説明

プロテインキナーゼ阻害剤としての新規化合物および組成物

本発明は、化合物の新規クラス、そのような化合物を含む医薬組成物、および、異常なまたは制御されなくなったチロシンキナーゼ活性が関連する疾患または障害、特に、PDGF−R、c−KitおよびBcr−ab1の活性が関連する疾患の処置または予防のために、このような化合物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年4月4日出願の、米国出願60/460,838の利益を請求し、その出願は、引用によりすべての目的で、本明細書に包含させる。
【0002】
発明の背景
技術分野
本発明は、化合物の新規クラス、そのような化合物を含む医薬組成物、および、異常なまたは制御されなくなったチロシンキナーゼ活性が関連する疾患または障害、特に、PDGF−R、c−KitおよびBcr−ab1の活性が関連する疾患の処置または予防のために、このような化合物を使用する方法を提供する。
【0003】
背景技術
プロテインキナーゼは、タンパク質の大きなファミリーを表し、これは、広範囲の細胞性過程の制御に中心的な役割を担い、細胞性機能の制御を維持する。これらのキナーゼは、レセプターチロシンキナーゼ、例えば血小板由来増殖因子レセプターキナーゼ(PDGF−R)、幹細胞因子のためのレセプターキナーゼ、c−Kit、および非−レセプターチロシンキナーゼ、例えば、融合キナーゼBcr−ab1を含む。
【0004】
慢性骨髄性白血病(CML)は、第9染色体上のAbl癌原遺伝子と、第22染色体上のBcrと呼ばれる遺伝子を融合させる、相互転座により引き起こされる、非常に研究されているヒト癌である。得られた融合タンパク質Bcr−ab1は、分裂活性を増加させ、CML先祖細胞のアポトーシスに対する感受性を低下させ、接着および帰巣を変えることにより、B細胞を形質転換できる。STI−571(Gleevec)は、発癌性Bcr−ab1チロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性白血病(CML)の処置に使用されている。しかしながら、CMLの急性転化期(blast crisis stage)の患者の幾分かは、Bcr−ab1キナーゼにおける変異のために、STI−571に耐性である。
【0005】
本発明の新規化合物は、1個またはそれ以上のキナーゼ;特にBcr−ab1の野生型および1個またはそれ以上の変異体形を阻害し、故に、キナーゼ−関連疾患、特にBcr−ab1キナーゼ関連疾患の処置に有用である。
【0006】
発明の開示
一つの局面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中、
【0007】
およびXは、独立して、−N=および−CR=からなる群から選択され、ここで、Rは水素またはC1−4アルキルであり;
【0008】
Lは、結合、−O−および−NR−からなる群から選択され、ここで、Rは水素またはC1−4アルキルであり;
【0009】
は、−XNR、−XORおよび−Xからなる群から選択され、ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり、Rは水素またはC1−4アルキルであり、そしてRは、C6−10アリールおよびC5−6ヘテロアリールからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;
【0010】
は、水素、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から選択され;
【0011】
は、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC6−10アリール−C0−4アルキルからなる群から選択され;ここで、任意のアルキル基は、所望により、ヒドロキシ、ハロおよびアミノからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されており;そして任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ニトロ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、フェニル、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)R、−XS(O)NR、−XNR、−XNR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XS(O)、−XSNR、−XONR、−XC(O)R、−XNRC(O)R、−XNRS(O)、−XS(O)NR、XNRS(O)、−XNRC(O)R、−XNRC(O)NR、−XNRC(O)NR、−XC(O)OR、=NOR、−XNROR、−XNR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4、−XC(O)NR(CH)1−4OR、−XO(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4ORおよびXNR(CH)1−4からなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;ここで、フェニルは、さらに、−NRまたは−C(O)NRからなる群から選択されるラジカルで置換されていてよく;Xは上記の通りであり;Rは水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキルまたはC2−6アルケニルであり;そしてRはヒドロキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、C6−10アリール−C0−4アルキルオキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、所望により、さらに、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、ハロ−アルキル置換フェニル、ベンズオキシ、C5−9ヘテロアリール、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−S(O)NR、−NR、−C(O)R10および−NR1111からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており、ここで、R10はC5−6ヘテロアリールであり、そしてR11はヒドロキシ−C1−4アルキルである。〕
【0012】
の化合物、および、それらのN−オキサイド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;ならびにこのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)を提供する。
【0013】
第2の局面において、本発明は、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩を、1個またはそれ以上の適当な賦形剤と混合して含む、医薬組成物を提供する。
【0014】
第3の局面において、本発明は、動物における、キナーゼ活性、特にBcr−ab1活性の阻害が、該疾患の病状および/または症状を予防、阻害または改善できる、疾患の処置法であり、該動物に、治療的有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
第4の局面において、本発明は、動物における、キナーゼ活性、特にBcr−ab1活性が、該疾患の病状および/または症状に関与する疾患を処置するための医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0016】
第5の局面において、本発明はBcr−ab1活性を阻害する方法であり、Bcr−ab1と、Bcr−ab1のミリストイル結合ポケットと結合する化合物を接触させることを含む、方法を提供する。
【0017】
第6の局面において、本発明は、式Iの化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、ならびに、その薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【0018】
発明の詳細な記載
I. 定義
特記しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、一般的に、本発明が属する分野の技術者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。一般に、本明細書および有機化学および分析化学の実験方法で使用している命名法は既知であり、当分野で一般的に用いられるものである。
【0019】
“アルキル”は、記載した数の炭素原子を有する、直鎖または分枝、飽和、脂肪族ラジカルを意味する。“低級アルキル”は、7個まで(7個を含む)、好ましくは4個まで(4個を含む)の炭素を有する。例えば、C1−4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルまたはイソブチルを含む。アルケニルは、少なくとも1個の二重結合を含む、アルキルについて定義のものである。例えば、アルケニルは、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニルまたはブタンジエニルを含む。“ハロ置換アルキル”は、水素原子のいくつかまたはすべてがハロゲン原子で置換されている、上記で定義のアルキルである。例えば、ハロ置換アルキルは、トリフルオロメチル、フルオロメチル、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−フェニルなどを含む。“ヒドロキシ−アルキル”は、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシメチルなどを含む。
【0020】
“アルコキシ”は、酸素原子を含むアルキルについて定義のものであり、例えば、メトキシ、エトキシなどである。“ハロ置換アルコキシ”は、水素原子のいくつかまたはすべてがハロゲン原子で置換されている、アルコキシについて定義のものである。例えば、ハロ置換アルコキシは、トリフルオロメトキシなどを含む。
【0021】
“アリール”は、6個から10個の環炭素原子を含む、単環式または縮合二環式芳香環集合体である。例えば、アリールは、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。“アリーレン”は、アリール基に由来する、2価ラジカルを意味する。“ヘテロアリール”は、1個またはそれ以上の環員がヘテロ原子である、アリールについて定義のものである。例えばヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含む。
【0022】
“シクロアルキル”は、記載した数の炭素を含む、飽和または部分的不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。“ヘテロシクロアルキル”は、1個またはそれ以上の示される環炭素が、−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(式中、Rは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である)で置換されている、本明細書で定義のシクロアルキルである。例えば、本発明の化合物を記載するために、本明細書で使用するC3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルは、モルホリノ、モルホリノ−メチル、モルホリノ−エチル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イルなどを含む。
【0023】
“ハロゲン”(またはハロ)は、好ましくはクロロまたはフルオロを意味するが、また、ブロモまたはヨードであってよい。
【0024】
酸性の本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、塩基と形成した塩、すなわち、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のようなカチオン性塩、ならびに、アンモニウム、トリメチル−アンモニウム、ジエチルアンモニウムおよびトリス−(ヒドロキシメチル)−メチル−アンモニウム塩のようなアンモニウム塩である。
【0025】
同様に、有機カルボン酸および有機スルホン酸、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸のような酸付加塩はまた、ピリジルのような塩基性基が構造の一部を形成するとき、可能である。
【0026】
“処置”および“処置する”は、疾患および/またはその付随する症状を改善または軽減する方法を意味する。
【0027】
“阻害”、“阻害する”および“阻害剤”は、特異的作用もしくは機能を妨げる化合物または妨げる方法を意味する
【0028】
“治療的有効量”は、処置する状態または疾患の1個またはそれ以上の症状の発症を阻止するか、または、ある程度改善するのに十分な化合物の量を投与することを意味する。
【0029】
本明細書で使用する“組成物”は、一定の量で特定成分を含む製品、ならびに、直接または間接的に、一定量の特定成分の組み合わせからもたらされる、すべての製品を包含することを意図する。“薬学的に許容される”は、担体、希釈剤または賦形剤が、製剤中の他の成分と適合でき、そのレシピエントに無害でなければならないことを意味する。
【0030】
“対象”は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むが、これらに限定されない、哺乳類のような動物を意味する。ある態様において、対象はヒトである。
【0031】
“IC50”は、ペプチド、タンパク質、酵素または生物学的過程の活性の50%阻害をもたらす、化合物の濃度である。
【0032】
“ミリストイル結合ポケット”は、BCR−Ab1タンパク質が、ミリストイル結合に適した立体配置であるとき、ミリストイル部分が結合できる、Bcr−ab1の場所である。ミリストイル結合ポケットは、例えば、Hantschel et al., “A Myristoyl/Phosphotyrosine Switch Regulates c-Ab1” Cell(2003), Vol. 112, 845-857およびBhushan et al., “Structural Basis for the Autoinhibition of c-Ab1 Tyrosine Kinase” Cell(2003), Vol. 112, 859-871に記載されている。
【0033】
化合物の中性形は、塩を、塩基または酸と接触させ、慣用法で親化合物を単離することにより、再生し得る。化合物の親形は、極性溶媒中の溶解性のようなある生理学的特性に関して種々の塩形と異なるが、それ以外、塩は本発明の目的に関して、化合物の親形と同等である。
【0034】
塩形に加えて、本発明は、プロドラッグ形である化合物を提供する。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学的変化に付され、本発明の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、本発明の化合物に、エキソビボ環境で、化学的または生化学的方法により変換できる。例えば、プロドラッグは、適当な酵素または試薬と共に経皮パッチ貯蔵部に置いたときに、本発明の化合物にゆっくり変換できる。
【0035】
本発明のある化合物は、非溶媒和物形ならびに水和物形を含む溶媒和物形で存在できる。一般に、溶媒和物形は、非溶媒和物と同等であり、本発明の範囲内に包含されると解釈される。本発明のある化合物は、複数の結晶または無定形で存在し得る。一般に、すべての物理学的形は、本発明により意図される使用に関して同等であり、本発明の範囲内であると解釈すべきである。
【0036】
本発明のある化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有する;ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は、すべて本発明の範囲内に包含されると解釈すべきである。
【0037】
II. 概略
融合タンパク質Bcr−Ab1は、Abl癌原遺伝子とBcr遺伝子を融合させる、相互転座により引き起こされる。Bcr−ab1は、次いで、B細胞を、分裂活性の増加を介して形質転換できる。この増加は、CML先祖細胞のアポトーシスに対する感受性を低下させ、かつ、CML先祖細胞の接着および帰巣を変える。本発明は、キナーゼ関連疾患、特にPDGF−R、c−KitおよびBcr−ab1キナーゼ関連疾患の処置のための化合物、組成物および方法を提供する。例えば、白血病およびBcr−ab1に関連する他の増殖性疾患を、Bcr−ab1の野生型および変異体形の阻害を介して処置できる。
【0038】
III. 化合物
A. 好ましい化合物
式Iの化合物に関するある態様において、本発明の化合物は、式Ia:
【化2】

