説明

プロテインキナーゼ阻害剤およびその使用法

本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用な化合物およびその医薬組成物、ならびに異常なもしくは無秩序なキナーゼ活性と関連する状態を処置、改善もしくは予防するために、該化合物を使用する方法を提供する。ある態様において、本発明は、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-Raf、C-Src、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼの異常な活性を含む疾患もしくは障害を処置、改善もしくは予防するために、該化合物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月21日に出願した米国仮出願番号60/945,410の利益を主張し、その全体を引用により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤および該化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
プロテインキナーゼは、非常に多くのファミリーメンバーを含み、さまざまな細胞機能の制御において中心的な役割を果たしている。これらのキナーゼの部分的な一覧は、受容体型チロシンキナーゼ、例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、神経成長因子受容体TrkB、C-Met、および線維芽細胞成長因子受容体(FGFR-3); 非受容体型チロシンキナーゼ、例えば、Ablおよび対応する融合キナーゼBcr-Abl、Lck、Csk、Fes、BmxおよびSrc; ならびにセリン/スレオニンキナーゼ、例えば、B-Raf、C-Raf、Syk、MAPキナーゼ(例えば、MKK4、MKK6、など)ならびにSAPK2α、SAPK2βおよびSAPK3を含むが、これらに限定されない。異常なキナーゼ活性は、良性および悪性増殖性障害、ならびに免疫および神経系の不適切な活性化から生じる疾患を含む多くの疾患状態で観察される。したがって、これらのキナーゼの阻害は、複数の治療適応を有するであろう。
【発明の概要】
【0004】
発明の開示
本発明は、化合物およびその医薬組成物を提供し、それは、プロテインキナーゼ阻害剤として有用であり得る。
【0005】
1つの局面において、本発明は、式(1):
【化1】

[式中、
Aは、
【化2】

またはN、OもしくはSを含む、所望により置換されていてもよい5-6員ヘテロ環式環であり;
環Bは、フェニルまたはN、OもしくはSを含む5-6員ヘテロ環式環であり;
Lは、NRCO、CONR、NRCONR、NRSO2、SO2NRまたはO(CR2)qであり;
X1、X2およびX3は、独立して、NまたはCRであり;
Yは、O、SまたはNRであり;
Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5は、独立して、ハロ、O(CR2)qR4、シアノ、(CR2)pR5、CONR6R7、CO2(CR2)qR4、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4、NR8CONR6R7; または所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであるか; または
Z1、Z3およびZ5は、独立してHであり; あるいは
Z1およびZ2、Z2およびZ3、Z3およびZ4、またはZ4およびZ5は、5-7員環を形成し;
Rは、HまたはC1-6 アルキルであり;
R1は、H、ハロ、C1-6 アルコキシ、O(CR2)qR5、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R2は、ハロ; ヒドロキシ; または所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキルまたはC1-6 アルコキシであり;
R3は、ハロ; 所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキルまたはC1-6 アルコキシ; O(CR2)qR4、(CR2)pR5、 NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R4およびR5は、独立して、所望により置換されていてもよいC3-7 シクロアルキル、5-7員アリール、ヘテロ環式もしくはヘテロアリールであるか; またはR4は、Hであり;
R6およびR7は、独立して、H; 所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニル; C1-6 アルカノール、(CR2)pO(CR2)qR4または(CR2)p-R5であり; またはR6およびR7は、NR6R7におけるNと共に、所望により置換されていてもよい環を形成し得て;
R8は、HまたはC1-6 アルキルであり;
mは、1-4であり; そして
n、pおよびqは、独立して、0-4である]
で示される化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその互変異性体を提供する。
【0006】
式(1)のある態様において、Lが、NRCO、CONRまたはO(CR2)qである。他の例では、Aが、
【化3】

であり、
Lが、O(CR2)qであり; そして
Bが、Nを含む5もしくは6員ヘテロ環式環である。
【0007】
1つの態様において、本発明の化合物は、式(2):
【化4】

[式中、
Lが、NRCOまたはCONRであり; そして
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される。
【0008】
上記式(2)において、nが、1-2であり得る。ある例において、R3が、CF3または(CR2)pR5であり、ここで、R5は、所望により置換されていてもよいピペリジニルであり得る。
【0009】
他の態様において、本発明の化合物は、式(3):
【化5】

[式中、
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される。
【0010】
式(3)のある例において、Z1、Z2およびZ5が、独立して、ハロ、O(CR2)qR4、または所望によりハロゲン化されていてもよいC1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであり; Z3が、Hであり; そしてZ4が、シアノ、O(CR2)qR4、(CR2)pR5、CONR6R7またはCO2(CR2)qR4である。他の例では、Z1およびZ2が、独立して、ハロ、O(CR2)qR4、または所望によりハロゲン化されていてもよいC1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであり; Z3およびZ5が、独立して、Hであり; そしてZ4が、シアノ、O(CR2)qR4、(CR2)pR5、CONR6R7またはCO2(CR2)qR4である。あるいは、Z4およびZ5が、N、OまたはSを含む5-7員アリールもしくはヘテロアリールを形成していてもよい。
【0011】
上記式(1)、(2)、および(3)において、X1、X2およびX3は、各々CHであり得る。ある例では、Rは、Hである。
【0012】
上記式(1)、(2)および(3)において、適当な置換基は、当業者に既知であり、例えば、ハロ、所望によりハロゲン化されていてもよいC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、C2-6 アルキニル、シアノ、ニトロまたは(CR2)pR9であり; ここで、R9が、O(CR2)qR10、S(CR2)qR10、(CR2)pCO1-2R10、CONR10(CR2)qR10、SO2NR10(CR2)qR10もしくはNR10(CR2)qR10またはR10であり; R10が、H、所望によりハロゲン化されていてもよいC1-6 アルキル、または所望に置換されていてもよいC3-7 シクロアルキル、5-7員アリール、ヘテロ環式もしくはヘテロアリールであるものを含むが、これらに限定されない。
【0013】
他の局面において、本発明は、式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、プロテインキナーゼを調節するための方法を提供し、それは、系もしくはそれを必要とする対象に治療上有効量の式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物、または薬学的に許容されるその塩またはその医薬組成物を投与し、それにより該プロテインキナーゼを調節することを含む。
【0015】
本発明の化合物を用いて調節され得るプロテインキナーゼの例は、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-RAF、C-SRC、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼを含むが、これらに限定されない。より特には、式(1)、(2)もしくは(3)の化合物を、B-Raf、Bcr-AblもしくはFGFR3またはその組み合わせを阻害するために使用し得る。
【0016】
また他の局面では、本発明は、プロテインキナーゼが介在する状態、例えば、B-Raf、Bcr-AblもしくはFGFR3仲介状態を改善する方法を提供し、系もしくはそのような処置を必要とする対象に、有効量の式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその医薬組成物を、所望により、第2治療剤と組み合わせて投与し、それにより該状態を処置することを含む。例えば、本発明の化合物は、所望により、化学療法剤と共に、黒色腫、白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、膠芽細胞腫、膀胱癌、リンパ腫、骨肉腫、または乳癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、卵巣癌、膵臓癌、神経の癌、肺癌、子宮癌もしくは消化器癌を含むがこれらに限定されない、細胞増殖性障害を処置するために使用され得る。本発明の化合物はまた、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症、乾癬、若年型糖尿病、シェーグレン症候群、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、セリアック疾患または重症筋無力症を含むがこれらに限定されない、自己免疫性障害を処置するために使用され得る。
【0017】
本発明の化合物を使用するための上記方法において、式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物は、細胞または組織を含む系に投与され得る。他の態様において、式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物は、ヒトもしくは動物対象に投与され得る。
【0018】
本発明はまた、細胞増殖性障害もしくは自己免疫性障害の処置用医薬の製造における、式(1)、(2)もしくは(3)の化合物の使用を提供する。
【0019】
定義
“アルキル”は、部分および他の基、例えば、ハロ-置換-アルキルおよびアルコキシの構造要素としての部分を意味し、直鎖または分岐鎖であり得る。本明細書で使用する、所望により置換されていてもよいアルキル、アルケニルもしくはアルキニルは、所望によりハロゲン化されていてもよく(例えば、CF3)、またはNR、OもしくはSのようなヘテロ原子で置換されるか、もしくは取り替えられた1個またはそれ以上の炭素を有していてもよい(例えば、-OCH2CH2O-、アルキルチオール、チオアルコキシ、アルキルアミンなど)。
【0020】
“アリール”は、炭素原子を含む単環式もしくは縮合二環式芳香環を意味する。例えば、アリールは、フェニルまたはナフチルであり得る。“アリーレン”は、アリール基に由来する二価の基を意味する。
【0021】
本明細書で使用する“ヘテロアリール”は、上記アリールについて定義されたとおりであり、そこでは、1個またはそれ以上の環メンバーがヘテロ原子である。ヘテロアリールの例は、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する“炭素環式環”は、所望により、例えば、=Oで置換されていてもよい炭素原子を含む、飽和もしくは部分不飽和、単環式、縮合二環式または架橋多環式環を意味する。炭素環式環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピレン、シクロヘキサノンなどを含むが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用する“ヘテロ環式環”は、上記炭素環式環について定義されたとおりであり、そこでは、1個またはそれ以上の炭素がヘテロ原子である。例えば、ヘテロ環式環は、N、O、S、-N=、-S-、-S(O)、-S(O)2-、または-NR-を含み得て、そこでは、Rは、水素、C1-4アルキルまたは保護基であり得る。ヘテロ環式環の例は、モルホリノ、ピロリジニル、ピロリジン-2−オン、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジノン、1,4-ジオキサ-8-アザ−スピロ[4.5]デカ-8−イルなどを含むが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用する“共投与”または“組み合わせ投与”などの用語は、単一の患者への選択された治療剤の投与を含むことを意味し、該薬剤が、必ずしも、同じ投与経路で、もしくは同時に投与されるとは限らない処置レジメンを含むことを意図する。
【0025】
本明細書で使用する“医薬的組合わせ剤”なる用語は、有効成分を混合するか、または組み合わせることにより得られる生成物を意味し、有効成分の固定および非固定組み合わせ剤を含む。“固定組み合わせ剤”なる用語は、有効成分、例えば、式(1)の化合物および共薬剤を、単一の存在もしくは用量の形態で、患者に同時に投与することを意味する。“非固定組み合わせ剤”なる用語は、有効成分、例えば、式(1)の化合物および共薬剤が、時間的な制限なしに、別々の存在として、同時に、共に、もしくは連続して患者に投与され、ここで、該投与が、治療上有効なレベルの有効成分を患者の体内に提供することを意味する。後者はまた、カクテル療法、例えば、3種もしくはそれ以上の有効成分の投与に適用する。
【0026】
“治療上有効量”なる用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床医により検討される、細胞、組織、器官、系、動物もしくはヒトにおいて、生物学的もしくは医学的応答を誘導する対象化合物の量を意味する。
【0027】
対象化合物の“投与”または“投与する”なる用語は、本発明の化合物およびそのプロドラッグを、処置を必要とする対象に提供することを意味する。
【0028】
“キナーゼパネル”は、Abl、JAK2、JAK3、ALK、JNK1α1、KDR、オーロラ-A、Lck、Blk、MAPK1、Bmx、MAPKAP-K2、BRK、MEK1、CaMKII、C-Met、CDK1/サイクリンB、p70S6K、CHK2、PAK2、CK1、PDGFRα、CK2、PDK1、C-Kit、Pim-2、C-Raf、PKA、CSK、PKBα、Src、PKCα、DYRK2、Plk3、EGFR、ROCK-I、Fes、Ron、FGFR-3、Ros、Flt3、SAPK2α、Fms、SGK、Fyn、SIK、GSK3β、Syk、IGFR、Tie-2、IKKβ、TrkB、IR、WNK3、IRAK4、ZAP-70、ITK、AMPK、LIMK1、Rsk2、Axl、LKB1、SAPK2β、BrSK2、Lyn、SAPK3、BTK、MAPKAP-K3、SAPK4、CaMKIV、MARK1、Snk、CDK2/サイクリンA、MINK、SRPK1、CDK3/サイクリンE、MKK4、TAK1、CDK5/p25、MKK6、TBK1、CDK6/サイクリンD、MLCK、TrkA、CDK7/サイクリンH/MAT1、MRCKβ、TSSK1、CHK1、MSK1、Yes、CK1d、MST2、ZIPK、MuSK、DAPK2、NEK2、DDR2、NEK6、DMPK、PAK4、DRAK1、PAR-1Bα、EphA1、PDGFRβ、EphA2、Pim-1、EphA5、PKBβ、EphB2、PKCβI、EphB4、PKCδ、FGFR1、PKCη、FGFR2、PKCθ、FGFR4、PKD2、Fgr、PKG1β、Flt1、PRK2、Hck、PYK2、HIPK2、Ret、IKKα、RIPK2、IRR、ROCK-II、JNK2α2、Rse、JNK3、Rsk1(h)、PI3 Kγ、PI3 KδおよびPI3-Kβを含むがこれらに限定されない、キナーゼの一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施態様
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用であり得る化合物およびその医薬組成物を提供する。
【0030】
1つの局面において、本発明は、式(1):
【化6】

