答しないCD4+のT細胞を有する。TCR活性化に続き、これらのCD4+細胞は、Ca2+流動、下流の基質のチロシンリン酸化、増殖およびIL−2産生70の重度の欠損を示す(Elder Pedriatric Research 39,743〜748において概説される)。ZAP−70が欠損しているヒトのJurkat細胞はまた、T細胞レセプターシグナル伝達におけるZAP−70の重要な役割に対する重要な見識を提供する。検出可能なZAP−70タンパク質を有さないJurkatクローン(p116)はまた、野生型ZAP−70の再導入により補正され得るT細胞レセプターシグナル伝達において欠損を有することが示された(Williamsら、Molecular and Cellular Biology,1998,18(3)、1388〜1399)。ZAP−70欠損マウスの研究はまた、T細胞レセプターシグナル伝達におけるZAP−70の必要性を示している。ZAP−70欠損マウスは、T細胞の発達において深刻な欠損を有し、そして胸腺細胞におけるT細胞レセプターシグナル伝達が、弱められる(Negishiら、Nature 1995,376,435〜438)。
【0056】
ZAP−70の機能におけるキナーゼドメインの重要性は、ヒトの患者およびZAP−70のキナーゼドメイン中のDLAARNモチーフ中に同一の変異を発現するマウスにおける研究により示されている。この変位によるキナーゼ活性の不活化は、不完全なT細胞レセプターシグナル伝達をもたらす(Elderら、J.Immunology 2001,656〜661)。触媒的に不活性なZAP−70(Lys369Arg)はまた、ZAP−70欠損Jurkat細胞クローン(p116)においてT細胞レセプターシグナル伝達を回復させることにおいて欠点を有した(Cellular Biology 1998、18(3)、1388〜1399)。
【0057】
トランスホーミング増殖因子β(TGF−β)活性化キナーゼ1(TAK−1)は、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼキナーゼ(MAPKKKまたはMEKK)として機能する、67kDaのユビキチン依存性セリン−スレオニンキナーゼである(Wang,C.ら、Nature 2001,412,346〜351)。
【0058】
TGF−βスーパーファミリーのメンバーにより刺激されるようにもともと記載されている(Yamaguchi K.ら、Science 1995,270,2008〜2011)TAK−1は、炎症性サイトカインを含む多くの細胞モジュレーターからのシグナル伝達の際に機能することもまた公知である。TAK−1は、IL−1β/TLRリガンドからのシグナル伝達にとって重要である(Holtmann Hら、J.Biol.Chem.2001,276,3508〜3516;Jiang Zら、J.Biol.Chem.2003,278,16713〜16719)およびTNF−α(Takaesu Gら、J.Mol.Biol.2003,326,105〜115)。さらに、TAK−1は、IL−18(Wald,D.ら、Eur.J.Immunol.2001,31,3747〜3754)、RANKL(Mizukami J.ら、Mol.Cell.Biol.2002,22,992,1000)およびセラミド(Shirakabe K.ら、J.Biol.Chem.1997,272,8141〜8144)のシグナル伝達において役割を果たす。
【0059】
対応する細病表面のレセプターとの相互作用を介して、これらのリガンドは、TAK−1を刺激して、細胞のプロセス(アポトーシス(Edlund S.ら、Mol Biol Cell.2003,14,529〜544)、分化(Suzawa,M.ら、Nat Cell Biol 2003,5,224〜230)および細胞周期の進行(Bradham CAら、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.2001 281,G1279〜89)が挙げられる)の重要なレギュレーターである種々の経路(例えば、IKK/NFκB、JNK、およびp38)にシグナルを中継する。
【0060】
シグナル伝達経路の修飾は、細胞のプロセスを変更し得、そして疾患の一因となり得る。多くの細胞表面レセプターからのシグナル伝達におけるその中心的な役割のために、TAK−1は、種々の疾患についての重要な治療上の標的であり得る。サイトカインIL−1βおよびTNFαは、慢性関節リウマチおよび他の炎症性疾患における、重要なメディエーターである(Maini RN.およびTaylor PC.Ann.Rev.Med.2000,51,207〜229)。これらの場合において、TAK−1は、疾患関連の細胞応答を調節する際に重要であり得る(Hammaker DRら、J.Immunol.2004,172,1612〜1618)。TAK−1は、細胞の線維性応答に影響する(Ono K.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2003、307、332〜337)。それはまた、心不全(Zhang,D.、Nat.Med.2000、6、556〜563)、骨粗しょう症(Mizukami J.ら、Mol.Cell.Biol.2002、22、992〜1000)および肝細胞の細胞の生存(Arsura Mら、Oncogene 2003、22、412〜425)において役割を果たし得る。TAK−1シグナル伝達は、神経突起の生長に影響し得(Yanagisawa M.ら、Genes Cells.2001,6,1091〜1099)、そして脂質生成(Suzawa M.ら、Nat.Cell.Biol.2003,5,224〜230)の制御および心筋細胞の分化(Monzen K.ら、J.Cell.Biol.2001,153(4),687〜698)に関与している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0061】
従って、プロテインキナーゼの阻害剤として有用な化合物を開発する大きな必要性がある。特に、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70の阻害剤として有用な化合物を、特に、それらの活性化に関する障害の多数に対して現在利用可能である不充分な処置を考慮して開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0062】
(発明の要旨)
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70プロテインキナーゼの阻害剤として有効であることが現在見出されている。これらの化合物もしくは薬学的に受容可能な塩、またはそれらの混合物は、一般式:
【0063】
【化24】

を有し、ここで、R、R、T、A、AおよびAは、以下に定義される通りである。
【0064】
これらの化合物およびその薬学的に受容可能な組成物は、種々の疾患、障害、または状態(癌、心臓病、糖尿病、アルツハイマー病、免疫不全障害、炎症性疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患、破骨障害(例えば、骨粗しょう症)増殖障害、感染性疾患、免疫学的に媒介された疾患、神経変性障害もしくは神経学的障害、またはウイルス性疾患が挙げられるが、これらに限定されない)の処置または予防に有用である。この組成物は、細胞死および過形成を予防するための方法においてもまた有用であり、そしてそれゆえに、発作、心臓麻痺、ならびに器官低酸素症における再灌流/虚血を処置または予防するために使用され得る。
【0065】
本発明により提供される化合物は、生物学的現象および病理学的現象におけるキナーゼの研究;このようなキナーゼにより媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究;ならびに新規のキナーゼ阻害剤の比較評価にとってもまた有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
(発明の詳細な説明)
(I.本発明の化合物の概要)
本発明は、式I:
【0067】
【化25】