〔式中、Lは結合であり;Rは、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されている、フェニルまたはピリジニルであり;そしてRは水素またはC1−4アルキルである。〕
の化合物であり得る。
【0039】
さらなる態様において、Rが、所望により、−C(O)NR、−C(O)NR、−C(O)Rおよび−C(O)NR(CH)NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されている、C6−10アリール−C0−4アルキルであり、ここで、Rが水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;そしてRが、所望により−C(O)NRで置換されているC3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルである。
【0040】
さらに別の態様において、Rが−NHRであり、ここで、Rが、ハロ置換C1−4アルキルまたはハロ置換C1−4アルコキシで置換されているフェニルであり;Rが水素であり;そしてRが、−C(O)NH(CH)OH、−C(O)NHR、−C(O)Rまたは−NH(CH)N(CH)で置換されているフェニルであり、ここで、Rが、−C(O)NHで置換されているモルホリノ−エチルまたはピペリジニルである。
【0041】
別の態様において、本発明の化合物は、式Ib:
【化3】

〔式中、Lは結合であり;Rは、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されている、フェニルまたはピリジニルであり、そして、Rは水素またはC1−4アルキルである。〕
であり得る。
【0042】
さらなる態様において、Rは、C5−6ヘテロアリール−C0−4アルキルまたはC6−10アリール−C0−4アルキルから選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−C(O)NR、−C(O)R、−NRおよび−NR(CH)NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており、ここで、Rは水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;そしてRはC6−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NRおよび−S(O)NRからなる群から選択される2個までのラジカルで置換されている。
【0043】
さらに別の態様において、Rが−NHRであり、ここで、Rが、ハロ置換C1−4アルキルまたはハロ置換C1−4アルコキシで置換されているフェニルであり;Rが水素であり;そしてRが、所望により、−C(O)NH(CH)OH、−C(O)NHCH(C)CHOH、−C(O)NH(CH)CH、−C(O)N(CH)、−C(O)NH(CH)N(CH)、−C(O)NHR、−C(O)N(C)Rおよび−C(O)Rからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されている、ピリジニルまたはフェニルであり、ここで、Rがフェニル、フェネチル、ピリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノまたはモルホリノ−エチルであり;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ、C1−4アルキル、−CHOH、−(CH)OH、ピロリジニル、ピペラジニル、−C(O)NH、−C(O)N(C)および−S(O)NHからなる群から選択される2個までのラジカルで置換されている。
【0044】
別の態様において、本発明の化合物は、式Ic:
【化4】