[式中、
Aは、
【化7】

またはN、OもしくはSを含む、所望により置換されていてもよい5-6員ヘテロ環式環であり;
環Bは、フェニルまたはN、OもしくはSを含む5-6員ヘテロ環式環であり;
Lは、NRCO、CONR、NRCONR、NRSO2、SO2NRまたはO(CR2)qであり;
X1、X2およびX3は、独立して、NまたはCRであり;
Yは、O、SまたはNRであり;
Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5は、独立して、ハロ、O(CR2)qR4、シアノ、(CR2)pR5、CONR6R7、CO2(CR2)qR4、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4、NR8CONR6R7; または所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであるか; または
Z1、Z3およびZ5は、独立してHであり; あるいは
Z1およびZ2、Z2およびZ3、Z3およびZ4、またはZ4およびZ5は、5-7員環を形成し;
Rは、HまたはC1-6 アルキルであり;
R1は、H、ハロ、C1-6 アルコキシ、O(CR2)qR5、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R2は、ハロ; ヒドロキシ; または所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキルまたはC1-6 アルコキシであり;
R3は、ハロ; 所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキルまたはC1-6 アルコキシ; O(CR2)qR4、(CR2)pR5、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R4およびR5は、独立して、所望により置換されていてもよいC3-7 シクロアルキル、5-7員アリール、ヘテロ環式もしくはヘテロアリールであるか; またはR4は、Hであり;
R6およびR7は、独立して、H; 所望によりハロゲン化されていてもよい、C1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニル; C1-6 アルカノール、(CR2)pO(CR2)qR4または(CR2)p-R5であり; またはR6およびR7は、NR6R7におけるNと共に、所望により置換されていてもよい環を形成し得て;
R8は、HまたはC1-6 アルキルであり;
mは、1-4であり; そして
n、pおよびqは、独立して、0-4である]
で示される化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその互変異性体を提供する。
【0031】
1つの態様において、Aが、
【化8】

であり、
Lが、O(CR2)qであり; そして
Bが、Nを含む5もしくは6員ヘテロ環式環である。
【0032】
他の態様において、本発明の化合物は、式(2):
【化9】

[式中、
Lが、NRCOまたはCONRであり; そして
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される。
【0033】
また他の態様において、本発明の化合物は、式(3):
【化10】