の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、またはこれらの混合物に関し、ここで;
は、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyであり;
Lは、−S−、−O−、−N(R)−、または、C1〜6アルキリデン鎖であり、Lの2個までの非隣接メチレン単位が、−S−、−O−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(S)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(S)N(R)−、−N(R)CO−、−C(O)−、−CO−、−C(O)N(R)−、−C(S)N(R)−、−OC(O)N(R)−、−SO−、−SON(R)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−C(R)=NN(R)−、−C(R)=N−O(R)−、−C(O)C(O)−、もしくは−C(O)CHC(O)−により必要に応じてかつ独立して置換され;
mは、0または1であり;
Arは、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜5個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員〜7員の単環式環または8員〜10員の二環式環であり;
Cyは、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された3員〜7員の飽和もしくは部分的に不飽和な単環式環であるか、または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜5個のヘテロ原子を有する、8員〜10員の飽和もしくは部分的に不飽和な二環式環であり、ここで;
ArおよびCyは、5個までのZ−Rの存在で各々必要に応じて置換され;ここで、Zの各存在は、独立して、結合またはC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Zの2個までの非隣接メチレン単位は、−S−、−O−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(S)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(S)N(R)−、−N(R)CO−、−C(O)−、−CO−、−C(O)N(R)−、−C(S)N(R)−、−OC(O)N(R)−、−SO−、−SON(R)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−C(R)=NN(R)−、−C(R)=N−O(R)−、−C(O)C(O)−、または−C(O)CHC(O)−により必要に応じて置換され;
の各存在は、独立して、−R’、ハロゲン、NO、CN、−OR’、−SR’、−N(R’)、−N(R’)C(O)R’、−N(R’)C(S)R’、−N(R’)C(O)N(R’)、−N(R’)C(S)N(R’)、−N(R’)COR’、−C(O)R’、−C(S)R’、−COR’、−OC(O)R’、−C(O)N(R’)、−C(S)N(R’)、−OC(O)N(R’)、−S(O)R’、−SOR’、−S(O)R’、−SON(R’)、−N(R’)SOR’、−N(R)SON(R’)、−C(O)C(O)R’、−C(O)CHC(O)R’、−NR’NR’C(O)R’、−NR’NR’C(O)N(R’)、−NR’NR’COR’、−C(O)N(OR’)R’、−C(NOR’)R’、−S(O)R、−N(OR’)R’、−C(=NH)−N(R’);または−(CH0〜2NHC(O)R’より選択され;ここで
Rの各存在は、独立して、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であり、
R’の各存在は、独立して、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、必要に応じて置換されたC6〜10アリール環、5個〜10個の環原子を有する必要に応じて置換されたヘテロアリール環、もしくは、3個〜10個の環原子を有する必要に応じて置換されたヘテロシクリル環であるか;あるいは
RおよびR’、または、RもしくはR’のいずれかの2個の存在は、これらが結合する原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有する必要に応じて置換された5員〜8員の、飽和もしくは部分的に不飽和なアリール環を形成するか;あるいは
同一の窒素上のR’またはRのいずれかの2個の存在は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する必要に応じて置換された5員〜8員の、飽和もしくは部分的に不飽和なアリール環を形成し;
は、水素、CN、−SR、−OR、−COR、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R)、−N(R)、−N(R)C(O)R、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であり;
Tは、窒素またはCRより選択され;
T、A、A、またはAのわずか2個のみが窒素であるという条件で、A、A、およびAの各々は、独立して、窒素またはCRであり;
は、水素、ハロゲン、NO、CN、−SR、−OR、−N(R)、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基より選択され;そして
は、ハロゲン、NO、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyであるか;あるいは
隣接原子上の2個のR基は、一緒になって、酸素、硫黄、もしくは窒素より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員〜7員の、部分的に不飽和または完全に不飽和な環を形成し、ここで;
一緒になった隣接原子上の2個のR基により形成された各環は、4個までのZ−Rの存在で必要に応じて置換される。
【0068】
式Iの化合物についての特定の実施形態では、以下の条件のうち、一つ以上または全てが当てはまる:
a)Tが、RがHであるCRであり、AおよびAが、両方とも、RがHであるCRであり、Rが、Hであり、そしてRが、−(L)Arであり、mが、0であり、そしてArが、フェニル、4−OHフェニル、3−NOフェニル、4−OMeフェニル、4−Meフェニル、または1,2エチレンジオキシフェニルである場合;
i)Aは、RがH、Cl、F、Br、NO、またはMeであるCRではなく;
b)Rが、−(L)Arであり、mが、0であり、そしてArが、フェニル、4−OMeフェニル、3,4−ジOMeフェニル、または4−Clフェニルである場合;
i)Rが、Hである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ii)RがHである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがBrであるCRではなく、そしてAは、RがMeであるCRではなく;
iii)Rが、Hである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが各々、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRであり、そしてRがMeである場合、A、A、Aは、各RがHであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRであり、そしてRがHである場合、A、A、Aは、各RがHであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって縮合型ベンゾ環を形成するCRではなく;
c)RおよびRが、Hである場合;
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがCl、NO、またはMeであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、Et、OH、OEt、OMe、またはClであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがEt、OH、OEt、OMeであるCRではなく、そしてAは、RがNOであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、Et、OH、OEt、またはOMeであるCRではなく、そしてAは、RがNH、−N(CHN(n−Pr)、−N(CHN(Et)、−N(CHNH、−N(CHN(n−Pr)、または−N(CHN(Et)であるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって、縮合型ベンゾ環または縮合型シクロヘキシル環を形成するCRではなく;
d)Rが、3,6−ジメチルベンゾフラン−2−イルまたはベンゾフラン−2−イルであり、そしてRが、Hである場合;
i)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeまたはHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
e)Rが、Meであり、そしてRが、Hである場合;
i)Tが、RがHであるCRではある場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iii)AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Tは、RがOMeであるCRではなく、そしてAは、RがOMeであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、RがOMeであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがOMeであるCRではなく、そしてAは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく、そしてAは、RがOHであるCRではなく;
vii)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、AおよびAは、各RがHであるCRではなく;
viii)Aが、RがOHであるCRではない場合であり、TがHである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ix)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が、一緒になって、縮合型ベンゾ環または縮合型フラニル−2−カルボン酸メチルエステルを形成するCRではなく;
f)RがMeであり、Rが、Hである場合;
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であって、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeまたはClであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であって、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、各RがClであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であって、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であって、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であって、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
g)RおよびRが、同時にMeである場合:
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であって、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、ClまたはSOHであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であって、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、RがMeである各CRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であって、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
v)A、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Tは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがMeであるCRである場合であって、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
h)Tが、RがHであるCRであり、そしてA、A、およびAが、各RがHであるCRである場合;
i)Rは、アセチルでも、プロピオニルでも、ブチリルでも、sec−ブチリルでもなく;
j)Rが、MeまたはEtであり、そしてRが、アセチルまたはプロピオニルである場合;
i)Tが、RがHであるCRである場合であって、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、RがMeであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であって、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であって、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって、縮合型ベンゾ環を形成するCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であって、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
k)Rが、H、SH、OH、−OR、N(R)であり、そしてTが、RがH、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、OH、NH、SH、OR、ハロゲン、またはN(R)であるCRであり、そしてA、A、およびAが、Rが水素、ハロゲン、または、mが1であり、Lが−S−、−O−、−N(R)−であり、そしてRがHもしくは必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、−(L)RであるCRである場合、Rは、以下:
i)mが0であり、そしてRが必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である−(L)R;でも
ii)mが、1であり、そしてLが、−S−、−O−、−N(R)−であり、そしてRが、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である−(L)Rのいずれでもなく;
l)AおよびAが、両方のR基が一緒になって縮合型ベンゾ環を形成するCRである場合であって、Tが、RがHであるCRである場合、Rは、以下:
i)p−クロロスチリルでも、スチリルでも、p−メチルスチリルでも、p−メトキシスチリルでもなく;
但しまた、以下の化合物:
6−クロロ−2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−クロメン−4−オンオキシム、
3−アセチル−5−クロロ−2,6−ジメチル−クロメン−4−オンオキシム、
2,3−ジヒドロ−1,5−ジオキサ−シクロペンタ[b]ナフタレン−8−オンオキシム、
4,9−ジメトキシ−7−メチル−フロ[3,2−g]クロメン−5−オンオキシム、
4,7,9−トリメチル−フロ[3,2−g]クロメン−5−オンオキシム、
5,6,7,8−テトラフルオロ−4−ヒドロキシイミノ−2−メチル−4H−クロメン−3−カルボン酸エチルエステル、
ニコチン酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
安息香酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
4−ベンジルオキシ−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
酢酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
4−ヒドロキシ−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
2−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロキシ−クロメン−4−オンオキシム、
6−[4−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−フェノキシ]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
8−(4−アセチル−フェノキシ)−5,7−ジヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
6−(4−アセチル−フェノキシ)−5,7−ジヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
2−(2,6−ジメトキシ−フェニル)−5,6−ジメトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
2−(2,4−ジメトキシ−フェニル)−7−メトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
6−クロロ−3−エチル−2−メチル−クロメン−4−オキシム、
(4−ヒドロキシイミノ−4H−クロメン−3−イル)−酢酸、
3−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−2,6−ジメチル−クロメン−4−オンオキシム、
酢酸3,7−ジアセトキシ2−(4−アセトキシ−フェニル)−4−ヒドロキシイミノ−4H−クロメン−5−イルエステル、
2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−3,5,7−トリメトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
3,5,7−トリメトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
8−[4−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−フェノキシ]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシフェニル)クロメン−4−オンオキシム、
8−[5−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−2−メトキシ−フェニル]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)クロメン−4−オンオキシム、
4−ヒドロキシイミノ−7−メトキシ−4H−クロメン−3−イル)−酢酸
、が除外される。
【0069】
(II.化合物および定義:)
本発明の化合物としては、一般的に上に記載されたものが挙げられ、そして本明細書に開示されるクラス、サブクラス、および種によりさらに例証される。本明細書に記載される場合、他に示されなければ、以下の定義が当てはまる。本発明の目的のために、化学元素が、Periodic Table of the Elements,CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、第75版に従って同定される。さらに、有機化学の一般的な原理が、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、Smith,M.B.、およびMarch,J.,John Wiley&Sons編、New York:2001に記載され、それらの全内容が本明細書中で参考として援用される。
【0070】
本明細書中に記載される場合、本発明の化合物は、必要に応じて、1個以上の置換基(例えば、一般的に上で例証されている置換基、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種により例示される置換基)で置換され得る。句「必要に応じて置換された」が、句「置換または非置換の」と相互に交換可能に使用されるということが理解される。一般的に、用語「置換された」は、用語「必要に応じて」に先行されていようがいまいが、所定の構造における水素ラジカルを特定の置換基のラジカルと置換することを意味する。他に示されなければ、必要に応じて置換された基は、上記基の置換可能な各位置において、置換基を有し得、そして任意の所定の構造における1以上の位置が、特定の基より選択される1個以上の置換基で置換され得る場合、上記置換基は、全ての位置において、同一であるか別個であるかのいずれかであり得る。本発明により構想される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物の形成を生じる。本明細書中で用いられる場合、用語「安定な」は、本明細書に開示される1つ以上の目的のための、化合物の生産、検出、ならびに、好ましくは回収、精製、および使用を可能にする条件に供したときに、実質的に交換されない化合物をいう。いくつかの実施形態において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、少なくとも1週間、湿気または他の化学的に反応性の条件の非出現例下で40℃以下の温度に保たれた場合、実質的に変更されない化合物である。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、完全に飽和されているか、または1個以上の不飽和単位を含む、直鎖状(すなわち、分枝していない)または分枝鎖状の、置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは、完全に飽和されているかまたは1個以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない単環式炭化水素または二環式炭化水素(「炭素環式」「脂環式」もしくは「シクロアルキル」とも呼ばれる)であって、この分子の残部に対して、単一の結合点を有する単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。他に特定されなければ、脂肪族基は、1個〜20個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1個〜10個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は、1個〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1個〜6個の脂肪族炭素原子を含み、そしてさらに他の実施形態では、脂肪族基は、1個〜4個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、「脂環式」(または、「炭素環」または「シクロアルキル」)とは、完全に飽和されているか、または1個以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素であって、この分子の残部に対して、単一の結合点を有する単環式炭化水素または二環式炭化水素をいい、ここで、上記二環式環系における任意の個々の環は、3員〜7員を有する。適切な脂肪族基としては、直鎖または分枝鎖の、置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書中で用いられる場合、用語「複素脂肪族」は、1個または2個の炭素原子が、独立して、1個以上の酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素に置換された脂肪族基を意味する。複素脂肪族基は、置換されていても非置換であってもよく、分枝していても分枝していなくてもよく、環式であっても非環式であってもよく、そして、「複素環」基、「ヘテロシクリル」基、「複素環式脂肪族」基、または「複素環」基が挙げられる。
【0073】
本明細書中で用いられる場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式脂肪族」または「複素環」は、1以上の環員が、独立して選択されるヘテロ原子である、非芳香族環系、単環式環系、二環式環系または三環式環系を意味する。いくつかの実施形態において、「複素環」基、「ヘテロシクリル」基、「複素環式脂肪族」基または「複素環」基は、1個以上の環員が酸素、硫黄、窒素、またはリンより独立して選択されるヘテロ原子である、3個〜14個の環員を有し、そして上記系における各環が3個〜7個の環員を含む。
【0074】
用語「ヘテロ原子」とは、1以上の酸素、硫黄、窒素、リンもしくはケイ素(窒素、硫黄、リン、もしくはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の4級化形態、または;複素環式環の置換可能な窒素(例えば、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおけるような)N、(ピロリジニルにおけるような)NHもしくは(N−置換ピロリジニルにおけるような)NRが挙げられる)を意味する。
【0075】
本明細書中に用いられる場合、用語「不飽和の」は、部分が1以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0076】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコキシ」または「チオアルキル」とは、以前に定義されるように、酸素原子を通して主炭素鎖に結合されたアルキル基(アルコキシ)または窒素原子を通して主炭素鎖に結合されたアルキル基(チオアルキル)をいう。
【0077】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味し、場合によっては、1個以上のハロゲン原子で置換され得る。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0078】
単独で使用されるか、または「アラルキル(aralkyl)」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」におけるより大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、総計5個〜14個の環員を有する、単環式環系、二環式環系、および三環式環系を指し、ここで、この系における少なくとも1以上の環は、芳香族であり、ここで、この系における各環は、3個〜7個の環員を含む。この用語「アリール」は、用語「アリール環」と相互に交換可能に使用され得る。用語「アリール」はまた、本明細書中の以下に記載されるヘテロアリール環系も指す。
【0079】
単独で使用されるか、または「ヘテロアラルキル(heteroaralkyl)」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」におけるより大きな部分の一部として使用される用語「ヘテロアリール」は、総計5個〜14個の環員を有する、単環式環系、二環式環系、および三環式環系をいい、ここで、この系における少なくとも1つの環は、芳香族であり、この系における少なくとも1個の環は、1個以上のヘテロ原子を含み、ここで、この系における各環は、3個〜7個の環員を含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と交換可能にに使用され得る。用語「アリール」はまた、本明細書中の以下に記載されるヘテロアリール環系をいう。
【0080】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびへテロアリールアルコキシなど)は、1以上の置換基を含み得る。アリール基またはへテロアリール基の非置換の炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;必要に応じてRで置換されたフェニル(Ph);必要に応じてRで置換された−O(Ph)、必要に応じてRで置換された−(CH1〜2(Ph);必要に応じてRで置換された−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(NOR)R;−S(O);−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−N(OR)R;−C(=NH)−N(Rまたは−(CH0〜2NHC(O)Rより選択され、ここで、Rの各々独立した出現例は、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、非置換の5員〜6員のヘテロアリール環もしくは複素環式環、フェニル、−O(Ph)、または−CH(Ph)より選択されるか、あるいは、上記の定義にも関わらず、同一の置換基上または別個の置換基上のRの2個の独立した出現例は、各R基が結合する原子と一緒になって、5員〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または、窒素、酸素もしくは硫黄より選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する3員〜8員のシクロアルキル環を形成する。Rの脂肪族基上の選択的な置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロC1〜4脂肪族より選択され、ここで、Rの前述のC1〜4脂肪族基の各々は、非置換である。
【0081】
脂肪族基もしくはへテロ脂肪族基、または非芳香族複素環式環は、1以上の置換基を含み得る。脂肪族基またはヘテロ脂肪族基、あるいは非芳香族複素環の置換された炭素上の適切な置換基は、アリール基またはへテロアリール基の不飽和の炭素に関して上に列挙されたものより選択され、そしてさらに以下:
=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)、もしくは=NRが挙げられ、ここで、各Rは、独立して、水素もしくは必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基より選択される。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)より選択され、ここで、前述のRの各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0082】
非芳香族複素環の窒素上の任意の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rまたは−NRSOより選択され;ここで、Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換された−CH(Ph)、必要に応じて置換された−(CH1〜2(Ph);必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);または酸素、窒素、もしくは硫黄より選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する非置換の5員〜6員のへテロアリールもしくは複素環であるか、または、同一の置換基または別個の置換基上の、Rの独立した2個の出現例は、各R基が結合する原子と一緒になって、5員〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する3員〜8員のシクロアルキル環を形成する。脂肪族基またはRのフェニル環上の任意の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)より選択され、ここで、前述の各RのC1〜4脂肪族基は、非置換である。
【0083】
用語「アルキリデン鎖」とは、完全に飽和であり得るか、または1以上の不飽和単位を有し得、そしてこの分子の残部に対して2個の結合点を有する、直鎖または分枝状の炭素鎖をいう。
【0084】
上に詳述されているように、いくつかの実施形態では、R(もしくはRまたは、本明細書中で同様に規定される任意の他の可変基)の2個の独立した出現例は、各可変基が結合する原子と一緒になって、5員〜8員のヘテロシクリル環、アリール環、もしくはヘテロアリール環、または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する3員〜8員のシクロアルキル環を形成する。R(もしくはR、または本明細書中で同様に定義される任意の他の可変基)の2個の独立した出現例が、各可変基が結合する原子と一緒になる場合に形成される例示的な環としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:a)R(もしくはR、または本明細書中で同様に定義される任意の他の可変基)の2個の独立した出現例であって、同一の原子に結合され、かつこの原子と一緒になって環を形成する出現例(例えば、N(Rであって、Rの両出現例が、上記窒素原子と一緒になって、ピペリジン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、またはモルホリン−4−イル基を形成する、N(R);およびb)R(もしくはR、または本明細書中で同様に定義される任意の他の可変基)の2個の独立した出現例であって、別個の原子に結合され、かつ、これらの原子の両方と一緒になって、環を形成する、出現例(例えば、フェニル基が、ORの2個の出現例
【0085】
【化26】

で置換され、Rのこれらの2個の出現例は、これらが結合する酸素原子と一緒になって、縮合型の6員環酸素含有環:
【0086】
【化27】

を形成する)。R(もしくはR、または本明細書中で同様に定義される任意の他の可変基)の2個の独立した出現例が、各可変基が結合した原子と一緒になっている場合、種々の他の環が形成され得ること、および上に詳述された例は、限定を意図しないことが理解される。
【0087】
他に述べられなければ、本明細書中に描写される構造はまた、全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体(もしくは構造異性体))形態を包含することもまた意図される;例えば、各不斉中心に対するR配置およびS配置、(Z)二重結合異性体および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)構造異性体および(E)構造異性体。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体および鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何異性体(または構造異性体)の混合物は、本発明の範囲内である。他に述べられなければ、本発明の化合物の全ての互変異性体形態は、本発明の範囲内である。さらに、他に述べられなければ、本明細書中で描写される構造は、同位体的に濃縮された1個以上の原子の存在下でのみ異なる化合物を包含することもまた意図される。例えば、二重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13Cもしくは14C濃縮化炭素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、分析用のツールまたは生物学的アッセイにおけるプローブとして有用である。
【0088】
(III.特定の例示的化合物の記載)
一実施形態によれば、Rは、−(L)Ar、−(L)R、または−(L)Cyである。別の実施形態では、Rは、−(L)Arであり、化合物は、一般式I:
【0089】
【化28】

を有する。
【0090】
別の実施形態では、Rは、−(L)Arであり、Arは、以下の基:
【0091】
【化29】

【0092】
【化30】

の1個より選択される。
【0093】
なお別の実施形態では、Arは、以下の基:
【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

の1個より選択される。
【0096】
別の実施形態によれば、Rは、−(L)−Arであり、mは1であり、そして化合物は、式IA−1:
【0097】
【化33】

を有する。
【0098】
別の実施形態では、Arは、ZRの0個〜5個の出現例を有するフェニルであり、そして化合物は、式IA−1−5:
【0099】
【化34】

を有する。
【0100】
別の実施形態によれば、Rは、−(L)−Cyであり、そして化合物は、式IA−2:
【0101】
【化35】

を有する。
【0102】
別の実施形態では、Cyは、以下の基:
【0103】
【化36】

の1個より選択される。
【0104】
が−(L)−Arまたは−(L)−Cyである別の実施形態によれば、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状または分枝鎖上のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個以上のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCS、NRCONR、NRCSNR、NRCO、CO、CO、CONR、CSNR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、またはC(O)CHC(O)で置換される。
【0105】
別の実施形態では、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、CO、CONR、SONR、NRSOにより置換される。
【0106】
別の実施形態によれば、Rは、−(L)Rであり、そしてLは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、およびRにより置換され、そしてRは、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である。
【0107】
別の実施形態では、Rは、水素、CN、−OR、−COR、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R)、−N(R)、−N(R)C(O)R、または、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である。
【0108】
さらに別の実施形態では、Rは、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である。別の実施形態では、Rは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルである。
【0109】
さらに別の実施形態では、Rは、水素であり、そして化合物は、式IB:
【0110】
【化37】

を有する。
【0111】
別の実施形態では、Tは、CRであり、そしてRは、水素、ハロゲン、CN、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である。別の実施形態では、Rは、水素、ハロゲン、CF、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルである。さらに別の実施形態では、Rは、水素またはハロゲンである。
【0112】
別の実施形態によれば、Tは、CRであり、Rは、水素であり、そして化合物は、式IC:
【0113】
【化38】