〔式中、Lは結合、−NH−、−N(C)−または−O−であり;Rは、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されている、フェニルまたはピリジニルであり;そしてRは、水素またはC1−4アルキルである。〕
であり得る。
【0045】
さらなる態様において、Lが結合であり;そして、Rが、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC6−10アリール−C0−4アルキルからなる群から選択され;ここで、任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XNR、−XNR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XS(O)、−XC(O)R、−XNRC(O)R、−XNRS(O)、−XS(O)NR、−XNRS(O)、−XNRC(O)R、−XNRC(O)NR、−XNRC(O)NR、−XC(O)OR、=NOR、−XNR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4NRおよび−XO(CH)1−4NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;Rが、水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;RがC6−10アリール−C0−4アルキル、C6−10アリール−C0−4アルキルオキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望によりハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ−アルキル置換フェニル、ベンズオキシ、C5−9ヘテロアリール、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−S(O)NR、−NRおよび−C(O)R10からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており、ここで、R10がC5−6ヘテロアリールである。
【0046】
さらなる態様において、Rが、モルホリノ、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イル、4−オキソ−ピペリジン−1−イル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピリジニル、フェニル、ナフチル、チオフェニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピペリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラゾリルおよび1H−ベンゾイミダゾリルからなる群から選択され;ここで、任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、クロロ、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、メトキシ、−C(O)OH、−C(O)H、−C(O)OCH、−C(O)N(C)、−C(O)N(CH)、−C(O)NHCH、−S(O)NH、−S(O)CH、クロロ、−NH、−C(O)CH、=NOCH、−NH(CH)N(CH)、−NH(CH)−NH、−NH(CH)OH、−C(O)NH(CH)N(CH)、−NHR、−O(CH)N(CH)、モルホリノ、ピペラジニル、−NHC(O)CH、−NHC(O)NHC、−C(O)NHC、−C(O)NHC、−C(O)NHC10OH、−C(O)N(COH)、−C(O)NHCOH、−C(O)NH(CH)OH、−NHC(O)R、−C(O)NHR、−NHC(O)NHR、−C(O)R、−NHS(O)、−NHS(O)CH、−NHS(O)、−S(O)、−S(O)NHR、−C(O)NHおよび−C(O)NH(CH)N(CH)からなる群から独立して選択される1個から2個のラジカルで置換されており;Rが、フェネチル、2−フェノキシ−エチル、1H−イミダゾリル−プロピル、ピリジニル、ピリジニル−メチル、キノリニル、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル、フラン−2−イルメチル、チアゾール−2−イルメチル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル、3−イミダゾール−1−イル−プロピル、3H−ピラゾール−3−イル、モルホリノ−エチル、フェニル、チオフェニル−メチル、ベンジル、シクロヘキシルまたはフラン−2−イルメチルであり;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−エチル、イソブチル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、シアノ、イソプロピル、メチル、エチル、クロロ、フルオロ、ピリジニル、モルホリノ、フェノキシ、ピロリジニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチル置換フェニル、−N(CH)、−C(O)NH、−S(O)NH−、−C(O)N(CH)、シアノまたは−C(O)R10からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており;ここで、R10がフラニルである。
【0047】
さらなる態様において、Lが−NH−、−N(C)−または−O−であり;そしてRが、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC6−10アリール−C0−4アルキルからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、C1−4アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XS(O)NR、−XNRC(O)Rおよび−XNRC(O)NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;Rが水素またはC1−6アルキルであり;そしてRが、所望により2個までのハロ置換C1−4アルキルラジカルで置換されているC6−10アリール−C0−4アルキルである。
【0048】
さらに別の態様において、Rが、キノリニル、ピリジニルおよびフェニルからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、モルホリノ、メトキシ、−C(O)NH、−NHC(O)NHRおよび−S(O)NHからなる群から独立して選択される1個から2個のラジカルで置換されており;そしてRがトリフルオロメチルで置換されているフェニルである。
【0049】
式Iの好ましい化合物は、下記実施例および表Iに詳述する。
【0050】
B. 化合物の製造
本発明はまた本発明の化合物の製造法も含む。記載の反応において、反応性官能基、例えば、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらが最終産物において望まれるとき、反応におけるそれらの望ましくない関与を避けるために、保護する必要がある可能性がある。慣用の保護基を、標準的慣例にしたがい使用することができ、例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0051】
Lが結合である式Iの化合物は、下記の反応スキーム1におけるような手順により製造できる:
【化5】

〔式中、X、X、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはハロ基、例えばヨードまたはクロロ、好ましくはクロロである。〕。
【0052】
式Iの化合物は、式2の化合物と式3の化合物の反応により製造できる。反応は、適当な触媒(例えば、Pd(PPh)など)の存在下、適当な溶媒(例えば、アセトニトリル)中、適当な塩基(例えば、NaCO)と共に、50−100℃で行うことができ、完了に5−15時間必要とする。
【0053】
Lが結合である式Iの化合物はまた下記反応スキーム2におけるような手順により製造できる:
【化6】

〔式中、X、X、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはハロ基、例えばヨードまたはクロロ、好ましくはヨードである。〕。
【0054】
式Iの化合物は、式2の化合物と式4の化合物の反応により製造できる。反応は、適当な触媒(例えば、Pd(PPh)など)の存在下、適当な溶媒(例えば、1,4−ジオキサン)中、60−110℃で行うことができ、完了まで10−20時間必要とする。
【0055】
Lが−O−である式Iの化合物は、下記の反応スキーム3におけるような手順により製造できる:
【化7】

〔式中、X、X、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはハロ基、例えばヨードまたはクロロ、好ましくはクロロである。〕。
【0056】
式Iの化合物は、式2の化合物と式5の化合物の反応により製造できる。反応は、適当な塩基(例えば、KOBuなど)の存在下、適当な溶媒(例えば、THF)中、50−100℃で行うことができ、完了に5−10時間必要とする。
【0057】
Lが−NR−である式Iの化合物は、下記の反応スキーム4におけるような手順により製造できる:
【化8】

〔X、X、R、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはハロ基、例えばヨードまたはクロロ、好ましくはクロロである。〕。
【0058】
式Iの化合物は、式2の化合物と式6の化合物の反応により製造できる。反応は、適当なリガンド(例えば、IprHClなど)、適当な触媒(例えば、Pd(dba)など)、適当な塩基(例えば、KOBuなど)の存在下、適当な溶媒(例えば、1,4−ジオキサン、THFなど)中、50−100℃で行うことができ、完了に2−10時間必要とする。
【0059】
本発明の化合物を製造するための付加工程
本発明の化合物は、薬学的に許容される酸付加塩として、本化合物の遊離塩基形を、薬学的に許容される無機または有機酸と反応させることにより、製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を、本発明の遊離酸形と、薬学的に許容される無機または有機塩基を反応させることにより、製造できる。あるいは、本発明の化合物の塩形を、塩の出発物質または中間体を使用して製造できる。
【0060】
本発明の化合物の遊離酸または遊離塩基形は、各々、対応する塩基付加塩または酸付加塩形から製造できる。例えば酸付加塩形の本発明の化合物を、対応する遊離塩基に、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することにより、変換できる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、対応する有機酸に、適当な酸(例えば、塩酸など)で処理することにより変換できる。
【0061】
非酸化形の本発明の化合物は、本発明の化合物のN−オキシドから、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、ホスホラストリクロライド、トリブロミドなど)で、適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中、0から80℃で処理することにより製造できる。
【0062】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に既知の方法により製造できる(例えば、さらなる詳細は、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照)。例えば、適当なプロドラッグを、本発明の化合物の非誘導体と、適当なカルバミル化剤(carbamylating agent)(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)と反応させることにより、製造できる。
【0063】
本発明の化合物の保護された誘導体は、当業者に既知の手段により製造できる。保護基の創成およびそれらの除去に適応できる技術の詳細は、T. W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0064】
本発明の化合物は、簡便には、溶媒和物(例えば、水和物)として製造でき、または、本発明の工程中に形成される。本発明の化合物の水和物は、水性/有機溶媒混合物からの再結晶により、ジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を使用して、製造できる。
【0065】
本発明の化合物は、その個々の立体異性体として、本化合物のラセミ混合物を、光学活性分解剤と反応させ、ジアステレオ異性体混合物の対を形成させ、ジアステレオマーを分割し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、製造できる。エナンチオマーの分割は本発明の化合物の共有結合的ジアステレオマー異性体を使用して行うことができるが、分割できない複合体(例えば、結晶ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの相違点を利用して、容易に分割できる。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または、好ましくは、溶解度の差異に基づいた、分離/分割技術により、分離できる。光学的に純粋なエナンチオマーを、次いで、分離剤と共に、ラセミ化をもたらさない、任意の実際的手段により、回収する。化合物の立体異性体の、そのラセミ混合物からの分割に適応できる技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley And Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0066】
要約すると、式Iの化合物は:
(a)式2の化合物と、式3、4、5または6の化合物を反応させ:
【化9】