[式中、
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される。
【0034】
例えば、式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物は、下記の化合物または薬学的に許容されるその塩を含むがこれらに限定されない:
4-アミノ-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)フェニル]-アミド;
4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミド;
4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 [3-(1-エチル-ピロリジン-2−イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-アミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-クロロ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
メチル 3-(4-アミノキナゾリン-8-カルボキサミド)-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエート;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(5-(モルホリノメチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-シアノ-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(オキサゾール-2−イル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-(3-(ジメチルアミノ)フェニルアミノ)-N-(2-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド) フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(3-(4-エチルピペラジン-1−イル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-メトキシ-N-(2-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(4-((4-エチルピペラジン-1−イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(5-(4-((4-エチルピペラジン-1−イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)-4-(4-モルホリノフェニルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(3-(4-エチルピペラジン-1−イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(3-モルホリノプロピルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
(Z)-4-アミノ-N'-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキシイミドアミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(4-エチルピペラジン-1−イル)フェニルアミノ) キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(フェニルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(モルホリノメチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(2-モルホリノエチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エトキシカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(ジメチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(チアゾル-2−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(フェニルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(プロピルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(3-(ブチルカルバモイル)-2,6-ジクロロ-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルメチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-2−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-3−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-4−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エトキシカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-エトキシ-5-(エトキシカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-エトキシ-5-(エチルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-エトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-メチルナフタレン-1−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-6-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシ-6-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-ブロモ-6-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-メトキシ-N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)-4-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イルアミノ) キナゾリン-8-カルボキサミド; および
4-アミノ-N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド。
【0035】
上記式の各々において、すべての不斉炭素原子は、(R)-、(S)-または(R,S)-立体配置で存在し得る。したがって、化合物は、異性体の混合物または純粋異性体として、例えば、純粋エナンチオマーもしくはジアステレオマーとして存在し得る。本発明はさらに、本発明化合物の考え得る互変異性体を包含する。
【0036】
本発明はまた、本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩のあらゆる適当な同位体変形を含む。本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の同位体変形は、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号を有するが、通常天然で見出される原子質量とは異なる原子質量を有する原子で置換されているものと定義される。本発明の化合物および薬学的に許容されるその塩に組み込まれ得る同位体の例は、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F、36Clおよび123Iを含むが、これらに限定されない。本発明の化合物および薬学的に許容されるその塩の特定の同位体変形、例えば、3Hもしくは14Cのような放射性同位体が組み込まれているものは、薬剤および/または基質組織分布研究において有用である。
【0037】
特定の例において、3Hおよび14C同位体が、それらの製造容易性および検出能のために使用され得る。他の例において、同位体、例えば、2Hでの置換は、より高い代謝的安定性から生じる特定の治療利点、例えば、増加したインビボ半減期もしくは減少した用量必要性を提供し得る。本発明の化合物または薬学的に許容されるその塩の同位体変形は、一般に、適当な試薬の適当な同位体変形を用いて、慣用的な方法により製造され得る。本発明化合物の同位体変形は、化合物の代謝運命を変化させ、および/または疎水性などのような物理的特性に小さな変化を与える可能性を有する。同位体変形は、有効性および安全性を促進し、バイオアベイラビリティーおよび半減期を促進し、タンパク質結合を変え、生体内分布を変え、活性代謝産物の割合を増加させ、および/または反応性もしくは毒性代謝産物の形成を減少させる可能性を有する。
【0038】
上記式の各々において、各々所望により置換されていてもよい部分は、上記したとおり、各々が、所望によりハロゲン化されているか、またはN、S、Oで置き換えられたか、もしくは置換された炭素を有しているか、またはその組み合わせであるC1-6 アルキル、C2-6 アルケニルもしくはC3-6 アルキニル(例えば、ヒドロキシルC1-C8アルキル、C1-C8アルコキシC1-C8アルキル); ハロ、アミノ、アミジノ、C1-6 アルコキシ; ヒドロキシル、メチレンジオキシ、カルボキシ; C1-8 アルキルカルボニル、C1-8 アルコキシカルボニル、カルバモイル、C1-8 アルキルカルバモイル、スルファモイル、シアノ、オキソ、ニトロ、または所望により置換されていてもよい炭素環式環、ヘテロ環式環、アリールもしくはヘテロアリールで置換されていてもよい。
【0039】
式(1)、(2)および(3)で示される化合物は、プロテインキナーゼ阻害剤として有用であり得る。例えば、式(1)、(2)および(3)で示される化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩、その溶媒和物、そのN-オキシド、そのプロドラッグおよびその異性体を、キナーゼ仲介状態もしくは疾患、例えば、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-RAF、C-SRC、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼ、またはそれらの組み合わせが介在する疾患の処置のために使用し得る。
【0040】
本発明の化合物はまた、プロテインキナーゼが介在する状態、例えば、B-Raf、Bcr-AblもしくはFGFR3仲介状態を改善するために、第2治療剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の化合物は、リンパ腫、骨肉腫、黒色腫、または乳癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、卵巣癌、膵臓癌、神経の癌、肺癌、子宮癌もしくは消化器癌を含むがこれらに限定されない細胞増殖性障害を処置するために、化学療法剤と組み合わせて使用され得る。
【0041】
本発明の組成物および方法で使用され得る化学療法剤の例は、アントラサイクリン、アルキル化剤(例えば、マイトマイシンC)、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチルエニミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、例えば、メトトレキサート)、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有剤、インターフェロンおよびインターロイキンを含むが、これらに限定されない。本発明の組成物および方法で使用され得る既知の化学療法剤の特定の例は、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ベンゾデパ、カルボクオン、メトウレデパ、ウレデパ、アルトレトアミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリエチルオロメラミン、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロライド、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アクラシノマイシン、アクチノマイシンF(1)、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、6-ジアゾ-5-オキソ-1-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、プリカマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、テガフール、L-アスパラギナーゼ、パルモザイム、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、カルボプラチン、シスプラチン、デフォファミド、デメコルチン、ジアジクオン、エフロルニチン、エリプチニウムアセタート、エトグルシド、エトポシド、フルタミド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、パクリタキセル、タモキシフェン、テニポシド、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシンを含むが、これらに限定されない。
【0042】
薬理学および有用性
本発明の化合物は、キナーゼパネル(野生型および/またはその突然変異)に対してスクリーニングされ、少なくとも1種のパネルキナーゼパネルメンバーの活性を調節し得る。本発明の化合物はそれ自体、キナーゼが疾患の病状および/または症状に関与する疾患もしくは障害を処置するために有用であり得る。本明細書に記載した化合物および組成物により阻害され得る、ならびに本明細書に記載した方法が有用であり得るキナーゼの例は、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-RAF、C-SRC、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼ、ならびにそれらの突然変異型を含むが、これらに限定されない。
【0043】
Ras-Raf-MEK-ERKシグナル伝達経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を仲介する。Rasは、ヒト癌の約15%で、発癌性形態に突然変異している。Rafファミリーは、セリン/スレオニンプロテインキナーゼに属し、それは、A-Raf、B-RafおよびC-Raf (またはRaf-1)の3種のメンバーを含む。Rafが薬剤標的であることに関する焦点は、Rasの下流エフェクターとしてのRafの関係に集中している。しかしながら、B-Rafは、活性型Rasアレルを必要としない特定の腫瘍の形成において顕著な役割を有し得る(Nature 417:949-954 (2002))。特に、B-Raf突然変異は、悪性黒色腫の多くの割合で検出されている。黒色腫に対する現在の医療処置は、とりわけ、末期黒色腫に対して、それらの有効性に限界がある。本発明の化合物はまた、B-Rafキナーゼを含む細胞過程を阻害し、ヒト癌、例えば、黒色腫の処置のための新規機会を提供する。
【0044】
ある異常増殖性状態は、Raf発現と関連すると考えられており、したがって、Raf発現の阻害に対する応答性があると考えられる。異常に高いレベルのRafタンパク質の発現はまた、形質転換および異常な細胞増殖に関与する。これらの異常増殖性状態はまた、Raf発現の阻害に対する応答性があると考えられる。例えば、C-Rafタンパク質の発現は、全肺癌腫細胞株のうちの60%が、異常に高いレベルのC-Raf mRNAおよびタンパク質を発現することが報告されているので、異常な細胞増殖において役割を果たすと考えられる。異常増殖性状態のさらなる例は、過増殖性障害、例えば、癌、腫瘍、過形成、肺線維症、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管での平滑筋細胞増殖、例えば、狭窄もしくは血管形成術後の再狭窄である。Rafがその一部を為す細胞内シグナル伝達経路はまた、T細胞増殖(T細胞活性化および成長)により特徴づけられる炎症性障害、例えば、組織移植拒絶反応、エンドトキシンショック、および糸球体腎炎に関与している。
【0045】
本発明の化合物はまた、C-Rafキナーゼを含む細胞過程を阻害し得る。C-Rafは、Ras癌遺伝子により活性化され、それは、多くのヒト癌において突然変異を起こしている。したがって、C-Rafのキナーゼ活性の阻害は、Ras仲介腫瘍成長を妨害する方法を提供し得る[Campbell, S. L., Oncogene, 17, 1395 (1998)]。
【0046】
線維芽細胞成長因子受容体3 (FGFR3)は、FGF受容体チロシンキナーゼファミリーのメンバーである。FGFR3の活性型突然変異は、表在性膀胱癌(全膀胱癌の38-46%)の74%、5%の頸部癌およびt(4;14)(p16.3;q32.3)染色体転座を有する約10%の多発性骨髄腫患者で見出される。約15%の多発性骨髄腫患者で見出されるt(4;14)染色体転座は、形質細胞での高められたFGFR3発現を生じる。活性型突然変異体および野生型FGFR3は、造血細胞で発現すると、腫瘍形成性である。したがって、本発明の化合物のようなFGFR3の阻害剤は、膀胱癌およびt(4;14)多発性骨髄腫のような他の癌のための新規かつ有効な治療的処置を提供し得る。
【0047】
FGFR3はまた、骨成長における負の制御効果および軟骨細胞増殖の阻害を及ぼすことが示されている。致死性異形成は、線維芽細胞成長因子受容体3における異なる突然変異により引き起こされ、1つの突然変異であるTDII FGFR3は、構成的なチロシンキナーゼ活性化を有し、それは、転写因子Stat1を活性化し、その結果、細胞周期阻害因子の発現、増殖停止および異常な骨発達を生じる(Su et al., Nature, 1997, 386, 288-292)。FGFR3はまた、しばしば、多発性骨髄腫型癌で発現する。FGFR3活性の阻害剤は、リウマチ性関節炎(RA)、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、若年型糖尿病、シェーグレン症候群、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローンおよび潰瘍性大腸炎)、セリアック疾患ならびに重症筋無力症を含むがこれらに限定されない、T細胞仲介炎症性もしくは自己免疫疾患の処置において有用である。
【0048】
Abelsonチロシンキナーゼ(すなわち、Abl、c-Abl)は、細胞周期の制御、遺伝毒性ストレスへの細胞応答およびインテグリンシグナル伝達を介した細胞環境に関する情報の伝達に関与する。Ablタンパク質は、細胞モジュールとして複雑な役割を果たしていると考えられ、さまざまな細胞外および細胞内起源からのシグナルを統合し、細胞周期およびアポトーシスに関する決定に影響を与える。Abelsonチロシンキナーゼは、サブタイプ誘導体、例えば、無秩序なチロシンキナーゼ活性を有するキメラ融合(癌タンパク質) Bcr-Ablもしくはv-Ablを含む。Bcr-Ablは、慢性骨髄性白血病(CML)の95%および急性リンパ性白血病の10%の発症において重要である。
【0049】
本発明の化合物は、Ablキナーゼ、例えば、v-Ablキナーゼを阻害し得る。本発明の化合物はまた、野生型Bcr-Ablキナーゼおよび突然変異型Bcr-Ablキナーゼを阻害し得て、Bcr-Abl陽性癌および腫瘍疾患、例えば、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病)ならびにBcr-Ablに関連する他の増殖障害の処置のために適当であり得る。本発明の化合物はまた、白血病幹細胞に対して有効であり得て、インビトロで該細胞の除去(例えば、骨髄除去)後のこれらの細胞の精製、および癌細胞を除去後のこれらの細胞の再移植(例えば、精製骨髄細胞の再移植)のために潜在的に有用であり得る。
【0050】
Srcファミリーのキナーゼは、癌、免疫系機能障害および骨再形成疾患に関与している。Srcファミリーのメンバーは、哺乳類で下記の8つのキナーゼを含む: Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、Lck、およびBlk。一般的な総説として、Thomas and Brugge, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. (1997) 13, 513; Lawrence and Niu, Pharmacol. Ther. (1998) 77, 81; Tatosyan and Mizenina, Biochemistry (Moscow) (2000) 65, 49; Boschelli et al., Drugs of the Future 2000, 25(7), 717を参照のこと。
【0051】
Fynは、細胞増殖の制御に関与する膜結合チロシンキナーゼをコードする。
【0052】
Lckは、T細胞シグナル伝達において役割を果たす。Lck遺伝子を欠損したマウスは、胸腺細胞を発達させる能力が弱まる。T細胞シグナル伝達のポジティブアクチベーターとしてのLckの機能は、Lck阻害剤がリウマチ性関節炎のような自己免疫疾患を処置するのに有用であり得ることを示す(Molina et al., Nature, 357, 161 (1992))。Hck、FgrおよびLynは、骨髄性白血球におけるインテグリンシグナル伝達の重要なメディエーターとして同定された(Lowell et al., J. Leukoc. Diol., 65, 313 (1999))。したがって、これらのキナーゼメディエーターの阻害は、炎症を処置するのに有用であり得る(Boschelli et al., Drugs of the Future 2000, 25(7), 717)。
【0053】
SrcファミリーメンバーであるLynは、B細胞免疫応答の制御において役割を果たす。Lyn欠損マウスは、破壊されたB細胞機能を示し、自己免疫および欠損マスト細胞脱顆粒を生じる。研究はまた、Lynがさまざまな細胞系におけるアポトーシスのネガティブレギュレーターであることを示した。白血病細胞において、Lynは、構成的に活性化され、Lyn発現の阻害は、増殖を食い止めた。さらに、Lynは、大腸およびPC細胞で発現しており、大腸癌細胞株でのドミナントアクティブなLynの過剰発現が化学療法剤耐性を誘導することが示された(Goldenberg-Furmanov et al., Cancer Res. 64:1058-1066 (2004))。
【0054】
キナーゼであるC-Srcは、多くの受容体の発現性シグナルを伝達する。例えば、腫瘍でのEGFRもしくはHER2/neuの過剰発現は、C-Srcの構成的な活性化を生じ、それは、悪性細胞に特徴的ではあるが、正常な細胞では存在しない。一方、C-Srcの発現を欠損したマウスは、大理石骨病表現型を示し、それは、破骨細胞機能におけるC-Srcの重要な役割および関連障害における可能性のある関与を示す。C-Srcチロシンキナーゼ(CSK)は、癌細胞、特に、大腸癌の転移能に影響を与える。
【0055】
C-Kitは、PDGF受容体およびCSF-1受容体(c-Fms)と実質的に相同である。さまざまな赤血球および骨髄性細胞株の研究は、分化の早期段階におけるC-Kit遺伝子の発現を示す(Andre et al., Oncogene 4 (1989), 1047-1049)。同様に、膠芽細胞腫のような特定の腫瘍は、C-Kit遺伝子の顕著な発現を示す。
【0056】
EphAおよびEphBサブファミリーを含むEph受容体は、受容体チロシンキナーゼの最も大きな群からなる。EphBは、卵巣癌、肝臓癌、腎臓癌および黒色腫を含むいくつかの腫瘍において過剰発現していることが見出された。EphBシグナル伝達のダウンレギュレーションは、腫瘍成長および転移を阻害することが示された。したがって、EphBは、抗腫瘍治療のための重要な標的であり得る(Clevers et al., Cancer Res. 66:2-5 (2006); Heroult et al., Experimental Cell Res. 312: 642-650 (2006); およびBatlle et al., Nature 435:1126-1130 (2005))。
【0057】
キナーゼ挿入ドメイン含有受容体(以下、“KDR”と呼ぶ) [WO 92/14748; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 9026 (1991)]; Biochem. Biophys. Res. Comm., 187: 1579 (1992); WO 94/11499)およびFms様チロシンキナーゼ(以下、“Flt1”と呼ぶ) [Oncogene, 5: 519 (1990); Science, 255: 989 (1992)]は、受容体型チロシンキナーゼファミリーに属する。VEGFは、20 pMおよび75 pMのKd値で、Flt1およびKDRに特異的に結合し、Flt1およびKDRは、特異的な方法で血管内皮細胞に発現することが報告されている[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7533 (1993); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 8915 (1993)]。さまざまな疾患におけるFlt-1に関して、正常組織での血管内皮細胞と比較して、ヒト膠芽細胞腫組織の腫瘍血管内皮細胞[Nature, 359: 845 (1992)]およびヒト消化管癌組織の腫瘍血管内皮細胞[Cancer Research, 53: 4727 (1993)]では、Flt-1 mRNAの発現が増加することが報告されている。さらに、Flt-1 mRNAの発現は、リウマチ性関節炎を患う患者の関節の血管内皮細胞でのインサイチュハイブリダイゼーションにより観察されることが報告されている[J. Experimental Medicine, 180: 341 (1994)]。研究はまた、Flt-1が腫瘍血管形成において重要な役割を果たすことを示す。