を有する。
【0114】
別の実施形態では、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである。別の実施形態では、AがCRであり、Rが−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyであり、ここで、Ar基およびCy基が、上で記載された通りである場合、Lは、Lの1のメチレン単位が必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、またはC(O)CHC(O)により必要に応じて置換されたC1〜6直鎖または分子アルキリデン鎖である。
【0115】
別の実施形態によれば、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲン、CNまたはRである。
【0116】
他の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして化合物は、以下の式ID−1:
【0117】
【化39】

を有する。
【0118】
さらに別の実施形態によれば、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして化合物は、以下の式ID−2:
【0119】
【化40】

を有する。
【0120】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして化合物は、以下の式ID−3:
【0121】
【化41】

を有する。
【0122】
別の実施形態によれば、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである。別の実施形態では、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲンまたはRである。さらに別の実施形態では、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、またはC(O)CHC(O)により置換される。特定の他の実施形態では、Aは、CRであり、そしてRは、−(L)Rであり、ここで、Lは、−O−または−N(R)−である。
【0123】
別の実施形態によれば、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして化合物は、式IE−1:
【0124】
【化42】

を有する。
【0125】
別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして化合物は、式IE−2:
【0126】
【化43】

を有する。
【0127】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、mは、0であり、そしてArは、1−5、1−6、1−11、1−12、1−13、1−19、1−24、または1−25である。
【0128】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして化合物は、式IE−3:
【0129】
【化44】

を有する。
【0130】
別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、mは、0であり、そしてCyは、2−2、2−5、2−6、2−7、2−8、または2−12である。
【0131】
別の実施形態によれば、Aは、CRであり、Rは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである。別の実施形態では、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲンまたはRである。別の実施形態では、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖状または分枝鎖状のアルキリデン鎖であり、ここで、Lのメチレン単位の1個は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、またはC(O)CHC(O)により置換される。さらに好ましくは、Aは、CRであり、そしてRは、−(L)Rであり、ここで、Lは、−O−または−N(R)−である。
【0132】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして化合物は、式IF−1:
【0133】
【化45】

を有する。
【0134】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして化合物は、式IF−2:
【0135】
【化46】

を有する。
【0136】
別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、mは、0であり、そしてArは、1−5、1−6、1−11、1−12、1−13、1−19、1−24、または1−25である。
【0137】
さらに別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして化合物は、式IF−3:
【0138】
【化47】

を有する。
【0139】
別の実施形態では、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、mは、0であり、そしてCyは、2−2、2−5、2−6、2−7、2−8または2−12である。
【0140】
さらに別の実施形態では、Tは、CRであり、A、AおよびAは、各々CRであり、そして化合物は、式IG−1:
【0141】
【化48】

を有する。
【0142】
式Iの別の実施形態によれば、xは、0〜5であり、そしてArおよびCyは、ZRの0個〜5個の出現例で独立して置換される。好ましくは、ZRは、独立して、ハロゲン、NO、CN、または、C1〜4アルキル、アリール、アラルキル、−N(R’)、−CHN(R’)、−OR’、−CHOR’、−SR’、−CHSR’、−COOR’、または−S(O)N(R’)より選択される必要に応じて置換された基である。別の実施形態では、ZR基は、以下に表1中に記載される。
【0143】
式Iの化合物の代表例が、以下の表1に記載される。
【0144】
【化49】

【0145】
【化50】

【0146】
【化51】

【0147】
【化52】

他に示されなければ、本明細書中に描写される構造はまた、全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何異性体(もしくは構造異性体))形態を包含することもまた意図される;例えば、各不斉中心に対するR配置およびS配置、(Z)二重結合異性体および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)構造異性体および(E)構造異性体。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体およびエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何異性体(または構造異性体)の混合物は、本発明の範囲内である。他に示されなければ、本発明の化合物の全ての互変異性体形態は、本発明の範囲内である。さらに、他に述べられなければ、本明細書中で描写される構造は、同位体的に濃縮された1個以上の原子の存在下でのみ異なる化合物を包含することもまた意図される。例えば、二重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13Cもしくは14C濃縮化炭素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析用のツールまたはプローブとして有用である。
【0148】
(IV.一般的な合成方法論:)
本発明の化合物は、一般に、当業者に公知の、類似の化合物に関する方法により調製され得る。以下のスキーム1〜4は、本発明の化合物への合成経路を例示する。有機化当業者にとって容易に明白であるその他の均等なスキームは、以下の一般的なスキーム、およびこれに続く調製実施例によって例示されているように、この分子の種々の部分を合成するために、代わりに使用され得る。
【0149】
【化53】

試薬:(a)EDCI、HOBt、THF;(b)NaH、DMSO;(c)HOAc、HCl;(d)PまたはLawesson’s試薬;(e)NHOH、ピリジン、90°。
【0150】
上記スキーム1は、式Iの化合物を調製するための一般的な方法を示す。例えば、中間体エステル3を、Hassner,Aら、Tett.Lett.1978,26,4475〜4478の方法に従って調製し得、ここで、ヒドロキシ−2−アセチルアレン1は、アリール酸2と反応して、エステル3を提供する。転位の後に、Hamada,M.ら、Synthesis 1984、1076〜1078の方法に従う酸性環化(acidic cyclization)により、中間体フラボン5を提供した。フラボン5は、Ollis,W.ら、J.Chem. Soc.1952、1303〜1309による方法か、Lawesson,S.O.ら、Bull.Soc.Chim.Belg.1978,87,223〜228による方法のいずれかの方法に従って、チオフラボン6に転換した。チオフラボン5を、Ollis,W.ら、J.Chem.Soc.1952,1303〜1309により記載されたプロトコールを用いて、フラボンオキシムIへと転換した。
【0151】
【化54】

試薬;(a)NaOH、EtOH;(b)I触媒、DMSO;(c)PまたはLawesson’s試薬;(d)NHOH、ピリジン、90°。
【0152】
上記スキーム2は、式Iの化合物を調製するための一般の代替経路を示す。Geissman,T.A.ら、J.Amer.Chem.Soc.1954,3507〜3511の手順に従う、ヒドロキシ−2−アセチルアレン1のアリールアルデヒド7との縮合は、Doshi,A.G.ら、Indian J.Chem.1986,25B,759により開発された手順を用いて対応するフラボン5へと転換された2’−ヒドロキシカルコン8を与えた。フラボン5を、チオフラボン6へと転換し、次いで、スキーム1において上に記載される方法に従って、フラボンオキシムIへと転換した。
【0153】
【化55】

【0154】
【化56】

試薬:(a)BrCH(CHCl、KCO、アセトン、還流;(b)モルホリン、KCO、NaI、2−ブタノン;(c)Lawesson’s試薬、トルエン、還流;(d)NHOH、ピリジン、110°。
【0155】
上記スキーム3は、式Iの化合物、特に、化合物I−25、化合物I−26、および化合物I−31を調製するための一般の経路を示す。市販されているヒドロキシフラボン9は、還流中のアセトン中でアルキル化され、クロライド10を与え、そしてこのクロライド10は、続いてモルホリンと置換されて、エーテル11を与えた。フラボン11をチオフラボン12へと転換し、次いで、スキーム1に上に列挙されている方法に従って、一般的にフラボンオキシムIを達成した。
【0156】
【化57】