〔式中、X、X、R、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。〕;または
(b)所望により、本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換し;
(c)所望により、本発明の化合物の塩形を、非塩形に変換し;
(d)所望により、本発明の化合物の非酸化形を、薬学的に許容されるN−オキシドに変換し;
(e)所望により、本発明の化合物のN−オキシド形をその非酸化形に変換し;
(f)所望により、本発明の化合物の個々の異性体を、異性体の混合物から分離し;
(g)所望により、本発明の化合物の非誘導体形を、薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換し;および
(h)所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を、その非誘導体形に変換する
ことを含む方法により、製造できる。
【0067】
出発物質の製造を特に記載していない限り、該化合物は既知であるか、または、当分野で記載の方法に準じて、または、下記実施例に記載の通りに製造できる。
【0068】
当業者は、上記の変換が本発明の化合物の製造のための代表的な方法であるのみであり、他の既知の方法を同様に使用できることを認識しよう。
【0069】
IV. 組成物
本発明の医薬組成物は、Bcr−ab1活性を阻害するために、および、Bcr−ab1依存性障害、特に白血病(とりわけ慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病)のような癌および腫瘍疾患の処置のために、ヒトを含む哺乳類への、経口または直腸のような経腸、経皮、局所、および非経腸投与に適するものであり、有効量の本発明の薬理学的に活性な化合物を単独で、または、1個またはそれ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む。
【0070】
より特に、医薬組成物は、本発明の化合物の有効なBcr−ab1阻害量を含む。
【0071】
薬理学的に活性な本発明の化合物は、その有効量を、経腸または非経腸投与に適した賦形剤または担体と共に、または、混合して含む、医薬組成物の製造に有用である。
【0072】
好ましいのは、活性成分を、a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤に関してはまたc)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;所望によりd)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/またはe)吸着剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む、錠剤およびゼラチンカプセルである。注射可能組成物は、好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、坐薬は、好ましくは脂肪性エマルジョンまたは懸濁液から製造する。組成物は滅菌してよくおよび/またはアジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでよい。加えて、それらは他の治療的に価値のある物質も含んでよい。該組成物は、各々、慣用の混合、造粒、またはコーティング法にしたがい製造し、約0.1から75%、好ましくは約1から50%の活性成分を含む。
【0073】
錠剤は、当業者に既知の方法にしたがい、フィルムコーティングされているか、腸溶性コーティングされていてよい。
【0074】
経皮投与のための適当な製剤は、有効量の本発明の化合物と担体を含む。好ましい担体は、宿主の皮膚を介した浸透を助けるための吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、本化合物を、所望により担体と共に含む貯蔵部、所望により、宿主の皮膚に該化合物を制御されたかつ予定された速度で、長期にわたり送達させるための速度制御バリア、および、デバイスを皮膚に固定する手段を含む、バンデージの形である。マトリックス経皮製剤も使用できる。
【0075】
例えば、皮膚および眼への、局所投与に適した製剤は、好ましくは当業者に既知の水溶液、軟膏、クリームまたはジェルである。これらは、可溶化剤、安定化剤、張性増加剤(tonicity enhancing agent)、緩衝剤および防腐剤を含み得る。
【0076】
医薬製剤は、有効なBcr−ab1阻害量の、上記で定義の本発明の化合物を、単独で、または、他の治療剤と組み合わせて含む。
【0077】
他の活性剤と共に、本発明の化合物は、同時に、他の活性成分の前または後に、別々に、同じまたは異なる投与経路により、または、同じ医薬製剤中に一緒に投与できる。
【0078】
投与すべき活性成分の用量は、温血動物(哺乳類)の種、体重、年齢および個々の状態、ならびに投与形態に依存する。約50から70kgの哺乳類への経口投与のための単位投与形は、約5から500mgの活性成分を含む。
【0079】
V. 方法
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば、下記“アッセイ”において記載のインビトロ試験により示されるように、価値のある薬理学的特性を示し、故にBcr−ab1活性に関連する疾患および障害の治療に適応される。Bcr−ab1に関して、式Iの化合物は、好ましくは1×10−10から1×10−5Mの範囲の、好ましくは野生型Bcr−ab1および少なくとも2個の他のBcr−ab1変異体(G250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tから選択される変異体)に関しては1μMより少ないIC50を示す。例えば、化合物97(表I)は、野生型、G250E、E255V、T315I、F317LおよびM351T Bcr−ab1に関して、各々0.20、4.78、0.25、5.28、4.45および0.97のIC50を有する。
【0080】
本発明はまたヒトを含む哺乳類における異常な細胞増殖を含む疾患または状態を予防または処置する方法であり、該哺乳類に、PDGF−R、c−Kitおよび/またはBcr−ab1活性を阻害するのに有効な量の式Iの化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0081】
PDGF(血小板由来増殖因子)は、非常に一般的に生じる増殖因子であり、それは、正常の増殖、およびまた発癌において、および血管壁の平滑筋細胞の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症において見られるような病的細胞増殖の両方に、重要な役割を担う。
【0082】
式Iの化合物はPDGF−Rを阻害でき、故に、また神経膠腫、肉腫、前立腺腫瘍ならびに結腸、乳房および卵巣の腫瘍のような腫瘍疾患の処置にも適している。
【0083】
本発明の化合物はまた幹細胞因子(SCF、c−kitリガンドまたはスチール・ファクターとしても既知)、例えばSCF受容体(kit)自己リン酸化およびMAPKキナーゼ(マイトージェン−活性化タンパク質キナーゼ)のSCF−刺激活性化が関与する細胞性過程を阻害する。
【0084】
本発明の化合物は、したがって、SCF受容体(およびc−kit、癌原遺伝子)の自己リン酸化も阻害する。MO7e細胞は、増殖をSCFに依存する、ヒト前巨核球白血病細胞系である。式Iの化合物は、SCF−Rの自己リン酸化を、マイクロモル濃度範囲で阻害する。
【0085】
記載の特性に基づいて、本発明の化合物は、例えば小細胞肺癌における腫瘍阻害物質としてだけでなく、また非悪性増殖性疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症、および線維症の処置のための薬剤として、ならびに幹細胞を保護するために、例えば5−フルオロウラシルのような化学療法剤における血液毒性作用に対抗するために、および喘息において使用できる。それは、とりわけ、PDGF−Rキナーゼの阻害に応答する疾患の処置のために使用できる。
【0086】
加えて、本発明の化合物はまた他の抗腫瘍剤と組み合わせて使用できる。
【0087】
また、ab1キナーゼ、とりわけv−ab1キナーゼも、本発明の化合物により阻害される。類推すると、本発明の化合物はまたBcr−ab1キナーゼを阻害し、故に、Bcr−ab1−陽性癌および腫瘍疾患、例えば白血病(とりわけ、作用のアポトーシス機構が見られるとき、とりわけ、慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病)の処置に適しており、また白血病幹細胞のサブグループに対して効果を示し、そして、該細胞の除去(例えば、骨髄除去)後、インビトロでこれらの細胞の精製し、それらから癌細胞が無くなったら、その細胞を再移植(例えば、精製骨髄細胞を再移植)するために、可能性がある。
【0088】
加えて、本発明の化合物は、移植、例えば、同種移植の結果として起こる疾患、とりわけ組織拒絶反応、例えば、とりわけ閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち、同種肺移植の慢性拒絶反応の処置に有効な効果を示す。OBを有しない患者と比較して、OBを有する患者は、気管支肺胞洗浄液におけるPDGF濃度の上昇がしばしば示される。他の免疫抑制性物質または抗炎症性物質と、例えばシクロスポリン、ラパマイシンまたはアスコマイシン、またはそれらの免疫抑制アナログ、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、または同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスペルグアリン、免疫抑制性抗体、とりわけ白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体または、CTLA41gのような他の免疫調節化合物と組み合わせたとき、相乗効果も可能である。
【0089】
本発明の化合物は、また、血管平滑筋細胞移動および増殖(PDGFおよびPDGF−Rがしばしば役割を担うものである)が関連する疾患、例えば、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症において有効である。平滑筋細胞のインビトロおよびインビボでの増殖または遊走に関するこれらの効果およびその結果は、本発明の化合物の投与により、また、インビボでの機械的損傷後の血管内膜の肥厚におけるその効果の試験により証明できる。
【0090】
さらに、本発明はBcr−ab1活性を阻害する方法であり、Bcr−ab1を、Bcr−ab1のミリストイル結合ポケットと結合する化合物と接触させることを含む、方法を提供する。好ましい態様において、該化合物は式Iの化合物である。
【0091】
VI. 実施例
A. 化合物
本発明を、さらに、本発明による、式Iの化合物(実施例)、およびそれらの中間体(参考例)の製造を説明する下記例によりさらに例示するが、限定しない。
【0092】
参考例1. (6−クロロ−ピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化10】