【0058】
Flt3は、III型受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのメンバーである。Flt3 (Fms-様チロシンキナーゼ)はまた、Flk-2 (胎児肝臓キナーゼ2)として既知である。Flt3の異常な発現は、急性骨髄性白血病(AML)、多血球系異形成を伴うAML (AML/TMDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および骨髄異形成症候群(MDS)を含む成人および小児期白血病で報告されている。AMLの約25%で、白血病細胞は、細胞表面上に自己リン酸化(p)FLT3チロシンキナーゼの構成的活性型を発現する。p-FLT3の活性は、白血病細胞に成長および生存的利点を与える。p-FLT3キナーゼ活性の阻害は、白血病細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する。
【0059】
受容体チロシンキナーゼのインスリン受容体スーパーファミリーのメンバーである未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、造血および非造血腫瘍での腫瘍形成に関与している。全長ALK受容体タンパク質の異常発現は、神経芽腫および神経膠芽腫で報告されており; ALK融合タンパク質は、未分化大細胞リンパ腫で生じている。ALK融合タンパク質の研究はまた、ALK陽性悪性腫瘍を患う患者のための新規治療的処置の可能性をもたらした(Pulford et al., Cell. Mol. Life Sci. 61:2939-2953 (2004))。
【0060】
セリン/スレオニン分裂キナーゼであるオーロラ-Aは、さまざまなヒト癌で過剰発現することが報告されており、その過剰発現は、培養ヒトおよび齧歯類細胞において、異数性、中心体増幅および腫瘍形成形質転換を誘導する(Zhang et al., Oncogene 23:8720-30 (2004))。
【0061】
Bmx/Etk非受容体チロシンプロテインキナーゼは、インビトロで、内皮細胞移動および管形成に関与している。内皮および骨髄でのBmxはまた、インビボでの動脈形成および血管形成において重要な役割を果たすことが報告されており、これは、Bmxが、冠動脈疾患および末梢動脈疾患のような血管疾患の処置のための新規標的であり得ることを示す(He et al., J. Clin. Invest. 116:2344-2355 (2006))。
【0062】
ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)遺伝子は、BCRシグナル伝達の仲介において重要な役割を果たす細胞質チロシンキナーゼをコードする(de Weers et al., J. Biol. Chem. 269:23857-23860 (1994); Kurosaki et al., Immunity. 12:1-5 (2000))。BTK遺伝子の欠損は、無ガンマグロブリン血症、成熟Bリンパ球細胞を産生できないことにより特徴づけられ、Ig重鎖再配列ができないことと関連するX連鎖免疫不全を生じる。
【0063】
乳癌キナーゼ(Brk)は、多くの乳癌または正常皮膚および腸上皮で過剰発現しているが、正常な乳房上皮細胞では発現していない可溶性プロテインチロシンキナーゼである(Zhang et al., J Biol. Chem. 280:1982-1991 (2005))。
【0064】
Janusキナーゼ(JAK)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2からなるチロシンキナーゼのファミリーである。JAKは、サイトカインシグナル伝達で重要な役割を果たす。JAKファミリーキナーゼの下流の基質は、転写のシグナルトランスデューサーおよびアクチベーター(STAT)タンパク質を含む。JAK/STATシグナル伝達は、多くの異常な免疫応答、例えば、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、例えば、移植片拒絶反応、リウマチ性関節炎、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症、ならびに固形および血液悪性腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫の仲介に関与している。
【0065】
腫瘍血管形成での重要な因子は、血管内皮成長因子(VEGF)である。VEGFは、腫瘍血管系の確立を促進し、かつ、維持することができ、また直接腫瘍成長を促進し得る。VEGFは、血管内皮細胞(VEC)および腫瘍細胞(TC)の有糸分裂および走化性を誘導し得る。ほとんどずべての型のTCおよび腫瘍VECは、VEGFを分泌し得るが、正常組織でのVEGFの発現は、非常に低い。4つのVEGF受容体の中で、KDRが主要な受容体であり、それは、VEGF機能を与える。KDRは、TCおよび腫瘍VECで高度に発現しているが、正常組織ではあまり発現していない(Ren et al., World J. Gastroentrol. 8:596-601 (2002))。
【0066】
マイトージェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)は、さまざまな細胞外シグナルに対する応答で、転写因子、翻訳因子および他の標的分子を活性化する保存されたシグナル伝達経路のメンバーである。MAPKは、マイトージェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MKK)による、配列Thr-X-Tyrを有する二重リン酸化モチーフでのリン酸化により活性化される。高等真核生物において、MAPKシグナル伝達の生理学的な役割は、増殖、腫瘍形成、発生および分化のような細胞内イベントと関連している。したがって、これらの経路により(特に、MKK4およびMKK6により)シグナル伝達を制御する能力は、炎症性疾患、自己免疫疾患および癌のようなMAPKシグナル伝達と関連するヒト疾患の処置および予防的治療の開発を生じ得る。
【0067】
p38 MAPK (α、β、γ、δ)の複数の形態(その各々は、別々の遺伝子によりコードされている)は、浸透圧、紫外線およびサイトカイン仲介イベントを含むさまざまな刺激に対する細胞の応答に関与するキナーゼカスケードの一部を形成する。これら4つのp38のアイソフォームは、細胞内シグナル伝達の異なる局面を制御すると考えられている。その活性化は、TNFαのような炎症性サイトカインの合成および産生を生じるシグナル伝達イベントのカスケードの一部である。P38は、他のキナーゼおよび転写因子を含む下流の基質をリン酸化することにより機能する。P38キナーゼを阻害する薬剤は、TNFα、IL-6、IL-8およびIL-1βを含むがこれらに限定されないサイトカインの産生を妨害することが示されている。末梢血単球(PBMC)は、インビトロでリポ多糖(LPS)を用いて刺激すると、炎症性サイトカインを発現し、分泌することが示されている。PBMCをLPSでの刺激前にP38阻害剤で前処理すると、該化合物は、上記の影響を効果的に妨害する。P38阻害剤は、炎症性疾患の動物モデルにおいて有効である。多くの疾患状態の破壊的な影響は、炎症性サイトカインの過剰産生により生じる。この過剰産生を制御するP38阻害剤の能力により、それらは、疾患修飾剤として有用である。
【0068】
p38の機能を妨害する分子は、骨吸収、炎症、ならびに他の免疫および炎症に基づく病態を阻害するのに有効であることが示されている。したがって、安全かつ有効なp38阻害剤は、p38シグナル伝達などの調節により制御され得る衰弱性疾患を処置する手段を提供する。したがって、p38活性を阻害する本発明の化合物は、炎症、骨関節症、リウマチ性関節炎、癌、自己免疫疾患の処置、および他のサイトカイン仲介疾患の処置において有用である。
【0069】
PDGF(血小板由来成長因子)は、一般に生じる成長因子であり、正常な増殖およびまた病的細胞増殖において重要な役割を果たし、例えば、発癌で、および血管平滑筋細胞の疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症および血栓症で観察される。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害し得て、したがって、腫瘍疾患、例えば、神経膠腫、肉腫、前立腺癌、ならびに大腸癌、乳癌および卵巣癌の処置のために適当であり得る。
【0070】
本発明の化合物は、腫瘍阻害物質として(例えば、小細胞肺癌での)使用されるだけでなく、非悪性増殖性障害、例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症を処置するための薬剤としても使用され得る。本発明の化合物はまた、例えば、化学療法剤、例えば、5-フルオロウラシルの血液毒作用に対抗して幹細胞の保護のために、および喘息で、有用であり得る。本発明の化合物は、とりわけ、PDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置のために使用され得る。
【0071】
本発明の化合物は、移植、例えば、同種移植の結果として生じる障害、とりわけ、組織拒絶反応、例えば、閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち、同種肺移植の慢性拒絶反応の処置において有用な効果を示し得る。OBなしの患者と対照的に、OBを患う患者は、しばしば、気管支肺胞洗浄液において高められたPDGF濃度を示す。
【0072】
本発明の化合物はまた、血管平滑筋細胞移動および増殖(そこでは、PDGFおよびPDGFRがしばしば役割を果たしている)に関連する疾患、例えば、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症に対して有効であり得る。インビトロおよびインビボでの、血管平滑筋細胞の増殖もしくは移動に関するこれらの効果およびその結果は、本発明の化合物を投与し、インビボでの機械的損傷後に、血管内膜の肥厚におけるその効果を調べることにより証明され得る。
【0073】
プロテインキナーゼC(PKC)は、発癌、腫瘍細胞転移、およびアポトーシスに関連する過程で機能する。PKCαは、種々の癌と関連し、以前、4つの抗エストロゲン耐性乳癌細胞株のうちの3つで過剰発現していることが示されている(Frankel et al., Breast Cancer Res Treat. 2006 Oct. 24 (ePub))。
【0074】
ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)は、シグナル伝達経路における最後から2番目の過程を示すプロテインキナーゼのファミリーであり、c-Jun転写因子の活性化およびc-Junにより制御される遺伝子の発現を生じる。特に、c-Junは、遺伝毒性障害により損傷を受けたDNAの修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の転写に関与する。したがって、細胞内のSAPK活性を阻害する薬剤は、DNA修復を妨害し、細胞を、DNA損傷を誘導するか、もしくはDNA合成を阻害して細胞のアポトーシスを誘導するか、または細胞増殖を阻害する薬剤に感受性があるようにする。
【0075】
SNF1LK遺伝子座(また、SIKとして既知である)を包含する領域は、しばしばダウン症候群の患者で観察される先天性心臓欠損に関与している。Snf1lkはまた、9.5 dpcで開始される体節の骨格筋前駆細胞で発現しており、これは、筋肉成長および/または分化の最も早い段階におけるsnf1lkのより一般的な役割を示す(Genomics 83:1105-15 (2004))。
【0076】
Sykは、マスト細胞脱顆粒および好酸球活性化において重要な役割を果たすチロシンキナーゼである。したがって、Sykキナーゼは、さまざまなアレルギー性障害、特に、喘息に関与する。Sykは、N末端SH2ドメインにより、FcεR1受容体のリン酸化γ鎖に結合し、下流のシグナル伝達のために重要であることが示されている。
【0077】
Tie-2 (Tek)の細胞外ドメインのアデノウイルス感染もしくは注入の間の腫瘍成長および血管新生の阻害、ならびに肺転移の減少が、乳癌および黒色腫異種移植片モデルで示された(Lin et al., J. Clin. Invest. 100, 8: 2072-2078 (1997) and P. Lin, PNAS 95, 8829-8834, (1998))。Tie2阻害剤は、血管新生が不適当に生じる状況下で(すなわち、糖尿病網膜症、慢性炎症、乾癬、カポジ肉腫、黄斑変性症による慢性血管新生、リウマチ性関節炎、小児血管腫および癌で)使用され得る。
【0078】
ニューロトロフィン受容体(TrkA、TrkB、TrkC)のTrkファミリーは、神経および非神経組織の生存、成長および分化を促進する。TrkBタンパク質は、小腸および大腸の神経内分泌型細胞、膵臓のα細胞、リンパ節および脾臓の単球およびマクロファージ、ならびに表皮の顆粒層で発現する(Shibayama and Koizumi, 1996)。TrkBタンパク質の発現は、好ましくないウィルムス腫瘍および神経芽腫の進行と関連している。さらに、TrkBは、癌性前立腺細胞で発現するが、正常細胞では発現しない。Trk受容体の下流のシグナル伝達経路は、Shc、活性化Ras、ERK-1およびERK-2遺伝子、ならびにPLC-γ伝達経路を介したMAPK活性化のカスケードを含む(Sugimoto et al., Jpn J. Cancer Res. 2001 Feb; 92(2):152-60)。
【0079】
c-FMS、C-Kit、FLT3、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)およびβ(PDGFRβ)を含むクラスIII受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、増大する多くの悪性腫瘍の病因と関連することが報告されている(Blume-Jensen et al., Nature 411:355-565 (2001); Scheijin et al., Oncogene 21:3314-3333 (2002))。
【0080】
上記にしたがって、本発明はさらに、処置を必要とする対象で、上記疾患もしくは障害のいずれかを予防または処置するための方法であって、該対象に治療上有効量の式(1)、(2)もしくは(3)の化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩を投与することを含む方法を提供する。上記使用の各々のために、必要とされる用量は、投与形態、処置される特定の状態および望まれる効果に依存して変わり得る(下記、“Administration and Pharmaceutical Compositions,”を参照のこと)。
【0081】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、当分野で既知の通常のおよび許容される形態のいずれかにより、単独で、または1種もしくはそれ以上の治療剤と組み合わせて、治療上有効量で投与され得る。治療上有効量は、疾患の重篤度、対象の年齢および相対的な健康、使用される化合物の効能ならびに他の因子に依存して、種々変わり得る。一般に、満足のいく結果は、約0.03から2.5 mg/kg/体重の1日投与量で全身的に達成されることが示される。大型哺乳類、例えば、ヒトでの望まれる1日投与量は、約0.5 mgから約100 mgの範囲にあり、慣用的に、例えば、1日4回までの分割投与で、または徐放型で投与される。経口投与のための適当な単位用量形は、約1から50 mgの有効成分を含む。
【0082】
本発明の化合物は、任意の慣用的な投与経路で、特に、経腸的、例えば、錠剤もしくはカプセルの形態で経口的に; 非経腸的、例えば、注射用溶液もしくは懸濁液の形態で; 局所的、例えば、ローション、ゲル、軟膏もしくはクリームの形態で; または経鼻もしくは坐薬形で、医薬組成物として投与され得る。
【0083】
遊離形もしくは薬学的に許容される塩形での本発明の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合、造粒もしくは被覆法により、慣用的な方法で製造され得る。例えば、経口組成物は、有効成分を、a) 希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン; ならびに/またはb) 滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはそのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコールと共に含む、錠剤またはゼラチンカプセルであり得る。錠剤はさらに、c) 結合剤、例えば、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン; ならびに所望により、d) 崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または起沸性混合物; ならびに/または e) 吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤を含み得る。注射用組成物は、水性等張溶液もしくは懸濁液であり得て、坐薬は、脂肪エマルジョンもしくは懸濁液から製造され得る。
【0084】
組成物は、滅菌され得て、および/またはアジュバント、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を制御するための塩および/または緩衝液を含み得る。さらに、それらはまた、他の治療上有用な物質を含み得る。経皮適用のための適当な製剤は、有効量の本発明の化合物を担体と共に含む。担体は、宿主の皮膚を介しての通過を補助する吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含み得る。例えば、経皮デバイスは、バッキングメンバー(backing member)、所望により、担体と共に化合物を含む貯蔵部、所望により、制御された、および前決定した速度で、長時間にわたり、化合物を宿主の皮膚へ送達するための速度制御壁の形態および、該デバイスを皮膚へ固定する手段を含むバンデージの形態である。マトリクス経皮組成物がまた、使用され得る。例えば、皮膚および眼への局所適用のための適当な製剤は、当分野で既知の水性溶液、軟膏、クリームまたはゲルであり得る。それらは、可溶化剤、安定化剤、等張化促進剤、緩衝液および保存剤を含み得る。
【0085】
本発明の化合物は、1種またはそれ以上の治療剤と組み合わせて(医薬的組み合わせ剤)、治療上有効量で投与され得る。例えば、相乗効果は、他の免疫調節剤または抗炎症性物質と共に、例えば、シクロスポリン、ラパマイシン、もしくはアスコマイシン、またはその免疫抑制剤類似体、例えば、シクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK-506、ラパマイシン、または同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール(brequinar)、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15-デオキシスペルグアリン、免疫抑制抗体、とりわけ、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58もしくはそれらのリガンドのためのモノクローナル抗体、または他の免疫調節化合物、例えば、CTLA41gと組み合わせて使用されると生じ得る。本発明の化合物が他の治療剤と組み合わせて投与されるとき、共投与される化合物の用量は、当然、使用される共薬剤の型、使用される特定の薬剤、処置される状態などに依存して変わり得る。
【0086】
本発明はまた、医薬的組み合わせ剤、例えば、キットを提供し、それは、a) 遊離形もしくは薬学的に許容される塩形での本明細書に記載された本発明の化合物である第1薬剤、およびb) 少なくとも1種の共薬剤を含む。キットは、その投与のための指示書を含み得る。
【0087】
本発明の化合物の製造法
本発明の化合物を製造する一般的な手順は、下記の実施例で記載されている。記載された反応において、最終生成物で望まれる反応性官能基、例えば、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオもしくはカルボキシ基は、反応へのそれらの望まない参加を避けるために保護され得る。慣用的な保護基は、標準的な慣習にしたがって使用され得る(例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと)。
【0088】
本発明の化合物は、化合物の遊離塩基形を薬学的に許容される無機もしくは有機酸と反応させることにより、薬学的に許容される酸付加塩として製造され得る。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、化合物の遊離酸形を薬学的に許容される無機もしくは有機塩基と反応させることにより製造され得る。あるいは、本発明の化合物の塩形は、出発物質もしくは中間体の塩を用いて製造され得る。
【0089】
本発明の化合物の遊離酸もしくは遊離塩基形は、各々、相当する塩基付加塩もしくは酸付加塩から製造され得る。例えば、酸付加塩での本発明の化合物は、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することにより、相当する遊離塩基に変換され得る。塩基付加塩での本発明の化合物は、適当な酸(例えば、塩酸など)で処理することにより、相当する遊離酸に変換され得る。
【0090】
非酸化形での本発明の化合物は、適当な不活性有機溶媒(例えば、アセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中、0℃から80℃で、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、トリブロマイドなど)で処理することにより、本発明の化合物のN-オキシドから製造され得る。
【0091】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法により製造され得る(例えば、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985を参照のこと)。例えば、適当なプロドラッグは、本発明の非誘導体化化合物を適当なカルバミル化剤(例えば、1,1-アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ-ニトロフェニルカルボネートなど)と反応させることにより、製造され得る。
【0092】
本発明の化合物は、便利には、溶媒和物(例えば、水和物)として、本発明の工程の間に製造されるか、もしくは形成され得る。本発明の化合物の水和物は、便利には、ジオキシン、テトラヒドロフランもしくはメタノールのような有機溶媒を用いて、水性/有機溶媒混合物からの再結晶により製造され得る。
【0093】
本発明の化合物は、該化合物のラセミ混合物を光学的に活性な分割剤と反応させ、一対のジアステレオマー化合物を形成し、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、それらの個々の立体異性体を製造し得る。エナンチオマーの分割は、本発明の化合物の共有結合ジアステレオマー誘導体を用いて、または解離可能な複合体を用いて行われ得る(例えば、結晶ジアステレオマー塩)。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、溶解性、反応性など)を有し、これらの非類似性を利用して、容易に分離し得る。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または溶解性の差異に基づく分離/溶解技術により分離され得る。次いで、光学的に純粋なエナンチオマーを、ラセミ化を生じないあらゆる実用的な方法により、分割剤と共に回収する。それらのラセミ混合物からの立体異性体化合物の分割に適用可能な技術のより詳細な説明は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見出し得る。
【0094】
要約すると、式(1)、(2)もしくは(3)で示される化合物は、実施例に記載された工程で製造され得て、所望により、下記の工程を加え得る;
(a) 本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換すること;
(b) 本発明の化合物の塩形を非塩形に変換すること;
(c) 本発明の化合物の非酸化形を薬学的に許容されるN-オキシドに変換すること;
(d) 本発明のN-オキシド形をその非酸化形に変換すること;
(e) 異性体の混合物から、本発明の化合物の個々の異性体を分割すること;
(f) 本発明の非誘導体化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換すること; および
(g) 本発明の化合物のプロドラッグ誘導体をその非誘導体形に変換すること。
【0095】
出発物質の製造が特に記載されていない場合には、化合物は、既知であるか、または当分野で既知の方法と同様の方法で、もしくは下記の実施例で開示したとおり製造され得る。当業者は、上記の変換が本発明の化合物の製造法の例示にすぎず、他の既知の方法を同様に使用し得ることを十分に理解している。
【0096】
下記の実施例は、本発明の例示を提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0097】
実施例1
4-アミノ-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)フェニル]-アミド
【化11】