【0157】
【化58】

試薬:(a)BrCH(CHCl、アセトン、還流;(b)モルホリン、KCO、NaI、2−ブタノン;(c)Lawesson’s試薬、トルエン、還流;(d)NHOH、ピリジン、110°。
【0158】
上記スキーム4は、式Iの化合物、特に、化合物I−27、化合物I−28、化合物I−29、化合物I−34、化合物I−35および化合物I−37を調製するための一般の経路を示す。市販されているヒドロキシフラボン13は、還流中のアセトン中でアルキル化されてクロライド14を与え、このクロライド14は、続いてモルホリンと置換されてエーテル15を与えた。このフラボン15をチオフラボン16へと転換し、次いで、スキーム1について上に列挙されている方法にほぼ従って、フラボンオキシムIへの転換を達成した。
【0159】
特定の例示的な実施形態は、上および本明細書中で描写され、そして記載されているが、本発明の化合物は、適切な出発物質を用いて、当業者に一般的に利用可能な方法により、一般的に上に記載される方法に従って調製され得ることが理解される。
【0160】
(V.用途、処方、および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
上で議論されたように、本発明は、プロテインキナーゼのインヒビターである化合物を提供し、その結果、本発明の化合物は、疾患、障害、および状態(癌、増殖障害、心臓性障害、神経変性障害、自己免疫障害、器官移植と関連する状態、炎症性障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス性疾患、または骨障害が挙げられるが、これらに限定されない)の処置に対して有用である。従って、本発明の別の局面では、薬学的に受容可能な組成物が提供され、ここで、これらの組成物は、本明細書中で記載されるような化合物のいずれかを含有し、そして必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルを含有する。特定の実施形態では、これらの組成物は、必要に応じて、1種以上のさらなる治療用薬剤をさらに含有する。
【0161】
本発明の特定の化合物は、処置のための自由な形態または適切であればその薬学的に受容可能な誘導体として存在し得ることが理解される。本発明によれば、薬学的に受容可能な誘導体としては、薬学的に受容可能な塩、エステル、このようなエステルの塩、またはその他の任意の付加物もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されず、これらを必要としている患者への投与の際に、これらは、直接的にせよ間接的にせよ、本明細書中に他に記載されているような化合物またはその代謝物もしくは残基を提供し得る。
【0162】
本明細書中で用いられる場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わない、ヒトおよび下等動物の組織と接触する使用に適切である塩をいい、そして穏当な利益/危険比と釣り合っている。「薬学的に受容可能な塩」は、本発明の化合物の任意の非毒性塩、またはエステルの塩を意味し、この塩は、レシピエントへの投与の際、本発明の化合物または抑制的に活性なその代謝物もしくは残基を、直接的にか間接的にかのいずれかで、提供し得る。本明細書中で用いられる場合、用語「抑制的に活性な代謝物またはその残基」は、代謝物またはその残基が、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70キナーゼのインヒビターでもあることを意味する。
【0163】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に受容可能な塩を、詳細にJ.Pharmaceutical Science,1977,66,1〜19(参考として本明細書中に援用される)に記載する。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、適切な無機酸、無機塩基、有機酸および有機塩基に由来するものが挙げられる。薬学的に受容可能な、非毒性の酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸)または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸)を用いて形成されるアミノ基の塩、あるいは当該分野で用いられるその他の方法(例えば、イオン交換)を用いることによるものである。その他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、二硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコネート、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトネート、グリセロリン酸塩、グルコネート、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒドロヨウ素(hydroiodide)、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオネート、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート(pamoate)、ペクチネート、過流酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基由来の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1〜4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定している。水溶性もしくは油溶性または分散可能な生成物は、このような四級化により取得され得る。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに薬学的に受容可能な塩としては、適切な場合、無毒性の、アンモニウム、四級アンモニウム、およびアミンカチオンが挙げられ、これらは、対イオン(例えば、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェートフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネート、およびアリールスルホネート)用いて形成される。
【0164】
上で記載されたように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、またはビヒクルをさらに含み、これらは、本明細書中で使用される場合、任意のおよび全ての、溶媒、希釈剤、およびその他の液体ビヒクル、分散補助剤もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤(isotonic agent)、増粘剤もしくは乳化剤、保存剤、固形結合剤、滑沢剤などを含み、これらは、特定の所望の投薬形態に適合している。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に受容可能な組成物を処方する際に使用される種々のキャリアおよびその調製のための公知の技術を開示する。従来の任意のキャリア媒体が、本発明の化合物と(例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生み出すか、またはそうでなければ有害な方法で、薬学的に受容可能な組成物の他の任意の構成要素と相互作用することにより)不適合である場合を除き、その用途は、本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る材料のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛の塩)、コロイド状のシリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキソプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース);デンプン(コーンスターチおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロース、ナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテート)、粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、ココアバターおよび坐剤蝋;油(例えば、ピーナッツ油、綿実油);ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油および大豆油;グリコール;(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル);寒天;緩衝化剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質フリーの水;等張性生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝化溶液ならびにその他の無毒性適合性滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸ナトリウム)ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤、保存剤および抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない)はまた、処方者の判断に従って、組成物中に存在し得る。
【0165】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の用途)
さらに別の局面では、癌、増殖性障害、心臓性障害、神経変性障害、自己免疫障害、器官移植と関連する状態、炎症性障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス性疾患、もしくは骨障害の処置またはこれらの重篤度を軽減するための方法が提供され、この方法は、有効量の化合物、または化合物を含有する薬学的に受容可能な組成物を、これらを必要とする被験体に投与する工程を包含する。本発明の特定の実施形態では、「有効量」の化合物または薬学的に受容可能な組成物は、癌、増殖性障害、心臓性障害、神経変性障害、自己免疫障害、器官移植と関連する状態、炎症性障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス性疾患、または骨障害のために有効な量である。本発明の方法に従うこれらの化合物および組成物は、任意の量および任意の投与経路を用いて、投与され得、この任意の量および任意の投与経路は、癌、増殖性障害、心臓性障害、神経変性障害、自己免疫障害、器官移植と関連する状態、炎症性障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス性疾患、または骨障害の治療またはこれらの軽減に有用である。必要とされる正確な量は、被験体によりまちまちであり、被験体の種、年齢、および全身の状態、感染の重篤度、特定の薬剤、投与の様式などにも依存する。本発明の化合物は、好ましくは、投与の簡便性および投薬の均一性のために、投薬単位形態にて投与される。本明細書中で用いられる場合、句「投薬単位形態」とは、処置されるべき患者にとって適切な薬剤の物理的に別個の単位をいう。しかし、本発明の化合物および組成物の一日の全使用量は、主治医により、正しい医学的判断の範囲内で、決定されるということが理解される。任意の特定の患者または生物についての特定の有効用量レベルは、種々の因子(処置されるべき障害、および障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および規定食);使用される特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;処置の持続期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医学分野において周知の因子などに依存する。本明細書中で用いられる場合、用語「患者」とは、動物をいい、好ましくは、哺乳類をいい、そして最も好ましくは、ヒトをいう。
【0166】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に、鞘膜内に、腹腔内に、局所的に(例えば、散剤、軟膏剤、またはドロップにより)、口内に、経口スプレーまたは鼻のスプレーなどにより投与され得、これらは、処置される感染の重篤度に依存する。特定の実施形態では、本発明の化合物は、経口的にも非経口的にも、一日あたり、被験体の体重の約0.01mg/kg〜約50mg/kgの投薬レベルで投与され得、そして好ましくは、約1mg/kg〜約25mg/kgの投薬レベルで、一日一回以上投与され得、所望の治療効果を得る。
【0167】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、微小エマルジョン、溶液、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性な化合物に加えて、この溶液投薬形態は、当該分野において一般に使用されている不活性な賦形剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物)を含有し得る。不活性な賦形剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント(例えば、加湿剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤)が挙げられ得る。
【0168】
注射可能な調製物(例えば、無菌の注射可能な、水溶性または油性の懸濁液)は、適切な分散剤または加湿剤および懸濁剤を用いて、当該分野において処方され得る。無菌の注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口に受容可能な希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液)中の、無菌の注射可能な、溶液、懸濁液またはエマルジョンであり得る。受容可能なビヒクルおよび使用され得る溶媒の一つは、水、リンガー溶液、米国薬局方および等張性の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として、慣習的に使用される。この目的のために、任意の刺激の強くない不揮発性油(合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドが挙げられる)が使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射可能物の調製において使用される。
【0169】
この注射可能な処方物は、例えば、細菌保持フィルター(bacterial−retaining filter)を通す濾過によってか、または、消毒薬剤を、滅菌水もしくはその他の注射可能な媒体中に溶解もしくは分散され得る消毒固体組成物の形態で使用前に組み込むことにより、殺菌され得る。
【0170】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることがしばしば望ましい。これは、わずかな水溶性を有する結晶質または無定形物質の液体懸濁物の使用により達成され得る。従って、上記化合物の吸収速度は、結晶のサイズおよび結晶質形態に依存し得る溶解速度に依存する。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延された吸収は、この化合物を油ビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。注射可能蓄積形態は、生体分解性のポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中の化合物のマイクロカプセル封入化マトリックスを形成することにより製造される。化合物対ポリマーの比率および使用される特定のポリマーの性質に依存して、化合物放出の速度は、制御され得る。他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。蓄積形態の注射可能な処方物はまた、化合物を、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に包括することにより調製される。
【0171】
直腸投与または膣投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物を適切な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、もしくは室温で固体であるが、体温では液体であり、従って腸腔または膣腔において融解し、そして活性な化合物を放出する坐剤用の蝋)と混合することにより調製され得る坐剤である。
【0172】
経口投与のための固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。このような固体投薬形態では、この活性な化合物は、少なくとも1種の不活性な、薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウム、および/もしくはa)充填剤または増量剤(extender)(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア)、c)湿潤剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、e)溶液抑制剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、4級アンモニウム化合物)、g)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)ならびにi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物))と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、この投薬形態はまた、緩衝化剤を含み得る。
【0173】
類似の型の固体組成物はまた、ラクトースすなわち乳糖のような賦形剤および高分子量のポリエチレングリコールなどを用いて軟質充填ゼラチンカプセルまたは硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填物としても使用され得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投薬形態は、被覆およびシェル(例えば、腸溶被覆および薬学的処方技術において周知のその他の被覆)を用いて調製され得る。これらは、必要に応じて不透明化薬剤を含有し得、そしてまた、これらは、活性な成分のみを放出するか、または優先的に、腸管の特定の部分において、必要に応じて、遅延した様式で活性な成分を放出する組成物でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。同様の型の固形組成物はまた、ラクトースすなわち乳糖のような賦形剤および高分子量のポリエチレングリコールなどを用いて軟質充填ゼラチンカプセルならびに硬質充填ゼラチンカプセル中の充填物として使用され得る。
【0174】
この活性な化合物はまた、上で言及された1種以上の賦形剤を含む微小カプセル化形態の中にあり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固形投薬形態は、被覆剤およびシェル(例えば、腸溶被覆剤、放出制御被覆剤、および薬学的処方技術において周知のその他の被覆剤)で調製され得る。このような固形投薬形態では、活性な化合物は、少なくとも1種の不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプン)と混合され得る。このような投薬形態は、普段の慣習の通りに、不活性な希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤潤滑剤および他の錠剤補助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース))もまた含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、この投薬形態はまた、緩衝化剤を含み得る。これらは、不透明化剤を必要に応じて含み得、そしてまた、これらが活性成分のみを放出するか、または好ましくは、腸管の特定の部分において、必要に応じて、遅延した様式で活性成分を放出する組成物のものでもあり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。
【0175】
本発明の化合物の局所的投与または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏剤、パスタ、クリーム、ローション剤、ゲル剤、散剤、水剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性な要素は、無菌状態下で薬学的に受容可能なキャリアおよび必要とされる任意の保存剤または必要とされ得るような緩衝液と混合される。眼用処方物、点眼剤、および点眼剤もまた、本発明の範囲内であることが企図される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を企図し、この経皮パッチは、化合物の身体への制御送達を提供するというさらなる長所を有する。このような投薬形態は、適切な媒体中に化合物を溶解または分配することにより製造され得る。吸収促進剤はまた、皮膚を超えての化合物の流動を増加させるために使用され得る。この速度は、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中で化合物を分配することのいずれかにより制御され得る。
【0176】
一般的に上に記載されるように、本発明の化合物は、プロテインキナーゼの阻害剤として有用である。一実施形態では、本発明の化合物および組成物は、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70キナーゼの1以上の阻害剤であり、従って、特定のいかなる理論にも縛られずに、化合物および組成物は、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70の1以上の活性化がこの疾患、状態、もしくは障害に関与している疾患、状態、または障害の処置または重篤度の低下に特に有用である。CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70の活性化が、特定の疾患、状態または障害に関与している場合、これらの疾患、状態または障害はまた、「CDK−2媒介性疾患、cMET媒介性疾患、FLT−3媒介性疾患、JAK−3媒介性疾患、GSK−3媒介性疾患、IRAK−4媒介性疾患、SYK媒介性疾患、p70S6K媒介性疾患、TAK−1媒介性疾患、およびZAP−70媒介性疾患」または疾患徴候とも呼ばれ得る。従って、別の局面では、本発明は、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70の1以上の活性化が、疾患の状態に関与している疾患、状態、もしくは障害を処置するか、またはこれの重篤度を低下させる方法を提供する。
【0177】
CDK−2キナーゼ、cMETキナーゼ、FLT−3キナーゼ、JAK−3キナーゼ、GSK−3キナーゼ、IRAK−4キナーゼ、SYKキナーゼ、p70S6Kキナーゼ、TAK−1キナーゼ、およびZAP−70キナーゼの阻害剤として本発明において使用される化合物の活性は、インビトロ、インビボまたは細胞系統においてアッセイされ得る。インビトロのアッセイとしては、活性化CDK−2キナーゼ、活性化cMETキナーゼ、活性化FLT−3キナーゼ、活性化JAK−3キナーゼ、活性化GSK−3キナーゼ、活性化IRAK−4キナーゼ、活性化SYKキナーゼ、活性化p70S6Kキナーゼ、活性化TAK−1キナーゼ、または活性化ZAP−70キナーゼのリン酸化活性またはATPアーゼの活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。代替的なインビトロのアッセイは、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、およびZAP−70キナーゼに結合する阻害剤の能力を定量する。阻害剤の結合は、阻害剤/CDK−2キナーゼ複合体、阻害剤/cMETキナーゼ複合体、阻害剤/FLT−3キナーゼ複合体、阻害剤/JAK−3キナーゼ複合体、阻害剤/GSK−3キナーゼ複合体、阻害剤/IRAK−4キナーゼ複合体、阻害剤/SYKキナーゼ複合体、阻害剤/p70S6Kキナーゼ複合体、阻害剤/TAK−1キナーゼ複合体、阻害剤/ZAP−70キナーゼ複合体を結合し、単離し、そして放射標識結合の量を決定する前に、阻害剤を放射標識することにより測定され得る。あるいは、阻害剤の結合は、新規の阻害剤が公知の放射リガンドと結合したCDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、またはZAP−70と共にインキュベートされる競合実験を行うことにより決定され得る。
【0178】
本明細書中で用いられる場合、用語「測定可能に阻害する」とは、上記組成物およびCDK−2キナーゼ、cMETキナーゼ、FLT−3キナーゼ、JAK−3キナーゼ、GSK−3キナーゼ、IRAK−4キナーゼ、SYKキナーゼ、p70S6Kキナーゼ、TAK−1キナーゼ、またはZAP−70キナーゼを含むサンプルと、上記組成物の非存在下で、CDK−2キナーゼ、cMETキナーゼ、FLT−3キナーゼ、JAK−3キナーゼ、GSK−3キナーゼ、IRAK−4キナーゼ、SYKキナーゼ、p70S6Kキナーゼ、TAK−1キナーゼ、またはZAP−70キナーゼを含む等価なサンプルとの間の、CDK−2活性、cMET活性、FLT−3活性、JAK−3活性、GSK−3活性、IRAK−4活性、SYK活性、p70S6K活性、TAK−1活性、またはZAP−70活性における測定可能な変化を意味する。
【0179】
本明細書中で用いられる場合、用語「CDK−2媒介性疾患」または「CDK−2媒介性状態」とは、CDK−2が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「CDK−2媒介性疾患」または「CDK−2媒介性状態」はまた、CDK−2阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または状態を意味する。このような状態としては、癌、アルツハイマー病、再狭窄、新脈管形成、糸球体腎炎、サイトメガロウイルス、HIV、ヘルペス、乾癬、アテローム性動脈硬化症、脱毛症、および自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ)が挙げられるが、これらに限定されない。Fischer,P.M.およびLane,D.P.Current Medicinal Chemistry,2000,7,1213〜1245;Mani,S.,Wang,C.,Wu,K.,Francis,R.およびPestell,R.Exp.Opin.Invest.Drugs 2000,9,1849;Fry,D.W.およびGarrett,M.D.CurrentOpinion in Oncologic,Endocrine & Metabolic Investigational Drugs 2000,2,40〜59を参照のこと。
【0180】
本明細書中で用いられる場合、用語「FLT−3媒介性疾患」または「FLT−3媒介性状態」とは、FLT−3が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「FLT−3媒介性疾患」または「FLT−3媒介性状態」はまた、FLT−3阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または状態を意味する。このような状態としては、造血障害、特に、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、および急性リンパ性白血病(ALL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
本明細書中で用いられた場合、用語「GSK−3−媒介性疾患」は、GSK−3が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性の状態もしくは疾患を意味する。用語「GSK−3−媒介性疾患」または「GSK−3−媒介性状態」はまた、GSK−3阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または状態を意味する。これらの疾患または状態としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝性、神経学的および神経変性疾患、心臓血管疾患、アレルギー、喘息、糖尿病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連性痴呆、筋萎縮性側索硬化症(AML、ルー・ゲーリグ病)、多発性硬化症(MS)、精神分裂病、心筋細胞肥大、再灌流/虚血、発作、および禿頭症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
本明細書中で用いられる場合、用語「IRAK−4媒介性疾患」とは、IRAK−4が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態もしくは有害性疾患を意味する。用語「IRAK−4媒介性疾患」または「IRAK−4媒介性状態」はまた、IRAK−4阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような疾患または障害としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、敗血症、ウイルス性疾患および癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
本明細書中で用いられる場合、用語「JAK−3媒介性疾患」とは、JAK−3キナーゼが役割を果たすことが知られている任意の疾患もしくはその他の有害性状態を意味する。用語「JAK−3媒介性疾患」または「JAK−3媒介性状態」はまた、JAK−3阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような状態としては、免疫応答(例えば、アレルギー性すなわちI型過敏症反応、喘息、自己免疫疾患(例えば、移植拒絶、対宿主性移植片病、慢性関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、ならびに多発性硬化症、神経変性障害(例えば、家族性筋萎縮性Familial amyotrophic lateral sclerosis(FALS)、ならびに固形腫瘍および血液学腫瘍(例えば、白血病およびリンパ腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
本明細書中で用いられる場合、用語「cMET媒介性疾患」または「cMET媒介性状態」とは、cMETが役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「cMET媒介性疾患」または「cMET媒介性状態」はまた、cMET阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような状態としては、腎臓癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、および肺癌、アテローム性動脈硬化症、ならびに肺線維症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
本明細書中で用いられる場合、用語「p70S6K媒介性状態」または「疾患」とは、p70S6Kが役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「p70S6K媒介性状態」または「疾患」はまた、p70S6K阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。p70S6K媒介性疾患または状態としては、増殖性障害(例えば、癌および結節硬化症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
本明細書中で用いられる場合、用語「SYK媒介性疾患」または「SYK媒介性疾患」とは、SYKプロテインキナーゼが役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「SYK媒介性疾患」または「SYK媒介性状態」はまた、SYK阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような状態としては、アレルギー障害、特に喘息が挙げられるが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書中で用いられる場合、用語「TAK−1媒介性状態」とは、TAK−1が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「TAK−1媒介性疾患」または「TAK−1媒介性状態」はまた、TAK−1阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような状態としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、超増殖性疾患、慢性関節リウマチ、心不全、骨粗しょう症、肝臓癌、軸索過形成、脂質生成、および心筋細胞の分化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
本明細書中で用いられる場合、用語「ZAP−70媒介性状態」とは、ZAP−70が役割を果たすことが知られている任意の疾患またはその他の有害性状態を意味する。用語「ZAP−70媒介性疾患」たは「ZAP−70媒介性状態」はまた、ZAP−70阻害剤を用いた処置により緩和される疾患または障害を意味する。このような状態としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、増殖性疾患、超増殖性疾患、および免疫学的に媒介される疾患(移植器官または移植組織の拒絶が挙げられる)ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
例えば、ZAP−70媒介性状態としては、気道の疾患(可逆性閉塞性気道疾患(喘息(気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息および塵埃喘息、特に慢性の喘息または難治性の喘息(例えば、遅期の喘息気道過敏応答)))ならびに気管支炎が挙げられる。さらに、ZAP−70疾患としては、鼻粘膜の炎症(急性鼻炎、アレルギー性、萎縮性腱鞘炎および慢性鼻炎(乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾酪性鼻炎および薬物性鼻炎;膜性鼻炎(クループ性、フィブリンのおよび偽膜性鼻炎および腺病鼻炎を含む)、季節性鼻炎(神経性鼻炎(花粉症)、および血管運動性鼻炎、サルコイドーシス、農夫肺および関連疾患、肺線維症、および特発性間隙性肺炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
ZAP−70媒介性状態はまた、骨疾患および関節疾患(慢性関節リウマチ、セロネガティブ脊髄障害(強直性脊髄炎、乾癬性関節炎およびライター病が挙げられる)、ベーチェット病、シェ−グレン病、および全身性硬化症を含むが、これらに限定されない。
【0191】
ZAP−70媒介性状態はまた、皮膚の疾患および障害(乾癬、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、および他の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天然痘、水泡性天然痘、表皮水泡性、蕁麻疹、皮膚萎縮症、血管炎、紅斑、皮膚の好酸球増加症、ブドウ膜炎、脱毛症、限局性結膜炎および春季結膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
ZAP−70媒介性状態はまた、胃腸管の疾患および障害(セリアック病、直腸炎、好酸球増加性胃腸炎、肥満細胞症、膵炎、クローン病、消化性大腸炎、消化管から遠い効果を有する食物関連アレルギー(例えば、偏頭痛、鼻炎、およい湿疹))を含む。
【0193】
ZAP−70媒介性状態はまた、他の組織の疾患および障害、ならびに全身性疾患(多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エリトマト−デス、全身性狼瘡、紅斑、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、I型糖尿病、ネフローゼ症候群、好酸球増加症、筋膜炎、過剰IgE症候群、らい種のらい病、セザリー症候群、および特発性血小板減少症紫斑、血管形成に続く再狭窄、腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫)、動脈硬化、および全身性狼瘡紅斑が挙げられる)が挙げられる。
【0194】
ZAP−70媒介性状態としてはまた、同種移植拒絶(例えば、腎臓、心臓、肝臓、肺、骨髄、皮膚、および角膜の移植に続く、急性同種移植拒絶および慢性同種移植拒絶;ならびに慢性対宿主性移植片病が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
他の実施形態では、本発明は、必要としている患者において、グリコーゲン合成を増進し、そして/またはグルコースの血液レベルを低下させる方法に関し、この方法は、上記患者に、治療上有効な量の組成物を投与する工程を包含し、この組成物は、式Iの化合物を含む。この方法は、糖尿病患者において特に有用である。
【0196】
さらに別の実施形態において、本発明は、必要とする患者における超リン酸化されたTauタンパク質の産生を阻害する方法に関し、この方法は、上記患者に、治療上有効な量の組成物を投与する工程を包含し、この組成物は、式Iの化合物を含む。この方法は、アルツハイマー病の進行の停止または遅延に特に有用である。
【0197】
さらに別の実施形態では、本発明は、必要とする患者におけるβ−カテニンのリン酸化を阻害する方法に関し、この方法は、上記患者に治療上有効な量の組成物を投与する工程を包含し、この組成物は、式Iの化合物を含む。この方法は、精神分裂病を処置するのに特に有用である。
【0198】
本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物は、併用療法において使用され得ることが理解される。つまり、これらの化合物および薬学的に受容可能な組成物は、一種以上の他の所望の療法または医学的手順と同時にか、先立ってか、または後に投与され得る。組み合わせレジメンにおいて使用する治療法(療法または手順)のこの特定の組み合わせは、所望の療法および/または手順の適合性ならびに達成されるべき所望の治療上の効果を考慮に入れている。使用される治療法はまた、同一の障害に対する所望の効果(例えば、革新的な化合物は、同一の障害を処置するために使用される別の因子と共に投与され得る)を達成し得るかまたは、これらが別個の効果(例えば、任意の副作用のコントロール)を達成し得ることもまた理解される。本明細書中で使用される場合、特定の疾患、もしくは状態を処置または予防するために正常に投与されるさらなる治療上の因子は、「処置されている疾患、状態に対して適切である」として知られている。
【0199】
例えば、化学療法剤または他の抗増殖因子は、増殖性疾患および癌を処置するために、本発明の化合物と組み合わせられ得る。本発明の革新的な抗癌剤と組み合わせて使用され得る他の治療法または抗癌剤の例としては、例えば、外科手術、放射療法(しかし、少しの例を挙げれば、γ照射、ニュートロンビーム放射療法、電子ビーム放射療法、プロトン療法、近接照射療法、および全身性放射性同位元素)、内分泌療法、生体応答修飾因子(少し名前を挙げれば、インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF))、高熱、および寒冷療法、任意の悪影響(例えば、制吐作用)を軽減するための薬剤ならびにその他の認可された化学療法剤(アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イフォスファミド)が挙げられるが、これらに限定されない)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニスト、ならびにピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビル(Cytarabile)、ゲンシタビン(Gemcitabine)、紡錘体毒(spindle poison)(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(Vinorelbine)、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、テポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、ならびにホルモン(タモキシフェン、ロイプロイド、フルタミド、およびメゲストロール)、グリーベック(Gleevec(商標登録))アドリアマイシン、デキサメタゾン、ならびにシクロホスファミドが挙げられるが、これらに限定されない。最新の癌療法のためのより多くの包括的討論としては、http://www.nci.nih.gov/、http:www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htmでのFDA認可癌薬物の表、およびThe Merck Manual、第17版、1999(その全内容がここで参考として援用される)を参照のこと。
【0200】
本発明の阻害剤がまた組み合わせられ得る薬剤の他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルツハイマー病に対する処置(アリセプト(AriceptTM)、エキセロン(Excelon)(商標登録)、およびメマンチン(memantine));パーキンソン病の処置(例えば、L−DOPA/カルビドパ、エンタカポン(entacapone)、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール(pramipexole)、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル、およびアマンタジン;多発性硬化症(MS)を処置するための薬剤(例えば、インターフェロンβ(例えば、アボネックス(Avonex)(商標登録)およびレビフ(Rebif)(商標登録))、コパキソン(Copaxone(商標登録)、およびミトキサトロン;喘息のための処置(例えば、アルブテロールおよびシングレアー(Singulair)(商標登録);精神分裂病を処置するための薬剤(例えば、ジプレキサ(zyprexa)、リスペルダル(risperdal)、セロクエル(seroquel)およびハロペリドール);抗炎症薬剤(例えば、コルチステロイド、TNFブロッカー、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン);免疫調節性かつ免疫抑制性の薬剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノレート(mycophynolate)、モフェチル(mofetil)、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロフォスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン);神経栄養薬剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャンネルブロッカー、リルゾール、および抗パーキンソン病薬剤);心臓血管病を処置するための薬剤(例えば、βブロッカー、ACE阻害剤、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャンネルブロッカー、およびスタチン);肝臓病を処置するための薬剤(例えば、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス薬剤);血液障害を処置するための薬剤(コルチコステロイド、抗白血病薬剤、および増殖因子);ならびに免疫不全障害を処置するための薬剤(例えば、γグロブリン)。
【0201】
本発明の組成物に存在するさらなる治療用薬剤の量は、その治療用薬剤を唯一の活性な薬剤として含む組成物の通常投与される量を超えない。好ましくは、本明細書により開示される組成物におけるさらなる治療用薬剤の量は、唯一の治療上活性な薬剤としてその薬剤を含む組成物に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0202】
本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医学的デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管移植片、ステント、およびカテーテル)を被覆するための組成物に含まれ得る。従って、本発明は、別の局面では、本明細書中の上記ならびにクラスおよびサブクラスにおいて、一般に記載されたような本発明の化合物ならびに上記移植可能なデバイスを被覆するのに適したキャリアを含む、移植可能なデバイスを被覆するための組成物を包含する。さらに別の局面では、本発明は、本明細書中の上記ならびにクラスおよびサブクラスにおいて、一般に記載されたような本発明の化合物ならびに上記移植可能なデバイスを被覆するのに適したキャリアを含む、本発明の化合物を上に記載されたように含む組成物で被覆された移植可能なデバイスを包含する。
【0203】
例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷の後に、血管壁が再度狭まること)を克服するために使用されている。しかし、ステントまたは他の移植可能なデバイスを使用する患者は、血塊形成または血小板活性化の危険にさらされている。これらの不必要な効果は、キナーゼ阻害剤を含有する薬学的に受容可能な組成物でこのデバイスを予め被覆することにより、予防され得るか、または緩和され得る。適切な被覆および被覆された移植可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。この被覆は、代表的には、生体適合性のポリマー物質(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびこれらの混合物)である。これらの被覆は、必要に応じて、(フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはこれらの組み合わせの)適切なトップコートによってさらに覆われ得、この組成物に制御された放出の特徴を与える。
【0204】
本発明の別の局面は、生物学的サンプルまたは患者における、CDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、またはZAP−70キナーゼ活性の阻害に関し、この方法は、式Iの化合物または上記化合物を含む組成物を、患者に投与する工程、またはこれらを上記生物学的サンプルと接触させる工程を包含する。本明細書中で用いられる場合、用語「生物学的サンプル」としては、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られる生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、便、精液、涙液、もしくはその他の体液またはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
生物学的サンプルにおけるCDK−2、cMET、FLT−3、JAK−3、GSK−3、IRAK−4、SYK、p70S6K、TAK−1、ZAP−70キナーゼ活性の阻害は、当業者に公知である種々の目的に対して有用である。このような目的の例としては、輸血、器官移植、生物学的標本の保存、および生物学的アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0206】
(合成の実施例)
(実施例)
器具Bruker DPX 400機器を使用して400MHzにて、またはBruker AMX 500機器を使用して500MHzにてのいずれかで、H NMRスペクトルを記録した。質量分析サンプルを、電気スプレーイオン化を用いて単一MSモードにおいて作動させた。MicroMass ZQまたはQuattro II質量分析器により分析した。フローインジェクション(FIA)またはクロマトグラフィーを用いて、サンプルを質量分析器に導入した。全ての質量スペクトル分析の移動相は、修飾因子として0.2%ギ酸を含むアセトニトリル−水の混合物から成った。
【0207】
本明細書中で用いられる場合、「R(分)」とは、化合物に関係する分単位のHPLC保持時間をいう。HPLC方法AおよびBは、以下に記載される。本明細書中の選択された化合物に対する化学的命名は、CambridgeSoft Corporations ChemDraw Ultra(商標登録)、Version7.0.1により提供される命名プログラムを用いて行った。
【0208】
報告された保持時間を得るために使用されたHPLC方法Aは、以下の通りである:
カラム:YMCカラム、3×150mm
線形勾配:10% CHCN−HO〜90% CHCN−HO、8分間(0.1% TFA緩衝液)
流速:1.0ml/分
検出:ダイオードアレイ、214nmおよび254nm。
【0209】
報告された保持時間を得るために使用されたHPLC方法Bは、以下の通りである:
カラム:Phenomenex C18(2)カラム、4.6×30mm
勾配:0分で80% HO−20% CHCN、2.5分で0% HO−100% CHCN、3.5分で0% HO−100% CHCN
流速:2.0ml/分
検出:ダイオードアレイ、214nmおよび254nm。
【0210】
(実施例1)
(2−(4−メトキシ−フェニル)−8−メチル−クロメン−4−オン オキシム(I−23))
化合物I−23を、スキーム1において上記された一般的な方法に従って調製した。8−メチル−4’−メトキシフラボン(200.0mg、0.75mmol)、Lawesson’s試薬(182.3mg、0.45mmol)および無水トルエン(4.0mL)の攪拌混合物を、Nのもとで1.5時間還流した。この溶媒を減圧下で除去し、そしてこの残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(20% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、2−(4−メトキシ−フェニル)−8−メチル−クロメン−4−チオン(160.0mg、収率75.5%)を赤色固体として得た。チオンを、さらなる精製は行わずに、次の段階において使用した。LC/MS:(M+H)283.1.LC/方法A/8.967分、面積の%により、90.0%純度。
【0211】
2−(4−メトキシ−フェニル)−8−メチル−クロメン−4−チオン(160.0mg、0.57mmol)のピリジン溶液3.5mLに、118.4mg(1.70mmol)のヒドロキシルアミン塩酸塩を加えた。この溶液を、110℃で1時間攪拌した。この溶媒を、減圧下で除去し、そしてこの残渣を氷で処理した。生じたスラリーを濾過した。この濾過ケーキをHOで洗浄し、次いで一晩減圧下で乾燥し、137.0mg(収率85.7%)の所望の化合物I−23を黄色固体として得た。
【0212】
【化59】