【0093】
1.0g 4,6−ジクロロピリミジン(6.7mmol)を、1.2g p−トリフルオロメトキシアニリン(6.7mmol)と共に、15mL エタノールに溶解し、次いで1.75mL DIEA(10mmol)を添加する。2時間還流下で反応させ、室温に冷却する。溶媒蒸発後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(EA/ヘキサン=3:7)、(6−クロロ−ピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミンを白色固体1.94gとして得る。
【0094】
参考例2. 4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−安息香酸
【化11】

【0095】
参考例1の通りに製造した200mg(4−クロロ−ピリミジン−6−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン(0.69mmol)を、フラスコに、115mg 4−カルボキシフェニルボロン酸(0.69mmol)、40mg パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.034mmol)および292mgの炭酸ナトリウム(2.76mmol)と共に添加する。溶媒MeCN/HO(1:1)10mLをフラスコに添加する。アルゴンで入れ替えた後に、フラスコを90℃で8時間加熱する。熱い反応溶液を濾過し、回収する。6N HCl溶液を、該溶液に、pHが5より低くなるまで添加する。淡い色の固体4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−安息香酸(220mg)を濾過により回収し、5mL 水で2回濯ぐ。
【0096】
参考例3. 4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−安息香酸
【化12】

【0097】
100ml 丸底フラスコに、1.5gの2,4−ジクロロ−[1,3,5]トリアジン(10mmol)、231mgのパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(0.2mmol)および20mlの0.5M 4−(エトキシルカルボニル)−フェニル亜鉛ヨウ化物を混合する。10mlの乾燥THFを、反応混合物に添加する。反応を、室温で、一晩行う。生成物をさらに精製することなく、次工程に使用する。p−トリフルオロメトキシ−アニリン(1.77g;10mmol)を添加し、室温で2時間反応させる。蒸発によりTHFを除去した後、粗生成物を酢酸エチル(100ml)に再溶解し、飽和塩化アンモニウム溶液(100ml;3回)および塩水(1回)洗浄する。粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムで精製し、2.8gの最終産物を白色固体として得る。
【0098】
2.8g 4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−安息香酸エチルエステルを、50mlの水/アセトニトリル(1:1)混合物に溶解する。19N NaOH(0.74ml)溶液を添加し、反応物を、80℃で2時間還流する。反応物を室温に冷却し、6N HClの添加によりpHを5に調節する。明黄色沈殿を回収し、10ml 水で洗浄し、乾燥させ、4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−安息香酸(2.4g)を得る。MS: m/z 377.1(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 10.62(s, 1H), 8.92(s, 1H), 8.51(d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.14(d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.99(d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.54(s, 1H), 7.35(d, J = 8.0 Hz, 2H)。
【0099】
実施例1. N,N−ジメチル−4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミド
【化13】

【0100】
参考例2の通りに製造した100mg 4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−安息香酸(0.27mmol)を、200μL ジメチルアミン(THF中2.0M、0.40mmol)、HATU(112mg;0.30mmol)およびDIEA(232μL;1.33mmol)に添加する。4mL 溶媒DMFの添加後、反応物を室温で8時間攪拌する。溶媒を除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、MeOH/DCM(5%/95%)を使用して、N,N−ジメチル−4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミドを薄黄色固体として得る(101mg)。MS: m/z 402.1(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 8.80(s, 1H), 8.05(d, J=8.1Hz, 2H), 7.83(d, J=9.lHz, 2H), 7.58(d, J=8.4Hz, 2H), 7.37(d, J=8.4Hz, 2H), 7.30(s,1H), 2.97(s, 6H)。
【0101】
実施例2. N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミド
【化14】

【0102】
参考例2の通りに製造した100mg 4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−安息香酸(0.27mmol)を、4−(2−アミノエチル)モルホリン(53μL;0.40mmol)、HATU(112mg;0.30mmol)およびDIEA(232μL;1.33mmol)に添加する。DMF(4mL)を添加し、反応物を室温で8時間攪拌する。溶媒を除去し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、MeOH/DCM(5%:95%)を使用し、N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミドを薄黄色固体として得る(123mg)。MS: m/z 488.1(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 8.78(s, 1H), 8.16(d, J=8.3Hz, 2H), 8.03(d, J=8.5Hz, 2H), 7.85(d, J=10.2Hz, 2H), 7.36(d, J=8.8Hz, 2H), 7.34(s, 1H), 4.01(t, 7.0Hz, 2H), 3.66(t, 6.8Hz, 4H), 3.57(t, 7.2Hz, 2H), 3.35(t, 6.9Hz, 4H)。
【0103】
実施例3. (6−ピリジン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化15】

【0104】
参考例1の通りに製造した(4−クロロ−ピリミジン−6−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン(100mg;0.35mmol)を、4−(トリブチル錫)−ピリジン(190mg;0.52mmol)およびパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(20mg;0.018mmol)に添加する。溶媒は乾燥1,4−ジオキサンである。反応を、還流温度で、アルゴンガス下、16時間行う。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、ヘキサン/EA(35%:65%)を使用し、(6−ピリジン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミンを黄色固体として得る(40mg)。MS: m/z 333.2(M+H)+; 1H NMR(400MHz, CDCl3)δ 8.83(s,1H), 8.79(d, J=8.2Hz, 2H), 7.82(d, J=9.0Hz, 2H), 7.51(d, J=8.4Hz, 2H), 7.29(d, J=8.4Hz, 2H), 7.09(s, 1H)。
【0105】
実施例4. [6−(1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化16】

【0106】
参考例1の通りに製造した(4−クロロ−ピリミジン−6−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン(100mg;0.35mmol)を、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ−[4.5]−デカン(75mg;0.52mmol)、トリス−(ジベンジリデン−アセトン)−ジパラジウム(0)(8.1mg;0.009mmol)、1,3−ビス(2,6−ジ−I−プロピルフェニル)−イミダゾリウムクロライド7.4mg(0.018mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(59mg;0.52mmol)に添加する。溶媒は乾燥1,4−ジオキサンである。反応を、80℃で4時間、アルゴンガス下に行う。溶媒の除去後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、ヘキサン/EA(40%/60%)を使用して、[6−(1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミンを白色固体として得る(110mg)。MS: m/z 397.2(M+H)+; 1H NMR(400MHz, CDCl3)δ 8.27(s, 1H), 7.33(d, J=8.2Hz, 2H), 7.18(d, J=8.4Hz, 2H), 6.66(s, 1H), 3.99(t, J=4.8Hz, 4H), 3.67(t, J=5.2Hz, 4H), 1.70(t, J=5.5Hz, 4H)。
【0107】
実施例5. [6−(3−メタンスルホニル−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化17】