【0098】
4-ヒドロキシ-キナゾリン-8-カルボン酸
【化12】

2-アミノ-イソフタル酸(47.63 mg, 0.263 mmol)およびホルムアミド(0.104 ml, 2.628 mmol)の混合物を、マイクロ波下、150℃で30分間、撹拌する。反応混合物を、メタノールで希釈し、生じた沈殿をろ過し、メタノールで洗浄し、4-ヒドロキシ-キアゾン-8-カルボン酸を白色固体として得る。1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 8.49 (s, 1H), 8.38(d, 1H), 8.25 (d, 1H), 7.58(t, 1H), 4.11(s, 1H), 3.33(s, 1H); MS m/z 191.1(M + 1)。
【0099】
4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステル
【化13】

EtOH中の4-ヒドロキシ-キアゾン(quizone)-8-カルボン酸 (500 mg, 2.62 mmol)の撹拌溶液に、数滴の濃硫酸を加えて、反応混合物を、還流下、80℃で8時間、撹拌する。反応混合物を、減圧で濃縮し、2-プロパノールおよびクロロホルム(1/4)の共溶媒で希釈し、飽和水性重炭酸ナトリウム溶液で洗浄する。有機層を、MgSO4で乾燥させ、減圧で濃縮する。生じた粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/EtOAc=1/4)で精製し、4-ヒドロキシ-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステルを白色固体として得る。
【0100】
4-ヒドロキシ-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステル(28.8 mg, 0.13 mmol)を、POCl3に溶解し、反応混合物を、100℃で3時間、撹拌する。残ったPOCl3を蒸発させ、濃縮反応混合物をさらに、真空で乾燥させる。生じた粗生成物を、THFに溶解し、次いで、2,4-ジメトキシ-ベンジルアミンおよびDIEAで処理する。反応混合物を、室温で1時間、撹拌し、減圧下で濃縮し、分取HPLCで精製し、4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステルを黄色固体として得る。MS m/z 368.2(M + 1)。
【0101】
4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミド
【化14】

MeOH中の4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステル(25.21 mg, 0.07 mmol)の溶液に、1 N NaOH (2 mL)を加え、反応混合物を、室温で1時間、撹拌し、次いで、1 N HClで中和する。生じた沈殿をろ過し、少量のMeOHで洗浄し、4-(2, 4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸を黄色固体として得る。
【0102】
DMF中のN-(3-アミノ-4-メチル-フェニル)-3-トリフルオロメチル-ベンズアミド(6.94 mg, 0.02 mmol)、4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸(8.01 mg, 0.02mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(16.4 μL, 0.09 mmol)の溶液に、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1−イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(10.7 mg, 0.03 mmol)を加える。反応混合物を、室温で12時間、撹拌し、EtOAcで希釈し、10% 水性チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄する。有機層を、MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮する。生じた粗生成物を、分取HPLCで精製し、4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミン)-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミドを得る。MS m/z 616.2(M + 1)。
【0103】
4-アミノ-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)フェニル]-アミド
【化15】

4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミン)-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミド(6.53 mg, 10 μmol)を、トリフルオロ酢酸に溶解し、混合物を、80℃で30分間、撹拌する。粗生成物を、DMSO (1 mL)で希釈し、分取HPLCで精製し、4-アミノ-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミドをTFA塩形として得る。1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 10.54(s, 1H), 8.73(s, 1H), 8.74(d, 1H), 8.64(s, 1H), 8.52(d, 1H), 8.40(s, 1H), 8.30(d, 1H), 7.97(d, 1H), 7.79(t, 1H), 7.71(t, 1H), 7.61(dd, 1H), 7.28(d, 1H), 1.23(s, 3H); MS m/z 466.1(M + 1)。
【0104】
実施例2
4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 [3-(1-エチル-ピロリジン-2−イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-アミド
【化16】