【0213】
【化60】

(実施例2)
((2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−クロメン−4−オン オキシム(I−26))
化合物I−26を、スキーム3において上記される一般的な方法に従って調製した。8mLのアセトン中の7−ヒドロキシ−4’−メトキシフラボン(300.0mg、1.12mmol)、1−ブロモ−3−クロロプロパン(176.3mg、1.12mmol)、炭酸カリウム(232.2mg、1.68mol)の混合物を、Nのもとで一晩還流した。その溶媒を、減圧下で除去し、そしてその残渣を20mLの塩化メチレンと共に攪拌した。濾過後、この濾液を0.5NのNaOH(10mL)、水(2×10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。この溶液を、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして、この溶媒を除去し、薄赤色固体を得、そして次の段階においてさらなる精製をせずに使用した;7−(3−クロロ−プロポキシ)−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロメン−4−オンの収量367.0mg(95.0%)。HPLC/方法A(R7.933分、90.0%純度)。MS(ES+):m/e345.1(M+H)。
【0214】
5mLの2−ブタノン中の7−(3−クロロ−プロポキシ)−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロメン−4−オン(180.0mg、0.52mmol)、ヨウ化ナトリウム(156.5mg、1.04mmol)、炭酸カリウム(173.1mg、1.25mmol)およびモルホリン(91.0mg、1.04mmol)の混合物を、Nのもとで一晩還流した。この溶媒を、減圧下で除去し、そしてこの残渣を、EtOAc(20mL)と共に攪拌した。この溶液を、水(2×10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、この溶媒を減圧下で除去し、そして淡黄色固体(200.0mg、96.9%)を2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−クロメン−4−オンとして得、これを次の段階でさらに精製せずに用いた。HPLC/方法A(R4.40分、89.0%純度)。
【0215】
2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−クロメン−4−オン(200.0mg、0.51mmol)、Lawesson’s試薬(122.7mg、0.30mmol)および無水トルエン(3.5mL)の攪拌された混合物を、Nのもとで1時間還流した。この溶媒を、減圧下で除去し、そしてこの残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/MeOH/NEt、40/2/1)によって精製し、2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−クロメン−4−チオン(222.0mg、100.0%収率)を赤色固体として得、そしてこれを次の段階においてさらに精製せずに使用した。MS(ES+):m/e 412.1(M+H)。HPLC/方法A(R5.59分、74.0%純度)。
【0216】
2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−クロメン−4−チオン(222.0mg、0.38mmol)のピリジン溶液4.0mLに、80.0mg(1.15mmol)のヒドロキシルアミン塩酸塩を加えた。この溶液を、110℃で2時間攪拌した。この溶媒を、減圧下で除去し、そしてこの残渣を氷で処理した。生じたスラリーを、濾過した。この濾過ケーキを、HOで洗浄し、分取HPLCによって精製し、71.4mg(収率35.5%)の所望の生成物I−26を、黄色固体(TFA塩)として得た。
【0217】
【化61】