【0108】
参考例1の通りに製造した(6−クロロピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−アミン(510mg、1.76mmol)および(3−メチルスルホニルフェニル)−ボロン酸(352mg、1.76mmol)の脱気した0.4M 炭酸ナトリウム水溶液(17mL)およびアセトニトリル(17mL)の溶液に、PPh(100mg、0.09mmol)を添加する。約90℃で、N下、12時間攪拌後、反応混合物を飽和NaHCOとCHClに分配する。水性層をさらなるCHClで抽出する。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた黄色がかった油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン/酢酸エチル(4/6))で精製し、[6−(3−メタン−スルホニルフェニル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−アミンを、薄い黄色がかった固体として得る(619mg;86%)。1H NMR(400MHz, CDCl3)δ 8.81(s, 1H), 8.55-8.54(m, 1H), 8.30-8.28(m, 1H), 8.10-8.03(m, 1H), 7.71-7.68(m, 1H), 7.55-7.53(m, 2H), 7.28-7.27(m, 1H), 7.10-7.09(m, 2H), 3.11(s, 3H)。
【0109】
実施例6. 3−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミド
【化18】

【0110】
参考例1の通りに製造した(6−クロロピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−アミン(73mg、0.25mmol)および(3−アミノカルボニルフェニル)−ボロン酸(42mg、0.25mmol)の、脱気した0.4M 炭酸ナトリウム水溶液(1.3mL)およびアセトニトリル(1.3mL)の溶液に、PPh(15mg、0.01mmol)を添加した。約90℃で、N下、12時間攪拌後、反応混合物を飽和NaHCOとCHCl/2−プロパノール(4/1)に分配する。水性層をさらなるCHCl/2−プロパノール(4/1)で抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた黄色がかった油状物をカラムクロマトグラフィー(SiO、酢酸エチル)で精製し、3−[6−(4−トリフルオロメトキシフェニル−アミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンズアミドを白色固体として得る(82mg;88%)。MS m/z 375.10(M+1)。
【0111】
実施例7. [6−(3−アミノ−フェニル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化19】

【0112】
参考例1の通りに製造した(6−クロロピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−アミン(217mg、0.75mmol)および(2−アミノフェニル)−ボロン酸(130mg、0.75mmol)の脱気した0.4M 炭酸ナトリウム水性溶液(3.8mL)およびアセトニトリル(3.8mL)の溶液に、PPh(45mg、0.04mmol)を添加する。反応混合物を、約90℃で、N下、12時間攪拌し、熱い懸濁液を濾過する。濾液を減圧下で濃縮し、粗生成物を得、それをカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン/酢酸エチル(4/1))で精製し、[6−(3−アミノフェニル)−ピリミジン−4−イル]−(4−トリフルオロ−メトキシフェニル)−アミノを、薄い黄色がかった固体として得る(218mg;84%)。MS m/z 347.10(M+1)。
【0113】
実施例8. N−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−ベンズアミド
【化20】

【0114】
参考例3の通りに製造した4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−安息香酸(50mg;0.13mmol)を、エタノール−アミン(12μl;0.2mmol)、HATU(54mg、1.5mmol)と、乾燥DMF(0.5ml)およびDIEA(113μl;0.65mmol)中で混合する。反応を室温で、一晩行う。溶媒の除去後、最終産物を逆相HPLC、5−95%アセトニトリル、10分で精製し、N−(2−ヒドロキシエチル)−4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−ベンズアミドを得る。MS: m/z 420.1(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 10.52(s, 1H), 8.84(s, 1H), 8.55(t, J = 6.0 Hz, 1H), 8.40(d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.98(d, J = 9.5 Hz, 2H), 7.86(s, 2H), 7.36(d, J = 8.0 Hz, 2H), 3.62(s, 1H), 3.47(t, J = 6 Hz, 2H), 3.31(dd, J = 5.9, 2H)。
【0115】
実施例9. N−(2−ジメチルアミノ−エチル)−4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−ベンズアミド
【化21】

【0116】
参考例3の通りに製造した4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−安息香酸(50mg、0.13mmol)を、N,N−ジメチル−エタン−1,2−ジアミン(22μl;0.2mmol)、HATU(54mg;1.5mmol)と、0.5ml乾燥DMFおよびDIEA(113μl、0.65mmol)中で混合する。反応を、室温で、一晩行う。溶媒の除去後、最終産物を逆相HPLC、5−95%アセトニトリル、10分で精製し、N−(2−ジメチルアミノ−エチル)−4−[4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イル]−ベンズアミドを得る。MS: m/z 447.2(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 10.52(s, 1H), 9.32(S, 1h), 8.84(s, 1H), 8.79(t, J = 4.5 Hz, 1H), 8.42(d, J = 8.1Hz, 2H), 7.98(d, J =8.2 Hz, 2H), 7.86(s, 2H), 7.35(d, J = 8.0 Hz, 2H), 3.58(dd, J = 5.8 Hz, 2H), 3.24(dd, J = 5.9, 2H), 2.81(d, J = 4.8)。
【0117】
上記実施例において記載の方法を繰り返し、適当な出発物質を使用して、実施例10−14および表1に記載の、下記の式Iの化合物を得る。
【0118】
実施例10. N−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−N'−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピリミジン−4,6−ジアミン
【化22】

【0119】
白色固体。MS: m/z 384.2(M+H)+, 1H NMR(400MHz, CDCl3)δ 8.21(s, 1H), 7.76(s, 1H), 7.34(d, J=8.2Hz, 2H), 7.20(d, J=8.4Hz, 2H), 5.89(s, 1H), 3.69(t, J=4.7Hz, 4H), 2.27(d, J=4.3Hz, 2H), 2.58(t, J=5.2Hz, 2H), 2.45(t, J=5.3Hz, 4H)。
【0120】
実施例11. (6−イミダゾール−1−イル−ピリミジン−4−イル)−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化23】

【0121】
白色固体。MS: m/z 322.1(M+H)+, 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 9.15(s, 1H), 8.67(s, 1H), 8.12(s, 1H), 7.77(d, J=7.2Hz, 2H), 7.51(s, 1H), 7.40(d, J=8.2Hz, 2H), 7.05(s, 1H)。
【0122】
実施例12. {6−[2−(3−イミダゾール−1−イル−プロピルアミノ)−ピリジン−4−イル]−ピリミジン−4−イル}−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−アミン
【化24】

【0123】
黄色固体。MS: m/z 456.2(M+H)+, 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 9.13(s, 1H), 8.78(s, 1H), 8.12(d, J=6.1Hz, 1H), 7.84(d, J=7.2Hz, 2H), 7.81(s, 1H), 7.71(s, 1H), 7.43(s, 1H), 7.37(d, J=8.5Hz, 2H), 7.32(s, 1H), 7.16(d, J=5.9Hz, 1H), 4.30(t, d=6.7Hz, 2H), 3.36(t, J=6.8Hz, 2H), 2.16(m, 2H)。
【0124】
実施例13. 3−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ベンゼンスルホンアミド
【化25】

【0125】
薄黄色固体。MS: m/z 411.1(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 8.79(s, 1H), 8.53(s, 1H), 8.23(d, J=8.5HZ, 1H), 7.96(d, J=5.lHz, 1H), 7.85(d, J=6.9Hz, 2H), 7.75(t, J=7.9Hz, 1H), 7.48(s, 2H), 7.36(d, J=8.2Hz, 2H), 7.33(s, 1H)。
【0126】
実施例14. N−(2−ヒドロキシ−エチル)−4−{4−[6−(4−トリフルオロメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ピリジン−2−イル}−ベンズアミド
【化26】