【0105】
4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸
【化17】

DMF中の4-ヒドロキシ-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステル(27.9 mg, 0.13 mmol)の撹拌溶液に、NaHおよびMeIを加え、反応混合物を、室温で1時間、撹拌する。反応混合物を、EtOAcで希釈し、10% 水性チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄する。有機層を、MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮する。生じた粗生成物を、分取HPLCで精製し、4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステルを白色固体として得る。
【0106】
MeOH中の4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸エチルエステル(28.21 mg, 0.12 mmol)の溶液に、1 N NaOH(2 mL)を加える。反応混合物を、室温で1時間、撹拌し、次いで、1 N HClで中和する。生じた沈殿をろ過し、少量のMeOHで洗浄し、4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸を白色固体として得る。1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 8.75(s, 1H), 8.42(m, 2H), 7.71 (t, 1H), 3.55(s, 3H); MS m/z 205.1(M + 1)。
【0107】
4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 [3-(1-エチル-ピロリジン-2−イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-アミド
【化18】

DMF中の塩酸塩(13.45 mg, 37.23 μmol)としての3-(1-エチル-1-ピロリジン-2−イルメトキシ-5-トリフルオロメチル-フェニルアミン)、4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 (7.60 mg, 37.23 μmol)およびジイソプロピルエチル-アミン(51.8 μL, 0.29 mmol)の溶液に、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1−イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート (28.30 mg, 74.46 μmol)を加える。混合物を、室温で12時間、撹拌し、EtOAcで希釈し、10% 水性チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄する。有機層を、MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮する。粗生成物を、分取HPLCで精製し、4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 [3-(1-エチル-ピロリジン-2−イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-アミドを白色固体として得る。1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 12.50(s, 1H), 8.69(s, 1H), 8.46(d, 1H), 8.40(d, 1H), 7.89(s, 1H), 7.72(m, 2H), 7.13(s, 1H), 4.43(m, 1H), 4, 31(m, 1H), 3.97(m, 1H), 3.61(m, 1H), 3.57(s, 3H), 3.50(m, 1H), 3.19(m, 2H), 2.27(m, 1H), 2.06(m, 1H), 1.94(m, 2H), 1.29(t, 3H), MS m/z 475.2(M + 1)。
【0108】
実施例3
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化19】

【0109】
4-クロロキナゾリン-8-カルボニル クロライド
【化20】

塩化チオニル(10 mL)中の3,4-ジヒドロ-4-オキソキナゾリン-8-カルボン酸(500 mg, 2.6 mmol)の懸濁液に、5滴のDMFを加え、混合物を1時間還流し、溶液を透明にする。余剰塩化チオニルを、真空で除去し、残渣を、クロロホルムで共蒸発させる。固体を、ヘキサンに懸濁し、ろ過し、表題化合物をマスタード(mustard)固体として得る。1H NMR 400 MHz (DMSO-d6) δ 8.56(s, 1H), 8.48(dd, 1H), 8.39(dd, 1H), 7.71(t, 1H)。
【0110】
4-クロロ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化21】

クロロホルム(5 mL)中の4-クロロキナゾリン-8-カルボニル クロライド(100 mg, 0.44 mmol)の溶液に、2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシベンゼンアミン(117 mg, 0.53 mmol)を加える。混合物を、60℃で17時間、撹拌し、溶媒を真空で除去する。粗生成物に酢酸エチルを加え、固体を集め、表題化合物を得る。MS m/z 411.9(M + 1)。
【0111】
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化22】

イソプロパノール(5 mL)中の2.0 N NH3での4-クロロ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミドを、密封容器で、115℃で30分間、加熱する。冷却後、沈殿を集め、次いで、シリカゲルにより精製し、メタノール/ジクロロメタンで溶出し、表題化合物を白色結晶固体として得る。1H NMR 400 MHz (CD3OD) δ 8.76 (s, 1H), 8.58(s, 1H), 8.45 (d, 1H), 7.73(brs, 1H), 6.87(s, 1H), 3.98(s, 6H ); MS m/z 393.1(M + 1)。
【0112】
実施例4
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化23】

【0113】
メチル 3-アミノ-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエート
【化24】

DMF (50 mL)中の2,4-ジクロロ-5-フルオロ-3-ニトロ安息香酸(5 g, 19.7 mmol)の溶液に、50 mL DMF中のナトリウムメトキシド(MeOH中の25 wt %, 25.5 mL, 118.2 mmol)の溶液を、15分間にわたる滴下漏斗により、滴下で加える。反応物を、30分間撹拌し、氷水(100 mL)を注ぎ、3 N HClでpH 1まで酸性化させる。白色沈殿をろ過し、水で洗浄し、乾燥させ、2,4-ジクロロ-5-メトキシ-3-ニトロ安息香酸を得る。メタノール(5 mL)およびジクロロメタン(25 mL)中の2,4-ジクロロ-5-メトキシ-3-ニトロ安息香酸(1.5 g, 5.6 mmol)に、淡黄色が持続するまで、TMSCHN2 (ジエチルエーテル中の2.0M, 2.8 mL)を加える。有機物を濃縮し、定量的収率でメチルエステルを得る。最後に、SnCl2還元により、表題化合物を得る。
【0114】
メチル 3-(4-アミノキナゾリン-8-カルボキサミド)-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエート
【化25】

メチル 3-(4-クロロキナゾリン-8-カルボキサミド)-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエートは、アニリンをメチル 3-アミノ-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエートと置換して、実施例1に記載した手順にしたがって製造される。メチルエステルを、懸濁液として、MeOH/THF 溶液中の1N LiOHで鹸化する。混合物を、溶液が透明になるまで、撹拌し(48 h)、次いで、〜pH 5まで酸性化する。沈殿を集め、水で洗浄する。エチルアミン(THF中の2.0M)とのアミド結合形成、HATUおよび逆相HPLCによる精製により、最終化合物 4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミドを白色固体として得る。MS m/z 430.1(M + 1)。
【0115】
実施例5
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(5-(モルホリノメチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化26】

マイクロ波密封容器に、4-クロロ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド(44 mg, 0.11 mmol)および5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-アミン(62 mg, 0.32 mmol)を入れる。ジオキサンを加え、混合物を、150℃で1時間、加熱する。反応混合物に、酢酸エチルを加え、固体を集める。逆相LC-MSによる固体の精製により、表題化合物を黄色固体(TFA 塩)として得る。MS m/z 569.1(M + 1)。
【0116】
実施例6
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-シアノ-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化27】

表題化合物は、3-アミノ-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾニトリルを用いて、実施例4に記載した手順にしたがって合成される。MS m/z 388.0(M + 1)。
【0117】
3-アミノ-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾニトリル
【化28】

2,4-ジクロロ-5-メトキシ-3-ニトロ安息香酸(2 g, 7.5 mmol)に、塩化チオニル(40 mL) + 1滴のDMFを加える。懸濁液を還流し、溶液を加熱して透明にする。2時間後、反応混合物を、室温まで冷却し、余剰塩化チオニルを真空で除去する。残渣を、クロロホルムで共蒸発させ、ヘキサンからろ過し、酸クロライドを得る。酸クロライド(500 mg, 1.75 mmol)を、室温で30分間、アンモニア(イソプロパノール中の2.0M、10 mL)で撹拌する。溶媒を除去し、カルボキサミドを得る。POCl3 (3 mL, 32 mmol)中のアミド(100 mg, 0.38 mmol)の脱水(100℃)、および余剰POCl3の除去により、ニトリルを得て、それを、次の工程に直接使用する。上記ニトリルのHCLおよびエタノール中のSnCl2 (360 mg, 1.9 mmol)での還元(75℃)、K2CO3での中和、酢酸エチルでの抽出により、表題化合物を白色固体として得る。
【0118】
実施例7
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(オキサゾール-2−イル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド
【化29】

表題化合物は、試薬アミンとして、2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(オキサゾール-2−イル)ベンゼンアミンを用いて、実施例4に記載した手順にしたがって合成される。MS m/z 445.0(M + 1)。
【0119】
2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(オキサゾール-2−イル)ベンゼンアミン
【化30】

5 mL ジクロロメタン中の2,4-ジクロロ-5-メトキシ-3-ニトロベンゾイル クロライド(330 mg, 1.2 mmol)の溶液に、アミノアセトアルデヒド ジエチルアセタール(209 μL, 1.4 mmol)を加える。完了後、反応混合物を濃縮し、固体を水から集め、2,4-ジクロロ-N-(2,2-ジエトキシエチル)-5-メトキシ-3-ニトロベンズアミドを淡黄色固体として得る。不活性雰囲気下、メタンスルホン酸(364 μL, 5.6 mmol)を、上記アミドアセタール(100 mg, 0.28 mmol)および五酸化二リン(95 mg, 0.67 mmol)の混合物に加える。反応混合物を、140℃で6時間、加熱し、次いで、氷浴で冷却し、50% NaOHでpH 12-13まで調整する。混合物を、45℃まで加熱し、副産物のメタンスルホン酸メチルを加水分解し、酢酸エチルで抽出し、シリカゲルで精製し(ヘキサン/酢酸エチルで溶出する)、オキサゾールを白色固体として得る。ニトロの塩化スズ(II)での還元および後処理により、表題化合物を得る。
【0120】
本発明の代表的な化合物を、表1に例示する。
表1
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
【表6】