(実施例3)
((2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(4−モルホリン−4−イル−ブトキシ)−クロメン−4−オン オキシム(I−31))
化合物I−31を、スキーム3において化合物I−26について上記される一般的な方法に従って調製し、化合物I−31を黄色固体(TFA塩、30.1%収率、最終工程)として得た。
【0218】
【化62】

(実施例4)
((2−(4−メトキシ−フェニル)−7−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−クロメン−4−オン オキシム(I−25))
化合物I−25を、スキーム3において化合物I−26について上記される一般的な方法に従って調製し、化合物I−25を黄色固体(TFA塩、47%収率、最終工程)として得た。
【0219】
【化63】

(実施例5)
((7−メトキシ−2−[4−(4−モルホリン−4−イル−ブトキシ)−フェニル]−クロメン−4−オン オキシム(I−27))
化合物I−27を、スキーム4において上記される一般的な方法に従って調製し、化合物I−27を、黄色シロップ(TFA塩、23%収率、最終工程)として得た。
【0220】
【化64】

(実施例6)
((7−メトキシ−2−[4−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−フェニル]−クロメン−4−オン オキシム(I−28))
化合物I−28を、スキーム4において上記される一般的な方法に従って調製し、化合物I−28を、黄色固体(TFA塩、30.1%収率、最終工程)として得た。
【0221】
【化65】

(実施例7)
((7−メトキシ−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−クロメン−4−オン オキシム(I−29))
化合物I−29を、スキーム4において上記される一般的な方法に従って調製し、化合物I−29を、黄色固体(TFA塩、36.2%収率、最終工程)として得た。
【0222】
【化66】

(実施例8)
((6−フルオロ−2−ピリジン−3−イル−クロメン−4−オン オキシム(I−30))
化合物I−30を、スキーム2において上記される一般的な方法に従って調製した。5−フルオロ−2−ヒドロキシアセトフェノン500mg(3.25mmol)およびピリジン−3−カルバルデヒド348mg(3.25mmol)のエタノール溶液6mLに、0℃〜5℃で、50%水酸化ナトリウム水溶液910mgを加えた。これを室温にまで温め、室温で2日間攪拌した。この反応混合物を、6Nの塩酸と氷との混合物に加え、塩基を中和し、これを濾過して水で洗浄し、1−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−フェニル)−3−ピリジン−3−イル−プロペノンを、黄色固体(620mg、78.5%収率)として得、これをさらに精製せずに、次の段階で使用した。HPLC/方法A/4.256分、面積%により、100%純度。
【0223】
1−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−フェニル)−3−ピリジン−3−イル−プロペノン(256mg、1.05mmol)を、DMSO(2.5mL)中に懸濁し、そしてそれに、ヨウ素の結晶を加えた。この混合物を、10分間還流し、冷却し、水で希釈し、そしてこの得られた固体を濾別し、次いで20%のチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、6−フルオロ−2−ピリジン−3−イルクロメン−4−オンを暗紫色固体(250.0mg、91.5%収率)として得、これを次の段階で、さらなる精製をせずに使用した。LC/方法A/3.90分、面積%により、93.0%純度。MS(FIA):m/e242.1(M+H)。
【0224】
6−フルオロ−2−ピリジン−3−イル−クロメン−4−オン(128mg、0.53mmol)と、Lawesson’s試薬(129mg、0.32mmol)と無水トルエン(3.5mL)との攪拌された混合物を、N下で、0.5時間還流した。この溶媒を、減圧下で除去し、この残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/MeOH/NEt、40/2/1)により精製し、6−フルオロ−2−ピリジン−3−イル−クロメン−4−チオン(114.0mg、収率83.6%)を褐色個体として得、これをさらに精製せずに次の段階で使用した。LC/MS:258.1(M+H);LC/方法A/5.94分、面積%により、96.6%純度。
【0225】
6−フルオロ−2−ピリジン−3−イル−クロメン−4−チオン(114mg,0.44mmol)のピリジン溶液3.0mLに、92mg(1.33mmol)のヒドロキシルアミン塩酸塩を加えた。この溶液を、110℃で15分間攪拌した。この溶媒を、減圧下で除去し、そしてその残渣を氷で処理した。生じたスラリーを濾過した。この濾過ケーキをHOで洗浄し、そして分取HPLCにより精製し、40.0mg(収率24.6%)の化合物I−30を、淡黄色固体(TFA塩)として得た。
【0226】
【化67】

(実施例9)
(2−(4−メトキシ−フェニル)−6−メチル−クロメン−4−オン オキシム(I−32))
化合物I−32を、スキーム1において上に記載される一般的な方法に従って調製し、化合物I−32を黄色固体(31.7%収率、最終工程)として得た。
【0227】
【化67−2】

以下の表2は、本発明の特定の化合物についての質量分析、HPLC、およびH−NMRのデータを示す。
【0228】
【化68】

【0229】
【化69】

【0230】
【化70】

(実施例10:CDK−2阻害アッセイ)
化合物を、標準的な共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いて、CDK−2を阻害する能力について以下の様式でスクリーニングした。
【0231】
0.1M HEPES 7.5、10mM MgCl、1mM DTT、25mM NaCl、2.5mM ホスホエノールピルビン酸、300mM NADH、30mg/ml ピルビン酸キナーゼ、10mg/ml 乳酸デヒドロゲナーゼ、100mM ATP、および100μM ペプチドを含有するアッセイストック緩衝溶液(American Peptide,Synnyvale,CA)に、本発明の化合物のDMSO溶液を最終濃度が30μMのなるように加えた。生じた混合物を、30℃で10分間インキュベートした。
【0232】
この反応を、このアッセイの最終濃度が25nMになるようにCDK−2/サイクリンAストック溶液10μlを加えることにより開始した。反応速度を、BioRad Ultramarkプレートリーダー(Hercules,CA)を用いて、30℃で5分間の読み取り時間にわたって340nmでの吸光度をモニターすることにより得た。K値を、阻害剤濃度の関数として、この速度データから決定した。
【0233】
この化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、この化合物は、CDK−2を阻害することが見出された。本明細書中に記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0234】
(実施例11:cMET阻害アッセイ)
化合物を、標準的な共役酵素系(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いて、cMetキナーゼ活性を阻害する能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTT、および1.5% DMSOを含有する溶液中で行った。このアッセイの最終基質濃度は、200μM ATP(Sigma Chemicals、St Louis、MO)および10μM ポリGluTyr(Sigma Chemical Company,St.Louis)であった。反応を、30℃でそして80nMのcMetにて行った。この共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルビン酸塩、300μM NADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼおよび10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0235】
上に列挙された全ての試薬(ATPおよび本発明の試験化合物を除く)を含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。このアッセイストック緩衝溶液(175μl)を、本発明の試験化合物(5μL)の最終濃度が0.006μM〜12.5μMの範囲になるように用いて、30℃で10分間、96ウェルプレートにおいてインキュベートした。代表的には、本発明の試験化合物の化合物ストック10mMからの段階希釈物をDMSOを用いて娘プレート中に調製することにより、12点での滴定を行った。この反応を、20μlのATP(最終濃度200μM)を加えることにより開始した。反応速度は、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を10分間にわたって、30℃で使用して得た。このK値を、速度データから阻害剤濃度の関数として決定した。
【0236】
これらの化合物番号は、表1中の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物番号は、cMETを阻害することが見出された。本明細書中で記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0237】
(実施例12:GSK−3の阻害)
化合物を、標準的な共役酵素系(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いて、GSK−3β(AA1〜420)活性を阻害する能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、300μM NADH、1mM DTT、および1.5% DMSOを含有する溶液中で行った。このアッセイの最終基質濃度は、20μM ATP(Sigma Chemicals、St Louis、MO)および300μM ペプチド(American Peptide,Sunnyvale,CA)であった。反応を、30℃でそして20nMのGSK−3βにて行った。この共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼおよび10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0238】
上で列挙された全ての試薬(ATPおよび目的の試験化合物を除く)を含有するアッセイストック緩衝溶液を、調製した。このアッセイストック緩衝溶液(175μl)を、目的の試験化合物5μlを最終濃度が0.002μM〜30μMの範囲になるようにして、30℃で10分間、96ウェルプレート中でインキュベートした。代表的には、12点での滴定を、(10mM化合物ストックからの)試験化合物の段階希釈物をDMSOを用いて娘プレート中に調製することにより行った。反応を、20μlのATP(最終濃度20μM)を加えることにより開始した。反応速度を、Molecular Devices Spectramaxプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を、10分間にわたって、30℃で用いて得た。K値を、阻害剤の濃度の関数として、速度データから決定した。
【0239】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物は、GSK−3を阻害することが見出された。本明細書中で記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0240】
(実施例13:SYK阻害アッセイ)
化合物を、標準的な共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いて、SYKを阻害する能力についてスクリーニングした。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTT、および1.5% DMSO中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、200μM ATP(Sigma Chemicals Co.)および4μMのポリGly−Tyrペプチド(Sigma Chemical Co.)であった。アッセイを、30℃でそして200nMのSYKにて行った。この共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼおよび10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0241】
上で列挙された全ての試薬(SYK、DTTおよび本発明の目的の試験化合物を除く)を含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。56μlの試験反応物を、96ウェルプレート中に入れ、続いて、本発明の試験化合物を含有する2mM DMSOストック1μlを加えた(最終化合物濃度30μM)。このプレートを、約10分間、30℃にてプレインキュベートし、そして、10μlの酵素を加えることにより、反応を開始した(最終濃度25nM)。反応速度を、BioRad Ultramarkプレートリーダー(Hercules,CA)を、5分の読み取り時間にわたって30℃で使用して得、そして本発明の化合物についてのK値を標準的な方法に従って決定した。
【0242】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物は、SYKを阻害することが見出された。本明細書中に記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0243】
(実施例14:ZAP−70阻害アッセイ)
化合物を、標準的な共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998,7,2249)を用いて、ZAP−70を阻害する能力についてスクリーニングした。アッセイを、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、2mM DTT、および3% DMSOの混合物中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、100μM ATP(Sigma Chemicals)および20μM ペプチド(ポリ−4EY、Sigma Chemicals)であった。アッセイを、30℃で、そして60nMのZAP−70にて行った。この共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼおよび10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼであった。
【0244】
上で列挙された全ての試薬(ZAP−70および本発明の目的の試験化合物を除く)を含有するアッセイストック緩衝溶液を調製した。55μlのストック溶液を、96ウェルプレート中に入れ、続いて、本発明のこの試験化合物の段階希釈物(代表的には、15μMの最終濃度から開始する)を含有する2μlのDMSOストックを加えた(最終化合物濃度30μM)。このプレートを、約10分間、30℃でプレインキュベートし、そして、10μlの酵素を加えることにより、反応を開始した(最終濃度60nM)。開始反応速度を、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーを15分のタイムコースにわたって使用して、決定した。Kデータを、プリズムソフトウェアパッケージ(GraphPad Prism version 3.0a for Macintosh,GraphPad Software,San Diego California,USA)を使用して、非線形回帰分析から計算した。
【0245】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物番号は、ZAP−70を阻害することが見出された。本明細書中で記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0246】
(実施例15:FLT−3阻害アッセイ)
化合物を、放射分析フィルター結合アッセイを用いて、FLT−3活性を阻害する能力についてスクリーニングした。このアッセイは、基質ポリ(Glu、Tyr)4:1(pE4Y)への33Pの取り込みをモニターする。反応を、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTT、0.01% BSAおよび2.5% DMSOを含有する溶液中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、90μM ATPおよび0.5mg/ml pE4Y(両方ともSigma Chemicals,St Louis,MO製)であった。本発明の化合物の最終濃度は、一般的に0.01μMと5μMとの間である。代表的には、試験化合物の10mMのDMSOストックから段階希釈物を調製することにより、12点の滴定を行った。反応を室温で行った。
【0247】
2つのアッセイ溶液を調製した。溶液1は、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、1mg/ml pE4Y、および180μM ATP(各反応に対して、0.3μCiの[γ−33P]ATPを含有する)を含有する。溶液2は、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、25mM NaCl、2mM DTT、0.02% BSAおよび3nM FLT−3を含有する。このアッセイを、溶液1の各々50μlおよび本発明の化合物の2.5mlを混合することにより、96ウェルプレート上で行った。この反応を溶液2を用いて開始した。室温での20分間のインキュベーションの後、この反応を0.4mMのATPを含有する20% TCA50μlを用いて止めた。次いで、この反応容積の全てを、TOMTEC(Hamden,CT)製のHarvester 9600によってフィルタープレートに移し、そして5%TCAで洗浄した。33PのpE4yへの取り込み量を、Packard Top Count Microplate Scintillation Counter(Meriden,CT)により分析した。このデータを、プリズムソフトウェアを用いてフィットさせ、IC50またはKを得た。
【0248】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号と対応している。そして、これらの化合物は、FLT−3を阻害することが見出された。本明細書中に記載された特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0249】
(実施例16:JAK−3阻害アッセイ)
本発明の化合物を、以下の様式で、G.R.Brownら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2000,10,575〜579により記載された方法を用いて、JAK活性を阻害する能力についてスクリーニングした。4℃でポリ(Glu、Ala、Tyr)6:3:1で予めコーティングし、次いで、0.05%のリン酸緩衝化生理食塩水およびTween(PBST)を用いて洗浄したMaxisorbプレート中に、DMSO中の2μMのATP、5mM MgCl、および本発明の化合物溶液を添加した。この反応を、JAK酵素を用いて開始し、そしてこのプレートを、60分間、30℃でインキュベートした。次いで、このプレートを、PBSTで洗浄し、HRP結合体化4G10抗体100μlを添加し、そしてこのプレートを90分間、30℃でインキュベートした。このプレートを、再度PBSTで洗浄し、100μlのTMB溶液を添加し、そしてこのプレートをさらに30分間、30℃でインキュベートした。硫酸(1M溶液の100μl)を添加して反応を停止し、そしてこのプレートを450nmにて読み取り、分析のための光学密度を得、IC50値およびK値を決定した。
【0250】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物は、JAK−3を阻害することが見出された。本明細書中に記載される特定の化合物は、1.0μモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0251】
(実施例17:p70S6K阻害アッセイ)
化合物を、放射活性リン酸取り込みアッセイを用いて、Upstate Biotechnologyにおいてp70S6Kを阻害する能力についてスクリーニングした(PittおよびLee、J.Biomol.Screen.1996,1,47)。このアッセイを、8mM MOPS(pH7.0)、10mM 酢酸マグネシウム、0.2mM EDTAの混合物中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、15μM ATP(Sigma Chemicals)および100μMのペプチド(Upstate Ltd.,Dundee,UK)であった。アッセイを、30℃で、そしてp70S6K(5〜10mU、Upstate Ltd.、Dundee,UK)および[γ−33P]ATP(特定の活性は、約500cpm/pmol,Amersham Pharmacia Biotech,Amersham,UK)の存在下で行った。上で列挙した全ての試薬(ATPを除く)および本発明の試験化合物を含有するアッセイストック緩衝溶液を、調製した。15μlのストック溶液を96ウェルプレート中に入れ、続いて、本発明の試験化合物を含有する40μMまたは8μMのDMSOストック1μlを二連で加えた(最終化合物濃度はそれぞれ2μMまたは0.4μMであって、最終DMSO濃度は5%であった)。このプレートを、約10分間、30℃でプレインキュベートし、そして反応を4μlのATP(最終濃度15μM)を加えることにより開始した。
【0252】
この反応を、3%のリン酸溶液5μlの添加により、10分後に停止した。ホスホセルロース96ウェルプレート(Millipore,Cat No.MAPHNOB50)を、この反応混合物(20μl)の添加の前に、100mMのリン酸、0.01%のTween−20の100μlで前処理した。このスポットを、洗浄工程(4×200μlの100mMリン酸、0.01% Tween−20)の前に、少なくとも5分間、浸したままにした。乾燥後、20μlの最適段階「SuperMix」液体シンチレーションカクテル(Perkin Elmer)を、シンチレーション計測(1450 Microbeta Liquid Scinillation Counter,Wallac)の前に、このウェルに添加した。
【0253】
本発明の化合物の百分率阻害(2μMおよび0.4μMで)を、p70S6K活性を試験化合物を含まないアッセイ混合物とDMSOとを含有する標準ウェルと比較することにより計算した。標準ウェルに対して高い阻害を示す本発明の化合物を滴定し、IC50値を決定した。
【0254】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物番号は、p70S6Kを阻害することが見出された。本明細書中に記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することが示された。
【0255】
(実施例18:TAK−1阻害アッセイ)
化合物を、放射測定フィルター結合アッセイを用いて、TAK1Aキナーゼ活性を阻害する能力についてスクリーニングした。反応を、緩衝液A(100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl)、25mM NaCl、2mM DTT、および1.5% DMSOを含有する溶液中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、50μM ATP(50Ci/molの最終固有活性に関して、非標識ATP(Sigma Chemicals,St Louis,MO)および33P−標識ATP(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA))および12μMのウシミエリン塩基性タンパク質(MBP,Vertex Phasrmaceuteicals,Cambridge,MA)であった。反応を、20nMのTAK1A−TAB融合タンパク質を用いて、周囲の温度(約20℃)で行った。これらの条件下で、反応の程度は、2時間の期間の間は、時間と比例している。
【0256】
本発明の試験化合物(DMSO中に1μL)を、96ウェル中で、ATPおよび緩衝液A(最終容積47μl)と組み合わせた。代表的には、(10mMの化合物ストックからの)段階希釈物を、DMSOを用いて娘プレート中の本発明の試験化合物が最終濃度が0.046μM〜3.73μMの範囲になるように調製することにより、6点での滴定を行った。この反応を、TAK1A−TAB融合物(Biochem.Biophys.Res.Comm.2002,297,1277〜1281において、Sugita,T.らにより記載される)、MBP、緩衝液A、NaCl、およびDTTからなる酵素ストック溶液20μlの添加により開始した。この反応を、2時間、周囲温度で進行させ、次いで、10%トリクロロ酢酸中の等量の10mM 非標識ATPでクエンチした。このクエンチした反応の110μLのアリコートを、Multiscreen PHフィルタープレート(Millipore,Billerica,MA)に移し、そして周囲温度で一晩インキュベートした(代表的には16時間〜20時間)。インキュベーションに続き、このフィルタープレートを、改変Biotek Elx405プレート洗浄機を用いて、5%のトリクロロ酢酸3×150μLのアリコートで洗浄した。Microscint 20シンチレーション流体(PerkinElmer)の70μLのアリコートを、各ウェルに加え、次いで、このプレートをシールし、そしてTopCount NXTマイクロプレートシンチレーションカウンター(PerkinElmer)において読み取った。このK値を、阻害剤の濃度の関数として、上記速度データから決定した。
【0257】
これらの化合物番号は、表1の化合物番号に対応している。そして、これらの化合物は、TAK−1を阻害することが見出された。本明細書中に記載される特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のK値を有することが見出された。
【0258】
(実施例19:IRAK−4阻害アッセイ)
化合物を、標準共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.1998 7,2249)を用いて、IRAK−4を阻害する能力についてスクリーニングした。アッセイを、溶液(100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl)、25mM NaCl、2mM DTT、および2.5% DMSO)を含有する溶液中で行った。このアッセイにおける最終基質濃度は、600μM ATP(Sigma Chemicals,St Louis,MO)および300μMカスタムペプチド基質(HMRSAMSGLHLVKRR(American Peptide,Sunnyvale,CA))であった。このアッセイにおける最終酵素濃度は、30nMのIRAK−4であった。共役酵素系の成分の最終濃度は、2.5mMのホスホエノールピルビン酸、300μM NADH、30μg/mlのピルビン酸キナーゼ、および10μg/mlの乳酸デヒドロゲナーゼであった。アッセイを30℃で行った。
【0259】
2種のアッセイ溶液を調製した。溶液1は、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、28mM NaCl、2.8mM ホスホエノールピルビン酸、335μM NADH、335μM ペプチド、および670μM ATPを含有する。溶液2は、100mM HEPES(pH7.5)、10mM MgCl、335μg/ml ピルビン酸キナーゼ、112μg/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、22mM DTT、および335nMのIRAK−4を含有する。溶液1の60μlを、384ウェルプレート中に入れ、そしてこのプレートを、約15分間、30℃でプレインキュベートした。この反応を、DMSO中に溶解した667μMの本発明の化合物を含有する溶液(最終化合物濃度は10μM)1μlおよび溶液2の6μlの添加により開始した。反応速度を、340nmでの吸光度での変化を、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーを用いて、6分間の読み取り時間にわたって、30℃でモニターすることにより得た。50%より大きい阻害を示す化合物を、更なる試験に対して選択した。これらの選択された化合物を、10mMのDMSOストックバイアルから調製した段階希釈物を用いて、再度アッセイした。これらの滴定物の濃度は、代表的には、3nM〜30μMの範囲であった。このデータを、Prismソフトウェアを用いてフィットさせ、IC50を得た。
【0260】
これらの化合物番号は、表1における化合物番号に対応している。そして、これらの化合物は、IRAK−4を阻害することが見出された。本明細書中に記載の特定の化合物は、1.0マイクロモル濃度(μM)未満のKを有することを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