【0127】
薄黄色固体。MS: m/z 496.2(M+H)+; 1H NMR(400MHz, DMSO)δ 8.88(d, J=5.1Hz, 1H), 8.85(s, 1H), 8.55(s, 2H), 8.25(d, J=8.4Hz, 2H), 8.02(d, 8.5Hz, 2H), 7.96(dd, J=5.2Hz, 1H), 7.87(d, J=8.7Hz, 2H), 7.58(m, 2H), 7.49(s, 1H), 7.38(d, J=8.5Hz, 2EI), 3.54(t, J=6.1Hz, 2H), 3.37(m, 2H)。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【0128】
B. アッセイ
本発明の化合物をアッセイして、Bcr−ab1を発現する32D細胞(32D−p210)を選択的に阻害する能力を、親32D細胞と比較して、測定する。これらのBcr−ab1形質転換細胞の増殖を選択的に阻害する化合物を、Bcr−ab1の野生型または変異体形を発現するBa/F3細胞に対する抗増殖性活性に関して試験する。
【0129】
細胞性Bcr−ab1依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用したマウス細胞系は、Bcr−ab1 cDNAで形質転換した、32D造血先祖細胞(32D−p210)である。これらの細胞を、ペニシリン50μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびL−グルタミン200mMを添加したRPMI/10%ウシ胎児血清(RPMI/FCS)に維持する。非形質転換32D細胞を、同様にIL3の源として、15%のWEHI条件培地の添加により維持する。
【0130】
50μlの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液を、Greiner 384ウェルマイクロプレート(黒色)に、5000細胞/ウェルの密度で撒く。50nlの試験化合物(DMSO貯蔵溶液中1mM)を各ウェルに添加する(STI571を、ポジティブコントロールとして包含させる)。細胞を、72時間、37℃、5%COでインキュベートする。10μlの60%Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)を各ウェルに添加し、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(励起530nm、放出580nm)を、Acquest systemTM (Molecular Devices)を使用して定量する。
【0131】
細胞性Bcr−ab1依存性増殖の阻害
32D−p210細胞を、96ウェルTCプレートに、15,000細胞/ウェルの密度で撒く。試験化合物の50μLの2倍連続希釈(Cmaxは40μM)を各ウェルに添加する(STI571を、ポジティブコントロールとして包含させる)。細胞を、48時間、37℃、5%COでインキュベートした後、15μLのMTT(Promega)を各ウェルに添加し、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmでの光学密度を分光光度法により低量し、50%阻害に必要な化合物の濃度であるIC50値を、用量応答曲線から決定する。
【0132】
細胞サイクル分布に対する効果
32Dおよび32D−p210細胞を、6ウェルTCプレートに、5ml培地中2.5×10細胞/ウェルで撒き、1μMまたは10μMの試験化合物を添加する(STI571をコントロールとして包含させる)。次いで、細胞を24時間または48時間、37℃、5%COでインキュベートする。2mlの細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70%EtOHに1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分処理する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を添加し、蛍光強度を、FACScaliburTM system(BD Biosciences)上で、フローサイトメトリーにより定量する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対してアポトーシス効果を証明したが、32D親細胞のアポトーシスは誘発しない。
【0133】
細胞性Bcr−ab1自己リン酸化に対する効果
Bcr−ab1自己リン酸化を、捕獲Elisaで、c−abl特異的捕獲抗体および抗ホスホチロシン抗体を使用して定量する。32D−p210細胞を、96ウェルTCプレートに、50μLの培地中、2×10細胞/ウェルで撒く。試験化合物の50μLの2倍連続希釈(Cmaxは10μM)を各ウェルに添加する(STI571をポジティブコントロールとして包含させる)。細胞を、90分、37℃、5%COでインキュベートする。次いで、細胞を、1時間、氷上で、150μLのプロテアーゼおよびプロテアーゼ阻害剤含有融解緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM EGTAおよび1%NP−40)で処理する。50μLの細胞融解液を、予め抗ab1特異的抗体で被覆し、ブロックした96ウェルoptiplateに添加する。プレートを、4時間、4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、50μLのアルカリホスファターゼ−接合抗ホスホチロシン抗体を添加し、プレートを、さらに一晩、4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、90μLの発光基質を添加し、発光をAcquestTM system(Molecular Devices)を使用して定量する。Bcr−ab1発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、細胞性Bcr−ab1自己リン酸化を、用量依存的方法で阻害する。
【0134】
Bcr−ab1の変異体形を発現する細胞の増殖に対する効果
本発明の化合物を、Bcr−ab1の野生型または、STI571に耐性であるか、感受性の減少している変異体形(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)を発現するBa/F3細胞に対するその抗増殖効果に関して試験する。これらの化合物の、変異体−Bcr−ab1発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖性効果を、上記のように10、3.3、1.1および0.37μMで試験した(IL3を欠く培地中)。非形質転換細胞に対する毒性を欠く本化合物のIC50値を、上記のように用量反応曲線から得た。
【0135】
前記において、本発明を説明および例示の方法により、理解を明瞭にする目的で幾分詳細に記載しているが、ある変化および修飾を、添付の特許請求の範囲の範囲内で行うことができることは、明らかであろう。加えて、本明細書に記載の各引用文献は、各引用文献が、個々に引用により挿入されたのと同程度にその全体を引用により本明細書に包含させる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、
およびXは、独立して、−N=および−CR=からなる群から選択され、ここで、Rは水素またはC1−4アルキルであり;
Lは、結合、−O−および−NR−からなる群から選択され、ここで、Rは水素またはC1−4アルキルであり;
は、−XNR、−XORおよび−Xからなる群から選択され、ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり、Rは水素またはC1−4アルキルであり、そしてRは、C6−10アリールおよびC5−6ヘテロアリールからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;
は、水素、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から選択され;
は、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C6−10アリール−C0−4アルキルおよび−XNRからなる群から選択され;ここで、任意のアルキル基は、所望により、ヒドロキシ、ハロおよびアミノからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されており;そして任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ニトロ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、フェニル、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XC(O)R、−XS(O)NR、−XNR、−XNR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XS(O)、−XSNR、−XONR、−XC(O)R、−XNRC(O)R、−XNRS(O)、−XS(O)NR、XNRS(O)、−XNRC(O)R、−XNRC(O)NR、−XNRC(O)NR、−XC(O)OR、=NOR、−XNROR、−XNR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4、−XC(O)NR(CH)1−4OR、−XO(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4ORおよびXNR(CH)1−4からなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;ここで、フェニルは、さらに、−NRまたは−C(O)NRからなる群から選択されるラジカルで置換されていてよく;Xは上記の通りであり;Rは水素、C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキルまたはC2−6アルケニルであり;そしてRはヒドロキシ、C6−10アリール−C0−4アルキル、C6−10アリール−C0−4アルキルオキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、所望により、さらに、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ置換C1−4アルコキシ、ハロ−アルキル置換フェニル、ベンズオキシ、C5−9ヘテロアリール、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−S(O)NR、−NR、−C(O)R10および−NR1111からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており、ここで、R10はC5−6ヘテロアリールであり、そしてR11はヒドロキシ−C1−4アルキルである。〕
の化合物、その薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、異性体およびプロドラッグ。
【請求項2】
式Ia:
【化2】

〔式中、
Lは結合であり;
は、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されている、フェニルまたはピリジニルであり;
は水素またはC1−4アルキルであり;そして
は、所望により、−C(O)NR、−C(O)NR、−C(O)Rおよび−C(O)NR(CH)NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されているC6−10アリール−C0−4アルキルであり、ここで、Rは水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;そしてRは、所望により−C(O)NRで置換されているC3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルである。〕
の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が−NHRであり、ここで、Rが、ハロ置換C1−4アルキルまたはハロ置換C1−4アルコキシで置換されているフェニルであり;
が水素であり;そして
が、−C(O)NH(CH)OH、−C(O)NHR、−C(O)Rまたは−NH(CH)N(CH)で置換されているフェニルであり、ここで、Rが、−C(O)NHで置換されている、モルホリノ−エチルまたはピペリジニルである、
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式Ib:
【化3】