【0126】
【表7】

【0127】
【表8】

【0128】
【表9】

【0129】
【表10】

【0130】
アッセイ
本発明の化合物を、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-RAF、C-SRC、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼを含むがこれらに限定されないキナーゼパネルを阻害するそれらの能力を測定するためにアッセイし得る。
【0131】
B-Raf (酵素学的アッセイ)
本発明の化合物を、b-Raf活性を阻害するそれらの能力に関して試験し得る。アッセイは、黒色の壁面および透明な底を有する384ウェルMaxiSorpプレート(NUNC)で行われる。基質であるIκBαをDPBSで希釈し(1:750)、15μlを各ウェルに加える。プレートを、4℃で一晩、インキュベートし、EMBLAプレートウォッシャーを用いて、TBST (25 mM Tris、pH 8.0、150 mM NaClおよび0.05% Tween-20)で3回洗浄する。プレートを、Superblock (15 μl/ウェル)により、室温で3時間、ブロックし、TBSTで3回洗浄し、軽く乾かす。20 μM ATP (10 μl)を含むアッセイバッファーを各ウェルに加え、その後、100 nlもしくは500 nlの化合物を加える。B-Rafをアッセイバッファー(25 μl中に1 μl)で希釈し、10 μlの希釈b-Rafを各ウェルに加える(0.4 μg/ウェル)。プレートを、室温で2.5時間、インキュベートする。プレートをTBSTで6回洗浄することにより、キナーゼ反応を止める。ホスホ-IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblockで希釈し(1:10,000)、15 μlを各ウェルに加える。プレートを、4℃で一晩、インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP共役ヤギ抗マウスIgGをSuperblockで希釈し(1:1,500)、15 μlを各ウェルに加える。プレートを、室温で1時間、インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15 μlの蛍光Attophos AP基質(Promega)を各ウェルに加え、プレートを、室温で15分間、インキュベートする。プレートを、蛍光強度プログラム(励起455 nm、放出580 nm)を用いて、AcquestまたはAnalyst GTで読み取る。
【0132】
B-Raf (細胞アッセイ)
本発明の化合物を、MEKリン酸化を阻害するそれらの能力に関して、A375細胞で試験する。A375細胞株(ATCC)は、ヒト黒色腫患者に由来し、B-Raf遺伝子上にV599E突然変異を有する。リン酸化MEKのレベルは、B-Raf突然変異により高められる。サブコンフルエントからコンフルエントのA375細胞を、無血清培地中で、37℃で2時間、化合物と共にインキュベートする。次いで、細胞を、氷冷PBSで1回洗浄し、1% Triton X100を含む溶解バッファーで溶解する。遠心分離後、上清をSDS-PAGEにかけ、次いで、ニトロセルロース膜に移す。その後、膜を、抗ホスホ-MEK抗体(ser217/221) (Cell Signaling)を用いてウエスタンブロッティングにかける。リン酸化MEKの量を、ニトロセルロース膜上のホスホ-MEKバンドの密度によりモニターする。
【0133】
Bcr-Abl依存性細胞増殖の阻害(ハイスループット法)
マウス細胞株32D造血前駆細胞株を、Bcr-Abl cDNAで形質転換し得る(32D-p210)。これらの細胞を、ペニシリン 50 μg/mL、ストレプトマイシン 50 μg/mLおよびL-グルタミン 200 mMを補充したRPMI/10% ウシ胎児血清(RPMI/FCS)で維持する。非形質転換32D細胞を、IL3の起源として15%のWEHI条件培地を添加して、同様に維持する。
【0134】
50 μlの32Dもしくは32D-p210細胞懸濁液を、ウェルあたり5000細胞の濃度で、Greiner 384ウェルマイクロプレート(黒色)に播種する。50 nlの試験化合物(DMSOストック溶液中の1 mM)を各ウェルに加える(STI571をポジティブコントロールとして含む)。細胞を、37℃で72時間、5% CO2でインキュベートする。10 μlの60% アラマーブルー溶液(Tek diagnostics)を各ウェルに加え、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(530 nmでの励起、580 nmでの放出)を、Acquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて定量する。
【0135】
Bcr-Abl依存性細胞増殖の阻害
32D-p210細胞を、ウェルあたり15,000細胞の濃度で、96ウェルTCプレートに播種する。50 μLの2倍連続希釈の試験化合物(Cmaxは、40 μMである)を各ウェルに加える(STI571をポジティブコントロールとして含む)。細胞を、37℃で48時間、5% CO2でインキュベートした後、15 μLのMTT (Promega)を各ウェルに加え、細胞をさらに5時間インキュベートする。570 nmでの光学密度を、分光光度法で定量し、50%阻害のために必要とされる化合物の濃度であるIC50値を、用量応答曲線から決定した。
【0136】
細胞周期分布における効果
32Dおよび32D-p210細胞を、5 mlの培地中、ウェルあたり2.5x106細胞で、6ウェルTCプレートに播種し、試験化合物を、1もしくは10 μMで加える(STI571をコントロールとして含む)。次いで、細胞を、37℃で24もしくは48時間、5% CO2でインキュベートする。2 mlの細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70% EtOHで1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分間処理する。ヨウ化プロピジウム (Cf=10 μg/ml)を加え、蛍光強度を、FACScalibur(商標)システム(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーにより定量する。ある態様において、本発明の試験化合物は、32D-p210細胞でアポトーシス効果を示すが、32D親細胞ではアポトーシスを誘導しない。
【0137】
細胞Bcr-Abl自己リン酸化における効果
Bcr-Abl自己リン酸化は、c-Abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を用いた捕捉Elisaで定量される。32D-p210細胞を、50 μLの培地中、ウェルあたり2x105細胞で、96ウェルTCプレートに播種する。50 μLの2倍連続希釈の試験化合物(Cmaxは、10 μMである)を各ウェルに加える(STI571をポジティブコントロールとして含む)。細胞を、37℃で90分間、5% CO2でインキュベートする。次いで、細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む150 μLの溶解バッファー(50 mM Tris HCl, pH 7.4, 150 mM NaCl, 5 mM EDTA, 1 mM EGTAおよび1% NP 40)を用いて、氷上で1時間、処理する。50 μLの溶解バッファーを、前もって、Abl特異的抗体で被覆し、ブロックした96ウェルオプティプレートに加える。プレートを、4℃で4時間、インキュベートする。TBS Tween 20バッファーで洗浄後、50 μLのアルカリホスファターゼ共役抗ホスホチロシン抗体を加え、プレートをさらに、4℃で一晩、インキュベートする。TBS Tween 20バッファーで洗浄後、90 μLの発光基質を加え、Acquest(商標)システム(Molecular Devices)を用いて、発光を定量する。ある態様において、本発明の試験化合物は、用量依存的な方法で細胞Bcr-Abl自己リン酸化を阻害して、Bcr-Abl発現細胞の増殖を阻害し得る。
【0138】
Bcr-Ablの突然変異型を発現する細胞の増殖における効果
本発明の化合物を、野生型またはSTI571に対する耐性もしくは低下した感受性を与えるBcr-Ablの突然変異型(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)を発現するBa/F3細胞における、それらの抗増殖性活性に関して試験し得る。突然変異型Bcr-Abl発現細胞および非形質転換細胞におけるこれらの化合物の抗増殖性効果は、上記したとおり、10、3.3、1.1および0.37 μMで試験し得る(IL3欠損培地で)。非形質転換細胞における毒性を欠いた化合物のIC50値は、上記したとおり、得られた用量応答曲線から決定される。
【0139】
FGFR-3 (酵素学的アッセイ)
精製FGFR-3 (Upstate)を用いたキナーゼ活性アッセイは、キナーゼバッファー(30 mM Tris-HCl pH7.5, 15 mM MgCl2, 4.5 mM MnCl2, 15 μM Na3VO4 および50 μg/mL BSA)中の0.25 μg/mLの酵素、ならびに基質(5 μg/mL ビオチン-ポリ-EY(Glu, Tyr) (CIS-US, Inc.)および3μM ATP)を含む10 μLの最終量で行われる。2つの溶液を作製する: キナーゼバッファー中のFGFR-3酵素を含む5 μlの第1溶液を、最初に、384ウェル形式ProxiPlate(登録商標) (Perkin-Elmer)に入れ、次いで、DMSOに溶解した50 nLの化合物を加え、その後、キナーゼバッファー中の基質(ポリ-EY)およびATPを含む5 μlの第2溶液を各ウェルに加えた。反応物を、室温で1時間、インキュベートし、30 mM Tris-HCl pH 7.5、0.5 M KF, 50 mM ETDA、0.2 mg/mL BSA、15 μg/mL ストレプトアビジン-XL665 (CIS-US, Inc.)および150 ng/mL クリプテート共役抗ホスホチロシン抗体(CIS-US, Inc.)を含む10 μLのHTRF検出混合物を加えることにより停止させる。ストレプトアビジン-ビオチン相互作用を可能にするために、室温で1時間、インキュベーションした後、時間分解蛍光シグナルを、Analyst GT (Molecular Devices Corp.)で読み取る。IC50値は、12個の濃度(50 μMから0.28 nMまでの1:3希釈)での各化合物の阻害割合における直線回帰分析により計算される。このアッセイで、本発明の化合物は、10 nMから2 μMの範囲でのIC50を有する。
【0140】
FGFR-3 (細胞アッセイ)
本発明の化合物は、FGFR-3細胞キナーゼ活性に依存した形質転換Ba/F3-TEL-FGFR3細胞増殖を阻害するそれらの能力に関して試験される。Ba/F3-TEL-FGFR3を、培養培地として10% ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640を用いて、懸濁液中、800,000 細胞/mLまで培養する。細胞を、50 μLの培養培地中、5000細胞/ウェルで、384ウェル形式プレートに入れる。本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、希釈する。12点(Twelve points)の1:3連続希釈物をDMSOで調製し、典型的には10 mMから0.05 μMの範囲の濃度勾配を作製する。細胞に50 nLの希釈化合物を加え、細胞培養インキュベーターで、48時間、インキュベートする。増殖中の細胞により作り出される還元環境をモニターするために使用し得るAlamarBlue(登録商標) (TREK Diagnostic Systems)を、10%の最終濃度で細胞に加える。37℃の細胞培養インキュベーターで、さらに4時間のインキュベーション後、還元AlamarBlue(登録商標)からの蛍光シグナル(530 nmでの励起、580 nmでの放出)を、Analyst GT (Molecular Devices Corp.)で定量する。IC50値は、12個の濃度での各化合物の阻害割合における直線回帰分析により計算される。
【0141】
FLT3およびPDGFRβ
FLT3およびPDGFRβの細胞活性における本発明の化合物の効果は、Ba/F3-FLT3-ITDおよびBa/F3-Tel-PDGFRβを用いて、FGFR3細胞活性について上記したものと同一の方法により行い得る。
【0142】
本発明の化合物は、FLT3もしくはPDGFRβ細胞キナーゼ活性に依存した形質転換Ba/F3-FLT3-ITDまたはBa/F3-Tel-PDGFRβ細胞増殖を阻害するそれらの能力に関して試験される。Ba/F3-FLT3-ITDまたはBa/F3-Tel-PDGFRβを、培養培地として10% ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640を用いて、懸濁液中、800,000 細胞/mLまで培養する。細胞を、50 μLの培養培地中、5000細胞/ウェルで、384ウェル形式プレートに入れる。本発明の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、希釈する。12点の1:3連続希釈物をDMSOで調製し、典型的には10 mMから0.05 μMの範囲の濃度勾配を作製する。細胞に50 nLの希釈化合物を加え、細胞培養インキュベーターで、48時間、インキュベートする。増殖中の細胞により作り出される還元環境をモニターするために使用し得るAlamarBlue(登録商標) (TREK Diagnostic Systems)を、10%の最終濃度で細胞に加える。37℃の細胞培養インキュベーターで、さらに4時間のインキュベーション後、還元AlamarBlue(登録商標)からの蛍光シグナル(530 nmでの励起、580 nmでの放出)を、Analyst GT (Molecular Devices Corp.)で定量する。IC50値は、12個の濃度での各化合物の阻害割合における直線回帰分析により計算される。
【0143】
FLT3、PDGFRβ、KDR、ALK、EphA/B、InsR、JAK2、C-Kit、Lck、Lyn、c-Met、Ret、Ron、Ros、Src、Syk、Tie-2、TrkB、TYK2およびZap-70 (細胞アッセイ)
FLT3、PDGFRβ、KDR、ALK、EphA/B、InsR、JAK2、C-Kit、Lck、Lyn、c-Met、Ret、Ron、Ros、Src、Syk、Tie-2、TrkB、TYK2およびZap-70の細胞活性における本発明の化合物の効果は、Ba/F3-TEL-FGFR3の代わりに、各々、Ba/F3-TEL-FLT3、Ba/F3-TEL-PDGFRβ、Ba/F3-TEL-KDR、Ba/F3-TEL-ALK、Ba/F3-TEL-EphA/B、Ba/F3-TEL-InsR、Ba/F3-TEL-JAK2、Ba/F3-TEL-C-Kit、Ba/F3-TEL-Lck、Ba/F3-TEL-Lyn、Ba/F3-TEL-c-Met、Ba/F3-TEL-Ret、Ba/F3-TEL-Ron、Ba/F3-TEL-Ros、Ba/F3-TEL-Src、Ba/F3-TEL-Syk、Ba/F3-TEL-Tie-2、Ba/F3-TEL-TrkB、Ba/F3-TEL-TYK2およびBa/F3-TEL-Zap-70が用いられることを除いては、FGFR3細胞活性について上記したものと同一の方法を用いて行われる。
【0144】
Upstate KinaseProfiler(商標) - 放射酵素学的フィルター結合アッセイ
本発明の化合物は、キナーゼパネルの個々のメンバー(キナーゼは、Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、C-Kit、C-Raf、C-SRC、CSK、EphB、FGFR3、FLT1、Fms、Fyn、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、SIK、Src、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼを含むが、これらは部分的なものであり、これらに限定されない)を阻害するそれらの能力に関して評価され得る。該化合物は、“Upstate KinaseProfiler(商標)”パネルに含まれる異なるキナーゼのために種々のキナーゼバッファー組成物および基質を用いて、この一般的なプロトコールにしたがって、10 μMの最終濃度で、デュプリケートで試験される。キナーゼバッファー(2.5 μL, 10x - 所望により、MnCl2を含む)、活性キナーゼ(0.001-0.01ユニット; 2.5 μL)、キナーゼバッファー中の特異的もしくはポリ(Glu4-Tyr)ペプチド(5-500 μMまたは.01 mg/ml)およびキナーゼバッファー(50 μM; 5 μL) を、氷上で、エッペンドルフを用いて混合する。Mg/ATPミックス(10 μL; 67.5 (または33.75) mM MgCl2、450 (または225) μM ATPおよび1 μCi/μl [γ-32P]-ATP (3000Ci/mmol))を加えて、反応物を、約30℃で約10分間、インキュベートする。反応混合物を、2cm x 2cm P81 (ホスホセルロース(正に荷電したペプチド基質のために))もしくはWhatman No. 1 (ポリ(Glu4-Tyr)ペプチド基質のために)ろ紙にスポットする(20 μL)。アッセイろ紙を、0.75%リン酸で、各々5分間を4回、洗浄し、アセトンで5分間1回洗浄する。アッセイろ紙をシンチレーションバイアルに移し、5 mlのシンチレーションカクテルを加え、ペプチド基質への32Pの取り込み(cpm)を、Beckmanシンチレーションカウンターで定量する。阻害割合を、各反応について計算する。
【0145】
遊離形もしくは薬学的に許容される塩形での式(1)、(2)もしくは(3)の化合物は、例えば、本明細書に記載したインビトロ試験により示されたとおり、有用な薬理学的特性を示し得る。それらの実験でのIC50値は、阻害剤なしでのコントロールを用いて得られたものよりも50%低い細胞数を生じる対象となる試験化合物の濃度として提供される。一般に、本発明の化合物は、1種またはそれ以上の下記のキナーゼに対して、1 nMから10 μMまでのIC50値を有する: Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-Raf、C-Src、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkB キナーゼ。
【0146】
ある例では、本発明の化合物は、0.01 μMから5 μMのIC50値を有する。他の例では、本発明の化合物は、0.01 μMから1 μM、より特には、1 nM から1 μMのIC50値を有する。ある態様において、本発明の化合物は、野生型Bcr-Abl、T315IBcr-Abl、およびPDGFRβについて、1 nMから50 nMのIC50値を有する。また他の例では、本発明の化合物は、1 nM未満の、または10 μMより大きいIC50値を有する。
【0147】
式(1)、(2)もしくは(3)の化合物は、10 μMでの1種またはそれ以上の下記のキナーゼに対して、50%を超えた阻害割合を示し得て、または他の態様では、約70%を超えた阻害割合を示し得る: Alk、Abl、オーロラ-A、B-Raf、C-Raf、Bcr-Abl、BRK、Blk、Bmx、BTK、C-Kit、C-Raf、C-Src、EphB1、EphB2、EphB4、FGFR3、FLT1、Fms、Flt3、Fyn、FRK3、JAK2、KDR、Lck、Lyn、PDGFRα、PDGFRβ、PKCα、p38、Src、SIK、Syk、Tie2およびTrkBキナーゼ。
【0148】
本明細書に記載した実施例および態様は、単に例示の目的で記載したに過ぎず、それを参照したさまざまな修飾もしくは変化が当業者に示唆され、それらは、本願明細書および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれるものと理解されるべきである。本明細書で引用されたすべての公開物、特許、および特許出願は、あらゆる目的のために引用により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、
Aは、
【化2】