に記載の化合物あるいはその薬学的に受容可能な誘導体またはそれらの混合物であって、ここで:
は、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyであり;
Lは、−S−、−O−、−N(R)−、または、C1〜6アルキリデン鎖であり、Lの2個までの非隣接メチレン単位が、−S−、−O−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(S)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(S)N(R)−、−N(R)CO−、−C(O)−、−CO−、−C(O)N(R)−、−C(S)N(R)−、−OC(O)N(R)−、−SO−、−SON(R)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−C(R)=NN(R)−、−C(R)=N−O(R)−、−C(O)C(O)−、または−C(O)CHC(O)−により必要に応じてかつ独立して置換され;
mは、0または1であり;
Arは、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜5個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員〜7員の単環式環または8員〜10員の二環式環であり;
Cyは、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する必要に応じて置換された3員〜7員の、飽和もしくは部分的に不飽和な単環式環であるか、または、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される、0個〜5個のヘテロ原子を有する8員〜10員の、飽和もしくは部分的に不飽和な二環式環であり、ここで;
ArおよびCyは、5個までのZ−Rの存在で各々必要に応じて置換され;ここで、Zの各存在は、独立して、結合またはC1〜6アルキリデン鎖であり、ここで、Zの2個までの非隣接メチレン単位は、−S−、−O−、−N(R)−、−N(R)C(O)−、−N(R)C(S)−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)C(S)N(R)−、−N(R)CO−、−C(O)−、−CO−、−C(O)N(R)−、−C(S)N(R)−、−OC(O)N(R)−、−SO−、−SON(R)−、−N(R)SO−、−N(R)SON(R)−、−C(R)=NN(R)−、−C(R)=N−O(R)−、−C(O)C(O)−、または−C(O)CHC(O)−により必要に応じて置換され;
の各存在は、独立して、−R’、ハロゲン、NO、CN、−OR’、−SR’、−N(R’)、−N(R’)C(O)R’、−N(R’)C(S)R’、−N(R’)C(O)N(R’)、−N(R’)C(S)N(R’)、−N(R’)COR’、−C(O)R’、−C(S)R’、−COR’、−OC(O)R’、−C(O)N(R’)、−C(S)N(R’)、−OC(O)N(R’)、−S(O)R’、−SOR’、−S(O)R’、−SON(R’)、−N(R’)SOR’、−N(R’)SON(R’)、−C(O)C(O)R’、−C(O)CHC(O)R’、−NR’NR’C(O)R’、−NR’NR’C(O)N(R’)、−NR’NR’COR’、−C(O)N(OR’)R’、−C(NOR’)R’、−S(O)R、−N(OR’)R’、−C(=NH)−N(R’);または−(CH0〜2NHC(O)R’より選択され;ここで
Rの各存在は、独立して、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であり、
R’の各存在は、独立して、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、必要に応じて置換されたC6〜10アリール環、5個〜10個の環原子を有する必要に応じて置換されたヘテロアリール環、もしくは、3個〜10個の環原子を有する必要に応じて置換されたヘテロシクリル環であるか;あるいは
RおよびR’、または、RもしくはR’のいずれかの2個の存在は、これらが結合する原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される0個〜4個のヘテロ原子を有する必要に応じて置換された5員〜8員の、飽和もしくは部分的に不飽和なアリール環を形成するか;あるいは
同一の窒素上のR’またはRのいずれかの2個の存在は、これらが結合する窒素原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄より独立して選択される1個〜4個のヘテロ原子を有する必要に応じて置換された5員〜8員の、飽和もしくは部分的に不飽和なアリール環を形成し;
は、水素、CN、−SR、−OR、−COR、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R)、−N(R)、−N(R)C(O)R、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基であり;
Tは、窒素またはCRより選択され;
T、A、A、またはAのわずか2個のみが、窒素であるという条件で、A、A、およびAの各々は、独立して、窒素またはCRであり;
は、水素、ハロゲン、NO、CN、−SR、−OR、−N(R)、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基より選択され;そして
は、ハロゲン、NO、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyであるか;あるいは
隣接原子上の2個のR基は、一緒になって、酸素、硫黄、もしくは窒素より独立して選択される0個〜3個のヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された5員〜7員の、部分的に不飽和または完全に不飽和な環を形成し、ここで;
一緒になった隣接原子上の2個のR基により形成された各環は、4個までのZ−Rの存在で必要に応じて置換され;
ただし:
a)Tが、RがHであるCRであり、AおよびAが、両方とも、RがHであるCRであり、Rが、Hであり、そしてRが、−(L)Arであり、mが、0であり、そしてArが、フェニル、4−OHフェニル、3−NOフェニル、4−OMeフェニル、4−Meフェニル、または1,2エチレンジオキシフェニルである場合;
i)Aは、RがH、Cl、F、Br、NO、またはMeであるCRではなく;
b)Rが、−(L)Arであり、mが、0であり、そしてArが、フェニル、4−OMeフェニル、3,4−ジOMeフェニル、または4−Clフェニルである場合;
i)Rが、Hである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ii)RがHである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがBrであるCRではなく、そしてAは、RがMeであるCRではなく;
iii)Rが、Hである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRであり、そしてRがMeである場合、A、A、Aは、各RがHであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRであり、そしてRがHである場合、A、A、Aは、各RがHであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって縮合型ベンゾ環を形成するCRではなく;
c)RおよびRが、Hである場合;
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがCl、NO、またはMeであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、Et、OH、OEt、OMe、またはClであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがEt、OH、OEt、OMeであるCRではなく、そしてAは、RがNOであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、Et、OH、OEt、またはOMeであるCRではなく、そしてAは、RがNH、−N(CHN(n−Pr)、−N(CHN(Et)、−N(CHN(Et)、−N(CHNH、−N(CHN(n−Pr)、または−N(CHN(Et)であるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、かつAが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって、縮合型ベンゾ環または縮合型シクロヘキシル環を形成するCRではなく;
d)Rが、3,6−ジメチルベンゾフラン−2−イルまたはベンゾフラン−2−イルであり、そしてRが、Hである場合;
i)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeまたはHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
e)Rが、Meであり、そしてRが、Hである場合;
i)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iii)AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Tは、RがOMeであるCRではなく、そしてAは、RがOMeであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、RがOMeであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、Aは、RがOMeであるCRではなく、そしてAは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく、そしてAは、RがOHであるCRではなく;
vii)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、AおよびAは、各RがHであるCRではなく;
viii)Aが、RがOHであるCRではない場合であり、TがHである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
ix)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が、一緒になって、縮合型ベンゾ環または縮合型フラニル−2−カルボン酸メチルエステルを形成するCRではなく;
f)RがMeであり、Rが、Hである場合;
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeまたはClであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、各RがClであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
v)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
g)RおよびRが、同時にMeである場合:
i)Tは、RがHであるCRではなく、そしてA、A、およびAは、各RがHであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMe、ClまたはSOHであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、各RがMeであるCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
v)A、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Tは、RがMeであるCRではなく;
vi)Tが、RがMeであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
h)Tが、RがHであるCRであり、そしてA、A、およびAが、各RがHであるCRである場合;
i)Rは、アセチルでも、プロピオニルでも、ブチリルでも、sec−ブチリルでもなく;
j)Rが、MeまたはEtであり、そしてRが、アセチルまたはプロピオニルである場合;
i)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、RがMeであるCRではなく;
ii)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
iii)Tが、RがHであるCRである場合であり、Aが、RがHであるCRである場合、AおよびAは、両方のR基が一緒になって、縮合型ベンゾ環を形成するCRではなく;
iv)Tが、RがHであるCRである場合であり、AおよびAが、各RがHであるCRである場合、Aは、RがMeであるCRではなく;
k)Rが、H、SH、OH、−OR、N(R)であり、そしてTが、RがH、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基、OH、NH、SH、OR、ハロゲン、またはN(R)であるCRであり、そしてA、A、およびAが、Rが水素、ハロゲン、または、mが1であり、Lが−S−、−O−、−N(R)−であり、そしてRがHもしくは必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、−(L)RであるCRである場合、Rは、以下:
i)mが0であり、そしてRが必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である−(L)R;でも
ii)mが、1であり、そしてLが、−S−、−O−、−N(R)−であり、そしてRが、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である−(L)R、のいずれでもなく;
l)AおよびAが、両方のR基が一緒になって縮合型ベンゾ環を形成するCRである場合であり、Tが、RがHであるCRである場合、Rは、以下:
i)p−クロロスチリルでも、スチリルでも、p−メチルスチリルでも、p−メトキシスチリルでもなく;
但しまた、以下の化合物:
6−クロロ−2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−クロメン−4−オンオキシム、
3−アセチル−5−クロロ−2,6−ジメチル−クロメン−4−オンオキシム、
2,3−ジヒドロ−1,5−ジオキサ−シクロペンタ[b]ナフタレン−8−オンオキシム、
4,9−ジメトキシ−7−メチル−フロ[3,2−g]クロメン−5−オンオキシム、
4,7,9−トリメチル−フロ[3,2−g]クロメン−5−オンオキシム、
5,6,7,8−テトラフルオロ−4−ヒドロキシイミノ−2−メチル−4H−クロメン−3−カルボン酸エチルエステル、
ニコチン酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
安息香酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
4−ベンジルオキシ−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
酢酸5−ヒドロキシイミノ−9−メトキシ−7−メチル−5H−フロ[3,2,g]クロメン−4−イルエステル、
4−ヒドロキシ−9−メトキシ−7−メチル−フロ[3,2,g]クロメン−5−オンオキシム、
2−(3,4−ジヒドロキシ−フェニル)−5,7−ジヒドロキシ−クロメン−4−オンオキシム、
6−[4−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−フェノキシ]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
8−(4−アセチル−フェノキシ)−5,7−ジヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
6−(4−アセチル−フェノキシ)−5,7−ジヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
2−(2,6−ジメトキシ−フェニル)−5,6−ジメトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
2−(2,4−ジメトキシ−フェニル)−7−メトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
6−クロロ−3−エチル−2−メチル−クロメン−4−オキシム、
(4−ヒドロキシイミノ−4H−クロメン−3−イル)−酢酸、
3−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−2,6−ジメチル−クロメン−4−オンオキシム、
酢酸3,7−ジアセトキシ2−(4−アセトキシ−フェニル)−4−ヒドロキシイミノ−4H−クロメン−5−イルエステル、
2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−3,5,7−トリメトキシ−クロメン−4−オンオキシム、
3,5,7−トリメトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−クロメン−4−オンオキシム、
8−[4−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−フェノキシ]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシフェニル)クロメン−4−オンオキシム、
8−[5−(1−ヒドロキシイミノ−エチル)−2−メトキシ−フェニル]−5,7−ジメトキシ−2−(4−メトキシ−フェニル)クロメン−4−オンオキシム、
4−ヒドロキシイミノ−7−メトキシ−4H−クロメン−3−イル)−酢酸
、も除外される;
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、−(L)Arであり、そしてArは、以下の基:
【化2】