〔式中、
Lは結合であり;
は、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されている、フェニルまたはピリジニルであり;
は水素またはC1−4アルキルであり;そして
は、C5−6ヘテロアリール−C0−4アルキルまたはC6−10アリール−C0−4アルキルから選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−C(O)NR、−C(O)R、−NRおよび−NR(CH)NRからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されており、ここで、Rは水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;そしてRはC6−10アリール−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NRおよび−S(O)NRからなる群から選択される2個までのラジカルで置換されている。〕
の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
が−NHRであり、ここで、Rが、ハロ置換C1−4アルキルまたはハロ置換C1−4アルコキシで置換されているフェニルであり;
が水素であり;そして
が、所望により、−C(O)NH(CH)OH、−C(O)NHCH(C)CHOH、−C(O)NH(CH)CH、−C(O)N(CH)、−C(O)NH(CH)N(CH)、−C(O)NHR、−C(O)N(C)Rおよび−C(O)Rからなる群から選択される1個から3個のラジカルで置換されているピリジニルまたはフェニルであり、ここで、Rがフェニル、フェネチル、ピリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノまたはモルホリノ−エチルであり;ここで、Rの任意のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ、C1−4アルキル、−CHOH、−(CH)OH、ピロリジニル、ピペラジニル、−C(O)NH、−C(O)N(C)および−S(O)NHからなる群から選択される2個までのラジカルで置換されている、
請求項4記載の化合物。
【請求項6】
式Ic:
【化4】

〔式中、
Lは結合、−NH−、−N(C)−または−O−であり;
は、−NHR、−ORおよび−Rからなる群から選択され、ここで、Rは、所望により、ハロ、アミノ、C1−4アルキル、ハロ置換C1−4アルコキシ、C1−4アルコキシおよびハロ置換C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されているフェニルまたはピリジニルであり;そして
は水素またはC1−4アルキルである。〕
の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Lが結合であり;そして
が、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキル、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC6−10アリール−C0−4アルキルからなる群から選択され;ここで、任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、ハロ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、C1−4アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XC(O)NR、−XNR、−XNR、−XS(O)NR、−XS(O)、−XS(O)、−XC(O)R、−XNRC(O)R、−XNRS(O)、−XS(O)NR、−XNRS(O)、−XNRC(O)R、−XNRC(O)NR、−XNR(O)NR、−XC(O)OR、=NOR、−XNR(CH)1−4NR、−XC(O)NR(CH)1−4NRおよび−XO(CH)1−4NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;Rが水素、C1−6アルキルまたはヒドロキシ−C1−6アルキルであり;RがC6−10アリール−C0−4アルキル、C6−10アリール−C0−4アルキルオキシ、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキル−C0−4アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、ハロ置換C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロ−アルキル置換フェニル、ベンズオキシ、C5−9ヘテロアリール、C3−8ヘテロシクロアルキル、−C(O)NR、−S(O)NR、−NRおよび−C(O)R10からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており、ここで、R10がC5−6ヘテロアリールである、
請求項6記載の化合物。
【請求項8】
が、モルホリノ、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イル、4−オキソ−ピペリジン−1−イル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピリジニル、フェニル、ナフチル、チオフェニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピペリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピラゾリルおよび1H−ベンゾイミダゾリルからなる群から選択され;ここで、任意のアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルは、所望により、クロロ、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、メトキシ、−C(O)OH、−C(O)H、−C(O)OCH、−C(O)N(C)、−C(O)N(CH)、−C(O)NHCH、−S(O)NH、−S(O)CH、クロロ、−NH、−C(O)CH、=NOCH、−NH(CH)N(CH)、−NH(CH)−NH、−NH(CH)OH、−C(O)NH(CH)N(CH)、−NHR、−O(CH)N(CH)、モルホリノ、ピペラジニル、−NHC(O)CH、−NHC(O)NHC、−C(O)NHC、−C(O)NHC、−C(O)NHC10OH、−C(O)N(COH)、−C(O)NHCOH、−C(O)NH(CH)OH、−NHC(O)R、−C(O)NHR、−NHC(O)NHR、−C(O)R、−NHS(O)、−NHS(O)CH、−NHS(O)、−S(O)、−S(O)NHR、−C(O)NHおよび−C(O)NH(CH)N(CH)からなる群から独立して選択される1個から2個のラジカルで置換されており;Rが、フェネチル、2−フェノキシ−エチル、1H−イミダゾリル−プロピル、ピリジニル、ピリジニル−メチル、キノリニル、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル、フラン−2−イルメチル、チアゾール−2−イルメチル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルメチル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル、3−イミダゾール−1−イル−プロピル、3H−ピラゾール−3−イル、モルホリノ−エチル、フェニル、チオフェニル−メチル、ベンジル、シクロヘキシルまたはフラン−2−イルメチルであり、ここで、Rの該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはアルキルは、さらに、所望により、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−エチル、イソブチル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、シアノ、イソプロピル、メチル、エチル、クロロ、フルオロ、ピリジニル、モルホリノ、フェノキシ、ピロリジニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメチル置換フェニル、−N(CH)、−C(O)NH、−S(O)NH−、−C(O)N(CH)、シアノまたは−C(O)R10からなる群から選択される2個までのラジカルで置換されており;ここで、R10がフラニルである、
請求項7記載の化合物。
【請求項9】
Lが−NH−、−N(C)−または−O−であり;そして
が、C5−10ヘテロアリール−C0−4アルキルおよびC6−10アリール−C0−4アルキルからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、C1−4アルコキシ、C3−8ヘテロシクロアルキル、−XC(O)NR、−XS(O)NR、−XNRC(O)Rおよび−XNRC(O)NRからなる群から独立して選択される1個から3個のラジカルで置換されており;Rが水素またはC1−6アルキルであり;そしてRが、所望により2個までのハロ置換C1−4アルキルラジカルで置換されているC6−10アリール−C0−4アルキルである、
請求項6記載の化合物。
【請求項10】
が、キノリニル、ピリジニルおよびフェニルからなる群から選択され;ここで、任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、モルホリノ、メトキシ、−C(O)NH、−NHC(O)NHRおよび−S(O)NHからなる群から独立して選択される1個から2個のラジカルで置換されており;そしてRがトリフルオロメチルで置換されているフェニルである、
請求項9記載の化合物。
【請求項11】
有効量の請求項1記載の化合物を含む、温血動物の腫瘍の処置のための医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍疾患を有する温血動物の処置法であり、そのような処置を必要とする温血動物を、有効な腫瘍阻害量の請求項1記載の化合物で処置することを含む、方法。
【請求項13】
該腫瘍疾患が、チロシンプロテインキナーゼの阻害に応答する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該チロシンプロテインキナーゼがBcr−Ab1である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
Bcr−ab1活性を阻害する方法であり、Bcr−ab1と、Bcr−ab1のミリストイル結合ポケットに結合する化合物を接触させることを含む、方法。
【請求項16】
化合物が、請求項1記載の化合物である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の化合物の製造法であり:
(a)式2の化合物と式3、4、5または6の化合物を反応させ:
【化5】

〔式中、X、X、R、R、RおよびRは、式Iに関して上記で定義の通りであり、そしてQはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。〕;または
(b)所望により、本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換し;
(c)所望により、本発明の化合物の塩形を、非塩形に変換し;
(d)所望により、本発明の化合物の非酸化形を、薬学的に許容されるN−オキシドに変換し;
(e)所望により、本発明の化合物のN−オキシド形をその非酸化形に変換し;
(f)所望により、本発明の化合物の個々の異性体を、異性体の混合物から分離し;
(g)所望により、本発明の化合物の非誘導体形を、薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換し;そして
(h)所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を、その非誘導体形に変換する
ことを含む、方法。


【公表番号】特表2006−522143(P2006−522143A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509594(P2006−509594)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/010083
【国際公開番号】WO2004/089286
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】