またはN、OもしくはSを含む5-6員ヘテロ環式環であって、各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルで所望により置換されており;
環Bは、フェニルまたはN、OもしくはSを含む5-6員ヘテロ環式環であり;
Lは、NRCO、CONR、NRCONR、NRSO2、SO2NRまたはO(CR2)qであり;
X1、X2およびX3は、独立して、NまたはCRであり;
Yは、O、SまたはNRであり;
Z1、Z2、Z3、Z4およびZ5は、独立して、ハロ、O(CR2)qR4、シアノ、(CR2)pR5、CONR6R7、CO2(CR2)qR4、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4、NR8CONR6R7; または各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであるか; または
Z1、Z3およびZ5は、独立してHであり; あるいは
Z1およびZ2、Z2およびZ3、Z3およびZ4、またはZ4およびZ5は、5-7員環を形成し;
Rは、HまたはC1-6 アルキルであり;
R1は、H、ハロ、C1-6 アルコキシ、O(CR2)qR5、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R2は、ハロ; ヒドロキシル; または各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであり;
R3は、ハロ; 各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニル; O(CR2)qR4、(CR2)pR5、NR6R7、NR8(CR2)qNR6R7、NR8CONR6R7、NR8CO2R4、NR8SO2R4またはNR8CONR6R7であり;
R4およびR5は、独立して、所望により置換されていてもよいC3-7 シクロアルキル、C6 アリール、または5-7員ヘテロ環式もしくはヘテロアリールであるか; またはR4は、Hであり;
R6およびR7は、独立して、H; 各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニル; C1-6 アルカノール、(CR2)pO(CR2)qR4または(CR2)p-R5であり; またはR6およびR7は、NR6R7におけるNと共に、所望により置換されていてもよい環を形成し得て;
R8は、HまたはC1-6 アルキルであり;
mは、1-4であり; そして
n、pおよびqは、独立して、0-4である]
で示される化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその互変異性体。
【請求項2】
X1、X2およびX3が、各々CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各Rが、Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Lが、NRCO、CONRまたはO(CR2)qである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、
【化3】

であり;
Lが、O(CR2)qであり; そして
Bが、Nを含む5-6員ヘテロ環式環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が式(2):
【化4】

[式中、
Lが、NRCOまたはCONRであり; そして
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
nが1-2であり、R3がCF3または(CR2)pR5である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R5が所望により置換されていてもよいピペリジニルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が式(3):
【化5】

[式中、
X1、X2およびX3が、各々CHである]
で示される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Z4およびZ5が、C6 アリールまたはN、OもしくはSを含む5-7員ヘテロアリールを形成する、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Z1、Z2およびZ5が、独立して、ハロ; O(CR2)qR4; または各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであり;
Z3が、Hであり; そして
Z4が、シアノ、O(CR2)qR4、(CR2)pR5、CONR6R7またはCO2(CR2)qR4である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
Z1およびZ2が、独立して、ハロ; O(CR2)qR4; または各々が、所望により、ハロ、アミノもしくはヒドロキシル基で置換されていてもよい、C1-6 アルキル、C1-6 アルコキシ、C2-6 アルケニルもしくはC2-6 アルキニルであり;
Z3およびZ5が、独立して、Hであり; そして
Z4が、シアノ、O(CR2)qR4、(CR2)pR5、CONR6R7またはCO2(CR2)qR4である、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
治療上有効量の請求項1に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
化合物が、
4-アミノ-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)フェニル]-アミド;
4-(2,4-ジメトキシ-ベンジルアミノ)-キナゾリン-8-カルボン酸 [2-メチル-5-(3-トリフルオロメチル-ベンゾイルアミノ)-フェニル]-アミド;
4-メトキシ-キナゾリン-8-カルボン酸 [3-(1-エチル-ピロリジン-2−イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]-アミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-クロロ-N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
メチル 3-(4-アミノキナゾリン-8-カルボキサミド)-2,4-ジクロロ-5-メトキシベンゾエート;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(5-(モルホリノメチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-シアノ-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(オキサゾール-2−イル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-(3-(ジメチルアミノ)フェニルアミノ)-N-(2-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド) フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(3-(4-エチルピペラジン-1−イル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-メトキシ-N-(2-メチル-5-(3-(トリフルオロメチル)ベンズアミド)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(4-((4-エチルピペラジン-1−イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(5-(4-((4-エチルピペラジン-1−イル)メチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)-4-(4-モルホリノフェニルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(5-(3-(4-エチルピペラジン-1−イル)-5-(トリフルオロメチル)フェニルカルバモイル)-2-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(3-モルホリノプロピルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
(Z)-4-アミノ-N'-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキシイミドアミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(4-エチルピペラジン-1−イル)フェニルアミノ) キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(フェニルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(モルホリノメチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(2,6-ジクロロ-3,5-ジメトキシフェニル)-4-(4-(2-モルホリノエチル)ピリジン-2−イルアミノ)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エトキシカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(ジメチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(チアゾル-2−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(フェニルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(プロピルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(3-(ブチルカルバモイル)-2,6-ジクロロ-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルメチルカルバモイル)-5-メトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-2−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-3−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-メトキシ-5-(ピリジン-4−イルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エチルカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(エトキシカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-フルオロフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-エトキシ-5-(エトキシカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-エトキシ-5-(エチルカルバモイル)フェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジクロロ-3-(シクロプロピルカルバモイル)-5-エトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-メチルナフタレン-1−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-6-フルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-クロロ-3,5-ジメトキシ-6-メチルフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2-ブロモ-6-クロロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-アミノ-N-(2,6-ジフルオロ-3,5-ジメトキシフェニル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
4-メトキシ-N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド;
N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)-4-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イルアミノ) キナゾリン-8-カルボキサミド; および
4-アミノ-N-(5-メトキシベンゾ[d]イソオキサゾール-7−イル)キナゾリン-8-カルボキサミド
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
B-Raf、Bcr-AblもしくはFGFR3仲介状態を処置するための方法であって、細胞もしくは組織系または処置を必要とする哺乳類対象に、有効量の請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその医薬組成物を投与し、それにより該状態を処置することを含み、ここで、該状態が細胞増殖性障害または自己免疫性障害である、方法。
【請求項16】
該細胞増殖性障害が、黒色腫、白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、膠芽細胞腫、膀胱癌、リンパ腫、骨肉腫、または乳癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、卵巣癌、膵臓癌、神経の癌、肺癌、子宮癌もしくは消化器癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該自己免疫性障害が、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症、乾癬、若年型糖尿病、シェーグレン症候群、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、セリアック疾患または重症筋無力症である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
細胞増殖性障害もしくは自己免疫性障害の処置用医薬の製造における、所望により第2治療剤と組み合わせた請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはその医薬組成物の使用。
【請求項19】
該細胞増殖性障害が、黒色腫、白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、膠芽細胞腫、膀胱癌、リンパ腫、骨肉腫、または乳癌、腎臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、卵巣癌、膵臓癌、神経の癌、肺癌、子宮癌もしくは消化器癌である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
該自己免疫性障害が、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、II型コラーゲン関節炎、多発性硬化症、乾癬、若年型糖尿病、シェーグレン症候群、甲状腺疾患、サルコイドーシス、自己免疫性ブドウ膜炎、セリアック疾患または重症筋無力症である、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2010−530438(P2010−530438A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513369(P2010−513369)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/067290
【国際公開番号】WO2008/157575
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】