【化3】

の1個より選択される、化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、ここで、Arは、以下の基:
【化4】

の1個より選択される、化合物。
【請求項4】
請求項2に記載の化合物であって、ここで、Rは、−(L)−Arであり、mは、1であり、そして、化合物は、式IA−1:
【化5】

を有する、化合物。
【請求項5】
請求項2に記載の化合物であって、ここで、Arは、ZRの0個〜5個の存在を有するフェニルであり、そして、化合物は、式IA−1−5:
【化6】

を有する、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、−(L)−Cyであり、そして化合物は、式IA−2:
【化7】

を有する、化合物。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物であって、ここで、Cyは、以下の基:
【化8】

より選択される、化合物。
【請求項8】
請求項2に記載の化合物であって、ここで、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCS、NRCONR、NRCSNR、NRCO、CO、CO、CONR、CSNR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)またはC(O)CHC(O)で置換される、化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、ここで、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、CO、CONR、SONR、NRSOで置換される、化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、−(L)Rであり、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONRで置換され、そして、Rは、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、水素、CN、−OR、−COR、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R)、−N(R)、−N(R)C(O)R、または、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、化合物。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物であって、ここで、Rは、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物であって、ここで、Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルである、化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、水素であり、そして、化合物は、式IB:
【化9】

を有する、化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Tは、CRであり、そしてRは、水素、ハロゲン、CN、または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族基である、化合物。
【請求項16】
請求項15に記載の化合物であって、ここで、Rは、水素、ハロゲン、CF、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルである、化合物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Tは、CRであり、Rは、水素であり、そして化合物は、式IC:
【化10】

を有する、化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである、化合物。
【請求項19】
請求項18に記載の化合物であって、ここで、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、またはC(O)CHC(O)で置換されている、化合物。
【請求項20】
請求項18に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、ハロゲン、CN、またはRである、化合物。
【請求項21】
請求項18に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして化合物は、式ID−1:
【化11】

を有する、化合物。
【請求項22】
請求項18に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして、化合物は、式ID−2:
【化12】

を有する、化合物。
【請求項23】
請求項18に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして、化合物は、式ID−3:
【化13】

を有する、化合物。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、そして、Rは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである、化合物。
【請求項25】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)、または、C(O)CHC(O)で置換されている、化合物。
【請求項26】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、そして、Rは、ハロゲンまたはRである、化合物。
【請求項27】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、そして、Rは、−(L)Rであり、ここで、Lは、−O−または−N(R)−である、化合物。
【請求項28】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、mは、0であり、そして、Cyは、2−2、2−5、2−6、2−7、2−8、または2−12である、化合物。
【請求項29】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、mは、0であり、そして、Arは、1−5、1−6、1−11、1−12、1−13、1−19、1−24または1−25である、化合物。
【請求項30】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして、化合物は、式IE−1:
【化14】

を有する、化合物。
【請求項31】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして、化合物は、式IE−2:
【化15】

を有する、化合物。
【請求項32】
請求項24に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして、化合物は、式IE−3:
【化16】

を有する、化合物。
【請求項33】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、そしてRは、ハロゲン、CN、−(L)R、−(L)Ar、または−(L)Cyである、化合物。
【請求項34】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Lは、必要に応じて置換されたC1〜6の直鎖または分枝鎖のアルキリデン鎖であり、ここで、Lの1個のメチレン単位は、必要に応じて、O、NR、NRCO、NRCONR、NRCO、CO、CO、CONR、OC(O)NR、SO、SONR、NRSO、NRSONR、C(O)C(O)またはC(O)CHC(O)で置換される、化合物。
【請求項35】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、ハロゲンまたはRである、化合物。
【請求項36】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、そして、Rは、−(L)Rであり、ここで、Lは、−O−または−N(R)−である、化合物。
【請求項37】
請求項33に記載の化合物であって、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、mは、0であり、そして、Cyは、2−2、2−5、2−6、2−7、2−8、または2−12である、化合物。
【請求項38】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、mは、0であり、そして、Arは、1−5、1−6、1−11、1−12、1−13、1−19、1−24または1−25である、化合物。
【請求項39】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Rであり、そして、化合物は、式IF−1:
【化17】

を有する、化合物。
【請求項40】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Arであり、そして、化合物は、式IF−2:
【化18】

を有する、化合物。
【請求項41】
請求項33に記載の化合物であって、ここで、Aは、CRであり、Rは、−(L)Cyであり、そして、化合物は、式IF−3:
【化19】

を有する、化合物。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、xは、0〜5であり、そして、ArおよびCyは、独立してZRの0個〜5個の存在で置換されている、化合物。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Tは、CRであり、A、AおよびAは、各々CRであり、そして化合物は、式IG−1:
【化20】

を有する、化合物。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、xは0であり、そして、Arは、非置換である、化合物。
【請求項45】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、各ZRは、独立してハロゲン、NO、CN、または、C1〜4アルキル、アリール、アラルキル、−N(R’)、−CHN(R’)、−OR’、−CHOR’、−SR’、−CHSR’、−COOR’、もしくは−S(O)N(R’)より選択される必要に応じて置換された基である、化合物。
【請求項46】
請求項1に記載の化合物であって、以下の化合物:
【化21】

【化22】

【化23】

の一つより選択される、化合物。
【請求項47】
請求項1に記載の有効量の化合物、および薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントまたはビヒクルを含有する、組成物。
【請求項48】
請求項47に記載の組成物であって、ここで、前記化合物は、CDK−2プロテインキナーゼ活性、cMETプロテインキナーゼ活性、FLT−3プロテインキナーゼ活性、JAK−3プロテインキナーゼ活性、GSK−3プロテインキナーゼ活性、IRAK−4プロテインキナーゼ活性、SYKプロテインキナーゼ活性、p70S6Kプロテインキナーゼ活性、TAK−1プロテインキナーゼ活性、またはZAP−70プロテインキナーゼ活性を、検出可能に阻害する量である、組成物。
【請求項49】
請求項47に記載の組成物であって、化学療法剤もしくは抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管疾患を処置するための薬剤、破壊性骨障害を処置するための薬剤、肝疾患を処置するための薬剤、抗ウイルス剤、血液障害を処置するための薬剤、糖尿病を処置するための薬剤、または免疫不全障害を処置するための薬剤より選択される治療用薬剤をさらに含有する、組成物。
【請求項50】
(a)患者;または
(b)生物学的サンプル;における、CDK−2キナーゼ活性、cMETキナーゼ活性、FLT−3キナーゼ活性、JAK−3キナーゼ活性、GSK−3キナーゼ活性、IRAK−4キナーゼ活性、SYKキナーゼ活性、p70S6Kキナーゼ活性、TAK−1キナーゼ活性、またはZAP−70キナーゼ活性を阻害する方法であって、該方法は、
(a)請求項47に記載の組成物;または
(b)請求項1に記載の化合物、
を、該患者に投与する工程、または、該生物学的サンプルを、これらと接触させる工程を包含する、方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、ここで、該方法は、CDK−2活性、cMET活性、FLT−3活性、JAK−3活性、GSK−3活性、IRAK−4活性、SYK活性、p70S6K活性、TAK−1活性、またはZAP−70活性を阻害する工程を包含する、方法。
【請求項52】
癌、増殖性障害、心臓性障害、神経変性障害、自己免疫障害、器官移植に関連する状態、炎症性障害、免疫学的に媒介された障害、ウイルス性疾患、または骨障害より選択される疾患の状態を処置するか、またはこれらの疾患の状態の重篤度を軽減する方法であって、
(a)請求項47に記載の組成物;または
(b)請求項1に記載の化合物、
を患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項53】
請求項52に記載の方法であって、該方法は、化学療法剤もしくは抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、心臓血管性疾患を処置するための薬剤、破壊性骨障害を処置するための薬剤、肝疾患を処置するための薬剤、抗ウイルス剤、血液障害を処置するための薬剤、糖尿病を処置するための薬剤、または免疫不全障害を処置するための薬剤より選択される、さらなる治療薬剤を前記患者に投与する、さらなる工程を包含する、方法であって、ここで:
該さらなる治療剤は、処置される疾患に対して適切であり;そして
該さらなる治療剤は、単回投薬形態として前記組成物と一緒に投与されるか、または
複数回投薬形態の一部として該組成物とは別に投与される、方法。
【請求項54】
請求項52に記載の方法であって、ここで、前記疾患は、癌、アルツハイマー病、再狭窄、新脈管形成、糸球体腎炎、サイトメガロウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、乾癬、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、敗血症、脱毛症、慢性関節リウマチ、糖尿病、双極性障害、神経変性疾患および神経疾患、心筋細胞の肥大、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝性疾患、心臓血管性疾患、糖尿病、ハンチントン病、パーキンソン病、エイズ関連性痴呆、多発性硬化症(MS)、精神分裂病、再灌流/虚血、発作、禿頭症、急性骨髄性白血病(AML、ルー・ゲーリグ病、急性リンパ性白血病(ALL)、肥満細胞症および消化管間質腫瘍(GIST)、造血障害、特に、急性前骨髄球性白血病(APL)、骨粗しょう症、B型肝炎ウイルス、増殖性疾患および過増殖性疾患、移植器官および移植組織の拒絶ならびに後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む免疫学的に媒介された疾患、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息のような喘息、特に慢性もしくは難治性喘息(例えば、後期喘息の気道過応答)および気管支炎のような可逆性閉塞性気道疾患、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、萎縮性鼻炎、ならびに乾酪性鼻炎、肥厚性鼻炎、化膿性鼻炎、乾性鼻炎および薬物性鼻炎を含む慢性鼻炎、クレープ性鼻炎、フィブリン性鼻炎および偽膜性鼻炎を含む膜性鼻炎ならびに腺病性鼻炎、神経性鼻炎(枯草熱)を含む季節性鼻炎ならびに血管運動性鼻炎を含む鼻粘膜の炎症、サルコイドーシス、農夫肺および関連疾患、肺線維症、ならびに特発性間質性肺炎によって特徴付けられる、可逆性閉塞性気道疾患、である方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、ここで、前記疾患は、癌、糖尿病、喘息、アルツハイマー病、骨粗しょう症、移植拒絶、発作、慢性関節リウマチ、精神分裂病、神経疾患もしくは神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリグ病)、または多発性硬化症(MS)である、方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法であって、前記癌は、腎臓癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、卵巣癌、もしくは肺癌、または、特定のB細胞白血病もしくはB細胞リンパ腫より選択される、方法。
【請求項57】
発作を処置するか、または発作の重篤度を軽減するための方法であって、ここで、該方法は、有効量の請求項47に記載の組成物を該方法を必要とする該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項58】
患者におけるTauタンパク質のリン酸化を阻害する方法であって、ここで、該方法は、有効量の請求項47に記載の組成物を該方法を必要とする該患者に投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2006−522124(P2006−522124A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509283(P2006−509283)
【出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/009145
【国際公開番号】WO2004/092154
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
Macintosh
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】